説明

遠心力場を利用した脱脂方法およびその装置

【課題】構造欠陥を誘発しないで、従来よりも短時間に脱脂及び焼結が可能な、積層セラミック電子部品の製造方法及びその製造装置を提供する。
【解決手段】複数の未焼結セラミック材料層間に電極材料層が形成された積層物を、積層体の積層方向に遠心力を負荷した上で、酸素濃度を制御した雰囲気中、非酸化性雰囲気ガスの気流中又は減圧下での不活性ガスのパーシャル圧気流中で、マイクロ波加熱することにより脱脂した後、更に同一の工程で焼結することからなる積層セラミック電子部品の製造方法及びその装置
【効果】製品に、ポア、デラミネーション等が発生しないため、電気特性に優れ、信頼性のある積層セラミックス電子部品を効率良く製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックアクチュエータ及び積層セラミックバリスタに代表される、積層セラミック電子部品の製造方法及びその製造装置に関するものであり、更に詳しくは、複数の未焼結セラミック材料層間に電極材料層が形成された未焼結積層物を、加熱脱脂する工程、焼結工程を具備する製造工程により処理して積層セラミック電子部品を製造するにあたり、マイクロ波加熱により脱脂する工程、及び未焼結積層物の積層方向に遠心力を負荷した状態で積層物を焼結する工程、を有する積層セラミック電子部品の製造方法及びその製造装置に関するものである。
【0002】
本発明は、積層セラミック電子部品の技術分野において、今日、電子機器は、小型・薄型化とともに、高機能・高性能化が進み、電子部品の高密度実装技術の高度化や、より一層の小型化が要望され、積層セラミックス電子部品についても、その製品の特性の向上と、生産性の高い製造方法及び装置が求められている中で、例えば、積層セラミックコンデンサは、携帯電話に代表される移動体通信システム中の移動局(小型携帯端末)の主要部品として用いられ、その小型化と大容量化、誘電体としての優れた特性、及び比較的低温での焼結等が要望されていることを踏まえ、本発明は、複数の未焼結セラミック材料層間に電極材料層が形成された積層物を、マイクロ波加熱により、短時間に均一に脱脂した上、更に同一工程で遠心力を負荷した状態で焼結し、内部電極の破断、デラミネーションの発生やセラミック層へのポア、ボイドの発生を抑制ないし防止することにより、絶縁耐圧、耐湿負荷特性、高温負荷特性等の電気的特性及び信頼性に優れた積層セラミック電子部品を製造し、提供することを可能とするものである。
【背景技術】
【0003】
近年、セラミック層と導体層とを混在させて積層して構成される積層セラミック部品の小型化、高性能化が進められている。そこで、その一種である積層セラミックコンデンサを例にとって、積層セラミック部品について具体的に説明する。積層セラミックコンデンサは、携帯電話に代表される移動体通信システム中の移動局(小型携帯端末)の主要部品として用いられていることから、その小型化と大容量化という、相反する特性の向上が求められている。このため、積層セラミックコンデンサの誘電体層の薄膜化、多層化及び誘電体層の高誘電率化が進められている。しかしながら、誘電体膜の薄膜化や誘電体層の材料開発による高誘電率化には限度があることから、大容量化のためには、積層セラミックコンデンサは年々大面積化される傾向にある。
【0004】
かかる積層セラミックコンデンサの誘電体層の材料開発に対して要求される電気的特性としては、大きな誘電率、小さい誘電率温度係数、低誘電損失、低誘電率バイアス電界依存性、及び低絶縁抵抗が挙げられる。また、前述した電気的特性が要求されることに加えて、誘電体としての優れた特性が要望される。具体的には、焼結体中にポア、ボイドが少ないこと、焼結温度が比較的低温であること等の特性が要求されている。
【0005】
ところで、前記積層セラミック電子部品(例えば、積層セラミックコンデンサ)を製造するには、例えば、前記誘電体セラミック組成物粉末にバインダー、溶剤を添加してスラリーを調製し、ドクターブレード法により、有機フィルム上に厚さ数μmから数十μmのセラミックス誘電体グリーンシートを成形する。次に、このセラミックス誘電体グリーンシート上に内部電極を印刷し、有機フィルムを取り除いたものを複数枚数積み重ねた後、圧着により積層成形体を製作する。更に、この積層成形体をチップ状に切断し、脱脂し、更に、この積層物を焼結した後、外部電極を取り付けて製造は終了する。
【0006】
セラミックス成形体の脱脂方法には、通常、大気が用いられている。大気を用いて脱脂を行った場合、有機バインダーが急激に酸化分解することにより発熱して熱暴走し、かつセラミックス成形体中の金属粉体が酸化膨張する。このため、製品の内部構造に欠陥が誘発される。この製品の内部構造の欠陥を抑制するため、従来の方法では、装置内のセラミックス成形体の温度分布を均一に、かつ時間をかけて温度を上昇させていた。例えば、積層セラミックスコンデンサの場合、400℃の熱処理温度に達するまでに40時間を必要としていた(10℃/Hrの昇温速度)。しかも、この昇温過程でのセラミックス成形体の温度分布は、±10℃程度以内に調整する必要があるのが一般的である。
【0007】
また、この脱脂のプロセスには、通常、温度を均一にすることを目的として、セラミックス成形体を支持する支持容器が間隔を開けて配置され、装置内のガスをモータファンで攪拌する内部循環式脱脂装置が設けられている。しかしながら、このような従来の脱脂方法及び脱脂装置は、単位規模及び単位時間当たりの生産性が低く、強いては製品の製造コストを増加させるという問題点を有している。また、従来の、装置内のガスをモータファンで攪拌する内部循環式脱脂装置を用いて脱脂を行う方法は、加熱によりセラミックス成形体から分解揮発した脱脂排気ガスが、セラミックス成形体表面に再び接触して化合し、製品の構造上の欠陥を誘発するという問題を有している。
【0008】
上述のように、脱脂工程で製造能率を上げるには、炉を高速で昇温、降温して脱脂を行うことが好ましいが、炉を高速で昇温すると、バインダーや可塑剤の有機物が、急激に気化・分解するので、デラミネーションやクラックの構造欠陥を誘発する恐れがある。そして、これらの欠陥は製品の品質に大きな影響を与える。このため、150〜300℃の温度域で20時間から数日をかけてゆっくりと昇温、降温を行なってグリーン積層体の脱脂が行われているのが現状である。前述の通り、脱脂工程においては、極めて高精度の温度制御、工程制御が必要で、かつコンデンサーの大容量化・多層化に伴い脱脂工程に要する時間が更に長くなる傾向があるが、従来の空気中の加熱分解除去法では、脱脂工程の高速化による工程時間の短縮は非常に困難であった。
【0009】
一方、バインダー等の有機物が十分除去されずに焼成工程を行うと、多くの問題が生じる。特に、可塑剤が脱脂工程において十分除去されずに残留していると、焼成工程において可塑剤中のベンゼン環が反応してグラファイト状物質を形成し、このグラファイト状物質が積層セラミック部品の各種の不良を引き起こす。まず、グラファイト状物質がセラミックスや内部電極材料と膨張係数が異なるため、前述のデラミネーションやクラック等の構造欠陥を誘発しやすい。また、グラファイト状物質はパイ電子を有するため伝導率が高いので、グラファイト状物質は、内部電極間にリーク電流が発生する原因となる。このように、脱脂工程において、可塑剤を除去しないと、製品の歩留が低下し、積層セラミック部品の性能も低下する。このことから、長時間の脱脂工程を行なわざるを得なかった。更に、従来の空気中の加熱分解除去法では、脱バインダー工程で排出されるガス中に有機物が混在している場合があるため、環境面でも課題があった。有機物を完全に分解焼却するか、あるいは、吸着等により有機物を除去する等の必要があり、コスト面でも課題があった。
【0010】
上記脱脂工程における課題を解決するために、例えば、(1)セラミックス粉体と、内部電極としての金属粉体と有機バインダーで構成されるセラミックス成形体を加熱し、セラミックス成形体より有機バインダーを除去するに際し、セラミックス成形体中の、内部電極の金属粉体の酸化還元平衡酸素分圧より低い酸素分圧の非酸化性雰囲気ガスを、所定の温度に加熱し、このガスを、セラミックス成形体を支持する支持容器に対して一方向より送風して再循環させずに排出し、かつ非酸化性雰囲気ガスの、0℃、1気圧の1分あたりの換算流量を、前記容器の全空間体積以上の流量に設定する方法がある(特許文献1参照)。この脱脂方法でも、50℃/時間の速度で400℃まで昇温し、2時間保持するプロファイルで10時間以上をかけてゆっくりと昇温、降温を行なわないとデラミネーションやクラック等の構造欠陥がなくならない。
【0011】
また、例えば、(2)マイクロ波加熱による脱脂方法として、マイクロ波焼成炉内に導入するキャリアガスの酸素濃度を抑えることにより、マイクロ波焼成炉内における酸素濃度を抑え、有機バインダーに起因する炭素や炭化物の燃焼を抑制することで、被焼成物において局部的に急激な温度上昇が発生することを抑制して、焼成工程における温度コントロ−ルを良好に行い、被焼成物のクラックや変形を抑制し、結果として、有機バインダーを被焼結物から除去する脱脂工程の時間を短縮化させる方法がある(特許文献2参照)。しかしながら、急速加熱できるマイクロ波加熱の利点が必ずしも充分に発揮できず、この脱脂方法でも12時間以上をかけてゆっくりと昇温,降温を行なうことになる。
【0012】
更に、例えば、(3)超臨界流体を用いた脱脂方法が以前より提案されてきた。超臨界流体を用いてバインダーを除去すれば、セラミックス成形体の脱脂を極めて短時間に行うことができる。ところが、この方法では、グリーン積層体から可塑剤,バインダーが除去されたときに、グリーン積層体の形状を維持する機能が悪化して、製品の形状精度が悪化するという不具合がある。
【0013】
一方、焼成工程においては、前記積層物を焼結するには、電気炉の高温炉内で100〜300℃/時間の昇温速度で1〜4時間熱処理することが行われている。しかしながら、このような高温炉内での焼結を採用する積層セラミック電子部品の製造方法においては、次のような問題があった。
【0014】
(1)従来の高温炉内での焼結では、未焼結セラミック材料層と電極材料層のうち電極材料層を先に焼結させる。その結果、電極材料層は、未焼結セラミック材料層に先だって収縮が起こるため、内部電極の破断や電極材料の凝集による、内部電極の厚さのばらつきに起因したデラミネーション(セラミック層と内部電極との層間剥離)を生じる。内部電極が破断して網目状になると、例えば、積層セラミックコンデンサの場合には容量ばらつきを招く。また、デラミネーションが生じると、積層セラミックコンデンサの絶縁耐圧や信頼性を劣化させる。
【0015】
(2)従来の高温炉内での焼結には時間が長くかかるため、例えば、内部電極材料としてAgを含むペーストを用いた場合には、Agが未焼結セラミック材料層に拡散する。その結果、形成されセラミック層の電気的特性が劣化する。
【0016】
(3)従来の高温炉内での熱分布は不均一であるため、積層物が不均一な熱分布の下で焼結される。その結果、セラミック層に多くのポア、ボイドが形成されるため、誘電特性のばらつき、絶縁耐圧、信頼性の低下を招く。
【0017】
(4)特に、PbOを含む未焼結セラミック材料では、PbOが焼結中に蒸発するため、焼結後のセラミック層の組成が調合組成からずれ、所期の目的の特性を有する積層セラミック電子部品が得られなくなる。また、蒸発したPbOが、粒界に偏析し、積層セラミック電子部品の耐湿負荷特性、高温負荷特性のような信頼性が低下する。
【0018】
前記(2)、(4)の問題を解決する方法として、短時間で昇温する急速昇温焼結法が知られている。しかしながら、この急速昇温焼結法は、前記積層物の表面と内部との温度差の増大を一層助長するため、前記(1)、(3)の問題がより顕著に起こる。また、先行技術として、例えば、マイクロ波加熱により積層物を短時間焼成する方法が開示されている(特許文献3参照)。この方法によれば、先に述べた、デラミネーションや電気特性の信頼性の低下がないとされている。しかしながら、脱脂条件については言及されておらず、従来の方法で、20時間から数日かけてゆっくりと昇温、降温を行ってグリーン積層体を得たものと推察される。
【0019】
【特許文献1】特許第3255857号明細書
【特許文献2】特開2003−302166公報
【特許文献3】特開平6−267785号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
このような状況の中で、本発明者らは、上記従来技術に鑑みて、上記諸問題を抜本的に解決することが可能な、新しい積層セラミック電子部品を製造する技術を開発することを目標として、鋭意研究を積み重ねた結果、複数の未焼結セラミック材料層間に電極材料層が形成された未焼結積層物を、マイクロ波加熱により効率的に脱脂することが可能であり、また積層物の積層方向に遠心力を負荷した状態で積層物を焼結すると、有機バインダーを含むグリーン積層体が加熱された時に、セラミック材料層と電極材料層との熱体積膨張差に起因して、積層内部構造に欠陥が誘発されるのを防止することが可能あること、を見出し、本発明を完成するに至った。
【0021】
即ち、本発明の目的は、複数の未焼結セラミック材料層間に電極材料層が形成された積層物を、短時間にかつ均一に脱脂するとともに、同一工程で焼結することが可能な、積層セラミック電子部品の製造方法及びその装置を提供することである。また、本発明の目的は、脱脂工程の高速化により生産性が向上した、脱脂方法及びその装置を提供することである。また、本発明の目的は、脱脂工程での残留物がなく、焼成時におけるグラファイトの生成に基づく、積層セラミック製品の各種不良を起こすことがない、積層セラミック電子部品の製造方法及びその装置を提供することである。また、本発明の目的は、焼成時のセラミックの収縮に起因する、内部電極の破断、デラミネーションを軽減させ、製品の絶縁耐性や信頼性を劣化させない積層セラミック電子部品の製造方法及びその装置を提供することである。また、本発明の目的は、焼結時間が短く、均一な熱分布を達成し、製品に、ポア、ボイドのない積層セラミック電子部品の製造方法及びその装置を提供することである。また、本発明の目的は、成形体から分解揮発した脱脂ガスがセラミック表面に再接触し、化合することがない積層セラミック電子部品の製造方法及びその装置を提供することである。更に、本発明の目的は、電子材料として、信頼性の高い製品を、高生産性で提供することが可能な、積層セラミック電子部品の製造方法及びその装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題を解決するための、本発明は、以下の技術的手段により構成される。
(1)複数の未焼結セラミック材料層間に電極材料層が形成された未焼結積層物を、加熱脱脂工程、焼結工程により処理して積層セラミック電子部品を製造する方法であって、未焼結積層物の積層方向に平行に遠心力を負荷した状態で加熱脱脂することを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法。
(2)マイクロ波加熱により有機バインダーを選択的に優先的に加熱することにより脱脂することを特徴とする上記(1)に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
(3)マイクロ波加熱により脱脂する工程と、更に同一工程で焼結することを特徴とする上記(2)に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
(4)未焼結積層物を加熱するためのマイクロ波を、積層物中の電極材料層の面に実質的に平行な方向から照射することを特徴とする上記(1)から(3)のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
(5)未焼結積層物を、800G以上の遠心力を負荷した状態で焼結することを特徴とする上記(1)に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
(6)脱脂工程において、その雰囲気中の酸素濃度を制御しながら脱脂することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
(7)脱脂工程において、酸素濃度を制御した雰囲気中、非酸化性雰囲気ガスの気流中、又は減圧下で不活性ガスのパーシャル圧気流中で脱脂することを特徴とする上記(1)に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
(8)脱脂工程において、加湿窒素と水素の混合ガスを含有する雰囲気中で脱脂することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のセラミック電子部品の製造方法。
(9)複数の未焼結セラミック材料間に電極材料層が形成された未焼結積層物を、脱脂・焼結して積層セラミック電子部品を製造する装置であって、未焼結積層物を脱脂・焼結するための脱脂・焼結装置、未焼結積層物に積層体の積層方向に遠心力を負荷するための回転手段、及び未焼結積層物をマイクロ波加熱により脱脂・焼結するためのマイクロ波加熱手段を具備したことを特徴とする積層セラミック電子部品の製造装置。
(10)脱脂・焼結装置が、炉本体、炉体内部に配置された遠心力を発生するための回転ローター、炉体内部の回転ローターを加熱するためのマイクロ波加熱ユニット、炉体に接続して配置されたバインダートラップ排気ユニット、炉体に接続して配置された雰囲気ガスを制御する燃焼ガス制御ユニット、回転ローター内のワークの温度を計測する赤外線温度センサーを有したことを特徴とする上記(9)に記載の積層セラミック電子部品の製造装置。
(11)回転ローターは、マイクロ波を透過し、その外周部にはマイクロ波を吸収するホルダーが装填できる構造であり、ホルダー中には対象ワークを配置でき、回転ローターは駆動モーターと接続され、マイクロ波加熱ユニットは導波管を介して炉体に接続されており、回転ローターのワークに実質的に、平行にマイクロ波を照射することが可能に配置されていることを特徴とする上記(9)に記載のセラミック電子部品の製造装置。
【0023】
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の積層セラミック電子部品の製造方法は、複数の未焼結セラミック材料層間に電極材料層が形成された積層物を、遠心力を負荷することにより積層方向に加圧する工程、マイクロ波加熱により脱脂する工程、更には、同一工程内で、脱脂と焼結を連続して行う工程を具備することを特徴とするものである。具体的には、例えば、セラミックス積層体の製造方法では、有機バインダーで構成されたグリーン積層体が加熱された時に、セラミックス材料層と電極材料層との熱体積膨張差に起因して、積層内部構造に欠陥が誘発されるのを、積層物の積層方向に遠心力を負荷することにより防止する。その結果として、デラミネーションやクラック等の構造欠陥がなくなり、電気特性的には特性のバラツキが小さくなり、また絶縁耐圧や耐湿負荷特性等品質が格段に向上する。
【0024】
また、本発明の脱脂方法は、加熱手段として、マイクロ波加熱採用することにより、グリーン積層体の有機バインダーを選択的に優先的に加熱するものである。更に、本発明は、脱脂工程において、雰囲気中の酸素濃度を制御することにより脱脂する工程、又は非酸化性雰囲気ガスの気流中又は減圧下で不活性ガスをパーシャル圧気流中で脱脂する工程を具備することにより、加熱条件を制御することを可能とする。
【0025】
本発明に係る積層セラミック電子部品とは、セラミックスを層材料として利用した積層構造を有する電子部品全般を含むものであり、好適には、例えば、積層セラミックコンデンサ、積層セラミックアクチュエータ、積層セラミックバリスタ等を例示することができる。また、本発明に係る有機バインダーとは、未焼成セラミックス材料を成形するにあたり、材料中に添加された水分を含む有機材料全般、例えば、水、有機バインダー、可塑剤、有機溶剤、増粘剤等を言う。
【0026】
本発明の未焼結セラミック材料としては、従来、積層セラミックス電子部品の材料として使用されているセラミックス材料の全般を使用することが可能であるが、その中で、例えば、BaTiO を主成分とするチタン酸バリウム系誘電体磁器組成物、一般式Pb(M1,M2)O (ただし、M1はMg、Zn、Ni、Co、Fe、Mn、Inの群から選ばれる少なくとも1種、M2はNb、W、Ta、Sbの群から選ばれる少なくとも1種を示す)で表わされる複合ペロブスカイト型誘電体磁器組成物を例示することができる。前記一般式で表わされる誘電体磁器組成物として、鉄・ニオブ酸鉛[Pb(Fe1/3 Nb2/3 )O ]、マグネシウム・ニオブ酸鉛[Pb(Mg1/3 Nb2/3 )O ]、マグネシウム・タングステン酸鉛[Pb(Mg1/21/2 )O ]、鉄・タングステン酸鉛[Pb(Fe1/2 1/2 )O ]及びこれらの混合物を例示することができる。なお、前記一般式のPbの一部をCa、Sr、Baから選ばれる少なくとも1種の元素で置換してもよい。前記電極材料としては、例えばAg/Pd合金粉末、Pd粉末を含むペースト、又はNi、Coの粉末を含むペーストを用いることができる。
【0027】
未焼結積層物は、例えば、誘電体磁器組成物の未焼結粉末にバインダーや溶剤を加え、スラリー化してグリーンシート(未焼結セラミック材料層)を形成し、このグリーンシート上に、電極材料層を厚膜技術(例えば、印刷法)により形成した後、所定の枚数を積層、圧着、脱脂を行うことにより作製される。誘電体磁器組成物の未焼結粉末は、例えば、水熱合成法、共沈法、金属アルコキシドを用いた化学合成法の各種の合成法により得られる。
【0028】
加熱脱脂工程では、未焼結積層物中に含有されている、有機バインダーを、十分に除去しなければならない。有機バインダーが残留していると、焼成工程においてグラファイト状物質を形成し、このグラファイト状物質が、セラミックスや内部電極材料とは膨張係数が異なるため、前述のデラミネーションやクラック等の構造欠陥を誘発しやすいし、グラファイト状物質は、伝導率が高いので、内部電極間にリーク電流が発生する原因ともなる。 加熱脱脂工程において、マイクロ波加熱を未焼結積層物の加熱に採用すると、未焼結セラミックス材料と電極材料のうち、未焼結セラミックス材料が先に加熱されるため、その材料中に含有されている有機バインダーが選択的に加熱分解されることが可能となる。マイクロ波加熱による、加熱脱脂工程は、通常、50〜100℃/Hrの範囲の昇温速度で、360〜720分間かけて、常温〜600℃まで昇温し、その温度に、2〜5時間保持する。こうした加熱条件により、未焼結積層物中の、有機バインダーは、完全に分解除去され、積層体に構造欠陥が生じることはない。本発明では、マイクロ波加熱による加熱脱脂工程は、遠心力を負荷しなくても、各種欠陥を改善することが可能であるが、加熱脱脂工程において、遠心力を負荷することにより、より一層の改善効果を得ることが可能である。
【0029】
未焼結積層物を、大気下に、加熱脱脂すると、有機バインダーが急激な酸化分解によって発熱して、熱暴走し、かつ、セラミックス成形体中の金属粉体が酸化膨張するため、製品の内部構造に欠陥が誘発されることがある。そこで、マイクロ波加熱による脱脂方法を採用するにあたり、マイクロ波加熱炉内に導入するキャリアガスの、酸素濃度を制御した加熱脱脂が好適であり、その酸素濃度は、2〜16%に制御される。これにより、マイクロ波加熱炉内における酸素濃度を抑え、有機バインダーに起因する、炭素や炭化物の燃焼を制御することができ、被焼成物において、局部的に急激な温度上昇が発生することが抑制されるため、脱脂工程における温度コントロ−ルを良好に行うことができる。例えば、非酸化製雰囲気ガスの気流、減圧下で不活性ガスのパーシャル圧気流の雰囲気を採用することにより、被焼成物のクラックや変形を抑制することが可能である。マイクロ波加熱炉内の酸素濃度を制御するには、非酸化製雰囲気ガスとしては、例えば、窒素、水素、CO、Ar、He等及びそれらの混合ガスが挙げられる。このとき、雰囲気ガスは、1×10−2〜12Torrの減圧度、10−6〜10−11atmの酸素濃度範囲が好適である。また、加熱脱脂工程の炉内の雰囲気は、脱脂工程の進行に応じて、炉内の雰囲気が変化するように設定することにより効率的な脱脂を可能とする。
【0030】
本発明における焼結工程は、未焼結セラミックス積層物を加熱焼結するにあたり遠心力を負荷するものである。焼結時に、セラミックス材料層と電極材料層との熱体積膨張差に起因して積層内部構造に欠陥が誘発されるのを、積層体の積層方向に遠心力を負荷することにより、積層方向の膨張を拘束して欠陥を防止することが可能である。デラミネーションやクラック、ポア、ボイド等の構造欠陥がなくなり、電気特性的には、特性のバラツキが小さくなり、また、絶縁耐圧や耐湿負荷特性等品質、信頼性が格段に向上する。本発明の焼結工程は、通常、昇温速度50〜100℃/Hrで、2〜5時間熱処理することにより行われる。焼結温度は、セラミックスの材質に応じた温度が設定される。被焼結体に負荷される遠心力は、通常、800G以上、好ましくは、1000〜20万Gの範囲から適宜設定することができる。
【0031】
未焼結積層物を、脱脂又は焼結するためのマイクロ波加熱は、マイクロ波が積層物中の電極材料層の面に可能な限り平行な方向から照射されるように行われることが好ましい。これは、マイクロ波が積層物中の電極材料層の面に垂直に照射されると、電極材料層が、マイクロ波の積層物内部への照射を阻止するからである。特に、マイクロ波の電界方向が、積層物中の電極材料層の面と垂直方向に照射されるようにマイクロ波加熱を行うことが一層好ましい。なお、焼結後の積層セラミック電子部品には、通常、外部電極の形成工程が実施される。
【0032】
以上詳述したように、本発明は、複数の未焼結セラミック材料層間に電極材料層が形成された積層物を、短時間にかつ均一に脱脂した上、更に、同一工程で焼結することによって、内部電極の破断、デラミネーションの発生やセラミック層へのポア、ボイドの発生を抑制ないし防止することを可能にするものであり、ひいては絶縁耐圧、耐湿負荷特性、高温負荷特性の電気的特性及び信頼性の優れた積層セラミック電子部品を提供することを可能にするものである。
【発明の効果】
【0033】
本発明は、例えば、複数の未焼結セラミック材料層間に電極材料層が形成された積層物に遠心力を負荷した上で、マイクロ波加熱により脱脂及び焼結することによって、次のような作用、効果を発揮することができる。
【0034】
(1)本発明のセラミックス積層体の脱脂方法では、マイクロ波加熱により積層物の有機バインダーを選択的に優先的に脱脂することができるので、有機バインダーで構成されたグリーン積層体が加熱された時に、セラミックス材料層と電極材料層との熱体積膨張差に起因して、積層内部構造に欠陥が誘発されるのを、積層体の積層方向に遠心力を負荷することにより積層方向の膨張を拘束して防止することができる。また、遠心力負荷による成型体密度の増加も期待できる。その結果として、作製された電子部品には、デラミネーションやクラック、ポア、ボイド等の構造欠陥がなくなり、電気特性的には特性のバラツキが小さくなり、また絶縁耐圧や耐湿負荷特性等品質、信頼性が格段に向上する。
【0035】
(2)本発明のマイクロ波加熱による脱脂方法では、酸素濃度を制御した雰囲気中、非酸化性雰囲気ガスの気流中、又は減圧下で不活性ガスをパーシャル圧気流中で脱脂することにより、有機バインダー、可塑剤等の有機物が急激に酸化分解されることがなく、発熱暴走や急激な気化分解によるデラミネーションやクラック、ポアが誘発されることはない、また、電極材料の酸化による膨張もなく、急速脱脂が可能となる。
【0036】
(3)マイクロ波加熱は、積層物を短時間で焼結できるため、例えば、電極材料として、Agを含むペーストを用いても、Agが前記未焼結セラミック材料層に拡散するのを抑制することができる。その結果、良好な電気的特性を有するセラミック層を備えた積層セラミック電子部品を製造することができる。
【0037】
(4)マイクロ波加熱は、積層物を短時間で焼結できるため、例えば、PbOを含む誘電体組成物を未焼結セラミック材料として用いた場合、PbOが焼結中に蒸発するのを抑制することができる。その結果、未焼結セラミック材料の調合組成と近似した組成を有するセラミック層を形成できるため、所期の目的の特性を有する積層セラミック電子部品を製造することができる。また、PbOの蒸発を抑制できるため、PbOの粒界への偏析、これに伴う耐湿負荷特性、高温負荷特性のような信頼性の低下を改善することができる。特に、水熱合成法、共沈法、金属アルコキシド法により合成された誘電体組成物の未焼結粉末は、PbOが蒸発し易いが、マイクロ波加熱では、前述したような短時間で焼結できるため、水熱合成法のような化学合成法により合成された誘電体組成物の未焼結粉末を有効に使用することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
次に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0039】
本発明の、積層セラミックス電子部品製造装置の一例を、図1に示す。
本実施例の脱脂・焼結装置は、炉本体1と、炉本体1内部に配置された遠心力を発生する回転ローター3と、炉本体1内部の回転ローターを加熱する手段として該炉本体1に接続したマイクロ波加熱ユニット2と、該炉本体1に接続して配置したバインダートラップ排気ユニット4と、該炉本体1に接続して配置した雰囲気ガスを制御する燃焼ガス制御ユニット5と、回転ローター3内のワークWの温度を計測する赤外線温度センサー6から構成されている。回転ローター3は、マイクロ波を透過する窒化ケイ素製のローターで、外周部にマイクロ波を吸収する炭化ケイ素製のワークホルダーWHが装填できる構造になっており、更に、その中に、対象ワークWを配置できるようになっている。回転ローター3は、軸3cが炉本体1に配置された軸受3aを介して駆動モーター3bと接続されている。マイクロ波加熱ユニット2は、導波管2a,2bを介して該炉本体1に接続されており、回転ローター3のワークWに平行に照射される配置になっている。また、バインダートラップ排気ユニット4は、導入バルブ4aと真空排気ポンプ4bを介して排気制御される。更に、燃焼制御ユニット5は、不活性ガスボンベ5aと酸素ガスボンベ5bが接続され、圧力流量調整弁5cと供給制御弁5dを介して制御される。また、該炉本体1には回転ローター3のワークWの温度が計測できるように赤外線温度センサーが配置されている。
【実施例1】
【0040】
本実施例では、遠心力を負荷した加熱脱脂工程を実施して、セラミックコンデンサを製造した。成形体の製造に際して、粒径約1.5μmのチタン酸バリウムを主成分とする誘電体粉末と、ブチラール樹脂を主成分とする有機バインダーとからなる誘電体スラリーを用いて、ドクターブレード法により、乾燥厚みが15μmのシートを作製した。更に、その上に、スクリーン印刷法により、市販のNi電極ペーストを用いて、乾燥厚み3μmの所望のパターン形状を有する内部電極を印刷し、グリーンシートを得た。このグリーンシートに含まれる有機バインダー成分は10wt%であった。このグリーンシートを、10枚積み重ね、更に上下に前記グリーンシートと同組成で厚さが200μmのカバーシートを重ねた後、積層圧着し、更に所定の形状に切断して成形体Wを得た。そして、10mm×10mm×5mm高さの炭化ケイ素製のワークホルダーWHの中に、成形体Wを装填して、回転ローターの中に装着した。その後、ローターの径が、200φの回転ローターを10,000rpmの回転速度で回転させ、8900Gの遠心力を負荷させて脱脂を行った。その時の脱脂雰囲気は、1×10−2〜12Torrの減圧雰囲気で、不活性の窒素ガスのパーシャル圧気流中で行い、マイクロ波加熱によりワークホルダーが、マイクロ波を吸収して発熱し、100℃/Hrの昇温速度で450℃まで加熱保持して、減圧プログラム脱脂を行った。その後、更に脱脂された成形体を、遠心力が負荷された条件下で昇温速度300℃/Hrで1100℃まで加熱して30分保持焼成した。次いで、冷却速度300℃/Hrで冷却して焼成体を得た。
【0041】
マイクロ波加熱は、マイクロ波が、積層物の電極材料層と平行な方向から照射されるように行った。次いで、このようにして得られた焼結体をサンドブラストにて端面研磨を施し、外部電極として銀ペーストを800℃で10分間焼き付けて、3.2mm×1.6mm×1.25mmの積層セラミックコンデンサを製造した。
【実施例2】
【0042】
本実施例では、実施例1と同様な積層物を、空気よりも酸素濃度が低く、10%の酸素濃度に設定されたキャリアガス(加湿窒素と水素の混合ガス)雰囲気で、マイクロ波加熱により、75℃/Hrで昇温し、450℃で2時間保持してプログラム脱脂を行なった以外は、実施例1と同様な方法により積層セラミックコンデンサを製造した。
【実施例3】
【0043】
本実施例では、ローターを回転させないで遠心力を負荷しない条件で、実施例2と同様な積層物を、空気よりも酸素濃度が低く、10%の酸素濃度に設定されたキャリアガス(加湿窒素と水素の混合ガス)雰囲気で、マイクロ波加熱により、75℃/Hrで昇温し、450℃で2時間保持してプログラム脱脂を行なった以外は、実施例1と同様な方法により積層セラミックコンデンサを製造した。
【0044】
比較例1
本比較例では、実施例1と同様な積層物を、空気よりも酸素濃度が低く、10%の酸素濃度に設定されたキャリアガス(加湿窒素と水素の混合ガス)雰囲気の電気炉内で、20℃/Hrで昇温し、450℃で2時間脱脂を行なった。その後、焼成条件として加湿した窒素ガスと水素ガスの混合ガス中で、昇温速度200℃/Hrで1250℃、3Hr保持して行った。その時の酸素濃度は、10%であった。それ以外は、実施例1と同様な方法により積層セラミックコンデンサを製造した。
【0045】
得られた実施例1、2、3及び比較例の積層セラミックコンデンサについて、脱脂条件の評価は、脱脂工程が完了した時点で一度徐冷して取り出し、顕微鏡による外観検査により調べた。また、焼成後は断面観察して、内部電極の状態、デラミネーション有り無し、ポア、ボイドの発生状態を評価した。更に、耐湿負荷試験での不良率及び絶縁耐圧を測定した。これらの結果を下記表1に示す。
【0046】
耐湿負荷試験は、各積層セラミックコンデンサ50個に対し、85℃、95%RHの高温高湿度雰囲気中で直流16Vの電圧を200時間印加することにより行った。絶縁耐圧は、各積層セラミックコンデンサ50個に対し、200V/秒の昇圧速度で電圧を印加することにより測定した。
【0047】
【表1】

【0048】
前記表1から明らかなように、実施例の積層セラミックコンデンサは、内部電極の破断、デラミネーションの発生がなく、更に、セラミック層へのポア、ボイドの発生が防止されることによって、絶縁耐圧、耐湿負荷特性、高温負荷特性等の電気的特性が優れ、高い信頼性を有することがわかる。
【0049】
なお、実施例では、ドクターブレード法により未焼結セラミック材料層であるグリーンシートを作製したが、ゾル−ゲル手法を用いて厚さ数μm以下のグリーンシートを形成してもよく、また、厚膜技術により未焼結セラミック材料層及び電極材料層を、順次印刷して積層物を作製してもよい。
【0050】
実施例では、積層セラミック電子部品として積層セラミックコンデンサを例にして説明したが、積層セラミックアクチュエータ、積層セラミックバリスタも、これらの実施例とほぼ同様な方法により製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
以上詳述したように、本発明は、複数の未焼結セラミック材料層間に電極材料層が形成された積層物を脱脂・焼結して、積層セラミック電子部品を製造するにあたり、脱脂工程では、積層体の積層方向に遠心力を負荷した上で、マイクロ波加熱により、選択的に優先的に脱脂を行い、更に同一の工程で焼結を行うことを特徴とする積層電子部品の製造方法及びその装置に係るものであり、遠心力を負荷することにより、成型体の密度が向上し、その結果として、焼成体の焼成収縮が小さくなるために、電極等の薄膜はクラックが発生しにくくなり、健全な電極が形成できることにつながるばかりか、低温焼結が可能となり、緻密で電気抵抗率が小さい焼結体を製造することができる。このように、本発明は、短時間に、かつ均一に脱脂した上、更に同一工程で焼結を可能とすることによって、内部電極の破断、デラミネーションの発生やセラミック層へのポア、ボイドの発生を抑制ないし防止でき、絶縁耐圧、耐湿負荷特性、高温負荷特性等の電気的特性及び信頼性に優れた積層セラミック電子部品を提供することを可能とする。また、本発明は、小型電話の急速な普及や各種電子機器のダウンサイズ化に伴い、コンデンサー部品、圧電体部品、半導体部品、基板部品等の小型化、集積化が進み、薄膜セラミックス、厚膜セラミックス、セラミックス金属積層体や小型形状のセラミックスの焼結技術の確立の要請に十分答えるものであり、セラミックス電子部品の製造技術分野において、効率良く、信頼性に優れた電子部品を製造することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】遠心力を利用した電子部品製造装置の一例を示す。
【符号の説明】
【0053】
1: 炉本体
2: マイクロ波加熱ユニット
3: 回転ローター
WH: ワークホルダー
W: ワーク
4: バインダートラップ排気ユニット
5: 燃焼ガス制御ユニット
6: 赤外線温度センサー
2a:導波管
2b:導波管
3a:軸受
3b:駆動モーター
3c:軸
4a:導入バルブ
4b:真空排気ポンプ
5a:不活性ガスボンベ
5b:酸素ガスボンベ
5c:圧力流量調節弁
5d:供給制御弁


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の未焼結セラミック材料層間に電極材料層が形成された未焼結積層物を、加熱脱脂工程、焼結工程により処理して積層セラミック電子部品を製造する方法であって、未焼結積層物の積層方向に平行に遠心力を負荷した状態で加熱脱脂することを特徴とする積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項2】
マイクロ波加熱により有機バインダーを選択的に優先的に加熱することにより脱脂することを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項3】
マイクロ波加熱により脱脂する工程と、更に同一工程で焼結することを特徴とする請求項2に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項4】
未焼結積層物を加熱するためのマイクロ波を、積層物中の電極材料層の面に実質的に平行な方向から照射することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項5】
未焼結積層物を、800G以上の遠心力を負荷した状態で焼結することを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項6】
脱脂工程において、その雰囲気中の酸素濃度を制御しながら脱脂することを特徴とする請求項1又は2に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項7】
脱脂工程において、酸素濃度を制御した雰囲気中、非酸化性雰囲気ガスの気流中、又は減圧下で不活性ガスのパーシャル圧気流中で脱脂することを特徴とする請求項1に記載の積層セラミック電子部品の製造方法。
【請求項8】
脱脂工程において、加湿窒素と水素の混合ガスを含有する雰囲気中で脱脂することを特徴とする請求項1又は2に記載のセラミック電子部品の製造方法。
【請求項9】
複数の未焼結セラミック材料間に電極材料層が形成された未焼結積層物を、脱脂・焼結して積層セラミック電子部品を製造する装置であって、未焼結積層物を脱脂・焼結するための脱脂・焼結装置、未焼結積層物に積層体の積層方向に遠心力を負荷するための回転手段、及び未焼結積層物をマイクロ波加熱により脱脂・焼結するためのマイクロ波加熱手段を具備したことを特徴とする積層セラミック電子部品の製造装置。
【請求項10】
脱脂・焼結装置が、炉本体、炉体内部に配置された遠心力を発生するための回転ローター、炉体内部の回転ローターを加熱するためのマイクロ波加熱ユニット、炉体に接続して配置されたバインダートラップ排気ユニット、炉体に接続して配置された雰囲気ガスを制御する燃焼ガス制御ユニット、回転ローター内のワークの温度を計測する赤外線温度センサーを有したことを特徴とする請求項9に記載の積層セラミック電子部品の製造装置。
【請求項11】
回転ローターは、マイクロ波を透過し、その外周部にはマイクロ波を吸収するホルダーが装填できる構造であり、ホルダー中には対象ワークを配置でき、回転ローターは駆動モーターと接続され、マイクロ波加熱ユニットは導波管を介して炉体に接続されており、回転ローターのワークに実質的に、平行にマイクロ波を照射することが可能に配置されていることを特徴とする請求項9に記載のセラミック電子部品の製造装置。


【図1】
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【公開番号】特開2006−41134(P2006−41134A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−217947(P2004−217947)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成15年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化技術戦略的開発」委託研究、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(300068834)新東ブイセラックス株式会社 (8)
【Fターム(参考)】