説明

遠心圧縮機羽根車の寿命予測方法

【課題】過給機等に用いられる遠心圧縮機の羽根車のクリープ歪みを簡便な方法で正確に把握し、これによって羽根車の寿命を正確に予測する。
【解決手段】遠心圧縮機10の羽根車12の背面28とベアリングハウジング20との間にラビリンスパッキン30が設けられ、被圧縮空気の一部が径方向隙間C1を通ってシール空間sに流入するのを防止している。ラビリンスパッキン30の上端部31に羽根車12の外周面34に正対する対向面36を設け、径方向隙間Cをノギス、隙間ゲージ等で計測することで、羽根車12のクリープ歪みを計測する。羽根車12のクリープ歪みからクリープ破壊に至るクリープ特性を予め把握しておき、羽根車12のクリープ歪みと該クリープ特性とから羽根車12の稼動限界時期を求める。径方向隙間Cの下限値Cを設定し、径方向隙間Cが該下限値Cになった時を羽根車使用限界時期とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舶用ディーゼル機関等の内燃機関の過給機等に用いられる遠心圧縮機の羽根車の寿命を簡単な手段で正確に予測可能な寿命予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
舶用ディーゼル機関の過給機等に用いられる遠心圧縮機は、近年益々高い圧力比(例えば4〜5倍)が要求されると共に、高効率が要求されてきている。この相反する要求を両立させるために、一般に羽根車の回転周速を高く取ることが行なわれている。
一方、高い回転周速となった羽根車は、回転により自身に作用する遠心力によって内部に高い応力が発生する。さらに、圧縮された空気は高温となり、高温となった空気の一部は、漏れ流れとなってハウジングとの隙間から羽根車の背面に回り込み、羽根車を背面から過熱する。圧縮空気は、高圧力比となるほど高温となるので、高応力及び高温に曝される羽根車は、クリープ破壊のおそれが出てくる。
【0003】
特許文献1には、エンジンの過給機などに適用される遠心圧縮機が開示されている。以下、この遠心圧縮機を例に取って、過給機用遠心圧縮機の構成を説明する。図5において、この遠心圧縮機100は、ロータ軸102の外周面に羽根車104が固着され、羽根車104のハブ面14bには複数のブレード105が放射状に突設されている。羽根車104の外周側は、圧縮部のハウジング106と、ベアリングハウジング108とで、被圧縮空気の流路を除き密閉されている。羽根車104の背面104aと、該背面に対面したベアリングハウジング108の壁面にはラビリンスパッキン110が設けられ、羽根車背面とベアリングハウジング108との間のシール空間sをシールしている。
【0004】
シール空間sは放風孔112を通して外部と連通しており、ラビリンスパッキン110を通してシール空間sに入る若干量の漏れ空気を外部へ放出している。ロータ軸102にはスラストカラー114が固着され、ベアリングハウジング108には、スラストカラー114を挟んで主スラスト軸受116及び反スラスト軸受118が設けられている。これら主スラスト軸受116及び反スラスト軸受118によってロータ軸102を軸方向に支持している。
【0005】
羽根車104が回転すると、被圧縮空気は、矢印a方向からブレード105間に形成された流路に流入し、ブレード105で加速される。ブレード105で加速された被圧縮空気は、ディフューザ領域dで減速され、静圧が上昇して加圧される。
羽根車104の出口で被圧縮空気は、200〜250℃もの高温になり、その一部は、ラビリンスパッキン110を通り、漏れ流れlとなって、シール空間sに流入する。この漏れ流れlが羽根車104を背面側から過熱する。
【0006】
通常、羽根車104の材料としてアルミ合金等が用いられている。羽根車104は背面側から過熱されると、強度が低下し、高応力及び高温の雰囲気下でクリープ歪みが発生する。このクリープ歪みを放置すると、クリープ破壊に至るおそれがある。
【0007】
特許文献1では、漏れ流れlによる羽根車104の過熱を防止するために、ラビリンスパッキン110に環状空間120を設けると共に、ベアリングハウジング108にこの環状空間120に連通する空気通路122を設けている。そして、外部から空気通路122及び環状空間120を通して低温空気をシール空間sに導入し、羽根車104の過熱を防止するようにしている。
【0008】
特許文献2にも、漏れ流れlによる羽根車104の過熱を防止して、羽根車104のクリープ破壊を防止する手段が開示されている。この手段は、羽根車104の背面104aに環状デフレクタを突設し、シール空間sに侵入した漏れ流れlをこの環状デフレクタに当てて、漏れ流れlの流路を偏向させ、背面104aから離すようにして、羽根車104の過熱を防止するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平4−365997号公報
【特許文献2】特開2008−25576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1又は特許文献2に開示された手段をもってしても、羽根車のクリープ歪みをなくすことは困難である。クリープ歪みは局所的に負荷応力及び温度が厳しい場所から進展するが、局所的なクリープ歪みの発生を発見することは困難である。羽根車におけるクリープ歪みは、羽根車に加わる遠心力によって羽根車の外径が徐々に大きくなる。最終的に大規模な破断に至る直前には歪みが急激に変化するが、それ以前は歪みの成長が僅かずつであるため、歪みの変化を把握するためには、微小な歪みの変化を検知する必要がある。
【0011】
このように、遠心圧縮機を安全に稼動させるためには、羽根車のクリープの伸展状況を検知し、羽根車の寿命を予測して、大規模な破断が発生する前に、羽根車交換などの対策を講じる必要がある。このために、羽根車の稼動限界時間を設定し、これを超える前に交換を行なう方法もある。しかし、実際の羽根車のクリープ伸展状況は、エンジンや過給機の運転負荷等によって左右されるため、設定された稼動限界時間は、実際のクリープ伸展状況と一致しない。従って、継続使用が十分可能な段階で羽根車を交換することになるため、無駄が多い。また、羽根車の頻繁なチェックは、運転管理者の負担を余分に重くすることになる。
【0012】
本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、遠心圧縮機の羽根車のクリープ歪みを簡便な方法でかつ正確に把握し、これによって、羽根車の寿命を正確に予測し、クリープ破壊する前に交換を可能にすると共に、羽根車の無駄な交換をなくすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するため、本発明の遠心圧縮機の羽根車寿命評価方法は、
遠心圧縮機の回転軸に装着された羽根車のクリープ歪みを検出し、該クリープ歪みの検出値から羽根車の寿命予測を行なう遠心圧縮機羽根車の寿命予測方法において、
遠心圧縮機稼動時の高温下における前記羽根車のクリープ歪みからクリープ破壊に至るクリープ特性を把握する前工程と、
遠心圧縮機の稼動前に羽根車外周面と羽根車外周面に正対する静止部壁面との径方向隙間を予め把握しておく隙間把握工程と、
遠心圧縮機の稼動後に該径方向隙間を計測し、この径方向隙間と該隙間把握工程で計測した径方向隙間との差から羽根車のクリープ歪みを求めるクリープ歪み計測工程と、
該クリープ歪みと前記クリープ特性とを比較して、羽根車の稼動限界時期を求める寿命予測工程と、からなるものである。
【0014】
過給機等に用いられる遠心圧縮機では、通常30〜40℃の空気が羽根車に供給され、この被圧縮空気が羽根車で圧縮されて高温化する。そのため、外周端側ほど高温になり、また漏れ流れにより、背面に近い領域が高温になる。従って、外周端側のクリープ歪みが大きくなる。クリープ歪みが伸展すると、羽根車の外径は大きくなるため、羽根車外周面と該外周面に正対する静止部壁面との径方向隙間は小さくなる。
【0015】
本発明方法では、羽根車外周面とこの外周面に対面する静止部壁面との径方向隙間を計測するようにしたので、クリープ歪みが微小であっても感度良く計測できる。該径方向隙間を定期的に計測することにより、羽根車のクリープ歪みの伸展状況を把握できるため、羽根車の取り外しや羽根車からの試料採取等を必要とせず、羽根車の交換時期を的確に判断できる。従って、羽根車がクリープ破壊する前に確実に羽根車を交換できると共に、羽根車を稼動限界まで使用できるようになる。
【0016】
計測点は、例えば、羽根車の周囲4箇所を計測し、これらの計測値の平均を取るようにしてもよい。なお、羽根車外径の計測は、羽根車に加わる遠心力や羽根車の熱膨脹等の影響を受けないように、遠心圧縮機が稼動を停止して、冷却した時に行なうとよい。
【0017】
本発明方法において、径方向隙間の下限値を設定し、該下限値を羽根車使用限界値とするとよい。これによって、径方向隙間を定期的に計測し、この計測値が下限値より小さくなっているか、あるいは次回の計測時までに下限値より小さくなることが予想されれば、その時点で羽根車を交換するようにする。これによって、羽根車の要交換時期を正確に把握できる。
【0018】
本発明方法において、前記径方向隙間が、羽根車外周面と静止部壁面に羽根車外周面側に向けて突出形成された突起部との間の径方向隙間であるとよい。
このように、羽根車外周面に正対する静止部壁面に突起部を設けることにより、羽根車外周面と静止部壁面との間の隙間を最小にできるため、該隙間から羽根車背面側のシール空間に流入する漏れ流れを最小限にできる。
【0019】
この場合、遠心圧縮機の稼動前に羽根車外周面と突起部間に鉛線材を介在させておき、クリープ歪み計測工程で、遠心圧縮機稼動後に羽根車のクリープ歪みで形成された該鉛線材の凹み量から前記径方向隙間を求めるようにするとよい。これによって、鉛線材の凹み量から羽根車のクリープ歪み量を簡便かつ正確に計測できる。
【0020】
本発明方法において、羽根車の背面と該背面に対面する静止部壁面間にラビリンスパッキンを設け、径方向隙間が、羽根車の背面及び静止部壁面に固定された該ラビリンスパッキンの凸片間の径方向隙間であるとよい。
【0021】
羽根車の背面と該背面に対面する静止部壁面間にラビリンスパッキンを設けた遠心圧縮機においては、予めクリープ解析等の手法により、羽根車の寿命と、羽根車の外径寸法、及び互いに正対したラビリンスパッキンの凸片間の径方向隙間との関係を把握しておく。
遠心圧縮機の稼動後、該径方向隙間を計測することにより、羽根車の寿命を判断できる。
ラビリンスパッキンの凸片間の隙間はもともと非常に小さい寸法であるため、その経時変化を捉えることで、クリープ初期に発生する羽根車の小さな歪みも把握できるようになる。
【0022】
この場合、径方向隙間は、ラビリンスパッキンの各凸片間の径方向隙間の平均値を用いてもよいが、可能であれば、羽根車の径方向歪みが大きく現われる外周側の径方向隙間を計測するとよい。
【発明の効果】
【0023】
本発明方法によれば、遠心圧縮機の回転軸に装着された羽根車のクリープ歪みを検出し、該クリープ歪みの検出値から羽根車の寿命予測を行なう遠心圧縮機羽根車の寿命予測方法において、遠心圧縮機稼動時の高温下における前記羽根車のクリープ歪みからクリープ破壊に至るクリープ特性を把握する前工程と、遠心圧縮機の稼動前に羽根車外周面と羽根車外周面に正対する静止部壁面との径方向隙間を予め把握しておく隙間把握工程と、遠心圧縮機の稼動後に該径方向隙間を計測し、この径方向隙間と該隙間把握工程で計測した径方向隙間との差から羽根車のクリープ歪みを求めるクリープ歪み計測工程と、該クリープ歪みと前記クリープ特性とを比較して、羽根車の稼動限界時期を求める寿命予測工程と、からなるので、クリープ歪みが微小であっても感度良く計測でき、該径方向隙間を定期的に計測することにより、羽根車のクリープ歪みの伸展状況を把握できるため、羽根車の取り外しや羽根車からの試料採取等を必要とせず、羽根車の交換時期を的確に判断できる。
従って、羽根車がクリープ破壊する前に羽根車を確実に交換できると共に、羽根車を稼動限界まで使用できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明方法を舶用ディーゼル機関用過給機に用いられる遠心圧縮機に適用した第1実施形態に係る正面視断面図である。
【図2】本発明方法を舶用ディーゼル機関用過給機に用いられる遠心圧縮機に適用した第2実施形態に係る正面視断面図である。
【図3】図2の一部拡大図である。
【図4】本発明方法を舶用ディーゼル機関用過給機に用いられる遠心圧縮機に適用した第3実施形態に係る正面視断面図である。
【図5】舶用ディーゼル機関用過給機に用いられる従来の遠心圧縮機の正面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではない。
【0026】
(実施形態1)
本発明方法を舶用ディーゼル機関用過給機に用いられる遠心圧縮機に適用した第1実施形態を図1により説明する。図1は該遠心圧縮機10の羽根車12とその周辺領域を示す。図1において、羽根車12のハブ面14には、複数のブレード16が放射状に固着されている。羽根車12の外周側は、圧縮部のハウジング18と、ベアリングハウジング20とで密閉されている。
【0027】
ハウジング18の上方には、ディフューザ領域dを形成する隔壁22と、この隔壁22がボルト25で装着されたハウジング24とが設けられている。ハウジング18とハウジング24との間には、シール用Oリング26が介設されている。羽根車12の背面28に対面して、ラビリンスパッキン30が設けられている。ラビリンスパッキン30は、ベアリングハウジング20の壁面にボルト32によって固定されている。ラビリンスパッキン30及び羽根車背面28には、複数の凸片42及び44が設けられている。これらの凸片42,44が互い違いに配置されて迷路を形成し、シール空間sをシールしている。
【0028】
羽根車12が回転すると、被圧縮空気は、矢印a方向からブレード16間に形成された流路に流入し、ブレード16で加速される。ブレード16で加速された被圧縮空気は、ディフューザ領域dで減速され、静圧が上昇して加圧される。
羽根車12の出口で被圧縮空気は、200〜250℃もの高温になり、その一部は漏れ流れlとなり、ラビリンスパッキン30を通ってシール空間sに流入する。この漏れ流れlが羽根車104を背面側から過熱する。
【0029】
本実施形態では、羽根車12の外周面34と、ラビリンスパッキン30の上端部31に設けられた対向面36とを正対させると共に、羽根車外周面34と該対向面36との間の径方向隙間Cが1mm以下の寸法になるように構成されている。羽根車12のクリープが伸展すると、羽根車12の外径は大きくなるため、径方向隙間Cは小さくなる。そのため、予めクリープ解析等の手法により、羽根車12のクリープ特性と羽根車外径寸法との関係を把握しておき、羽根車12の限界寿命に対応した羽根車外径寸法の限界値を設定しておく。この限界値から、径方向隙間Cの下限値Cを設定する。
【0030】
遠心圧縮機10の稼動中、定期的に径方向隙間Cを計測する。その計測方法は、例えば、径方向隙間Cをノギスや隙間ゲージで計測する。径方向隙間Cが下限値Cより小さくなっているか、又は次回点検時までに径方向隙間Cが下限値Cより小さくなるということが予想された場合に、羽根車12を交換するようにする。
なお、羽根車外径寸法の計測は、羽根車12の回転による遠心力及び熱膨脹等の影響を受けないように、遠心圧縮機10の稼動が停止し、冷却している常温時(20〜30℃)に行なう。クリープ歪みは永久歪みとして残るので、常温時に計測することで、正確な計測結果が得られる。また、計測方法は、例えば、羽根車12の周囲4箇所を計測し、これらの計測値の平均値を取る等の方法を採用する。
【0031】
本実施形態によれば、径方向隙間Cを定期的に計測することによって、羽根車28のクリープ歪みの伸展状況を把握できる。従って、羽根車12の取り外しや羽根車12からの試料採取等を必要とせず、羽根車12のクリープ破壊時期を判定できる。従って、羽根車12の交換時期を的確に判断できる。従って、羽根車12がクリープ破壊する前に羽根車12を確実に交換できると共に、羽根車12をクリープ破壊限界近くまで使用できるようになる。
【0032】
(実施形態2)
次に、本発明方法の第2実施形態を図2により説明する。本実施形態は、前記第1実施形態と同様に、舶用ディーゼル機関用過給機に用いられる遠心圧縮機に適用した例である。本実施形態では、羽根車外周面34に正対したラビリンスパッキン30の上端部31において、対向面36のうちディフューザ領域dに面した入口部に、羽根車外周面34に向かって突出した環状の突起部40を設けている。その他の遠心圧縮機10の構成は、第1実施形態と同一である。
【0033】
本実施形態では、羽根車外周面34と突起部40との径方向隙間Cを計測することで、羽根車12のクリープ伸展状態を把握できる。その計測方法は、径方向隙間Cをノギスや隙間ゲージで計測することも可能であるが、別な計測方法として、図3に示すように、突起部40に鉛線材46を固定しておくようにする。羽根車12のクリープ歪み(34→34’)によって鉛線材46に凹みができるので、その凹み量δを計測することによって、羽根車12のクリープ歪みを正確に計測できる。
そして、第1実施形態と同様に、羽根車12の限界寿命に対応した径方向隙間Cの下限値Cを設定し、この下限値Cmを基準に羽根車12の交換時期を判定する。
【0034】
本実施形態によれば、ラビリンスシール30の上端部31の対向面36に突起部40を設けたことにより、径方向隙間Cを第1実施形態の径方向隙間Cより小さく取ることができる。そのため、径方向隙間Cからラビリンスパッキン30を通ってシール空間sに漏れる漏れ流れlを低減できるので、羽根車12の過熱度を低減できる。
また、突起部40に鉛線材を固定し、鉛線材46の凹み量δを計測することにより、羽根車12のクリープ歪みを容易かつ精度良く計測できる。
【0035】
(実施形態3)
次に、本発明方法の第3実施形態を図4により説明する。本実施形態の構成は、前記第1実施形態と同一である。本実施形態では、ラビリンスパッキン30の凸片42と、羽根車12の背面28に設けられた凸片44との間の径方向隙間Cを計測して、羽根車12のクリープ伸展状況を把握する。
本実施形態では、羽根車12をロータ軸に装着したまま径方向隙間Cを計測することが困難である。そのため、計測方法は、一旦羽根車12をロータ軸から取り外し、図3に示すように、ラビリンスパッキン30の凸片42に鉛線材46を固定する。次に、羽根車12をロータ軸に装着し、遠心圧縮機10を稼動させる。遠心圧縮機10の稼動後、鉛線材46の凹み量δを計測することで、羽根車12のクリープ歪みを計測できる。
【0036】
なお、径方向隙間Cの計測は、ラビリンスパッキン30の各段の凸片間の径方向隙間Cを計測し、それらの計測値の平均値を算出してもよい。しかし、可能であれば、羽根車12の外周側でクリープ歪みが大きく現われるので、なるべく外周側に位置する凸片間の径方向隙間Cを計測するとよい。
【0037】
ラビリンスパッキン30の凸片間の隙間はもともと非常に小さい寸法であるため、本実施形態によれば、その径方向隙間Cを計測することにより、羽根車12のクリープ初期に発生する小さな歪みも正確に計測できる。
なお、前記実施形態は、いずれも舶用ディーゼル機関用過給機に適用された遠心圧縮機の例であるが、本発明はこれらに用途に限定されず、他の内燃機関等に適用される遠心圧縮機にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明によれば、遠心圧縮機の羽根車の寿命を簡単な手段で正確に把握して、そのクリープ破壊を回避できると共に、羽根車を最大限に使用できる。
【符号の説明】
【0039】
10 遠心圧縮機
12 羽根車
14 ハブ面
16 ブレード
18,24 ハウジング
20 ベアリングハウジング
22 隔壁
25,32 ボルト
26 シール用Oリング
28 羽根車背面
30 ラビリンスパッキン
34 羽根車外周面
36 対向面
40 突起部
42,44 凸片
46 鉛線材
、C、C 径方向隙間
下限値
d ディフューザ領域
l 漏れ流れ
s シール空間
δ 凹み量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心圧縮機の回転軸に装着された羽根車のクリープ歪みを検出し、該クリープ歪みの検出値から羽根車の寿命予測を行なう遠心圧縮機羽根車の寿命予測方法において、
遠心圧縮機稼動時の高温下における前記羽根車のクリープ歪みからクリープ破壊に至るクリープ特性を把握する前工程と、
遠心圧縮機の稼動前に羽根車外周面と羽根車外周面に正対する静止部壁面との径方向隙間を予め把握しておく隙間把握工程と、
遠心圧縮機の稼動後に該径方向隙間を計測し、この径方向隙間と該隙間把握工程で計測した径方向隙間との差から羽根車のクリープ歪みを求めるクリープ歪み計測工程と、
該クリープ歪みと前記クリープ特性とを比較して、羽根車の稼動限界時期を求める寿命予測工程と、からなることを特徴とする遠心圧縮機羽根車の寿命予測方法。
【請求項2】
前記径方向隙間の下限値を設定し、該下限値を羽根車使用限界値とすることを特徴とする請求項1に記載の遠心圧縮機羽根車の寿命予測方法。
【請求項3】
前記径方向隙間が、羽根車外周面と前記静止部壁面に羽根車外周面側に向けて突出形成された突起部との間の径方向隙間であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遠心圧縮機羽根車の寿命予測方法。
【請求項4】
遠心圧縮機の稼動前に羽根車外周面と前記突起部間に鉛線材を介在させておき、前記クリープ歪み計測工程で、遠心圧縮機稼動後に羽根車のクリープ歪みで形成された該鉛線材の凹み量から前記径方向隙間を求めるようにしたことを特徴とする請求項3に記載の遠心圧縮機羽根車の寿命予測方法。
【請求項5】
羽根車の背面と該背面に対面する静止部壁面間にラビリンスパッキンを設け、前記径方向隙間が、羽根車の背面及び静止部壁面に固定された該ラビリンスパッキンの凸片間の径方向隙間であることを特徴とする請求項1又は2に記載の遠心圧縮機羽根車の寿命予測方法。
【請求項6】
前記凸片間に鉛線材を介在させておき、前記クリープ歪み計測工程で、遠心圧縮機稼動後に羽根車のクリープ歪みで形成された鉛線材の凹み量から前記径方向隙間を求めるようにしたことを特徴とする請求項5に記載の遠心圧縮機羽根車の寿命予測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−111923(P2011−111923A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266871(P2009−266871)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】