説明

運転室内装パネルおよびその成形方法

【課題】成形工程を単純化して効率よく内装パネルを成形することが可能な運転室内装パネルおよびその成形方法を提供する。
【解決手段】ダッシュボードPの成形方法では、金型11,12内へ表皮塗料15aを塗布した後、ブラケット14a等のインサート金具や強化繊維16a〜16dをセットされた金型11,12内へ半硬質ウレタン樹脂を注入する。これにより、インサート金具の適材樹脂内へのインサート成形と、その表皮部分の成形とを、1工程において同時に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンプトラックやホイルローダ等の建設機械の運転室内に装着される運転室内装パネルおよびその成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ダンプトラックやホイルローダ等の建設機械の運転室には、計器類を固定する金具を埋め込んだ内装パネルが使用されている。
このような内装パネルの中には、上記金具を成形用の金型内に配置して、金型内に基材樹脂を流し込むインサート成形によって製造されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、このようなインサート成形によって成形された内装パネルの表層部分の意匠性を向上させるために、成形された内装パネルを金型内から取り出した後で、所定のシボパターン等を表層部分に加工を施す場合がある。
【特許文献1】特開2004−255719号公報(平成16年9月16日公開)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のインサート成形では、以下に示すような問題点を有している。
すなわち、上記公報に開示されたインサート成形用型では、金具類をインサート成形した後で表皮パターンを形成する必要があり、内装パネルの成形工程が2工程となって複雑化してしまう。
【0005】
本発明の課題は、成形工程を単純化して効率よく内装パネルを成形することが可能な運転室内装パネルおよびその成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明に係る運転室内装パネルの成形方法は、建設機械の運転室内に配置される内装パネルを、成形用の金型を用いて成形する成形方法であって、第1から第3のステップを備えている。第1のステップでは、金型内に内装パネルの表皮部分を形成する樹脂を塗装する。第2のステップでは、金型内における所定の位置にインサート用の金具をセットする。第3のステップでは、金型内に内装パネルの基材部を形成する基材樹脂を注入する。
【0007】
ここでは、建設機械の内装パネルの成形方法として、内装パネルの表皮部分を、金型内に樹脂を塗装して形成する、いわゆるインモールドコート法によって成形する。そして、内装パネルにインサート成形される各種金具を金型内にセットし、基材部を構成する基材樹脂を金型内に注入する。なお、上記第1のステップおよび第2のステップの順序は、反対であってもよいものとする。
【0008】
ここで、例えば、ダンプトラックやホイルローダ等の建設機械には、オペレータが出入りするための運転室(キャブ)が設けられている。そして、この運転室内におけるオペレータの正面には、各種メータ等が埋め込まれた内装パネルが装着されている。このような建設機械に搭載された運転室内の内装パネルは、ROPS構造を有する運転室を構成する各柱部材が太くなったことに伴って、部分的な変形しやすさ等が要求される。しかし、従来のように、金具類をインサートした基材樹脂を成形した後で表皮パターンを形成した内装パネルでは、成形工程が増えるために効率よく製造することができないという問題がある。
【0009】
本発明の運転室内装パネルの成形方法では、金型内に樹脂を塗装した後、インサートする金具をセットして基材樹脂を注入して、内装パネルを成形する。
これにより、内装パネルを成形するための工程を1工程にすることができるため、従来よりも効率よく表皮部分を含む内装パネルを成形することができる。
【0010】
第2の発明に係る運転室内装パネルの成形方法は、第1の発明に係る運転室内装パネルの成形方法であって、第3のステップにおいて注入された基材樹脂を発泡させる第4のステップをさらに備えている。
ここでは、内装パネルの基材部を構成する基材樹脂を、発泡成形によって成形する。
これにより、基材樹脂に混合させる発泡剤の量や種類を調整することで、適度な強度および適度な変形しやすさを有する軽量の内装パネルを容易に成形することができる。
【0011】
第3の発明に係る運転室内装パネルの成形方法は、第2の発明に係る運転室内装パネルの成形方法であって、基材樹脂は、半硬質ウレタンインテグラルフォームである。
ここでは、基材樹脂として半硬質のウレタンインテグラルフォームを用いている。
これにより、例えば、基材樹脂を発泡成形する場合でも、安価で成形性のよい樹脂を用いて内装パネルを成形することができる。
【0012】
第4の発明に係る運転室内装パネルの成形方法は、第2の発明に係る運転室内装パネルの成形方法であって、第4のステップでは、基材樹脂の平均密度を0.85以上に設定して基材樹脂を発泡させる。
ここでは、内装パネルを構成するウレタンフォーム等の基材樹脂を、0.85以上の平均密度で発泡成形する。ここで、平均密度とは、金型に触れる部分は高密度となり、中心部分では低密度となるウレタンフォーム等の基材樹脂において、高密度部と低密度部とを平均化した密度を意味している。
これにより、基材樹脂において最低限の強度を確保することができるとともに、内装パネルの軽量化を図ることができる。
【0013】
第5の発明に係る運転室内装パネルの成形方法は、第1から第4の発明のいずれか1つに係る運転室内装パネルの成形方法であって、第3のステップでは、基材樹脂の厚みを部分的に変えて成形する。
ここでは、内装パネルを構成する基材樹脂において、例えば、両端部の厚みを変える
等して部分的に厚みが異なる部分を形成している。
【0014】
これにより、運転室の形状や計器類等をインサートする部分の形状等に合わせて、部分別に必要な強度や折り曲げやすさ等を持たせることができる。よって、例えば、内装パネルの一部を鋭角なコーナーに沿って折り曲げることができるため、内装パネルを無理に折り曲げた場合における内装パネルの表皮部分に形成されたシボパターン等の製品外観の品質の低下を防止することができる。
【0015】
第6の発明に係る運転室内装パネルの成形方法は、第1から第5の発明のいずれか1つに係る運転室内装パネルの成形方法であって、第1のステップでは、表皮部分を形成する際に、所定の表層パターンを転写成形する。
ここでは、インモールドコート法によって表皮部分を成形するためのステップにおいて、表層に所定のパターンを転写して表皮部分を形成する。
【0016】
これにより、内装パネルを成形後に表層のパターンを形成する場合と比較して、処理工程を省略できるため、より効率よく内装パネルを成形することができる。さらに、基材樹脂の厚みを部分的に変えた成形と組み合わせることで、運転室を構成する柱付近に内装パネルの一部を折り曲げて入れ込むような場合でも、表皮部分が無理に伸ばされてしまうことはないため、表層パターンが変形してしまうことを防止することができる。
【0017】
第7の発明に係る運転室内装パネルの成形方法は、第1から第6の発明のいずれか1つに係る運転室内装パネルの成形方法であって、第3のステップでは、基材樹脂における所定の箇所に強化繊維を含むように成形を行う。
ここでは、特に強度を高める必要がある所定の部分について、強化繊維を含むように基材樹脂を成形する。
【0018】
これにより、内装パネルの剛性を部分的に向上させることができるとともに、強化繊維を含む基材樹脂の部分の伸びを抑制することができる。さらに、これらの強化繊維や金属部品等を含む内装パネルを1つの工程において一体成形することで、強度面に優れた内装パネルを効率よく製造することができる。
【0019】
第8の発明に係る運転室内装パネルは、第1から第7の発明のいずれか1つに係る運転室内装パネルの成形方法によって成形されている。
これにより、1つの成形工程において、表皮パターンを含む内装パネルを成形することができるため、成形工程の効率化が図れ、この結果、製品コストを削減することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る運転室内装パネルの成形方法によれば、1つの成形工程において、表皮パターンを含む内装パネルを成形することができるため、成形工程の効率化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の一実施形態に係る運転室内装パネルおよびその成形方法について、図1〜図10(b)を用いて説明すれば以下の通りである。
[キャブ内に装着されたダッシュボードPの構成]
本実施形態に係るダッシュボード(運転室内装パネル)Pは、図1および図2に示すように、ホイルローダ(建設機械)に搭載されたキャブ(運転室)内における前方部分に装着されている。そして、ダッシュボードPの中央部には、各種計器類Mやスイッチ類S等を含む取付部101が設けられている。さらに、ダッシュボードPは、左右の両側端に、間隔を広げながら斜め手前方向に延伸する左右の翼部102,103を有している。
【0022】
取付部101は、略C字型形状となっており、その中央部分には計器類Mが運転席側へ傾倒するように固定されている。
左右の翼部102,103は、図2に示すように、取付部101の両側から左右方向に直線的に延伸しており、その途中の部分において屈曲して運転席側に向かって間隔を広げながら斜め手前へと延伸している。また、左右の翼部102,103は、取付部101を中心として左右対称となっており、その上壁部102a,103aの延伸方向に沿って左右の側壁102b,103bが連続するように形成されている。さらに、左右の翼部102,103では、平面視において略三角形のアンダーカット部104,105が側端部分に形成されている。また、左右の翼部102,103には、上壁部102a,103aにおける直線状の部分と、アンダーカット部104,105近傍の両端部分付近とに、合計で4つのエアコン用の空気吹出し口102c,103cが形成されている。そして、この空気吹出し口102c,103cには、円形状吹出しグリル102e(図1参照)が取り付けられている。
【0023】
ホイルローダ等の建設機械に搭載されたキャブは、図1に示すように、複数の柱部材110によって骨格部分を形成している。そして、このような柱部材110の間の空間には、柱部材110の張り出し分を含めてダッシュボードPが装着されるとともに、ダッシュボードPの装着部分から天井部分にかけてガラスGが装着される。なお、キャブの骨格部分を構成する柱部材110は、キャブ内の運転者を保護するためのROPS構造を構成しており、従前の柱部材よりも太いものが使用されている。
【0024】
このようなキャブ内の空間に対して上述したダッシュボードPを装着する場合には、ダッシュボードPの最大幅が上記柱部材110の間隔よりも大きいため、ダッシュボードPをそのまま水平方向に移動させただけでは円滑に装着することはできない。このため、本実施形態のダッシュボードPでは、キャブ内へ装着する際に、特に両端部分を弾性変形させることで、柱部材110間よりも幅の広いダッシュボードPの柱部材110間への装着を可能としている。これにより、ダッシュボードPが、ROPS構造を構成する柱部材110を有するキャブ内へ装着される場合でも、所定の部分を弾性変形されて容易に装着することができる。
【0025】
本実施形態では、キャブ内において露出する側の表皮部分として、所定のシボパターンが形成されたIMC層(表皮部分)15b(図10(a)等参照)を、表皮塗料15a(図4参照)を下部金型12内へ吹き付ける、いわゆるインモールドコート工法(IMC工法)によって形成している。そして、基材部分には、半硬質ウレタン樹脂が使用され、発泡剤を混入させて金型内でウレタンフォーム18(図6参照)が発泡成形される。このとき、上述した計器類Mやスイッチ類Sを固定するためのブラケット14aが、固定用金具13b,13cによって固定された状態で、基材樹脂であるウレタンフォーム18内にインサート成形される。また、ダッシュボードPの両端にそれぞれ配置されるボルト取付け金具14bが、同様に固定用金具13a,13dによって固定された状態で、基材樹脂であるウレタンフォーム18内にインサート成形される。
【0026】
なお、ウレタンフォーム18は、平均密度が0.85以上になるように発泡剤の添加量が調整されて成形される。これにより、必要最小限の合成を備え、かつ必要な部分については容易に弾性変形させることが可能なダッシュボードPを成形することができる。
ここで、ウレタンフォーム18の平均密度と曲げ弾性率との関係を図11に示す。図11に示すグラフでは、例えば、ウレタンフォーム18の平均密度が0.80以下になると、軟らか過ぎて形状維持が困難となる最低限の曲げ弾性率に相当する400(MPa)以下となることが分かる。一方、ウレタンフォーム18の平均密度が1.00以上になると、弾性変形させにくくなる最大限の曲げ弾性率に相当する600(MPa)以上となることが分かる。この結果から、弾性変形させやすく、かつ形状維持に必要な最低限の曲げ弾性率を有するウレタンフォームの平均密度としては、0.80〜1.00の範囲内であって、より好ましくは0.85〜0.95の範囲内であることが望ましい。
【0027】
また、ダッシュボードPは、その両端部分の肉厚が中央部分付近よりも薄くなるように形成されている。これにより、ROPS構造が採用された柱部材110付近に挿入される両端部分を容易に変形させて、ダッシュボードPをキャブ内における所定の位置へ装着することが可能になる。
さらに、ダッシュボードPは、剛性が不足するおそれのある所定の位置に、強化繊維16a〜16d(図5等参照)を保持した状態で一体成形される。これにより、ダッシュボードPの剛性を効果的に向上させ、かつその部分の寸法変化を抑制することができる。なお、強化繊維16a〜16dとしては、ガラス長繊維等を用いることができる。
【0028】
<ダッシュボードPの成形方法>
以下において、このような構成のダッシュボードPの成形方法について、図3〜図10(b)を用いて説明すれば以下の通りである。
本実施形態のダッシュボードPの成形方法は、図3に示すフローチャートに従って実施される。
【0029】
すなわち、ステップS1(第2のステップ)では、図4に示すように、固定用金具13a〜13dを用いて、意匠面とは反対側のダッシュボードPの面を成形する上部金型11に対してブラケット14aおよびボルト取付け金具14bを固定する。
続いて、ステップS2(第1のステップ)では、図4に示すように、離型剤処理された下部金型12の表面に対して塗装装置15によって表皮塗料15aを塗布する。なお、ここで下部金型12に対して塗布された表皮塗料15aは、下部金型12の表面に形成された凹凸によって所定のシボパターンが形成されたIMC層15b(図10(a)等参照)となる。
【0030】
ステップS3では、図5に示すように、成形用金型10(上部金型11および下部金型12)における所定の位置に、強化繊維16a〜16dをセットする。なお、これらの強化繊維16a〜16dは、後述するウレタン樹脂を金型内へ注入する際に、その流動圧によってセットした位置から移動しないように、例えば、部分的に粘着シート等で金型内に固定する等の施策が採られているものとする。これにより、ダッシュボードPにおける特に剛性が必要な部分には、図9に示すように、ウレタンフォーム18の表面に形成されるスキン層18a,18bの間に強化繊維16a,16bおよび強化繊維16c,16dを配置して、剛性を向上させることができる。
【0031】
ステップS4では、図5に示すように、内部に強化繊維16a〜16dをセットされた上部金型11と下部金型12とを閉じてクランプされる。このとき、上部金型11と下部金型12とを合わせた成形用金型10内の空間は、ダッシュボードPの両端部分に相当する部分の隙間が他の部分と比較して小さくなっている。これにより、ダッシュボードPにおける局所的に変形させたい部分については、薄く成形することができる。
【0032】
ステップS5(第3のステップ、第4のステップ)では、図6に示すように、ステップS4において閉じられた成形用金型10内へ、発泡剤を混入した半硬質ウレタン樹脂を注入して発泡成形(RIM成形)を行う。これにより、半硬質ウレタン樹脂が注入された上下の金型11,12を冷却することで、表面にスキン層18a,18b(図9参照)が形成され内部になるほど発泡倍率が高くなるインテグラルフォームタイプのウレタンフォーム18を成形することができる。
【0033】
ステップS6では、図6に示すように、半硬質のウレタン樹脂の注入が完了した状態のまま、所定時間が経過するまで成形用金型10を冷却する。このとき、成形用金型10内では、半硬質ウレタンが硬化する際に、図9に示すように、ウレタンフォーム18の表面にスキン層18a,18bが形成されるとともに、下部金型12の表面に塗布されてシボパターンが形成されたIMC層15bが、スキン層18aを介してウレタンフォーム18に対して転写接着される。
【0034】
ステップS7では、図7に示すように、所定の冷却時間が経過した成形用金型10を開放する。
ステップS8では、図7に示すように、開放された上下の金型11,12の間から成形品であるダッシュボードPを取り出す。なお、成形用金型10内から取り出されたダッシュボードPには、図8に示すように、ボルト20等を用いて計器類M等が取り付けられる。
【0035】
本実施形態では、以上のように、半硬質のウレタン樹脂を注入する前に、成形用金型10内にブラケット14aやボルト取付け金具14b、および強化繊維16a〜16dをセットしてからウレタン樹脂を成形用金型10内へ注入する。
これにより、ブラケット14a等を基材樹脂であるウレタンフォーム18とともに一体成形することができるため、計器類M等の部品を成形後のダッシュボードPに対して容易に装着することができる。
【0036】
そして、キャブ内に露出する側の表皮部分を、IMC工法を採用してIMC層15bを形成することで、図10(a)および図10(b)に示すように、所定のシボパターンを成形時に形成しつつ、基材樹脂であるウレタンフォーム18に対してスキン層18a,18bを介して転写接着することができる。
[本ダッシュボードPおよびその成形方法の特徴]
(1)
本実施形態のダッシュボードPの成形方法では、図3に示すように、成形用金型10内へ表皮塗料15aを塗布した後(図4参照)、ブラケット14a等がセットされた成形用金型10内へ半硬質ウレタン樹脂を注入する(図6参照)。
【0037】
これにより、ブラケット14a等のインサート金具の基材樹脂内へのインサート成形と、その表皮部分としてIMC層15bの成形とを、1工程において同時に行うことができる。この結果、基材樹脂を成形後に表皮部分を形成する従来のダッシュボードの製造方法と比較して、表皮部分を含むダッシュボードPを効率よく製造することができる。
(2)
本実施形態のダッシュボードPの成形方法では、図3のステップS5に示すように、基材樹脂として成形用金型10内に注入される半硬質ウレタン樹脂に発泡剤を添加して発泡成形する。
【0038】
これにより、ダッシュボードPの軽量化が図れるとともに、ダッシュボードPをキャブ内へ装着する際でも、必要な部分を変形させることで、キャブ内へのダッシュボードPの取付けを容易に行うことが可能になる。
(3)
本実施形態のダッシュボードPの成形方法では、図3に示すように、基材樹脂として、半硬質のウレタンインテグラルフォームを使用している。
【0039】
これにより、発泡成形が容易で安価な樹脂を用いて、適度な剛性を有するダッシュボードPを成形することができる。
さらに、ウレタンフォームとして、中肉部分よりも成形時に金型と接する外周部分の方が密度が大きくなるインテグラルフォームを用いることで、金型に触れる表面の発泡を押さえつつスキン層を形成して、IMC層15bの塗料を金型からの転写を効果的に行うことができる。また、例えば、成形品に裏リブやボス等がある場合でも、微発泡させているためにひけが出にくくすることができる。さらに、発泡させることで、ダッシュボードPの断熱性能を向上させ、アンダーカット部等ではフレキシブルに変形させることができるとともに、必要な位置に金属部品や強化繊維等を入れることで、部品を保持させることも容易に行うことができる。
【0040】
(4)
本実施形態のダッシュボードPの成形方法では、図3に示すように、基材樹脂であるウレタンフォーム18の平均密度が0.85以上となるように発泡成形を行う。
これにより、肉厚が薄い部分については適度に変形し易く、かつ肉厚が厚い部分については必要な剛性を備えたダッシュボードPを成形することができる。
【0041】
具体的には、図11に示すように、形状維持するために最低限必要な曲げ弾性率に相当する400MPa以上の曲げ弾性率を確保することができる。
なお、ダッシュボードPの基材樹脂部分についての曲げ弾性率の上限値としては、弾性変形しにくくなってしまう600MPa以下とすることが好ましい。
これにより、形状を維持するために最低限必要な曲げ弾性率を確保しつつ、かつ適度な力で弾性変形するようなダッシュボードPを形成することができる。
【0042】
(5)
本実施形態のダッシュボードPの成形方法では、図7等に示すように、ダッシュボードPの両端部分を、中央部分と比較して肉厚を薄くして成形する。
これにより、ダッシュボードPをキャブに対して装着する際には、ROPS構造を採用したキャブの骨格を形成する柱部材110付近に装着されるダッシュボードPの両端部分を容易に変形させることができる。この結果、ROPS構造を採用したことにより従来よりも太くなった柱部材110の間の装着位置へ、容易にダッシュボードPを装着することが可能になる。
【0043】
(6)
本実施形態のダッシュボードPの成形方法では、図10(a)および図10(b)に示すように、ダッシュボードPの表皮部分として形成されるIMC層15bに、所定のシボパターンを形成している。
これにより、半硬質ウレタン樹脂を成形用金型10内に注入、発泡成形して、成形品を成形用金型10から取り出すだけで、表皮部分に所定の模様が施されたダッシュボードPを得ることができる。この結果、基材樹脂を成形した後で表皮部分の模様等を形成する場合と比較して、製造工程を大幅に効率化することができる。
【0044】
(7)
本実施形態のダッシュボードPの成形方法では、図7および図8等に示すように、基材樹脂となるウレタンフォーム18の所定の箇所に、ガラス長繊維等の強化繊維16a〜16dを配置して一体成形している。
これにより、ダッシュボードPにおける剛性が特に必要と思われる箇所に強化繊維16a〜16dを設けることで、ダッシュボードPの剛性を効果的に向上させることができる。さらに、強化繊維16a〜16dを配置した部分の寸法変化を抑制して、寸法変化の少ないダッシュボードPを成形することができる。
【0045】
(8)
本実施形態のダッシュボードPは、上述した成形方法によって成形される。
これにより、1つの工程において表皮部分まで成形可能なダッシュボードPを効率よく成形することができる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0046】
(A)
上記実施形態では、ダッシュボードPを形成するための樹脂として、半硬質ウレタンを用いた例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、同じウレタン樹脂を使用する場合でも、半硬質ウレタンに限らず、硬質ウレタンや、エポキシ、ナイロン等の他の樹脂を使用することもできる。
【0047】
ただし、コストや成形性等を考慮すると、上記実施形態のように、半硬質ウレタンを使用することがより好ましい。
(B)
上記実施形態では、半硬質ウレタンのインテグラルフォームを基材樹脂として、ダッシュボードPを成形する例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
例えば、表層から内部までの発泡密度が一定のウレタンフォームを使用することも可能である。
(C)
上記実施形態では、IMC(インモールドコート)法によって形成する表層にシボパターンを形成した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0049】
例えば、シボパターンが形成されていない内装パネルであってもよいし、シボパターン以外の他の模様が形成された内装パネルであってもよい。
(D)
上記実施形態では、基材樹脂であるウレタンフォーム18の所定の位置にガラス長繊維からなる強化繊維16a〜16dを配置して一体成形を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0050】
例えば、強化繊維としては、ガラス系のものに限らず、炭素系繊維を用いてもよい。
さらに、強化繊維の配置としては、上記実施形態における配置に限定されるものではなく、適宜必要な箇所に配置することが可能である。
(E)
上記実施形態では、基材樹脂であるウレタンフォーム18の所定の位置にブラケット14aやボルト取付け金具14b等を配置してインサート成形を行う例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0051】
例えば、インサートされる金具としては、ブラケットやボルト取付け金具等に限定されるものではなく、他の金具類をインサート成形してもよい。
さらに、インサート金具の配置としては、上記実施形態における配置に限定されるものではなく、適宜必要な箇所に配置することが可能である。
(F)
上記実施形態では、ホイルローダのキャブ内に装着される内装パネルに対して本発明を適用した例を挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
【0052】
例えば、ダンプトラック等のように、キャブ内におけるフロント部分に複数の計器類が配置された内装パネルが装着されるキャブを有する建設機械であれば、ホイルローダに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の運転室内装パネルの成形方法は、成形工程を単純化して効率よく内装パネルを成形することができるという効果を奏することから、特に複雑な形状を有する他の車両の運転室内装パネルに対しても広く適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る運転室内装パネルを装着したキャブを搭載したホイルローダのキャブ内の構成を示す正面図。
【図2】図1のホイルローダのキャブ内に設置されるダッシュボードを示す図。
【図3】図1のダッシュボードの成形方法の流れを示すフローチャート。
【図4】図1のダッシュボードを成形する際のインサートするブラケット等をセットする工程を示す側面図。
【図5】図1のダッシュボードを成形する際の型閉じおよび増し締め工程を示す側面図。
【図6】図1のダッシュボードを成形する際の基材樹脂を注入する工程を示す側面図。
【図7】図1のダッシュボードを成形する際の離型工程を示す側面図。
【図8】図1のダッシュボードを成形する際の計器類の組み込み工程を示す側面図。
【図9】図3から図7に示す各工程を経て成形されたダッシュボードの構造を示す部分断面図。
【図10】(a)は、ダッシュボードの表面に形成されたシボパターンを示す平面図。(b)は、(a)に示すA方向から見た部分の断面を示す部分断面図。
【図11】図1のダッシュボードの基材樹脂であるウレタンフォームの平均密度と曲げ弾性率との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
【0055】
10 成形用金型
11 上部金型
12 下部金型
13a〜13d 固定用金具
14a ブラケット
14b ボルト取付け金具
15 塗装装置
15a 表皮塗料
15b IMC層(表皮部分)
16a〜16d 強化繊維
18 ウレタンフォーム(基材樹脂)
18a,18b スキン層
20 ボルト
101 取付部
102 翼部
103 翼部
104 アンダーカット部
110 柱部材
M 計器類
P ダッシュボード(運転室内装パネル)
S スイッチ類

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械の運転室内に配置される内装パネルを、成形用の金型を用いて成形する成形方法であって、
前記金型内に前記内装パネルの表皮部分を形成する樹脂を塗装する第1のステップと、
前記金型内における所定の位置にインサート用の金具をセットする第2のステップと、
前記金型内に前記内装パネルの基材部を形成する基材樹脂を注入する第3のステップと、
を備えている運転室内装パネルの成形方法。
【請求項2】
前記第3のステップにおいて注入された前記基材樹脂を発泡させる第4のステップをさらに備えている、
請求項1に記載の運転室内装パネルの成形方法。
【請求項3】
前記基材樹脂は、半硬質ウレタンインテグラルフォームである、
請求項2に記載の運転室内装パネルの成形方法。
【請求項4】
前記第4のステップでは、前記基材樹脂の平均密度を0.85以上に設定して前記基材樹脂を発泡させる、
請求項2に記載の運転室内装パネルの成形方法。
【請求項5】
前記第3のステップでは、前記基材樹脂の厚みを部分的に変えて成形する、
請求項1から4のいずれか1項に記載の運転室内装パネルの成形方法。
【請求項6】
前記第1のステップでは、前記表皮部分を形成する際に、所定の表層パターンを転写成形する、
請求項1から5のいずれか1項に記載の運転室内装パネルの成形方法。
【請求項7】
前記第3のステップでは、前記基材樹脂における所定の箇所に強化繊維を含むように成形を行う、
請求項1から6のいずれか1項に記載の運転室内装パネルの成形方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の成形方法によって成形された運転室内装パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−12889(P2008−12889A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−189263(P2006−189263)
【出願日】平成18年7月10日(2006.7.10)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】