説明

金属あるいはセラミックコア材料を含むコア/シェルタイプの触媒粒子およびそれらの製造方法

本発明はMコア/Mシェル構造を含み、その際、Mコア=粒子の内部コア且つMシェル=粒子の外部シェルであるコア/シェルタイプの触媒粒子に関し、触媒粒子の平均直径(dコア+シェル)が20〜100nmの範囲、好ましくは20〜50nmの範囲であることを特徴とする。外部シェルの厚さ(tシェル)は、前記の触媒粒子の内部の粒子コアの直径の約5〜20%であり、好ましくは少なくとも3原子層を含む。粒子内部の粒子コア(Mコア)は金属あるいはセラミック材料を含む一方、外部シェルの材料(Mシェル)は貴金属および/またはそれらの合金を含む。前記コア/シェルタイプの触媒粒子は、好ましくは適した担体材料、たとえばカーボンブラック上に担持され、且つ、燃料電池用の電極触媒として、および他の触媒用途に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は燃料電池、特にPEM燃料電池の電極触媒として使用するための先進のコア/シェルタイプの触媒粒子に関する。該触媒粒子は貴金属あるいは貴金属ベースの合金を表面層("シェル")に有し、且つ内部の層("コア")に金属あるいはセラミック材料を有するコア/シェル構造を特徴とする。コアの材料は貴金属、卑金属および/またはそれらの合金あるいはセラミック材料を含み、シェルの材料は貴金属を含む。該触媒粒子の平均(medium)直径は、20〜100nmの範囲であり、好ましくは、該触媒粒子を担体材料、例えば導電性カーボンブラック上に担持させる。
【0002】
コア/シェルタイプの触媒粒子、特にPtベースのシェルを有する粒子は高い比活性を示す。利点として、それらはコア/シェル構造ゆえに低い貴金属含有率を有する。該触媒粒子は高い比質量活性("SMA")、およびメンブレン型燃料電池、例えばPEMFC(ポリマー電解質メンブレン型燃料電池)あるいはDMFC(ダイレクトメタノール型燃料電池)の陰極での酸素還元反応("ORR")において改善した特性を特徴とする。それらは主としてモバイル用途の燃料電池内の電極触媒としての使用のために設計されている。
【0003】
しかしながら、それらは他の用途、例えば気相触媒において、あるいは自動車用の触媒コンバータにおいても使用できる。
【0004】
燃料電池はモバイル用、定置用あるいは移動用電源として重要さを増してきている。原則として燃料電池は気体で動作する電池であり、水素と酸素との反応から得られる化学エネルギーが直接電気エネルギーに変換される。
【0005】
白金(Pt)に基づく電極触媒をPEM燃料電池の陽極および陰極側に慣例的に使用する。それらは導電性担体材料(一般にカーボンブラックあるいはグラファイト)上に堆積された微細に分割された貴金属粒子を含む。通常、貴金属濃度は、触媒の総質量に対して20〜60質量%の範囲である。
【0006】
PEMFC技術の商業化を促進するために、貴金属、例えば白金の大幅な減少を実現しなければならない。同時に、現在使用されている電極触媒の比活性を改善しなければならない。
【0007】
緩徐な酸素の還元速度のために、PEMFC用のMEA中での陰極のPt装填量は比較的高いままであり、且つ〜0.4mgPt/cm2の範囲でエネルギー効率目標を満たす。それらの効率目標は下記のように文献内に報告されている(M.F.Mathias et al.,The Electrochemical Society−Interface; Fall 2005, pages24−35を参照):
セル電圧 >0.65V
MEA出力密度 >0.9W/cm2
比出力密度 〜0.5gPt/kW
比質量活性(陰極触媒) >440A/gPt
これらの目標は〜$18/kWの触媒コストをもたらし(担持されたPt/C触媒については$35/gPtと推定)、且つ、0.2gPt/kWのPt消費に等しい<$10/kWの厳しい自動車のコスト要求を満たさない。明らかにPt陰極装填量を0.1mgPt/cm2のレベルまで下げて<0.2gPt/kWの目標を満たさなければならない一方、これはセル電圧において40mVの損失を導き、それは効率上の理由から受け入れられない。
【0008】
それらの考察に基づいて、0.9W/cm2という目標に向かって全体の出力密度を改善するためには、4倍に強化された活性を有する、改善した陰極電極触媒が必要である。さらには、該触媒は、車の動的な操作の結果として0.6〜1.1Vで>300,000回の電圧サイクルの負荷サイクルに耐えなければならない。現在使用可能な電極触媒では、この負荷サイクルは白金の著しい損失および金属粒子の焼結をもたらす。結果として、技術水準の電極触媒では触媒活性および特性の劇的な損失が起こる(上述のM.F.Mathias et al.を参照)。
【0009】
PEMFCの陰極に現在適用されている標準的な電極触媒はPtあるいはPt合金(例えばPt/Co、Pt/NiあるいはPt/Cr)に基づいており、導電性のカーボンブラック上に担持されている。これらの触媒は非常に高い金属表面積で(電気化学的表面積"ECA"としてm2/gPtで測定)、粒子表面で各々の金属原子の使用率を最大にするように設計されている。
【0010】
技術水準の触媒は、高表面積のカーボンブラック担体上で20〜60質量%のPtを含み、且つ3nm未満の平均粒子サイズ(TEMで測定)を有する80〜120m2/gPtの範囲の金属表面積(ECA)を示す。それらの電極触媒の比活性("SA")は0.15〜0.2mA/cm2Ptの範囲である[単独のPEM電池において標準的な動作条件;即ちセル電圧0.9V、温度80℃、圧力150kPa、および完全加湿で測定]。
【0011】
様々な触媒の質量に関連したコスト/特性側面を比較するために、比活性を比質量活性(mA/mgPtあるいはA/gPtでの"SMA")に変換しなければならない。上述のECA値を用いると、市場で現在使用可能な電極触媒で90〜120A/gPtの範囲のSMAの数値が得られる。4倍の要求特性が求められるとすれば、これには先進の電極触媒に360〜480A/gPtのSMAが要求される。
【0012】
様々なPt合金(例えばPt/Cr、Pt/CoあるいはPt/Ni)を使用する場合、純粋なPtと比較して2〜4倍の比活性(SA)の増加が達成されることが実証されている(V.R.Stamenkovic et al., J.Am.Chem.Soc.2006, volume 128, 8813−8819を参照)。しかしながら、この改善だけでは、自動車産業のコスト要求を満たすのにまだ充分ではない。
【0013】
電極触媒特性への粒径の効果の影響を理解するため、過去に多くの研究が行われた。様々な平均粒径を有する標準的なPt/C触媒の比較は、粒径の1nmから30nmへの増加に伴う活性の増加を示す(0.1M HClO4中でのRDE測定;P.N.Ross et al., 講演"New electrocatalysts for fuel cells";Project ID#FC10; DOE 2005を参照)。しかしながら、平均サイズ30nmを有する固体の均質なPt粒子を含む電極触媒は、比質量活性(SAM)で非常に低い値を示し、それはほとんどの白金が粒子の内側に埋まり、且つ触媒反応に使用されない事実のせいである。結果として、比較的粗い平均粒径を有する固体触媒粒子はより高いPt消費、より低い電極触媒Pt表面積をもたらし、従って低いPt使用率となる。
【0014】
触媒の表面のみが触媒反応を促進し、且つ内部のコアは個々の触媒粒子の反応性に寄与しないことが、当該技術分野ではよく知られている。従って、白金量のさらなる低減は、粒子表面のシェル中に白金を存在させることによって可能なはずである。このタイプの触媒は、コア/シェル触媒として知られている。過去には、文献内に前記の電極触媒が記載されている。
【0015】
J.Zhang et al.は酸素還元用電極触媒としてのコア/シェル粒子の製造について報告した。そのコアは貴金属の合金を含み、一方、そのシェルはアンダーポテンシャル析出("UPD")によって堆積されたPt単分子層からなる;J.Zhang, F.H.B Lima et al., Journal of Physical Chemistry B Letters, 2005, 109, 22701−22704を参照。そのように得られる触媒は、金属Xからなる内部コアおよびその表面のシェルの形態でPt単分子層を含む金属粒子を有するPtMLX/C(X=Au,Ag,Pd; ML=単分子層)である。
【0016】
白金で被覆されたルテニウムコアを含むコア/シェル触媒が数年前に記載された(S.R.Brankovitch, J.X.Wang and R.R.Adzic, Electrochemical and Solid State Letters 2001,4,A217を参照)。Ru/Ptのコア/シェル粒子の平均粒径は2.5nmの範囲である(TEMによる)。
【0017】
US7053021号は炭素に担持され、白金−バナジウム−鉄合金を含む1〜3nmサイズのコア/シェルナノ粒子の製造を教示する。2〜4倍の改善が報告されている。再度、この改善は自動車産業の目標を満たすのにまだ充分ではない。
【0018】
要約すると、現在の技術水準の電極触媒は、燃料電池技術の幅広い商業的導入のための特性およびコスト要求を満たすのに充分ではない。
【0019】
発明の簡単な説明
本発明の1つの課題は、特に燃料電池用途のために、高い比質量活性(SMA)、低い貴金属含有率および高い耐久性を有する、改善した触媒粒子および触媒材料を提供することである。
【0020】
本発明のさらなる課題は、それらの触媒粒子および触媒材料の製造方法を提供することである。
【0021】
それらの課題は、本発明の請求項内に記載される材料および方法によって解決される。
【0022】
本発明は多結晶バルクの貴金属表面(好ましくはPt)の特性と組み合わせたコア/シェル構造の原理に基づいている。従って、コア/シェルベースの触媒粒子であって、該粒子のシェルは多結晶バルクの貴金属(例えばPt)の特性を示すのに充分なだけ大きく、同時に該粒子のコアはシェル中に存在する貴金属(好ましくはPt)を含有しないものが提供される。
【0023】
触媒粒子の表面を多結晶バルクのPtの特性に仕立てることによって、著しく増加した比活性が得られる。バルクのPt表面の特性を実現するために、該粒子は以下の特徴を有しているべきである:
a)現在使用されているPtナノ粒子のサイズより充分大きい特定の平均サイズ(直径)、および
b)特定の厚さの外部シェル。粒子シェルの厚さ(tシェル)は、粒子の内部コアの直径(dコア)の約5〜20%、好ましくは約5〜10%であるべきである。粒子の外部シェルはさらには少なくとも3原子層の白金原子を含むべきである。Ptベースの合金の場合、そのシェルは合金元素の原子を含む少なくとも3原子層の白金原子を含むべきである。
【0024】
発明の詳細な説明
以下に本発明による触媒粒子の特徴をより詳細に記載する。
【0025】
本発明のコア/シェル触媒粒子は一般構造
コア/Mシェル
その際、
コア=粒子コアの材料
シェル=粒子シェルの材料
を特徴とする。
【0026】
コア(粒子コアの材料)は卑金属(即ち非貴金属)、貴金属および/またはそれらの混合物あるいは合金を含んでよい。適した卑金属は元素周期律(PSE)の遷移金属群から採用される。例はアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、タングステン(W)およびレニウム(Re)および/またはそれらの混合物あるいは合金である。さらには、Mコアは貴金属あるいは貴金属含有合金を含んでもよい。貴金属の例は、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)および金(Au)である。貴金属のみを含む、適したMコア合金の例はAg/AuあるいはAg/Pdである。貴金属および卑金属を含む、適したMコア合金の例はAg/CuあるいはAg/Snである。
【0027】
さらには、Mコア(粒子コアの材料)はセラミック材料を含んでよい。セラミック材料の例は、無機酸化物、例えばアルミナ(Al23)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、二酸化スズ(SnO2)あるいはセリア(Ce23および/またはCeO2)である。追加的に、混合無機酸化物(例えばMgO/SiO2、CaO/Al23/SiO2)、ペロブスカイト(例えばBaTiO3)、スピネル(MgAl24、CoAl24)、安定化無機酸化物(例えばY23−ZrO2、La23−ZrO2)あるいはドーパントCe、Ti、La、Nb、Taあるいはフッ素でドープした無機酸化物(例えばCe/ZrO2、SnO2(F))を使用できる。無機窒化物(例えばBN)も同様に用いられる。
【0028】
シェル(粒子シェルの材料)はルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)および金(Au)およびそれらの合金あるいは混合物からなる群から選択される貴金属を含む。好ましくは白金(Pt)あるいは白金ルテニウム(Pt/Ru)を使用する。さらには、白金と卑金属との合金、例えば白金ニッケル(Pt/Ni)、白金クロム(Pt/Cr)、白金コバルト(PtCo)あるいは白金銅(PtCu)も粒子シェルとして使用できる。三元系合金(例えばPtRuW)も使用できる。
【0029】
個々の触媒粒子は、20〜100nmの範囲、好ましくは20〜50nmの範囲およびさらに好ましくは20〜40nmの範囲の平均直径(dコア+シェル)を特徴とし、
コア+シェル=20〜100nm
である。
【0030】
後で概略を述べるように、触媒粒子中のPt含有率の著しい減少が、特定の最小厚さを有するシェルのPt層によって得られる。Ptベースのシェル層は、多結晶/バルク効果を粒子表面で得るために、特定の厚さを有さなければならない。粒子の外部シェルの厚さ(tシェル)は粒子の内部コアの直径(dコア)の約5〜20%、好ましくは約5〜10%であるべきであり、
シェル 〜0.05から0.2dコア
その際、
シェル=(dコア+シェル−dコア)/2
である。
【0031】
粒子の外部シェルの厚さ(tシェル)は、約1〜20nmの範囲、好ましくは約1〜10nmの範囲、より好ましくは約1〜8nmの範囲、および最も好ましくは約1〜3nmの範囲であるべきである。粒子の外部シェルはさらには少なくとも3原子層の白金原子を含むべきである。Ptベースの合金の場合、合金化元素の原子を含む少なくとも3原子層の白金原子を含むべきである。より薄い層、特に薄い白金単分子層は比活性の望ましい増加をもたらさない。
【0032】
電気化学的試験は多結晶バルクのPtで酸素還元反応(ORR)における比活性(SA)が標準的なPt/C電極触媒と比べて約5〜6倍高いことを示しており、
比活性(バルクPt):1.2mA/cm2Pt(=12A/m2Pt)
比活性(50質量%Pt/C):0.15〜0.2mA/cm2Pt(=1.5〜2A/m2Pt)
である。
【0033】
80m2/gのECAおよび平均粒径3nmを有する担持された陰極触媒(50質量%Pt/C)について、比質量活性は
比質量活性(SMA):120〜160A/gPt
によって与えられる。
【0034】
最近の結果によれば、平均粒径20nmのPt粒子は多結晶バルクのPtの約50%の比活性を有する(即ち〜0.6mA/cm2Pt)。それらの粒子は9m2/gPtの電気化学的表面積(ECA)を示している。従って、その比質量活性は54A/gPtになり、それは標準的な50質量%のPt/C触媒の質量活性の33%でしかない。同様の結果が平均粒径30nmを有するPt粒子で得られ、それはバルクの比活性の70%を保って0.8mA/cm2Pt(8A/m2Pt)を生じる。6m2/gPtのECAであれば、これは48A/gPtの質量活性を生じ、それはPt/C触媒の活性の30%でしかない(Karl J.J. Mayrhofer,博士学位論文,ウィーン工科大学,Chapter4.5,96−102,ウィーン,2005年12月を参照)。
【0035】
コア/シェルの原理をそれらの電極触媒に適用する場合、比質量活性は粒子内のPt量の減少によって増加する。
【0036】
少なくとも3原子層のシェル(少なくとも1nmのtシェルの厚さ)中のPtを、20nmのコア/シェル粒子の表面に集中させることによって、中まで詰まったPt粒子に相当する質量に対して約70%の白金分含有率の低減が得られる。従って、Pt分含有率は中まで詰まったPt粒子に相当する質量の30%だけであり、且つ比質量活性(SMA)は理論的には3.3倍増加する。これは180A/gPtのSMAを生じる。
【0037】
Ptシェルの厚さtシェル=1nmを有する30nmの粒子では、中まで詰まったPt粒子に相当する質量に対して約80%だけのPt分含有率の低減が得られる。これは240A/gPtの比質量活性(SMA)を生じる(20%のPt分含有率に対して)。粒子の白金分含有率の低減は粒子の外部シェルの厚さ(tシェル)に依存し、且つ、一般に40%より高く、好ましくは45%より高く、且つより好ましくは50%より高い。より厚いシェル層(厚さtシェル>0.2dコア)を有するコア/シェル触媒粒子は、必要とされるPt分の低減をもたらさない。
【0038】
前記の粒子にシェル材料としてPt合金を適用する場合(且つ、先に概略を述べた2〜4倍の活性改善を考慮に入れて)、得られる電極触媒は4倍の自動車産業の比質量活性目標を満たす(即ち、>440A/gPt)。
【0039】
それに加えて、平均サイズ≧20nmを有する触媒粒子は動的な電位サイクルに基づく劣化試験における焼結、Pt浸出およびオストワルド熟成に対して著しく安定である。従ってそれらはより高い持久性を示す。
【0040】
上述のMコア/Mシェル構造を含む触媒粒子は好ましくは適した担体材料の上に担持されている。適した担体材料は高表面積の粉末化材料、例えば無機酸化物、カーボンブラック、グラファイトあるいはポリマーである。好ましくは、導電性のある担体材料が使用される。好ましい担体材料は高表面積で導電性のあるカーボンブラック、高表面積のグラファイト、カーボンナノチューブ、高表面積の導電性酸化物あるいはポリマーである。適したカーボンブラックは、例えばVulcan XC72、Ketjenblack ECあるいはShawinigan Blackであり、それらは様々な供給元から市販されている。
【0041】
導電性のある担体材料の上に担持されている場合の触媒粒子の量は(以降、"触媒粒子装填率"と呼ぶ)、一般に(得られる電極触媒の総質量に対して)5〜90質量%の範囲、好ましくは10〜80質量%の範囲、および最も好ましくは20〜70質量%の範囲である。
【0042】
本発明の第一の実施態様において、触媒粒子は卑金属あるいは貴金属コアおよび白金を含むシェルを含むコア/シェル構造に基づく。
【0043】
本発明の第二の実施態様において、触媒粒子は卑金属あるいは貴金属コアおよびPt合金シェルを含むコア/シェル構造に基づく。本願では、用語"Pt合金"は非常に広義に理解される(即ち、同種の混合物、異種の混合物、追加の原子をドープされたPt、半合金、部分的な合金化状態、分離した状態等も含む)。該シェルは例えば白金とニッケルとの合金(Pt/Ni)、クロムとの合金(Pt/Cr)、コバルトとの合金(PtCo)、ルテニウムとの合金(Pt/Ru)、あるいは銅との合金(PtCu)を含んでよい。該Pt合金は不規則あるいは規則的な状態、例えばPt3CoあるいはPt3Crであってよい。三元系合金もまた使用できる(例えばPtRuW)。ここでも、該触媒粒子は20〜100nmの範囲、好ましくは20〜50nmの範囲、且つより好ましくは20〜40nmの範囲の平均サイズ(直径)を特徴とする。
【0044】
本発明の第三の実施態様において、シェルのPt合金はコアの卑金属を含む。前記組成物の例は、Ni/PtNi、Ni/PtCoあるいはCu/PtRuCuである。該Pt合金は規則的な状態、例えばPt3NiあるいはPt3Coであってよい。それらの場合、シェルのPt合金を適した熱処理工程よって製造できる。
【0045】
本発明のさらなる実施態様において、触媒粒子はセラミックコアおよび貴金属あるいは貴金属ベースの合金を含むシェルを含むコア/シェル構造に基づく。前記組成物の例は、ZrO2/Pt、CeO2/Pt、Ce/ZrO2/Pt、ZrO2/PtRuあるいはZrO2/Pt/Niである。
【0046】
コア/シェル触媒粒子は出発材料として適したコア粒子を使用した多段工程で製造できる。通常、段階的な工程を使用し、第一段階でのコア粒子の製造、および第二段階でのシェル材料の適用からなる。第三段階として、シェルの特別な構造を製造するための熱処理工程を随意に用いてもよい。第4の段階を追加して適した担体材料の上にコア/シェル粒子を担持してもよい。選択的に、コア粒子を第一段階において担持した段階で製造し、そして次に第二段階においてシェル材料によって被覆してもよい。
【0047】
さらに選択的な方法では、コア粒子を第一段階で製造し、そしてその後、第二段階で同時に被覆および担体材料上へ担持させる。この方法において、粒子の外部シェル(Mシェル)を前記の担体材料の存在下で粒子の内部コアの材料(Mコア)に適用する。
【0048】
この方法は尺度可能性、加工時間およびコストの点で有利である。
【0049】
本発明の金属性コア粒子(Mコア=金属)製造のために、好ましくは当業者にはよく知られている湿式化学還元法を適用する。水性媒体が好ましいが、必須ではない。例として、安定剤および(随意に)カーボンブラック担体の存在下での多価アルコール還元法によってニッケルコア粒子を製造できる。
【0050】
セラミックコア粒子(Mコア=セラミック)製造のために、発表された文献中の適した方法を使用できる。例えば、ナノサイズのジルコニア(ZrO2)は、H.Yue−xiangおよびG.Cunji,Power Technology,1992,72,pages101−104に記載された方法によって得られる。球状でナノサイズのセリア粒子(CeO2)は、D.Andreescu et al.,Colloids and Surfaces A: Physicochem.Eng.Aspects,2006,291,pages93−100に記載された方法によって得られる。適したナノサイズのセラミック材料は、様々な販売元(例えば住友大阪セメント株式会社、東京、日本)からさらに入手可能である。
【0051】
粒子シェル(Mシェル)もまた湿式化学還元技術によって製造できる。しかしながら、微細粒子の金属被覆に適した他の技術が適しており、例は電気メッキ、セメント接合、金属交換反応、UPD、プラズマ被覆、気相成長、物理気相成長(PVD)、化学気相成長(CVD)あるいは原子層成長(ALD)法である。適した白金合金を同時あるいは連続的な沈殿法を用いることによって製造できる。
【0052】
好ましい方法において、粒子シェル(Mシェル)は第二段階で貴金属粒子のコロイド分散液(粒径約2〜5nmを有する貴金属"コロイド")を用いることによって製造できる。前記コロイド分散液を別途製造し、そしてその後、コア粒子の分散液に添加する。これによって、小さいコロイド粒子が金属あるいはセラミックコア粒子(Mコア)表面上に堆積する。さらなる段階において、熱処理工程あるいはアニールプロセスを適用してそれらの個々に堆積された粒子を一緒に焼結し、そしてシェル中で密な連続層を形成できる。粒子シェル中のいくつかの金属の堆積の場合、合金の形成が実施できる。
【0053】
典型的には、熱処理工程あるいはアニールプロセスを200〜500℃の温度範囲で0.5〜2時間実施する。不活性、還元、酸化あるいは保護雰囲気(例えば窒素、フォーミングガスおよびアルゴン)を使用できる。
【0054】
担持されたコア粒子あるいは担持されたコア/シェル粒子を、例えば本発明の譲受人の特許US6861387号、US6689505号、US6165635号、US6007934号およびUS5489563号内に記載されるように、カーボンブラックに担持された電極触媒の製造から公知の方法および工程によって製造できる。
【0055】
触媒粒子の電気化学的試験のために、標準的な試験方法を適用する。比活性(mA/mgPtでのSA)は標準的な回転ディスク電極(RDE)測定によって測定される。さらには、標準的な動作条件で単独のPEM電池における試験を実施できる。
【0056】
本発明を以下の実施例によってより詳細に説明するが、それは例示的なものであり、限定されないものとする。
【0057】
実施例1
a)Agコア粒子の製造
19.85gの多糖ゴム(Merck)を400mlの脱イオン(DI)水中で1時間、分散させる。次に11.03gの水酸化ナトリウム(NaOH)および31.25gの硝酸銀(m=169.87g/mol)を個々に50mlの脱イオン水中で溶解させる。両方の溶液を室温で一時間以内に連続的に該ゴム溶液に添加する。添加が完了した後、該溶液を70℃に1時間加熱する。19.8gのAgを含有する銀ナノ粒子分散液が得られる。該銀粒子の直径は約20nmである(TEMによる)。
【0058】
b)Pt粒子のコロイド分散液の製造
400mgの多糖ゴム(Merck)を500mlの脱イオン(DI)水中で分散し、そして変速ミキサーに接続されたPTFEコートの3枚刃プロペラで1時間攪拌する。次に、ヘキサクロロ白金(IV)酸溶液(7.8g、25質量%、Pt、Umicore、ハーナウ/ドイツ)としての1.95gの白金を力強い攪拌の下で添加する。10分の混合の後、7.05gのアスコルビン酸を含有する100mlのアスコルビン酸溶液(Merck)を添加する。そこで該溶液のpHを10質量%のNaOHでpH=12に増加させる。pH12に達した後、その反応物をDI水で希釈して1000mlの最終容量にする。最後に、温度を70℃に昇温する。アスコルビン酸によって白金を還元させ、そして約2〜3nmのサイズのPt粒子のコロイド分散液を形成する。
【0059】
c)Ag/Ptのコア/シェル粒子の製造
実施例1a)で製造した20.1mlのAgナノ粒子分散液を脱イオン(DI)水で500mlに希釈する。そこで、実施例1b)で製造したPtコロイド分散液を、希釈したAgナノ粒子溶液に力強い混合の下で添加する。それによって、小さいPtコロイド粒子を〜20nmのAgナノ粒子の表面上に沈降させる。その後、その系を83℃に加熱する。この段階の間、12.1Nの塩酸を10ml添加することにより、pHを〜0.5に調整する。次に、該反応混合物を室温に冷却し、そして生成物を母液から分離する。最後に、該粉末を300mlのDI水で3回洗浄する。湿った濾過ケークをその後真空下で乾燥させる。約2.7gのAg/Pt複合粒子が得られる。
【0060】
複合Ag/Pt材料をチューブ炉に移送し、そして乾燥窒素雰囲気下、400℃で1時間処理する。連続的なPtシェルを最終の熱処理工程の間に形成する。
【0061】
粒子の特性:
Agコア粒子の平均直径(TEMによる) 20nm
Ag/Pt粒子の平均直径(TEMによる) 26nm
Ptシェルの平均厚さ(tシェル) 〜3nm
Ptシェルの平均厚さ(dコアの%で) 〜15%
コア/シェル構造によるPt分減少率 〜45%
RDEによる電気化学的試験において、高い比質量活性(SMA)が得られる。
【0062】
実施例2
a)Auコア粒子の製造
0.885gのテトラクロロ金(III)酸溶液(HAuCl4;23.03質量%のAu、Umicore ハーナウ/ドイツ)としての0.204gの金を500mlのDI水の中へ濯ぎ入れる。次に、290.56mgのアスコルビン酸(Merck)を500mlのDI水中で溶解する。金粒子の製造のために、両方の溶液を素早く1つの単独の2lのガラス製ビーカー内に移送する。金粒子はほぼ自発的に形成される。該金粒子の直径はTEMによって25nmであると測定される。
【0063】
b)Au/Ptのコア/シェル粒子の製造
実施例2a)で製造された金粒子を出発製品(204mg Au/l)として使用する。最初に、7.5gの25質量%のヘキサクロロ白金(IV)酸溶液(1.88gのPtを含有)を力強い攪拌の下で添加する。次に、27.12gのアスコルビン酸(Merck)を添加する。該溶液を30分間攪拌してアスコルビン酸を溶解する。その後、pHを10質量%のNaOHでpH12に調節する。最後に、該溶液を素早く70℃に加熱し、白金を還元し、そして金粒子の周りに約3nmのPtシェルを有する粒子を製造する。
【0064】
粒子の特性:
Auコア粒子の平均直径(TEMによる) 25nm
Au/Pt粒子の平均直径(TEMによる) 30nm
Ptシェルの平均厚さ(tシェル) 〜2.5nm
Ptシェルの平均厚さ(dコアの%で) 〜10%
コア/シェル構造によるPt分減少率 〜58%
RDEによる電気化学的試験において、高い比活性が得られる。
【0065】
実施例3
a)Au粒子の製造
56.0gの固体のテトラクロロ金(III)酸(HAuCl4;Umicore ハーナウ/ドイツ、21.0g Au)を1050mlの脱イオン(DI)水中で溶解する。HAuCl4溶液のpHを10質量%のNaOHを68.88g添加することによってpH=12に調整する。最後に、15.75gの多糖ゴム溶液(Merck)を予め210mlの脱イオン(DI)水に溶解して添加する。多糖ゴムの添加後、33.74gのアスコルビン酸(Merck)と455mlのDI水中に溶解した5.25gの多糖ゴム(Merck)との混合物を50分以内で力強い攪拌の下で添加する。金粒子形成の間に、pHは低下し、且つ平均直径50nmの金粒子の赤茶色の分散液が得られる。
【0066】
b)Au/Ptのコアシェル粒子の製造
実施例3a)で製造された金粒子分散液を受け取ったままの状態で使用する。58.97gの固体のヘキサクロロ白金(IV)酸(Umicore、ハーナウ/ドイツ;23.59g Pt)を金コロイド溶液中で溶解し、そして10分間攪拌して溶解の完了を確実にする。該溶液をその後、40℃に加熱して、そして170gの固体のアスコルビン酸(Merck)を一定の攪拌の下で添加する。該溶液をさらに70℃に加熱し、そしてそこで100分保持する。白金の還元が完了した後、105mlの濃塩酸を添加し、そして該溶液をさらに1時間85℃で攪拌する。一晩、該反応物を沈降させ、上部の溶液を吸い上げ、そして固体を洗浄し乾燥させる。
【0067】
シェルを実施例1に記載された方法と同様の熱処理によって最後に製造する。アニール後、白金の薄いシェルを有するAu/Ptのコア/シェル粒子が得られる。
【0068】
粒子の特性:
Auコア粒子の平均直径(TEMによる) 50nm
Au/Pt粒子の平均直径(TEMによる) 65nm
Ptシェルの平均厚さ(tシェル) 〜7.5nm
Ptシェルの平均厚さ(dコアの%で) 〜15%
コア/シェル構造によるPt分減少率 〜45.5%
RDEによる電気化学的試験において、高い比活性が得られる。
【0069】
実施例4
カーボンブラック上に担持されたAg/Pt粒子の製造
実施例1c)で製造された2.7gのAg/Pt粒子を、超音波処理を使用して200mlの脱イオン(DI)水中で再分散させる。次に、6.3gのカーボンブラック(Ketjenblack EC300J、Akzo Nobel)を800mlの脱イオン(DI)水中で分散させる。そこで、Ag/Ptのコア/シェル粒子分散液をカーボンブラック分散液に力強い攪拌をしながら滴加する。該分散液を60℃に加熱し、そしてその温度で2時間保持する。得られるコア/シェル粒子をよく分散させ、そしてカーボンブラック上に担持させて触媒粒子装填率約30質量%を有するAg/Pt/C触媒を得る。(TEMによる)粒子サイズ測定は平均粒径が26nmであることを示す。
【0070】
触媒特性:
Agコア粒子の平均直径(TEMによる) 20nm
Ag/Pt粒子の平均直径(TEMによる) 26nm
Ptシェルの平均厚さ(tシェル) 〜3nm
Ptシェルの平均厚さ(dコアの%で) 〜15%
コア/シェル構造によるPt分減少率 〜45%
カーボンブラック上の触媒粒子装填率 〜30質量%Ag/Pt
RDEによる電気化学的試験において、高い比活性が得られる。
【0071】
実施例5
a)Niコア粒子の製造
安定剤としての多糖ゴム(Merck)の存在下で多価アルコール中での還元によってNiコア粒子を製造する。そこで、2.1gの安定剤(50mlのジエチレングリコール(DEG)中で予め分散されている)と10.6gの酢酸ニッケル(II)としての2.5gのニッケルとを1lの三口フラスコ内の450mlのDEG中で混合し、そして500rpmで30分間攪拌する。このとき、該懸濁液を220℃に加熱し、そしてその温度をNiの還元が完了するまで保持する。該反応混合物を室温に冷却する。母液の分離された部分は平均直径20nmを有するNiナノ粒子の存在を示す(TEMによって測定)。
【0072】
b)Ni/Pt3Co粒子の製造
a)の反応混合物をニッケルの還元が完了した段階で使用する。該懸濁液を40℃に冷却する。そこで、ヘキサクロロ白金(IV)酸(25質量% Pt;6.3g、Umicore、ハーナウ/ドイツ)としての1.576gのPtを100mlの新品のDEG中で溶解させ、その後、該混合物に添加する。該懸濁液を15分間攪拌する。次に、固体の酢酸コバルト(II)としての0.158gのコバルトを添加し、そして該懸濁液を60分間攪拌して酢酸コバルトを完全に溶解させる。最後に、pHを10質量%のNaOHでpH6.1に調整し、そしてそこで反応物を加熱して(約240℃)還流させ、白金およびコバルトを還元させる。金属の還元が完了した後、200mlの冷DI水を100℃未満で添加し、そしてpHを濃塩酸でpH=1に調整する。該反応物をその後、85℃で1時間攪拌する。一晩、該反応物を沈降させ、上部の溶液を吸い上げ、そして固体粉末を洗浄し乾燥させる。
【0073】
PtCoのシェルを実施例1に記載された方法と同様の熱処理によって最後に製造する。アニール後、白金−コバルトの薄いシェルを有するNi/Pt3Coのコア/シェル粒子が得られる。
【0074】
実施例6
a)ZrO2コア粒子の製造
ナノスケールのジルコニアはH.Yue−xiangおよびG.Chunji(Powder Technology 1992,72,101−104)によって記載された方法によって得られる。
【0075】
12.01gの尿素を、三口ビーカー内で塩化酸化ジルコニウム八水和物(ZrOCl2×8H2O)(=18.25gZr)の0.2モラー溶液1リットル中で溶解させる。尿素の溶解の完了後、該混合物を還流の下で50時間加熱する。室温への冷却の後、該反応溶液を透析チューブに移送し、過剰な塩化物から母液を精製する。透析チューブを5リットルの脱イオン(DI)水を有するビーカー内に設置し、そしてその水を3日以内に3回交換する。ZrO2粒子を液体から分離し、エタノールで洗浄して水を除去し、そして最後に真空中で乾燥させる。TEMによるZrO2粒子の分析は、平均直径80nmを有する解凝集した球状粒子を示す。
【0076】
b)ZrO2/Ptのコア−シェル粒子の製造
実施例6a)によって製造されたジルコニアを精製の後、乾燥させずに使用する。分散液としての5g分のZrO2粒子5リットルのビーカーに移送する。脱イオン(DI)水で分散液を3リットルまで満たし、そしてヘキサクロロ白金(IV)酸(25質量% Pt;23.68g、Umicore、ハーナウ/ドイツ)としての5.92gのPtを添加し、そして10分間攪拌して溶解の完了を確実にする。その後、該溶液を40℃に加熱し、そして43gの固体のアスコルビン酸(Merck)を一定の混合下で添加する。該溶液をさらに70℃に加熱し、そしてそこで100分間保持する。一晩、該反応物を沈降させ、上部の溶液を吸い上げ、そして固体を洗浄し乾燥させる。
【0077】
該粉末を炉内に移送して、そして窒素中で1時間、300℃で加熱する熱処理によってPtシェルを最終的に製造する。アニール後、4nmの厚さの白金の薄いシェルを有するZrO2/Ptのコア/シェル粒子が得られる。
【0078】
粒子の特性:
ZrO2コア粒子の平均直径(TEMによる) 80nm
ZrO2/Pt粒子の平均直径(TEMによる) 88nm
Ptシェルの平均厚さ(tシェル) 〜4.0nm
Ptシェルの平均厚さ(dコアの%で) 〜5%
100%Ptと比較したPt分減少率 〜75%
c)担持されたZrO2/Ptのコア/シェル粒子の製造
27gのカーボンブラック(Ketjen Black EC300J;Akzo)を2リットルの脱イオン水中で高速攪拌機を使用して分散する。該分散液をその後、連続的な攪拌の下で50℃に加熱する。該分散液のpHを、硝酸を使用してpH5に調整する。そこで、実施例6b)によって製造された9gのZrO2/Ptのコア/シェル粒子を1リットルの脱イオン(DI)水中で分散させる。この分散液をその後、カーボンブラックの懸濁液に滴加する。添加が完了した後、該混合物をさらに50℃で3時間攪拌する。冷却の後、固体を一晩沈降させる。該固体をその後、濾過して分離し、洗浄し、そして乾燥させる。ZrO2/Ptのコア/シェル粒子をカーボンブラック表面上でよく分散させ、30質量%の触媒粒子装填率を有するZrO2/Pt/C触媒を形成する。
【0079】
実施例7
ZrO2/Ptのコア−シェル粒子の製造(40nmのZrO2コア)
ナノジルコニアを、平均粒径40nmを有する10質量%の分散液の形態で住友大阪セメント株式会社(東京、日本)から入手する。
【0080】
50mlのナノジルコニア分散液を5リットルビーカー内の1リットルの脱イオン(DI)水中で希釈する。該溶液を脱イオン(DI)水で4リットルに調整し、そしてヘキサクロロ白金(IV)酸(25質量% Pt;37.24g、Umicore、ハーナウ/ドイツ)としての9.31gのPtを添加し、そして10分間攪拌して溶解の完了を確実にする。その後、該溶液を40℃に加熱し、そして67.0gの固体のアスコルビン酸(Merck)を一定の混合下で添加する。該溶液をさらに70℃に加熱し、そしてそこで100分間保持する。一晩、該反応物を沈降させ、上部の溶液を吸い上げ、そして固体を洗浄し乾燥させる。
【0081】
該粉末を炉内に移送して、そして窒素中で1時間、300℃で加熱する熱処理によってPtシェルを最終的に製造する。アニール後、3nmの厚さの白金の薄いシェルを有するZrO2/Ptのコア/シェル粒子が得られる。
【0082】
粒子の特性:
ZrO2コア粒子の平均直径(TEMによる) 40nm
ZrO2/Pt粒子の平均直径(TEMによる) 46nm
Ptシェルの平均厚さ(tシェル) 〜3.0nm
Ptシェルの平均厚さ(dコアの%で) 〜7.5%
100%Ptと比較したPt分減少率 〜65%
実施例8
a)Ce/ZrO2コア粒子の製造
ナノスケールの、セリアドープのジルコニアはH.Yue−xiangおよびG.Chun−ji(Powder Technology 1992,72,101−104)によって記載された方法によるゆっくりとした加水分解によって得られる。
【0083】
塩化酸化ジルコニウム八水和物(ZrOCl2×8H2O)としての18.25gのZrを三口ビーカー内の1リットルの脱イオン(DI)水中に溶解させる。次に、酢酸セリウム(III)としての910mgのCeを添加し、そして溶解もさせる。最後に、12.01gの尿素をZrOCl2とCe(NO33との溶液中で溶解させる。尿素の溶解の完了後、該混合物を50時間、還流の下で加熱する。室温への冷却後、該反応溶液を透析チューブに移送して過剰な塩化物から母液を精製する。該透析チューブを5リットルの脱イオン(DI)水を有するビーカー内に設置し、そしてその水を3日以内に3回交換する。その後、Ce/ZrO2粒子を分離し、エタノールで洗浄して水を除去し、そして最後に真空中で乾燥させる。
【0084】
TEMによるCe/ZrO2粒子の分析は、平均直径80nmを有する解凝集した球状粒子を示す。
【0085】
b)Ce/ZrO2/Ptコア−シェル粒子の製造
実施例8a)によって製造されたセリア/ジルコニア粒子を精製の後、乾燥させずに使用する。分散液としての5g分の精製した粒子を5リットルのビーカーに移送する。脱イオン(DI)水で該分散液を3リットルに調整し、そしてヘキサクロロ白金(IV)酸(25質量%;Umicore、ハーナウ/ドイツ)としての5.92gのPtを添加し、そして10分間攪拌して完全な溶解を得る。その後、該溶液を40℃に加熱し、そして43gの固体のアスコルビン酸(Merck)を一定の攪拌下で添加する。該溶液をさらに70℃に加熱し、そしてそこで100分間保持する。一晩、該反応物を沈降させ、上部の溶液を吸い出し、そして固体を洗浄し乾燥させる。
【0086】
該粉末を炉内に移送して、そして窒素中で1時間、300℃で加熱する熱処理によってPtシェルを最終的に製造する。アニール後、約4nmの厚さの白金の薄いシェルを有するCe/ZrO2/Ptのコア/シェル粒子が得られる。
【0087】
粒子の特性:
Ce/ZrO2コア粒子の平均直径(TEMによる) 80nm
Ce/ZrO2/Pt粒子の平均直径(TEMによる) 88nm
Ptシェルの平均厚さ(tシェル) 〜4.0nm
Ptシェルの平均厚さ(dコアの%で) 〜5%
100%Ptと比較したPt分減少率 〜75%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア/Mシェル構造
その際、
コア=粒子の内部コアの材料
シェル=粒子の外部シェルの材料
を含む触媒粒子において、
前記触媒粒子の平均直径(dコア+シェル)が20〜100nmの範囲、好ましくは20〜50nmの範囲であることを特徴とする触媒粒子。
【請求項2】
粒子の外部シェルの厚さ(tシェル)が粒子の内部コアの直径(dコア)の約5〜20%であり、
シェル 〜0.05から0.2dコア
その際、
シェル=(dコア+シェル−dコア)/2
であることを特徴とする、請求項1に記載の触媒粒子。
【請求項3】
粒子の外部シェルの材料(Mシェル)が、少なくとも3原子層を含むことを特徴とする、請求項1あるいは2に記載の触媒粒子。
【請求項4】
粒子の内部コア(Mコア)がアルミニウム(Al)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、スズ(Sn)、タングステン(W)およびレニウム(Re)からなる群から選択される卑金属、および/またはそれらの混合物あるいは合金を含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の触媒粒子。
【請求項5】
粒子の内部コア(Mコア)がルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)および金(Au)からなる群から選択される貴金属、およびそれらの合金および/またはそれらの混合物あるいは合金を含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の触媒粒子。
【請求項6】
粒子の内部コア(Mコア)がセラミック材料を含むことを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の触媒粒子。
【請求項7】
セラミック材料が無機酸化物、無機窒化物、混合無機酸化物、ペロブスカイト、スピネル、安定化無機酸化物およびドープされた無機酸化物、およびそれらの混合物あるいは組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項6に記載の触媒粒子。
【請求項8】
セラミック材料がアルミナ(Al23)、ジルコニア(ZrO2)、チタニア(TiO2)、二酸化スズ(SnO2)、セリア(Ce23および/またはCeO2)、MgO/SiO2、CaO/(Al23/SiO2)、MgAl24、あるいはCoAl24、Ce/ZrO2、Y23−ZrO2、La23−ZrO2あるいはSnO2(F)を含んでいることを特徴とする、請求項6あるいは7に記載の触媒粒子。
【請求項9】
粒子の外部シェル(Mシェル)がルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)、白金(Pt)、銀(Ag)および金(Au)からなる群から選択される貴金属、およびそれらの合金および/または混合物を含むことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の触媒粒子。
【請求項10】
粒子の外部シェル(Mシェル)が貴金属と少なくとも1つの卑金属との合金を含むことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の触媒粒子。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の触媒粒子の、燃料電池用電極触媒としての使用。
【請求項12】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の触媒粒子の、気相触媒における、あるいは自動車用触媒コンバータにおける使用。
【請求項13】
担体材料上に担持された請求項1から10までのいずれか1項に記載の触媒粒子を含む燃料電池用電極触媒。
【請求項14】
担体材料が導電性、高表面積のカーボンブラックあるいはグラファイトであることを特徴とする、請求項13に記載の電極触媒。
【請求項15】
担体材料上の触媒粒子装填率が、担持された電極触媒の総質量に対して10〜90質量%の範囲であることを特徴とする、請求項13あるいは14に記載の電極触媒。
【請求項16】
粒子の外部シェル(Mシェル)を湿式化学還元法によってコア材料(Mコア)に適用することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の触媒粒子の製造方法。
【請求項17】
粒子の外部シェル(Mシェル)をコロイド分散液からの貴金属粒子の堆積によって適用することを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
さらに200〜500℃の温度範囲で0.5〜2時間の熱処理工程を含む、請求項16あるいは17に記載の方法。
【請求項19】
さらに適した担体材料上への担持工程を含む、請求項16から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
粒子の外部シェル(Mシェル)を電気メッキ、セメント接合、金属交換反応、UPD、プラズマ被覆、気相成長、物理気相成長(PVD)、化学気相成長(CVD)あるいは原子層成長(ALD)によってコア材料(Mコア)に適用することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の触媒粒子の製造方法。
【請求項21】
粒子の外部シェル(Mシェル)を、担体材料の存在下で粒子の内部コアの材料(Mコア)に適用することを特徴とする、請求項13から15までのいずれか1項に記載の担持された電極触媒の製造方法。

【公表番号】特表2010−501345(P2010−501345A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526071(P2009−526071)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【国際出願番号】PCT/EP2007/058890
【国際公開番号】WO2008/025751
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(501399500)ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト (139)
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D−63457 Hanau,Germany
【Fターム(参考)】