説明

遮音パネル及び遮音方法

【課題】構造が簡単で軽量であるにも拘わらず、固体伝搬音及び空気伝搬音のいずれに対しても高い遮音性を有する遮音パネルを提供する。
【解決手段】湿熱接着性繊維を含み、この湿熱接着性繊維の融着により繊維が固定された不織繊維構造体2と面材3とで構成された遮音パネル1において、前記不織繊維構造体3の繊維接着率を3〜85%、見掛け密度を0.03〜0.7g/cmに調製する。前記不織繊維構造体は、見掛け密度0.03〜0.08g/cmを有する板状構造体であり、かつその両面に第1の面材と第2の面材とが積層されていてもよい。前記不織繊維構造体は、見掛け密度0.06〜0.5g/cmを有する桟材で構成し、かつ前記桟材を介して第1の面材と第2の面材とが積層されていてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物などの構成部材として使用され、軽量で高い遮音性を有する遮音パネル及び遮音方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、遮音を目的して、建築物のドア、壁、間仕切り、天井、床などの構成部材に使用されるパネル(遮音パネル)は、その音響透過損失を大きくすることによって遮音効果が達成されてきた。そして、音響透過損失は、質量則に従うことが広く知られている。しかし、木造や鉄骨構造等の軽量構造による建築物に使用する遮音パネルにおいて、その質量を大きくすることは、構造面の制約や経済的な制約から限界がある。特に可動間仕切りや建具には操作性を改善するために軽量性が求められる。
【0003】
軽量で音響透過損失の大きい遮音パネルとしては、一重壁(単板)構造のパネルでは遮音効果を向上させるのが困難であるため、二重壁構造の遮音パネルがよく知られている。二重壁構造の場合、表側の面材と裏側の面材とを間隔を隔てて固着するために木製や金属製の桟材が使用されるが、この桟材により固体伝播音が伝わり、遮音パネルの音響透過損失が低下する。さらに、二重壁構造における両側の面材の間隔を200mm程度設けると効果的であることが知られているが、室内空間を狭めるため、遮音パネルを厚くするには制限がある。そのため、厚みを薄くして必要な音響透過損失を確保するために、遮音パネルを形成する両側の面材間にグラスウールなどの吸音材を配置することが行われている。すなわち、軽量性を有する遮音パネル(軽量遮音パネル)を形成するためには、両側の面材の間隔を隔てて固着するために桟材が必要であり、かつ両側の面材間に吸音材を配置することが効果的である。
【0004】
そこで、軽量遮音パネルの一種として、特開平10−61342号公報(特許文献1)には、外枠と、この外枠の内外両面に添設した面板とで形成された二重壁構造を有するドア本体内に、前記内外両面板間に固着される弾性体からなる補強桟を配設した防音ドアが提案されている。この防音ドアでは、二重壁構造の空隙には、グラスウールなどの吸音部材が充填されており、前記桟材を発泡スチロールなどの弾性体で形成することにより、固体伝播音を低減している。
【0005】
しかし、このような弾性体は強度が小さいため、面材を押す力に対して十分な強度を確保するのが困難である。従って、パネルの周辺には強度を有する木質系材料や金属材料を使用せざるを得ない。また、遮音性を高めるために、二重壁構造に加えて、別途吸音部材を必要とする。さらに、このようなグラスウールなどの繊維状吸音部材は圧縮強度が殆どなく、自立性(形態安定性)がないため、桟材を必要とするが、桟材と繊維状吸音部材とで構成されたパネルを透過する音波が透過共鳴を起こし、遮音性が低下する。
【0006】
また、特開2000−250562号公報(特許文献2)には、縦桟、横桟及び中骨で方形状に骨組みされた枠体の内外両面に薄厚な表面板を貼着し、前記内外両表面板の裏面に複数枚の短冊状補強板からなる中桟を前記枠体の互いに対向する縦桟間及び横桟間に対して非接触状態で遊離させて交互に非対面状態でそれぞれ添設した防音パネルが提案されている。このパネルでは、二重壁構造の内外両表面板を固着する桟材が両表面板間で分離され、その間に緩衝体を介在させて非接触状態とするとともに、左右両側部の空間には、グラスウールなどの防火防音材を介在させている。
【0007】
しかし、このパネルでは、桟材の構成が複雑になる。また、パネルの周辺には強度を有する木質系材料や金属材料を使用せざるを得ず、遮音性を高めるために吸音部材を必要とする。
【0008】
さらに、国際公開WO2007/116676号公報(特許文献3)では、湿熱接着性繊維を含む不織繊維集合体を高温水蒸気で加熱処理することにより、不織繊維構造を有し、かつ厚み方向に均一な接着率で湿熱接着性繊維が融着した硬質の成形体が製造されている。この文献には、前記硬質成形体が建材用ボードとして利用できることが記載されている。
【0009】
しかし、硬質成形体は、独立したボードとして使用可能な形態安定性は有しているものの、繊維構造であるため、音波が透過し、遮音性が充分でない。さらに、この文献には、桟材や吸音部材で構成された遮音パネルの構造、周波数と遮音材との関係、相反する特性である軽量性と遮音性とを充足するための硬質成形体の特性などについては開示されていない。
【0010】
一方、遮音パネルは、用途によっては、透光性や透視性が要求され、例えば、特開2006−299789号公報(特許文献4)には、透光性の膜状材料及び透光性の多孔板を積層した透光性吸音材と、透明遮音材とを空間を隔ててパネル枠材に取り付けた透光性防音板が提案されている。この文献には、前記膜状材料として合成樹脂フィルムが例示され、前記多孔板として合成樹脂、ガラス、金属材料で形成された網状多孔体が例示されている。しかし、この透光性防音板では、遮音性と軽量性との両立は困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平10−61342号公報(請求項1、段落[0009][0010])
【特許文献2】特開2000−250562号公報(請求項1及び3、段落[0015])
【特許文献3】国際公開WO2007/116676号公報(請求の範囲、実施例)
【特許文献4】特開2006−299789号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、構造が簡単で軽量であるにも拘わらず、固体伝搬音及び空気伝搬音のいずれに対しても高い遮音性を有する遮音パネル及び遮音方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、透過共鳴による遮音効果の低下が抑制された遮音パネル及び遮音方法を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、広い周波域に亘り遮音性に優れた遮音パネル及び遮音方法を提供することにある。
【0015】
本発明の別の目的は、各種の面材を高い密着力で簡便にパネル表面に形成できる遮音パネル及び遮音方法を提供することにある。
【0016】
本発明のさらに別の目的は、透光性にも優れた遮音パネルを提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、高周波数域の周波数の音波に対して高い遮音性を有する遮音パネル及び遮音方法を提供することにある
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、繊維が湿熱接着性繊維により適度に接着された不織繊維構造体と面材とを組み合わせると、構造が簡単で軽量であるにも拘わらず、固体伝搬音及び空気伝搬音のいずれに対しても遮音性を向上できることを見出し、本発明を完成した。
【0019】
すなわち、本発明の遮音パネルは、湿熱接着性繊維を含み、この湿熱接着性繊維の融着により繊維が固定された不織繊維構造体と面材とで構成された遮音パネルであって、前記不織繊維構造体の繊維接着率は3〜85%であり、かつ見掛け密度が0.03〜0.7g/cmである。前記不織繊維構造体は、見掛け密度0.03〜0.08g/cmを有する板状構造体であり、かつその両面に第1の面材と第2の面材とが積層されていてもよい。前記不織繊維構造体は、見掛け密度0.03〜0.5g/cm(特に、0.06〜0.5g/cm)を有する桟材を構成し、かつ前記桟材を介して第1の面材と第2の面材とが積層されていてもよい。本発明の遮音パネルは、厚みが20〜100mmであり、不織繊維構造体と面材との厚み比が、不織繊維構造体/面材=50/1〜1/2程度であってもよい。特に、面材が透光性を有するとともに、不織繊維構造体の一方の面に対して垂直に入射し、他方の面を透過する光において、他方の面の法線に対して平行な方向における透過光強度に対する前記法線に対して45°の方向における透過光強度の比が50%以上であり、かつ不織繊維構造体と面材との厚み比が、不織繊維構造体/面材=30/1〜10/1程度であってもよい。前記不織繊維構造体と前記面材とは接着剤又は粘着剤で接合されていてもよい。前記不織繊維構造体は、下記(1)〜(3)の特性を有していてもよい。
【0020】
(1)湿熱接着性繊維が、繊維表面において長さ方向に連続する湿熱接着性樹脂を含む
(2)厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の領域における繊維接着率がいずれも3〜85%であり、かつ各領域における繊維接着率の最大値に対する最小値の割合が50%以上である
(3)少なくとも一方向における最大曲げ応力が0.05MPa以上であり、最大曲げ応力を示す曲げ量に対して1.5倍の曲げ量における曲げ応力が、最大曲げ応力に対して1/5以上である。
【0021】
さらに、本発明には、前記遮音パネルを用いた遮音方法も含まれる。
【0022】
なお、本明細書中、「桟材」とは、第1の面材と第2の面材との間に部分的に介在し、両面材の間に空隙部(空間部)を形成するための柱材を意味する。
【発明の効果】
【0023】
本発明では、湿熱接着性繊維により適度に固定された不織繊維構造体と面材とで構成されているため、構造が簡単で軽量であるにも拘わらず、固体伝搬音及び空気伝搬音のいずれに対しても遮音性を向上できる。さらに、不織繊維構造体は、繊維構造を有し、かつ強度(剛性又は硬度)も高く、吸音性を有する成形体(パネル構成部材)又は桟材となり得るため、従来の桟材及び繊維状吸音材は不要であり、桟材の影響により繊維状吸音材が透過共鳴を起こし、遮音効果が低下することも抑制できる。また、低周波域も含めて、広い周波域に亘り遮音性に優れるだけでなく、高周波数域の周波数の音波に対しても、高い吸音及び遮音性を有するため、工事現場や幹線道路、飛行場など、騒音の大きい場所での使用にも適している。また、不織繊維構造体は、繊維構造を有するため、接着剤や粘着剤との接着性にも優れ、各種の面材を高い密着力で簡便にパネル表面に形成でき、面材の選択性も広い。さらに、不織繊維構造体は、透光性に優れるため、透明樹脂板などの透光性を有する面材と組み合わせることにより、遮音パネルの透光性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は、遮音パネルの構造の一例を示す部分切り欠き概略斜視図である。
【図2】図2は、遮音パネルの構造の他の例を示す部分切り欠き概略斜視図である。
【図3】図3は、実験例1における遮音パネルの音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【図4】図4は、実験例2における遮音パネルの音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【図5】図5は、実験例3における遮音パネルの音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【図6】図6は、実験例4における遮音パネルの音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【図7】図7は、実験例5における遮音パネルの音響透過損失の測定結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の遮音パネル(吸音パネル又は防音パネル)は、湿熱接着性繊維を含む不織繊維構造体と面材とで構成されている。
【0026】
(不織繊維構造体)
不織繊維構造体は、湿熱接着性繊維を含み、かつ不織繊維構造を有する成形体である。さらに、本発明における不織繊維構造体は、前記湿熱接着性繊維の融着により繊維が固定されており、繊維構造に特有の高い吸音断熱性、衝撃吸収性を有するとともに、不織繊維構造を構成する繊維の配列と、この繊維同士の接着状態を調整することにより、通常の不織布では得られない曲げ挙動と軽量性とを両立し、さらに折れ難く、形態保持性及び通気性をも同時に確保している。
【0027】
このような不織繊維構造体は、後述するように、前記湿熱接着性繊維を含むウェブに高温(過熱又は加熱)水蒸気を作用させて、湿熱接着性繊維の融点以下の温度で接着作用を発現し、繊維同士を部分的に接着させることにより得られる。すなわち、単繊維及び束状集束繊維同士を湿熱下、適度に小さな空隙を保持しながら、いわば「スクラム」を組むように点接着又は部分接着させて得られる。
【0028】
湿熱接着性繊維は、少なくとも湿熱接着性樹脂で構成されている。湿熱接着性樹脂は、高温水蒸気によって容易に実現可能な温度において、流動又は容易に変形して接着機能を発現可能であればよい。具体的には、熱水(例えば、80〜120℃、特に95〜100℃程度)で軟化して自己接着又は他の繊維に接着可能な熱可塑性樹脂、例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体などのビニルアルコール系重合体、ポリ乳酸などのポリ乳酸系樹脂、(メタ)アクリルアミド単位を含む(メタ)アクリル系共重合体などが挙げられる。さらに、高温水蒸気により容易に流動又は変形して接着可能なエラストマー(例えば、ポリオレフィン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、ポリウレタン系エラストマー、スチレン系エラストマーなど)などであってもよい。これらの湿熱接着性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、特に、エチレンやプロピレンなどのα−C2−10オレフィン単位を含むビニルアルコール系重合体、特に、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が好ましい。
【0029】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体において、エチレン単位の含有量(共重合割合)は、例えば、5〜65モル%(例えば、10〜65モル%)、好ましくは20〜55モル%、さらに好ましくは30〜50モル%程度である。エチレン単位がこの範囲にあることにより、湿熱接着性を有するが、熱水溶解性はないという特異な性質が得られる。エチレン単位の割合が少なすぎると、エチレン−ビニルアルコール系共重合体が、低温の蒸気(水)で容易に膨潤又はゲル化し、水に一度濡れただけで形態が変化し易い。一方、エチレン単位の割合が多すぎると、吸湿性が低下し、湿熱による繊維融着が発現し難くなるため、実用性のある強度の確保が困難となる。エチレン単位の割合が、特に30〜50モル%の範囲にあると、シート又は板状への加工性が特に優れる。
【0030】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体におけるビニルアルコール単位のケン化度は、例えば、90〜99.99モル%程度であり、好ましくは95〜99.98モル%、さらに好ましくは96〜99.97モル%程度である。ケン化度が小さすぎると、熱安定性が低下し、熱分解やゲル化によって安定性が低下する。一方、ケン化度が大きすぎると、繊維自体の製造が困難となる。
【0031】
エチレン−ビニルアルコール系共重合体の粘度平均重合度は、必要に応じて選択できるが、例えば、200〜2500、好ましくは300〜2000、さらに好ましくは400〜1500程度である。重合度がこの範囲にあると、紡糸性と湿熱接着性とのバランスに優れる。
【0032】
湿熱接着性繊維の横断面形状(繊維の長さ方向に垂直な断面形状)は、一般的な中実断面形状である丸型断面や異型断面[偏平状、楕円状、多角形状など]に限定されず、中空断面状などであってもよい。湿熱接着性繊維は、少なくとも湿熱接着性樹脂を含む複数の樹脂で構成された複合繊維であってもよい。複合繊維は、湿熱接着性樹脂を少なくとも繊維表面の一部に有していればよいが、接着性の点から、繊維表面において長さ方向に連続する湿熱接着性樹脂を有するのが好ましい。湿熱接着性樹脂の被覆率は、例えば、50%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上である。
【0033】
湿熱接着性樹脂が表面を占める複合繊維の横断面構造としては、例えば、芯鞘型、海島型、サイドバイサイド型又は多層貼合型、放射状貼合型、ランダム複合型などが挙げられる。これらの横断面構造のうち、接着性が高い構造である点から、湿熱接着性樹脂が繊維の全表面を被覆する構造である芯鞘型構造(すなわち、鞘部が湿熱接着性樹脂で構成された芯鞘型構造)が好ましい。芯鞘型構造は、他の繊維形成性重合体で構成された繊維の表面に湿熱接着性樹脂をコーティングした繊維であってもよい。
【0034】
複合繊維の場合、湿熱接着性樹脂同士を組み合わせてもよいが、非湿熱接着性樹脂と組み合わせてもよい。非湿熱接着性樹脂としては、非水溶性又は疎水性樹脂、例えば、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。これらの非湿熱接着性樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0035】
これらの非湿熱接着性樹脂のうち、耐熱性及び寸法安定性の点から、融点が湿熱接着性樹脂(特にエチレン−ビニルアルコール系共重合体)よりも高い樹脂、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、特に、耐熱性や繊維形成性などのバランスに優れる点から、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂が好ましい。
【0036】
ポリエステル系樹脂としては、ポリC2−4アルキレンアリレート系樹脂などの芳香族ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなど)、特に、PETなどのポリエチレンテレフタレート系樹脂が好ましい。ポリエチレンテレフタレート系樹脂は、エチレンテレフタレート単位の他に、他のジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、フタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、ビス(カルボキシフェニル)エタン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸など)やジオール(例えば、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなど)で構成された単位を20モル%以下程度の割合で含んでいてもよい。
【0037】
ポリアミド系樹脂としては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド10、ポリアミド12、ポリアミド6−12などの脂肪族ポリアミドおよびその共重合体、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとから合成された半芳香族ポリアミドなどが好ましい。これらのポリアミド系樹脂にも、共重合可能な他の単位が含まれていてもよい。
【0038】
湿熱接着性樹脂と非湿熱接着性樹脂(繊維形成性重合体)とで構成された複合繊維の場合、両者の割合(質量比)は、構造(例えば、芯鞘型構造)に応じて選択でき、湿熱接着性樹脂が表面に存在すれば特に限定されないが、例えば、湿熱接着性樹脂/非湿熱接着性樹脂=90/10〜10/90、好ましくは80/20〜15/85、さらに好ましくは60/40〜20/80程度である。湿熱接着性樹脂の割合が多すぎると、繊維の強度を確保し難く、湿熱接着性樹脂の割合が少なすぎると、繊維表面の長さ方向に連続して湿熱接着性樹脂を存在させるのが困難となり、湿熱接着性が低下する。この傾向は、湿熱接着性樹脂を非湿熱接着性繊維の表面にコートする場合においても同様である。
【0039】
湿熱接着性繊維の平均繊度は、用途に応じて、例えば、0.01〜100dtex程度の範囲から選択でき、好ましくは0.1〜50dtex、さらに好ましくは0.5〜30dtex(特に1〜10dtex)程度である。平均繊度がこの範囲にあると、繊維の強度と湿熱接着性の発現とのバランスに優れる。
【0040】
湿熱接着性繊維の平均繊維長は、例えば、10〜100mm程度の範囲から選択でき、好ましくは20〜80mm、さらに好ましくは25〜75mm程度である。平均繊維長がこの範囲にあると、繊維が充分に絡み合うため、繊維構造体の機械的強度が向上する。
【0041】
湿熱接着性繊維の捲縮率は、例えば、1〜50%、好ましくは3〜40%、さらに好ましくは5〜30%程度である。また、捲縮数は、例えば、1〜100個/25mm、好ましくは5〜50個/25mm、さらに好ましくは10〜30個/25mm程度である。
【0042】
不織繊維構造体は、前記湿熱接着性繊維に加えて、さらに非湿熱接着性繊維を含んでいてもよい。非湿熱接着性繊維としては、前記複合繊維を構成する非湿熱接着性樹脂で構成された繊維の他、セルロース系繊維(例えば、レーヨン繊維、アセテート繊維など)などが挙げられる。これらの非湿熱接着性繊維は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの非湿熱接着性繊維は、目的の特性に応じて選択でき、レーヨンなどの半合成繊維と組み合わせると、相対的に高密度で機械的特性の高い繊維構造体が得られる。
【0043】
湿熱接着性繊維と非湿熱接着性繊維との割合(質量比)は、パネルの種類や用途に応じて、湿熱接着性繊維/非湿熱接着性繊維=100/0〜20/80(例えば、99/1〜20/80)、好ましくは100/0〜50/50(例えば、95/5〜50/50)、さらに好ましくは100/0〜70/30程度である。湿熱接着性繊維の割合が少なすぎると、硬度が低下し、繊維構造体としての取り扱い性の保持が困難となる。
【0044】
繊維構造体(又は繊維)は、さらに、慣用の添加剤、例えば、安定剤(銅化合物などの熱安定剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤など)、分散剤、増粘剤、微粒子、着色剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤、滑剤、抗菌剤、防虫・防ダニ剤、防カビ剤、つや消し剤、蓄熱剤、香料、蛍光増白剤、湿潤剤などを含有していてもよい。これらの添加剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの添加剤は、構造体表面に担持されていてもよく、繊維中に含まれていてもよい。
【0045】
なお、不織繊維構造体は、難燃性が要求される用途に使用される場合、難燃剤を添加するのが効果的である。難燃剤は、慣用の無機系難燃剤や有機系難燃剤を使用でき、汎用され且つ難燃効果の高いハロゲン系難燃剤やリン系難燃剤であってもよいが、ハロゲン系難燃剤は燃焼時のハロゲンガスの発生に伴う酸性雨の問題を有し、リン系難燃剤は加水分解によるリン化合物流出に伴う湖沼の富栄養化の問題を有している。従って、本発明では、難燃剤としては、これらの問題を回避し、高い難燃性を発揮できる点から、ホウ素系難燃剤及び/又はケイ素系難燃剤を用いるのが好ましい。
【0046】
ホウ素系難燃剤としては、例えば、ホウ酸(オルトホウ酸、メタホウ酸など)、ホウ酸塩[例えば、四ホウ酸ナトリウムなどのアルカリ金属ホウ酸塩、メタホウ酸バリウムなどのアルカリ土類金属塩、ホウ酸亜鉛などの遷移金属塩など]、縮合ホウ酸(塩)(ピロホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸、八ホウ酸又はこれらの金属塩など)などが挙げられる。これらのホウ素系難燃剤は、含水物(例えば、含水四ホウ酸ナトリウムであるホウ砂など)であってもよい。これらのホウ素系難燃剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0047】
ケイ素系難燃剤としては、例えば、ポリオルガノシロキサンなどのシリコーン化合物、シリカやコロイダルシリカなどの酸化物、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、アルミノケイ酸マグネシウムなどの金属ケイ酸塩などが挙げられる。
【0048】
これらの難燃剤は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。これらの難燃剤のうち、ホウ酸やホウ砂などのホウ素系難燃剤を主成分とするのが好ましい。特に、ホウ酸とホウ砂とを組み合わせるのが好ましく、両者の割合(質量比)は、ホウ酸/ホウ砂=90/10〜10/90、好ましくは60/40〜30/70程度である。ホウ酸及びホウ砂は、水溶液として難燃加工に供してもよく、例えば、水100質量部に対して、ホウ酸を10〜35質量部及びホウ砂を15〜45質量部程度加えて溶解させて水溶液に調製してもよい。
【0049】
難燃剤の割合は、不織繊維構造体の用途に応じて選択すればよく、例えば、不織繊維構造体の全質量に対して、例えば、1〜300質量%、好ましくは5〜200質量%、さらに好ましくは10〜150質量%程度である。
【0050】
難燃化の方法としては、慣用のディップ−ニップ加工と同様にして、繊維構造体に難燃剤を含有する水溶液やエマルジョンを含浸又は噴霧した後に乾燥させる方法、繊維紡糸時に二軸押出機などで難燃剤を混練した樹脂を押出して紡糸し、この繊維を用いる方法などを使用できる。
【0051】
(不織繊維構造体の特性)
不織繊維構造体において、高い硬度(形態安定性)を有するとともに、吸音性と軽量(低密度)性とをバランスよく備えた不織繊維構造を有するためには、前記不織繊維のウェブを構成する繊維の配列状態及び接着状態が適度に調整されている必要がある。すなわち、繊維ウェブを構成する繊維が、概ね繊維ウェブ(不織繊維)面に対して平行に配列しながら、お互いに交差するように各繊維が配列して交点で融着しているのが好ましい。特に、高い形態安定性が要求される繊維構造体は、交点以外の繊維が略平行に並んでいる部分において、数本〜数十本程度で束状に融着した束状融着繊維を形成していてもよい。これらの繊維が、単繊維同士の交点、束状繊維同士の交点、又は単繊維と束状繊維との交点において融着した構造を部分的に形成することにより、「スクラム」を組んだような構造(繊維が交点部で接着し、網目のように絡み合った構造、又は交点で繊維が接着し隣接する繊維を互いに拘束する構造)とし、目的とする曲げ挙動や表面硬度などを発現させることができる。本発明では、このような構造が、繊維ウェブの面方向及び厚み方向に沿って概ね均一に分布するような形態とするのが望ましい。本発明では、繊維が振動可能な構造に保持されているため、優れた吸音性を示すとともに、交点での融着により、優れた機械的特性も有している。
【0052】
ここでいう「概ね繊維ウェブ面に対し平行に配列している」とは、局部的に多数の繊維が厚み方向に沿って配列している部分が繰り返し存在するようなことがない状態を示す。より具体的には、構造体の繊維ウェブにおける任意の断面を顕微鏡観察した際に、繊維ウェブでの厚さの30%以上に亘り、厚み方向に連続して延びる繊維の存在割合(本数割合)が、その断面における全繊維に対して10%以下(特に5%以下)である状態をいう。
【0053】
さらに、不織繊維構造体において、不織繊維構造を構成する繊維が前記湿熱接着性繊維の融着による繊維接着率は3〜85%(例えば、5〜60%)、好ましくは5〜50%(例えば、6〜40%)、さらに好ましくは6〜35%(特に10〜35%)程度である。本発明では、このような範囲で繊維が接着されているため、各繊維の自由度が高く、高い吸音性を発現できる。さらに、遮音パネルに強度が要求される用途の場合には、繊維接着率は、例えば、10〜85%、好ましくは20〜80%、さらに好ましくは30〜75%程度であってもよい。
【0054】
本発明における繊維接着率は、後述する実施例に記載の方法で測定できるが、不織繊維断面における全繊維の断面数に対して、2本以上接着した繊維の断面数の割合を示す。従って、繊維接着率が低いことは、複数の繊維同士が融着する割合(集束して融着した繊維の割合)が少ないことを意味する。
【0055】
本発明では、さらに、不織繊維構造を構成する繊維は、各々の繊維の接点で接着しているが、できるだけ少ない接点数で大きな曲げ応力を発現するためには、この接着点が、厚み方向に沿って、繊維構造体表面から内部(中央)、そして裏面に至るまで、均一に分布しているのが好ましい。接着点が表面又は内部などに集中すると、優れた機械的特性及び成形性を確保するのが困難となるだけでなく、接着点の少ない部分における形態安定性が低下する。
【0056】
従って、繊維構造体の厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の領域における繊維接着率がいずれも前記範囲にあるのが好ましい。さらに、各領域における繊維接着率の最大値に対する最小値の割合(最小値/最大値)(繊維接着率が最大の領域に対する最小の領域の比率)が、例えば、50%以上(例えば、50〜100%)、好ましくは55〜99%、さらに好ましくは60〜98%(特に70〜97%)程度である。本発明では、繊維接着率が、厚み方向において、このような均一性を有しているため、繊維の接着面積が低いにも拘わらず、硬さや曲げ強度、耐折性や靱性も優れている。さらに、繊維の接着面積が低いため、自由に振動可能な繊維が多く、優れた振動吸収性を有している。そのため、面材を通過してきた音波は、不織繊維構造体により吸音され、固体伝播音を軽減することができる。すなわち、本発明における不織繊維構造体は、ボードしとての機械的特性と、繊維構造体としての吸音性とを両立している。
【0057】
繊維接着率は、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、不織繊維構造体の断面を拡大した写真を撮影し、所定の領域において、接着した繊維断面の数に基づいて簡便に測定できる。しかし、束状に繊維が融着している場合には、各繊維が束状に又は交点で融着しているため、特に密度が高い場合には、繊維単体として観察することが困難になり易い。この場合、例えば、繊維構造体が湿熱接着性繊維で構成された鞘部と繊維形成性重合体で構成された芯部とで形成された芯鞘型複合繊維で接着されている場合には、融解や洗浄除去などの手段で接着部の融着を解除し、解除前の切断面と比較することにより繊維接着率を測定できる。
【0058】
繊維構造体は、靱性及び曲げ応力が高く、優れた曲げ挙動を示すことも特徴の一つである。本発明では、この曲げ挙動を表すため、JIS K7017「繊維強化プラスチック−曲げ特性の求め方」に準じて、サンプルを徐々に曲げたときに生ずるサンプルの反発力を測定し、最大応力(ピーク応力)を曲げ応力として表し、曲げ挙動の指標として用いた。すなわち、この曲げ応力が大きいほど硬い構造体であり、さらに測定対象物が破壊するまでの曲げ量(変位)が大きい程よく曲がる構造体である。
【0059】
繊維構造体は、少なくとも一方向(好ましくは全ての方向)における最大曲げ応力が0.05MPa以上であり、好ましくは0.1〜30MPa、さらに好ましくは0.15〜20MPa(特に0.2〜10MPa)程度であってもよい。この最大曲げ応力が小さすぎると、板状で使用したときに自重やわずかな荷重により簡単に折れ易い。また、最大曲げ応力が高すぎると、硬くなり過ぎて、応力のピークを過ぎて折り曲げると折れて破損し易くなる。
【0060】
この曲げ量(変位)とそれによる曲げ応力との相関を見ると、最初、曲げ量の増加とともに応力も増加し、例えば、略直線的に増加する。本発明における繊維構造体において、測定サンプルが固有の曲げ量に到達すると、その後は徐々に応力が低くなる。すなわち、曲げ量と応力とをグラフにすると、上に凸の放物線状にカーブを描く相関関係を示す。本発明における繊維構造体は、最大曲げ応力(曲げ応力のピーク)を超えて、さらに曲げようとした場合においても、急激な応力降下を生じることなく、いわゆる「粘り(又は靱性)」を有することも特徴の一つである。本発明では、このような「粘り」を表す指標として、曲げ応力のピーク時の曲げ量(変位)を超えた状態において残っている曲げ応力を用いることができる。すなわち、本発明における繊維構造体は、最大曲げ応力を示す曲げ量の1.5倍の変位まで曲げた時の応力(以下、「1.5倍変位応力」と称することがある)が、最大曲げ応力(ピーク応力値)の1/10以上を維持しており、好ましくは3/10以上(例えば、3/10〜1)、さらに好ましくは5/10以上(例えば、5/10〜9/10)程度維持していてもよい。
【0061】
繊維構造体は、繊維間に生ずる空隙により高い軽量性を確保できる。また、これらの空隙は、独立した空隙ではなく連続しているため、高い通気性を有している。このような構造は、樹脂を含浸する方法や、表面部分を密に接着させてフィルム状構造を形成する方法など、これまでの一般的な硬質化手法では製造することが極めて困難な構造である。
【0062】
すなわち、不織繊維構造体は低密度であり、具体的には、見掛け密度は、例えば、0.03〜0.7g/cm、好ましくは0.035〜0.4g/cm、さらに好ましくは0.04〜0.35g/cm程度である。見かけ密度が低すぎると、吸音性が高く軽量ではあるものの、曲げ硬さが低下し、逆に高すぎると、硬さは確保できるものの、吸音性及び軽量性が低下する。
【0063】
さらに、見掛け密度は、遮音パネルの構造や用途に応じて選択でき、不織繊維構造体が板状であり、透光性に優れたパネルの場合、例えば、0.03〜0.08g/cm、好ましくは0.032〜0.07g/cm、さらに好ましくは0.035〜0.06g/cm(特に0.035〜0.05g/cm)程度であってもよい。本発明では、このような低密度であっても、優れた遮音性を発現でき、かつ強度も高いため、薄くて軽量で、従来の桟材(非繊維物質で構成された桟材)を必要としない新規な遮音パネルを提供できる。
【0064】
さらに、見掛け密度は、遮音パネルが透光性を必要としない用途や、桟材として使用される場合、0.03〜0.5g/cm(例えば、0.04〜0.5g/cm)程度の範囲から選択でき、例えば、0.05〜0.5g/cm(例えば、0.06〜0.5g/cm)、好ましくは0.07〜0.3g/cm、さらに好ましくは0.08〜0.2g/cm程度であってもよい。
【0065】
不織繊維構造体の目付は、例えば、50〜10000g/m程度の範囲から選択でき、好ましくは100〜8000g/m、さらに好ましくは200〜6000g/m程度である。目付が小さすぎると、硬さを確保することが難しく、また、目付が大きすぎると、ウェブが厚すぎて湿熱加工において、高温水蒸気が充分にウェブ内部に入り込めず、厚み方向に均一な構造体とするのが困難になる。
【0066】
さらに、目付も、遮音パネルの構造や用途に応じて選択でき、不織繊維構造体が板状であり、透光性に優れたパネルの場合、例えば、100〜1000g/m、好ましくは150〜800g/m、さらに好ましくは200〜500g/m程度であってもよい。さらに、遮音パネルが透光性を必要としない用途や、桟材として使用される場合、例えば、300〜5000g/m、好ましくは500〜3000g/m、さらに好ましくは600〜1000g/m程度であってもよい。
【0067】
不織繊維構造体は、透光性にも優れており、特に、前記密度や目付を調整することにより、高い透光性を実現することもできる。さらに、本発明の不織繊維構造体は、透光性だけでなく、透過光の拡散性に優れており、具体的には、不織繊維構造体の一方の面に対して垂直に入射し、他方の面を透過する光において、他方の面の法線に対して平行な方向における透過光強度(法線とのなす角が0°における透過光強度)に対する前記法線に対して45°の方向における透過光強度(法線とのなす角が45°における透過光強度)の比(45°透過光強度/平行透過光強度)が50%以上(例えば、50〜85%)、好ましくは55〜85%、さらに好ましくは60〜80%程度である。すなわち、本発明の不織構造体は、透過光に対して拡散性を有しているため、建築物の壁面などに用いた場合、室内の明度を均質にできるとともに、日光や照明光を和らげる効果を有する。
【0068】
不織繊維構造体の厚みは、特に限定されないが、1〜100mm程度の範囲から選択でき、例えば、3〜50mm、好ましくは5〜45mm(特に10〜35mm)程度である。厚みが薄すぎると、吸音性が低下するとともに、硬さの確保が難しくなり、厚すぎると、質量が重くなるため、取扱性が低下する。
【0069】
さらに、軽量性を向上させる点から、低めの密度(例えば、0.035〜0.045g/cm程度)を有する不織繊維構造体において、厚みを10〜60mm、好ましくは20〜50mm、さらに好ましくは30〜45mm程度とすることにより、軽量でかつ遮音性に優れたパネルを調製できる。
【0070】
さらに、本発明における構造体は、不織繊維構造を有するため、通気性に優れており、構造体に面材を接着する場合、構造体と面材との間の空気が構造体を通して抜けることにより、面材貼付後の面材の浮き、剥がれを回避できる。また、貼り付けた面材の接着剤が表面の構成繊維に貼り付くとともに、繊維空隙に楔の如く入り込むため、強固な接着を実現できる。
【0071】
具体的にはフラジール形法による通気度が0.1cm/(cm・秒)以上[例えば、0.1〜300cm/(cm・秒)]、好ましくは1〜250cm/(cm・秒)、さらに好ましくは5〜200cm/(cm・秒)程度である。通気度が小さすぎると、構造体に空気を通過させるために外部から圧力を加える必要が生じ、自然な空気の出入が困難となる。一方、通気度が大き過ぎると、通気性は高くなるが、構造体内の繊維空隙が大きくなりすぎ、吸音性及び曲げ応力が低下する。
【0072】
さらに、本発明における不織繊維構造体は、前述の如く、繊維接着点を厚み方向に均一に有するため、良好な形態保持性も有している。すなわち、通常の繊維構造体では、バインダーなどにより必要な曲げ硬さを確保できたとしても、基本的に繊維同士の接着が少ないため、例えば5mm角程度の小片にカットした場合、わずかな外力により構造体を構成する繊維が離脱し、最終的には繊維毎に細分化されてしまう。これに対し、本発明における繊維構造体は、繊維同士が緻密にかつ均一に接着しているため、小片にカットした場合でも繊維単位に細分化されず、充分に形態を保持できる。これは構造体を切断した際の発塵性が小さいことも意味している。
【0073】
(不織繊維構造体の製造方法)
不織繊維構造体の製造方法では、まず、前記湿熱接着性繊維を含む繊維をウェブ化する。ウェブの形成方法としては、慣用の方法、例えば、スパンボンド法、メルトブロー法などの直接法、メルトブロー繊維やステープル繊維などを用いたカード法、エアレイ法などの乾式法などを利用できる。これらの方法のうち、メルトブロー繊維やステープル繊維を用いたカード法、特にステープル繊維を用いたカード法が汎用される。ステープル繊維を用いて得られたウェブとしては、例えば、ランダムウェブ、セミランダムウェブ、パラレルウェブ、クロスラップウェブなどが挙げられる。これらのウェブのうち、束状融着繊維の割合を多くする場合には、セミランダムウェブ、パラレルウェブが好ましい。
【0074】
次に、得られた繊維ウェブは、ベルトコンベアにより次工程へ送られ、次いで過熱又は高温蒸気(高圧スチーム)流に晒されることにより、不織繊維構造を有する構造体が得られる。すなわち、ベルトコンベアで運搬された繊維ウェブは、蒸気噴射装置のノズルから噴出される高速高温水蒸気流の中を通過する際、吹き付けられた高温水蒸気により繊維同士が三次元的に接着される。特に、本発明における繊維ウェブは通気性を有しているため、高温水蒸気が内部にまで浸透し、略均一な融着状態を有する構造体を得ることができる。
【0075】
不織繊維構造体は、具体的には、温度70〜150℃、好ましくは80〜120℃、さらに好ましくは90〜110℃程度の高温水蒸気を、前記繊維ウェブに対して、圧力0.1〜2MPa、好ましくは0.2〜1.5MPa、さらに好ましくは0.3〜1MPa程度、処理速度200m/分以下、好ましくは0.1〜100m/分、さらに好ましくは1〜50m/分程度で噴射する方法により得られるが、詳細な製造方法については、国際公開WO2007/116676号公報(特許文献3)に記載の製造方法を利用できる。
【0076】
得られた不織繊維構造体は、通常、板状又はシート状成形体として得られ、切断加工などにより利用されるが、必要に応じて慣用の熱成形により二次成形してもよい。熱成形としては、例えば、圧縮成形、圧空成形(押出圧空成形、熱板圧空成形、真空圧空成形など)、自由吹込成形、真空成形、折り曲げ加工、マッチドモールド成形、熱板成形、湿熱プレス成形などが利用できる。
【0077】
不織繊維構造体(成形体)は、前記繊維で構成されたウェブから得られる不織繊維構造を有しており、その形状は用途に応じて選択でき、断面円形又は楕円形状、多角形状であってもよいが、通常、シート状又は板状である。桟材の場合、対向する平面を有する形状であればよく、例えば、四角柱状や円柱状などが挙げられるが、シート状構造体を切断又はくり抜き加工することにより、容易に製造できる。さらに、不織構造体が四角柱状などの桟材であると、軽量性に優れるとともに、広い周波数域の音波に対して吸音及び遮音性を示し、特に、高周波数域の周波数の音波に対して高い吸音及び遮音性を示すため、大騒音や金属音などが発生する場所での使用にも好適である。
【0078】
(面材)
本発明では、前記不織繊維構造体と面材とを積層することにより、遮音性を向上できる。面材としては、板状又はシート状であれば特に限定されず、各種の無機系面材及び有機系面材を使用できる。
【0079】
無機系面材としては、例えば、石膏ボード、珪酸カルシウム板、ガラス板、金属板(例えば、アルミニウム板、ステンレススチール、鋼板など)などが挙げられる。有機系面材としては、例えば、木質系ボード[例えば、無垢材、合板(積層木質ボード)、木質繊維ボード(MDF)など]、合成樹脂板[例えば、ポリエチレン板、ポリプロピレン板、ポリスチレン板、ポリ塩化ビニル樹脂板(塩ビ樹脂板)、ポリメタクリル酸メチル板(アクリル樹脂板)、ポリエステル板、ポリカーボネート樹脂板、ポリアミド樹脂板など]などが挙げられる。さらに、塩ビ鋼板(ポリ塩化ビニル被覆金属板)などの無機系と有機系との複合系又は積層系面材であってもよい。これらの面材は、用途に応じて選択でき、例えば、高度な軽量性が要求される用途では、合板やMDFなどの木質系ボード、アルミニウム板などの軽量金属板などが好適であり、透光性が要求される用途では、アクリル樹脂板、ポリカーボネート樹脂板、透明塩ビ樹脂板などの透明樹脂板、ガラス板などが好適である。また、第1の面材と第2の面材とを使用する場合、両面材は同一の面材であってもよく、異なる種類の面材であってもよい。例えば、一方の面材として金属板や合板を使用し、反射体のような効果を付与してもよい。
【0080】
面材の平面サイズも特に限定されず、要求される遮音パネルに応じて、100mm〜10m程度の範囲から適宜選択できる。建築用途に使用する場合は、例えば、910mm×1820mm、1000mm×2000mmなどの平面寸法で使用されることが多い。
【0081】
面材の厚みも、用途及び材質に応じて0.1〜100mm程度の範囲から選択できるが、軽量性と遮音性とを両立できる点から、例えば、0.5〜50mm、好ましくは1〜30mm、さらに好ましくは2〜20mm(特に3〜10mm)程度である。本発明では、数mm程度の厚みであっても、高い遮音性を発現できる。特に、薄肉性と軽量性とが要求される用途では、合成樹脂板などで構成された面材において、例えば、0.5〜5mm、好ましくは1〜4mm、さらに好ましくは1.5〜3mm程度であってもよく、本発明では、このような薄肉の面材であっても、高い遮音性を発現できる。なお、第1の面材と第2の面材とは、厚みが異なっていてよく、同一であってもよい。
【0082】
なお、各種の厚みを有する面材が市販されており、例えば、石膏ボードでは9.5mm、12mm、15mm、21mmなどの規格品が市販されており、アクリル樹脂板では1mmごとに市販されているため、所望の遮音性となるように、市販の面材を重ね貼りしてもよい。特に、厚みを調整したり、異種の面材を組み合わせて、単層のパネルで見られるコインシデンス効果による遮音性能の落ち込みを軽減してもよい。
【0083】
(遮音パネル)
本発明の遮音パネルは、前記不織繊維構造体と前記面材とで構成されており、面材の一方の面に板状の不織繊維構造体が形成された積層体であってもよいが、遮音性や汎用性などの点から、不織繊維構造体を介して、第1の面材と第2の面材とが積層される二重壁構造のパネルが好ましい。
【0084】
二重壁構造のパネルとしては、例えば、板状の不織繊維構造体の両面に第1の面材と第2の面材が積層されたパネル、不織繊維構造体で構成された桟材を介して第1の面材と第2の面材とが積層されたパネルなどが挙げられる。本発明では、吸音性を有する繊維構造体が、パネルの構成部材となるため、従来の遮音パネルのように、桟材と繊維状吸音材とを別個の部材として配設する必要はなく、パネルの構造が簡単で軽量になるとともに、桟材に包囲された繊維状吸音材が透過共鳴を起こすこともなく、高い遮音性を発現できる。
【0085】
これらの二重壁構造のパネルのうち、板状の不織繊維構造体と面材とが積層されたパネル構造の部分切り欠き概略斜視図を図1に示す。図1において、遮音パネル1は、板状の不織繊維構造体2の両面に第1の面材3及び第2の面材4が積層されている。板状の不織繊維構造体2は、成形体としての強度を有するとともに、繊維構造を有するため、固体伝播搬音、空気伝播音のいずれに対しても遮音性を有する。
【0086】
一方、不織繊維構造体で構成された桟材を介して面材が積層されたパネル構造の部分切り欠き概略斜視図を図2に示す。図2において、遮音パネル11は、不織繊維構造体で構成された四角柱状桟材12を介して第1の面材13と第2の面材14とが積層されており、桟材12は、縦方向の両端部と、横方向の両端部及び中央部とに配設されている。この遮音パネル11は、面材12と面材13との間に空隙部(空間部)を有しているため、軽量性及び固体伝播音の遮音性に優れているが、従来の遮音パネルと異なり、桟材12が不織繊維構造体で構成されているため、空隙部だけでなく、桟材を透過する固体伝播音に対しても高い遮音性を有している。特に、桟材で構成された遮音パネルは、軽量性に優れるとともに、高周波域の音波に対しても、高い吸音性及び遮音性を示す。
【0087】
これらのパネルは、互いに平行な第1の面材と第2の面材との間に不織繊維構造体が介在する構造であればよく、不織繊維構造体と面材とは固定されていなくてもよいが、汎用性及び施工性などの点から、固定されているのが好ましい。不織繊維構造体と面材との固定(接合)方法としては、接着剤又は粘着剤を用いる方法であってもよく、固定具を用いる方法であってもよい。
【0088】
接着剤又は粘着剤を用いる方法において、接着剤又は粘着剤は、不織構造体及び面材の材質に応じて、慣用の接着剤又は粘着剤の中から選択できる。接着剤としては、デンプンやカゼインなどの天然高分子系接着剤、ポリ酢酸ビニルなどのビニル系接着剤、アクリル系接着剤、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系接着剤などの熱可塑性樹脂系接着剤、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂系接着剤などが挙げられる。粘着剤としては、例えば、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤などの熱可塑性樹脂系粘着剤などが挙げられる。接着剤及び粘着剤は、使用箇所に応じて、異なる種類の接着剤又は粘着剤を使用してもよい。
【0089】
固定具を用いる方法としては、枠材を用いてパネルの外側から固定する方法、ビスやボルトなどの係合手段を用いる方法、粘着テープを用いる方法、面ファスナーを用いる方法などが挙げられる。
【0090】
これらの固定方法のうち、軽量性及び生産性などの点から、接着剤又は粘着剤を用いた接合方法が好ましい。特に、不織繊維構造体は繊維構造を有しているため、接着剤や粘着剤が繊維構造に含浸するとともに、接着力の低下の原因となる空気が繊維構造を通して外部に放出されるため、高い密着力を実現できる。
【0091】
板状の不織繊維構造体が積層されたパネルにおいて、板状の不織繊維構造体と面材との厚み比(不織繊維構造体の両層に面材を積層する場合は単層の厚み)は、用途や面材の種類に応じて、不織繊維構造体/面材=50/1〜1/2程度の範囲から選択でき、例えば、不織繊維構造体/面材=40/1〜1/1.5、好ましくは30/1〜1/1、さらに好ましくは20/1〜1.5/1(特に10/1〜2/1)程度である。両者の厚み比をこの範囲にすることにより、薄くて軽量なパネルにおいて、幅広い周波域に対して遮音性を発現でき、特に、不織繊維構造体/面材=25/1〜1.5/1(特に15/1〜2/1)にすることにより、低周波域であっても高い遮音性を発現できる。さらに、合成樹脂板(特に透明樹脂板)で構成された面材において、不織繊維構造体/面材=50/1〜5/1、好ましくは30/1〜10/1、さらに好ましくは25/1〜15/1にすることにより、軽量性と遮音性とのバランスに優れた遮音パネルを調製できる。
【0092】
不織繊維構造体が桟材を構成するパネルにおいて、桟材の形状は、前記四角柱に限定されず、面材と接触するための対向する平行面を有する形状であればよい。例えば、面材との接触面の形状は、三角形、四角形(正方形、長方形など)などの多角形状、円状、楕円状などであってもよい。これらの形状のうち、面材との接着性及び密閉性の点から、角柱(例えば、四角柱状)が好ましい。さらに、桟材と面材との接触箇所は、前述の両端部(縁部又は全端部)及び中央部に限定されず、例えば、四隅(コーナー)部、中心部、隣接するコーナー部の中間部などの各部又はこれら各部の組み合わせであってもよい。
【0093】
桟材と面材との接触面積は、パネル強度の点からは大きい方が好ましいが、軽量性、透光性及び透視性の点からは小さい方が好ましい。面材の全面積に対する両材の接触面積の占有割合は、桟材の厚みにもよるが、例えば、5〜50%、好ましくは10〜40%、さらに好ましくは15〜30%程度である。なお、桟材と面材との厚み比は、前記板状の不織繊維構造体と面材との厚み比と同様の割合で使用できる。さらに、不織繊維構造体が桟材を構成するパネルでは、桟材と面材との接触面積及び厚み比の他、桟材の目付及び密度を調整することにより、パネル強度と透光性とを制御してもよい。
【0094】
さらに、本発明の遮音パネルは、透光性や透視性が要求されない用途などにおいて、必要であれば、さらに反射体、仕上げ材などを積層してもよい。反射体や仕上げ材は、第1の面材及び/又は第2の面材の上に積層してもよく、第2の面材の代わりに用いてもよい。反射体や仕上げ材の固定方法としても、前記固定具を用いる方法、接着剤又は粘着剤を用いる方法を利用できる。
【0095】
反射体としては、音波の反射効果を有する材質であれば特に限定されないが、軽量性の点から、例えば、塩ビ鋼板(ポリ塩化ビニル被覆金属板)、合板(積層木質ボード)、合成樹脂板、無機繊維不織布などが汎用される。なお、前述したように、面材として反射体の機能を有する材料を使用してもよく、本明細書では、反射体は、面材の上にさらに積層する反射体を意味する。反射体の厚みは、例えば、0.01〜10mm、好ましくは0.02〜5mm、さらに好ましくは0.03〜3mm程度である。
【0096】
仕上げ材としては、慣用の仕上げ材が利用でき、例えば、布クロス、木質系仕上げ材、フィルム、紙などが利用できる。さらに、遮音パネルを装飾する場合には、通気性を有する化粧クロスなどを使用することが好ましい。仕上げ材の厚みは、例えば、0.1〜5mm、好ましくは0.3〜3mm、さらに好ましくは0.5〜2mm程度である。
【0097】
本発明の遮音パネルは、不織繊維構造体と面材とが強固に密着して形成されているため、建築の内装材として適当な機械的強度(圧縮強度、曲げ強度など)を有している。従って、厚みを薄くできるため、遮音パネルを軽量かつ安価に製造できる。
【0098】
さらに、本発明の遮音パネルは、高い剛性を有するため、施工上においても有利である。すなわち、本発明の遮音パネルを大板状に形成し、固定具などの取付ピッチを広くした場合でも、その形状が保持され、構造上の支障は生じないという特徴も有している。
【0099】
本発明の遮音パネルを用いると、広い周波数域に亘り優れた吸音性能を実現でき、特に、低周波数域における優れた吸音性能を実現できる。具体的には、本発明の遮音パネルは、音として感知できる周波数の範囲(10〜20000Hz程度)に対して吸音性を示し、通常、100〜10000Hz程度の周波数を有する音に対して用いられる。特に、本発明の遮音パネルは、不織繊維構造体と面材との厚み比や密度などを調整することにより、低周波域、例えば、100〜5000Hz、好ましくは150〜3000Hz、さらに好ましくは200〜2000Hz(特に250〜1500Hz)の周波数の音に対しても効果的である。さらに、桟材として不織繊維構造体を使用すると、内部の空気層との組み合わせにより、第1の面材から第2の面材への固体伝播音を効果的に抑制できるため、従来の木質桟材に比べて、500Hz以上(例えば、500〜5000Hz程度)の周波域において音響透過損失を大きくできる。詳しくは、高周波域、例えば、1000〜5000Hz、例えば、1000〜2000Hzの周波域で特に有効であり、さらに、2500〜4000Hzの周波域でも有効であるため、工事現場や幹線道路沿いなど、大騒音や金属音などが発生する場所でも有効である。
【実施例】
【0100】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。実施例における各物性値は、以下に示す方法により測定した。なお、実施例中の「部」及び「%」はことわりのない限り、質量基準である。
【0101】
(1)エチレン−ビニルアルコール系共重合体のメルトインデックス(MI)
JIS K6760に準じて、190℃、21.2N荷重の条件下、メルトインデクサーを用いて測定した。
【0102】
(2)目付(g/m2
JIS L1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて測定した。
【0103】
(3)厚み(mm)、見掛け密度(g/cm3
JISL 1913「一般短繊維不織布試験方法」に準じて厚さを測定し、この値と目付けの値とから見かけ密度を算出した。
【0104】
(4)通気度
JIS L1096に準じ、フラジール形法にて測定した。
【0105】
(5)曲げ応力
JIS K7017に記載の方法のうちA法(3点曲げ法)に準じて測定した。このとき、測定サンプルは25mm幅×80mm長のサンプルを用い、支点間距離を50mmとし、試験速度を2mm/分として測定を行った。本発明では、この測定結果チャートにおける最大応力(ピーク応力)を最大曲げ応力とした。なお、曲げ応力の測定は、MD方向及びCD方向について測定した。ここで、MD方向とは、測定サンプルの長辺に対しウェブ流れ方向(MD)が平行となるように測定サンプルを採取した状態をいい、一方、CD方向とは、測定サンプルの長辺に対しウェブ幅方向(CD)が平行となるように測定サンプルを採取した状態をいう。
【0106】
(6)1.5倍変位応力
曲げ応力の測定において、最大曲げ応力(曲げピーク応力)を示す曲げ量(変位)を超え、さらにその変位の1.5倍の変位まで曲げつづけた時の応力を、1.5倍変位応力とした。
【0107】
(7)繊維接着率
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、構造体断面を100倍に拡大した写真を撮影した。撮影した構造体の厚み方向における断面写真を厚み方向に三等分し、三等分した各領域(表面、内部(中央)、裏面)において、そこに見出せる繊維切断面(繊維端面)の数に対して繊維同士が接着している切断面の数の割合を求めた。各領域に見出せる全繊維断面数のうち、2本以上の繊維が接着した状態の断面の数の占める割合を以下の式に基づいて百分率で表わした。なお、繊維同士が接触する部分には、融着することなく単に接触している部分と、融着により接着している部分とがある。但し、顕微鏡撮影のために構造体を切断することにより、構造体の切断面においては、各繊維が有する応力によって、単に接触している繊維同士は分離する。従って、断面写真において、接触している繊維同士は、接着していると判断できる。
【0108】
繊維接着率(%)=(2本以上接着した繊維の断面数)/(全繊維断面数)×100
但し、各写真について、断面の見える繊維は全て計数し、繊維断面数100以下の場合は、観察する写真を追加して全繊維断面数が100を超えるようにした。なお、三等分した各領域についてそれぞれ繊維接着率を求め、その最大値に対する最小値の割合(最小値/最大値)も併せて求めた。
【0109】
(8)音響透過損失
JIS A1416に準じ、音響透過損失を測定した。
【0110】
(9)透過光拡散性(45°拡散性)
不織繊維構造体の一方の面に対して垂直に入射し、他方の面を透過する光において、他方の面の法線に平行な透過光強度と、前記法線に対して45°の方向における透過光強度とを、ゴニオメーター((株)村上色彩技術研究所製、GP200)を用いて測定し、両者の比(45°透過光強度/平行透過光強度)を求めた。
【0111】
[実験例1]
(不織繊維構造体の製造例)
湿熱接着性繊維として、芯成分がポリエチレンテレフタレート、鞘成分がエチレン−ビニルアルコール共重合体(エチレン含有量44モル%、ケン化度98.4モル%)である芯鞘型複合ステープル繊維((株)クラレ製、「ソフィスタ」、繊度3dtex、繊維長51mm、芯鞘質量比=50/50、捲縮数21個/25mm、捲縮率13.5%)を準備した。
【0112】
この芯鞘型複合ステープル繊維を用いて、カード法により目付約200g/mのカードウェブを作製し、このウェブを10枚重ねて合計目付約2000g/mのカードウェブとした。
【0113】
このカードウェブを、50メッシュ、幅500mmのステンレス製エンドレスネットを装備したベルトコンベアに移送した。尚、このベルトコンベアの金網の上部には同じ金網を有するベルトコンベアが装備されており、それぞれが同じ速度で同方向に回転し、これら両金網の間隔を任意に調整可能なベルトコンベアを使用した。
【0114】
次いで、下側コンベアに備えられた水蒸気噴射装置ヘカードウェブを導入し、この装置から0.4MPaの高温水蒸気をカードウェブの厚み方向に向けて通過するように(垂直に)噴出して水蒸気処理を施し、不織繊維構造を有する成形体を得た。この水蒸気噴射装置は、下側のコンベア内に、コンベアネットを介して高温水蒸気をウェブに向かって吹き付けるようにノズルが設置され、上側のコンベアにサクション装置が設置されていた。また、この噴射装置のウェブ進行方向における下流側には、ノズルとサクション装置との配置が逆転した組合せである噴射装置がもう一台設置されており、ウェブの表裏両面に対して蒸気処理を施した。
【0115】
なお、水蒸気噴射ノズルの孔径は0.3mmであり、ノズルがコンベアの幅方向に沿って1mmピッチで1列に並べられた蒸気噴射装置を使用した。加工速度は3m/分であり、ノズル側とサクション側の上下コンベアベルト間の間隔(距離)を、厚み20mmの構造体が得られるように調整した。ノズルはコンベアベルトの裏側にベルトとほぼ接するように配置した。
【0116】
得られた不織繊維構造体(成形体)は、ボード状の形態を有し、一般的な不織布に比べて非常に硬質であった。また、曲げ応力ピークを超えても破壊せず、極端な応力の低下もなかった。さらに、形態保持性試験を行っても形状の変化はなく、質量も減少せず、きわめて良好な結果が得られた。
【0117】
得られた不織繊維構造体の特性を表1に示す。
【0118】
【表1】

【0119】
この不織繊維構造体を、平面寸法900mm×900mmの構造体と、平面寸法40mm×900mmの構造体とに切断加工した。
【0120】
(面材)
面材として、厚み9.5mm、密度0.69g/cmの石膏ボード(吉野石膏(株)製)を使用した。
【0121】
(実施例1)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm)の間に、同一の平面寸法の不織繊維構造体(厚み20mm)を図1に示すように介在させて配設した遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図3に示す。なお、このパネルの質量は12.6kgであった。
【0122】
(実施例2)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm)の間に、平面寸法が幅40mm×長さ900mmの不織繊維構造体(厚み20mm)を3個の桟材を、図2に示すように(不織繊維構造体の厚み方向がパネルの厚み方向となるように)介在させて配設した遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図3に示す。なお、このパネルの質量は10.6kgであった。
【0123】
(比較例1)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm)の間に、平面寸法が幅40mm×長さ900mmの杉材(厚み20mm)を3個の木質桟材を、図2に示すように(木質桟材の厚み方向がパネルの厚み方向となるように)介在させて配設した遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図3に示す。なお、このパネルの質量は10.6kgであった。
【0124】
(比較例2)
一般的な遮音パネルである石膏ボード(吉野石膏(株)製)について、音響透過損失を測定した結果を図3に示す。なお、このパネルの質量は13.6kgであった。
【0125】
図3の結果から、実施例の遮音パネルは、比較例2の一般的な遮音パネルよりも音響透過損失効果が著しく向上していた。
【0126】
また、実施例1の遮音パネルは、木質桟材を使用した比較例1の遮音パネルに比べて、ほとんどの周波数において高い音響透過損失効果を示した。
【0127】
さらに、不織繊維構造体で構成された桟材を使用した実施例2の遮音パネルは、比較例1の遮音パネルに比べて、500Hzを越える周波数において高い音響透過損失効果を示した。また、実施例2の遮音パネルは、1250Hz以上の周波数において、実施例1の遮音パネルとほぼ同等の音響透過損失効果を示した。
【0128】
これらの結果から、石膏ボードの間に不織繊維構造体を配置した遮音パネルは優れた音響透過損失効果を発現し、不織繊維構造体で構成された桟材を使用することにより、木質桟材を使用した遮音パネルに比べて高い音響透過損失を発現できることがわかった。
【0129】
[実験例2]
(不織繊維構造体)
実験例1と同様の不織繊維構造体を使用した。
【0130】
(面材)
面材として、厚み5mm、密度1.48g/cmの透明塩ビ樹脂板(ポリ塩化ビニル板)と、厚み4mm、密度1.48g/cmの透明塩ビ樹脂板とを使用した。
【0131】
(実施例3)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm、厚み5mm及び4mm)の間に、同一の平面寸法の不織繊維構造体(厚み20mm)を図1に示すように介在させて配設した遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図4に示す。なお、このパネルの質量は12.8kgであった。
【0132】
(実施例4)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm、厚み5mm及び4mm)の間に、平面寸法が幅40mm×長さ900mmの不織繊維構造体(厚み20mm)を3個の桟材を、図2に示すように(不織繊維構造体の厚み方向がパネル厚み方向となるように)配設した遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図4に示す。なお、このパネルの質量は10.8kgであった。
【0133】
比較のために、実験例1の比較例2の結果も図4に示す。図4の結果から明らかなように、実施例の遮音パネルは、比較例2の一般的な遮音パネルよりも音響透過損失効果が著しく向上していた。また、実施例3の遮音パネルは、透過光拡散性は71.2%であり、光を透過する性質を有していた。さらに、実施例4の遮音パネルは、透明部分の占有面積が大きく、視認性に優れていた。
【0134】
[実験例3]
(不織繊維構造体)
実験例1の不織繊維構造体の製造例において、ウェブの積層枚数を倍増し、上下コンベアベルト間の間隔を調整することにより、厚み40mmの不織繊維構造体を製造した。
【0135】
得られた不織繊維構造体の特性を表2に示す。
【0136】
【表2】

【0137】
この不織繊維構造体を、平面寸法40mm×900mmの構造体に切断加工した。
【0138】
(面材)
面材として、厚み2mm、密度1.48g/cmの透明塩ビ樹脂板とを使用した。
【0139】
(実施例5)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm)の間に、平面寸法が幅40mm×長さ900mmの不織繊維構造体(厚み40mm)を3個の桟材を図2に示すように配設した遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図5に示す。なお、このパネルの質量は4.6kgであった。
【0140】
(比較例3)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm)の間に、平面寸法が幅40mm×長さ900mmの杉材(厚み40mm)を3個の木質桟材を図2に示すように配設した遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図5に示す。なお、このパネルの質量は4.6kgであった。
【0141】
比較のために、実験例1の比較例2の結果も図5に示す。図5の結果から、実施例5の遮音パネルは、500Hz以上の周波数において、木質桟材を使用した比較例2のパネルよりも遮音性に優れていた。
【0142】
[実験例4]
(不織繊維構造体)
実験例3で得られた不織繊維構造体(密度0.1g/cm)を平面寸法900mm×900mmの構造体に切断加工した。
【0143】
さらに、実験例1の不織繊維構造体の製造例において、ウェブの積層枚数を8枚とし、上下コンベアベルト間の間隔を調整することにより、厚み40mmの不織繊維構造体を製造した。
【0144】
得られた不織繊維構造体の特性を表3に示す。
【0145】
【表3】

【0146】
この不織繊維構造体を、平面寸法900mm×900mmの構造体に切断加工した。
【0147】
(面材)
面材として、厚み2mm、密度1.48g/cmの透明塩ビ樹脂板と、厚み1mm、密度1.48g/cmの透明塩ビ樹脂板と、厚み2mm、密度1.18g/cmのアクリル樹脂板(ポリメタクリル酸メチル板)と、を使用した。
【0148】
(実施例6)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm、厚み2mmの透明塩ビ樹脂板)の間に、同一の平面寸法の不織繊維構造体(密度0.1g/cm)を図1に示すように介在させて配設した遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図6に示す。なお、このパネルの質量は8kgであった。
【0149】
(実施例7)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm、厚み2mmの透明塩ビ樹脂板)の間に、同一の平面寸法の不織繊維構造体(密度0.04g/cm)を図1に示すように介在させて配設した遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図6に示す。なお、このパネルの質量は6kgであった。
【0150】
(実施例8)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm、厚み1mmの透明塩ビ樹脂板)の間に、同一の平面寸法の不織繊維構造体(密度0.1g/cm)を図1に示すように介在させて配設した遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図6に示す。なお、このパネルの質量は6kgであった。
【0151】
(実施例9)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm、厚み1mmの透明塩ビ樹脂板)の間に、同一の平面寸法の不織繊維構造体(密度0.04g/cm)を図1に示すように介在させて配設した遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図6に示す。なお、このパネルの質量は4kgであった。
【0152】
(実施例10)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm、厚み2mmのアクリル樹脂板)の間に、同一の平面寸法の不織繊維構造体(密度0.04g/cm)を図1に示すように介在させて配設した遮音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図6に示す。なお、このパネルの質量は5.6kgであった。
【0153】
比較のために、実験例1の比較例2の結果も図6に示す。図6の結果から、透明塩ビ樹脂板の厚みが大きい方が1250Hz以下の周波数において音響透過損失が優れていた。しかし、不織繊維構造体の密度を変えても面材が同じであれば音響透過損失はほとんど同等である。不織繊維構造体の密度が小さい方が光の透過率が大きく、パネルの重さも軽くできる。
【0154】
[実験例5]
(不織繊維構造体)
実験例1の不織繊維構造体の製造例において、ウェブの積層枚数を15枚とし、上下コンベアベルト間の間隔を調整することにより、厚み30mmの不織繊維構造体を製造した。
【0155】
得られた不織繊維構造体の特性を表4に示す。
【0156】
【表4】

【0157】
この不織繊維構造体を、平面寸法900mm×900mmの構造体に切断加工した。
【0158】
(面材)
面材として、厚み2mm、密度1.18g/cmのアクリル樹脂板を使用した。
【0159】
(実施例11)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm)の間に、平面寸法が幅30mm×長さ900mmの不織繊維構造体(厚み30mm)を3個の桟材として、図2に示すように配設した防音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図7に示す。なお、このパネルの質量は4.21kgであった。
【0160】
(実施例12)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm)の間に、同一の平面寸法の不織繊維構造体を図1に示すように介在させて配設した防音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図7に示す。なお、このパネルの質量は6.3kgであった。
【0161】
(比較例4)
一般的な遮音パネルである石膏ボード(吉野石膏(株)製)について、音響透過損失を測定した結果を図7に示す。なお、このパネルの質量は5.5kgであった。
【0162】
(比較例5)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm)の間に、平面寸法が幅30mm×長さ900mmの杉材(厚み30mm)を3個の木質桟材として、図2に示すように配設した防音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図7に示す。なお、このパネルの質量は5.7kgであった。
【0163】
(比較例6)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm)の間に、平面寸法が幅30mm×長さ900mmの硬質ウレタン材(厚み30mm)を3個の桟材として、図2に示すように配設した防音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図7に示す。なお、このパネルの質量は4.2kgであった。
【0164】
(比較例7)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm)の間に、平面寸法が幅30mm×長さ900mmの高発泡ポリエチレン材(厚み30mm)を3個の桟材として、図2に示すように配設した防音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図7に示す。なお、このパネルの質量は3.9kgであった。
【0165】
(比較例8)
2枚の面材(平面寸法900mm×900mm)の間に、平面寸法が幅30mm×長さ900mmのニードルパンチ不織布(厚み30mm)を3個の桟材として、図2に示すように配設した防音パネルについて、音響透過損失を測定した結果を図7に示す。このパネルの質量は5kgであった。
【0166】
図7の結果から、実施例の防音パネルでは、広い周波域において、音響透過損失が優れていた。特に、不織繊維構造体で構成された桟材を使用したパネルでは、板状不織構造体を使用したパネルに比べて、500Hz以上の周波域において、優れた音響透過損失を示し、特に、1000Hz以上の高周波域において、優れた音響透過損失を示した。
【0167】
なお、ニードルパンチ不織布は、実施例11の不織繊維構造体の製造において、水蒸気処理で湿熱接着する代わりに、1バーブのニードル針を使用し、針深度34mm、処理速度2m/分、総処理パンチ数が300パンチ/cmの条件で、ニードルパンチを用いて成形した不織布である。得られた不織布は、剛性が低く、不織布のみでは自立しない状態であった。また、幅30mmに切断加工した桟材は、切断面からの繊維のほつれが観察された。さらに、この桟材に対して、厚み方向に圧力を加えると容易に変形する(又は窪む)性質を示し、例えば、指で押さえると指先が不織布中に沈み込んだ。
【産業上の利用可能性】
【0168】
本発明の遮音パネルは、高い吸音又は遮音性を有しているので、建築物(例えば、住宅、工場の家屋や設備、ビルディング、病院、学校、体育館、文化会館、公民館、高速道路の防音壁など)やベヒクル(例えば、自動車などの車両、航空機など)などに用いられる遮音パネルとして有効に利用できる。特に、高い遮音性と強度とを要求される建築物(住宅など)に使用される間仕切りパネル、可動間仕切りパネル、壁材、天井材、床材、衝立、ドア、雨戸、シャッター、屏風などにも利用できる。また、本発明の遮音パネルは、通気性に優れる点を生かして、通気性の必要な建築部材としても利用できる。
【0169】
さらに、不織構造体として桟材を用いた遮音パネルは、軽量性や透光性などの点から、住宅の壁、扉又は戸、天井などのパネル(特に壁又は間仕切りパネル)に好適であり、さらに高周波数域に対しても高い吸音性を有するため、工事現場、幹線道路又は高速道路、飛行場、パチンコ屋、カラオケルーム、インターネット喫茶などの娯楽施設、飲食店などの大騒音や金属音などが発生する近隣における住宅のパネルとしても有用である。
【符号の説明】
【0170】
1,11…遮音パネル
2…不織繊維構造体
3,4,13,14…面材
12…桟材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
湿熱接着性繊維を含み、この湿熱接着性繊維の融着により繊維が固定された不織繊維構造体と面材とで構成された遮音パネルであって、前記不織繊維構造体の繊維接着率が3〜85%であり、かつ見掛け密度が0.03〜0.7g/cmである遮音パネル。
【請求項2】
不織繊維構造体が見掛け密度0.03〜0.08g/cmを有する板状構造体であり、かつその両面に第1の面材と第2の面材とが積層されている請求項1記載の遮音パネル。
【請求項3】
不織繊維構造体が見掛け密度0.03〜0.5g/cmを有する桟材を構成し、かつ前記桟材を介して第1の面材と第2の面材とが積層されている請求項1記載の遮音パネル。
【請求項4】
厚みが20〜100mmであり、不織繊維構造体と面材との厚み比が、不織繊維構造体/面材=50/1〜1/2である請求項1〜3のいずれかに記載の遮音パネル。
【請求項5】
面材が透光性を有するとともに、不織繊維構造体の一方の面に対して垂直に入射し、他方の面を透過する光において、他方の面の法線に対して平行な方向における透過光強度に対する前記法線に対して45°の方向における透過光強度の比が50%以上であり、かつ不織繊維構造体と面材との厚み比が、不織繊維構造体/面材=30/1〜10/1である請求項1〜4のいずれかに記載の遮音パネル。
【請求項6】
不織繊維構造体と面材とが接着剤又は粘着剤で接合されている請求項1〜5のいずれかに記載の遮音パネル。
【請求項7】
不織繊維構造体が、下記(1)〜(3)の特性を有する請求項1〜6のいずれかに記載の遮音パネル。
(1)湿熱接着性繊維が、繊維表面において長さ方向に連続する湿熱接着性樹脂を含む
(2)厚み方向の断面において、厚み方向に三等分した各々の領域における繊維接着率がいずれも3〜85%であり、かつ各領域における繊維接着率の最大値に対する最小値の割合が50%以上である
(3)少なくとも一方向における最大曲げ応力が0.05MPa以上であり、最大曲げ応力を示す曲げ量に対して1.5倍の曲げ量における曲げ応力が、最大曲げ応力に対して1/5以上である
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の遮音パネルを用いた遮音方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−229809(P2010−229809A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44004(P2010−44004)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(307046545)クラレクラフレックス株式会社 (50)
【Fターム(参考)】