説明

配線基板の製造方法

【課題】ボンディングパッドの変色の発生を抑制することのできる配線基板の製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂基板10の上面にフリップチップ接続用の接続パッド13となる第1パッド13Aと、ボンディングパッド14となる第2パッド14Aとを形成し、第2パッド14Aの表面にめっき14Bを形成し、第1パッド13Aの表面にのみ選択的に粘着層15を被着する。続いて、粘着層15にはんだ粉16を付着し、樹脂基板10の上面全面にハロゲン濃度が0.15wt%以下のフラックス40を塗布し、はんだ粉16をリフローにより溶融して第1パッド13Aにはんだ13Bを被着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図8は、フリップチップ接続による半導体素子71と、ワイヤボンディング接続による半導体素子72とを一つの基板73に搭載した半導体装置70を示している。この半導体装置70では、基板73の上面に形成されたフリップチップ接続用の接続パッド74に半導体素子71のバンプ71Aがフリップチップ接続され、半導体素子71に積み重ねられた半導体素子72の上面に形成された電極72Aと基板73の上面に形成されたボンディングパッド75とがワイヤ76を介してワイヤボンディング接続されている。なお、半導体装置70では、半導体素子71,72等が封止樹脂77によって封止されている。
【0003】
このように、フリップチップ接続とワイヤボンディング接続とを利用して半導体素子71,72を基板73に搭載する方法は、半導体装置70を小型化する点で有効である。但し、フリップチップ接続とワイヤボンディング接続という異なる接続形態で半導体素子71,72を搭載するため、基板73にはフリップチップ接続用の接続パッド74とワイヤボンディング接続用のボンディングパッド75を形成する必要がある。
【0004】
ところで、接続パッド74には半導体素子71のバンプ71Aが接合されるのに対し、ボンディングパッド75にはワイヤ76がボンディングされるため、各々のパッドには異なる表面処理が施される。具体的には、接続パッド74ではパッドの表面にはんだが被着されるのに対し、ボンディングパッド75ではパッドの表面にボンディング用のめっき(たとえば、ニッケルめっきと金めっき)が施される。このため、基板73の表面に配線パターン(図示略)と、接続パッド74及びボンディングパッド75となるパッドを形成した後、まず、ボンディングパッド75となるパッドにめっきを施す。その後、接続パッド74となるパッドにはんだを被着するようにしている。この接続パッド74となるパッドにはんだを被着する方法について以下に説明する。
【0005】
まず、ボンディングパッド75にはんだが付着されないようにボンディングパッド75をマスキングテープで覆って、接続パッド74となるパッドの表面を覆う粘着層を形成する。その後、この粘着層の表面のみにはんだ粉を付着させる。なお、図9は、基板73にフリップチップ接続用の接続パッド74となるパッド74Aとワイヤボンディング接続用のボンディングパッド75とが形成されている平面状態、特にパッド74Aを覆う粘着層にはんだ粉78が付着された状態を示している。
【0006】
続いて、上記マスキングテープを除去し、図10に示すように、スプレーノズル80でフラックス79を基板73全面に塗布する。次いで、リフローしてはんだ粉78(図9参照)を溶融して、図11に示すように、パッド74Aの表面を覆うはんだ74Bを被着させる。その後、フラックスを除去することによって、接続パッド74と、ボンディングパッド75とが形成された配線基板を得ることができる。
【0007】
なお、上記従来技術に関連する先行技術として、特許文献1,2が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−004602号公報
【特許文献2】特開平07−007244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上述した製造方法では、リフローの前工程において、はんだ74B表面の酸化防止やはんだ74Bとパッド74Aとの接合性を良好にすることを目的にフラックス79が塗布されている。このとき、はんだ粉部分のみに選択的にフラックス79を塗布することが困難であるため、上述したように、基板73全面にフラックス79を塗布するようにしている。このため、ボンディングパッド75のめっき表面にもフラックス79が塗布されることになる。これに起因して、フラックス79の中に溶けた錫イオンが、ボンディングパッド75のめっき(Auめっき)上に再析出し、ボンディングパッド75が変色することが本発明者の鋭意研究によって明らかにされた。さらに、このボンディングパッド75の変色によって、後工程のワイヤボンディングの際にワイヤ付着などの問題が発生することについても明らかにされた。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一観点によれば、第1パッドの表面にはんだが被着されたフリップチップ接続用の接続パッドと、第2パッドの表面にめっきが施されたワイヤボンディング接続用のボンディングパッドとが設けられた配線基板の製造方法において、基板の第1主面に前記第1パッド及び前記第2パッドを形成する工程と、前記第2パッドの表面に前記めっきを施す工程と、前記第1パッドの表面にのみ選択的に粘着層を被着させる工程と、前記粘着層にはんだ粉を付着させる工程と、前記基板にフラックスを塗布する工程と、前記はんだ粉をリフローにより溶融して前記パッドに前記はんだを被着させる工程と、を有し、前記フラックスのハロゲン濃度が0.15wt%以下である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一観点によれば、ボンディングパッドの変色の発生を抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)〜(d)は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図。
【図2】(a)〜(e)は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図。
【図3】(a)〜(c)は、一実施形態の配線基板の製造方法を示す概略断面図。
【図4】一実施形態の半導体装置の製造方法を示す概略断面図。
【図5】フラックスのハロゲン濃度とボンディングパッドの変色発生率との関係を示すテーブル。
【図6】フラックスのハロゲン濃度とボンディングパッドの変色発生率との関係を示すグラフ。
【図7】ワークを示す概略平面図。
【図8】従来の半導体装置を示す概略断面図。
【図9】従来の配線基板を示す概略平面図。
【図10】フラックス塗布方法を示す説明図。
【図11】従来の配線基板を示す拡大平面図。
【図12】ボンディングパッドの変色の発生メカニズムを示す説明図。
【図13】(a)、(b)は、AES定性定量分析結果を示すテーブル。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して実施形態を説明する。なお、添付図面は、構造の概略を説明するためのものであり、実際の大きさを表していない。
まず、配線基板の製造方法を図1〜図6に従って説明する。
【0014】
図1(a)は、樹脂基板(基板)10の片面に銅箔11が被着された片面銅張り基板10Aにレジストフィルムを被着し、レジストフィルムを露光・現像して、銅箔11の表面にレジストパターン12を形成した状態を示している。レジストパターン12は、所要の配線パターン、フリップチップ接続用の接続パッド13(図3(c)参照)、及びワイヤボンディング用のボンディングパッド14(図1(c)参照)のパターン部分を被覆するように形成されている。
【0015】
次に、レジストパターン12をエッチングマスクとして銅箔11をエッチングし、図1(b)に示すように、銅箔11を所定形状にパターニングする。これにより、基板10の上面(第1主面)に、所要の配線パターン(図示略)と、接続パッド13となる第1パッド13Aと、ボンディングパッド14となる第2パッド14Aとが形成される。なお、上記銅箔11のパターニング終了後に、レジストパターン12を例えばアッシングにより除去する。
【0016】
続いて、図1(c)に示すように、第2パッド14Aの表面にめっき14Bを施して、ボンディングパッド14を形成する。本実施形態では、めっき14Bとして、ニッケル(Ni)めっきと金(Au)めっきとがこの順に第2パッド14A上に積層されている。なお、第2パッド14Aにめっき14Bを施す際には、第1パッド13Aにめっき液が付着しないように、その第1パッド13Aをマスク(図示略)で遮蔽してめっき処理を行う。このマスクとしては、例えばめっきレジストを用いることができる。
【0017】
次いで、図1(d)に示すように、基板10上に、第1パッド13Aを露出させるための開口部20Xと、ボンディングパッド14の一部を露出させるための開口部20Yとを有するソルダレジスト層20を形成する。例えば配線パターン(図示略)、第1パッド13A及びボンディングパッド14及び基板10の表面を覆うようにソルダレジスト層20を形成後、フォトリソグラフィ法によりソルダレジスト層20を露光・現像して上記開口部20X,20Yを形成する。このソルダレジスト層20の材料としては、例えばエポキシ系樹脂などの絶縁樹脂を用いることができる。なお、ソルダレジスト層20は、第2パッド14Aの表面にめっき14Bを施す前に形成するようにしてもよい。
【0018】
次に、図2(a)に示すように、基板10上でボンディングパッド14が形成された領域A1をテープ30によってマスク(遮蔽)する。具体的には、上記領域A1を覆うように、ボンディングパッド14の周辺に形成されたソルダレジスト層20上面にテープ30を接着する。このとき、ソルダレジスト層20の上面はボンディングパッド14の上面よりも上位置にあるため、テープ30がソルダレジスト層20の上面に接着された際に、そのテープ30がボンディングパッド14の上面から離間して、対向するソルダレジスト層20間に掛け渡すように接着される。
【0019】
なお、テープ30の基材の材料としては、例えば塩化ビニル系の樹脂を用いることができる。また、テープ30の接着層の材料としては、ボンディングパッド14に接着剤が残ってもワイヤボンディングに支障のない材料であることが好ましく、例えばアクリル系の樹脂を用いることができる。
【0020】
次に、図2(b)に示すように、第1パッド13Aの表面(上面及び側面)を覆う粘着層15を形成する。この粘着層15は、粘着液槽に基板10(図2(a)に示した構造体)を浸漬することによって第1パッド13Aの表面に被着する。ここで、粘着液としては、例えばナフトトリアゾール系誘導体、ベンゾトリアゾール系誘電体、イミダゾール系誘電体、ベンゾイミダゾール系誘電体、メルカプトベンゾチアゾール系誘電体やベンゾチアゾールチオ脂肪酸系誘電体等の成分を含む液を用いることができる。このような粘着液は、銅からなる第1パッド13Aの表面に選択的に付着し、ソルダレジスト層20や基板10の表面には付着しない。また、ボンディングパッド14はテープ30によって被覆されているため、粘着液槽に基板10を浸漬してもボンディングパッド14には粘着液が付着されない。このため、薬剤を水洗し、乾燥させると、図2(b)に示すように、第1パッド13Aの表面(上面及び側面)にのみ選択的に粘着層15が形成された状態となる。
【0021】
続いて、図2(c)に示すように、基板10の上方から、はんだ粉16を振りかけるようにして第1パッド13Aの表面にはんだ粉16を付着させる。第1パッド13A上に落ちたはんだ粉16は、粘着層15によって第1パッド13Aの表面に付着する。このとき、基板10、ソルダレジスト層20及びテープ30上にもはんだ粉16が付着する。なお、はんだ粉16の材料としては、例えばSn−Ag−Cu(錫−銀−銅)、Sn−Ag(錫−銀)、Sn−Cu(錫−銅)などを用いることができる。
【0022】
次いで、前工程で基板10、ソルダレジスト層20及びテープ30上に付着したはんだ粉16、すなわち第1パッド13Aの部分以外に付着している余分なはんだ粉16を、図2(d)に示すように、エアブローや水シャワー等により除去する。
【0023】
次に、図2(e)に示すように、熱処理前にテープ30を剥離する。これは、テープ30に耐熱性がないためである。続いて、はんだ粉16を第1パッド13A(粘着層15)に仮付けする。この仮付け工程は、はんだ粉16をわずかに溶かして第1パッド13Aに付着させるための工程である。例えば170℃程度の加熱炉で1時間程度基板を加熱することによってはんだ粉16を仮付けすることができる。
【0024】
次に、図3(a)に示すように、基板10上に形成された第1パッド13A(はんだ粉16が仮付けされた第1パッド13A)に対し、フラックス40を塗布する。このとき、第1パッド13Aの部分(つまり、はんだプリコートしたい部分)のみにフラックス40を塗布すれば十分であるが、第1パッド13Aのみにフラックス40を塗布するのはフラックス40の特性上困難であるため、実際には、図3(a)に示すように、基板10の上面全面にフラックス40を塗布している。このため、ボンディングパッド14上にもフラックス40が塗布される。ここで、フラックス40は、はんだ粉16を溶融させて得られるはんだ13B(図3(b)参照)の流れ性やそのはんだ13Bと第1パッド13Aとの接合性を良好にするためのものである。このフラックス40としては、例えば水溶性フラックスを用いることができる。さらに、ボンディングパッド14上にフラックス40が塗布されることに起因して発生するボンディングパッド14の変色不良を低減させるためには、フラックス40のハロゲン濃度(ハロゲンの含有率)は0.15wt%以下が好ましく、0.10wt%以上0.15wt%以下の範囲がより好ましい。本実施形態では、フラックス40の臭素(Br)濃度が0.15wt%以下に設定されている。なお、上記フラックス塗布工程は、例えば図10に示すように、スプレーノズル80から基板10に対してフラックス40を噴射することによって行うことができる。
【0025】
次に、図3(b)に示すように、リフロー(はんだの融点以上の温度で30秒程度)により、第1パッド13A上のはんだ粉16を溶融させてバンプ化させ、第1パッド13Aの表面にはんだ13Bを被着させる。これにより、接続パッド13が形成される。なお、第1パッド13Aの表面を覆うように形成された粘着層15(図3(a)参照)は、このリフロー工程中にフラックス40に溶ける。
【0026】
続いて、図3(c)に示すように、フラックス40を洗浄して除去する。以上の製造工程により、図3(c)に示した構造の配線基板1を製造することができる。この配線基板1では、第1パッド13Aの表面にはんだ13Bが被着されてフリップチップ接続用の接続パッド13が形成され、第2パッド14Aの表面に所要のめっき14Bが施されてワイヤボンディング接続用のボンディングパッド14が形成されている。これにより、配線基板1は、フリップチップ接続とワイヤボンディング接続によって半導体素子を搭載することが可能な配線基板として提供される。
【0027】
なお、上述した粘着層15を利用してはんだ粉16を第1パッド13Aの表面に付着させ、リフローによって第1パッド13Aの表面にはんだ13Bを被着させる方法としては、例えば上記特許文献2に記載されている方法を利用することができる。
【0028】
次に、上述した配線基板1を用いて図4に示す半導体装置2を製造する方法について簡単に説明する。
まず、配線基板1の上面に形成された接続パッド13に1段目(下段)の半導体素子51のバンプ51A(例えば、金バンプやはんだバンプ)をフリップチップ接合し、配線基板1と半導体素子51との間にアンダーフィル樹脂52を形成する。半導体素子51の上に2段目(上段)の半導体素子53を接着剤により接着し、半導体素子53の上面に形成された電極パッド53Aと配線基板1の上面に形成されたボンディングパッド14との間をボンディングワイヤ54(例えば、金ワイヤ)によりワイヤボンディング接続する。その後、半導体素子51,53及びボンディングワイヤ54等を封止樹脂55で樹脂封止する。このようにして、配線基板1上に半導体素子51,53が積み重ねて搭載され、1段目の半導体素子51が配線基板1とフリップチップ接続され、2段目の半導体素子53が配線基板1とワイヤボンディング接続された半導体装置2を得ることができる。
【0029】
次に、フラックス40のハロゲン濃度とボンディングパッド14の変色発生率との関係についての評価を行った結果を説明する。
ここで、まず、ワイヤボンディングの際におけるボンディングパッド14へのワイヤ不着の発生メカニズムについて考察する。図3(a)に示した工程のように、基板10の上面全面にフラックス40が塗布されると、そのフラックス40を介して接続パッド13となる第1パッド13Aとボンディングパッド14とがつながる。さらに、図12に示すように、これら第1パッド13Aとボンディングパッド14は、基板10中の内部配線(図示略)によって電気的に接続されている。このため、局部電池効果により、フラックス40中にはんだ粉16から錫イオン(Sn2+)が溶出され、ボンディングパッド14のめっき14B(Auめっき)上にSnが析出される。そして、このように析出されたSnによって、ボンディングパッド14の表面が変色し、ワイヤボンディングの際のワイヤ不着などを起こすと考えられる。このことを示す評価結果例を図13に示している。
【0030】
すなわち、図13は、ワイヤボンディングの際にワイヤ不着を起こしたボンディングパッド表面に存在する元素をAES(Auger Electron Spectroscopy)定性定量分析装置を用いて測定した結果を示している。具体的には、フラックスのハロゲン濃度を1.5wt%に設定し、先の図1〜図3で説明した製造方法により製造された配線基板のボンディングパッド(以下の試料1〜3)について、定量分析を行った結果を示している。
・試料1:ワイヤボンディングされたボンディングワイヤと十分な接合強度が得られたボンディングパッド
・試料2:ワイヤボンディングの際にワイヤ不着であったボンディングパッドであり、且つ外観上変色していないボンディングパッド
・試料3:ワイヤボンディングの際にワイヤ不着であったボンディングパッドであり、且つ外観上変色しているボンディングパッド
なお、図13(a)は、相対定量結果を示すものであり、図13(b)は、ベース(ここでは、Au)に対する原子数比を示すものである。また、図13(a)中の空欄は、検出限界以下であって定量計算に含まれていないことを示しており、図13(b)中の「0.00」は、検出限界以下であって定量計算に含まれていないことを示している。
【0031】
図13(a)の結果から明らかなように、ワイヤ不着であった試料2,3のボンディングパッドでは、その表面に存在するSnの存在量が、ボンディングワイヤが接合された試料1のそれの約2〜5倍となっている。また、図13(b)の結果から明らかなように、試料2,3のボンディングパッドでは、その表面に存在するSnのAuに対する原子数比は、試料1のそれの約3〜10倍となっている。これらのことから、ボンディングパッドの表面上に存在するSnが、ボンディングワイヤの接合に対して悪影響を及ぼしていることが分かる。さらに、外観上変色している試料3のボンディングパッドでは、その表面に存在するSnの存在量が、外観上変色していない試料2のそれの約2倍となっている。このことから、ボンディングパッドの変色がSnに起因するものであることが分かる。以上のことから、ボンディングパッドの表面上に存在するSnによってボンディングパッドの変色が発生し、さらにボンディングパッドの表面上に存在するSnがワイヤ不着の原因になっていることが分かる。
【0032】
ところで、ワイヤ不着の発生は、上述したように第1パッド13Aとボンディングパッド14とがフラックスを介してつながることに起因しているため、例えば第1パッド13A及びボンディングパッド14を下側に向けて基板10にフラックス40を塗布し、そのままの状態でリフローする方法も考えられる。この場合には、フラックス40の液滴が重力で下方に引っ張られるため、第1パッド13Aとボンディングパッド14とがフラックス40を介してつながることが抑制される。これにより、局部電池が不活性となり、ボンディングパッド14上にSnが析出されることを抑制でき、ボンディングパッド14の変色の発生を抑制することができる。
【0033】
しかしながら、近年、電子機器における小型化・薄型化が一層進み、配線基板に対する高密度化、小型化の要請がさらに高まってきており、接続パッド13とボンディングパッド14間の狭小化が進んでいる。例えば接続パッド13とボンディングパッド14との間の距離が500μm以下に狭小化されると、それら接続パッド13(第1パッド13A)及びボンディングパッド14を下側に向けて基板10にフラックス40を塗布しても、そのフラックス40を介して第1パッド13Aとボンディングパッド14とがつながる確率が高くなる。この結果、ボンディングパッド14の変色発生率が高くなる。
【0034】
また、ボンディングパッド14上にフラックス40が塗布されることを防止するために、ボンディングパッド14をマスキングテープ等によりマスクした状態でフラックス40の塗布を行う方法も考えられる。しかし、この方法では、リフロー工程が高温であるため、マスキングテープの糊残りといった問題が発生するおそれがある。
【0035】
これに対し、本発明者は、フラックス40のハロゲン濃度を下げて、フラックス40の活性を低下させることにより、フラックス40中にはんだ粉16からSn2+が溶出されることが抑制され、ボンディングパッド14上へのSnの析出が抑制されることを発見し、本発明を完成した。ここで、図5及び図6は、フラックス40のハロゲン濃度(ここでは、Br濃度)とボンディングパッド14の変色発生率との関係についての評価を行った結果を示している。具体的には、図1及び図2に示した製造方法により製造された構造体(図2(e)参照)に対して、ハロゲン濃度を0.10wt%、0.15wt%、0.20wt%、0.25wt%に設定したフラックスを塗布した各々の場合において、リフロー及びフラックスの洗浄後における接続パッド13及びボンディングパッド14の外観結果を示している。本測定では、上記フラックスを入れた1リットル容器に図2(e)に示した構造体を浸漬した後、フラックスを10秒間切って基板両面合わせて1.6g前後のフラックスを塗布するようにした。また、本測定では、それぞれのハロゲン濃度で144個のボンディングパッドについて評価を行った。なお、本測定で使用するフラックスには、ハロゲンとしてBrのみが含有されているため、Br濃度がハロゲン濃度に相当する。
【0036】
図5及び図6の結果から明らかなように、フラックスのBr濃度が低くなるほどボンディングパッド14のめっき14B(Auめっき)上の変色発生率が低くなる。さらに、フラックスのBr濃度が0.15wt%以下になると、ボンディングパッド14上の変色発生率が0%となる。これらの結果から、フラックス40のハロゲン濃度を0.15wt%以下に設定することにより、ボンディングパッド14の変色不良を好適に抑制できることが分かる。
【0037】
また、図5の結果から、フラックスのBr濃度が低くなるほど接続パッド13における濡れ不足の発生確率が高くなる傾向があることが分かる。これは、フラックスのBr濃度が低くなるのに伴って表面張力が高くなり、その表面張力が高くなったことに起因して接続パッド13の濡れ不足が発生したものと考えられる。但し、この点については、ハロゲン濃度が0.10wt%の場合であっても濡れ不足の発生率が4.60%であり、例えば接続パッド13の設計パターンを変更(最適化)することにより改善可能な数値であるため、実用上問題はない。すなわち、フラックス40のハロゲン濃度を低くしても、はんだ13Bの流れ性及びそのはんだ13Bと第1パッド13Aとの接合性を良好にする、というフラックス40本来の機能を十分に果たすことができる。
【0038】
以上のことから、フラックス40のハロゲン濃度は0.15wt%以下であることが好ましく、0.10wt%以上0.15wt%以下の範囲であることがより好ましい。
以上説明した本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
【0039】
(1)フラックス40のハロゲン濃度を0.15wt%以下に設定するようにした。これにより、仮にフラックス40を介して第1パッド13Aとボンディングパッド14とがつながったとしても、フラックス40中にはんだ粉16からSnが溶出されることが抑制され、さらにボンディングパッド14上にSnが析出されることが抑制される。この結果、ボンディングパッド14のSnによる変色の発生を好適に抑制でき、ワイヤボンディング時におけるワイヤ不着等の問題の発生も抑制することができる。
【0040】
(2)さらに、接続パッド13とボンディングパッド14との間の距離を狭めることが可能となるため、配線基板1の更なる小型化を実現することができる。
(他の実施形態)
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の態様にて実施することもできる。
【0041】
・上記実施形態では、接続パッド13となる第1パッド13Aの表面にのみ選択的に粘着層15を被着させるために、ボンディングパッド14をテープ30でマスクした後に、基板10を粘着液槽に浸漬するようにした。これに限らず、例えば特許文献1に記載されている方法のように、ボンディングパッド14をマスクせずに、粘着液の組成を工夫することで第1パッド13Aの表面にのみ選択的に粘着層15を被着するようにしてもよい。すなわち、第1パッド13Aとボンディングパッド14の表面のみに付着する第1粘着液と、ボンディングパッド14の表面に形成された粘着層のみを剥離する第2粘着液との2種類の粘着液を使用することで、第1パッド13Aの表面にのみ選択的に粘着層15を被着するようにしてもよい。
【0042】
・上記実施形態では、単体の基板部分あるいは半導体装置について示した。これに限らず、例えば図7に示すように、多数個の半導体装置2が得られるように1つの半導体装置2となる区画領域B1が縦横に整列されて設けられた大判の基板をワーク60として、そのワーク60上で配線基板1及び半導体装置2を多数製造し、最終的な製造段階で個片化するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1 配線基板
2 半導体装置
10 基板
13 接続パッド
13A 第1パッド
13B はんだ
14 ボンディングパッド
14A 第2パッド
14B めっき
15 粘着層
16 はんだ粉
20 ソルダレジスト層
30 テープ
40 フラックス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1パッドの表面にはんだが被着されたフリップチップ接続用の接続パッドと、第2パッドの表面にめっきが施されたワイヤボンディング接続用のボンディングパッドとが設けられた配線基板の製造方法において、
基板の第1主面に前記第1パッド及び前記第2パッドを形成する工程と、
前記第2パッドの表面に前記めっきを施す工程と、
前記第1パッドの表面にのみ選択的に粘着層を被着させる工程と、
前記粘着層にはんだ粉を付着させる工程と、
前記基板にフラックスを塗布する工程と、
前記はんだ粉を溶融して前記パッドに前記はんだを被着させる工程と、を有し、
前記フラックスのハロゲン濃度が0.15wt%以下であることを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記フラックスのハロゲン濃度が0.10wt%以上0.15wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記第1パッドの表面にのみ選択的に前記粘着層を被着させる工程では、前記ボンディングパッドを形成した領域にマスク用のテープを粘着して前記ボンディングパッドを遮蔽した後に、前記第1パッドの表面にのみ前記粘着層を被着させることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−4738(P2013−4738A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−134312(P2011−134312)
【出願日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】