遊離の有機酸のそのアンモニウム塩からの反応性抽出
本発明は、有機酸のアンモニウム塩の反応とその都度の遊離の有機酸への変換のための方法であって、アンモニウム塩の水溶液を、有機抽出剤と接触させ、塩分割を、前記水溶液及び前記抽出剤が液状の物質状態で存在する温度と圧力で行い、その際、ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスが導入されて、NH3が前記水溶液から除去され、かつ形成された有機の遊離酸の少なくとも一部が前記の有機抽出剤中に移行する前記方法に関する。さらに、本願に記載の発明は、有機酸、好ましくはカルボン酸、スルホン酸もしくはホスホン酸、特にα−ヒドロキシカルボン酸もしくはβ−ヒドロキシカルボン酸を、そのアンモニウム塩から、アンモニアの遊離及び除去を行い、そして同時に遊離される酸を、好適な抽出剤を用いて水相から抽出することによって遊離させるための改善された方法を提供する。前記方法は、反応的抽出に相当する。有機酸をそのアンモニウム塩水溶液から反応的抽出することは、ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガス、例えば窒素、空気、蒸気又は不活性ガス、例えばアルゴンなどの使用によって明らかに改善することができる。遊離されるアンモニアは、連続的なガス流によって水溶液から除去され、再び製造方法に供給することができる。遊離酸は、蒸留、精留、結晶化、逆抽出、クロマトグラフィー、吸着などの方法又は膜法によって抽出剤から得ることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
序論
本発明は、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸などの遊離の有機酸、特にα−ヒドロキシカルボン酸を、それらの相応のアンモニウム塩から製造及び単離するための新規の改善された方法に関する。
【0002】
有機酸は、とりわけ、置換されたカルボン酸(I〜III)、スルホン酸(IV)及びホスホン酸(V)を含む:
モノカルボン酸:
【化1】
【0003】
ジカルボン酸:
【化2】
【0004】
トリカルボン酸:
【化3】
【0005】
スルホン酸:
【化4】
【0006】
ホスホン酸:
【化5】
【0007】
ヒドロキシカルボン酸は、カルボキシル基もヒドロキシル基も有する特定のカルボン酸である。最も多く天然に存在する代表物は、α−ヒドロキシカルボン酸である。すなわちヒドロキシル基は、カルボキシル基に隣接した炭素原子上にある。
【0008】
【化6】
【0009】
重要なα−ヒドロキシカルボン酸は、乳酸、グリコール酸、クエン酸及び酒石酸の他にも、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルのための前駆物としての2−ヒドロキシ−イソ酪酸である。これらは、その主な使用範囲を、ポリマーの製造及び他の重合可能な化合物とのコポリマーの製造において見出している。商業的に同様に重要なα−ヒドロキシカルボン酸は、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸であり、それは通常はメチオニンヒドロキシアナログ(MHA)と呼称され、かつ動物の食餌において、必須アミノ酸の他に、メチオニンは、とりわけ例えば家禽及びブタなどの単胃動物の場合に重要な役割を担う。ラセミ体のMHAは、飼料添加剤として直接使用できる。それというのも、幾つかの動物の種ではインビボ条件下で、MHAの2つのエナンチオマーを天然アミノ酸であるL−メチオニンへと変換する変換機構があるからである。その際、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸は、まず非特異的なオキシダーゼによって酸化してα−ケト−メチオニンとなり、引き続きL−トランスアミナーゼで更に変換してL−メチオニンとなる。それによって、該生物中での使用可能なL−メチオニンの量は高まり、それは次いで動物の成長に使用することができる。
【0010】
ヒドロキシカルボン酸の他のクラスは、一般式Ib:
【化7】
を有するβ−ヒドロキシカルボン酸である。
【0011】
重要なβ−ヒドロキシカルボン酸は、例えば3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸及び3−ヒドロキシ−イソ酪酸である。最後のものは、2−ヒドロキシ−イソ酪酸と同様に、工業的に重要な生成物であるメタクリル酸及びメタクリル酸エステルのための前駆物として利用することができる。
【0012】
全ての有機酸は、アンモニアと、例えばモノカルボン酸の一般式:
【化8】
をもとに、相応のアンモニウム塩を形成する。
【0013】
先行技術
先行技術によれば、α−ヒドロキシカルボン酸は、好ましくはその基礎となるシアンヒドリンから、例えば塩酸、リン酸などの鉱酸を用いて、又は好ましくは硫酸を用いて製造される。遊離酸の単離のために、引き続いて加水分解のために使用された鉱酸だけが、塩基で、好ましくはアンモニアで中和される。全ての鉱酸と中和のために使用された塩基は、この方法では必然的に少なくとも化学量論的な量で、従って非常に多量に鉱物塩の形で、大抵は硫酸アンモニウムとして生ずる。前記の塩は、市場では非常に困難にのみ、かつ使用物質と比較して損失を伴ってのみ沈殿させることができるにすぎない。この問題のため、前記の多量の塩は、そのうえ有料で処分せねばならない。
【0014】
他の化学的方法は、例えば水酸化ナトリウムなどの無機塩基を用いたシアンヒドリンの加水分解である。ここでは、同様にα−ヒドロキシカルボン酸の遊離のために、鉱酸を化学量論的量で添加せねばならない。同様に、アンモニウム塩の段階まで、二酸化チタンを触媒として用いたシアンヒドリンの加水分解が進む。塩の問題は同様に残る。
【0015】
モノカルボン酸、ジカルボン酸及びトリカルボン酸並びにα−ヒドロキシカルボン酸及びβ−ヒドロキシカルボン酸は、微生物を用いて又は酵素的に発酵により製造することができる。その際、有機酸は、アンモニウム塩として生ずる。遊離は、化学量論的な量の鉱酸の添加によって行われる。ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸の場合は、それどころか2倍もしくは3倍の化学量論的量の鉱酸を添加せねばならない。それによって、同様に非常に多量のアンモニウム塩が生じ、前記塩は再び費用をかけて再循環するか又は費用をかけて処分せねばならない。
【0016】
塩負荷が生じない方法は、今日までは工業的規模ではコストの理由から経済的ではなかった。このための一例は、α−カルボン酸のアンモニウム塩のアルコールによるエステル化と、引き続いてのエステルの酸触媒による加水分解である(JP7194387号)。
【0017】
アンモニウム塩から遊離のカルボン酸を製造するために、アンモニウムカルボキシレートの熱分解を基礎とし、アンモニアが遊離される様々な方法が存在する(スキーム1):
【化9】
【0018】
GB967352によれば、少量の水が不飽和脂肪酸のアンモニウム塩に添加され、該混合物は、全還流(80℃)で又はそれより高い温度で有機溶剤中で加熱されて、アンモニアを遊離又は除去することで、不飽和脂肪酸が得られる。
【0019】
JP54115317号によれば、水と共沸混合物を形成する有機溶剤は、アンモニウムメタクリレートの10〜50%の水溶液に添加され、そして生じた溶液は60〜100℃に加熱される。それによって、水は、共沸混合物として留去され、同時にアンモニアが除去されることで、遊離のメタクリル酸が得られる。
【0020】
JP7330696号によれば、酸性アミノ酸のアンモニウム塩の10〜80%水溶液は、水を添加しながら加熱される。アンモニアと水を留去し、そしてアミノ酸が遊離される。
【0021】
この方法では、アンモニアは原則的に容易に除去される。それというのも、カルボン酸は、高い解離定数を有するからである。それに対して、例えばスルホン酸などの4未満のpKa値を有するカルボン酸のアンモニウム塩並びにα−ヒドロキシカルボン酸のアンモニウム塩からのアンモニウムイオンの解離度は低い。従って、アンモニアを強酸の塩から除去することは非常に困難である。非常に高い割合のアンモニアを除去するために、長い時間が必要であるか、又は多量の水又は有機溶剤を添加する必要がある。上述の方法では、50%又はそれより高い相応のカルボン酸がアンモニウム塩として残留する。
【0022】
米国特許第6066763号では、沈殿できない又は僅かしか沈殿できない塩が多量に必然的に生ずることなく行うα−ヒドロキシカルボン酸の製造方法が記載されている。この方法では、出発材料として、酵素(ニトリラーゼ)を用いて相応のシアンヒドリンから得られる相応のα−ヒドロキシカルボン酸のアンモニウム塩が使用される。該塩は、水及び溶剤の存在下で加熱される。好ましい溶剤は、40℃より高い沸点を有し、水と共沸物を形成する。共沸混合物の留去によって、アンモニアが遊離され、ガスとして凝縮器を介して出て行く。相応のα−ヒドロキシカルボン酸は、蒸留プラントの底部において富化される。しかしながら、高められた温度で水を除去することによって、まず最初に遊離される多量のα−ヒドロキシカルボン酸は、分子内エステル化と分子間エステル化によって前述のα−ヒドロキシカルボン酸のダイマー及びポリマーに移行する。これらは、引き続き再び、高められた圧力下で水と一緒に加熱することによって、上述のモノマーのα−ヒドロキシカルボン酸に移行させねばならない。両方の方法工程における長い滞留時間も欠点である。その時間は、挙げられた実施例では4時間である。工程1では溶剤は全時間にわたり沸騰したままなので、蒸気消費量は、非経済的で高い。この原因は、アンモニアが減損するとα−ヒドロキシカルボン酸の遊離がますます困難になることである。それは100%で成功しない。反応の完了後に、なおも3〜4%の結合されたアンモニアが底部に残留する。その反応条件下では、副生成物としてα−ヒドロキシカルボン酸の相応のアミドも生じ、それは該方法の工程2において部分的にのみ加水分解によって相応のアンモニウム塩へと変換される(スキーム2)。
【0023】
【化10】
【0024】
得られたα−ヒドロキシカルボン酸は、約80%の純度しか有さないので、大抵は、液−液抽出又は結晶化による更なる精製が必要となる。
【0025】
特許公報WO00/59847号において、α−ヒドロキシカルボン酸のアンモニウム塩溶液は、減圧下で60%より高い濃度にされる。相応のα−ヒドロキシカルボン酸のダイマーもしくはポリマーのエステルへの変換は、その際には20%未満であるべきである。ガス、好ましくは水蒸気の導通によって、アンモニアが遊離して追い出される。2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の例では、70%の遊離酸が得られ、その残りは、未反応の2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸のアンモニウム塩と相応のダイマーのエステルからなる。
【0026】
US2003/0029711号A1は、とりわけアンモニウム塩の水溶液から、共沸添加剤として炭化水素を添加して有機酸を取得する方法を記載している。該混合物の加熱によって、ガス状の生成物流が得られ、それは有機酸と共沸添加剤からなる共沸物を含有する。前記の生成物流から酸を単離するために、凝縮及び追加の蒸留などの更なる工程を行わねばならない。更に、また、前記方法は、追加の化学物質(共沸添加剤)の添加を必要とし、そのため、該方法は、工業的規模での使用のためにはまさに、明らかにより費用がかかるものとなる。
【0027】
US6291708号B1は、アンモニウム塩の水溶液を好適なアルコールと混合し、このアルコールと水との混合物を引き続き高められた圧力下で加熱して、アンモニウム塩を熱分解することで、遊離酸とアンモニアが得られる方法を記載している。同時に、好適なガスは共沸添加剤としてアルコールと水との混合物と接触されるので、アンモニアと、水と、アルコールの一部とを含有するガス状の生成物流が追い出され、その一方で、少なくとも10%のアルコールは液相で残り、それは遊離酸と反応して相応のエステルとなる。前記方法の欠点は、とりわけ追加の化学物質(アルコール及び共沸添加剤としてのガス)が必要なことと、形成された遊離のカルボン酸が部分的に反応してエステルとなるが、それは遊離のカルボン酸を得るためには再び加水分解せねばならないことである。
【0028】
DE102006052311号A1(公開公報)において、α−ヒドロキシカルボン酸のアンモニウム塩は第三級アミンの存在下で加熱されて、アンモニアが遊離され、そして第三級アミンとα−ヒドロカルボン酸とからなる上述の塩が形成される。引き続き、前記の塩は熱分解され、形成された第三級アミンが蒸留によって回収される。蒸留底部において、遊離のα−ヒドロキシカルボン酸が残留する。生じたα−ヒドロキシカルボン酸の純度は、95%である。
【0029】
DE102006049767号A1(公開公報)において、この方法は、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸を相応の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチルアミドから製造することに転用されている。N−メチルモルホリンでは、180℃及び6バールで2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸が、96%収率で95%の純度において生ずる。別の第三級アミンの使用によって、類似の成果が得られる。
【0030】
DE102006049768号A1(公開公報)において、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリルの鉱酸による加水分解によって生ずる2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチルアミドは、水と不混和性の極性溶剤で抽出される。好ましい溶剤は、エーテル、ケトン及びトリアルキルホスフィンオキシドであり、それらと種々の炭化水素との混合物でもある。溶剤は、蒸留によって除去され、得られた2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチルアミドは塩基により加水分解される。塩基としては、第三級アミンが用いられ、前記アミンは、蒸留によって、生じた塩から、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸を遊離しつつ再び分離することができる。この方法の温度は、6バールで130〜180℃である。
【0031】
最後に挙げた方法の欠点は、添加物質としての第三級アミンの使用である。前記アミンは、完全に蒸留により分離できないため、最終生成物中に少量残留する。130〜180℃という使用される高い温度は、非常に経済的ではなく、6バールの圧力範囲は、工業的な反応において高められた投資費用を必要とする。
【0032】
US6815560号とそこに引用される特許公開公報において、硫酸での加水分解によって製造される遊離の2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸は、水と不混和性の溶剤、好ましくはイソブチルメチルケトンを用いて加水分解溶液から抽出される。蒸留によって、抽出剤は回収され、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸は蒸留底部においてそのモノマー及びダイマーの形で残留する。水の添加によって、2つの形の間での熱力学的な平衡が生じる。
【0033】
本発明の課題
先行技術の欠点を背景にして、本発明の課題は、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸並びに特定のα−及びβ−ヒドロキシカルボン酸などの遊離の有機酸を、それらのアンモニウム塩から単離するためのコスト的に好ましくかつ環境に優しい方法であって、結合生成物としての塩負荷なく行われ、かつ閉じたサイクルを通じて再導入される方法を見出すことであった。
【0034】
前記技術的課題は、有機酸のアンモニウム塩の反応とその都度の遊離の有機酸への変換のための方法であって、アンモニウム塩の水溶液を、有機抽出剤と接触させ、塩分割を、前記水溶液及び前記抽出剤が液状の物質状態で存在する温度と圧力で行い、その際、ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガス(Schleppgas)が導入されて、NH3が前記水溶液から除去され、かつ形成された有機の遊離酸の少なくとも一部が前記の有機抽出剤中に移行する前記方法によって解決される。
【0035】
そのため、本発明は、有機酸のアンモニウム塩を反応的抽出によってストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスを使用して、例えばアンモニアを蒸気又は窒素により追い出す(ストリッピング)ことによって、遊離の有機酸へと変換させ、引き続きそれが有機抽出剤中に移行する方法を提供する。その場合に、形成された遊離の有機酸の少なくとも50%が、好ましくは少なくとも80%が、特に好ましくは少なくとも90%が、殊に好ましくは少なくとも95%が有機抽出剤中に移行することが好ましい。
【0036】
好ましい一方法においては、前記反応は、0.01バール〜200バール、特に0.01バール〜20バール、特に好ましくは0.1バール〜5バールの圧力で行われる。
【0037】
更に、塩分割は、5℃〜300℃の温度で、更に好ましくは20℃〜300℃の温度で、より好ましくは40℃〜200℃の温度で、特に好ましくは50℃〜130℃の温度で行うことが好ましい。
【0038】
前記温度は、遊離酸の形成の速度とその最終収率に大きく影響する。その温度は、使用される抽出剤に依存し、本発明によれば、前記水溶液もしくは考えられる共沸物の沸点未満であり、その際、水溶液もしくは場合により形成される共沸物の沸点は、当然、それぞれの加えられる圧力に依存する。
【0039】
既に前記のように、塩分割は、本発明による方法では、前記水溶液及び前記抽出剤が液状であり、固体でもなく気体でもない温度及び圧力で、すなわち前記水溶液もしくは場合により形成される共沸混合物のその都度の加えられる圧力に依存する沸点未満で行われる。
【0040】
本発明によれば、使用される水溶液中での有機酸のアンモニウム塩の初期濃度は、好ましくは90質量%〜1質量%の範囲、特に好ましくは75質量%〜5質量%の範囲、殊に好ましくは60質量%〜10質量%の範囲にある。塩分割の反応の経過において、塩の相応の濃度が下がる。
【0041】
更に、抽出剤として、水との混和が困難であるか又は水と全く混和しない溶剤を使用することが好ましい。その場合に、水溶液対有機抽出剤の質量比は、1:100〜100:1、特に好ましくは1:10〜10:1、殊に好ましくは1:5〜5:1である。
【0042】
本発明によれば、有機酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、アスコルビン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ヒドロキシカルボン酸、特にα−ヒドロキシカルボン酸又はβ−ヒドロキシカルボン酸の群から選択することができる。
【0043】
更なる方法工程において、本発明によれば、塩分割の完了後に、形成された有機酸を有機抽出剤から得ることができる。
【0044】
好ましい一方法においては、有機酸は、一般式I
【化11】
[式中、X1は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択される有機基である]で示されるカルボン酸に相当する。
【0045】
その場合に、一つの選択肢において、X1が、C1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、1つ以上の三重結合を有するC2〜C26−アルキニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、C6〜C10−アリール−C2〜C26−アルケニル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基の群から選択される有機基であることが好ましい。
【0046】
別の一つの選択肢において、X1がCR1R2R3であり、その際、R1がH、OH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I、Fであり、R2、R3、R4及びR5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される。
【0047】
有機酸は、好ましくは、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ω−3−脂肪酸、例えばリノレン酸、ω−6−脂肪酸、例えばリノール酸及びアラキドン酸、ω−9−脂肪酸、例えばオレイン酸及びネルボン酸、サリチル酸、安息香酸、フェルラ酸、ケイ皮酸、バニリン酸、没食子酸、ヒドロキシケイ皮酸、ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシプロピオン酸の群から選択される。
【0048】
一つの代替的な方法においては、有機酸は、一般式II
【化12】
[式中、X2は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、1つ以上の二重結合を有するアルケンジイル基、1つ以上の三重結合を有するアルキンジイル基、アリールジイル基、アルキルアリールジイル基、アリールアルカンジイル基、アリールアルケンジイル基、アルキルオキシアルカンジイル基、ヒドロキシアルカンジイル基及びアルキルチオアルカンジイル基を含む群から選択される有機基である]で示されるジカルボン酸である。
【0049】
接尾部「−ジイル」は、この場合、ジカルボン酸の2つのカルボン酸基がこの基に結合されていることを示す。カルボン酸基は、互いに独立して、有機基の任意の炭素原子に結合されていてよく、例えばジェミナルに、ビシナルに又は非隣接炭素原子に結合されていてよく、その際、カルボン酸基が結合されている炭素原子は、末端位に存在しても、基の内部に存在してもよい。
【0050】
この場合に、X2が、以下の通りに定義されることが好ましい:
非置換の及びOH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I及びFを含む群から選択される置換基で一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルカンジイル基、C3〜C18−シクロアルカンジイル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケンジイル基、1つ以上の三重結合を有するC2〜C26−アルキンジイル基、C6〜C10−アリールジイル基、特にフェニルジイル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリールジイル基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルカンジイル基、C6〜C10−アリール−C2〜C26−アルケンジイル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルカンジイル基、C1〜C18−ヒドロキシアルカンジイル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルカンジイル基の群から選択される有機基、その際、R4、R5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される。
【0051】
有機酸は、好ましくは、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、イタコン酸、メチルマロン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸の群から選択される。
【0052】
一つの更なる代替的な方法においては、有機酸は、一般式III
【化13】
[式中、X3は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルカントリイル基、シクロアルカントリイル基、1つ以上の二重結合を有するアルケントリイル基、1つ以上の三重結合を有するアルキントリイル基、アリールトリイル基、アルキルアリールトリイル基、アリールアルカントリイル基、アリールアルケントリイル基、アルキルオキシアルカントリイル基、ヒドロキシアルカントリイル基及びアルキルチオアルカントリイル基を含む群から選択される有機基である]で示されるトリカルボン酸である。
【0053】
接尾部「−トリイル」は、この場合、トリカルボン酸の3つのカルボン酸基がこの基に結合されていることを示す。カルボン酸基は、互いに独立して、有機基の任意の炭素原子に結合されていてよく、例えばジェミナルに、ビシナルに又は非隣接炭素原子に結合されていてよく、その際、カルボン酸基が結合されている炭素原子は、末端位に存在しても、基の内部に存在してもよい。
【0054】
この場合に、X3が、以下の通りに定義されることが好ましい:
非置換の及びOH、OR4、NH2、NHR5、NR4R5、Cl、Br、I及びFを含む群から選択される置換基で一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルカントリイル基、C3〜C18−シクロアルカントリイル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケントリイル基、1つ以上の三重結合を有するC2〜C26−アルキントリイル基、C6〜C10−アリールトリイル基、特にフェニルトリイル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリールトリイル基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルカントリイル基、C6〜C10−アリール−C2〜C26−アルケントリイル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルカントリイル基、C1〜C18−ヒドロキシアルカントリイル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルカントリイル基、その際、R4、R5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される。
【0055】
好ましい一実施形態においては、有機酸は、クエン酸、シクロペンタン−1,2,3−トリカルボン酸、シクロペンタン−1,2,4−トリカルボン酸、2−メチルシクロペンタン−1,2,3−トリカルボン酸、3−メチルシクロペンタン−1,2,4−トリカルボン酸の群から選択される。
【0056】
好ましい更なる一方法においては、有機酸は、一般式IV
【化14】
[式中、R6は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択される有機基である]で示されるスルホン酸である。
【0057】
その場合に、R6が以下の通りに定義されることが好ましい:
非置換の及びOH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I及びFを含む群から選択される置換基で一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、1つ以上の三重結合を有するC2〜C26−アルキニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、C6〜C10−アリール−C2〜C26−アルケニル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基、その際、R4及びR5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される。
【0058】
好ましい一方法においては、有機酸は、p−トルエンスルホン酸、カンファー−10−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、フェノールスルホン酸の群から選択される。
【0059】
本発明による更なる一方法においては、有機酸は、一般式V
【化15】
[式中、R7は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択される有機基である]で示されるホスホン酸である。
【0060】
好ましい一方法においては、R7が以下の通りに定義されることが好ましい:
非置換の及びOH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I及びFを含む群から選択される置換基で一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、1つ以上の三重結合を有するC2〜C26−アルキニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、C6〜C10−アリール−C2〜C26−アルケニル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基、その際、R4及びR5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される。
【0061】
好ましい一方法においては、有機酸は、1−アミノプロピルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、キシレンホスホン酸、フェニルホスホン酸、1−アミノプロピルホスホン酸、トルエンホスホン酸の群から選択される。
【0062】
更なる一方法においては、有機酸は、一般式Ia
【化16】
[式中、R8及びR9は、互いに独立して、H、OH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I、F、非置換の及び一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択され、その際、R4及びR5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される]で示されるα−ヒドロキシカルボン酸である。
【0063】
更に好ましくは、R8及びR9は、互いに独立して、非置換の及びOH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I及びFを含む群から選択される置換基で一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、1つ以上の三重結合を有するC2〜C26−アルキニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、C6〜C10−アリール−C2〜C26−アルケニル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基の群から選択され、その際、R4、R5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される。
【0064】
好ましい一方法においては、有機酸は、2−ヒドロキシ−イソ−酪酸、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グリセリン酸の群から選択される。
【0065】
更なる好ましい一方法においては、有機酸は、一般式Ib
【化17】
[式中、R10、R11、R12及びR13は、互いに独立して、H、OH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I、F、非置換の及び一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択され、その際、R4及びR5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される]で示されるβ−ヒドロキシカルボン酸である。その場合に、有機酸は、特に好ましくは、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシ−イソ−酪酸の群から選択される。
【0066】
3−ヒドロキシ−イソ−酪酸は、2−ヒドロキシ−イソ−酪酸と同様に、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルのための前駆物として用いることができる。
【0067】
更なる好ましい一方法においては、ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスとして、蒸気、空気、ガス、好ましくは天然ガス、メタン、酸素、不活性ガス、好ましくは窒素、ヘリウム、アルゴン又はそれらの混合物が使用される。
【0068】
ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスの導入に関して、ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスの量は、使用されるアンモニウム塩水溶液に対して、1l/kgと10000l/kgとの間であり、特に10l/kgと500l/kgとの間であり、殊に20l/kgと100l/kgとの間が好ましい。
【0069】
更なる好ましい方法においては、有機抽出剤は、5〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状の脂肪族ケトン、5〜18個の炭素原子を有する複素環式ケトン、4〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状の脂肪族アルコール、5〜18個の炭素原子を有する複素環式アルコール、5〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状の脂肪族アルカン、5〜14個の炭素原子を有するシクロアルカン、4〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状のエーテル、ハロゲン原子でもしくはヒドロキシル基で置換された芳香族化合物、ハロゲン原子で置換された1〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状のアルカン、ハロゲン原子で置換された5〜14個の炭素原子を有するシクロアルカン、好ましくはイソブチルメチルケトン、イソプロピルメチルケトン、エチルメチルケトン、ブチルメチルケトン、エチルプロピルケトン、メチルペンチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ヘキシルメチルケトン、エチルペンチルケトン、ヘプチルメチルケトン、ジブチルケトン、2−ウンデカノン、2−ドデカノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、3−ノナノール、5−ノナノール、1−デカノール、2−デカノール、1−ウンデカノール、2−ウンデカノール、1−ドデカノール、2−ドデカノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ケロシン、石油ベンジン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチル−t−ブチルエーテル、石油エーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジエチルエーテル、エチル−t−ブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン又はそれらの混合物の群から選択される。
【0070】
更なる好ましい方法においては、遊離酸は、抽出された酸で負荷された抽出剤から、蒸留、精留、結晶化、逆抽出(Rueckextraktion)、クロマトグラフィー、吸着又は膜法から選択される分離法によって得られる。
【0071】
本発明による方法は、一方で、コスト的に好ましいという利点を有する。それというのも、等モルで生ずる塩量の高価な後処理及び/又は廃棄処分が省略されるからである。本発明による方法は、他方で、遊離されるアンモニアの生産プロセスでの再導入と、抽出剤の閉じたサイクルを通じて環境と資源に優しく作業されるという利点を有する。通常多く使用される助剤、例えば遊離酸をアンモニウム塩から遊離するための硫酸などの助剤の使用は、より高い費用と結びつく付加的な反応工程、例えばアンモニウム塩と第二級もしくは第三級アミンとのアミノ基転移又はアルコールとのエステル形成に引き続いての遊離酸への加水分解といった工程と同様に省略される。
【0072】
該方法は、より省エネルギー的に行われる。それというのも、該反応的抽出は、熱的な塩分割よりも低い温度で実施できるからである。高い圧力の使用は大抵必要とされず、それにより工業プラントの設備費用が低下する。ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスの使用によって、酸の遊離及びその抽出は、明らかにより短い反応時間で、かつ明らかにより高い収率で成功する。従って、本願に記載される反応的抽出は、先行技術に記載される方法よりも経済的である。
【0073】
本願に記載される、酸をそのアンモニウム塩から遊離させる新規の方法は、より経済的でありかつより環境に優しいものである。
【0074】
発明の詳細な説明
本願に記載される方法は、置換又は非置換の有機酸、好ましくはカルボン酸(I〜III)、スルホン酸(IV)又はホスホン酸(V)、特に好ましくはα−ヒドロキシカルボン酸(Ia)を、そのアンモニウム塩から、アンモニアの遊離及び除去と、遊離された酸の好適な抽出剤による水相からの同時の抽出とによって遊離させるための改善された方法を含む。
【0075】
前記方法は、反応的抽出に相当する。有機酸をそのアンモニウム塩水溶液から反応的抽出することは、ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガス、例えば窒素、空気、蒸気又は不活性ガス、例えばアルゴンなどの使用によって明らかに改善することができる。遊離されるアンモニアは、連続的なガス流によって水溶液から除去され、再び製造方法に供給することができる。遊離酸は、蒸留、精留、結晶化、逆抽出、クロマトグラフィー、吸着などの方法又は膜法によって抽出剤から得ることができる。
【0076】
抽出とは、物質を混合物から富化又は得ることを、選択的に作用する溶剤又は抽出剤を用いて達成する物質分離法を表す。抽出での物質分離は、あらゆる熱的分離法の場合と同様に、混合物成分を2つ又はそれより多くの共存相への異なる分配に基づき、前記相は、通常は個々の成分の互いの限られた混合可能性(混和性ギャップ)によって生ずる。相界面を介しての物質輸送は、拡散によって、安定な最終状態(熱力学的平衡)が生ずるまでの間行われる。平衡に達した後に、前記の相は機械的に分離できねばならない。これは、また複数の成分からなるので、一般に更なる分離法(例えば蒸留、結晶化又は抽出)が後処理のために後接続される。
【0077】
反応的抽出では、抽出は少なくとも1つの反応によって重ねられる。これは、熱力学的平衡に影響を及ぼし、そのため相間での物質移動を改善する。
【0078】
ここで、有機酸、例えばカルボン酸、スルホン酸及びホスホン酸、特にα−ヒドロキシカルボン酸のそのアンモニウム塩水溶液からの反応的抽出は、ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガス、例えば窒素、空気、蒸気又は不活性ガス、例えばアルゴンなどの使用によって改善することができることが判明した。遊離されたアンモニアは、連続的なガス流によって水溶液から除去される。反応の平衡は、それによって明らかに右方向(スキーム3、カルボン酸の例)へと移動する。
【0079】
【化18】
【0080】
生ずる遊離の有機酸は、直ちに水溶液から好適な抽出剤によって抽出される。それによって、水溶液のpH値の取るに足らない低下しか起こらない。更なるアンモニアの遊離は、それによって遮られない。水相中の残りのアンモニウム塩の割合は、1%未満である。遊離の有機酸は、完全に抽出される。
【0081】
80℃で10%の2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸アンモニウム塩水溶液を使用した場合に、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いてエントレイナーガスを用いない場合に、90時間の抽出時間後に、使用された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の50%が見出された(実施例5)。同じ条件下で、さらに1時間あたり6lの窒素を遊離されたアンモニアのためのエントレイナーガスとして2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸アンモニウム塩水溶液に導通させた。90時間の抽出時間後に、抽出された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の割合は、93%に上昇する(実施例1、図6)。
【0082】
温度は、抽出速度に大きな影響を及ぼすことが確認された。アンモニウム塩水溶液の温度が高ければ高いほど、反応的抽出はより迅速に進行する。
【0083】
50℃で10%の2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸アンモニウム塩水溶液を使用した場合に、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いて1時間あたり6lの窒素をエントレイナーガスとして用いた場合に、90時間の抽出時間後に、使用された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の39%が見出された(実施例2)。30℃だけ温度を高めて80℃とした他は同じ条件で、同じ時間で抽出された2−ヒドロキシ4−メチルチオ酪酸の量も93%まで高まる(実施例1、図7)。
【0084】
更に、使用されるアンモニウム塩の濃度は、抽出速度に影響を及ぼすことが確認された。水溶液中のアンモニウム塩の濃度が高ければ高いほど、反応的抽出はよりゆっくりと進行する。
【0085】
80℃で10%の2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸アンモニウム塩水溶液を使用した場合に、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いて1時間あたり6lの窒素をエントレイナーガスとして用いた場合に、90時間の抽出時間後に、使用された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の93%が見出された(実施例1)。アンモニウム塩の濃度を20%に高めた場合に、他は同じ条件下で抽出された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の71%が同じ時間で得られる(実施例3、図8)。
【0086】
反応的抽出は、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを使用することに限定されない。使用可能なものは、水と混和性でない又は水と困難にのみ混和性のあらゆる有機溶剤、例えばアルコール、エーテル、ケトンもしくは炭化水素又はそれらの混合物である。
【0087】
50℃で10%の2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸アンモニウム塩水溶液を使用した場合に、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いて1時間あたり6lの窒素をエントレイナーガスとして用いた場合に、90時間の抽出時間後に、使用された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の39%が見出された(実施例2)。同じ条件下でメチル−t−ブチルエーテルを抽出剤として使用した場合に、90時間の抽出時間後に、使用された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の38%が溶剤中に存在する(実施例4、図9)。
【0088】
2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の他に、反応的抽出は、ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスを使用しつつ別のヒドロキシカルボン酸の場合でも使用できる。例としては、ここでは商業的に重要性の高い乳酸及び2−ヒドロキシ−イソ酪酸が挙げられ、それらはプラスチック生産においてMMAのための前駆物質として使用される。
【0089】
80℃で10%の乳酸アンモニウム塩水溶液を使用して、抽出剤として1−ブタノールを用いてエントレイナーガスとして1時間あたり6lの窒素を用いた場合に、21時間の抽出時間後に、使用された乳酸の88%が見出された(実施例8、図10)。
【0090】
80℃で10%の2−ヒドロキシ−イソ酪酸アンモニウム塩水溶液を使用した場合に、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いて1時間あたり6lの窒素をエントレイナーガスとして用いた場合に、21時間の抽出時間後に、使用された2−ヒドロキシ−イソ酪酸の49%が見出された(実施例7、図11)。
【0091】
上述の発明は、ヒドロキシカルボン酸のそのアンモニウム塩からの遊離のみに限定されず、他の置換又は非置換のカルボン酸、例えば吉草酸並びにスルホン酸、例えば(+)−カンファー−10−スルホン酸及びホスホン酸、例えばトルエンホスホン酸なども含む。
【0092】
80℃で10%の吉草酸アンモニウム塩水溶液を使用して、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いてエントレイナーガスとして1時間あたり6lの窒素を用いた場合に、21時間の抽出時間後に、使用された吉草酸の90%が見出された(実施例9、図12)。
【0093】
80℃で10%の(+)−カンファー−10−スルホン酸アンモニウム塩水溶液を使用した場合に、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いて1時間あたり6lの窒素をエントレイナーガスとして用いた場合に、66時間の抽出時間後に、使用された(+)−カンファー−10−スルホン酸の25%が見出された(実施例12)。
【0094】
80℃で10%のトルエンホスホン酸アンモニウム塩水溶液を使用して、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いてエントレイナーガスとして1時間あたり6lの窒素を用いた場合に、46時間の抽出時間後に、使用されたトルエンホスホン酸の43%が見出された(実施例13)。
【0095】
上述の実施例は、特別に開発されたパーフォレータ中で実施された(図1)。
【0096】
該パーフォレータの抽出容器を、その場合、半分まで有機酸のアンモニウム塩水溶液で満たし、抽出剤で受容器へと溢れるまで満たす。同様に前記の受容器自体の半分を抽出剤で満たす。前記の抽出容器は、取り付けられた分配器と、フリットを伴うガス導入管とを備えている。前記の分配器は、マグネットクラッチを介して回転される。前記のガス導入管を介して、同時にストリッピングガス、例えば窒素が導入される。該分配器に冷却器から上方から管を介して受容器からの蒸留によって供給された抽出剤は、遠心力によって分配器の環状物の小さな穴から小滴として抽出されるべきアンモニウム塩水溶液中にまき散らされる。それによって、微細な分配及び抽出剤と被抽出物との緊密な混合が達成される。同時に、ガス流によってアンモニアは水相から追い出される。抽出されるべきアンモニウム塩水溶液の一緒の回転によって制限されて、抽出された有機酸で負荷された微細に分配された抽出剤は、水相中でのより長い滞留時間後に初めてパーフォレータの析出領域に至り、そして受容器(蒸留器フラスコ)中に戻り、そこから溶剤は新たな蒸発によって抽出サイクルへと返送される。その受容器中に、遊離の有機酸が集まる。遊離されたアンモニア流は、ストリッピングガスと一緒に、取り付けられた強力冷却器を介して排出され、水性の硫酸トラップ中で捕捉される。
【0097】
向流抽出機は、装置的改良を表す(図2)。充填体を備えた反応管中で、有機酸のアンモニウム塩の加温された水溶液を上方から入れて、ポンプ循環させる。フリットを介して、抽出剤は、向流で反応管中にポンプ圧入され、そしてエントレイナーガスが前記系へと導入される。微細に分配された抽出剤の小滴は、遊離された有機酸を吸収する。反応管の上端部の流出口を介して、より軽い有機相が分離される。抽出剤及び有機酸の分離(例えば結晶化、蒸留、冷却による分離、水での再洗浄による分離)の後に、抽出剤は再び循環中に導入される。エントレイナーガスと遊離され追い出されたアンモニアは、頂部を介して分離される。複数の向流抽出機の直列的接続によって、該方法はさらに効率的かつ工業的に使用できることとなる。カスケード反応的抽出となる(図3)。
【0098】
前記の両方の装置(図2及び3)のパーフォレータに対する利点は、ここでは一方で明らかにより高いエントレイナーガス流が使用できることと、もう一方で遊離された有機酸の連続的な分離が行われることである。抽出剤は、前記のようにして常に未負荷の状態で再使用できるため、それは、より多くの遊離された有機酸を溶解しうる。従って、アンモニウム塩溶液中での水による有機酸の再溶解は抑制される。抽出は、こうして高い抽出速度で行うことができる。
【0099】
例として、ここでは2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸及びイソブチルメチルケトンを用いた反応的抽出を挙げる。80℃で10%の2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸アンモニウム塩水溶液を使用した場合に、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いて1時間あたり30lの窒素をエントレイナーガスとして用いた場合に、90時間の抽出時間後に、使用された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の73%が見出された(実施例6、図13)。
【0100】
ここでは抽出カラム中の温度と導入されるエントレイナーガスの量の他に、抽出剤及びアンモニウム塩水溶液の流速も高い影響を有する。その温度は、使用される抽出剤に依存し、そして可能な共沸物の沸点未満にあるべきである。
【0101】
80℃で10%の2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸アンモニウム塩水溶液を使用した場合に、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いて1時間あたり60lの窒素をストリッピング媒体として用いた場合に、90時間の抽出時間後に、使用された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の95%が見出された(実施例10、図14)。
【0102】
工業的反応の実現性
工業的規模で使用される液−液抽出の場合の向流原理による装置は、ミキサセトラ装置である。向流抽出の場合に、ミキサセトラでは、キャリヤーと抽出剤とは反対方向で混合バッテリ(Mischbatterie)に導通される。ここで、第一段階において、高負荷されたキャリヤー流は既に富化された抽出剤と接触され、それにより第一の精錬が行われる。各々の段階で、キャリヤー流の負荷は取り除かれる。それと接触される抽出剤流の負荷は、同じ方向で取り除かれるので、結果的に最終段階で、既に激しく枯渇化された抽残液は、新たな未負荷の抽出剤と一緒に分散される。向流法では、ここで、抽残液の激しい枯渇化は、少量の抽出剤で達成され、それによりこの変法は非常に経済的である。
【0103】
示された装置(図4は抽出剤よりも高沸点物用で、図5は低沸点用である)は、有機酸のアンモニウム塩を、アンモニアと相応の有機酸とに分割するために用いられ、その際、この熱的分割は穏やかな条件下で行うことができるので、有機酸の分解は生じない。
【0104】
該装置は、n個のトレイを有するカラムからなり、前記トレイは、好ましくは泡鐘トレイもしくはバルブトレイとして構成されているので、液相は、上方のトレイからその下方にあるトレイへと直接的に滴らないか非常に少ない規模でのみ滴るにすぎない。前記カラムには、下方から上方へと、ストリッピング媒体が流過され、それは、好ましくは下方でカラム中にもしくは最下段のトレイより下方で導入される。該ストリッピング媒体は、好ましくは、下方へと導かれた水相の加熱によって得られる水蒸気であってよく、又は該ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスは、不活性ガス、例えば窒素もしくは他のガスなどから成っていてもよく、前記ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスは、アンモニアと相互作用によって、容易に気相へと変えることができる混合物を形成する。トレイの態様は、水相と有機相とが、一緒に、トレイへの入口から出口まで、逆混合又は短絡流動を避けるために、好適な邪魔板によって案内されることが好ましい。トレイ上で、下方から入るガスによって全ての3相の良好な混合が起こるので、熱分解によって遊離されるアンモニアは、大きな相界面に基づき容易に気相に変化し、その際に生ずる有機酸は、迅速に水相から有機相中に抽出することができる。
【0105】
ここでまず、アンモニウム塩を含有する水相と有機酸を吸収している有機相とは、一緒にカラムの最上段のトレイ(1番)に入れられ、混合される。向流での抽出の場合に、最上段のトレイには、極めて激しくアンモニウム塩で負荷された水相は、有機酸を吸収している有機相と、その下のトレイ(2番)に属する分離法の後で一緒にされる。アンモニアの熱分解によって、これは、各々のトレイ上での気相との接触によって気相中に至り、かつ有機酸は、水相から有機相へと至る。アンモニウム塩が水相中に含まれている限りは、水相中と有機相中での有機酸の濃度の間に熱平衡は保たれず、それによって常にアンモニア分割後に生ずる有機酸の有機相への輸送が行われる。水相と有機相が最上段のトレイから出た後で、それらの2相は、好適な分離法で互いに分離される。この分離法は、有機相と水相との相互溶解性が低い場合には相分離器であってよい。相分離を促進させるために、分離法の前に温度の変更を行うことができる。蒸留、精留、膜法、結晶化、吸着、クロマトグラフィーなどの他の分離法も同様に可能である。ここで、最上段のトレイでは、有機酸で最も高く負荷された有機相が得られる。有機酸は、該溶剤から、1種以上の更なる分離法、例えば蒸留、精留、膜法、結晶化、吸着、クロマトグラフィーなどによって分離することができる。遊離された溶剤は、次いで再び抽出のためにカラム中に供給することができる。
【0106】
最上段のトレイ(1番)の分離法の後の水相は、その下のトレイ(2番)に至り、その水相は、再び有機酸を吸収している有機相と、その下にあるトレイ(3番)に属する分離法の後で一緒にされる。新たな有機溶剤もしくはすぐ前の分離法からリサイクルされた有機溶剤は、最下段のトレイ(N番)で、その上にあるトレイからの水相と一緒にされる。
【0107】
かかる反応的抽出の運転のために、水又は有機溶剤がより高い沸点を有するかどうかを識別せねばならない。カラムの運転圧力でより低い沸点を有する成分としての水の場合に、エントレイナー媒体として水蒸気を用いたとき、水は、カラムの下方部で捕捉され、循環運転される熱交換器によって蒸発される。この蒸発器は、自然循環式蒸発器として構成されていてもよい。過剰の水は、充填レベルの制御がされて、カラムから引き出される。水蒸気は、最下段のトレイ(N番)の下方に再び導入される。水蒸気と、アンモニアと、場合により他のガスと、少量の溶剤蒸気は、カラムの頂部で導出され、それらは、場合により引き続いての分離法で分離することができる。
【0108】
カラムの運転圧力でより高い沸点を有する成分としての水の場合については、有機溶剤を、先の記載に相応して蒸発させて、エントレイナー媒体として使用することもできる。このために、溶剤は、新たにカラムの下方部へと、充填レベルの制御がされて添加されるか、又は溶剤は、分離法から、有機酸からの溶剤分離のためにもしくは頂部流からの溶剤分離のためにリサイクルされる。溶剤蒸気と、アンモニアと、場合により他のガスと、少量の水蒸気は、カラムの頂部で導出され、それらは、場合により引き続いての分離法で分離することができる。水は、この場合に、最下段のトレイ(N番)の分離法の後にプロセスから排出される。気相への溶剤損失がより高い場合については、この損失を補うために、各々のトレイで、新たな溶剤又はリサイクルされた溶剤を添加してよい。
【0109】
本発明の全ての上述の方法は、好ましくは水性媒体中で実施される。
【0110】
更に、本発明による方法は、当業者に公知の回分法又は連続法で実施することができる。
【0111】
分離法
抽出を行った後に遊離の有機酸を抽出剤から分離するために、種々の方法が使用できる:
例えば、遊離酸で負荷された抽出剤を相分離器において冷却させることができる。遊離の有機酸は、抽出剤中に溶けた水と一緒により高く濃縮された水相として分離するため、分離することができる。水の留去の後に、遊離酸は純粋形で存在する。抽出剤は、再び直接的に抽出サイクルへと供給することができる。
【0112】
抽出剤の留去も可能である。遊離酸で負荷された抽出剤は、通常の構造様式の蒸留装置において常圧又は低められた圧力で加熱沸騰され、留去される。前記の共沸物を形成する溶剤の場合に含水又はまた水不含の蒸留物は、再び直接的に抽出サイクルへと供給することができる。蒸留缶出物において、遊離酸が残留する。
【0113】
遊離の有機酸を負荷された抽出剤から分離するための更なる手法は、水による逆抽出である。そのために、遊離の有機酸で負荷された抽出剤は、抽出装置(例えば図2)において水によって向流抽出で有機溶剤から逆抽出される。抽出の程度に応じて、一段もしくは多段の抽出が必要である。ここで再び未負荷の有機抽出剤を、再び直接的に抽出サイクルへと供給してよい。遊離の有機酸の水溶液は、所望の濃度にまで水の留去によって濃縮することができる。
【0114】
上述の分離法は、モデル化合物として2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸を用いて効果的に試験された。
【0115】
使用される有機酸の種類に応じて、有機抽出剤の分離は、結晶化、吸着、膜法、クロマトグラフィー、精留などによって行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】図1は、反応的抽出のために使用されるパーフォレータの概略的構成を示している。
【図2】図2は、使用される抽出装置(向流抽出機)の概略的構成を示している。
【図3】図3は、カスケード型の反応的抽出の概略的構成を示している。
【図4】図4は、高沸点の抽出剤による工業的な反応的抽出の概略的構成を示している。
【図5】図5は、低沸点の抽出剤による工業的な反応的抽出の概略的構成を示している。
【図6】図6は、ストリッピング媒体の、遊離の有機酸の収率に対する影響を示している。
【図7】図7は、温度の、遊離の有機酸の収率に対する影響を示している。
【図8】図8は、有機酸のアンモニウム塩の初期濃度の、該当する遊離の有機酸の収率に対する影響を示している。
【図9】図9は、種々の抽出剤の、遊離の有機酸の収率に対する影響を示している。
【図10】図10は、乳酸の例による遊離酸の形成の過程を示している。
【図11】図11は、2−ヒドロキシ−イソ酪酸の例による遊離酸の形成の過程を示している。
【図12】図12は、吉草酸の例による遊離酸の形成の過程を示している。
【図13】図13は、向流反応器における、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の例による遊離酸の形成の過程を示している。
【図14】図14は、向流反応器における、導入されるストリッピング媒体の種々の量での、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の例による遊離酸の形成の過程を示している。
【0117】
実施例
実施例1
10%のMHA−アンモニウム塩溶液からの、80℃での回転パーフォレータにおけるイソブチルメチルケトンを用いたMHAの抽出(本発明による)
17.6g(90ミリモル、M=167.2g/モル、85.1%の含有率を有する)のMHA−アンモニウム塩を、132.4gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、80℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのイソブチルメチルケトンを装入し、加熱沸騰させた(内部温度115〜117℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。反応時間の間に、分析サンプルを溶剤フラスコから取り出し、HPLCによって溶解されたMHAについて調査した。90時間後に、抽出を完了し、黄色に着色したイソブチルメチルケトン及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも6%の使用されたMHAが存在し、イソブチルメチルケトンにおいては93%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0118】
実施例2
10%のMHA−アンモニウム塩溶液からの、50℃での回転パーフォレータにおけるイソブチルメチルケトンを用いたMHAの抽出(本発明による)
16.3g(90ミリモル、M=167.2g/モル、92.3%の含有率を有する)のMHA−アンモニウム塩を、133.7gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、50℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのイソブチルメチルケトンを装入し、加熱沸騰させた(内部温度115〜117℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。反応時間の間に、分析サンプルを溶剤フラスコから取り出し、HPLCによって溶解されたMHAについて調査した。90時間後に、抽出を完了し、黄色に着色したイソブチルメチルケトン及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも60%の使用されたMHAが存在し、イソブチルメチルケトンにおいては39%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0119】
実施例3
20%のMHA−アンモニウム塩溶液からの、回転パーフォレータにおけるイソブチルメチルケトンを用いたMHAの抽出(本発明による)
32.6g(180ミリモル、M=167.2g/モル、92.3%の含有率を有する)のMHA−アンモニウム塩を、117.4gの水中に溶解させた。この20%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、80℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのイソブチルメチルケトンを装入し、加熱沸騰させた(内部温度115〜117℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。反応時間の間に、分析サンプルを溶剤フラスコから取り出し、HPLCによって溶解されたMHAについて調査した。90時間後に、抽出を完了し、黄色に着色したイソブチルメチルケトン及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも28%の使用されたMHAが存在し、イソブチルメチルケトンにおいては71%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0120】
実施例4
10%のMHA−アンモニウム塩溶液からの、回転パーフォレータにおけるメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)を用いたMHAの抽出(本発明による)
16.3g(90ミリモル、M=167.2g/モル、92.3%の含有率を有する)のMHA−アンモニウム塩を、133.7gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、50℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのメチル−t−ブチルエーテルを装入し、加熱沸騰させた(内部温度55〜56℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。反応時間の間に、分析サンプルを溶剤フラスコから取り出し、HPLCによって溶解されたMHAについて調査した。90時間後に、抽出を完了し、黄色に着色したメチル−t−ブチルエーテル及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも71%の使用されたMHAが存在し、メチル−t−ブチルエーテルにおいては38%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0121】
実施例5
10%のMHA−アンモニウム塩溶液からの、80℃での回転パーフォレータにおけるイソブチルメチルケトンを用いたMHAの抽出(本発明によるものではない)
16.3g(90ミリモル、M=167.2g/モル、92.3%の含有率を有する)のMHA−アンモニウム塩を、133.7gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、80℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのイソブチルメチルケトンを装入し、加熱沸騰させた(内部温度115〜117℃)。反応時間の間に、分析サンプルを溶剤フラスコから取り出し、HPLCによって溶解されたMHAについて調査した。90時間後に、抽出を完了し、黄色に着色したイソブチルメチルケトン及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも49%の使用されたMHAが存在し、イソブチルメチルケトンにおいては50%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0122】
実施例6
10%のMHA−アンモニウム塩溶液からの、向流抽出機におけるイソブチルメチルケトンを用いたMHAの抽出(本発明による)
43.3g(239ミリモル、M=167.2g/モル、92.3%の含有率を有する)のMHA−アンモニウム塩を、356.7gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、向流抽出機(図2)の受容器に装入し、80℃に加温した。1333gのイソブチルメチルケトンを、溶剤受容器中で同様に80℃に加温した。抽出機カラムをはじめに水性の塩溶液で充填した。抽出の間に、連続的に、液体カラムを通して1時間あたり30lの窒素を泡立たせた。両方の液体循環は、全抽出時間の間で一定に保持した。水性の塩溶液を、5ml/分で、かつイソブチルメチルケトンを、8ml/分で、循環内にポンプ圧送した。流出するMHA含有のイソブチルメチルケトン相を、加熱された相分離器(80℃)を介して蒸留容器中に導通させた。慎重に留去されたイソブチルメチルケトンを、溶剤受容器を介して再び循環中に供給した。抽出されたMHAは、留去されていないイソブチルメチルケトンと一緒に蒸留フラスコ中に残留する。90時間後に、抽出を完了し、黄色に着色した蒸留からのイソブチルメチルケトン及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも26%の使用されたMHAが存在し、イソブチルメチルケトンにおいては73%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0123】
実施例7
10%の2−ヒドロキシ−イソ酪酸アンモニウム塩溶液からの、特殊な回転パーフォレータにおけるストリッピング媒体としてエントレイナーガスの使用下での2−ヒドロキシ−イソ酪酸の抽出(本発明による)
13.0g(124ミリモル、M=104.1g/モル、99%の含有率を有する)の2−ヒドロキシ−イソ酪酸を、130.4gの水中に装入し、そして6.6gの32%のアンモニア水溶液(0.124モル)を加えた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、80℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのイソブチルメチルケトンを装入し、加熱沸騰させた(内部温度115〜117℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。反応時間の間に、分析サンプルを溶剤フラスコから取り出し、HPLCによって溶解された2−ヒドロキシ−イソ酪酸について調査した。45時間後に、抽出を完了し、淡色に着色したイソブチルメチルケトン及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも50%の使用された2−ヒドロキシ−イソ酪酸が存在し、イソブチルメチルケトンにおいては49%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0124】
実施例8
10%の乳酸アンモニウム塩溶液からの、ストリッピング媒体としてエントレイナーガスを使用した特殊な回転パーフォレータにおける乳酸の抽出(本発明による)
8.1g(90ミリモル、M=90.08g/モル、99%の含有率を有する)の乳酸を、50gの水中に装入し、そして6.5mlの32%のアンモニア水溶液(0.1モル)を加えた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、80℃に加温した。溶剤フラスコ中で、500gの沸点で水飽和された1−ブタノールを装入し、加熱沸騰させた(内部温度97〜99℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。反応時間の間に、分析サンプルを溶剤フラスコから取り出し、HPLCによって溶解された乳酸について調査した。21時間後に、抽出を完了し、淡色に着色した1−ブタノール及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも11%の使用された乳酸が存在し、1−ブタノールにおいては88%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0125】
実施例9
10%の吉草酸−アンモニウム塩溶液からの、回転パーフォレータにおける吉草酸の抽出(本発明による)
9.3g(90ミリモル、M=102.13g/モル、99%の含有率を有する)の吉草酸を、50gの水中に装入し、そして6.5mlの32%のアンモニア水溶液(0.1モル)を加えた。30分間の撹拌後に、澄明な無色の溶液から、過剰なアンモニアと大部分の水とを40℃で水流真空中で取り出した。得られた油(16.7g)を、98.4gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、80℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのイソブチルメチルケトンを装入し、加熱沸騰させた(内部温度115〜117℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。反応時間の間に、分析サンプルを溶剤フラスコから取り出し、GCによって溶解された吉草酸について調査した。21時間後に、抽出を完了し、淡色に着色したイソブチルメチルケトン及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも9%の使用された吉草酸が存在し、イソブチルメチルケトンにおいては90%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0126】
実施例10
10%のMHA−アンモニウム塩溶液からの、向流抽出機におけるイソブチルメチルケトンを用いたMHAの抽出(本発明による)
43.3g(239ミリモル、M=167.2g/モル、92.3%の含有率を有する)のMHA−アンモニウム塩を、356.7gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、向流抽出機(図2)の受容器に装入し、80℃に加温した。1333gのイソブチルメチルケトンを、溶剤受容器中で同様に80℃に加温した。抽出機カラムをはじめに水性の塩溶液で充填した。抽出の間に、連続的に、液体カラムを通して1時間あたり60lの窒素を泡立たせた。両方の液体循環は、全抽出時間の間で一定に保持した。水性の塩溶液を、5ml/分で、かつイソブチルメチルケトンを、8ml/分で、循環内にポンプ圧送した。流出するMHA含有のイソブチルメチルケトン相を、加熱された相分離器(80℃)を介して蒸留容器中に導通させた。慎重に留去されたイソブチルメチルケトンを、溶剤受容器を介して再び循環中に供給した。抽出されたMHAは、留去されていないイソブチルメチルケトンと一緒に蒸留フラスコ中に残留する。90時間後に、抽出を完了し、黄色に着色した蒸留からのイソブチルメチルケトン及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも4%の使用されたMHAが存在し、イソブチルメチルケトンにおいては95%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0127】
実施例12
10%の(+)−カンファー−10−スルホン酸−アンモニウム塩溶液からの、特殊な回転パーフォレータにおけるストリッピング媒体としてエントレイナーガスの使用下でのイソブチルメチルケトンを用いた(+)−カンファー−10−スルホン酸の抽出(本発明による)
21.3g(90ミリモル、M=232.30g/モル、98%の含有率を有する)の(+)−カンファー−10−スルホン酸を、50gの水中に装入し、そして6.5mlの32%のアンモニア水溶液(0.1モル)を加えた。30分間の撹拌後に、澄明な無色の溶液から、過剰なアンモニアと大部分の水とを40℃で水流真空中で取り出した。得られた白色の固体(39.8g)を209.5gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、80℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのイソブチルメチルケトンを装入し、加熱沸騰させた(内部温度115〜117℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。66時間後に、抽出を完了し、淡色に着色したイソブチルメチルケトン及び水相を蒸発乾涸させた。水相中では、なおも74%の使用された(+)−カンファー−10−スルホン酸が存在し、イソブチルメチルケトンにおいては25%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0128】
実施例13
10%のトルエンホスホン酸−アンモニウム塩溶液からの、ストリッピング媒体としてエントレイナーガスを使用した特殊な回転パーフォレータにおけるイソブチルメチルケトンを用いたトルエンホスホン酸の抽出(本発明による)
20.0g(113.9ミリモル、M=172.12g/モル、98%の含有率を有する)のトルエンホスホン酸を、50gの水中に装入し、そして8.5mlの32%のアンモニア水溶液(0.13モル)を加えた。30分間の撹拌後に、澄明な無色の溶液から、過剰なアンモニアと大部分の水とを40℃で水流真空中で取り出した。得られた油(24.5g)を、190.9gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、80℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのイソブチルメチルケトンを装入し、加熱沸騰させた(内部温度115〜117℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。23時間後に、抽出を完了し、淡色に着色したイソブチルメチルケトン及び水相を蒸発乾涸させた。水相中では、なおも56%の使用されたトルエンホスホン酸が存在し、イソブチルメチルケトンにおいては43%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【技術分野】
【0001】
序論
本発明は、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸などの遊離の有機酸、特にα−ヒドロキシカルボン酸を、それらの相応のアンモニウム塩から製造及び単離するための新規の改善された方法に関する。
【0002】
有機酸は、とりわけ、置換されたカルボン酸(I〜III)、スルホン酸(IV)及びホスホン酸(V)を含む:
モノカルボン酸:
【化1】
【0003】
ジカルボン酸:
【化2】
【0004】
トリカルボン酸:
【化3】
【0005】
スルホン酸:
【化4】
【0006】
ホスホン酸:
【化5】
【0007】
ヒドロキシカルボン酸は、カルボキシル基もヒドロキシル基も有する特定のカルボン酸である。最も多く天然に存在する代表物は、α−ヒドロキシカルボン酸である。すなわちヒドロキシル基は、カルボキシル基に隣接した炭素原子上にある。
【0008】
【化6】
【0009】
重要なα−ヒドロキシカルボン酸は、乳酸、グリコール酸、クエン酸及び酒石酸の他にも、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルのための前駆物としての2−ヒドロキシ−イソ酪酸である。これらは、その主な使用範囲を、ポリマーの製造及び他の重合可能な化合物とのコポリマーの製造において見出している。商業的に同様に重要なα−ヒドロキシカルボン酸は、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸であり、それは通常はメチオニンヒドロキシアナログ(MHA)と呼称され、かつ動物の食餌において、必須アミノ酸の他に、メチオニンは、とりわけ例えば家禽及びブタなどの単胃動物の場合に重要な役割を担う。ラセミ体のMHAは、飼料添加剤として直接使用できる。それというのも、幾つかの動物の種ではインビボ条件下で、MHAの2つのエナンチオマーを天然アミノ酸であるL−メチオニンへと変換する変換機構があるからである。その際、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸は、まず非特異的なオキシダーゼによって酸化してα−ケト−メチオニンとなり、引き続きL−トランスアミナーゼで更に変換してL−メチオニンとなる。それによって、該生物中での使用可能なL−メチオニンの量は高まり、それは次いで動物の成長に使用することができる。
【0010】
ヒドロキシカルボン酸の他のクラスは、一般式Ib:
【化7】
を有するβ−ヒドロキシカルボン酸である。
【0011】
重要なβ−ヒドロキシカルボン酸は、例えば3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸及び3−ヒドロキシ−イソ酪酸である。最後のものは、2−ヒドロキシ−イソ酪酸と同様に、工業的に重要な生成物であるメタクリル酸及びメタクリル酸エステルのための前駆物として利用することができる。
【0012】
全ての有機酸は、アンモニアと、例えばモノカルボン酸の一般式:
【化8】
をもとに、相応のアンモニウム塩を形成する。
【0013】
先行技術
先行技術によれば、α−ヒドロキシカルボン酸は、好ましくはその基礎となるシアンヒドリンから、例えば塩酸、リン酸などの鉱酸を用いて、又は好ましくは硫酸を用いて製造される。遊離酸の単離のために、引き続いて加水分解のために使用された鉱酸だけが、塩基で、好ましくはアンモニアで中和される。全ての鉱酸と中和のために使用された塩基は、この方法では必然的に少なくとも化学量論的な量で、従って非常に多量に鉱物塩の形で、大抵は硫酸アンモニウムとして生ずる。前記の塩は、市場では非常に困難にのみ、かつ使用物質と比較して損失を伴ってのみ沈殿させることができるにすぎない。この問題のため、前記の多量の塩は、そのうえ有料で処分せねばならない。
【0014】
他の化学的方法は、例えば水酸化ナトリウムなどの無機塩基を用いたシアンヒドリンの加水分解である。ここでは、同様にα−ヒドロキシカルボン酸の遊離のために、鉱酸を化学量論的量で添加せねばならない。同様に、アンモニウム塩の段階まで、二酸化チタンを触媒として用いたシアンヒドリンの加水分解が進む。塩の問題は同様に残る。
【0015】
モノカルボン酸、ジカルボン酸及びトリカルボン酸並びにα−ヒドロキシカルボン酸及びβ−ヒドロキシカルボン酸は、微生物を用いて又は酵素的に発酵により製造することができる。その際、有機酸は、アンモニウム塩として生ずる。遊離は、化学量論的な量の鉱酸の添加によって行われる。ジカルボン酸もしくはトリカルボン酸の場合は、それどころか2倍もしくは3倍の化学量論的量の鉱酸を添加せねばならない。それによって、同様に非常に多量のアンモニウム塩が生じ、前記塩は再び費用をかけて再循環するか又は費用をかけて処分せねばならない。
【0016】
塩負荷が生じない方法は、今日までは工業的規模ではコストの理由から経済的ではなかった。このための一例は、α−カルボン酸のアンモニウム塩のアルコールによるエステル化と、引き続いてのエステルの酸触媒による加水分解である(JP7194387号)。
【0017】
アンモニウム塩から遊離のカルボン酸を製造するために、アンモニウムカルボキシレートの熱分解を基礎とし、アンモニアが遊離される様々な方法が存在する(スキーム1):
【化9】
【0018】
GB967352によれば、少量の水が不飽和脂肪酸のアンモニウム塩に添加され、該混合物は、全還流(80℃)で又はそれより高い温度で有機溶剤中で加熱されて、アンモニアを遊離又は除去することで、不飽和脂肪酸が得られる。
【0019】
JP54115317号によれば、水と共沸混合物を形成する有機溶剤は、アンモニウムメタクリレートの10〜50%の水溶液に添加され、そして生じた溶液は60〜100℃に加熱される。それによって、水は、共沸混合物として留去され、同時にアンモニアが除去されることで、遊離のメタクリル酸が得られる。
【0020】
JP7330696号によれば、酸性アミノ酸のアンモニウム塩の10〜80%水溶液は、水を添加しながら加熱される。アンモニアと水を留去し、そしてアミノ酸が遊離される。
【0021】
この方法では、アンモニアは原則的に容易に除去される。それというのも、カルボン酸は、高い解離定数を有するからである。それに対して、例えばスルホン酸などの4未満のpKa値を有するカルボン酸のアンモニウム塩並びにα−ヒドロキシカルボン酸のアンモニウム塩からのアンモニウムイオンの解離度は低い。従って、アンモニアを強酸の塩から除去することは非常に困難である。非常に高い割合のアンモニアを除去するために、長い時間が必要であるか、又は多量の水又は有機溶剤を添加する必要がある。上述の方法では、50%又はそれより高い相応のカルボン酸がアンモニウム塩として残留する。
【0022】
米国特許第6066763号では、沈殿できない又は僅かしか沈殿できない塩が多量に必然的に生ずることなく行うα−ヒドロキシカルボン酸の製造方法が記載されている。この方法では、出発材料として、酵素(ニトリラーゼ)を用いて相応のシアンヒドリンから得られる相応のα−ヒドロキシカルボン酸のアンモニウム塩が使用される。該塩は、水及び溶剤の存在下で加熱される。好ましい溶剤は、40℃より高い沸点を有し、水と共沸物を形成する。共沸混合物の留去によって、アンモニアが遊離され、ガスとして凝縮器を介して出て行く。相応のα−ヒドロキシカルボン酸は、蒸留プラントの底部において富化される。しかしながら、高められた温度で水を除去することによって、まず最初に遊離される多量のα−ヒドロキシカルボン酸は、分子内エステル化と分子間エステル化によって前述のα−ヒドロキシカルボン酸のダイマー及びポリマーに移行する。これらは、引き続き再び、高められた圧力下で水と一緒に加熱することによって、上述のモノマーのα−ヒドロキシカルボン酸に移行させねばならない。両方の方法工程における長い滞留時間も欠点である。その時間は、挙げられた実施例では4時間である。工程1では溶剤は全時間にわたり沸騰したままなので、蒸気消費量は、非経済的で高い。この原因は、アンモニアが減損するとα−ヒドロキシカルボン酸の遊離がますます困難になることである。それは100%で成功しない。反応の完了後に、なおも3〜4%の結合されたアンモニアが底部に残留する。その反応条件下では、副生成物としてα−ヒドロキシカルボン酸の相応のアミドも生じ、それは該方法の工程2において部分的にのみ加水分解によって相応のアンモニウム塩へと変換される(スキーム2)。
【0023】
【化10】
【0024】
得られたα−ヒドロキシカルボン酸は、約80%の純度しか有さないので、大抵は、液−液抽出又は結晶化による更なる精製が必要となる。
【0025】
特許公報WO00/59847号において、α−ヒドロキシカルボン酸のアンモニウム塩溶液は、減圧下で60%より高い濃度にされる。相応のα−ヒドロキシカルボン酸のダイマーもしくはポリマーのエステルへの変換は、その際には20%未満であるべきである。ガス、好ましくは水蒸気の導通によって、アンモニアが遊離して追い出される。2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の例では、70%の遊離酸が得られ、その残りは、未反応の2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸のアンモニウム塩と相応のダイマーのエステルからなる。
【0026】
US2003/0029711号A1は、とりわけアンモニウム塩の水溶液から、共沸添加剤として炭化水素を添加して有機酸を取得する方法を記載している。該混合物の加熱によって、ガス状の生成物流が得られ、それは有機酸と共沸添加剤からなる共沸物を含有する。前記の生成物流から酸を単離するために、凝縮及び追加の蒸留などの更なる工程を行わねばならない。更に、また、前記方法は、追加の化学物質(共沸添加剤)の添加を必要とし、そのため、該方法は、工業的規模での使用のためにはまさに、明らかにより費用がかかるものとなる。
【0027】
US6291708号B1は、アンモニウム塩の水溶液を好適なアルコールと混合し、このアルコールと水との混合物を引き続き高められた圧力下で加熱して、アンモニウム塩を熱分解することで、遊離酸とアンモニアが得られる方法を記載している。同時に、好適なガスは共沸添加剤としてアルコールと水との混合物と接触されるので、アンモニアと、水と、アルコールの一部とを含有するガス状の生成物流が追い出され、その一方で、少なくとも10%のアルコールは液相で残り、それは遊離酸と反応して相応のエステルとなる。前記方法の欠点は、とりわけ追加の化学物質(アルコール及び共沸添加剤としてのガス)が必要なことと、形成された遊離のカルボン酸が部分的に反応してエステルとなるが、それは遊離のカルボン酸を得るためには再び加水分解せねばならないことである。
【0028】
DE102006052311号A1(公開公報)において、α−ヒドロキシカルボン酸のアンモニウム塩は第三級アミンの存在下で加熱されて、アンモニアが遊離され、そして第三級アミンとα−ヒドロカルボン酸とからなる上述の塩が形成される。引き続き、前記の塩は熱分解され、形成された第三級アミンが蒸留によって回収される。蒸留底部において、遊離のα−ヒドロキシカルボン酸が残留する。生じたα−ヒドロキシカルボン酸の純度は、95%である。
【0029】
DE102006049767号A1(公開公報)において、この方法は、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸を相応の2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチルアミドから製造することに転用されている。N−メチルモルホリンでは、180℃及び6バールで2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸が、96%収率で95%の純度において生ずる。別の第三級アミンの使用によって、類似の成果が得られる。
【0030】
DE102006049768号A1(公開公報)において、2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチロニトリルの鉱酸による加水分解によって生ずる2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチルアミドは、水と不混和性の極性溶剤で抽出される。好ましい溶剤は、エーテル、ケトン及びトリアルキルホスフィンオキシドであり、それらと種々の炭化水素との混合物でもある。溶剤は、蒸留によって除去され、得られた2−ヒドロキシ−4−メチルチオブチルアミドは塩基により加水分解される。塩基としては、第三級アミンが用いられ、前記アミンは、蒸留によって、生じた塩から、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸を遊離しつつ再び分離することができる。この方法の温度は、6バールで130〜180℃である。
【0031】
最後に挙げた方法の欠点は、添加物質としての第三級アミンの使用である。前記アミンは、完全に蒸留により分離できないため、最終生成物中に少量残留する。130〜180℃という使用される高い温度は、非常に経済的ではなく、6バールの圧力範囲は、工業的な反応において高められた投資費用を必要とする。
【0032】
US6815560号とそこに引用される特許公開公報において、硫酸での加水分解によって製造される遊離の2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸は、水と不混和性の溶剤、好ましくはイソブチルメチルケトンを用いて加水分解溶液から抽出される。蒸留によって、抽出剤は回収され、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸は蒸留底部においてそのモノマー及びダイマーの形で残留する。水の添加によって、2つの形の間での熱力学的な平衡が生じる。
【0033】
本発明の課題
先行技術の欠点を背景にして、本発明の課題は、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸並びに特定のα−及びβ−ヒドロキシカルボン酸などの遊離の有機酸を、それらのアンモニウム塩から単離するためのコスト的に好ましくかつ環境に優しい方法であって、結合生成物としての塩負荷なく行われ、かつ閉じたサイクルを通じて再導入される方法を見出すことであった。
【0034】
前記技術的課題は、有機酸のアンモニウム塩の反応とその都度の遊離の有機酸への変換のための方法であって、アンモニウム塩の水溶液を、有機抽出剤と接触させ、塩分割を、前記水溶液及び前記抽出剤が液状の物質状態で存在する温度と圧力で行い、その際、ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガス(Schleppgas)が導入されて、NH3が前記水溶液から除去され、かつ形成された有機の遊離酸の少なくとも一部が前記の有機抽出剤中に移行する前記方法によって解決される。
【0035】
そのため、本発明は、有機酸のアンモニウム塩を反応的抽出によってストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスを使用して、例えばアンモニアを蒸気又は窒素により追い出す(ストリッピング)ことによって、遊離の有機酸へと変換させ、引き続きそれが有機抽出剤中に移行する方法を提供する。その場合に、形成された遊離の有機酸の少なくとも50%が、好ましくは少なくとも80%が、特に好ましくは少なくとも90%が、殊に好ましくは少なくとも95%が有機抽出剤中に移行することが好ましい。
【0036】
好ましい一方法においては、前記反応は、0.01バール〜200バール、特に0.01バール〜20バール、特に好ましくは0.1バール〜5バールの圧力で行われる。
【0037】
更に、塩分割は、5℃〜300℃の温度で、更に好ましくは20℃〜300℃の温度で、より好ましくは40℃〜200℃の温度で、特に好ましくは50℃〜130℃の温度で行うことが好ましい。
【0038】
前記温度は、遊離酸の形成の速度とその最終収率に大きく影響する。その温度は、使用される抽出剤に依存し、本発明によれば、前記水溶液もしくは考えられる共沸物の沸点未満であり、その際、水溶液もしくは場合により形成される共沸物の沸点は、当然、それぞれの加えられる圧力に依存する。
【0039】
既に前記のように、塩分割は、本発明による方法では、前記水溶液及び前記抽出剤が液状であり、固体でもなく気体でもない温度及び圧力で、すなわち前記水溶液もしくは場合により形成される共沸混合物のその都度の加えられる圧力に依存する沸点未満で行われる。
【0040】
本発明によれば、使用される水溶液中での有機酸のアンモニウム塩の初期濃度は、好ましくは90質量%〜1質量%の範囲、特に好ましくは75質量%〜5質量%の範囲、殊に好ましくは60質量%〜10質量%の範囲にある。塩分割の反応の経過において、塩の相応の濃度が下がる。
【0041】
更に、抽出剤として、水との混和が困難であるか又は水と全く混和しない溶剤を使用することが好ましい。その場合に、水溶液対有機抽出剤の質量比は、1:100〜100:1、特に好ましくは1:10〜10:1、殊に好ましくは1:5〜5:1である。
【0042】
本発明によれば、有機酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、アスコルビン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ヒドロキシカルボン酸、特にα−ヒドロキシカルボン酸又はβ−ヒドロキシカルボン酸の群から選択することができる。
【0043】
更なる方法工程において、本発明によれば、塩分割の完了後に、形成された有機酸を有機抽出剤から得ることができる。
【0044】
好ましい一方法においては、有機酸は、一般式I
【化11】
[式中、X1は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択される有機基である]で示されるカルボン酸に相当する。
【0045】
その場合に、一つの選択肢において、X1が、C1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、1つ以上の三重結合を有するC2〜C26−アルキニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、C6〜C10−アリール−C2〜C26−アルケニル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基の群から選択される有機基であることが好ましい。
【0046】
別の一つの選択肢において、X1がCR1R2R3であり、その際、R1がH、OH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I、Fであり、R2、R3、R4及びR5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される。
【0047】
有機酸は、好ましくは、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ω−3−脂肪酸、例えばリノレン酸、ω−6−脂肪酸、例えばリノール酸及びアラキドン酸、ω−9−脂肪酸、例えばオレイン酸及びネルボン酸、サリチル酸、安息香酸、フェルラ酸、ケイ皮酸、バニリン酸、没食子酸、ヒドロキシケイ皮酸、ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシプロピオン酸の群から選択される。
【0048】
一つの代替的な方法においては、有機酸は、一般式II
【化12】
[式中、X2は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、1つ以上の二重結合を有するアルケンジイル基、1つ以上の三重結合を有するアルキンジイル基、アリールジイル基、アルキルアリールジイル基、アリールアルカンジイル基、アリールアルケンジイル基、アルキルオキシアルカンジイル基、ヒドロキシアルカンジイル基及びアルキルチオアルカンジイル基を含む群から選択される有機基である]で示されるジカルボン酸である。
【0049】
接尾部「−ジイル」は、この場合、ジカルボン酸の2つのカルボン酸基がこの基に結合されていることを示す。カルボン酸基は、互いに独立して、有機基の任意の炭素原子に結合されていてよく、例えばジェミナルに、ビシナルに又は非隣接炭素原子に結合されていてよく、その際、カルボン酸基が結合されている炭素原子は、末端位に存在しても、基の内部に存在してもよい。
【0050】
この場合に、X2が、以下の通りに定義されることが好ましい:
非置換の及びOH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I及びFを含む群から選択される置換基で一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルカンジイル基、C3〜C18−シクロアルカンジイル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケンジイル基、1つ以上の三重結合を有するC2〜C26−アルキンジイル基、C6〜C10−アリールジイル基、特にフェニルジイル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリールジイル基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルカンジイル基、C6〜C10−アリール−C2〜C26−アルケンジイル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルカンジイル基、C1〜C18−ヒドロキシアルカンジイル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルカンジイル基の群から選択される有機基、その際、R4、R5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される。
【0051】
有機酸は、好ましくは、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、イタコン酸、メチルマロン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸の群から選択される。
【0052】
一つの更なる代替的な方法においては、有機酸は、一般式III
【化13】
[式中、X3は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルカントリイル基、シクロアルカントリイル基、1つ以上の二重結合を有するアルケントリイル基、1つ以上の三重結合を有するアルキントリイル基、アリールトリイル基、アルキルアリールトリイル基、アリールアルカントリイル基、アリールアルケントリイル基、アルキルオキシアルカントリイル基、ヒドロキシアルカントリイル基及びアルキルチオアルカントリイル基を含む群から選択される有機基である]で示されるトリカルボン酸である。
【0053】
接尾部「−トリイル」は、この場合、トリカルボン酸の3つのカルボン酸基がこの基に結合されていることを示す。カルボン酸基は、互いに独立して、有機基の任意の炭素原子に結合されていてよく、例えばジェミナルに、ビシナルに又は非隣接炭素原子に結合されていてよく、その際、カルボン酸基が結合されている炭素原子は、末端位に存在しても、基の内部に存在してもよい。
【0054】
この場合に、X3が、以下の通りに定義されることが好ましい:
非置換の及びOH、OR4、NH2、NHR5、NR4R5、Cl、Br、I及びFを含む群から選択される置換基で一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルカントリイル基、C3〜C18−シクロアルカントリイル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケントリイル基、1つ以上の三重結合を有するC2〜C26−アルキントリイル基、C6〜C10−アリールトリイル基、特にフェニルトリイル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリールトリイル基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルカントリイル基、C6〜C10−アリール−C2〜C26−アルケントリイル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルカントリイル基、C1〜C18−ヒドロキシアルカントリイル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルカントリイル基、その際、R4、R5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される。
【0055】
好ましい一実施形態においては、有機酸は、クエン酸、シクロペンタン−1,2,3−トリカルボン酸、シクロペンタン−1,2,4−トリカルボン酸、2−メチルシクロペンタン−1,2,3−トリカルボン酸、3−メチルシクロペンタン−1,2,4−トリカルボン酸の群から選択される。
【0056】
好ましい更なる一方法においては、有機酸は、一般式IV
【化14】
[式中、R6は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択される有機基である]で示されるスルホン酸である。
【0057】
その場合に、R6が以下の通りに定義されることが好ましい:
非置換の及びOH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I及びFを含む群から選択される置換基で一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、1つ以上の三重結合を有するC2〜C26−アルキニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、C6〜C10−アリール−C2〜C26−アルケニル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基、その際、R4及びR5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される。
【0058】
好ましい一方法においては、有機酸は、p−トルエンスルホン酸、カンファー−10−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、フェノールスルホン酸の群から選択される。
【0059】
本発明による更なる一方法においては、有機酸は、一般式V
【化15】
[式中、R7は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択される有機基である]で示されるホスホン酸である。
【0060】
好ましい一方法においては、R7が以下の通りに定義されることが好ましい:
非置換の及びOH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I及びFを含む群から選択される置換基で一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、1つ以上の三重結合を有するC2〜C26−アルキニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、C6〜C10−アリール−C2〜C26−アルケニル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基、その際、R4及びR5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される。
【0061】
好ましい一方法においては、有機酸は、1−アミノプロピルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、キシレンホスホン酸、フェニルホスホン酸、1−アミノプロピルホスホン酸、トルエンホスホン酸の群から選択される。
【0062】
更なる一方法においては、有機酸は、一般式Ia
【化16】
[式中、R8及びR9は、互いに独立して、H、OH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I、F、非置換の及び一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択され、その際、R4及びR5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される]で示されるα−ヒドロキシカルボン酸である。
【0063】
更に好ましくは、R8及びR9は、互いに独立して、非置換の及びOH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I及びFを含む群から選択される置換基で一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、1つ以上の三重結合を有するC2〜C26−アルキニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、C6〜C10−アリール−C2〜C26−アルケニル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基の群から選択され、その際、R4、R5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される。
【0064】
好ましい一方法においては、有機酸は、2−ヒドロキシ−イソ−酪酸、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グリセリン酸の群から選択される。
【0065】
更なる好ましい一方法においては、有機酸は、一般式Ib
【化17】
[式中、R10、R11、R12及びR13は、互いに独立して、H、OH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I、F、非置換の及び一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択され、その際、R4及びR5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される]で示されるβ−ヒドロキシカルボン酸である。その場合に、有機酸は、特に好ましくは、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシ−イソ−酪酸の群から選択される。
【0066】
3−ヒドロキシ−イソ−酪酸は、2−ヒドロキシ−イソ−酪酸と同様に、メタクリル酸及びメタクリル酸エステルのための前駆物として用いることができる。
【0067】
更なる好ましい一方法においては、ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスとして、蒸気、空気、ガス、好ましくは天然ガス、メタン、酸素、不活性ガス、好ましくは窒素、ヘリウム、アルゴン又はそれらの混合物が使用される。
【0068】
ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスの導入に関して、ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスの量は、使用されるアンモニウム塩水溶液に対して、1l/kgと10000l/kgとの間であり、特に10l/kgと500l/kgとの間であり、殊に20l/kgと100l/kgとの間が好ましい。
【0069】
更なる好ましい方法においては、有機抽出剤は、5〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状の脂肪族ケトン、5〜18個の炭素原子を有する複素環式ケトン、4〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状の脂肪族アルコール、5〜18個の炭素原子を有する複素環式アルコール、5〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状の脂肪族アルカン、5〜14個の炭素原子を有するシクロアルカン、4〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状のエーテル、ハロゲン原子でもしくはヒドロキシル基で置換された芳香族化合物、ハロゲン原子で置換された1〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状のアルカン、ハロゲン原子で置換された5〜14個の炭素原子を有するシクロアルカン、好ましくはイソブチルメチルケトン、イソプロピルメチルケトン、エチルメチルケトン、ブチルメチルケトン、エチルプロピルケトン、メチルペンチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ヘキシルメチルケトン、エチルペンチルケトン、ヘプチルメチルケトン、ジブチルケトン、2−ウンデカノン、2−ドデカノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、3−ノナノール、5−ノナノール、1−デカノール、2−デカノール、1−ウンデカノール、2−ウンデカノール、1−ドデカノール、2−ドデカノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ケロシン、石油ベンジン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチル−t−ブチルエーテル、石油エーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジエチルエーテル、エチル−t−ブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン又はそれらの混合物の群から選択される。
【0070】
更なる好ましい方法においては、遊離酸は、抽出された酸で負荷された抽出剤から、蒸留、精留、結晶化、逆抽出(Rueckextraktion)、クロマトグラフィー、吸着又は膜法から選択される分離法によって得られる。
【0071】
本発明による方法は、一方で、コスト的に好ましいという利点を有する。それというのも、等モルで生ずる塩量の高価な後処理及び/又は廃棄処分が省略されるからである。本発明による方法は、他方で、遊離されるアンモニアの生産プロセスでの再導入と、抽出剤の閉じたサイクルを通じて環境と資源に優しく作業されるという利点を有する。通常多く使用される助剤、例えば遊離酸をアンモニウム塩から遊離するための硫酸などの助剤の使用は、より高い費用と結びつく付加的な反応工程、例えばアンモニウム塩と第二級もしくは第三級アミンとのアミノ基転移又はアルコールとのエステル形成に引き続いての遊離酸への加水分解といった工程と同様に省略される。
【0072】
該方法は、より省エネルギー的に行われる。それというのも、該反応的抽出は、熱的な塩分割よりも低い温度で実施できるからである。高い圧力の使用は大抵必要とされず、それにより工業プラントの設備費用が低下する。ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスの使用によって、酸の遊離及びその抽出は、明らかにより短い反応時間で、かつ明らかにより高い収率で成功する。従って、本願に記載される反応的抽出は、先行技術に記載される方法よりも経済的である。
【0073】
本願に記載される、酸をそのアンモニウム塩から遊離させる新規の方法は、より経済的でありかつより環境に優しいものである。
【0074】
発明の詳細な説明
本願に記載される方法は、置換又は非置換の有機酸、好ましくはカルボン酸(I〜III)、スルホン酸(IV)又はホスホン酸(V)、特に好ましくはα−ヒドロキシカルボン酸(Ia)を、そのアンモニウム塩から、アンモニアの遊離及び除去と、遊離された酸の好適な抽出剤による水相からの同時の抽出とによって遊離させるための改善された方法を含む。
【0075】
前記方法は、反応的抽出に相当する。有機酸をそのアンモニウム塩水溶液から反応的抽出することは、ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガス、例えば窒素、空気、蒸気又は不活性ガス、例えばアルゴンなどの使用によって明らかに改善することができる。遊離されるアンモニアは、連続的なガス流によって水溶液から除去され、再び製造方法に供給することができる。遊離酸は、蒸留、精留、結晶化、逆抽出、クロマトグラフィー、吸着などの方法又は膜法によって抽出剤から得ることができる。
【0076】
抽出とは、物質を混合物から富化又は得ることを、選択的に作用する溶剤又は抽出剤を用いて達成する物質分離法を表す。抽出での物質分離は、あらゆる熱的分離法の場合と同様に、混合物成分を2つ又はそれより多くの共存相への異なる分配に基づき、前記相は、通常は個々の成分の互いの限られた混合可能性(混和性ギャップ)によって生ずる。相界面を介しての物質輸送は、拡散によって、安定な最終状態(熱力学的平衡)が生ずるまでの間行われる。平衡に達した後に、前記の相は機械的に分離できねばならない。これは、また複数の成分からなるので、一般に更なる分離法(例えば蒸留、結晶化又は抽出)が後処理のために後接続される。
【0077】
反応的抽出では、抽出は少なくとも1つの反応によって重ねられる。これは、熱力学的平衡に影響を及ぼし、そのため相間での物質移動を改善する。
【0078】
ここで、有機酸、例えばカルボン酸、スルホン酸及びホスホン酸、特にα−ヒドロキシカルボン酸のそのアンモニウム塩水溶液からの反応的抽出は、ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガス、例えば窒素、空気、蒸気又は不活性ガス、例えばアルゴンなどの使用によって改善することができることが判明した。遊離されたアンモニアは、連続的なガス流によって水溶液から除去される。反応の平衡は、それによって明らかに右方向(スキーム3、カルボン酸の例)へと移動する。
【0079】
【化18】
【0080】
生ずる遊離の有機酸は、直ちに水溶液から好適な抽出剤によって抽出される。それによって、水溶液のpH値の取るに足らない低下しか起こらない。更なるアンモニアの遊離は、それによって遮られない。水相中の残りのアンモニウム塩の割合は、1%未満である。遊離の有機酸は、完全に抽出される。
【0081】
80℃で10%の2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸アンモニウム塩水溶液を使用した場合に、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いてエントレイナーガスを用いない場合に、90時間の抽出時間後に、使用された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の50%が見出された(実施例5)。同じ条件下で、さらに1時間あたり6lの窒素を遊離されたアンモニアのためのエントレイナーガスとして2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸アンモニウム塩水溶液に導通させた。90時間の抽出時間後に、抽出された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の割合は、93%に上昇する(実施例1、図6)。
【0082】
温度は、抽出速度に大きな影響を及ぼすことが確認された。アンモニウム塩水溶液の温度が高ければ高いほど、反応的抽出はより迅速に進行する。
【0083】
50℃で10%の2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸アンモニウム塩水溶液を使用した場合に、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いて1時間あたり6lの窒素をエントレイナーガスとして用いた場合に、90時間の抽出時間後に、使用された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の39%が見出された(実施例2)。30℃だけ温度を高めて80℃とした他は同じ条件で、同じ時間で抽出された2−ヒドロキシ4−メチルチオ酪酸の量も93%まで高まる(実施例1、図7)。
【0084】
更に、使用されるアンモニウム塩の濃度は、抽出速度に影響を及ぼすことが確認された。水溶液中のアンモニウム塩の濃度が高ければ高いほど、反応的抽出はよりゆっくりと進行する。
【0085】
80℃で10%の2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸アンモニウム塩水溶液を使用した場合に、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いて1時間あたり6lの窒素をエントレイナーガスとして用いた場合に、90時間の抽出時間後に、使用された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の93%が見出された(実施例1)。アンモニウム塩の濃度を20%に高めた場合に、他は同じ条件下で抽出された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の71%が同じ時間で得られる(実施例3、図8)。
【0086】
反応的抽出は、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを使用することに限定されない。使用可能なものは、水と混和性でない又は水と困難にのみ混和性のあらゆる有機溶剤、例えばアルコール、エーテル、ケトンもしくは炭化水素又はそれらの混合物である。
【0087】
50℃で10%の2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸アンモニウム塩水溶液を使用した場合に、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いて1時間あたり6lの窒素をエントレイナーガスとして用いた場合に、90時間の抽出時間後に、使用された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の39%が見出された(実施例2)。同じ条件下でメチル−t−ブチルエーテルを抽出剤として使用した場合に、90時間の抽出時間後に、使用された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の38%が溶剤中に存在する(実施例4、図9)。
【0088】
2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の他に、反応的抽出は、ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスを使用しつつ別のヒドロキシカルボン酸の場合でも使用できる。例としては、ここでは商業的に重要性の高い乳酸及び2−ヒドロキシ−イソ酪酸が挙げられ、それらはプラスチック生産においてMMAのための前駆物質として使用される。
【0089】
80℃で10%の乳酸アンモニウム塩水溶液を使用して、抽出剤として1−ブタノールを用いてエントレイナーガスとして1時間あたり6lの窒素を用いた場合に、21時間の抽出時間後に、使用された乳酸の88%が見出された(実施例8、図10)。
【0090】
80℃で10%の2−ヒドロキシ−イソ酪酸アンモニウム塩水溶液を使用した場合に、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いて1時間あたり6lの窒素をエントレイナーガスとして用いた場合に、21時間の抽出時間後に、使用された2−ヒドロキシ−イソ酪酸の49%が見出された(実施例7、図11)。
【0091】
上述の発明は、ヒドロキシカルボン酸のそのアンモニウム塩からの遊離のみに限定されず、他の置換又は非置換のカルボン酸、例えば吉草酸並びにスルホン酸、例えば(+)−カンファー−10−スルホン酸及びホスホン酸、例えばトルエンホスホン酸なども含む。
【0092】
80℃で10%の吉草酸アンモニウム塩水溶液を使用して、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いてエントレイナーガスとして1時間あたり6lの窒素を用いた場合に、21時間の抽出時間後に、使用された吉草酸の90%が見出された(実施例9、図12)。
【0093】
80℃で10%の(+)−カンファー−10−スルホン酸アンモニウム塩水溶液を使用した場合に、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いて1時間あたり6lの窒素をエントレイナーガスとして用いた場合に、66時間の抽出時間後に、使用された(+)−カンファー−10−スルホン酸の25%が見出された(実施例12)。
【0094】
80℃で10%のトルエンホスホン酸アンモニウム塩水溶液を使用して、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いてエントレイナーガスとして1時間あたり6lの窒素を用いた場合に、46時間の抽出時間後に、使用されたトルエンホスホン酸の43%が見出された(実施例13)。
【0095】
上述の実施例は、特別に開発されたパーフォレータ中で実施された(図1)。
【0096】
該パーフォレータの抽出容器を、その場合、半分まで有機酸のアンモニウム塩水溶液で満たし、抽出剤で受容器へと溢れるまで満たす。同様に前記の受容器自体の半分を抽出剤で満たす。前記の抽出容器は、取り付けられた分配器と、フリットを伴うガス導入管とを備えている。前記の分配器は、マグネットクラッチを介して回転される。前記のガス導入管を介して、同時にストリッピングガス、例えば窒素が導入される。該分配器に冷却器から上方から管を介して受容器からの蒸留によって供給された抽出剤は、遠心力によって分配器の環状物の小さな穴から小滴として抽出されるべきアンモニウム塩水溶液中にまき散らされる。それによって、微細な分配及び抽出剤と被抽出物との緊密な混合が達成される。同時に、ガス流によってアンモニアは水相から追い出される。抽出されるべきアンモニウム塩水溶液の一緒の回転によって制限されて、抽出された有機酸で負荷された微細に分配された抽出剤は、水相中でのより長い滞留時間後に初めてパーフォレータの析出領域に至り、そして受容器(蒸留器フラスコ)中に戻り、そこから溶剤は新たな蒸発によって抽出サイクルへと返送される。その受容器中に、遊離の有機酸が集まる。遊離されたアンモニア流は、ストリッピングガスと一緒に、取り付けられた強力冷却器を介して排出され、水性の硫酸トラップ中で捕捉される。
【0097】
向流抽出機は、装置的改良を表す(図2)。充填体を備えた反応管中で、有機酸のアンモニウム塩の加温された水溶液を上方から入れて、ポンプ循環させる。フリットを介して、抽出剤は、向流で反応管中にポンプ圧入され、そしてエントレイナーガスが前記系へと導入される。微細に分配された抽出剤の小滴は、遊離された有機酸を吸収する。反応管の上端部の流出口を介して、より軽い有機相が分離される。抽出剤及び有機酸の分離(例えば結晶化、蒸留、冷却による分離、水での再洗浄による分離)の後に、抽出剤は再び循環中に導入される。エントレイナーガスと遊離され追い出されたアンモニアは、頂部を介して分離される。複数の向流抽出機の直列的接続によって、該方法はさらに効率的かつ工業的に使用できることとなる。カスケード反応的抽出となる(図3)。
【0098】
前記の両方の装置(図2及び3)のパーフォレータに対する利点は、ここでは一方で明らかにより高いエントレイナーガス流が使用できることと、もう一方で遊離された有機酸の連続的な分離が行われることである。抽出剤は、前記のようにして常に未負荷の状態で再使用できるため、それは、より多くの遊離された有機酸を溶解しうる。従って、アンモニウム塩溶液中での水による有機酸の再溶解は抑制される。抽出は、こうして高い抽出速度で行うことができる。
【0099】
例として、ここでは2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸及びイソブチルメチルケトンを用いた反応的抽出を挙げる。80℃で10%の2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸アンモニウム塩水溶液を使用した場合に、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いて1時間あたり30lの窒素をエントレイナーガスとして用いた場合に、90時間の抽出時間後に、使用された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の73%が見出された(実施例6、図13)。
【0100】
ここでは抽出カラム中の温度と導入されるエントレイナーガスの量の他に、抽出剤及びアンモニウム塩水溶液の流速も高い影響を有する。その温度は、使用される抽出剤に依存し、そして可能な共沸物の沸点未満にあるべきである。
【0101】
80℃で10%の2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸アンモニウム塩水溶液を使用した場合に、抽出剤としてイソブチルメチルケトンを用いて1時間あたり60lの窒素をストリッピング媒体として用いた場合に、90時間の抽出時間後に、使用された2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の95%が見出された(実施例10、図14)。
【0102】
工業的反応の実現性
工業的規模で使用される液−液抽出の場合の向流原理による装置は、ミキサセトラ装置である。向流抽出の場合に、ミキサセトラでは、キャリヤーと抽出剤とは反対方向で混合バッテリ(Mischbatterie)に導通される。ここで、第一段階において、高負荷されたキャリヤー流は既に富化された抽出剤と接触され、それにより第一の精錬が行われる。各々の段階で、キャリヤー流の負荷は取り除かれる。それと接触される抽出剤流の負荷は、同じ方向で取り除かれるので、結果的に最終段階で、既に激しく枯渇化された抽残液は、新たな未負荷の抽出剤と一緒に分散される。向流法では、ここで、抽残液の激しい枯渇化は、少量の抽出剤で達成され、それによりこの変法は非常に経済的である。
【0103】
示された装置(図4は抽出剤よりも高沸点物用で、図5は低沸点用である)は、有機酸のアンモニウム塩を、アンモニアと相応の有機酸とに分割するために用いられ、その際、この熱的分割は穏やかな条件下で行うことができるので、有機酸の分解は生じない。
【0104】
該装置は、n個のトレイを有するカラムからなり、前記トレイは、好ましくは泡鐘トレイもしくはバルブトレイとして構成されているので、液相は、上方のトレイからその下方にあるトレイへと直接的に滴らないか非常に少ない規模でのみ滴るにすぎない。前記カラムには、下方から上方へと、ストリッピング媒体が流過され、それは、好ましくは下方でカラム中にもしくは最下段のトレイより下方で導入される。該ストリッピング媒体は、好ましくは、下方へと導かれた水相の加熱によって得られる水蒸気であってよく、又は該ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスは、不活性ガス、例えば窒素もしくは他のガスなどから成っていてもよく、前記ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスは、アンモニアと相互作用によって、容易に気相へと変えることができる混合物を形成する。トレイの態様は、水相と有機相とが、一緒に、トレイへの入口から出口まで、逆混合又は短絡流動を避けるために、好適な邪魔板によって案内されることが好ましい。トレイ上で、下方から入るガスによって全ての3相の良好な混合が起こるので、熱分解によって遊離されるアンモニアは、大きな相界面に基づき容易に気相に変化し、その際に生ずる有機酸は、迅速に水相から有機相中に抽出することができる。
【0105】
ここでまず、アンモニウム塩を含有する水相と有機酸を吸収している有機相とは、一緒にカラムの最上段のトレイ(1番)に入れられ、混合される。向流での抽出の場合に、最上段のトレイには、極めて激しくアンモニウム塩で負荷された水相は、有機酸を吸収している有機相と、その下のトレイ(2番)に属する分離法の後で一緒にされる。アンモニアの熱分解によって、これは、各々のトレイ上での気相との接触によって気相中に至り、かつ有機酸は、水相から有機相へと至る。アンモニウム塩が水相中に含まれている限りは、水相中と有機相中での有機酸の濃度の間に熱平衡は保たれず、それによって常にアンモニア分割後に生ずる有機酸の有機相への輸送が行われる。水相と有機相が最上段のトレイから出た後で、それらの2相は、好適な分離法で互いに分離される。この分離法は、有機相と水相との相互溶解性が低い場合には相分離器であってよい。相分離を促進させるために、分離法の前に温度の変更を行うことができる。蒸留、精留、膜法、結晶化、吸着、クロマトグラフィーなどの他の分離法も同様に可能である。ここで、最上段のトレイでは、有機酸で最も高く負荷された有機相が得られる。有機酸は、該溶剤から、1種以上の更なる分離法、例えば蒸留、精留、膜法、結晶化、吸着、クロマトグラフィーなどによって分離することができる。遊離された溶剤は、次いで再び抽出のためにカラム中に供給することができる。
【0106】
最上段のトレイ(1番)の分離法の後の水相は、その下のトレイ(2番)に至り、その水相は、再び有機酸を吸収している有機相と、その下にあるトレイ(3番)に属する分離法の後で一緒にされる。新たな有機溶剤もしくはすぐ前の分離法からリサイクルされた有機溶剤は、最下段のトレイ(N番)で、その上にあるトレイからの水相と一緒にされる。
【0107】
かかる反応的抽出の運転のために、水又は有機溶剤がより高い沸点を有するかどうかを識別せねばならない。カラムの運転圧力でより低い沸点を有する成分としての水の場合に、エントレイナー媒体として水蒸気を用いたとき、水は、カラムの下方部で捕捉され、循環運転される熱交換器によって蒸発される。この蒸発器は、自然循環式蒸発器として構成されていてもよい。過剰の水は、充填レベルの制御がされて、カラムから引き出される。水蒸気は、最下段のトレイ(N番)の下方に再び導入される。水蒸気と、アンモニアと、場合により他のガスと、少量の溶剤蒸気は、カラムの頂部で導出され、それらは、場合により引き続いての分離法で分離することができる。
【0108】
カラムの運転圧力でより高い沸点を有する成分としての水の場合については、有機溶剤を、先の記載に相応して蒸発させて、エントレイナー媒体として使用することもできる。このために、溶剤は、新たにカラムの下方部へと、充填レベルの制御がされて添加されるか、又は溶剤は、分離法から、有機酸からの溶剤分離のためにもしくは頂部流からの溶剤分離のためにリサイクルされる。溶剤蒸気と、アンモニアと、場合により他のガスと、少量の水蒸気は、カラムの頂部で導出され、それらは、場合により引き続いての分離法で分離することができる。水は、この場合に、最下段のトレイ(N番)の分離法の後にプロセスから排出される。気相への溶剤損失がより高い場合については、この損失を補うために、各々のトレイで、新たな溶剤又はリサイクルされた溶剤を添加してよい。
【0109】
本発明の全ての上述の方法は、好ましくは水性媒体中で実施される。
【0110】
更に、本発明による方法は、当業者に公知の回分法又は連続法で実施することができる。
【0111】
分離法
抽出を行った後に遊離の有機酸を抽出剤から分離するために、種々の方法が使用できる:
例えば、遊離酸で負荷された抽出剤を相分離器において冷却させることができる。遊離の有機酸は、抽出剤中に溶けた水と一緒により高く濃縮された水相として分離するため、分離することができる。水の留去の後に、遊離酸は純粋形で存在する。抽出剤は、再び直接的に抽出サイクルへと供給することができる。
【0112】
抽出剤の留去も可能である。遊離酸で負荷された抽出剤は、通常の構造様式の蒸留装置において常圧又は低められた圧力で加熱沸騰され、留去される。前記の共沸物を形成する溶剤の場合に含水又はまた水不含の蒸留物は、再び直接的に抽出サイクルへと供給することができる。蒸留缶出物において、遊離酸が残留する。
【0113】
遊離の有機酸を負荷された抽出剤から分離するための更なる手法は、水による逆抽出である。そのために、遊離の有機酸で負荷された抽出剤は、抽出装置(例えば図2)において水によって向流抽出で有機溶剤から逆抽出される。抽出の程度に応じて、一段もしくは多段の抽出が必要である。ここで再び未負荷の有機抽出剤を、再び直接的に抽出サイクルへと供給してよい。遊離の有機酸の水溶液は、所望の濃度にまで水の留去によって濃縮することができる。
【0114】
上述の分離法は、モデル化合物として2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸を用いて効果的に試験された。
【0115】
使用される有機酸の種類に応じて、有機抽出剤の分離は、結晶化、吸着、膜法、クロマトグラフィー、精留などによって行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】図1は、反応的抽出のために使用されるパーフォレータの概略的構成を示している。
【図2】図2は、使用される抽出装置(向流抽出機)の概略的構成を示している。
【図3】図3は、カスケード型の反応的抽出の概略的構成を示している。
【図4】図4は、高沸点の抽出剤による工業的な反応的抽出の概略的構成を示している。
【図5】図5は、低沸点の抽出剤による工業的な反応的抽出の概略的構成を示している。
【図6】図6は、ストリッピング媒体の、遊離の有機酸の収率に対する影響を示している。
【図7】図7は、温度の、遊離の有機酸の収率に対する影響を示している。
【図8】図8は、有機酸のアンモニウム塩の初期濃度の、該当する遊離の有機酸の収率に対する影響を示している。
【図9】図9は、種々の抽出剤の、遊離の有機酸の収率に対する影響を示している。
【図10】図10は、乳酸の例による遊離酸の形成の過程を示している。
【図11】図11は、2−ヒドロキシ−イソ酪酸の例による遊離酸の形成の過程を示している。
【図12】図12は、吉草酸の例による遊離酸の形成の過程を示している。
【図13】図13は、向流反応器における、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の例による遊離酸の形成の過程を示している。
【図14】図14は、向流反応器における、導入されるストリッピング媒体の種々の量での、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸の例による遊離酸の形成の過程を示している。
【0117】
実施例
実施例1
10%のMHA−アンモニウム塩溶液からの、80℃での回転パーフォレータにおけるイソブチルメチルケトンを用いたMHAの抽出(本発明による)
17.6g(90ミリモル、M=167.2g/モル、85.1%の含有率を有する)のMHA−アンモニウム塩を、132.4gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、80℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのイソブチルメチルケトンを装入し、加熱沸騰させた(内部温度115〜117℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。反応時間の間に、分析サンプルを溶剤フラスコから取り出し、HPLCによって溶解されたMHAについて調査した。90時間後に、抽出を完了し、黄色に着色したイソブチルメチルケトン及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも6%の使用されたMHAが存在し、イソブチルメチルケトンにおいては93%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0118】
実施例2
10%のMHA−アンモニウム塩溶液からの、50℃での回転パーフォレータにおけるイソブチルメチルケトンを用いたMHAの抽出(本発明による)
16.3g(90ミリモル、M=167.2g/モル、92.3%の含有率を有する)のMHA−アンモニウム塩を、133.7gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、50℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのイソブチルメチルケトンを装入し、加熱沸騰させた(内部温度115〜117℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。反応時間の間に、分析サンプルを溶剤フラスコから取り出し、HPLCによって溶解されたMHAについて調査した。90時間後に、抽出を完了し、黄色に着色したイソブチルメチルケトン及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも60%の使用されたMHAが存在し、イソブチルメチルケトンにおいては39%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0119】
実施例3
20%のMHA−アンモニウム塩溶液からの、回転パーフォレータにおけるイソブチルメチルケトンを用いたMHAの抽出(本発明による)
32.6g(180ミリモル、M=167.2g/モル、92.3%の含有率を有する)のMHA−アンモニウム塩を、117.4gの水中に溶解させた。この20%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、80℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのイソブチルメチルケトンを装入し、加熱沸騰させた(内部温度115〜117℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。反応時間の間に、分析サンプルを溶剤フラスコから取り出し、HPLCによって溶解されたMHAについて調査した。90時間後に、抽出を完了し、黄色に着色したイソブチルメチルケトン及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも28%の使用されたMHAが存在し、イソブチルメチルケトンにおいては71%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0120】
実施例4
10%のMHA−アンモニウム塩溶液からの、回転パーフォレータにおけるメチル−t−ブチルエーテル(MTBE)を用いたMHAの抽出(本発明による)
16.3g(90ミリモル、M=167.2g/モル、92.3%の含有率を有する)のMHA−アンモニウム塩を、133.7gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、50℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのメチル−t−ブチルエーテルを装入し、加熱沸騰させた(内部温度55〜56℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。反応時間の間に、分析サンプルを溶剤フラスコから取り出し、HPLCによって溶解されたMHAについて調査した。90時間後に、抽出を完了し、黄色に着色したメチル−t−ブチルエーテル及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも71%の使用されたMHAが存在し、メチル−t−ブチルエーテルにおいては38%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0121】
実施例5
10%のMHA−アンモニウム塩溶液からの、80℃での回転パーフォレータにおけるイソブチルメチルケトンを用いたMHAの抽出(本発明によるものではない)
16.3g(90ミリモル、M=167.2g/モル、92.3%の含有率を有する)のMHA−アンモニウム塩を、133.7gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、80℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのイソブチルメチルケトンを装入し、加熱沸騰させた(内部温度115〜117℃)。反応時間の間に、分析サンプルを溶剤フラスコから取り出し、HPLCによって溶解されたMHAについて調査した。90時間後に、抽出を完了し、黄色に着色したイソブチルメチルケトン及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも49%の使用されたMHAが存在し、イソブチルメチルケトンにおいては50%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0122】
実施例6
10%のMHA−アンモニウム塩溶液からの、向流抽出機におけるイソブチルメチルケトンを用いたMHAの抽出(本発明による)
43.3g(239ミリモル、M=167.2g/モル、92.3%の含有率を有する)のMHA−アンモニウム塩を、356.7gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、向流抽出機(図2)の受容器に装入し、80℃に加温した。1333gのイソブチルメチルケトンを、溶剤受容器中で同様に80℃に加温した。抽出機カラムをはじめに水性の塩溶液で充填した。抽出の間に、連続的に、液体カラムを通して1時間あたり30lの窒素を泡立たせた。両方の液体循環は、全抽出時間の間で一定に保持した。水性の塩溶液を、5ml/分で、かつイソブチルメチルケトンを、8ml/分で、循環内にポンプ圧送した。流出するMHA含有のイソブチルメチルケトン相を、加熱された相分離器(80℃)を介して蒸留容器中に導通させた。慎重に留去されたイソブチルメチルケトンを、溶剤受容器を介して再び循環中に供給した。抽出されたMHAは、留去されていないイソブチルメチルケトンと一緒に蒸留フラスコ中に残留する。90時間後に、抽出を完了し、黄色に着色した蒸留からのイソブチルメチルケトン及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも26%の使用されたMHAが存在し、イソブチルメチルケトンにおいては73%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0123】
実施例7
10%の2−ヒドロキシ−イソ酪酸アンモニウム塩溶液からの、特殊な回転パーフォレータにおけるストリッピング媒体としてエントレイナーガスの使用下での2−ヒドロキシ−イソ酪酸の抽出(本発明による)
13.0g(124ミリモル、M=104.1g/モル、99%の含有率を有する)の2−ヒドロキシ−イソ酪酸を、130.4gの水中に装入し、そして6.6gの32%のアンモニア水溶液(0.124モル)を加えた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、80℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのイソブチルメチルケトンを装入し、加熱沸騰させた(内部温度115〜117℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。反応時間の間に、分析サンプルを溶剤フラスコから取り出し、HPLCによって溶解された2−ヒドロキシ−イソ酪酸について調査した。45時間後に、抽出を完了し、淡色に着色したイソブチルメチルケトン及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも50%の使用された2−ヒドロキシ−イソ酪酸が存在し、イソブチルメチルケトンにおいては49%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0124】
実施例8
10%の乳酸アンモニウム塩溶液からの、ストリッピング媒体としてエントレイナーガスを使用した特殊な回転パーフォレータにおける乳酸の抽出(本発明による)
8.1g(90ミリモル、M=90.08g/モル、99%の含有率を有する)の乳酸を、50gの水中に装入し、そして6.5mlの32%のアンモニア水溶液(0.1モル)を加えた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、80℃に加温した。溶剤フラスコ中で、500gの沸点で水飽和された1−ブタノールを装入し、加熱沸騰させた(内部温度97〜99℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。反応時間の間に、分析サンプルを溶剤フラスコから取り出し、HPLCによって溶解された乳酸について調査した。21時間後に、抽出を完了し、淡色に着色した1−ブタノール及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも11%の使用された乳酸が存在し、1−ブタノールにおいては88%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0125】
実施例9
10%の吉草酸−アンモニウム塩溶液からの、回転パーフォレータにおける吉草酸の抽出(本発明による)
9.3g(90ミリモル、M=102.13g/モル、99%の含有率を有する)の吉草酸を、50gの水中に装入し、そして6.5mlの32%のアンモニア水溶液(0.1モル)を加えた。30分間の撹拌後に、澄明な無色の溶液から、過剰なアンモニアと大部分の水とを40℃で水流真空中で取り出した。得られた油(16.7g)を、98.4gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、80℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのイソブチルメチルケトンを装入し、加熱沸騰させた(内部温度115〜117℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。反応時間の間に、分析サンプルを溶剤フラスコから取り出し、GCによって溶解された吉草酸について調査した。21時間後に、抽出を完了し、淡色に着色したイソブチルメチルケトン及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも9%の使用された吉草酸が存在し、イソブチルメチルケトンにおいては90%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0126】
実施例10
10%のMHA−アンモニウム塩溶液からの、向流抽出機におけるイソブチルメチルケトンを用いたMHAの抽出(本発明による)
43.3g(239ミリモル、M=167.2g/モル、92.3%の含有率を有する)のMHA−アンモニウム塩を、356.7gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、向流抽出機(図2)の受容器に装入し、80℃に加温した。1333gのイソブチルメチルケトンを、溶剤受容器中で同様に80℃に加温した。抽出機カラムをはじめに水性の塩溶液で充填した。抽出の間に、連続的に、液体カラムを通して1時間あたり60lの窒素を泡立たせた。両方の液体循環は、全抽出時間の間で一定に保持した。水性の塩溶液を、5ml/分で、かつイソブチルメチルケトンを、8ml/分で、循環内にポンプ圧送した。流出するMHA含有のイソブチルメチルケトン相を、加熱された相分離器(80℃)を介して蒸留容器中に導通させた。慎重に留去されたイソブチルメチルケトンを、溶剤受容器を介して再び循環中に供給した。抽出されたMHAは、留去されていないイソブチルメチルケトンと一緒に蒸留フラスコ中に残留する。90時間後に、抽出を完了し、黄色に着色した蒸留からのイソブチルメチルケトン及び水相の秤量を行い、それらをHPLCによって分析した。水相中では、なおも4%の使用されたMHAが存在し、イソブチルメチルケトンにおいては95%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0127】
実施例12
10%の(+)−カンファー−10−スルホン酸−アンモニウム塩溶液からの、特殊な回転パーフォレータにおけるストリッピング媒体としてエントレイナーガスの使用下でのイソブチルメチルケトンを用いた(+)−カンファー−10−スルホン酸の抽出(本発明による)
21.3g(90ミリモル、M=232.30g/モル、98%の含有率を有する)の(+)−カンファー−10−スルホン酸を、50gの水中に装入し、そして6.5mlの32%のアンモニア水溶液(0.1モル)を加えた。30分間の撹拌後に、澄明な無色の溶液から、過剰なアンモニアと大部分の水とを40℃で水流真空中で取り出した。得られた白色の固体(39.8g)を209.5gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、80℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのイソブチルメチルケトンを装入し、加熱沸騰させた(内部温度115〜117℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。66時間後に、抽出を完了し、淡色に着色したイソブチルメチルケトン及び水相を蒸発乾涸させた。水相中では、なおも74%の使用された(+)−カンファー−10−スルホン酸が存在し、イソブチルメチルケトンにおいては25%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【0128】
実施例13
10%のトルエンホスホン酸−アンモニウム塩溶液からの、ストリッピング媒体としてエントレイナーガスを使用した特殊な回転パーフォレータにおけるイソブチルメチルケトンを用いたトルエンホスホン酸の抽出(本発明による)
20.0g(113.9ミリモル、M=172.12g/モル、98%の含有率を有する)のトルエンホスホン酸を、50gの水中に装入し、そして8.5mlの32%のアンモニア水溶液(0.13モル)を加えた。30分間の撹拌後に、澄明な無色の溶液から、過剰なアンモニアと大部分の水とを40℃で水流真空中で取り出した。得られた油(24.5g)を、190.9gの水中に溶解させた。この10%の塩溶液を、回転パーフォレータ(図1)に装入し、80℃に加温した。溶剤フラスコ中に500gのイソブチルメチルケトンを装入し、加熱沸騰させた(内部温度115〜117℃)。水性の塩溶液中に、1時間あたり6lの窒素を連続的に導通させた。23時間後に、抽出を完了し、淡色に着色したイソブチルメチルケトン及び水相を蒸発乾涸させた。水相中では、なおも56%の使用されたトルエンホスホン酸が存在し、イソブチルメチルケトンにおいては43%で存在していた。有機相のイオンクロマトグラフィーによる調査によって、100ppm未満のアンモニウム含有率が示された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸のアンモニウム塩の、それぞれの遊離の有機酸への変換のための方法であって、アンモニウム塩の水溶液を、有機抽出剤と接触させ、塩分割を、前記水溶液及び前記抽出剤が液状の物質状態で存在する温度と圧力で行い、その際、NH3を前記水溶液から除去し、かつ形成された遊離の有機酸の少なくとも一部を前記の有機抽出剤中に移行させるために、ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスを導入する前記方法。
【請求項2】
変換が、0.01バール〜200バール、好ましくは0.01バール〜20バール、特に好ましくは0.1バール〜5バールの圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塩分割が、5℃〜300℃の温度で、好ましくは20℃〜300℃の温度で、更に好ましくは40℃〜200℃の温度で、特に好ましくは50℃〜130℃の温度で実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
使用される水溶液中での有機酸のアンモニウム塩の初期濃度が、好ましくは90質量%〜1質量%の範囲、特に好ましくは75質量%〜5質量%の範囲、殊に好ましくは60質量%〜10質量%の範囲にある、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
抽出剤として、水との混和が困難な溶剤又は水と全く混和しない溶剤が使用される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
水溶液対有機抽出剤の質量比が、1:100〜100:1、好ましくは1:10〜10:1、殊に好ましくは1:5〜5:1である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
有機酸が、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、アスコルビン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ヒドロキシカルボン酸、特にα−ヒドロキシカルボン酸又はβ−ヒドロキシカルボン酸の群から選択される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
塩分割の完了後に、形成された有機酸を有機抽出剤から得る、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
有機酸が、一般式I
【化1】
[式中、X1は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択される有機基である]で示されるカルボン酸に相当し、その際、前記有機酸は、好ましくは、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ω−3−脂肪酸、例えばリノレン酸、ω−6−脂肪酸、例えばリノール酸及びアラキドン酸、ω−9−脂肪酸、例えばオレイン酸及びネルボン酸、サリチル酸、安息香酸、フェルラ酸、ケイ皮酸、バニリン酸、没食子酸、ヒドロキシケイ皮酸、ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシプロピオン酸の群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
有機酸が、一般式II
【化2】
[式中、X2は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、1つ以上の二重結合を有するアルケンジイル基、1つ以上の三重結合を有するアルキンジイル基、アリールジイル基、アルキルアリールジイル基、アリールアルカンジイル基、アリールアルケンジイル基、アルキルオキシアルカンジイル基、ヒドロキシアルカンジイル基及びアルキルチオアルカンジイル基を含む群から選択される有機基である]で示されるジカルボン酸に相当し、その際、前記有機酸は、好ましくは、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、イタコン酸、メチルマロン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸の群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
有機酸が、一般式III
【化3】
[式中、X3は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルカントリイル基、シクロアルカントリイル基、1つ以上の二重結合を有するアルケントリイル基、1つ以上の三重結合を有するアルキントリイル基、アリールトリイル基、アルキルアリールトリイル基、アリールアルカントリイル基、アリールアルケントリイル基、アルキルオキシアルカントリイル基、ヒドロキシアルカントリイル基及びアルキルチオアルカントリイル基を含む群から選択される有機基である]で示されるトリカルボン酸であり、その際、前記有機酸は、好ましくは、クエン酸、シクロペンタン−1,2,3−トリカルボン酸、シクロペンタン−1,2,4−トリカルボン酸、2−メチルシクロペンタン−1,2,3−トリカルボン酸、3−メチルシクロペンタン−1,2,4−トリカルボン酸の群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
有機酸が、一般式IV
【化4】
[式中、R6は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択される有機基である]で示されるスルホン酸に相当し、その際、前記有機酸は、好ましくは、p−トルエンスルホン酸、カンファー−10−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、フェノールスルホン酸の群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
有機酸が、一般式V
【化5】
[式中、R7は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択される有機基である]で示されるホスホン酸であり、その際、前記有機酸は、好ましくは、1−アミノプロピルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、キシレンホスホン酸、フェニルホスホン酸、1−アミノプロピルホスホン酸、トルエンホスホン酸の群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
有機酸が、一般式Ia
【化6】
[式中、R8及びR9は、互いに独立して、H、OH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I、F、非置換の及び一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択され、その際、R4及びR5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される]で示されるα−ヒドロキシカルボン酸であり、その際、前記有機酸は、好ましくは、2−ヒドロキシ−イソ−酪酸、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グリセリン酸の群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
有機酸が、一般式Ib
【化7】
[式中、R10、R11、R12及びR13は、互いに独立して、H、OH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I、F、非置換の及び一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択され、その際、R4及びR5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される]で示されるβ−ヒドロキシカルボン酸であり、その際、前記有機酸は、好ましくは、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシ−イソ酪酸の群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスとして、蒸気、空気、ガス、好ましくは天然ガス、メタン、酸素、不活性ガス、好ましくは窒素、ヘリウム、アルゴン又はそれらの混合物を使用することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスの量が、アンモニウム塩水溶液に対して、1l/kg〜10000l/kgであり、特に10l/kg〜500l/kgであり、殊に20l/kg〜100l/kgであることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
抽出剤として、水との混和が困難であるか又は水と全く混和しない溶剤、特に5〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状の脂肪族ケトン、5〜18個の炭素原子を有する複素環式ケトン、4〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状の脂肪族アルコール、5〜18個の炭素原子を有する複素環式アルコール、5〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状の脂肪族アルカン、5〜14個の炭素原子を有するシクロアルカン、4〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状のエーテル、ハロゲン原子でもしくはヒドロキシル基で置換された芳香族化合物、ハロゲン原子で置換された1〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状のアルカン、ハロゲン原子で置換された5〜14個の炭素原子を有するシクロアルカン、好ましくはイソブチルメチルケトン、イソプロピルメチルケトン、エチルメチルケトン、ブチルメチルケトン、エチルプロピルケトン、メチルペンチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ヘキシルメチルケトン、エチルペンチルケトン、ヘプチルメチルケトン、ジブチルケトン、2−ウンデカノン、2−ドデカノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、3−ノナノール、5−ノナノール、1−デカノール、2−デカノール、1−ウンデカノール、2−ウンデカノール、1−ドデカノール、2−ドデカノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ケロシン、石油ベンジン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチル−t−ブチルエーテル、石油エーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジエチルエーテル、エチル−t−ブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン又はそれらの混合物が使用される、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
遊離酸を、抽出された酸で負荷された抽出剤から、蒸留、精留、結晶化、逆抽出、クロマトグラフィー、吸着又は膜法から選択される分離法によって得ることを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
有機酸のアンモニウム塩の、それぞれの遊離の有機酸への変換のための方法であって、アンモニウム塩の水溶液を、有機抽出剤と接触させ、塩分割を、前記水溶液及び前記抽出剤が液状の物質状態で存在する温度と圧力で行い、その際、NH3を前記水溶液から除去し、かつ形成された遊離の有機酸の少なくとも一部を前記の有機抽出剤中に移行させるために、ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスを導入する前記方法。
【請求項2】
変換が、0.01バール〜200バール、好ましくは0.01バール〜20バール、特に好ましくは0.1バール〜5バールの圧力で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塩分割が、5℃〜300℃の温度で、好ましくは20℃〜300℃の温度で、更に好ましくは40℃〜200℃の温度で、特に好ましくは50℃〜130℃の温度で実施される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
使用される水溶液中での有機酸のアンモニウム塩の初期濃度が、好ましくは90質量%〜1質量%の範囲、特に好ましくは75質量%〜5質量%の範囲、殊に好ましくは60質量%〜10質量%の範囲にある、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
抽出剤として、水との混和が困難な溶剤又は水と全く混和しない溶剤が使用される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
水溶液対有機抽出剤の質量比が、1:100〜100:1、好ましくは1:10〜10:1、殊に好ましくは1:5〜5:1である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
有機酸が、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、アスコルビン酸、スルホン酸、ホスホン酸、ヒドロキシカルボン酸、特にα−ヒドロキシカルボン酸又はβ−ヒドロキシカルボン酸の群から選択される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
塩分割の完了後に、形成された有機酸を有機抽出剤から得る、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
有機酸が、一般式I
【化1】
[式中、X1は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択される有機基である]で示されるカルボン酸に相当し、その際、前記有機酸は、好ましくは、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ω−3−脂肪酸、例えばリノレン酸、ω−6−脂肪酸、例えばリノール酸及びアラキドン酸、ω−9−脂肪酸、例えばオレイン酸及びネルボン酸、サリチル酸、安息香酸、フェルラ酸、ケイ皮酸、バニリン酸、没食子酸、ヒドロキシケイ皮酸、ヒドロキシ安息香酸、3−ヒドロキシプロピオン酸の群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
有機酸が、一般式II
【化2】
[式中、X2は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルカンジイル基、シクロアルカンジイル基、1つ以上の二重結合を有するアルケンジイル基、1つ以上の三重結合を有するアルキンジイル基、アリールジイル基、アルキルアリールジイル基、アリールアルカンジイル基、アリールアルケンジイル基、アルキルオキシアルカンジイル基、ヒドロキシアルカンジイル基及びアルキルチオアルカンジイル基を含む群から選択される有機基である]で示されるジカルボン酸に相当し、その際、前記有機酸は、好ましくは、コハク酸、シュウ酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、イタコン酸、メチルマロン酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸の群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
有機酸が、一般式III
【化3】
[式中、X3は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルカントリイル基、シクロアルカントリイル基、1つ以上の二重結合を有するアルケントリイル基、1つ以上の三重結合を有するアルキントリイル基、アリールトリイル基、アルキルアリールトリイル基、アリールアルカントリイル基、アリールアルケントリイル基、アルキルオキシアルカントリイル基、ヒドロキシアルカントリイル基及びアルキルチオアルカントリイル基を含む群から選択される有機基である]で示されるトリカルボン酸であり、その際、前記有機酸は、好ましくは、クエン酸、シクロペンタン−1,2,3−トリカルボン酸、シクロペンタン−1,2,4−トリカルボン酸、2−メチルシクロペンタン−1,2,3−トリカルボン酸、3−メチルシクロペンタン−1,2,4−トリカルボン酸の群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
有機酸が、一般式IV
【化4】
[式中、R6は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択される有機基である]で示されるスルホン酸に相当し、その際、前記有機酸は、好ましくは、p−トルエンスルホン酸、カンファー−10−スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、フェノールスルホン酸の群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
有機酸が、一般式V
【化5】
[式中、R7は、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択される有機基である]で示されるホスホン酸であり、その際、前記有機酸は、好ましくは、1−アミノプロピルホスホン酸、アミノメチルホスホン酸、キシレンホスホン酸、フェニルホスホン酸、1−アミノプロピルホスホン酸、トルエンホスホン酸の群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
有機酸が、一般式Ia
【化6】
[式中、R8及びR9は、互いに独立して、H、OH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I、F、非置換の及び一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択され、その際、R4及びR5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される]で示されるα−ヒドロキシカルボン酸であり、その際、前記有機酸は、好ましくは、2−ヒドロキシ−イソ−酪酸、2−ヒドロキシ−4−メチルチオ酪酸、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸、グリセリン酸の群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
有機酸が、一般式Ib
【化7】
[式中、R10、R11、R12及びR13は、互いに独立して、H、OH、OR4、NH2、NHR4、NR4R5、Cl、Br、I、F、非置換の及び一置換もしくは多置換された、分枝鎖状の及び直鎖状のアルキル基、シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するアルケニル基、1つ以上の三重結合を有するアルキニル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基、アリールアルケニル基、アルキルオキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基及びアルキルチオアルキル基を含む群から選択され、その際、R4及びR5は、互いに独立して、H、非置換の及び一置換もしくは多置換の、分枝鎖状の及び直鎖状のC1〜C18−アルキル基、C3〜C18−シクロアルキル基、1つ以上の二重結合を有するC2〜C26−アルケニル基、C6〜C10−アリール基、特にフェニル基、C1〜C18−アルキル−C6〜C10−アリール基、C6〜C10−アリール−C1〜C18−アルキル基、特にベンジル基、C1〜C18−アルキルオキシ−C1〜C18−アルキル基、C1〜C18−ヒドロキシアルキル基及びC1〜C18−アルキルチオ−C1〜C18−アルキル基を含む群から選択される]で示されるβ−ヒドロキシカルボン酸であり、その際、前記有機酸は、好ましくは、3−ヒドロキシプロピオン酸、3−ヒドロキシ酪酸、3−ヒドロキシ吉草酸、3−ヒドロキシヘキサン酸、3−ヒドロキシオクタン酸、3−ヒドロキシ−イソ酪酸の群から選択される、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスとして、蒸気、空気、ガス、好ましくは天然ガス、メタン、酸素、不活性ガス、好ましくは窒素、ヘリウム、アルゴン又はそれらの混合物を使用することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
ストリッピング媒体もしくはエントレイナーガスの量が、アンモニウム塩水溶液に対して、1l/kg〜10000l/kgであり、特に10l/kg〜500l/kgであり、殊に20l/kg〜100l/kgであることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
抽出剤として、水との混和が困難であるか又は水と全く混和しない溶剤、特に5〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状の脂肪族ケトン、5〜18個の炭素原子を有する複素環式ケトン、4〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状の脂肪族アルコール、5〜18個の炭素原子を有する複素環式アルコール、5〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状の脂肪族アルカン、5〜14個の炭素原子を有するシクロアルカン、4〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状のエーテル、ハロゲン原子でもしくはヒドロキシル基で置換された芳香族化合物、ハロゲン原子で置換された1〜18個の炭素原子を有する直鎖状のもしくは分枝鎖状のアルカン、ハロゲン原子で置換された5〜14個の炭素原子を有するシクロアルカン、好ましくはイソブチルメチルケトン、イソプロピルメチルケトン、エチルメチルケトン、ブチルメチルケトン、エチルプロピルケトン、メチルペンチルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ヘキシルメチルケトン、エチルペンチルケトン、ヘプチルメチルケトン、ジブチルケトン、2−ウンデカノン、2−ドデカノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、1−オクタノール、2−オクタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、1−ノナノール、2−ノナノール、3−ノナノール、5−ノナノール、1−デカノール、2−デカノール、1−ウンデカノール、2−ウンデカノール、1−ドデカノール、2−ドデカノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ケロシン、石油ベンジン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチル−t−ブチルエーテル、石油エーテル、ジブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジプロピルエーテル、ジエチルエーテル、エチル−t−ブチルエーテル、ジペンチルエーテル、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、クロロベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラクロロメタン又はそれらの混合物が使用される、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
遊離酸を、抽出された酸で負荷された抽出剤から、蒸留、精留、結晶化、逆抽出、クロマトグラフィー、吸着又は膜法から選択される分離法によって得ることを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2012−518022(P2012−518022A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550530(P2011−550530)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051787
【国際公開番号】WO2010/094630
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/EP2010/051787
【国際公開番号】WO2010/094630
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】
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