説明

運転支援装置および運転支援方法

【課題】運転者の覚醒状態を適切な状態に円滑に誘導することができる運転支援装置を提供する。
【解決手段】運転者の覚醒度を検出する覚醒度検出手段110と、運転者の覚醒度が所定範囲内にない場合に、運転者の手部に対して、運転者の覚醒度に応じた所定温度の風を送風することで、運転者の覚醒度が所定範囲内となるように、運転者に対して温度刺激を与える温度刺激付与手段140と、ステアリングホイールの表面温度を検出する温度検出手段140と、ステアリングホイールの表面温度が所定の温度範囲内にあるか否かを判断し、ステアリングホイールの表面温度が所定の温度範囲内にない場合に、ステアリングホイールに対して、ステアリングホイールの表面温度に応じた所定温度の風を送風することで、ステアリングホイールの表面温度を調節するステアリング温度調節手段140とを備えることを特徴とする運転支援装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置および運転支援方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、運転者の手部に対して冷風を送風する技術が知られている(たとえば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−273498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、運転者が運転中に居眠りすることを防止するために、従来技術のように、運転者の手部に対して冷風を送風する場合、冬場など、ステアリングホイールの表面温度が低い場合には、運転者が受ける温度刺激は小さくなり、運転者の覚醒状態を適切な状態に円滑に誘導できない場合があった。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、運転者の覚醒状態を適切な状態に円滑に誘導可能な運転支援装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、運転者の覚醒度を検出し、検出した運転者の覚醒度が所定範囲内にない場合に、運転者の手部に対して、運転者の覚醒度に応じた所定温度の風を送風することで、運転者に対して温度刺激を与える運転支援装置において、ステアリングホイールの表面温度を検出し、ステアリングホイールの表面温度が所定の温度範囲内にない場合には、ステアリングホイールに対して、ステアリングホイールの表面温度に応じた所定温度の風を送風することで、ステアリングホイールの表面温度が所定の温度範囲内となるように、ステアリングホイールの表面温度を調節することで、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
ステアリングホイールの表面温度が所定の温度範囲内にない場合に、ステアリングホイールに対して、ステアリングホイールの表面温度に応じた所定温度の風を送風することで、ステアリングホイールの表面温度を、運転者の覚醒状態を円滑に誘導するために適切な温度とすることができるため、運転者の覚醒状態を適切な状態に円滑に誘導することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係る運転支援装置の車両配置関係を示す図である。
【図2】第1実施形態に係る運転支援装置の構成図(その1)である。
【図3】第1実施形態に係る運転支援装置の構成図(その2)である。
【図4】第1実施形態に係る運転支援処理を示すフローチャートである。
【図5】第2実施形態に係る運転支援装置の構成図である。
【図6】第2実施形態に係る運転支援処理を示すフローチャートである。
【図7】第3実施形態に係る兼用吹き出し口を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
≪第1実施形態≫
図1は、本実施形態に係る運転支援装置の車両配置関係を示す図である。本実施形態においては、図1に示すように、車両に搭載される運転支援装置について説明する。
【0011】
図2は、第1実施形態に係る運転支援装置を示す構成図であり、運転者の覚醒度を検出するための各構成を示している。図2に示すように、本実施形態に係る運転支援装置は、運転者の覚醒度を検出するために、生体信号センサ101と、顔画像撮像カメラ102と、操舵角センサ103と、横Gセンサ104と、走行路撮像カメラ105と、処理装置110とを備える。
【0012】
生体信号センサ101は、運転者の脳波、心拍数、および皮膚電位などの運転者の生体信号の検出を行う。生体信号センサ101により検出された生体信号は、処理装置110に送信される。
【0013】
顔画像撮像カメラ102は、図1に示すように、運転者の顔面部を撮像することができるように、運転者の正面のインストルメントパネル内に設置され、運転者の顔面部を撮像する。顔画像撮像カメラ102により撮像された運転者の顔面部の画像データは、処理装置110に送信される。なお、顔画像撮像カメラ102は、画像処理機能を備える構成としてもよく、この場合、顔画像カメラ102を、時系列に沿って撮像した運転者の顔画像データに基づいて、運転者の眼の開閉状態や運転者の表情を検出し、運転者の眼の開閉判定や運転者の表情変化の判定を行い、これら判定結果を、処理装置110に送信する構成としてもよい。
【0014】
操舵角センサ103は、ステアリングの操舵角の検出を行い、検出したステアリングの操舵角データを、処理装置110に送信する。また、横Gセンサ104は、車両に発生する横方向の加速度の検出を行い、検出した横方向の加速度データを、処理装置110に送信する。
【0015】
走行路撮像カメラ105は、自車両前方の走行路を撮像し、撮像した走行路の画像データを、処理装置110に送信する。なお、走行路撮像カメラ105は、画像処理機能を備える構成としてもよく、この場合、走行路撮像カメラ105を、撮像した自車両前方の走行路の画像データに基づいて、自車両が走行する走行区分帯や前方車両を認識し、自車両と走行区分帯との距離や、自車両と前方車両との距離を算出し、算出結果を、処理装置110に送信する構成としてもよい。
【0016】
処理装置110は、運転者の覚醒度を検出するための処理を行う。具体的には、処理装置110は、生体信号センサ101、顔画像撮像カメラ102、操舵角センサ103、横Gセンサ104、および走行路撮像カメラ105から、運転者の覚醒度を検出するための各種データを取得し、取得した各種データに基づいて、運転者の覚醒度の検出を行う。
【0017】
例えば、処理装置110は、生体信号センサ101から運転者の脳波信号を取得し、運転中の運転者の脳波信号と、運転前の運転者の脳波信号とを比較することで、運転者の覚醒度を検出することができる。また、処理装置110は、顔画像撮像カメラ102から運転者の眼の開閉判定の結果を取得し、所定時間に発生した閉眼数の積算値に基づいて、運転者の覚醒度を算出することができる。さらに、処理装置110は、操舵角センサ103から操舵角データを時系列に沿って取得し、取得した操舵角の時系列データについて周波数分析を行い、操舵角の時系列データの周波数成分のうち特定周波数の積分値に基づいて、運転者の覚醒度を検出することができる。同様に、処理装置110は、横Gセンサ104から横方向の加速度データを時系列に沿って取得し、取得した横方向の加速度の時系列データについて周波数分析を行うことで、運転者の覚醒度を検出することができる。加えて、処理装置110は、走行路撮像カメラ105により撮像された自車両前方の走行路の画像データを時系列に沿って取得し、取得した画像データに基づいて、自車両と走行区分帯との距離を検出し、検出した自車両と走行区分帯との距離から、運転者の覚醒度を検出することができる。このように、本実施形態では、各種センサやカメラから取得したデータに基づいて、運転者の覚醒度を適切に検出することができる。
【0018】
そして、処理装置110は、検出した運転者の覚醒度を、AC制御装置140に送信する。これにより、AC制御装置140により、運転者の覚醒状態を適切な状態に誘導するための処理が行われることとなる。
【0019】
次に、図3を参照して、運転者の覚醒状態を誘導するための各構成について説明する。図3は、第1実施形態に係る運転支援装置を示す構成図であり、運転者の覚醒状態を誘導するための各構成を示している。図3に示すように、本実施形態に係る運転支援装置は、運転者の覚醒状態を誘導するために、室内気温計121、車外気温計122、ヒーターコア131、エバポレーター132、AC制御装置140、専用エアチャンバー151、ステアリング吹き出し口152、および運転者手部吹き出し口153を備える。なお、図3においては、各構成間における信号の流れを破線の矢印で、各構成間における空気の流れを実線の矢印で示している。
【0020】
室内気温計121は、車室内の温度を計測し、計測した車室内の温度データを、AC制御装置140に送信する。また、車外気温計122は、車外の温度を計測し、計測した車外の温度データを、AC制御装置140に送信する。
【0021】
ヒーターコア131は、エンジン冷却水を熱源として、専用チャンバー151および車室内チャンバー161に送風される空気を加熱する。また、エバポレーター132は、冷凍サイクルを構成し、熱交換により、専用チャンバー151および車室内チャンバー161に送風される空気を冷却する。なお、空気を加熱、冷却するための装置は、ヒーターコア131およびエバポレーター132に限定されず、空気を加熱、冷却可能な他の装置を用いてもよい。
【0022】
専用チャンバー151では、AC制御装置140の制御により、ヒーターコア131により加熱された空気と、エバポレーター132により冷却された空気と、外気とが混合され、所定温度の風が生成される。そして、専用チャンバー151で生成された所定温度の風は、ステアリング吹き出し口152または運転者手部吹き出し口153から送風されることとなる。
【0023】
ステアリング吹き出し口152からは、専用チャンバー151で生成された風が、ステアリングホイールに対して送風される。また、ステアリング吹き出し口152は、風が拡散して送風されるように構成されており、これにより、ステアリング吹き出し口152から送風された風が、ステアリングホイール全体に拡散して当たるようになっている。本実施形態においては、例えば、ステアリング吹き出し口152を、風を拡散して送風できるように、半円状の構造とすることができる。
【0024】
また、運転者手部吹き出し口153からは、専用チャンバー151で生成された風が、運転者の手部に対して送風される。運転者手部吹き出し口153は、図1に示すように、インストルメントパネルのうち、ステアリングホイールの中心を通る水平面よりも下部に設置されており、これにより、運転者手部吹き出し口153から送風された風が、運転者の手部の下方向から、運転者の手部に向かって集中して送風されるようになっている。そのため、運転者手部吹き出し口153から送風される風は、主として、末梢自律神経が集まる運転者の手部の掌側に当たることとなり、運転者の末梢自律神経を刺激し、運転者の覚醒状態を円滑に誘導することができるようになっている。
【0025】
なお、本実施形態においては、後述するAC制御装置140の制御により、ステアリング吹き出し口152からの送風と、運転者手部吹き出し口153からの送風とが、切り替え可能となっている。すなわち、ステアリング吹き出し口152からステアリングホイールに対して送風が行われている際には、運転者手部吹き出し口153から運転者の手部に対して送風が行われないようになっており、また、運転者手部吹き出し口153から運転者の手部に対して送風が行われている際には、ステアリング吹き出し口152からステアリングホイールに対して送風が行われないようになっている。
【0026】
AC制御装置140は、運転者の覚醒状態を適切な状態に誘導するために、処理装置110から運転者の覚醒度を取得し、運転者の覚醒度に応じた温度の風を、運転者の手部に対して送風する。
【0027】
具体的には、AC制御装置140は、運転者の覚醒度が低い場合には、専用エアチャンバー151において、ヒーターコア131で加熱された空気と、エバポレーター132で冷却された空気と、外気とを混合して、例えば、皮膚温感感覚にて冷感を刺激する温度域のうち最も低温である10℃の冷風を生成し、生成した冷風を、運転者手部吹き出し口153から、運転者の手部に集中して送風する。また、AC制御部140は、運転者の覚醒度が高い場合には、ヒーターコア131で加熱された空気と、エバポレーター132で冷却された空気と、外気とを混合して、例えば、皮膚温熱感覚にて最も温感を刺激する40℃の温風を生成し、生成した温風を、運転者手部吹き出し口153から、運転者の手部に集中して送風する。
【0028】
また、AC制御装置140は、運転者の覚醒状態を適切な状態に円滑に誘導するために、ステアリングホイールの表面温度の温度調節を行う。
【0029】
具体的には、AC制御装置140は、まず、室内気温計121により計測された車室内の温度と、車外気温計122により計測された車外の温度とに基づいて、ステアリングホイールの表面温度を推定する。そして、AC制御装置140は、推定の結果に基づいて、ステアリングホイールの表面温度が、運転者の覚醒状態を円滑に誘導することができる温度範囲、例えば、温熱生理学的に中立温である33℃を基準とした28℃〜38℃の温度範囲内となるように、ステアリングホイールの表面温度に応じた温度の風を生成する。そして、AC制御装置140は、生成した風を、ステアリング吹き出し口152から、ステアリングホイールに対して送風する。
【0030】
さらに、本実施形態に係る運転支援装置は、図3に示すように、車室内の調温のために、車室用エアチャンバー161と複数の室内用吹き出し口162〜162とを備えている。車室用エアチャンバー161および複数の室内用吹き出し口162〜162も、AC制御装置140により制御され、車室内を調温するために、車室用エアチャンバー161において、ヒーターコア131で加熱された空気と、エバポレーター132で冷却された空気と、外気とが混合され、混合された空気が、各室内用吹き出し口162〜162から送風されるようになっている。なお、図3においては、3つの室内用吹き出し口162〜162を例示しているが、その数は、特に限定されるものではない。
【0031】
このように、本実施形態においては、専用エアチャンバー151と、室内用エアチャンバー161とが別に設けられている。そのため、運転者の覚醒状態を誘導するための風を、車室内の温調する車室空調とは異なる温度の風として、ステアリングホイールおよび運転者の手部に対して送風することができるため、運転者の覚醒状態をより円滑に誘導することができる。
【0032】
続いて、図4を参照して、第1実施形態の運転支援処理について説明する。図4は、第1実施形態に係る運転支援処理を示すフローチャートである。
【0033】
まず、ステップS101では、処理装置110により、運転者の覚醒度を判定するための判定基準範囲の設定が行われる。
【0034】
そして、ステップS102では、AC制御装置140により、室内気温計121により計測された車室内の温度データと、車外気温計122により計測された車外の温度データとが取得され、取得された車室内の温度データと車外の温度データとに基づいて、ステアリングホイールの表面温度が推定される。例えば、AC制御装置140は、取得された車室内の温度と車外の温度との差に、所定の係数を乗じることで、ステアリングホイールの表面温度を推定することができる。
【0035】
ステップS103では、AC制御装置140により、ステップS102で推定されたステアリングホイールの表面温度が、運転者の覚醒状態を円滑に誘導することができる所定の温度範囲内にあるか否かの判定が行われる。例えば、AC制御装置140は、ステアリングホイールの表面温度が、温熱生理学的に中立温である33℃を基準とした28℃〜38℃の温度範囲内にあるか否かを判定し、ステアリングホイールの表面温度が28℃〜38℃の温度範囲内にある場合には、ステアリングホイールの表面温度は、運転者の覚醒状態を円滑に誘導することができる所定の温度範囲内にあると判定することができる。ステアリングホイールの表面温度が、所定の温度範囲内にないと判定された場合はステップS104に進み、一方、ステアリングホイールの表面温度が、所定の温度範囲内にあると判定された場合はステップS105に進む。
【0036】
ステップS104では、AC制御装置140により、ステアリングホイールの表面温度を、運転者の覚醒状態を円滑に誘導することができる温度とするために、ステアリングホイールの表面温度の温度調節が行われる。例えば、AC制御装置140は、ステアリングホイールの表面温度が所定の温度範囲に満たない場合は、ステアリングホイールの表面温度に応じた温風を生成し、生成した温風を、ステアリング吹き出し口152から、ステアリングホイールに対して送風する。また、AC制御装置140は、ステアリングホイールの表面温度が所定の温度範囲を超える場合は、ステアリングホイールの表面温度に応じた冷風を生成し、生成した冷風を、ステアリング吹き出し口152から、ステアリングホイールに対して送風する。これにより、ステアリングホイールの表面温度を、運転者の覚醒状態を円滑に誘導するための温度とすることができる。
【0037】
ステップS105では、処理装置110により、運転者の覚醒度の検出が行われる。例えば、処理装置110は、操舵角センサ103から操舵角データを時系列に沿って取得し、取得した操舵角の時系列データについて周波数分析を行い、操舵角の時系列データの周波数成分のうち特定周波数の積分値に基づいて、運転者の覚醒度を検出することができる。
【0038】
ステップS106では、処理装置110により、ステップS105で検出された運転者の覚醒度が、ステップS101で設定された判定基準範囲内にあるか否かの判定が行われる。運転者の覚醒度が判定基準範囲内にあると判定された場合は、運転者の覚醒状態は適切な状態にあるものと判断され、ステップS110に進む。一方、運転者の覚醒度が判定基準範囲内にないと判定された場合は、運転者の覚醒状態は適切な状態ではないものと判断され、ステップS107に進む。
【0039】
ステップS107では、運転者の覚醒度が基準範囲内にないと判定されているため、処理装置110により、運転者の覚醒度が判定基準範囲を超えているか否かの判定が行われる。運転者の覚醒度が判定基準範囲を超えている場合は、ステップS109に進み、一方、運転者の覚醒度が判定基準範囲に満たない場合は、ステップS108に進む。
【0040】
ステップS108では、運転者の覚醒度が判定基準範囲に満たないため、運転者の覚醒状態は低い状態であり、例えば、運転者は眠い状態にあるものと考えられる。そこで、ステップS108では、AC制御装置140により、低くなっている運転者の覚醒状態を適切な状態に誘導するために、運転者手部冷却処理が行われる。具体的には、AC制御装置140は、ヒーターコア131、エバポレーター132、および専用チャンバー151を制御して、例えば、皮膚温感感覚にて冷感を刺激する温度のうち最も低温である10℃の冷風を生成し、生成した冷風を、運転者手部吹き出し口153を介して、運転者の手部に集中して送風する。これにより、運転者の手部が冷風により刺激され、低くなっている運転者の覚醒状態を適切な状態に誘導することができる。
【0041】
一方、ステップS109では、運転者の覚醒度が判定基準範囲を超えているため、運転者の覚醒状態は高い状態であり、例えば、運転者はイライラした状態にあるものと考えられる。そこで、ステップS109では、AC制御装置140により、高くなっている運転者の覚醒状態を適切な状態に誘導するために、運転者手部温熱処理が行われる。具体的には、AC制御装置140は、ヒーターコア131、エバポレーター132、および専用チャンバー151を制御して、例えば、皮膚温熱感覚のうち最も温感を刺激する40℃の温風を生成し、生成した温風を、運転者手部吹き出し口153を介して、運転者の手部に集中して送風する。これにより、運転者の手部が温風により刺激され、高くなっている運転者の覚醒状態を適切な状態に誘導することができる。
【0042】
そして、ステップS110では、AC制御装置140により、イグニッションがオフであるか否かの判定が行われる。イグニッションがオンであると判定された場合は、ステップS105に戻り、再度、運転者の覚醒度の検出が行われる。一方、イグニッションがオフであると判定された場合は、この運転支援処理を終了する。
【0043】
以上のように、第1実施形態に係る運転支援装置は、ステアリングホイールの表面温度が、運転者の覚醒状態を円滑に誘導することができる温度ではない場合に、ステアリングホイールに対して、ステアリングホイールの表面温度に応じた所定温度の風を送風することで、ステアリングホイールの表面温度を、運転者の覚醒状態を円滑に誘導することができる温度となるように調節する。これにより、第1実施形態によれば、運転者の覚醒状態を誘導する際に、ステアリングホイールの表面温度が、運転者の覚醒状態を円滑に誘導することができる温度となっているため、運転者の覚醒状態を適切な状態に円滑に誘導することができる。また、本実施形態では、ステアリングホイールの表面温度を、運転者の覚醒状態を円滑に誘導することができる温度に調節した後に、運転者の覚醒状態を誘導することため、AC制御装置140による送風効率を高めることもできる。
【0044】
さらに、第1実施形態においては、ステアリング吹き出し口152から、ステアリングホイールの表面温度を調節するための風が、ステアリングホイール全体に対して、拡散して送風されるため、ステアリングホイールの表面温度を素早く調節することができる。さらに、ステアリング吹き出し口152から送風された風が、ステアリングホイール全体に当たることで、運転者の手部に当たる風の風量を相対的に少なくすることができ、ステアリングホイールの表面温度を調節する際に、運転者の手部に風が当たることによる運転者の不快感を抑えることができる。また、運転者手部吹き出し口153からは、運転者の手部に対して集中して送風が行われるため、運転者の手部に集中して風が当たり、運転者の覚醒状態をより円滑に誘導することができる。
【0045】
加えて、第1実施形態では、室内気温計121および車外気温計122という、車室内の温調を制御するための既存の構成を用いて、ステアリングホイールの表面温度を推定することで、ステアリングホイールの表面温度を計測するための温度センサを新たに追加するコストを軽減することができる。
【0046】
≪第2実施形態≫
次に、図5を用いて、第2実施形態に係る運転支援装置について説明する。図5は、第2実施形態に係る運転支援装置の構成図である。第2実施形態に係る運転支援装置は、以下に説明する点以外は、第1実施形態に係る運転支援装置と同様の構成を有し、第1実施形態に係る運転支援装置と同様の動作を行う。なお、図5においても、図3と同様に、各構成間における信号の流れを破線の矢印で、各構成間における空気の流れを実線の矢印で示している。
【0047】
図5に示すように、第2実施形態に係る運転支援装置は、第1実施形態のステアリング吹き出し口152および運転者手部吹き出し口153に代えて、兼用吹き出し口250を備え、第1実施形態の室内気温計121および車外気温計122に代えて、ステアリング温度計220を備えている。
【0048】
兼用吹き出し口250は、風の送風方向が変化可能となっており、これにより、ステアリングホイールに対しても、運転者の手部に対しても、送風が可能となっている。例えば、兼用吹き出し口250に、風の送風方向を調節するためのグリルを設け、AC制御装置140により、このグリルのルーバを制御することで、兼用吹き出し口250から送風される風の送風方向を変化させることができる。この場合、グリルのルーバを、運転者の手部に向けることにより、運転者の手部に対して集中して風を送風することができ、また、グリルのルーバを、左右上下にスイングすることで、ステアリングホイール全体に、拡散して風を送風することができる。
【0049】
ステアリング温度計220は、ステアリングホイール上に設置され、ステアリングホイールの表面温度を直接に計測する。ステアリング温度計221により計測されたステアリングホイールの表面温度データは、AC制御装置140に送信される。
【0050】
次に、図6を参照して、第2実施形態に係る運転支援処理について説明する。図6は、第2実施形態に係る運転支援処理を示すフローチャートである。
【0051】
ステップS201では、第1実施形態のステップS101と同様に、運転者の覚醒度を判定するための判定基準範囲の設定が行われる。
【0052】
そして、ステップS202では、ステアリング温度計220により、ステアリングホイールの表面温度の計測が行われ、計測されたステアリングホイールの表面温度のデータが、AC制御装置140に送信される。
【0053】
ステップS203では、第1実施形態のステップS103と同様に、AC制御装置140により、ステップS202で計測されたステアリングホイールの表面温度が、所定の温度範囲内にあるか否かの判定が行われ、ステアリングホイールの表面温度が所定の温度範囲内にないと判定された場合は、ステップS204に進み、一方、ステアリングホイールの表面温度が所定の温度範囲内にあると判定された場合はステップS205に進む。
【0054】
ステップS204では、ステアリングホイールの表面温度が所定の温度範囲内にないと判定されているため、AC制御装置140により、ステアリングホイールの表面温度を調節するための処理が行われる。第2実施形態において、AC制御装置140は、兼用吹き出し口220を制御して、兼用吹き出し口220から送風される風の送風方向を変化させることで、ステアリングホイール全体に、ステアリングホイールの表面温度に応じた温度の風を、拡散して送風する。これにより、ステアリングホイールの表面温度を、所定の温度範囲内とすることができる。
【0055】
続くステップS205〜S207では、第1実施形態のステップS105〜S107と同様に、運転者の覚醒度が検出され(ステップS205)、検出された運転者の覚醒度が判定基準範囲内にあるか判定され(ステップS206)、検出された運転者の覚醒度が判定基準範囲内にない場合には(ステップS206=NO)、運転者の覚醒度が判定基準範囲を超えるか否かの判定が行わる(ステップS207)。運転者の覚醒度が判定基準範囲を超える場合は(ステップS207=YES)、ステップS209に進み、運転者の覚醒度が判定基準範囲に満たない場合は(ステップS207=NO)、ステップS208に進む。
【0056】
ステップS208では、運転者の覚醒度が判定基準範囲に満たないため、運転者の覚醒状態は低い状態であり、例えば、運転者は眠い状態にあるものと考えられる。そこで、ステップS208では、AC制御装置140により、低くなっている運転者の覚醒状態を適切な状態に誘導するために、運転者手部冷却処理が行われる。第2実施形態において、AC制御装置140は、兼用吹き出し口250を制御して、運転者の手部に対して集中して風が送風されるように、兼用吹き出し口250から送風される風の送風方向を調節し、例えば、皮膚温感感覚にて冷感を刺激する温度のうち最も低温である10℃の冷風を、運転者の手部に対して、集中して送風する。これにより、運転者の手部が冷風により刺激され、低くなっている運転者の覚醒状態を適切な状態に誘導することができる。
【0057】
一方、ステップS209では、運転者の覚醒度が判定基準範囲を超えているため、運転者の覚醒状態は高い状態であり、例えば、運転者はイライラした状態にあるものと考えられる。そこで、ステップS209では、AC制御装置140により、高くなっている運転者の覚醒状態を適切な状態に誘導するために、運転者手部温熱処理が行われる。この場合も、ステップS208と同様に、AC制御装置140は、兼用吹き出し口250を制御して、運転者の手部に対して集中して風が送風されるように、兼用吹き出し口250から送風される風の送風方向を調節する。そして、AC制御装置140は、例えば、皮膚温熱感覚のうち最も温感を刺激する40℃の温風を、運転者の手部に対して、集中して送風する。これにより、運転者の手部が温風により刺激され、高くなっている運転者の覚醒状態を適切な状態に誘導することができる。
【0058】
そして、ステップS210では、イグニッションがオフとなっているか否か判断され、イグニッションがオンであると判断された場合は、ステップS202に戻り、ステアリングの表面温度の検出が行われる。一方、イグニッションがオフであると判断された場合は、この運転支援処理を終了する。
【0059】
以上のように、第2実施形態に係る運転支援装置は、兼用吹き出し口250により、風の送風方向を変化させて、ステアリングホイールおよび運転者の手部に対して送風を行う。このように、第2実施形態では、兼用吹き出し口250のみにより、ステアリングホイールおよび運転者の手部に対して送風を行うことができるため、第1実施形態の効果に加えて、装置全体の小型化を図ることができる。さらに、第2実施形態では、ステアリング温度計220により、ステアリングホイールの表面温度を直接に計測することができるため、ステアリングホイールの表面温度をより正確に計測することもできる。
【0060】
≪第3実施形態≫
次に、第3実施形態に係る運転支援装置について説明する。第3実施形態に係る運転支援装置は、兼用吹き出し口320が、第2実施形態に係る兼用吹き出し口220と異なる以外は、第2実施形態に係る運転支援装置と同様の構成を有し、第2実施形態に係る運転支援装置と同様の動作を行う。以下において、図7を参照して、第3実施形態に係る兼用吹き出し口320について説明する。なお、図7は、兼用吹き出し口320を示す断面図である。
【0061】
図7(A)に示すように、兼用吹き出し口320には、ステアリングホイールに対して送風を行うためのステアリング吹き出し口352と、運転者の手部に対して送風を行うための運転者手部吹き出し口353とが形成されている。また、運転者手部吹き出し口353には、電動ダンパ354が設けられている。この電動ダンパ354は、AC制御装置140によりその動作が制御され、運転者手部吹き出し口353を開閉することが可能となっている。
【0062】
具体的には、電動ダンパ354は、運転者の手部に対して送風を行う際に、運転者手部吹き出し口353を開放するように制御され、これにより、図7(B)に示すように、運転者手部吹き出し口353から、運転者の手部に対して風が送風されることとなる。なお、図7(B)においては、風の送風方向を白抜きの矢印で示している(図7(C)においても同様。)。特に、第3実施形態に係る兼用吹き出し口320では、図7(B)に示すように、ステアリング吹き出し口352の導入部355が、所定温度の風の送風方向(白抜きの矢印の方向)とは反対方向から風が導入されるように形成されているため、運転者の手部に対して送風が行われている際に、ステアリング吹き出し口352からの送風が行われないようになっている。
【0063】
また、電動ダンパ354は、ステアリングホイールに対して送風を行う際には、図7(C)に示すように、ステアリング吹き出し口352を塞ぐように制御され、これにより、風が、ステアリング吹き出し口352の導入部355へと導かれ、ステアリング吹き出し口352から送風が行われることとなる。
【0064】
以上のように、第3実施形態に係る運転支援装置は、兼用吹き出し口320を備え、兼用吹き出し口320の電動ダンパ354を制御することで、風が送風される吹き出し口を、ステアリング吹き出し口352と運転者手部吹き出し口353とで切り替え可能としている。これにより、第3実施形態においては、第2実施形態の効果に加えて、電動ダンパ354を制御することだけで、スタリングホイールに対する送風と、運転者の手部に対する送風とを切り替えることができ、運転者の覚醒状態の誘導およびステアリングホイールの表面温度の温度調節をより適切に行うことができる。
【0065】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0066】
例えば、上述した実施形態では、運転者の覚醒度を検出するために、生体信号センサ101、顔画像撮像カメラ102、操舵角センサ103、横Gセンサ104、および走行路撮像カメラ105を備える構成としていたが、これに限定されるものではなく、例えば、アクセルペダルの踏み込み量を検出するアクセルセンサや、ブレーキペダルの踏み込み量を検出するブレーキセンサを用いて、運転者の覚醒度を検出する構成としてもよい。また、上述した実施形態においては、生体信号センサ101、顔画像撮像カメラ102、操舵角センサ103、横Gセンサ104、および走行路撮像カメラ105を備える構成を例示したが、これらの装置を全て備える構成に限定されるものではなく、これらの装置のうち、いずれか1つ、または2以上の組み合わせを任意に選択してもよい。
【0067】
また、上述した実施形態においては、運転者の手部を撮像するカメラなど、運転者の手部を検出するための運転者手部検出装置をさらに備える構成としてもよい。この場合、AC制御装置140は、運転者手部検出装置により検出された運転者の手部に、集中して風を当てることができ、運転者の覚醒状態をより円滑に誘導することができる。
【0068】
なお、上述した実施形態の処理装置110は、本発明の覚醒度検出手段に、AC制御装置140は、本発明の温度刺激付与手段、温度検出手段、およびステアリング温度調節手段にそれぞれ相当する。
【符号の説明】
【0069】
101…生体信号センサ
102…顔画像撮像カメラ
103…操舵角センサ
104…横Gセンサ
105…走行路撮像カメラ
110…処理装置
121…室内気温計
122…車外気温計
131…ヒーターコア
132…エバポレーター
140…AC制御装置
151…専用エアチャンバー
152…ステアリング吹き出し口
153…運転者手部吹き出し口
154…電動ダンパ
161…車室用エアチャンバー
162…車室用吹き出し口
220…ステアリング温度計
250…兼用吹き出し口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の覚醒度を検出する覚醒度検出手段と、
前記運転者の覚醒度が所定範囲内にない場合に、運転者の手部に対して、前記運転者の覚醒度に応じた所定温度の風を送風することで、前記運転者の覚醒度が前記所定範囲内となるように、運転者に対して温度刺激を与える温度刺激付与手段と、
ステアリングホイールの表面温度を検出する温度検出手段と、
前記ステアリングホイールの表面温度が所定の温度範囲内にあるか否かを判断し、前記ステアリングホイールの表面温度が所定の温度範囲内にない場合に、ステアリングホイールに対して、ステアリングホイールの表面温度に応じた所定温度の風を送風することで、ステアリングホイールの表面温度が前記所定の温度範囲内となるように、ステアリングホイールの表面温度を調節するステアリング温度調節手段と、を備えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置であって、
前記ステアリング温度調節手段は、前記ステアリングホイールの表面温度が前記所定の温度範囲内にない場合に、前記温度刺激付与手段による運転者の手部に対する送風を禁止させ、ステアリングホイールに対する送風を行うことを特徴とする運転支援装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の運転支援装置であって、
前記覚醒度検出手段は、運転者の生体信号、運転者の顔画像、運転者による運転操作、および自車両の走行状態のうち、少なくとも1つに基づいて、前記運転者の覚醒度を検出することを特徴とする運転支援装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の運転支援装置であって、
前記温度検出手段は、車両外気温と車室内気温との温度差に基づいて、前記ステアリングホイールの表面温度を検出することを特徴とする運転支援装置。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載の運転支援装置であって、
前記温度検出手段は、ステアリングホイールの表面温度を直接計測することを特徴とする運転支援装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の運転支援装置であって、
前記温度刺激付与手段は、前記ステアリング温度調節手段によりステアリングホイールに対する送風が行われている間は、運転者の手部に対する送風を行わないことを特徴とする運転支援装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の運転支援装置であって、
前記温度刺激付与手段および前記ステアリング温度調節手段は、車室内を調温するための車室空調とは異なる温度の風を送風可能となっていることを特徴とする運転支援装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の運転支援装置であって、
前記ステアリング温度調節手段は、前記ステアリングホイール全体に風が当たるように、ステアリングホイールに対して、ステアリングホイールの表面温度に応じた所定温度の風を、拡散して送風することを特徴とする運転支援装置。
【請求項9】
請求項8に記載の運転支援装置であって、
前記ステアリング温度調節手段は、風を送風する方向を変化させることにより、ステアリングホイールに対して、ステアリングホイールの表面温度に応じた所定温度の風を、拡散して送風することを特徴とする運転支援装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の運転支援装置であって、
前記温度刺激付与手段は、運転者の手部に集中して風が当たるように、運転者の手部に対して、前記運転者の覚醒度に応じた所定温度の風を、集中して送風することを特徴とする運転支援装置。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の運転支援装置であって、
運転者の手部を検出する運転者手部検出手段をさらに備え、
前記温度刺激付与手段は、前記運転者手部検出手段により検出された運転者の手部に対して、前記運転者の覚醒度に応じた所定温度の風が送風されるように、風を送風する方向を調節することを特徴とする運転支援装置。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれかに記載の運転支援装置であって、
前記温度刺激付与手段は、ステアリングホイールの中心を通る水平面よりも下部に形成された吹き出し口を介して、運転者の手部の下方向から、運転者の手部に向けて送風を行うことで、主として、運転者の手部の掌側に温度刺激を与えることを特徴とする運転支援装置。
【請求項13】
運転者の覚醒度を検出し、検出した前記運転者の覚醒度が所定範囲内にない場合に、運転者の手部に対して、前記運転者の覚醒度に応じた所定温度の風を送風することで、前記運転者の覚醒度が所定範囲内となるように、運転者に対して温度刺激を与える運転支援方法であって、
ステアリングホイールの表面温度を検出し、前記ステアリングホイールの表面温度が、所定の温度範囲内にない場合には、ステアリングホイールに対して、ステアリングホイールの表面温度に応じた所定温度の風を送風することで、ステアリングホイールの表面温度が前記所定の温度範囲内となるように、ステアリングホイールの表面温度を調節することを特徴とする運転支援方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−128787(P2012−128787A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−281717(P2010−281717)
【出願日】平成22年12月17日(2010.12.17)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】