説明

通信不正成立防止システム

【課題】不正通信を監視することができるとともに、通信時間も短く済ますことができる通信不正成立防止システムを提供する。
【解決手段】スマート通信の1通信の中で受信信号強度測定信号18を異なる電波強度で複数送信し、これら受信信号強度測定信号18の受信信号強度を電子キー2にて測定する。ここでは、ウェイク信号21を2回送信するようにし、各ウェイク信号21に受信信号強度測定信号18を付加する。そして、電子キー2がレスポンス信号Srsを車両1に送信するとき、受信信号強度測定データDs1,Ds2を車両1に送信して、これら受信信号強度測定データDs1,Ds2の差を基に、実行中のスマート通信が正規通信か否かを確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信端末及び通信マスタの無線通信において不正成立を防止する通信不正成立防止に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多くの車両には、IDコードを無線により送信する電子キーによってID照合を実行する電子キーシステム(特許文献1等参照)が搭載されている。この種の電子キーシステムには、車両から送信されたリクエストを電子キーが受信すると、これに応答する形で電子キーがIDコードを車両に自動返信して、ID照合を実行させるキー操作フリーシステムがある。キー操作フリーシステムは、車外でID照合が成立するとドアロック施解錠が許可又は実行され、車内でID照合が実行するとエンジン始動操作が許可される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−262915号公報
【特許文献2】特開2001−342758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような電子キーシステムでは、ユーザの意志によらないところでID照合成立を謀る不正行為として、中継器を使った不正行為(中継器使用不正行為:特許文献2等参照)というものがある。中継器使用不正行為は、例えば電子キーが車両から遠い場所に位置する際に、この電子キーを複数の中継器によって車両と繋いで電波を中継し、これら2者間の通信を成立させる行為である。よって、ユーザが気付かないところでID照合が成立されてしまうので、盗難行為者によって勝手にドア解錠やエンジンが始動されてしまう問題があった。
【0005】
中継器使用不正行為の対策としては、例えば送信強度を変化させて通信を2回繰り返して行う方法が考えられる。これは、不正通信では電波強度が同じとなるため、返信が同じ電波強度で帰ってきた場合は、このときの通信を不正通信とみなせるからである。しかし、この場合は、同じ通信を2回実行しなくてはならず、不正通信を見抜くことができる利点がある反面、通信時間が長くなってしまう問題があった。
【0006】
本発明の目的は、不正通信を監視することができるとともに、通信時間も短く済ますことができる通信不正成立防止システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記問題点を解決するために、本発明では、通信マスタ及びその通信端末が、双方向通信によって通信を実行する通信不正成立防止システムにおいて、前記双方向通信の1通信の中で、前記通信端末側において受信強度を測定するための受信信号強度測定信号を、送信強度を切り換えて複数回送信させる強度測定信号送信手段と、複数の前記受信信号強度測定信号の受信信号強度を前記通信端末側において測定する受信強度測定手段と、前記1通信の中で前記通信端末が前記通信マスタに応答を返す際、測定した複数の受信信号強度測定データを前記通信マスタに送信する受信信号強度送信手段と、前記通信端末から受信した複数の前記受信信号強度測定データを基に、実行中の通信が正規通信か否かを確認する確認手段とを備えたことを要旨とする。
【0008】
本発明の構成によれば、双方向通信の1通信の中で、通信マスタから受信信号強度測定信号を可変させて複数回送信し、これら受信信号強度測定信号を通信端末が受信したときの受信信号強度を通信端末において測定させる。そして、測定した受信信号強度測定データを通信端末から通信マスタに送信し、実行中の通信の正規/判定を通信マスタにおいて実行する。よって、実行中の通信の正規/不正の判定を、1回の通信の中で実行することが可能となるので、実行中の通信が不正通信か否かを確認するようにしても、通信時間を短く抑えることが可能となる。
【0009】
本発明では、前記強度測定信号送信手段は、前記通信端末に対する指令であるコマンドと前記受信信号強度測定信号とを1セットにし、当該セットを複数回送信し、前記通信端末は、前記コマンドに従って動作して、前記通信マスタとの双方向通信を実行することを要旨とする。この構成によれば、通信マスタから受信信号強度測定信号を通信端末に送信するとき、受信信号強度送信信号にコマンドを付加して送信することにより、このコマンドによって通信端末の動作を指示する。よって、通信端末に実行させる動作をコマンドにて適宜設定することが可能となるので、通信に自由度を持たせることが可能となる。
【0010】
本発明では、前記受信信号強度測定信号は、受信信号強度の測定誤差を考慮に入れた値に設定されていることを要旨とする。この構成によれば、本来ならば複数の受信信号強度測定データの間に差があるにも拘らず、この差が測定誤差によって消されてしまう状況が生じ難くなる。よって、判定精度を確保することができる。
【0011】
本発明では、前記双方向通信は、前記通信マスタがウェイク信号を前記通信端末に送信して当該通信端末を起動させ、起動後の前記通信端末がアック信号を前記通信端末に送信し、当該アック信号を受信した前記通信マスタがチャレンジレスポンス認証を行うべくチャレンジ信号を前記通信端末に送信し、前記通信端末が前記チャレンジ信号に対する演算結果としてレスポンス信号を前記通信マスタに送信する通信であって、前記強度測定信号送信手段は、前記ウェイク信号に受信信号強度測定信号を付加して当該受信信号強度測定信号を送信し、前記受信信号強度送信手段は、前記レスポンス信号を送信するとき、前記レスポンス信号に前記受信信号強度測定データを付加して当該レスポンス信号を送信することを要旨とする。この構成によれば、ウェイク信号に受信信号強度測定信号を付加して電子キーに送信するので、早めに受信信号強度を算出しておくことが可能となる。また、レスポンス信号に受信信号強度測定データを付加して通信マスタに送信するので、チャレンジレスポンス認証成立時のみ、受信信号強度測定データの差を確認すればよい。よって、受信信号強度測定データの差の確認を、真に必要なときにのみ行うことが可能となる。
【0012】
本発明では、前記受信信号強度測定信号を電波無しで送信させ、当該受信信号強度測定信号に対する前記受信信号強度測定データを確認することにより、通信環境下におけるノイズを測定するノイズ測定手段を備えたことを要旨とする。この構成によれば、通信環境下にノイズが存在していれば、受信信号強度測定信号を電波無しで送信したにも拘らず、受信信号強度測定データはノイズを測定したデータ、つまりデータ有りの信号として送信されるので、通信環境下にノイズが存在するか否かを判定することが可能となる。よって、例えば通信環境下にノイズがある場合には、そのとき実行した通信を無効とするようにすれば、通信の信頼性を確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、不正通信を監視することができるとともに、通信時間も短く済ますことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一実施形態の通信不正成立防止システムの構成図。
【図2】中継器を使用した不正通信の概要を示す説明図。
【図3】通信不正成立防止システムの通信シーケンス。
【図4】正規スマート通信の態様を示す説明図。
【図5】不正スマート通信の態様を示す説明図。
【図6】ノイズ測定対応の通信成立不正防止システムの通信シーケンス。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明を具体化した通信不正成立防止システムの一実施形態を図1〜図6に従って説明する。
図1に示すように、車両1には、車両1からの通信を契機として電子キー2とID(Identification)照合を行うキー操作フリーシステム3が設けられている。キー操作フリーシステム3には、実際のキー操作を行うことなくドア開閉の一連の操作過程の中でドアロックが自動で施解錠される乗降車機能と、車内に設置されたエンジンスイッチ4を単に押し操作するのみでエンジンを始動停止することが可能なエンジン始動停止機能とがある。なお、電子キー2が通信端末に相当する。
【0016】
この場合、車両1には、電子キー2との間でID照合を実行するキー照合装置5と、ドアロック動作を管理するドアロック装置6と、エンジンの動作を管理するエンジン始動装置7とが設けられ、これらが車内バス8によって接続されている。キー照合装置5には、キー照合装置5のコントロールユニットとして照合ECU(Electronic Control Unit)9が設けられている。照合ECU9のメモリ(図示略)には、車両1と組をなす電子キー2のIDコードが登録されている。照合ECU9には、車外数mの範囲にLF(Low Frequency)帯の電波を送信可能な車外発信機10と、車内全域にLF帯の電波を送信可能な車内発信機11と、UHF帯の電波を受信可能な車両受信機12とが接続されている。車外発信機10及び車内発信機11は、電子キー2にID返信要求としてリクエスト信号Srqを断続的に送信して、スマート通信(双方向通信)を実行する。なお、キー照合装置5が通信マスタに相当する。
【0017】
電子キー2には、電子キー2の動作を管理するキー制御部13が設けられている。キー制御部13のメモリ(図示略)には、電子キー2のIDコードが登録されている。キー制御部13には、LF電波を受信可能なLF受信機14と、UHF電波を送信可能なUHF送信機15とが接続されている。
【0018】
電子キー2が車外に位置するとき、車外発信機10は、ID返信要求としてリクエスト信号Srqを断続的に車外に送信して、車外スマート通信を実行する。電子キー2が車外通信エリアに進入してリクエスト信号Srqを受信すると、リクエスト信号Srqによって起動し、ID信号SidをUHF電波によって送信する。照合ECU9は、ID信号Sidを車両受信機12で受信すると、自身に登録したIDコードによりID照合(スマート照合)として車外照合を行い、車外照合が成立すると、ドアロック装置6によるドアロック施解錠を許可又は実行する。
【0019】
ユーザの乗車が例えば車両1のカーテシスイッチ(図示略)により検出されると、車外発信機10に代えて、今度は車内発信機11からリクエスト信号Srqの送信が開始される。そして、車内の電子キー2と車両1との間でID照合(スマート照合)として車内照合を行い、車内照合が成立すると、プッシュモーメンタリ式のエンジンスイッチ4によるエンジンの始動操作が許可される。
【0020】
また、車両1と電子キー2とのスマート照合には、認証のセキュリティ性を確保するためにチャレンジレスポンス認証が含まれている。チャレンジレスポンス認証では、車両1から乱数としてチャレンジ信号Schを電子キー2に送信して、電子キー2にチャレンジ信号Schを演算させる。そして、このレスポンス信号Srsを電子キー2から車両1に送信し、車両1が自ら演算したレスポンス信号Srsと一致するか否か確認する。照合ECU9は、IDコード照合及びレスポンス認証の両方が成立すること確認すると、キー照合を成立として処理する。
【0021】
キー操作フリーシステム3には、図2に示す中継器16を使用したスマート通信の不正成立を防止する通信不正成立防止システム17が設けられている。ここで、中継器16を使用した不正通信とは、電子キー2を所持したユーザが車両1から遠く離れている際に、盗難行為を試みる第三者が中継器16を使用して電波を中継して、スマート照合を不正に成立させる行為である。本例の通信不正成立防止システム17は、この中継器16を使用した不正なスマート照合成立を防止するためのものである。
【0022】
ところで、この種の中継器16では、データ内容を中継できるものの、電波強度までコピーして中継することができないことが知られている。よって、電子キー2において電波の受信信号強度(RSSI:Received Signal Strength Indication)を確認すれば、実行中のスマート通信が、電子キー2のみを経由した正規通信なのか、或いは中継器16を経由した不正通信なのかが分かるはずである。よって、本例の通信不正成立防止システム17は、電子キー2が受信した電波の受信信号強度を確認することにより、スマート通信が正規通信か否かを確認する。
【0023】
図1に示すように、照合ECU9には、スマート通信の1通信の中で、電子キー2に測定させる受信信号強度測定信号18を可変させて複数回送信する強度測定信号送信部19が設けられている。図3に示すように、強度測定信号送信部19は、待機中の電子キー2を起動させるウェイク信号群20に受信信号強度測定信号18を含ませ、このウェイク信号群20をLF電波にて複数回(図3の例では2回)送信する。本例の場合、1番目に送信されるものを第1ウェイク信号群20aとし、2番目に送信されるものを第2ウェイク信号群20bとする。なお、強度測定信号送信部19が強度測定信号送信手段に相当する。
【0024】
これらウェイク信号群20a,20bには、ウェイクパターンを有するウェイク信号21と、電子キー2にどのように動作すべきかを指令するコマンド22と、前述した受信信号強度測定信号18とが含まれている。受信信号強度測定信号18は、ある一定の電界強度を持っている単なる電波である。本例の受信信号強度測定信号18は、第1ウェイク信号群20aに含まれるものを18aとし、第2ウェイク信号群20bに含まれるものを18bとする。第1受信信号強度測定信号18aと第2受信信号強度測定信号18bとの電波強度差は、測定誤差があっても電波受信できるように、測定誤差よりも大きな値に設定されている。
【0025】
キー制御部13には、受信した受信信号強度測定信号18の受信信号強度を測定する受信信号強度測定部23が設けられている。受信信号強度測定部23は、車両1から受信信号強度測定信号18を受信する度、これら受信信号強度測定信号18の受信信号強度を測定する。なお、受信信号強度測定部23が受信強度測定手段に相当する。
【0026】
キー制御部13には、車両1とのスマート通信を実行する応答動作部24が設けられている。応答動作部24は、車両1からウェイク信号群20を受信したとき、ウェイク信号群20に含まれるコマンド22に従い、車両1への応答動作を実行する。本例の応答動作部24は、ウェイク信号21を2回受信したとき、自身が起動したことを通知するアック信号25を車両1に送信する。なお、応答動作部24が受信信号強度送信手段に相当する。
【0027】
また、応答動作部24は、車両1からチャレンジ信号Schを受信して、これに対してレスポンス信号Srsを返信するとき、レスポンス信号Srsに受信信号強度測定データDsを付加して送信する。例えば、車両1から2つの受信信号強度測定信号18a,18bを受信した場合、第1受信信号強度測定信号18aの測定データである 第1受信信号強度測定データDs1と、第2受信信号強度測定信号18bの測定データである第2受信信号強度測定データDs2とを車両1に送信する。
【0028】
照合ECU9には、電子キー2から送信された受信信号強度測定データDs1,Ds2を基に、実行中のスマート通信が正規通信か否かを確認する通信確認部26が設けられている。通信確認部26は、受信信号強度測定データDs1,Ds2に差があれば、実行中のスマート通信を正規通信として処理する。一方、通信確認部26は、受信信号強度測定データDs1,Ds2に差がなければ、実行中のスマート通信を不正通信として処理する。なお、通信確認部26が確認手段に相当する。
【0029】
次に、本例の通信不正成立防止システム17の動作を、図3〜図6を用いて説明する。なお、ここでは、車外スマート通信を例に挙げることとする。
図3に示すように、強度測定信号送信部19は、まず第1ウェイク信号群20aを車外発信機10からLF電波によって送信する。第1ウェイク信号群20aは、ウェイク信号21と、1番目のコマンド(第1コマンド22a)と、第1受信信号強度測定信号18aとが1セットになっている。第1コマンド22aは、電子キー2にウェイク信号21のアック応答を返信させるのではなく、まずは第1受信信号強度測定信号18aの受信信号強度を電子キー2に測定させる指令である。
【0030】
電子キー2は、第1ウェイク信号群20aを受信すると、第1ウェイク信号群20a内のウェイク信号21によって待機状態から起動状態に切り換わる。そして、応答動作部24は、第1コマンド22aに従って、第1受信信号強度測定信号18aの受信強度測定に移行する。よって、受信信号強度測定部23は、第1受信信号強度測定信号18aの受信信号強度を測定し、その測定データ(第1受信信号強度測定データDs1)を、キー制御部13内のメモリに保持する。
【0031】
このとき、電子キー2は、ウェイク信号21にて起動状態に切り換わっているが、直ぐにアック返信を行わず、次の電波受信に待機する。つまり、応答動作部24は、第1ウェイク信号群20aを受信したとき、ウェイク信号21にて起動しても、第1コマンド22aの命令に従い、直ぐにアック返信を行わずに待機状態に入る。
【0032】
続いて、強度測定信号送信部19は、第1ウェイク信号群20aを送信してから所定時間経過後、今度は第2ウェイク信号群20bを車外発信機10からLF電波によって送信する。第2ウェイク信号群20bは、ウェイク信号21と、2番目のコマンド(第2コマンド22b)と、第2受信信号強度測定信号18bとが1セットになっている。第2コマンド22bは、第2受信信号強度測定信号18bを電子キー2に測定させ、その測定後、電子キー2にアック応答を返信させる指令である。
【0033】
電子キー2は、第2ウェイク信号群20bを受信すると、第2ウェイク信号群20b内のウェイク信号21、つまりウェイクパターンを確認する。そして、応答動作部24は、ウェイクパターンが正しければ、第2コマンド22bに従って、第2受信信号強度測定信号18bの受信強度測定に移行する。よって、受信信号強度測定部23は、第2受信信号強度測定信号18bの受信信号強度を測定し、その測定データ(第2受信信号強度測定データDs2)を、キー制御部13内のメモリに保持する。
【0034】
応答動作部24は、第2ウェイク信号群20bを受信すると、電子キー2が起動状態に切り換わったことを車両1に通知するために、アック信号25をUHF電波により送信する。
【0035】
照合ECU9は、第2ウェイク信号群20bを送信してから所定時間内に電子キー2からアック信号25を受信すると、電子キー2とスマート通信が確立したことを確認する。照合ECU9は、スマート通信が確立したことを確認すると、チャレンジ信号(チャレンジコード)Schを車外発信機10からLF電波によって送信する。チャレンジ信号Schは、送信の度に毎回コードが変更される乱数である。
【0036】
電子キー2は、アック返信後、所定時間内にチャレンジ信号Schを受信すると、このチャレンジ信号Schを自身の暗号鍵によって演算することにより、レスポンスコード27を算出する。そして、電子キー2は、レスポンスコードを演算すると、チャレンジ信号Schの応答としてレスポンス信号Srsを車両1に返信する。レスポンス信号Srsには、レスポンスコード27、第1受信信号強度測定データDs1、第2受信信号強度測定データDs2が含まれている。
【0037】
照合ECU9は、チャレンジ信号Schを電子キー2に送信したとき、自身も自らの暗号鍵にチャレンジコードを通してレスポンスコードを演算している。よって、照合ECU9は、車両受信機12でレスポンス信号Srsを受信したとき、レスポンス信号Srs内のレスポンスコード27を確認する。照合ECU9は、両方のレスポンスコードが一致することを確認すると、チャレンジレスポンス認証が成立したことを認識する。
【0038】
通信確認部26は、チャレンジレスポンス認証が成立したことを確認すると、第1受信信号強度測定データDs1と第2受信信号強度測定データDs2とに差が存在するか否かを確認する。ここで、図4に示すように、実行中のスマート通信が正規通信であるならば、これら受信信号強度測定データDs1,Ds2には、差が発生している。よって、通信確認部26は、受信信号強度測定データDs1,Ds2に差があることを確認すると、実行中のスマート通信が正規通信として処理される。
【0039】
一方、図5に示すように、実行中のスマート通信が不正通信であるならば、中継器16は受信信号強度まではコピーできない現状があるため、受信信号強度測定データDs1,Ds2に差が発生しない。よって、通信確認部26は、受信信号強度測定データDs1,Ds2に差がないことを確認すると、実行中のスマート通信を不成立として処理する。従って、第三者等が中継器16を使用してスマート照合を成立させようとしても、この通信は不正通信として処理される。
【0040】
また、通信不正成立防止システム17は、スマート通信の通信環境下におけるノイズを測定して、スマート通信に反映させることも可能である。この場合、照合ECU9には、受信信号強度測定信号18として電波無し(送信強度「0」)の信号を送信して、通信環境下におけるノイズを測定するノイズ測定部28が設けられている。ノイズ測定部28は、送信強度「0」の受信信号強度測定信号18に対して電子キー2が返信してきた受信信号強度測定データDsを確認することにより、ノイズを測定する。なお、ノイズ測定部28がノイズ測定手段に相当する。
【0041】
図6に示すように、ノイズ測定部28は、第2ウェイク信号群20bの後に、ノイズ測定用の信号として第3ウェイク信号群20cを車外発信機10からLF電波によって送信する。第3ウェイク信号群20cは、ウェイク信号21と、3番目のコマンド(第3コマンド22c)と、電波無し(送信強度「0」)の第3受信信号強度測定信号18cとが1セットとなっている。第3コマンド22cは、ノイズ測定用コマンドであって、第3受信信号強度測定信号18cを電子キー2に測定させ、その測定後、第2コマンド22bに代わりアック応答を電子キー2に返信させる指令である。
【0042】
電子キー2は、第3ウェイク信号群20cを受信すると、第3ウェイク信号群20c内のウェイク信号21、つまりウェイクパターンを確認する。そして、応答動作部24は、ウェイクパターンが正しければ、第3コマンド22cに従って、第3受信信号強度測定信号18cの受信信号強度を測定する。そして、受信信号強度測定部23は、その測定データ(第2受信信号強度測定データDs3)を、キー制御部13内のメモリに保持する。
【0043】
電子キー2は、チャレンジ信号Schの受信後、レスポンス信号Srsを返信する。このレスポンス信号Srsには、レスポンスコード27、第1受信信号強度測定データDs1、第2受信信号強度測定データDs2及び第3受信信号強度測定データDs3が含まれている。
【0044】
通信確認部26は、チャレンジレスポンス認証の成立を条件として第3受信信号強度測定データDs3を確認することにより、通信環境下におけるノイズを測定する。このとき、通信環境下にノイズがなければ、第3受信信号強度測定データDs3は「0」、又はその近似値をとる。よって、ノイズ測定部28は、第3受信信号強度測定データDs3が「0」に即した値をとることを確認すると、通信環境下にノイズはないと認識する。このため、照合ECU9は、実行中のスマート通信を有効とする。
【0045】
一方、通信環境下にノイズがあれば、第3受信信号強度測定データDs3は、ノイズに即した値をとる。よって、ノイズ測定部28は、第3受信信号強度測定データDs3が所定値以上の値をとることを確認すると、通信環境下にノイズがあると認識する。このため、照合ECU9は、実行中のスマート通信がノイズにより影響を受けた通信の可能性があるとして、実行中のスマート通信を無効とし、スマート通信を再実行する。
【0046】
以上により、本例においては、スマート通信の1通信の中で受信信号強度測定信号18を異なる電波強度で複数送信し、これら受信信号強度測定信号18の受信信号強度を電子キー2にて測定する。そして、電子キー2がレスポンス信号Srsを車両1に送信するとき、受信信号強度測定データDs1,Ds2を車両1に送信して、これら受信信号強度測定データDs1,Ds2の差を基に、実行中のスマート通信が正規通信か否かを確認する。よって、1回のスマート通信で通信が正規通信又は不正通信のどちらかを判定することが可能となるので、短い通信時間で通信の不正判定を行うことが可能となる。
【0047】
また、車両1から電子キー2にウェイク信号21を送信するとき、ノイズ測定用の第3コマンド22cと、電波無しの第3受信信号強度測定信号18cとを電子キー2に送信して、通信環境下にノイズが発生しているか否かを確認することも可能である。よって、通信環境下にノイズがあるときは、実行中のスマート通信を無効化することが可能となるので、スマート通信の信頼性を確保することが可能となる。
【0048】
本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)スマート通信の1通信の中で、車両1から受信信号強度測定信号18を可変させて複数回送信し、これら受信信号強度測定信号18の受信信号強度を電子キー2で測定する。そして、この測定結果である受信信号強度測定データDs1,Ds2を電子キー2から車両1に送信して、実行中のスマート通信の正規/不正を判定する。よって、スマート通信の正規/不正の判定を行う場合であっても、通信時間を短く抑えることができる。
【0049】
(2)車両1から受信信号強度測定信号18を電子キー2に送信するとき、受信信号強度測定信号18にコマンド22を付加して送信することにより、コマンド22によって電子キー2に動作を指示する。よって、電子キー2に実行させる動作をコマンド22にて適宜設定することが可能となるので、通信に自由度を持たせることができる。このため、例えば状況に応じてウェイク信号群20の個数を変更するなど、通信の態様を自由に変更することができる。
【0050】
(3)第1受信信号強度測定信号18aと第2受信信号強度測定信号18bとの電波強度差を、通信の測定誤差よりも大きな値に設定した。よって、例えば本来ならば受信信号強度測定データDs1,Ds2の間に差があるにも拘らず、この差が測定誤差にて消される状況が生じない。従って、判定精度を確保することができる。
【0051】
(4)ウェイク信号21に受信信号強度測定信号18を付加して、受信信号強度を電子キー2に測定させるので、スマート通信で最初に送信する信号によって、早めに受信信号強度を算出しておくことができる。また、レスポンス信号Srsに受信信号強度測定データDs1,Ds2を付加して車両1に送信するので、チャレンジレスポンス認証成立時のみ、受信信号強度測定データDs1,Ds2を確認すればよい。よって、受信信号強度測定データDs1,Ds2の差の確認を、真に必要なときにのみ行うことができる。
【0052】
(5)車両1からノイズ測定用の第3コマンド22cと電波無しの第3受信信号強度測定信号18cとを電子キー2に送信して、通信環境下にノイズが発生しているか否かを確認する。よって、ノイズ有無をスマート通信に反映することが可能となるので、スマート通信の信頼性を向上することができる。
【0053】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・スマート通信の正規/不正の判定は、受信信号強度測定データDs1,Ds2に差があるかどうかを確認する方式に限定されない。例えば、受信信号測定強度データDs1,Ds2の比が、受信信号強度測定信号18a,18bの比と一致するか否かを確認する方式としてもよい。
【0054】
・受信信号強度測定信号18は、ウェイク信号21に付加されることに限定されず、例えばチャレンジ信号Schを2回送信するようにして、これらに付加してもよい。
・受信信号強度測定信号18を可変して複数回送信する場合、例えば1番目をウェイク信号21に付加し、2番目をチャレンジ信号Schに付加してもよい。
【0055】
・受信信号強度測定信号18の送信回数は、2回に限定されず、3回以上でもよい。
・受信信号強度測定データDsは、レスポンス信号Srsに付加されることに限定されず、例えばアック信号25に付加してもよい。
【0056】
・通信マスタは、キー照合装置5に限定されず、他のものに変更してもよい。また、通信端末は、電子キー2に限定されず、例えばICカード等の種々の端末が使用可能である。
【0057】
・双方向通信は、スマート通信に限定されず、他の通信を用いてもよい。
・双方向通信で使用する周波数は、LFやUHFに限定されず、例えばHF(High Frequency)等の他の周波数を採用してもよい。
【0058】
・双方向通信は、例えばNFC(Near Field Communication)等を用いてもよい。
・双方向通信の通信距離は、数mに限定されず、適宜変更可能である。
・双方向通信時に行う認証は、チャレンジレスポンス認証に限定されず、例えば単にIDコードのみを車両1に送信する認証を採用してもよい。
【0059】
・電子キーシステムは、キー操作フリーシステム3に限定されず、例えば電子キー2側からの通信を契機としてID照合を行うワイヤレスキーシステムとしてもよい。
・通信不正成立防止システム17は、車外スマート通信にのみ適用されることに限らず、車内スマート通信にも適用可能である。
【0060】
・本例の通信不正成立防止システム17は、車両1に適用されることに限定されず、他の機器や装置に応用可能である。
【符号の説明】
【0061】
2…通信端末としての電子キー、5…通信マスタとしてのキー照合装置、17…通信不正成立防止システム、18(18a〜18c)…受信信号強度測定信号、19…強度測定信号送信手段としての強度測定信号送信部、21…ウェイク信号、22(22a〜22c)…コマンド、23…受信強度測定手段としての受信信号強度測定部、24…受信信号強度送信手段としての応答動作部、25…アック信号、26…確認手段としての通信確認部、28…ノイズ測定手段としてのノイズ測定部、Ds(Ds1〜Ds3)…受信信号強度測定データ、Sch…チャレンジ信号、Srs…レスポンス信号。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信マスタ及びその通信端末が、双方向通信によって通信を実行する通信不正成立防止システムにおいて、
前記双方向通信の1通信の中で、前記通信端末側において受信強度を測定するための受信信号強度測定信号を、送信強度を切り換えて複数回送信させる強度測定信号送信手段と、
複数の前記受信信号強度測定信号の受信信号強度を前記通信端末側において測定する受信強度測定手段と、
前記1通信の中で前記通信端末が前記通信マスタに応答を返す際、測定した複数の受信信号強度測定データを前記通信マスタに送信する受信信号強度送信手段と、
前記通信端末から受信した複数の前記受信信号強度測定データを基に、実行中の通信が正規通信か否かを確認する確認手段と
を備えたことを特徴とする通信不正成立防止システム。
【請求項2】
前記強度測定信号送信手段は、前記通信端末に対する指令であるコマンドと前記受信信号強度測定信号とを1セットにし、当該セットを複数回送信し、
前記通信端末は、前記コマンドに従って動作して、前記通信マスタとの双方向通信を実行する
ことを特徴とする請求項1に記載の通信不正成立防止システム。
【請求項3】
前記受信信号強度測定信号は、受信信号強度の測定誤差を考慮に入れた値に設定されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の通信不正成立防止システム。
【請求項4】
前記双方向通信は、前記通信マスタがウェイク信号を前記通信端末に送信して当該通信端末を起動させ、起動後の前記通信端末がアック信号を前記通信端末に送信し、当該アック信号を受信した前記通信マスタがチャレンジレスポンス認証を行うべくチャレンジ信号を前記通信端末に送信し、前記通信端末が前記チャレンジ信号に対する演算結果としてレスポンス信号を前記通信マスタに送信する通信であって、
前記強度測定信号送信手段は、前記ウェイク信号に受信信号強度測定信号を付加して当該受信信号強度測定信号を送信し、
前記受信信号強度送信手段は、前記レスポンス信号を送信するとき、前記レスポンス信号に前記受信信号強度測定データを付加して当該レスポンス信号を送信する
ことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一項に記載の通信不正成立防止システム。
【請求項5】
前記受信信号強度測定信号を電波無しで送信させ、当該受信信号強度測定信号に対する前記受信信号強度測定データを確認することにより、通信環境下におけるノイズを測定するノイズ測定手段を備えた
ことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一項に記載の通信不正成立防止システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−123527(P2012−123527A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272606(P2010−272606)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】