説明

過給機

【課題】ウェイストゲートバルブの動作性能が向上でき、またアクチュエータ及びアクチュエータチューブが劣化しにくい過給機を提供する。
【解決手段】コンプレッサハウジング7内の圧縮空気A2の圧力を検出してタービンハウジング8内の排気ガス流路をバイパス可能に構成されたウェイストゲートバルブと、該ウェイストゲートバルブを可動させるアクチュエータ23とを備えた過給機1において、前記アクチュエータ23が前記タービンハウジング8近傍に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェイストゲートバルブとウェイストゲートバルブを可動させるアクチュエータとを備えた過給機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
過給機は、ウェイストゲートバルブを開閉し、バイパス流路を形成することで、タービン本体への排気ガス供給量を調整している。このウェイストゲートバルブを開閉させるアクチュエータは、コンプレッサハウジング側にブラケットを介して搭載し、アクチュエータロッドを可動させることでウェイストゲートバルブの開閉を行っている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−351089号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のアクチュエータをコンプレッサハウジング側に搭載すると、ウェイストゲートバルブまでの距離が長くなるため、アクチュエータロッドが長くなり、ウェイストゲートバルブの動作性能が悪くなる。また、アクチュエータをタービンハウジングの近傍に搭載すると、アクチュエータと、コンプレッサハウジングとアクチュエータとの間に接続されているアクチュエータチューブとが、周囲の熱の影響により早期に劣化する虞がある。
【0004】
そこで、本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、ウェイストゲートバルブの動作性能が向上でき、またアクチュエータ及びアクチュエータチューブが劣化しにくい過給機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、コンプレッサハウジング内の圧縮空気の圧力を検出してタービンハウジング内の排気ガス流路をバイパス可能に構成されたウェイストゲートバルブと、該ウェイストゲートバルブを可動させるアクチュエータとを備えた過給機において、前記アクチュエータが前記タービンハウジング近傍に配置されていることを特徴とする。
このように構成することで、アクチュエータロッドを短くすることができる。
【0006】
請求項2に記載した発明は、前記アクチュエータが、過給機本体の回転軸の軸位置を境にして、前記タービンハウジング内へ排気ガスを供給する排気ガス取入口の反対側に配置されていることを特徴とする。
このように構成することで、アクチュエータの周囲温度を低く抑えることができる。
【0007】
請求項3に記載した発明は、前記アクチュエータが、前記ウェイストゲートバルブの可動軸の軸位置を境にして、前記排気ガス取入口の反対側に配置されていることを特徴とする。
このように構成することで、アクチュエータの周囲温度を低く抑えることができる。
【0008】
請求項4に記載した発明は、前記アクチュエータと前記タービンハウジングとの間に遮熱板が配置されていることを特徴とする。
このように構成することで、アクチュエータの温度上昇を抑えることができる。
【0009】
請求項5に記載した発明は、前記アクチュエータと前記コンプレッサハウジングとの間に接続されたアクチュエータチューブが、少なくとも前記タービンハウジング近傍の領域ではアクチュエータチューブ本体が樹脂からなり、かつ該アクチュエータチューブ本体の周囲に金属メッシュが巻回されていることを特徴とする。
このように構成することで、アクチュエータチューブの耐熱性が向上する。
【0010】
請求項6に記載した発明は、前記アクチュエータと前記アクチュエータチューブとが、カシメ又は溶接により接合されていることを特徴とする。
このように構成することで、アクチュエータとアクチュエータチューブとの接続部が高温環境下でも劣化しにくくなると共に、耐振動性を向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載した発明によれば、アクチュエータロッドを短くすることができるため、ウェイストゲートバルブの動作性能を向上することができる効果がある。
【0012】
請求項2及び請求項3に記載した発明によれば、アクチュエータの周囲温度を低く抑えることができるため、アクチュエータが劣化しにくくなる効果がある。
【0013】
請求項4に記載した発明によれば、アクチュエータの温度上昇を抑えることができるため、アクチュエータが劣化しにくくなる効果がある。
【0014】
請求項5に記載した発明によれば、アクチュエータチューブの耐熱性が向上するため、アクチュエータチューブが劣化しにくくなる効果がある。
【0015】
請求項6に記載した発明によれば、アクチュエータとアクチュエータチューブとの接続部が高温環境下でも劣化しにくくなると共に耐振動性を向上することができるため、アクチュエータに確実に圧縮空気を供給することができ、ウェイストゲートバルブを確実に動作させることができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図4に示すように、過給機1は、コンプレッサ2とタービン3とを備えており、コンプレッサ2とタービン3との間には回転軸部材4が設けられ、回転軸部材4の一端がコンプレッサ本体5に、他端がタービン本体6に接続されている。コンプレッサ本体5の周囲にはコンプレッサハウジング7が形成され、タービン本体6の周囲にはタービンハウジング8が形成され、回転軸部材4は、軸受ハウジング9において軸受により回転自在に設置されている。
【0017】
コンプレッサハウジング7内のコンプレッサ本体5の回転軸と直交する外面には、空気A1を取り込む給気口11が略円形に形成されている。また、コンプレッサハウジング7内のコンプレッサ本体5の回転軸と平行する外面には、圧縮空気A2を吹き出す吹出口13が略円形に形成されている。更に、コンプレッサハウジング7の側面には、圧縮空気A2を取り出すことができる取出口15が略円形に形成されている。
【0018】
タービンハウジング8内のタービン本体6の回転軸と平行する外面には、エンジン17から排出された排気ガスA3を取り込む排気ガス取入口19が形成されている。また、タービンハウジング8内のタービン本体6の回転軸と直交する外面には、排気ガス排出口21が略円形に形成されている。
【0019】
タービンハウジング8の下部で、回転軸部材4の軸位置を境にして、排気ガス取入口19の反対側で、ウェイストゲートバルブ27の可動軸の軸位置を境にして、排気ガス取入口19の反対側には、ブラケット22を介してアクチュエータ23が設けられている。ここで、タービンハウジング8とアクチュエータ23との間には、遮熱板25が配置されている。遮熱板25は、断面が略半円形であり、アクチュエータ23をタービンハウジング8の熱から保護するように構成されている。また、タービン3の内部には、コンプレッサ2のオーバースピードを防止するためのウェイストゲートバルブ27が備えられている。アクチュエータ23とウェイストゲートバルブ27とは、アクチュエータロッド29により接続されている。更に、アクチュエータ23とコンプレッサ2の取出口15とは、アクチュエータチューブ31により接続されている。
【0020】
アクチュエータ23の側面には、アクチュエータチューブ31を係合可能な取入口33が形成されている。ここで、アクチュエータ23とアクチュエータチューブ31とは、取入口33においてカシメ又は溶接にて物理的に接続されている。また、アクチュエータ23の内部には、コンプレッサ2により生成された圧縮空気A2の圧力により作動するダイヤフラムシリンダ35を備えている。ダイヤフラムシリンダ35は、ゴム製であり、アクチュエータロッド29に接合されている。また、アクチュエータ23の内部には、ばね等からなる付勢部材37がダイヤフラムシリンダ35を付勢可能に設けられている。
【0021】
アクチュエータロッド29のウェイストゲートバルブ27が接続される側の先端には、リンク部材61が接続されている。リンク部材61とアクチュエータロッド29の先端とは、リンク部材61の一端部側で接続されており、リンク部材61の他端部側にはロッド部材62が接続されている。ロッド部材62は、アクチュエータロッド29が作動すると、リンク部材61を介して回動するように構成されている。ロッド部材62の先端には、ウェイストゲートバルブ27が接続されている。ウェイストゲートバルブ27は、タービン3の上流側排気ガス流路39と下流側排気ガス流路41との間に設けられ、アクチュエータロッド29が作動するとロッド部材62が可動軸となり、上流側排気ガス流路39と下流側排気ガス流路41とをバイパスする貫通孔43を開閉可能に構成されている。ここで、エンジン17が停止している場合等圧力がかかっていないときは、ウェイストゲートバルブ27は付勢部材37により閉状態になるように構成されている。
【0022】
図5に示すように、アクチュエータチューブ31は、少なくともタービン3近傍の高温環境下においては樹脂からなるアクチュエータチューブ本体45と、アクチュエータチューブ本体の周囲に金属メッシュ47を巻回した構成となっている。ここで、アクチュエータチューブ31はアクチュエータ23の取入口33に外包するように挿入し、更にアクチュエータチューブ31と取入口33との外周を覆うように形成された金属リング48が設けられている。この金属リング48において、カシメ又は溶接によりアクチュエータチューブ31と取入口33とが接続されるように構成されている。また、温度の影響を受けない領域においては、アクチュエータチューブ31は、ゴムチューブ49で構成されている。アクチュエータチューブ31の金属メッシュ47が巻回された部分とゴムチューブ49との境界は、クリップ51で接続可能に構成されている。
【0023】
図6に示すように、遮熱板25は、アクチュエータ23を周囲の高温環境下から保護できるように、アクチュエータ23の形状に合わせて略半円形状の断面をし、アクチュエータロッド29が設けられる面は、アクチュエータロッド29が挿入される挿入孔53と、ブラケット22と遮熱板25とを接合するためのボルト孔55とが形成されている以外は塞がれている。アクチュエータロッド29が設けられる面と反対側の面は、開口されている。
【0024】
次に、作用について説明する。
過給機1は、エンジン17から排出された高温高圧の排気ガスA3によりタービン3を回転駆動し、この回転により回転軸部材4を介して、コンプレッサ2が回転駆動する。コンプレッサ2が回転駆動することで、給気口11から供給される空気A1をコンプレッサ2で圧縮し、圧縮空気A2を得ることができる。圧縮空気A2は吹出口13を通過してエンジン17へ供給される。
【0025】
圧縮空気A2は、エンジン17内において燃料の燃焼に供される。この燃焼によってエンジン17より高温高圧の排気ガスA3が排出され、排気ガス取入口19から過給機1内へ取込まれる。
排気ガスA3は、タービン3内の上流側排気ガス流路39を経由して、タービン本体6へ導かれると、タービン本体6が回転するという動作を継続する。
【0026】
ここで、全ての排気ガスA3をタービン本体6へ導くと、タービン本体6が排気ガスA3の流量に合わせて回転し、それに合わせて必要以上にコンプレッサ本体5が回転し、オーバースピードとなることで必要以上に高圧力の圧縮空気A2が得られる場合がある。したがって、その状況を回避するためにウェイストゲートバルブ27を開閉させることで排気ガスA3を下流側排気ガス流路41にバイパスさせる。下流側排気ガス流路41にバイパスさせることで、タービン本体6へ供給する排気ガスA3の流量が減少し、タービン本体6の回転速度を抑えることになる。
【0027】
次に、ウェイストゲートバルブ27の動作を説明する。ウェイストゲートバルブ27は、エンジン停止時等の圧力がかかっていない状況では、アクチュエータ23内の付勢部材37がウェイストゲートバルブ27を貫通孔43に押し付ける方向に付勢しているため、貫通孔43はウェイストゲートバルブ27により閉止されている。
圧縮空気A2がコンプレッサハウジング7の取出口15からアクチュエータチューブ31内を通過してアクチュエータ23へと導かれる。アクチュエータ23内では、ダイヤフラムシリンダ35に圧縮空気A2の圧力が加わることでアクチュエータロッド29を押し出す方向に可動する。アクチュエータ23の内部がある一定の圧力を超えると、アクチュエータロッド29が可動し、その先端に設けられたリンク部材61を介して、ロッド部材62が回動する。ロッド部材62が回動すると、ロッド部材62を可動軸としてその先端に接続されたウェイストゲートバルブ27が貫通孔43から離間する方向に移動し、上流側排気ガス流路39と下流側排気ガス流路41との間が貫通孔43を介して連通され、排気ガスA3の一部がタービン本体6の方へ行かずに直接排気ガス排出口21へと導かれる。その結果、タービン3の回転速度を抑えることができ、あわせてコンプレッサ2の回転速度を抑え、オーバースピードになる状況を回避することができる。
【0028】
ここで、本実施形態ではアクチュエータ23がタービンハウジング8の近傍に備えられている。これにより、アクチュエータロッド29の長さが短くなるため、調整が容易になり、ウェイストゲートバルブ27の動作性能が向上する。また、アクチュエータロッド29が短くなることで熱による伸縮の影響も少なくなる効果がある。したがって、信頼性を向上することができる。
また、アクチュエータ23とタービンハウジング8との間には遮熱板25が配置されている。これにより、タービンハウジング8の排気ガス取入口19付近では約750℃まで温度が上昇するが、その影響を直接受けることなくダイヤフラムシリンダ35及び付勢部材37を含むアクチュエータ23は正常に作動することができる。
【0029】
更に、アクチュエータチューブ31のタービンハウジング8の近傍の領域は、アクチュエータチューブ本体45が樹脂からなり、かつアクチュエータチューブ本体45の周囲を金属メッシュ47で巻回している。これにより、タービンハウジング8の周囲の高温環境下でもアクチュエータチューブ31の耐熱性が向上しており、劣化しにくくなる。
そして、アクチュエータ23とアクチュエータチューブ31とがカシメ又は溶接により接続されている。これにより、熱環境や振動等に対する耐久性が向上する。
【0030】
尚、本発明は上述した実施形態に限られるものではなく、以下の態様を用いてもよい。
本実施形態では、遮熱板が断面半円形のものを用いた説明をしたが、遮熱できるものであれば形状は拘らない。また、遮熱板の材質・厚みなどを特定したが、遮熱機能を果たすものであれば材質・厚みは変更してもよい。
本実施形態では、タービンハウジング近傍のみアクチュエータチューブ本体に金属メッシュを巻回するようにした説明をしたが、アクチュエータチューブの全長に亘って金属メッシュを巻回するようにしてもよい。
本実施形態では、アクチュエータチューブとアクチュエータの取入口との接続をカシメ又は溶接を用いた説明をしたが、上述の機能を果たすものであれば他の接続方法を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施形態における過給機及びエンジンの模式図である。
【図2】本発明の実施形態における過給機の正面図である。
【図3】本発明の実施形態における過給機の左側面図である。
【図4】本発明の実施形態における過給機の右側面図である。
【図5】本発明の実施形態におけるアクチュエータチューブとアクチュエータの取入口との接続部の部分断面図である。
【図6】本発明の実施形態における遮熱板の斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1…過給機 2…コンプレッサ 3…タービン 4…回転軸部材(回転軸) 7…コンプレッサハウジング 8…タービンハウジング 19…排気ガス取入口 23…アクチュエータ 25…遮熱板 27…ウェイストゲートバルブ 31…アクチュエータチューブ 39…上流側排気ガス流路(排気ガス流路) 45…アクチュエータチューブ本体 47…金属メッシュ
A2…圧縮空気 A3…排気ガス


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサハウジング内の圧縮空気の圧力を検出してタービンハウジング内の排気ガス流路をバイパス可能に構成されたウェイストゲートバルブと、該ウェイストゲートバルブを可動させるアクチュエータとを備えた過給機において、
前記アクチュエータが前記タービンハウジング近傍に配置されていることを特徴とする過給機。
【請求項2】
前記アクチュエータが、過給機本体の回転軸の軸位置を境にして、前記タービンハウジング内へ排気ガスを供給する排気ガス取入口の反対側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の過給機。
【請求項3】
前記アクチュエータが、前記ウェイストゲートバルブの可動軸の軸位置を境にして、前記排気ガス取入口の反対側に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の過給機。
【請求項4】
前記アクチュエータと前記タービンハウジングとの間に遮熱板が配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の過給機。
【請求項5】
前記アクチュエータと前記コンプレッサハウジングとの間に接続されたアクチュエータチューブが、少なくとも前記タービンハウジング近傍の領域ではアクチュエータチューブ本体が樹脂からなり、かつ該アクチュエータチューブ本体の周囲に金属メッシュが巻回されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の過給機。
【請求項6】
前記アクチュエータと前記アクチュエータチューブとが、カシメ又は溶接により接合されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の過給機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−25442(P2008−25442A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−198188(P2006−198188)
【出願日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】