説明

運動案内装置及びねじ装置

【課題】クーラント等の水分や微粉塵に対するカバーを備えた運動案内装置及びねじ装置を提供する。
【解決手段】軌道部材11と、軌道部材11に複数の転動体32を介して組み付けられる移動体本体21と、移動体本体21の相対移動方向各端面に取り付けられる蓋部材22を有する運動案内装置において、蓋部材22を覆うカバー本体51、及びカバー本体51と移動体本体21の蓋部材側端面との間に設けられ、移動体本体21の蓋部材側端面とカバー本体51との間のすきまを塞ぐシール部55を有するカバー50を取り付ける。これにより、クーラント等の水分や塵埃、切粉等の異物が移動体20内部へ侵入するのを確実に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道部材と移動体との間に転がり運動可能に複数の転動体を介在させた運動案内装置、及びねじ軸とナットとの間に転がり運動可能に複数の転動体を介在させたねじ装置に関し、特にクーラント等の水分や微細な粉塵が飛散する環境下で使用するのに好適な運動案内装置及びねじ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
運動案内装置は、テーブル等の案内対象の直線運動又は曲線運動を案内する機械要素である。この種の運動案内装置として、軌道レールと、軌道レールに沿って移動可能に組み付けられる移動ブロックと、を備えるリニアガイドが知られている。軌道レールに対する移動ブロックの相対的な移動を円滑にするために、軌道レールと移動ブロックとの間には転がり運動可能に多数の転動体(ボールやローラ)が介在される。移動ブロックは、移動ブロック本体と、移動ブロック本体の移動方向の両端部に設けられる一対のエンドプレートと、を有する。軌道レールには、長手方向に伸びる転動体転走溝が形成される。移動ブロック本体には、軌道レールの転動体転走溝に対向する負荷転動体転走溝、及び負荷転動体転走溝と平行な転動体戻し路が形成される。エンドプレートには、負荷転動体転走溝の一端と転動体戻し路の一端とを接続する円弧状の方向転換路が形成される。軌道レールの転動体転走溝と移動ブロック本体の負荷転動体転走溝との間の負荷転動体転走路、無負荷転動体戻し路、及び一対の方向転換路によってサーキット状の転動体循環路が構成される。この転動体循環路に多数の転動体が配列・収容される。
【0003】
リニアガイドは、さまざまな産業機械や工作機械で用いられ、その使用環境もさまざまである。たとえば、切粉や塵埃等の多い環境下で使用されることもある。その場合には、リニアガイド内に塵埃等の異物が侵入すると、摩耗や早期寿命の原因となるため、異物の侵入を防止する必要がある。このような異物侵入防止構造の例として、特許文献1には、軌道レールに所定の取付スパンで取り付けられた二つの移動ブロック間の間隙や、移動ブロック端のエンドプレート等の部品の周囲を覆うように、外部から嵌め込まれる防塵カバーが開示されている。防塵カバーは、エンドプレート等の部品に装着された後、それ自体の弾性力によって当該部品に固定される。このような防塵カバーを設けることで、異物の多い環境でリニアガイドを使用しても、移動ブロック間に塵埃等が溜まることを防ぐことができる。また、エンドプレートは一般に樹脂からなることから、エンドプレートを防塵カバーで覆うことにより、高温の異物によりエンドプレートが変形するのを防ぐこともできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4109341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、工作機械で使用されるリニアガイドは、塵埃や切粉のみならず、クーラント等の水分にさらされることも多い。クーラント等の水分は、リニアガイドのわずかなすきまにも入りやすい。そのクーラントに塵埃や切粉が混ざると、塵埃や切粉がクーラントとともにリニアガイド内に侵入し、リニアガイドの故障を招くことになる。したがって、リニアガイドをクーラント等の水分からも保護する必要がある。
【0006】
しかしながら、移動ブロック本体の端面やこれに接触するエンドプレート、あるいはエンドプレートに接触する他の部品を完全な平面に形成することは不可能であり、これらの間にはクーラント等の水分が浸入可能な僅かなすきまが空く。クーラント等の水分が移動ブロックの内部に浸入すると、水分によって移動ブロックの内部の潤滑剤の物性が変化することがあり、こうなると良好な潤滑状態が得られなくなるおそれがある。
【0007】
上記特許文献1に記載の防塵カバーは、二つの移動ブロック間の間隙や、エンドプレート等の移動ブロック本体の端部に取り付けられる部品を覆うものであるが、移動ブロック本体の端面とエンドプレートの間等の部品間の僅かなすきまを介した水分の浸入を防ぐことはできない。
【0008】
そこで本発明は、クーラント等の水分や微粉塵等の異物が内部に侵入するのを確実に防止することができる運動案内装置及びねじ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の第一の態様は、長手方向に伸びる転動体転走部を有する軌道部材と、前記軌道部材の前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部及び前記負荷転動体転走部に略平行な転動体戻し路を有する移動体本体、及び前記移動体本体の相対移動方向の各端部に設けられ、前記移動体本体の前記負荷転動体転走部と前記転動体戻し路を接続する方向転換路を形成する蓋部材を有する移動体と、前記軌道部材の前記転動体転走部と前記移動体本体の負荷転動体転走部との間の負荷転動体転走路、前記転動体戻し路及び前記方向転換路を含む転動体循環路に配列される複数の転動体と、前記蓋部材を覆うカバー本体、及び前記カバー本体と前記移動体本体の蓋部材側端面との間に設けられ、前記移動体本体の蓋部材側端面と前記カバー本体との間のすきまを塞ぐシール部を有するカバーと、を備える運動案内装置である。
【0010】
さらに、本発明の第二の態様は、長手方向に伸びる転動体転走部を有する軌道部材と、前記軌道部材の前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部及び前記負荷転動体転走部に略平行な転動体戻し路を有する移動体本体、及び前記移動体本体の相対移動方向の端部に設けられ、前記移動体本体の前記負荷転動体転走部と前記転動体戻し路を接続する方向転換路を形成する蓋部材を有する移動体と、前記軌道部材の前記転動体転走部と前記移動体本体の負荷転動体転走部との間の負荷転動体転走路、前記転動体戻し路及び前記方向転換路を含む転動体循環路に配列される複数の転動体と、を備える運動案内装置に取り付けられるカバーであって、前記蓋部材を覆うカバー本体、及び前記カバー本体と前記移動体本体の蓋部材側端面との間に設けられ、前記移動体本体の蓋部材側端面と前記カバー本体との間のすきまを塞ぐシール部を有するカバーである。
【0011】
さらに、本発明の第三の態様は、長手方向に伸びる転動体転走部を有する軌道部材と、前記軌道部材の前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部及び前記負荷転動体転走部に略平行な転動体戻し路を有する移動体本体、及び前記移動体本体の相対移動方向の各端部に設けられ、前記移動体本体の前記負荷転動体転走部と前記転動体戻し路を接続する方向転換路を形成する蓋部材を有する移動体と、前記軌道部材の前記転動体転走部と前記移動体本体の負荷転動体転走部との間の負荷転動体転走路、前記転動体戻し路及び前記方向転換路を含む転動体循環路に配列される複数の転動体と、前記蓋部材を覆うカバーと、を備え、前記カバーは、前記蓋部材の前記相対移動方向の外側の端面、又は前記蓋部材に取り付けられる、潤滑装置若しくは異物侵入防止装置を含む付属装置の前記相対移動方向の外側の端面を覆う端部壁を有し、前記カバーの前記端部壁には、締結部材が挿通される貫通孔が形成され、前記締結部材を前記端部壁の前記貫通孔に挿通し、前記締結部材を前記移動体に締結することによって、前記カバーが前記移動体本体の前記蓋部材側端面に向かって押し込まれ、前記カバーが前記移動体本体の前記蓋部材側端面に密着する運動案内装置である。
【0012】
さらに、本発明の第四の態様は、外周面に螺旋状の転動体転走部が形成されるねじ軸と、内周面に前記ねじ軸の前記転動体転走部に対向する螺旋状の負荷転動体転走部が形成されると共に、前記負荷転動体転走部の一端と他端を接続する転動体戻し路を有するナット本体と、前記ナット本体の各端面に設けられ、前記ナット本体の前記負荷転動体転走部と前記転動体戻し路を接続する方向転換路を形成する蓋部材と、前記ねじ軸の前記転動体転走部と前記ナット本体の前記負荷転動体転走部との間の負荷転動体転走路、前記転動体戻し路及び前記方向転換路に配列される複数の転動体と、前記蓋部材を覆うカバー本体、及び前記カバー本体と前記ナット本体の蓋部材側端面との間に設けられ、前記ナット本体の蓋部材側端面と前記カバー本体との間のすきまを塞ぐシール部を有するカバーと、とを備えるねじ装置である。
【発明の効果】
【0013】
本発明の第一及び第二の態様によれば、蓋部材をカバー本体で覆い、カバー本体と移動体本体との間のすきまをシール部で塞ぐことにより、蓋部材と移動体本体との間のすきまを塞ぐことができるので、切粉や塵埃等の異物やクーラント等の水分の移動体内部への侵入を確実に防止することができる。
【0014】
本発明の第三の態様によれば、蓋部材を覆うカバーを移動ブロック本体に密着させることにより、蓋部材と移動体本体との間のすきまを塞ぐことができるので、切粉や塵埃等の異物やクーラント等の水分の移動体内部への侵入を確実に防止することができる。
【0015】
本発明の第四の態様によれば、蓋部材をカバー本体で覆い、カバー本体とナット本体との間のすきまをシール部で塞ぐことにより、移動体本体と蓋部材との間のすきまを塞ぐことができるので、切粉や塵埃等の異物やクーラント等の水分の移動体内部への侵入を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態による運動案内装置としてのリニアガイドを示す斜視図
【図2】シール付きカバーを取り外したリニアガイドを示す斜視図(一部断面図を含む)
【図3】図2の線A−Aに沿った断面図
【図4】移動ブロックの分解斜視図
【図5】カバー本体を示す図(図5(a)は斜視図であり、図5(b)は側面図である)
【図6】シール部を示す図(図6(a)は正面図であり、図6(b)は側面図である)
【図7】リニアガイドの他の例を示す分解斜視図(一部断面図を含む)
【図8】図7の線B−Bに沿った断面図
【図9】本発明の一実施形態のリニアガイドの他の例を示す斜視図
【図10】リニアガイドの長手方向に沿った断面図
【図11】カバー本体を示す図(図11(a)は正面図であり、図11(b)は側面図である)
【図12】シール部を示す図(図12(a)は断面図であり、図12(b)は側面図である)
【図13】カバー本体及びシール部の取付け方法の工程図
【図14】カバーの変形例を示す斜視図
【図15】シール部の変形例を示す図 カバー本体の変形例を示す図
【図16】カバー本体の変形例を示す図
【図17】エンドプレートの変形例を示す図
【図18】クーラント対策が施されたシール部の変形例を示す図
【図19】本発明の第二の実施形態によるねじ装置を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る運動案内装置としてのリニアガイドを説明する。図1及び図2は、リニアガイドの斜視図を示す。図1は、本発明の特徴であるカバーとしてのシール付きカバー50を備えたリニアガイドを示し、図2は、シール付きカバー50を取り外したリニアガイドを示す。この実施形態におけるリニアガイドは、直線状に延びる軌道部材としての軌道レール11と、この軌道レール11に沿って移動可能に組み付けられる移動体としての移動ブロック20と、を備える。軌道レール11と移動ブロック20との間には、転がり運動可能に多数の転動体としてのボール32が介在される。
【0018】
軌道レール11は略断面四角形状の長尺体である。軌道レール11の左右の両側面上端には長手方向に延びる突条11bが設けられる。突条11bの上下には転動体転走部としてのボール転走溝11aが1条ずつ形成される。軌道レール11全体としては4条のボール転走溝11aが形成される。ボール転走溝11aの断面形状は、単一の円弧からなるサーキュラーアーク溝形状、又は二つの円弧を組み合わせたゴシックアーチ溝形状である。軌道レール11には長手方向に所定の間隔をおいてボルト通し孔13が複数開けられる。これらのボルト通し孔13に挿入した固定ボルトを用いて、軌道レール11をベッド、コラム等の固定部に固定する。
【0019】
図4は、移動体としての移動ブロック20の分解斜視図である。移動ブロック20は、移動体本体としての移動ブロック本体21と、該移動ブロック本体21の移動方向両端に取り付けられた蓋部材としてのエンドプレート22と、該エンドプレート22の移動方向外側に取り付けられた中間プレート27と、該中間プレート27の移動方向外側に取り付けられた潤滑装置23と、該潤滑装置23の移動方向外側に取り付けられたエンドシール24と、該エンドシール24の移動方向外側に取り付けられた積層形接触スクレーパ25と、該積層形接触スクレーパ25の移動方向外側に取り付けられた金属スクレーパ26とを備えている。なお、中間プレート27、潤滑装置23、エンドシール24、積層形接触スクレーパ25及び金属スクレーパ26は必要に応じて取り付けられる付属装置である。
【0020】
移動体本体としての移動ブロック本体21は、軌道レール11を水平面に配置した状態において、図3に示すように、軌道レール11の上面に対向する水平部21aと、軌道レール11の左右の側面に対向する一対の袖部21bを有して略鞍形状に形成される。移動ブロック本体21の水平部21aには、テーブル等の案内対象に移動ブロックをボルトで固定するためのねじ穴21c(図1参照)が加工される。
【0021】
移動ブロック本体21の内側には、水平部21aと袖部21bの境を挟んで両側に一つずつ、負荷転動体転走部としての負荷ボール転走溝20aが形成される。負荷ボール転走溝20aは、軌道レール11のボール転走溝11aに対向しており、移動ブロック本体21全体で計4条形成される(図3参照)。負荷ボール転走溝20aも、ボール転走溝11aと同様に、単一の円弧からなるサーキュラーアーク溝形状、又は二つの円弧を組み合わせたゴシックアーチ溝形状に形成される。軌道レール11のボール転走溝11aと移動ブロック本体21の負荷ボール転走溝20aとの間に、ボール32が負荷を受けながら転がり運動する負荷転動体転走路としての負荷ボール転走路が形成される。移動ブロック本体21には、負荷ボール転走溝20aから所定間隔を開けて、負荷ボール転走路と平行な転動体戻し路としてのボール戻し路20bが設けられる。ボール32は荷重から解放された状態でこのボール戻し路20b内を戻る。
【0022】
蓋部材としてのエンドプレート22は、移動ブロック本体21の正面形状と略同一の形状に形成され、軌道レール11に跨った状態で移動ブロック本体21の両端に取り付けられる。すなわち、エンドプレート22は、軌道レール11を水平面に配置した状態において、図4に示すように、軌道レール11の上面に対向する水平部22aと、軌道レール11の左右の側面に対向する一対の袖部22bを有して略鞍形状に形成される。エンドプレート22には、軌道レール11のボール転走溝11aと移動ブロック本体21の負荷ボール転走溝20a(図3参照)とで形成される負荷ボール転走路と、ボール戻し路20b(図3参照)を接続するU字状の方向転換路の外周側が形成されている。方向転換路の内周側は移動ブロック本体21に一体に形成されている。この方向転換路と、負荷ボール転走路と、ボール戻し路とによってサーキット状のボール循環路が構成される。ボール循環路には、多数のボール32が配列される。なお、負荷ボール転走路において、ボール32は保持プレート34に保持される。また、ボール同士の接触を防止するために、ボール32間にはスペーサ(図示せず)が介在してもよいし、ボール32を帯状のリテーナで一連に連結してもよい。
【0023】
中間プレート27は、エンドプレート22及び潤滑剤供給装置23等の付属装置が収納されたシール付きカバー50内に発生するすきまを埋めるためのものである。シール付きカバー50内にエンドプレート22のみが収納される場合には、エンドプレート22のみが収納されたシール付きカバー50内に発生するすきまを埋めるためのものである。中間プレート27を設けることによって、後述のシール付きカバー50を取り付けた時に、移動ブロック本体21、エンドプレート22及び各付属装置をすきまをなくすように密着させることができる。また、エンドプレート22には、その外側端面に凹凸が設けられることがあるが、中間プレート27を設けることによって凹凸を吸収し、潤滑装置23等の付属装置を取り付けやすくすることもできる。中間プレート27は、移動ブロック本体21の正面形状と略同一の形状に形成され、付属装置として、軌道レール11に跨った状態でエンドプレート22の移動方向外側に取り付けられる。
【0024】
潤滑装置23は、軌道レール11のボール転走溝11aに潤滑油やグリース等の潤滑剤を供給する装置である。潤滑装置23は、移動ブロック本体21の正面形状と略同一の形状に形成され、付属装置として、軌道レール11に跨った状態で中間プレート27の移動方向外側に取り付けられている。
【0025】
エンドシール24は、軌道レール11の表面に付着した異物等が移動ブロック20内に侵入するのを防ぐ異物侵入防止装置である。エンドシール24は、移動ブロック本体21の正面形状と略同一の形状に形成され、付属装置として、軌道レール11に跨った状態で潤滑装置23の移動方向外側に取り付けられる。なお、エンドシール24の内周面は、軌道レール11の形状に合わせて下部が若干突出しており、軌道レール11の表面に接触している。
【0026】
積層形接触スクレーパ25は、微細な異物の移動ブロック20内への侵入を防止するための異物侵入防止装置である。積層形接触スクレーパ25は、移動ブロック本体21の正面形状と略同一の形状に形成され、付属装置として、軌道レール11に跨った状態でエンドシール24の移動方向外側に取り付けられている。また、積層形接触スクレーパ25は、ケーシング内部にフェルト状の板材を複数枚移動方向に積層して構成され、その内周面は、軌道レール11の形状に合わせて下部が若干突出しており、軌道レール11の表面に接触している。
【0027】
金属スクレーパ26は、軌道レール1に貼り付いてしまうようなスパッタ等の異物を排除する異物侵入防止装置ある。金属スクレーパ26は、移動ブロック本体21の正面形状と略同一の形状に形成され、付属装置として、軌道レール11に跨った状態で積層形接触スクレーパ25の移動方向外側に取り付けられている。金属スクレーパ26の内周面は軌道レール11の表面に非接触である。
【0028】
エンドプレート22、中間プレート27、潤滑装置23、エンドシール24、積層形接触スクレーパ25、及び金属スクレーパ26は、積層された状態で、後述するシール付きカバー50に覆われ、締結部材として、たとえば、取付用ボルト33により移動ブロック本体21の両端に取り付けられる。
【0029】
次に、本発明の特徴であるシール付きカバー50について説明する。図2に示すように、シール付きカバー50はカバー本体51とシール部55からなる。最初に、カバー本体51について、図5(a)の斜視図と図5(b)側面図を参照して説明する。
【0030】
カバー本体51は、エンドプレート22及び付属装置の水平部の上面を覆う上部壁51a、エンドプレート22及び付属装置の左右一対の袖部の側面を覆う一対の側部壁51b及び付属装置の移動方向の外側の端面を覆う端部壁51cを有する。カバー本体51の上部壁51aは、エンドプレート22から金属スクレーパ26までの上面全体を覆う大きさに形成される。カバー本体51の側部壁51bは、上部壁51aの幅方向端部からほぼ垂直下方向に延び、エンドプレート22から金属スクレーパ26までの側面全体を覆う大きさに形成される。上部壁51aと一対の側部壁51bで、移動ブロック20の移動方向に直交する断面がコ字状となるように形成される。また、端部壁51cは、上部壁51aの移動方向一端部に取り付けられる。上部壁51aの反対側の端部は、エンドプレート22や他の付属装置を挿入するため開放されている。端部壁51cは、該移動方向と直交する断面において、移動ブロック本体21とほぼ同じ形をしている。51dは、端部壁51cにおける開放部であり、開放部51dは、移動ブロックの相対移動時にカバー本体51が軌道レール11と干渉しない大きさに設定される。端部壁51cには、左右対称に一対のボルト通し孔51eが開けられる。上述の通り、エンドプレート22や各種付属装置23〜27を積層した状態で、シール付きカバー50をかぶせ、移動ブロック20の移動方向外側から、締結部材としての取付用ボルト33(図4)をボルト通し孔51eに挿入することにより、エンドプレート22や各付属装置23〜27とシール付きカバー50を、密着させた状態ですきまが生じないように移動ブロック本体21に固定することができる。移動ブロック本体21には、取付用ボルト33がねじ込まれるねじ孔が形成される。カバー本体51の上部壁51a、側部壁51b及び端部壁51cは溶接や曲げ加工にて、一体的に形成することができる。この実施形態のカバー本体51はステンレス等の金属製である。なお、付属装置が設けられていない場合、カバー本体51は、エンドプレート22の水平部22aの上面を覆う上部壁51a、エンドプレート22の左右一対の袖部22bの側面を覆う一対の側部壁51b及び付属装置の移動方向の外側の端面を覆う端部壁51cを有する。
【0031】
図6は、シール付きカバー50のシール部55を示す図であり、図6(a)は正面図で、図6(b)側面図である。シール部55は、カバー本体51の、端部壁51cと向かい合う面において、上部壁51aと側部壁51bとの境目に沿って取り付けられる。このシール部55はカバー本体51よりも軟質の材料(正確にいえばヤング率の小さい材料)からなり、ゴム、樹脂等からなる。樹脂としては、各種のエラストマ(例えば、ポリエステル系、ナイロン系、ポリオレフィン系、アクリル系、フッ素樹脂系)、あるいは各種の合成樹脂(例えばポリエステル系、ナイロン系、ポリオレフィン系、アクリル系、フッ素樹脂系等)を用いることができる。耐薬品性、スプリング特性を考慮すると、ポリエステル系エラストマが最も望ましい。シール部55は移動ブロック本体21の移動方向の端面(エンドプレート側端面)に密着する。締結部材としてのボルト33により移動ブロック本体21にカバー本体51を固定すると、シール部55が移動ブロック本体21のエンドプレート側端面とカバー本体51の移動ブロック本体側端面との間には挟まれて圧縮される。シール部55を取り付けることによって、カバー本体51と移動ブロック本体21の間のすきまを完全に塞いで、このすきまからから異物が内部に侵入するのを防ぐことができる。シール部55は、カバー本体51と別材料で形成した後、カバー本体51と一体に形成されてもよいし、カバー本体51と分離していてもよい。
【0032】
なお、先に説明したリニアガイドにおいては、移動ブロック20に、付属装置として、中間プレート27、潤滑装置23、エンドシール24、積層形接触スクレーパ25及び金属スクレーパ26を全て含めているが、これらの付属装置は必ず取り付けられるものではなく、付属装置は必要に応じて選択することができる。カバー本体50の移動方向の長さは、取り付ける付属装置によって適宜調節する。
【0033】
図1に示すように、上述のリニアガイドにおいては、シール付きカバー50が、各エンドプレート22とその移動方向外側の端面に取り付けられた付属装置の上面と側面を覆うように、そしてエンドプレート22と移動ブロック本体21の間のすきまを完全に塞ぐように設けられるので、移動ブロック20の上方向からの切粉や塵埃等の異物やクーラント等の移動ブロック20内部への侵入を確実に防ぐことができる。さらに、エンドプレート22の移動方向外側端面に、異物侵入防止装置としてエンドシール24、積層形接触スクレーパ25及び金属スクレーパ26が取り付けられているので、軌道レール11の軸方向からの異物の侵入、あるいは軌道レール11上に堆積された、又は貼り付いた切粉や塵埃等の異物の移動ブロック20の内部への侵入を確実に防止することができる。
【0034】
また、通常、移動ブロック本体21と、エンドプレート22と、中間プレート27、潤滑装置23、エンドシール24、積層形接触スクレーパ25及び金属スクレーパ26等の付属装置はボルト等で固定される。その場合、ボルト締付け部分を密着させることができる一方、ボルト締付け部分の周囲に若干すきまが生じる可能性がある。その場合でも、本発明のシール付きカバー50を取り付けることで、切粉等の微細な異物やクーラント等の水分が飛散する環境でも、移動ブロック内部への異物や水分の侵入を阻止することができる。
【0035】
さらに、エンドプレート22やエンドシール24等の樹脂・ゴム部材は、高温の異物がかかることで変形したり、劣化したりしてしまう可能性がある。その場合でも、本発明のシール付きカバー50を取り付けることで、異物の移動ブロック内部への侵入を確実に防止し、樹脂・ゴム部材の変形や劣化を防ぐことができる。
【0036】
さらに、グリースや潤滑油等の潤滑剤を供給する際に、その圧力から部分的にすきまが生じ、エンドプレート22の上部に潤滑剤が漏れ出す可能性がある。その場合でも、本発明のシール付きカバー50を取り付けて、潤滑装置23と中間プレート27やエンドプレート22の上部を押さえることで、潤滑剤が漏れ出すのを抑えて、潤滑が必要なボール転走溝11に潤滑剤が流れやすくなるようにすることができる。
【0037】
次に、上述の第一の実施形態によるリニアガイドの他の例について図7及び図8を用いて説明する。図7は、リニアガイドの他の例を示す分解斜視図であり、図8は、図7における矢印Bからみた断面図である。この例において、本発明の特徴であるシール付きカバー50が取り付けられている点は上述のリニアガイドと同じである。上述のリニアガイドとの違いは、サイドシール60が取り付けられている点にある。なお、図7において、サイドシール60は取付け前の状態で示されており、取付け方向を矢印で示している。
【0038】
サイドシール60は、薄板状のベース60aとベース60aの幅方向一端部にシール部60bを有して形成される。サイドシール60のベース60aの長さは、図7に示すように、移動ブロック20の移動方向の一端に取り付けられた金属スクレーパ26から他端の金属スクレーパ26まで延び、移動ブロック20全長にほぼ等しく、その幅は、図8に示すように、その移動ブロック21の袖部21bの底面の幅にほぼ等しい。また、サイドシール60のベース60aは、図7に示すように、その幅方向の中央に凹みがあり、サイドシール60を取り付けた時に、その凹みにボール32の保持プレート34が嵌まるように形成される。サイドシール60のシール部60bは、ベース60aの幅方向一端部に、サイドシール60を移動ブロック20の底面に取り付けた時に、軌道レール11の側面に接触するように形成される。このように、サイドシール60は、移動ブロック20の全長に渡って、移動ブロック本体21の各袖部21bの底面とエンドプレート22や付属装置23〜27の底面を覆い、移動ブロック20と軌道レール11の側面とのすきまを塞ぐように設けられる。このサイドシール60を設けることにより、リニアガイドの下方向からの異物の侵入を確実に防止することができる。また、このサイドシール60を、上述のシール付きカバー50やエンドシール24、積層形接触スクレーパ25及び金属スクレーパ26等の異物侵入防止装置と併用することで、リニアガイドの移動ブロック20と軌道レール11との間をほぼ密封することができ、上下、前後、左右方向からの異物の侵入を確実に防止することができる。なお、サイドシール60には、ボルト通し孔60cが開けられており、サイドシール60は、エンドプレート22や付属装置23〜27を移動ブロック本体21に取り付けた後、下側からボルト等の締結部材をサイドシール60のボルト通し孔60cに通して移動ブロック20の底面に取り付けることができる。
【0039】
次に、上述の第一の実施形態によるリニアガイドのさらに他の例について図9ないし図13を用いて説明する。図9は、リニアガイドのさらに他の例を示す斜視図であり、図10は、リニアガイドの長手方向に沿った断面図である。この例において、本発明の特徴であるシール付きカバー50が取り付けられている点は、上述のリニアガイドと同じである。上述のリニアガイドとの違いは、シール部55がカバー本体51と分離している点、カバー本体51の端部壁51cが軌道レール11に付着する異物を除去する金属スクレーパを兼用している点にある。
【0040】
図10に示すように、移動ブロック本体21の移動方向の端面には、エンドプレート22が取り付けられ、エンドプレート22には、エンドシール24及び積層形接触スクレーパ25が取り付けられている。これらのエンドプレート22、エンドシール24及び接触形接触スクレーパ25は、締結部材としてのボルト71により移動ブロック本体21に固定される。
【0041】
シール付きカバー50は、エンドプレート22及び付属装置を覆うカバー本体51と、カバー本体51と移動ブロック本体21との間に設けられるシール部55と、を備える。カバー本体51を移動ブロックから取り外した状態において、カバー本体51とシール部55とは分離している。
【0042】
図11はカバー本体51を示す。カバー本体51は、エンドプレート22及び付属装置の水平部22aの上面を覆う上部壁51a及び付属装置の左右の袖部22bを覆う一対の側部壁51bと、付属装置の移動方向の外側の端面を覆う端部壁51cと、を有する。軌道レール11に付着した異物を除去するスクレーパとして機能させるために、カバー本体51の端部壁は、軌道レール11の長手方向と直交する断面形状に対応した内側形状を有し、軌道レール11のボール転走溝に向かって突出する突部51fを有する。軌道レール11と端部壁51cとの間には一定の僅かなすきまSが空けられていて、端部壁51cは軌道レール11に対して非接触の状態になる。カバー本体51の端部壁51cには、締結部材としてのボルト33が挿通される貫通孔51eが形成される。
【0043】
図12はシール部55を示す。シール部55は樹脂成形により製造され、可撓性のある細長い帯状に形成される。図12(a)に示すように、シール部55の断面形状は、略L形に形成され、薄板状の薄肉部55aと、略四角形状のシール本体部55bと、を備える。図10に示すように、薄肉部55aはカバー本体51とエンドプレート22との間に挟まれ、シール本体部55bはカバー本体51と移動ブロック本体21の端面との間に挟まれる。シール本体部55bのカバー本体51側の端面には、カバー本体51と移動ブロック本体21の端面との間に挟まれたときに弾性変形し易いように切込み55cが形成される。
【0044】
図13は、シール部55及びカバー本体51の取付け方法の工程図を示す。まず、図13(a)に示すように、エンドプレート22の上面及び側面に帯状のシール部55を這わせる。エンドプレート22と移動ブロック本体21との間には僅かな段差が形成されていて、シール部55はこの段差の部分に沿うように這わせられる。シール部55は、エンドプレート22に接着させていない。
【0045】
次に、図13(b)に示すように、カバー本体51をシール部55の薄肉部55aの周囲を覆うように嵌める(図10参照)。ボルト33をカバー本体51の端部壁51cの貫通孔51eに挿通し、ボルト33を移動ブロック本体21に締結すると、ボルト33の締結によってカバー本体51が移動ブロック本体21の端面に向かって押し込まれ、カバー本体51と移動ブロック本体21の端面との間に挟まれるシール部55のシール本体部55bが圧縮される。以上により、シール部55及びカバー本体51の取付けが完了する。
【0046】
図14を参照して、シール付きカバー50の変形例を説明する。図14(a)はシール付きカバー50の第一の変形例を示す斜視図である。図14(a)に示すシール付きカバー50は上部壁51a及び両側部壁51bからなるカバー本体51と、シール部55を有する。上述のシール付きカバー50との相違点として、カバー本体51に端部壁51cがなく、断面がコの字型に形成される。このシール付きカバー50においても、エンドプレート22と付属装置の全体を覆い、また、端部に一体的に形成されたシール部55によってカバー本体51と移動ブロック本体21の間のすきまが塞がれるので、切粉等の微細な異物やクーラント等の水分の移動ブロック20内部への侵入を確実に防ぐことができる。なお、第一の変形例によるシール付きカバー50の場合、側部壁51bにボルト通し孔等(図示せず)を設けて、エンドプレート22や付属装置に固定される。
【0047】
図14(b)はシール付きカバー50の第二の変形例を示す斜視図である。図14(b)に示すシール付きカバー50は、図14(a)に示すシール付きカバー50に底面51fを設けた構成になっている。底面51fは、各側部壁51bの下端部から内側に延びるように、側部壁51bに一体に形成される。また、シール部55が、上部壁51aから側部壁51bを通って底面51fの内側端部まで延長し、軌道レール11の側面に接するように形成される。このシール付きカバー50においても、カバー本体51がエンドプレート22と付属装置の全体を覆い、また、端部に一体的に形成されたシール部55がカバー本体51と移動ブロック本体21との間のすきまを塞ぐとともに、軌道レール11の側面とエンドプレート22及び付属装置23〜27のすきまも塞ぐので、異物や水分の上下方向からの移動ブロック20内部への侵入を確実に防ぐことができる。
【0048】
次に、図15ないし図17を参照して、シール部55及びカバー本体51の変形例を説明する。図15(a)に示すシール部55は、カバー本体51の端部72の上面72a、端面72b及び下面72cを囲むコの字形状に形成される。シール部55をコの字形状に形成することにより。カバー本体51とシール部55との密着性を向上させることができる。図15(b)に示すシール部55の、移動ブロック本体21に接触する側には、切込み73が形成されている。カバー本体51と移動ブロック本体21の端面との間でシール部55を圧縮すると、シール部55の二股に分かれた変形部74が潰れるように弾性変形するので、シール部55と移動ブロック本体21の端面との密着性を向上させることができる。
【0049】
図16には、カバー本体51とシール部55との密着性を高めるために、カバー本体51の端面を平面以外の異形に形成した例を示す。図16(a)には、カバー本体51の端部72をシール部55に向かって尖った三角形状に形成した例を示し、図16(b)には、カバー本体51の端部72にシール部55に向かって尖るように傾斜面72aを形成した例を示し、図16(c)には、カバー本体51の端部72に段差72cを形成した例を示す。
【0050】
図17(a)は、エンドプレート22にもシール部55を挟み込む段差22dを形成した例を示す。エンドプレート22の移動ブロック本体21側には、段差22dが形成され、段差22d内にシール部55の凸部が嵌められる。ボルト33等の締結部材によりエンドプレート22を移動ブロック本体21に固定すると、シール部55がエンドプレート22と移動ブロック本体21との間で挟まれて圧縮される。これにより、エンドプレート22と移動ブロック本体21との間の密封性を向上させることができる。また、シール部55の固定も確実になる。図17(b)は、さらに移動ブロック本体21にシール部55の凸部が嵌めこまれる凹部21fを形成した例を示す。移動ブロック本体21に凹部21fを形成することで、クーラント等の液体の浸入経路が長くなるので、より液体の浸入を防止することができる。
【0051】
図18は、クーラント対策が施されたシール部55の例を示す。シール部55には耐薬品性の優れた材料が使用されるが、クーラントが長期間シール部55にかかるとシール部55の早期寿命を招くおそれがある。これを防止するために、シール部55の露出面積を減らす対策がとられる。図18(a)には、シール部55の露出面積を減らすために、移動ブロック本体21に凹部21eを形成し、この凹部21eにシール部55を埋め込んだ例を示す。凹部21eにシール部55を埋め込むことにより、クーラントに触れる面積を減らし、クーラントからの被害を抑えることができる。図18(b)には、シール部55をカバー本体51で覆った例を示す。カバー本体51には段差51gが形成され、シール部55はカバー本体51の段差51gと移動ブロック本体21の端面との間で挟まれる。シール部55をカバー本体51の内部に収納することで、カバー本体51の表面にシール部55が露出しないようにすることができ、クーラントからの被害を抑えることができる。図18(c)には、カバー本体51の内側にシール部55を収納した例を示す。カバー本体51の端面は平面に形成されていて、移動ブロック本体21の端面に突き当てられている。カバー本体51の内側に収納されるシール部55は、エンドプレート22と移動ブロック本体21との間に挟まれている。
【0052】
なお、上記第一の実施形態のリニアガイドにおいて、カバー本体51が金属製であり、シール部55が樹脂製である例について説明したが、カバー本体51もシール部55と同様に樹脂製であってもよい。さらにカバー本体51とシール部55とを同じ樹脂材料にし、カバー本体51とシール部55とを樹脂の射出成型により製造してもよい。この場合、シール付きカバー50には、エンドプレート22の移動方向の外側の端面、又は付属装置の移動方向の外側の端面を覆う端部壁51cが設けられる。シール付きカバー50の端部壁51cには、ボルト33等の締結部材が挿通される貫通孔51eが形成される。締結部材を端部壁51cの貫通孔51eに挿通し、締結部材を移動ブロック本体21に締結することによって、シール付きカバー51が移動ブロック本体21の端面に向かって押し込まれ、シール付きカバー51が移動ブロック本体21の端面に密着する。
【0053】
次に、本発明の第二の実施形態におけるねじ装置について、図10の斜視図を参照して
説明する。本実施形態におけるねじ装置は、外周面に螺旋状のボール転走溝81aが形成されるねじ軸81と、内周面にボール転走溝81aに対向する螺旋状の負荷ボール転走溝82aが形成されるナット82を備える。
【0054】
ねじ軸81は、炭素鋼、クロム鋼、又はステンレス鋼などの棒鋼の外周面に、所定のリードを有する螺旋状のボール転走溝81aを切削及び研削加工又は転造加工によって形成したものである。ボール転走溝81aの条数は一条、二条、三条等様々に設定される。ボール転走溝81aの断面は単一の円弧からなるサーキュラーアーク溝形状、又は二つの円弧を組み合わせたゴシックアーチ溝形状である。
【0055】
ナット82は、炭素鋼、クロム鋼、又はステンレス鋼などの円筒の内周面に、所定のリードを有する螺旋状の負荷ボール転走溝82aを切削及び研削加工又は転造加工によって形成したものである。ナット82は、内周面に負荷ボール転走溝82aが加工されるナット本体85と、ナット本体85の両端に設けられる蓋部材としての一対のエンドキャップ83と、から構成される。ナット本体85の外周の軸線方向の端部には、ナット82を相手部品に取り付けるためのフランジ84が形成される。ナット本体85の負荷ボール転走溝82aは、ねじ軸81のボール転走溝81aに対向する。ナット本体85には、ボール88を循環させるためにナット本体85の軸線方向に貫通するボール戻し路82bが開けられる。エンドキャップ83には、ねじ軸81のボール転走溝81aを転がるボール88を掬い上げ、ボール戻し路82bに導く方向転換路が開けられる。ねじ軸81のボール転走溝81aと、ナット本体85の負荷ボール転走溝82aとの間の負荷ボール転走路、方向転換路、及びボール戻し路82bから構成されるボール循環路には、複数のボール88が配列・収容される。なお、ボール88間には、ボール88同士の接触を防止するリテーナが必要に応じて介在される。
【0056】
ねじ軸81を回転させると、ボール88を介してねじ軸81に嵌まるナット82が軸線方向に移動する。それと同時に、ボール88はボール循環路を循環する。負荷ボール転走路を転がるボール88は、負荷ボール転走路の一端まで転がった後、エンドキャップ83の方向転換路内に掬い上げられ、ボール戻し路82bを経由した後、反対側のエンドキャップ83から元の負荷ボール転走路の他端に戻される。
【0057】
90は、本発明の特徴であるシール付きカバーを指す。図10には片方のシール付きカバー90のみ示しているが、シール付きカバー90はナット本体85の両端のエンドキャップ83のそれぞれに設けられる。シール付きカバー90は、カバー本体91と、シール部95を有する。カバー本体91は、円筒形状の側面91aと、側面91aの一端部に一体形成された端面91bからなる。端面91bには、その中央に、ねじ軸81を通すための孔が開いている。シール付きカバー90は、ナット本体85にエンドキャップ83を取り付けた後、軸方向外側からエンドキャップ83を覆うように取り付けられる。シール付きカバー90のシール部95は、ナット本体85のエンドキャップ側端面に密着し、カバー本体91とナット本体85の間のすきまを塞ぐ。このシール付きカバー90を設けることによって、エンドキャップを高温の異物から保護することができるとともに、エンドキャップ83とナット本体85の間のすきまから異物がナット82内部に侵入するのを防ぐことができる。シール付きカバー90は、エンドキャップ83にかぶせた後、端面91bに設けられたボルト通し孔91cにボルト等の締結部材を通すことによって、エンドキャップ83に固定することができる。
【0058】
なお、本発明は上記実施形態に限られることなく、本発明の要旨を変更しない範囲で様々に変更可能である。たとえば、本実施例では転動体にボール32を用いる例を説明したが、転動体はボールに限定されるものではなく、ローラであってもよい。また、カバー本体とシール部とを分離し、シール部をカバー本体と移動体本体との間で挟んでもよい。
【0059】
また、上述の実施形態においては、本発明をリニアガイドやねじ装置に適用して説明してきたが、本発明はこれらに限らず、スプラインナットの各端部にエンドキャップを有するスプライン装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0060】
11…軌道レール(軌道部材),11a…ボール転走溝(ボール転走部),20…移動ブロック(移動体),20a…負荷ボール転走溝(負荷転動体転走部),20b…ボール戻し路(転動体戻し路),21移動ブロック本体(移動体本体),22…エンドプレート(蓋部材),32…ボール,27…中間プレート(付属装置),23…潤滑装置(付属装置),24…エンドシール(付属装置),25…積層形接触スクレーパ(付属装置),26…金属スクレーパ(付属装置),50…シール付きカバー,51…カバー本体,51a…上面,51b…側面,51c…端面,55…シール部,60…サイドシール,61b…シール部,81…ねじ軸,81a…ボール転走溝(転動体転走部),82a…負荷ボール転走溝(負荷転動体転走部),82b…ボール戻し路(転動体戻し路),85…ナット本体,83…エンドキャップ(蓋部材),90…シール付きカバー,91…カバー本体,95…シール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に伸びる転動体転走部を有する軌道部材と、
前記軌道部材の前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部及び前記負荷転動体転走部に略平行な転動体戻し路を有する移動体本体、及び前記移動体本体の相対移動方向の各端部に設けられ、前記移動体本体の前記負荷転動体転走部と前記転動体戻し路を接続する方向転換路を形成する蓋部材を有する移動体と、
前記軌道部材の前記転動体転走部と前記移動体本体の負荷転動体転走部との間の負荷転動体転走路、前記転動体戻し路及び前記方向転換路を含む転動体循環路に配列される複数の転動体と、
前記蓋部材を覆うカバー本体、及び前記カバー本体と前記移動体本体の蓋部材側端面との間に設けられ、前記移動体本体の蓋部材側端面と前記カバー本体との間のすきまを塞ぐシール部を有するカバーと、
を備える運動案内装置。
【請求項2】
前記移動体が、潤滑装置又は異物侵入防止装置を含む付属装置の少なくとも一つをさらに有し、
前記カバー本体が前記蓋部材に取り付けられる前記付属装置の少なくとも一つも覆うことを特徴とする請求項1に記載の運動案内装置。
【請求項3】
前記カバー本体は、前記移動体に締結部材により固定され、
前記シール部は、前記カバー本体と前記移動体本体の前記蓋部材側端面との間に挟まれて圧縮されることを特徴とする請求項1に記載の運動案内装置。
【請求項4】
前記カバー本体は、前記蓋部材の前記相対移動方向の外側の端面を覆う端部壁を有し、
前記カバー本体の前記端部壁には、締結部材が挿通される貫通孔が形成され、
前記締結部材を前記端部壁の前記貫通孔に挿通し、前記締結部材を前記移動体に締結することによって、前記カバー本体が前記移動体本体の前記蓋部材側端面に向かって押し込まれ、前記カバー本体と前記移動体本体の前記蓋部材側端面との間に挟まれる前記シール部が圧縮されることを特徴とする請求項1に記載の運動案内装置。
【請求項5】
前記カバー本体は、前記付属装置の前記相対移動方向の外側の端面を覆う端部壁を有し、
前記カバー本体の前記端部壁には、締結部材が挿通される貫通孔が形成され、
前記締結部材を前記端部壁の前記貫通孔に挿通し、前記締結部材を前記移動体に締結することによって、前記カバー本体が前記移動体本体の前記蓋部材側端面に向かって押し込まれ、前記カバー本体と前記移動体本体の前記蓋部材側端面との間に挟まれる前記シール部が圧縮されることを特徴とする請求項2に記載の運動案内装置。
【請求項6】
前記蓋部材が収納された前記カバー内に発生するすきまを埋める中間プレートをさらに備えることを特徴とする請求項4に記載の運動案内装置。
【請求項7】
前記蓋部材及び前記付属装置が収納された前記カバー内に発生するすきまを埋める中間プレートをさらに備えることを特徴とする請求項5に記載の運動案内装置。
【請求項8】
前記移動体本体は、前記軌道部材を水平面に配置した状態において、前記軌道部材の上面に対向する水平部と、前記軌道部材の幅方向の左右の側面に対向する一対の袖部と、を有し、
前記運動案内装置は、前記軌道部材の前記左右の側面と前記移動体本体の前記一対の袖部との間に発生するすきまを閉塞するサイドシールをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の運動案内装置。
【請求項9】
前記カバー本体の前記端部壁は、前記軌道部材の長手方向と直交する断面形状に対応し、前記軌道部材の前記転動体転走部に向かって突出する突部を含む内側形状を有し、
前記軌道レールに非接触状態の前記端部壁が、前記軌道レールに付着した異物を除去するスクレーパとして機能することを特徴とする請求項4又は5に記載の運動案内装置。
【請求項10】
長手方向に伸びる転動体転走部を有する軌道部材と、前記軌道部材の前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部及び前記負荷転動体転走部に略平行な転動体戻し路を有する移動体本体、及び前記移動体本体の相対移動方向の端部に設けられ、前記移動体本体の前記負荷転動体転走部と前記転動体戻し路を接続する方向転換路を形成する蓋部材を有する移動体と、前記軌道部材の前記転動体転走部と前記移動体本体の負荷転動体転走部との間の負荷転動体転走路、前記転動体戻し路及び前記方向転換路を含む転動体循環路に配列される複数の転動体と、を備える運動案内装置に取り付けられるカバーであって、前記蓋部材を覆うカバー本体、及び前記カバー本体と前記移動体本体の蓋部材側端面との間に設けられ、前記移動体本体の蓋部材側端面と前記カバー本体との間のすきまを塞ぐシール部を有するカバー。
【請求項11】
長手方向に伸びる転動体転走部を有する軌道部材と、
前記軌道部材の前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部及び前記負荷転動体転走部に略平行な転動体戻し路を有する移動体本体、及び前記移動体本体の相対移動方向の各端部に設けられ、前記移動体本体の前記負荷転動体転走部と前記転動体戻し路を接続する方向転換路を形成する蓋部材を有する移動体と、
前記軌道部材の前記転動体転走部と前記移動体本体の負荷転動体転走部との間の負荷転動体転走路、前記転動体戻し路及び前記方向転換路を含む転動体循環路に配列される複数の転動体と、
前記蓋部材を覆うカバーと、を備え、
前記カバーは、前記蓋部材の前記相対移動方向の外側の端面、又は前記蓋部材に取り付けられる、潤滑装置若しくは異物侵入防止装置を含む付属装置の前記相対移動方向の外側の端面を覆う端部壁を有し、
前記カバーの前記端部壁には、締結部材が挿通される貫通孔が形成され、
前記締結部材を前記端部壁の前記貫通孔に挿通し、前記締結部材を前記移動体に締結することによって、前記カバーが前記移動体本体の前記蓋部材側端面に向かって押し込まれ、前記カバーが前記移動体本体の前記蓋部材側端面に密着する運動案内装置。
【請求項12】
外周面に螺旋状の転動体転走部が形成されるねじ軸と、
内周面に前記ねじ軸の前記転動体転走部に対向する螺旋状の負荷転動体転走部が形成されると共に、前記負荷転動体転走部の一端と他端を接続する転動体戻し路を有するナット本体と、
前記ナット本体の各端面に設けられ、前記ナット本体の前記負荷転動体転走部と前記転動体戻し路を接続する方向転換路を形成する蓋部材と、
前記ねじ軸の前記転動体転走部と前記ナット本体の前記負荷転動体転走部との間の負荷転動体転走路、前記転動体戻し路及び前記方向転換路に配列される複数の転動体と、
前記蓋部材を覆うカバー本体、及び前記カバー本体と前記ナット本体の蓋部材側端面との間に設けられ、前記ナット本体の蓋部材側端面と前記カバー本体との間のすきまを塞ぐシール部を有するカバーと、とを備えるねじ装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−7324(P2011−7324A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−99877(P2010−99877)
【出願日】平成22年4月23日(2010.4.23)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】