説明

遊星歯車機構、回転駆動装置、及び画像形成装置

【課題】成形時に高精度な成形精度が獲得できるとともに、組み付け後においても高精度な回転精度を維持できる樹脂製の固定内歯歯車を備えた遊星歯車機構を提供する。
【解決手段】固定内歯歯車112が一体に成形されたハウジング111をネジ止めやカシメ等を用いた固定をしない、リブ構造等も有さない単純な構造とした。そして、出力軸エンドプレート130とモータ取り付けプレート134とは、ハウジング111を中間に挟み込んで、出力軸エンドプレート130に設けられたホルダー部133に複数個所で、締結固定させて一体化させる構造とした。また、モータ取り付けプレート位置決め凸部135とエンドプレート位置決め凸部131を、ハウジング111のハウジング凹部121に、それぞれの軸心が固定内歯歯車112の中心軸と同軸になるように嵌め合わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転駆動させる回転体の増速又は減速に用いる遊星歯車機構、この遊星歯車機構を備えた回転駆動装置、及びこれらを備えた画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転駆動源からの回転駆動力を、その回転速度を増速又は減速して回転体に伝達する、小型にして高増速比又は高減速比が獲得でき、かつ伝達効率の高い方式として、遊星歯車機構が知られている。そして、遊星歯車機構を備えた回転駆動装置には、加えて、高い回転体駆動速度安定性が求められることがある。
【0003】
例えば、画像形成装置の駆動モータからの回転駆動力を減速して伝達する回転駆動装置では、画像形成装置内の回転体、感光体ドラム、転写ベルトを駆動搬送するローラ部材、現像を行う現像ローラ、転写材を搬送するローラ部材等に、高い回転体駆動速度安定性(回転角速度の安定性)が要求されている。これは、各回転体の回転角速度の変動が感光体ドラム、中間転写体、転写材上の画像形成位置の誤差を発生させ、出力画像の劣化要因となるためである。したがって、画像形成装置では、駆動源であるモータとともに駆動伝達系である遊星歯車減速機構にも、一般的な用途・仕様と異なる高い回転体駆動速度安定性が要求されている。
【0004】
従来から、画像形成装置で用いる遊星歯車減速機構では、高い回転体駆動速度安定性を達成するために、遊星歯車減速機構内の太陽歯車、遊星歯車、及び固定内歯歯車等の加工精度を高める様々な提案が行われてきた。また、精度だけでなく、耐久性向上(メンテナンスフリー)や騒音低減について要求され、様々な提案が行われてきた。しかし、対象は小型、低コスト、高精度を要求される量産製品を搭載する分野の技術である。したがって、高価な材料の使用や、材料の削り出し加工等の高価な加工工程を多く施すことは、コストダウンの観点から難しい。そのため、回転伝達特性、量産性、及び騒音低減を考慮して固定内歯歯車の材料として、樹脂成型品を組み込むことが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に固定内歯歯車等の部品の成形では、射出成形により行なわれることが多い。射出成形においては、溶解した樹脂材を金型内に射出して製品を成形するが、成形さた部品は、金型から取り出されるまでに冷えて収縮するため、金型の形状のとうりとはならず、へこみ等が生じてしまう。このような成形時に生じる樹脂材の収縮による成形不良を、一般にヒケと呼称している。ヒケは、材料の収縮により生じるので、金型に射出された材料の量に比例し、成形する部品の厚みがある部分ほどヒケを生じやすい。例えば、表面が平面で、対向する裏面に凹凸がある場合には、裏面の凸に対向する表面の部分が収縮して凹んでしまいヒケ生じる。そのため、高精度な樹脂成形の条件を満たすためには、成形時の流動性を良くするために小型で、極力異形でない形状とすること、部分的な収縮変形を起こさせないために偏肉部を設けないことが重要である。
【0006】
一方、高精度に成形加工された固定内歯歯車はその肉厚も薄くなり、組み付け時には組付けの外力、運転時には駆動の外力、それぞれによって応力変形しやすい構造であるため、その変形により固定内歯歯車の噛み合い精度が劣化して運転時回転精度の劣化につながる場合がある。
【0007】
成形された樹脂製の部品の形状が単純ではなく、偏肉部が設けられていた場合には、成形後の部品の組み付け後に、厚みが異なる箇所や、入隅・出隅等形状が異なる境界部分において、環境温度の変化による膨張・収縮による変形が、他の部分と異なってしまう。また、捩じり・圧縮・引張り等の外力が作用する部品においては、箇所により厚みが異なることで、均一な変形とならない場合が多い。さらに、部品固定のためにネジ止め等を行うと、ネジ締めを行なった箇所及びその周辺に機械的応力が、固定内歯歯車に直接作用して固定内歯歯車に変形が生じてしまう。そのため、高精度な加工精度が求められる樹脂製の部品では、成形する部品形状をできるだけ単純化し、ヒケが生じにくい形状とすることが望ましい。例え、成形時のヒケ対策を施した高価な金型を用いて高精度な固定内歯歯車を形成できたとしても、リブ部や比較的大きな突起部を設けたり、ネジ止め等の機能を付与したりすると、組み付け後の固定内歯歯車に変形が生じるためである。
【0008】
仮に、固定内歯歯車の噛み合い精度の劣化に起因する、回転体である感光体ドラムの速度変動が1秒間にN回発生するものとすると、プリント速度V(mm/S)で出力される画像では、感光体ドラムの速度変動が、V/N(mm)の周期で発生し、これが濃淡として認識される、いわゆるバンディング現象が生じる。そして、このバンディング現象が生じてしまうと知覚的には大変見苦しい。
【0009】
従来の方法のようにネジにより、固定内歯歯車の固定を行うと、ネジ締めで固定内歯歯車のネジ位置の周辺に変形が起こり、固定内歯歯車の歯型部分に伝搬してしまう。そのため、ネジの位置に対応して歯形が変形することにより、これに噛み合う遊星歯車の回転速度変動が発生し、遊星歯車と一体的に回転するキャリアーの回転速度変動を引き起こす。図10の、固定内歯歯車に固定ネジを設けた場合の固定内歯歯車の周方向のグラフに示すように、ネジ止めを行なった位置周辺で回転速度変動率が大きくなり、回転時の速度変動となる。そして、プリント時には、上述したようにV/N(mm)のバンディング現象となって認識されることになる。したがって、ネジやカシメ等による締結で機械的応力を、固定内歯歯車に直接作用させることは好ましくない。ここで、図10に示した、回転速度変動率は次の式により求めた。
(固定内歯歯車の周方向の各位置での回転速度変動量:△v/固定内歯歯車の周方向の平均速度:Vabe)×100(%) ・・・ (1)
ここで
△v=V−Vabe
【0010】
上述したように、樹脂製の固定内歯歯車は、成形時にヒケ等が起きやすく、また、組み付け後も、外力や環境温度等による変形が極めて起こりやすい軟構造であるため、できるだけ変形が起こらないようにする必要がある。しかしながら従来の樹脂製の固定内歯歯車では、樹脂製の固定内歯歯車の歯型部の変形に対する考慮が足りず、ハウジングと一体に成形する構成で、ネジ止め等の機能を付与したり、他の部材との嵌合部に比較的大きな突起部等を形成したりしていた。そのため、これらに起因する成型時、及び組み付け後の変形で回転精度が悪化していた。
【0011】
例えば、特許文献1には、次のような小型の駆動モータと一体化された遊星歯車減速機構の固定内歯歯車の構成が開示されている。固定内歯歯車(固定歯車形成部)と一体に成形された樹脂製のハウジング(固定内歯歯車)の端面(歯車支持部)に、駆動モータに固定される入口側ケースの深溝に嵌合う、回止め用の嵌合部(嵌合突起)が形成されている。また、特許文献2には、次のような小型の駆動モータと一体化された遊星歯車減速機構の固定内歯歯車の構成が開示されている。固定内歯歯車(歯車部)と一体に成形された樹脂製のハウジング(外輪歯車)に、固定内歯歯車と、隔壁と、この隔壁を介して駆動モータと嵌め合う支持部とが成形されており、隔壁には、駆動モータにネジ固定するためのネジ固定部が成形されている。
【0012】
特許文献1に開示された固定内歯歯車の構成では、回止め用の嵌合部が形成されているため、成形された固定内歯歯車の形状が単純ではなく、偏肉部が形成されており、成形時の樹脂材の収縮による成形不良が生じる可能性が高い。また、組み付け後においても、環境温度変化や外力等による変形が生じた場合に、均一な変形とならない可能性が高いとともに、回止め用の嵌合部から、駆動モータを支持する応力が直接伝わってしまい固定内歯歯車が変形してしまうといった問題がある。そして、特許文献2に開示された固定内歯歯車の構成では、ネジ固定部が形成され、駆動モータにネジ締めして固定する構成であるため、特許文献1に開示された固定内歯歯車の問題に加えて、固定内歯歯車と一体に形成されたハウジングにネジ締めによる機械的応力が、固定内歯歯車に直接作用してしまう。そして、作用した応力により、固定内歯歯車が変形してしまうという問題もある。
【0013】
このように、従来のネジ止めをする構成では、ネジ締結のための"座"となる部分を成形によりつくるため、その部分の偏肉により、冷却時のヒケ現象が伴い、歯形精度の劣化が発生していた。また、ネジの締め付けにより、いずれかの締め付け部の取り付け位置精度が若干でも異なっている場合にはねじれ変形により、歯形精度を悪化させるし、締め付け力の不均一性(強くねじ込みすぎると)も樹脂変形を生じさせ、歯形部が変形していた。しかし、量産を前提とする樹脂製の固定内歯歯車を用いた遊星歯車機構では、小型で高減速比を確保するために多段構成となり、長い歯巾長とハスバ歯型でありながらも、高精度な成形精度が要求されることが多い。加えて、加工後の組付け時と運転時、及び環境温度等の変化が生じた場合にも、固定内歯歯車の歯型部の変形による回転精度の悪化があってはならない。
【0014】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、成形時に高精度な成形精度が獲得できるとともに、組み付け後においても高精度な回転精度を維持できる樹脂製の固定内歯歯車を備えた遊星歯車機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、少なくとも、ハウジングと、固定内歯歯車と、太陽歯車と、前記固定内歯歯車と前記太陽歯車とに噛み合う複数の遊星歯車と、複数の前記遊星歯車を回動自在に支持するとともに前記ハウジングに対して回動自在に支持されたキャリアと、入力軸を回転自在に支持する入力軸エンドプレートと、出力軸を支持する出力軸エンドプレートと、を有する入力軸の回転速度を増速又は減速して出力軸に伝達する遊星歯車機構において、前記固定内歯歯車は、前記ハウジングと一体に成形された樹脂製であり、前記入力軸エンドプレート又は前記出力軸エンドプレートには、この遊星歯車機構を設ける装置本体への取り付けを行ない、対向する出力軸エンドプレート又は入力軸エンドプレートとの接続固定を行う機能が付加され、前記ハウジングは、その外周に固定のためのネジによる締結構造も、リブ構造も有さない略円筒状の形状に成形されており、前記ハウジングを、入力軸エンドプレートと出力軸エンドプレートに設けた前記固定内歯歯車の中心軸と同軸にする加工部を基準に、入力軸エンドプレートと出力軸エンドプレートに嵌め合わせたことを特徴とするものである。
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の遊星歯車機構において、ハウジングの長手方向の両端部には、固定内歯歯車の歯底半径よりも内径を大きくした、前記固定内歯歯車の中心軸と同軸な雌型嵌合部が設けられ、入力軸エンドプレートと出力軸エンドプレートには、それぞれ、前記固定内歯歯車の中心軸と同軸にする加工部として雄型嵌合部が設けられており、入力軸エンドプレートと出力軸エンドプレートの雄型嵌合部と、前記ハウジングの雌型嵌合部とを嵌め合わせて、前記固定内歯歯車の中心軸の移動を規制することを特徴とするものである。
また、請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の遊星歯車機構において、固定内歯歯車を入力軸及び出力軸と同軸にした後、ハウジングを入力軸エンドプレートと出力軸エンドプレートに接着剤により固定することを特徴とするものである。
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の遊星歯車機構において、入力軸エンドプレートと出力軸エンドプレートの雄型嵌合部には、周方向の均等な位置に回転規制部を設け、ハウジングの雌型嵌合部には、周方向の均等な位置に回転規制用切欠き部を設け、前記入力軸エンドプレートと前記出力軸エンドプレートの雄型嵌合部に設けられた前記回転規制部と、前記ハウジングの雌型嵌合部に設けられた前記回転規制用切欠き部は、前記ハウジングの径方向の伸縮を規制せず、かつ、前記ハウジングの周方向の回転を規制する形状であることを特徴とするものである。
また、請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の遊星歯車機構において、固定内歯歯車と一体に成形されたハウジングに対して、入力軸エンドプレート側へのスラスト力を作用させて固定するための弾性部材による加圧手段を、出力軸エンドプレートに同心円状に、かつ、等分割的な位置に設けたことを特徴とするものである。
また、請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載の遊星歯車機構において、遊星歯車機構の回転駆動時に、固定内歯歯車に対して、入力軸エンドプレート側へのスラスト力が発生するように、固定内歯歯車及び遊星歯車機構内の他の歯車の歯形のねじれ方向と、回転方向を設定したことを特徴とするものである。
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至6のいずれか一に記載の遊星歯車機構において、入力軸エンドプレートには、駆動モータが一体的に設けられていることを特徴とするものである。
また、請求項8に記載の回転駆動装置の発明は、請求項1乃至7のいずれか一に記載の遊星歯車機構を備えたことを特徴とするものである。
また、請求項9に記載の画像形成装置の発明は、請求項1乃至7のいずれか一に記載の遊星歯車機構、又は請求項8に記載の回転駆動装置を備えたことを特徴とするものである。
本発明では、固定内歯歯車と一体に成形された樹脂製のハウジングは、その外周に固定のためのネジによる締結構造も、リブ構造も有さない略円筒状の、極力、異形構造をとらない、偏肉部のない単純な形状にしている。異形構造をとらない、偏肉部のない単純な形状にすることで、成形時のヒケや、組み付け後の、環境温度の変化による、固定内歯歯車の歯形部における変形を抑制することができる。また、ハウジングの外周に固定のためのネジによる締結構造を有していないので、ネジの締め付けに起因する樹脂製の固定内歯歯車の歯形部における変形が生じることもない。このように、ハウジングと一体に成形された樹脂製の固定内歯歯車の歯形部への、成形時及び組み付け後の、変形要因となる形状や固定方法を除去しているので、極力変形を起こさないで、安定した高精度駆動を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、樹脂製の固定内歯歯車の偏肉及びネジの締め付けに起因する樹脂製の固定内歯歯車の歯形部における変形を抑制できる。よって、成形時に高精度な成形精度が獲得できるとともに、組み付け後においても高精度な回転精度を維持できる樹脂製の固定内歯歯車を備えた遊星歯車機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る画像形成装置の全体構成の説明図。
【図2】実施例1の遊星歯車減速モジュールの説明図。
【図3】実施例1のハウジングの支持方法の説明図。
【図4】実施例2のハウジングの支持方法の説明図。
【図5】実施例3の弾性変形ボールによる加圧機構の説明図。
【図6】実施例3の弾性変形ボールのエンドプレート上での配置説明図。
【図7】実施例3の金属バネによる加圧機構の説明図。
【図8】ハスバ歯車の歯に加わる力の説明図。
【図9】実施例4における固定内歯歯車の歯を介してフランジに加わるスラスト力の説明図。
【図10】従来の、固定内歯歯車に固定ネジを設けた場合の固定内歯歯車の回転速度変動率の周方向のグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を、電写真方式の画像形成装置であるカラー対応のMFP機(以下、複合機という。)の遊星歯車減速モジュールに適用した実施形態の例について、実施例を挙げ、図を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る画像形成装置の全体構成の説明図である。図2は、実施例1の遊星歯車減速モジュールの説明図、図3は、実施例1のハウジングの支持方法の説明図である。図4は、実施例2のハウジングの支持方法の説明図、図5は、実施例3の弾性変形ボールによる加圧機構の説明図、図6は、実施例3の弾性変形ボールのエンドプレート上での配置説明図、図7は、実施例3の金属バネによる加圧機構の説明図である。図8は、ハスバ歯車の歯に加わる力の説明図、図9は、実施例4における固定内歯歯車の歯を介してフランジに加わるスラスト力の説明図である。
【0019】
まず、この複合機の基本的な構成から説明する。この複合機は、図1に示すように、画像形成装置本体であり画像を作像する作像部100と、この作像部100を載置する給紙テーブル200と、作像部100上に取り付けられたスキャナ300と、このスキャナ300上に取り付けられた原稿自動搬送装置(ADF)400とから主として構成されている。
【0020】
スキャナ300では、原稿照明用光源やミラーなどを搭載した第一走行体303と、複数の反射ミラーを搭載した第二走行体304とが往復移動するのに伴って、コンタクトガラス301上に載置された図示しない原稿の読取り走査が行われる。第二走行体304から送り出される走査光は、結像レンズ305によってその後方に設置されている読取りセンサ306の結像面に集光せしめられた後、読取りセンサ306によって画像信号として読込まれる。
【0021】
作像部100には、潜像担持体としてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色のトナーに対応した感光体ドラム40Y、40M、40C、40Bkが設けられている。各感光体ドラム40の周囲には現像装置70、帯電装置85、感光体クリーニング装置86等の電子写真プロセスを実行する各手段が配置され、これによって画像形成ユニット38(Y,M,C,Bk)が形成されている。また、各画像形成ユニット38は、プリンタ本体に脱着可能であり、一度に消耗部品を交換できるようになっている。各画像形成ユニット38は4つ並列に設けられており、タンデム型画像形成部20を形成している。ここで、各画像形成ユニット38の構成は使用するトナーの色が異なるのみで、その構成・動作は、同一でああるので以下の説明では、符号Y、M、C、Bkは適宜、省略して説明する。
【0022】
また、各画像形成ユニット38内には、感光体ドラムユニット150(図2参照)を有している。図2に示すように、感光体ドラムユニット150のドラムホルダー154に形成された感光体ドラム40の感光体シャフト151は、ドラムホルダー154の片側に設けられた軸孔から、その先端が外部に出るように設けられている。また、この画像形成ユニット38の装着時には、感光体ドラム40の感光体シャフト151の先端に形成された外歯ギヤ153が、詳しくは後述する回転駆動装置である遊星歯車減速機構110を備えた遊星歯車減速モジュール105の出力軸ジョイント119の内歯ギヤに噛み合うこととなる。そして、感光体ドラム40は、感光体ドラム40の感光体シャフト151の外歯ギヤ153と、遊星歯車減速モジュール105の出力軸ジョイント119の内歯ギヤが噛み合うことで、遊星歯車減速モジュール105の入力側に接続された駆動モータ140により回転駆動されることとなる。
【0023】
そして、各画像形成ユニット38の現像装置70においては、それぞれ上記4色のトナーを含んだ現像剤が用いられる。現像装置70は、現像剤担持体である現像ローラ71が現像剤を担持、搬送して、感光体ドラム40との対向位置において、感光体ドラム40上の潜像を現像する。
【0024】
タンデム型画像形成部20の上部には、画像情報に基づいて感光体ドラム40をレーザ光又はLED光により露光して潜像を形成する露光装置31が設けられている。
【0025】
また、タンデム型画像形成部20の感光体ドラム40と対向する下方位置には、無端状のベルト部材からなる中間転写ベルト15が配置されている。中間転写ベルト15は支持ローラ34、支持ローラ35及び二次転写バックアップローラ36によって支持されている。中間転写ベルト15を介して感光体ドラム40と相対する隣接位置には、感光体ドラム40上に形成された各色のトナー像を中間転写ベルト15に転写する一次転写装置62が配置されている。
【0026】
中間転写ベルト15の下方には、中間転写ベルト15表面に重ね合わせて形成されたトナー像を、給紙テーブル200の給紙カセット44から搬送されてくるシートPに一括転写する二次転写装置19が配置されている。二次転写装置19は、二次転写ローラ23と、この二次転写ローラ23を中間転写ベルト15に接離可能に支持する接離機構(不図示)とを備えている。二次転写装置19は中間転写ベルト15を介して二次転写バックアップローラ36に二次転写ローラ23を押し当て、中間転写ベルト15上のトナー像をシートPに転写する。
【0027】
中間転写ベルト15の表面に残留するトナーを取り除くために中間転写ベルトクリーニングユニット90が設けられている。中間転写ベルトクリーニングユニット90は、例えばファーブラシやウレタンゴムで形成されたクリーニングブレードを中間転写ベルト15に当接させて、中間転写ベルト15に付着している二次転写残トナーを掻き取る。
【0028】
二次転写装置19に隣接するように定着装置60が設けられており、定着装置60はシートP上の画像を定着する。定着装置60は、内部に熱源としてのヒータが組み込まれた加熱ローラ66と、この加熱ローラ66に押し当てられる加圧ローラ67とから主として構成されている。
【0029】
二次転写装置19及び定着装置60の下方には、シートPを反転する反転装置28が配置されている。反転装置28は、シートPの両面に画像を記録すべくシートPを反転させる。
【0030】
次に、上記構成の画像形成装置の動作について説明する。図2の原稿自動搬送装置400の原稿台30上に原稿をセットするか、または、原稿自動搬送装置400を開いてスキャナ300のコンタクトガラス301上に原稿をセットし、原稿自動搬送装置400を閉じる。この状態で、操作パネル上のスタートスイッチ(不図示)を押すと、原稿自動搬送装置400に原稿をセットしたときは、原稿を搬送してコンタクトガラス301上へと移動した後、また、コンタクトガラス301上に原稿をセットしたときは直ちにスキャナ300が駆動し、第一走行体303および第二走行体304を走行させる。そして、第一走行体303で光源から光を発射するとともに原稿面からの反射光を受け、これを第二走行体304に向けて反射し、第二走行体304のミラーで反射光を更に反射して結像レンズ305を通して読取りセンサ306に入射させ、読取りセンサ306で原稿内容を読取る。
【0031】
また、操作パネル上のスタートスイッチを押すことによって、駆動モータ(不図示)を駆動させて支持ローラ34、支持ローラ35、二次転写バックアップローラ36の1つを回転駆動し、他の2つの支持ローラを従動回転させ、これによって中間転写ベルト15を回動させる。同時に、各画像形成ユニット38において、帯電装置85によって感光体ドラム40を一様に帯電し、次いでスキャナ300の読取り内容に応じて露光装置31からレーザやLED等による書込み光を照射して帯電した各感光体ドラム40上に静電潜像を形成する。静電潜像が形成された感光体ドラム40に現像装置70からトナーを供給し、静電潜像を可視像化し、各感光体ドラム40上にそれぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の単色画像を形成する。単色画像を順次一次転写装置62によって中間転写ベルト15上に重なるように一次転写し、中間転写ベルト15上に合成カラー画像を形成する。画像転写後の感光体ドラム40の表面は、感光体クリーニング装置86によって残留トナーを除去し、除電装置(不図示)で除電して再度の画像形成に備える。
【0032】
操作パネル上のスタートスイッチを押すことにより、また給紙テーブル200の給紙ローラ42の1つが選択されて回転し、ペーパーバンク43に多段に設けられた給紙カセット44の1つからシートPを繰り出し、分離ローラ45で1枚ずつ分離して給紙路46に挿入し、搬送ローラ対47で搬送して作像部100内の給紙路48に導き、レジストローラ対49に突き当てて停止させる。次に、中間転写ベルト15上の合成カラー画像にタイミングを合わせてレジストローラ対49を回転し、中間転写ベルト15と二次転写装置19との間にシートPを送り込み、二次転写装置19で転写してシートP上にカラー画像を転写する。
【0033】
二次転写ローラ23を通過した未定着トナー像を担持したシートPを、定着装置60へ搬送し、定着装置60で熱と圧力とを加えて転写画像を定着する。画像定着後のシートPは、切換爪55で切り換えて排出ローラ対56によって排出し、排紙トレイ57上にスタックするか、又は切換爪55で切り換えて反転装置28に導入し、ここでシートPを反転して再び転写位置へと導き、裏面にも画像を記録し、その後、排出ローラ対56で排紙トレイ57上に排出する。このとき、画像転写後の中間転写ベルト15上に残留する残留トナーを中間転写ベルトクリーニングユニット90で除去し、タンデム型画像形成部20による再度の画像形成に備える。
【0034】
次に、本発明の特徴部である、感光体ドラム40の回転駆動装置である遊星歯車減速機構110を備えた遊星歯車減速モジュール105について、実施例を挙げ、図を用いて説明する。ここで、各画像形成ユニット38に対応する遊星歯車減速モジュール105の構成は、対応する各画像形成ユニット38で使用するトナーの色が異なるのみで、その構成・動作は、同一でああるので以下の説明では、符号Y、M、C、Bkは適宜、省略して説明する。
【0035】
(実施例1)
まず、本実施形態の遊星歯車減速モジュール105の、第1の実施例である、実施例1から説明する。本実施例の遊星歯車減速モジュール105は、図2に示すように、一般に2HKと呼ばれる固定内歯歯車を2段で用いた遊星歯車減速機構110を採用した。そして、主に、固定内歯歯車112と一体に成形されたハウジング111と、1段目の遊星歯車114と、1段目のキャリア115を有している。また、1段目のキャリア115に接続され1段目の出力軸でもある2段目の太陽歯車116と、2段目の遊星歯車117と、2段目のキャリア118と、2段目のキャリア118に接続された2段目の出力軸である出力軸ジョイント119を有している。また、装置本体の本体側取り付け側板160にネジ止め固定されるとともに、出力側のエンドプレートである出力軸エンドプレート130と、駆動モータ140が接続されるとともに、入力側のエンドプレートであるモータ取り付けプレート134を有している。そして、モータ取り付けプレート134に接続される駆動モータ140を有しており、駆動モータ140のモータ軸141のモータ取り付けプレート134側にはハスバ歯型が形成され、1段目の太陽歯車として機能するモータギヤ113を有している。
【0036】
画像形成装置に用いられる遊星歯車機構の樹脂製の固定内歯歯車に要求される加工精度は、歯車精度等級で、(新JIS7級)又はそれ以上である。そこで、本実施例では、精度確保とともに噛み合い振動を低減する狙いから、ヤング率が金属より低いPOM(ポリアスタール)、ナイロン、ポリカーボネート等の領域であり、かつ粘性のある樹脂材料を選択した成形品を用いることとした。ここで、本実施例では、後述するハウジング111と、出力軸エンドプレート130及びモータ取り付けプレート134との接着による固定を行なうため、ナイロン又はポリカーボネートを用いることとしている。
【0037】
また、高精度な樹脂成形の条件を満たすためには、成形時の流動性を良くするとともに、小型で極力異形でない形状にし、ヒケ等の部分的な収縮変形を起こさせないために偏肉部を設けないことが重要である。また、単純化された形状では、材料は一定方向に均一に流れることができ、高精度な歯形を金型から転写することができる。また、小型で極力異形でない形状にし、偏肉部を設けない形状とすることは、遊星歯車機構に取り付けた後の、環境温度や外力等による変形を部材内で略均一にし、回転精度を向上させる上でも重要である。そして、固定内歯歯車112を一体に成形したハウジング111に、ネジやカシメ等による締結で機械的応力を、固定内歯歯車に直接作用させることも好ましくない。これらを考慮して、本実施例の遊星歯車減速モジュール105では、図2に示すように高い加工精度が要求される固定内歯歯車と一体に成形されたハウジング111を、ネジ止めやカシメ等を用いた固定をしない、リブ構造等も有さない単純な構造とした。
【0038】
そして、作用するねじれ剛性を計算のうえ歯形裏面(外周部分)は、必要な肉厚確保の上でストレートの形状とする。肉厚は歯部高さの2〜5倍程度としている。円筒形状として作られ、ネジ止めする箇所が無いので、組付けによる部分的応力の作用による変形現象も起きない。さらに、遊星歯車減速モジュール105として組み付け後に本体へ取り付けて駆動させる時も、駆動モータ140の重量によるモーメントが、固定内歯歯車112と一体に成形されたハウジング111に直接作用して、固定内歯歯車112に曲げ変形が起こらないような組み付けの構造とした。
【0039】
図3に示すように、ハウジング111の内径側(歯形側)には、モータ取り付けプレート134と出力軸エンドプレート130と嵌め合わせて位置決めを行なうために、両端部に各々、数mmの歯形を形成しない部分であるハウジング凹部121を形成している。このハウジング凹部121は、その内径を固定内歯歯車112の歯底半径よりも大きく形成するとともに内径精度を確保して、それぞれモータ取り付けプレート134と、出力軸エンドプレート130に形成した位置決め凸部に嵌合させる雌型嵌合部として機能させる。さらに、ハウジング凹部121の端面部分には、成形時のバリによる突起を発生させることなく、直角度が保障される基準平面としての形成を施す。そして、モータ取り付けプレート134にはモータ取り付けプレート位置決め凸部135を、出力軸エンドプレート130にはエンドプレート位置決め凸部131を、それぞれ雌型嵌合部であるハウジング凹部121に嵌め合わせる雄型嵌合部として設けている。
【0040】
遊星歯車減速モジュール105は、図2に示すように、モジュールとして装置に組み付けた時、駆動モータ140の荷重を固定内歯歯車112が受けて、これに過大な力が作用しないようにする必要がある。そのため、出力軸エンドプレート130にモータ取り付けプレート134と直接取り付け固定するための複数のホルダー部133を一体又は分割して設けて、それぞれの頂点にモータ取り付けプレート134を取り付け、ネジ143でネジ止め固定するようにした。また、固定内歯歯車112、駆動モータ140のモータ軸141に形成されたモータギヤ113及び出力軸エンドプレート130に形成された出力軸受け部120との同軸度を確保できるようにしている。さらに、1段目の遊星歯車114、2段目の遊星歯車117との平行度も確保できるようにしている。このように、出力軸エンドプレート130とモータ取り付けプレート134とは、ハウジング111を中間に挟み込んで、出力軸エンドプレート130に設けられたホルダー部133に複数個所で、締結固定させて一体化させる構造となっている。したがって、本実施例の遊星歯車減速モジュール105は、ハウジング111と一体に成形された固定内歯歯車112に直接ネジ止め等による歯形部を変形させる力が作用しない構造とするとともに、取り付け精度と剛性が確保される。
【0041】
そして、遊星歯車減速モジュール105の組立時には、図3に示すように、まず、ハウジング111内に収容すべき各部材を収納する。次に、ハウジング111の両端に設けられた固定内歯歯車112の中心軸と同軸を保障するように加工されたハウジング凹部121に、それぞれモータ取り付けプレート位置決め凸部135とエンドプレート位置決め凸部131を挿入する。また、固定内歯歯車112を、モータ取り付けプレート134と出力軸エンドプレート130とで挟んで組み付けた後に、出力軸エンドプレート130のホルダー部133と駆動モータ140が取り付けられたモータ取り付けプレート134とをネジ143で締結して固定する。また、本実施例の出力軸エンドプレート130には、完成した遊星歯車減速モジュール105を、本体取り付け側板160に固定するためのネジ止め穴が設けられている。
【0042】
このように構成することで、環境温度の上昇にともなって各部材が熱膨張した場合でも、ハウジング111の両端部の支持を嵌め合いにより行なっているので、各部材は外側に均等に拡がる。したがって、ハウジング111が他の部材に規制されて、ハウジング111に一体に成形された固定内歯歯車112に局部的な変形は起こらない。仮に、装置温度上昇が数十°Cあったとしても、固定内歯歯車112の内径を位置決めして嵌合させるので、樹脂が熱膨張を起こした場合でも、樹脂肉厚の外側部の膨張を制約するものがない。そのため、固定内歯歯車112の歯巾の端部だけが拘束されて、他の部分に比較して変形量が少ないというような、異なった変形分布が発生することがなく、均一膨張が歯面全周に行われることになる。したがって、回転速度変動のない高精度回転が獲得出来る。また、低温時収縮の問題に関しては、対象とする装置は一般にオフィスでの使用が前提のため、低温収縮に対する考慮よりも室温からの上昇分を考えれば良い。
【0043】
また、狙いの回転精度を得るためには、入力側の太陽歯車となるモータ軸141に形成されたモータギヤ113と、固定内歯歯車112との同軸精度は50μm以下程度にしなければならない。ここで、ハウジング111のハウジング凹部121は、固定内歯歯車112の歯面と同軸を基準に加工されている。また、モータ取り付けプレート134のモータ取り付けプレート位置決め凸部135も、モータ軸141の回転支持用ボールベアリング142を保持するモータ取り付けプレート134と同軸を基準に加工されている。このように加工された、ハウジング凹部121と、モータ取り付けプレート位置決め凸部135とを直接嵌合させることで、両者の高い同軸精度を獲得することができる。したがって、モータ軸141が1回転することに起因する、回転速度変動のない高精度回転が獲得することができる。
【0044】
また、固定内歯歯車112には、それとかみ合う遊星歯車114及び遊星歯車117により、駆動伝達されるトルクが作用する。また、1段目の遊星歯車114と2段目の遊星歯車117の伝達トルク差から、噛み合う固定内歯歯車112に作用する力が異なるため捩れ現象も起きてしまう。そのため、これらに抗する力で回転規制をしなければならない。そこで、本実施例では、固定内歯歯車112の周方向の回転を規制するために、ハウジング111と、モータ取り付けプレート134及び出力軸エンドプレート130との固定には接着剤を用いることとしている。また、接着剤としては、径方向における同軸度を確保するため、熱膨張係数が固定内歯歯車112が一体に成形されたハウジング111と近似な材料としてエポキシ系を用いるようにしている。
【0045】
上述したように構成することで、成形時に高精度な成形精度が獲得でき、組み付け後においても高精度な回転精度を維持できる樹脂製の固定内歯歯車112を備えた遊星歯車減速機構110と、この遊星歯車減速機構110と駆動モータ140とを一体とした遊星歯車減速モジュール105とを提供できる。
【0046】
(実施例2)
次に、本実施形態の遊星歯車減速モジュール105の、第2の実施例である、実施例2について説明する。本実施例と上述した実施例1とは、本実施例の遊星歯車減速モジュール105が、固定内歯歯車112の周方向の回転を規制するために、接着剤を用いない構成としたことに関する点のみ異なる。したがって、実施例1と共通する構成・動作については適宜省略して説明する。
【0047】
実施例1でも上述したように、遊星歯車減速機構110として、高精度な回転性能を得るためには、入力側の太陽歯車であるモータギヤ113と遊星歯車及び固定内歯歯車112との同軸度を確保する必要がある。そして、運転環境の変化(特に機内温度上昇による温度変化)が起きても、固定内歯歯車112の歯形への変形の影響が最少でなくてはならない。本実施例も、径方向における同軸の確保を、固定内歯歯車112と一体に成形されたハウジング111のハウジング凹部121の内径を、モータ取り付けプレート134に設けたモータ取り付けプレート位置決め凸部135に嵌合させて行なうようにした。また、出力軸エンドプレート130も同様であるので、固定内歯歯車112を一体に成形されたハウジング111の外形が外側に膨張しても拘束されることがなく、固定内歯歯車112の歯形部で部分的な変形が生じない。
【0048】
一方、周方向の回転の規制については、本実施例は実施例1と異なり、固定内歯歯車112の周方向の回転を規制するために、接着剤を用いない構成としている。これは、固定内歯歯車112の樹脂材として接着剤で接着し難い樹脂材であるPOMも利用可能にするためと、固定内歯歯車112を一体に成形されたハウジング111の外周の熱膨張による変形を、拘束させない構成とするためである。ここで、拘束させないとは、固定内歯歯車112の外形を規制する部材が無いということである。そして、実施例1の熱膨張係数が近似な接着剤で接着した場合には、従来の固定方向に比べて拘束力は小さいものの、多少の拘束力が発生してしまう、本実施例の固定内歯歯車112の周方向の回転を規制する構成では、その拘束力をより低減することができる。
【0049】
図4に示すように、本実施例のハウジング111の両端のハウジング凹部121には、円周方向に90度間隔で均等に、遊星歯車114及び遊星歯車117の回転時に発生するトルクによる固定内歯歯車112の回転を規制する凹形回転規制部122を設けている。そして、一端側のハウジング凹部121に嵌合するモータ取り付けプレート134のモータ取り付けプレート位置決め凸部135にも、ハウジング凹部121に設ける凹形回転規制部122に嵌合するように凸形回転規制部123を設けている。そして、モータ取り付けプレート134のモータ取り付けプレート位置決め凸部135とハウジング凹部121とを互いに嵌合させることで、固定内歯歯車112の回転を規制するように構成している。
【0050】
ハウジング凹部121に設ける固定内歯歯車112の回転を規制する凹形回転規制部122は、ハウジング凹部121の端面から、固定内歯歯車112の中心軸に平行に、固定内歯歯車112に干渉しない距離をおいた位置まで形成したUの字状の切込みからなる。また、モータ取り付けプレート134に設ける凸形回転規制部123は、モータ取り付けプレート位置決め凸部135の外周部であって、上述した凹形回転規制部122に嵌合するように設けた、モータ取り付けプレート134の基面からのUの字状の突起部からなる。そして、この凸形回転規制部123の形状は、凹形回転規制部122のUの字状の切込みよりも、僅かに小さく形成している。これは、ハウジング111の外周の熱膨張による周方向及び径方向の変形が生じても、凸形回転規制部123と凹形回転規制部122とが互いに拘束しないようして、互いに摺動性を獲得できる構造とするためである。このことで、ハウジング111の外周の熱膨張による周方向及び径方向の変形が生じても、当接しているUの字の片辺を基準として、周方向及び径方向に変形でき、ハウジング111の周方向及び径方向の変形を拘束せず、周方向の回転を規制することができる。また、ハウジング凹部121の端面の加工は、同軸度の保障とともに直角度(倒れ)を確保して、太陽歯車であるモータギヤ113との適正な噛み合いを保障できる精度を持もつように形成されている。
【0051】
そして、本実施例では、遊星歯車減速モジュール105を装置本体に取り付けた時に、ハウジング111の両端のハウジング凹部121に、円周方向に90度間隔で均等に設けた4箇所の凹形回転規制部122の内、2箇所が略鉛直線上に配置されるように配置している。また、嵌合するモータ取り付けプレート134に設ける凸形回転規制部123も、それぞれ、円周方向に90度間隔で均等に設ける4箇所の凸形回転規制部123の内、2箇所が略鉛直線上に配置されるように配置している。また、出力軸エンドプレート130側にも、モータ取り付けプレート134と同様な、凸形回転規制部123を設けている。
【0052】
また、本実施例では、ハウジング111のハウジング凹部121に形成する凹形回転規制部122を、固定内歯歯車112に干渉しない距離をおいた、歯形精度に影響ない部分に等間隔に4箇所形成している。しかし、凹形回転規制部122を形成する箇所数は、4箇所に限定されるものではなく、固定内歯歯車112に作用するトルクの大きさに応じて、その箇所数を増加させる構成として良い。凹形回転規制部122を形成する箇所数を増加させることで、それぞれの嵌合部に作用する力を分散させて、高い剛性でハウジング111と、モータ取り付けプレート134及び出力軸エンドプレート130を固定することができる。
【0053】
また、固定内歯歯車112と一体に成形される樹脂製のハウジング111と嵌合するモータ取り付けプレート134及び出力軸エンドプレート130には、一般に、ハウジング111とは熱膨張係数が異なるアルミ又は鉄のプレートが使用されることが多い。そして、熱膨張係数が異なるアルミ又は鉄のプレートと、樹脂製のハウジング111との接触面の摩擦係数が高と、環境温度の変化にともない、変形量の差が生じ、ハウジング111の接触面周辺に応力変形が生じ、固定内歯歯車112の歯型部分に伝搬してしまう。そこで、本実施例では、図4に示すように、ハウジング111とモータ取り付けプレート134及び出力軸エンドプレート130との接触部には、摺動材として作用するように低摩擦係数の薄いフィルムシート124を介在させる構成とした。このことで、熱膨張係数が異なるモータ取り付けプレート134及び出力軸エンドプレート130と樹脂製のハウジング111を嵌合した場合でも、ハウジング111の端部で部分的に変形せずに均一な膨張が行われ、固定内歯歯車112でも均一な膨張が行われる。さらに、接触部での摺動性を向上させるためにグリースを介在させるとより好適である。これにより、ミクロンオーダーの伸縮が、引っ掛かり抵抗を持たずに均一に行われることとなる。
【0054】
また、本実施例では、実施例1のように接着剤で、固定内歯歯車112を一体に成形したハウジング111を、出力軸エンドプレート130とモータ取り付けプレート134とに接着固定していない。そこで、固定内歯歯車112を一体に成形したハウジング111の長さを、ホルダー部133によって決定される出力軸エンドプレート130とモータ取り付けプレート134間の長さより若干短く(本実施例では0.3パーセント程度短く)設定する。このことで、熱膨張の影響での変形を受けることなく、最少の遊び量で高精度駆動が可能である。
【0055】
上述したように構成することで、POM等の接着に適さない樹脂製の固定内歯歯車112においても高精度な回転精度を維持できる遊星歯車減速機構110を提供することができる。また、本実施例の固定内歯歯車112の周方向の回転を規制する構成では、実施例1の構成と比べ、拘束力を低減することができ、より高精度な回転精度を維持できる遊星歯車減速機構110を提供することができる。また、熱膨張係数が異なるモータ取り付けプレート134及び出力軸エンドプレート130と樹脂製のハウジング111を嵌合した場合でも、熱膨張による応力変形により、歯形精度が劣化して回転精度が劣化するのを抑制できる遊星歯車機構110を提供することができる。そして、このような遊星歯車減速機構110と駆動モータ140とを一体とした遊星歯車減速モジュール105も提供できる。
【0056】
また、本実施例では、固定内歯歯車112の回転規制部として、出力軸エンドプレート130及びモータ取り付けプレート134には凸形の形状部を設け、ハウジング凹部121には凹形の切れ込み部を設けているが、本発明は、これに限定されるものではない。例えば、出力軸エンドプレート130及びモータ取り付けプレート134には凹形の形状部を設け、ハウジング凹部121には凸形の延出部を設ける構成としても良い。ただし、ハウジング凹部121には凸形の延出部を設ける場合には、出力軸エンドプレート130及びモータ取り付けプレート134には凹形の形状部よりも僅かに小さく形成する必要がある。
【0057】
(実施例3)
次に、本実施形態の遊星歯車減速モジュール105の、第3の実施例である、実施例3について説明する。本実施例と上述した実施例2とは、本実施例の遊星歯車減速モジュール105が、固定内歯歯車112のスラスト方向(歯巾方向)のガタを無くすための構成を備えていることに関する点のみ異なる。したがって、実施例2と共通する構成・動作については適宜省略して説明する。
【0058】
樹脂製の固定内歯歯車を用いることは、歯の噛み合い振動抑制による回転速度変動低減(角速度変動低減)や騒音低減が可能であることから有利であり、実施例1又は2で上述したように、代表的な材料としてはPOM、ナイロン、ポリカーボネート等が用いられる。樹脂製の固定内歯歯車112では、環境温度の変化による熱膨張で円周方向の寸法が変化するが、同時に歯巾方向にも寸法の変化が起き、組付け後に、スラスト方向のガタとなる。スラスト方向のガタが生じると、ハウジング111に一体に成形された固定内歯歯車112の同軸度の保障ができなくなるとともに直角度(倒れ)を確保することもできなくなる。そして、ガタが大きくなると、太陽歯車であるモータギヤ113との適正な噛み合いも保障できなくなってしまう。そして、上述した実施例2のように、固定内歯歯車112を一体に成形したハウジング111の長さを、ホルダー部133によって決定される出力軸エンドプレート130とモータ取り付けプレート134間の長さより若干短く設定した場合には、より顕著となる。
【0059】
そこで、本実施例では、組付け後のスラスト方向のガタをなくして機能させるために、固定内歯歯車112が一体に成形されたハウジング111の両端部に均一なスラスト方向力を作用させる構成とした。つまり、ハウジング111の出力軸エンドプレート130側に弾性体を設け、モータ取り付けプレート134側へ均一なスラスト方向力を作用させる構成とした。
【0060】
図5には、弾性体として弾性変形ボール126を用いた例を示している。この弾性変形ボール126は、弾性変形するゴム又はエラストマーで作られたボールであり、遊星歯車減速モジュール105組付け後には、ハウジング111の出力軸エンドプレート130側の端面に当接する。具体的な構成としては、ハウジング111を、組付けの基準面となるモータ取り付けプレート134側に押し当てて固定できるように、弾性変形する弾性変形ボール126を、出力軸エンドプレート130とハウジング111の端部の面との間に設ける。
【0061】
ここで、図6は、弾性変形ボール126の出力軸エンドプレート130上での配置説明図であるが、図6(a)は、出力軸エンドプレート130の断面図であり、図6(b)は、モータ取り付けプレート134側から視た平面図である。図6(a)に示すように、弾性変形ボール126を設ける出力軸エンドプレート130の箇所に、弾性変形ボール126が所定長さだけモータ取り付けプレート134側に突出する深さの穴を、エンドプレート位置決め凸部131に沿って全周に均等な角度で設ける。本実施例では、図6(b)に示すように、出力軸エンドプレート130上に設けた各凸形回転規制部の間になるように90度間隔で設けている。つまり、図6(b)図中、エンドプレート位置決め凸部131を磁気コンパスの方位板と仮定した場合に、鉛直直上を北とした場合の、北東、南東、南西、北西の方向に相等する部分に、弾性変形ボール126を設けた。
【0062】
このように構成することで、ハウジング111は、若干の変形が与えられて固定されることで、温度変化に伴う内歯歯車のスラスト方向伸びがあっても、この部分で変形を吸収することが可能である。また、仮に環境温度が低下しハウジング111が多少収縮した場合であっても、弾性変形ボール126で組付けの基準面となるモータ取り付けプレート134側に押し当てられているので、モータ取り付けプレート134側でスラスト方向のガタが生じることはない。そして、上述した実施例2のように、固定内歯歯車112を一体に成形したハウジング111の長さを、若干短く設定した場合でも、突出する弾性変形ボール126の長さ、又は弾性変形ボール126の弾性変形率を設定することで対応することもできる。
【0063】
したがって、環境温度の変化による熱膨張又は収縮が生じても、ハウジング111に一体に成形された固定内歯歯車112の同軸度の保障ができるとともに、直角度(倒れ)を確保することもでき、太陽歯車であるモータギヤ113との適正な噛み合いも保障できる。さらに、設定している圧力の微少変化も、弾性変形ボール126で吸収されて、固定内歯歯車112の噛合部には作用しないので、撓みによる噛み合い変動の発生を抑制することが出来る。また、別の効果として、これを設けない時に発生する微振動を無くすことができ、速度変動成分を完全に除去することもできる。
【0064】
また、図7には、弾性体として金属バネ125を用いた例を示している。この例では、弾性変形ボール126に換え金属バネ125を用いることで、上述した弾性変形ボール126と同様な作用・効果を奏することができる。ここで、出力軸エンドプレート130に設ける穴の径、及びその深さは、金属バネ125の径、及びバネ長、バネ定数により、適宜、最良な値を選択するものとする。
【0065】
また、ここで、図5乃至7では、図中の記載が視難くなるため図示していないが、実施例2と同様に、ハウジング111とモータ取り付けプレート134との間には、接触面の摩擦係数(μ)を低減させるフィルムシートとグリースを介在させている。
【0066】
(実施例4)
次に、本実施形態の遊星歯車減速モジュール105の、第4の実施例である、実施例4について説明する。本実施例と上述した実施例3とは、本実施例の遊星歯車減速モジュール105が、スラスト方向(軸方向)のガタを無くすために、固定内歯歯車及び遊星歯車にねじれ方向、ねじれ角度と、その回転方向を設定することに関する点のみ異なる。したがって、実施例3と共通する構成・動作については適宜省略して説明する。
【0067】
本実施例では、実施例3と同様の効果、あるいは実施例3の効果を高めるための方法として次のような構成を採用している。遊星歯車114、遊星歯車117、及び固定内歯歯車112の歯形のねじれ方向、ねじれ角、及びそれぞれの回転方向を設定して、回転駆動時に、固定内歯歯車112に作用する力が、常にモータ取り付けプレート134側に働くように構成している。固定内歯歯車112に作用する力が、常にモータ取り付けプレート134側に働くように構成することで、固定内歯歯車112と一体に成形されたハウジング111の端部の面は、モータ取り付けプレート134の基準面に押し付けられ密着されることになる。
【0068】
まず、図8(a)を用いて、はすば歯車の歯型部に加わる力を説明する。図8(a)は、はすば歯車の1つの歯に加わる力を図示した説明図である。図8(a)の歯面に垂直な断面図に示すように、はすば歯車の歯面に対して垂直な力(Fn)を作用させると、垂直な力(Fn)は歯面に垂直な断面における円周力F1と半径方向力Frに分解される。次にこの歯面に垂直な断面における円周力F1は、基準円に接する平面図に示すように、次の式(2)、(3)で求められる、接線力Ftと軸方向力Fxに分解される。
Ft = F1 cosβ ・・・ (2)
Fx = F1 sinβ ・・・ (3)
【0069】
次に、図8(b)を用いて、はすば歯車の歯型部に加わる力の方向について説明する。図8(b)は、はすば歯車の伝達系における駆動歯車(小歯車)と、被動歯車(大歯車)についての、ねじれ方向と駆動歯車の回転方向に基づく、各歯車に作用する力の方向を示した図を表に記載したものである。ここで、図8(b)での駆動歯車(小歯車)を本実施例の遊星歯車114及び遊星歯車117として、被動歯車(大歯車)を本実施例の固定内歯歯車112として適用できる。また、この表で着目すべきことは、本実施例の固定内歯歯車112に相等する被動歯車(大歯車)に働く軸方向の力(Fx2)の方向と、各歯車のねじれ方向と、本実施例の遊星歯車114及び遊星歯車117に相等する駆動歯車(小歯車)の回転方向である。
【0070】
本実施例における各歯車のねじれ方向と、回転方向を、駆動モータ140側から固定内歯歯車112側を視た場合を基準にして、図中時計方向の回転を’右回転’、図中奥に行くに従い時計回転に傾斜して行くねじれの方向を’右ねじれ’とする。固定内歯歯車112に作用する力が、常にモータ取り付けプレート134側に働く場合、つまり、軸方向の力(Fx2)が図中手前側へ向かうのは、表中の駆動歯車が右ねじれ・右回転の(A−R)、もしくは、駆動歯車が左ねじれ・左回転の(B−L)である。したがって、固定内歯歯車112に作用する力が、常にモータ取り付けプレート134側に働くように設定するためには、表中の駆動歯車が右ねじれ・右回転の(A−R)、もしくは、駆動歯車が左ねじれ・左回転の(B−L)のように、遊星歯車114、遊星歯車117、及び固定内歯歯車112の歯形のねじれ方向、ねじれ角(β)、及びそれぞれの回転方向を設定すればよい。
【0071】
また、図9(a)において、図中左側を出力側のとし、右側を入力側のとしてモータ駆動側とすると、ギヤのねじれ方向と駆動モータ140の回転方向は、次の手順で決定できる。
1)感光体ドラム40の回転方向から決定される、出力軸である出力軸ジョイント119の(=2段目遊星歯車)回転方向を設定する。
2)固定内歯歯車112がモータ取り付けプレート134側に移動するように、遊星歯車114、遊星歯車117と固定内歯歯車112、及びモータギヤ113のねじれ方向を設定する。
3)駆動モータ140回転方向の設定する。
以上を決定して設定する。
【0072】
図9(a)の図中、1段目の遊星歯車114の作用する軸方向力Fx2と、2段目遊星歯車の作用する軸方向力Fx2との合力であるFt合力が、固定内歯歯車112に作用することになる。ここで、出力軸ジョイント119の回転方向(=2段目キャリア)に対する、それぞれのねじれ方向と駆動モータ140の回転方向は、図9(b)に図示するようになる。つまり、出力軸ジョイント119、モータギヤ113、及び駆動モータ140の回転方向が右回転(時計廻り)、遊星歯車114と遊星歯車117の回転方向が左回転(反時計廻り)となる。したがって、図8(b)の表中での駆動歯車が左ねじれ・左回転の(B−L)となるので、遊星歯車114、遊星歯車117のねじれ方向を’左ねじれ’に設定し、固定内歯歯車112、モータギヤ113のねじれ方向が’右ねじれ’に設定する。
【0073】
上述したように、固定内歯歯車112自身によって、モータ取り付けプレート134側に移動しようとする力を生じさせることができるので、実施例3と同様な作用・効果を奏することができる。また、固定内歯歯車112自身によって、モータ取り付けプレート134側に移動しようとする力と、実施例3に記載した弾性変形する金属バネ125や弾性変形ボール126等の加圧部材による力と複合させる方法も採用できる。このようにすることで、各歯車のねじれ方向が逆で、出力軸エンドプレート130側に力が作用するときに比べて加圧部材の設定は低圧力で良いことになり、取り付け固定のためのエンドプレートの構造も小型でかつ軽量に構成することが可能となる。
【0074】
また、上述した本実施形態の遊星歯車機構では、遊星歯車減速機構について説明したが、本発明は、減速機構に限定されるものではなく、増速機構にも適用可能である。また、本発明は、遊星歯車機構も一般に2HKと呼ばれるものに限定されるものではなく、他の形式の遊星歯車機構にも適用可能である。また、本発明は、入力軸が駆動モータ軸であり、1段目の太陽歯車がモータギヤである遊星歯車モジュールについて説明したが、このような構成に限定されるものではなく、例えば、入力軸に接続されたアイドラギヤを複数のアイドラギヤを介して駆動モータで駆動するような構成にも適用可能である。
【0075】
以上、本実施形態の遊星歯車減速機構110では、次のような作用・効果を奏することができる。固定内歯歯車112を一体的に成形したハウジング111の形状を極力、異形構造をとらない、偏肉部のない単純な形状にし、組付けをネジ止めを行なわない支持方法としている。したがって、偏肉及びネジの締め付けに起因する樹脂製の固定内歯歯車112の歯形部における変形を抑制できる。つまり、ハウジング111と一体に成形された樹脂製の固定内歯歯車112の歯形部への、成形時及び組み付け後の、変形要因となる形状や固定法を除去しているので、極力変形を起こさないで、安定した高精度駆動を行うことが可能である。よって、成形時に高精度な成形精度が獲得できるとともに、組み付け後においても高精度な回転精度を維持できる樹脂製の固定内歯歯車112を備えた遊星歯車減速機構110を提供することができる。
また、本実施形態の遊星歯車減速機構110では、ハウジング111の長手方向の両端部にハウジング凹部121を形成し、それぞれモータ取り付けプレート134と出力軸エンドプレート130に形成した位置決め凸部に嵌合させる雌型嵌合部として機能させている。また、モータ取り付けプレート134にはモータ取り付けプレート位置決め凸部135を、出力軸エンドプレート130にはエンドプレート位置決め凸部131を、それぞれ雌型嵌合部であるハウジング凹部121に嵌め合わせる雄型嵌合部として設けている。このように構成した、ハウジング凹部121と、モータ取り付けプレート位置決め凸部135及びエンドプレート位置決め凸部131とを嵌合させることで、固定内歯歯車112をモータギヤ113及び出力軸エンドプレート130に形成された出力軸受け部120と同軸にし、固定内歯歯車112の中心軸の移動を規制することができる。したがって、環境温度の上昇にともなって各部材が熱膨張した場合でも、ハウジング111の両端部の支持を嵌め合いにより行なっているので、各部材は外側に均等に拡がり、異なった変形分布が発生することがなく、均一膨張が歯面全周に行われることになる。よって、組み付け後においても、回転速度変動のない高精度回転が獲得できる。
また、本実施形態の遊星歯車減速機構110では、固定内歯歯車112をモータギヤ113及び出力軸エンドプレート130に形成された出力軸受け部120と同軸にした後、ハウジング111をモータ取り付けプレート134と出力軸エンドプレート130に接着剤により固定しているので、固定内歯歯車112の周方向の回転を規制することができる。また、固定内歯歯車112の周方向の回転を規制のに、ハウジング111に変厚部等を設けない構成であり、熱膨張係数がハウジング111と近似な材料としてエポキシ系の接着剤を用いることもできる。したがって、環境温度が変化した場合であっても、固定内歯歯車112の径方向の同軸度を確保することもできる。よって、従来の固定方法に比べ、組み付け後においても、回転速度変動のない高精度回転が獲得できる。
また、本実施形態の遊星歯車減速機構110では、モータ取り付けプレート位置決め凸部135には、周方向の均等な位置に凸形回転規制部123を設け、ハウジング凹部121には、周方向の均等な位置に凹形回転規制部122を設けて互いを嵌合させる。そして、凸形回転規制部123と凹形回転規制部122は、ハウジング111の径方向の伸縮を規制しないで、ハウジング111の周方向の回転を規制する形状であり、凸形回転規制部123と凹形回転規制部122とが互いに拘束せず、互いに摺動性を獲得できる。したがって、ハウジング111の外周の熱膨張による周方向及び径方向の変形が生じても、当接しているUの字の片辺を基準として、周方向及び径方向に変形でき、ハウジング111の周方向及び径方向の変形を拘束せず、周方向の回転を規制することができる。よって、組み付け後においても、接着剤で固定する場合に比べ、より回転速度変動のない高精度回転が獲得できる。また、出力軸エンドプレート130側にも、モータ取り付けプレート134と同様な、凸形回転規制部123を設けているので、同様な作用・効果を奏することができる。さらに、POM等の接着に適さない樹脂製の固定内歯歯車112についても適用可能である。
また、本実施形態の遊星歯車減速機構110では、ハウジング111の出力軸エンドプレート130側に弾性体を設け、モータ取り付けプレート134側へ均一なスラスト方向力を作用させており、組付け後にスラスト方向のガタをなくして機能させれる。したがって、環境温度の変化による熱膨張又は収縮が生じても、ハウジング111に一体に成形された固定内歯歯車112の同軸度の保障ができるとともに、直角度(倒れ)を確保することもでき、太陽歯車であるモータギヤ113との適正な噛み合いも保障できる。さらに、設定している圧力の微少変化も、弾性変形ボール126で吸収されて、固定内歯歯車112の噛合部には作用しないので、撓みによる噛み合い変動の発生を抑制することが出来る。また、別の効果として、これを設けない時に発生する微振動を無くすことができ、速度変動成分を完全に除去することもできる。
また、本実施形態の遊星歯車減速機構110では、遊星歯車114、遊星歯車117、及び固定内歯歯車112の歯形のねじれ方向、ねじれ角、及びそれぞれの回転方向を設定して、回転駆動時に、常にモータ取り付けプレート134側への力を固定内歯歯車112に作用させることができる。したがって、ハウジング111の出力軸エンドプレート130側に弾性体を設けて、モータ取り付けプレート134側へ均一なスラスト方向力を作用させた場合と同様な作用・効果を奏することができる。また、固定内歯歯車112自身によって、モータ取り付けプレート134側に移動しようとする力と、ハウジング111の出力軸エンドプレート130側に弾性体を設けて生じさせるスラスト方向力とを複合させる方法も採用できる。このようにすることで、各歯車のねじれ方向が逆で、出力軸エンドプレート130側に力が作用するときに比べて加圧部材の設定は低圧力で良いことになり、取り付け固定のためのエンドプレートの構造も小型でかつ軽量に構成することが可能となる。
また、本実施形態の遊星歯車減速機構110では、モータ取り付けプレート134には、駆動モータ140が一体的に設けられ、モータ取り付けプレート位置決め凸部135も、モータ軸141の回転支持用ボールベアリング142を保持するモータ取り付けプレート134と同軸を基準に加工されている。このように加工されたモータ取り付けプレート位置決め凸部135と、ハウジング凹部121とを直接嵌合させることで、両者の高い同軸精度を獲得することができる。よって、モータ軸141が1回転することに起因する、回転速度変動のない高精度回転が獲得することができる。
また、本実施形態の遊星歯車減速モジュール105では、上述したような遊星歯車減速機構110を備えることで、遊星歯車減速機構110と同様な作用・効果を奏することができる。
また、本実施形態の画像形成装置である複合機では、上述したような遊星歯車減速機構110、又は上述した遊星歯車減速モジュール105を備えることで、遊星歯車減速機構110又は遊星歯車減速モジュール105と同様な作用・効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0076】
38 画像形成ユニット
40 感光体ドラム
60 定着装置
70 現像装置
100 作像部
105 遊星歯車減速モジュール
110 遊星歯車減速機構
111 ハウジング
112 固定内歯歯車
113 モータギヤ
114 1段目の遊星歯車
115 1段目のキャリア
116 2段目の太陽歯車
117 2段目の遊星歯車
118 2段目のキャリア
119 出力軸ジョイント
120 出力軸受け部
121 ハウジング凹部
122 凹形回転規制部
123 凸形回転規制部
124 フィルムシート
125 金属バネ
126 弾性変形ボール
130 出力軸エンドプレート
131 エンドプレート位置決め凸部
132 取り付け位置決め部
133 ホルダー部
134 モータ取り付けプレート
135 モータ取り付けプレート位置決め凸部
140 駆動モータ
141 モータ軸
142 回転支持用ボールベアリング
143 ネジ
150 感光体ドラムユニット
151 感光体シャフト
152 感光体フランジ
153 外歯ギヤ
154 ドラムホルダー
160 本体側取り付け側板
161 取り付け孔
【先行技術文献】
【特許文献】
【0077】
【特許文献1】特許第4099971号公報
【特許文献2】特開2009−037198号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、ハウジングと、固定内歯歯車と、太陽歯車と、前記固定内歯歯車と前記太陽歯車とに噛み合う複数の遊星歯車と、複数の前記遊星歯車を回動自在に支持するとともに前記ハウジングに対して回動自在に支持されたキャリアと、入力軸を回転自在に支持する入力軸エンドプレートと、出力軸を支持する出力軸エンドプレートと、を有する入力軸の回転速度を増速又は減速して出力軸に伝達する遊星歯車機構において、
前記固定内歯歯車は、前記ハウジングと一体に成形された樹脂製であり、
前記入力軸エンドプレート又は前記出力軸エンドプレートには、この遊星歯車機構を設ける装置本体への取り付けを行ない、対向する出力軸エンドプレート又は入力軸エンドプレートとの接続固定を行う機能が付加され、
前記ハウジングは、その外周に固定のためのネジによる締結構造も、リブ構造も有さない略円筒状の形状に成形されており、
前記ハウジングを、入力軸エンドプレートと出力軸エンドプレートに設けた前記固定内歯歯車の中心軸と同軸にする加工部を基準に、入力軸エンドプレートと出力軸エンドプレートに嵌め合わせたことを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項2】
請求項1に記載の遊星歯車機構において、
ハウジングの長手方向の両端部には、固定内歯歯車の歯底半径よりも内径を大きくした、前記固定内歯歯車の中心軸と同軸な雌型嵌合部が設けられ、
入力軸エンドプレートと出力軸エンドプレートには、それぞれ、前記固定内歯歯車の中心軸と同軸にする加工部として雄型嵌合部が設けられており、
入力軸エンドプレートと出力軸エンドプレートの雄型嵌合部と、前記ハウジングの雌型嵌合部とを嵌め合わせて、前記固定内歯歯車の中心軸の移動を規制することを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の遊星歯車機構において、
固定内歯歯車を入力軸及び出力軸と同軸にした後、ハウジングを入力軸エンドプレートと出力軸エンドプレートに接着剤により固定することを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項4】
請求項2に記載の遊星歯車機構において、
入力軸エンドプレートと出力軸エンドプレートの雄型嵌合部には、周方向の均等な位置に回転規制部を設け、
ハウジングの雌型嵌合部には、周方向の均等な位置に回転規制用切欠き部を設け、
前記入力軸エンドプレートと前記出力軸エンドプレートの雄型嵌合部に設けられた前記回転規制部と、前記ハウジングの雌型嵌合部に設けられた前記回転規制用切欠き部は、前記ハウジングの径方向の伸縮を規制せず、かつ、前記ハウジングの周方向の回転を規制する形状であることを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項5】
請求項4に記載の遊星歯車機構において、
固定内歯歯車と一体に成形されたハウジングに対して、入力軸エンドプレート側へのスラスト力を作用させて固定するための弾性部材による加圧手段を、出力軸エンドプレートに同心円状に、かつ、等分割的な位置に設けたことを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の遊星歯車機構において、
遊星歯車機構の回転駆動時に、固定内歯歯車に対して、入力軸エンドプレート側へのスラスト力が発生するように、固定内歯歯車及び遊星歯車機構内の他の歯車の歯形のねじれ方向と、回転方向を設定したことを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一に記載の遊星歯車機構において、
入力軸エンドプレートには、駆動モータが一体的に設けられていることを特徴とする遊星歯車機構。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一に記載の遊星歯車機構を備えたことを特徴とする回転駆動装置。
【請求項9】
請求項1乃至7のいずれか一に記載の遊星歯車機構、又は請求項8に記載の回転駆動装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−82842(P2012−82842A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−226779(P2010−226779)
【出願日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】