説明

通信制御装置、通信装置及びプログラム

【課題】画像データを送信する通信装置の負荷の状況を反映させて、画像データに付加される既送データのデータ量を制御する。
【解決手段】負荷状況取得部51は、第1のネットワークファクシミリ装置10が第2のネットワークファクシミリ装置へ画像データを送信するときの第1のネットワークファクシミリ装置10の負荷の状況を取得する。一方、受信部53は、第2のネットワークファクシミリ装置における画像データの受信の成否についての結果を第2のネットワークファクシミリ装置から受信する。そして、付加個数制御部54は、送信される画像データのUDPパケットに付加される冗長パケット数を、受信部53により受信された結果と、その画像データを第1のネットワークファクシミリ装置10が送信したときの負荷状況取得部51により取得された負荷の状況とに基づき制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信制御装置、通信装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コンピュータネットワークに接続され、パケット通信によってファクシミリ画像を送信するリアルタイム型インターネットファクシミリ装置において、ネットワークトランスポートとしてUDPを使用するときに送信する冗長パケット数を、通信中に任意に変更できるようにしたことを特徴とするリアルタイム型インターネットファクシミリ装置が記載されている。
【0003】
特許文献2には、送信機がリアルタイム型インターネットファクシミリであった場合は、RTN/PPRを含むネガティブ応答時にT.30フレーム内にモデムのEQM(アイクオリティモニタ)情報を設定して送信機に通知する制御を行うシステム制御部を備えたことを特徴とするファクシミリ装置が記載されている。
【0004】
特許文献3には、T.38に準拠した通信機能を備えたネットワーク通信端末装置において、通信プロトコルで定められた画像データ間を検出する手段と、前記画像データ間で通信速度を再設定する手段とを備えていることを特徴とするネットワーク通信端末装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−197279号公報
【特許文献2】特開2005−260832号公報
【特許文献3】特開2008−227978号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、画像データを送信する通信装置の負荷の状況を反映させて、画像データに付加される既送データのデータ量を制御することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、通信装置が他の通信装置へ画像データを送信するときの当該通信装置の負荷の状況を取得する負荷状況取得手段と、前記他の通信装置における前記画像データの受信の成否についての結果を当該他の通信装置から受信する受信手段と、前記通信装置が前記他の通信装置へ既に送信した画像データである既送データのうちで、送信される前記画像データに付加される既送データのデータ量を、前記受信手段により受信された前記結果と、前記画像データを当該通信装置が送信したときの前記負荷状況取得手段により取得された前記負荷の状況とに基づき制御する付加量制御手段とを備えたことを特徴とする通信制御装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記付加量制御手段は、前記他の通信装置が受信に失敗した複数の前記画像データのうちで、それぞれの画像データが送信されたときの前記負荷の状況が予め定められた基準に基づき高負荷であると判定された画像データの割合である第1の割合、及び/又は送信された複数の前記画像データの全てのうちで、それぞれの画像データが送信されたときの前記負荷の状況が当該基準に基づき高負荷であると判定された画像データの割合である第2の割合に基づき、付加される前記既送データのデータ量を制御することを特徴とする請求項1記載の通信制御装置である。
請求項3に記載の発明は、前記付加量制御手段は、前記第1の割合が予め定められた第1の基準値以上であり、かつ前記第2の割合が予め定められた第2の基準値未満であるときは、付加される前記既送データのデータ量を変化させないことを特徴とする請求項2に記載の通信制御装置である。
請求項4に記載の発明は、前記付加量制御手段は、前記第1の割合が予め定められた第1の基準値以上であり、かつ前記第2の割合が予め定められた第2の基準値以上であるときは、付加される前記既送データのデータ量を増加させることを特徴とする請求項2に記載の通信制御装置である。
請求項5に記載の発明は、前記付加量制御手段は、前記第1の割合が予め定められた第1の基準値未満であるときは、前記第2の割合に関わらず、付加される前記既送データのデータ量を増加させることを特徴とする請求項2に記載の通信制御装置である。
請求項6に記載の発明は、前記他の通信装置が受信に失敗した前記画像データを前記通信装置が当該他の通信装置へ再送するときに、前記負荷の状況として当該通信装置が前記高負荷であると判定されたならば、当該再送の伝送速度を低下させる制御、及び/又は当該再送を一定時間遅延させる制御を行う送信制御手段を更に設けたことを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の通信制御装置である。
【0009】
請求項7に記載の発明は、画像データを相手装置へ送信する送信手段と、前記送信手段が前記画像データを送信するときの自装置の負荷の状況を取得する負荷状況取得手段と、前記送信手段により送信された前記画像データの、前記相手装置における受信の成否についての結果を、当該相手装置から受信する受信手段と、自装置が前記相手装置へ既に送信した画像データである既送データのうちで、送信される前記画像データに付加される既送データのデータ量を、前記受信手段により受信された前記結果と、前記画像データを自装置が送信したときの前記負荷状況取得手段により取得された前記負荷の状況とに基づき制御する付加量制御手段とを備えたことを特徴とする通信装置である。
【0010】
請求項8に記載の発明は、コンピュータに、通信装置が他の通信装置へ画像データを送信するときの当該通信装置の負荷の状況を取得する機能と、前記他の通信装置における前記画像データの受信の成否についての結果を当該他の通信装置から受信する機能と、前記通信装置が前記他の通信装置へ既に送信した画像データである既送データのうちで、送信される前記画像データに付加される既送データのデータ量を、受信された前記結果と、前記画像データを当該通信装置が送信したときの取得された前記負荷の状況とに基づき制御する機能とを実現させることを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、画像データを送信する通信装置の負荷の状況を反映させて、画像データに付加される既送データのデータ量を制御することができる。
請求項2の発明によれば、他の通信装置における画像データの受信の失敗が送信元である通信装置の負荷の状況に起因すると予想されるか否かを考慮して、画像データに付加される既送データのデータ量を制御することができる。
請求項3の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、他の通信装置における画像データの受信の失敗が送信元である通信装置の負荷の状況に起因しないと予想されるときに、画像データの伝送が非効率的になることを抑えることができる。
請求項4の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、他の通信装置における画像データの受信の失敗が送信元である通信装置の負荷の状況に起因すると予想されるときに、画像データの再送に伴う更なる受信の失敗の発生を抑えることができる。
請求項5の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、他の通信装置における画像データの受信の失敗が送信元である通信装置の負荷の状況に起因すると予想されるときに、画像データの再送に伴う更なる受信の失敗の発生を抑えることができる。
請求項6の発明によれば、本構成を有していない場合に比較して、画像データを再送するときの更なる受信の失敗の発生をより確実に防ぐことができる。
請求項7の発明によれば、画像データを送信する通信装置の負荷の状況を反映させて、画像データに付加される既送データのデータ量を制御することができる。
請求項8の発明によれば、画像データを送信する通信装置の負荷の状況を反映させて、画像データに付加される既送データのデータ量を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態が適用される通信システムの構成例を示した図である。
【図2】本発明の実施の形態における第1のネットワークファクシミリ装置のハードウェア構成の例を示した図である。
【図3】ITU−T勧告T.38において定められているUDPパケットのフォーマットの概略図である。
【図4】本発明の実施の形態における第1のネットワークファクシミリ装置の機能構成例を示したブロック図である。
【図5】本発明の実施の形態における第1のネットワークファクシミリ装置から第2のネットワークファクシミリ装置へ画像データを送信するときの通信シーケンス例の概略を示した図である。
【図6】本発明の実施の形態における付加個数制御部が用いる受信の成否と負荷の状況のテーブルと、それに基づく計算結果の例を示したテーブルである。
【図7】本発明の実施の形態における256個の画像フレームを送信する際の第1のネットワークファクシミリ装置の動作例を示したフローチャートである。
【図8】本発明の実施の形態を実現可能なコンピュータのハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態が適用される通信システムの構成例を示した図である。図示するように、この通信システムでは、第1のネットワークファクシミリ装置10と、第2のネットワークファクシミリ装置20とが、インターネットなどのIP(Internet Protocol)ネットワーク80を介して接続されている。また、G3ファクシミリ装置30がPSTN(Public Switched Telephone Networks;公衆交換電話網)70を介してVoIP(Voice over Internet Protocol)ゲートウェイ40に接続され、更にそのVoIPゲートウェイ40がIPネットワーク80に接続されている。
【0014】
本実施の形態では、第1のネットワークファクシミリ装置10と第2のネットワークファクシミリ装置20との通信には、ITU−T(International Telecommunication Union-Telecommunication sector)の勧告T.38に準拠したプロトコルが適用されるものとする。また、G3ファクシミリ装置30とVoIPゲートウェイ40との通信には、ITU−Tの勧告T.30に準拠したプロトコルが適用される。
第1のネットワークファクシミリ装置10は、通信装置、自装置の一例であり、第2のネットワークファクシミリ装置20は、他の通信装置、相手装置の一例である。本実施の形態では、第1のネットワークファクシミリ装置10を送信側、第2のネットワークファクシミリ装置20を受信側として、ファクシミリ送信が行われる場合を考える。尚、他の通信装置、相手装置はVoIPゲートウェイ40であってもよい。
【0015】
まず、第1のネットワークファクシミリ装置10及び第2のネットワークファクシミリ装置20のハードウェア構成について説明する。
図2は、本発明の実施の形態における第1のネットワークファクシミリ装置10のハードウェア構成の例を示した図である。図示するように、第1のネットワークファクシミリ装置10は、主制御部10aとして、CPU(Central Processing Unit)11と、RAM(Random Access Memory)12と、ROM(Read Only Memory)13と、画像データ記憶部14と、入出力制御部15と、スキャナ制御部16と、プリンタ制御部17と、インタフェース制御部18とを備える。また、第1のネットワークファクシミリ装置10は、操作パネル15aと、スキャナ16aと、プリンタ17aと、ネットワークインタフェース18aとを備える。
【0016】
CPU11は、ROM13等に記憶された各種プログラムをRAM12にロードして実行することにより、図4を参照して後述する各機能を実現する。
RAM12は、CPU11の作業用メモリ等として用いられるメモリである。
ROM13は、CPU11が実行する各種プログラム等を記憶するメモリである。
画像データ記憶部14は、スキャナ16aが読み取った画像のデータ(画像データ)を記憶するメモリである。
入出力制御部15は、利用者に知らせる情報を操作パネル15aに表示し、また、操作パネル15aを介して利用者の入力操作を受け付ける。
【0017】
スキャナ制御部16は、スキャナ16aによる紙等の記録媒体に記録された画像の読み取りを制御する。ここで、スキャナ16aとしては、光源から原稿に照射した光に対する反射光をレンズで縮小してCCD(Charge Coupled Devices)で受光するCCD方式や、LED光源から原稿に順に照射した光に対する反射光をCIS(Contact Image Sensor)で受光するCIS方式のものを用いるとよい。
プリンタ制御部17は、プリンタ17aによる紙等の記録媒体への画像の形成を制御する。ここで、プリンタ17aとしては、感光体に付着させたトナーを記録媒体に転写して像を形成する電子写真方式や、インクを記録媒体上に吐出して像を形成するインクジェット方式のものを用いるとよい。
【0018】
インタフェース制御部18は、ネットワークインタフェース18aを制御し、IPネットワーク80を介して、スキャナ16aが読み取った画像データを第2のネットワークファクシミリ装置20へ送信したり、第2のネットワークファクシミリ装置20から画像データ等を受信したりする。ここで、ネットワークインタフェース18aは、例えばネットワークインタフェースカード(NIC)により実現される。
尚、図示しないが、第2のネットワークファクシミリ装置20のハードウェア構成についても上記と同様である。
【0019】
ところで、ITU−T勧告T.38においては、データ転送のプロトコルとして、TCP(Transmission Control Protocol)とUDP(User Datagram Protocol)の2つが用意されている。TCPにはエラー訂正機能等があり、信頼性の高い通信が可能となる。一方、UDPでは通信中にパケットが紛失することがあるが、TCPと比べて単純な形式であるため、信頼性よりも伝送速度が重視される画像データ等の伝送に適している。ITU−T勧告T.38では、UDPを使用する場合に起こる通信エラーを回復するために、冗長メッセージを使用することが規定されている。
【0020】
ここで、ITU−T勧告T.38において定められているUDPパケットのフォーマットについて説明する。
図3は、ITU−T勧告T.38において定められているUDPパケットのフォーマットの概略図である。図示するように、UDPパケット100は、ヘッダ101と、主要パケット102と、n個の冗長パケット103(103_1〜103_n)とから構成される。主要パケット102がプライマリメッセージに、冗長パケット103が冗長メッセージ(セカンダリメッセージ)にそれぞれ相当する。
【0021】
ヘッダ101にはシーケンス番号が含まれており、主要パケット102はそのシーケンス番号に対応するデータである。冗長パケット103は、主要パケット102として既に送信されたものであり、その個数は設定に応じて決められる。例えば、シーケンス番号が10であり冗長パケット数が3個のUDPパケット100には、シーケンス番号が9、8、7のときの主要パケット102と同じデータが冗長パケット103(103_1〜103_3)として付加される。1つのUDPパケット100が通信中に紛失したとしても、その中に含まれていた主要パケット102のデータは、後続するUDPパケット100の冗長パケット103により補われる。
【0022】
UDPパケット100の受信の失敗(エラー)があったときは、その後の通信の信頼性を向上させるために、付加される冗長パケット103の個数(以下、冗長パケット数と言う)を増加させることが考えられる。しかしながら、冗長パケット数の増加は、エラーの原因が回線側(IPネットワーク80側)にあるときは有効であるが、エラーの原因が送信装置側にあるときは効果がない。従って、エラーの原因が送信装置側にあるときに冗長パケット数を増加させると、伝送効率を低下させることになる。
【0023】
そこで本実施の形態では、通信制御装置50が、第2のネットワークファクシミリ装置20における画像データの受信の失敗が送信側の第1のネットワークファクシミリ装置10に起因するか否かを判定し、その判定結果に応じて、送信される画像データのUDPパケット100に付加される冗長パケット数(既送データのデータ量の一例)を制御する。そして、その通信制御装置50を、第1のネットワークファクシミリ装置10に設けている。
【0024】
以下では、本実施の形態における第1のネットワークファクシミリ装置10及び通信制御装置50の機能構成について詳細に説明する。
図4は、第1のネットワークファクシミリ装置10の機能構成例を示したブロック図である。通信制御装置50は、CPU11がROM13等に記憶されたプログラムをRAM12に読み込んで実行することにより、第1のネットワークファクシミリ装置10内に仮想的に実現される。尚、図4では、通信制御装置50は第1のネットワークファクシミリ装置10に内蔵されているが、通信制御装置50は第1のネットワークファクシミリ装置10とは独立した装置であってもよい。
【0025】
まず、第1のネットワークファクシミリ装置10の機能構成について説明する。図示するように、第1のネットワークファクシミリ装置10は、通信制御装置50と、送信データ生成部60と、送信部61とを備えている。
通信制御装置50は、第2のネットワークファクシミリ装置20における画像データの受信の失敗が送信側の第1のネットワークファクシミリ装置10に起因するか否かを判定し、その判定結果に応じて、送信される画像データのUDPパケット100に付加される冗長パケット数を制御する。
送信データ生成部60は、通信制御装置50の制御により設定された個数の冗長パケット103をUDPパケット100に付加し、第1のネットワークファクシミリ装置10が送信する画像データのUDPパケット100を生成する。
送信部61は、インタフェース制御部18及びネットワークインタフェース18aを介して、画像データ、設定情報等を第2のネットワークファクシミリ装置20へ送信する。本実施の形態では、送信手段の一例として、送信部61を設けている。
【0026】
次に、通信制御装置50の機能構成について説明する。
図示するように、本実施の形態における通信制御装置50は、負荷状況取得部51と、記憶部52と、受信部53と、付加個数制御部54と、送信制御部55とを備える。これらのうち、記憶部52は、RAM12により実現される。また、負荷状況取得部51、受信部53、付加個数制御部54、送信制御部55の各機能は、CPU11がROM13等に記憶されたプログラムをRAM12に読み込んで実行することにより、実現される。
【0027】
負荷状況取得部51は、第1のネットワークファクシミリ装置10が第2のネットワークファクシミリ装置20へ画像データを送信するときの第1のネットワークファクシミリ装置10の負荷の状況を取得する。負荷の状況としては、例えば、送信処理を行うときの送信待ちのパケット数、送信処理に要した時間の長さ等が挙げられる。本実施の形態では、負荷状況取得手段の一例として、負荷状況取得部51を設けている。
記憶部52は、負荷状況取得部51が取得した負荷の状況を記憶する。
【0028】
受信部53は、第2のネットワークファクシミリ装置20における画像データの受信の成否についての結果を第2のネットワークファクシミリ装置20から受信する。本実施の形態では、受信手段の一例として、受信部53を設けている。
付加個数制御部54は、送信される画像データのUDPパケット100に付加される冗長パケット数を、受信部53により受信された結果と、その画像データを第1のネットワークファクシミリ装置10が送信したときの負荷状況取得部51により取得された負荷の状況とに基づき制御する。この制御の具体的な内容については後述する。本実施の形態では、付加量制御手段の一例として、付加個数制御部54を設けている。
【0029】
送信制御部55は、第2のネットワークファクシミリ装置20が受信に失敗した画像データを第1のネットワークファクシミリ装置10へ再送するときに、負荷状況取得部51が取得した第1のネットワークファクシミリ装置10の負荷の状態に基づき、その再送の伝送速度を低下させる制御、及びその再送を一定時間遅延させる制御を行う。この制御についても後述する。本実施の形態では、送信制御手段の一例として送信制御部55を設けている。
【0030】
以下では、本実施の形態における第1のネットワークファクシミリ装置10及び通信制御装置50の動作について、詳細に説明する。
本実施の形態では、第1のネットワークファクシミリ装置10は、画像データをECM(Error Correction Mode)により送信する。ECMでは、画像データを予め定められた長さのフレームに分割して送信し、通信のエラーが発生した場合はそのフレームについて再送を行う。ここでは、64Kバイトの画像データを256フレームに分割する(1フレームのデータ量は256バイトとなる)ものとして説明を行う。
【0031】
図5は、第1のネットワークファクシミリ装置10から第2のネットワークファクシミリ装置20へ画像データを送信するときの通信シーケンス例の概略を示した図である。
まず、第1のネットワークファクシミリ装置10は第2のネットワークファクシミリ装置20へ伝送速度の情報を送信し、両者の装置が利用可能な伝送速度を決めるためのトレーニング処理を行う(P11)。そして、送信データ生成部60により生成された画像フレーム0〜255を、送信部61が決められた伝送速度で送信する(P12_0〜P12_255)。画像フレームには、画像データが上述したUDPパケット100の形式で、主要パケット102及び冗長パケット103として含まれている。主要パケット102のシーケンス番号はフレームの番号と対応し、冗長パケット103は設定された個数のものが含まれている。
【0032】
また、第1のネットワークファクシミリ装置10では、それぞれの画像フレームを送信する際に、負荷状況取得部51が第1のネットワークファクシミリ装置10の負荷の状況として、その画像フレームを送信するときの送信待ちのパケット数と、その画像フレームの送信処理に要した時間の長さを取得し、画像フレームの番号に対応付けて記憶部52に記憶する(P13_0〜P13_255)。一方、第2のネットワークファクシミリ装置20では、送信された画像フレームを受信し、受信の失敗があった画像フレームのフレーム番号を記憶する。
【0033】
画像フレームの送信が終わると、第1のネットワークファクシミリ装置10は、第2のネットワークファクシミリ装置20へポストメッセージ命令を送信する(P14)。このポストメッセージ命令には、送信された画像フレームの個数についての情報が含まれている。これに対し、第2のネットワークファクシミリ装置20は、第1のネットワークファクシミリ装置10へポストメッセージ応答を返信する(P15)。このポストメッセージ応答には、受信の失敗があった画像フレームのフレーム番号についての情報が含まれている。受信部53がポストメッセージ応答を受信することにより、通信制御装置50は、第2のネットワークファクシミリ装置20における各画像フレームの受信の成否を把握する。
【0034】
ここで、付加個数制御部54が、後述する冗長パケット数を制御する処理を行う(P16)。次に、第2のネットワークファクシミリ装置20が受信に失敗した画像フレームがある場合は、その番号の画像フレームについての再送が行われる。その際は、負荷状況取得部51が新たに第1のネットワークファクシミリ装置10の負荷の状況を取得する。そして送信制御部55が、図6(A)を参照して後述する基準に基づき自装置を高負荷であると判定した場合は、その再送の伝送速度を低下させる制御、及びその再送を一定時間遅延させる制御を行う(P17)。この送信制御部55による制御を受けて、送信部61が再送を行う(P18)。
【0035】
尚、再送される画像フレームは、送信データ生成部60により、新たに設定された個数の冗長パケット103が付加されたUDPパケット100を含むように生成される。また、第2のネットワークファクシミリ装置20において更に受信の失敗があった場合は、この再送は予め定められた回数以内で繰り返される。
まだ送信すべき画像データが残っていれば、P12_0に戻って新たな画像フレームの送信が行われる。一方、すべての画像データが送信されていれば、画像データの送信処理は終了する。
【0036】
次に、付加個数制御部54が行う冗長パケット数の制御について説明する。
図6は、付加個数制御部54が用いる受信の成否と負荷の状況のテーブルと、それに基づく計算結果の例を示したテーブルである。
【0037】
まず、図6(A)は、第1のネットワークファクシミリ装置10から第2のネットワークファクシミリ装置20へ送信された256個の画像フレームの番号と、各番号の画像フレームについての第2のネットワークファクシミリ装置20における受信の成否と、各番号の画像フレームが送信されたときの第1のネットワークファクシミリ装置10の負荷の状況とを示したテーブルである。
上記の通り、各番号の画像フレームについての第2のネットワークファクシミリ装置20における受信の成否は、受信部53が受信する。また、各番号の画像フレームが送信されたときの第1のネットワークファクシミリ装置10の負荷の状況は、記憶部52に記憶されている。そこで、付加個数制御部54が、フレーム番号と、受信の成否と、負荷の状況とを図6(A)のテーブルのように対応付けて、記憶部52に記憶する。
【0038】
図6(A)における受信の成否の「OK」と「NG」は、それぞれ受信の成功と失敗に対応している。
また、本実施の形態では、負荷の状況として、「高」と「低」の2段階を用いている。これは、例えば、各画像フレームが送信されるときに負荷状況取得部51が取得した送信待ちのパケット数及び送信処理に要した時間と、予め定められた基準値との大小関係により判定される。付加個数制御部54は、第1のネットワークファクシミリ装置10の負荷の状況として、例えば、送信待ちのパケット数及び送信処理に要した時間の両方が基準値よりも大きい場合に「高」であり、その他の場合に「低」であると判定する。
尚、この判定は、負荷状況取得部51が送信待ちのパケット数及び送信処理に要した時間を取得するときに、負荷状況取得部51が行ってもよい。
【0039】
そして、付加個数制御部54は、記憶部52に記憶されている図6(A)のテーブルを用いて、次の個数と割合を計算する。
(ア)256個の全画像フレームの中で、第2のネットワークファクシミリ装置20が受信に失敗したものの個数(図6(A)の中で「NG」と表示されているものの個数)
(イ)受信の失敗があった画像フレームの中で、対応する負荷の状況が「高」であるものの個数とその割合(以下、第1の割合と呼ぶ。)
(ウ)受信の失敗があった画像フレームの中で、対応する負荷の状況が「低」であるものの個数とその割合
(エ)256個の全画像フレームの中で、対応する負荷の状況が「高」であるものの個数とその割合(以下、第2の割合と呼ぶ。)
(オ)256個の全画像フレームの中で、対応する負荷の状況が「低」であるものの個数とその割合
【0040】
図6(B)は、図6(A)のテーブルに基づき上記の(ア)から(オ)の計算を行った結果の例を示したテーブルである。例えば、上記の(イ)から(オ)の割合は、それぞれ60%、40%、63%、38%となっている。これらの割合が、以下で説明する冗長パケット数の制御に用いられる。
【0041】
次に、上記の(イ)から(オ)の割合に基づき、付加個数制御部54が行う冗長パケット数の具体的な制御について説明する。
(ケース1)第1の割合が予め定められた第1の基準値未満である場合
この場合は、自装置である第1のネットワークファクシミリ装置10の負荷が高くないにもかかわらず画像フレームの受信の失敗(エラー)が起こっていることになる。従って、付加個数制御部54は、この場合のエラーは自装置側ではなく回線側(IPネットワーク80側)に起因すると判定し、冗長パケット数を増やす処理を行う。
【0042】
(ケース2)第1の割合が予め定められた第1の基準値以上であり、かつ、第2の割合が予め定められた第2の基準値以上である場合
この場合は、エラーが起こったときの高負荷の割合も全画像フレームについての高負荷の割合も同じように高いため、これらの情報からはエラーが自装置に起因するとは認められない。従って、付加個数制御部54は、この場合のエラーは回線側(IPネットワーク80側)に起因すると判定し、ケース1と同様に、冗長パケット数を増やす処理を行う。
【0043】
(ケース3)第1の割合が予め定められた第1の基準値以上であり、かつ、第2の割合が予め定められた第2の基準値未満である場合
この場合は、256個の画像フレームが送信されたときに全体的に第1のネットワークファクシミリ装置10は高負荷の状況でなかったにもかかわらず、高負荷のときに送信された画像フレームについて、基準値以上の割合でエラーが起こっている。このことから、エラーの原因は、第1のネットワークファクシミリ装置10にかかった負荷により、画像フレームが適切な時間間隔で送信されなかったことにあると推測される。従って、付加個数制御部54は、この場合のエラーは自装置に起因すると判定し、冗長パケット数は不変とする。
【0044】
尚、冗長パケット数は増やしすぎても伝送効率の低下を招くため、個数の上限を例えば4個程度に設定し、それを超えない範囲で増加を行うようにするとよい。また、例えば、「NG」である画像フレームの割合が予め定められた基準値以下である(つまり、エラーがほとんど起こらない)場合は、付加個数制御部54は冗長パケット数を減らす処理を行ってもよい。
また、第1の基準値(例えば80%)及び第2の基準値(例えば80%)は、ユーザが操作パネル15aを介して設定するようにしてもよい。
【0045】
図7は、256個の画像フレームを送信する際の第1のネットワークファクシミリ装置10の動作例を示したフローチャートである。
まず、第1のネットワークファクシミリ装置10と第2のネットワークファクシミリ装置20との間で伝送速度の決定がなされる(ステップ11)。そして送信部61が1つの画像フレームを送信し、それに伴い負荷状況取得部51が自装置の負荷の状況を取得して、記憶する(ステップ12)。まだ送信すべき画像フレームがあればステップ12へ戻り、なければ次のステップへ進む(ステップ13)。
【0046】
256個の画像フレームの送信が終わると、2つのネットワークファクシミリ装置の間でポストメッセージ命令とポストメッセージ応答の送受信がなされる(ステップ14、15)。そして付加個数制御部54が、記憶されている自装置の負荷の状況と受信された成否の結果に基づき、上述した第1の割合と第2の割合を計算する(ステップ16)。この第1の割合が第1の基準値未満である場合(ステップ17でYes)、つまりケース1の場合か、または第1の割合が第1の基準値以上であってかつ第2の割合が第2の基準値以上である場合(ステップ18でYes)、つまりケース2の場合は、付加個数制御部54が冗長パケット数を増加させる(ステップ19)。一方、第1の割合が第1の基準値以上であってかつ第2の割合が第2の基準値未満の場合(ステップ18でNo)、つまりケース3の場合は、付加個数制御部54は冗長パケット数を不変とする。
【0047】
ここで、再送すべき画像フレームがない場合は処理を終了し、ある場合は以下の通り再送処理が行われる(ステップ20)。まず、ステップ13と同様に負荷状況取得部51が自装置の負荷の状況を取得し、自装置が高負荷の状態であるか否かに基づき、送信制御部55が、その再送の伝送速度を低下させる制御、及びその再送を一定時間遅延させる制御を行う(ステップ21)。そして送信部61により再送すべき画像フレームについての再送が行われる(ステップ22)。
以上で、256個の画像フレームを送信する際に、第1のネットワークファクシミリ装置10が行う処理は終了する。
【0048】
ところで、本実施の形態では、通信制御装置50が第1のネットワークファクシミリ装置10内に仮想的に実現されていた。しかしながら、通信制御装置50による処理は、第1のネットワークファクシミリ装置10とは独立した汎用のコンピュータ90で行うようにしてもよい。以下では、そのようなコンピュータ90のハードウェア構成について説明する。
【0049】
図8は、コンピュータ90のハードウェア構成を示した図である。
図示するように、コンピュータ90は、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)91と、記憶手段であるメインメモリ92及び磁気ディスク装置(HDD:Hard Disk Drive)93とを備える。ここで、CPU91は、OS(Operating System)やアプリケーション等の各種ソフトウェアを実行し、上述した各機能を実現する。また、メインメモリ92は、各種ソフトウェアやその実行に用いるデータ等を記憶する記憶領域であり、磁気ディスク装置93は、各種ソフトウェアに対する入力データや各種ソフトウェアからの出力データ等を記憶する記憶領域である。
更に、コンピュータ90は、外部との通信を行うための通信インタフェース94と、ビデオメモリやディスプレイ等からなる表示機構95と、キーボードやマウス等の入力デバイス96とを備える。
【0050】
尚、本実施の形態を実現するプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROM等の記録媒体に格納して提供するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10…第1のネットワークファクシミリ装置、20…第2のネットワークファクシミリ装置、50…通信制御装置、51…負荷状況取得部、52…記憶部、53…受信部、54…付加個数制御部、55…送信制御部、60…送信データ生成部、61…送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置が他の通信装置へ画像データを送信するときの当該通信装置の負荷の状況を取得する負荷状況取得手段と、
前記他の通信装置における前記画像データの受信の成否についての結果を当該他の通信装置から受信する受信手段と、
前記通信装置が前記他の通信装置へ既に送信した画像データである既送データのうちで、送信される前記画像データに付加される既送データのデータ量を、前記受信手段により受信された前記結果と、前記画像データを当該通信装置が送信したときの前記負荷状況取得手段により取得された前記負荷の状況とに基づき制御する付加量制御手段と
を備えたことを特徴とする通信制御装置。
【請求項2】
前記付加量制御手段は、前記他の通信装置が受信に失敗した複数の前記画像データのうちで、それぞれの画像データが送信されたときの前記負荷の状況が予め定められた基準に基づき高負荷であると判定された画像データの割合である第1の割合、及び/又は送信された複数の前記画像データの全てのうちで、それぞれの画像データが送信されたときの前記負荷の状況が当該基準に基づき高負荷であると判定された画像データの割合である第2の割合に基づき、付加される前記既送データのデータ量を制御することを特徴とする請求項1記載の通信制御装置。
【請求項3】
前記付加量制御手段は、前記第1の割合が予め定められた第1の基準値以上であり、かつ前記第2の割合が予め定められた第2の基準値未満であるときは、付加される前記既送データのデータ量を変化させないことを特徴とする請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項4】
前記付加量制御手段は、前記第1の割合が予め定められた第1の基準値以上であり、かつ前記第2の割合が予め定められた第2の基準値以上であるときは、付加される前記既送データのデータ量を増加させることを特徴とする請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項5】
前記付加量制御手段は、前記第1の割合が予め定められた第1の基準値未満であるときは、前記第2の割合に関わらず、付加される前記既送データのデータ量を増加させることを特徴とする請求項2に記載の通信制御装置。
【請求項6】
前記他の通信装置が受信に失敗した前記画像データを前記通信装置が当該他の通信装置へ再送するときに、前記負荷の状況として当該通信装置が前記高負荷であると判定されたならば、当該再送の伝送速度を低下させる制御、及び/又は当該再送を一定時間遅延させる制御を行う送信制御手段を更に設けたことを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の通信制御装置。
【請求項7】
画像データを相手装置へ送信する送信手段と、
前記送信手段が前記画像データを送信するときの自装置の負荷の状況を取得する負荷状況取得手段と、
前記送信手段により送信された前記画像データの、前記相手装置における受信の成否についての結果を、当該相手装置から受信する受信手段と、
自装置が前記相手装置へ既に送信した画像データである既送データのうちで、送信される前記画像データに付加される既送データのデータ量を、前記受信手段により受信された前記結果と、前記画像データを自装置が送信したときの前記負荷状況取得手段により取得された前記負荷の状況とに基づき制御する付加量制御手段と
を備えたことを特徴とする通信装置。
【請求項8】
コンピュータに、
通信装置が他の通信装置へ画像データを送信するときの当該通信装置の負荷の状況を取得する機能と、
前記他の通信装置における前記画像データの受信の成否についての結果を当該他の通信装置から受信する機能と、
前記通信装置が前記他の通信装置へ既に送信した画像データである既送データのうちで、送信される前記画像データに付加される既送データのデータ量を、受信された前記結果と、前記画像データを当該通信装置が送信したときの取得された前記負荷の状況とに基づき制御する機能と
を実現させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−44905(P2011−44905A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−191639(P2009−191639)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】