説明

遅延型光硬化性樹脂塗布装置およびこれを用いた遅延型光硬化性樹脂塗布方法

【課題】 被塗布物が紫外線に一切暴露されることなく、紫外線による被塗布物の劣化や塗布後の遅延型光硬化性樹脂の流れ広がりを防止して、被塗布物上に遅延型光硬化性樹脂を塗布して硬化できる遅延型光硬化性樹脂塗布装置およびこれを用いた遅延型光硬化性樹脂塗布方法を提供する。
【解決手段】 紫外線照射装置5と、ディスペンサ装置2を備えてなり、ディスペンサ装置2が、紫外線照射装置5から出射される紫外線を、遅延型光硬化性樹脂に照射する透明な受光部と、紫外線照射後の遅延型光硬化性樹脂を、被塗布物上に吐出する吐出部4を有する遅延型光硬化性樹脂塗布装置1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遅延型光硬化性樹脂塗布装置およびこれを用いた遅延型光硬化性樹脂塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の紫外線硬化型樹脂の塗布方法は、紫外線硬化型樹脂を被塗布物に塗布した後、紫外線を照射して硬化させるのが一般的である(例えば、特許文献1または2参照)。
【特許文献1】特開2003−168765号公報
【特許文献2】特開2003−195345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の塗布方法にあっては、紫外線硬化型樹脂の塗布と紫外線の照射とが別工程で時間差を持って行われるため、以下のような問題があった。例えば、塗布工程から照射工程までの間に、紫外線硬化型樹脂にごみや塵が付着し、接続不良を引き起こしたり、外観を損なったりするという問題があった。
【0004】
また、実際に紫外線を照射しようとする際、塗布した紫外線硬化型樹脂が被塗布物上で他の構成物の陰になり、照射が不充分になるという問題があった。
【0005】
また、図8に示したように、シール材18で貼り合わされた2枚の透明基板17,17からなる液晶表示パネルの端子部19にフレキシブル回路基板20を接続する際に、保護および補強のため紫外線硬化型樹脂16を塗布する。この紫外線硬化型樹脂16は、照射前の未硬化状態では粘度が低く、流動性に富むものであるため、塗布した後、照射硬化するまでの間に少しずつ流れ広がり、上側の透明基板17の端面やシール材18に付着することがあった。
【0006】
このような状態のまま、紫外線を照射すると、硬化の際、紫外線硬化型樹脂16は矢印21で示した方向に収縮するため、2枚の透明基板17,17を押し広げる矢印22で示した方向に応力が発生し、2枚の透明基板17,17間のギャップが上昇して内部の液晶層(図示略)の均一性が損なわれ、外観不良になるという問題があった。
【0007】
さらに、液晶表示パネルの端子部19に塗布した紫外線硬化型樹脂16に紫外線を照射する際、余剰の紫外線により、液晶層もいっしょに暴露され、液晶が劣化・分解して液晶表示パネルの特性が低下するという問題もあった。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、被塗布物が紫外線に一切暴露されることなく、紫外線による被塗布物の劣化や塗布後の遅延型光硬化性樹脂の流れ広がりを防止して、被塗布物上に遅延型光硬化性樹脂を塗布して硬化できる遅延型光硬化性樹脂塗布装置およびこれを用いた遅延型光硬化性樹脂塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる課題を解決するため、
請求項1にかかる発明は、紫外線照射装置と、ディスペンサ装置を備えてなり、前記ディスペンサ装置が、前記紫外線照射装置から出射される紫外線を、遅延型光硬化性樹脂に照射する透明な受光部と、紫外線照射後の前記遅延型光硬化性樹脂を、被塗布物上に吐出する吐出部を有することを特徴とする遅延型光硬化性樹脂塗布装置である。
【0010】
請求項2にかかる発明は、前記紫外線照射装置を、前記受光部の周囲にリング状に設けた請求項1に記載の遅延型光硬化性樹脂塗布装置である。
【0011】
請求項3にかかる発明は、請求項1または2に記載の遅延型光硬化性樹脂塗布装置を用いて、前記遅延型光硬化性樹脂塗布装置の内部で遅延型光硬化性樹脂に紫外線を照射した後、これを被塗布物上に吐出して塗布することを特徴とする遅延型光硬化性樹脂塗布方法である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の遅延型光硬化性樹脂塗布装置およびこれを用いた遅延型光硬化性樹脂塗布方法によれば、遅延型光硬化性樹脂塗布装置内に紫外線照射装置とディスペンサ装置を設けて、紫外線照射装置から発生した紫外線を、遅延型光硬化性樹脂に照射してから、照射後の遅延型光硬化性樹脂を被塗布物上に吐出するようにしたことにより、被塗布物が紫外線に一切暴露されることなく、紫外線による被塗布物の劣化や塗布後の遅延型光硬化性樹脂の流れ広がりを防止して、被塗布物上に遅延型光硬化性樹脂を塗布して硬化することができる。
【0013】
また、本発明によれば、従来のような塗布工程と照射工程の2工程を要しないため、塗布工程と照射工程との時間差を短くして、これらを一括で行うことができ、作業時間を短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態に係る遅延型光硬化性樹脂塗布装置の例を図面に示し、詳細に説明する。
【0015】
[第1の実施形態]
図1は、本実施形態に係る遅延型光硬化性樹脂塗布装置1の概略構成図である。また、図2は、この遅延型光硬化性樹脂塗布装置1の概略断面図である。本実施形態に係る遅延型光硬化性樹脂塗布装置1は、ディスペンサ装置2と、紫外線照射装置5とから概略構成されている。
【0016】
この遅延型光硬化性樹脂塗布装置1では、溜め部9に収容した遅延型光硬化性樹脂8が、透明な受光部3を通過する際に、紫外線照射装置5から出射された紫外線を、放射部10から照射された後、吐出部4に運ばれ、吐出されるようになっている。
【0017】
ディスペンサ装置2は、円筒状容器からなり、その内部には遅延型光硬化性樹脂8を溜めておく円筒状の溜め部9が設けられている。溜め部9の上部には、遅延型光硬化性樹脂8を供給するための樹脂供給管6と、遅延型光硬化性樹脂8を押し出すための空気または気体等を供給する気体供給管7とが設けられている。なお、遅延型光硬化性樹脂8を押し出す機構として、溜め部9にプランジャを配設してもよい。
【0018】
また、溜め部9の下部には、遅延型光硬化性樹脂8を被塗布物上に吐出する細い円筒状の吐出部4が取り付けられていて、吐出部4の上部部分は、紫外線が透過できる石英ガラス等の透明な材質で形成されており、受光部3になっている。
【0019】
紫外線照射装置5は、紫外線を発生するランプ等の公知の光源(図示略)と、その紫外線を照射する放射部10とから概略構成されている。紫外線照射装置5は、その放射部10がディスペンサ装置2内に設けられた透明な受光部3と近接するように、ディスペンサ装置2の側面に配置されている。
【0020】
放射部10は、縦長の長方形状であって、透明な受光部3に効率的に紫外線を照射できるよう、受光部3の受光面よりも広い面積になっている。また、充分な照射量が受光部3に到達できるよう、放射部10と受光部3との距離は1〜20mmであるのが好ましい。さらに、放射部10からの照射光をより効率的に照射するために、放射部10から受光部3までの経路の壁面を反射面とする反射壁を設けることが好ましく、受光部3の周囲を反射面からなる反射壁で囲み、この反射壁の一部を開口し、この開口に放射部10を配設することがさらに好ましい。
【0021】
本実施形態では、吐出部4の上部部分が受光部3となっているが、照射量を増加させるために吐出部4の先端の吐出口以外の部分を受光部3としてもよい。あるいは、溜め部9を透明な材質で形成して受光部3としてもよいが、遅延型光硬化性樹脂8に効率よく紫外線を照射するには、遅延型光硬化性樹脂8の体積が小さい方がよいため、溜め部9よりは吐出部4に受光部3を形成するのが好ましい。
【0022】
本実施形態の遅延型光硬化性樹脂塗布装置1によれば、紫外線照射装置5とディスペンサ装置2を設けて、紫外線照射装置5から出射された紫外線を、ディスペンサ装置2内の受光部3で遅延型光硬化性樹脂8に照射できるようにしたことにより、照射後の遅延型光硬化性樹脂8を被塗布物上に吐出することができる。その結果、ディスペンサ装置とは別に、大型の紫外線照射装置を用意する必要がないため、装置を小型化・簡便化することができる。
【0023】
また、照射後の遅延型光硬化性樹脂8を被塗布物上に吐出できるようにしたため、被塗布物が紫外線に一切暴露されることがなく、紫外線による被塗布物の劣化を防止することができる。
【0024】
次に、本実施形態の遅延型光硬化性樹脂塗布装置1を用いた遅延型光硬化性樹脂塗布方法について、説明する。
【0025】
光遅延硬化性樹脂8とは、紫外線を照射すると秒単位で直ぐに硬化する通常の紫外線硬化性樹脂とは異なり、適量の紫外線を照射すると初めは液体状のままであるが、徐々に硬化が進行するものである。したがって、一般的には、紫外線を数秒照射した後、被着体を貼り合わせると硬化が遅延して起こり接着できることを利用して、直接紫外線を照射できない非透過部材等を接着するのに用いられている。このような光遅延硬化性樹脂8としては、スリーボンド製3115Bなどが挙げられる。
【0026】
まず、ディスペンサ装置2内部の溜め部9に、遅延型光硬化性樹脂8を一旦収容した後、気体供給管7から空気等を徐々に送り、遅延型光硬化性樹脂8を吐出部4に送給する。この遅延型光硬化性樹脂8は、紫外線照射前は液体状であるため、溜め部9から空気等で充分押し出して送給することができる。
【0027】
次いで、遅延型光硬化性樹脂8が吐出部4の上部の受光部3を通過している際に、放射部10から紫外線を照射する。この時、気体供給管7から送られる空気等の圧力を変えて遅延型光硬化性樹脂8の流通速度を調整し、受光部3を通過している間に適切な照射量が遅延型光硬化性樹脂8に照射されるのが好ましい。
【0028】
紫外線の波長は200〜400nmであるのが好ましく、照射量は、積算して2000〜3000mJ/cmであるのが好ましい。照射量が2000〜3000mJ/cmであると、適切な時間で硬化が進行し始め、かつ終了するからである。上記照射量であると、3分後には樹脂の流動性、タック性がなくなり、硬化が終了する。
【0029】
紫外線照射後、1〜2分以内に遅延型光硬化性樹脂8を吐出部4から押し出し、被塗布物上に吐出して塗布する。この際、遅延型光硬化性樹脂8が吐出部4に少しでも残っていると、吐出部4内で硬化して詰まってしまうため、照射後の遅延型光硬化性樹脂8は、全量押し出すことが好ましい。
【0030】
紫外線照射後、1〜2分以内に遅延型光硬化性樹脂8を塗布することにより、遅延型光硬化性樹脂8が液体状ではなく、適度な粘度を持った状態で塗布されるため、被塗布物上で遅延型光硬化性樹脂8が流れ広がるのを防止することができる。その結果、遅延型光硬化性樹脂8を、塗布したい部分にのみスポット状に塗布することができる。
【0031】
また、この塗布方法によれば、従来のような塗布工程と照射工程の2工程を要しないため、塗布工程と照射工程との時間差を短くして、これらを一括で行うことができ、その結果、作業時間を短縮することができる。
【0032】
また、従来のように塗布した後、紫外線を照射するのではないため、非透明な材質の被塗布物や、他の構成物の陰になる部分にも遅延型光硬化性樹脂8を塗布して硬化することができる。
【0033】
[第2の実施形態]
図3は、本実施形態に係る遅延型光硬化性樹脂塗布装置1の概略構成図である。また、図4は、この遅延型光硬化性樹脂塗布装置1の紫外線照射装置5の要部拡大図であり、図5は、この紫外線照射装置5の要部断面図である。本実施形態では、紫外線照射装置5を受光部3の周囲にリング状に設けた以外は、第1の実施形態と同様であるため、それらの説明は省略する。
【0034】
本実施形態に係る紫外線照射装置5は、光源12から発生した紫外線を光ファイバ11,11・・・で導光し、受光部3の周囲にリング状に、光ファイバ11,11・・・の端面からなる放射部10を設けて、受光部3の全周方向から照射できるようになっている。紫外線照射装置5を受光部3の周囲にリング状に設けることにより、通過する遅延型光硬化性樹脂8に、全周方向から効率よく紫外線を照射することができる。
【0035】
[第3の実施形態]
図6は、本実施形態に係る遅延型光硬化性樹脂塗布装置の紫外線照射装置5の要部断面図である。本実施形態では、紫外線照射装置5の光源13,13・・・に波長365nmの紫外線LEDを用い、受光部3の周囲にリング状に光源13を設けた以外は、第2の実施形態と同様であるため、それらの説明は省略する。
【0036】
第2の実施形態では、放射部10に光ファイバ11,11・・・の端面が複数配置されていて、直接受光部3に照射できるようになっているのとは異なり、本実施形態では、透明な石英ガラスからなる内壁14を隔てて、放射部10に設けた光源13,13・・・から受光部3に照射できるようになっている。
【0037】
次に、本発明の遅延型光硬化性樹脂塗布装置及び塗布方法を用いて、液晶表示パネルの端子部に遅延型光硬化性樹脂15を塗布した例を、図7に示す。図8に示した従来の塗布方法による場合と異なり、遅延型光硬化性樹脂15は適度な粘度を有するため、透明基板17上で流れ広がらず、透明基板17の端面やシール材18に付着することなく、スポット状に所望の部分にのみ塗布することができる。
【0038】
また、透明基板17の端面やシール材18に付着することがないため、2枚の透明基板17,17間のギャップを変化させることもない。さらに、液晶層が紫外線に暴露されることがないため、液晶が劣化・分解することもなく、良好な液晶表示パネルを作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】第1の実施形態に係る遅延型光硬化性樹脂塗布装置の概略構成図である。
【図2】第1の実施形態に係る遅延型光硬化性樹脂塗布装置の概略断面図である。
【図3】第2の実施形態に係る遅延型光硬化性樹脂塗布装置の概略構成図である。
【図4】第2の実施形態に係る遅延型光硬化性樹脂塗布装置の紫外線照射装置の要部拡大図である。
【図5】第2の実施形態に係る遅延型光硬化性樹脂塗布装置の紫外線照射装置の要部断面図である。
【図6】第3の実施形態に係る遅延型光硬化性樹脂塗布装置の紫外線照射装置の要部断面図である。
【図7】本発明に係る遅延型光硬化性樹脂塗布装置及び塗布方法を用いて遅延型光硬化性樹脂を塗布した液晶表示パネルの端子部の概略断面図である。
【図8】従来の紫外線硬化型樹脂を塗布した液晶表示パネルの端子部の概略断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1 遅延型光硬化性樹脂塗布装置
2 ディスペンサ装置
3 受光部
4 吐出部
5 紫外線照射装置
8 遅延型光硬化性樹脂



【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線照射装置と、ディスペンサ装置を備えてなり、
前記ディスペンサ装置が、前記紫外線照射装置から出射される紫外線を、遅延型光硬化性樹脂に照射する透明な受光部と、
紫外線照射後の前記遅延型光硬化性樹脂を、被塗布物上に吐出する吐出部を有することを特徴とする遅延型光硬化性樹脂塗布装置。
【請求項2】
前記紫外線照射装置を、前記受光部の周囲にリング状に設けた請求項1に記載の遅延型光硬化性樹脂塗布装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の遅延型光硬化性樹脂塗布装置を用いて、前記遅延型光硬化性樹脂塗布装置の内部で遅延型光硬化性樹脂に紫外線を照射した後、これを被塗布物上に吐出して塗布することを特徴とする遅延型光硬化性樹脂塗布方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−263592(P2006−263592A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−85894(P2005−85894)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000103747)オプトレックス株式会社 (843)
【Fターム(参考)】