説明

配線基板と半導体装置及びその製造方法

【課題】高性能な半導体チップの性能劣化が防止されて十分な信頼性が得られる半導体装置を提供する。
【解決手段】半導体装置1の配線基板2では、接続パッドPを含むパッド配線部23の下に中空部Hを設けることにより、配線層24はパッド配線部が空中配線となる片持ち梁構造となっており、接続パッドPに半導体チップ40がフリップチップ接続されている。配線基板2の層間絶縁層32の凹部Cに充填された犠牲層の上に接続パッドPを含むパッド配線部23が形成され、接続パッドPに半導体チップ40がフリップチップ接続された後に、犠牲層が除去されて中空部Hが設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配線基板と半導体装置及びその製造方法に係り、さらに詳しくは、半導体チップがフリップチップ実装される配線基板と、該配線基板の上に半導体チップがフリップチップ実装されて構成される半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配線基板の上に半導体チップがフリップチップ実装されて構成される半導体装置がある。図1に示すように、従来技術の半導体装置の配線基板100では、コア基板200にそれを貫通するスルーホールTHが設けられており、スルーホールTHの内面にはスルーホールめっき層220が設けられている。スルーホールTHの内部の孔には樹脂240が充填されている。
【0003】
また、コア基板200の上面側には、スルーホールめっき層220に接続された第1配線層300が形成されている。第1配線層300はスルーホールめっき層220を介してコア基板200の下面側に形成された下側配線層(不図示)に接続されている。さらに、第1配線層300の上には第1層間絶縁層400が形成されており、第1層間絶縁層400には第1配線層300に到達する深さの第1ビアホールVH1が形成されている。
【0004】
第1層間絶縁層400の上には第1ビアホールVH1を介して第1配線層300に接続される第2配線層320が形成されている。
【0005】
また、同様に、第2配線層320の上にはそれに到達する深さの第2ビアホールVH2が設けられた第2層間絶縁層420が形成されている。さらに、第2層間絶縁層420の上には第2ビアホールVH2を介して第2配線層320に接続される第3配線層340が形成されている。第3配線層340の上にはその接続部上に開口部500aが設けられたソルダレジスト500が形成されている。
【0006】
そして、第3配線層340の接続部に半導体チップ600のはんだバンプ620がフリップチップ接続されている。さらに、半導体チップ600と配線基板100との隙間にはアンダーフィル樹脂700が充填されている。
【0007】
特許文献1には、ICチップがフリップチップ接続されるプリント配線板の製造方法において、酸素プラズマによってソルダレジストの表面の酸化膜層及びその開口部に露出するパッドの金属表面の有機残渣を除去することにより、接続性及び信頼性に優れたプリント配線板を得ることが記載されている。
【特許文献1】特開2000−22317号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記した半導体装置において、配線基板100(樹脂や銅配線など)と半導体チップ(シリコンチップ)600との間で熱膨張係数が異なるため、半導体装置に熱がかかる際に熱応力が発生し、これによって半導体装置に反りが発生することがある。
【0009】
近年では、半導体チップ600として、性能向上のために歪シリコン技術を用いたり、多層配線において低誘電率(Low−k)の層間絶縁層を使用するようになってきている。そのような高性能な半導体チップは応力に比較的弱く、応力による動作特性の劣化を招きやすい。従来技術では、配線基板100と半導体チップ600との間の熱膨張係数差を吸収する緩衝材としてアンダーフィル樹脂700を用いているが、高性能な半導体チップを十分に保護することが困難になりつつあり、半導体装置の信頼性が問題になる可能性がある。
【0010】
本発明は以上の課題を鑑みて創作されたものであり、高性能な半導体チップをフリップチップ実装する場合であっても、半導体チップの性能劣化が防止されて十分な信頼性が得られる配線基板とそれを使用する半導体装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明は配線基板に係り、半導体チップがフリップチップ接続される接続パッドを含むパッド配線部を備えた配線層が表層側に設けられた配線基板であって、前記接続パッドを含むパッド配線部の下に中空部を設けることにより、前記配線層は前記パッド配線部が空中配線となる片持ち梁構造となっていることを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様では、接続パッドを備えた配線層は配線基板の絶縁層の上に形成され、接続パッドを含むパッド配線部の下の絶縁層に凹部が設けられて中空部が構成されている。このようにして、配線層は、その接続パッド含むパッド配線部が空中配線となる片持ち梁構造となっている。
【0013】
そして、配線基板の接続パッドに半導体チップがフリップチップ接続されて半導体装置が構成される。前述したように、半導体装置では、配線基板と半導体チップとの熱膨張係数の違いに起因して熱がかかると熱応力が発生しやすく、半導体チップの動作性能が劣化したり、半導体チップの接続の信頼性が得られないことがある。
【0014】
本発明では、半導体チップが接続される接続パッドを含むパッド配線部が下地層と接触しない空中配線となっている。このため、半導体装置に応力がかかる際に、半導体チップと接続パッドとの接続部がバネ状に上下に動くフレキシブル構造となるので、半導体装置に発生する熱応力を緩和することができ、それらの電気接続の信頼を向上させることができる。
【0015】
また、半導体チップにかかる応力は接続パッドが動くことで吸収されるので、応力に弱い高性能な半導体チップを実装する場合であっても半導体チップが応力から防御されてその性能劣化が防止される。
【0016】
上記した発明において、半導体装置を構成する際に、配線基板にキャップを設けることにより、半導体チップを気密封止してもよい。
【0017】
また、上記課題を解決するため、本発明は半導体装置の製造方法に係り、配線基板の表層側の配線層の接続パッドに半導体チップがフリップチップ接続された半導体装置の製造方法であって、前記配線層が形成される部材に凹部を形成する工程と、前記凹部に犠牲層を充填する工程と、前記部材の上から前記犠牲層に延在し、前記犠牲層の上に前記接続パッドを含むパッド配線部が配置されるように前記配線層を形成する工程と、前記接続パッドに前記半導体チップをフリップチップ接続する工程と、前記半導体チップをフリップチップ接続する工程の前又は後に、前記絶縁層及び前記配線層に対して選択的に前記犠牲層を除去することにより、前記パッド配線部の下に中空部を設ける工程とを有することを特徴とする。
【0018】
本発明では、まず、配線層が形成される部材(絶縁層など)に凹部が設けられ、その凹部に犠牲層(レジスト層など)が充填される。さらに、犠牲層の上に接続パッドを含むパッド配線部が配置されるように配線層が形成される。
【0019】
次いで、本発明の好適な態様では、半導体チップが犠牲層の上の接続パッドにフリップチップ接続された後に、犠牲層が選択的に除去されてパッド配線部の下に中空部が構成される。
【0020】
この態様では、接続パッドが犠牲層の上に固定された状態で半導体チップを実装し、その後に犠牲層を除去して中空部を得るので、可動部となる接続パッドに半導体チップがフリップチップ接続された上記した半導体装置を安定して歩留りよく製造することができる。あるいは、半導体チップを実装する前に、中空部を設けておき、中空部の上に配置された接続パッドに半導体チップをフリップチップ接続することも可能である。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明では、高性能な半導体チップを実装する場合であっても、半導体チップの性能劣化が防止されて十分な信頼性が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
図2〜図8は本発明の第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す図、図9は同じく半導体装置を示す図である。
【0024】
本実施形態の半導体装置の製造方法では、まず、図2(a)に示すような断面構造を有する構造体を用意する。コア基板10にはその厚み方向に貫通するスルーホールTHが設けられており、スルーホールTHの内面にはスルーホールめっき層12が形成されている。スルーホールTHの内部の孔には樹脂11が充填されている。
【0025】
コア基板10の両面側には、スルーホールめっき層12を介して相互接続された第1配線層20がそれぞれ形成されている。コア基板10としては、ガラスクロスなどに樹脂を含侵させた基板、シリコン基板又はガラス基板などが好適に使用される。シリコン基板を採用する場合は、シリコン基板の両面及びスルーホールの内面に絶縁層が形成される。
【0026】
なお、スルーホールTHの全体に貫通電極が充填されて、両面側の第1配線層20が貫通電極を介して相互接続されていてもよい。
【0027】
次いで、図2(b)に示すように、コア基板10の両面側の第1配線層20の上にエポキシ樹脂やポリイミド樹脂などの樹脂フィルムを貼着するなどして第1層間絶縁層30をそれぞれ形成する。コア基板10としてシリコン基板を採用する場合は、CVD法によりシリコン酸化層(SiO2)などを成膜して第1層間絶縁層30を形成してもよい。
【0028】
さらに、両面側の第1層間絶縁層30をレーザや異方性ドライエッチング(RIEなど)によって加工することにより、第1配線層20に到達する深さの第1ビアホールVH1をそれぞれ形成する。
【0029】
続いて、図2(c)に示すように、コア基板10の両面側の第1層間絶縁層30の上に、第1ビアホールVH1を介して第1配線層20に接続される第2配線層22をそれぞれ形成する。第2配線層22はセミアディティブ法などによって形成される。
【0030】
次いで、図3(a)に示すように、コア基板10の両面側の第2配線層22の上に第2層間絶縁層32をそれぞれ形成する。続いて、図3(b)に示すように、コア基板10の上面側の第2層間絶縁層32を加工することにより凹部Cを形成する。凹部Cは半導体チップが実装される領域(配線基板の接続パッドを含むパッド配線部が配置される領域)に設けられ、半導体チップの面積より大きな面積に設定される。
【0031】
図3(b)の例では、凹部Cの下面と第2配線層22の上面との間に第2層間絶縁層32が残った状態となっているが、第2配線層22の上面が露出するように凹部Cを形成しても差し支えない。さらに、同じく図3(b)に示すように、コア基板10の両面側の第2層間絶縁層32を加工することにより、第2配線層22に到達する深さの第2ビアホールVH2をそれぞれ形成する。
【0032】
続いて、図3(c)に示すように、第2層間絶縁層32の凹部Cに犠牲レジスト層14を充填する。犠牲レジスト層14は、後に説明するように凹部Cを中空部とするためのダミー層として機能する。犠牲レジスト層14は、ディスペンサやスクリーン印刷などによって凹部C内に選択的に充填される。
【0033】
あるいは、犠牲レジスト層14の代わりに、ニッケルなどからなる犠牲金属層を凹部Cに充填してもよい。犠牲金属層を使用する場合は、第2層間絶縁層32に第2ビアホールVH2を形成する前に、めっき法やスパッタ法により凹部Cを埋め込むように金属層をブランケット状に形成した後に、CMPなどで金属層を研磨することにより凹部Cに犠牲金属層が選択的に充填される。
【0034】
次いで、図4(a)に示すように、第2層間絶縁層32及び犠牲レジスト層14の上及び第2ビアホールVH2の内面に、スパッタ法により下から順にチタン(Ti)層及び銅(Cu)層を成膜することによりシード層24aを形成する。あるいは、無電解めっきによってCu層を形成してシード層24aとしてもよい。
【0035】
続いて、図4(b)に示すように、第3配線層が配置される部分に開口部25aが設けられためっきレジスト25をシード層24aの上に形成する。さらに、シード層24aをめっき給電経路に使用する電解めっきにより、めっきレジスト25の開口部25a内にCuなどからなる金属めっき層24bを形成する。続いて、めっきレジスト25を除去した後に、金属めっき層24bをマスクにしてシード層24aをエッチングする。
【0036】
これにより、図5に示すように、第2層間絶縁層32及び犠牲レジスト層14の上に第3配線層24が形成される。図5では、第3配線層24は単層で描かれているが、シード層24aと金属めっき層24bとにより構成される。第3配線層24は第2ビアホールVH2を介して第2配線層22に接続される。
【0037】
また、第3配線層24は第2層間絶縁層32上からその凹部32x内の犠牲レジスト層14の上まで延在し、その接続パッドPを含むパッド配線部23が犠牲レジスト層14上の周縁側に並んで配置された状態となる。図5の断面図のパッド配線部23の様子を上側からみると、図5の平面図に示すように、第3配線層24のパッド配線部23が凹部Cに充填された犠牲レジスト層14上に延在し、接続パッドPが犠牲レジスト層14上の周縁側にペリフェラル型で並んで配置される。
【0038】
また、同様に、コア基板10の下面側にも、第2ビアホールVH2を介して第2配線層22に接続される第3配線層24が第2層間絶縁層32の上に形成される。
【0039】
次いで、図6に示すように、第3配線層24の接続パッドPの上に開口部26aが設けられたソルダレジスト26を形成する。図6の平面図を加えて参照すると、このとき同時に、犠牲レジスト層14上の周縁部のソルダレジスト26にリング状のエッチング用開口部Eが形成される。また、コア基板10の下面側にも、第3配線層24の接続パッドP上に開口部26aが設けられたソルダレジスト26が形成される。さらに、コア基板10の両面側において、ソルダレジスト26の開口部26aに露出する接続パッドPに接続用のNi/Auめっきが施される。
【0040】
続いて、図7に示すように、コア基板10の上面側の第3配線層24の接続パッドPに半導体チップ40のバンプ40aをフリップチップ接続する。さらに、半導体チップ40とその下のソルダレジスト26との隙間に弾性樹脂16を充填する。弾性樹脂16はゴム弾性を示す高分子物質であり、そのヤング率は100〜500MPaである。弾性樹脂16としては、例えばシリコーン系のゴムが使用される。
【0041】
次いで、図8に示すように、図7の構造体をレジスト剥離液に浸漬させるなどして半導体チップ40の下方の犠牲レジスト層14を剥離・除去する。このとき、ソルダレジスト26のエッチング用開口部E及びパッド配線部23の間(図6の平面図参照)を通ってレジスト剥離液が犠牲レジスト層14に供給されて犠牲レシスト層14が剥離・除去される。ソルダレジスト26は完全に硬化していることからレジスト剥離液に対して耐性を有するため、未硬化の犠牲レジスト層14のみが選択的に除去される。
【0042】
なお、犠牲レジスト層14の代わりに、前述した犠牲金属層を使用する場合は、第3配線層24(Cu層)や第3層間絶縁層32(樹脂層)などに対してエッチング選択性が得られるウェットエッチャントによって犠牲金属層(Ni層など)がエッチングされる。
【0043】
このようにして、図9に示すように、第2層間絶縁層32の凹部C内の犠牲レジスト層14が全て除去されることで、半導体チップ40がフリップチップ接続された接続パッドPを含むパッド配線部23の下に中空部Hが設けられる。これによって、半導体チップ40が接続された接続パッドPを含むパッド配線部23は中空部Hの上に配置された空中配線となる。
【0044】
以上により、本実施形態の半導体装置1が得られる。
【0045】
なお、前述した半導体装置の製造方法では、フリップチップ接続の安定性を確保するため、半導体チップ40を配線基板2の接続パッドPにフリップチップ接続した後に、犠牲レジスト層14を除去して中空部Hを設けている。パッド配線部23の長さを短くするなどして中空部H上に配置された接続パッドPがフリップチップ接続に耐えられ場合は、中空部Hを設けた後に、接続パッドPに半導体チップ40をフリップチップすることも可能である。この場合、半導体チップ40の下に充填される弾性樹脂16は省略される。
【0046】
また、本実施形態では、第3配線層24の下の第2層間絶縁層32に中空部Hを設ける例を示したが、半導体チップがフリップチップ接続される接続パッドを含むパッド配線部下の部材に中空部を設ければよい。従って、例えば、コア基板10の上に接続パッドを備えた配線層を形成する場合は、コア基板10に同様な中空部Hが設けられる。
【0047】
図9に示すように、本実施形態の半導体装置1は、配線基板2の接続パッドPに半導体チップ40がフリップチップ接続されて基本構成される。配線基板2では、コア基板10に設けられたスルーホールTHの内面にスルーホールめっき層12が形成されており、スルーホールTHの内部の孔には樹脂11が充填されている。
【0048】
コア基板10の両面側にはスルーホールめっき層12を介して相互接続された第1配線層20がそれぞれ形成されている。コア基板10の両面側の第1配線層20の上には第1層間絶縁層30を介して第2配線層22がそれぞれ形成されている。第2配線層22は第1層間絶縁層30に設けられた第1ビアホールVH1を介して第1配線層20にそれぞれ接続されている。
【0049】
さらに、コア基板10の両面側の第2配線層22の上に第2層間絶縁層32がそれぞれ形成されている。図9の斜視図を加えて参照すると、コア基板10の上面側の第2層間絶縁層32には半導体チップ40の下側にその面積より大きな面積の凹部Cが設けられている。その凹部Cはくりぬかれたように空っぽになった中空部Hとなっている。
【0050】
また、第2層間絶縁層32には、第2配線層22に到達する第2ビアホールVH2が設けられており、第2ビアビールVH2を介して第2配線層22に接続される第3配線層24が第2層間絶縁層32の上に形成されている。第3配線層24は第2層間絶縁層32上から中空部Hの上まで延在しており、接続パッドPを含むパッド配線部23が中空部Hの上に配置されている、接続パッドPは中空部Hの周縁側にペリフェラル型で並んで配置されている(図6及び図7の平面図参照)。
【0051】
このように、第3配線層24は、一端側が第2層間絶縁層32上に固定され、他端側の接続パッドPを含むパッド配線部23が中空部Hの上の空中配線として配置されている。つまり、第3配線層24は、接続パッドPを含むパッド配線部23が空中配線(可動部)となる片持ち梁構造となっている。中空部Hの深さは、例えば20〜100μmに設定される。また、パッド配線部23の長さ(凹部Cの側面から内側に向かってはみ出す長さ)は、例えば50μm〜1mmに設定される。
【0052】
なお、空中配線としてのパッド配線部23の弾性力をより強くする場合は、弾性の強いNi層でCu層の側面及び上面を被覆して第3配線層24を構成してもよい。また、電気特性に支障がなければ、第3配線層24を単層のNi層で形成してもよい。
【0053】
また、コア基板10の下面にも第2層間絶縁層32の上に第2ビアホールVH2を介して第2配線層22に接続される第3配線層24が形成されている。
【0054】
さらに、コア基板10の両面側の第3配線層24の接続パッドP上に開口部26aが設けられたソルダレジスト26がそれぞれ形成されている。コア基板10の上面側のソルダレジスト26では、中空部Hの周縁部の上にリング状のエッチング用開口部Eが設けられている。前述したように、ソルダレジスト26のエッチング用開口部Eを通して犠牲レジスト層14が除去されて中空部Hが構成される。
【0055】
そして、コア基板10の上面側の第3配線層24の接続パッドPに半導体チップ40(LSIチップ)のバンプ40aがフリップチップ接続されている。半導体チップ40と配線基板2との隙間に弾性樹脂16が充填されている。なお、弾性樹脂16は必ずしも設ける必要がない。
【0056】
本実施形態の半導体装置1では、第3配線層24はそのパッド配線部23が中空部Hの上に配置された片持ち梁構造となっており、接続パッドPは上下に動く可動部となって弾力性を有する。そして、その接続パッドPに半導体チップ40のバンプ40aがフリップチップ接続されている。
【0057】
配線基板2(樹脂やCu配線など)と半導体チップ40(シリコン)とは熱膨張係数が異なるので、半導体装置1の信頼性試験を行う際やそれを実際に使用する際に、熱がかかるとそれらの熱膨張係数の差に基づいて熱応力が発生し、半導体装置1に応力がかかることになる。
【0058】
本実施形態では、半導体装置1に応力がかかるとしてもパッド配線部23(接続パッドP)がその応力に順応してフレキシブルに可動することによってその応力を吸収することができる。さらに、半導体チップ40の下に弾性樹脂16が充填される場合は、半導チップ40にかかる応力がさらに分散される。
【0059】
このように、本実施形態の半導体装置1では、配線基板2と半導体チップ40と接続部がフレキシブル構造となっているので、両者の間で発生する熱応力を緩和することができ、半導体チップ40と配線基板2との電気接続の信頼を向上させることができる。また、半導体チップ40自体にかかる応力を緩和できるので、性能向上のために歪シリコン技術を使用したり、低誘電率の層間絶縁層を使用したりする高性能な半導体チップを実装する場合であっても、半導体チップ40が応力から防御されてその性能劣化が防止される。
【0060】
図10には、本実施形態の第1変形例の半導体装置1aが示されている。第1変形例の半導体装置1aでは、図9の半導体装置1の配線基板2に封止キャップ50が設けられており、封止キャップ50と配線基板2とによって構成される収容部Sに半導体チップ40が気密封止されている。第1変形例の半導体装置1aでは、水分によって性能が劣化しやすい半導体チップ40の信頼性を向上させることができる。
【0061】
また、図11には、本実施形態の第2変形例の半導体装置1bが示されている。第2変形例の半導体装置1bでは、動作時に発熱しやすい半導体チップ40(ロジックLSIなど)が実装され、配線基板2の上に熱伝導性の高い金属(Cuなど)からなる放熱キャップ52を設けて半導体チップ40を気密封止してもよい。この場合、半導体チップ40の上面と放熱キャップ52の内面との間に熱伝導性接着剤54が設けられる。
【0062】
これにより、半導体チップ40からの熱が熱伝導性接着剤54を介して放熱キャップ52側に伝導することにより、半導体チップ40の発熱が抑えられて半導体チップ40を安定して動作させることができる。
【0063】
また、図12には、本実施形態の第3変形例の半導体装置1cが示されている。第3変形例の半導体装置1cでは、前述した図9においてコア基板10の上面側に形成されたソルダレジスト26が省略されている。この形態の場合は、前述した犠牲レジスト層14を剥離する際に(図8)、酸素プラズマを使用するドライアッシングによって犠牲レジスト層14を除去することも可能である。
【0064】
半導体チップ40の外側のリング状の周辺部D(図12の平面図)に露出する犠牲レジスト層14の表面から内部にかけてアッシングされて中空部Hが設けられる。なお、図12の第3変形例の半導体装置1cにおいて、図10及び図11と同様に、封止キャップ50や放熱キャップ52を設けて半導体チップ40を気密封止してもよい。
【0065】
あるいは、前述した図9では個々の接続パッドP上に開口部26aがそれぞれ設けられたソルダレジスト26を形成したが、第3配線層24の複数の接続パッドPを一括して露出させる開口部が設けられたソルダレジストを形成してもよい。
【0066】
(第2の実施の形態)
図13は本発明の第2実施形態の半導体装置を示す断面図及び平面図である。
【0067】
前述した第1実施形態では、第3配線層24の接続パッドPがペリフェラル型で中空部Hの周縁側に配置されている。第2実施形態では、図12に示すように、第3配線層24の接続パッドPが中空部Hの上にエリアアレイ型で配置されている。
【0068】
つまり、複数の第3配線層24のパッド配線部23は中空部Hの周縁部だけではなく中央部まで延在しており、接続パッドPが中空部Hの上に格子状に配列されている。これにより、第1実施形態と同様に、パッド配線部23が中空部Hの上に配置されて上下に動く空中配線となっている。
【0069】
また、半導体チップ40のバンプ40aが第3配線層24の接続パッドPに対応するエリアアレイ型で配置されている。そして、半導体チップ40のバンプ40aが配線基板2の第3配線層24の接続パッドPにフリップチップ接続され、半導体チップ40の下に弾性樹脂16が充填されている。
【0070】
第2実施形態では、パッド接続部23の長さが第1実施形態より長くなってその強度が比較的弱いので、半導体チップ40を実装した後に犠牲レジスト層14を除去する方法を採用することが好ましい。
【0071】
さらに、第1実施形態の図10及び図11のように、封止キャップ50や放熱キャップ52を設けて半導体チップ40を気密封止してもよい。
【0072】
第2実施形態は第1実施形態と同様な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は従来技術の半導体装置を示す断面図である。
【図2】図2(a)〜(c)は本発明の第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図(その1)である。
【図3】図3(a)〜(c)は本発明の第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図(その2)である。
【図4】図4(a)及び(b)は本発明の第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図(その3)である。
【図5】図5は本発明の第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図及び平面図(その4)である。
【図6】図6は本発明の第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図及び平面図(その5)である。
【図7】図7は本発明の第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図(その6)である。
【図8】図8は本発明の第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図(その7)である。
【図9】図9は本発明の第1実施形態の半導体装置を示す断面図及び斜視図である。
【図10】図10は本発明の第1実施形態の第1変形例の半導体装置を示す断面図である。
【図11】図11は本発明の第1実施形態の第2変形例の半導体装置を示す断面図である。
【図12】図12は本発明の第1実施形態の第3変形例の半導体装置を示す断面図及び平面図である。
【図13】図13は本発明の第2実施形態の半導体装置を示す断面図及び平面図である。
【符号の説明】
【0074】
1…半導体装置、2…配線基板、10…コア基板、11…樹脂、12…スルーホールめっき層、14…犠牲レジスト層、16…弾性樹脂、20,22,24…配線層、23…パッド配線部、24a…シード層、24b…金属めっき層、25…めっきレジスト、25a,26a…開口部、26…ソルダレジスト、30,32…層間絶縁層、40…半導体チップ、40a…バンプ、50…封止キャップ、52…放熱キャップ、C…凹部、E…エッチング用開口部、P…接続パッド、TH…スルーホール、VH1,VH2…ビアホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップがフリップチップ接続される接続パッドを含むパッド配線部を備えた配線層が表層側に設けられた配線基板であって、
前記接続パッドを含むパッド配線部の下に中空部を設けることにより、前記配線層は前記パッド配線部が空中配線となる片持ち梁構造となっていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記配線層は絶縁層の上に形成されており、前記中空部は前記絶縁層に設けられ、かつ前記中空部の面積は前記半導体チップの面積より大きく設定されることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の配線基板と、
前記接続パッドにフリップチップ接続された前記半導体チップとを有することを特徴とする半導体装置。
【請求項4】
前記半導体チップの下に弾性樹脂が充填されていることを特徴とする請求項3に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記配線基板の上に前記半導体チップを気密封止するキャップが設けられていることを特徴とする請求項3又は4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記キャップは金属からなる放熱キャップであり、前記半導体チップの上面は熱伝導性接着剤によって前記放熱キャップの内面に接合されていることを特徴とする請求項4に記載の半導体装置。
【請求項7】
配線基板の表層側の配線層の接続パッドに半導体チップがフリップチップ接続された半導体装置の製造方法であって、
上面に前記配線層が形成される部材に凹部を形成する工程と、
前記凹部に犠牲層を充填する工程と、
前記部材の上から前記犠牲層に延在し、前記犠牲層の上に前記接続パッドを含むパッド配線部が配置されるように前記配線層を形成する工程と、
前記接続パッドに前記半導体チップをフリップチップ接続する工程と、
前記半導体チップをフリップチップ接続する工程の前又は後に、前記絶縁層及び前記配線層に対して選択的に前記犠牲層を除去することにより、前記パッド配線部の下に中空部を設ける工程とを有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記犠牲層は、レジスト層又は金属層であることを特徴とする請求項7に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記半導体チップをフリップチップ接続する工程の後であって、前記中空部を設ける工程の前に、前記半導体チップの下に弾性樹脂を充填する工程をさらに有することを特徴とする請求項7又は8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
中空部を設ける工程の後に、前記配線基板にキャップを設けることにより、前記半導体チップを気密封止する工程をさらに有することを特徴とする請求項7又は8に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−117607(P2009−117607A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−288890(P2007−288890)
【出願日】平成19年11月6日(2007.11.6)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】