説明

配位的に不飽和な金属部位を有する表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料又はメソポーラス材料の製造及びその触媒的応用

本院では、多孔性有機無機ハイブリッド材料又は多孔性有機無機メソポーラス材料の配位的に不飽和な金属部位に、選択的に、有機物、無機物、イオン性液体及び有機無機ハイブリッド物質を段階的に官能基化させ、吸着剤、気体貯蔵体、センサー、メンブレイン、機能性薄膜、触媒及び触媒担体等に用いられ得る多孔性有機無機ハイブリッド材料又は多孔性有機無機メソポーラス材料の表面官能基化方法並びにこの方法を用いて製造された表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料の不均一触媒反応への適用を開始している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い表面積を有するナノポーラス材料に関し、より詳しくは、ナノポーラス材料の配位的に不飽和な金属部位に、選択的に、有機物、無機物、イオン性液体及び有機無機ハイブリッド物質を官能基化させる方法及びこの方法により製造された表面官能基化されたナノポーラス材料の触媒への応用に関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、吸着剤、気体貯蔵体、センサー、メンブレイン、機能性薄膜、触媒及び触媒担体等に用いられ得るように、多孔性有機無機ハイブリッド材料(“金属−有機フレームワーク”ともいうの配位的に不飽和な金属部位(“開いた金属部位(open−metal site)”ともいう)に、有機物、無機物、イオン性液体及び有機無機ハイブリッド物質を選択的に官能基化させる多孔性有機無機ハイブリッド材料の表面官能基化方法並びにこの方法を用いて製造された表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料の不均一触媒反応への適用に関するものである。
【背景技術】
【0003】
一般的に、有機無機ハイブリッド材料において、配位的に不飽和な金属部位は、水又は有機溶媒が除去された部位であり、有機金属化合物が共有結合又は配位結合により結合できる位置である。
【0004】
本発明において用いられた多孔性有機無機ハイブリッド材料は、中心金属イオンが有機リガンドと結合して形成された多孔性有機無機高分子化合物と定義でき、骨格構造内に有機物と無機物をいずれも含む結晶性化合物であり、分子サイズ又はナノサイズの細孔を有する。多孔性有機無機ハイブリッド材料は、広範囲な意味の用語であり、一般的に、多孔性配位高分子ともいい(Angew.Chem.Intl.Ed.,43,2334.2004)、金属−有機フレームワーク(metal−organic frameworks)ともいう(Chem.Soc.Rev.,32,276,2003)。最近、このような材料に対する集中的かつ一歩進んだ研究は、有機金属化合物と材料科学の生成物との組合せを導き出した。このような材料に対する研究は、分子間配位結合と材料科学との組合せによって、最近、新たに発展し始めた。更に、これらの材料は、高表面積と、分子サイズ又はナノサイズの細孔を有しており、吸着剤、気体貯蔵体、センサー、メンブレイン、機能性薄膜、触媒、触媒担体等に用いられ得る。そのため、このような物質に関する研究が活発に行われている。
【0005】
一方、異種金属で置換された配位的に不飽和な金属部位を有し、2−50nmの範囲のメソサイズの気孔分布を有する規則性のある分子体である本発明に用いられた有機無機ハイブリッド材料は、触媒、触媒担体、吸着剤及び機能性物質としての広範囲な応用性が報告された(Chem.Rev.97,2373,1997)。
【0006】
前記高表面積有機無機ハイブリッド材料に応用性を与えるための一般的な表面官能基化方法は、論文に報告された(Curr.Opin.Solid State Mater.Sci..3,71,1998,Chem.Lett.6,624,2000)。この方法は、ハイブリッド材料表面の水酸基(−OH)と有機金属化合物の共有結合を介して有機金属化合物、例えば、有機シラン、を既に製造されたハイブリッド材料の表面に接合させる方法を含む。前記方法の他にも、有機シラン化合物とハイブリッド材料の前駆体を混ぜてハイブリッド材料の表面を直接に官能基化する方法が報告された(J.Mater.Chem.16,1125,2006)。
【0007】
−Si−OH+RM(OR)4−x(1≦x≦3)→−Si−O−M(OR)3−x+ROH(反応式1)
【0008】
しかしながら、表面に、水酸基が極少量であるか、又は水酸基が存在しない有機無機ハイブリッド材料の配位的に不飽和な金属部位や、異種金属で置換された有機無機ハイブリッド材料の配位的に不飽和な金属部位を選択的に官能基化する方法は、未だ報告されていない。
【0009】
最近、多様な不均一触媒反応のための有機無機ナノハイブリッド材料の応用が報告された(J.Mater.Chem.16,626,2006)。しかしながら、これまでのところ、多孔性有機無機ハイブリッド材料の配位的に不飽和な金属部位を官能基化して不均一触媒反応を試みた例は、報告されていない。
【0010】
一方、最近、多孔性有機無機ナノハイブリッド材料を利用した多様な不均一触媒反応が報告された(J.Mater.Chem.16,626,2006)。しかしながら、これまでのところ、多孔性有機無機ハイブリッド材料の配位的に不飽和された金属部位を官能基化して不均一触媒反応を試みた例は、報告されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Chem.Rev.97,2373,1997
【非特許文献2】Curr.Opin.Solid State Mater.Sci..3,71,1998
【非特許文献3】Chem.Lett.6,624,2000
【非特許文献4】J.Mater.Chem.16,1125,2006
【非特許文献5】J.Mater.Chem.16,626,2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来技術において発生する上述のような問題点を解決するために、多孔性有機無機ハイブリッド材料の表面の水酸基ではない不飽和金属部位に、有機物、無機物、イオン性液体及び有機無機ハイブリッド物質を選択的に官能基化させた多孔性有機無機ハイブリッド材料の製造方法を提供し、この方法を利用して製造された多孔性有機無機ハイブリッド材料の不均一触媒反応への応用を提供することに目的がある。
【0013】
本発明のまた他の目的は、前記製造方法によって製造され、吸着剤、気体貯蔵体、センサー、メンブレイン、機能性薄膜、触媒及び触媒担体等に用いられ得る、多孔性有機無機ハイブリッド材料を提供することにある。
【0014】
本発明の更なる目的は、前記表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料を利用した酸−塩基反応、水素化、脱水素化、炭素−炭素結合反応、又は酸化反応用触媒組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記目的を達成するために、本発明は、不飽和金属部位を有する多孔性有機無機ハイブリッド材料を有機物、無機物、イオン性液体及び有機無機ハイブリッド物質から選択される1種以上と反応させることを特徴とする表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料の製造方法と、この方法で製造された表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料を利用した触媒及びその組成物を提供する。上記方法は、多孔性有機無機ハイブリッド材料の表面の水酸基でない不飽和金属部位に、シラン、有機金属化合物及びポリオキソメタレートから選択される1種以上を選択的に配位結合又は共有結合させ、多孔性有機無機ハイブリッド材料を官能基化することを特徴とする。
【0016】
前記多孔性有機無機ハイブリッド材料は、中心金属イオンが有機リガンドと結合して形成された細孔構造の結晶性高分子化合物を意味し、前記多孔性有機無機ハイブリッド材料は、リガンド及び異種金属で置換されて配位的に不飽和な金属部位を有する分子体を意味する。前記多孔性有機無機ハイブリッド材料は、2〜50nm程度の気孔分布を有する規則性のある分子体であり、前記多孔性有機無機ハイブリッド材料は、一般的に、分子サイズ又は数nm程度の細孔を有する。
【0017】
本発明の方法は、有機物、無機物、イオン性液体及び有機無機ハイブリッド物質から選択される1種以上で多孔性有機無機ハイブリッド材料の表面を官能基化した後、貴金属、遷移金属、典型金属、ランタン族及びその金属酸化物から選択される1種以上を多孔性有機無機ハイブリッド材料の表面に担持するステップを追加で含むことができる。
【0018】
また、本発明の方法は、本願発明の表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料を利用した不均一触媒反応を行うステップを更に含むことができる。
【0019】
本発明において、多孔性有機無機ハイブリッド材料は、金属源(source)、リガンドとして作用できる有機物及び溶媒を含む反応混合液を加熱する方法を通じて製造することができるが、これに限定されない。混合反応溶液を加熱する方法は、電気加熱方法、マイクロ波照射方法、電気分解方法又は音波を照射する方法から選択して用いることができるが、これに限定されない。しかしながら、ナノサイズの多孔性有機無機ハイブリッド材料の結晶を製造するためには、電気加熱方法又はマイクロ波を利用する方法を反応混合液を加熱する方法として用いることが好ましい。
【0020】
多孔性有機無機ハイブリッド材料を構成する金属は、どのような金属でも可能であり、多孔性有機無機ハイブリッド材料を構成する金属の典型的な例示は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi等を含むことができる。特に、配位化合物を作りやすい遷移金属が多孔性有機無機ハイブリッド材料を構成する金属として用いられ得る。遷移金属の中でも、クロム、バナジウム、鉄、ニッケル、コバルト、銅、チタン、アルミニウム及びマンガン等が、更に好ましくは、クロム、鉄、アルミニウム及びバナジウムが多孔性有機無機ハイブリッド材料を構成する金属として用いられ得る。遷移金属の他にも、配位化合物を作ることのできる典型元素としては、アルミニウム及びシリコン、ランタン族金属であるセリウム、ランタニウムが好ましい。金属源としては、金属そのものはもちろん、金属のどのような化合物も用いることができる。
【0021】
多孔性有機無機ハイブリッド材料のまた一つの構成元素である有機物は、リンカー(linker)ともいう。配位結合できる官能基を有したどのような有機物もリンカーとして用いることができる。前記官能基としては、カルボン酸基、カルボン酸アニオン基、アミノ基(−NH)、
【化1】


、アミド基(−CONH)、スルホン酸基(−SOH)、スルホン酸アニオン基(−SO)、メタンジチオ酸基(−CSH)、メタンジチオ酸アニオン基(−CS)、ピリジン基又はピラジン基等が例示され得る。より安定した有機無機ハイブリッド材料を誘導するためには、キレート部位が二つ以上である、二座配位又は三座配位のような有機物が有利に用いられ得る。キレートされた有機物が配位結合できる部位を有する場合、ビピリジン、ピラジン等のような中性有機物、テレフタレート、ナフタレンジカルボキシレート、ベンゼントリカルボキシレート、グルタレート、サクシネート等のようなカルボン酸のアニオンのアニオン性有機物及びカチオン性有機物を含むことができる。テレフタレートのような芳香族環を有するカルボン酸アニオン、ホルメートのような線形のカルボン酸のアニオン及びシクロヘキシルジカーボネートのように非芳香族環を有するアニオンがカルボン酸アニオンとして用いられ得る。脱水素化部位を有した有機物及び特定の反応条件において脱水素化された形態に変化され得る化合物が用いられ得る。即ち、テレフタル酸のような有機酸を用いても、反応後は、テレフタレートは、金属成分と結合することができる。使用できる有機物の代表的な例としては、ベンゼンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ビピリジルジカルボン酸、ギ酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ヘキサンジオン酸、ヘプタンジオン酸、シクロヘキシルジカルボン酸のような有機酸及びそれらのアニオン;ピリジン;及びピラジンを含むことができる。また、二つ以上の有機物を混合して用いることもできる。
【0022】
有機無機ハイブリッド材料の製造には、適切な溶媒が必要である。溶媒の例としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール等のようなアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のようなケトン類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等のような炭化水素類;及びイオン性液体を含むことができる。二つ以上の溶媒の混合物を用いることもできるが、水が最も適した溶媒である。
【0023】
多孔性有機無機ハイブリッド材料の代表的な例としては、クロムテレフタレート、バナジウムテレフタレート、鉄テレフタレート、アルミニウムテレフタレートが含まれ得る。その中でも、MIL−100(Angew.Chem.Int.Ed.43,6296,2004)、MIL−101(Science,309,2040,2005)及びMOF−500(Angew.Chem.Int.Ed.45,2528,2006)のように巨大細孔を有する多孔性有機無機ハイブリッド材料が最も適している。
【0024】
前記多孔性有機無機ハイブリッド材料は、薄膜構造又はメンブレイン構造の形態を有することができる。前記薄膜構造又はメンブレイン構造を有する多孔性有機無機ハイブリッド材料は、アルミナ、シリコン、ガラス、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、又は耐熱性ポリマー材質で表面処理された基板を反応物混合液に浸漬して製造することができる。
【0025】
また、配位的に不飽和な金属部位を有する有機無機ハイブリッド材料の例としては、B、Al、In、Ga等のような異種金属が置換され、気孔の配列構造が六方晶系であるMCM−41、SBA−15、MSU−Hと気孔の配列構造が3次元立方晶系のSBA−16、SBA−1及びFDU−1及びMCM−48が適している。
【0026】
更に、配位的に不飽和な金属部位に結合させ得る化合物としては、有機物、無機物、イオン性液体及び有機無機ハイブリッド物質から1種以上を選択して用いることができる。有機物は、下記の化学式1及び3で表される化合物から1種以上を選択して用いることができる。
【0027】
[化学式1]
【0028】
N−M−R
【0029】
[化学式2]
【0030】
HS−M−R
【0031】
[化学式3]
【0032】
(OH)OP−M−R
【0033】
前記式において、Mは、不飽和炭化水素を含むか、又は含まないC〜C20のアルキレン又はアラルキレン基であり、R及びRは、独立的に、ハロゲン、ビニル基(−C=CH)、アミノ基(−NH)、イミノ基(−NHR14)、メルカプト基(−SH)、ヒドロキシ基(−OH)、カルボン酸基(−COOH)、スルホン酸基(−SOH)、アルコキシ基(−OR)又はホスホリック基(−PO(OH))から選択される一つ以上に置換されるか、又は置換されていない有機物質アルキレン又はアラルキレン基である。
【0034】
また、材料を官能基化する無機物は、[AlOAl12(OH)24(HO)127+又は[PW12404−等のポリオキソメタレート等が用いられることができる。前記ポリオキソメタレート化合物にケギン構造(Keggin structure)のアニオン[(XM1240n−、n=1〜10;X=P、Si、H、Ga、Ge、V、Cr、Me又はFe;M=W、Mo、Coのうちから一つ以上]、リンドクビスト構造(Lindqvist structure)のアニオン[(M19n−、n=1〜10;M=W、Mo、Ta、V又はW]、アンダーソン−エバンス構造(Anderson−Evans structure)のアニオン[(M(OH)18n−、n=1〜10;M=Cr、Ni、Fe、Mn;M=Mo、W]又は[(M(HO)(P1556n−、n=1〜10;M=Cu、Zn、Ni、Mn等から選択される1種以上の遷移金属又は遷移金属クラスタ]又はドーソン−ウェルズ構造(Dawson−Wells structure)の(P1556が含まれ得る。
【0035】
イオン性液体としては、アンモニウム(ammonium)、ホスホニウム(Phosphonium)、スルホニウム(Sulphonium)、ピロリジニウム(Pyrrolidinum)、イミダゾリウム(Imidazolium)、チアゾリウム(Thiazolium)、ピリジニウム(Pyridium)及びトリアゾリウム(Triazolium)から選択される1種以上の塩を選択して用いることができる。また、前記有機無機ハイブリッド材料は、有機金属化合物であり得る。有機金属化合物のうち、有機シリコンを含有した化合物が有機シラン化合物として主に用いられ得る。有機シラン化合物の具体的な例としては、シリル化剤、シランカップリング剤、シランポリマー又はこれらの混合物を含むことができる。
【0036】
表面官能基化物質のうち、有機シラン化合物が多孔性有機無機ハイブリッド材料の配位的に不飽和な金属部位に結合することが容易であるだけでなく、結合後にも安定的である。有機シラン化合物中でも一方にはアルコキシ基を有し、他方にはアミノ基及びメルカプト基から選択される官能基を有するアルキル、アルケニル、アルキニル基を有する有機シラン化合物は、多孔性有機無機ハイブリッド材料との安定的な結合を形成すると同時に、触媒としての活性が高い。
【0037】
また、有機無機ハイブリッド材料は、下記の化学式4乃至11で表される化合物から選択される一つ以上の化合物である。
【0038】
[化学式4]
【0039】
Si(OR4−x(1≦x≦3)
【0040】
[化学式5]
【0041】
Si(OR4−(y+z)(1≦y+z≦3)
【0042】
[化学式6]
【0043】
Si(OR4−aSi(1≦a≦3)
【0044】
[化学式7]
【0045】
(OR3−bSi−A−Si(OR3−C(0≦b≦2、0≦c≦2)
【0046】
[化学式8]
【0047】
(OR4−e(1≦e≦3)
【0048】
[化学式9]
【0049】
10(OR114−(f+g)(1≦f+g≦3)
【0050】
[化学式10]
【0051】
(OR12(1≦h≦2)
【0052】
[化学式11]
【0053】
(OR13(1≦i+j≦2)
【0054】
前記式において、Aは、不飽和炭化水素を含むか、又は含まないC〜C20のアルキレン又はアラルキレン基であり、Z乃至Zは、独立的に、ハロゲン元素から選択され、M及びMは、独立的に、遷移金属、ランタン系列及びアクチニウム系列金属から選択された1種以上の元素であり、M及びMは、独立的に、アルカリ土類金属又はアルカリ金属から選択される1種以上の元素であり、RとR乃至R13は、独立的に、ハロゲン元素、ビニル基(−C=CH)、アミノ基(−NH)、イミノ基(−NHR14)、メルカプト基(−SH)、ヒドロキシ基(−OH)又はカルボン酸基(COOH)から選択される一つ以上に置換されるか、又は置換されていないC〜C20のアルキル(alkyl)基、アルケニル(alkenyl)基又はアルキニル(alkynyl)基であるか、又は、ビニル基(−C=CH)、アミノ基(−NH)、イミノ基(−NHR14)、メルカプト基(−SH)、ヒドロキシ基(−OH)又はカルボン酸基(COOH)から選択され、前記R14は、ハロゲン、アミノ基、メルカプト基又はヒドロキシ基に置換されるか、又は置換されていないC〜C10のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基である。
【0055】
有機物、無機物、イオン性液体及び有機無機ハイブリッド物質から1種以上を選択し、多孔性有機無機ハイブリッド材料を官能基化する場合、多孔性有機無機ハイブリッド材料は、前記混合物を用いて官能基化されることもでき、1種の物質をまず用いた後、他の種の物質を用いて順に官能基化されることもできる。好ましくは、多孔性有機無機ハイブリッド材料を有機物又は有機金属化合物と1次的に反応させた後、2番目の反応において、イオン性液体又は無機ポリオキソメタレートと反応させ、表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料を製造することができる。このような方法は、活性物質である官能基を金属で2次担持する際、金属の溶解を抑制できる長所がある。
【0056】
前記多孔性有機無機ハイブリッド材料の表面官能基化前に、配位的に不飽和な金属部位に結合した水又は溶媒成分を除去する前処理ステップを行うことができる。前記前処理ステップは、多孔性有機無機ハイブリッド材料の表面官能基化の変形を誘発することなく水又は溶媒成分を除去することができればいずれの方法も使用可能である。より具体的には、多孔性有機無機ハイブリッド材料を減圧下に100℃以上の温度で2時間以上、特に、150℃以上の温度で4時間以上加熱するのがより好ましい。
【0057】
本発明による表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料の製造方法の実施形態によると、(a)異種金属が置換された多孔性有機無機ハイブリッド材料の表面の不飽和金属部位に配位結合している水(HO)又はアルコール等のような有機溶媒を除去するステップ;(b)有機物、無機物、イオン性液体及び有機無機ハイブリッド物質を溶媒に溶解させて製造した溶液に前記前処理された多孔性有機無機ハイブリッド材料を投入し、還流させて官能基化するステップ;及び(c)前記有機金属化合物へ官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料を精製するステップを含むことができる。
【0058】
揮発性の良い有機物、シラン又は有機金属化合物を利用して多孔性有機無機ハイブリッド材料を表面官能基化する場合は、気体状態のシラン又は有機金属化合物を多孔性有機無機ハイブリッド材料と接触させて多孔性有機無機ハイブリッド材料の配位的に不飽和な金属部位に、選択的に結合させることができる。
【0059】
本発明による表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料の製造方法は、不均一触媒、センサーなどの応用性を付与するために、有機基、シラン、有機金属化合物、イオン性液体又はポリオキソメタレートで表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料に貴金属、遷移金属、典型金属、ランタン族又はその酸化物から選択される1種以上を担持して固定化させることができる。前記貴金属としては、Pd、Au、Pt、Ru等の単一金属及び複合金属が含まれ得る。前記遷移金属は、Ti、Zr、V、Fe、Ni、Nb、W、Mo、Ta、Mn等を含むことができる。前記貴金属、遷移金属、典型金属、ランタン族又はその酸化物から選択される1種以上を多孔性有機無機ハイブリッド材料に担持して固定化させる方法は、通常的な方法によって行われることができる。多孔性有機無機ハイブリッド材料を固定する方法において、貴金属、遷移金属又はランタン族元素が含まれた化合物を、溶液上で還元剤で還元した後担持するか、又は化合物を直接担持することができる。また、前記化合物は、金属酸化物の形態で担持されることができる。
【0060】
本発明は、前記製造方法によって製造された表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料を提供する。また、本発明は、前記方法で製造された表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料を含む触媒組成物を含む。この場合、触媒組成物は、酸塩基反応、水素化、脱水素化炭素−炭素結合反応又は酸素、空気又は過酸化水素を利用した酸化反応に用いられ得る。
【0061】
水素化、脱水素化又は炭素−炭素結合反応用触媒組成物、又は酸化反応用触媒組成物は、有機基、シラン、有機金属化合物、イオン性液体又はポリオキソメタレートで担持された表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料を用いて1次的に表面官能基化されることができ、貴金属、遷移金属、典型金属又はその金属酸化物から選択される1種以上で担持された表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料を用いて2次的に表面官能基化され得る。
【0062】
本発明による触媒組成物は、前記製造方法によって製造された表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料を含有する組成物である。前記触媒組成物において、表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料を単独で用いることもでき、触媒組成物を他の触媒成分と混合して用いることもできる。また、触媒組成物は、前記表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料を基材物質と混合して製造されることもでき、基材上に前記表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料をコーティングして製造されることもできる。
【発明の効果】
【0063】
上述のように、本発明によって多孔性有機無機ハイブリッド材料の配位的に不飽和な金属部位が表面官能基化され、ヒドロキシ基が微量又は全く存在しないハイブリッド材料の表面が有機基、無機基、又は有機無機ハイブリッド官能基で官能基化され得るということを確認することができた。また、既存の多孔性有機無機ハイブリッド材料の表面のヒドロキシ基に有機無機化合物を官能基化する方法に比べて、速度論的に非常に速く、高い選択性を有するという点において非常に有用であることが確認できた。
【0064】
このような表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料は、多様な触媒、触媒担体、吸着剤、気体貯蔵体、イオン交換及びナノ反応器及びナノ物質の製造に活用されることができた。特に、表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料は、今後電子素材、キラル触媒、センサー、光電材料及び医療用材料として用いられ得るものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料のXRDパターンを示したものであり、(a)は、実施例1によって製造されたMIL−101のXRDパターンを示し、(b)は、実施例1のDE−MIL−101のXRDパターンを示し、(c)は、実施例2のDETA−MIL−101のXRDパターンを示し;
【0066】
【図2】図2は、表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料の窒素吸着等温線を示したものであり、(a)は、実施例1によって製造されたMIL−101の窒素吸着等温線を示し、(b)は、実施例1のDE−MIL−101の窒素吸着等温線を示し、(c)は、実施例2のDETA−MIL−101の窒素吸着等温線を示し;
【0067】
【図3】図3は、表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料の赤外線分光スペクトルを示したものであり、(a)は、製造例1のMIL−101の赤外線分光スペクトルを示し、(b)は、実施例1のDE−MIL−101の赤外線分光スペクトルを示し;
【0068】
【図4】図4は、実施例5において製造された表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料(Pd−EDTA−MIL−101)を示すTEM写真であり;
【0069】
【図5】図5は、実施例5において製造された表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料(Pd−EDTA−MIL−101)のEDX元素分析結果である。
【0070】
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下、実施例において、本発明をより詳しく説明する。
【0072】
<製造例1>多孔性有機無機ハイブリッド物質(MIL−101)の製造
【0073】
製造例1において、細孔サイズが1nm又はそれ以上である多孔性有機無機ハイブリッド材料(MIL−101)を製造した(Science,309,2040,2005)。
【0074】
Cr(NO9HO、HF水溶液、1,4−ベンゼンジカルボン酸(BDCA)及び水からモル組成がCr:HF:BDCA:HO=1:1:1:275である混合反応物を製造した。前記混合反応物をテフロン(登録商標)反応器に入れた。前記混合物を220℃のオーブンで8時間かけて加熱して反応させた後、室温に冷却し、遠心分離器を用いて分離し、蒸留水を利用して洗浄してから、110℃で乾燥して多孔性有機無機ハイブリッド材料(MIL−101)を得た。固体のX−線回折形態(XRDパターン)は、報告された既存の研究結果(Science2005,309,2040)と一致した。得られた多孔性有機無機ハイブリッド材料結晶のXRDパターン及び窒素吸着等温線を[図1](a)及び[図2](a)にそれぞれ示した。
【0075】
<製造例2>アミノが官能基化されたAPS−SBA−15及び塩基触媒反応
【0076】
六方晶系シリカメソポーラス材料であるSBA−15は、文献(“J.Phys.Chem.106,255,2002”)に公知の方法によって製造した。焼成したシリカSBA−15のXRDパターンが、文献に報告されたものと同一であることを確認した。製造例2においては、官能基化対象担持体として有機無機ハイブリッド材料でないメソポーラス材料であるSBA−15を用いたことを除いては、実施例1のように、アミノ基が官能基化されたポーラス材料(APS−SBA−15)を製造した。クネーベナーゲル縮合(Knoevenagel condensation)反応結果、APS−SBA−15は、同一の反応時間においてNH−MIL−101に比べて低い触媒反応性を表した。これは、APS−SBA−15に比べてNH−MIL−101の−NH基が更に活性化されたからである(表1を参照)。
【0077】
<実施例1>アミノ基が官能基化されたED−MIL−101
【0078】
製造例1において製造されたMIL−101 1gを、不飽和金属部位に配位結合した水分を脱水させるために、200℃の真空オーブンで12時間かけて前処理した。その後、前記脱水されたMIL−101 1gを、エチレンジアミン(Ethylenediamine、ED)2mlとトルエン48mlの混合溶液に入れる。次いで、前記溶液を110℃で12時間かけて還流させた後、紙フィルタを用いて分離し、110℃のオーブンで乾燥して配位的に不飽和な金属部位にアミノ官能基を配位させた多孔性有機無機ハイブリッド材料を製造した。図1(b)に示したように、エチレンジアミンを担持する前後のX−線回折形態から、純粋なMIL−101と同一の構造の多孔性有機無機ハイブリッドが得られることが分かった。図2(b)に示したように、窒素吸着結果、表面官能基化後に窒素吸着量が減少することが分かった。また、図3に示したように、エチレンジアミンが配位されたことは、赤外線分光法を通じて、エチレンジアミンのアミノ基(−NH)及びエチル基(−CHCH−)が2800〜3000cm−1と、及び3200〜3400cm−1の領域で存在を確認したことで分かった。更に、図3(a)に示したように、エチレンジアミンの配位前後の多孔性有機無機ハイブリッド材料のヒドロキシ基(−OH基)の波数領域である3550〜3650cm−1が殆ど変化しなかったことから、図3(b)に示したように、多孔性有機無機ハイブリッド材料の配位的に不飽和な金属部位にエチレンジアミンが選択的に結合したことが分かる。
【0079】
<実施例2>トリアミノ基が官能基化されたDETA−MIL−101
【0080】
実施例2においては、製造例1において製造されたMIL−101を用い、実施例において用いられたエチレンジアミンの代わりにジエチレントリアミン(Diethylenetriamine)をアミノ前駆体として用いた。実施例1でのように、MIL−101 1gを200℃の真空オーブンで12時間かけて前処理した後、3.8mlのジエチレントリアミン(DETA)と50mlのトルエンの混合溶液に入れる。前記溶液を110℃で12時間かけて還流させた後、紙フィルタを用いて分離してから、110℃のオーブンで乾燥して配位的に不飽和な金属部位にアミノ官能基を配位させた多孔性有機無機ハイブリッド材料(DETA−MIL−101)を製造した。図1(c)及び図2(c)に示したように、赤外線分光法を利用してジエチレントリアミンのアミノ基(−NH)とエチレン基がDETA−MIL−101に存在することを確認することができた。
【0081】
<実施例3>チオール基が導入されたHS−MIL−101の製造
【0082】
表面官能基化官能基として、1,2−ジメルカプトエタン(1,2−Dimercaptoethane)を用いたことを除いては、実施例1と同一の方法により、有機無機ナノポーラス材料を1,2−ジメルカプトエタンで官能基化した。赤外線分光法を利用してエチレン基とチオール基(−SH)を確認することができた。
【0083】
<実施例4>アミノ基とスルホン基を同時に有するAMS−MIL−101の製造
【0084】
製造例1において製造されたMIL−101 0.5gを、200℃の真空オーブンで12時間かけて前処理し、0.18gのアミノメタンスルホン酸(Aminomethansulfonic acid、AMS)及びトルエン50mlの混合液に入れた。窒素を流しながら110℃で12時間かけて還流させ、配位的に不飽和な金属部位にアミノ基が結合し、スルホン酸が官能基化されたAMS−MIL−101を製造した。赤外線分光法を利用して3200−3400cm−1領域でアミノ基(−NH)が存在することを確認し、1150cm−1領域でS=O対称結合が存在することを確認した。
【0085】
<実施例5>パラジウムが担持されたPd−DETA−MIL−101の製造
【0086】
実施例2において製造されたDETA−MIL−101 1gを、150℃で真空前処理してから、前記有機無機ハイブリッド材料(DETA−MIL−101)を1重量%パラジウム(Pd)で担持させるために、PdCl 0.016g及びエタノール30mlの混合液に分散させる。その後、前記混合液に還元剤であるNaBH 0.9gを加え、パラジウムが担持されたPd−DETA−MIL−101を製造した。図4に示したように、XRD分析結果、強い還元剤であるNaBHを用いても、Pd−DETA−MIL−101の結晶構造が維持されることが確認できた。また、図5に示したように、パラジウムの粒子がMIL−101細孔内に分布することを、TEM/EDX分析を通じて確認することができた。
【0087】
<実施例6>金が担持されたAu−DETA−MIL−101の製造
【0088】
PdClの代りにHAuClを用いることを除いては、実施例4と同一の方法で製造してAuが担持されたAu−DETA−MIL−101を製造した。XRD分析結果、強い還元剤であるNaBHを用いても、Au−DETA−MIL−101の結晶構造が維持されることを確認することができた。
【0089】
<実施例7>ヘテロポリアニオンが担持されたPWA−NH−MIL−101の製造
【0090】
実施例1において製造された0.5g ED−MIL−101を、PWA(10ml 0.01M HPW1240・12HO、MWPW=2882)に混ぜ、12時間かけて常温で撹拌し、ヘテロポリアニオンとNH−MIL−101のカチオンのイオン結合によってヘテロポリアニオンが担持された有機無機ハイブリッド材料(PWA−NH−MIL−101)を製造した。ICP元素分析結果、PWA−NH−MIL−101が50重量%のPWAで担持されたことを確認した。
【0091】
<実施例8>スルホン酸基が官能基化されたHOS−MIL−101の製造
【0092】
4−アミノベンゼンチオール(ABT)を、両性官能基として用いることを除いては、実施例1と同一の方法によって、その配位的に不飽和な金属部位に混合溶液を還流させ、アミノ基が配位結合し、スルホン酸が官能基化されたAMS−MIL−101を製造した。
赤外線分光法を利用して3200−3400cm−1領域でアミノ基(−NH)が存在することを確認し、1150cm−1領域でS=O対称結合が存在することを確認した。
【0093】
<実施例9>塩基触媒反応
【0094】
実施例2、実施例3及び製造例2で得られたアミノシラン官能基が含まれ、アルコキシ基が配位された多孔性有機無機ハイブリッド物質(NH−MIL−101)を用いて、塩基性触媒反応であるベンズアルデヒド(benzaldehyde、BZA、10mmol)とエチルシアノアセテート(ethyl cyanoacetate、ECA)を反応物として用い、エチルトランスシアノシンナメート(ethyl trans−α−cyanocinnamate)を形成するクネーベナーゲル縮合(Knoevenagel condensation)反応を行った。反応結果を表1に表した。表1に表したように、反応物が150℃で前処理して表面官能基化した製造例2のAPS−SBA−15に比べ、卓越した塩基触媒として高い活性を有することが確認できた。
【0095】
【表1】

【0096】
a.ECAの転換率、反応時間16hr、触媒使用量20mg
【0097】
b.TOF(ターンオーバー周波数):生成物モル(mole)/(触媒モル(mole)、反応時間20min
【0098】
<実施例10>貴金属を利用した触媒反応
【0099】
実施例5で得られたパラジウムが担持されたPd−NH−MIL−101を用いて、ヨードベンゼン(iodobenzen)とスチレン(styrene)から、トランススチルベン(trans−stilbene)を形成するC−C結合形成反応(Heck reaction)を行った。反応結果、反応物は、Pd−APS−SBA−15に比べ、配位的に不飽和な金属部位に貴金属であるパラジウムを官能基化させることで、2倍以上の炭素−炭素結合反応に活性を有することを確認した。
【0100】
<実施例11>酸触媒反応
【0101】
実施例4で得られた0.05g AMS−MIL−101を用いて、酸触媒反応で反応物である酢酸(0.03mol)とエタノール(0.3mol)から、エチルアセテートを生成するエステル化反応を行った。反応結果、生成物は、配位的に不飽和な金属部位に酸性を帯びる官能基を官能基化させることで、製造例1のMIL−101よりエステル化反応に3倍以上の触媒活性を示すことを確認した。
【0102】
<実施例12>アミノ基が官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド物質(MIL−101)薄膜の製造
【0103】
テフロン(登録商標)反応器にCr(NO9HO、HF水溶液及び1,4−ベンゼンジカルボン酸(BDCA)を加えた後、蒸留水を加え、混合反応物の最終のモル比が、Cr:HF:BDCA:HO=1:1:1:275になるようにした。前記溶液にアルミナ基板を垂直に整列させ、アルミナ基板及び前記混合反応物を含有したテフロン(登録商標)反応器をマイクロ波反応器(CEM社製造、Mars−5)に装着し、マイクロ波を照射して3分間にわたって180℃に昇温させた。その後、180℃で30分維持して反応させた後、室温に冷却し、蒸留水を利用して洗浄し、乾燥して有機無機ハイブリッド材料(MIL−101)を得た。収得されたMIL−101薄膜のX−線回折形態(XRDパターン)は、220℃で10時間かけて電気オーブンで合成して得られた既存の粉末合成研究結果(Science2005,309,2040)とよく一致した。前記MIL−101薄膜を、3−アミノプロピルトリエトキシシラン((3−aminopropyl)triethoxysilane,APS)1ml及びトルエン溶液50mlの混合溶液が位置した還流反応器の底に、垂直に固定させた。その後、前記混合溶液を110℃で12時間かけて還流させ、その不飽和部位にエトキシ官能基を配位させた多孔性有機無機ハイブリッド材料薄膜を製造した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不飽和金属部位を有する多孔性有機無機ハイブリッド材料又は多孔性有機無機メソポーラス材料と有機物、無機物、イオン性液体及び有機無機金属化合物を反応させて製造される、表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料の製造方法。
【請求項2】
前記多孔性有機無機ハイブリッド材料は、中心金属イオンが有機リガンドと結合して形成された結晶性高分子化合物であって、分子サイズ又はナノサイズの細孔構造を有するものであり、前記多孔性有機無機メソポーラス材料は、異種金属が置換されて不飽和金属部位を有する分子体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記多孔性有機無機ハイブリッド材料の中心金属イオンの前駆体は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb及びBiのうちから選択される一つ以上の金属又はその金属化合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記リガンドとして作用できる有機物は、カルボン酸基、カルボン酸アニオン基、アミノ基、イミノ基、アミド基、スルホン酸基、スルホン酸アニオン基、メタンジチオ酸基、メタンジチオ酸アニオン基、ピリジン基又はピラジン基から選択される一つ以上の官能基を有する化合物又はその混合物である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記カルボン酸基を有する化合物は、ベンゼンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ベンゼントリカルボン酸、ナフタレントリカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ビピリジルジカルボン酸、ギ酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ヘキサンジオン酸、ヘプタンジオン酸、又はシクロヘキシルジカルボン酸から選択されるいずれか一つ以上である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記多孔性有機無機ハイブリッド材料は、薄膜構造又はメンブレイン構造を有するものである、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記有機物は、下記の化学式1乃至3で表される化合物から1種以上の化合物である、請求項1に記載の方法。
[化学式1]
N−M−R
[化学式2]
HS−M−R
[化学式3]
(OH)OP−M−R
(前記1〜3式において、Mは、不飽和炭化水素を含むか、又は含まないC〜C20のアルキレン又はアラルキレン基であり、R、Rは、独立的に、ハロゲン、ビニル基(−C=CH)、アミノ基(−NH)、イミノ基(−NHR14)、メルカプト基(−SH)、ヒドロキシ基(−OH)、カルボン酸基(−COOH)、スルホン酸基(−SOH)、アルコキシ基(−OR)又はホスホリック基(−PO(OH))から選択される一つ以上に置換されるか、又は置換されていない有機物質アルキレン又はアラルキレン基である。)
【請求項8】
前記ポリオキソメタレートは、ケギン構造(Keggin structure)のアニオン[(XM1240n−、n=1〜10;X=P、Si、H、Ga、Ge、V、Cr、Me又はFe;M=W、Mo、Coのうちから一つ以上]、リンドクビスト構造(Lindqvist structure)のアニオン[(M19n−、n=1〜10;M=W、Mo、Ta、V又はW]、アンダーソン−エバンス構造(Anderson−Evans structure)のアニオン[(Mx(OH)18n−、n=1〜10;Mx=Cr、Ni、Fe、Mn;M=Mo、W]又は[(M(HO)(P1556n−、n=1〜10;M=Cu、Zn、Ni、Mn等から選択される1種以上の遷移金属又は遷移金属クラスタ]又はドーソン−ウェルズ構造(Dawson−Wells structure)の(P1556から選択される1種以上である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記イオン性液体は、アンモニウム(ammonium)、ホスホニウム(Phosphonium)、スルホニウム(Sulphonium)、ピロリジニウム(Pyrrolidinum)、イミダゾリウム(Imidazolium)、チアゾリウム(Thiazolium)、ピリジニウム(Pyridium)及びトリアゾリウム(Triazolium)から選択される1種以上の塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記有機金属化合物は、下記の化学式4乃至11で表される化合物から選択される1種以上である、請求項1に記載の方法。
[化学式4]
Si(OR4−x(1≦x≦3)
[化学式5]
Si(OR4−(y+z)(1≦y+z≦3)
[化学式6]
Si(OR4−aSi(1≦a≦3)
[化学式7]
(OR3−bSi−A−Si(OR3−C(0≦b≦2、0≦c≦2)
[化学式8]
(OR4−e(1≦e≦3)
[化学式9]
10(OR114−(f+g)(1≦f+g≦3)
[化学式10]
(OR12(1≦h≦2)
[化学式11]
(OR13(1≦i+j≦2)
(前記化学式4〜11において、Aは、不飽和炭化水素を含むか、又は含まないC〜C20のアルキレン又はアラルキレン基であり、Z乃至Zは、独立的に、ハロゲン元素から選択され、M及びMは、独立的に、遷移金属、ランタン系列及びアクチニウム系列金属から選択された1種以上の元素であり、M及びMは、独立的に、アルカリ土類金属又はアルカリ金属から選択される1種以上の元素であり、RとR乃至R13は、独立的に、ハロゲン元素、ビニル基(−C=CH)、アミノ基(−NH)、イミノ基(−NHR14)、メルカプト基(−SH)、ヒドロキシ基(−OH)又はカルボン酸基(COOH)から選択される一つ以上に置換されるか、又は置換されていないC〜C20のアルキル(alkyl)基、アルケニル(alkenyl)基又はアルキニル(alkynyl)基であるか、又は、ビニル基(−C=CH)、アミノ基(−NH)、イミノ基(−NHR14)、メルカプト基(−SH)、ヒドロキシ基(−OH)又はカルボン酸基(COOH)から選択され、前記R14は、ハロゲン、アミノ基、メルカプト基又はヒドロキシ基に置換されるか、又は置換されていないC〜C10のアルキル基、アルケニル基又はアルキニル基である。)
【請求項11】
前記方法は、下記を更に含む請求項1に記載の方法:
表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料を貴金属、遷移金属、典型金属又はランタン族金属と反応させて2次で担持させるステップ。
【請求項12】
前記多孔性有機無機ハイブリッド材料は、電気オーブンヒーティング方式又はマイクロウエーブヒーティング方式で製造されたものである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料に、貴金属、遷移金属、典型金属及びランタン族から選択される1種以上の金属又はその酸化物を担持するステップを更に含む、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記多孔性有機無機ハイブリッド材料は、クロムテレフタレート、鉄テレフタレート又はバナジウムテレフタレート、アルミニウムテレフタレート、クロムベンゼントリカルボキシレート、鉄ベンゼントリカルボキシレート、バナジウムベンゼントリカルボキシレート又はアルミニウムベンゼントリカルボキシレートである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記多孔性有機無機ハイブリッド材料は、MIL−101、MIL−100及びMOF−500構造を有するものである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか1項の方法で製造された、表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料組成物。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか1項の製造方法で製造された、表面官能基化された多孔性有機無機ハイブリッド材料を含む触媒組成物。
【請求項18】
酸塩基反応、水素化反応、脱水素化反応、炭素−炭素結合反応、又は酸素、空気、過酸化水素を利用した酸化反応に用いられる請求項17に記載の触媒組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−527890(P2010−527890A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509261(P2010−509261)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【国際出願番号】PCT/KR2007/006431
【国際公開番号】WO2008/143385
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(591066339)財団法人韓国化学研究院 (3)
【Fターム(参考)】