説明

配線基板の製造方法

【課題】損傷の少ない、良好な導電率となる導電膜が形成される配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】基板101上の導電膜形成予定位置Pに、有機材料がコーティングされた導電性材料を分散溶媒中に分散させてなる金属微粒子分散インク102を塗布する。
基板101に塗布された金属微粒子分散インク102の分散溶媒を揮発させて導電性材料の堆積膜102Aを形成する。加熱により発泡する発泡カプセルを混合した保護膜103で堆積膜102Aを覆い、除去対象物Eをエッチングする際に堆積膜102Aを保護する。除去対象物Eをエッチング後、基板101を焼成して保護膜103の発泡カプセルを発泡させて多数の通気孔105を形成すると共に、堆積膜102Aの導電性材料に含まれる有機材料のガスを通気孔105を介して放出させる。このように堆積膜102Aからガスを放出させて導電膜102Bを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性材料を含む溶液を用いて配線や電極等の導電膜を形成する配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、配線基板は、導電膜をパターニングすることにより、配線あるいは電極等が形成されることによって作製される。近年、多くのデバイス、特に、液体吐出ヘッドにおいて高精細化への開発が盛んになってきている。それに伴い配線基板の小型化、高密度化が求められている。そのため、高精細なパターニング法としては高精度の開口部を有するフォトマスクを利用したフォトリソグラフィが一般に適用されている。しかし、この方法は、パターン毎に個別のマスクが必要である。さらに、成膜工程、レジストパターニング工程、エッチング工程、剥離工程など様々な工程が必要であり生産性に問題がある。また、それに伴い材料等の使用効率も低い等の製造コストの面でも課題がある。
【0003】
また、配線基板においては配線を高密度に配置する方法として多層化技術が一般に用いられている。多層化配線技術の一つに基板上下面の層間を電気的に接続する手法がある。基板の上下面を電気的に接続する方法として、一般に基板に微細穴を形成し、この微細穴に導電層を形成することにより基板上下面を電気的に接続する方法がある。微細穴に導電層を形成する方法としては、微細穴のアスペクト比が比較的小さい場合には、スパッタ法や蒸着法等のドライプロセスによって細孔内に導電層を形成することが可能であり、基板上下面の電気的な導通をとることが可能である。しかし、微細穴のアスペクト比が高い場合には、微細穴の下面側の側面には上記のドライプロセスでは導電性を確保するための十分な導電層を形成することが極めて困難である。そこで、ドライプロセスにより微細穴内面にシード層を形成した後、メッキにより導電層を成長させるという方法が取られている。特に、スパッタ法など指向性のある成膜法により微細穴の内面にシード層を形成する方法としては、微細穴の形状に応じた入射角度によって成膜粒子を入射させることになる。しかし、メッキにより高アスペクト比の微細穴に対して導電層を形成するには、微細穴の開口縁部付近の電解集中及びそれに起因する不均一な層析出を抑制させる必要がある。そのためには、析出を抑制する添加剤を加える、メッキ処理時の投入電流を低くするなどの対策がとられるが、それらは逆に処理時間の長時間化を引き起こしてしまい、生産性に問題があった。
【0004】
そこで、高アスペクト比の微細穴を有する配線基板に対しては、インクジェット法等により導電性材料を直接微細穴に塗布して配線を形成する手法がとられている。インクジェット法による配線形成は、インクジェット装置を用いて分散溶媒中に分散させた導電性材料を含む溶液を基板上の目的箇所に塗布する。この導電性材料は、分散溶媒中に分散するように金属に有機材料がコーティングされて形成されている。分散溶媒を揮発させて形成される導電性材料からなる堆積膜には、有機材料が残った状態である。この有機材料が残留していると膜の電気抵抗が高くなるため、基板を焼成して有機材料を揮発させる必要がある。したがって、基板を焼成することにより、電気抵抗の低い導電膜が形成される。このインクジェット装置を用いた配線形成は、フォトマスク等を利用せず直接パターニングできるため、生産効率の面で非常に優位である。
【0005】
ところで、インクジェット法による配線の形成に用いられる導電性材料を含む溶液では、形成される堆積膜が酸化されやすく、工程途中でエッチングに用いられる薬品に晒されると劣化して高抵抗化してしまうことがある。このような工程途中で金属配線を変質から守るために、工程途中で保護膜を形成して金属配線を保護する技術が提案されている(特許文献1参照)。この際に特殊なガスを用いて、金属配線の露出した部分を変質させて保護膜を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−86285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、堆積膜を構成している導電性材料は、有機材料でコーティングされているため、導電膜を形成するためには、堆積膜中の有機材料を焼成により揮発さなければならない。ところが、堆積膜が保護膜で覆われていると、ガス化した有機材料が保護膜によって導電膜の形成位置に閉じ込められ、放出できなくなってしまう。このようにガスが導電膜の形成位置に閉じ込められると、形成される導電膜が発生したガスで損傷し、導電膜の導電率が低下する要因となっていた。
【0008】
そこで、本発明は、損傷の少ない、良好な導電率となる導電膜が形成される配線基板の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、エッチングする除去対象物が形成された基板に導電膜を形成する配線基板の製造方法において、前記基板の導電膜形成予定位置に、導電性材料を分散溶媒中に分散させてなる溶液を塗布する塗布工程と、前記基板に塗布された前記溶液の前記分散溶媒を揮発させて前記導電性材料の堆積膜を形成する揮発工程と、加熱により発泡する発泡カプセルを混合した保護膜で前記堆積膜を覆い、前記除去対象物をエッチングする際に前記堆積膜を保護する保護工程と、前記除去対象物をエッチング後、前記基板を焼成して前記保護膜の発泡カプセルを発泡させると共に、前記堆積膜より生じるガスを放出させて前記導電膜を形成する焼成工程と、を備えたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保護膜には加熱により発泡する発泡カプセルが混合されているので、基板を焼成した際に、発泡カプセルが発泡して多数の通気孔が形成され、発生したガスが通気孔を介して放出される。したがって、損傷の少ない、良好な導電率となる導電膜が形成される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態に係る配線基板の製造工程の概略を示す説明図であり、(a)は塗布工程、(b)は保護工程、(c)はエッチング工程、(d)は焼成工程を示す図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る配線基板の製造工程の概略を示す説明図であり、(a)は基板に微細穴が形成されている状態を示す図、(b)は電極形成工程、(c)は塗布工程を示す図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る配線基板の製造工程の概略を示す説明図であり、(a)は揮発工程、(b)は保護工程、(c)は焼成工程を示す図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係る配線基板の製造工程の概略を示す説明図であり、(a)はヒータボード基板を示す図、(b)は微細穴形成工程、(c)は流路形成工程、(d)は、枠体形成工程を示す図である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る配線基板の製造工程の概略を示す説明図であり、(a)は塗布工程及び揮発工程、(b)は保護工程、(c)はエッチング工程、(d)は焼成工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に係る配線基板の製造工程の概略を示す説明図である。配線基板は、基板101に形成された配線や電極等の導電膜及び不図示の機能素子等を有して構成される。本第1実施形態では、基板101に導電膜を形成する工程について詳細に説明する。基板101は、例えばガラス基板、シリコン基板、ガラスエポキシ基板、樹脂基板等である。
【0014】
まず、図1(a)に示すように、基板101上の平坦面101aの導電膜形成予定位置Pに、有機材料がコーティングされた導電性材料を分散溶媒中に分散させてなる溶液(以下、「金属微粒子分散インク」という)102を塗布する(塗布工程)。導電性材料は、銀、金、銅、パラジウムなどの金属微粒子である。この金属微粒子が分散溶媒中で分散するように金属微粒子に高分子の有機材料がコーティングされている。本第1実施形態では、金属微粒子分散インク102は、スクリーン印刷法又はインクジェット法により基板101に塗布される。
【0015】
次に、基板101上の金属微粒子分散インク102に含まれる分散溶媒を揮発させる(揮発工程)。これにより、基板101には、有機材料でコーティングされた導電性材料からなる堆積膜102Aが形成される。この揮発工程では、堆積膜102Aが容易に崩れないように、基板101を例えば100℃で低温焼成して分散溶媒を揮発させてもよい。
【0016】
ところで、基板101には、導電膜とは他に、半導体素子や中空部材等の不図示の他の部材が形成されることがある。その他の部材を形成する際にレジスト等が基板101に形成され、最終的にこのレジスト等の除去対象物Eをエッチングするエッチング工程が実施される。
【0017】
そこで、本第1実施形態では、図1(b)に示すように、堆積膜102Aがエッチングに使用する薬品に晒されないように、堆積膜102Aを保護膜103で覆い、除去対象物Eをエッチングする際に堆積膜102Aを保護する(保護工程)。保護膜103は、エッチングに使用する薬品ではエッチングされない材料で構成されている。また、保護膜103は、硬化性樹脂と加熱により発泡する発泡カプセルとを混合し、この混合物を堆積膜102A上に塗布し、硬化性樹脂を硬化させて形成される。この保護膜103となる液状の混合物は、印刷法やインクジェット法で堆積膜102A上に塗布される。硬化性樹脂は、光の照射により光硬化する光硬化性樹脂であり、例えばUV硬化性アクリルやエポキシなどが適用できる。発泡カプセルが混合された混合物が堆積膜102A上に塗布された後、光(例えばUV光)が照射される。これにより、堆積膜102Aが保護膜103によりエッチングに使用する薬品から保護される。なお、保護膜103は、堆積膜102Aの部分だけを覆うように形成される。したがって、除去対象物Eは保護膜103では覆われていない。次に、図1(c)に示すように、基板上の除去対象物Eが薬品Cによりエッチングされる(エッチング工程)。
【0018】
ところで、この堆積膜102Aは、有機材料がコーティングされた導電性材料が堆積して形成されているので、有機材料を含んでおり、電気抵抗が高く、電気伝導度が低い。従って、焼成により有機材料を揮発させる必要がある。本第1実施形態では、除去対象物Eをエッチング後、基板101を焼成して保護膜103の発泡カプセルを発泡させて多数の通気孔105を形成すると共に、堆積膜102Aの導電性材料に含まれる有機材料のガスGを通気孔105を介して放出させる(焼成工程)。この焼成工程では、上述した揮発工程における低温焼成時の温度よりも高い温度(例えば220℃)で高温焼成される。この焼成工程により、保護膜103中の発泡カプセルが膨張して膜が破られ、堆積膜102A中に含まれる有機材料がガスGとなり、通気孔105を介して外気に放出され、導電性を有する導電膜102Bが形成される。なお、この後に、さらに別の膜を堆積して導電膜102Bを保護し直してもよい。なお、ここでは有機材料がコーティングされた導電性材料を例に説明したが、錯体など有機材料以外の物質からなる導電性材料であっても良い。
【0019】
以上、本第1実施形態によれば、保護膜103には加熱により発泡する発泡カプセルが混合されているので、基板101を焼成した際に、発泡カプセルが発泡して多数の通気孔105が形成され、発生したガスGが通気孔105を介して放出される。したがって、発生したガスGが保護膜103によって導電膜の形成位置に閉じ込められるのを防止することができ、損傷の少ない、良好な導電率となる導電膜102Bが形成される。
【0020】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る配線基板の製造工程について説明する。上記第1実施形態では、導電膜を基板の平坦面に形成する場合について説明したが、本第2実施形態では、導電膜をコンタクトホールである微細穴に形成する場合について説明する。図2及び図3は、本発明の第2実施形態に係る配線基板の製造工程の概略を示す説明図である。配線基板は、基板201に形成された配線や電極等の導電膜及び不図示の機能素子等を有して構成される。本第2実施形態では、基板201に導電膜を形成する工程について詳細に説明する。基板201は、例えばシリコン基板等である。
【0021】
まず、図2(a)に示すように、基板201には、コンタクトホールである微細穴202が形成され、微細穴202の底部が第1の電極203で形成されている。なお、基板201の表面には、絶縁膜である熱酸化膜204が形成されている。
【0022】
次に、図2(b)に示すように、微細穴202の縁部近傍及び縁部に、第2の電極205,206が形成される(電極形成工程)。次に、図2(c)に示すように、基板201上の導電膜形成予定位置である微細穴202の側壁部202aに、有機材料がコーティングされた導電性材料を分散溶媒中に分散させてなる金属微粒子分散インク208を塗布する(塗布工程)。本第2実施形態では、金属微粒子分散インク208は液体吐出ヘッド207を用いてインクジェット法により微細穴202の側壁部202aに吐出される。
【0023】
この側壁部202aに吐出された金属微粒子分散インク208は、微細穴202内で濡れ広がり、第1の電極203と第2の電極206とに跨って接触する。次に、基板201に塗布された金属微粒子分散インク208に含まれる分散溶媒を揮発させる(揮発工程)。これにより、基板201の微細穴202には、図3(a)に示すように、有機材料でコーティングされた導電性材料からなる堆積膜209Aが形成される。この揮発工程では、堆積膜209Aが容易に崩れないように、基板201を例えば100℃で低温焼成して分散溶媒を揮発させてもよい。
【0024】
次いで、本第2実施形態では、図3(b)に示すように、堆積膜209Aがエッチングに使用する薬品に晒されないように、堆積膜209Aを保護膜210で覆い、除去対象物をエッチングする際に堆積膜209Aを保護する(保護工程)。保護膜210は、エッチングに使用する薬品ではエッチングされない材料で構成されている。また、保護膜210は、硬化性樹脂と加熱により発泡する発泡カプセルとを混合し、この混合物を堆積膜209A上に塗布し、硬化性樹脂を硬化させて形成される。この保護膜210となる液状の混合物は、インクジェット法で堆積膜209A上に塗布される。硬化性樹脂は、光の照射により光硬化する光硬化性樹脂であり、例えばUV硬化性アクリルやエポキシなどが適用できる。発泡カプセルが混合された混合物が堆積膜209A上に塗布された後、光(例えばUV光)が照射される。これにより、堆積膜209Aが保護膜210によりエッチングに使用する薬品から保護される。なお、保護膜210は、堆積膜209Aの部分だけを覆うように形成される。したがって、不図示の除去対象物は保護膜210では覆われていない。この状態で、基板上の除去対象物が薬品によりエッチングされる。
【0025】
次に、焼成工程について、図3(c)を参照して説明する。本第2実施形態では、除去対象物をエッチング後、基板201を焼成して保護膜210の発泡カプセルを発泡させて多数の通気孔211を形成すると共に、堆積膜209Aの導電性材料に含まれる有機材料のガスGを通気孔211を介して放出させる。この焼成工程では、上述した揮発工程における低温焼成時の温度よりも高い温度(例えば220℃)で高温焼成される。この焼成工程により、保護膜210中の発泡カプセルが膨張して膜が破られ、堆積膜209A中に含まれる有機材料がガスGとなり、通気孔211を介して外気に放出され、導電性を有する導電膜209Bが形成される。この導電膜209Bは、第1の電極203と第2の電極205,206とを電気的に接続する配線となる。なお、この後に、さらに別の膜を堆積して導電膜209Bを保護し直してもよい。
【0026】
以上、本第2実施形態によれば、保護膜210には加熱により発泡する発泡カプセルが混合されているので、基板201を焼成した際に、発泡カプセルが発泡して多数の通気孔211が形成され、発生したガスGが通気孔211を介して放出される。したがって、発生したガスGが保護膜210によって導電膜の形成位置に閉じ込められるのを防止することができ、損傷の少ない、良好な導電率となる導電膜209Bが形成される。
【0027】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る配線基板の製造工程について説明する。図4及び図5は、本発明の第3実施形態に係る配線基板の製造工程の概略を示す説明図である。本第3実施形態では、基板301は、液体を吐出させる液体吐出ヘッドに用いられる液体吐出ヘッド用基板である。基板301は、例えばシリコン基板である。
【0028】
図4(a)に示すように、基板301には、一方の面に第1の電極303が形成され、他方の面に第2の電極305が形成される。第1の電極303上には層間絶縁膜307が形成され、層間絶縁膜307上には、液体の吐出に必要な熱エネルギーを液体に付与する電気熱変換体(ヒータ)309が形成されている。電気熱変換体309と第1の電極303とは、層間絶縁膜307に形成したコンタクトホール307aを介して配線311で電気的に接続されている。電気熱変換体309及び配線311上には、SiN膜313が形成されており、SiN膜313上には、電気熱変換体309に相対する位置に、耐キャビテーション層315が形成されている。これにより、ヒータボード基板が形成されている。
【0029】
次に、図4(b)に示すように、電気熱変換体309に電気的に接続された第1の電極303と、基板301の表面に形成された第2の電極305とを電気的に接続するために、基板301に、第1の電極303を底部とする微細穴317を形成する。この微細穴形成工程で形成される微細穴317は、コンタクトホールとして機能する。
【0030】
次に、図4(c)に示すように、電気熱変換体309に対応する位置に液体(インク)の吐出口に連通する液体の流路を形成するために、基板301上の流路形成予定位置Pに流路の型材319を形成する(流路形成工程)。この型材319は、ポジ型のレジストからなり、不図示の端面が外部に露出されている。次に、図4(d)に示すように、型材319を覆うように吐出口321aが形成された硬化性樹脂の枠体321を基板301に形成する(枠体形成工程)。
【0031】
次に、図5(a)に示すように、微細穴317の側壁部317aに、有機材料がコーティングされた導電性材料を含む溶液をインクジェット法により塗布し(塗布工程)、溶液に含まれる分散溶媒を揮発させる(揮発工程)。これにより、基板301の微細穴317には、有機材料でコーティングされた導電性材料からなる堆積膜323Aが形成される。この揮発工程では、堆積膜323Aが容易に崩れないように、基板301を例えば100℃で低温焼成して分散溶媒を揮発させてもよい。
【0032】
次に、図5(b)に示すように、堆積膜323Aがエッチングに使用する薬品に晒されないように、堆積膜323Aを保護膜325で覆い、除去対象物である型材319をエッチングする際に堆積膜323Aを保護する(保護工程)。保護膜325は、エッチングに使用する薬品ではエッチングされない材料で構成されている。また、保護膜325は、硬化性樹脂と加熱により発泡する発泡カプセルとを混合し、この混合物を堆積膜323A上に塗布し、硬化性樹脂を硬化させて形成される。この保護膜325となる液状の混合物は、インクジェット法で堆積膜323A上に塗布される。硬化性樹脂は、光の照射により光硬化する光硬化性樹脂であり、例えばUV硬化性アクリルやエポキシなどが適用できる。発泡カプセルが混合された混合物が堆積膜323A上に塗布された後、光(例えばUV光)が照射される。これにより、堆積膜323Aが保護膜325によりエッチングに使用する薬品から保護される。なお、保護膜325は、堆積膜323Aの部分だけを覆うように形成される。したがって、除去対象物である型材319は保護膜325では覆われていない。次に、図5(c)に示すように、基板301上の型材319が薬品によりエッチングされ、インクの流路327が形成される(エッチング工程)。
【0033】
次に焼成工程について図5(d)を参照して説明する。本第3実施形態では、型材319をエッチング後、基板301を焼成して保護膜325の発泡カプセルを発泡させて多数の通気孔329を形成すると共に、堆積膜323Aの導電性材料に含まれる有機材料のガスを通気孔329を介して放出させる。この焼成工程では、上述した揮発工程における低温焼成時の温度よりも高い温度(例えば220℃)で高温焼成される。この焼成工程により、保護膜325中の発泡カプセルが膨張して膜が破られ、堆積膜323A中に含まれる有機材料がガスとなり、通気孔329を介して外気に放出され、導電性を有する導電膜323Bが形成される。この導電膜323Bは、第1の電極303と第2の電極305とを電気的に接続する配線となる。
【0034】
以上、本第3実施形態によれば、保護膜325には加熱により発泡する発泡カプセルが混合されているので、基板301を焼成した際に、発泡カプセルが発泡して多数の通気孔329が形成され、発生したガスが通気孔329を介して放出される。したがって、発生したガスが保護膜325によって導電膜の形成位置に閉じ込められるのを防止することができ、損傷の少ない、良好な導電率となる導電膜323Bが形成される。
【実施例】
【0035】
[実施例1]
第1実施形態に相当する実施例1について図1を参照しながら説明する。基板101は、厚さ1.1mmのガラス基板である。図1(a)のように、スクリーン印刷法で銀粒子分散インク(藤倉化成ドータイト)を配線パターンとなるように塗布した。パターン形状は、幅80μm、長さ10mm、厚さは10μmとした。さらに、パターンが崩れないように、100℃で10分間焼成し、堆積膜102Aを形成した。
【0036】
次に、発泡カプセルを有する混合物の液体を、スクリーン印刷法で堆積膜102A上に塗布した。発泡カプセルは、平均粒径15μmの松本油脂製薬製マイクロカプセルF−103KD(加熱発泡時、平均粒径60μm)とした。また、光硬化性樹脂は、UV硬化性エポキシ樹DIC製DAICURE SSD GLOSS VARNISHとした。そして、発泡カプセルを光硬化性樹脂に7重量%添加した。なお、パターン形状は、幅1mm、長さ12mm、厚さは10μmとした。次に、UV光を20mJ照射して光硬化させ、保護膜103を形成した。次に、エッチングの薬品である乳酸メチルに、基板101を1時間浸漬した。最後に基板101を220℃で1時間焼成した。この際、保護膜103中の発泡剤が膨張して膜を破り、銀粒子分散配線から発生する有機ガスを放出した。この導電膜102Bである配線に四端針状のプローバーを当てて測定したところ、この配線の抵抗率は5×10−6Ωcmであった。
【0037】
[比較例]
実施例1と同様の金属粒子インクのパターンを形成した上に、実施例1と同じエポキシ樹脂にマイクロカプセルを添加せずに塗って、後は実施例1と同様の工程で硬化焼成した。この配線に四端針状のプローバーを当てて測定したところ、この配線の抵抗率は測定装置の測定レンジ外の大きさであった。
【0038】
[実施例2]
次に、第1実施形態に相当する、上記実施例1とは別の実施例2について図1を参照しながら説明する。基板101は、旭硝子製サイトップで表面撥水処理をした、厚さ1.1mmのガラス基板である。図1(a)のように、Ag含有量が40重量%、溶媒がウンデカンのAg粒子分散インクを圧電式インクジェットで、幅300μm、長さ10mm、厚さは0.5μmの配線パターンとなるように塗布した。
【0039】
次に、発泡カプセルを有する混合物の液体を、インクジェット法で堆積膜102A上に塗布した。発泡カプセルは、平均粒径5μmの松本油脂製薬製マイクロカプセルF−100SSD(加熱発泡すると平均粒径40μmになる)を7μmのフィルターで粒径を選別した。光硬化性樹脂は、DIC製UV硬化樹脂ダイキュアクリアとした。そして、発泡カプセルを光硬化性樹脂に5重量%添加した。この樹脂を前述したのと同様のインクジェット法で、Ag粒子分散インクパターンの上に描画した。膜厚は1μmであった。更にUV光を20mJ照射して硬化させ、保護膜103を形成した。ここで、乳酸メチルに1時間浸漬した。最後に220℃で1時間焼成した。この際、保護膜103中の発泡カプセルが膨張して膜を破り銀粒子分散配線から発生する有機ガスを放出した。この導電膜102Bである配線に四端針状のプローバーを当てて測定したところ、この配線の抵抗率は2×10−6Ωcmであった。
【0040】
[実施例3]
第2実施形態に相当する実施例3について図2及び図3を参照しながら説明する。基板201は、シリコン基板である。図2(a)のように微細穴202を基板201に形成した。微細穴202の直径は60μm、深さ200μmであり、微細穴202の底部はシリコン基板の反対面上に形成された第1の電極203であるAlパッド電極の裏面となっている。微細穴202の形成には、ICP(Inductively Coupled Plasma)Etching法を用いた。第1の電極203は、アルミニウムを主成分にとするシリコンとの合金からなっており、スパッタ法で400nm堆積しパターニングした。また、微細穴202の内面には熱酸化膜204を1μm形成した。この微細穴202の数は100個とした。次に、図2(b)を用いて、上面電極である第2の電極205を説明する。第2の電極205はTi層とAu層から構成される。このTi層は、その上に形成するAu層と酸化膜との密着性を確保するために付けた。Ti層200nmとAu層100nmはイオンプレーティング法によって形成した。堆積時に基板201を30度傾けて、微細穴202の側壁部に電極206が回り込むようにした。
【0041】
次にインクについて説明する。Ag含有量が40重量%、溶媒がウンデカンのAg粒子分散インクである金属微粒子分散インク208を、図2(c)のように圧電式インクジェット充填し、微細穴202に150pl打ち込んだ。このインクは、図3(a)のように、濡れ広がり、この後、100℃で10分間焼成し、堆積膜209Aが形成された。次に、図3(b)のように、発泡カプセルを有する混合物の液体を、インクジェット法で堆積膜209A上に塗布した。発泡カプセルは、平均粒径5μmの松本油脂製薬製マイクロカプセルF−100SSDを7mのフィルターで粒径を選別した。光硬化性樹脂は、DIC製UV硬化樹脂ダイキュアクリアとした。そして、発泡カプセルを光硬化性樹脂に5重量%添加した。この樹脂を前述したのと同様のインクジェット法で微細穴202に300pl打ち込んだ。そして、堆積膜209Aを覆うように濡れ広がった。更にN雰囲気下でUV光を10mJ照射して硬化させた保護膜210を形成した。ここで、乳酸メチルに1時間浸漬した。最後に150℃で1時間焼成した。この際、図3(c)のように保護膜210中の発泡カプセルが膨張して膜を破り銀粒子分散配線から発生する有機ガスを放出した。このコンタクトホールである微細穴202の基板表裏にプローバーを当てて測定したところ、測定点100カ所全てで抵抗は3Ω以下であった。
【0042】
[実施例4]
第3実施形態に相当する実施例4について図4及び図5を参照しながら説明する。
図4(a)の基板301は、厚さ300μmのシリコン基板である。基板301上には、液体吐出エネルギー発生素子としての電気熱変換体(材質HfB2)309と配線311と不図示の駆動回路を形成した。配線311は、第一の電極303と絶縁膜307に形成されたコンタクトホールで導通している。さらに、図4(b)のように、第1の電極303から微細穴317を介して基板裏面のAuのパッド電極である第2の電極305を配置した。微細穴317は、スルーホールで、IPC方式で、100μmΦに加工されており、内部には有機絶縁膜を形成した。
【0043】
この基板301上に、ポジ型レジストOZATECPL−268(商品名:ヘキストジャパン(株)製)から成る乾燥後厚さ25μm相当の感光層をスピンナーで2700rpmの回転数で40秒間回転塗布した。この感光層に図4(c)の流路形成予定位置Pに相当するパターンのマスクを重ね、液流路形成予定位置Pを除く部分に1000mJ/cmの紫外線照射を行った。この場合、液流路の長さは1mmであり、ノズル密度は16本/mmでノズル数は128本であった。次に1%の苛性ソーダ水溶液にてスプレー現像を行い、電気熱変換体309を含む基板上の液流路形成予定位置Pに厚さ約25μmのレリーフの固体層である型材319を形成した。次に、型材319の除去性を高めるため、5000mJ/cmの量の紫外線を照射した。
【0044】
次に、以下に示す組成から成る硬化性材料の枠体321を図4(d)のように積層した。
アデカオプトマーKRM−4210(エポキシ樹脂)[商品名:旭電化工業(株)製]
エポライト3002(エポキシ樹脂)[商品名:共栄社油脂化学工業(株)製]
アデカオプトマーSP−170(光重合開始剤)[商品名:旭電化工業(株)製]
【0045】
積層の方法としては、アプリケーターを用いて50μmの厚さに塗布した。これに2000mJ/cmの紫外線を照射し硬化した後、オリフィスを形成する位置にて切断しポジ型レジストから成る型材319の端面を露出させた。
【0046】
ここで、実施例2で述べたのと同様の方法で微細穴317に、Ag粒子分散インクをインクジェットで打ち込み、乾燥させて、図5(a)のように堆積膜323Aを形成した。更に図5(b)のように発泡剤入り保護膜325を打ち込んで形成した。該端面を露出させた基板301を乳酸メチルに浸漬し、超音波洗浄槽中にて10分間洗浄し、140℃で乾燥させた。図5(c)のように型材319が除去されて流路327とインクの吐出口321aが形成された。最後に裏面のAu電極である第2の電極305を不図示の外部回路を接続した。このようにして作成した20個の吐出口を持った液体吐出ヘッドは、裏面に取り出し配線を設けたので通常より幅が狭くでき、印字テストの結果、全て正常に動作した。
【符号の説明】
【0047】
101 基板
102 金属微粒子分散インク(溶液)
102A 堆積膜
102B 導電膜
103 保護膜
105 通気孔
201 基板
202 微細穴
202a 側壁部
203 第1の電極
205,206 第2の電極
208 金属微粒子分散インク(溶液)
209A 堆積膜
209B 導電膜
210 保護膜
211 通気孔
219 型材(除去対象物)
301 基板
303 第1の電極
305 第2の電極
309 電気熱変換体
317 微細穴
317a 側壁部
319 型材(除去対象物)
323A 堆積膜
323B 導電膜
325 保護膜
329 通気孔
E 除去対象物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチングする除去対象物が形成された基板に導電膜を形成する配線基板の製造方法において、
前記基板の導電膜形成予定位置に、導電性材料を分散溶媒中に分散させてなる溶液を塗布する塗布工程と、
前記基板に塗布された前記溶液の前記分散溶媒を揮発させて前記導電性材料の堆積膜を形成する揮発工程と、
加熱により発泡する発泡カプセルを混合した保護膜で前記堆積膜を覆い、前記除去対象物をエッチングする際に前記堆積膜を保護する保護工程と、
前記除去対象物をエッチング後、前記基板を焼成して前記保護膜の発泡カプセルを発泡させると共に、前記堆積膜より生じるガスを放出させて前記導電膜を形成する焼成工程と、を備えたことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記基板には、底部を第1の電極とする微細穴と、前記微細穴の近傍に配置された第2の電極とが形成され、
前記塗布工程では、前記溶液を前記微細穴の側壁部に吐出し、
前記焼成工程では、前記導電膜として、前記第1の電極と前記第2の電極とを電気的に接続する配線を形成することを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記保護工程では、前記発泡カプセルを混合した光硬化性樹脂を光硬化させて前記保護膜が形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記基板は、液体を吐出する液体吐出ヘッドに用いられる液体吐出ヘッド用基板であり、
前記液体吐出ヘッド用基板には、液体の吐出に必要な熱エネルギーを液体に付与する電気熱変換体が形成されており、
前記除去対象物は、前記電気熱変換体に相対する位置に液体の流路を形成するための型材であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の配線基板の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−222755(P2011−222755A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90428(P2010−90428)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】