説明

遺伝的多型を用いた肺癌を発達させるリスクの評価方法

本発明は、遺伝的多型の分析を用いて喫煙者及び非喫煙者において肺癌を発達させるリスクを評価する方法を提供する。本発明は、肺癌を発達させる対象のリスクを評価する際に遺伝的多型を使用することにも関する。その様な評価に適しているヌクレオチドプローブ及びプライマー、キット、及びマイクロアレイも提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肺機能及び/又は障害の評価方法に関し、そして特に遺伝的多型及び遺伝子発現の変化の分析を用いて喫煙者及び非喫煙者における肺癌を発達させるリスクを評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
肺癌は、二番目に多い癌であり、そして肺癌の原因は主にタバコの喫煙にある。肺癌の発達に寄与する他の因子として、職業上の暴露、遺伝的要因、ラドン暴露、他の空気汚染物質への暴露、及び場合により食事要因が挙げられる(Alberg AJら、2003)。非喫煙者は、400人に1人の肺癌のリスク(0.25%)しか有さないと見積もられる。喫煙は当該リスクを約40倍増加させ、その結果、喫煙者は10人に1人の肺癌リスク(10%)を有し、そして長期間の喫煙者では生存期間における肺癌リスクは10〜15%ほどの高さであると報告された(Schwartz AG、2004)。遺伝的要因は、(喫煙者のなかの)弱い家族性傾向、並びに喫煙者の少数しか肺癌にならないという事実により証拠付けられるように、ある程度の役割を果たすと考えられる。当該遺伝的傾向の大部分が、低浸透性の高い頻度で生じる多型(low penetrant high frequency polymorphisms)、つまり、一般集団においてよく見られる多型であって、慢性的に喫煙するという状況においてまとめて癌発達に寄与する多型、から生じる(Schwartz AG、2004、Wu Xら、2004)。幾つかの疫学的研究により、損なわれた肺機能(Anthonisen NR. 1989、Skillrud DM.1986、Tockman MSら、1987、Kuller LHら、1990、Nomura Aら、1991)、又は閉塞性肺疾患の兆候(Mayne STら、1999)は、肺癌の独立したリスク因子であり、そしておそらく喫煙暴露量よりも関連性がある。
【0003】
気道疾患の治療の進歩にも関わらず、現在の治療は、呼吸不全及び死亡を引き起こす肺機能の進行性の低下及び転移を含みうる肺癌の自然経過を有意に変更することはない。禁煙は、肺機能の低下を緩和すると予想されているが、早い段階で達成されなければ、肺機能の喪失は無視できるものではなく、そして息切れの悪化の症状を避けることができないようである。血清コレステロールの発見とその冠動脈疾患への関連と同様に、肺癌に寄与する因子をより理解する必要性が存在し、危険性を有する対象を同定する試験が開発され、そして肺癌の有害な影響を低減するために新たな処置が発見された。肺癌又は肺癌を発達させる傾向を早期に診断することは、後期肺癌の処置において使用されるよりも広い範囲の予防又は治療処置を使用することを可能にする。このような予防又は初期治療処置は、成功しやすく、寛解を達成しやすく、クオリティーオブライフを改善しやすく、そして/又は生存期間を増加させやすい。
【0004】
今日までに、様々な肺障害の発達に対する傾向を診断及び評価するのに有用な多くの生物マーカーが同定されきた。例えば、以下の:
ヒトマクロファージエラスターゼ(MMP12)をコードする遺伝子のプロモーターにおけるA-82G;
形質転換成長因子β(TGFβ)をコードする遺伝子のコドン10内のT→C;
スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)をコードする遺伝子のプロモーターのC+760G;
メタロプロテイナーゼ3の組織インヒビター(TIMP3)をコードする遺伝子のプロモーター内のT-1296C;及び
PCT国際出願PCT/NZ02/00106号(WO02/099134号として公開され、そしてその全てを本明細書に援用する)に開示される様に、これらの多型と連鎖不均衡にある多型
を含む1ヌクレオチド多型が挙げられる。
【0005】
特に対象が喫煙者の場合、肺癌などの肺障害を発達させる対象のリスク、又は肺癌に関連する肺機能の喪失を発達させるリスクを評価するために使用できるさらなるバイオマーカーを有することは、望ましくかつ利点があるであろう。
【0006】
本発明は主に、このようなバイオマーカー、並びにこのような障害を発達させるリスクを評価する方法における当該バイオマーカーの使用に関する。
【発明の開示】
【0007】
特定の多型が、対照と比べて肺癌対象においてより頻繁に見られるという発見に本発明は主に基づく。これらの多型の分析は、多型と、肺癌を発達させる対象のリスクとの間の関係を明らかにする。
【0008】
こうして、1の態様に従って、肺癌を発達させる対象のリスクを測定する方法であって、当該対象由来のサンプルを、以下の:
一酸化窒素合成酵素3(NOS3)をコードする遺伝子におけるAsp298Glu;
NOS3をコードする遺伝子のプロモーターにおける-786T/C;
スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)をコードする遺伝子におけるArg312Gln;
アンチキモトリプシン(ACT)をコードする遺伝子におけるAla15Thr;
マトリクスメタロプロテイナーゼ12(MMP12)をコードする遺伝子におけるAsn357SerA/G;
インターロイキン-18(IL-18)をコードする遺伝子における105A/C;
インターロイキン-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133G/C;
インターフェロンγ(IFNγ)をコードする遺伝子における874A/T;
シクロオキシゲナーゼ2(COX2)をコードする遺伝子における-765G/C;
結合組織増殖因子(CTGF)をコードする遺伝子における-447G/C;
ムチン5AC(MUC5AC)をコードする遺伝子における-221C/T;
マンノース結合性レクチン2(MBL2)をコードする遺伝子における+161G/A;
アルギナーゼ1(Arg1)をコードする遺伝子におけるイントロン1C/T;
インスリン様成長因子II受容体(IGF2R)をコードする遺伝子におけるLeu252ValC/G;
インターロイキン10(IL-10)をコードする遺伝子における-1082A/G
からなる群から選ばれる1以上の多型の有無について分析することを含む、前記方法が提供される。ここで当該多型の1以上の有無が、肺癌を発達させる対象のリスクを指し示す。
【0009】
1以上の多型は、直接検出できるか、又は当該1以上の多型と連鎖不均衡にある1以上の多型を検出することにより検出できる。
【0010】
連鎖不均衡(LD)は、2以上の突然変異又は多型が一緒に遺伝するほど遺伝的に近接している遺伝の現象である。これは、遺伝子型決定において、1の多型が存在すると検出することは、もう一方の多型の存在を暗示するということを意味する(Reich DEら;Linkage disequilibrium in the human genome, Nature 2001, 411:199-204)。
【0011】
本方法は、上記対照由来のサンプルを、以下の:
チャイニーズハムスターにおけるX線修復補体欠損1(X-ray repair complementing defective in Chinese hamster 1)(XRCC1)遺伝子におけるArg399Gln G/A;
インターロイキン-8(IL-8)をコードする遺伝子における-251A/T;
サイクリンD(CCND1)をコードする遺伝子におけるA870G;
インターロイキン1B(IL-1B)をコードする遺伝子における-511A/G;
FAS(Apo-1/CD95)をコードする遺伝子における-670G;
色素性乾皮症相補群D(Xeroderma pigmentosum complementation group D)(XPD)遺伝子のプロモーターにおける-751G/T;
シトクロムP450 1A1(CYP1A1)をコードする遺伝子におけるIle462ValA/G;
8-オキソグアニンDNAグリコラーゼ(8-oxoguanine DNA glycolase)(OGG1)をコードする遺伝子におけるSer326CysG/C;
N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)をコードする遺伝子におけるArg197GlnA/G;
シトクロムP450 2E1(CYP2E1)をコードする遺伝子における1019G/CPstI;
シトクロムP450 2E1をコードする遺伝子におけるC/T RsaI;
グルタチオンSトランスフェラーゼM(GSTM)をコードする遺伝子におけるGSTMヌル;
マトリクスメタロプロテイナーゼ1(MMP1)をコードする遺伝子のプロモーターにおける-1607 1G/2G;
ニブリン(NBS1)をコードする遺伝子におけるGln185Glu G/C;
REV1をコードする遺伝子におけるPhe257SerC/T;又は
アペックスヌクレア-ゼ(APE1)をコードする遺伝子におけるAsp148GluG/T
からなる群から選ばれる1以上のさらなる多型の存在について分析することを含む。
【0012】
さらに、当該1以上のさらなる多型の検出は、直接、又は1以上のさらなる多型と連鎖不均衡にある多型の検出により行われうる。
【0013】
以下の:
NOS3をコードする遺伝子におけるAsp298Glu TT遺伝子型;
SOD3をコードする遺伝子におけるArg312Gln CG又はGG遺伝子型;
MMP12をコードする遺伝子におけるAsn357Ser AG又はGG遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における105AC又はCC遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における-133CG又はGG遺伝子型;
COX2をコードする遺伝子のプロモーターにおける-765CC又はCG遺伝子型;
MUC5ACをコードする遺伝子における-221TT遺伝子型;
Arg1をコードする遺伝子におけるイントロン1 C/T TT遺伝子型;
IGF2Rをコードする遺伝子におけるLeu252Val GG遺伝子型;
IL-10をコードする遺伝子における-1082GG遺伝子型;
IL-8をコードする遺伝子における-251AA遺伝子型;
XRCC1遺伝子におけるArg399GlnAA遺伝子型;
CCND1をコードする遺伝子におけるA870G GG遺伝子型;
XPD遺伝子のプロモーターにおける-751GG遺伝子型;
CYP1A1をコードする遺伝子におけるIle462Val AG又はGG遺伝子型;
OGG1をコードする遺伝子におけるSer326Cys GG遺伝子型;又は
REV1をコードする遺伝子におけるPhe257Ser CC遺伝子型
からなる群から選ばれる1以上の多型の存在が、肺癌の低いリスクを指し示しうる。
【0014】
以下の:
NOS3をコードする遺伝子のプロモーターにおける-786TT遺伝子型;
ACTをコードする遺伝子におけるAla15ThrGG遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における105AA遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133CC遺伝子型;
IFNγをコードする遺伝子における874AA遺伝子型;
COX2をコードする遺伝子のプロモーターにおける-765GG遺伝子型;
CTGFをコードする遺伝子における-447CC又はGC遺伝子型;
MBL2をコードする遺伝子における+161AA又はAG遺伝子型;
IL-1Bをコードする遺伝子における-511GG遺伝子型;
FASをコードする遺伝子におけるA-670G AA遺伝子型;
NAT2をコードする遺伝子におけるArg197GlnGG遺伝子型;
CYP1A1をコードする遺伝子におけるIle462Val AA遺伝子型;
CYP2E1をコードする遺伝子における1019G/CPstI CC又はCG遺伝子型;
CYP2E1をコードする遺伝子におけるC/T RsaI TT又はTC遺伝子型;
GSTMをコードする遺伝子におけるGSTMヌル遺伝子型;
MMP1をコードする遺伝子のプロモーターにおける-1607 2G/2G遺伝子型;
NBS1をコードする遺伝子におけるGln185Glu CC遺伝子型;又は
APE1をコードする遺伝子におけるAsp148Glu GG遺伝子型
からなる群から選ばれる1以上の多型の存在が、肺癌を発達させる高いリスクを指し示しうる。
【0015】
本発明の方法は、喫煙者(現在の又は過去の喫煙者の両方)に特に有用である。
【0016】
本発明の方法が多型の2個のカテゴリー、つまり肺癌を発達するリスクの低い多型(当該多型は「保護的(protective)多型」と呼ぶことができる)及び肺癌を発達するリスクの高い多型(当該多型は「罹患性(susceptibiity)多型」と呼ぶことができる)、を同定することが認められよう。
【0017】
その結果、本発明はさらに、肺癌を発達させる対象のリスクを評価する方法を提供し、ここで当該方法は以下の:
肺癌を発達させる低いリスクと関連する少なくとも1の保護的多型の有無を決定し;そして
少なくとも1の保護的多型の非存在下で、肺癌を発達させる高いリスクと関連する少なくとも1の罹患性多型の有無を決定する
を含む。ここで当該1以上の保護的多型が存在することが、肺癌を発達させる低いリスクを指し示し、そして少なくとも1の罹患性多型の存在と組合わせて少なくとも1の保護的多型が存在しないことが、肺癌を発達させるリスクの増加を指す。
【0018】
好ましくは、当該少なくとも1の保護的多型は、以下の:
NOS3をコードする遺伝子におけるAsp298Glu TT遺伝子型;
SOD3をコードする遺伝子におけるArg312Gln CG又はGG遺伝子型;
MMP12をコードする遺伝子におけるAsn357Ser AG又はGG遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における105AC又はCC遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における-133CG又はGG遺伝子型;
COX2をコードする遺伝子のプロモーターにおける-765CC又はCG遺伝子型;
MUC5ACをコードする遺伝子における-221TT遺伝子型;
Arg1をコードする遺伝子におけるイントロン1 C/T TT遺伝子型;
IGF2Rをコードする遺伝子におけるLeu252Val GG遺伝子型;
IL-10をコードする遺伝子における-1082GG遺伝子型;
IL-8をコードする遺伝子における-251AA遺伝子型;
XRCC1遺伝子におけるArg399GlnAA遺伝子型;
CCND1をコードする遺伝子におけるA870G GG遺伝子型;
XPD遺伝子のプロモーターにおける-751GG遺伝子型;
CYP1A1をコードする遺伝子におけるIle462Val AG又はGG遺伝子型;
OGG1をコードする遺伝子におけるSer326Cys GG遺伝子型;又は
REV1をコードする遺伝子におけるPhe257Ser CC遺伝子型
からなる群から選ばれる。
【0019】
少なくとも1の罹患性多型は、以下の:
NOS3をコードする遺伝子のプロモーターにおける-786TT遺伝子型;
ACTをコードする遺伝子におけるAla15Thr GG遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における105AA遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133CC遺伝子型;
IFNγをコードする遺伝子における874AA遺伝子型;
COX2をコードする遺伝子のプロモーターにおける-765GG遺伝子型;
CTGFをコードする遺伝子における-447CC又はGC遺伝子型;
MBL2をコードする遺伝子における+161AA又はAG遺伝子型;
IL-1Bをコードする遺伝子における-511GG遺伝子型;
FASをコードする遺伝子におけるA-670G AA遺伝子型;
NAT2をコードする遺伝子におけるArg197Gln GG遺伝子型;
CYP1A1をコードする遺伝子におけるIle462Val AA遺伝子型;
CYP2E1をコードする遺伝子における1019G/C PstI CC又はCG遺伝子型;
CYP2E1をコードする遺伝子におけるC/T RsaI TT又はTC遺伝子型;
GSTMをコードする遺伝子におけるGSTMヌル遺伝子型;
MMP1をコードする遺伝子のプロモーターにおける-1607 2G/2G遺伝子型;
NBS1をコードする遺伝子におけるGln185Glu CC遺伝子型;又は
APE1をコードする遺伝子におけるAsp148Glu GG遺伝子型
からなる群から選ばれうる。
【0020】
本発明の好ましい形態では、2以上の保護的多型の存在は、肺癌を発達させる低いリスクを指し示す。
【0021】
本発明のさらに好ましい形態では、2以上の罹患性多型の存在は、肺癌を発達させる高いリスクを指し示す。
【0022】
本発明のさらに好ましい形態では、2以上の保護的多型は、1以上の罹患性多型の存在とは無関係に2以上の保護的多型の存在が、肺癌を発達させる低いリスクを指し示す。
【0023】
別の態様では、本発明は肺癌を発達させる対照のリスクを決定する方法であって、当該方法が以下の:
当該対象由来のサンプルの1以上の遺伝子検査の結果を取得し;そして
以下の:
一酸化窒素合成酵素3(NOS3)をコードする遺伝子におけるAsp298Glu;
NOS3をコードする遺伝子のプロモーターにおける-786T/C;
スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)をコードする遺伝子におけるArg312Gln;
アンチキモトリプシン(ACT)をコードする遺伝子におけるAla15Thr;
マトリクスメタロプロテイナーゼ12(MMP12)をコードする遺伝子におけるAsn357SerA/G;
インターロイキン-18(IL-18)をコードする遺伝子における105A/C;
インターロイキン-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133G/C;
インターフェロンγ(IFNγ)をコードする遺伝子における874A/T;
シクロオキシゲナーゼ2(COX2)をコードする遺伝子における-765G/C;
結合組織増殖因子(CTGF)をコードする遺伝子における-447G/C;
ムチン5AC(MUC5AC)をコードする遺伝子における-221C/T;
マンノース結合性レクチン2(MBL2)をコードする遺伝子における+161G/A;
アルギナーゼ1(Arg1)をコードする遺伝子におけるイントロン1 C/T;
インスリン様成長因子II受容体(IGF2R)をコードする遺伝子におけるLeu252ValC/G;
インターロイキン10(IL-10)をコードする遺伝子における-1082A/G;又は
これらの多型の1以上と連鎖不均衡にある1以上の多型
からなる群から選ばれる1以上の多型の有無について当該結果を分析することを含む、前記方法が提供される。
【0024】
更なる態様では、肺癌を発達させる対象のリスクを決定する方法であって、以下の:
NOS3をコードする遺伝子におけるAsp298Glu;
NOS3をコードする遺伝子のプロモーターにおける-786T/C;
SOD3をコードする遺伝子におけるArg312Gln;
IL-8をコードする遺伝子における-251A/T;
ACTをコードする遺伝子におけるAla15Thr;
MMP12をコードする遺伝子におけるAsn357SerA/G;
IL-18をコードする遺伝子における105A/C;
IL-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133G/C;
IFNγをコードする遺伝子における874A/T;
XRCC1遺伝子におけるArg399Gln G/A;
CCND1をコードする遺伝子におけるA870G;
IL-1Bをコードする遺伝子における-511A/G
FAS(Apo-1/CD95)をコードする遺伝子における-670G;
XPD遺伝子のプロモーターにおける-751G/T;
CYP1A1をコードする遺伝子におけるIle462 Val A/G;
OGG1をコードする遺伝子におけるSer326Cys G/C;
NAT2をコードする遺伝子におけるArg197 Gln A/G;
CYP2E1をコードする遺伝子における1019G/C PstI;
CYP2E1をコードする遺伝子におけるC/T RsaI;
GSTMをコードする遺伝子におけるGSTMヌル;
COX2をコードする遺伝子のプロモーターにおける-765C/G;
MMP1をコードする遺伝子のプロモーターにおける-1607 1G/2G;
CTGFをコードする遺伝子における-447G/C;
MUC5ACをコードする遺伝子における-221C/T;
MBL2をコードする遺伝子における+161G/A;
Arg1をコードする遺伝子におけるイントロン1 C/T;
IGF2Rをコードする遺伝子におけるLeu252Val C/G;
IL-10をコードする遺伝子における-1082A/G;
NBS1をコードする遺伝子におけるGln185 Glu CC;
REV1をコードする遺伝子におけるPhe257SerC/T;
APE1をコードする遺伝子におけるAsp148Glu G/T;又は
これらの多型の1以上のいずれかと連鎖平衡にある1以上の多型
からなる群から選ばれる2以上の多型を分析することを含む、前記方法が提供される。
【0025】
様々な実施態様では、上記方法のいずれか1以上は、NOS3をコードする遺伝子のコドン298へとマッピングする位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含む。
当該位置でのグルタミン酸の存在が、肺癌を発達させる高いリスクを指し示す。
当該位置でのアスパラギンの存在が、肺癌を発達させる低いリスクを指し示す。
【0026】
様々な実施態様では、上記方法のいずれか1以上は、SOD3をコードする遺伝子のコドン312へとマッピングする位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含む。
【0027】
様々な実施態様では、上記方法のいずれか1以上は、ACTをコードする遺伝子のコドン15へとマッピングする位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含む。
【0028】
様々な実施態様では、上記方法のいずれか1以上は、MMP12をコードする遺伝子のコドン357へとマッピングする位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含む。
【0029】
様々な実施態様では、上記方法のいずれか1以上は、XRCC1遺伝子のコドン399へとマッピングする位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含む。
【0030】
様々な実施態様では、上記方法のいずれか1以上は、CYP1A1をコードする遺伝子のコドン462へとマッピングする位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含む。
【0031】
様々な実施態様では、上記方法のいずれか1以上は、OGG1をコードする遺伝子のコドン326へとマッピングする位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含む。
【0032】
様々な実施態様では、上記方法のいずれか1以上は、NAT2をコードする遺伝子のコドン197へとマッピングする位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含む。
【0033】
様々な実施態様では、上記方法のいずれか1以上は、NBS1をコードする遺伝子のコドン185へとマッピングする位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含む。
当該位置でのグルタミン酸の存在が、肺癌を発達させる高いリスクを指し示す。
【0034】
様々な実施態様では、上記方法のいずれか1以上は、REV1をコードする遺伝子のコドン257へとマッピングする位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含む。
当該位置でのセリンの存在が、肺癌を発達させる低いリスクを指し示す。
【0035】
様々な実施態様では、上記方法のいずれか1以上は、IGF2Rをコードする遺伝子のコドン252へとマッピングする位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含む。
当該位置でのバリンの存在が、肺癌を発達させる低いリスクを指し示す。
【0036】
様々な実施態様では、上記方法のいずれか1以上は、APE1をコードする遺伝子のコドン148へとマッピングする位置に存在するアミノ酸を分析するステップを含む。
当該位置でのグルタミン酸の存在が肺癌を発達させる高いリスクを指し示す。
【0037】
本発明の好ましい形態では、本明細書に記載される方法は、肺癌を発達させるリスクに関する1以上の疫学的リスク因子を含む1以上のリスク因子の分析と組合わせて行われる。このような疫学的リスク因子としては、非限定的に喫煙又はタバコの煙への暴露、年齢、性別、及び家族の肺癌の病歴が挙げられる。
【0038】
更なる態様では、本発明は、肺癌を発達させる対象のリスクの評価において少なくとも1の多型を使用することを提供し、ここで当該少なくとも1の多型が以下の:
一酸化窒素合成酵素3(NOS3)をコードする遺伝子におけるAsp298Glu;
NOS3をコードする遺伝子のプロモーターにおける-786T/C;
スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)をコードする遺伝子におけるArg312Gln;
アンチキモトリプシン(ACT)をコードする遺伝子におけるAla15Thr;
マトリクスメタロプロテイナーゼ12(MMP12)をコードする遺伝子におけるAsn357SerA/G;
インターロイキン-18(IL-18)をコードする遺伝子における105A/C;
インターロイキン-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133G/C;
インターフェロンγ(IFNγ)をコードする遺伝子における874A/T;
シクロオキシゲナーゼ2(COX2)をコードする遺伝子における-765G/C;
結合組織増殖因子(CTGF)をコードする遺伝子における-447G/C;
ムチン5AC(MUC5AC)をコードする遺伝子における-221C/T;
マンノース結合性レクチン2(MBL2)をコードする遺伝子における+161G/A;
アルギナーゼ1(Arg1)をコードする遺伝子におけるイントロン1C/T;
インスリン様成長因子II受容体(IGF2R)をコードする遺伝子におけるLeu252ValC/G;
インターロイキン10(IL-10)をコードする遺伝子における-1082A/G;又は
当該多型のうちのいずれか一つと連鎖不均衡にある1以上の多型
からなる群から選ばれる。
【0039】
場合により、前記使用は、以下の:
チャイニーズハムスターにおけるX線修復補体欠損1 (XRCC1)におけるArg398Gln G/A;
インターロイキン-8(IL-8)をコードする遺伝子における-251A/T;
サイクリンD(CCND1)をコードする遺伝子におけるA870G;
インターロイキン1B(IL-1B)をコードする遺伝子における-511A/G;
FAS(Apo-1/CD95)をコードする遺伝子における-670G;
色素性乾皮症相補群D(XPD)遺伝子のプロモーターにおける-751G/T;
シトクロムP450 1A1(CYP1A1)をコードする遺伝子におけるIle462ValA/G;
8-オキソグアニンDNAグリコラーゼ(OGG1)をコードする遺伝子におけるSer326CysG/C;
N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)をコードする遺伝子におけるArg197GlnA/G;
シトクロムP450 2E1(CYP2E1)をコードする遺伝子における1019G/CPstI;
シトクロムP450 2E1をコードする遺伝子におけるC/T RsaI;
グルタチオンSトランスフェラーゼM(GSTM)をコードする遺伝子におけるGSTMヌル;
マトリクスメタロプロテイナーゼ1(MMP1)をコードする遺伝子のプロモーターにおける-1607 1G/2G;
ニブリン(NBS1)をコードする遺伝子におけるGln185Glu G/C;
REV1をコードする遺伝子におけるPhe257SerC/T;
アペックスヌクレア-ゼ(APE1)をコードする遺伝子におけるAsp148GluG/T;又は
これらの1以上の任意の多型と連鎖不均衡にある1以上の多型
からなる群から選ばれる少なくとも1の更なる多型の使用と組合わせられうる。
【0040】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載される好ましい方法において使用するためのヌクレオチドプローブ及び/又はプライマーのセットを提供する。好ましくはヌクレオチドプローブ及び/又はプライマーは、遺伝子の多型領域にまたがるか又はまたがる様に使用できるプローブ及び/又はプライマーである。本明細書に記載されるプローブ及び/又はプライマーのいずれか1の配列を含む1以上のヌクレオチドプローブ及び/又はプライマーが提供され、配列番号1〜配列番号145のいずれか1の配列、より好ましくは配列番号3〜配列番号142のいずれか1の配列を含む任意のものを含む。
【0041】
さらなる態様では、本発明は、本発明の方法において使用するための核酸マイクロアレイであって、本明細書に記載される罹患性又は保護的多型又はそれらに相補的である配列の1以上をコードする核酸配列にハイブリダイズできる核酸配列を提示する支持体を含む、核酸マイクロアレイを提供する。
【0042】
別の態様では、本発明は、本発明の方法において使用するための抗体マイクロアレイであって、当該マイクロアレイは、本明細書に記載される罹患性又は保護的多型に関連する場合に上方制御又は下方制御される遺伝子発現産物に結合できる抗体を提示する支持体を含む、抗体マイクロアレイを提供する。
【0043】
更なる態様では、本発明は、肺癌を発達させる高いリスクを有する対象を治療する方法であって、当該対象において保護的多型の存在及び/又は機能効果を遺伝子型として又は表現形として複製するステップを含む方法を提供する。
【0044】
さらなる態様では、本発明は、肺癌を発達させる高いリスクを有する対象であって、遺伝子の発現を上方制御又は下方制御し、その結果発現された遺伝子産物の生理学的活性濃度が当該対象の年齢及び性別に対して通常である範囲を外れている検出可能な罹患性多型を有する前記対象を治療する方法であって、当該方法が、当該遺伝子発現産物の生理学的に活性な濃度を、当該対象の年齢及び性別に対して通常である範囲に回復させるステップを含む、前記方法を提供する。
【0045】
さらなる態様では、本発明は、肺癌を発達させる高いリスクを有し、かつIL-18をコードする遺伝子の105C/A多型でAA遺伝子型の存在が決定された対象を治療する方法であって、当該対象においてIL-18活性を高めることができる薬剤を当該対象に投与することを含む方法を提供する。
【0046】
さらなる態様では、本発明は、肺癌を発達させる高いリスクを有し、かつIL-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133G/C多型でCC遺伝子型の存在が決定された対象を治療する方法であって、当該対象においてIL-18活性を高めることができる薬剤を当該対象に投与することを含む方法を提供する。
【0047】
さらなる態様では、本発明は、罹患性又は保護的多型と関連する場合にその発現が上方制御又は下方制御されるところの遺伝子の発現及び/又は活性を調節する化合物をスクリーニングする方法であって、当該方法が以下のステップ:
遺伝子発現の上方制御又は下方制御と関連すると決定された罹患性又は保護的多型を含む細胞と候補化合物を接触させ;そして
当該候補化合物との接触に続き当該遺伝子発現を計測する
を含み、ここで接触ステップ前に比べた接触ステップ後の発現レベルの変化が、当該遺伝子の発現及び/又は活性を調節する化合物の能力を指し示す、前記方法を提供する。
【0048】
好ましくは、当該細胞は当該多型の存在を確認するために予め選択されたヒト肺細胞である。
【0049】
好ましくは、当該細胞は、当該遺伝子の発現の上方制御と関連する罹患性多型を含み、そして当該スクリーニングが、当該遺伝子の発現を下方制御する候補化合物について行われる。
【0050】
或いは、当該細胞は、当該遺伝子の発現の下方制御と関連する罹患性多型を含み、そして当該スクリーニングが、当該遺伝子の発現を上方制御する候補化合物について行われる。
【0051】
別の実施態様では、当該細胞は、当該遺伝子の発現の上方制御と関連する保護的多型を含み、そして当該スクリーニングが、当該遺伝子の発現をさらに上方制御する候補化合物について行われる。
【0052】
或いは、当該細胞は、当該遺伝子の発現の下方制御と関連する保護的多型を含み、そして当該スクリーニングが、当該遺伝子の発現をさらに下方制御する候補化合物について行われる。
【0053】
別の態様では、本発明は、罹患性又は保護的多型と関連する場合にその発現が上方制御又は下方制御される遺伝子の発現及び/又は活性化を調節する化合物をスクリーニングする方法であって、以下のステップ:
罹患性又は保護的多型と関連する場合その発現が上方制御又は下方制御するが、当該細胞内ではその発現が上方制御又は下方制御のいずれもされない遺伝子を含む細胞と候補化合物とを接触させ、そして
当該候補化合物との接触に続き当該遺伝子の発現を計測する
を含み、ここで、接触ステップ前に比べた接触ステップ後の発現レベルの変化が、当該遺伝子の発現及び/又は活性化を調節する化合物の能力を指し示す、前記方法を提供する。
【0054】
好ましくは、当該遺伝子の発現は、罹患性多型と関連した場合に下方制御され、そして当該スクリーニングが、当該細胞において遺伝子の発現を上方制御する候補化合物について行われる。
【0055】
好ましくは、当該細胞は、当該遺伝子の存在及び発現のベースラインレベルを確認するために予め選択されたヒト肺細胞である。
【0056】
或いは、当該遺伝子の発現は、罹患性多型と関連する場合に上方制御され、そして当該スクリーニングが当該細胞において当該遺伝子の発現を下方制御する候補化合物について行われる。
【0057】
別の実施態様では、当該遺伝子の発現は、保護的多型と関連する場合上方制御され、そして当該スクリーニングが当該細胞内において当該遺伝子の発現を上方制御する候補化合物について行われる。
【0058】
或いは、当該遺伝子の発現は、保護的多型に関連する場合下方制御され、そして当該スクリーニングが当該細胞内において当該遺伝子の発現を下方制御する化合物について行われる。
【0059】
さらなる態様では、本発明は、肺癌を発達させるリスクのあるか、又は肺癌を患っている対象の、遺伝子発現産物の生理学的に活性な濃度が当該対象の年齢及び性別について通常である範囲内に回復させることに関する予防又は治療処置への応答性を評価する方法であって、当該方法が、存在する場合に当該遺伝子の発現を上方制御又は下方制御し、その結果、発現遺伝子産物の生理学的に活性な濃度が当該通常の範囲を外れるようにする罹患性多型の有無を当該対象において検出することを含み、ここで、当該多型の存在の検出が、当該処理に応答する傾向のある対象を指し示す、前記方法を提供する。
【0060】
さらなる態様では、本発明は、肺癌を発達させる高いリスクを有し、かつCOX2をコードする遺伝子のプロモーターに存在する-765C/G多型においてGG遺伝子型の存在が決定された対象を治療する方法であって、当該方法が、当該対象においてCOX2活性を低減できる薬剤を当該対象に投与することを含む、前記方法を提供する。
【0061】
1の実施態様では、当該試薬は、COX2阻害剤又は非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)であり、好ましくは当該COX2阻害剤が、Celebrex(登録商標)(セレコキシブ)、Bextra(登録商標)(バルデコキシブ)、及びVioxx(ロフェコキシブ)からなる群から選ばれる。
【0062】
さらなる態様では、本発明は、癌を発達させる高いリスクを有し、かつMMP1をコードする遺伝子のプロモーターにおける-1607 1G/2G多型で2G2G遺伝子型の存在が決定された対象を治療する方法であって、当該方法が、当該対象においてMMP1活性を低減できる薬剤を当該対象に投与することを含む、前記方法を提供する。
【0063】
1の実施態様では、当該薬剤は、1以上のメタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)の発現又は活性、好ましくは1以上のTIMP1、TIMP2、TIMP3、又はTIMP4の内の1以上の発現又は活性、を増加できる薬剤である。さらなる実施態様では、当該薬剤は、1以上の膜結合MMPの活性の発現を低減できる薬剤である。更なる実施態様では、当該薬剤はMMP阻害剤であり、好ましくは当該MMP阻害剤は、4,5-ジヒドロキシアントラキノン-2-カルボン酸(AQCA)、アントラキニル-メルカプトエチルアミン、アントラキニル-アラニンヒドロキサマート、及びそれらの誘導体を含む群から選ばれる。
【0064】
さらなる態様では、本発明は、肺癌を発達させる対象のリスクを評価するためのキットであって、当該対象由来のサンプルを、本明細書に開示される1以上の多型の有無について分析する手段を含む、前記キットを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
ケースコントロール研究を用いて、肺癌を発達させた喫煙者、及び血液ドナー対象における候補遺伝子のいくつかの遺伝的変異(多型)の頻度を比較した。これらの候補遺伝子の大半は、遺伝子発現又はタンパク質の機能についての機能効果を確認した(又はおそらく確認した)。特に、血液ドナー対照、抵抗性喫煙者、及び肺癌を患う喫煙者(初期の開始を患うと喫煙者と通常の開始を患う喫煙者にさらに分けられる)との間の多型の頻度が比較された。本発明により、被験患者の選択された候補遺伝子に存在する保護的及び罹患性多型の両方が存在することが示された。
【0066】
本明細書に記載される1の実施態様では、19個の罹患性遺伝的多型及び17個の保護的遺伝的多型が同定された。これらは以下の通りである:
【表1】

【0067】
罹患性遺伝的多型は、存在する場合に肺癌を発達させる高いリスクを指し示す多型である。対照的に、保護的遺伝的多型は、存在する場合に肺癌を発達させる低いリスクを指し示す多型である。
【0068】
本明細書に使用される場合、「肺癌を発達させるリスク」という語句は、当該リスクに当てはまる対象が肺癌を発達させる可能性を意味し、そして当該疾患の素因及び当該疾患の潜在的な開始を含む。従って、「肺癌を発達させる高いリスク」という語句は、その様な高いリスクを有する対象が、肺癌を発達させる遺伝的性向又は傾向を有するということを意味する。このことは、このようなヒトが実際どんな場合も肺癌を発達させるということを意味するものではなく、彼又は彼女が、高い肺癌リスクに関連する多型を有さないか又は低い肺癌リスクに関連する多型を有するヒトの一般的集合に比較して肺癌を発達させる可能性が高いということを単に意味する。肺癌を発達させる高いリスクを有する対象は、評価時の肺機能に関わらず、傾向又は性向などの肺癌への傾向を有する対象、例えば遺伝的に肺癌への傾向を有するが通常の肺機能を有する対象、潜在的なリスクをもつ対象、例えば喫煙を続けた場合に肺癌を患うことになる可能性のある少し低減された肺機能への傾向を有する対象、そして肺活量測定器などで肺機能の悪化への傾向を有する肺癌を潜在的に開始させた対象を含み、評価の際に肺癌と一致する。
【0069】
同様に、「肺癌を発達させる低いリスク」という語句は、その様な低いリスクを有する対象が、肺癌を発達させる遺伝的傾向を有さないか又は低い傾向しか有さないということを意味する。このことは、このようなヒトが、どのような場合でも肺癌を発達させることはないということを意味しているわけでなく、単に、彼又は彼女が、高い肺癌リスクに関連する1以上の多型を有するか又は低い肺癌リスクに関連する多型を有さないヒトの一般的集合に比較して、肺癌を発達させる可能性が低いことを意味する。
【0070】
本発明の文脈では、「多型」という用語は、ヌクレオチド配列の点で異なるか又は様々な数の繰り返しヌクレオチドユニットを有する染色体座の2以上の変異(例えばアレル又は遺伝マーカー)が、同じ位置で同時に、ランダム突然変異(通常1%超)が寄与するよりも高率で生じることを意味するということが理解されよう。例えば、www.ornl.gov/sci/techresources/Human_Genome/publicat/97pr/09gloss.html#pを参照のこと。従って、本明細書に使用される「多型」という語句は、1塩基置換、ヌクレオチドの挿入及び欠失、繰り返し配列(例えば、マイクロサテライト)、及び遺伝子の全て又は部分的な喪失(例えばヌル変異)を含む遺伝的変化を予定する。本明細書に使用される場合、「多型」という用語は、遺伝子型及びハプロタイプも含む。遺伝子型は、特定の遺伝子座又は遺伝子座のセットでの遺伝的構成物である。ハプロタイプは、1の染色体上に存在する密接に関連される遺伝マーカーのセットであって、組換えにより簡単に分離できず、一緒に遺伝する傾向を有し、そして連鎖不均衡で存在しうる遺伝マーカーのセットである。ハプロタイプは、SNPなどの多型のパターンにより同定できる。同様に、本発明の文脈における「1塩基多型」又は「SNP」という用語は、1塩基ヌクレオチド置換及び短い欠失及び挿入多型を含む。
【0071】
肺癌を発達させる対象の低い又は高いリスクは、以下の:
一酸化窒素合成酵素3(NOS3)をコードする遺伝子におけるAsp298Glu;
NOS3をコードする遺伝子のプロモーターにおける-786T/C;
スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)をコードする遺伝子におけるArg312Gln;
アンチキモトリプシン(ACT)をコードする遺伝子におけるAla15Thr;
マトリクスメタロプロテイナーゼ12(MMP12)をコードする遺伝子におけるAsn357SerA/G;
インターロイキン-18(IL-18)をコードする遺伝子における105A/C;
インターロイキン-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133G/C;
インターフェロンγ(IFNγ)をコードする遺伝子における874A/T;
シクロオキシゲナーゼ2(COX2)をコードする遺伝子における-765G/C;
結合組織増殖因子(CTGF)をコードする遺伝子における-447G/C;
ムチン5AC(MUC5AC)をコードする遺伝子における-221C/T;
マンノース結合性レクチン2(MBL2)をコードする遺伝子における+161G/A;
アルギナーゼ1(Arg1)をコードする遺伝子におけるイントロン1C/T;
インスリン様成長因子II受容体(IGF2R)をコードする遺伝子におけるLeu252ValC/G;
インターロイキン10(IL-10)をコードする遺伝子における-1082A/G;又は
上記群の任意の1以上と連鎖不均衡にある1以上の多型
からなる群から選択される多型の存在について当該対象からえたサンプルを分析することにより診断されよう。
【0072】
これらの多型は、2以上の組合わせで分析できるか、又は上記残りの多型を含めた肺癌を発達させる患者のリスクを指し示す他の多型と組合わせて分析できる。
【0073】
上記多型と、第WO02/099134号として公開されたPCT国際出願PCT/NZ02/00106において記載される多型との組合わせは明示的に意図される。
【0074】
多型の組合わせを含むアッセイ、例えばマイクロアレイを用いるアッセイなどのハイスループットにかけられるアッセイが好ましい。
【0075】
特に、これらの多型の組み合わされた効果の統計分析は、本発明の遺伝的分析が、全ての喫煙者のリスク率を決定するために、そして特に肺癌を発達させる高いリスクの喫煙者を同定するために使用できるということが示される。このような組み合わされた分析は、罹患性多型のみの組合わせ、保護的多型のみ、又はその両方の組合わせからなってもよい。分析は、段階的であり、保護的多型の有無の分析を最初に行い、そして次に保護的多型が存在する場合にのみ罹患性多型の分析が行われる。
【0076】
こうして、本明細書に記載される様に、喫煙者と非喫煙者のよく規定された群におけるこれらの多型の頻度の体系的分析を通して、肺癌の発達において特定のタンパク質が関係しているとみなすことができ、そして予測の目的でどの喫煙者が、肺癌に関連する肺機能悪化及び肺癌を発達する高いリスクにあるかを同定する能力を改善する。
【0077】
本結果は、肺癌を発達させる少数の喫煙者が、1以上の罹患性多型を有し、そして本明細書に規定される保護的多型を全く持たないか少ししか持たないために肺癌を発達させることを最初に示した。1以上の罹患性多型の存在は、喫煙の悪い刺激及び酸化効果と組み合わされて、当該群の喫煙者を、肺癌を発達させる高い罹患性にすると考えられている。さらなるリスク因子、例えば、家族病歴、年齢、体重、パックイヤー(pack year)などは、対象のリスクプロファイルに影響を有し、そして本明細書に記載される遺伝的分析と組み合わせて評価できる。
【0078】
1以上の多型は、直接検出されてもよいし、又は当該1以上の多型と連鎖不均衡にある1以上の多型を検出することにより検出されてもよい。上で記載される様に、連鎖不均衡は、2以上の変異又は多型がかなり遺伝的に近位に存在しており、それらが一緒に遺伝される遺伝学における現象である。これは、遺伝子型の決定の際に、存在する1の多型を検出することが、もう一方の存在を暗示することを意味する(Reich DEら;Linkage disequilibrium in the human genome, Nature 2001, 411:199-204)。
【0079】
連鎖不均衡にあると報告された本明細書に記載された多型の例が本明細書に示され、そして、以下に示される様にインターロイキン-18-133C/Gと105A/C多型、並びにCYP2E1、1019G/C PstI及びC/T RsaI多型が挙げられる。
【0080】
【表2】

【0081】
肺癌を発達させる高い又は低いリスクに関する1以上の他の多型と連鎖不均衡にある多型が、肺癌を発達させるリスクについて生体マーカーとしての有用性を提供する。本明細書に示されるデータは、連鎖不均衡にあるSNPについての頻度がかなり似ているということを示す。従って、遺伝的に連鎖されたSNPは、オリジナルのSNPから計算されたリスクレベルに匹敵するリスクレベルをもたらすために混合多型分析において使用できる。
【0082】
その結果、例えば公的なデータベースを用いて本明細書中に特定された多型と連鎖不均衡にある1以上の多型が同定できることが明らかであろう。本明細書に特定される多型と連鎖不均衡にあると報告されたこのような多型の例は、本明細書で表36に示される。
【0083】
様々な命名法が所定の多型について存在してもよいということが明らかであろう。例えば、本明細書に、SOD3をコードする遺伝子におけるArg312Glnと呼ばれる多型が、Arg213Gly、+760G/C、及びArg231Gly(rs1799895)と様々に呼ばれてきたことが信じられている。本明細書に記載されるように罹患性又は保護的多型のことを言う場合、このような代わりの命名法が本発明により意図されている。
【0084】
本発明の方法は、肺癌と関連する上記多型の検出と同定に主に関し、これらは全て1塩基多型である。一般的に、1塩基多型(SNP)は、個体間での遺伝的変化をもたらす1塩基変異又は点突然変異である。SNPはヒトゲノムにおいておよそ100〜300塩基毎に生じ、そしてコード又は非コード領域で生じうる。遺伝コードの縮重のため、コード領域におけるSNPは、タンパク質のアミノ酸配列を変化させることもあるし変化させないこともある。非コード領域におけるSNPは、例えば、プロモーター、転写因子結合部位、プロセッシング部位、リボソーム結合部位などの調節領域を変更することにより遺伝子発現を変化させ、そして遺伝子転写、プロセッシング、及び翻訳に影響することができる。
【0085】
SNPは、大規模の遺伝的関連研究を促進することができ、そして近年SNPの発見及び検出についてかなりの関心がある。SNPsは、多くの(潜在的形質を含む)表現形形質、例えば、疾患傾向及び疾患重篤度、健康傾向、及び例えば薬の副作用への感受性を含む薬剤応答性、についてマーカーとしてかなりの裏付けを示す。個人が当該特定のSNPを有するかについての知識と併せて、表現形形質と特定SNPとの関係についての知識は、診断、予防、及び治療適用を標的とすることを可能にして、より良い疾患管理を可能にし、疾患状態の理解の向上させ、そして最終的により効果的な治療、例えば個人にあった治療法の発見を促進する。
【0086】
実際、既知のSNPの多くのデータベースが構築され、そして幾つかのその様なSNPについて、生物学的効果がSNPと関連する。例えば、NCBI SNPデータベース”dbSNP”は、NCBIのEntrezシステムに包含されており、そしてPubMed及びGenBankなどのEntrezの他のデータベースと同じアプローチを用いて検索できる。当該データベースは、ヒトゲノム配列上にマッピングされた150万を超えるSNPについての記録を有する。各dbSNPエントリーは、多型の配列関係(つまり、周囲配列)、(集合又は個人における)多型の発生頻度、及びバリエーションをアッセイするために使用される実験法、プロトコル、及び条件を含み、そして特定の表現型形質についてのSNPに関する情報を含むことができる。
【0087】
少なくとも部分的に健康についての潜在的な影響のため、SNPsを信頼性高くかつ迅速に同定する方法を開発するかなりの努力がされてきており、そして継続してされている。これは、少なくとも部分的に、3×109塩基対からなるハプロイドゲノムを有するヒトゲノムDNAの複雑さ、そして関連する感受性及び識別要求のため、簡単な仕事ではない。
【0088】
当該技術分野において周知であるSNPsを検出するための遺伝子型決定アプローチとしては、DNAシーケンス、プライマー又はプローブのアレル特異的ハイブリダイゼーション、多型の近く又は多型に隣接して結合するプライマーへのヌクレオチドのアレル特異的取り込み(しばしば、「1塩基延長」又は「ミニシーケンス」とも呼ばれる)、オリゴヌクレオチドのアレル特異的ライゲーション(結合)(ライゲーション連鎖反応又はライゲーションパッドロックプローブ)、制限酵素又は化学試薬若しくは化学試薬によるオリゴヌクレオチド又はPCR産物のアレル特異的切断(制限断片長多型分析(RFLP)) を必要とする方法、又は電気泳動又はクロマトグラフィーによる移動におけるアレル依存性差異の解析、侵襲的構造特異的酵素を含む構造特異的酵素による方法を必要とする方法、又は質量分析法が挙げられる。アミノ酸バリエーションの分析は、SNPがコード領域に存在し、そしてアミノ酸変化をもたらす場合に可能である。
【0089】
DNAシーケンスは、SNPsの直接的な決定及び同定を可能にする。全ゲノムシーケンス又は標的サブゲノムシーケンスでさえ、その固有の難しさは、シーケンス目的では特異性及び正確性の利点を上回ってしまう。
【0090】
ミニシーケンスは、検査される試験サンプルのSNP部位に隣接するDNA配列に、プライマーをハイブリダイズさせることに関する。プライマーは、4個の異なる標的蛍光ジデオキシヌクレオチド(ACGT)及びDNAポリメラーゼを用いて1塩基だけ伸張される。4個のヌクレオチドのうちの1つのみ(ホモ接合の場合)又は4個のヌクレオチドのうちの2個(ヘテロ接合の場合)が取り込まれる。取り込まれる塩基は、SNP位でのヌクレオチドに相補する。
【0091】
SNP検出に現在使用されている多くの方法は、部位特異的及び/又はアレル特異的ハイブリダイゼーションに関する。これらの方法は、オリゴヌクレオチドが目的のSNPを含む標的配列を識別して結合することに主として依存する。Affymetrix(Santa Clara, Calif.)及びNanogen Inc.(Sandiego, Calif.)の技術は特に知られており、そして1塩基ミスマッチを含むDNA二本鎖は、完全に塩基対形成している二本鎖よりもずっと不安定であるという事実を利用する。対形成した二本鎖の存在は蛍光により検出される。
【0092】
部位特異的ハイブリダイゼーションにより、SNPsを検出又は同定するための大部分の方法は、PCRなどの方法により標的を増幅して、感度及び特異性を増幅することを必要とする(例えば、米国特許第5,679,524号、PCT公開WO98/59066、PCT公開WO95/12607を参照のこと)。米国出願第20050059030号(その全ては本明細書に援用される)は、選択的に標的配列を濃縮するために前もって増幅すること又は複雑性を低減することなく、そして任意の酵素反応の助けをかりずに、全ヒトDNAにおいて1塩基多型を検出する方法を記載する。当該方法は、2個のハイブリダイゼーション事象:標的配列の第一部分を捕捉プローブへとハイブリダイゼーションすること、及び当該標的配列の第二部分を検出プローブへとハイブリダイゼーションすること、を含む一段階ハイブリダイゼーションを利用する。両方のハイブリダイゼーション事象は同じ反応において起こり、そしてハイブリダイゼーションが起こる順番は重要ではない。
【0093】
米国出願第20050042608号(その全てを本明細書に援用される)は、Thorpら(米国特許第5,871,918号)の核酸ハイブリダイゼーションの電気化学的検出方法の変更を記載する。簡潔に記載すると、捕捉プローブは、その各々が異なるSNP塩基を有し、そしてプローブの配列がSNP塩基の各側に位置するように設計される。プローブ塩基は、SNP部位に隣接する対応する標的配列に相補的である。各捕捉プローブは、支持体の導電性作用表面(conductive working surface)上に非伝導性外層を有する異なった電極上に固定される。各捕捉プローブと核酸標的との間のハイブリダイゼーションの程度は、遷移金属複合体を用いて各電極での酸化還元反応を検出することにより検出される。異なる電極での酸化率におけるこれらの差異は、選択された核酸標的が選択されたSNP部位で1のヌクレオチド多型を有するかを決定するために使用される。
【0094】
MEGATYPE(登録商標)を用いたLynx Therapeutics(Hayward, Calif)の技術は、少量又は大量のゲノム物質から同時に、かなり多くの数のSNPを遺伝子型決定できる。当該技術は、従来のSNPマッピング又は知識を必要とすることなく、蛍光標識されたプローブを用い、そして2個の集合の回収されたゲノムを比較して、2個の集合を区別するSNPにまたがっているDNA断片の検出及び回収を可能とする。
【0095】
SNPsを検出しそして同定する多くの他の方法が存在する。これらは、例えば、SNPにハイブリダイズするプローブを計測するために、質量分析の使用を含む。当該技術は、質量コードタグを用いて、1日当たり少数のサンプルから1日あたり40000SNPsのハイスループットまで、どれだけ迅速に行われうるかの点で変化する。好ましい例は、本発明の多型を含む核酸配列、例えば、COX2遺伝子又は相補配列のプロモーターを含む本発明の多型を含む核酸配列の質量分光方法の使用である。このような質量分光方法は当業者に知られており、そして本発明の遺伝子型決定方法は、本発明の多型、例えば本発明のCOX2プロモーター多型の質量分光決定に適用される。
【0096】
SNPは、ライゲーション-ビット分析により測定できる。当該分析は、プライマー間で1のヌクレオチドギャップを有する標的にハイブリダイズする2個のプライマーを必要とする。4個のヌクレオチドの各々が、DNPポリメラーゼ、ライゲース、標的DNA、及びプライマーを含む別々の反応混合液に加えられる。ポリメラーゼは、SNPに相補的である第一プライマーの3'末端にヌクレオチドを加え、そして次にライゲースは2個の隣接するプライマーをライゲーションする。サンプルを加熱する際に、ライゲーションが生じた場合、大きいプライマーは、ハイブリダイズしたまま残り、そしてシグナル、例えば蛍光が検出できる。当該方法のさらなる記載は、米国特許第5,919,626号;第5,945,283号;第5,242,794号;及び第5,952,174号において見ることができる。
【0097】
米国特許第6,821,733号(その全てを本明細書に援用される)は、以下の:
4方向複合体(four way complex)の形成と交差点移動(branch migration)を許容する条件下で2個の核酸を接触させ、
4方向複合体とトレーサー分子及び検出分子とを、検出分子がトレーサー分子又は4方向複合体に結合できる条件下で接触させ;そして
4方向複合体に晒される前又は後で、トレーサー分子の検出分子への結合を測定する
で表されるステップを含む2個の核酸分子の配列における差異を検出する方法を記載する。検出分子に結合することについての4方向複合体とトレーサー分子との競合は、2個の核酸の間の差異を示す。
【0098】
タンパク質-及びプロテオミクスに基づくアプローチは、多型検出及び分析に適している。発現されたタンパク質のバリエーションをもたらすか又は当該バリエーションに関する多型は、当該タンパク質を分析することにより直接検出できる。これは典型的に、サンプル内の様々なタンパク質を、例えばゲル電気泳動又はHPLCにより分離することを必要とし、そして例えば、NMR又はタンパク質シーケンス、例えば化学的シーケンス又はより一般的な質量分光法により、それらから派生されたタンパク質又はペプチドの同定することを必要とする。プロテオミック方法論は、当該技術分野に周知であり、そして自動化の高い可能性を有する。例えば、Proteome Systemsから販売されるProteomIQ(商標)などの統合システムは、サンプル調整、タンパク質分離、画像取得及び分析、タンパク質プロセッシング、質量分析、及びバイオインフォマティクス技術を組み合わせたプロテオーム分析のハイスループットプラットフォームを提供する。
【0099】
タンパク質同定のプロテオーム方法の大部分は、イオントラップ質量分析、液体クロマトグラフィー(LC)及びLC/MSn質量分析、ガスクロマトグラフィー(GC)質量分析、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-MS)、MALDI-TOF質量分析、及びESI質量分析、及びその派生法を含む質量分析を利用する。質量分析方法は、タンパク質の転写後改変、例えばリン酸化又はグリコシル化の決定において有用であり、そうしてタンパク質の転写後改変におけるバリエーションをもたらすか、又は当該バリエーションと関連する多型を決定するのに有用性を有する。
【0100】
関連技術も周知であり、そして例えば、酵素又は化学物質を直接選択されたタンパク質スポットにジェット噴射することにより、2次元PAGEから電気ブロットされたタンパク質サンプルの酵素又は化学物質によるin situ切断を可能にする圧電プリンティング技術を含む「化学物質インクジェットプリンター」などのタンパク質処理装置を含む。in situ切断及び当該タンパク質のインキュベートの後に、膜は、ペプチド分析のために質量分析器に直接配置されてもよい。
【0101】
核酸の構造的変動性に依存した多数の方法は、SNPを検出するために開発された。
【0102】
例えば、一本鎖高次構造多型(SSCP、Oritaら、PNAS 1989 86:1766-2770)は、特定の条件下で溶液中で二次構造を形成する一本鎖核酸の能力に依存した方法である。二次構造は、塩基組成に依存し、そして1塩基置換により改変することができて、未変性条件下における電気泳動の移動度の差異をもたらす。様々な多型は、一般的に、放射性標識された場合オートラジオグラフィーにより、バンドを銀染色することにより、検出可能なように標識されたプローブ断片とハイブリダイゼーションすることにより、又は例えば後に自動化DNAシーケンサーにより検出される蛍光PCRプライマーの使用により、検出される。
【0103】
SSCPの改変は当該技術分野に周知であり、異なるゲル移動条件、例えば、異なる温度、又は添加物及び異なるゲルマトリクスの添加、を使用することを含む。SSCPの他のバリエーションは、当該技術分野に周知であり、RNA-SSCP、制限エンドヌクレアーゼフィンガープリントSSCP、ジデオキシフィンガープリント(ジデオキシ配列とSSCPとの間のハイブリッド)、2方向性ジデオキシフィンガープリント(ジデオキシ末端反応が同時に、2個の反対のプライマーで行われる)、及び蛍光PCR-SSCP(ここで、PCR産物が複数の蛍光色素で内部標識され、制限酵素で切断され、続いてSSCPを行い、そして蛍光色素を検出できる自動化DNAシーケンサー上で分析される)を含む。
【0104】
異なる核酸構造の様々な移動度を利用する他の方法は、変性勾配ゲル電気泳動(DGGE)、温度勾配電気泳動(TGGE)、及びヘテロ二本鎖分析(HET)を含む。ここで、(例えば、塩基対ミスマッチのため生じる)二本鎖DNAの分離におけるバリエーションは、電気泳動の移動度の変化をもたらす。これらの移動度シフトは、ヌクレオチドの変異を検出するために使用される。
【0105】
変性高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)は、例えば、異なる速度でHPLCカラムから溶出するホモ二本鎖とヘテロ二本鎖を検出し、それによりミスマッチヌクレオチドの検出、そうしてSNPの検出を可能にするために当該技術分野に周知であるHPLC方法を上で記載される分離方法の代替として使用して、SNPを検出するために使用される更なる方法である。
【0106】
SNPを検出するさらなる方法は、化学切断試薬及び核酸分解酵素を含む様々な試薬による切断に対する一本鎖及び二本鎖核酸の異なる感受性に依存する。例えば、RNaseAによるRNA:DNAへテロ二本鎖でのミスマッチの切断、例えばバクテリオファージT4エンドヌクレアーゼYII又はT7エンドヌクレアーゼIによるヘテロ二本鎖の切断、切断酵素Iによる一本鎖DNAと二本鎖DNAとの間の結合部でのヘアピンループの5'末端の切断、及びMaxam-Gilbertシーケンス化学において一般的に使用される化学試薬によるヘテロ二本鎖内のミスペアのヌクレオチドの改変はすべて、当該技術分野に周知である。
【0107】
さらなる例として、変異により生成された停止コドンであって、翻訳の未完成終結をもたらし、そして小さいサイズのタンパク質産物をもたらす停止コドンを解明するために使用されたタンパク質翻訳試験(PTT)が挙げられる。変異は、例えば、MutSタンパク質、つまり大腸菌DNAミスマッチリペアシステムの成分、又はヒトhMSH2及びGTBPタンパク質を、ミスマッチ塩基を含む二本鎖DNAヘテロ二本鎖に結合することにより検出される。DNA二本鎖は次に、ミスマッチ結合タンパク質とインキュベートされ、そしてバリエーションは、移動度シフトアッセイにより検出される。例えば、単純なアッセイは、ミスマッチ結合タンパク質をヘテロ二本鎖へと結合することが、エキソヌクレアーゼ変性から異種二本鎖を保護するという事実に基づく。
【0108】
特定のSNPは、特に、プロモーターなどの遺伝子の調節領域において生じる場合、遺伝子発現の変化に関連しうることを当業者は知っている。遺伝子発現の変化は、SNPがタンパク質をコードする遺伝子のコード領域に位置する場合にも生じ、例えばここでSNPは、様々な使用量のコドンと関連し、そうして異なる量のtRNAと関連する。このような変更された発現は、当該技術分野に周知の方法により決定でき、そしてそれによりその様なSNPを検出するために使用できる。同様に、SNPが遺伝子のコード領域で生じ、そして非同義的アミノ酸置換をもたらす場合、このような置換は、遺伝子産物の機能の変化をもたらしうる。同様に、遺伝子産物がRNAである場合、このようなSNPは、RNA遺伝子産物の機能の変化をもたらすことができる。機能におけるこのような変化のいずれかは、例えば、活性又は機能アッセイにおいて評価されるように、このようなSNPを検出するために使用できる。
【0109】
SNPを検出及び同定する上記方法は、本発明の方法において使用されやすい。
【0110】
もちろん、本発明に従ってSNPsを検出及び同定するために、試験される物質を含むサンプルは対象から得られる。サンプルは、標的SNPs(又は標的ポリペプチド)を潜在的に含む任意のサンプルでありうるし、そして任意の体液(血液、尿、唾液など)の生検又は他の組織調製品から取得されうる。
【0111】
DNA又はRNAは、当該技術分野において周知の多くの方法のいずれかに従ってサンプルから単離できる。例えば、核酸精製方法は Tijssen; Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology; Hybridization with nucleic acid probes Part 1: Theory and Nucleic acid preparation, Elsevier, New York, N.Y. 1993 並びにManiatis, T., Fritsch, E. F. 及びSambrook, J., Molecular Cloning Manual 1989において記載される。
【0112】
多型/SNPsの有無の検出を助けるために、核酸プローブ及び/又はプライマーが提供されうる。このようなプローブは、多型の有無を明らかにする染色体変化に特異的な核酸配列を有し、そして好ましくは標的多型と組み合わせた場合検出されるシグナルを放出する物質で標識される。
【0113】
核酸プローブは、ゲノムDNA又はcDNA又はmRNA、或いは任意のRNA様又はDNA様物質、例えばペプチド核酸、分岐DNAなどでありうる。プローブは、センス又はアンチセンスポリヌクレオチドプローブでありうる。ここで標的ポリヌクレオチドは二本鎖であり、プローブはセンス又はアンチセンス鎖であってもよい。標的ポリヌクレオチドが一本鎖である場合、プローブは相補的一本鎖である。
【0114】
プローブが、当該技術分野に周知である様々な合成又は酵素スキームにより調製されうる。プローブは、全部又は一部において、当該技術分野に周知である科学的方法を用いて合成されうる(Caruthersら、Nucleic Acids Res., Symp. Ser., 215-233(1980))。或いは、プローブは、酵素的に全部又は一部において作成できる。
【0115】
ヌクレオチドアナログは、当該技術分野に周知である方法によりプローブに取り込まれうる。取り込まれたヌクレオチドアナログが、標的ポリヌクレオチド配列と塩基対を形成するように機能しなければならないということが唯一の要件である。例えば、特定のグアニンヌクレオチドは、ヒポキサンチンで置換され、ヒポキサンチンはシトシン残基と塩基対形成する。しかしながら、これらの塩基対は、グアニンとシトシンとの間の塩基対よりも安定性が低い。或いは、アデニンヌクレオチドは、2,6-ジアミノプリンで置換されうる。2,6ジアミノプリンは、アデニンとチミジンとの間の塩基対よりも強い塩基対を形成できる。
【0116】
さらに、プローブは、化学的又は酵素的に誘導体化されたヌクレオチドを含むことができる。典型的な化学的改変は、アシル、アルキル、アリール、又はアミノ基での誘導体化を含む。
【0117】
プローブは、支持体上に固定できる。好ましい支持体は、膜、フィルター、チップ、スライド、ウエハー、ファイバー、磁性又は非磁性ビーズ、ゲル、チューブ、プレート、ポリマー、微粒子、及びキャピラリーを含むいずれかの適切な剛体又は半剛体の支持体である。支持体は、ポリヌクレオチドプローブが結合する様々な表面形態、例えばウェル、トレンチ、ピン、チャネル、及び孔を有することがでる。好ましくは、支持体は光学的に透明である。
【0118】
さらに、プローブは、表面に直接結合される必要はなく、むしろリンカー基を通して支持体に結合されうる。リンカー基は、一般的に約6〜50原子長であり、取り付けられたプローブへの露出を提供する。好ましいリンカー基は、エチレングリコールオリゴマー、ジアミン、二酸などを含む。支持体表面上の反応基は、リンカーを支持体に結合するリンカーの末端位置のうちの一つと反応する。リンカーの他の末端部分は、次にプローブを結合するために官能基化される。
【0119】
プローブは、プローブを合成するために試薬を支持体表面に分注することにより、又は予め形成されたDNA断片又はクローンを支持体表面に分注することにより、支持体に取り付けることができる。一般的なディスペンサーは、支持体に対してマイクロピペットの位置を制御するためのロボットシステムを用いて、溶液を支持体にデリバリーするマイクロピペットを含む。試薬を同時に反応領域にデリバリーできるように複数のディスペンサーが存在しうる。
【0120】
核酸マイクロアレイが好ましい。このようなマイクロアレイ(核酸チップを含む)は当該技術分野に周知である(例えば、米国特許第5,578,832号;第5,861,242号;第6,183,698号;第6,287,850号;第6,291,183号;第6,297,018号;第6,306,643号;及び第6,308,170号を参照のこと、各々は援用される)。
【0121】
或いは、抗体マイクロアレイが製造できる。このようなマイクロアレイの製造は、実質的にSchweitzer & Kingsmore, "Measuring proteins on microarrays", Curr Opin Biotechnol 2002; 13(1): 14-9; Avseeknoら、"Immobilization of proteins in immunochemical microarrays fabricated by electrospray deposition", Anal Chem 2001 15; 73(24): 6047-52; Huang, "Detection of multiple proteins in an antibody- based protein microarray system, Immunol Methods 2001 1; 255 (1-2): 1-13.に記載される通りに行われる。
【0122】
本発明は、本発明に従って使用するためのキットの製造にも関する。適切なキットは、本発明に従って使用するための様々な試薬を、適切な容器及びパッケージング物質、例えばチューブ、バイアル、及び収縮包装されそして中空成形されたパッケージ中に含む。
【0123】
本発明に従った代表的キットに含めるために適した物質は、以下の:目的の遺伝的多型に隣接するDNA又はcDNA配列ドメインにアニールする遺伝子特異的PCRプライマー対(オリゴヌクレオチド)、PCRを実行することを必要とせずにゲノムDNA又はcDNAのいずれかにおいて特異的配列ドメインを増幅できる試薬;PCR又は非PCR増幅により増幅された配列ドメインにおいて様々な潜在的アレルを識別するために必要とされる試薬(例えば、制限エンドヌクレアーゼ、多型の1のアレルに優先的にアニールするオリゴヌクレオチド、例えばオリゴヌクレオチドからシグナルを増幅し、そしてアレルの識別をより明らかにする酵素又は蛍光化学基を含むように改変されたオリゴヌクレオチド)、様々なアレルから得られた精製物を物理的に分離するために必要とされる試薬(例えば、アガロース又はポリアクリルアミド、及び電気穿孔において使用される緩衝液、HPLCカラム、SSCPゲル、ホルムアミドゲル又はMALDI-TOF用のマトリクスサポート)のうちの1以上を含む。
【0124】
本発明の方法が、肺癌と関連することが知られている他のリスク因子の分析と併せて行うことができるということが認められよう。このようなリスク因子は、肺癌を発達させる高いリスクと関連する疫学的リスク因子を含む。このようなリスク因子として、非限定的に、喫煙及び/又はタバコの煙への露出、年齢、性別、及び家族の病歴などが挙げられる。これらのリスク因子は、肺癌を発達させる対象のリスクを評価する場合、本明細書に記載される様に1以上の多型の分析を増強するために使用できる。
【0125】
本発明の予測方法により、多くの治療的介入及び/又は治療計画が適切性について評価され、そして所定の対象について実行されることが可能になる。これらの最も簡単なものは、対照にライフスタイルを変えるための動機付けを提供することであり、例えば対象が習慣的な喫煙者である場合、本発明の方法は、禁煙をするための動機を提供することができる。
【0126】
治療的介入又は処置の様式は、多型の性質及び当該多型の生物学的影響により予測されよう。例えば、罹患性多型が遺伝子発現の変化と関連する場合、介入又は処置は、当該遺伝子の発現を調節することができる薬剤を投与することにより、当該遺伝子の通常の発現を回復することに向けられる。多型が遺伝子発現低下に関連する場合、治療は当該遺伝子発現を増大できる薬剤の投与に関し、そして逆に多型が遺伝子発現の増加に関連する場合、治療は当該遺伝子発現を低下できる薬剤の投与に関しうる。遺伝子発現の調節に有用な方法は当該技術に良く知られている。例えば、多型が遺伝子発現の増加と関連する場合では、RNAi又はアンチセンス法を用いる治療がmRNAの量を低減するために行われ、そうして当該遺伝子の発現を低減することができる。或いは治療は、例えば当該遺伝子産物の活性を調節し、それにより当該遺伝子の異常発現を補償することに向けられた方法であってもよい。
【0127】
罹患性多型が遺伝子産物の機能低下又は遺伝子産物の発現レベルの低下と関連する場合、治療介入又は処置は、当該機能を増大し又は置換すること、又は例えば当該遺伝子産物又はその機能アナログの投与により対象内の遺伝子産物の量を補うことに関しうる。多型が酵素機能の低下と関連する場合、治療は活性酵素又は酵素アナログの対象への投与に関しうる。同様に、多型が遺伝子産物機能の増加と関連する場合、治療介入又は処置は、例えば当該遺伝子産物のインヒビター又は対象内で遺伝子産物のレベルを低減できる薬剤を投与することにより当該機能を低下させることに関しうる。例えば、SNPアレル又は遺伝子型が酵素機能の増加と関連する場合、治療は酵素インヒビターを対象に投与することに関しうる。
【0128】
同様に、保護的多型が特定の遺伝子又は酵素又は他のタンパク質の発現の上方制御と関連する場合、治療は、抵抗性遺伝子型を欠く個人においてその様な上方制御又は発現を真似ること、及び/又はその様な個人にその様な酵素又は他のタンパク質をデリバリーすることに向けられうる。さらに、保護的多型が特定遺伝子の下方制御と関連する場合、又は酵素又は他のタンパク質の低減又は除去された発現と関連する場合、望ましい治療は、保護的遺伝子型を欠く個人においてその様な条件を模倣することに向けられうる。
【0129】
上で同定された様々な多型と肺癌への対象の罹患性(又はその逆)との関係は、治療薬の候補の設計及び/又はスクリーニングにおいて適用を有する。これは、罹患性又は保護的多型との間の関係が、遺伝子発現の上方制御又は下方制御のいずれかにより示される場合である。このような場合では、その様な上方制御又は下方制御における候補治療薬の効果は容易に検出できる。
【0130】
例えば、1の実施態様では、現存のヒトの肺器官及び細胞培養物は、上で記載されるSNP遺伝子型についてスクリーニングされる(ヒト肺器官及び細胞培養物の情報については、例えば:Bohinskiら(1996) Molecular and Cellular Biology 14:5671-5681; Collettsolbergら、(1996) Pediatric Research 39:504; Hermannsら(2004) Laboratory Investigation 84:736-752; Humeら (1996) In Vitro Cellular & Developmental Biology-Animal 32:24-29; Leonardiら (1995) 38:352-355; Notingherら (2003) Biopolymers (Biospectroscopy) 72:230-240; Ohgaら(1996) Biochemical and Biophysical Research Communications 228:391-396を参照のこと。各文献はその全てを本明細書に援用する)。保護的多型が存在する場合上方制御されるか又は下方制御される遺伝子の発現の点でおそらく「通常」である培養物と一緒に、罹患性及び保護的遺伝子型群を示す培養物が選択される。
【0131】
このような培養物のサンプルが、治療候補化合物のライブラリーに晒され、そして以下の:
(a)罹患性多型において通常上方制御される罹患性遺伝子の下方制御;
(b)罹患性多型において通常下方制御される罹患性遺伝子の上方制御;
(c)保護的多型において通常下方制御されるか又は発現されない(又はヌル形態が発現される)保護的遺伝子の下方制御;及び
(d)保護的多型において通常上方制御される保護的遺伝子の上方制御
のいずれか又は全てについてスクリーニングされる。化合物は、罹患性多型を有する培養物中の罹患性遺伝子及び/又は保護的遺伝子の調節及び/又は作用を変更する化合物の能力について選択される。
【0132】
同様に、存在する場合に発現された遺伝子産物の生理学的に活性な濃度が(年齢及び性別について調節された)対象の通常範囲を外れる場合、発現された遺伝子産物のレベルを通常範囲内に回復する利用可能な予防又は治療アプローチが存在する場合、個々の対象は、回復アプローチからの利益の可能性を決定するためにスクリーニングされうる。このようなスクリーニングは、本明細書に記載される任意の方法により対象における多型の有無を検出することに関し、多型が存在するこれらの対象は、治療からの利益を受けやすい個体として同定される。
本発明は、非限定的な実施例を参照することでより詳細に記載されよう。
【実施例】
【0133】
実施例1
症例関連研究
導入
症例対照関連研究は、対照群を注意深く選別することを可能にする。対照群では、重要なリスク因子の適合が重大である。当該研究では、肺癌を患うと診断された喫煙者と、肺癌を患わず通常の肺機能を有する喫煙者とが比較される。この極めて稀な対照群は、かなり適切である。なぜなら肺癌のリスクを有さない喫煙者、つまり、喫煙者であるが肺癌を決して発達させない喫煙者、を予め選別することは不可能であるからである。多いパックイヤーヒストリー及び通常の肺機能を有する喫煙者が、喫煙者の「低リスク」群として使用された。なぜなら出願人は、現在の知識では喫煙者の低リスク群を同定することは不可能であると考えるからである。出願人は、いずれの理論に束縛されることを望まず、当該アプローチが、肺癌を発達させる高いリスクを与える低浸透性高頻度の多型のより厳密な比較を可能にするということを信じる。出願人はまた、いずれの理論に束縛されることを望むことなく、肺癌からのある程度の保護を与える多型が存在しうるということを信じる。ここで、当該多型の存在は、通常の肺機能を有する喫煙者コホートが比較群として使用される場合にのみ明らかである。こうして、肺癌を患う喫煙者は、通常の肺機能を有し、そして診断された肺癌を有さない喫煙者に比べて、低い頻度のこれらの多型を有することが予期されよう。
【0134】
方法
対象要件
最低15パックイヤーを喫煙してきており、そして肺癌と診断された欧州出身の対象を実験に用いた。対照は、以下の基準:放射線学及び組織学的所見に基づき肺癌と診断され、小細胞肺癌、肺扁平上皮癌、肺の腺癌、非小細胞癌(組織学的マーカーが当該亜型を区別できない)、及び気管支肺胞癌の組織学的タイプを有する初期肺癌を含む。対象は、どの年齢であってもよく、そして診断が確認された後の治療のどの段階であってもよい。109人の対象が使用され、そのうちの58%が弾性であり、平均FEV1/FVC(±95%信頼限界)は51%(49〜53)であり、予測の割合として平均FEV1は43(41〜45)であった。平均年齢、1日当たりのタバコ本数、及びパックイヤーヒストリーは、それぞれ65歳(64〜66)、24本/日(22〜25)、及び50パックイヤー(41〜55)であった。最小で20パックイヤーを喫煙し、そして息切れを患わず、そして過去において閉塞性肺疾患又は肺癌と診断されたことのない217人の欧州人対象について研究された。当該対照群は、老人クラブを通じて採用し、そして63%の弾性からなり、平均FEV1/FVC(95%CI)は82%(81〜83)、予測値の割合としての平均FEV1は96(95〜97)であった。平均年齢、1日当たりのタバコの本数、及びパックイヤーヒストリーはそれぞれ59歳(57〜61)、24本/日(22〜26)及び42パックイヤー(39〜45)であった。PCRに基づく方法(Sanfordら、1999)を用いて、全ての対照を、α1-アンチトリプシンと当然変異(S及びZアレル)について遺伝子型を決定し、そしてZZアレルを有する対象を除いた。190人の欧州人血液ドナー(喫煙状態は不明)を、地方血液ドナーサービスを通じて引き続いて手に入れた。63%が弾性であり、そして平均年齢は50歳であった。回帰分析の際に、肺癌患者と抵抗性喫煙者との間でみられる年齢の差及びパックイヤーの差は、FEV又は肺癌を決定することはないことが発見された。
【0135】
本研究により、抵抗性喫煙者に比較して肺癌患者において高い頻度で見られる多型は、肺癌の発達について高い罹患性を反映しているかもしれない。同様に、肺癌に比べた抵抗性喫煙者において多く見られる多型は、保護的役割を反映しているかもしれない。
【0136】
【表3】

【0137】
グルタチオンS-トランスフェラーゼヌル多型の遺伝子型決定
ゲノムDNAを標準フェノール及びクロロホルム方法を用いて抽出した。患者及び対照のコホートを、戦略的陰性対照を含む96ウェルPCRフォーマットに構成した。アッセイプライマー、PCR条件及びRFLPアッセイの詳細は、以前に記載された[Cantlay AMら、1994]。遺伝子型決定は、発明者の研究室条件用に最適化された上記プロトコルを少し改変して行われた。PCR反応は、MJリサーチサーモサイクラーにおいて、25μlの全体体積で行い、そして80ngゲノムDNA、100ngフォワード及びリバースプライマー、200mMのdNTPs、20mMのTris-HCl(pH8.4)、50mM KCl、2.5mM・MgCl2、及び1ユニットのTaqポリメラーゼ(Qiagen)を含んだ。フォワード、インターナル(GSTM4)及びリバースプライマーの配列は以下の:
5'-CTGCCCTACTTGATTGATGG-3'[配列番号143]、
5'-ATCTTCTCCTCTTCTGTCTC-3'[配列番号144]及び
5'-TTCTGGATTGTAGCAGATCA-S'[配列番号145]
であった。サイクル条件は、94℃60秒、59℃30秒、72℃30秒を25サイクルし、最後の伸張は3分からなる。切断産物を3%アガロースゲル上で分離した。産物を臭化エチジウム染色の後に紫外線照射により可視化し、そして移動度を1Kb+ラダー標準(Invitrogen)に対して移動度を比較した。遺伝子型をデータスプレッドシートに記録し、そして統計分析を行った。
【0138】
シクロオキシゲナーゼ2多型の遺伝子型決定
ゲノムDNAを全血サンプルから抽出した(Maniatis, T., Fritsch, E.F.及びSambrook, J., Molecular Cloning Manual. 1989)。シクロオキシゲナーゼ2-765多型を以前に公開された方法を少し改変することにより行った(Papafili Aら、2002、その全てを本明細書に援用される)。PCR反応を沿う体積25μlで行い、そして20ngのゲノムDNA、500pmolのフォワード及びリバースプライマー、0.2mM dNTP、10mM Tris HCl(pH8.4)、150mM KCl、1.0mM・MgCl2及び1ユニットのポリメラーゼ(Life Technologies)を含んだ。サイクル時間は、95℃で3分間インキュベートし、続いて94℃50秒、66℃60秒、72℃60秒を33サイクル行った。次に最後の伸張を72℃で10分行った。4μlのPCR産物を、臭化エチジウムで染色された3%アガロースゲルを紫外線照射することにより可視化した。3μlの量の増幅産物を4ユニットのAciI(Roche Diagnostics, New Zealnd)で37℃で1時間切断した。切断産物をTBE緩衝液中の2.5%アガロースゲルで2.0時間、80mVで泳動して分離した。生成物を臭化エチジウム染色後に紫外線照射を用いて、123bpラダーに対して可視化した。
【0139】
マトリクスメタロプロテイナーゼ1-1607 1G/2G多型の遺伝子型決定
ゲノムDNAを標準的なフェノール及びクロロホルム法を用いて抽出した。患者及び対照のコホートを、戦略的陰性対照を含む96ウェルPCRフォーマットに構成した。アッセイプライマー、PCR条件、及びRFLPアッセイの詳細は、以前に記載された[DunleaveyLら]。発明者の研究室条件について最適化された上記プロトコルを少し改変して用いて遺伝子型決定を行った。PCR反応は、総体積25μlでMJ Researchサーモサイクラーで増幅し、そして80ngのゲノムDNA、100ngのフォワード及びリバースプライマー、200mM dNTP、20mM Tris HCl(pH8.4)、50mM KCl、1.5mM・MgCl2及び1.0ユニットのTaqポリメラーゼ(Qiagen)を含んだ。フォワード及びリバースプライマーの配列は、以下の:
5'-TCGTGAGAATGTCTTCCCATT-3'[配列番号1]及び
5'-TCTTGGATTGATTTGAGATAAGTGAAATC-3'[配列番号2]
であった。サイクル条件は、94℃60秒、55℃30秒、72℃30秒を35サイクル行い、最後の伸張を3分行うことからなる。増幅産物の一定量を6ユニットの制限酵素XmnI(Roche Diagnostics、New Zealand)を用いて切断温度条件において4時間切断した。切断産物を6%ポリアクリルアミドゲル上で分離した。産物を、エチジウム染色した後に紫外線照射により可視化し、そして移動度を1Kb+ラダー標準(Invitrogen)に対して比較した。遺伝子型をデータスプレッドシートに記録し、そして統計分析を行った。
【0140】
Sequenom Autoflex質量分析計を用いた多型の遺伝子型決定
ゲノムDNAを全血サンプルから抽出した(Maniatis, T., Fritsch, E. F.及びSambrook,J., Molecular Cloning Manual.1989)。精製ゲノムDNAの一定量を96ウェルプレートにいれ(10ng/μl濃度)、そして以下の配列、増幅条件、及び方法を用いて、Sequenom(登録商標)システム(Sequenom(登録商標)Autoflex質量分析計及びSamsung24ピンナノディスペンサー)上で遺伝子型を決定した。
【0141】
以下の条件は、PCR多重反応について使用された:
終濃度は10×緩衝液について、15mM・MgCl2、1.25×緩衝液について、25mM・MgCl21.625mM、dNTPミックス25mM500μM、プライマー4μM100nM、Taqポリメラーゼ(Quiagenホットスタート)0.15U/反応、ゲノムDNA10ng/μlであった。サイクル時間は95℃で15分、(5℃15秒、56℃30秒、72℃30秒)を45サイクル行い、3分の最終伸張であった。発明者は、エビアルカリホスファターゼ(SAP)処理を用い、(PCR反応液あたり2μ〜5μl)35℃で30分間インキュベートし、そして伸張反応(SAP処理後2μl〜7μlを加える)を行い、1反応あたりの体積は、水0.76μl、hME10×停止緩衝液0.2μl、hMEプライマー(10μM)1μl、MassEXTEND酵素0.04μlであった。
【0142】
【表4】

【0143】
【表5】

【0144】
【表6】

【0145】
【表7】

【0146】
【表8】

【0147】
【表9】

【0148】
結果
【表10】

1.遺伝子型. 抵抗性喫煙者対肺癌患者についてのTT対TG/GG、オッズ比(OR)=1.8、95%信頼限界=0.8〜4.3、χ2(イェーツ未補正)=2.14、P=0.14
TT遺伝子型は、肺癌について保護的である。
2.遺伝子型. 抵抗性喫煙者対対照についてのTT対TG/GG、オッズ比(OR)=2.2、95%信頼限界=1.0〜4.6、χ2(イェーツ補正)=4.2、p=0.04
TT遺伝子型は、肺癌について保護的である。
【0149】
【表11】

1.遺伝子型. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのTT対CC/CT、オッズ比(OR)=1.4、95%信頼限界=0.8〜2.3、χ2(イェーツ未補正)=1.45、P=0.23
TT遺伝子型は、肺癌について罹患性である。
【0150】
【表12】

1.遺伝子型. 抵抗性喫煙者対肺癌患者ついてのCG/GG対CC、イェーツ未補正=3.38、P=0.07、及びフィッシャーの両側検定、P=0.03
CG/GGは、肺癌ついて保護的である。
【0151】
【表13】

1.遺伝子型. 抵抗性喫煙者対肺癌患者についてのAA対AG/GG、オッズ比(OR)=2.6、95%信頼限界=0.8〜9.2、χ2(イェーツ未補正)=2.89、P=0.09
AA遺伝子型は、肺癌について保護的である。
【0152】
【表14】

1.遺伝子型. 抵抗性喫煙者対肺癌患者についてのAA対AT/TT、オッズ比(OR)=4.1、95%信頼限界=1.6〜11.2、χ2(イェーツ補正)=9.8、P=0.002
AAは肺癌について保護的である。
2.アレル. 抵抗性喫煙者対肺癌患者についてのA対T、オッズ比(OR)=1.5、95%信頼限界=1.0〜2.2、χ2(イェーツ補正)=5.07、p=0.02
Aは肺癌について保護的である。
【0153】
【表15】

1.遺伝子型. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのGG対AA/AG、オッズ比(OR)=1.7、95%信頼限界=0.9〜2.9、χ2(イェーツ未補正)=3.51、P=0.06
GGは肺癌について罹患性である。
2.アレル. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのG対A、オッズ比(OR)=1.3、95%信頼限界=0.9〜1.9、χ2(イェーツ未補正)=2.71、p=0.10
Gは肺癌について罹患性である。
【0154】
【表16】

1.遺伝子型. 抵抗性喫煙者対肺癌患者についてのGG対AG/AA、オッズ比(OR)=1.4、95%信頼限界=0.8〜2.6、χ2(イェーツ未補正)=1.6、P=0.20
GGは肺癌について保護的である。
2.遺伝子型. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのAG/AA対GG、オッズ比(OR)=1.4、95%信頼限界=0.8〜2.6、χ2(イェーツ未補正)=1.6、P=0.20
AAは肺癌について罹患性である。
【0155】
【表17】

1.遺伝子型. 肺癌対抵抗性喫煙者についてのGG対AA/AG、オッズ比(OR)=1.6、95%信頼限界=1〜2.7、χ2(イェーツ未補正)=4.07、P=0.04
GGは肺癌について罹患性である。
【0156】
【表18】

1.遺伝子型. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのAA対AG/GG、オッズ比(OR)=1.5、95%信頼限界=0.8〜2.6、χ2(イェーツ未補正)=2.03、P=0.15
AAは肺癌について罹患性である。
2.アレル. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてA対G、オッズ比(OR)=1.3、95%信頼限界=0.9〜1.8、χ2(イェーツ未補正)=2.04、p=0.15
Aは肺癌について罹患性である。
【0157】
【表19】

1.遺伝子型: 抵抗性喫煙者対肺癌患者についてのGG対TG/TT、オッズ比(OR)=1.7、95%信頼限界=0.8〜3.7、χ2(イェーツ未補正)=1.81、p=0.18
GGは肺癌について保護的である。
【0158】
【表20】

1.遺伝子型. 抵抗性喫煙者対肺癌についてのAG/GG対AA、オッズ比(OR)=2.2、95%信頼限界=0.7〜6.9、χ2(イェーツ未補正)=2.41、P=0.12
GG/AGは肺癌について保護的である。
AAは肺癌について罹患性である。
【0159】
【表21】

1.遺伝子型. 抵抗性喫煙者対肺癌患者についてのGG/AG対AA、オッズ比(OR)=1.7、95%信頼限界=0.7〜4.6、χ2(イェーツ未補正)=1.45、P=0.23
GG/AGは、肺癌について保護的である。
【0160】
【表22】

1.遺伝子型. 抵抗性喫煙者対肺癌患者についてのGG対CG/CC、オッズ比(OR)=4.0、95%信頼限界=0.9〜26.3、χ2(イェーツ未補正)=3.87、P=0.05
GGは肺癌について保護的である。
【0161】
【表23】

1.遺伝子型. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのGG対AG/AA、オッズ比(OR)=1.5、95%信頼限界=0.9〜2.5、χ2(イェーツ未補正)=3.0、P=0.08
GGは肺癌について罹患性である。
【0162】
【表24】

1.遺伝子型. 肺癌対抵抗性喫煙者についてのCG対GG、オッズ比(OR)=1.7、95%信頼限界=0.7〜4.5、χ2(イェーツ未補正)=1.42、p=0.23
CGは肺癌について罹患性である。
【0163】
【表25】

1.遺伝子型. 肺癌対抵抗性喫煙者についてのTC対CC、オッズ比(OR)=1.9、95%信頼限界=0.8〜5.0、χ2(イェーツ未補正)=2.24、P=0.13
TCは肺癌について罹患性である。
【0164】
【表26】

1.遺伝子型. 肺癌患者と抵抗性喫煙者についてのAA対AC/CC、オッズ比(OR)=1.6、95%信頼限界=1.0〜2.6、χ2(イェーツ未補正)=3.51、P=0.06
AAは肺癌について罹患性である。
AC/CCは肺癌について保護的である。
【0165】
【表27】

1.遺伝子型. 肺癌患者と抵抗性喫煙者についてのCC対CG/GG、オッズ比(OR)=1.5、95%信頼限界=0.9〜2.5、χ2(イェーツ未補正)=2.90、p=0.09
CCは肺癌について罹患性である。
CG/GGは肺癌について保護的である。
【0166】
【表28】

1.遺伝子型. 肺癌患者と対照についてのヌル対野生型、オッズ比(OR)=1.92、95%信頼限界=1.2〜3.2、χ2(イェーツ補正)=6.64、P=0.01
ヌルは肺癌について罹患性である。
【0167】
【表29】

1.遺伝子型. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのAA対AT/TT、オッズ比(OR)=1.4、95%信頼限界=0.8〜2.4、χ2(イェーツ未補正)=1.48、P=0.22
AA遺伝子型は肺癌について罹患性である。
2.遺伝子型. 肺癌患者対対照についてのAA対AT/TT、オッズ比(OR)=1.9、95%信頼限界=1.1〜3.4、χ2(イェーツ補正)=5.45、P=0.02
AA遺伝子型は肺癌について罹患性である。
【0168】
【表30】

1.遺伝子型. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのCC/CG対GG、オッズ比(OR)=0.53、95%信頼限界=0.3〜0.9、χ2(イェーツ補正)=4.9、P=0.03
CC/CGは保護的である。
2.アレル. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのC対G、オッズ比(OR)=0.59、95%信頼限界=0.4〜0.9、χ2(イェーツ補正)=4.8、P=0.03
Cは保護的である。
3.遺伝子型. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのGG対CG/CC、オッズ比(OR)=1.88、95%信頼限界=1.1〜3.3、χ2(イェーツ補正)=4.9、P=0.03
GGは罹患性である。
4.アレル. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのG対C、オッズ比(OR)=1.7、95%信頼限界=1.1〜2.7、χ2(イェーツ補正)=4.8、P=0.03
Gは罹患性である。
【0169】
【表31】

1.遺伝子型. 肺癌患者対対照についての2G2G対1G1G/1G2G、オッズ比(OR)=2.58、95%信頼限界=1.3〜5.2、χ2(イェーツ未補正)=7.5、P=0.006
2G2G遺伝子型は罹患性である。
2.アレル. 肺癌患者対対照についての2G対1G、オッズ比(OR)=2.1、95%信頼限界=1.4〜3.2、χ2(イェーツ補正)=12.3、P=0.0004
2Gは罹患性である。
【0170】
【表32】

1.遺伝子型. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのGC/CC対GG、オッズ比(OR)=1.6、95%信頼限界=0.8〜3.3、χ2(イェーツ未補正)=1.7、P=0.19
GC/CC遺伝子型は罹患性(トレンド)である。
【0171】
【表33】

1.遺伝子型. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのTT対CC/CT、オッズ比(OR)=0.47、95%信頼限界=0.2〜1.4、χ2(イェーツ未補正)=2.16、P=0.14
TT遺伝子型は保護的(トレンド)である。
【0172】
【表34】

1.遺伝子型. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのAG/AA対GG、オッズ比(OR)=1.4、95%信頼限界=0.8〜2.4、χ2(イェーツ未補正)=1.67、P=0.20
AG/AA遺伝子型は罹患性(トレンド)である。
【0173】
【表35】

1.遺伝子型. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのCC対CG/GG、オッズ比(OR)=2.3、95%信頼限界=0.9〜5.8、χ2(イェーツ未補正)=4.01、P=0.05
CC遺伝子型は罹患性である。
【0174】
【表36】

1.遺伝子型. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのTT対CC/CT、オッズ比(OR)=0.46、95%信頼限界=0.2〜0.95、χ2(イェーツ未補正)=5.11、P=0.02
TT遺伝子型は保護的である。
2.アレル. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのT対C、オッズ比(OR)=0.69、95%信頼限界=0.5〜1.0、χ2(イェーツ補正)=3.96、p=0.05
Tアレルは保護的である。
【0175】
【表37】

1.遺伝子型. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのCC対CT/TT、オッズ比(OR)=0.73、95%信頼限界=0.4〜1.2、χ2(イェーツ未補正)=1.6、p=0.20
CC遺伝子型は保護的(トレンド)である。
【0176】
【表38】

1.遺伝子型. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのGG対CC/CG、オッズ比(OR)=0.30、95%信頼限界=0.01〜2.5、χ2(イェーツ未補正)=1.41、P=0.22(片側t検定)
GG遺伝子型は保護的(トレンド)である。
【0177】
【表39】

1.遺伝子型. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのGG対TT/TG、オッズ比(OR)=1.4、95%信頼限界=0.8〜2.7、χ2(イェーツ未補正)=1.3、P=0.25
GG遺伝子型は罹患性である(トレンド)。
【0178】
【表40】

1.遺伝子型. 肺癌患者対抵抗性喫煙者についてのGG対GC/CC、オッズ比(OR)=0.66、95%信頼限界=0.4〜1.2、χ2(イェーツ未補正)=2.12、P=0.15
GG遺伝子型は保護的(トレンド)である。
【0179】
【表41】

【0180】
【表42】

【0181】
【表43】

【0182】
【表44】

【0183】
【表45】

【0184】
【表46】

【0185】
【表47】

【0186】
議論
幾つかの多型が、肺癌を発達させる高い又は低いリスクのいずれかに関連するということが上記結果により示される。個々の多型の関連は、それ自身では識別力のある値ではあるが、許容できる疾患予測を提供しないようである。しかしながら、組み合わせることで多型は、抵抗性である対象と罹患性対照(例えば、肺癌を発達させる喫煙者と同等の喫煙暴露を受けてもほとんどリスクを有さない喫煙者)とを区別する。多型は、遺伝子発現を変化させそしてタンパク質合成を変化させると考えられるプロモーター多型と、肺リモデリング及び肺癌の根底にあると知られている過程に関与する多くの遺伝子においてアミノ酸配列(並びに発現及び/又は機能)を変更すると知られているエクソン多型の両方を表す。本明細書に同定された多型は、炎症、マトリックスリモデリング及び酸化ストレスを含む過程の中核をなすタンパク質をコードする遺伝子に見られる。
【0187】
肺癌を患う喫煙者と、ほぼ通常の肺機能を有する(喫煙をするにも関わらず肺癌リスクが最も低い)対応喫煙者の比較において、幾つかの多型は、比較群(血液ドナーコホートを含むことがある)において発見されるよりも有意に高い又は低い頻度で発見されると同定された。肺癌患者のコホートが少ないため、差異に対する傾向のみが存在する場合(P=0.06〜0.25)多型を分析に含めたが、組合せ分析では最重要な有意差を有する多型のみを使用した。
【0188】
・一酸化窒素合成酵素3のAsp298Glu(T/G)多型の分析では、TT遺伝子型は、肺癌コホートに比べて喫煙抵抗性コホートにおいて高いことが発見され (OR=1.8、P=0.14)、保護的役割と一致する。血液ドナーコホートに比べて高い頻度は、TT遺伝子型が抵抗性群において多く存在するということを示唆する(表1aを参照のこと)。
【0189】
・一酸化窒素合成酵素3の-786T/C多型の分析では、TT遺伝子型は、喫煙抵抗性コホートに比べて肺癌コホートにおいて高いことが発見され(OR=1.4、P=0.23)、保護的役割と一致する (表1bを参照のこと)。
【0190】
・スーパーオキシドジスムターゼ3のArt312Gln多型の分析では、CG及びGG遺伝子型は、肺癌コホートに比べて喫煙抵抗性コホートにおいて有意に高いことが発見され(P=0.03)、各々が保護的役割を有するということに一致する (表2)。
【0191】
・XRCC1遺伝子のArg388GlnA/G多型の分析では、AA遺伝子型は、肺癌コホートに比べて喫煙抵抗性コホートにおいて高いことが発見され(OR=2.6、P=0.09)、保護的役割と一致する (表3)。
【0192】
・インターロイキン-8の-251A/T多型の分析では、AA遺伝子型は、肺癌コホートに比べて喫煙抵抗性コホートにおいて有意に高いことが発見され(OR=4.1、P=0.002)、保護的役割と一致する (表4)。Aアレルは肺癌コホートに比べて喫煙抵抗性コホートにおいて有意に高いということが発見され(OR=1.5、P=0.02)、保護的役割と一致する(表4)。
【0193】
・アンチキモトリプシン遺伝子のAla15Thr多型の分析では、GG遺伝子型は、喫煙抵抗性コホートに比べて肺癌コホートにおいて高いことが発見され(OR=1.7、P=0.06)、罹患性役割と一致する (表5を参照のこと)。Gアレルは喫煙抵抗性コホートに比べて肺癌コホートにおいて高いということが発見され(OR=1.3、P=0.1)、罹患性役割と一致する(表5を参照のこと)。
【0194】
・サイクリンD1遺伝子のA870G多型の分析では、GG遺伝子型は、肺癌コホートに比べて喫煙抵抗性コホートにおいて高いことが発見され(OR=1.4、P=0.20)、保護的役割と一致する (表6を参照のこと)。対照的に、AA遺伝子型は喫煙抵抗性コホートに比べて肺癌コホートにおいて高いことが発見され(OR=1.4、P=0.20)、罹患性役割と一致する(表6を参照のこと)。
【0195】
・インターロイキン1B遺伝子の-511A/G多型の分析では、GG遺伝子型は、喫煙抵抗性コホートに比べて肺癌コホートにおいて有意に高いことが発見され(OR=1.6、P=0.04)、利監視役割と一致する (表7を参照のこと)。
【0196】
・FAS(Apo-1/CD95)遺伝子のA-670G多型の分析では、AA遺伝子型は、喫煙抵抗性コホートに比べて肺癌コホートにおいて高いことが発見され(OR=1.5、P=0.15)、罹患性役割と一致する (表8を参照のこと)。Aアレルは喫煙抵抗性コホートに比べて肺癌コホートにおいて高いことが発見され(OR=1.3、P=0.15)、罹患性役割と一致する(表8を参照のこと)。
【0197】
・XPD遺伝子の751T/G多型の分析では、GG遺伝子型は、肺癌コホートに比べて喫煙抵抗性コホートにおいて高いことが発見され(OR=1.7、P=0.18)、保護的役割と一致する (表9)。
【0198】
・CYP450 1A1遺伝子のIle462Val G/A多型の分析では、AG及びGG遺伝子型は、肺癌コホートに比べて喫煙抵抗性コホートにおいて高いことが発見され(OR=2.2、P=0.12)、保護的役割と一致する (表10を参照のこと)。対照的に、AA遺伝子型は罹患性役割と一致することが発見された(表10を参照のこと)。
【0199】
・マトリクスメタロプロテイナーゼ12遺伝子のAsn357Ser多型の分析では、GG及びAG遺伝子型は、肺癌コホートに比べて喫煙抵抗性コホートにおいて高いことが発見され(OR=1.7、P=0.23)、保護的役割と一致する (表11を参照のこと)。
【0200】
・OGG1遺伝子のSer326Cys(C/G)多型の分析では、GG遺伝子型は、肺癌コホートに比べて喫煙抵抗性コホートにおいて有意に高いことが発見され(OR=4.0、P=0.05)、保護的役割と一致する (表12)。
【0201】
・N-アセチルトランスフェラーゼ2のArg197GlnG/A多型の分析では、GG遺伝子型は、喫煙抵抗性コホートに比べて肺癌コホートにおいて高いことが発見され(OR=1.5、P=0.08)、罹患性役割と一致する (表13を参照のこと)。
【0202】
・CYP 2E1遺伝子の1019G/CPst1多型の分析では、CG遺伝子型は、喫煙抵抗性コホートに比べて肺癌コホートにおいて高いことが発見され(OR=1.7、P=0.23)、罹患性役割と一致する (表14aを参照のこと)。
【0203】
・CYP 2E1遺伝子のC/T Rsa1多型の分析では、TC遺伝子型は、喫煙抵抗性コホートに比べて肺癌コホートにおいて高いことが発見され(OR=1.9、P=0.13)、罹患性役割と一致する (表14bを参照のこと)。
【0204】
・インターロイキン-18遺伝子の105A/C多型の分析では、AA遺伝子型は、喫煙抵抗性コホートに比べて肺癌コホートにおいて高いことが発見され(OR=1.6、P=0.06)、罹患性役割と一致する (表15aを参照のこと)。対照的に、AC及びCC遺伝子型は、各々保護的役割と一致する(表15を参照のこと)。
【0205】
・インターロイキン-18の-133C/G多型の分析では、CC遺伝子型は、喫煙抵抗性コホートに比べて肺癌コホートにおいて高いことが発見され(OR=1.5、P=0.09)、罹患性役割と一致する (表15bを参照のこと)。対照的に、CG及びGG遺伝子型は、各々保護的役割と一致する(表15bを参照のこと)。
【0206】
・グルタチオンSトランスフェラーゼ遺伝子のヌル多型の分析では、ヌル遺伝子型は、血液ドナーコホートに比べて肺癌コホートにおいて高いことが発見され(OR=1.92、P=0.01)、罹患性役割と一致する (表16を参照のこと)。
【0207】
・インターフェロンγの874A/T多型の分析では、AA遺伝子型は、血液ドナーコホートに比べて肺癌コホートにおいて高いこと(OR=1.9、P=0.02)、及び喫煙抵抗性コホートに比べて肺癌コホートにおいて高いこと(OR=1.4、P=0.22)が発見され、罹患性役割と一致する (表17を参照のこと)。
【0208】
・シクロオキシゲナーゼ2遺伝子の-765C/Gプロモーター多型の分析では、cアレル並びにCC及びCG遺伝子型は、肺癌コホートに比べて抵抗性喫煙者コホートにおいて有意に高いことが発見され(それぞれOR=0.59、P=0.03及びOR=0.53、P=0.03)、保護的役割と一致する。血液ドナーコホートに比べて高い頻度は、Cアレル(CC遺伝子型)が抵抗性群いおいて多く存在することが示唆される(表18を参照のこと)。対照的に、Gアレル及びGG遺伝子型は、喫煙抵抗性コホートに比べて肺癌コホートにおいて高いことが発見され(それぞれOR=1.7、P=0.03及びOR=1.88、P=0.03)、罹患性役割と一致する(表18を参照のこと)。
【0209】
・マトリクスメタロプロテイナーゼ1遺伝子の-1607 1G/2G多型の分析では、2G2G遺伝子型は、血液ドナーコホートに比べて肺癌コホートにおいて有意に高いことが発見され(OR=2.58、P=0.006)、罹患性役割と一致する (表19を参照のこと)。2Gアレルは、血液ドナーコホートに比べて肺癌コホートにおいて有意に高いことが発見され(OR=2.1、P=0.0004)、罹患性役割と一致する(表19を参照のこと)。
【0210】
・結合組織増殖因子遺伝子の-447G/C多型の分析では、CC及びGC遺伝子型は、喫煙抵抗性コホートに比べて肺癌コホートにおいて高いことが発見され(OR=1.6、P=0.19)、罹患性役割と一致する (表20を参照のこと)。
【0211】
・ムチン5AC遺伝子の-211C/T多型の分析では、TT遺伝子型は、肺癌コホートに比べて抵抗性喫煙者コホートにおいて高いことが発見され(OR=0.47、P=0.14)、保護的役割と一致する (表21を参照のこと)。
【0212】
・マンノース結合レクチン(MBL2)遺伝子の161G/A多型の分析では、AA及びAG遺伝子型は、抵抗性喫煙者コホートに比べて肺癌コホートにおいて高いことが発見され(OR=1.4、P=0.20)、各々が罹患性役割を有することと一致する (表22を参照のこと)。
【0213】
・ニブリン遺伝子のGln185GluG/C多型の分析では、CC遺伝子型は、抵抗性喫煙者コホートに比べて肺癌コホートにおいて有意に高いことが発見され(OR=2.3、P=0.05)、罹患性役割と一致する (表23を参照のこと)。
【0214】
・アルギナーゼ1遺伝子のイントロン1C/T多型の分析では、TT遺伝子型は、肺癌コホートに比べて抵抗性喫煙者コホートにおいて有意に高いことが発見され(OR=0.46、P=0.02)、保護的役割と一致する (表24を参照のこと)。Tアレルは、肺癌コホートに比べて抵抗性喫煙者コホートにおいて有意に高いことが発見され(OR=0.69、P=0.05)、保護的役割と一致する(表24を参照のこと)。
【0215】
・REV1遺伝子のPhe257SerC/T多型の分析では、CC遺伝子型は、肺癌コホートに比べて抵抗性喫煙者コホートにおいて高いことが発見され(OR=0.73、P=0.20)、保護的役割と一致する (表25を参照のこと)。
【0216】
・インスリン様成長因子II受容体遺伝子のLeu252Val C/G多型の分析では、GG遺伝子型は、肺癌コホートに比べて抵抗性喫煙者コホートにおいて高いことが発見され(OR=0.30、P=0.22)、保護的役割と一致する (表26を参照のこと)。
【0217】
・Apexヌクレアーゼ遺伝子のAsp148GluT/G多型の分析では、GG遺伝子型は、抵抗性喫煙者コホートに比べて肺癌コホートにおいて高いことが発見され(OR=1.4、P=0.25)、罹患性役割と一致する (表27を参照のこと)。
【0218】
・インターロイキン10遺伝子の-108 2A/G多型の分析では、GG遺伝子型は、肺癌コホートに比べて抵抗性喫煙者コホートにおいて高いことが発見され(OR=0.66、P=0.15)、保護的役割と一致する (表28を参照のこと)。
【0219】
肺癌への傾向は、個々の遺伝子構造と他の因子、例えばタバコの煙を含む様々な空気汚染物質への生涯にわたる暴露の組み合わせた影響の結果であると認められる。同様に、肺癌が幾つかの閉塞性肺疾患を包含し、そして呼気流量の喪失(例えばFEV1)により特徴付けられるということが認められる。本明細書のデータにより、幾つかの遺伝子が肺癌の発達に寄与し売るということが示唆される。肺の損傷を促進するか、又は防御するいずれかの組み合わせで機能する多くの遺伝的突然変異が、肺癌についての高い抵抗性又は罹患性に関与しうる。
【0220】
個々の多型の分析から17の保護的遺伝子型を同定し、そして低リスクの喫煙者、つまり抵抗性喫煙者(ほぼ通常の肺機能を有する)、及び肺癌を患う喫煙者からなる喫煙者コホートにおいてその頻度を分析した。抵抗性喫煙者及び肺癌を患う喫煙者の頻度が、6個の保護的遺伝子型(CYP1A1 GG/AG、OGG1 GG、CCND1 GG、NOS3 298 TT、IL-8 AA、XRCC1 AA)のサブセットから選択される0、1、及び2以上(2+)の保護的遺伝子型の存在に従って比較される場合、有意差が見られた(表30を参照のこと)。2以上の保護的遺伝子型を有する喫煙者が抵抗性である4〜5倍以上の可能性を有し(OR=4.6、P=0.0005)、一方保護的多型を1つも有さない喫煙者は、肺癌を有する可能性がほぼ3倍の可能性であった(OR=2.8、P<0.0001)。別の方法で試験すると、肺癌を有する可能性は、0、1、又は2以上の保護的多型を有する喫煙者で、48%、30%、14%へと減少した。保護的多型の大きな群を分析することは同様の発見をもたらした(表32及び34を参照のこと)。
【0221】
個々の多型の分析から、19個の罹患性遺伝子型が同定され、そして抵抗性喫煙者及び肺癌を患う喫煙者からなる喫煙者コホートにおいてその頻度を分析した。抵抗性喫煙者と肺癌を患う喫煙者の頻度が、6個の罹患性遺伝子型(CYP2E1 1019 CC/CG、FAS AA、IL-1B GG、ACT15GG遺伝子型)のサブセットから選ばれた0、1、及び2以上(2+)の罹患性遺伝子型の存在に従って比較された場合に、有意差が見られた(表31を参照のこと)。2以上の罹患性遺伝子型を有する喫煙者は、肺癌を有するほぼ2倍以上の可能性を有し(OR=1.8、P=0.04)、一方罹患性遺伝子型を有さない喫煙者は抵抗性である2倍の可能性であった(OR=2.3、P=0.004)。別の方法で試験される場合、肺癌を有する可能性は、0、1、又は2以上の罹患性遺伝子型を有する喫煙者で、それぞれ23%から、38%、45%に増加した。罹患性多型の大きな群の分析は同様の発見をもたらした(表33及び35を参照のこと)。
【0222】
これらの発見は、本発明の方法が、症状が現れる前に個人において肺癌をうまく予測することができるということを示唆する。
【0223】
それにより、これらの発見は、本明細書に議論される治療介入及び/又は治療計画の機会を提示する。簡潔に記載すると、このような治療介入又は計画は、対象にライフスタイルの改善させる動機を提供することを含むことができ、又は異常な遺伝子発現又は遺伝子産物の機能を通常にすることに向けられる。例えばCOX2をコードする遺伝子のプロモーターにおける-765Gアレルは、Cアレルで観察される遺伝子発現に比べて遺伝子の発現増加と関連する。本明細書に示される様に、Cアレルは、肺癌を発達させるリスクに関して保護的であり、ここで-765Gアレルを有すると知られている対象における適切な治療は、COX2をコードする遺伝子の発現を低減できる薬剤の投与でありうる。代替となる適切な治療は、その様な対象にCOX2阻害剤の投与、及び/又はさらなる治療アプローチ、例えば遺伝子治療、RNAiなどを投与することでありうる。別の例では、本明細書に示される様に、IL18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133Cアレルは、肺癌の罹患性と関連する。IL18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133Gアレルは、IL18の高いレベルと関連し、それにより-133Cアレルを有すると知られている対象における適切な治療は、IL18をコードする遺伝子の発現を増加できる薬剤の投与でありうる。代替の治療は、IL-18又はその機能アナログを対象に投与すること、又は対象においてIL-18レベルを増強することである。さらなる例では、本明細書に示される様にMMP1をコードする遺伝子のプロモーターにおける-1607 2G/2G遺伝子型が肺癌への罹患性と関連する。マトリクスメタロプロテイナーゼの多くの阻害剤が知られており、例えば米国特許第6,600,057号(その全てを本明細書に援用する)に記載されている阻害剤、例えば、MMPと不活性複合体を形成するメタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)、例えばTIMP1、TIMP2、TIMP3、及びTIMP4、MMP作用を妨げるより一般的なプロテイナーゼ調節剤、MMP遺伝子発現の調節剤、例えばMMPの分泌酵素前駆体を活性化する膜結合MMP(MT-MMP)、及び4,5-ジヒドロキシアントラキノン-2-カルボン酸(AQCA)などの化合物及びその誘導体が知られている。-1607 2G/2Gを有すると知られている対象における適切な治療は、MMP1をコードする遺伝子の発現を低減できる薬剤の投与又はMMP1の活性を低減できる薬剤の投与、例えば1以上のTimpの活性又は発現を増大できる薬剤の投与、又は1以上の膜結合MMP又は他のMMP1活性化因子の活性又は発現を低減できる薬剤の投与でありうる。例えば、適切な治療は、MMP1阻害剤、例えば、4,5-ジヒドロキシアントラキノン-2-カルボン酸(AQCA)、アントラキニル-メルカプトエチアミン、アントラキニル-アラニンヒドロキサマート、又はそれらの誘導体を投与することでありうる。別の例では、所定の罹患性遺伝子型は、保護的遺伝子型とともに観察される遺伝子に対して遺伝子の高い発現と関連する。罹患性遺伝子型を所有すると知られている対象における適切な治療は、当該遺伝子の発現を低減できる薬剤の投与であり、例えばアンチセンス又はRNAi法の使用である。代わりの適切な治療は、当該遺伝子産物の阻害剤をこのような対象に投与することでありうる。さらに別の例では、遺伝子のプロモーターに存在する罹患性遺伝子型が、当該リプレッサータンパク質の高い結合性及び当該遺伝子の低い転写と関連する。適切な治療は、リプレッサーのレベルを低減できるか及び/又はリプレッサーの結合を妨げることができ、それにより転写の下方制御効果を弱めることができる薬剤の投与である。代替の治療は、遺伝子治療、例えば、リプレッサーの結合について低い親和性しか有さない遺伝子の少なくとも1のコピーを導入することを含みうる(例えば、保護的遺伝子型を有する遺伝子コピー)。
【0224】
そのような治療において用いるための適切な方法及び薬剤は当該技術分野に周知であり、そして本明細書で議論される。
【0225】
本明細書に記載される罹患性及び保護的多型の同定は、予防及び/又は治療処置の方法におけるその効力を評価するために候補化合物をスクリーニングする機会を提供する。このようなスクリーニング方法は、どの範囲の候補化合物が罹患性多型の遺伝子型又は表現形効果を反転させるか又は対抗する能力、又は保護的多型の遺伝子型又は表現形効果を模倣するか又は複製する能力を有するかを同定することに関する。
【0226】
さらに、利用できる予防又は治療アプローチに対する対象の同様の応答性を評価する方法が提供される。このような方法は、利用できる治療アプローチが、過剰又は不足のいずれかの状態で発現された遺伝子産物の生理学的に活性な濃度を、対象の年齢及び性別について通常である範囲内に回復させることに関する特定の適用を有する。このような場合、当該方法は、存在する場合に当該遺伝子の発現を上方制御又は下方制御し、その結果このような過剰又は不足の状態をもたらす罹患性多型の有無を検出することを含み、ここで、多型を有する対象が、治療に応答性を有する者であるようだ。
【0227】
実施例2
以下の表36は、本明細書に特定される多型と連鎖不均衡にある多型の代表的な例を示す。このような多型の例は、www.hapmap.orgで利用できるデータベースなどの公的なデータベースを用いて位置決定されうる。特定の多型は、括弧内に記される。提供されたrs番号は、各多型について固有である識別番号である。
【0228】
【表48】

【0229】
【表49】

【0230】
【表50】

【0231】
【表51】

【0232】
【表52】

【0233】
【表53】

【0234】
【表54】

【0235】
【表55】

【0236】
【表56】

工業適用
本発明は、肺癌を発達させる対象のリスクを評価する方法に関する。 当該方法は、肺癌を発達させる高いリスク又は低いリスクと関連すると示される多型の分析、或いはこのような分析から得られた結果の分析を含む。対象のリスクの評価において、肺癌を発達させる高い又は低いリスクと関連すると本明細書に示された多型の使用が提供され、その様な評価に適したヌクレオチドプローブ、プライマー、キット、及びマイクロアレイが提供される。本明細書の多型を有する対象を治療する方法も提供される。本明細書に記載される多型と関連する遺伝子の発現を調節できる化合物をスクリーニングする方法も提供される。
【0237】
【表57】

【0238】
本明細書で言及され又は参照される全ての特許、刊行物、科学論文、及び他の文書及び資料は、本発明の属する技術分野の当業者の技術水準を示し、そしてこのように引用された文書及び資料各々、その全てを個別に援用され、又は本明細書にその全てを記載する場合と同程度に本明細書に援用される。出願人は、このような特許、刊行物、科学論文、ウェブサイト、電気的に利用できる情報、及び他の引用される資料又は文書から、任意及び全ての資料及び情報を本明細書に物理的に取り込む権利を留保する。
【0239】
本明細書に記載される特定の方法及び組成物は、様々な実施態様の又は好ましい実施態様の代表であり、そして例示のみであり、そして本発明の範囲を制限するものとして意図されない。他の対象、態様、実施例、及び実施態様は、本明細書を考慮すれば当業者に生じ、そして特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内に包含される。様々な置換及び変更が、本発明の範囲及び本質から逸脱することなく本明細書に開示される発明になされうるということは当業者に容易に明らかであろう。本明細書に例示的に記載された発明は、本質として本明細書に具体的に開示されていない構成要素(単数又は複数)又は制限(単数又は複数)のいずれかのの非存在下で適切に行われうる。こうして、例えば、本明細書の各場合において、本発明の実施態様又は実施例において、「含む」、「実質的に〜なる」、及び「からなる」という用語のいずれも、本明細書における他の二つの用語のいずれかと置き換えることができ、そうして、本発明の様々な代わりの実施態様の異なる範囲を有する更なる例を指す。また、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「含む(containing):などは拡張的に、かつ非制限的に読むべきである。本明細書に代表的に記載される方法及び過程は、工程の順番を違えて適切に行われても良く、そしてそれらは必ずしも本明細書又は特許請求の範囲に記載された工程の順番に限らなければならないわけではない。本明細書及び添付の特許請求の範囲に使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかにそうでないと記載しない限り複数形を含む。こうして、例えば、「宿主細胞」という参照は、このような宿主細胞の複数形(例えば、培養物又は集団)を含む。本特許は、本明細書に具体的に開示された特定の実施例又は実施態様又は方法に制限されると解釈される場合はない。このような主張が具体的にされ、そして制限又は留保無しに出願人による書面において明らかに適用された場合を除き、本特許は、審査官又は特許及び商標庁の他の関係者又は職員によって制限されて解釈される場合はない。
【0240】
使用された用語及び表現は、説明の観点で使用され、そして制限するものではなく、そして示されそして記載された特徴の任意の同等物を除外することを、このような用語及び表現を使用する際に意図しないが、様々な改変が特許請求される発明の範囲内で可能であるということが認められる。こうして、本発明が具体的に好ましい実施態様及び選択的な特徴により具体的に開示されているが、本明細書に開示される概念の変更及びバリエーションは、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内であると解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0241】
【図1】図1は、保護的多型の数に対してプロットされた肺癌を患うヒトの割合を示すグラフを記載する。
【図2】図2は、罹患性多型の数に対してプロットされた肺癌を患うヒトの割合を示すグラフを記載する。
【図3】図3は、肺癌を患う喫煙者と抵抗性の喫煙者における保護的多型の頻度を示すグラフを記載する。
【図4】図4は、肺癌を患う喫煙者と抵抗性の喫煙者における罹患性多型の頻度を示すグラフを記載する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺癌を発達させる対象のリスクを測定する方法であって、以下の:
一酸化窒素合成酵素3(NOS3)をコードする遺伝子におけるAsp298Glu;
一酸化窒素合成酵素3をコードする遺伝子のプロモーターにおける-786T/C;
スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)をコードする遺伝子におけるArg312Gln;
アンチキモトリプシン(ACT)をコードする遺伝子におけるAla15Thr;
マトリクスメタロプロテイナーゼ12(MMP12)をコードする遺伝子におけるAsn357SerA/G;
インターロイキン-18(IL-18)をコードする遺伝子における105A/C;
インターロイキン-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133G/C;
インターフェロンγ(IFNγ)をコードする遺伝子における874A/T;
シクロオキシゲナーゼ2(COX2)をコードする遺伝子における-765G/C;
結合組織増殖因子(CTGF)をコードする遺伝子における-447G/C;
ムチン5AC(MUC5AC)をコードする遺伝子における-221C/T;
マンノース結合性レクチン2(MBL2)をコードする遺伝子における+161G/A;
アルギナーゼ1(Arg1)をコードする遺伝子におけるイントロン1C/T;
インスリン様成長因子II受容体(IGF2R)をコードする遺伝子におけるLeu252ValC/G;
インターロイキン10(IL-10)をコードする遺伝子における-1082A/G;
又はこれら多型のいずれか1以上と連鎖不均衡にある1以上の多型
からなる群から選ばれる1以上の多型の有無について当該対象由来のサンプルを分析することを含み、ここで1以上の当該多型の有無は、肺癌を発達させる対象のリスクを指し示す、前記方法。
【請求項2】
以下の:
NOS3をコードする遺伝子におけるAsp298Glu TT遺伝子型;
SOD3をコードする遺伝子におけるArg312Gln CG又はGG遺伝子型;
MMP12をコードする遺伝子におけるAsn357Ser AG又はGG遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における105AC又はCC遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における-133CG又はGG遺伝子型;
COX2をコードする遺伝子のプロモーターにおける-765CC又はCG遺伝子型;
MUC5ACをコードする遺伝子における-221TT遺伝子型;
Arg1をコードする遺伝子におけるイントロン1 C/T TT遺伝子型;
IGF2Rをコードする遺伝子におけるLeu252Val GG遺伝子型;又は
IL-10をコードする遺伝子における-1082GG遺伝子型;
からなる群から選ばれる1以上の多型の存在が、肺癌を発達させる低いリスクを指し示す、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
以下の:
NOS3をコードする遺伝子のプロモーターにおける-786TT遺伝子型;
ACTをコードする遺伝子におけるAla15ThrGG遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における105AA遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133CC遺伝子型;
IFNγをコードする遺伝子における874AA遺伝子型;
COX2をコードする遺伝子のプロモーターにおける-765GG遺伝子型;
CTGFをコードする遺伝子における-447CC又はGC遺伝子型;又は
MBL2をコードする遺伝子における+161AA又はAG遺伝子型;
からなる群から選ばれる1以上の多型の存在が、肺癌を発達させる高いリスクを指し示す、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法が、以下の:
チャイニーズハムスターにおけるX線修復補体欠損1(XRCC1)遺伝子におけるArg399Gln G/A;
インターロイキン-8(IL-8)をコードする遺伝子における-251A/T;
サイクリンD(CCND1)をコードする遺伝子におけるA870G;
インターロイキン1B(IL-1B)をコードする遺伝子における-511A/G;
FAS(Apo-1/CD95)をコードする遺伝子における-670G;
色素性乾皮症相補群D(XPD)遺伝子のプロモーターにおける-751G/T;
シトクロムP450 1A1(CYP1A1)をコードする遺伝子におけるIle462ValA/G;
8-オキソグアニンDNAグリコラーゼ(OGG1)をコードする遺伝子におけるSer326CysG/C;
N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)をコードする遺伝子におけるArg197GlnA/G;
シトクロムP450 2E1(CYP2E1)をコードする遺伝子における1019G/CPstI;
シトクロムP450 2E1をコードする遺伝子におけるC/T RsaI;
グルタチオンSトランスフェラーゼM(GSTM)をコードする遺伝子におけるGSTMヌル;
マトリクスメタロプロテイナーゼ1(MMP1)をコードする遺伝子のプロモーターにおける-1607 1G/2G;
ニブリン(NBS1)をコードする遺伝子におけるGln185Glu G/C;
REV1をコードする遺伝子におけるPhe257SerC/T;
アペックスヌクレア-ゼ(APE1)をコードする遺伝子におけるAsp148GluG/T;又は
1以上のこれらの多型と連鎖不均衡にある、1以上の多型
からなる群から選ばれる1以上のさらなる多型の有無について前記サンプルを分析することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
以下の:
NOS3をコードする遺伝子におけるAsp298Glu TT遺伝子型;
SOD3をコードする遺伝子におけるArg312Gln CG又はGG遺伝子型;
MMP12をコードする遺伝子におけるAsn357Ser AG又はGG遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における105AC又はCC遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における-133CG又はGG遺伝子型;
COX2をコードする遺伝子のプロモーターにおける-765CC又はCG遺伝子型;
MUC5ACをコードする遺伝子における-221TT遺伝子型;
Arg1をコードする遺伝子におけるイントロン1 C/T TT遺伝子型;
IGF2Rをコードする遺伝子におけるLeu252Val GG遺伝子型;
IL-10をコードする遺伝子における-1082GG遺伝子型;
IL-8をコードする遺伝子における-251AA遺伝子型;
XRCC1遺伝子におけるArg399GlnAA遺伝子型;
CCND1をコードする遺伝子におけるA870G GG遺伝子型;
XPD遺伝子のプロモーターにおける-751GG遺伝子型;
CYP1A1をコードする遺伝子におけるIle462Val AG又はGG遺伝子型;
OGG1をコードする遺伝子におけるSer326Cys GG遺伝子型;又は
REV1をコードする遺伝子におけるPhe257Ser CC遺伝子型
からなる群から選ばれる1以上の多型の存在が、肺癌を発達させる低いリスクを指し示す、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
以下の:
NOS3をコードする遺伝子のプロモーターにおける-786TT遺伝子型;
ACTをコードする遺伝子におけるAla15ThrGG遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における105AA遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133CC遺伝子型;
IFNγをコードする遺伝子における874AA遺伝子型;
COX2をコードする遺伝子のプロモーターにおける-765GG遺伝子型;
CTGFをコードする遺伝子における-447CC又はGC遺伝子型;
MBL2をコードする遺伝子における+161AA又はAG遺伝子型;
IL-1Bをコードする遺伝子における-511GG遺伝子型;
FASをコードする遺伝子におけるA-670G AA遺伝子型;
NAT2をコードする遺伝子におけるArg197GlnGG遺伝子型;
CYP1A1をコードする遺伝子におけるIle462Val AA遺伝子型;
CYP2E1をコードする遺伝子における1019G/CPstI CC又はCG遺伝子型;
CYP2E1をコードする遺伝子におけるC/T RsaI TT又はTC遺伝子型;
GSTMをコードする遺伝子におけるGSTMヌル遺伝子型;
MMP1をコードする遺伝子のプロモーターにおける-1607 2G/2G遺伝子型;
NBS1をコードする遺伝子におけるGln185Glu CC遺伝子型;又は
APE1をコードする遺伝子におけるAsp148Glu GG遺伝子型
からなる群から選ばれる1以上の多型の存在が、肺癌を発達させる高いリスクを指し示す、請求項4又は請求項5に記載の方法。
【請求項7】
肺癌を発達させる対象のリスクを評価する方法であって、当該方法が以下のステップ:
(i) 肺癌を発達させる低いリスクと関連した少なくとも1の保護的多型の有無を測定し;そして
(ii)少なくとも1の保護的多型の非存在下で、肺癌を発達させる高いリスクと関連する少なくとも1の罹患性多型の有無を測定する
を含み、ここで、1以上の当該保護的多型の存在が肺癌を発達させる低いリスクを指し示し、そして少なくとも1の罹患性多型の存在と組み合わせて少なくとも1の保護的多型が存在しないことが肺癌を発達させる高いリスクを指し示す、前記方法。
【請求項8】
前記少なくとも1の保護的多型が以下の:
NOS3をコードする遺伝子におけるAsp298Glu TT遺伝子型;
SOD3をコードする遺伝子におけるArg312Gln CG又はGG遺伝子型;
MMP12をコードする遺伝子におけるAsn357Ser AG又はGG遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における105AC又はCC遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における-133CG又はGG遺伝子型;
COX2をコードする遺伝子のプロモーターにおける-765CC又はCG遺伝子型;
MUC5ACをコードする遺伝子における-221TT遺伝子型;
Arg1をコードする遺伝子におけるイントロン1 C/T TT遺伝子型;
IGF2Rをコードする遺伝子におけるLeu252Val GG遺伝子型;
IL-10をコードする遺伝子における-1082GG遺伝子型;
IL-8をコードする遺伝子における-251AA遺伝子型;
XRCC1遺伝子におけるArg399GlnAA遺伝子型;
CCND1をコードする遺伝子におけるA870G GG遺伝子型;
XPD遺伝子のプロモーターにおける-751GG遺伝子型;
CYP1A1をコードする遺伝子におけるIle462Val AG又はGG遺伝子型;
OGG1をコードする遺伝子におけるSer326Cys GG遺伝子型;又は
REV1をコードする遺伝子におけるPhe257Ser CC遺伝子型
からなる群から選ばれる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1の罹患性多型が、以下の:
NOS3をコードする遺伝子のプロモーターにおける-786TT遺伝子型;
ACTをコードする遺伝子におけるAla15ThrGG遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における105AA遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133CC遺伝子型;
IFNγをコードする遺伝子における874AA遺伝子型;
COX2をコードする遺伝子のプロモーターにおける-765GG遺伝子型;
CTGFをコードする遺伝子における-447CC又はGC遺伝子型;
MBL2をコードする遺伝子における+161AA又はAG遺伝子型;
IL-1Bをコードする遺伝子における-511GG遺伝子型;
FASをコードする遺伝子におけるA-670G AA遺伝子型;
NAT2をコードする遺伝子におけるArg197GlnGG遺伝子型;
CYP1A1をコードする遺伝子におけるIle462Val AA遺伝子型;
CYP2E1をコードする遺伝子における1019G/CPstI CC又はCG遺伝子型;
CYP2E1をコードする遺伝子におけるC/T RsaI TT又はTC遺伝子型;
GSTMをコードする遺伝子におけるGSTMヌル遺伝子型;
MMP1をコードする遺伝子のプロモーターにおける-1607 2G/2G遺伝子型;
NBS1をコードする遺伝子におけるGln185Glu CC遺伝子型;又は
APE1をコードする遺伝子におけるAsp148Glu GG遺伝子型
からなる群から選ばれる遺伝子型である、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
1以上の罹患性多型の存在とは無関係に2以上の保護的多型の存在が、肺癌を発達させる低いリスクを指し示す、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
保護的多型の非存在下で、1以上の罹患性多型の存在が、肺癌を発達させる高いリスクを指し示す、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
2以上の罹患性多型の存在が、肺癌を発達させる高いリスクを指し示す、請求項7〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
肺癌を発達させる対象のリスクを測定する方法が、以下の:
一酸化窒素合成酵素3(NOS3)をコードする遺伝子におけるAsp298Glu;
NOS3をコードする遺伝子のプロモーターにおける-786T/C;
スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)をコードする遺伝子におけるArg312Gln;
アンチキモトリプシン(ACT)をコードする遺伝子におけるAla15Thr;
マトリクスメタロプロテイナーゼ12(MMP12)をコードする遺伝子におけるAsn357SerA/G;
インターロイキン-18(IL-18)をコードする遺伝子における105A/C;
インターロイキン-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133G/C;
インターフェロンγ(IFNγ)をコードする遺伝子における874A/T;
シクロオキシゲナーゼ2(COX2)をコードする遺伝子における-765G/C;
結合組織増殖因子(CTGF)をコードする遺伝子における-447G/C;
ムチン5AC(MUC5AC)をコードする遺伝子における-221C/T;
マンノース結合性レクチン2(MBL2)をコードする遺伝子における+161G/A;
アルギナーゼ1(Arg1)をコードする遺伝子におけるイントロン1C/T;
インスリン様成長因子II受容体(IGF2R)をコードする遺伝子におけるLeu252ValC/G;
インターロイキン10(IL-10)をコードする遺伝子における-1082A/G
チャイニーズハムスターにおけるX線修復補体欠損1(XRCC1)遺伝子におけるArg399Gln G/A;
インターロイキン-8(IL-8)をコードする遺伝子における-251A/T;
サイクリンD(CCND1)をコードする遺伝子におけるA870G;
インターロイキン1B(IL-1B)をコードする遺伝子における-511A/G;
FAS(Apo-1/CD95)をコードする遺伝子における-670G;
色素性乾皮症相補群D (XPD)遺伝子のプロモーターにおける-751G/T;
シトクロムP450 1A1(CYP1A1)をコードする遺伝子におけるIle462ValA/G;
8-オキソグアニンDNAグリコラーゼ(OGG1)をコードする遺伝子におけるSer326CysG/C;
N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)をコードする遺伝子におけるArg197GlnA/G;
シトクロムP450 2E1(CYP2E1)をコードする遺伝子における1019G/CPstI;
シトクロムP450 2E1をコードする遺伝子におけるC/T RsaI;
グルタチオンSトランスフェラーゼM(GSTM)をコードする遺伝子におけるGSTMヌル;
マトリクスメタロプロテイナーゼ1(MMP1)をコードする遺伝子のプロモーターにおける-1607 1G/2G;
ニブリン(NBS1)をコードする遺伝子におけるGln185Glu G/C;
REV1をコードする遺伝子におけるPhe257SerC/T;
アペックスヌクレア-ゼ(APE1)をコードする遺伝子におけるAsp148GluG/T;
又はこれら多型のいずれか1以上と連鎖不均衡にある1以上の多型
からなる群から選ばれる2以上の多型の存在について当該対象由来のサンプルを分析することを含む、前記方法。
【請求項14】
前記方法が、1以上の疫学的リスク因子の分析を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
肺癌を発達させる対象のリスクを測定する方法であって、当該方法が以下のステップ:
(i) 上記対象由来のサンプルについての1以上の遺伝子試験の結果を取得し;そして
(ii) 以下の:
一酸化窒素合成酵素3(NOS3)をコードする遺伝子におけるAsp298Glu;
NOS3をコードする遺伝子のプロモーターにおける-786T/C;
スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)をコードする遺伝子におけるArg312Gln;
アンチキモトリプシン(ACT)をコードする遺伝子におけるAla15Thr;
マトリクスメタロプロテイナーゼ12(MMP12)をコードする遺伝子におけるAsn357SerA/G;
インターロイキン-18(IL-18)をコードする遺伝子における105A/C;
インターロイキン-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133G/C;
インターフェロンγ(IFNγ)をコードする遺伝子における874A/T;
シクロオキシゲナーゼ2(COX2)をコードする遺伝子における-765G/C;
結合組織増殖因子(CTGF)をコードする遺伝子における-447G/C;
ムチン5AC(MUC5AC)をコードする遺伝子における-221C/T;
マンノース結合性レクチン2(MBL2)をコードする遺伝子における+161G/A;
アルギナーゼ1(Arg1)をコードする遺伝子におけるイントロン1C/T;
インスリン様成長因子II受容体(IGF2R)をコードする遺伝子におけるLeu252ValC/G;
インターロイキン10(IL-10)をコードする遺伝子における-1082A/G;
又はこれら多型のいずれか1以上と連鎖不均衡にある1以上の多型
からなる群から選ばれる1以上の多型の有無について結果を分析する
を含み、ここで1以上の当該多型の有無を指し示す結果が、肺癌を発達させる対象のリスクを指し示す、前記方法。
【請求項16】
以下の:
NOS3をコードする遺伝子におけるAsp298Glu TT遺伝子型;
SOD3をコードする遺伝子におけるArg312Gln CG又はGG遺伝子型;
MMP12をコードする遺伝子におけるAsn357Ser AG又はGG遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における105AC又はCC遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における-133CG又はGG遺伝子型;
COX2をコードする遺伝子のプロモーターにおける-765CC又はCG遺伝子型;
MUC5ACをコードする遺伝子における-221TT遺伝子型;
Arg1をコードする遺伝子におけるイントロン1 C/T TT遺伝子型;
IGF2Rをコードする遺伝子におけるLeu252Val GG遺伝子型;
IL-10をコードする遺伝子における-1082GG遺伝子型;
からなる群から選ばれる1以上の多型の存在を示す結果が、肺癌を発達させる低いリスクを指し示す、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
以下の:
NOS3をコードする遺伝子のプロモーターにおける-786TT遺伝子型;
ACTをコードする遺伝子におけるAla15ThrGG遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子における105AA遺伝子型;
IL-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133CC遺伝子型;
IFNγをコードする遺伝子における874AA遺伝子型;
COX2をコードする遺伝子のプロモーターにおける-765GG遺伝子型;
CTGFをコードする遺伝子における-447CC又はGC遺伝子型;
MBL2をコードする遺伝子における+161AA又はAG遺伝子型;
からなる群から選ばれる1以上の多型の存在を示す結果が、肺癌を発達させる高いリスクを指し示す、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法において使用するための1以上のヌクレオチドプローブ及び/又はプライマーであって、当該1以上のヌクレオチドプローブ及び/又はプライマーが、分析される当該多型が存在する遺伝子の多型領域にかかっているか、又はかかるために使用できる、前記1以上のヌクレオチドプローブ及び/又はプライマー。
【請求項19】
配列番号1〜配列番号145のいずれかひとつの配列を含む、請求項18に記載される1以上のヌクレオチドプローブ及び/又はプライマー。
【請求項20】
請求項1に定義される群から選ばれる多型のうちの1以上をコードする核酸配列又はそれらに相補的である配列にハイブリダイズできる核酸配列を提示する支持体を含む核酸マイクロアレイ。
【請求項21】
肺癌を発達させる対象のリスクの評価における少なくとも1の多型の使用であって、当該少なくとも1の多型が以下の:
一酸化窒素合成酵素3(NOS3)をコードする遺伝子におけるAsp298Glu;
NOS3をコードする遺伝子のプロモーターにおける-786T/C;
スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)をコードする遺伝子におけるArg312Gln;
アンチキモトリプシン(ACT)をコードする遺伝子におけるAla15Thr;
マトリクスメタロプロテイナーゼ12(MMP12)をコードする遺伝子におけるAsn357SerA/G;
インターロイキン-18(IL-18)をコードする遺伝子における105A/C;
インターロイキン-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133G/C;
インターフェロンγ(IFNγ)をコードする遺伝子における874A/T;
シクロオキシゲナーゼ2(COX2)をコードする遺伝子における-765G/C;
結合組織増殖因子(CTGF)をコードする遺伝子における-447G/C;
ムチン5AC(MUC5AC)をコードする遺伝子における-221C/T;
マンノース結合性レクチン2(MBL2)をコードする遺伝子における+161G/A;
アルギナーゼ1(Arg1)をコードする遺伝子におけるイントロン1C/T;
インスリン様成長因子II受容体(IGF2R)をコードする遺伝子におけるLeu252ValC/G;又は
インターロイキン10(IL-10)をコードする遺伝子における-1082A/G
又は当該多型のいずれか1つと連鎖不均衡にある1以上の多型
からなる群から選ばれる、前記使用。
【請求項22】
前記使用が、以下の:
チャイニーズハムスターにおけるX線修復補体欠損1(XRCC1)遺伝子におけるArg399Gln G/A;
インターロイキン-8(IL-8)をコードする遺伝子における-251A/T;
サイクリンD(CCND1)をコードする遺伝子におけるA870G;
インターロイキン1B(IL-1B)をコードする遺伝子における-511A/G;
FAS(Apo-1/CD95)をコードする遺伝子における-670G;
色素性乾皮症相補群D遺伝子のプロモーターにおける-751G/T;
シトクロムP450 1A1(CYP1A1)をコードする遺伝子におけるIle462ValA/G;
8-オキソグアニンDNAグリコラーゼ(OGG1)をコードする遺伝子におけるSer326CysG/C;
N-アセチルトランスフェラーゼ2(NAT2)をコードする遺伝子におけるArg197GlnA/G;
シトクロムP450 2E1(CYP2E1)をコードする遺伝子における1019G/CPstI;
シトクロムP450 2E1をコードする遺伝子におけるC/T RsaI;
グルタチオンSトランスフェラーゼM(GSTM)をコードする遺伝子におけるGSTMヌル;
マトリクスメタロプロテイナーゼ1(MMP1)をコードする遺伝子のプロモーターにおける-1607 1G/2G;
ニブリン(NBS1)をコードする遺伝子におけるGln185Glu G/C;
REV1をコードする遺伝子におけるPhe257SerC/T;又は
アペックスヌクレア-ゼ(APE1)をコードする遺伝子におけるAsp148GluG/T;
又は当該多型のいずれか1つと連鎖不均衡にある1以上の多型
からなる群から選ばれる少なくとも1のさらなる多型の使用と組み合わされる、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
肺癌を発達させる高いリスクを有する対象を治療する方法であって、請求項8に定義される群から選ばれる保護的多型の当該対象における存在及び/又は機能効果を遺伝子型又は表現形として複製するステップを含む、前記方法。
【請求項24】
癌を発達させる高いリスクを有する対象であって、当該対象が請求項9に定義される群から選ばれる検出可能な罹患性多型を有し、当該多型が遺伝子発現を上方制御又は下方制御し、その結果発現された遺伝子産物の生理学的に活性な濃度が当該対象の年齢及び性別について通常である範囲を外れている対象を治療する方法であって、当該方法が、当該遺伝子発現産物の生理学的に活性な濃度を、上記対象の年齢及び性別について通常である範囲内に回復させるステップを含む、前記方法。
【請求項25】
肺癌を発達させる高いリスクを有する対象であって、インターロイキン18をコードする遺伝子における105C/A多型でAA遺伝子型の存在が決定された対象を治療する方法であって、当該対象のインターロイキン18活性を増強できる薬剤を当該対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項26】
肺癌を発達させる高いリスクを有する対象であって、インターロイキン18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133G/C多型でCC遺伝子型の存在が決定された対象を治療する方法であって、当該対象のインターロイキン18活性を増強できる薬剤を当該対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項27】
肺癌を発達させる対象のリスクを測定する方法であって、以下の:
NOS3をコードする遺伝子におけるAsp298Glu;
NOS3をコードする遺伝子のプロモーターにおける-786T/C;
SOD3をコードする遺伝子におけるArg312Gln;
IL-8をコードする遺伝子における-251A/T;
ACTをコードする遺伝子におけるAla15Thr;
MMP12をコードする遺伝子におけるAsn357SerA/G;
IL-18をコードする遺伝子における105A/C;
IL-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133G/C;
IFNγをコードする遺伝子における874A/T;
XRCC1遺伝子におけるArg399Gln G/A;
CCND1をコードする遺伝子におけるA870G;
IL-1Bをコードする遺伝子における-511A/G
FAS(Apo-1/CD95)をコードする遺伝子における-670G;
XPD遺伝子のプロモーターにおける-751G/T;
CYP1A1をコードする遺伝子におけるIle462 Val A/G;
OGG1をコードする遺伝子におけるSer326Cys G/C;
NAT2をコードする遺伝子におけるArg197 Gln A/G;
CYP2E1をコードする遺伝子における1019G/C PstI;
CYP2E1をコードする遺伝子におけるC/T RsaI;
GSTMをコードする遺伝子におけるGSTMヌル;
COX2をコードする遺伝子のプロモーターにおける-765C/G;
MMP1をコードする遺伝子のプロモーターにおける-1607 1G/2G;
CTGFをコードする遺伝子における-447G/C;
MUC5ACをコードする遺伝子における-221C/T;
MBL2をコードする遺伝子における+161G/A;
Arg1をコードする遺伝子におけるイントロン1 C/T;
IGF2Rをコードする遺伝子におけるLeu252Val C/G;
IL-10をコードする遺伝子における-1082A/G;
NBS1をコードする遺伝子におけるGln185 Glu G/C;
REV1をコードする遺伝子におけるPhe257SerC/T;
APE1をコードする遺伝子におけるAsp148Glu G/T;又は
これらの多型のいずれか1以上と連鎖不均衡にある1以上の多型
からなる群から選ばれる2以上の多型を分析することを含む、前記方法。
【請求項28】
請求項1〜17、又は27のいずれか一項に記載される方法において使用するための抗体マイクロアレイであって、当該マイクロアレイが、遺伝子発現産物に結合できる抗体を提示する支持体を含み、当該遺伝子発現が、請求項2又は3に定義される罹患性又は保護的多型と関連する場合に上方制御又は下方制御される、前記マイクロアレイ。
【請求項29】
請求項2又は請求項3に定義される群から選ばれる罹患性又は保護的多型と関連する場合に上方制御又は下方制御される遺伝子の発現及び/又は活性を調節する化合物をスクリーニングする方法であって、当該方法が以下の:
遺伝子発現の上方制御又は下方制御と関連することが決定された罹患性又は保護的多型を含む細胞と候補化合物を接触させ;そして
当該候補化合物と接触させた後に当該遺伝子の発現を計測する
を含み、ここで、接触ステップの前に比べて、接触ステップの後に発現レベルの変化が、当該遺伝子の発現及び/又は活性を調節する化合物の能力を指し示す、前記方法。
【請求項30】
前記細胞が、当該多型の存在を確認するために予めスクリーニングされたヒト肺細胞である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記細胞が、前記遺伝子の発現の上方制御と関連する罹患性多型を含み、そして前記スクリーニングが、当該遺伝子の発現を下方制御する候補化合物に対してされる、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
前記細胞が、前記遺伝子の発現の下方制御と関連する罹患性多型を含み、そして前記スクリーニングが、当該遺伝子の発現を上方制御する候補化合物に対してされる、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項33】
前記細胞が、前記遺伝子の発現の上方制御と関連する保護的多型を含み、そして前記スクリーニングが、当該遺伝子の発現をさらに上方制御する候補化合物に対してされる、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項34】
前記細胞が、前記遺伝子の発現の下方制御と関連する保護的多型を含み、そして前記スクリーニングが、当該遺伝子の発現をさらに下方制御する候補化合物に対してされる、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項35】
遺伝子の発現及び/又は活性を調節する化合物をスクリーニングする方法であって、当該遺伝子の発現が、請求項2又は請求項3に定義される群から選ばれる罹患性又は保護的多型と関連する場合に上方制御又は下方制御され、当該方法が以下のステップ:
その発現が、罹患性又は保護的多型と関連する場合に上方制御又は下方制御されるが、当該細胞においてその発現が上方制御も下方制御もされていないところの遺伝子を含む細胞と候補化合物を接触させ、そして
上記候補化合物と接触させた後に当該遺伝子の発現を計測する、
を含み、ここで上記接触ステップの前に比べて当該接触ステップの後の発現レベルの変化が、当該遺伝子の発現及び/又は活性を調節する化合物の能力を指し示す、
前記方法。
【請求項36】
前記細胞が、前記遺伝子の存在及び発現のベースラインレベルを確認するために予めスクリーニングされたヒト肺細胞である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記遺伝子発現が罹患性多型と関連する場合に下方制御され、そして前記スクリーニングが、前記細胞において、当該遺伝子発現を上方制御する候補化合物に対してされる、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
前記遺伝子発現が罹患性多型と関連する場合に上方制御され、そして前記スクリーニングが、前記細胞において、当該遺伝子発現を下方制御する候補化合物に対してされる、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項39】
前記遺伝子発現が保護的多型と関連する場合に上方制御され、そして前記スクリーニングが、前記細胞において、当該遺伝子発現を上方制御する候補化合物に対してされる、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項40】
前記遺伝子発現が保護的多型と接触される場合に下方制御され、そして前記スクリーニングが、前記細胞において、当該遺伝子発現を下方制御する候補化合物に対してされる、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項41】
肺癌と診断されるか又は肺癌にかかりやすい対象の予防又は治療処置への応答性を評価する方法であって、当該処置が遺伝子発現産物の生理学的に活性な濃度を当該対照の年齢及び性別について通常である範囲内に回復させることを含み、当該方法が、請求項3に定義される群から選ばれる罹患性多型の有無を当該対象において検出することを含み、当該多型は存在する場合当該遺伝子の発現を上方制御又は下方制御し、その結果当該発現された遺伝子産物の生理学的に活性な濃度が当該通常範囲を外れ、ここで当該多型の有無の検出が当該処置に応答する対象を指し示す、前記方法。
【請求項42】
肺癌を発達させる高いリスクを有する対象であって、COX2をコードする遺伝子のプロモーターに存在する-765C/G多型でGG遺伝子型の存在が決定された対象を治療する方法であって、当該方法が、当該対象においてCOX2活性を低減できる薬剤を当該対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
前記薬剤がCOX2インヒビター又は非ステロイド系抗炎症剤(NSAID)である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記COX2インヒビターがCelebrex(登録商標)(セレコキシブ)、Bextra(登録商標)(バルデコキシブ)、及びVioxx(ロフェコキシブ)からなる群から選ばれる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
肺癌を発達させる高いリスクを有する対象であって、MMP1をコードする遺伝子のプロモーターにおける-1607 1G/2Gでの2G2G遺伝子型の存在が決定された対象を治療する方法であって、当該対象におけるMMP1活性を低減できる薬剤を当該対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項46】
前記薬剤がMMPインヒビターである、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記MMPインヒビターが、4,5-ジヒドロキシアントラキノン-2-カルボン酸(AQCA)、アントラキニル-メルカプトエチルアミン、アントラキニル-アラニンヒドロキサマート、及びそれらの誘導体を含む群から選ばれる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記薬剤が、1以上のメタロプロテイナーゼの組織阻害剤(TIMP)の発現又は活性を増加できる薬剤である、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
メタロプロテイナーゼの組織阻害剤が、1以上のTIMP1、TIMP2、TIMP3、又はTIMP4である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記薬剤が、1以上の膜結合MMPの発現又は活性を低減できる薬剤である、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
肺癌から選ばれる1以上の閉塞性肺疾患を発達させる対象のリスクを評価するキットであって、当該キットが以下の:
一酸化窒素合成酵素3(NOS3)をコードする遺伝子におけるAsp298Glu;
NOS3をコードする遺伝子のプロモーターにおける-786T/C;
スーパーオキシドジスムターゼ3(SOD3)をコードする遺伝子におけるArg312Gln;
アンチキモトリプシン(ACT)をコードする遺伝子におけるAla15Thr;
マトリクスメタロプロテイナーゼ12(MMP12)をコードする遺伝子におけるAsn357SerA/G;
インターロイキン-18(IL-18)をコードする遺伝子における105A/C;
インターロイキン-18をコードする遺伝子のプロモーターにおける-133G/C;
インターフェロンγ(IFNγ)をコードする遺伝子における874A/T;
シクロオキシゲナーゼ2(COX2)をコードする遺伝子における-765G/C;
結合組織増殖因子(CTGF)をコードする遺伝子における-447G/C;
ムチン5AC(MUC5AC)をコードする遺伝子における-221C/T;
マンノース結合性レクチン2(MBL2)をコードする遺伝子における+161G/A;
アルギナーゼ1(Arg1)をコードする遺伝子におけるイントロン1C/T;
インスリン様成長因子II受容体(IGF2R)をコードする遺伝子におけるLeu252ValC/G;
インターロイキン10(IL-10)をコードする遺伝子における-1082A/G;
又はこれらの多型のいずれか1以上と連鎖不均衡にある1以上の多型
からなる群から選ばれる1以上の多型の有無について当該対象由来のサンプルを分析する手段を含む、前記キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−545390(P2008−545390A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512238(P2008−512238)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【国際出願番号】PCT/NZ2006/000125
【国際公開番号】WO2006/123955
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(505461728)シナージェンズ バイオサイエンス リミティド (5)
【Fターム(参考)】