運動案内装置
【課題】潤滑剤供給経路の排出口から転動体循環経路内に勢いよく潤滑剤を出すことができる運動案内装置を提供する。
【解決手段】運動案内装置は、長手方向に沿って伸びる転動体転走部1aが形成される軌道部材1と、転動体転走部1aに対向する負荷転動体転走部5cが形成されると共に、負荷転動体転走部5cと略平行に伸びる転動体戻り通路5dを含む転動体循環経路を有する移動ブロックと、転動体循環経路に配列される複数の転動体3と、を備える。移動ブロックには、転動体循環経路に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給経路が設けられる。潤滑剤供給経路は、転動体循環経路に接続される排出口における断面積が、他の部分の断面積よりも小さい。あたかもホースの先端を絞れば水が勢いよく出るがごとく、排出口から潤滑剤を勢いよく出すことができる。
【解決手段】運動案内装置は、長手方向に沿って伸びる転動体転走部1aが形成される軌道部材1と、転動体転走部1aに対向する負荷転動体転走部5cが形成されると共に、負荷転動体転走部5cと略平行に伸びる転動体戻り通路5dを含む転動体循環経路を有する移動ブロックと、転動体循環経路に配列される複数の転動体3と、を備える。移動ブロックには、転動体循環経路に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給経路が設けられる。潤滑剤供給経路は、転動体循環経路に接続される排出口における断面積が、他の部分の断面積よりも小さい。あたかもホースの先端を絞れば水が勢いよく出るがごとく、排出口から潤滑剤を勢いよく出すことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーブルなどの移動体が直線又は曲線運動するのを案内するリニアガイド、スプラインなどの運動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テーブルなどの移動体の直線運動や曲線運動を案内するための機械要素として、案内部分にボール、ローラなどの転動体を介在させた運動案内装置は、軽快な動きが得られるので、ロボット、工作機械、半導体・液晶製造装置、医療機器などのさまざまな分野で利用されている。
【0003】
この運動案内装置は、ベースに取り付けられる軌道レールと、軌道レールに相対運動可能に組み付けられると共に移動体が取り付けられる移動ブロックとを有する。軌道レールには、長手方向に沿って伸びる転動体転走部が形成される。移動ブロックには、転動体転走部に対向する負荷転動体転走部が形成されると共に、転動体を循環させる転動体循環経路が設けられる。軌道レールのボール転走部と移動ブロックの負荷ボール転走溝との間には、転動体が介在される。軌道レールに対して移動ブロックが相対的に直線運動すると、軌道レールと移動ブロックとの間に介在された転動体が転がり運動する。
【0004】
このような転がり型の運動案内装置を使用する際には、良好な潤滑、すなわち、転動体と転動面の間に油の膜を作り、金属と金属が直接接触するのを防ぐ必要がある。無給油のままで使用すると、転動体及び転走面の摩耗が増加し、早期寿命の原因となるからである。
【0005】
運動案内装置の潤滑方法には、グリースガン、手動ポンプなどによる手動給脂方法と、自動ポンプによる強制給油方法がある。例えば図16に示される手動給脂方法では、グリースガン65を使用して、ニップル66から運動案内装置に定期的にグリースを給脂する。移動ブロックの端面に取り付けられるエンドプレート64には、ニップルから転動体循環経路に繋がる潤滑剤供給経路が設けられる(例えば、特許文献1参照)。図17に示されるように、強制給油方法は、自動ポンプにより定期的に一定量の潤滑油を強制的に給油する給油方法である。主に潤滑油による潤滑に用いられる。この強制給油方法でも、手動給脂方法と同様に、エンドプレート64の潤滑剤供給経路を介して転動体循環経路に潤滑油が供給される。
【0006】
【特許文献1】特開2005−083500号公報(段落0014参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、近年、環境への影響を考慮して、潤滑剤の使用量が少量になりつつある。少量の潤滑剤を転動体循環経路に供給しても、潤滑剤供給経路の排出口から勢いよく潤滑剤がでない。こうなると、転動体循環経路の周囲が濡れるだけで、転動体まで潤滑剤が届き難くなる。
【0008】
そこで本発明は、潤滑剤供給経路の排出口から転動体循環経路内に勢いよく潤滑剤を出すことができる運動案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものでない。
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、長手方向に沿って伸びる転動体転走部(1a)が形成される軌道部材(1)と、前記転動体転走部(1a)に対向する負荷転動体転走部(5c)が形成されると共に、前記負荷転動体転走部(5c)と略平行に伸びる転動体戻り通路(5d)を含む転動体循環経路を有する移動ブロック(4)と、前記転動体循環経路に配列される複数の転動体(3)と、を備える運動案内装置において、前記移動ブロック(4)には、前記転動体循環経路に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給経路(33,46)が設けられ、前記潤滑剤供給経路(33,46)は、前記転動体循環経路に接続される排出口(30)における断面積が他の部分の断面積よりも小さいことを特徴とする運動案内装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の運動案内装置において、前記潤滑剤供給経路(33,46)は、前記排出口(30)に向かって徐々に断面積が小さくなる部分を有するか、又は前記排出口(30)において断面積が絞られていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の運動案内装置において、前記移動ブロック(4)は、前記負荷転動体転走部(5c)及び前記転動体戻り通路(5d)を有する移動ブロック本体(5)と、前記移動ブロック本体(5)の移動方向の端面に取り付けられ、前記負荷転動体転走部(5c)と前記転動体戻り通路(5d)を接続する方向転換路(16)が形成される蓋部材(6)と、を有し、前記蓋部材(6)の、前記移動ブロック本体(4)に接触する接触面(6a)に、前記転動体循環経路に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給溝(22,23)が掘られ、前記潤滑剤供給溝(22,23)の長手方向の一端が、前記蓋部材(6)の外部から潤滑剤が供給される潤滑剤供給孔(21)に接続され、前記潤滑剤供給溝(22,23)の長手方向の他端に前記排出口(30)が設けられ、前記潤滑剤供給溝(22,23)によって形成される前記潤滑剤供給経路(33)は、前記他端において断面積が絞られていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の運動案内装置において、前記移動ブロック(4)は、前記負荷転動体転走部(5c)及び前記転動体戻り通路(5d)を有する移動ブロック本体(5)と、前記移動ブロック本体(5)の移動方向の端面に取り付けられ、前記負荷転動体転走部(5c)と前記転動体戻り通路(5d)を接続する方向転換路(16)が形成される蓋部材(6)と、を有し、前記蓋部材(6)の、前記移動ブロック本体(4)に接触する接触面(6a)に、前記転動体循環経路に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給溝(22,23)が掘られ、前記潤滑剤供給溝(22,23)の長手方向の一端が、前記蓋部材(6)の外部から潤滑剤が供給される潤滑剤供給孔(21)に接続され、前記潤滑剤供給溝(22,23)の長手方向の他端に前記排出口(30)が設けられ、前記潤滑剤供給溝(22,23)によって形成される前記潤滑剤供給経路(33)は、前記一端から前記他端に向けて徐々に断面積が小さくなっていく部分を有することを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の運動案内装置において、前記転動体(3)は帯状のリテーナバンド(8)により一連に回転自在に保持され、前記蓋部材(6)の前記方向転換路(16)には、前記リテーナバンド(8)の幅方向の端部(8b)を案内するリテーナ案内部(35)が形成され、前記潤滑剤供給経路(33)の前記排出口(30)は、前記方向転換路(16)の前記リテーナ案内部(35)に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1又は2に記載の発明によれば、潤滑剤供給経路の排出口における断面積が他の部分の断面積よりも小さいので、あたかもホースの先端を絞れば水が勢いよく出るがごとく、排出口から潤滑剤を勢いよく出すことができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、潤滑剤供給経路の断面積を排出口において狭めるので、潤滑剤供給経路の排出口において潤滑剤の流速を上げることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、潤滑剤供給経路の断面積を排出口に向けて徐々に狭めるので、潤滑剤供給経路の圧力損失を低減することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、潤滑剤供給経路の排出口が方向転換路のリテーナ案内部に設けられるので、方向転換路の転動体との接触面に排出口が設けられることがない。よって、排出口が段差になって転動体が移動するのを妨げることがない。そして、転動体から離れたリテーナ案内部に排出口を設けたとしても、排出口から潤滑剤が勢いよくでるので、転動体に潤滑剤を届かせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1及び図2は、本発明の第一の実施形態における運動案内装置を示す。図1は運動案内装置の斜視図を示し、図2は運動案内装置の断面図を示し、図3は運動案内装置のボール循環経路の断面図を示す。この実施形態の運動案内装置は、リニアガイドと呼ばれ、ベースに対してテーブル等の移動体が往復直線運動するのを案内する。案内部分には、転動体として複数のボールが介在される。
【0020】
ベースには、軌道部材としての軌道レール1が取り付けられる。軌道レール1には、軌道レール1をボルト等の結合手段によりベースに固定するための取付け孔2が空けられる。軌道レール1は、断面略四角形状で細長く直線状に伸びる。軌道レール1の左右側面には、転動体転走部として、長手方向に沿って伸びる例えば二条のボール転走溝1aが形成される。ボール転走溝1aの断面形状は単一の円弧からなるサーキュラーアーチ溝形状であるか、二つの円弧からなるゴシックアーチ溝形状である。ボール転走溝1aの条数、ボール転走溝とボールとの接触角は、運動案内装置の負荷荷重に応じてさまざまに設定される。ボール3が転がり運動するので、ボール転走溝1aは表面粗さが小さくかつ強度が強くなるように加工される。
【0021】
図2に示されるように、軌道レール1には、移動ブロック4が複数のボール3を介して相対運動可能に組み付けられる。移動ブロック4は、金属製の移動ブロック本体5と、移動ブロック4の移動方向の両端部に設けられる樹脂製の一対のエンドプレート6とから構成される。移動ブロック本体5は、その全体が鞍形状に形成され、軌道レール1の上面に対向する中央部5aと、中央部5aの幅方向の両端部から下方に垂れさがり、軌道レール1の左右側面に対向する側壁部5bと、を有する。移動ブロック本体5の左右それぞれの側壁部5bの内面には、軌道レール1のボール転走溝1aに対向する負荷転動体転走溝として、上下に二条の負荷ボール転走溝5cが形成される。この負荷ボール転走溝5c上も複数のボール3が転がり運動するので、負荷ボール転走溝5cは表面粗さが小さくかつ強度が大きくなるように加工される。
【0022】
図1に示されるように、複数のボール3はボール循環経路ごとに、リテーナバンド8によって一連に連結される。複数のボール3間には円筒形状の複数のスペーサ8aが介在される。複数のスペーサ8aはその側面が一対の帯状の連結部8bによって連結される。帯状の連結部8b及び複数のスペーサ8aによって、リテーナバンド8には、ボール3を保持するためのポケットが形成される。図2に示されるように、ボール3の進行方向からみて連結部8bはボール3よりも外側にはみ出す。移動ブロック本体5の負荷ボール転走溝5cの両側には、このボール3よりもはみ出した連結部8bを案内するための案内溝が加工される。案内溝10は、移動ブロック本体に一体に成型した樹脂成型体11に加工される。この案内溝10は、軌道レール1から移動ブロック4を外した際に移動ブロック4の負荷ボール転走溝5cからボール3が脱落するのを防止する。
【0023】
図2に示されるように、移動ブロック本体5の左右それぞれの側壁部5bには、転動体戻り通路として、負荷ボール転走溝5cと平行に伸びるボール戻り通路5dが設けられる。ボール戻り通路5dは負荷ボール転走溝5cと同じ数だけ設けられる。ボール戻り通路5dの直径はボール3の直径よりも大きいので、ボール戻り通路5dではボール3が荷重を受けることがない。ボール3は、後続のボール3に押されながら、又はリテーナバンド8を介して前方のボール3に引っ張られながら、ボール戻り通路5dを移動する。ボール戻り通路5dは、移動ブロック本体5に空けた貫通孔12内に樹脂成型体13を一体に成型することで形成される。ボール戻り通路5dにも、リテーナバンド8の連結部8bを案内するための案内溝14が加工される。
【0024】
移動ブロック本体5の移動方向の両端には、蓋部材として、エンドプレート6が装着される。図3に示されるように、エンドプレート6には、負荷ボール転走溝5cとボール戻り通路5dを接続するU字状の方向転換路16が形成される。より詳しくは、エンドプレート6には、方向転換路16の外周側が形成される。移動ブロック本体5の端面には、方向転換路16の内周側を構成するRピース部17が一体に射出成型される。エンドプレート6とRピース部17とを組み合わせて方向転換路16が形成される。
【0025】
直線状に伸びる負荷ボール転走溝5c、負荷ボール転走溝5cと平行に伸びるボール戻り通路5d、並びに負荷ボール転走溝5cとボール戻り通路5dとを接続するU字状の方向転換路16によって、サーキット状のボール循環経路が形成される。このボール循環経路にリテーナバンド8に保持された複数のボール3が収容される。移動ブロック4を軌道レール1に対して相対的に移動させると、複数のボール3が、軌道レール1のボール転走溝1aと移動ブロック4の負荷ボール転走溝5cとの間の負荷ボール転走路を転がり運動する。移動ブロック4の負荷ボール転走溝5cの一端まで転がったボール3は、エンドプレート6に設けられた掬上げ部で掬い上げられ、U字状の方向転換路16を経由した後、ボール戻り通路5dに入る。ボール戻り通路5dを通過したボールは、反対側の方向転換路16を経由した後、再び負荷ボール転走路に入る。サーキット状のボール循環経路は合計で四つ独立して設けられる。
【0026】
図4はエンドプレート6の平面図を示し、図5は図4のV部拡大図を示す。エンドプレート6には、エンドプレート6を移動ブロック4の移動方向に貫通する潤滑剤供給孔21が空けられる。潤滑剤供給孔21には、ニップルを取り付けるためのねじ孔が加工される(図1参照)。エンドプレート6の外部からこの潤滑剤供給孔21に潤滑剤が供給される。移動ブロック本体5の端面に接触するエンドプレート6の接触面6aには、潤滑剤供給孔21にその一端が接続される第一の潤滑剤供給溝22が掘られる。第一の潤滑剤供給溝22は、エンドプレート6の中心線に対して対称であり、潤滑剤供給孔21から左右方向に伸びる。そして、エンドプレート6の左右の側壁部6bに設けられる方向転換路16に向かって下方に伸び、上下二条の方向転換路16の中間部分で二股に分岐し、最終的には上下二条の方向転換路16に接続される。
【0027】
潤滑剤は第一の潤滑剤供給溝22と方向転換路16との接続部分である排出口30から方向転換路16内に吐出する。第一の潤滑剤供給溝22は、潤滑剤供給孔21から二股に分岐する部分に向けて徐々に幅が狭くなり、二股に分岐したのちは一定の幅になる。移動ブロック本体5の端面と、第一の潤滑剤供給溝22が掘られるエンドプレート6との間に、方向転換路16に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給経路が形成される。後述するように、この潤滑剤供給経路には潤滑剤としてグリースが供給される。第一の潤滑剤供給溝22の幅が狭くなるのにしたがって、潤滑剤供給経路の断面積も潤滑剤供給孔21から二股に分岐する部分に向けて徐々に小さくなる。
【0028】
第一の潤滑剤供給溝22の底面には、第一の潤滑剤供給溝22よりも断面積の小さい第二の潤滑剤供給溝23が掘り下げられる。第二の潤滑剤供給溝23も第一の潤滑剤供給溝22と同様に、エンドプレート6の中心線に対して対称であり、潤滑剤供給孔21から左右方向に伸びる。そして、エンドプレート6の左右の側壁部6bそれぞれに設けられる方向転換路16に向かって下方に伸び、上下二条の方向転換路16の中間部分で二股に分岐し、その端部が上下二条の方向転換路16に繋がる。第二の潤滑剤供給溝23の経路長さは、第一の潤滑剤供給溝22の経路長さに等しい。
【0029】
図5において、第二の潤滑剤供給溝23は斜線で示される。潤滑剤は第二の潤滑剤供給溝23と方向転換路16との接続部分である排出口30から方向転換路16内に吐出する。第二の潤滑剤供給溝23は、潤滑剤供給孔21から二股に分岐する部分に向けて徐々に幅が狭くなり、二股に分岐したのちは一定の幅になる。後述するように、潤滑剤として潤滑油を使用する場合、第一の潤滑剤供給溝22にはアタッチメントが着脱可能に埋め込まれる。そして、アタッチメントと第二の潤滑剤供給溝23との間に、方向転換路16に潤滑油を供給するための潤滑剤供給経路が形成される。第二の潤滑剤供給溝23の幅が狭くなるのにしたがって、この潤滑剤供給経路の断面積も潤滑剤供給孔21から二股に分岐する部分に向けて徐々に小さくなる。
【0030】
図6は、第二の潤滑剤供給溝23の他の例を示す。この例では、第二の潤滑剤供給溝23が分岐した後に一定の幅をもつが、第二の潤滑剤供給溝23の排出口30において、断面積が絞られている。分岐前の第二の潤滑剤供給溝23は、一定の幅であってもよいし、分岐位置に向けて徐々に幅が狭くなってもよい。
【0031】
図4に示されるように、エンドプレート6には、方向転換路16が形成されている。エンドプレート6の方向転換路16には、リテーナバンド8の連結部8b(リテーナバンド8の幅方向の端部)の外周側を案内するリテーナ案内部35が形成される。Rピース部にも、リテーナバンド8の連結部8bの内周側を案内するリテーナ案内部が形成される。エンドプレート6とRピース部17(図3参照)とを組み合わせると、方向転換路16に沿ってリテーナ案内溝が形成される。第一及び第二の潤滑剤供給溝22,23の排出口30は、エンドプレート6のリテーナ案内部35に接続される。より正確には、排出口30はリテーナ案内部35に案内されるリテーナバンド8の連結部8bよりも僅かに内周側に設けられる。
【0032】
図7は、エンドプレート6の方向転換路16を移動するボール3及びリテーナバンド8を示す。ボール3は半円状の方向転換路16を移動する際、遠心力によって方向転換路16の外周側に接触しながら移動する。また、リテーナバンド8の連結部8bも方向転換路16のリテーナ案内部35内で撓まされるので、リテーナ案内部35の外周側に沿って移動する。本実施形態によれば、排出口30がリテーナ案内部35に設けられるので、ボール3が方向転換路16の外周側に接触しながら移動する際、排出口30の段差によってボール3の移動が妨げられることがない。しかも、排出口30はリテーナバンド8の連結部8bよりも僅かに内周側に設けられる(図4参照)ので、リテーナバンド8の連結部8bがリテーナ案内部35の外周側に接触しながら移動する際、排出口30の段差に連結部8bが引っ掛かることもない。
【0033】
エンドプレート6は形状が複雑であるため、従来から樹脂を射出成型することで製造される。第一及び第二の潤滑剤供給溝22,23は、もともと射出成型されるエンドプレート6に形成するので、その製造は容易である。図4中符号25は、エンドプレート6を移動ブロック本体5に取り付けるための貫通孔である。
【0034】
図8は、第一の潤滑剤供給溝22に嵌められるアタッチメント26を示す。アタッチメント26は、エンドプレート6よりも軟質の、ゴム又は樹脂(望ましくは軟質プラスチック)製の弾性体からなる。このアタッチメント26はシート状の材料をプレスで打ち抜くか、又はウォータージェットカッタなどにより切断することで製造される。アタッチメント26の平面形状は、第一の潤滑剤供給溝22の平面形状と同じである。アタッチメント26の表面側及び裏面側はいずれも平面に形成される。
【0035】
図9は、第一の潤滑剤供給溝22にさらに嵌められるアタッチメント29を示す。図4に示されるように、この実施形態のエンドプレート6の接触面6aの方向転換路16が形成されている部分27には段差があり、他の部分28よりも一段下がっている(図11参照)。一段下がった部分の段差を埋めるために、アタッチメント29が設けられる。アタッチメント29の平面形状は、エンドプレート6の一段上がった部分28の第一の潤滑剤供給溝22の平面形状と同じである。アタッチメント29の表面側及び裏面側はいずれも平面に形成される。
【0036】
なお、エンドプレート6の端面に段差がない場合には、アタッチメント29は不要である。また、この実施形態においては、二種類の別体のアタッチメント26,29を重ねているが、二種類のアタッチメント26,29を一体にしてもよい。
【0037】
図10及び図11は、エンドプレート6の第一の潤滑剤供給溝22にアタッチメント26,29を埋め込んだ状態を示す。図10には、エンドプレート6の第一の潤滑剤供給溝22の右側のみにアタッチメントを埋め込んだ状態が示される。実際には第一の潤滑剤供給溝22の右側及び左側の両方にアタッチメント26,29が埋め込まれる。アタッチメントを第一の潤滑剤供給溝22に埋めると、第一の潤滑剤供給溝22の断面の全体が塞がれる。その一方、アタッチメントを第一の潤滑剤供給溝22に埋めても、第二の潤滑剤供給溝23は塞がれることはない。第一の潤滑剤供給溝22に埋め込まれたアタッチメント26,29は、第一の潤滑剤供給溝22の底面と移動ブロック本体5の端面との間に挟まれる。アタッチメント26,29には締めしろがあり、アタッチメント26,29の厚みは、第一の潤滑剤供給溝22の底面と移動ブロック本体5の端面との間のすき間よりも小さい。弾性体からなるアタッチメント26,29が、第一の潤滑剤供給溝22の底面31(図12参照)に密着し、第二の潤滑剤供給溝23が密封される。
【0038】
図11及び図12に示されるように、第二の潤滑剤供給溝23の両側に、第二の潤滑剤供給溝23に沿って伸びる二条のリブ部32を設けてもよい。リブ部32は、第一の潤滑剤供給溝22の底面31から突出する。このようにリブ部32を設けることにより、アタッチメント26に締めしろを設けなくても、アタッチメント26を変形させることができる。アタッチメント26の変形量も大きくとれるので、第二の潤滑剤供給溝23の密封性をさらに向上することができる。また、リブ部32を設けないと、アタッチメント26が変形して、第二の潤滑剤供給溝23を埋めるおそれがある。リブ部32を設けることで、アタッチメント26が第二の潤滑剤供給溝23を狭めることを防止できる。よって、一定の断面積の第二の潤滑剤供給溝23が確実に得られる。
【0039】
潤滑剤には、グリース(リチウム系グリース、ウレア系グリースなど)と潤滑油(摺動面油又はタービン油、ISOVG32〜68など)の二種類がある。これらは相反する特性を持つので、潤滑剤としてグリースを使用するときは潤滑剤供給経路の断面積を広くする一方、潤滑剤として潤滑油を使用するときには潤滑剤供給経路の断面積を狭くする必要がある。グリースはゲル状で粘性が高い。それゆえ、低い圧力でグリースを供給するためには、潤滑剤供給経路の抵抗を小さくする必要がある。抵抗を小さくするためには、潤滑剤供給経路の断面積を大きく、かつ潤滑剤供給経路の長さを短くすればよい。他方、潤滑油は液体状であり、粘性が低くて、さらさらと潤滑剤供給経路を流れる。少量の潤滑油をグリース用の体積の大きな潤滑剤供給経路に流すと、潤滑剤供給経路が潤滑油で充満されずに圧力がかからない現象が生ずるので、全ての転動体循環経路に潤滑油を供給するのが困難になる。それゆえ、全ての転動体循環経路に潤滑油を供給するためには、潤滑剤供給経路の体積を小さくする必要がある。そのためには、潤滑剤供給経路の断面積を小さく、かつ潤滑剤供給経路の長さを短くすればよい。
【0040】
つまり、潤滑剤としてグリースを供給するときには、潤滑剤供給経路の断面積を大きく、かつ潤滑剤供給経路を短くすればよく、その一方、潤滑剤として潤滑油を供給するときには、潤滑剤供給経路の断面積を小さく、かつ潤滑剤供給経路を短くすればよい。
【0041】
グリース用の広い断面積の潤滑剤供給経路を設けるために、エンドプレート6には第一の潤滑剤供給溝22が掘られる。第一の潤滑剤供給溝22をグリース用の潤滑剤供給経路として使用するときには、第一の潤滑剤供給溝22にはアタッチメント26,29が埋め込まれない。第一の潤滑剤供給溝22には、第二の潤滑剤供給溝23が掘られているので、第二の潤滑剤供給溝23もグリース用の潤滑剤供給経路として利用される。
【0042】
潤滑剤として潤滑油を使用するときには、図13に示されるように、第一の潤滑剤供給溝22にアタッチメント26,29が埋め込まれる。アタッチメント26,29で第一の潤滑剤供給溝22を塞ぐと、潤滑剤供給経路として残るのは第二の潤滑剤供給溝23だけになる。潤滑油用の潤滑剤供給経路は、第二の潤滑剤供給溝23とアタッチメント26,29との間に形成される。潤滑油はポンプによって圧力をもって潤滑剤供給経路に供給されるので漏れ易い。アタッチメント26,29が潤滑剤供給経路の密封性を向上させるので、潤滑剤供給経路から潤滑油が漏れ出るのを防止することができる。
【0043】
図5及び図6に示されるように、第二に潤滑剤供給溝23によって形成される潤滑油用の潤滑剤供給経路は、排出口30に向かって徐々に断面積が小さくなる部分を有するか、又は排出口30において断面積が絞られている。潤滑剤供給経路に潤滑油を供給すると、あたかもホースの先端を絞れば水が勢いよく出るがごとく、排出口30における潤滑油の流速が上がって排出口30から潤滑油が勢いよく出る。よって、潤滑油をリテーナバンド8だけでなく、ボール3にもかけることができる。
【0044】
図4に示されるように、本実施形態では、第一の潤滑剤供給溝22によって形成されるグリース用の潤滑剤供給経路も、排出口30に向かって徐々に断面積が小さくなる部分を有する。よって、排出口30におけるグリースの流速を上げることができる。ただし、グリースの場合は、潤滑油の場合ほど排出口において流速を上げる必要はない。なぜならば、グリースは粘性が高いので、間欠的に潤滑剤供給経路に供給したとしても、グリース用の潤滑剤供給経路はグリースで常に満たされている。グリース用の潤滑剤供給経路にグリースを供給すると、排出口30からグリースが徐々に出る。方向転換路16内に出されたグリースは、ボール3の循環によってボールに届く。なお、粘性の高いグリースを潤滑剤供給経路に供給するときの抵抗を小さくするために、グリース用の潤滑剤供給経路の断面積を一定にしてもよい。
【0045】
図14は、潤滑油用の潤滑剤供給経路を示す。第一の潤滑剤供給溝22に埋め込まれたアタッチメント26,29は、エンドプレート6と移動ブロック本体5の端面との間に介在される。エンドプレート6の潤滑油供給用のニップルから供給される潤滑油は、エンドプレート6の潤滑剤供給孔21を通過した後、アタッチメント26,29と第二の潤滑剤供給溝23との間に形成される潤滑剤供給経路33を通過する。最終的には潤滑油はエンドプレート6の方向転換路16に排出される。
【0046】
図15は、潤滑油用の潤滑剤供給経路の他の例を示す。この例では、移動ブロックが、負荷ボール転走溝及びボール戻り通路を有する移動ブロック本体41と、移動ブロック本体41の移動方向の端面に取り付けられ、負荷ボール転走溝とボール戻り通路を接続する方向転換路が形成されるエンドプレート42と、移動ブロック本体41とエンドプレート42との間に挟まれる潤滑プレート43と、を有する。潤滑プレート43はエンドプレート42に覆われている。
【0047】
潤滑プレート43の、エンドプレート42に接触する接触面には、潤滑剤供給経路を形成する潤滑剤供給溝44が掘られる。この潤滑剤供給溝44の長手方向の一端が、エンドプレート42の外部から潤滑剤が供給される潤滑剤供給孔45に接続され、この潤滑剤供給溝の長手方向の他端が排出口に接続される。潤滑剤供給溝44によって形成される潤滑剤供給経路は、排出口に向けて徐々に断面積が小さくなっていく部分を有してもよいし、排出口において断面積が絞られてもよい。潤滑剤供給経路46を形成する潤滑剤供給溝は、この例のように、エンドプレート42ではなく、エンドプレート42に組み込まれる潤滑プレート43に掘られてもよい。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々変更可能である。例えば移動ブロック、軌道レールの形状・構造は種々変更可能であり、転動体として、ボールの替わりにローラを用いることも可能である。また、上記実施形態では、移動ブロック本体とエンドプレートとの間にアタッチメントを介在させて、潤滑油用の潤滑剤供給経路を形成しているが、アタッチメントを介在させることなく、移動ブロック本体とエンドプレートの潤滑剤供給溝との間に、潤滑油用の潤滑剤供給経路を形成してもよい。さらに、エンドプレートや潤滑プレート以外の部材(例えばエンドプレートとは分離して移動ブロックに装着される部材や、エンドプレートの外面に装着される部材)に潤滑剤供給経路を形成してもよい。さらに上記実施形態では、運動案内装置として、リニアガイドを使用した例について説明したが、本発明は曲線運動を案内する曲線運動案内装置に適用することができるほか、ボールスプライン、ローラスプラインにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態における運動案内装置の斜視図(一部断面図を含む)
【図2】運動案内装置の断面図(軌道レールと直交する方向の断面図)
【図3】ボール循環経路の断面図
【図4】エンドプレートの平面図
【図5】図4のV部拡大図
【図6】図4のV部拡大図
【図7】エンドプレートの方向転換路を移動するボール及びリテーナバンドを示す図
【図8】アタッチメントの平面図
【図9】アタッチメントの平面図
【図10】アタッチメントが埋め込まれたエンドプレートの平面図
【図11】アタッチメントが埋め込まれたエンドプレートの斜視図
【図12】アタッチメントが埋め込まれたエンドプレートの断面図
【図13】図5のXIII-XIII線断面図
【図14】潤滑油用の潤滑剤供給経路を示す図(移動ブロックの側面図)
【図15】潤滑油用の潤滑剤供給経路の他の例を示す図(移動ブロックの側面図)
【図16】従来のグリースガンを用いた潤滑方法を示す斜視図
【図17】従来の自動ポンプを用いた強制給油方法を示す斜視図
【符号の説明】
【0050】
1…軌道レール(軌道部材)
1a…ボール転走溝(転動体転走部)
3…ボール(転動体)
4…移動ブロック
5…移動ブロック本体
5c…負荷ボール転走溝(負荷転動体転走部)
5d…ボール戻り通路(転動体戻り通路)
6…エンドプレート(蓋部材)
6a…接触面
8…リテーナバンド
8a…スペーサ
8b…連結部(リテーナバンドの幅方向の端部)
16…方向転換路
21…潤滑剤供給孔
22…第一の潤滑剤供給溝(潤滑剤供給溝)
23…第二の潤滑剤供給溝(潤滑剤供給溝)
30…排出口
33,46…転動体循環経路
35…リテーナ案内部
【技術分野】
【0001】
本発明は、テーブルなどの移動体が直線又は曲線運動するのを案内するリニアガイド、スプラインなどの運動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テーブルなどの移動体の直線運動や曲線運動を案内するための機械要素として、案内部分にボール、ローラなどの転動体を介在させた運動案内装置は、軽快な動きが得られるので、ロボット、工作機械、半導体・液晶製造装置、医療機器などのさまざまな分野で利用されている。
【0003】
この運動案内装置は、ベースに取り付けられる軌道レールと、軌道レールに相対運動可能に組み付けられると共に移動体が取り付けられる移動ブロックとを有する。軌道レールには、長手方向に沿って伸びる転動体転走部が形成される。移動ブロックには、転動体転走部に対向する負荷転動体転走部が形成されると共に、転動体を循環させる転動体循環経路が設けられる。軌道レールのボール転走部と移動ブロックの負荷ボール転走溝との間には、転動体が介在される。軌道レールに対して移動ブロックが相対的に直線運動すると、軌道レールと移動ブロックとの間に介在された転動体が転がり運動する。
【0004】
このような転がり型の運動案内装置を使用する際には、良好な潤滑、すなわち、転動体と転動面の間に油の膜を作り、金属と金属が直接接触するのを防ぐ必要がある。無給油のままで使用すると、転動体及び転走面の摩耗が増加し、早期寿命の原因となるからである。
【0005】
運動案内装置の潤滑方法には、グリースガン、手動ポンプなどによる手動給脂方法と、自動ポンプによる強制給油方法がある。例えば図16に示される手動給脂方法では、グリースガン65を使用して、ニップル66から運動案内装置に定期的にグリースを給脂する。移動ブロックの端面に取り付けられるエンドプレート64には、ニップルから転動体循環経路に繋がる潤滑剤供給経路が設けられる(例えば、特許文献1参照)。図17に示されるように、強制給油方法は、自動ポンプにより定期的に一定量の潤滑油を強制的に給油する給油方法である。主に潤滑油による潤滑に用いられる。この強制給油方法でも、手動給脂方法と同様に、エンドプレート64の潤滑剤供給経路を介して転動体循環経路に潤滑油が供給される。
【0006】
【特許文献1】特開2005−083500号公報(段落0014参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、近年、環境への影響を考慮して、潤滑剤の使用量が少量になりつつある。少量の潤滑剤を転動体循環経路に供給しても、潤滑剤供給経路の排出口から勢いよく潤滑剤がでない。こうなると、転動体循環経路の周囲が濡れるだけで、転動体まで潤滑剤が届き難くなる。
【0008】
そこで本発明は、潤滑剤供給経路の排出口から転動体循環経路内に勢いよく潤滑剤を出すことができる運動案内装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
以下、本発明について説明する。なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照番号を括弧書きにて付記するが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものでない。
【0010】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、長手方向に沿って伸びる転動体転走部(1a)が形成される軌道部材(1)と、前記転動体転走部(1a)に対向する負荷転動体転走部(5c)が形成されると共に、前記負荷転動体転走部(5c)と略平行に伸びる転動体戻り通路(5d)を含む転動体循環経路を有する移動ブロック(4)と、前記転動体循環経路に配列される複数の転動体(3)と、を備える運動案内装置において、前記移動ブロック(4)には、前記転動体循環経路に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給経路(33,46)が設けられ、前記潤滑剤供給経路(33,46)は、前記転動体循環経路に接続される排出口(30)における断面積が他の部分の断面積よりも小さいことを特徴とする運動案内装置である。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の運動案内装置において、前記潤滑剤供給経路(33,46)は、前記排出口(30)に向かって徐々に断面積が小さくなる部分を有するか、又は前記排出口(30)において断面積が絞られていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の運動案内装置において、前記移動ブロック(4)は、前記負荷転動体転走部(5c)及び前記転動体戻り通路(5d)を有する移動ブロック本体(5)と、前記移動ブロック本体(5)の移動方向の端面に取り付けられ、前記負荷転動体転走部(5c)と前記転動体戻り通路(5d)を接続する方向転換路(16)が形成される蓋部材(6)と、を有し、前記蓋部材(6)の、前記移動ブロック本体(4)に接触する接触面(6a)に、前記転動体循環経路に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給溝(22,23)が掘られ、前記潤滑剤供給溝(22,23)の長手方向の一端が、前記蓋部材(6)の外部から潤滑剤が供給される潤滑剤供給孔(21)に接続され、前記潤滑剤供給溝(22,23)の長手方向の他端に前記排出口(30)が設けられ、前記潤滑剤供給溝(22,23)によって形成される前記潤滑剤供給経路(33)は、前記他端において断面積が絞られていることを特徴とする。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の運動案内装置において、前記移動ブロック(4)は、前記負荷転動体転走部(5c)及び前記転動体戻り通路(5d)を有する移動ブロック本体(5)と、前記移動ブロック本体(5)の移動方向の端面に取り付けられ、前記負荷転動体転走部(5c)と前記転動体戻り通路(5d)を接続する方向転換路(16)が形成される蓋部材(6)と、を有し、前記蓋部材(6)の、前記移動ブロック本体(4)に接触する接触面(6a)に、前記転動体循環経路に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給溝(22,23)が掘られ、前記潤滑剤供給溝(22,23)の長手方向の一端が、前記蓋部材(6)の外部から潤滑剤が供給される潤滑剤供給孔(21)に接続され、前記潤滑剤供給溝(22,23)の長手方向の他端に前記排出口(30)が設けられ、前記潤滑剤供給溝(22,23)によって形成される前記潤滑剤供給経路(33)は、前記一端から前記他端に向けて徐々に断面積が小さくなっていく部分を有することを特徴とする。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかに記載の運動案内装置において、前記転動体(3)は帯状のリテーナバンド(8)により一連に回転自在に保持され、前記蓋部材(6)の前記方向転換路(16)には、前記リテーナバンド(8)の幅方向の端部(8b)を案内するリテーナ案内部(35)が形成され、前記潤滑剤供給経路(33)の前記排出口(30)は、前記方向転換路(16)の前記リテーナ案内部(35)に接続されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1又は2に記載の発明によれば、潤滑剤供給経路の排出口における断面積が他の部分の断面積よりも小さいので、あたかもホースの先端を絞れば水が勢いよく出るがごとく、排出口から潤滑剤を勢いよく出すことができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、潤滑剤供給経路の断面積を排出口において狭めるので、潤滑剤供給経路の排出口において潤滑剤の流速を上げることができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、潤滑剤供給経路の断面積を排出口に向けて徐々に狭めるので、潤滑剤供給経路の圧力損失を低減することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、潤滑剤供給経路の排出口が方向転換路のリテーナ案内部に設けられるので、方向転換路の転動体との接触面に排出口が設けられることがない。よって、排出口が段差になって転動体が移動するのを妨げることがない。そして、転動体から離れたリテーナ案内部に排出口を設けたとしても、排出口から潤滑剤が勢いよくでるので、転動体に潤滑剤を届かせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1及び図2は、本発明の第一の実施形態における運動案内装置を示す。図1は運動案内装置の斜視図を示し、図2は運動案内装置の断面図を示し、図3は運動案内装置のボール循環経路の断面図を示す。この実施形態の運動案内装置は、リニアガイドと呼ばれ、ベースに対してテーブル等の移動体が往復直線運動するのを案内する。案内部分には、転動体として複数のボールが介在される。
【0020】
ベースには、軌道部材としての軌道レール1が取り付けられる。軌道レール1には、軌道レール1をボルト等の結合手段によりベースに固定するための取付け孔2が空けられる。軌道レール1は、断面略四角形状で細長く直線状に伸びる。軌道レール1の左右側面には、転動体転走部として、長手方向に沿って伸びる例えば二条のボール転走溝1aが形成される。ボール転走溝1aの断面形状は単一の円弧からなるサーキュラーアーチ溝形状であるか、二つの円弧からなるゴシックアーチ溝形状である。ボール転走溝1aの条数、ボール転走溝とボールとの接触角は、運動案内装置の負荷荷重に応じてさまざまに設定される。ボール3が転がり運動するので、ボール転走溝1aは表面粗さが小さくかつ強度が強くなるように加工される。
【0021】
図2に示されるように、軌道レール1には、移動ブロック4が複数のボール3を介して相対運動可能に組み付けられる。移動ブロック4は、金属製の移動ブロック本体5と、移動ブロック4の移動方向の両端部に設けられる樹脂製の一対のエンドプレート6とから構成される。移動ブロック本体5は、その全体が鞍形状に形成され、軌道レール1の上面に対向する中央部5aと、中央部5aの幅方向の両端部から下方に垂れさがり、軌道レール1の左右側面に対向する側壁部5bと、を有する。移動ブロック本体5の左右それぞれの側壁部5bの内面には、軌道レール1のボール転走溝1aに対向する負荷転動体転走溝として、上下に二条の負荷ボール転走溝5cが形成される。この負荷ボール転走溝5c上も複数のボール3が転がり運動するので、負荷ボール転走溝5cは表面粗さが小さくかつ強度が大きくなるように加工される。
【0022】
図1に示されるように、複数のボール3はボール循環経路ごとに、リテーナバンド8によって一連に連結される。複数のボール3間には円筒形状の複数のスペーサ8aが介在される。複数のスペーサ8aはその側面が一対の帯状の連結部8bによって連結される。帯状の連結部8b及び複数のスペーサ8aによって、リテーナバンド8には、ボール3を保持するためのポケットが形成される。図2に示されるように、ボール3の進行方向からみて連結部8bはボール3よりも外側にはみ出す。移動ブロック本体5の負荷ボール転走溝5cの両側には、このボール3よりもはみ出した連結部8bを案内するための案内溝が加工される。案内溝10は、移動ブロック本体に一体に成型した樹脂成型体11に加工される。この案内溝10は、軌道レール1から移動ブロック4を外した際に移動ブロック4の負荷ボール転走溝5cからボール3が脱落するのを防止する。
【0023】
図2に示されるように、移動ブロック本体5の左右それぞれの側壁部5bには、転動体戻り通路として、負荷ボール転走溝5cと平行に伸びるボール戻り通路5dが設けられる。ボール戻り通路5dは負荷ボール転走溝5cと同じ数だけ設けられる。ボール戻り通路5dの直径はボール3の直径よりも大きいので、ボール戻り通路5dではボール3が荷重を受けることがない。ボール3は、後続のボール3に押されながら、又はリテーナバンド8を介して前方のボール3に引っ張られながら、ボール戻り通路5dを移動する。ボール戻り通路5dは、移動ブロック本体5に空けた貫通孔12内に樹脂成型体13を一体に成型することで形成される。ボール戻り通路5dにも、リテーナバンド8の連結部8bを案内するための案内溝14が加工される。
【0024】
移動ブロック本体5の移動方向の両端には、蓋部材として、エンドプレート6が装着される。図3に示されるように、エンドプレート6には、負荷ボール転走溝5cとボール戻り通路5dを接続するU字状の方向転換路16が形成される。より詳しくは、エンドプレート6には、方向転換路16の外周側が形成される。移動ブロック本体5の端面には、方向転換路16の内周側を構成するRピース部17が一体に射出成型される。エンドプレート6とRピース部17とを組み合わせて方向転換路16が形成される。
【0025】
直線状に伸びる負荷ボール転走溝5c、負荷ボール転走溝5cと平行に伸びるボール戻り通路5d、並びに負荷ボール転走溝5cとボール戻り通路5dとを接続するU字状の方向転換路16によって、サーキット状のボール循環経路が形成される。このボール循環経路にリテーナバンド8に保持された複数のボール3が収容される。移動ブロック4を軌道レール1に対して相対的に移動させると、複数のボール3が、軌道レール1のボール転走溝1aと移動ブロック4の負荷ボール転走溝5cとの間の負荷ボール転走路を転がり運動する。移動ブロック4の負荷ボール転走溝5cの一端まで転がったボール3は、エンドプレート6に設けられた掬上げ部で掬い上げられ、U字状の方向転換路16を経由した後、ボール戻り通路5dに入る。ボール戻り通路5dを通過したボールは、反対側の方向転換路16を経由した後、再び負荷ボール転走路に入る。サーキット状のボール循環経路は合計で四つ独立して設けられる。
【0026】
図4はエンドプレート6の平面図を示し、図5は図4のV部拡大図を示す。エンドプレート6には、エンドプレート6を移動ブロック4の移動方向に貫通する潤滑剤供給孔21が空けられる。潤滑剤供給孔21には、ニップルを取り付けるためのねじ孔が加工される(図1参照)。エンドプレート6の外部からこの潤滑剤供給孔21に潤滑剤が供給される。移動ブロック本体5の端面に接触するエンドプレート6の接触面6aには、潤滑剤供給孔21にその一端が接続される第一の潤滑剤供給溝22が掘られる。第一の潤滑剤供給溝22は、エンドプレート6の中心線に対して対称であり、潤滑剤供給孔21から左右方向に伸びる。そして、エンドプレート6の左右の側壁部6bに設けられる方向転換路16に向かって下方に伸び、上下二条の方向転換路16の中間部分で二股に分岐し、最終的には上下二条の方向転換路16に接続される。
【0027】
潤滑剤は第一の潤滑剤供給溝22と方向転換路16との接続部分である排出口30から方向転換路16内に吐出する。第一の潤滑剤供給溝22は、潤滑剤供給孔21から二股に分岐する部分に向けて徐々に幅が狭くなり、二股に分岐したのちは一定の幅になる。移動ブロック本体5の端面と、第一の潤滑剤供給溝22が掘られるエンドプレート6との間に、方向転換路16に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給経路が形成される。後述するように、この潤滑剤供給経路には潤滑剤としてグリースが供給される。第一の潤滑剤供給溝22の幅が狭くなるのにしたがって、潤滑剤供給経路の断面積も潤滑剤供給孔21から二股に分岐する部分に向けて徐々に小さくなる。
【0028】
第一の潤滑剤供給溝22の底面には、第一の潤滑剤供給溝22よりも断面積の小さい第二の潤滑剤供給溝23が掘り下げられる。第二の潤滑剤供給溝23も第一の潤滑剤供給溝22と同様に、エンドプレート6の中心線に対して対称であり、潤滑剤供給孔21から左右方向に伸びる。そして、エンドプレート6の左右の側壁部6bそれぞれに設けられる方向転換路16に向かって下方に伸び、上下二条の方向転換路16の中間部分で二股に分岐し、その端部が上下二条の方向転換路16に繋がる。第二の潤滑剤供給溝23の経路長さは、第一の潤滑剤供給溝22の経路長さに等しい。
【0029】
図5において、第二の潤滑剤供給溝23は斜線で示される。潤滑剤は第二の潤滑剤供給溝23と方向転換路16との接続部分である排出口30から方向転換路16内に吐出する。第二の潤滑剤供給溝23は、潤滑剤供給孔21から二股に分岐する部分に向けて徐々に幅が狭くなり、二股に分岐したのちは一定の幅になる。後述するように、潤滑剤として潤滑油を使用する場合、第一の潤滑剤供給溝22にはアタッチメントが着脱可能に埋め込まれる。そして、アタッチメントと第二の潤滑剤供給溝23との間に、方向転換路16に潤滑油を供給するための潤滑剤供給経路が形成される。第二の潤滑剤供給溝23の幅が狭くなるのにしたがって、この潤滑剤供給経路の断面積も潤滑剤供給孔21から二股に分岐する部分に向けて徐々に小さくなる。
【0030】
図6は、第二の潤滑剤供給溝23の他の例を示す。この例では、第二の潤滑剤供給溝23が分岐した後に一定の幅をもつが、第二の潤滑剤供給溝23の排出口30において、断面積が絞られている。分岐前の第二の潤滑剤供給溝23は、一定の幅であってもよいし、分岐位置に向けて徐々に幅が狭くなってもよい。
【0031】
図4に示されるように、エンドプレート6には、方向転換路16が形成されている。エンドプレート6の方向転換路16には、リテーナバンド8の連結部8b(リテーナバンド8の幅方向の端部)の外周側を案内するリテーナ案内部35が形成される。Rピース部にも、リテーナバンド8の連結部8bの内周側を案内するリテーナ案内部が形成される。エンドプレート6とRピース部17(図3参照)とを組み合わせると、方向転換路16に沿ってリテーナ案内溝が形成される。第一及び第二の潤滑剤供給溝22,23の排出口30は、エンドプレート6のリテーナ案内部35に接続される。より正確には、排出口30はリテーナ案内部35に案内されるリテーナバンド8の連結部8bよりも僅かに内周側に設けられる。
【0032】
図7は、エンドプレート6の方向転換路16を移動するボール3及びリテーナバンド8を示す。ボール3は半円状の方向転換路16を移動する際、遠心力によって方向転換路16の外周側に接触しながら移動する。また、リテーナバンド8の連結部8bも方向転換路16のリテーナ案内部35内で撓まされるので、リテーナ案内部35の外周側に沿って移動する。本実施形態によれば、排出口30がリテーナ案内部35に設けられるので、ボール3が方向転換路16の外周側に接触しながら移動する際、排出口30の段差によってボール3の移動が妨げられることがない。しかも、排出口30はリテーナバンド8の連結部8bよりも僅かに内周側に設けられる(図4参照)ので、リテーナバンド8の連結部8bがリテーナ案内部35の外周側に接触しながら移動する際、排出口30の段差に連結部8bが引っ掛かることもない。
【0033】
エンドプレート6は形状が複雑であるため、従来から樹脂を射出成型することで製造される。第一及び第二の潤滑剤供給溝22,23は、もともと射出成型されるエンドプレート6に形成するので、その製造は容易である。図4中符号25は、エンドプレート6を移動ブロック本体5に取り付けるための貫通孔である。
【0034】
図8は、第一の潤滑剤供給溝22に嵌められるアタッチメント26を示す。アタッチメント26は、エンドプレート6よりも軟質の、ゴム又は樹脂(望ましくは軟質プラスチック)製の弾性体からなる。このアタッチメント26はシート状の材料をプレスで打ち抜くか、又はウォータージェットカッタなどにより切断することで製造される。アタッチメント26の平面形状は、第一の潤滑剤供給溝22の平面形状と同じである。アタッチメント26の表面側及び裏面側はいずれも平面に形成される。
【0035】
図9は、第一の潤滑剤供給溝22にさらに嵌められるアタッチメント29を示す。図4に示されるように、この実施形態のエンドプレート6の接触面6aの方向転換路16が形成されている部分27には段差があり、他の部分28よりも一段下がっている(図11参照)。一段下がった部分の段差を埋めるために、アタッチメント29が設けられる。アタッチメント29の平面形状は、エンドプレート6の一段上がった部分28の第一の潤滑剤供給溝22の平面形状と同じである。アタッチメント29の表面側及び裏面側はいずれも平面に形成される。
【0036】
なお、エンドプレート6の端面に段差がない場合には、アタッチメント29は不要である。また、この実施形態においては、二種類の別体のアタッチメント26,29を重ねているが、二種類のアタッチメント26,29を一体にしてもよい。
【0037】
図10及び図11は、エンドプレート6の第一の潤滑剤供給溝22にアタッチメント26,29を埋め込んだ状態を示す。図10には、エンドプレート6の第一の潤滑剤供給溝22の右側のみにアタッチメントを埋め込んだ状態が示される。実際には第一の潤滑剤供給溝22の右側及び左側の両方にアタッチメント26,29が埋め込まれる。アタッチメントを第一の潤滑剤供給溝22に埋めると、第一の潤滑剤供給溝22の断面の全体が塞がれる。その一方、アタッチメントを第一の潤滑剤供給溝22に埋めても、第二の潤滑剤供給溝23は塞がれることはない。第一の潤滑剤供給溝22に埋め込まれたアタッチメント26,29は、第一の潤滑剤供給溝22の底面と移動ブロック本体5の端面との間に挟まれる。アタッチメント26,29には締めしろがあり、アタッチメント26,29の厚みは、第一の潤滑剤供給溝22の底面と移動ブロック本体5の端面との間のすき間よりも小さい。弾性体からなるアタッチメント26,29が、第一の潤滑剤供給溝22の底面31(図12参照)に密着し、第二の潤滑剤供給溝23が密封される。
【0038】
図11及び図12に示されるように、第二の潤滑剤供給溝23の両側に、第二の潤滑剤供給溝23に沿って伸びる二条のリブ部32を設けてもよい。リブ部32は、第一の潤滑剤供給溝22の底面31から突出する。このようにリブ部32を設けることにより、アタッチメント26に締めしろを設けなくても、アタッチメント26を変形させることができる。アタッチメント26の変形量も大きくとれるので、第二の潤滑剤供給溝23の密封性をさらに向上することができる。また、リブ部32を設けないと、アタッチメント26が変形して、第二の潤滑剤供給溝23を埋めるおそれがある。リブ部32を設けることで、アタッチメント26が第二の潤滑剤供給溝23を狭めることを防止できる。よって、一定の断面積の第二の潤滑剤供給溝23が確実に得られる。
【0039】
潤滑剤には、グリース(リチウム系グリース、ウレア系グリースなど)と潤滑油(摺動面油又はタービン油、ISOVG32〜68など)の二種類がある。これらは相反する特性を持つので、潤滑剤としてグリースを使用するときは潤滑剤供給経路の断面積を広くする一方、潤滑剤として潤滑油を使用するときには潤滑剤供給経路の断面積を狭くする必要がある。グリースはゲル状で粘性が高い。それゆえ、低い圧力でグリースを供給するためには、潤滑剤供給経路の抵抗を小さくする必要がある。抵抗を小さくするためには、潤滑剤供給経路の断面積を大きく、かつ潤滑剤供給経路の長さを短くすればよい。他方、潤滑油は液体状であり、粘性が低くて、さらさらと潤滑剤供給経路を流れる。少量の潤滑油をグリース用の体積の大きな潤滑剤供給経路に流すと、潤滑剤供給経路が潤滑油で充満されずに圧力がかからない現象が生ずるので、全ての転動体循環経路に潤滑油を供給するのが困難になる。それゆえ、全ての転動体循環経路に潤滑油を供給するためには、潤滑剤供給経路の体積を小さくする必要がある。そのためには、潤滑剤供給経路の断面積を小さく、かつ潤滑剤供給経路の長さを短くすればよい。
【0040】
つまり、潤滑剤としてグリースを供給するときには、潤滑剤供給経路の断面積を大きく、かつ潤滑剤供給経路を短くすればよく、その一方、潤滑剤として潤滑油を供給するときには、潤滑剤供給経路の断面積を小さく、かつ潤滑剤供給経路を短くすればよい。
【0041】
グリース用の広い断面積の潤滑剤供給経路を設けるために、エンドプレート6には第一の潤滑剤供給溝22が掘られる。第一の潤滑剤供給溝22をグリース用の潤滑剤供給経路として使用するときには、第一の潤滑剤供給溝22にはアタッチメント26,29が埋め込まれない。第一の潤滑剤供給溝22には、第二の潤滑剤供給溝23が掘られているので、第二の潤滑剤供給溝23もグリース用の潤滑剤供給経路として利用される。
【0042】
潤滑剤として潤滑油を使用するときには、図13に示されるように、第一の潤滑剤供給溝22にアタッチメント26,29が埋め込まれる。アタッチメント26,29で第一の潤滑剤供給溝22を塞ぐと、潤滑剤供給経路として残るのは第二の潤滑剤供給溝23だけになる。潤滑油用の潤滑剤供給経路は、第二の潤滑剤供給溝23とアタッチメント26,29との間に形成される。潤滑油はポンプによって圧力をもって潤滑剤供給経路に供給されるので漏れ易い。アタッチメント26,29が潤滑剤供給経路の密封性を向上させるので、潤滑剤供給経路から潤滑油が漏れ出るのを防止することができる。
【0043】
図5及び図6に示されるように、第二に潤滑剤供給溝23によって形成される潤滑油用の潤滑剤供給経路は、排出口30に向かって徐々に断面積が小さくなる部分を有するか、又は排出口30において断面積が絞られている。潤滑剤供給経路に潤滑油を供給すると、あたかもホースの先端を絞れば水が勢いよく出るがごとく、排出口30における潤滑油の流速が上がって排出口30から潤滑油が勢いよく出る。よって、潤滑油をリテーナバンド8だけでなく、ボール3にもかけることができる。
【0044】
図4に示されるように、本実施形態では、第一の潤滑剤供給溝22によって形成されるグリース用の潤滑剤供給経路も、排出口30に向かって徐々に断面積が小さくなる部分を有する。よって、排出口30におけるグリースの流速を上げることができる。ただし、グリースの場合は、潤滑油の場合ほど排出口において流速を上げる必要はない。なぜならば、グリースは粘性が高いので、間欠的に潤滑剤供給経路に供給したとしても、グリース用の潤滑剤供給経路はグリースで常に満たされている。グリース用の潤滑剤供給経路にグリースを供給すると、排出口30からグリースが徐々に出る。方向転換路16内に出されたグリースは、ボール3の循環によってボールに届く。なお、粘性の高いグリースを潤滑剤供給経路に供給するときの抵抗を小さくするために、グリース用の潤滑剤供給経路の断面積を一定にしてもよい。
【0045】
図14は、潤滑油用の潤滑剤供給経路を示す。第一の潤滑剤供給溝22に埋め込まれたアタッチメント26,29は、エンドプレート6と移動ブロック本体5の端面との間に介在される。エンドプレート6の潤滑油供給用のニップルから供給される潤滑油は、エンドプレート6の潤滑剤供給孔21を通過した後、アタッチメント26,29と第二の潤滑剤供給溝23との間に形成される潤滑剤供給経路33を通過する。最終的には潤滑油はエンドプレート6の方向転換路16に排出される。
【0046】
図15は、潤滑油用の潤滑剤供給経路の他の例を示す。この例では、移動ブロックが、負荷ボール転走溝及びボール戻り通路を有する移動ブロック本体41と、移動ブロック本体41の移動方向の端面に取り付けられ、負荷ボール転走溝とボール戻り通路を接続する方向転換路が形成されるエンドプレート42と、移動ブロック本体41とエンドプレート42との間に挟まれる潤滑プレート43と、を有する。潤滑プレート43はエンドプレート42に覆われている。
【0047】
潤滑プレート43の、エンドプレート42に接触する接触面には、潤滑剤供給経路を形成する潤滑剤供給溝44が掘られる。この潤滑剤供給溝44の長手方向の一端が、エンドプレート42の外部から潤滑剤が供給される潤滑剤供給孔45に接続され、この潤滑剤供給溝の長手方向の他端が排出口に接続される。潤滑剤供給溝44によって形成される潤滑剤供給経路は、排出口に向けて徐々に断面積が小さくなっていく部分を有してもよいし、排出口において断面積が絞られてもよい。潤滑剤供給経路46を形成する潤滑剤供給溝は、この例のように、エンドプレート42ではなく、エンドプレート42に組み込まれる潤滑プレート43に掘られてもよい。
【0048】
なお、本発明は上記実施形態に具現化されるのに限られることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々変更可能である。例えば移動ブロック、軌道レールの形状・構造は種々変更可能であり、転動体として、ボールの替わりにローラを用いることも可能である。また、上記実施形態では、移動ブロック本体とエンドプレートとの間にアタッチメントを介在させて、潤滑油用の潤滑剤供給経路を形成しているが、アタッチメントを介在させることなく、移動ブロック本体とエンドプレートの潤滑剤供給溝との間に、潤滑油用の潤滑剤供給経路を形成してもよい。さらに、エンドプレートや潤滑プレート以外の部材(例えばエンドプレートとは分離して移動ブロックに装着される部材や、エンドプレートの外面に装着される部材)に潤滑剤供給経路を形成してもよい。さらに上記実施形態では、運動案内装置として、リニアガイドを使用した例について説明したが、本発明は曲線運動を案内する曲線運動案内装置に適用することができるほか、ボールスプライン、ローラスプラインにも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態における運動案内装置の斜視図(一部断面図を含む)
【図2】運動案内装置の断面図(軌道レールと直交する方向の断面図)
【図3】ボール循環経路の断面図
【図4】エンドプレートの平面図
【図5】図4のV部拡大図
【図6】図4のV部拡大図
【図7】エンドプレートの方向転換路を移動するボール及びリテーナバンドを示す図
【図8】アタッチメントの平面図
【図9】アタッチメントの平面図
【図10】アタッチメントが埋め込まれたエンドプレートの平面図
【図11】アタッチメントが埋め込まれたエンドプレートの斜視図
【図12】アタッチメントが埋め込まれたエンドプレートの断面図
【図13】図5のXIII-XIII線断面図
【図14】潤滑油用の潤滑剤供給経路を示す図(移動ブロックの側面図)
【図15】潤滑油用の潤滑剤供給経路の他の例を示す図(移動ブロックの側面図)
【図16】従来のグリースガンを用いた潤滑方法を示す斜視図
【図17】従来の自動ポンプを用いた強制給油方法を示す斜視図
【符号の説明】
【0050】
1…軌道レール(軌道部材)
1a…ボール転走溝(転動体転走部)
3…ボール(転動体)
4…移動ブロック
5…移動ブロック本体
5c…負荷ボール転走溝(負荷転動体転走部)
5d…ボール戻り通路(転動体戻り通路)
6…エンドプレート(蓋部材)
6a…接触面
8…リテーナバンド
8a…スペーサ
8b…連結部(リテーナバンドの幅方向の端部)
16…方向転換路
21…潤滑剤供給孔
22…第一の潤滑剤供給溝(潤滑剤供給溝)
23…第二の潤滑剤供給溝(潤滑剤供給溝)
30…排出口
33,46…転動体循環経路
35…リテーナ案内部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿って伸びる転動体転走部が形成される軌道部材と、前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部が形成されると共に、前記負荷転動体転走部と略平行に伸びる転動体戻り通路を含む転動体循環経路を有する移動ブロックと、前記転動体循環経路に配列される複数の転動体と、を備える運動案内装置において、
前記移動ブロックには、前記転動体循環経路に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給経路が設けられ、
前記潤滑剤供給経路は、前記転動体循環経路に接続される排出口における断面積が、他の部分の断面積よりも小さいことを特徴とする運動案内装置。
【請求項2】
前記潤滑剤供給経路は、前記排出口に向かって徐々に断面積が小さくなる部分を有するか、又は前記排出口において断面積が絞られていることを特徴とする請求項1に記載の運動案内装置。
【請求項3】
前記移動ブロックは、前記負荷転動体転走部及び前記転動体戻り通路を有する移動ブロック本体と、前記移動ブロック本体の移動方向の端面に取り付けられ、前記負荷転動体転走部と前記転動体戻り通路を接続する方向転換路が形成される蓋部材と、を有し、
前記蓋部材の、前記移動ブロック本体に接触する接触面に、前記転動体循環経路に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給溝が掘られ、
前記潤滑剤供給溝の長手方向の一端が、前記蓋部材の外部から潤滑剤が供給される潤滑剤供給孔に接続され、前記潤滑剤供給溝の長手方向の他端に前記排出口が設けられ、
前記潤滑剤供給溝によって形成される前記潤滑剤供給経路は、前記他端において断面積が絞られていることを特徴とする請求項1又は2に記載の運動案内装置。
【請求項4】
前記移動ブロックは、前記負荷転動体転走部及び前記転動体戻り通路を有する移動ブロック本体と、前記移動ブロック本体の移動方向の端面に取り付けられ、前記負荷転動体転走部と前記転動体戻り通路を接続する方向転換路が形成される蓋部材と、を有し、
前記蓋部材の、前記移動ブロック本体に接触する接触面に、前記転動体循環経路に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給溝が掘られ、
前記潤滑剤供給溝の長手方向の一端が、前記蓋部材の外部から潤滑剤が供給される潤滑剤供給孔に接続され、前記潤滑剤供給溝の長手方向の他端に前記排出口が設けられ、
前記潤滑剤供給溝によって形成される前記潤滑剤供給経路は、前記一端から前記他端に向けて徐々に断面積が小さくなっていく部分を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の運動案内装置。
【請求項5】
前記転動体は帯状のリテーナバンドにより一連に回転自在に保持され、
前記蓋部材の前記方向転換路には、前記リテーナバンドの幅方向の端部を案内するリテーナ案内部が形成され、
前記潤滑剤供給経路の前記排出口は、前記方向転換路の前記リテーナ案内部に接続されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の運動案内装置。
【請求項1】
長手方向に沿って伸びる転動体転走部が形成される軌道部材と、前記転動体転走部に対向する負荷転動体転走部が形成されると共に、前記負荷転動体転走部と略平行に伸びる転動体戻り通路を含む転動体循環経路を有する移動ブロックと、前記転動体循環経路に配列される複数の転動体と、を備える運動案内装置において、
前記移動ブロックには、前記転動体循環経路に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給経路が設けられ、
前記潤滑剤供給経路は、前記転動体循環経路に接続される排出口における断面積が、他の部分の断面積よりも小さいことを特徴とする運動案内装置。
【請求項2】
前記潤滑剤供給経路は、前記排出口に向かって徐々に断面積が小さくなる部分を有するか、又は前記排出口において断面積が絞られていることを特徴とする請求項1に記載の運動案内装置。
【請求項3】
前記移動ブロックは、前記負荷転動体転走部及び前記転動体戻り通路を有する移動ブロック本体と、前記移動ブロック本体の移動方向の端面に取り付けられ、前記負荷転動体転走部と前記転動体戻り通路を接続する方向転換路が形成される蓋部材と、を有し、
前記蓋部材の、前記移動ブロック本体に接触する接触面に、前記転動体循環経路に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給溝が掘られ、
前記潤滑剤供給溝の長手方向の一端が、前記蓋部材の外部から潤滑剤が供給される潤滑剤供給孔に接続され、前記潤滑剤供給溝の長手方向の他端に前記排出口が設けられ、
前記潤滑剤供給溝によって形成される前記潤滑剤供給経路は、前記他端において断面積が絞られていることを特徴とする請求項1又は2に記載の運動案内装置。
【請求項4】
前記移動ブロックは、前記負荷転動体転走部及び前記転動体戻り通路を有する移動ブロック本体と、前記移動ブロック本体の移動方向の端面に取り付けられ、前記負荷転動体転走部と前記転動体戻り通路を接続する方向転換路が形成される蓋部材と、を有し、
前記蓋部材の、前記移動ブロック本体に接触する接触面に、前記転動体循環経路に潤滑剤を供給するための潤滑剤供給溝が掘られ、
前記潤滑剤供給溝の長手方向の一端が、前記蓋部材の外部から潤滑剤が供給される潤滑剤供給孔に接続され、前記潤滑剤供給溝の長手方向の他端に前記排出口が設けられ、
前記潤滑剤供給溝によって形成される前記潤滑剤供給経路は、前記一端から前記他端に向けて徐々に断面積が小さくなっていく部分を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の運動案内装置。
【請求項5】
前記転動体は帯状のリテーナバンドにより一連に回転自在に保持され、
前記蓋部材の前記方向転換路には、前記リテーナバンドの幅方向の端部を案内するリテーナ案内部が形成され、
前記潤滑剤供給経路の前記排出口は、前記方向転換路の前記リテーナ案内部に接続されることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の運動案内装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2008−89045(P2008−89045A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269538(P2006−269538)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】
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