説明

部品成形方法

【課題】 本発明は、部品の硬さを局所的に変えるようにした部品成形方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 不織布に熱硬化性の合成樹脂材を含浸させてなる成形不織布3を、上型1と下型2との協働によって部品30を成形する方法において、
内部にヒータ4が設けられた前記下型2の成形面2A上には、前記成形不織布3の裏面に当接する複数の凸部20〜27が設けられ、前記下型2の前記凸部20〜27と前記上型1の成形面1Aとで前記成形不織布3をプレス成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成形不織布を利用して、自動車用の部品(例えばシートの表面を構成する外被部材、カップホルダ、トランクサイドリム)などを成形するための方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、実開平7−15448号公報がある。この公報に記載された部品成形方法にあっては、成形不織布を、熱風加熱炉にて200〜220℃に予備加熱した後、この成形不織布の周縁をクランプ装置により保持し、コールドプレス成形用上下型の型内に位置決めした後、コールドプレス成形用上型を下降させて、所望のトランクサイドトリムを成形している。
【0003】
【特許文献1】実開平7−15448号公報
【特許文献2】特開平7−1456号公報
【特許文献3】特開平6−320559号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の部品成形方法は、熱風によって予め成形不織布を加熱した後、上型と下型とで所望の部品を成形しているが、部品の硬さを局所的に変えることができないといった問題点がある。
【0005】
本発明は、部品の硬さを局所的に変えるようにした部品成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、不織布に熱硬化性の合成樹脂材を含浸させてなる成形不織布を、上型と下型との協働によって部品を成形する方法において、
内部にヒータが設けられた前記下型の成形面上には、前記成形不織布の裏面に当接する複数の凸部が設けられ、前記下型の前記凸部と前記上型の成形面とで前記成形不織布をプレス成形することを特徴とする。
【0007】
この部品成形方法においては、凸部の大きさ、密度、形状の変更によって、成形不織布からなる部品の硬さを局部的に変更することができる。しかも、成形不織布の表面側を上型によって成形し、成形不織布の裏面側を下型によって成形することにより、凸部の成形痕が裏面側に残るのみであるから、意匠面をなす部品の表面側の美観を損なうことがない。
【0008】
また、前記凸部の頂面は、複数種類の接地面積をしており、前記接地面積を大きくすることによって前記成形不織布の硬度を高めるようにすると好適である。
【0009】
凸部をこのような構成にすることで、部品の硬さを局部的に容易に変更することができる。
【0010】
また、前記凸部の頂面は、複数種類の高さレベルを有しており、前記高さレベルを大きくすることによって前記成形不織布の硬度を高めるようにすると好適である。
【0011】
凸部をこのような構成にすることで、部品の硬さを局部的に容易に変更することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、部品の硬さを局所的に変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る部品成形方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1及び図2に示すように、例えばシートバック、カップホルダ、トランクサイドリムなどの自動車用の部品を成形不織布3によって所望の形状にプレス成形するための金型は、上型1と下型2とからなり、下型2には、ヒータ4が内蔵されている。
【0015】
この成形で利用されるいわゆる成形不織布3は、不織布に熱硬化性の合成樹脂を含浸させたものであり、プレス成形によって様々な形状に加工することが可能であり、様々なものがあるが、例えば、ポリエステル繊維に、熱硬化性の合成樹脂をバインダとして含浸したものがある。
【0016】
下型2の成形面2A上には、成形不織布3の裏面3Bに当接する複数の凸部20〜27が設けられている。各凸部20〜27の頂面は、平らな円形をなし、成形不織布3の裏面3Bに対する様々な接地面積を有している。
【0017】
そして、図1及び図2で示された接地面積は、凸部27→凸部26→凸部25→凸部24→凸部23→凸部22→凸部21→凸部20の順で大きくなっており、凸部20〜27の高さレベルは揃っている。
【0018】
従って、凸部20〜27の頂部が成形不織布3の裏面3Bに当接した際、成形不織布3に加わる圧力及び熱量を上記順番で大きくすることができ、これにより、上記順番で成形不織布3の硬度を、その位置で高めることができる。
【0019】
下型2に対して上型1の成形面1Aは、滑らかな面になっており、成形不織布3の表面3Aに当接して、意匠面をなす部品の表面側を成形する。
【0020】
次に、部品の成形方法の一例を説明する。
【0021】
図3に示すように、部品30は、湾曲した本体部32と、本体部32の両端に設けられた鍔部31とからなり、本体部32は、感触を良くするために比較的柔軟性を有しており、鍔部31は、他の部品との縫合を予定しているので、剛性を保って、しかもミシンの針が突き通る程度の硬さになっている。
【0022】
このような部品30を製作するために、図4に示すように、ヒータ4が内蔵された下型2の成形面2A上において、本体部32を成形するための湾曲な部分には、接地面積の小さな凸部27を所望の密度で配列し、鍔部31を成形するための平坦な部分には、接地面積の大きな凸部20を所望の密度で配列している。なお、凸部20,27は、印刷技法の網点構造のような配列をなしている。
【0023】
このような金型を利用することで、鍔部31は硬くし、本体部32は、素材自体のもつ感触、柔軟性、弾性などの物性を残しており、必要に応じて、様々な部分に様々な硬さをもたせた部品30を製作することができる。
【0024】
しかも、成形不織布3の表面3A側を上型1によって成形し、成形不織布3の裏面3B側を下型2によって成形することにより、凸部20,27の成形痕が裏面側に残るのみであるから、意匠面をなす部品の表面3A側の美観を損なうことがない。
【0025】
また、成形不織布3は、形状出しや保形性が良好で、ミシンなどで他の部品との縫合が可能であり、異物感が少なく、従って、自動車の部品としては最適な素材である。
【0026】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。
【0027】
例えば、図5に示すように、下型40には、高さレベルの異なる凸部41,42が設けられ、凸部41の頂面は、高さレベル(L.LV)が低く、凸部42の頂面は、高さレベル(H.LV)が高くなっている。このように凸部41,42の頂面の高さレベルを変えて、成形不織布3に対する押し付け圧を変えることによって、成形不織布3の硬度を変えることができる。この場合、高さレベル(H.LV)の方が押し付け力が高く、その場所で成形不織布3の硬度を高めることができる。
【0028】
また、凸部20〜27,41,42の密度や形状の変更によっても成形不織布3の硬度を任意に変更させることができる。
【0029】
また、成形不織布3は、厚くすることで素材自体の物性を残し易く、剛性の調整のために合成樹脂の含有量を調整することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る部品成形方法に適用する金型の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1のA−A線に沿う矢視図である。
【図3】部品を示す斜視図である。
【図4】部品を成形するための金型を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る部品成形方法に適用する下型の他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1…上型、1A…上型の成形面、2,42…下型、2A…下型の成形面、3…成形不織布、3A…成形不織布の表面、3B…成形不織布の裏面、4…ヒータ、20〜27,41,42…凸部、30…部品。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布に熱硬化性の合成樹脂材を含浸させてなる成形不織布を、上型と下型との協働によって部品を成形する方法において、
内部にヒータが設けられた前記下型の成形面上には、前記成形不織布の裏面に当接する複数の凸部が設けられ、前記下型の前記凸部と前記上型の成形面とで前記成形不織布をプレス成形することを特徴とする部品成形方法。
【請求項2】
前記凸部の頂面は、複数種類の接地面積をしており、前記接地面積を大きくすることによって前記成形不織布の硬度を高めるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の部品成形方法。
【請求項3】
前記凸部の頂面は、複数種類の高さレベルを有しており、前記高さレベルを大きくすることによって前記成形不織布の硬度を高めるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の部品成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−64393(P2010−64393A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−233575(P2008−233575)
【出願日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【出願人】(000133098)株式会社タチエス (454)
【Fターム(参考)】