説明

通信端末装置

【課題】通信端末装置の機能に制限を加えることなく、取り扱われる原稿などの情報毎に生体認証でき、共同使用に便利で融通性に優れた通信端末装置を提供する。
【解決手段】画像読取走査手段9、画像メモリ4、身体の特定部位の生体画像を読み取る生体画像読取手段11を備えた通信端末装置Fであって、画像読取走査手段9で読み取った原稿画像を上記画像メモリ4に蓄積する際に、上記生体画像読取手段11で読み取った生体画像を対応させて認証のために登録する蓄積原稿管理メモリ10と、上記生体画像読取手段11で生体画像を読み取って、蓄積原稿の参照要求を受付けたときには、その生体画像が認証された場合にのみ、その生体画像に対応させて蓄積されている原稿画像についての通信項目を、表示部7に表示させる蓄積原稿管理制御手段とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ファクシミリ装置、コピー装置及びそれらの複合機器等の通信端末装置に関し、特に、生体認証機能を備えた通信端末装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近時の通信端末装置では、個人情報保護の観点から特定のユーザのみに通信端末装置を限定的に使用させるため、ユーザ認証機能を備えたものが広く使用されるに至っており、このようなユーザ認証方法としては、パスワードの入力による認証やIDカードによる認証が行われてきたが、以下のような問題があった。
パスワード認証の場合は、ユーザがパスワードを忘れてしまうことや他人によるパスワードの盗聴が問題となっており、またIDカード認証の場合は、IDカードを紛失してしまったり、他人が盗用、代用しても通信端末装置側ではIDカードを使用する者が正当なユーザと認識して処理が行われてしまうといった問題がある。
【0003】
そこで、近時では、人の指紋や掌紋などの身体情報を登録して認証を行う方法、所謂生体認証を用いた方法が使用されるに至っている。
例えば、生体認証機能を備えた通信端末装置としては、特許文献1又は2に開示されたものが挙げられる。
生体認証により、ユーザを特定して不正利用者等の特定可能とした例として、特許文献1には、送信、印刷等の操作時に指紋による個人認証を行うことにより、認証の確認されなかった操作者にはファクシミリ装置の操作を禁止するものが開示されている。
また、生体認証機能を利用して個々のユーザに応じて簡易な操作を可能とした例としては、特許文献2には、モードメモリ機能に、個々のユーザ特有の情報である指紋を割り当てる(ユーザ認証)ことによって、複雑な画像処理機能の設定をワンタッチで実行可能としたものが開示されている。
【特許文献1】特開2002−271541号公報
【特許文献2】特開2002−44313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1又は2では、予め通信端末器の使用を特定のユーザに限定するため、ユーザの生体情報を登録しておく必要があり、登録されていないユーザには、使用が制限されてしまうので、オフィス等で共用するためには、すべてのユーザの生体情報を登録しておく必要があり、実際の使用にあたっては面倒な点がある一方で、近年の情報通信事情においては、通信データの安全性の向上が重要視されており、ユーザ各自の送信状況を他人に勝手に参照されることのないものが望まれる。例えば送信予約及び送信履歴の確認機能を有する通信端末装置の場合は、送信予約した内容が他人によって勝手に変更されたり、送信履歴が削除されたりすることのないものが望まれていた。
【0005】
本発明は、以上のような問題点を解決するために提案され、登録されていないユーザの通信端末装置の使用を禁止するのではなく、通信端末装置で扱われる情報の参照、変更等を特定のユーザに制限することで、通信端末装置を共同使用できながら、プライバシーを保護することのできる、新規な機能を備えた通信端末装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る通信端末装置は、画像読取走査手段、画像メモリ、身体の特定部位の生体画像を読み取る生体画像読取手段を備えた通信端末装置であって、上記画像読取走査手段で読み取った原稿画像を上記画像メモリに蓄積する際に、上記生体画像読取手段で読み取った生体画像を対応させて認証のために登録する蓄積原稿管理メモリと、上記生体画像読取手段で生体画像を読み取って、蓄積原稿の参照要求を受付けたときには、その生体画像が認証された場合にのみ、その生体画像に対応させて蓄積されている原稿画像についての通信項目を、表示部に表示させる蓄積原稿管理制御手段とを備えていることを特徴とする。
上記通信項目とは、送信予約されている場合は、送信相手先、送信開始時刻、送信予定枚数等をいい、その他、送信した相手先、送信結果、送信時刻等の送信履歴等の情報も含む。
【0007】
本発明においては、請求項2に記載の発明のように、上記蓄積原稿管理制御手段は、上記生体画像読取手段で読み取られた生体画像が認証されたときには、その生体画像に対応させて蓄積された原稿画像についての通信項目の変更或いは削除操作を更に受付けて処理することができる。
また本発明においては、請求項3に記載の発明のように、通信端末装置としては、画像メモリを有したファクシミリ装置、コピー装置、プリンタ装置、スキャナ装置或いは、それらのうちの少なくとも2以上の機能を備えた複合機器であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に記載の通信端末装置によれば、蓄積されている原稿画像の通信項目を参照する際には、生体画像を登録したユーザのみが参照できるため、ユーザのプライバシーが保持される。
また、通信端末装置の基本機能、例えば、画像蓄積機能は、生体画像を登録していないユーザにも確保されるので、通信端末装置を使用するすべてのユーザが認証登録を行うことがなく、ユーザ間のプライバシーを保護しながら共同使用ができるので、利便である。
更に、生体認証により、ユーザを特定できるので、従来のパスワード認証やIDカード認証のように、他人にパスワードを盗聴されたり、IDカードを紛失するといった不都合がなく、通信端末装置で扱われる情報の安全性を図ることができる。
【0009】
請求項2に記載の通信端末装置によれば、生体画像読取手段で読み取られた生体画像が認証されたときには、その生体画像に対応させて蓄積された原稿画像についての通信項目の設定変更或いは削除を受付けて処理する蓄積原稿管理制御手段を備えているので、原稿を読み込んだ者以外の者により、通信項目の設定の変更や削除が行われる心配がない。
【0010】
請求項3に記載の通信端末装置によれば、画像メモリを有したファクシミリ装置、コピー装置、プリンタ装置、スキャナ装置或いは、それらのうちの少なくとも2以上の機能を備えた複合機器に本発明を適用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を実施するための最良の形態について、添付図面とともに説明する。なお、以下に示す実施例では通信端末装置としてファクシミリ装置を示しているが、画像メモリを有したコピー装置、プリンタ装置、スキャナ装置或いは、それらのうちの少なくとも2以上の機能を備えた複合機器等にも適用可能である。
【実施例1】
【0012】
図1は、本発明の通信端末装置Fの内部構成を示すブロック図である。
図1において、1はCPUで構成され、各部を制御する制御部、2は電話回線Lにダイヤル信号を送出し、電話回線Lに対する接続制御を行うNCU、3はファクシミリ通信を行うために信号の変調と復調を行うモデム、スキャナ部9で読み取った原稿を蓄積する画像メモリ4、5は各種データを記憶するためのRAM、6は制御プログラムなどを予め記憶したROM、7は画像液晶ディスプレイなどで構成される表示部、8は送信予約の設定、変更、削除等を行うための各種キー等で構成された操作部と、9はセットされた原稿から画像データを読み取るスキャナ部(画像読取走査手段)、10は原稿画像を画像メモリ4に蓄積する際に、生体画像読取部11で読み取った生体画像を対応させて認証するために登録する蓄積原稿管理メモリ、11は身体の特定部位の生体画像を読み取る生体画像読取部を夫々示している。
【0013】
本発明の通信端末装置Fは、スキャナ部9で読み取った原稿画像を画像メモリ4に蓄積する際に、生体画像読取部11で読み取った生体画像を対応させて認証のために登録する蓄積原稿管理メモリ10と、生体画像読取部11で生体画像を読取って、蓄積原稿の参照要求を受付けたときには、その生体画像が認証された場合にのみ、その生体画像に対応させて蓄積されている原稿画像についての通信項目を表示部に表示させる蓄積原稿管理制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0014】
ここで生体画像読取部11は、身体の特定部位、すなわち手指であれば指紋、掌であれば掌紋、眼球であれば眼底の網膜や黒目の虹彩等の生体画像を読取る手段をいい、これにより、ユーザ認証を行うことによりユーザの特定がなされる。なお実施例においては、生体認証の中でも生体画像読取部を小型で安価に構成できる指紋によるユーザ認証の例を説明するが、これに限定されるものではない。よって、ユーザ認証できる手段であれば、上記の他、声紋であってもよい。このような生体認証により、ユーザを特定できれば、従来のパスワード認証やIDカード認証のように、他人にパスワードを盗聴されたり、IDカードを紛失するといった不都合がない。
この構成によれば、蓄積されている原稿画像を読み込んだユーザのみが該原稿画像の通信項目を参照でき、また生体認証により、ユーザを特定するので、原稿画像の通信に関する安全性が高まる。
【0015】
また本発明の通信端末装置Fは、生体画像読取部11で読み取られた生体画像が認証されたときには、その生体画像に対応させて蓄積された原稿画像についての通信項目の設定変更或いは削除を受付けて処理する蓄積原稿管理制御手段を備えていることを特徴とする。
この構成によれば、送信予約時などに原稿を蓄積した者が、そのとき生体画像を読み取らせて登録しておけば、他の者によって蓄積した原稿画像についての通信項目の設定の変更や削除が行われる心配がない。
ここで通信項目とは、送信予約されている場合は、送信相手先、送信開始時刻、送信予定枚数等をいう他、所謂送信履歴情報(送信した相手先、送信結果、送信時刻等)も含む。
【0016】
図2は、送信予約を行う際の基本動作を示すタイムチャート(100〜105)である。
送信予約を選択し、送信相手先、送信時刻を指定して(100)、原稿をセットし画像データを読み取る。このとき読み取られた原稿画像は画像メモリ4に格納される。次いで、指紋の読取がなされると(102)、読み取られた指紋画像は蓄積原稿管理メモリ10に、原稿画像が格納された画像メモリ4のアドレスと対応付けて登録される(指紋登録)(103、104)。一方、所定時間内に指紋の登録がなければ(105)、蓄積原稿管理メモリ10には、原稿画像が格納された画像メモリ4のアドレスのみが登録される(通常登録)(104)。
この構成によれば、指紋認証によるユーザ登録を予めしていないユーザであっても、ユーザ認証の利便性を活かして、ユーザ間のプライバシーを保護しながら共同使用ができるので、利便であり、送信する原稿の画像データ毎に簡易に所謂ユーザ登録ができる。なお、上述設定順序はこれに限られるものではなく、図2のフローチャートには示していないが、指紋登録若しくはパスワード登録のいずれかの登録を促す構成としてもよい。
【0017】
図3は、蓄積画像情報の参照を行う際の基本動作を示すタイムチャート(200〜205)である。
蓄積画像情報の参照を選択し、指紋の読み取りがなされると(200)、読み取られた指紋の認証をし、認証が成立すれば(パターンマッチングを行い、指紋登録された指紋画像と読み取られた指紋画像が一致した場合をいう)(201、202)、その指紋画像に対応付けて登録された原稿画像の通信項目が表示部7に表示される(後述する図4参照)(203)。
一方、所定時間内に指紋の読取がなされない場合は(205)、図3のフローチャートの例に示すように、終了となる構成とする他、パスワード入力を促し、パスワード入力があれば、パスワードに対応させて登録した原稿画像の通信項目を表示させる構成としてもよい。
【0018】
図4は、上述の蓄積画像の参照を行った場合の表示部7の表示状態を示す模式図である。ここでは、「送信予約情報」として、あるユーザの送信予約状況を示している。ここには既に送信済みとなったものについても表示されるので、送信予約しておいた原稿画像が送信されたか否かを確認することができ、確認できれば、そのデータを削除することもできる構成となっている。
またこれから送信するものについても、その状況を確認することができ、必要に応じて送信の予約時刻や送信相手先を変更或いは削除することも可能である。
この構成によれば、上述のように送信予約情報(通信項目)の設定変更や削除は、原稿の読取操作を行ったユーザにしかできない構成としているので、知らないうちに他人により、送信予約情報を閲覧されたり、設定の変更や削除される心配がないので、送信データの安全性が確保される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の通信端末装置の内部構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の送信予約の処理手順を示すフローチャートである。
【図3】本発明の蓄積画像情報を参照する際の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の通信端末装置の表示部の表示例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0020】
F 通信端末装置
4 画像メモリ
9 スキャナ部(画像読取走査手段)
10 蓄積原稿管理メモリ
11 生体画像読取部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像読取走査手段、画像メモリ、身体の特定部位の生体画像を読み取る生体画像読取手段を備えた通信端末装置であって、
上記画像読取走査手段で読み取った原稿画像を上記画像メモリに蓄積する際に、上記生体画像読取手段で読み取った生体画像を対応させて認証のために登録する蓄積原稿管理メモリと、
上記生体画像読取手段で生体画像を読み取って、蓄積原稿の参照要求を受付けたときには、その生体画像が認証された場合にのみ、その生体画像に対応させて蓄積されている原稿画像についての通信項目を、表示部に表示させる蓄積原稿管理制御手段とを備えている通信端末装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記蓄積原稿管理制御手段は、上記生体画像読取手段で読み取られた生体画像が認証されたときには、その生体画像に対応させて蓄積された原稿画像についての通信項目の変更或いは削除操作を更に受付けて処理するようにしている通信端末装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記通信端末装置は、画像メモリを有したファクシミリ装置、コピー装置、プリンタ装置、スキャナ装置或いは、それらのうちの少なくとも2以上の機能を備えた複合機器であることを特徴とする通信端末装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−268602(P2006−268602A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−87565(P2005−87565)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】