説明

部材同士の接合方法及びステアリングサポートビーム並びに接合構造体

【課題】管状体に接合される部材の小型化、軽量化を図るとともに、作業の効率化、低コスト化を図ることのできる部材同士の接合方法、ステアリングサポートビームを提供することを目的とする。
【解決手段】サポートビーム本体2の周方向の一部にのみ装着される外付けブラケット60においては、サポートビーム本体2の貫通孔65に挿入された突起64を、割り型71の外周面に形成された凹部75により変形し、これによって、外付けブラケット60をサポートビーム本体2に接合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状体からなる第一部材と、管状体に取り付けられる第二部材とを接合する部材同士の接合方法、ステアリングサポートビーム、接合構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の前部のインストルメントパネルの内部には、車体の左右のフロントピラー間にステアリングサポートビームが架設されている。このようなステアリングサポートビームが配置されることによって、側面からの衝突等による衝撃に対して十分な剛性、強度が確保される。このステアリングサポートビームに複数の取付用ブラケットが溶接固定され、これら取付用ブラケットにそれぞれ各種車載部品が取付固定される。
【0003】
前記取付用ブラケットをステアリングサポートビームに取り付けるに際しては、溶接用治具を用いることによって取付用ブラケットを精度良く位置決めして溶接することが行われているが、複数の取付用ブラケットを位置決めするためには溶接用治具の構造が複雑化してしまい、これにより溶接施工性が悪くなるという問題があった。また、入力が大きいステー類が取り付けられるブラケットが、ステアリングサポートビームに溶接されている場合には、応力集中しないように継手形状や溶接品質に十分な注意を払わなければならなかった。
【0004】
そこで、近年、拡管接合と称される方法(例えば特許文献1及び2参照)が、ステアリングサポートビームへの取付用ブラケットの取付に用いられている。拡管接合では、図10(a)、(b)に示すように、まず、管状体からなる第一部材(ステアリングサポートビーム)200を、第二部材(取付用ブラケット)201に設けられた挿通孔202内に挿通するとともに、図10(c)に示すように、第一部材200の中空部203内に、周方向に複数個に分割された割り型セグメント204を配置する。次いで、各セグメント204を第一部材200の中空部203内で半径方向外向きに移動させることにより、第一部材200の挿通孔202内への挿通部分及びその軸方向両側近傍部分をエキスパンド加工(拡管加工)する。これにより、第二部材201を第一部材200に接合する。
【特許文献1】特開平4−8818号公報
【特許文献2】特開2007−277932号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記したような拡管接合においては、第一部材200に取り付けられる第二部材201は、第一部材200を挿通させるための挿通孔202が必須であり、つまり第二部材201は環状である必要がある。したがって、第二部材201が、不必要に大型化するとともに過剰な強度を有することになり、重量増等につながるという問題があった。これは特に、軽量化が常に求められる自動車部品においては、重要な問題である。
【0006】
そこで、上記方法を適用したのでは、過剰な強度、重量となってしまう場合においては、上記方法を適用せず、溶接やリベット等により部材を固定することも考えられる。
しかし、同一の第一部材200に、拡管接合により第二部材201を接合し、溶接やリベット等の他の手法で他の部材を接合する場合においては、拡管接合工程以外に、溶接やリベット止めの工程を付加しなければならず、生産コストの上昇、生産効率の低下等を招く。
【0007】
このような課題は、取付用ブラケットをステアリングサポートビームに取り付ける場合に限らず、拡管接合を適用する場合においては共通するものである。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、管状体に接合される部材の小型化、軽量化を図るとともに、作業の効率化、低コスト化を図ることのできる部材同士の接合方法、ステアリングサポートビーム及び接合構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的のもとになされた本発明は、以下の構成を提供する。
[1] 中空部を有する管状体からなる第一部材の外周面に第二部材を接合する方法であって、前記第二部材において前記第一部材の外周面に対向する底面に設けられた突起を、前記第一部材の外周面に設けられた貫通孔に挿入して前記突起を前記中空部に突出させる工程と、前記第一部材の前記中空部内に、周方向に複数個の型セグメントからなる割り型を配置する工程と、前記割り型の前記型セグメントを第一部材の半径方向外向きに移動させることにより、前記中空部に突出した前記突起を変形させ、前記第一部材と前記第二部材を接合する工程と、を備えることを特徴とする部材同士の接合方法。
[2] 前記第一部材と前記第二部材を接合する工程では、前記割り型の前記型セグメントを前記第一部材の半径方向外向きに移動させることにより、前記中空部に突出した前記突起を曲げ変形させることを特徴とする[1]に記載の部材同士の接合方法。
[3] 前記第一部材と前記第二部材を接合する工程では、前記割り型の前記型セグメントを前記第一部材の半径方向外向きに移動させることにより、前記中空部に突出した前記突起を押し潰して変形させることを特徴とする[1]に記載の部材同士の接合方法。
[4] 中空部を有する筒状のサポートビーム本体と、前記サポートビーム本体の外周面に接合されたブラケットと、を備え、前記サポートビーム本体の外周面には貫通孔が形成され、前記ブラケットにおいて前記サポートビーム本体の外周面に対向する底面には突起が設けられ、前記ブラケットの前記突起が前記貫通孔から前記中空部内に挿入され、かつ、前記中空部内で前記突起が変形されることで、前記サポートビーム本体と前記ブラケットが接合されていることを特徴とするステアリングサポートビーム。
[5] 前記サポートビーム本体の両端部にそれぞれフロントピラー取付用ブラケットの嵌合部が外嵌めされて固着され、前記サポートビーム本体の軸線方向の中間部にエアバッグユニット取付用ブラケットの嵌合部及びステアリング取付用ブラケットの嵌合部が外嵌めされて固着されていることを特徴とする[4]に記載のステアリングサポートビーム。
[6] [1]〜[3]のいずれかの部材同士の接合方法によって得られたものであることを特徴とする[4]または[5]に記載のステアリングサポートビーム。
[7] [1]〜[3]のいずれかに記載の部材同士の接合方法によって得られたものであることを特徴とする接合構造体。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、サポートビーム本体等の第一部材に対し周方向の一部にのみ装着されるブラケット等の第二部材においては、第一部材の貫通孔に挿入された第二部材の突起が、割り型により変形され、これによって、第二部材を第一部材に接合することができる。このように、周方向の一部にのみ装着される第二部材、ブラケットについても、拡管接合によって接合することが可能となる。その結果、他の部材を第一部材に接合するために行う拡管接合と同時に接合を行うこともでき、作業の効率化が図れ、低コスト化も図れる。また、第一部材の周方向の一部にのみ装着される第二部材を採用することで、第一部材に取り付けるブラケット等において第一部材の全周を囲う必要がなくなり、部材の小型化、軽量化が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明にかかる実施形態について、図面を参照して説明する。
本発明に係る接合構造体の一例として、ステアリングサポートビーム1の一実施形態を図1に示す。本実施形態のステアリングサポートビーム1(接合構造体)は、自動車の車体の左右のフロントピラー間に配置されてこれらフロントピラーに連結固定されるものである。
ステアリングサポートビーム1は、長尺円筒状の押出材からなるサポートビーム本体(第一部材)2に、フロントピラー取付用ブラケット(第三部材)10、13、ステアリング取付用ブラケット(第三部材)20、取付用センターブラケット(第三部材)30が設けられている。
【0012】
サポートビーム本体2は、例えば、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなり、直径100mm、長さ1000m、肉厚4mm等とすることができる。もちろん、サポートビーム本体2の材質、形状、寸法、製法については、何ら限定されるものではない。
【0013】
フロントピラー取付用ブラケット10は、サポートビーム本体2の一端部に設けられており、前記サポートビーム本体2に外嵌め可能な円形孔を有した嵌合部11と、該嵌合部11の外周面から外方に向けて突設されたプレート状の取付部12とからなる。
他方のフロントピラー取付用ブラケット13は、サポートビーム本体2の他端部に設けられており、前記サポートビーム本体2に外嵌め可能な円筒状の嵌合部14と、該嵌合部14の外周面から外方に向けて突設された取付部15、15とからなる。
フロントピラー取付用ブラケット10、13は、サポートビーム本体2に嵌合部11、14が外嵌めされて拡管接合によりサポートビーム本体2の端部に固着されている。そして、フロントピラー取付用ブラケット10、13は、その取付部12、15に形成された図示しないボルト孔にボルト等の固着手段が挿通されて車体のフロントピラーに固定されることによって、ステアリングサポートビーム1は車体に対して安定状態にかつ強固に固着される。
【0014】
ステアリング取付用ブラケット20は、サポートビーム本体2に外嵌め可能な円筒状の嵌合部21と、該嵌合部21の外周面から外方に向けて突設され、図示しないステアリングシャフトが取り付けられる取付部22とからなる。ステアリング取付用ブラケット20の嵌合部21は、前記サポートビーム本体2に外嵌めされて拡管接合よりサポートビーム本体2に固着されている。
【0015】
また、取付用センターブラケット30は、二本一対で設けられ、それぞれ、サポートビーム本体2に外嵌め可能な円筒状の嵌合部31と、該嵌合部31の外周面から外方に向けて突設された突出部32とからなり、該突出部32から、車室内のセンターコンソールに取り付けるオーディオ装置や空調装置のコントロールパネル等を支持するための長尺のセンターステー33が延設されている。
取付用センターブラケット30、30は、嵌合部31、31が外嵌めされて拡管接合によりサポートビーム本体2に固着されている。そして、一対のセンターステー33、33は、いずれもその下端部が車室底部に固定される。
【0016】
これらフロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30の嵌合部11、14、21、31は、例えば、内径101mm、幅40mm等とすることができる。
これらフロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30は、その材質、形状、製法について何ら限定する意図はなく、サポートビーム本体2と同材質である必要もない。
【0017】
図2には、ステアリングサポートビーム1の部分拡大図を示す。図2(a)及び図2(b)に示すように、拡管接合においては、フロントピラー取付用ブラケット13の軸方向両側近傍部分2a、2aに、サポートビーム本体2が外側に局部的に膨出した膨出部100が形成される。この膨出部100により、フロントピラー取付用ブラケット13は、その中心軸方向に移動しないように拘束される。
【0018】
更に、図2に示すように、上記したようなステアリングサポートビーム1には、外付けブラケット(第二部材、ブラケット)60を装着することができる。外付けブラケット60は、フロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30のように、環状の嵌合部11、14、21、31を備えることなく、サポートビーム本体2の外周面において、その周方向に沿う円弧状断面を有したベース部61と、該ベース部61において、サポートビーム本体2の外周面から離間する側の面から突設された取付部62とからなる。
取付部62には、この外付けブラケット60に他の部品等を固定するためのボルト等を挿通させる挿通孔63が形成されている。この取付部62の形状は、図示したものに限らず、適宜他の形状とすることができる。
そして、図3、図5(a)に示すように、ベース部61には、外付けブラケット60をサポートビーム本体2に装着固定するため、サポートビーム本体2の外周面に対向する底面61aに、一以上、好ましくは二以上の突起64が形成されている。
【0019】
このような外付けブラケット60が取り付けられるサポートビーム本体2には、その外周面に、突起64が挿入される貫通孔65が、突起64の断面形状、数、位置関係に対応して形成されている。
図4に示すように、外付けブラケット60は、貫通孔65に突起64を挿入させ、ベース部61の底面61aをサポートビーム本体2の外周面に当接させた状態で、突起64の先端部が、サポートビーム本体2の内部において折り曲げあるいは変形された状態で取り付けられる。
【0020】
このような外付けブラケット60は、その材質、形状、製法について何ら限定する意図はなく、サポートビーム本体2とは異なる材質で形成することもできる。図5(b)〜(e)は、外付けブラケット60の変形例を示すものである。また、例えば、外付けブラケット60に要求される強度に応じ、金属材料の他、樹脂等を採用することもできる。
【0021】
次に、サポートビーム本体2と、フロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30、外付けブラケット60と、を接合するための接合装置70について、以下に説明する。
【0022】
図6に示すように、この接合装置70は、割り型71とその駆動手段(図示無し)とを備えている。
割り型71は、サポートビーム本体2の中空部2b内に配置されるものであり、サポートビーム本体2の中空部2bの断面形状に対応した断面形状に形成されている。この割り型71は、その中心部に設けられた後述する楔孔部72を中心に周方向に複数個に分割されている。本実施形態では、割り型71の分割数は、4個である。したがって、この割り型71は、4個の型セグメント71aが互いに組み合わされて構成されている。
【0023】
割り型71の外周面には、フロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30の取付位置に対応した位置に、それぞれ軸方向に互いに離間した2個の凸部73、73が全周に亘って延びて設けられている(図6においては、フロントピラー取付用ブラケット13に対応した位置のみを図示している。)。両凸部73、73は、サポートビーム本体2において、フロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30のそれぞれにおいて、例えば図2に示すように、軸方向両側近傍部分2a、2aを外側に局部的に断面円弧状に膨出させて膨出部100を形成するものである。各凸部73の断面形状は円弧状である。
なお、この凸部73、73は、外付けブラケット60の取付位置に対応した位置に設けることも可能である。
【0024】
さらに、割り型71の両凸部73、73間の部位74の直径は、割り型71の軸方向両端部の直径よりも大きく設定されている。この部位74は、サポートビーム本体2において、フロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30の内周面と対向する部分を外側に局部的に膨出させて、フロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30の内周面と密着させるものである。
【0025】
このような割り型71の駆動手段は、従来から拡管接合に用いられているものと同様であり、例えば特開2007−275932号に開示されている。すなわち、駆動手段は、サポートビーム本体2の中空部2b内に配置された割り型71の各型セグメント71aを、サポートビーム本体2の半径方向外向きに移動させるものである。この駆動手段はマンドレル(図示無し)を有している。このマンドレルの先端部には楔部が形成されている。この楔部は先細りの円錐状(又は円錐台状)に形成されている。また、このマンドレルの基端部には、マンドレルを軸方向に移動させる駆動源(図示せず)が接続されている。この駆動源としては、油圧シリンダ等の流体圧シリンダが用いられる。
割り型71の中心部には、マンドレルの楔部に対応する上述したテーパ状の楔孔部72が割り型71の軸方向に貫通して設けられている。この楔孔部の横断面形状は円形状である。そして、割り型71は、上述したように、この楔孔部72を中心に周方向に4個に分割されている。
【0026】
さらに、図7(a)、図8(a)に示すように、割り型71の外周面には、外付けブラケット60の取付位置に対応した位置に外付けブラケット60の突起64を変形させるための凹部75が形成されている。なお、図7、図8においては、図5(e)に示した外付けブラケット60を例に用いている。
図7(b)、(c)、図8(b)、(c)に示すように、この凹部75は、駆動手段により割り型71をサポートビーム本体2の内周面に押圧させたときに、貫通孔65から中空部2b内に突出した突起64を押圧して変形させ、貫通孔65から突起64が抜け落ちないようにする。
【0027】
ここで、外付けブラケット60は、例えば、図7に示すように、貫通孔65に挿入された外付けブラケット60の突起64を凹部75により折り曲げることもできる。
また、図8、図9に示すように、突起64の先端部を押しつぶすことで、突起64の断面積を拡げるようにしても良い。この場合、凹部75は、その突起64の先端部を押しつぶすのに適した形状、深さとするのが好ましい。さらに、図9に示すように、外付けブラケット60の突起64を押しつぶす場合、凹部75の底部に、加熱ヒータ76を設けても良い。これにより突起64を軟化させてより容易に押しつぶすことができる。図8や図9のように、突起64の先端部を押し潰す場合、突起64は図5(d)に示したような丸棒状とするのが好ましい。また、図9に示すように、突起64を押し潰す場合に加熱する構成は、特に突起64(外付けブラケット60)が樹脂製である場合に特に有効である。
【0028】
次に、この接合装置70を用いたサポートビーム本体2とサポートビーム本体2において、フロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30、外付けブラケット60の接合方法について以下に説明する。
【0029】
まず、フロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30の場合について、説明する。
図6(a)に示すように、フロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30の場合(図6においては、フロントピラー取付用ブラケット13の部分のみを図示。)は、まず、フロントピラー取付用ブラケット13を、サポートビーム本体2の所定の位置に、適宜図示しない治具等を用いて位置決めしてセットする。
【0030】
一方、図7(a)、図8(a)に示すように、外付けブラケット60は、突起64を、サポートビーム本体2の所定の位置に形成された貫通孔65に挿入し、さらに、ベース部61を、適宜図示しない治具等を用いて、サポートビーム本体2から外方への移動を拘束して仮固定する。
【0031】
このようにして、フロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30、外付けブラケット60をセットした後は、図6(b)に示すように、サポートビーム本体2の中空部2b内において、フロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30、外付けブラケット60に対応する位置に割り型71を遊挿状態に挿入配置する。さらに、割り型71の中心部の楔孔部72内に駆動手段のマンドレルの楔部を挿入配置する。
なお、上記において、フロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30、外付けブラケット60のセット後に、サポートビーム本体2の中空部2b内に割り型71を挿入配置するようにしたが、この順序を逆にすることも可能である。
【0032】
次いで、この状態で、マンドレルの楔部をサポートビーム本体2の軸方向に移動させることにより、割り型71の各型セグメント71aをサポートビーム本体2の半径方向外向きに移動させる。これにより、サポートビーム本体2の中空部2b内への挿通部分及びその軸方向両側近傍部分2a、2aをエキスパンド加工(拡管加工)する。
このエキスパンド加工によって、サポートビーム本体2の中空部2b内への挿通部分及びその軸方向両側近傍部分2a、2aが外側に局部的に膨出するように塑性変形されて膨出部100が形成され、フロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30の中空部2bの周縁部に圧接される。
【0033】
また、図7(b)、(c)あるいは図8(b)、(c)に示すように、この時、外付けブラケット60の部分においては、貫通孔65に挿入された、外付けブラケット60の突起64が、割り型71の外周面に形成された凹部75により変形され、これによって、外付けブラケット60がサポートビーム本体2に接合される。
【0034】
しかる後は、次いで、マンドレルの楔部を割り型71の楔孔部72内から抜出する。これにより、フロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30、外付けブラケット60がサポートビーム本体2(詳述するとサポートビーム本体2の外周面)に接合される。
【0035】
上述したように、サポートビーム本体2の周方向の一部にのみ装着される外付けブラケット60においては、サポートビーム本体2の貫通孔65に挿入された突起64が、割り型71の外周面に形成された凹部75により変形され、これによって、外付けブラケット60がサポートビーム本体2に接合される。このように、サポートビーム本体2の周方向の一部にのみ装着される外付けブラケット60も拡管接合によってサポートビーム本体2に装着することが可能となる。したがって、外付けブラケット60を、他のフロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30と同時に接合することもでき、作業の効率化が図れ、低コスト化も図れる。
また、サポートビーム本体2の周方向の一部にのみ装着される外付けブラケット60を採用することで、サポートビーム本体2の全周を囲う必要がなくなり、ブラケットの小型化、軽量化が図れる。
【0036】
なお、上記実施形態において、フロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30の拡管接合と、外付けブラケット60の拡管接合とを同時に行うようにしたが、これを別々に行うことも可能である。
また、フロントピラー取付用ブラケット10、13、ステアリング取付用ブラケット20、取付用センターブラケット30、外付けブラケット60の拡管接合を、それぞれ個別に行うことも可能である。
【0037】
上記実施形態では、サポートビーム本体2は、円筒状に形成されているが、特にこのような形状に限定されるものではなく、例えば四角形、六角形等の多角形状、楕円状、その他の異形断面形状に形成されていても良い。
【0038】
また、上記実施形態では、サポートビーム本体2、取付用ブラケット10、13、20、30のいずれもが押出材からなる構成が採用されているが、特にこのような構成に限定されるものではない。例えば、サポートビーム本体2、取付用ブラケット10、13、20、30は、射出成形材によって形成されていても良い。また、取付用ブラケット10、13、20、30については鋳物により構成されていても良い。
【0039】
前記押出材は、軽金属またはその合金からなる押出材であるのが好ましい。中でも、前記押出材は、アルミニウム押出材であるのが特に好ましく、この場合には優れた軽量性を維持しつつ優れた生産性を確保することができる。
【0040】
或いはまた、前記押出材は、合成樹脂押出材であるのが好ましく、この場合には優れた軽量性を維持しつつ優れた生産性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の実施形態にかかるステアリングサポートビームを示す斜視図である。
【図2】サポートビーム本体の一部を示す拡大図であって、(a)は斜視図であり、(b)は断面図である。
【図3】図2に示した外付けブラケットを装着するためにサポートビーム本体に形成された貫通孔を示すための斜視図および断面図である。
【図4】図2に示した外付けブラケットを装着した状態を示す斜視図および断面図である。
【図5】外付けブラケットの複数の例を示す斜視図である。
【図6】サポートビーム本体にフロントピラー取付用ブラケットを接合する際の工程の流れを示す斜視図である。
【図7】外付けブラケットの突起を折り曲げ変形させてサポートビーム本体に接合する際の工程の流れを示す断面図である。
【図8】外付けブラケットの突起を押し潰して変形させてサポートビーム本体に接合する際の工程の流れを示す断面図である。
【図9】外付けブラケットの突起を加熱して押し潰すための構成を示す断面図である。
【図10】従来の拡管接合の作業の流れを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0042】
1…ステアリングサポートビーム(接合構造体)、2…サポートビーム本体(第一部材)、2b…中空部、10…フロントピラー取付用ブラケット(第三部材)、13…フロントピラー取付用ブラケット(第三部材)、20…ステアリング取付用ブラケット(第三部材)、30…取付用センターブラケット(第三部材)、60…外付けブラケット(第二部材、ブラケット)、61…ベース部、61a…底面、64…突起、65…貫通孔、71…割り型、71a…型セグメント、72…楔孔部、76…加熱ヒータ、100…膨出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空部を有する管状体からなる第一部材の外周面に第二部材を接合する方法であって、
前記第二部材において前記第一部材の外周面に対向する底面に設けられた突起を、前記第一部材の外周面に設けられた貫通孔に挿入して前記突起を前記中空部に突出させる工程と、
前記第一部材の前記中空部内に、周方向に複数個の型セグメントからなる割り型を配置する工程と、
前記割り型の前記型セグメントを第一部材の半径方向外向きに移動させることにより、前記中空部に突出した前記突起を変形させ、前記第一部材と前記第二部材を接合する工程と、
を備えることを特徴とする部材同士の接合方法。
【請求項2】
前記第一部材と前記第二部材を接合する工程では、前記割り型の前記型セグメントを前記第一部材の半径方向外向きに移動させることにより、前記中空部に突出した前記突起を曲げ変形させることを特徴とする請求項1に記載の部材同士の接合方法。
【請求項3】
前記第一部材と前記第二部材を接合する工程では、前記割り型の前記型セグメントを前記第一部材の半径方向外向きに移動させることにより、前記中空部に突出した前記突起を押し潰して変形させることを特徴とする請求項1に記載の部材同士の接合方法。
【請求項4】
中空部を有する筒状のサポートビーム本体と、
前記サポートビーム本体の外周面に接合されたブラケットと、を備え、
前記サポートビーム本体の外周面には貫通孔が形成され、
前記ブラケットにおいて前記サポートビーム本体の外周面に対向する底面には突起が設けられ、
前記ブラケットの前記突起が前記貫通孔から前記中空部内に挿入され、かつ、前記中空部内で前記突起が変形されることで、前記サポートビーム本体と前記ブラケットが接合されていることを特徴とするステアリングサポートビーム。
【請求項5】
前記サポートビーム本体の両端部にそれぞれフロントピラー取付用ブラケットの嵌合部が外嵌めされて固着され、前記サポートビーム本体の軸線方向の中間部にエアバッグユニット取付用ブラケットの嵌合部及びステアリング取付用ブラケットの嵌合部が外嵌めされて固着されていることを特徴とする請求項4に記載のステアリングサポートビーム。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかの部材同士の接合方法によって得られたものであることを特徴とする請求項4または5に記載のステアリングサポートビーム。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の部材同士の接合方法によって得られたものであることを特徴とする接合構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−51978(P2010−51978A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−216740(P2008−216740)
【出願日】平成20年8月26日(2008.8.26)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【Fターム(参考)】