説明

配車システム

【課題】車両の走行ルートを容易に監視することができる配車システムを提供する。
【解決手段】各移動局装置2−1〜2−Nは、車両の位置を表す位置情報を取得し、取得された位置情報を管理センタ装置5に送信する。車両管理情報データベース52には、予め設定された、車両が通過すべき指定地域と当該指定地域を通過すべき指定回数とを車両が記憶される。管理センタ装置5は、移動局装置2−1〜2−Nからそれぞれ送信される位置情報を受信すると、車両管理情報データベース52を参照して、受信された位置情報をもとに前記車両が指定地域を通過した回数を計数する。計数された回数が指定回数に達したか否かを判定し、計数された回数が指定回数に達しないと判定された場合に当該車両に警告情報を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば業務用無線によるタクシー配車用AVM(Automatic Vehicle Monitoring)システム等の配車システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のタクシー配車用AVMシステム等の無線移動通信システムでは、移動局である車両(タクシー)の現在位置を、GPS(Global Positioning System)により移動局自身が検出している。そして、各移動局は基地局との間で送受信される定期的なポーリング信号にのせて、移動局の車両番号毎に割り当てられた専用の送信スロットで動態位置情報を返送する。
【0003】
一方、基地局ではカバーエリアに存在する移動局全車両に対して順にポーリングを行い、全ての移動局の位置動態情報を把握する。なお、基地局は、管理センタにそれぞれ接続されており、管理センタにて顧客情報や配車の管理等を行っている。管理センタではタクシー顧客からの要求に従って、移動局の位置動態情報から最適な車両を検索してタクシー車両の配車を行う。
ところが、走行せずに客待ちを繰り返す滞留車両や集客の望めない地域を無駄に走行する車両については、管理センタのオペレータがAVMシステムにおける端末画面上で車両の位置や動態などを目視で確認し、警告を行う方式のみであった。
【0004】
なお、本願に関連する公知文献として、例えば次のようなものがある(特許文献1を参照。)。
【特許文献1】特開2005−269142公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、従来の技術では、管理センタでは顧客の現在位置の情報に従い、最適な車両の検索にGPSシステムやポーリングによるデータ伝送の技術を使用し、また配車情報を文字等で伝送することで運用の効率化を図っており、より早く顧客のもとへ到着するなど顧客サービスの向上を図っている。
【0006】
一方、営業収入を増収させるには、無線配車だけではなく、車両を走行させてフリーの顧客を獲得する必要がある。そこで、集客を望める地域を効率よく走行させるためには、管理センタのAVMシステムにおける端末画面上で車両の位置を確認し、該当車両に通知する必要があるが、配車など通常の業務を行いながら全車両の走行ルートを常時監視することは困難である。
【0007】
この発明は上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは、車両の走行ルートを容易に監視することができる配車システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するためにこの発明に係る配車システムは、車両に搭載される移動局装置と、前記移動局装置と無線回線を介して接続され、前記車両に配車指示を行う管理センタ装置とを具備する配車システムであって、前記移動局装置は、前記車両の位置を表す位置情報を取得する位置取得手段と、前記取得された位置情報を前記管理センタ装置に送信する位置送信手段とを備え、前記管理センタ装置は、予め設定された、前記車両が通過すべき指定地域と当該指定地域を通過すべき指定回数とを記憶する記憶手段と、前記移動局装置から送信される位置情報を受信する受信手段と、前記受信された位置情報をもとに前記車両が前記指定地域を通過した回数を計数する計数手段と、前記計数された回数が前記指定回数に達したか否かを判定する判定手段と、前記計数された回数が前記指定回数に達しないと判定された場合に前記車両に警告情報を送信する警告送信手段とを備える。
【0009】
上記構成では、予め指定された車両が通過すべき指定地域と通過すべき指定回数とを設定しておき、移動局装置から送信される位置情報をもとに車両が上記地域を通過したか否かを判定し、通過すべき回数に達しない車両には警告を喚起することで集客率の向上を図るものである。
【発明の効果】
【0010】
したがってこの発明によれば、車両の走行ルートを容易に監視することができる配車システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照してこの発明の実施形態について詳細に説明する。
図1は、車両管理システムの一実施形態を示す概略構成図で、GPSを利用したタクシー配車用AVMシステムの一実施例である。
図1において、基地局1−1,1−2,・・・,1−nは、無線通信可能な範囲(カバーエリア)を形成する無線基地局装置である。管理センタ装置5は、複数の基地局1−1,1−2,・・・,1−nと専用線を介して接続される。移動局(タクシー車両)2−1,2−2,・・・,2−Nは、上記基地局1−1が形成する基地局カバーエリア内に位置するタクシー車両である。
【0012】
基地局と移動局との間の業務用無線の方式として、デジタルSCPC(Single Channel Per Carrier)方式を使用する。移動局2−1,2−2,・・・,2−Nは、基地局1−1を介して管理センタ装置5とポーリング方式による通信を行う。管理センタ装置5からの指示により一定期間毎にポーリング信号P1が基地局1−1を介して全移動局2−1,2−2,・・・,2−Nに送信される。各移動局2−1,2−2,・・・,2−Nは、このポーリング信号P1に対するポーリング応答信号P2−1,P2−2,・・・,P2−Nをそれぞれ順番に送信する。また、各移動局2−1,2−2,・・・,2−Nは、GPS衛星6から位置情報を受けて、車両の位置情報(経度、緯度)を取得することができる。取得された位置情報は、例えば車両の動態情報(実車、空車等)と共に、ポーリング応答信号P2−1,P2−2,・・・,P2−Nにより管理センタ装置5に送信される。
【0013】
図2は、各移動局2−1,2−2,・・・,2−Nに搭載される移動局装置の構成を示すブロック図である。
移動局装置2は、制御部21、無線通信インタフェース(無線通信I/F)22、GPS受信部23、位置情報送信部24、及び操作表示部25を備える。無線通信I/F22は、制御部21による制御の下、基地局1−1との間で無線通信を行う。GPS受信部23は、上述したようにGPS衛星6から自局の位置情報を受信する。位置情報送信部24は、制御部21により実行される制御プログラムであり、管理センタ装置5から送信されるポーリング信号に応じて、自局の位置情報を動態情報等と共にポーリング応答信号に乗せて管理センタ装置5に向け送信する。GPS受信部23で受信された位置情報を管理センタ装置5に向け送信する。操作表示部25は、車両に搭載される操作器であり、操作入力用の操作ボタンと、液晶表示器(LCD)等の表示装置や車両内のスピーカなどで構成される。
【0014】
図3は、管理センタ装置5の構成を示すブロック図である。
管理センタ装置5は、制御部51、車両管理情報データベース52、指定地域登録部53、通過判定部54、操作入力部55、表示部56、及び通信インタフェース(通信I/F)57を備える。通信インタフェース(通信I/F)F57は、制御部51による制御の下、上記基地局1−1,1−2,・・・,1−nとの間で通信を行う。操作入力部55は、マウスやキーボード等の入力装置であり、表示部56は、液晶表示器(LCD)等である。
【0015】
指定地域登録部53及び通過判定部54は、制御部31により実行される制御プログラムである。指定地域登録部53は、配車オペレータにより指定される車両が通過すべき地域(以下、指定地域とする。)とその地域を通過すべき回数(以下、指定回数とする。)とを車両管理情報データベース52に登録する。
【0016】
通過判定部54は、各移動局から送られてくる位置情報を車両管理情報データベース52と照合し、車両が指定地域を通過した回数を車両管理情報データベース522に蓄積する。さらに、指定地域への通過回数が上記指定回数に達しないと判定された車両には警告情報を送信する。なお、この警告情報の送信処理は、後述するように、管理センタ装置5の表示部56の画面に通過回数不足を表す情報をアラーム表示し、そのアラームに応じて配車室オペレータが警告情報を該当車両に送信するようにしても良い。
【0017】
次に、このように構成された配車システムの動作について説明する。
図4は、指定地域への通過回数が不足する車両へ警告情報を送信する場合の信号の流れを示したものである。
図4において、移動局装置2は、一定期間毎に車両の位置情報と動態情報とを含む動態位置データを管理センタ装置5に向け送信する。管理センタ装置5は、動態位置データを受信し、受信した動態位置データに含まれる位置情報と車両管理情報データベース52との照合を行い、各車両2−1〜2−Nが指定地域を通過した回数を計数する。そして、計数された回数が上記指定回数に達したか否かを判定し、計数された回数が指定回数に達しないと判定された場合に当該車両2−1に警告情報を送信する。
【0018】
図5は、指定地域設定画面の一例を示す図である。
図中501は登録された指定地域の一覧を示す。オペレータは、図中502の入力欄において、通過すべき地域の名称を入力し、図中503において指定地域の範囲を地図上で設定する。通過判定部54において、この破線で囲まれた地域の緯度経度と車両から送信される緯度経度とが比較され、車両がその指定地域を通過したか否かが判定される。また、図中502の入力欄において、その指定地域を通過しなければならない回数を設定することができる。指定地域登録部53は、この指定地域設定画面を介してオペレータにより入力される指定地域の設定情報を車両管理情報データベース52に記憶する。なお、図6は、複数設定された指定地域を地図表示した場合の画面例である。例えば、図中501で選択された地域が図中601のようにパターン表示される。
図7は、指定地域への通過が不足する車両に対して警告を通知する画面例である。
図中701には指定地域への通過回数が表示され、指定回数に達しない場合には車両へ警告信号を送信するための警告送信ボタン(図中702)がアクティブとなる。オペレータにより予め定められた条件(乗務開始後一定時間経過後の通過地域通過数など)で、この画面もしくは警告専用画面(図示せず)を表示し、オペレータが目視で確認後、該当車両へ警告情報を送信する。
【0019】
図8及び図9は、教育・指導用の帳票の一例である。
図8は、車両毎の運行記録の一例であり、車両管理情報データベース52に設定された指定地域を通過した時刻と通過した指定地域名とが明示される。また、図9は、乗務員別の従事事業実績を表した例であり、例えば、車両管理情報データベース52に設定された指定地域について、すべて通過した場合は“○”、通過が不足する場合には“×”を表示するようにすることもできる。
【0020】
従来は、各移動局からの位置と動態を管理センタのAVMシステム端末の画面上による目視での確認後に、音声での連絡により警告を行い、走行を促す方法となっていた。この場合全車両の走行を終日人手によって確認することは不可能に近く、仮にサンプル車両を決めて監視を行ったとしても人為的ミスが発生する場合があり、正確な通知が困難であった。
【0021】
これに対し、上記実施形態では、管理センタ装置5は、予め指定された車両が通過すべき指定地域と当該指定地域を通過すべき指定回数とを車両管理情報データベース52に記憶しておき、移動局装置2−1〜2−Nからそれぞれ送信される位置情報を受信すると、車両管理情報データベース52を参照して、受信された位置情報をもとに前記車両が指定地域を通過した回数を計数する。計数された回数が指定回数に達したか否かを判定し、計数された回数が指定回数に達しないと判定された場合に当該車両に警告情報を送信するようにしている。
【0022】
したがって上記実施形態によれば、管理センタ装置5において、移動局から送信される位置情報をもとに指定地域への通過判定をリアルタイムで行うため、警告通知の遅れや人為的ミスが無くなり、車両の走行ルートを容易に監視することができる。これにより、例えば、タクシー車両が自発的に集客を望める地域を走行するようになるため、結果的にフリーの顧客を獲得することに繋がり、タクシー会社の営業収入の増収を図ることが可能となる。
【0023】
なお、この発明は、上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明に係る配車システムの一実施形態を示す概略構成図。
【図2】各移動局に設けられる移動局装置の構成を示すブロック図。
【図3】管理センタ装置の構成を示すブロック図。
【図4】指定地域への通過回数が不足する車両へ警告情報を送信する場合の信号の流れを示す図。
【図5】指定地域設定画面の一例を示す図。
【図6】指定地域設定結果を示す画面例を示す図。
【図7】指定地域への通過が不足する車両に対して警告を通知する画面例を示す図。
【図8】教育・指導用の帳票の一例を示す図。
【図9】教育・指導用の帳票の一例を示す図。
【符号の説明】
【0025】
1−1〜1−n…基地局、2−1〜2−N…移動局、5…管理センタ装置、6…GPS衛星、P1…ポーリング信号、P2−1〜P2−N…ポーリング応答信号、D6…位置情報、2…移動局装置、21…制御部、22…無線通信インタフェース、23…GPS受信部、24…位置情報送信部、25…操作表示部、51…制御部、52…車両管理情報データベース、53…指定地域登録部、54…通過判定部、55…操作入力部、56…表示部、57…通信インタフェース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される移動局装置と、前記移動局装置と無線回線を介して接続され、前記車両に配車指示を行う管理センタ装置とを具備する配車システムであって、
前記移動局装置は、
前記車両の位置を表す位置情報を取得する位置取得手段と、
前記取得された位置情報を前記管理センタ装置に送信する位置送信手段と
を備え、
前記管理センタ装置は、
予め設定された、前記車両が通過すべき指定地域と当該指定地域を通過すべき指定回数とを記憶する記憶手段と、
前記移動局装置から送信される位置情報を受信する受信手段と、
前記受信された位置情報をもとに前記車両が前記指定地域を通過した回数を計数する計数手段と、
前記計数された回数が前記指定回数に達したか否かを判定する判定手段と、
前記計数された回数が前記指定回数に達しないと判定された場合に前記車両に警告情報を送信する警告送信手段と
を備えることを特徴とする配車システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−199551(P2009−199551A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−43429(P2008−43429)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】