説明

運動案内装置

【課題】簡単な構成で、運動案内装置における移動体の移動抵抗をより小さくしまたは、より安定させることができる技術を提供する。
【解決手段】移動ブロック1と、移動ブロック1を多数のボール5介して往復移動可能に支持する軌道レール3と、を備えた運動案内装置であって、互いに離間した2部材を有するとともに該2部材の間に非接触力である吸引力または反発力を発生させる非接触力発生手段をさらに備える。接触力発生手段における2部材のうち一方は、移動ブロック1に設けられた永久磁石6であり、非接触力発生手段の2部材のうち他方は、軌道レール3に設けられた磁性体部7である。永久磁石6と磁性体部7とは、軌道レール3に対する移動ブロック1の進行方向に対して平行な平面で互いに対向して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内部材に対して、多数の転動体を介して移動体を支持し、該移動体を案内部材に沿って往復移動自在とした運動案内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械、組立て機械や測定器においてテーブルやプローブ等を精密かつ円滑に案内する手段として、近年は軌道レールに多数の転動体(例えばボールやローラ)を介してスライダを取り付けた運動案内装置が広く使用されている。
この運動案内装置は微弱力を測定する力覚センサなどにも適用可能であるが、このような用途に運動案内装置を適用する場合には、スライダがより微弱な力でより高い応答性を示すことが望ましい。従って、このような運動案内装置においては転動体の転がり抵抗は可及的に低く抑えられる必要がある。
これに関連して、軌道レールが強磁性体の軸受面を有し、スライダは軌道レールとの間で磁気回路を形成する永久磁石を含んだ強磁性のコア部材を有するリニアガイド装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、上記のように永久磁石を含むスライダと、強磁性体の軸受面を有する軌道レールによって運動案内装置を構成した場合には、磁気回路が複雑となり、スライダと軌道レールとを適切な力で吸引させ、転がり抵抗を適切な値に維持することが困難な場合があった。また、スライダの移動開始後に、スライダの移動とともに転がり抵抗が徐々に大きくなったり、転がり抵抗が大きくうねったりする現象が生じ、スライダの応答性を低下させてしまう場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−21138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような不都合を解決するためになされたものであり、その目的は、簡単な構成で、運動案内装置における移動体の移動抵抗をより小さくしまたは、より安定させることができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明では、運動案内装置において、互いに離間した2部材の間に非接触力である吸引力または反発力を発生させる非接触力発生手段を備えるようにした。そして、非接触力発生手段における2部材のうち一方は、運動案内装置の移動体に設けられ、他方は、前記案内部材に設けられるようにし、この非接触力発生手段の2部材は、案内部材に対する移動体の進行方向に対して平行な平面で互いに対向して配置されるようにした。
【0007】
より詳しくは、移動体と、
前記移動体を多数の転動体を介して往復移動可能に支持する案内部材と、
を備えた運動案内装置であって、
互いに離間した2部材を有するとともに該2部材の間に非接触力である吸引力または反発力を発生させる非接触力発生手段をさらに備え、
前記非接触力発生手段における2部材のうち一方は、前記移動体に設けられ、
前記非接触力発生手段の2部材のうち他方は、前記案内部材に設けられ、 前記非接触力発生手段の2部材は、前記案内部材に対する前記移動体の進行方向に対して平行な平面で互いに対向して配置されたことを特徴とする。
【0008】
これによれば、移動体と案内部材が、非接触力発生手段の2部材の間の非接触力によって互いに吸引または反発し、移動体と転動体の間及び、転動体と案内部材との間の密着性を向上させ、予圧を与えることが可能となる。
【0009】
ここで、転動体としてボールを用いる従来の運動案内装置においては、予圧を与える方法として、移動体と案内部材との間に、両者の転走溝の距離よりも径の大きな転動体を介在させるオーバーサイズボール法が用いられる場合が多かった。このオーバーサイズボール法においては、移動体及び案内部材における転走溝の表面粗さやうねり、加工誤差(例えば平行度)などによって、ボールの転がり抵抗が大きく変動する場合があった。この傾向は、移動体を案内部材に対して低速で移動させる場合や、ボール径が小さな小型の運動案内装置の場合に特に顕著に現れた。
【0010】
これに対し、本発明においては、予圧は、磁石部材と被吸引部材による非接触力発生手段の2部材の間に働く吸引力または反発力によって与えられているのみであるので、移動体と案内部材における転走溝の距離が、ボールの通過時に、転走溝の表面粗さやうねり、加工誤差(例えば平行度)などに応じて適切に変化する。従って、常に、案内部材と転動体あるいは、移動体と転動体との間に隙間が無い状態で運動案内装置を作動させることができる。従って、ボールの転がり抵抗の変化を抑制することができ、移動体の移動抵抗を安定化することができる。
【0011】
さらに、本発明においては、非接触力発生手段の2部材は、案内部材に対する移動体の進行方向に対して平行な平面で互いに対向して配置されるようにした。これにより、非接触力発生手段の2部品の間の非接触力をより直接的に作用させることが可能となり、より効率よく吸引力または反発力を発生させることができる。また、非接触力発生手段の2部材の面積や形状に対する自由度を高めることができ、非接触力の大きさや、非接触力の及ぶ移動範囲などをより容易に設定することが可能となる。
【0012】
なお、本発明において上記した課題を解決するための手段は、可能なかぎり組み合わせて用いることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡単な構成で、運動案内装置における移動体の移動抵抗をより小さくしまたは、より安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1に係る運動案内装置の外観斜視図である。
【図2】本発明の実施例1に係る運動案内装置のボール転走溝とボールとの関係を従来のオーバーサイズボール法と比較して示した図である。
【図3】従来の運動案内装置と本発明の実施例1に係る運動案内装置とにおける、ストロークと転がり抵抗値との関係を比較するための図である。
【図4】本発明の実施例2に係る運動案内装置のボール転走溝とボールとの関係を従来のオーバーサイズボール法と比較して示した図である。
【図5】本発明の実施例3に係る運動案内装置の三面図である。
【図6】本発明の実施例4における磁性体部の残留磁化の影響について説明するための図である。
【図7】本発明の実施例4における磁性体部を磁性ステンレスで形成した場合と、パーマロイCで形成した場合における残留磁化の差について説明するためのB−H曲線である。
【図8】移動ブロックにおける永久磁石の配置と、移動抵抗の変化の例について示した図である。
【図9】本発明の実施例5に係る永久磁石の配置と、移動抵抗の変化について示した図である。
【図10】本発明の実施例6に係る永久磁石の配置と、移動抵抗の変化について示した図である。
【図11】本発明の実施例7に係る移動ブロック、永久磁石、磁性体部、コア及びプラスチック板の位置関係を説明するため図である。
【図12】本発明の実施例8に係る永久磁石の配置について示した図である。
【図13】本発明の実施例8に係る永久磁石の配置と、実施例5に係る永久磁石の配置とにおける、渦電流の発生の様子の相違について示した図である。
【図14】本発明の実施例8に係る永久磁石の配置の他の例について示した図である。
【図15】本発明の実施例9に係る運動案内装置の概略構成について示した図である。
【図16】本発明の実施例9に係るエレクトレット素子の配置の他の例について示した図である。
【図17】本発明の実施例10に係る、エレクトレット素子の多層構造を採用した運動案内装置の概略構成について示した図である。
【図18】本発明の実施例10に係る、エレクトレット素子の多層構造の他の例について示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る運動案内装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1に係る運動案内装置は直線運動案内装置であって、図1に示すように、案内部材としての軌道レール3と、この軌道レール3に沿って移動する移動体としての移動ブロック1とを備えている。そして、軌道レール3と移動ブロック1との間には、多数のボール(転動体)5が転動自在に設けられている。本実施例においては、球形状のボールホルダを有するケージ4でボール5が保持されている。
【0017】
図1に示すように、軌道レール3は、断面略矩形に形成されている。軌道レール3の左右両側面3aには、長手方向に沿って上下一対のボール転走溝3b、3cが形成されている。移動ブロック1の移動方向に垂直な両端に設けられた袖部1aには、軌道レール3のボール転走溝3b、3cに対応する位置に長手方向に沿って、上下一対のボール転走溝1b、1cが形成されている。
【0018】
移動ブロック1の前後両端面にはストッパ2が取り付けられている。移動ブロック1が軌道レール3に沿って移動した際には、ボール5は、軌道レール3のボール転走溝3b、3cと移動ブロック1のボール転走溝1b、1cとの間で荷重を負荷しながら転動する。そして、ケージ4は、ボール5の回転に伴って移動ブロック1の半分の速度で移動する。ストッパ2は、移動ブロック1の移動によってケージ4が移動ブロック1の外側に出てしまうことを予防するものである。
【0019】
ここで、従来の運動案内装置においては、移動ブロック1と軌道レール3との間のガタツキをなくし移動ブロック1の位置精度を高め剛性を高めるために、軌道レール3のボール転走溝3b、3cと移動ブロック1のボール転走溝1b、1cによって形成されるボー
ル5の通過空間(転走路)の径よりも径の大きなボール5を用いて予圧を与えること(オ
ーバーサイズボール法)が行われる場合があった。
【0020】
しかしながら、このオーバーサイズボール法では、転がり抵抗が大きくなり、運動案内装置を微弱な力を測定するような目的に使用することが困難になる場合があった。また、オーバーサイズボール法では、ボール転走溝の表面粗さや平行度などの加工精度の影響により転がり抵抗が増減したり変動したりする場合があった。
【0021】
これに対し、本実施例においては、軌道レール3のボール転走溝3b、3cと移動ブロック1のボール転走溝1b、1cとによって形成される転走路とボール5との間に隙間が生じ得るようにし、さらに、永久磁石を移動ブロック1または軌道レール3の何れかに取り付け、永久磁石の磁力によって予圧を付与することとした。
【0022】
図2には、本実施例における運動案内装置の断面を模式的に表した概略図と、従来のオーバーサイズボール法による例を模式的に表した図を示す。図2(A)に示すように、本実施例の運動案内装置においては、軌道レール3の底面には磁性体(例えば、磁性ステンレス)からなる板状の磁性体部7が設けられている。また、移動ブロック1において磁性体部7と対向する部分には、永久磁石6が、軌道レール3の両側において設置されている。本実施例においては、この永久磁石6と磁性体部7とは、軌道レール3に対する移動ブロック1の進行方向に平行な平面において互いに対向するように設けられている。この永久磁石6と磁性体部7とが互いに吸引し合うことで軌道レール3側に移動ブロック1が寄せられるようになっている。なお、本実施例において永久磁石6は磁石部材に相当し、磁性体部7は被吸引部材に相当する。
【0023】
そして、本実施例においては、永久磁石6と磁性体部7とが互いに吸引し合うことで軌道レール3側に移動ブロック1が寄せられた状態では、図中上側のボール5とボール転走溝3cとの間に隙間Cが生じ、図中下側のボール5とボール転走溝1b、3bとの間には隙間が生じないようになっている。このことで、移動ブロック1と軌道レール3とが近づく方向に関しては、図中下側のボール5とボール転走溝1b、3bによって移動ブロック1と軌道レール3との相対位置が規制されている。
【0024】
また、本実施例においては、例えば図2(A)に示す移動ブロック1が、永久磁石6と磁性体部7との間の吸引力に反して軌道レール3と離反する方向に移動した場合には、ボール転走溝1bとボール5との間に隙間が生じ、ボール5とボール転走溝1c、3cとの間には隙間が生じないようになっている。そして、移動ブロック1と軌道レール3とが離れる方向に関しては、ボール5とボール転走溝1c、3cによって移動ブロック1と軌道レール3との相対位置が規制される。すなわち、その上記の2つの状態の間で、移動ブロック1と軌道レール3とは進行方向と交差する方向に相対移動可能となっている。
【0025】
それに対し、図2(B)に示す、従来のオーバーボールサイズ法による運動案内装置では、常にボール5と、いずれのボール転走溝との間にも隙間は生じない。
【0026】
上記のように、本実施例においては、常にボール5と、ボール転走溝1b、1c、3b、3cのいずれかとの間に隙間が生じ得る構成とした上で、永久磁石6と磁性体部7との間の吸引力により予圧を付与する構成とした。これにより、移動ブロック1と軌道レール3側との間に常に予圧を付与することができ、移動ブロック1の移動抵抗のバラツキを抑制することができる。なお、本実施例におけるボール転走溝1b、1c、3b、3cはサーキュラーアーク溝となっている。
【0027】
また、ボール転走溝1b、1c、3b、3cの表面に凹凸があったり、平行度など加工
誤差が大きくなったりした場合にも、上記隙間によって表面の凹凸や加工誤差を吸収することが可能になる。その結果、ボール転走溝1b、1c、3b、3cの表面粗さや平行度など加工誤差が大きくなった場合にも、移動ブロック1と軌道レール3との間の予圧が増減したり変動したりすることを抑制でき、移動抵抗をより小さくし、あるいはより安定させることが可能となる。
【0028】
さらに、本実施例においては、永久磁石6と磁性体部7とを、軌道レール3に対する移動ブロック1の進行方向に平行な平面において互いに対向するように設けたので、永久磁石6からの磁界が形成する磁気回路をより単純化することができ、永久磁石6と磁性体部7との間の吸引力をより管理し易くすることができる。より具体的には、例えば、永久磁石6と磁性体部7との間の空間の磁界強度の分布は略均一となるので、より精度よく磁界の強度の測定が可能となる。また、永久磁石6及び磁性体部7の面積を変更することで、より簡単に吸引力による予圧の調整をすることができる。
【0029】
図3には、従来のオーバーサイズボール法による運動案内装置におけるストローク(移動ブロック1の移動距離)とボール5の転がり抵抗との関係と、本実施例における運動案内装置におけるストロークとボール5の転がり抵抗との関係とを示す。図3(A)は従来のオーバーサイズ法による運動案内装置についてのグラフ、図3(B)は本実施例における運動案内装置についてのグラフである。
【0030】
図3(A)に示すように、オーバーサイズボール法を用いた場合には、転がり抵抗値の変動が大きい。これは、ボール5がボール転走溝1b、1c、3b、3cの表面凹凸を乗り越える際にその転がり抵抗が局所的に増加することに起因する。また、オーバーサイズボール法を用いた場合には、転がり抵抗値の最大値と最小値の間の変動が大きい。これは、ボール転走溝1b、1c、3b、3cの平行度などの加工誤差により、ボール転走溝とボールとの間の隙間(マイナス隙間を含む)がストロークに応じて変動することに起因する。なお、図3(A)の例では、転がり抵抗値はストロークが増加するにつれて徐々に大きくなっているが、これは、ボール転走溝1b、1c、3b、3cの加工誤差の状況によって変化する。すなわち、ストロークの増加につれて転がり抵抗値が減少することも考えられるし、うねりを生じる場合も考えられる。
【0031】
一方、図3(B)に示す、本実施例における運動案内装置においては、転がり抵抗値の変動と、転がり抵抗値の最大値と最小値との間の変動との両方が小さくなっている。これは、ボール転走溝1b、1c、3b、3cとボール5との間に隙間が生じ得る構成となっており、ボール転走溝1b、1c、3b、3cの表面凹凸や加工誤差があった場合にも、隙間の範囲内で、ボール5と移動ブロック1とが永久磁石6と磁性体部7との間の吸引力に抗して可逆的に移動することで、表面の凹凸や加工誤差を吸収するからである。
【0032】
なお、本実施例において、ボール転走溝1bと3bで形成される転走路は第1転走路に相当し、ボール転走溝1cと3cで形成される転走路は第2転走路に相当する。また、本実施例において、永久磁石6と磁性体部7とは、非接触力発生手段を構成する。そして、永久磁石6と磁性体部7とは非接触力発生手段において互いに離間した2部材に相当する。さらに、永久磁石6と磁性体部7との間に発生する吸引力は本実施例において非接触力である。
【実施例2】
【0033】
上記の実施例1においては、軌道レール3が4条のボール5の列によって移動ブロック1を支持しており、ボール転走溝1b、1c、3b、3cはサーキュラーアーク溝である例について説明した。しかし本発明の運動案内装置は上記の構成に限られない。例えば、軌道レール13が移動ブロック11を2条のボール15の列によって支持するようにして
もよい。この場合は、ボール転走溝はゴシックアーチ溝であってもよいし、V溝であってもよい。
【0034】
図4には、この場合の運動案内装置の断面を模式的に表した概略図と、従来のオーバーサイズボール法による例を模式的に表した図とを示す。図4(A)に示すように、本実施例の運動案内装置においては、軌道レール13は2条のボール15の列を介して移動ブロック11を支持している。2条のボール15の列は、軌道レール13及び移動ブロック11に各々2箇所ずつ設けられたゴシックアーチ溝であるボール転走溝11b、13bによって運動方向が規制されている。なお、ボール転走溝11bは、転動面110a、110bから構成され、ボール転走溝13bは、転動面130a、130bから構成されている。
【0035】
また、軌道レール13の底面には磁性体(例えば、磁性ステンレス)からなる板状の磁性体部17が設けられている。また、移動ブロック11において磁性体部17と対向する部分には、永久磁石16が、軌道レール13の両側において設けられている。本実施例においても、この永久磁石16と磁性体部17とは、軌道レール13に対する移動ブロック11の進行方向に平行な平面において互いに対向するように設けられている。本実施例において、永久磁石16と磁性体部17とが互いに吸引することで軌道レール13側に移動ブロック11が寄せられた状態では、ボール15とボール転走溝13bの転動面130aとの間に隙間が生じ、同様にボール15とボール転走溝11bの転動面110bとの間に隙間が生じるようになっている。
【0036】
また、本実施例において、図4(A)に示す移動ブロック11が、永久磁石16と磁性体部17との間の吸引力に反して軌道レール13と離反する方向に移動した場合には、ボール15とボール転走溝13bの転動面130bとの間に隙間が生じ、同様にボール15とボール転走溝11bの転動面110aとの間に隙間が生じるようになっている。
【0037】
それに対し、図4(B)に示す、従来のオーバーボールサイズ法による運動案内装置では、常にボール15と、ボール転走溝11b、13bにおける転動面110a、110b、130a、130bのいずれとの間にも隙間は生じない。
【0038】
上記のように、本実施例においては、常にボール15と、ボール転走溝11b、13bにおける転動面110a、110b、130a、130bいずれかとの間に隙間が生じ得る構成とした上で、永久磁石16と磁性体部17との間の吸引力により予圧を付与している。従って、転動面110a、110b、130a、130bの表面に凹凸があったり、平行度など加工誤差が大きくなったりした場合にも、上記隙間によって表面の凹凸や加工誤差を吸収することが可能になる。
【0039】
その結果、移動ブロック11の移動抵抗の、ボール転走溝11b、13bの表面凹凸に起因する変動や、ボール転走溝11b、13bの加工誤差に起因する増減を抑制することが可能となる。なお、本実施例において、転動面110aと転動面130bで形成される転走路は第1転走路に相当し、転動面110bと130aで形成される転走路は第2転走路に相当する。また、本実施例において、永久磁石16と磁性体部17とは、非接触力発生手段を構成する。そして、永久磁石16と磁性体部17とは非接触力発生手段において互いに離間した2部材に相当する。さらに、永久磁石16と磁性体部17との間に発生する吸引力は本実施例において非接触力である。
【実施例3】
【0040】
上記の実施例においては、ボール転走溝とボールとの間に隙間を設け得る構造とすることにより、ボール転走溝の表面凹凸や加工誤差があった場合にも、移動ブロックの移動抵
抗が増加したり変動したりすることを抑制する例について説明した。しかしながら本発明においては、同等の効果を得るための構成を上記の構成に限定するものではない。
【0041】
図5には、本発明に係る運動案内装置の別の例についての三面図を示す。図5(A)は運動案内装置の正面図、図5(B)は側方から見たA−A断面図、図5(C)は下方から見たB−B断面図である。この例においては、軌道レール23が、ボール25を介して移動ブロック21を支持している。移動ブロック21においては、水平な底面を有し断面矩形のボール転走溝21bが設けられており、軌道レール23にも水平な底面を有し断面矩形のボール転走溝23bが設けられている。また、ボール転走溝21b及び23bの底面角部には、円柱形の転動補助レール210a、210b、230a、230bが、ボール転走溝21b及び23bにおける、移動ブロック21の進行方向全域に設けられている。また、ボール25は、水平に設けられた板状のケージ24によって4つずつ保持されている。ここで、ボール転走溝21b、23bは、本実施例において予備溝に相当する。また、転動補助レール210a、210b、230a、230bは丸棒に相当する。
【0042】
本実施例においては、移動ブロック21には永久磁石26が設けられている。この永久磁石26は移動ブロック21の幅方向の中央に、そして、移動ブロック21の長さ方向の全域に設けられている。また、永久磁石26における側面と上面は高透磁率材(パーマロイ、電磁鋼板など)からなるヨーク26aで囲まれている。同様に、軌道レール23には永久磁石27が、軌道レール23の幅方向、長さ方向の両方について中央部に設けられている。また、この永久磁石27の下面及び側面は高透磁率材(パーマロイ、電磁鋼板など)からなるヨーク27aで囲まれている。なお、永久磁石26及び27は、異なる極性どうしが対向するように配置されている。
【0043】
本実施例においては、移動ブロック21と軌道レール23とを永久磁石どうしで吸引することで予圧を付与している。すなわち、本実施例における被吸引部材は磁石部材と逆極性の永久磁石からなる。さらに、各々の永久磁石26、27にはヨーク26a、27aが備えられているので、より効率よく磁気回路を形成でき、より効率よく強力な予圧を付与することができる。また、転動補助レール210a、210b、230a、230bの表面に凹凸がある場合や、ボール転走溝21b、23bの加工誤差があった場合には、永久磁石26、27の吸引力と自重に抗して移動ブロック21が軌道レール23から離れる方向に移動するので、移動ブロック21の移動抵抗の増大を抑制することができ、また安定させることができる。
【0044】
また、本実施例において、永久磁石26及び永久磁石27とは、非接触力発生手段を構成する。そして、永久磁石26及び永久磁石27とは非接触力発生手段において互いに離間した2部材に相当する。さらに、永久磁石26及び永久磁石27との間に発生する吸引力は本実施例において非接触力である。
【実施例4】
【0045】
次に、実施例4について説明する。本実施例においては、磁性体部の材質を特に残留磁化の小さい材質にすることにより、移動ブロックの移動抵抗をより安定させる例について説明する。本実施例における運動案内装置は概略、実施例1で説明した図1及び図2に示したものと同等である。以下、図1及び図2との相違点についてのみ説明し、図1及び図2と同等の構成については同じ符号を用いるとともに説明は省略する。
【0046】
図2で示した運動案内装置においては、磁性体部7として例えば磁性ステンレスを用いていた。その場合、移動ブロック1の移動開始時の移動抵抗はステップ状に増加するのではなく、徐々に大きな値まで増加してしまう現象が見られることがあった。
【0047】
これに関し、発明者の鋭意研究により、移動ブロック1の移動開始時の移動抵抗の増大は、磁性体部7が残留磁化により磁石化し、移動し始めた移動ブロック1に対し、上記の磁石化した磁性体部7と永久磁石6との間の強い吸引力が作用し、移動ブロック1に移動前の位置に引き戻す力が働くことに起因していることが明らかになってきた。
【0048】
図6は、磁性体部7の磁化の影響を説明するための図である。図6(A)は移動ブロック1の移動前の状態、図6(B)は移動ブロック1が移動を開始した直後の状態を示す。なお、図6においては、永久磁石6は、移動ブロック1の前後方向に逆極性のものを2個設けた例について示している。図6(A)に示すように、移動ブロック1が静止した状態においては、永久磁石6の直下に最も強い磁界が作用するため、磁性体部7における各々の永久磁石6の直下の部分は、永久磁石6における磁性体部7と対向する磁極と逆極性に磁化される。
【0049】
そして、図6(B)に示すように、移動ブロック1が移動を開始しΔLBだけ移動した場合には、残留磁化の影響で、磁性体部7における磁化部分7aは、移動ブロック1の移動に遅れてΔLMだけ移動する。そして、通常はΔLB>ΔLMとなるので、永久磁石6と磁化部分7aとの間に吸引力が作用し、移動ブロック1には、移動前の位置に戻そうとする力が作用する。これが、移動ブロック1の移動開始時における移動抵抗の増大の原因となっている。
【0050】
これに対し、本実施例では、磁性体部7の材質として特に残留磁化の少ないパーマロイCを用いることとした。図7には、実施例1で磁性体部7の材質として用いた磁性ステンレスと、本実施例において磁性体部7に用いたパーマロイCのB−H曲線を示す。図中、残留磁化は、一旦永久磁石6によって磁界を作用させた後に、磁界を除去した場合に材質中に残留する磁化Brとして示される。実施例1において用いられた磁性ステンレスに対し、パーマロイCは残留磁化Brが小さいことが分かる。
【0051】
このように、本実施例においては、磁性体部7の材質として特に残留磁化の少ないパーマロイCを選定したことにより、移動ブロック1の移動開始時における移動抵抗の傾きと増大とを抑制することが可能となった。
【0052】
なお、本実施例においては磁性体部7の材質としてパーマロイCを用いたが、残留磁化の小さい材質であれば、他の種類のパーマロイや、電磁鋼板、珪素鉄、鉄−コバルト合金、Fe−Si−Al合金などを用いてもよい。また、本実施例においては、磁性体部7を、少なくとも鉄より残留磁化の小さい金属で形成することで、移動ブロック1の移動開始時に、移動ブロック1の移動が妨げられることを抑制でき、移動ブロック1の移動抵抗を低下させ、安定化することができる。残留磁化が800A/m以下の金属により磁性体部7を形成することで、より確実に上記の効果を得ることができる。
【実施例5】
【0053】
次に、実施例5について説明する。本実施例においては、永久磁石の並びを変更することにより、移動ブロックの移動抵抗をより安定させる例について説明する。本実施例における磁石部材以外の運動案内装置は、実施例1で説明したものと同等である。以下、図1及び図2と同等の構成については同じ符号を用いるとともに説明は省略する。
【0054】
まず、本発明の運動案内装置において、図8(B)に示すように、永久磁石6として、移動ブロック1の長さと略同じ長さの長方形のものを、軌道レール3を挟んで各一枚備える場合について考える。その場合、図8(A)のグラフに示すように、移動ブロック1の移動とともに、移動ブロック1の移動抵抗が増大していく現象が見られることがあった。
【0055】
これに関し、発明者の鋭意研究により、移動ブロック1の移動に伴う移動抵抗の増加傾向は、前述した磁性体部7の残留磁化の影響の他に、永久磁石6と磁性体部7で形成される磁気回路における磁界がボール5など、運動案内装置の機構に及び、移動ブロック1の円滑な移動を妨げていることに起因していることが分かってきた。
【0056】
これに対し、本実施例では、永久磁石6を、軌道レール3を挟んで移動ブロック1の両方の袖部に1枚ずつの永久磁石6を備えるのでなく、図9(B)に示すように、移動ブロック1の片側の袖部にそれぞれ5枚の略正方形の永久磁石を、異なる磁極が交互に現れるように並べて形成することとした。
【0057】
これにより、図9(C)に示すように、隣り合う永久磁石6どうしで磁気回路が閉じるようにでき、永久磁石6からの磁界が永久磁石6の近傍に集中して分布するようにできる。そうすると、永久磁石6からの磁界がボール5など、運動案内装置の機構に及び、移動ブロック1の円滑な移動を妨げる不都合を抑制することができる。その結果、図9(A)に実線で示すように、移動ブロック1の移動に伴う移動抵抗の増加を抑制することが可能となった。なお、本実施例においては移動ブロック1の片側5枚、両側10枚の永久磁石6によって磁石部材が形成されていることとなる。
【実施例6】
【0058】
次に、実施例6について説明する。本実施例においては、永久磁石の並びを変更することにより、移動ブロックの移動抵抗をより安定させる例において、さらに、移動ブロックにおける永久磁石の数及び配置を変更することにより、移動ブロックに生じるモーメントを抑制する例について説明する。以下、実施例5との相違点についてのみ説明し、図1及び図2と同等の構成については同じ符号を用いるとともに説明は省略する。
【0059】
実施例5(図9)で示した運動案内装置においては、永久磁石6を、移動ブロック1の両側の袖部にそれぞれ5枚ずつの略正方形の永久磁石を、異なる磁極が交互に現れるように並べて形成した。これにより、図9(A)に実線で示すように、移動ブロック1の移動に伴う移動抵抗の増加を抑制することが可能となった。
【0060】
しかしながら、図9(A)の実線のグラフ(図10(A)の点線のグラフ)から分かるように、実施例5の構成によれば、移動ブロック1の移動とともに、移動ブロック1の移動抵抗が一旦減少してさらに増加するといった不安定な挙動を示す場合があった。
【0061】
これに関し、発明者の鋭意研究により、移動ブロック1の移動に伴い移動抵抗が一旦減少してさらに増加するといった不安定な挙動は、移動ブロック1に作用するモーメントの影響であることが分かってきた。
【0062】
ここで、図1に示すように、本実施例の運動案内装置は、複数のボール5がケージ4に保持され、この状態で、移動ブロック1と軌道レール3との間に介在する所謂有限ストロークタイプの運動案内装置である。そして、この構成においては、軌道レール3に対して移動ブロック1が移動する際に、ケージ4に保持されたボール5は、移動ブロック1の半分の距離だけ移動することとなるため、移動ブロック1に対しても、その一端から他端にかけて相対移動する。
【0063】
そうすると、移動ブロック1の位置によっては、ケージ4と複数のボール5は、移動ブロック1の進行方向について、移動ブロック1に対して偏った位置に存在することとなる。そうすると、例えば、ケージ4と複数のボール5とが、移動ブロック1の端部に偏って介在した状態で、移動ブロック1全体に永久磁石6と磁性体部7の間の吸引力が作用した場合には、ケージ4と複数のボール5とが介在しない部分にも吸引力が作用するため、移
動ブロック1にモーメントが働き、移動ブロック1が起動レール3に対して傾く場合がある。その状態では、移動ブロック1の移動抵抗が増加してしまう。
【0064】
すなわち、ケージ4及び複数のボール5が移動ブロック1の中央部に位置する場合には移動ブロック1が傾かないため移動ブロック1の移動抵抗が小さく、ケージ4及び複数のボール5が移動ブロック1の端部に向かうにつれて、移動ブロック1が傾き移動抵抗が増加するといった現象が生じる。
【0065】
そこで、本実施例においては、図10(B)及び図10(C)に示すように、永久磁石1の数を、実施例5における5個から3個に減少させ、移動ブロック1において、移動ブロック1の位置に拘らず、ケージ4と複数のボール5とが、移動ブロック1と軌道レール3との間に存在する領域にのみ設けるようにした。
【0066】
そうすれば、永久磁石6と磁性体部7との間に吸引力が作用したとしても移動ブロック1にモーメントが生じることを抑制でき、移動ブロック1が軌道レール3に対して傾き、移動抵抗が増加することを抑制できる。その結果、図10(A)に示すように、移動抵抗の不安定な変化を除去することができ、移動ブロック1の位置に拘らず、移動抵抗の値をより安定させることが可能となった。なお、本実施例においては移動ブロック1の片側3枚、両側6枚の永久磁石6によって磁石部材が形成されていることとなる。また、ケージ4に支持された複数のボール5は、本実施例において転動体列を構成する。
【実施例7】
【0067】
次に、実施例7について説明する。本実施例においては、永久磁石に磁気回路の効率を上昇させるコアが備えられ、コアと移動ブロックとの間に透磁率の低い磁気遮断部が設けられた例について説明する。以下、本実施例と実施例6との相違点についてのみ説明し、図1及び図2と同等の構成については同じ符号を用いるとともに説明は省略する。
【0068】
実施例6においては、図10(B)及び図10(C)に示すように、永久磁石6の数を3個に減少させ、移動ブロック1において、移動ブロック1の位置に拘らず、ケージ4と複数のボール5とが、移動ブロック1と軌道レール3との間に存在する領域にのみ設けるようにした。これにより、移動ブロック1の位置に依存する移動抵抗の不安定な変化を除去することができた。
【0069】
ここで、実施例6においては、移動ブロック1の両側の袖部にそれぞれ3枚ずつの略正方形の永久磁石6を、異なる磁極が交互に現れるように並べた。従って、実施例6においても実施例5と同様に、隣り合う永久磁石6どうしで磁気回路が閉じるようにでき、磁界が永久磁石6の近傍に集中して分布するようにできるという効果を有している。
【0070】
しかしながら、この状態でも、図11(A)及び図11(B)に示すように、永久磁石6と磁性体部7との距離をより接近させた場合(例えば1.0mm→0.5mm)には、磁性体部7から永久磁石6側に戻る磁界強度も大きくなるため、永久磁石6からの磁界がボール5など、運動案内装置の機構に及ぶおそれが生じることがあった。
【0071】
そこで、本実施例においては、図11(C)に示すように、永久磁石6に磁性ステンレスより透磁率が高いパーマロイCから形成されたコア6aを設け、さらに、コア6aと移動ブロック1との間には、透磁率の低い磁界遮断部としてのプラスチック板6bを設けることとした。具体的には3枚の永久磁石6をコア6aに貼り付け、さらにプラスチック板6bを貼り付け、永久磁石6とコア6aとプラスチック板6bとを移動ブロック1に貼り付ける。
【0072】
これにより、永久磁石6から移動ブロック1側に発生させた磁界の大部分にコア6aを通過させることが可能となり、永久磁石6と磁性体部7との距離が近づいた場合でも、磁界がボール5など、運動案内装置の機構に及ぶことを抑制でき、移動抵抗を安定化させることができる。なお、磁界遮断部は、鉄より透磁率の低い材質で形成されることが望ましいが、必ずしもプラスチックで形成される必要はない。また、コア6aは、少なくとも磁界遮断部に用いられる材質より透磁率が高いことが望ましい。また、磁界遮断部とコア6aの両方を備えることは必ずしも必要でなく、いずれか一方のみを備えるようにしてもよい。
【実施例8】
【0073】
次に、実施例8について説明する。本実施例においては、永久磁石の並びを変更することにより、移動ブロックの特に高速動作時の移動抵抗をより安定させる例について説明する。本実施例における磁石部材以外の運動案内装置は、実施例1で説明したものと同等である。以下、図1及び図2と同等の構成については同じ符号を用いるとともに説明は省略する。
【0074】
実施例5の記載において説明した図8(B)に示すように、永久磁石6として、移動ブロック1の長さと略同じ長さの長方形のものを、移動ブロック1において軌道レール3を挟んで両側の袖部1aに各一枚備える場合について再考する。この場合は前述のように、永久磁石6と磁性体部7で形成される磁気回路における磁界がボール5など、運動案内装置の機構に及び、移動ブロック1の円滑な移動を妨げるおそれがある。
【0075】
これに対し、図9(B)に示すように、移動ブロック1の片側の袖部1aにそれぞれ5枚の略正方形の永久磁石を、異なる磁極が交互に現れるように並べて形成することで、図9(C)に示すように、隣り合う永久磁石6どうしで磁気回路が閉じるようにでき、永久磁石6からの磁界が永久磁石6の近傍に集中して分布するようにできる。これにより、永久磁石6からの磁界がボール5など、運動案内装置の機構に及び、移動ブロック1の円滑な移動を妨げる不都合を抑制することができる。
【0076】
しかしながら、運動案内装置の移動ブロック1が特に高速で動く場合について考えると、図9(B)のような構成においても、磁性体部7における磁界変動が大きく、渦電流によるエネルギー損失が大きいために、移動ブロック1の円滑且つ安定した高速移動が困難になる場合があった。
【0077】
そこで、本実施例においては、図12に示すように、永久磁石6として、移動ブロック1の長さと略同じ長さの長方形のものを、軌道レール3を挟んで両側の袖部1aに2枚ずつ備えるようにし、片側の袖部1aに備えられた2枚の永久磁石6どうしは互いに異なる磁極が現れるようにした。
【0078】
図12(A)は移動ブロック1を磁性体部7側から見た図、12(B)は移動ブロック1の進行方向から見た正面図、12(C)は移動ブロック1の進行方向に垂直な側面から見た側面図である。本実施例によれば、図12(B)に示すように、隣り合う永久磁石6どうしで磁気回路が閉じるようにでき、永久磁石6からの磁界が永久磁石6の近傍に集中して分布するようにできる。これにより、永久磁石6からの磁界がボール5など、運動案内装置の機構に及び、移動ブロック1の円滑な移動を妨げる不都合を抑制することができる。
【0079】
また、図12(C)からも分かるように、本実施例によれば、移動ブロック1が移動する際の磁性体部7における磁界変動を抑えることができる。これについて図13を用いて詳細に説明する。図13(A)に示すのは、図9(B)に示すような永久磁石6の並びを
採用した場合の磁性体部7における磁界変動による渦電流の発生の様子である。また、図13(B)には本実施例における永久磁石6の並びを採用した場合について示す。
【0080】
すなわち、図9(B)の永久磁石6の並びを採用した場合には、移動ブロック1の進行方向について異なる磁極が交互に現れるために、移動ブロック1が移動した際に磁性体部7で生じる磁界変動が激しく、渦電流が多くの場所で生じることとなる。この渦電流の発生により特に移動ブロック1が高速運動する際のエネルギー損失が大きくなってしまう。これに対して本実施例によれば、移動ブロック1が移動した際に磁性体部7で生じる磁界変動は、主に永久磁石6の前後に抑えられており、移動ブロック1が高速運動する際のエネルギー損失が抑えられる。
【0081】
このように本実施例の構成によれば、永久磁石6と磁性体部7で形成される磁気回路における磁界がボール5など、運動案内装置の機構に及ぶことを抑制できるとともに、移動ブロック1が高速運動する際のエネルギー損失をも抑制することができる。従って、本実施例によれば、移動ブロック1の運動速度に拘らず、移動ブロック1の運動を効率的にし、安定化させることができる。
【0082】
図14には、永久磁石6として、移動ブロック1の長さの半分程度のものを、片側の袖部1aに、移動ブロック1の進行方向に2列、移動ブロック1の進行方向に垂直方向に2列に合計4個並べて備え、対角線上に位置する永久磁石6どうしが同じ極となるように配置した場合について示す。
【0083】
図14(A)は移動ブロック1を磁性体部7側から見た図、14(B)は移動ブロック1の進行方向から見た正面図、14(C)は移動ブロック1の進行方向に垂直な側面から見た側面図である。本実施例によっても、図14(B)に示すように、隣り合う永久磁石6どうしで磁気回路が閉じるようにでき、永久磁石6からの磁界が永久磁石6の近傍に集中して分布するようにできる。また、図14(C)に示すように、移動ブロック1が移動した際に磁性体部7で生じる磁界変動を、主に永久磁石6の前後及び中央に抑えることができ、移動ブロック1が高速運動する際のエネルギー損失を抑制することができる。
【実施例9】
【0084】
次に、本発明における実施例9について説明する。本実施例においては、永久磁石の代わりに常時帯電部材としてのエレクトレット素子を用いて、移動ブロック1に予圧を作用させる例について説明する。図15には、本実施例に係る運動案内装置の概略図を示す。図8(B)に示した運動案内装置の構成との相違点は、本実施例においては、永久磁石6の代わりに、移動ブロック1の長さと略同じ長さの長方形のエレクトレット素子8を、軌道レール3を挟んだ移動ブロック1の袖部1aに各一枚備えるようにした点である。
【0085】
ここで、エレクトレット素子8は、テフロン(登録商標)、ポリプロピレンなどを加熱溶融し、直流の高電圧を印加しつつ固化させたものであり、半永久的に帯電した状態が保持できる高分子材料である。また、エレクトレット素子は、例えば、一方の面を(例えば+に)帯電させ反対側の面を逆極性(例えば−)に帯電させることも可能であるし、一方の面のみを(例えば+に)帯電させ、反対側の面は逆極性(例えば−)に帯電させないことも可能である。エレクトレット素子自体については公知の技術であるので、これ以上の説明は省略する。
【0086】
本実施例では、軌道レール3に固定され、エレクトレット素子8と対向する面には、磁性体部7ではなくアクリル材からなる帯電部材としての誘電体部9を配置するようにした。図15(C)には、エレクトレット素子8及び誘電体部9の対向面付近の拡大図を示す。図に示されるように本実施例のエレクトレット素子8は+に帯電されている。そうする
と、誘電体部9においてエレクトレット素子8と対向する面は分極により−に帯電する。そして、エレクトレット素子8と誘電体部9の各々異極に帯電し対向する面どうしには吸引力が働く。これにより、移動ブロック1には誘電体部9側(軌道レール3側)への予圧が与えられる。
【0087】
このように、エレクトレット素子8と誘電体部9との間の静電的な吸引力により移動ブロック1に予圧を付与することで、外部から電気を供給する必要なくして電気的に予圧を発生させることが可能となる。また、本実施例では磁気ではなく静電気を利用するので、予圧のための磁界がボール5などの運動案内装置の機構に及び、移動ブロック1の円滑な移動を妨げる不都合を抑制することができる。
【0088】
また、磁界の洩れを抑制できるので、運動案内装置を、磁気を計測に利用する計測器など磁気を嫌う用途に利用し易くすることができる。さらに、エレクトレット素子8では上述のように一面を正極に帯電させたからといって必ずしも反対側の面が負極に帯電するというものではない。従って、エレクトレット素子8の誘電体部9と対向する面と逆側の面の静電気が運動案内装置の動作に影響を及ぼすことを抑制できる。このことからエレクトレット素子8と誘電体部9の配置(移動ブロック1に予圧を与える構造)の設計の自由度を高めることが可能である。
【0089】
なお、移動ブロック1のストローク全域において移動ブロック1の転がり抵抗を低減できる点、ボールの転動中の振動が抑制できる点、ボール転動溝の表面凹凸による転がり抵抗を低減できる点は、永久磁石6を用いた場合と同様に、本実施例においても効果として得ることができる。
【0090】
次に、図16には、移動ブロック1の軌道レール3を挟んで両側の袖部1aに1枚ずつのエレクトレット素子8を備えるのでなく、両側の袖部1aにそれぞれ4枚の略正方形のエレクトレット素子8を、異なる極が交互に表面に現れるように並べる例について示す。これにより、各々エレクトレット素子8からの電界がエレクトレット素子8及び誘電体部9の近傍に集中して分布するようにでき、外部に洩れることを抑制することができる。
【0091】
以下、エレクトレット素子8と誘電体部9との間に発生する吸引力について考察する。ここで、図16に示したように、移動ブロック1を挟んで両側の袖部1aにそれぞれ4枚のエレクトレット素子8を並べる例について考える。例えばエレクトレット素子の大きさを5mm×4mmとし、エレクトレット素子8と誘電体部9との距離を図16(C)に示すように0.2mmと仮定する。また、エレクトレット素子8は、1000V程度の電位を有していると仮定する。
【0092】
上記の場合、エレクトレット素子8と誘電体部9との間の静電容量Cは以下の式(1)のように表すことができる。
C=ε・S/d・・・・・(1)
ここで、εは空気中の誘電率である。また、Sはエレクトレット素子8の面積、dは、エレクトレット素子8と誘電体部9の間の距離である。
空気中の誘電率は真空の誘電率と略等しいのでε=8.85×10−12とすると、そうすると、上記静電容量Cの値は、式(2)で示す値となる。
C=8.85×10−12×4×5×10−6/0.2×10−3
=0.885(pF)・・・・・(2)
従って、合計8個のエレクトレット素子8と誘電体部9との間における静電容量であるCtotalは、式(3)で示す値となる。
Ctotal=8×C=7.08(pF)・・・・(3)
となる。
そうすると、合計8個のエレクトレット素子8と誘電体部9との間に蓄えられる電荷Qは以下の式(4)で示される値となる。
Q=Ctotal・V=7.08×10−12×1000=7080(pC)・・(4

仮に、式(4)で表すQの電荷が点電荷とした場合に、エレクトレット素子8と誘電体部9に働く吸引力fはクーロンの法則より、式(5)で示す値となる。
f=1/(4πε)×Q/d=11.3(N)・・・・・(5)
【0093】
因みに、永久磁石6と磁性体部7との間の吸引力で予圧を発生させた場合には、吸引力は以下のようになる。
【表1】

従って、本実施例においても永久磁石6を用いた場合と遜色のない吸引力を得ることが可能となる。
【0094】
なお、本実施例において、エレクトレット素子8と誘電体部9とは、非接触力発生手段を構成する。そして、エレクトレット素子8と誘電体部9とは非接触力発生手段において互いに離間した2部材に相当する。さらに、エレクトレット素子8と誘電体部9との間に発生する吸引力は本実施例において非接触力である。
【0095】
また、本実施例において、図10(B)及び図10(C)に示した構成と同様に、エレクトレット素子8を、移動ブロック1において、移動ブロック1の位置に拘らず、ケージ4と複数のボール5とが、移動ブロック1と軌道レール3との間に存在する領域にのみ設けるようにしてもよい。
【0096】
そうすれば、エレクトレット素子8と誘電体部9との間に吸引力が作用したとしても移動ブロック1にモーメントが生じることを抑制でき、移動ブロック1が軌道レール3に対して傾き、移動抵抗が増加することを抑制できる。その結果、移動抵抗の不安定な変化を除去することができ、移動ブロック1の位置に拘らず、移動抵抗の値をより安定させることが可能となる。
【0097】
また、本実施例において、エレクトレット素子が軌道レール3側に備えられ、誘電体部が移動ブロック1側に備えられてもよいことは当然である。また、本実施例においては、誘電体部の代わりに、エレクトレット素子と逆極性に帯電されたエレクトレット素子を用いてもよい。
【実施例10】
【0098】
次に、エレクトレット素子を用いて予圧を発生させる例であって、エレクトレット素子または、エレクトレット素子と誘電体部とを多層構造とした例について説明する。
【0099】
図17には、本実施例における運動案内装置を示す。図17(A)は移動ブロック1の進行方向から見た正面図、図17(B)は移動ブロック1の進行方向に垂直な方向(図17(A)中の矢印方向)から見た側面図である。図17(A)においては、常時帯電部材としての平板状のエレクトレット素子8a〜8dが、平板表面が移動ブロック1の進行方
向に垂直且つ水平方向(図17(A)中の矢印方向)を向くような姿勢で移動ブロック1に固定されている。本実施例ではエレクトレット素子8a〜8dは+にのみ帯電されている。
【0100】
また、軌道レール3は水平板10に固定されている。この水平板10は磁性体で形成されていてもよいし誘電体で形成されていてもよい。水平板10には、アクリル樹脂で形成された帯電部材としての誘電体部9a〜9dが固定されている。この誘電体部9a〜9dは、移動ブロック1の各々の袖部1aの下方においてエレクトレット素子8a〜8dと平行に交互に並ぶように配置されている。そして、図中鉛直方向に関しては、エレクトレット素子8a〜8dと誘電体部9a〜9dとは、部分的に重なった状態となっている。
【0101】
この場合、エレクトレット素子8a〜8dに帯電した正電荷によって、誘電体部9a〜9dには負電荷が誘起され負極側に帯電する。そして、エレクトレット素子8a〜8dと誘電体部9a〜9dとの間には、より大きな面積で重なる方向への吸引力が発生する。これにより、移動ブロック1に対する図中鉛直下向き(水平板10方向)への予圧が発生する。これによれば、複数のエレクトレット素子と複数の誘電体部との間に発生する吸引力を予圧に利用することができるので、より強い予圧を得ることが可能となる。
【0102】
なお、本実施例において、エレクトレット素子8a〜8dと誘電体部9a〜9dとは、非接触力発生手段を構成する。そして、エレクトレット素子8a〜8dの各々と誘電体部9a〜9dの各々とは非接触力発生手段において互いに離間した2部材に相当する。さらに、エレクトレット素子8a〜8dと誘電体部9a〜9dとの間に発生する吸引力は本実施例において非接触力である。
【0103】
次に、図18には、エレクトレット素子を多層にして利用する例であって、誘電体部を用いず、エレクトレット素子のみで予圧を発生させる例について示す。図18(A)は移動ブロック1の進行方向から見た正面図、図18(B)は移動ブロック1の進行方向に垂直な方向(図17(A)中の矢印方向)から見たa−a断面図である。図18(A)においては、常時帯電部材としての平板状のエレクトレット素子8e〜8hが、その平板表面が移動ブロック1の進行方向に垂直且つ図中鉛直方向を向くような姿勢で移動ブロック1に固定されている。本実施例ではエレクトレット素子8e及び8gは+にのみ帯電されており、エレクトレット素子8f及び8hは−にのみ帯電されている。
【0104】
また、軌道レール3には、帯電部材としての平板状のエレクトレット素子8i〜8lがその平板表面が移動ブロック1の進行方向に垂直且つ図中鉛直方向を向くような姿勢で固定されている。そして、エレクトレット素子8i〜8lは、移動ブロック1の各々の袖部1aの下方においてエレクトレット素子8e〜8hと平行に交互に並ぶように配置されている。
【0105】
この場合、まず、移動ブロック1側のエレクトレット素子8e及び8gと、軌道レール3側のエレクトレット素子8i及び8kとの間には吸引力が働く。また、軌道レール3側のエレクトレット素子8i及び8kと移動ブロック1側のエレクトレット素子8f及び8hとの間には、反発力が働く。さらに、移動ブロック1側のエレクトレット素子8f及び8hと、軌道レール3側のエレクトレット素子8j及び8lとの間には吸引力が働く。これらの非接触力は全て、移動ブロック1を図中鉛直下方向(水平板10の方向)に働くので、移動ブロック1を図中鉛直下方向(水平板10の方向)に吸引する方向の予圧を得ることが可能となる。このような構成によっても、複数のエレクトレット素子と複数のエレクトレット素子との間に発生する吸引力及び反発力を予圧に利用することができるので、より強い予圧を得ることが可能となる。
【0106】
なお、図17に示した例において、誘電体部9a〜9dの代わりに、負極に帯電されたエレクトレット素子を用いてもよいことは当然である。
【0107】
なお、上記の実施例において誘電体部はアクリル樹脂により形成されることとしたが、本発明における誘電体部の材質はアクリル樹脂には限られない。他の種類の樹脂材料、ガラス、雲母などを利用可能である。また、エレクトレット素子または、エレクトレット素子と誘電体部とを多層構造とした場合の層数は上記の実施例のものに限られない。層数を増やすことでより強い予圧を得ることが可能となる。
【0108】
なお、本実施例において、エレクトレット素子8e〜8hとエレクトレット素子8i〜8lとは、非接触力発生手段を構成する。そして、エレクトレット素子8e〜8hの各々とエレクトレット素子8i〜8lの各々とは非接触力発生手段において互いに離間した2部材に相当する。さらに、エレクトレット素子8e〜8hとエレクトレット素子8i〜8lとの間に発生する吸引力または反発力は本実施例において非接触力である。
【0109】
また、本実施例において、図10(B)及び図10(C)に示した構成と同様に、エレクトレット素子を、移動ブロック1において、移動ブロック1の位置に拘らず、ケージ4と複数のボール5とが、移動ブロック1と軌道レール3との間に存在する領域にのみ設けるようにしてもよい。
【0110】
そうすれば、エレクトレット素子と誘電体部またはエレクトレット素子との間に吸引力または反発力が作用したとしても移動ブロック1にモーメントが生じることを抑制でき、移動ブロック1が軌道レール3に対して傾き、移動抵抗が増加することを抑制できる。その結果、移動抵抗の不安定な変化を除去することができ、移動ブロック1の位置に拘らず、移動抵抗の値をより安定させることが可能となる。
【0111】
また、本実施例において、エレクトレット素子と誘電体部との間に吸引力を発生させる場合には、エレクトレット素子が軌道レール3側に備えられ、誘電体部が移動ブロック1側に備えられてもよいことは当然である。
【0112】
なお、上記の実施例においては、運動案内装置が直線運動案内装置である例について説明したが、本発明が適用される運動案内装置は直線運動案内装置に限られない。移動ブロックが曲線状に運動する装置にも適用可能である。また、上記の実施例では転動体としてボールを用いた例について説明したが、転動体としてローラを用いてもよいことは当然である。
【0113】
さらに、実施例6で例示した発明以外の本発明は、転動体が移動体内を循環する無限循環路を有するタイプと、転動体の無限循環路を有しないタイプの両方の運動案内装置に適用が可能である。なお、無限循環路を有するタイプでは、非接触力発生手段を構成する2部材を、ボールが移動ブロックと軌道レールとの間に存在する領域にのみ設ければ、移動ブロックのモーメントが生じることを抑制することができる。また、上記の実施例においては、運動案内装置が直動システムである例について説明したが、本発明はボールスプラインなど、直動システム以外の運動案内装置にも適用が可能である。ボールスプラインに本発明を適用する場合には、外筒(移動体)とスプライン軸(案内部材)との間の回転方向の予圧に対して適用してもよい。
【符号の説明】
【0114】
1 移動ブロック、1b・1c ボール転走溝、3 軌道レール、3b・3c ボール転走溝、4 ケージ、5 ボール、6 永久磁石、6a コア、6b プラスチック板、7 磁性体部、8 エレクトレット素子、9 誘電体部、10 水平板、11 移動ブロ
ック、11b ボール転走溝、13 軌道レール、13b ボール転走溝、15 ボール、16 永久磁石、17 磁性体部、 21 移動ブロック、21b ボール転走溝、23 軌道レール、23b ボール転走溝、25 ボール、26 永久磁石、27 磁性体部、210a・210b 転動補助レール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体と、
前記移動体を多数の転動体を介して往復移動可能に支持する案内部材と、
を備えた運動案内装置であって、
互いに離間した2部材を有するとともに該2部材の間に非接触力である吸引力または反発力を発生させる非接触力発生手段をさらに備え、
前記非接触力発生手段における2部材のうち一方は、前記移動体に設けられ、
前記非接触力発生手段の2部材のうち他方は、前記案内部材に設けられ、
前記非接触力発生手段の2部材は、前記案内部材に対する前記移動体の進行方向に対して平行な平面で互いに対向して配置されたことを特徴とする運動案内装置。
【請求項2】
前記非接触力発生手段における2部材のうち一方は、永久磁石からなる磁石部材であり、他方は、前記磁石部材から発生する磁力により該磁石部材の方向に吸引される被吸引部材であることを特徴とする請求項1に記載の運動案内装置。
【請求項3】
前記被吸引部材は、少なくとも残留磁化が鉄より小さい金属から形成されたことを特徴とする請求項2に記載の運動案内装置。
【請求項4】
前記残留磁化が鉄より小さい金属はパーマロイであることを特徴とする請求項3に記載の運動案内装置。
【請求項5】
前記磁石部材は、前記移動体の移動方向について、複数の永久磁石を異なる極の磁極が前記被吸引部材に対向して交互に並ぶように配置することで形成されたことを特徴とする請求項2から4のいずれか一項に記載の運動案内装置。
【請求項6】
前記移動体と前記案内部材との間には、複数の前記転動体が直線状に並んだ転動体列が形成され、
前記磁石部材は、前記移動体の移動において、前記転動体列が前記移動体に対して相対移動した場合にも、該移動体と前記案内部材との間に前記転動体列が存在する領域に設けられたことを特徴とする請求項2から5のいずれか一項に記載の運動案内装置。
【請求項7】
前記磁石部材と前記転動体との間には、前記磁石部材からの磁界が前記転動体を通過することを抑制する、少なくとも鉄より透磁率の低い材質から形成された磁界遮断部が設けられたことを特徴とする請求項2から6のいずれか一項に記載の運動案内装置。
【請求項8】
前記磁石部材と前記磁界遮断部との間には、少なくとも透磁率が前記磁界遮断部より高い材質から形成されるコアが設けられたことを特徴とする請求項7に記載の運動案内装置。
【請求項9】
前記非接触力発生手段における2部材のうち一方は、エレクトレット素子からなり常時帯電している常時帯電部材であり、他方は、常時または一時的に帯電することで該常時帯電部材から発生する電界により吸引力または反発力を受ける帯電部材であることを特徴とする請求項1に記載の運動案内装置。
【請求項10】
前記非接触力発生手段においては、複数の前記常時帯電部材と、複数の前記帯電部材とが、交互に層状に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の運動案内装置。
【請求項11】
前記帯電部材はアクリル樹脂から形成されたことを特徴とする請求項9に記載の運動案内装置。
【請求項12】
前記帯電部材はエレクトレット素子から形成されたことを特徴とする請求項9に記載の運動案内装置。
【請求項13】
前記常時帯電部材は、前記移動体の移動方向について、複数のエレクトレット素子を異なる極に帯電した面が前記磁性体部に対向して交互に並ぶように配置することで形成されたことを特徴とする請求項9に記載の運動案内装置。
【請求項14】
前記移動体と前記案内部材との間には、複数の前記転動体が直線状に並んだ転動体列が形成され、
前記常時帯電部材は、前記移動体の移動において、前記転動体列が前記移動体に対して相対移動した場合にも、該移動体と前記案内部材との間に前記転動体列が存在する領域に設けられたことを特徴とする請求項9から13のいずれか一項に記載の運動案内装置。
【請求項15】
前記案内部材が前記移動体を多数の転動体を介して往復移動可能に支持する際には、前記案内部材に設けられた複数の転走溝と前記移動体に設けられた複数の転走溝とによって、前記転動体の運動方向を前記案内部材に対する前記移動体の移動方向と平行方向に規制する複数の転走路が形成され、
前記複数の転走路には、
前記案内部材と前記移動体とが接近した際に前記案内部材に設けられた転走溝と前記移動体に設けられた転走溝とが前記転動体を隙間無く挟持するとともに、前記案内部材と前記移動体とが離反した際には前記案内部材に設けられた転走溝と前記移動体に設けられた転走溝とが前記転動体を隙間を有しつつ挟持する第1転走路と、
前記案内部材と前記移動体とが接近した際に前記案内部材に設けられた転走溝と前記移動体に設けられた転走溝とが前記転動体を隙間を有しつつ挟持するとともに、前記案内部材と前記移動体とが離反した際には前記案内部材に設けられた転走溝と前記移動体に設けられた転走溝とが前記転動体を隙間無く挟持する第2転走路と、
が含まれることを特徴とする請求項1から14のいずれか一項に記載の運動案内装置。
【請求項16】
前記隙間は、前記案内部材に設けられた転走溝または前記移動体に設けられた転走溝の表面粗さより大きいことを特徴とする請求項15に記載の運動案内装置。
【請求項17】
前記案内部材及び前記移動体に設けられた前記転走溝は、前記案内部材及び前記移動体に設けられた予備溝に、2本の丸棒を固定することで形成したことを特徴とする請求項15または16に記載の運動案内装置。
【請求項18】
前記転走溝は、V溝であることを特徴とする請求項15または16に記載の運動案内装置。
【請求項19】
前記転走溝は、ゴシックアーチ溝であることを特徴とする請求項15または16に記載の運動案内装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−255838(P2010−255838A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228412(P2009−228412)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(390029805)THK株式会社 (420)
【Fターム(参考)】