説明

通信装置、通信装置保護方法およびプログラム

【課題】通信装置、通信装置保護方法およびプログラムを提供すること。
【解決手段】1または2以上の基地局との無線通信が可能な通信装置であって、基地局から送信された信号を受信する受信部と、受信部が受信した信号に基づいて、通信装置が所定の基準を満たす領域内に存在するか否かを判断する判断部212、240と、判断部により通信装置が基準を満たす領域内に存在しないと判断されると、通信装置の使用者の認証処理を行う認証部228とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信装置保護方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近日、衛星から送信された無線信号を受信可能な受信装置が車や携帯電話などの移動体に搭載されている。GPS(Global Positioning System)測位によれば、かかる受信装置を搭載した移動体の位置を推定することが可能である。このような受信装置を用いた位置推定技術は、ナビゲーション、セキュリティーまたは娯楽などの多岐にわたる分野において重要な共通基盤技術である。
【0003】
また、近日、ノートPC(Personal Computer)や携帯電話などの携帯端末に格納された情報の漏洩、盗難が問題となっている。かかる問題を是正するために、これまで、携帯端末に格納されたデータを保護するために、ハードディスク全体を暗号化し、パスワードや指紋などを用いて使用者を認証できた場合にのみ利用を認める方法が一般的であった。
【0004】
一方、特許文献1には、上記位置推定技術を利用したセキュリティシステムが開示されている。このセキュリティシステムは、GPS測位に基づいて自端末の位置情報を取得する携帯端末が、携帯端末の位置情報をセキュリティ制御装置に送信し、セキュリティ制御装置が、携帯端末の位置情報に応じて家庭のセキュリティ状況を判断する。
【0005】
【特許文献1】特願2001−154026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来のセキュリティシステムにおいては、携帯端末が衛星からの無線信号が届かない屋内や地下に存在する場合、衛星からの無線信号の同期補足および同期保持ができず、位置情報を取得することが困難であった。また、従来のセキュリティシステムは、家庭のセキュリティ状況を判断するものであって、携帯端末そのものが盗難にあった場合に携帯端末を保護することはできなかった。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、無線端末などの通信装置が所定の基準を満たす領域外に移動された場合、通信装置の使用者の認証処理を行うことが可能な、新規かつ改良された通信装置、通信装置保護方法およびプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、1または2以上の基地局との無線通信が可能な通信装置であって、基地局から送信された信号を受信する受信部と、受信部が受信した信号に基づいて、通信装置が所定の基準を満たす領域内に存在するか否かを判断する判断部と、判断部により通信装置が基準を満たす領域内に存在しないと判断されると、通信装置の使用者の認証処理を行う認証部とを備えることを特徴とする、通信装置が提供される。
【0009】
かかる構成においては、判断部は、受信部が受信した信号に基づいて、通信装置が所定の基準を満たす領域内に存在するか否かを判断することができる。また、認証部は、通信装置が基準を満たす領域内に存在しないと判断された場合、通信装置の使用者に対し、一例としてパスワードや指紋などを要求して認証処理を行うことができる。また、例えば、使用者に対して使用者認証を要求しない非警戒領域が、所定の基準を満たす領域としてユーザ操作、または自動で通信装置に設定されていた場合、通信装置は、非警戒領域外である警戒領域に移動されると、使用者に対して使用者認証を要求する。したがって、PCや携帯電話などの通信装置が第三者に盗難され、通信装置が本来の使用者の意図しない警戒領域に移動された場合、通信装置は第三者による利用を検知することができる。すなわち、当該通信装置は、本来の使用者により通信装置が携帯される可能性が高い領域が非警戒領域として設定されていれば、本来の使用者に対して煩雑な使用者認証を要求する場合を抑制し、通信装置を盗難したような第三者に対しては効果的に使用者認証を課すことができる。
【0010】
受信部が受信した各信号の信号強度を測定する測定部をさらに備え、判断部は、測定部により測定された信号強度と、既知の基地局ごとの位置情報とに基づいて推定された通信装置の位置が、基準を満たす領域内に存在するか否かを判断してもよい。かかる構成においては、例えば、通信装置は、基地局識別情報と、基地局の位置情報とが対応付けられた基地局情報を記憶している位置推定サーバに、測定部が測定した信号強度に関する情報を送信する。そして、通信装置は、位置推定装置において基地局情報と信号強度に関する情報に基づいて推定された通信装置の位置情報を受信することができる。また、使用者により、例えば、使用者の自宅と、勤め先、あるいは学校などの使用者が頻繁に立ち寄る場所との間の領域が基準を満たす領域として通信装置に設定されていた場合、判断部は、推定された位置情報に基づいて、通信装置が設定された領域内に存在するか否かを判断することができる。
【0011】
認証部が通信装置の使用者を認証できなかった場合、推定された通信装置の位置を、登録されている連絡先に通知する通知部をさらに備えるようにしてもよい。かかる構成によれば、例えば、通信装置が第三者により盗難され、第三者が通信装置の使用を試みた場合、通信装置が基準を満たす領域外に移動されており、第三者は使用者の認証要求を課される可能性が高い。しかし、近日、通信装置の使用のために認証要求が課されるケースが多いため、第三者は、通信装置の利用のために認証要求に疑いなく応じるものと考えられる。このため、通知部は、認証部が第三者を認証できなかった時点で、通信装置の推定された位置情報を、第三者に気付かれることなく事前に登録された本来の使用者のメールアドレスなどに送信することができる。その結果、本来の使用者は、盗難された自己の通信装置の所在を認知し、通信装置を発見することが可能となる。
【0012】
認証部は、通信装置の位置の推定ができない間は、通信装置の使用者の認証処理を行うようにしてもよい。判断部が、推定された位置情報に基づいて通信装置が基準を満たす領域内にあるか否かを判断する場合、判断部は、通信装置の位置の推定ができない間、実際に通信装置が基準を満たす領域内にあるか否かを判断できない。このような場合は、通信装置を本来の使用者が携帯しているとも、第三者が盗難したとも特定できないため、認証部は、使用者の認証処理を行い、通信装置の安全性を担保することができる。
【0013】
認証部は、通信装置の位置の推定ができない間は、所定周期で通信装置の使用者の認証処理を行うようにしてもよい。かかる構成においては、本来の使用者は、所定周期ごとに認証処理を行えば通信装置を利用することができる一方で、第三者により通信装置が盗難された場合は、第三者による所定周期の一周期分の長さ以上の通信装置の利用を防止することができる。
【0014】
設定された領域は、判断部による判断が行なわれる時期に応じて可変であってもよい。かかる構成においては、通信装置の使用者の移動先が、例えば時刻、日にち、あるいは曜日などの時期によって決まっている場合には、当該移動先のみを対応する時期における設定された領域とすることにより、通信装置をより高い精度で保護することが可能となる。
【0015】
基地局ごとに固有に付与される基地局識別情報を記憶可能な記憶部をさらに備え、判断部は、受信部が受信した各信号の送信元を示す基地局識別情報と、記憶部に記憶された基地局識別情報とを比較し、通信装置が基準を満たす領域内に存在するか否かを判断してもよい。かかる構成においては、通信装置において信号強度の測定を行なったり、通信装置の位置情報を取得することなく、通信装置は、単に受信した信号の送信元を示す基地局識別情報と、記憶部に記憶された基地局識別情報とを比較することで、通信装置が基準を満たす領域内に存在するか否かを判断可能ある。すなわち、通信装置に、信号強度の測定機能、基地局情報の記憶部、通信装置の位置推定機能を設ける必要がないため、通信装置の構成の簡素化およびコストの削減を図ることができる。
【0016】
判断部は、受信部が受信した各信号の送信元を示す基地局識別情報のうちで、記憶部に記憶されている基地局識別情報の数または割合が各々の第一の境界値を下回った場合に、通信装置が基準を満たす領域内に存在しないと判断してもよい。かかる構成においては、基準を満たす領域は、記憶部に記憶されている基地局識別情報に対応する基地局から受信できる信号の数または割合が、第一の境界を上回る領域に該当する。したがって、判断部は、記憶部に記憶されている基地局識別情報に対応する基地局から受信できる信号が少ない、あるいは皆無である場合に、通信装置が基準を満たす領域内に存在しないと判断することができる。
【0017】
判断部は、受信部が受信した各信号の送信元を示す基地局識別情報のうちで、記憶部に記憶されていない基地局識別情報の数または割合が各々の第二の境界値を上回った場合に、通信装置が基準を満たす領域内に存在しないと判断してもよい。かかる構成においては、基準を満たす領域は、記憶部に記憶されていない基地局識別情報に対応する基地局から受信する信号の数または割合が、第二の境界を下回る領域に該当する。したがって、判断部は、記憶部に記憶されていない基地局識別情報に対応する基地局から受信する信号の数または高い場合に、通信装置が基準を満たす領域内に存在しないと判断することができる。
【0018】
認証部により通信装置の使用者が認証された場合、受信部が受信した各信号の送信元を示す基地局識別情報のうちで、記憶部に記憶されていない基地局識別情報を記憶部に記録するデータ処理部をさらに備えるようにしてもよい。かかる構成によれば、基地局識別情報が記憶部に自動的に記録されるため、使用者が所望する領域を通信装置に設定する手間を抑制することができる。すなわち、当該データ処理部によれば、新しい領域に通信装置が移動させる度に、当該新しい領域の住所や緯度、経度などの位置範囲の基準設定を使用者に強いるという問題を生じることなく、簡易に新しい領域を通信装置に設定することができる。
【0019】
データ処理部は、記憶部に記憶されている基地局識別情報に対応する基地局から、受信部が所定時間以上にわたって信号を受信しなかった場合、基地局識別情報を記憶部から削除してもよい。かかる構成によれば、データ処理部は、自動的に基準を満たす領域を更新することができる。すなわち、使用者が一度立ち寄ったような出張場所で記憶部に基地局識別情報が記録されていた場合、判断部は、当該出張場所も基準を満たす領域として認識する。このように、記憶部が記憶する基地局IDのうちで、使用者が再度立ち寄る可能性の低い場所における基地局識別情報が増大すると、結果、判断部が基準を満たす領域として認識する範囲が過剰に拡大してしまう。そこで、データ処理部は、使用者が単発的に行ったと判断された場所に対応する基地局識別情報は記憶部から適宜消去し、判断部が基準を満たす領域として認識する範囲の最適化を図ることができる。
【0020】
認証部が通信装置の使用者を認証できなかった場合、通信装置の使用を禁止する禁止部をさらに備えるようにしてもよい。かかる構成によれば、禁止部は、第三者による通信装置の利用を禁止できるため、通信装置に記憶された情報の漏洩や、第三者による本来の使用者の成りすましなどを防止可能である。
【0021】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、1または2以上の基地局との無線通信が可能な通信装置を用いた通信装置保護方法であって、基地局から送信された信号を受信するステップと、受信した信号に基づいて、通信装置が所定の基準を満たす領域内に存在するか否かを判断するステップと、通信装置が基準を満たす領域内に存在しないと判断されると、通信装置の使用者の認証処理を行うステップとを含むことを特徴とする、通信装置保護方法が提供される。
【0022】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、コンピュータを、1または2以上の基地局との無線通信が可能な通信装置であって、基地局から送信された信号を受信する受信手段、受信手段が受信した信号に基づいて、通信装置が所定の基準を満たす領域内に存在するか否かを判断する判断手段、判断手段により通信装置が基準を満たす領域内に存在しないと判断されると、通信装置の使用者の認証処理を行う認証手段、を備える通信装置として機能させるためのプログラムが提供される。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように本発明にかかる通信装置、通信装置保護方法およびプログラムよれば、無線端末などの通信装置が所定の基準をみたす領域外に移動された場合、通信装置の使用者の認証処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態にかかる通信装置保護システム10について説明する。本実施形態の説明においては、図1を参照して本実施形態にかかる通信装置保護システム10の概要を説明した後に、図2〜図5を参照して通信装置保護システム10の各構成を詳細に説明する。
【0026】
図1は、本実施形態にかかる通信装置保護システム10の構成を示した説明図である。通信装置保護システム10は、携帯型PC20と、基地局30、31および32と、位置推定装置40と、を含む。
【0027】
基地局30、31および32は、空間的に散在する通信装置間の通信を中継する。例えば、基地局30、31および32は、それぞれの電波到達範囲内にある携帯型PC20と他の無線端末(図示せず。)との無線通信を中継したり、携帯型PC20と基地局30、31または32に有線で接続された通信装置との通信を中継したりすることができる。
【0028】
具体的には、基地局30は、WiFi(Wireless Fidelity)規格に基づくIEEE802.11シリーズ(例えば、802.11b、802.11gなど)の無線LAN(Local Area Network)の基地局であっても、GSM(Global System for Mobile Communications)の基地局であっても、携帯電話やPHS(Personal Handyphone System)の基地局であっても、Bluetoothなどの近距離無線基地局であっても、よい。なお、基地局30、31および32の構成は実質的に同一であるので、以下では特に基地局30を例にあげて説明する。
【0029】
基地局30は、無線通信を中継する際に送信する信号の他に、基地局30の存在を周囲に報知するためのビーコン信号を定期的に送信することができる。該ビーコン信号には、例えば基地局30に固有に付与される基地局識別情報としての基地局IDが含まれる。その結果、携帯型PC20は、受信したビーコン信号の基地局IDに基づいて、周囲に存在する基地局30の存在を確認することができる。
【0030】
携帯型PC(Personal Computer)20は、基地局30が制御する無線通信に基づいて各種データを送受信することができる。例えば、携帯型PC20は、基地局30を介してコンテンツ配信サーバ(図示せず。)からコンテンツデータを受信したり、他の無線端末(図示せず。)と電子メールを送受信することができる。なお、コンテンツデータとしては、音楽、講演およびラジオ番組などの音楽データや、映画、テレビジョン番組、ビデオプログラム、写真、絵画および図表などの映像データや、ゲームおよびソフトフェアなどの任意のデータがあげられる。
【0031】
また、図1においては、基地局30が送信する信号の受信機能を備えた通信装置の一例として携帯型PC20を示したに過ぎず、通信装置は、例えば、デスクトップ型PC(Personal Computer)、家庭用映像処理装置(DVDレコーダ、ビデオデッキなど)、携帯電話、PHS、携帯用音楽再生装置、携帯用映像処理装置、PDA(Personal Digital Assistant)、家庭用ゲーム機器、携帯用ゲーム機器、家電機器などの情報処理装置であってもよい。
【0032】
また、携帯型PC20は、基地局30、31または32から送信される信号(例えば、ビーコン信号)を受信すると、該信号の信号強度を測定し、測定した信号強度を基地局30、31または32の基地局IDと対応付け、信号強度情報として位置推定装置40に送信することができる。なお、このような携帯型PC20と位置推定装置40との間の通信方式は問わず、通信網を介した通信方式であってもよい。
【0033】
位置推定装置40は、事前に基地局30、31および32が設置されている位置情報が基地局IDと対応付けられた基地局情報を記憶しており、携帯型PC20から受信した信号強度情報と、上記基地局情報とに基づいて、例えば三角測量の原理により携帯型PC20の位置を推定する機能を有する。位置推定装置40は、上記推定した位置を位置情報として携帯型PC20に通知し、携帯型PC20は、位置推定装置40から通知された位置情報に基づいて自端末位置を認識することができる。なお、位置推定装置40は、携帯型PC20に限らず、他の複数の無線端末からの位置推定要求に応じることができる。
【0034】
また、本実施形態にかかる携帯型PC20は、位置推定装置40から受信した位置情報に応じて、携帯型PC20自身のセキュリティレベルを変化させることができる。例えば、携帯型PC20が、所定の基準をみたす領域として事前に設定された非警戒領域外に移動された場合、携帯型PC20は、携帯型PC20の使用者に対して使用者認証を課すことができる。
【0035】
すなわち、携帯型PC20が第三者により盗難され、本来の使用者が意図する非警戒領域の外である警戒領域に携帯型PC20が移動された場合には、第三者に対して使用者認証を課すことにより、携帯型PC20の第三者による使用を効果的に防止することができる。以下、このような機能を実現とする、携帯型PC20および位置推定装置40の詳細な構成、動作について図2〜図5を参照して説明する。
【0036】
図2は、本実施形態にかかる携帯型PC20および位置推定装置40の構成を示した機能ブロック図である。携帯型PC20は、通信部208と、判断部212と、測定部216と、記憶部220と、設定部224と、認証部228と、通知部232と、禁止部236と、を備える。位置推定装置40は、通信部408と、基地局情報記憶部412と、位置推定部416と、を備える。
【0037】
通信部208は、周囲の基地局30や、位置推定装置40とのインターフェースであり、受信部および送信部としての機能を有する。具体的には、通信部208は、周囲の基地局30などが送信する信号(例えば、ビーコン信号)を受信する。また、通信部208は、位置推定装置40に対して後述の信号強度情報を送信する。また、通信部208は、無線LAN対応通信装置であっても、GSM対応通信装置であっても、Bluetooth対応通信装置であってもよい。
【0038】
判断部212は、携帯型PC20において通信装置保護方法を実行する際に、各種条件の判断を行なう。例えば、判断部212は、携帯型PC20の通信部208が、位置推定装置40と通信可能な状態であるか否かを判断する。また、判断部212は、位置推定装置40から取得した携帯型PC20の位置情報が、設定されている非警戒領域内であるか否かを判断する。なお、非警戒領域の範囲を示す情報は、記憶部220に記憶されていてもよく、判断部212は、記憶部220に記憶されている非警戒領域の範囲と、位置推定装置40から取得した携帯型PC20の位置情報とを比較し、位置推定装置40から取得した携帯型PC20の位置情報が非警戒領域内であるか否かを判断してもよい。
【0039】
測定部216は、通信部208が受信した信号の信号強度を測定する。そして、図3に示すように、信号の信号強度と、信号の送信元を示す基地局IDとを対応付けた信号強度情報を、通信部208を介して位置推定装置40に送信する。
【0040】
図3は、信号強度情報の一例を示した説明図である。図3に示したように、信号強度情報は、基地局の基地局IDと、該基地局から送信された信号の携帯型PC20における信号強度とが対応付けられている。図3には、基地局ID「30」の基地局30が送信した信号の携帯型PC20における信号強度は「−90Dbm」であり、基地局ID「31」の基地局31が送信した信号の携帯型PC20における信号強度は「−70Dbm」であり、基地局ID「32」の基地局32が送信した信号の携帯型PC20における信号強度は「−80Dbm」である例を示している。
【0041】
なお、信号強度情報は図3に示した構成に限られない。例えば、基地局が送信した信号は、所定の規則に従い、基地局から離隔するにつれて信号強度が減少する。このため、携帯型PC20における信号の信号強度から、該信号を送信した基地局と携帯型PC20との距離を算出することが可能である。したがって、信号強度情報は、基地局の基地局IDと、信号強度から得られる情報としての該基地局および携帯型PC20間の距離とが対応付けられた構成であってもよい。
【0042】
ここで、位置推定装置40側の説明に移ると、通信部408は携帯型PC20とのインターフェースである。具体的には、携帯型PC20から信号強度情報を受信し、携帯型PC20へ位置情報を送信する。なお、通信部408は、1台の携帯型PC20に限らず、2台以上の不特定多数の情報処理装置と情報を送受信することができる。
【0043】
基地局情報記憶部412は、携帯型PC20と無線通信を行う基地局の基地局IDと、該基地局の設置場所を示す位置情報と、を対応付けて基地局情報として記憶する。基地局情報記憶部412が記憶する基地局情報の一例を、図4を参照して説明する。
【0044】
図4は、基地局情報記憶部412が記憶する基地局情報の一例を示した説明図である。図4に示したように、基地局情報記憶部412は、基地局IDと、基地局が設置されている位置情報としての緯度および経度を対応付け、既知の基地局情報として記憶している。具体的には、基地局ID「30」の基地局30は、経度(東経)「135.001」、緯度(北緯)「35.49」に設置されているものとして基地局情報記憶部412に登録されている。
【0045】
同様に、基地局31は経度「135.002」、緯度「35.41」に、基地局32は経度「135.003」、緯度「35.50」に、基地局33は経度「135.002」、緯度「35.42」に設置されているものとして基地局情報記憶部412に登録されている。
【0046】
また、基地局情報記憶部412に記憶される位置情報の形式は、緯度、経度を用いた形式に限られず、例えば、x、y座標を用いた形式であっても、極座標を用いた形式であっても、ベクトルを用いた形式であってもよい。
【0047】
また、基地局情報記憶部412は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read−Only Memory)、EPRPM(Erasable Programmable Read Only Memory)などの不揮発性メモリや、ハードディスクおよび円盤型磁気媒体などの磁気ディスクや、CD−R(Compact Disk Recordable)/RW(ReWritable)、DVD−R(Digital Versatile Disk Recordable)/RW/+R/+RW/RAM(Ramdam Access Memory)およびBD(Blu−Ray Disc(登録商標))―R/BD−REなどの光ディスクや、MO(Magneto Optical)ディスクなどの記憶媒体で構成してもよい。
【0048】
位置推定部416は、携帯型PC20から受信した信号強度情報と、基地局情報記憶部412に登録されている基地局情報とを用い、以下の数式1に基づいて、携帯型PC20の位置情報を推定する。
【0049】
【数1】

【数2】


【数3】

【0050】
数式1において、Aiは基地局情報記憶部412に登録されているi番目の基地局の位置情報を示す。したがって、基地局情報が図4のように経度、緯度で表される場合、数式1を経度、緯度ごとに適用する。また、Wiは、数式2に示したように、信号強度から推定される携帯型PC20およびi番目の基地局間の距離を示すdistS(O,Ai)基づいて得られる重み係数である。また、Wは、数式3に示したように重み係数の総和である。
【0051】
数式1を参照すると、distS(O,Ai)が小さい基地局の位置情報は、推定される各測定時刻における携帯型PC20の位置Oに大きく反映される。一方、distS(O,Ai)が大きい基地局の位置情報は、推定される携帯型PC20の位置Oに対する影響力が小さい。
【0052】
位置推定部416は、このような数式1を用いることにより、携帯型PC20の位置Oを合理的に推定することができる。そして、位置推定部416は、通信部408を介して、位置推定部416が該推定した位置Oを示す位置情報と測定時刻とを対応付けて携帯型PC20に送信することができる。
【0053】
すなわち、位置推定部416は、携帯型PC20から受信した信号強度情報を、例えば、「135.002 35.46」などの位置情報に変換して返信することができる。または、位置推定部416は、携帯型PC20から受信した信号強度情報を、例えば、「AB県C区5丁目」などの住所に変換して携帯型PC20に返信することができる。
【0054】
なお、携帯型PC20の位置推定方法は上記数式1を用いる方法に限られず、例えば、携帯型PC20が最も高い信号強度で受信した信号の送信元の基地局の位置を、携帯型PC20の位置であると推定してもよい。また、携帯型PC20が所定の閾値以上の信号強度で受信した信号の送信元の基地局の中心となるような位置を、携帯型PC20の位置であると推定してもよい。
【0055】
このような位置推定部416を備える位置推定装置40は、例えば、無線LANに対応する携帯型PC20が無線LANの基地局から受信した信号の信号強度に基づいて、携帯型PC20の位置を推定できる。ここで、無線LANの基地局は地下や屋内など至る場所に配される可能性が高い。したがって、携帯型PC20が無線LANに対応する場合は、位置推定装置40は、携帯型PC20が地下や屋内に存在していたか否かに拘らず、携帯型PC20において測定されたに基づいて、携帯型PC20の位置を推定することが可能である。
【0056】
ここで、携帯型PC20の構成の説明に戻ると、記憶部220は、設定部224により設定された非警戒領域の範囲や、携帯型PC20の所有者のメールアドレスまたは電話番号などの連絡先を記憶している。なお、所定の基準を満たす領域としての非警戒領域の範囲の規定の仕方は問わない。例えば、非警戒領域の一部あるいは全体は、ある地点を中心とした円形領域として規定されても、品川区大崎、目黒区目黒本町、などの住所により規定されても、東経135.002〜135.003、北緯35.45〜北緯35.46などの緯度経度により規定されても、五反田〜品川までの線路沿いなど駅名により規定されても、遊園地、公園または建物などの名称により規定されてもよい。
【0057】
なお、非警戒領域の範囲は、時刻、日にち、あるいは曜日などの時期によって可変としてもよい。例えば携帯型PC20の使用者が会社員であれば、平日は、自宅と会社間を往復する場合がほとんどであり、休日は、ショッピング、映画、コンサートまたは遊園地など任意のレジャー施設に赴く可能性が高い。そこで、記憶部220は、平日における非警戒領域を自宅と会社間として記憶し、休日における非警戒領域を全域として記憶するようにしてもよい。
【0058】
また、携帯型PC20の使用者が睡眠時間を規則的に午後11時〜午前7時までとっている場合には、午後11時〜午前7時までは携帯型PC20が使用者の自宅にあるべきと考えられるので、記憶部220は、午後11時〜午前7時における非警戒領域を、自宅のみとして設定されてもよい。
【0059】
また、携帯型PC20の使用者が毎月の給料日に銀行に行く習慣がある場合には、記憶部220は、使用者の給料日における非警戒領域に、銀行が追加されるように設定されてもよい。
【0060】
また、記憶部220に記憶される連絡先は、携帯型PC20が盗難にあった場合などに、携帯型PC20によりその旨が通知される用途を有するため、所有者のメールアドレスまたは電話番号に限らず、警察の通報受付の連絡先であっても、携帯型PC20のメーカの連絡先であっても、セキュリティ会社の連絡先であってもよい。
【0061】
また、記憶部220は、携帯型PC20の使用者の使用者認証をする際に用いるための、パスワード、指紋、媒体情報、音声情報、網膜情報または顔情報などを記憶しておくことも可能である。
【0062】
なお、このような記憶部220は、基地局情報記憶部412と同様に、EEPROM、EPRPMなどの不揮発性メモリや、ハードディスクおよび円盤型磁気媒体などの磁気ディスクや、CD−R/RW、DVD−R/RW/+R/+RW/RAMおよびBD(登録商標)―R/BD−REなどの光ディスクや、MOディスクなどの記憶媒体で構成してもよい。
【0063】
設定部224は、携帯型PC20における通信装置保護方法の実行のための前提となる各設定を行う。例えば、設定部224は、所定の基準を満たす領域としての警戒領域の範囲を自動またはユーザ操作に基づいて設定し、記憶部220に記憶させることができる。また、設定部224は、記憶部220に携帯型PC20の所有者のメールアドレスまたは電話番号などの連絡先を記憶させることができる。
【0064】
認証部228は、判断部212により携帯型PCの位置が警戒領域に含まれないと判断されると、携帯型PC20の使用者の認証処理を行う。認証処理は、携帯型PC20の本来の使用者の本人確認手段として、例えば、使用者にパスワードを要求し、入力されたパスワードが記憶部220に記憶されているパスワードと一致するか否かに基づいた認証を行なうパスワード方式であってもよい。
【0065】
また、認証処理は、使用者に指紋の入力を要求し、入力された指紋が記憶部220に記憶されている指紋と一致、あるいは類似するか否かに基づいた認証を行なう指紋認証方式であってもよい。または、認証処理は、使用者にICカードの近接操作を要求し、近接されたICカードが記憶部220に記憶されたICカード情報と一致するか否かに基づいた認証を行なう媒体認証方式であってもよい。その他、認証処理は、使用者の音声を利用する音声認証方式、使用者の網膜の模様に基づく網膜認証方式、使用者の顔の形に基づく顔認証方式などであってもよい。
【0066】
このような認証部228は、携帯型PC20が第三者に盗難され、携帯型PC20が本来の使用者の意図しない警戒領域に移動された場合、携帯型PC20は第三者に使用者認証を課すことができる。すなわち、携帯型PC20は、本来の使用者により通信装置が携帯される可能性が高い領域が非警戒領域として設定されていれば、本来の使用者に対して煩雑な使用者認証を要求する場合を抑制し、携帯型PC20を盗難したような第三者に対しては効果的に使用者認証を課すことができる。
【0067】
また、認証部228は、携帯型PC20が位置推定装置40と接続できないなどの事情により、携帯型PC20の位置情報が取得できない場合、所定周期で携帯型PC20の使用者の認証処理を行うようにしてもよい。例えば、認証部228は、一度認証処理を行った後、設定待ち時間を経て、再度認証処理を行うことができる。
【0068】
ここで、判断部212は、推定された位置情報に基づいて携帯型PC20が非警戒領域内にあるか否かを判断するため、判断部212は、携帯型PC20の位置の推定ができない間、実際に携帯型PC20が非警戒領域内にあるか否かを判断できない。このような場合は、携帯型PC20を本来の使用者が携帯しているとも、第三者が盗難したとも特定できないため、認証部228は、使用者の認証処理を行うことで、携帯型PC20の安全性を担保することができる。
【0069】
さらに、認証部228は、携帯型PC20の位置情報が取得できない間は、所定周期で認証処理を行うことができる。かかる構成においては、本来の使用者は、所定周期ごとに認証処理を行えば携帯型PC20を利用することができる一方で、第三者により携帯型PC20が盗難された場合は、第三者による所定周期の一周期分の長さ以上の携帯型PC20の利用を防止することができる。当該所定周期は、ユーザ操作に基づく任意の値に設定部224が設定するようにしてもよい。
【0070】
しかし、本来の使用者が携帯型PC20を用いて作業を行なっている間に、所定周期で使用者認証を要求されることは煩雑である。したがって、認証部228は、携帯型PC20の位置情報が取得できない間は、所定期間にわたってユーザ操作が検出されなかった場合に認証処理を行うようにしてもよい。また、当該所定期間は、ユーザ操作に基づく任意の値に設定部224が設定するようにしてもよい。
【0071】
通知部232は、携帯型PC20の位置情報が推定されており、認証部228が携帯型PC20の使用者の認証ができなかった場合、記憶部220にあらかじめ登録されている連絡先に、推定されている携帯型PC20の位置情報を通知する。
【0072】
かかる通知部232によれば、例えば、携帯型PC20が第三者により盗難され、第三者が携帯型PC20の使用を試みた場合、携帯型PC20が非警戒領域外に移動されており、第三者は使用者認証を課される可能性が高い。しかし、近日、携帯型PC20の使用のために認証要求が課されるケースが多いため、第三者は、携帯型PC20の利用のために認証要求に疑いなく応じるものと考えられる。このため、通知部232は、認証部228が第三者を認証できなかった時点で、携帯型PC20の推定された位置情報を、第三者に気付かれることなく事前に登録された本来の使用者のメールアドレスなどに送信することができる。その結果、本来の使用者は、盗難された自己の携帯型PC20の所在を認知し、携帯型PC20を発見することが可能となる。すなわち、通知部232は、携帯型PC20が盗難にあった場合の早期発見に資することができる。
【0073】
禁止部236は、認証部228が携帯型PC20の使用者の認証ができなかった場合、携帯型PC20の使用を禁止する。一例として、禁止部236は、携帯型PC20の電源を遮断することができる。かかる禁止部236によれば、第三者による携帯型PC20の使用を禁止できるため、携帯型PC20に記憶された情報の漏洩や、第三者による本来の使用者の成りすましなどを防止可能である。
【0074】
なお、携帯型PC20に内蔵されるCPU、ROMおよびRAMなどのハードウェアを、上述した携帯型PC20の各構成と同等の機能を発揮させるためのコンピュータプログラムも作成可能である。
【0075】
以上、本実施形態にかかる通信装置保護システム10の構成について説明した。続いて、図5を参照して、本実施形態にかかる通信装置保護システム10による通信装置保護方法を説明する。
【0076】
図5は、本実施形態にかかる通信装置保護方法の流れを示したフローチャートである。まず、携帯型PC20の判断部212は、位置推定装置40と接続可能であるか否かを判断する(S504)。判断部212により位置推定装置40と接続可能であると判断された場合、測定部216は信号強度の測定を行なう。その後、携帯型PC20は、測定部216により測定された信号強度に基づく信号強度情報を位置推定装置40に送信し、位置推定装置40から信号強度情報に基づいて推定された携帯型PC20の位置情報を取得する(S512)。
【0077】
続いて、判断部212は、位置推定装置40から取得した位置情報が、設定された領域内であるか否かを判断する(S516)。判断部212により、位置情報が設定された領域内であると判断された場合、S504の処理に戻る。一方、判断部212により、位置情報が設定された領域外であると判断された場合、認証部228は、使用者にパスワードを要求する(S520)。そして、認証部228は、使用者により入力されたパスワードの正否を判断する(S524)。
【0078】
S524において、認証部228により入力されたパスワードが正しいと判断された場合、S504の処理に戻る。一方、認証部228により入力されたパスワードが正しくないと判断された場合、通知部232は、あらかじめ登録された連絡先に、携帯型PC20の位置情報を通知する(S544)。
【0079】
S504において、判断部212により位置推定装置40と接続不能であると判断された場合、判断部212あるいは認証部228は、設定待ち時間が経過したか否かを判断する(S532)。設定待ち時間が経過していない場合には、設定待ち時間が経過するまでS532の処理を繰り返す。S532において、設定待ち時間が経過していると判断された場合、認証部228は、使用者にパスワードを要求する(S536)。そして、認証部228は、使用者により入力されたパスワードの正否を判断する(S540)。
【0080】
S540において、認証部228により入力されたパスワードが正しいと判断された場合、S504の処理に戻る。一方、認証部228により入力されたパスワードが正しくないと判断された場合、S544の処理に進む。さらに、S528の処理の後、あるいはS540の処理の後に、禁止部236は、使用者による携帯型PC20の使用を禁止する(S544)。
【0081】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態にかかる通信装置保護方法によれば、携帯型PC20が設定された警戒領域の外に移動された場合、携帯型PC20の使用者に対して使用者認証を課すことができる。さらに、携帯型PC20が使用者を認証できなかった場合には、携帯型PC20の位置情報を、あらかじめ登録された例えば本来の携帯型PC20の所有者の連絡先に通知することができる。その結果、本来の使用者は、盗難された自己の携帯型PC20の所在を認知し、携帯型PC20を発見することが可能となる。すなわち、本実施形態にかかる携帯型PC20は、携帯型PC20が盗難にあった場合の早期発見に資することができる。
【0082】
また、本実施形態にかかる携帯型PC20は、認証部228が携帯型PC20の使用者の認証ができなかった場合、携帯型PC20の使用を禁止部236を備える。したがって、禁止部236は、盗難者などの第三者による携帯型PC20の使用を禁止できるため、携帯型PC20に記憶された情報の漏洩や、第三者による本来の使用者の成りすましなどを防止可能である。
【0083】
また、本実施形態にかかる携帯型PC20の認証部228は、携帯型PC20の位置情報が取得できない場合には所定周期で使用者認証を課すことができる。したがって、携帯型PC20が本来の使用者が携帯しているとも、第三者が盗難したとも特定できない状態においては、使用者の認証処理を行うことで、携帯型PC20の安全性を担保することができる。
【0084】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態にかかる携帯型PC60について説明する。第1の実施形態にかかる携帯型PC20は、判断部212が、推定された携帯型PC20の位置情報に基づいて、推定された位置情報が設定された非警戒領域内であるか否かを判断していた。ここで、かかる動作を実現するためには非警戒領域を事前に設定しておく必要性が高かった。しかし、非警戒領域の設定は、緯度経度の入力や、住所の入力を要する場合があり、使用者にとってこのような設定作業は煩雑であった。
【0085】
そこで、本実施形態にかかる携帯型PC60は、所定の基準を満たす領域を自動的に更新可能なデータ処理部244を設け、使用者にとってより簡便な通信装置保護方法の実現を図っている。以下、本実施形態にかかる携帯型PC60の詳細な構成および動作について、図6および図7を参照して説明する。なお、第1の実施形態において説明した内容と実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0086】
図6は、本実施形態にかかる携帯型PC60の構成を示した機能ブロック図である。携帯型PC60は、通信部208と、記憶部220と、設定部224と、認証部228と、通知部232と、禁止部236と、判断部240と、データ処理部244と、を備える。
【0087】
記憶部220は、第1の実施形態で説明した、非警戒領域の範囲を特定するための情報に替えて、基地局IDを記憶する。記憶部220に記憶された基地局IDは、判断部240における携帯型PC60が所定の基準を満たす領域内にあるか否かの判断の際に用いられる。
【0088】
判断部240は、通信部208を介して受信した信号に基づいて、携帯型PC60が所定の基準を満たす領域としての非警戒領域に存在するか否かを判断する。より詳細には、判断部240は、通信部208を介して受信した信号の送信元の基地局を示す基地局IDと、記憶部220に記憶されている基地局IDを比較し、携帯型PC60が非警戒領域内にあるか否かを判断することができる。
【0089】
一例として、判断部240は、通信部208を介して受信した信号の送信元を示す基地局IDのうちで、記憶部220に記憶されている基地局IDの数または割合が第一の境界値を下回ったときに、携帯型PC60が警戒領域に存在すると判断することができる。ここで、第一の境界値は、「3」や「10」など任意の量であっても、「20%」や「50%」などの任意の割合であってもよい。
【0090】
かかる構成においては、所定の基準を満たす領域としての非警戒領域は、記憶部220に記憶されている基地局IDに対応する基地局から受信できる信号の数または割合が、第一の境界を上回る領域に該当する。したがって、判断部240は、記憶部220に記憶されている基地局IDに対応する基地局から受信できる信号が少ない、あるいは皆無である場合に、携帯型PC60が基準を満たす領域内に存在しないと判断することができる。
【0091】
また、判断部240は、通信部208を介して受信した信号の送信元を示す基地局IDのうちで、記憶部220に記憶されていない基地局IDの数または割合が第二の境界値を上回ったときに、携帯型PC60が警戒領域に存在すると判断することができる。ここで、第二の境界値は、第一の境界値と同様に、「12」や「20」など任意の量であっても、「45%」や「80%」などの任意の割合であってもよい。
【0092】
かかる構成においては、所定の基準を満たす領域としての非警戒領域は、記憶部220に記憶されていない基地局IDに対応する基地局から受信する信号の数または割合が、第二の境界を下回る領域に該当する。したがって、判断部240は、記憶部220に記憶されていない基地局IDに対応する基地局から受信する信号の数または高い場合に、携帯型PC60が基準を満たす領域内に存在しないと判断することができる。
【0093】
判断部240により携帯型PC60が警戒領域に存在すると判断されると、第1の実施形態と同様に、認証部228が携帯型PC60の使用者に使用者認証を要求する。
【0094】
ここで、本実施形態にかかるデータ処理部244は、認証部228が使用者を認証できた場合、通信部208を介して受信された基地局IDのうちで、記憶部220に登録されていなかったものを、記憶部220に新たに登録する。かかる構成によれば、基地局IDが記憶部220に自動的に記録されるため、非警戒領域を携帯型PC60に設定する手間を抑制することができる。すなわち、当該データ処理部244によれば、新しい領域に携帯型PC60が移動させる度に、当該新しい領域の住所や緯度、経度などの位置範囲の基準設定を使用者に強いるという問題を生じることなく、簡易に新しい領域を携帯型PC60に設定することができる。
【0095】
さらに、データ処理部244は、記憶部220に記憶されている基地局IDに対応する基地局から、通信部208が所定時間以上にわたって信号を受信しなかった場合、基地局IDを記憶部220から削除してもよい。かかる構成によれば、データ処理部244は、自動的に非警戒領域を更新することができる。
【0096】
より詳細には、使用者が一度立ち寄ったような出張場所で記憶部220に基地局IDが記録されていた場合、判断部240は、当該出張場所も非警戒領域として認識する。このように、記憶部220が記憶する基地局IDのうちで、使用者が再度立ち寄る可能性の低い場所における基地局IDが増大すると、結果、判断部240が非警戒領域として認識する範囲が過剰に拡大してしまう。そこで、データ処理部244は、使用者が単発的に行ったと判断された場所に対応する基地局IDは記憶部220から適宜消去し、判断部240が基準を満たす領域として認識する範囲の最適化を図ることができる。
【0097】
なお、データ処理部244が基地局IDを記憶部220から消去するトリガーとなる所定時間は、設定部224により設定されるようにしてもよい。
【0098】
以上、本実施形態にかかる携帯型PC60の構成について説明した。続いて、図7を参照して本実施形態にかかる携帯型PC60の動作の流れを説明する。
【0099】
図7は、本実施形態にかかる携帯型PC60の動作の流れを示した説明図である。まず、携帯型PC60は、周囲の基地局から信号を受信する(S604)。その後、判断部240が、一例として、受信した信号の送信元を示す基地局IDのうちで、記憶部220に記憶されている基地局IDがあるか否かを判断する(S608)。
【0100】
S608において、判断部240により、受信した信号の送信元を示す基地局IDのうちで、記憶部220に記憶されている基地局IDがあると判断された場合、S604の処理に戻る。一方、判断部240により、受信した信号の送信元を示す基地局IDのうちで、記憶部220に記憶されている基地局IDがないと判断された場合、認証部228は、一例として使用者にパスワードを要求する(S612)。そして、認証部228は、使用者により入力されたパスワードの正否を判断する(S616)。
【0101】
S616において、認証部228により入力されたパスワードが正しいと判断された場合、データ処理部244は、受信した信号の送信元の基地局IDを、記憶部220に登録する(S624)。一方、認証部228により入力されたパスワードが誤りであると判断された場合、禁止部236は、使用者による携帯型PC60の使用を禁止する(S620)。
【0102】
このように、本発明の第2の実施形態にかかる携帯型PC60によれば、データ処理部244により基地局IDが記憶部220に自動的に記録されるため、非警戒領域を携帯型PC60に設定する手間を抑制することができる。例えば、使用者の自宅においてデータ処理部244に登録要求をすれば、自宅において受信可能な信号の送信元の基地局IDをデータ処理部244が記憶部220に登録し、簡便に自宅を基準を満たす非警戒領域として設定することができる。
【0103】
また、本実施形態にかかる携帯型PC60は、携帯型PC60の厳密な位置情報を取得する必要がない。すなわち、位置推定装置40と通信する必要も、受信した信号の信号強度を測定する必要もない。したがって、通信装置保護システムの構成全体の簡素化およびコストの削減を図ることができる。また、携帯型PC60は、携帯型PC60が位置推定装置40と接続できないような環境化であるか否かに影響を受けない動作をすることができる。
【0104】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0105】
例えば、上記第1の実施形態では、携帯型PC20と位置推定装置40とを分離構成する場合を説明したが、携帯型PC20に、位置推定機能を実装してもよい。具体的には、携帯型PC20の記憶部220に、基地局情報を記憶させておき、携帯型PC20に、該基地局情報と信号強度情報に基づいて位置情報を推定可能な位置推定手段を設けることもできる。かかる構成によれば、携帯型PC20が位置情報を取得するためにネットワークを介して位置推定装置40にアクセスする必要がなくなるので、PC40に迅速に位置情報を取得できるようになる。また、図5に示したS504の分岐判断が不要となり、それに伴い、S532、S536、S540に示した処理も排除することができる。
【0106】
また、本明細書の通信装置保護システム10の処理における各ステップは、必ずしもフローチャートとして記載された順序に沿って時系列に処理する必要はなく、並列的あるいは個別に実行される処理(例えば、並列処理あるいはオブジェクトによる処理)も含むとしてもよい。
【0107】
また、上述のような通信装置保護方法をコンピュータに行わせるプログラムおよびそのプログラムを記憶した記憶媒体も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる通信装置保護システムの構成を示した説明図である。
【図2】同実施形態にかかる携帯型PCおよび位置推定装置の構成を示した機能ブロック図である。
【図3】信号強度情報の一例を示した説明図である。
【図4】基地局情報記憶部が記憶する基地局情報の一例を示した説明図である。
【図5】本実施形態にかかる通信装置保護方法の流れを示したフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかる携帯型PCの構成を示した機能ブロック図である。
【図7】同実施形態にかかる携帯型PCの動作の流れを示した説明図である。
【符号の説明】
【0109】
10 通信装置保護システム
20、60 携帯型PC
30 基地局
40 位置推定装置
208 通信部
212、240 判断部
216 測定部
220 記憶部
224 設定部
228 認証部
232 通知部
236 禁止部
244 データ処理部
412 基地局情報記憶部
416 位置推定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または2以上の基地局との無線通信が可能な通信装置であって;
前記基地局から送信された信号を受信する受信部と;
前記受信部が受信した信号に基づいて、前記通信装置が所定の基準を満たす領域内に存在するか否かを判断する判断部と;
前記判断部により前記通信装置が前記基準を満たす領域内に存在しないと判断されると、前記通信装置の使用者の認証処理を行う認証部と;
を備えることを特徴とする、通信装置。
【請求項2】
前記受信部が受信した各信号の信号強度を測定する測定部をさらに備え、
前記判断部は、前記測定部により測定された信号強度と、既知の前記基地局ごとの位置情報とに基づいて推定された前記通信装置の位置が、あらかじめ設定された領域内に存在する場合に、前記基準を満たすと判断することを特徴とする、請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記認証部が前記通信装置の使用者を認証できなかった場合、前記推定された前記通信装置の位置を、登録されている連絡先に通知する通知部をさらに備えることを特徴とする、請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記認証部は、前記通信装置の位置の推定ができない間は、前記通信装置の使用者の認証処理を行うことを特徴とする、請求項2に記載の通信装置。
【請求項5】
前記認証部は、前記通信装置の位置の推定ができない間は、所定周期で前記通信装置の使用者の認証処理を行うことを特徴とする、請求項4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記設定された領域は、前記判断部による判断が行なわれる時期に応じて可変であることを特徴とする、請求項2に記載の通信装置。
【請求項7】
前記基地局ごとに固有に付与される基地局識別情報を記憶可能な記憶部をさらに備え、
前記判断部は、前記受信部が受信した各信号の送信元を示す基地局識別情報と、前記記憶部に記憶された基地局識別情報とを比較し、前記通信装置が前記基準を満たす領域内に存在するか否かを判断することを特徴とする、請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
前記判断部は、前記受信部が受信した各信号の送信元を示す基地局識別情報のうちで、前記記憶部に記憶されている基地局識別情報の数または割合が各々の第一の境界値を下回った場合に、前記通信装置が前記基準を満たす領域内に存在しないと判断することを特徴とする、請求項7に記載の通信装置。
【請求項9】
前記判断部は、前記受信部が受信した各信号の送信元を示す基地局識別情報のうちで、前記記憶部に記憶されていない基地局識別情報の数または割合が各々の第二の境界値を上回った場合に、前記通信装置が前記基準を満たす領域内に存在しないと判断することを特徴とする、請求項7に記載の通信装置。
【請求項10】
前記認証部により前記通信装置の使用者が認証された場合、前記受信部が受信した各信号の送信元を示す基地局識別情報のうちで、前記記憶部に記憶されていない基地局識別情報を前記記憶部に記録するデータ処理部をさらに備えることを特徴とする、請求項8に記載の通信装置。
【請求項11】
前記データ処理部は、前記記憶部に記憶されている基地局識別情報に対応する基地局から、前記受信部が所定時間以上にわたって信号を受信しなかった場合、前記基地局識別情報を前記記憶部から削除することを特徴とする、請求項8に記載の通信装置。
【請求項12】
前記認証部が前記通信装置の使用者を認証できなかった場合、前記通信装置の使用を禁止する禁止部をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の通信装置。
【請求項13】
1または2以上の基地局との無線通信が可能な通信装置を用いた通信装置保護方法であって;
前記基地局から送信された信号を受信するステップと;
前記受信した信号に基づいて、前記通信装置が所定の基準を満たす領域内に存在するか否かを判断するステップと;
前記通信装置が前記基準を満たす領域内に存在しないと判断されると、前記通信装置の使用者の認証処理を行うステップと;
を含むことを特徴とする、通信装置保護方法。
【請求項14】
コンピュータを、
1または2以上の基地局との無線通信が可能な通信装置であって、
前記基地局から送信された信号を受信する受信手段、
前記受信手段が受信した信号に基づいて、前記通信装置が所定の基準を満たす領域内に存在するか否かを判断する判断手段、
前記判断手段により前記通信装置が前記基準を満たす領域内に存在しないと判断されると、前記通信装置の使用者の認証処理を行う認証手段、
を備える通信装置として機能させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−131302(P2008−131302A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−313428(P2006−313428)
【出願日】平成18年11月20日(2006.11.20)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】