説明

配線基板

【課題】本発明は、電気的特性及び電気的信頼性を向上させる要求に応える配線基板を提供するものである。
【解決手段】本発明の一形態にかかる配線基板3は、厚み方向に沿って離間した第1無機絶縁層11a及び第2無機絶縁層11bと、該第1無機絶縁層11a及び第2無機絶縁層11bの間に部分的に形成された第1導電層13aと、第1無機絶縁層11a及び第2無機絶縁層11bの間に介在され、第1導電層13aに並設された樹脂層12と、を備え、第1導電層13aは、一主面の少なくとも一部が第1無機絶縁層11aに当接され、他主面の少なくとも一部が第2無機絶縁層11bに当接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器(たとえば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ機器及びその周辺機器)等に使用される配線基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器における実装構造体としては、配線基板に電子部品を実装したものが使用されている。
【0003】
特許文献1には、樹脂から成る絶縁基板と該絶縁基板上に形成された回路とを備えた配線基板が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、セラミック基板と該セラミック基板上に形成された配線パターンとを備えた配線基板が記載されている。
【0005】
ところで、樹脂から成る絶縁基板は誘電正接が高く、回路の信号伝送特性が低下しやすいため、配線基板の電気特性が低下しやすい。
【0006】
一方、絶縁基板をセラミック基板とした場合、セラミック基板は割れやすく、セラミック基板に応力が印加されるとクラックが生じやすいため、該クラックを起点として回路に断線が生じ、ひいては配線基板の電気的信頼性が低下しやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−116174号公報
【特許文献2】特開2001−7524号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、電気特性及び電気的信頼性を向上させる要求に応える配線基板を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一形態にかかる配線基板は、厚み方向に沿って離間した第1及び第2無機絶縁層と、該第1及び第2無機絶縁層の間に部分的に形成された第1導電層と、前記第1及び第2無機絶縁層の間に介在され、前記第1導電層に並設された樹脂層と、を備え、前記第1導電層は、一主面の少なくとも一部が前記第1無機絶縁層に当接され、他主面の少なくとも一部が前記第2無機絶縁層に当接されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一形態にかかる配線基板によれば、第1導電層は、一主面の少なくとも一部が第1無機絶縁層に当接され、他主面の少なくとも一部が第2無機絶縁層に当接され、しかも第1及び第2無機絶縁層の間には第1導電層と並接された樹脂層が介在されているため、第1導電層の信号伝送特性を高めつつ、第1及び第2無機絶縁層に印加される応力を緩和させることができ、ひいては電気特性及び電気的信頼性に優れた配線基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態にかかる実装構造体を厚み方向に切断した断面図である。
【図2】図2(a)は、図1に示した実装構造体のR1部分を拡大して示した断面図であり、図2(b)は、図2(a)のI−I線に沿う平面方向に切断した断面図である。
【図3】図3(a)及び(b)は、図1に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図であり、図3(c)は、図3(b)のR2部分を拡大して示した断面図である。
【図4】図4(a)乃至(d)は、図1に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図である。
【図5】図5(a)及び(b)は、図1に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図であり、図5(c)は、図5(b)のR3部分を拡大して示した断面図である。
【図6】図6(a)は、図1に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図であり、図6(b)は、図6(a)のR4部分を拡大して示した断面図である。
【図7】図7(a)及び(b)は、図1に示す実装構造体の製造工程を説明する厚み方向に切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施形態に係る配線基板を含む実装構造体を、図面に基づいて詳細に説明する。
【0013】
図1に示した実装構造体1は、例えば各種オーディオビジュアル機器、家電機器、通信機器、コンピュータ装置又はその周辺機器などの電子機器に使用されるものである。この実装構造体1は、電子部品2及び配線基板3を含んでいる。
【0014】
電子部品2は、例えばIC又はLSI等の半導体素子であり、配線基板3に半田等の導電バンプ4を介してフリップチップ実装されている。この電子部品2は、母材が、例えばシリコン、ゲルマニウム、ガリウム砒素、ガリウム砒素リン、窒化ガリウム又は炭化珪素等の半導体材料により形成されている。電子部品2としては、厚みが例えば0.1mm以上1mm以下のものを使用することができる。なお、厚みは、電子部品2の研摩面若しくは破断面を走査型電子顕微鏡で観察し、厚み方向(Z方向)に沿った長さを10箇所以上測定し、その平均値を算出することにより測定される。
【0015】
配線基板3は、コア基板5とコア基板5の上下に形成された一対の配線層6とを含んでいる。
【0016】
コア基板5は、配線基板3の剛性を高めつつ一対の配線層6間の導通を図るものであり、厚みが例えば0.1mm以上3.0mm以下に形成されている。このコア基板5は、基体7、スルーホール、スルーホール導体8、及び絶縁体9を含んでいる。なお、厚みは、電子部品2と同様に測定される。
【0017】
基体7は、コア基板5の剛性を高めるものであり、樹脂基体10と、該樹脂基体10上下に設けられた無機絶縁層11と、を有する。
【0018】
樹脂基体10は、基体7の主要部をなすものであり、例えば樹脂材料と該樹脂材料に被覆された基材と該樹脂材料内に含有された無機絶縁フィラーとを含む。この樹脂基体10は、厚みが例えば0.1mm以上3.0mm以下に設定され、ヤング率が例えば0.2GPa以上20GPa以下に設定され、平面方向への熱膨張率が例えば3ppm/℃以上20ppm/℃以下に設定され、厚み方向への熱膨張率が例えば30ppm/℃以上50p
pm/℃以下に設定され、誘電正接が例えば0.01以上0.02以下に設定されている。
【0019】
なお、ヤング率は、MTSシステムズ社製Nano Indentor XP/DCMを用いて測定される。また、熱膨張率は、市販のTMA装置を用いて、JISK7197‐1991に準じた測定方法により、測定される。また、誘電正接は、JISR1627‐1996に準じた共振器法により、測定される。
【0020】
樹脂基体10に含まれる樹脂材料は、樹脂基体10の主要部をなすものであり、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂又はポリエーテルケトン樹脂等の樹脂材料を使用することができる。該樹脂材料は、ヤング率が例えば0.1GPa以上5GPa以下に設定され、平面方向及び厚み方向への熱膨張率が例えば20ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定されている。
【0021】
樹脂材料に被覆された基材は、樹脂基体10の剛性を高めるものであり、平面方向(XY平面方向)への熱膨張率が厚み方向(Z方向)よりも小さいため、配線基板3と電子部品2との平面方向への熱膨張率の差を低減し、配線基板3の反りを低減できる。基材としては、繊維により構成された織布若しくは不織布又は繊維を一方向に配列したものを使用することができ、繊維としては、例えばガラス繊維、樹脂繊維、炭素繊維又は金属繊維等を使用することができる。
【0022】
樹脂材料内に含有された無機絶縁フィラーは、樹脂基体10の熱膨張率を低減するとともに、樹脂基体10の剛性を高めるものであり、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、水酸化アルミニウム又は炭酸カルシウム等の無機絶縁材料により形成されたものを用いることができ、粒径が例えば0.5μm以上5.0μm以下に設定され、熱膨張率が例えば0ppm/℃以上15ppm/℃以下に設定され、樹脂基体10の樹脂材料内における含有量が例えば3体積%以上60体積%以下に設定されている。
【0023】
なお、無機絶縁フィラーの粒径は、樹脂基体10の研摩面若しくは破断面を電界放出型電子顕微鏡で観察し、20粒子数以上50粒子数以下の粒子を含むように拡大した断面を撮影し、該拡大した断面にて各粒子の最大径を測定することにより、測定される。また、樹脂基体10の樹脂部における無機絶縁フィラーの含有量(体積%)は、樹脂基体10の研摩面を電界放出型電子顕微鏡で撮影し、画像解析装置等を用いて、樹脂基体10の樹脂部に占める無機絶縁フィラーの面積比率(面積%)を10箇所の断面にて測定し、その測定値の平均値を算出して含有量(体積%)とみなすことにより、測定される。
【0024】
無機絶縁層11は、主要部として無機絶縁材料を含み、無機絶縁材料が樹脂材料と比較して低誘電正接、低熱膨張率、高剛性及び高絶縁性であることから、基体7を低誘電正接、低熱膨張率、高剛性及び高絶縁性のものとする機能を有する。
【0025】
したがって、無機絶縁層11は、基体7の誘電正接を低減することにより、基体7上に形成された配線層6の信号伝送特性を高めることができる。また、基体7の平面方向への熱膨張率を低減することにより、配線基板3の反りを低減できるとともに、基体7の厚み方向への熱膨張率を低減することにより、基体7とスルーホール導体8との熱膨張率の違いに起因したスルーホール導体8の断線を低減できる。また、基体7の剛性を高めることにより、配線基板3の厚みを大きくすることなく剛性を高めることができる。また、基体7の絶縁性を高めることにより、コア基板5の上下面に配置された一対の配線層6間の短絡を低減することができる。
【0026】
なお、無機絶縁層11は、無機絶縁材料を主成分とする無機絶縁部と、図示しないが、該無機絶縁部に空隙が形成されており、該空隙に配された樹脂基体10の一部である樹脂部を含んでも構わない。この場合、樹脂材料が無機絶縁材料と比較して低ヤング率であることから、無機絶縁部に印加される応力が緩和され、該応力に起因した無機絶縁部におけるクラックの発生が低減される。
【0027】
この無機絶縁層11は、例えば、無機絶縁部を85体積%以上100体積%以下含み、樹脂部を含む場合、樹脂部を0.2体積%以上15体積%以下含む。また、無機絶縁層11は、例えば平板状に形成されており、厚みが例えば3μm以上100μm以下に設定され、厚みが例えば樹脂基体10の3%以上10%以下に設定されている。また、無機絶縁層11は、ヤング率が例えば2GPa以上100GPa以下に設定され、厚み方向及び平面方向への熱膨張率が例えば0ppm/℃以上30ppm/℃以下に設定され、誘電正接が例えば0.0001以上0.02以下に設定されている。
【0028】
無機絶縁部は、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタニウム、酸化マグネシウム又は酸化ジルコニウム等の無機絶縁材料により形成されたものを使用することができ、なかでも、低誘電正接及び低熱膨張率の観点から、酸化ケイ素を用いることが望ましい。
【0029】
また、無機絶縁部は、無機絶縁材料がアモルファス(非晶質)状態であることが望ましい。その結果、無機絶縁層11において、結晶構造に起因した熱膨張率の異方性を低減することができるため、配線基板3が加熱された場合、配線基板3が加熱された場合、加熱後の冷却の際に無機絶縁層11の収縮を各方向にてより均一にすることができ、無機絶縁層11におけるクラックの発生を低減できる。
【0030】
アモルファス状態の無機絶縁材料は、例えば酸化ケイ素を用いることができ、結晶相の領域が例えば10体積%未満に設定されており、なかでも5体積%未満に設定されていることが望ましい。なお、無機絶縁材料における結晶相領域の体積比は、100%結晶化した試料粉末を非晶質粉末に混合してX線回折法で測定して検量線を作成し、調査試料のデータと検量線のデータを比較することにより測定される。
【0031】
また、無機絶縁部は、無機絶縁材料を例えば97体積%以上100体積%以下含み、無機絶縁材料以外の残部を含む場合、例えば樹脂材料及び空隙を0体積%より多く3体積%以下含む。
【0032】
この無機絶縁部は、ヤング率が例えば10GPa以上100GPa以下に設定され、ヤング率が例えば樹脂基体10の1.2倍以上5倍以下に設定され、厚み方向及び平面方向への熱膨張率が例えば0ppm/℃以上10ppm/℃以下に設定され、厚み方向及び平面方向への熱膨張率が例えば樹脂基体10の0.001倍以上0.5倍以下に設定され、誘電正接が例えば0.0001以上0.02以下に設定され、誘電正接が例えば樹脂基体10の0.01倍以上0.5倍以下に設定されている。
【0033】
無機絶縁部は、例えば酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタニウム、酸化マグネシウム又は酸化ジルコニウム等の無機絶縁材料により形成されたものを使用することができ、なかでも、低誘電正接及び低熱膨張率の観点から、酸化ケイ素を用いることが望ましい。また、無機絶縁部は、無機絶縁材料を例えば97体積%以上100体積%以下含み、無機絶縁材料以外の残部を含む場合、例えば樹脂材料及び空隙を0体積%より多く3体積%以下含む。
【0034】
また、無機絶縁部は、図2(a)に示すように、例えば互いに結合した第1無機絶縁粒子11nを含み、第1無機絶縁粒子11nは、粒径が例えば3nm以上110nm以下に設定されている。その結果、第1無機絶縁粒子11nの粒径が110nm以下に設定されていることにより、後述するように、第1無機絶縁粒子11nの接着強度を高めることができる。
【0035】
また、無機絶縁部は、第1無機絶縁粒子11nよりも粒径が大きい、第1無機絶縁粒子11nを介して互いに接着された第2無機絶縁粒子11mを含んでも構わない。その結果、第2無機絶縁粒子11mは、第1無機絶縁粒子11nよりも粒径が大きいことから、無機絶縁部に生じたクラックの伸長を抑制することができる。この第2無機絶縁粒子11mは、粒径が例えば0.5μm以上5μm以下に設定されている。
【0036】
第1無機絶縁粒子11n及び第2無機絶縁粒子11mは、上述した無機絶縁部を構成する無機絶縁材料により形成されたものを使用することができ、同一材料からなることが望ましい。また、第1無機絶縁粒子11n及び第2無機絶縁粒子11mは、球状であることが望ましい。
【0037】
なお、第1無機絶縁粒子11n及び第2無機絶縁粒子11mは、無機絶縁層11の研摩面若しくは破断面を電界放出型電子顕微鏡で観察することにより確認される。また、第1無機絶縁粒子11n及び第2無機絶縁粒子11mの粒径は、無機絶縁層11の研摩面若しくは破断面を電界放出型電子顕微鏡で観察し、20粒子数以上50粒子数以下の粒子を含むように拡大した断面を撮影し、該拡大した断面にて各粒子の最大径を測定することにより測定される。
【0038】
上述した基体7には、該基体7を厚み方向に貫通し、例えば直径が0.1mm以上1mm以下の円柱状であるスルーホールが設けられている。スルーホールの内部には、コア基板5の上下の配線層6を電気的に接続するスルーホール導体8がスルーホールの内壁に沿って円筒状に形成されている。このスルーホール導体8としては、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル又はクロム等の導電材料により形成されたものを使用することができ、熱膨張率が例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。
【0039】
円筒状に形成されたスルーホール導体8の中空部には、絶縁体9が柱状に形成されており、スルーホール導体8の端面と絶縁体9の端面とで、後述するビア導体14の支持面を形成している。絶縁体9としては、例えばポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シアネート樹脂、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂又はビスマレイミドトリアジン樹脂等の樹脂材料により形成されたものを使用することができる。
【0040】
一方、コア基板5の上下面には、上述した如く、一対の配線層6が形成されている。配線層6は、樹脂層12、無機絶縁層11、導電層13、ビア孔、ビア導体14と、を含んでいる。導電層13及びビア導体14は、互いに電気的に接続されており、接地用配線、電力供給用配線及び/又は信号用配線を含む配線部を構成している。
【0041】
樹脂層12は、主要部として樹脂材料を含み、図2(a)及び(b)に示すように、厚み方向に隣接する無機絶縁層11同士の間に介在されるとともに、導電層13の側方に並設されつつ平面方向に離間した導電層13との間に介在されており、該厚み方向に隣接する無機絶縁層11それぞれの主面及び導電層13の側面に接着されている。
【0042】
したがって、樹脂層12は、厚み方向に隣接する無機絶縁層11同士の間に介在されることにより、樹脂材料が無機絶縁材料と比較して高弾性であることから、配線基板3に応力が印加された際に、樹脂層12が変形し、無機絶縁層11に印加される応力を緩和する
ことができる。それ故、無機絶縁層11のクラックを低減し、該クラックに起因した第1導電層13aの断線を低減し、ひいては電気的信頼性に優れた配線基板3を得ることができる。
【0043】
また、樹脂層12は、平面方向に沿って離間した導電層13同士の間に介在されることにより、該導電層13同士の短絡を抑制することができる。また、隣接する無機絶縁層11の双方に接着することにより、該無機絶縁層11同士を接着させることができる。また、無機絶縁層11の主面及び導電層13の側面に接着することにより、導電層13と第1樹脂接着層12aとの接着強度を高めることができる。
【0044】
この樹脂層12は、例えば樹脂材料と該樹脂材料内に含有された無機絶縁フィラーとを含んでおり、厚みが例えば3μm以上20μm以下に設定され、厚みが無機絶縁層11の例えば0.4倍以上3倍以下に設定され、ヤング率が例えば0.2GPa以上20GPa以下に設定され、ヤング率が無機絶縁層11の例えば0.01倍以上0.6倍以下に設定され、誘電正接が例えば0.001以上0.02以下に設定され、誘電正接が無機絶縁層11の例えば4倍以上10倍以下に設定され、平面方向及び厚み方向への熱膨張率が例えば20ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定され、平面方向及び厚み方向への熱膨張率が無機絶縁層11の例えば2倍以上10倍以下に設定されている。
【0045】
樹脂層12に含まれる樹脂材料は、例えばエポキシ樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、シアネート樹脂、ポリパラフェニレンベンズビスオキサゾール樹脂、全芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、芳香族液晶ポリエステル樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂又はポリエーテルケトン樹脂等の樹脂材料を使用することができる。該樹脂材料は、ヤング率が例えば0.1GPa以上5GPa以下に設定され、平面方向及び厚み方向への熱膨張率が例えば20ppm/℃以上50ppm/℃以下に設定されている。
【0046】
無機絶縁フィラーは、上述した樹脂基体10に含まれる無機絶縁フィラーと同様のものを用いることができ、なかでも、樹脂基体10に含まれる無機絶縁フィラーと同一材料のものを用いることが望ましい。
【0047】
配線層6に含まれる無機絶縁層11は、樹脂層12上に形成され、上述した基体7に含まれる無機絶縁層11と同様の機能を有し、厚みが例えば3μm以上30μm以下に設定され、厚みが例えば樹脂層12の0.5倍以上10倍以下に設定されている。また、樹脂部が形成されている場合、該樹脂部は、例えば樹脂層12の一部である。
【0048】
この無機絶縁層11のその他の構成は、上述した基体7に含まれる無機絶縁層11と同様の構成である。
【0049】
導電層13は、接地用配線、電力供給用配線又は信号用配線として機能するものであり、無機絶縁層11上に形成されており、無機絶縁層11を介して厚み方向に互いに離間している。導電層13としては、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル又はクロム等の金属材料により形成されたものを使用することができ、厚みが3μm以上20μm以下に設定され、熱膨張率が例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。
【0050】
また、導電層13は、隣接した無機絶縁層11同士の間に部分的に形成され、樹脂層12が並設されている。それ故、無機絶縁層11内部に導電層13を形成した場合と比較して、配線基板3における無機絶縁層11の体積を大きくすることができるため、配線基板3をより低誘電正接、低熱膨張及び高剛性とすることができる。
【0051】
ビア導体14は、厚み方向に互いに離間した導電層13同士を相互に接続するものであり、コア基板5に向って幅狭となる柱状に形成されている。ビア導体14としては、例えば銅、銀、金、アルミニウム、ニッケル又はクロムの導電材料により形成されたものを使用することができ、熱膨張率が例えば14ppm/℃以上18ppm/℃以下に設定されている。
【0052】
ここで、本実施形態の配線基板3において、無機絶縁層11は、樹脂基板10上に形成されたものを第1無機絶層11aとし、樹脂層12を介して、該第1無機絶縁層11aに対して厚み方向に沿って離間したものを第2無機絶層11bとする。
【0053】
また、導電層13は、基体7上に形成され、スルーホール導体8に接続されたものを第1導電層13aとし、該第1導電層13aに対して平面方向に沿って離間したものを第2導電層13bとし、第2無機絶縁層11bを介して、第1導電層13aに対して厚み方向に沿って離間したものを第3導電層13cとする。
【0054】
一方、本実施形態の配線基板3においては、図2(a)に示すように、第1導電層13aは、一主面の少なくとも一部が第1無機絶縁層11aに当接され、他主面の少なくとも一部が、第2無機絶縁層に当接されている。それ故、無機絶縁材料が樹脂材料と比較して低誘電正接であることから、第1導電層13aを第1無機絶縁層11a及び第2無機絶縁層11bに当接させることにより、第1導電層13aの信号伝送特性を高め、ひいては電気特性に優れた配線基板3を得ることができる。なお、かかる当接の有無は、配線基板3を厚み方向に切断した断面の電子顕微鏡写真によって、観察することができる。
【0055】
また、第1導電層13aは、一主面において、第1無機絶縁層11aに向って突出し、少なくとも一部が第1無機絶縁層11aと当接した複数の第1凸部15aを有し、第1無機絶縁層11aは、一部が第1凸部15a間に充填されている。それ故、第1導電層13aと第1無機絶縁層11aとの当接領域を大きくし、第1導電層13aの信号伝送特性を高めることができる。
【0056】
また、第1導電層13aは、他主面において、第2無機絶縁層11bに向って突出し、少なくとも一部が第2無機絶縁層11bと当接した複数の第2凸部15bを有し、樹脂層12は、一部が第1導電層13aと第2無機絶縁層11bとの間に延在され、該延在部12aが第2凸部15b間に充填されるとともに第1導電層13a及び第2無機絶縁層11bに接着されている。
【0057】
それ故、延在部12aが第1導電層13a及び第2無機絶縁層11bに接着されることにより、第1導電層13aと第2無機絶縁層11bとの接着強度を高めるとともに、低弾性の延在部12aが第2凸部15b間に充填されることにより、第1導電層13aと第2無機絶縁層11bとの境界にて生じる厚み方向へのクラックを低減することができる。
【0058】
また、第1導電層13aは、信号用配線であり、第2導電層13bは、第1導電層13aよりも平面視における面積の大きい、接地用配線又は電力供給用配線であり、第1導電層13aは、第2無機絶縁層11bとの当接領域及び非当接領域の和に対する当接領域の割合(以下、当接領域比という)が第2導電層13bよりも大きい。その結果、第1導電層13aにおいては、第2無機絶縁層11bとの当接領域を大きくすることにより信号伝送特性を高め、第2導電層13bにおいては、延在部11aの接着領域を大きくすることにより、第2導電層13bと第2無機絶縁層11bとの剥離を低減することができる。
【0059】
なお、第2導電層13bは、平面視における面積が第1導電層13aの例えば10倍以上20倍以下に設定されている。また、第1導電層13aは、第2無機絶縁層11bとの
当接領域比(第1当接領域比)が例えば30%以上90%以下に設定されており、第2導電層13bは、第2無機絶縁層11bとの当接領域比(第2当接領域比)が例えば0%以上40%以下に設定されている。また、第1当接領域比は、第2当接領域比の例えば1.8倍以上2.2倍以下に設定されている。なお、当接領域比は、配線基板3を厚み方向に切断した断面の電子顕微鏡写真を観察し、界面において当接した部分(当接領域)の長さと、当接していない部分(非当接領域)の長さと、を10箇所以上測定することにより算出する。
【0060】
また、第1導電層13aは、一主面の面積が側面の面積よりも大きいことが望ましい。その結果、第1導電層13aと第1無機絶縁層11aとの当接領域大きくし、第1導電層13aの信号伝送特性を高めることができる。なお、第1導電層13aは、一主面の面積が側面の例えば1.2倍以上10倍以下に設定されている。
【0061】
ビア導体14は、第2無機絶縁層11bを厚み方向に貫通し、第1導電層13a及び第3導電層13cに電気的に接続されている。それ故、ビア導体14を第2無機絶縁層11bに当接させることができ、ビア導体14における信号伝送特性を高めることができる。
【0062】
かくして、上述した実装構造体1は、配線基板3を介して供給される電源や信号に基づいて電子部品2を駆動若しくは制御することにより、所望の機能を発揮する。
【0063】
次に、上述した実装構造体1の製造方法を、図3から図7に基づいて説明する。
【0064】
(積層板16の作製)
(1)図3(a)に示すように、銅箔13xと、第1無機絶縁粒子11n、第2無機絶縁粒子11m及び溶剤を含む無機絶縁ゾル11xと、を準備し、銅箔13xの一主面に無機絶縁ゾル11xを塗布する。
【0065】
銅箔13xは、例えば一主面が蟻酸等の有機酸を主成分とするエッチング液により粗化されており、凹凸が形成されている。
【0066】
無機絶縁ゾル11xは、固形分と溶剤とを含む。無機絶縁ゾル11xは、固形分を5%体積以上50体積%以下含み、溶剤を50体積%以上95体積%以下含むことが望ましい。その結果、溶剤を無機絶縁ゾル11xの50体積%以上含むことにより、無機絶縁ゾル11xの粘度を低減し、無機絶縁層11の上面の平坦性を向上させて、配線基板3の上面の平坦性を向上させることができる。また、溶剤を無機絶縁ゾル11xの95体積%以下含むことにより、無機絶縁ゾル11xの固形物成分量を増加させることにより、無機絶縁層11の生産性を向上させることができる。また、該固形分は、第1無機絶縁粒子11nを5体積%以上50体積%以下含み、第2無機絶縁粒子11mを50体積%以上95体積%以下含むことが望ましい。
【0067】
粒径の小さい第1無機絶縁粒子11nは、ケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)等のケイ酸化合物等のケイ酸化合物を精製し、加水分解等の方法で化学的に酸化珪素を析出させることにより作製することができる。また、このように作製することにより、第1無機絶縁粒子11nの結晶化を抑制し、アモルファス状態を維持することができる。なお、このように作製した場合、第1無機絶縁粒子11nは、酸化ナトリウム等の不純物を1ppm以上5000ppm以下含んでいても構わない。
【0068】
また、第1無機絶縁粒子11nの粒径は、3nm以上に設定されていることが望ましい。その結果、無機絶縁ゾル11xの粘度を低減し、無機絶縁層11の上面の平坦性を向上させることができる。
【0069】
粒径の大きい第2無機絶縁粒子11mは、例えばケイ酸ナトリウム水溶液(水ガラス)等のケイ酸化合物を精製し、化学的に酸化珪素を析出させた溶液を火炎中に噴霧し、凝集物の形成を抑制しつつ800℃以上1500℃以下に加熱することにより、作製することができる。ここで、第2無機絶縁粒子11mは、第1無機絶縁粒子11nと比較して、凝集体の形成を低減しつつ、高温の加熱で作製することが容易であるため、第2無機絶縁粒子11mを高温の加熱で作製することによって、第2無機絶縁粒子11mの硬度を第1無機絶縁粒子11nよりも容易に高めることができる。
【0070】
なお、第2無機絶縁粒子11mを作製する際の加熱時間は、1秒以上180秒以下に設定されていることが望ましい。その結果、該加熱時間を短縮することにより、800℃以上1500℃以下に加熱した場合においても、第2無機絶縁粒子11mの結晶化を抑制し、アモルファス状態を維持することができる。
【0071】
溶剤としては、例えばメタノール、イソプロパノール、n-ブタノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノプロピルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、キシレン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、又はジメチルアセトアミド等の有機溶剤を含むものを使用することができる。なかでも、メタノール、イソプロパノール又はプロピレングリコールモノメチルエーテルを含むものを使用することが望ましい。その結果、無機絶縁ゾル11xを均一に塗布することができ、且つ、(2)の工程にて、溶剤を効率良く蒸発させることができる。
【0072】
無機絶縁ゾル11xの塗布は、例えば、ディスペンサー、バーコーター、ダイコーター又はスクリーン印刷を用いて行うことができる。
【0073】
銅箔13xの一主面に塗布された無機絶縁ゾル11xは、平板状に形成されており、乾燥後の厚みが例えば3μm以上110μm以下に設定されている。
【0074】
(2)図3(b)及び(c)に示すように、無機絶縁ゾル11xを乾燥させて溶剤を蒸発させた後、無機絶縁ゾル11xの固形分を加熱し、第1無機絶縁粒子11n同士を結合させるとともに、第1無機絶縁粒子11nと第2無機絶縁粒子11mとを結合させることにより、無機絶縁ゾル11xを無機絶縁層11の無機絶縁部にして、銅箔13x及び無機絶縁層11を含む積層シート17を形成する。
【0075】
ここで、無機絶縁ゾル11xの固形分を加熱する際、粒径が小さく結合しやすい第1無機絶縁粒子11n同士が互いに結合するとともに、第1無機絶縁粒子11nと第2無機絶縁粒子11mとが結合するため、粒径が大きく結合しにくい第2無機絶縁粒子11m同士を、第1無機絶縁粒子11nを介して互いに接着させることができ、剛性の高い無機絶縁層11を形成することができる。
【0076】
また、(1)の工程にて、銅箔13xの一主面に凹凸が形成されている場合、該凹凸に沿って無機絶縁層11が形成されため、無機絶縁層11において銅箔13x側の主面に第1凸部15aを形成するとともに、該第1凸部15a間に無機絶縁層11の一部を充填させることができる。
【0077】
無機絶縁ゾル11xの乾燥は、例えば加熱及び風乾により行われ、温度が20℃以上溶剤の沸点(二種類以上の溶剤を混合している場合には、最も沸点の低い溶剤の沸点)未満に設定され、乾燥時間が20秒以上30分以下に設定されていることが望ましい。その結果、溶剤の沸騰を低減することにより、第2無機絶縁粒子11mの充填密度を高めることが
できる。
【0078】
なお、溶剤を蒸発させる際、溶剤は第2無機絶縁粒子11mと濡れ性が良いことから、第2無機絶縁粒子11m同士の近接点に残留しやすい。その結果、該近接点への溶剤の移動に伴って、第1無機絶縁粒子11nが該近接点へ移動するため、第2無機絶縁粒子11m同士の間に第1無機絶縁粒子11nを介在させることができる。
【0079】
また、粒径の大きい第2無機絶縁粒子11mを含む領域と比較して、粒径の小さい第1無機絶縁粒子11nを含む領域において溶剤が多く蒸発するため、第1無機絶縁粒子11n及び第2無機絶縁粒子11mに取り囲まれた空隙を形成することができる。
【0080】
無機絶縁ゾル11xの加熱は、温度が溶剤の沸点以上第1無機絶縁粒子11n及び第2無機絶縁粒子11mの結晶化開始温度以下に設定されていることが望ましい。その結果、該加熱温度が溶剤の沸点以上であることにより、残存した溶剤を効率良く蒸発させることができる。また、該加熱温度が、第1無機絶縁粒子11n及び第2無機絶縁粒子11mの結晶化開始温度未満であることにより、第1無機絶縁粒子11n及び第2無機絶縁粒子11mの結晶化を低減し、アモルファス状態の割合を高めることができる。その結果、無機絶縁層11にて、結晶化に伴う相転移によって生じるクラックを低減できる。特に、第1無機絶縁粒子11n及び第2無機絶縁粒子11mの無機絶縁材料として酸化ケイ素を使用した場合、第1無機絶縁粒子11nの結晶化を効果的に低減することができる。なお、結晶化開始温度は、非晶質の無機絶縁材料が結晶化を開始する温度、すなわち、結晶相領域の体積が増加する温度である。また、例えば酸化ケイ素の結晶化開始温度は1300℃程度である。
【0081】
なお、無機絶縁ゾル11xの加熱は、温度が100度以上600度未満に設定され、時間が例えば0.5時間以上24時間以下に設定されていることが望ましい。また、無機絶縁ゾル11xの加熱は、例えば大気雰囲気中で行うことができる。また、温度を150℃以上に上げる場合、銅箔13xの酸化を抑制するため、無機絶縁ゾル11xの加熱は、真空、アルゴン等の不活性雰囲気又は窒素雰囲気にて行われることが望ましい。
【0082】
一方、無機絶縁ゾル11xの加熱前における第1無機絶縁粒子11nの粒径は、110nm以下、特に50nm以下に設定されていることが望ましい。その結果、無機絶縁ゾル11xの加熱温度が、第1無機絶縁粒子11nの結晶化開始温度未満及び第1樹脂接着層12aの熱分解温度未満と低温であっても、第1無機絶縁粒子11n同士を強固に結合させることができる。これは、第1無機絶縁粒子11nの粒径が110nm以下と超微小に設定されているため、第1無機絶縁粒子11nの原子、特に表面の原子が活発に運動するため、かかる低温でも第1無機絶縁粒子11n同士が強固に結合すると推測される。
【0083】
また、かかる第1無機絶縁粒子11nの粒径は、より小さく設定することによって、より低温にて第1無機絶縁粒子11n同士を強固に結合させることができる。第1無機絶縁粒子11n同士を強固に結合させることができる温度は、例えば、かかる粒径を110nm以下に設定した場合は250℃程度であり、かかる粒径を50nm以下に設定した場合は150℃程度である。
【0084】
また、無機絶縁ゾル11xの固形分は、第1無機絶縁粒子11nを5体積%以上含むことが望ましい。その結果、第2無機絶縁粒子11m同士の近接点に介在される第1無機絶縁粒子11nの量を確保し、第2無機絶縁粒子11m同士が接触する領域を低減することで、無機絶縁部の剛性を高めることができる。
【0085】
以上のようにして、積層シート17を形成することができる。
【0086】
(3)図4(a)に示すように、樹脂基体前駆体10xを準備する。樹脂基体前駆体10xは、例えば、未硬化樹脂と基材とを含む複数の樹脂シートを積層することにより作製することができる。なお、未硬化は、ISO472:1999に準ずるA‐ステージ又はB‐ステージの状態である。
【0087】
(4)図4(b)及び図4(c)に示すように、樹脂基体前駆体10xの上下面それぞれに無機絶縁層11を介して積層シート17を積層し、該積層体を上下方向に加熱加圧することにより、樹脂基体前駆体10xを熱硬化させて樹脂基体10とし、樹脂基体10の上下に無機絶縁層11を備えた積層板16を形成する。
【0088】
該積層体の加熱加圧は、温度が樹脂基体10の硬化開始温度以上熱分解温度未満に設定されていることが望ましい。具体的には、該積層体の加熱加圧は、温度が例えば170℃以上230℃以下に設定され、圧力が例えば2MPa以上10MPa以下に設定され、時間が例えば0.5時間以上2時間以下に設定されている。なお、硬化開始温度は、樹脂が、ISO472:1999に準ずるC‐ステージの状態となる温度である。
【0089】
なお、該積層体の加熱加圧の際に、樹脂基体前駆体10xが軟化流動するため、例えば平坦な金属板で加熱加圧することにより、平坦性に優れた積層板16を形成することができる。
【0090】
また、該積層体の加熱加圧の際に、樹脂基体前駆体10xを軟化流動させて、樹脂基体前駆体10xの一部を無機絶縁層11の空隙に開口を介して充填し、該樹脂基体前駆体10xの一部を熱硬化させることにより、樹脂部を形成することができる。その結果、空隙に樹脂基体前駆体10xの一部を充填することにより、無機絶縁層11の絶縁性を高めることができる。
【0091】
以上のようにして、積層板16を作製することができる。
【0092】
(コア基板5の作製)
(5)図4(d)に示すように、基体7を上下方向に貫通するスルーホール導体8を形成し、基体7上に導電層13を形成する。具体的には、以下のように行う。
【0093】
まず、例えばドリル加工やレーザー加工等により、基体7を厚み方向に貫通したスルーホールを複数形成する。次に、例えば無電解めっき、蒸着法、CVD法又はスパッタリング法等により、スルーホールの内壁に導電材料を被着させて、円筒状のスルーホール導体8を形成する。次に、円筒状のスルーホール導体8の内部に、樹脂材料等を充填し、絶縁体9を形成する。次に、例えば無電解めっき法、蒸着法、CVD法又はスパッタリング法等により、導電材料を絶縁体9の露出部に被着させる。次に、フォトリソグラフィー技術、エッチング等を用いて銅箔13xをパターニングすることにより、導電層13を形成する。
【0094】
このように導電層13を形成することにより、導電層13(第1導電層13a)の一主面の少なくとも一部を無機絶縁層11(第1無機絶縁層11a)に当接させることができる。
【0095】
また、導電層13は、パターニングにより形成された後、蟻酸等の有機酸を主成分とするエッチング液により、表面が粗化されていることが望ましい。その結果、第2凸部15bが形成される。
【0096】
以上のようにして、コア基板5を作製することができる。
【0097】
(配線基板3の作製)
(6)図5(a)に示すように、(1)乃至(2)の工程と同様に銅箔13xと無機絶縁層11xとを有する積層シート17を形成した後、未硬化の樹脂層前駆体12xを、無機絶縁層11xを介して積層シート17上に載置する。
【0098】
(7)図5(b)及び(c)と、図6(a)及び(b)と、に示すように、コア基板5の上下面それぞれに樹脂層前駆体12xを介して積層シート17を積層し、該積層体を上下方向に加熱加圧することにより、樹脂層前駆体12xを熱硬化させて樹脂層12とし、コア基板5上下に樹脂層12、無機絶縁層11を形成する。
【0099】
ここで、該積層体を上下方向に加熱加圧する際に、該加熱によって積層シート17の無機絶縁層11(第2無機絶縁層11b)と第1導電層13aとの間の樹脂層前駆体12xを軟化流動させるとともに、該加圧によって樹脂層前駆体12xをコア基板5上の導電層13同士の間に移動させることにより、第2無機絶縁層11bを第1導電層13aの少なくとも一部に当接させることができる。なお、第1導電層13aにおける第2無機絶縁層11bとの当接領域比は、樹脂層前駆体12xの厚み、加熱加圧時の圧力、又は加圧に用いる押圧部材の硬さ等を適宜調整することにより、調節することができる。
【0100】
また、コア基板5の上下面それぞれに積層シート17を積層する際、第2凸部15b同士の間に隙間が形成されるため、該積層体を上下方向に加熱加圧する際に、軟化流動した樹脂層前駆体12xを該隙間に移動させることにより、延在部12aを形成することができる。
【0101】
また、該積層体の加熱加圧の際に、軟化流動した樹脂層前駆体12xが、平面視における面積の大きい第2導電層13b上に残留しやすいため、第2導電層13bにおいて、第2無機絶縁層11bとの当接領域比を大きくすることができる。
【0102】
また、該積層体の加熱加圧の際に、樹脂層前駆体12xを軟化させて流動させて、樹脂層前駆体12xの一部を無機絶縁部の空隙に開口を介して充填し、樹脂層前駆体12xの一部を熱硬化させることにより、樹脂部を形成することができる。
【0103】
なお、該積層体の加熱加圧は、例えば(4)の工程と同様に行うことができる。
【0104】
(8)図7(a)に示すように、樹脂層12、無機絶縁層11及び銅箔13xを上下方向に貫通するビア導体14を形成し、第1樹脂接着層12a上に導電層13を形成する。具体的には、以下のように行う。
【0105】
まず、例えばYAGレーザー装置又は炭酸ガスレーザー装置により、樹脂層12、無機絶縁層11(第2無機絶縁層11b)及び銅箔13xにビア孔を形成し、ビア孔内に導電層13(第1導電層13a)の少なくとも一部を露出させる。次に、例えばセミアディティブ法又はサブトラクティブ法等により、ビア孔にビア導体14を形成するとともに無機絶縁層11上に導電層13を形成する。
【0106】
ここで、第1導電層13a上にビア孔を形成する際、第1導電層13aの少なくとも一部が第2無機絶縁層11bに当接しているため、ビア孔が貫通される樹脂層12を低減することができる。その結果、ビア孔に残留する樹脂材料の残渣を低減することができるため、第1導電層13aとビア導体14と接続信頼性を高めることができる。
【0107】
(9)図7(b)に示すように、(6)乃至(8)の工程を繰り返すことにより、コア基板5上下に配線層6を形成する。なお、本工程を繰り返すことにより、配線層6をより多層化することができる。
【0108】
以上のようにして、配線基板3を作製することができる。
【0109】
(実装構造体1の作製)
(10)バンプ4を介して配線基板3に電子部品2をフリップチップ実装することにより、図1に示した実装構造体1を作製することができる。
【0110】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良、組み合わせ等が可能である。
【0111】
例えば、上述した本発明の実施形態は、配線層にて樹脂層及び無機絶縁層それぞれを2層積層した構成を例に説明したが、樹脂層及び無機絶縁層は何層積層しても構わない。
【0112】
また、上述した本発明の実施形態は、無機絶縁部が第1無機絶縁粒子及び第2無機絶縁粒子を含む構成を例に説明したが、無機絶縁部は、どちらか一方のみ含んでも構わないし、双方を含んでいなくても構わないし、第1無機絶縁粒子及び第2無機絶縁粒子とは粒径の異なる無機絶縁粒子がさらに含まれていても構わない。
【0113】
また、上述した本発明の実施形態は、樹脂基体が基材を含む構成を例に説明したが、樹脂基体は基材を含まなくても構わない。配線基板が、基材を含まない樹脂基体と無機絶縁層とを備えている場合、無機絶縁層により配線基板の剛性を高めつつ平面方向への熱膨張率を低減し、基材を含まないことにより配線基板の厚みを小さくしつつ平坦性を高めることができる。
【0114】
また、上述した本発明の実施形態は、基体が樹脂基体を備えた構成を例に説明したが、基体は金属板を樹脂で被覆したものを用いても構わない。
【0115】
また、上述した本発明の実施形態は、配線基板がコア基板及び配線層の両方に無機絶縁層を備えた構成を例に説明したが、配線基板は少なくとも2層の無機絶縁層を備えていればよく、コア基板又は配線層のどちらか一方のみに無機絶縁層を備えていても構わない。また、配線基板が配線層のみに無機絶縁層を有する場合、配線基板は、コア基板として例えばセラミック基板等を備えていても構わないし、コア基板を備えていなくても構わない。
【0116】
また、上述した本発明の実施形態は、第1導電層の一主面の少なくとも一部が当接する第1無機絶縁層を、樹脂基体上に形成された無機絶縁層とした構成を例に説明したが、第1無機絶縁層は、配線基板内のいずれに形成されていてもよく、樹脂層上に形成されていても構わない。
【0117】
また、上述した本発明の実施形態は、第1導電層及び第2導電層が同一層に形成されている構成を例に説明したが、異なる層に形成されていても構わない。
【0118】
また、上述した本発明の実施形態は、第1導電層が、一主面に第1凸部を有し、他主面に第2凸部を有する構成を例に説明したが、どちらか一方のみ形成されても構わない。
【0119】
また、上述した本発明の実施形態は、(1)の工程にて銅箔を用いた構成を例に説明したが、例えば銅箔以外の金属箔を用いても構わない。
【0120】
また、上述した本発明の実施形態は、(2)の工程にて溶剤を蒸発させた後、無機絶縁ゾルを加熱する構成を例に説明したが、溶剤の蒸発と無機絶縁ゾルの加熱とを同時に行っても構わない。
【0121】
また、上述した本発明の実施形態は、(6)の工程にて未硬化の第2樹脂接着層前駆体を積層シート上に載置した構成を例に説明したが、未硬化で液状の第2樹脂接着層前駆体を無機絶縁層に塗布しても構わない。
【0122】
また、上述した本発明の実施形態は、(8)の工程にてセミアディティブ法又はサブトラクティブ法等により導電層を形成する構成を例に説明したが、例えば硫酸及び過酸化水素水の混合液、塩化第二鉄溶液又は塩化第二銅溶液等を用いたエッチング法により、第2樹脂接着層上から銅箔を剥離した後、セミアディティブ法、サブトラクティブ法又はフルアディティブ法等により導電層を形成しても構わない。
【符号の説明】
【0123】
1 実装構造体
2 電子部品
3 配線基板
4 バンプ
5 コア基板
6 配線層
7 基体
8 スルーホール導体
9 絶縁体
10 樹脂基体
10x 樹脂基体前駆体
11 無機絶縁層
11x 無機絶縁ゾル
12 樹脂層
12a 延在部
12x 樹脂層前駆体
13 導電層
13x 銅箔
14 ビア導体
15a 第1凸部
15b 第2凸部
16 積層板
17 積層シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚み方向に沿って離間した第1及び第2無機絶縁層と、該第1及び第2無機絶縁層の間に部分的に形成された第1導電層と、前記第1及び第2無機絶縁層の間に介在され、前記第1導電層に並設された樹脂層と、を備え、
前記第1導電層は、一主面の少なくとも一部が前記第1無機絶縁層に当接され、他主面の少なくとも一部が前記第2無機絶縁層に当接されていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
請求項1に記載の配線基板において、
前記樹脂層は、前記第1及び第2無機絶縁層に接着されていることを特徴とする配線基板。
【請求項3】
請求項1に記載の配線基板において、
前記第1及び第2無機絶縁層の間に介在され、前記第1導電層に対して平面方向に沿って離間した第2導電層を更に備え、
前記第1及び第2導電層の間には、前記樹脂層が介在されていることを特徴とする配線基板。
【請求項4】
請求項1に記載の配線基板において、
前記第1導電層は、前記一主面において、前記第1無機絶縁層に向って突出し、少なくとも一部が前記第1無機絶縁層と当接した複数の第1凸部を有し、
前記第1無機絶縁層は、一部が前記第1凸部間に充填されていることを特徴とする配線基板。
【請求項5】
請求項1に記載の配線基板において、
前記第1導電層は、前記他主面において、前記第2無機絶縁層に向って突出し、少なくとも一部が前記第2無機絶縁層と当接した複数の第2凸部を有し、
前記樹脂層は、一部が前記第1導電層と前記第2無機絶縁層との間に延在され、該延在部が前記第2凸部間に充填されるとともに前記第1導電層及び前記第2無機絶縁層に接着されていることを特徴とする配線基板。
【請求項6】
請求項1に記載の配線基板において、
前記第1導電層よりも平面視における面積の大きい、接地用配線又は電力供給用配線である第2導電層を更に備え、
前記第1導電層は、信号用配線であるとともに、前記第2無機絶縁層との当接領域及び非当接領域の和に対する当接領域の割合が、前記第2導電層よりも大きいことを特徴とする配線基板。
【請求項7】
請求項1に記載の配線基板において、
前記第2無機絶縁層を介して、前記第1導電層に対して厚み方向に沿って離間した第3導電層と、
前記第2無機絶縁層を厚み方向に貫通し、前記第1及び前記第3導電層に電気的に接続されたビア導体と、
を更に備えたことを特徴とする配線基板。
【請求項8】
請求項1に記載の配線基板と、
前記配線基板に搭載され、前記第1導電層に電気的に接続された電子部品と、
を備えたことを特徴とする実装構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−159649(P2011−159649A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−17645(P2010−17645)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】