説明

通信システム

【課題】メモリ使用効率の向上を図る。
【解決手段】データ送信部11は、データの送信処理を行う。メモリ22は、送信されたデータを格納する。メモリ管理部23は、メモリ22上に離散している空き領域の数を管理する。制御部25は、メモリ22の空き領域数にもとづき、送信装置10に対するフロー制御の要求、または空き領域を減少させるデータ再配置の少なくとも1つの制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに関する。通信システムとしては、無線データ通信を行うシステムが含まれる。
【背景技術】
【0002】
3GPP(3rd Generation Partnership Project)規格に順ずる無線通信において、無線基地局と移動局との無線区間では、RLC(Radio Link Control)と呼ばれるデータリンクプロトコルで、可変サイズのパケット形式によるデータ通信が行われている。
【0003】
RLCレイヤでは、送信側でデータを分割する制御および受信側で分割されたデータを結合する制御が行われる。また、これらの制御に伴って、データをメモリに格納するためにメモリ領域を取得し、メモリからデータを読み出してメモリ領域を解放するといったメモリ制御も併せて行われる。
【0004】
さらに、RLCレイヤでは、データ送受信の失敗に対して、上位レイヤへのデータ送達順序を保障するため、送達確認と再送要求を含む再送制御が行われる。送達確認には、RLCレイヤで生成する制御データ(RLC Control PDU(Protocol Data Unit))が用いられる。
【0005】
メモリ制御に関する従来技術としては、各交換装置のメモリの使用率を定期的に検出する技術が提案されている(特許文献1)。また、基地局が移動局宛のデータをバッファに格納し、バッファのデータ占有率がしきい値を超えると、フロー制御を行う技術が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−309645号公報
【特許文献2】WO2004−089027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年の移動体通信システムでは、携帯電話機(移動局)のコンパクト化が求められ、携帯電話機に搭載できるメモリサイズも制限されている。このような状況において、メモリの容量不足が通信のボトルネックとならないように、限られたメモリ領域を効率的に使用することが求められている。しかし、従来のメモリ制御では、メモリの効率的な使用がなされておらず、使用効率の低下を招いていた。
【0008】
図8、図9は従来のメモリ制御の問題点を説明するための図である。移動局60は、メモリ61を有し、無線基地局50から送信された下りデータをメモリ61に格納する。メモリ61へのデータ格納は、基本的にはデータの到達順に格納される。なお、図8にステップS1〜S3を示し、図9にステップS5〜S7を示す。
【0009】
〔S1〕無線基地局50から、データd1−1〜d1−3、データd2、データd3が移動局60へ送信される。データd1−1、d1−2、d1−3は、1つのデータが3つに分割されたものである。
【0010】
〔S2〕移動局60に対し、データの到達順番として、データd1−1、データd2、データd1−2、データd3、データd1−3の順に到達したとすると、メモリ61にもこの順番でデータが格納される。
【0011】
〔S3〕移動局60では、データd1−1〜d1−3の受信処理として、データd1−1〜d1−3をメモリ61から読み出して結合し、所定の受信処理を行う。メモリ61には、解放された領域として、空き領域r1〜r3が生じる。
【0012】
〔S4〕無線基地局50からデータd4−1〜d4−3が移動局60へ送信される。データd4−1、d4−2、d4−3は、1つのデータが3つに分割されたものである。
〔S5〕移動局60に対し、データの到達順番として、データd4−1、データd4−2、データd4−3の順に到達したとする。ここで、空き領域r1、r3の領域サイズ(格納領域サイズ)と、データd4−1、d4−3のデータサイズとがそれぞれ同一であり、空き領域r2の領域サイズは、データd4−2のデータサイズよりも小さいとする。空き領域r1には、データd4−1が格納でき、空き領域r3には、データd4−3が格納できる。
【0013】
〔S6〕空き領域r2は、データd4−2のデータサイズよりも小さな格納領域であるため、空き領域r2にデータd4−2を格納することはできない。このため、データd4−2は、メモリ61の未使用領域に格納される。
【0014】
〔S7〕空き領域r2は、メモリ61上にデータが格納できない領域(ブランク)として残る。
上記のように、無線基地局50からは、固定のデータサイズではなく、可変のデータサイズでデータが送信されるため、このようなデータに対して、上記のようなメモリ制御を行うと、メモリ61上に離散的な空き領域が発生してしまい、これによって、メモリ61の使用可能領域が狭まり、使用効率が低下するといった問題があった。
【0015】
また、無線基地局50と移動局60との間でデータ送受信の失敗が発生するとデータの再送制御を行うが、このときもデータが分割されて再送信される。この場合、データ送受信の失敗が多発すると、再送回数も多くなるので、メモリ61上に離散的な空き領域が数多く生成されてしまう可能性が高くなる。
【0016】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、メモリ使用効率の向上を図った通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決するために、無線通信を行う通信システムが提供される。この通信システムは、データの送信処理を行うデータ送信部を含む送信装置と、送信された前記データを格納するメモリと、前記メモリ上に離散している空き領域の数を管理するメモリ管理部と、前記メモリの空き領域数にもとづき、前記送信装置に対するフロー制御の要求、または前記空き領域を減少させるデータ再配置の少なくとも1つの制御を行う制御部とを含む受信装置とを備える。
【0018】
ここで、データ送信部は、データの送信処理を行う。メモリは、送信されたデータを格納する。メモリ管理部は、メモリ上に離散している空き領域の数を管理する。制御部は、メモリの空き領域数にもとづき、送信装置に対するフロー制御の要求、または空き領域を減少させるデータ再配置の少なくとも1つの制御を行う。
【発明の効果】
【0019】
メモリ使用効率の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】通信システムの構成例を示す図である。
【図2】無線通信システムの構成例を示す図である。
【図3】メモリ領域のデフラグ処理を示す図である。
【図4】判断指標となる情報を示す図である。
【図5】判別処理の動作フローを示す図である。
【図6】通信シーケンスを示す図である。
【図7】メモリの分割領域を示す図である。
【図8】従来のメモリ制御の問題点を説明するための図である。
【図9】従来のメモリ制御の問題点を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は通信システムの構成例を示す図である。通信システム1は、送信装置10と受信装置20を有する。送信装置10は、データ送信部11を含み、受信装置20は、データ受信部21、メモリ22、メモリ管理部23、判別処理部24および制御部25を含み、送信装置10と受信装置20間で無線通信を行うシステムである。
【0022】
なお、図では説明の簡便のため、送信装置10と受信装置20とに分けて示しているが、実際には単一の通信装置内に、送信装置10および受信装置20の両方の機能を有するものである。
【0023】
データ送信部11は、受信装置20へ向けて、データの送信処理を行う。データの送信処理として、フロー制御の要求時には、フロー制御を行う機能も有している。データ受信部21は、送信装置10から送信されたデータの受信処理を行う。メモリ22は、送信されたデータを格納する。メモリ管理部23は、メモリ22の使用率およびメモリ22上に離散している空き領域の数を管理する。
【0024】
判別処理部24は、メモリ使用率に対する第1のしきい値を有して、メモリ使用率と第1のしきい値との判別処理を行う。また、空き領域数に対する第2のしきい値を有して、空き領域数と第2のしきい値との判別処理を行う。
【0025】
制御部25は、判別処理部24における判別結果にもとづき、送信装置10に対するフロー制御の要求、またはメモリ22上のデータ再配置の少なくとも1つの制御を行う。
なお、フロー制御とは、一般的に、相手の受信能力またはネットワークのトラフィック状態に合わせて情報データを送信する制御のことをいう。例えば、送信側の転送スピードが、受信側の処理より速い場合、データが受信側のバッファからあふれてデータ損失を起こすことがないように、送受信間でデータ転送の状況を確認して、確実なデータ転送を行うものである。
【0026】
送信側で行うフロー制御としては、受信側からフロー制御の要求を受信すると、データ送信の停止、または停止しないまでもデータの送信速度を遅らせる、さらには再送データを送信するなどがある。
【0027】
一方、データ再配置とは、メモリ22上に生じた空き領域の断片化を減少させるために、格納データを再配置する処理のことである。以降では、データ再配置のことをデフラグ(defragmentation)処理と呼ぶ。
【0028】
次に通信システム1を無線通信システムに適用した場合を例に挙げて以降詳しく説明する。図2は無線通信システムの構成例を示す図である。基本構成は、図1で示した通信システム1と同じである。
【0029】
無線通信システム1aは、無線基地局10aと移動局20aとを備える。無線基地局10aは、データ送信部11aを有し、データ送信部11aは、フロー制御部11a−1を含む。フロー制御部11a−1は、移動局20aからのフロー制御要求指示やフロー制御解除指示に応じて、送信データのフロー制御の実行または解除を行う。
【0030】
移動局20aは、データ受信部21、メモリ22、メモリ管理部23、判別処理部24および制御部25aを有し、制御部25aは、フロー制御指示部25a−1およびデフラグ処理部25a−2を含む。
【0031】
フロー制御指示部25a−1は、判別結果に応じて、無線基地局10aにフロー制御の要求または解除を指示する。デフラグ処理部25a−2は、判別結果に応じて、メモリ22のデフラグ処理を行う。その他の構成ブロックは図1と同じである。
【0032】
図3はメモリ領域のデフラグ処理を示す図である。
〔S11〕無線基地局10aからデータd1−1〜d1−3、d2−1〜d2−3が移動局20aへ送信される。データd1−1、d1−2、d1−3は、1つのデータが3つに分割されたものであり、データd1−1が先頭データ、データd1−2が中間データ、データd1−3が後尾データとする。
【0033】
また、データd2−1、d2−2、d2−3は、1つのデータが3つに分割されたものであり、データd2−1が先頭データ、データd2−2が中間データ、データd2−3が後尾データとする。
【0034】
〔S12〕移動局20aに対し、データの到達順番として、データd1−1、データd1−3、データd1−2、データd2−3、データd2−2、データd2−1の順にデータが到達したとして、メモリ22にこの順番でデータが格納される。また、これらのデータ格納時に、メモリ22上に空き領域(ブランク)r1〜r3が生じたとする。
【0035】
〔S13〕デフラグ処理部25a−2は、メモリ22上のデータを先頭から再配置し(メモリアドレスの若いアドレス順に再配置し)、空き領域の断片化の減少を図る。この場合、単にデータを先頭から詰めて空き領域を減少させるのではなく、結合可能なデータがメモリ22の連続する領域に格納されるように再配置する。
【0036】
例えば、データd1−1〜d1−3に関しては、そのまま格納領域を詰めると、先頭からデータd1−1、d1−3、d1−2の順に格納されてしまうので、先頭からデータd1−1、d1−2、d1−3の順になるように格納する。
【0037】
また、データd2−1〜d2−3に関しても、そのまま格納領域を詰めると、先頭からデータd2−3、d2−2、d2−1の順に格納されてしまうので、先頭からデータd2−1、d2−2、d2−3の順になるように格納する。
【0038】
このように、メモリ22にすでに格納されている、分割送信されたデータの内、結合可能なデータを、データ結合時に元の単一データとなるように、メモリ22の連続する領域に再配置するようにデフラグ処理を行って、断片化された空き領域を減少させることとした。これにより、メモリ22の使用効率の向上を図るだけでなく、データ読み出し時に同一データの結合をしやすくして動作効率の向上も図ることが可能になる。
【0039】
次に移動局20aがフロー制御指示またはデフラグ処理を実行する場合の判断指標となる情報(しきい値の情報等)について説明する。図4は判断指標となる情報を示す図である。判断指標となる情報一覧のテーブルT1を示す。なお、テーブルT1の各種情報は、例えば、不揮発性メモリ等に値が格納され、該当の制御を行う場合に使用されるものである。
【0040】
メモリ使用率は、メモリ22の全体格納領域に対して、受信データが格納される領域の使用割合(%)を示す。フロー制御要求しきい値は、第1のしきい値に該当し、フロー制御の要求を行うためのしきい値であり、単位はメモリ使用率と同じ%である。フロー制御要求しきい値のデフォルト値を例えば、95%程度とすると、この場合、メモリ使用率が95%を超えると、フロー制御を要求することになる。
【0041】
空き領域数は、メモリ管理部23で管理されるメモリ22上の空き領域の数(ブランク数)である。空き領域数しきい値は、第2のしきい値に該当し、デフラグ処理を開始するためのしきい値である。例えば、デフォルト値で10個とすると、この場合、空き領域数が10個を超えると、デフラグ処理を行うことになる。
【0042】
フロー制御解除しきい値は、第3のしきい値に該当し、フロー制御を解除するためのしきい値であり、単位はメモリ使用率と同じ%である。フロー制御解除しきい値のデフォルト値を例えば、80%程度とすると、この場合、メモリ使用率が80%を超えなくなったときには、フロー制御を解除することになる。
【0043】
サービス情報は、受信データの内容が、制御信号、音声データ、制御信号と音声データ以外のサービスデータのいずれであるかを示す情報である。制御信号と音声データに対しては、リアルタイム性が求められるので、受信データが制御信号または音声データの場合にはフロー制御は実行しない。
【0044】
パスロス情報は、受信データの伝搬路損失を示す情報であり、単位はdBである。データ受信部21において、受信データの強度から算出される。伝搬路損失としては例えば、0dB〜−150dBを想定する。
【0045】
しきい値調整値は、パスロス情報にもとづき、フロー制御要求しきい値またはフロー制御解除しきい値を調整するための係数であり、単位は%/dBである。デフォルト値として例えば、0.1%/dBを想定する。
【0046】
ここで、判別処理部24は、送信データの伝搬路損失の状態に応じて、フロー制御要求しきい値およびフロー制御解除しきい値を適応的に調整する。調整後のしきい値の算出式を式(1)、式(2)に示す。
【0047】
(調整後のフロー制御要求しきい値)=(デフォルトのフロー制御要求しきい値)+(しきい値調整値)×(パスロス情報)・・・(1)
(調整後のフロー制御解除しきい値)=(デフォルトのフロー制御解除しきい値)+(しきい値調整値)×(パスロス情報)・・・(2)
なお、調整後のフロー制御要求しきい値は、約80〜95%となり、調整後のフロー制御解除しきい値は、約65%〜80%となる。このように、無線基地局10aと移動局20aとの間の伝搬路損失の測定値にもとづいたしきい値でフロー制御の要求/解除を判別することにより、実際の伝搬路環境に沿った精度の高い判別処理を行うことが可能になる。
【0048】
次に移動局20aにおける、判別処理および判別結果にもとづく制御について説明する。図5は判別処理の動作フローを示す図である。
〔S21〕メモリ管理部23は、メモリ22の使用率およびメモリ22上に離散している空き領域の数を管理する。
【0049】
〔S22〕判別処理部24は、メモリ管理部23で管理されているメモリ使用率と、フロー制御要求しきい値(第1のしきい値)との判別処理を行う。現在のメモリ使用率が、フロー制御要求しきい値を超える場合はステップS23へいき、そうでなければ同じ判別処理を引き続き行う。
【0050】
〔S23〕判別処理部24は、メモリ管理部23で管理されているメモリ22上の空き領域数と空き領域数しきい値(第2のしきい値)との判別処理を行う。現在の空き領域数が、空き領域数しきい値を超えない場合はステップS24へいき、現在の空き領域数が、空き領域数しきい値を超える場合はステップS25へいく。
【0051】
〔S24〕フロー制御指示部25a−1は、無線基地局10aに対して、フロー制御を要求する。
〔S25〕フロー制御指示部25a−1は、無線基地局10aに対して、フロー制御を要求する。さらに、デフラグ処理部25a−2は、図3で上述したようなデフラグ処理をメモリ22に施す。
【0052】
〔S26〕判別処理部24は、メモリ管理部23で管理されているメモリ使用率と、フロー制御解除しきい値(第3のしきい値)との判別処理を行う。現在のメモリ使用率が、フロー制御解除しきい値を超えない場合はステップS27へいき、そうでなければ同じ判別処理を引き続き行う。
【0053】
〔S27〕フロー制御指示部25a−1は、無線基地局10aに対して、フロー制御の解除を指示する。
上記のように、移動局20aでは、メモリ使用率がフロー制御要求しきい値を超えたならば、フロー制御を要求することになる。ただし、デフラグ処理を行うためには、メモリ使用率がフロー制御要求しきい値を超え、かつ空き領域数が空き領域数しきい値を超えた場合に実行するものとする。
【0054】
これは、空き領域数が少ない場合に、デフラグ処理を行ってもメモリ使用率の改善が期待できないからであり、空き領域数が少なくて、メモリ使用率が増加しているような場合には、フロー制御で対処する構成としている。このような制御により、メモリ使用率の向上を図ることが可能になる。
【0055】
また、上記では、フロー制御の要求を行うためのしきい値には、フロー制御要求しきい値を使用し、フロー制御の解除を行うためのしきい値には、フロー制御要求しきい値とは異なるフロー制御解除しきい値を使用している。
【0056】
これは、フロー制御の要求、解除が繰り返し連続して起こらないようにするためであり、フロー制御の要求とフロー制御の解除との切替にマージンを設けて、伝送効率の劣化や誤動作の発生等を抑制するものである。
【0057】
次に無線基地局10aと移動局20aとの通信について説明する。図6は通信シーケンスを示す図である。
〔S31〕無線基地局10aは、移動局20aに新規のデータを送信する。
【0058】
〔S32〕移動局20aは、受信したデータをメモリ22に格納し、メモリ使用率および空き領域数の判別処理を行う。ここでは、メモリ使用率はフロー制御要求しきい値を超え、かつ空き領域数が空き領域数しきい値を超えたと判別したとする。
【0059】
〔S33〕移動局20aは、無線基地局10aにフロー制御の要求メッセージを送信する。
〔S34〕無線基地局10aは、フロー制御として、データの送信停止を行う。
【0060】
〔S35〕移動局20aは、メモリ22に対するデフラグ処理を実行する。
〔S36〕無線基地局10aは、データ送信の再開要求メッセージを移動局20aに周期的に送信する。
【0061】
〔S37〕移動局20aは、デフラグ処理の終了後、無線基地局10aにデータ送信の再開応答メッセージを送信する。
〔S38〕無線基地局10aは、再開応答メッセージを受信すると、データの送信を開始する。ただし、フロー制御の範囲内でのデータ送信であるため、再送データを優先して送信し、新規のデータは送信制限をかける。
【0062】
なお、再送データとは、分割データの内、フロー制御によって送信が一時停止となって、移動局20aに未送信となっているデータのことである。再送データを優先して移動局20aに送信することにより、移動局20aでは、すでに送信済みのデータと、該当再送データとを結合して、所定の受信処理をすみやかに行うことができる。
【0063】
このように、無線基地局10aでは、移動局20aがメモリ22に溜まっているデータを掃けるように、再送データ送信を優先させる。これにより、送信データの破棄を防ぐことができ、さらに、無線基地局10aは、無駄な下り送信を抑制することができるので、下りリソースの有効利用が可能になる。
【0064】
〔S39〕移動局20aは、メモリ使用率の判別処理を行う。ここでは、メモリ使用率がフロー制御解除しきい値を超えないと判別したものとする。
〔S40〕移動局20aは、フロー制御の解除メッセージを無線基地局10aに送信する。
【0065】
〔S41〕無線基地局10aは、フロー制御を解除する。
〔S42〕無線基地局10aは、新規のデータを送信する。
次にメモリ22の格納領域を複数に分割し、分割領域毎に異なる使用形態とする場合について説明する。図7はメモリの分割領域を示す図である。メモリ22aの格納領域を領域R1(第1の領域)と領域R2(第2の領域)に分割する。
【0066】
通常の受信データの格納時は、メモリ22aの領域R1を使用する。そして、デフラグ処理を行う場合には、デフラグ処理部25a−2によって領域R1のデフラグ処理を行う。また、このとき、領域R2には、無線基地局10aから送信される再送データを格納する。
【0067】
このように、メモリ領域を複数に分割し、一方の領域でデフラグ処理を行っているときには、他方の領域に再送データを格納する構成とする。これにより、無線基地局10aでは、送信データを停止せずに、デフラグ処理中も再送データを送信する通信を行うことが可能になる。
【0068】
以上説明したように、通信システム1によれば、メモリ使用効率の向上により、メモリ不足による転送データの破棄、スループット低下を防ぐことが可能になる。また、移動局20aに搭載するメモリサイズを抑えることを可能とし、移動局20aの小型軽量化も期待できる。さらに、システム全体の観点から、無駄な下り送信を抑えることができ、下りリソースの使用効率の向上が可能になる。
【0069】
(付記1) 無線通信を行う通信システムにおいて、
データの送信処理を行うデータ送信部を含む送信装置と、
送信された前記データを格納するメモリと、前記メモリ上に離散している空き領域の数を管理するメモリ管理部と、前記メモリの空き領域数にもとづき、前記送信装置に対するフロー制御の要求、または前記空き領域を減少させるデータ再配置の少なくとも1つの制御を行う制御部とを含む受信装置と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【0070】
(付記2) 前記メモリ管理部は、
前記メモリ上に離散している空き領域の数の他に、前記メモリの使用率も管理し、
前記受信装置は、
メモリ使用率に対する第1のしきい値を有して、前記メモリ使用率と前記第1のしきい値との判別処理を行い、空き領域数に対する第2のしきい値を有して、前記空き領域数と前記第2のしきい値との判別処理を行う判別処理部をさらに有し、
前記制御部は、
前記メモリ使用率が前記第1のしきい値を超え、かつ前記空き領域数が前記第2のしきい値を超えないと判別された場合には、前記フロー制御を要求し、
前記メモリ使用率が前記第1のしきい値を超え、かつ前記空き領域数が前記第2のしきい値を超えると判別された場合には、前記フロー制御を要求して、前記データ再配置を行
う、
ことを特徴とする付記1記載の通信システム。
【0071】
(付記3) 前記判別処理部は、前記フロー制御を解除する際に用いる、前記第1のしきい値とは異なる第3のしきい値を有し、
前記制御部は、前記メモリ使用率が前記第3のしきい値を超えないと判別された場合には、前記送信装置に対して前記フロー制御の解除を指示する、
ことを特徴とする付記2記載の通信システム。
【0072】
(付記4) 前記制御部は、前記メモリにすでに格納されている、前記送信装置で分割送信された前記データの内、結合可能な前記データを、前記メモリの連続する領域に再配置することを特徴とする付記2記載の通信システム。
【0073】
(付記5) 前記メモリは、格納領域を第1の領域と第2の領域とに分割し、
前記制御部は、前記第1の領域を前記データ再配置に使用し、前記第2の領域を前記データ再配置の実行中に送信される前記データの格納領域として使用することを特徴とする付記2記載の通信システム。
【0074】
(付記6) 前記判別処理部は、前記第1のしきい値と、前記フロー制御を解除する際に用いる前記第1のしきい値とは異なる第3のしきい値とを、送信される前記データの伝送路損失で調整することを特徴とする付記2記載の通信システム。
【0075】
(付記7) 前記データ送信部は、前記フロー制御の要求を受信した場合、再送データを優先して送信することを特徴とする付記2記載の通信システム。
(付記8) 無線通信を行う通信装置において、
送信されたデータを格納するメモリと、
前記メモリの使用率および前記メモリ上に離散している空き領域の数を管理するメモリ管理部と、
メモリ使用率に対する第1のしきい値を有して、前記メモリ使用率と前記第1のしきい値との判別処理を行い、空き領域数に対する第2のしきい値を有して、前記空き領域数と前記第2のしきい値との判別処理を行う判別処理部と、
判別結果にもとづき、送信側に対するフロー制御の要求、または前記空き領域を減少させるデータ再配置の少なくとも1つの制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記メモリ使用率が前記第1のしきい値を超え、かつ前記空き領域数が前記第2のしきい値を超えないと判別された場合には、前記フロー制御を要求し、
前記メモリ使用率が前記第1のしきい値を超え、かつ前記空き領域数が前記第2のしきい値を超えると判別された場合には、前記フロー制御を要求して、前記データ再配置を行う、
ことを特徴とする通信装置。
【0076】
(付記9) 前記判別処理部は、前記フロー制御を解除する際に用いる、前記第1のしきい値とは異なる第3のしきい値を有し、
前記制御部は、前記メモリ使用率が前記第3のしきい値を超えないと判別された場合には、送信側の装置に対して前記フロー制御の解除を指示する、
ことを特徴とする付記8記載の通信装置。
【0077】
(付記10) 前記制御部は、前記メモリにすでに格納されている、送信側の装置で分割送信された前記データの内、結合可能な前記データを、前記メモリの連続する領域に再配置することを特徴とする付記8記載の通信装置。
【0078】
(付記11) 前記メモリは、格納領域を第1の領域と第2の領域とに分割し、
前記制御部は、前記第1の領域を前記データ再配置に使用し、前記第2の領域を前記データ再配置の実行中に送信される前記データの格納領域として使用することを特徴とする付記8記載の通信装置。
【0079】
(付記12) 前記判別処理部は、前記第1のしきい値と、前記フロー制御を解除する際に用いる前記第1のしきい値とは異なる第3のしきい値とを、送信される前記データの伝送路損失で調整することを特徴とする付記8記載の通信装置。
【符号の説明】
【0080】
1 通信システム
10 送信装置
11 データ送信部
20 受信装置
21 データ受信部
22 メモリ
23 メモリ管理部
24 判別処理部
25 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信を行う通信システムにおいて、
データの送信処理を行うデータ送信部を含む送信装置と、
送信された前記データを格納するメモリと、前記メモリ上に離散している空き領域の数を管理するメモリ管理部と、前記メモリの空き領域数にもとづき、前記送信装置に対するフロー制御の要求、または前記空き領域を減少させるデータ再配置の少なくとも1つの制御を行う制御部とを含む受信装置と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記メモリ管理部は、
前記メモリ上に離散している空き領域の数の他に、前記メモリの使用率も管理し、
前記受信装置は、
メモリ使用率に対する第1のしきい値を有して、前記メモリ使用率と前記第1のしきい値との判別処理を行い、空き領域数に対する第2のしきい値を有して、前記空き領域数と前記第2のしきい値との判別処理を行う判別処理部をさらに有し、
前記制御部は、
前記メモリ使用率が前記第1のしきい値を超え、かつ前記空き領域数が前記第2のしきい値を超えないと判別された場合には、前記フロー制御を要求し、
前記メモリ使用率が前記第1のしきい値を超え、かつ前記空き領域数が前記第2のしきい値を超えると判別された場合には、前記フロー制御を要求して、前記データ再配置を行う、
ことを特徴とする請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
前記判別処理部は、前記フロー制御を解除する際に用いる、前記第1のしきい値とは異なる第3のしきい値を有し、
前記制御部は、前記メモリ使用率が前記第3のしきい値を超えないと判別された場合には、前記送信装置に対して前記フロー制御の解除を指示する、
ことを特徴とする請求項2記載の通信システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記メモリにすでに格納されている、前記送信装置で分割送信された前記データの内、結合可能な前記データを、前記メモリの連続する領域に再配置することを特徴とする請求項2記載の通信システム。
【請求項5】
前記メモリは、格納領域を第1の領域と第2の領域とに分割し、
前記制御部は、前記第1の領域を前記データ再配置に使用し、前記第2の領域を前記データ再配置の実行中に送信される前記データの格納領域として使用することを特徴とする請求項2記載の通信システム。
【請求項6】
前記判別処理部は、前記第1のしきい値と、前記フロー制御を解除する際に用いる前記第1のしきい値とは異なる第3のしきい値とを、送信される前記データの伝送路損失で調整することを特徴とする請求項2記載の通信システム。
【請求項7】
前記データ送信部は、前記フロー制御の要求を受信した場合、再送データを優先して送信することを特徴とする請求項2記載の通信システム。
【請求項8】
無線通信を行う通信装置において、
送信されたデータを格納するメモリと、
前記メモリの使用率および前記メモリ上に離散している空き領域の数を管理するメモリ管理部と、
メモリ使用率に対する第1のしきい値を有して、前記メモリ使用率と前記第1のしきい値との判別処理を行い、空き領域数に対する第2のしきい値を有して、前記空き領域数と前記第2のしきい値との判別処理を行う判別処理部と、
判別結果にもとづき、送信側に対するフロー制御の要求、または前記空き領域を減少させるデータ再配置の少なくとも1つの制御を行う制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記メモリ使用率が前記第1のしきい値を超え、かつ前記空き領域数が前記第2のしきい値を超えないと判別された場合には、前記フロー制御を要求し、
前記メモリ使用率が前記第1のしきい値を超え、かつ前記空き領域数が前記第2のしきい値を超えると判別された場合には、前記フロー制御を要求して、前記データ再配置を行う、
ことを特徴とする通信装置。
【請求項9】
前記判別処理部は、前記フロー制御を解除する際に用いる、前記第1のしきい値とは異なる第3のしきい値を有し、
前記制御部は、前記メモリ使用率が前記第3のしきい値を超えないと判別された場合には、送信側の装置に対して前記フロー制御の解除を指示する、
ことを特徴とする請求項8記載の通信装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記メモリにすでに格納されている、送信側の装置で分割送信された前記データの内、結合可能な前記データを、前記メモリの連続する領域に再配置することを特徴とする請求項8記載の通信装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−55044(P2011−55044A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199396(P2009−199396)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】