説明

金属層を施すための分散物

本発明は、非導電性の基体上に金属層を施すための分散物(この分散物は、有機バインダー成分、異なる金属及び/又は金属粒子形状を有する金属成分及び溶媒成分を含む。)に関する。本発明は、更に、分散物を製造する方法、所望により構造化された金属層を製造するために分散物を使用する方法、及び結果として得られた基体及びその使用方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属層を施すための分散物、その製造方法、及び基体上に金属層を製造するために分散物を使用する方法に関する。更に本発明は、このように被覆された基体表面及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電流を通さない基体上に導電性の金属層を製造するための種々の技術が公知である。例えば、非導電性の基体、例えば、プラスチック(合成樹脂)を、高度の真空下で金属化(金属処理:metallize)することが可能であるが、しかしこれら公知の方法は複雑で高価なものである。
【0003】
プラスチックを金属化する通常の方法は、複数の工程段階を順序に従い次々に行うことによって行われる。ここで、この方法は、表面活性化工程で、強い酸又は塩基を使用することにより開始される。健康に害を及ぼす物質、例えば、クロム−硫黄酸(chromic-sulfuric acid)が、ここでしばしば使用される。従って、溶液を使用して、適切な遷移金属錯体で、プラスチック表面が被覆される。この方法で、活性化されたプラスチック表面の金属化が可能になる。
【0004】
しかしながら、電気伝導性ではない表面(非導電性の表面)に伝導性被膜(conductive coating)を得る他の方法では、伝導性ラッカー又は伝導性ペーストが使用され、そして、これらはプラスチックに施されるが、これらは材料への良好な粘着性(付着性)を有していなければならない。
【0005】
特許文献1(DE−A1615786)には、非導電性の表面に導電性の層を製造するための方法で、例えば、微細に分散した鉄を含むラッカーを使用することが開示されている。ラッカーは、更に有機溶媒を含むことが意図されており、そしてバインダーを所定割合で含むことも意図されている。
【0006】
しかしながら、これら伝導性ラッカーは、比較的小さい伝導性しか有していないことが知られている。この理由は、分散した金属粒子がバインダーを介して凝集した伝導層を形成しないからである。従って、これら層の伝導性は、比較的厚い金属ホイルの伝導性までにはならない。層内の金属顔料の増加は、伝導性の増加をももたらすが、しかし、伝導性層のプラスチック表面上への粘着(付着)が不適切なために、ここで問題がしばしば発生する。
【0007】
特許文献2(DE−A1521152)は、従って、導電性でない表面(非導電性の表面)に、バインダーと微細に分散した鉄を含む伝導性ラッカーを施し、次に伝導性ラッカーに、無電流法(currentless method)によって銀又は銅の層を施すことを提案している。そして、無電流法又は電気メッキ法を使用して更なる層を施すことができる。
【0008】
特許文献3(EP−B200772)には、10kHzを超える周波数で電磁気スクリーニングを行うために、流動性有機ペイントバインダーを使用して導電性ではない物品を被覆することが記載されている。この方法では、流動性有機ペイントバインダー(この中には、活性金属粒子が分散されている)で第1の層を施すことから始まり、そして第1の層の上に、無電流法を使用して銅の第2の層が沈殿(析出)され、そして最後に電気メッキ金属(electroplatinized metal)が、第2の層に施される。
【0009】
特許文献4(DE−A19945400)には、特に、特定のバインダーと磁気材料又は磁化可能な材料を含むことが意図された磁気分散物が記載されている。
【0010】
【特許文献1】DE−A1615786
【特許文献2】DE−A1521152
【特許文献3】EP−B200772
【特許文献4】DE−A19945400
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非導電性の基体の金属性被膜(金属性被覆物)のための最適化されたシステム(組成物)、特に、改良された粘着性(付着性)を有し、そして環境に順応し、費用がかからず、信頼性が高く、そして迅速な取り扱いが可能であるシステムが必要とされている。従来技術のシステムでは、現在に至るまで、大規模な工業的使用は可能ではなかった。
【0012】
従って、本発明の目的は、非導電性の基体の上に金属層を施すことを可能にする、特に、金属層の粘着性の増加及び/又は層の均一性の改良を達成可能とする分散物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、非導電性である基体上に金属層を施すための分散物であって、
A 分散物の合計質量に対して0.01〜30質量%の有機バインダー成分、
B 分散物の合計質量に対して30〜89.99質量%であり、そして、少なくとも、以下のB1、B2、
B1 金属成分Bの合計質量に対して、0.01〜99.99質量%の第1の金属粒子形状を有する、第1の金属、
B2 金属成分Bの合計質量に対して、99.99〜0.01質量%の第2の金属粒子形状を有する、第2の金属、
を含む金属成分、
C 分散物の合計質量に対して10〜69.99質量%の溶媒成分
を含み、以下の条件、
(1) 第1と第2の金属は異なること、
(2) 第1と第2の粒子形状は異なること、
の内、少なくとも1つを有することを特徴とする分散物によって達成される。
【0014】
特に、本発明の分散物の中に、異なる金属及び/又は粒子形状が存在することは、分散物を施した後、金属性の第1の層を与え、この第1の層は、更なる金属性層(この更なる金属層は無電流法及び/又は電気メッキ法によって施される)と共に、特性が改良された金属層を与える。
【0015】
この分散物は、更に、以下の成分、
D 分散物の合計質量に対して0.01〜50質量%の分散剤成分;及び
E 分散物の合計質量に対して0.01〜50質量%の充填剤成分、
の内、少なくとも一つを含むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
成分A
有機バインダー成分Aは、バインダー又はバインダー混合物である。可能なバインダーは、顔料類似アンカー基、天然又は合成ポリマー及びその誘導体、天然樹脂及び合成樹脂及びその誘導体、天然ゴム、合成ゴム、プロテイン、セルロース誘導体、乾燥及び非乾燥オイル及びこれらに類似するものを有するバインダーである。これらは、化学的又は物理的に硬化する物質、例えば空気硬化、照射硬化、又は加熱硬化物質であることが可能であるが、しかしこれに限られるものではない。
【0017】
バインダー成分Aは、ポリマー又はポリマー混合物であることが好ましい。
【0018】
成分Aとして好ましいポリマーは、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン);ASA(アクリロニトリル−スチレン−アクリレート);アクリレート化アクリレート;アルキド樹脂;アクリルビニルアセテート;アクリレン−ビニルアセテートコポリマー、特にメチレン−ビニルアセテート、エチレン−ビニルアセテート、ブチレン−ビニルアセテート;アルキレン−ビニルクロリドコポリマー;アミノ樹脂;アルデヒド樹脂及びケトン樹脂;セルロース及びセルロース誘導体、特にアルキルセルロース、セルロースアセテート等のセルロースエステル、セルロースプロピネート、セルロースブチレート、セルロースエーテル、カルボキシアルキルセルロース、セルロースニトレート;エポキシアクリレート;エポキシ樹脂;エチレン−アクリル酸コポリマー;炭化水素樹脂;MABS(アクリレート単位を有する透明なABSを含む);マレイン無水物コポリマー;メトアクリレート、所望によりアミン官能化されたもの;天然ゴム;合成ゴム;塩素化ゴム;天然樹脂;ロジン;シェラック;フェノール樹脂;ポリエステル;フェニルエステル樹脂等のポリエステル樹脂;ポリスルホン;ポリエーテルスルホン;ポリアミド;ポリイミド;ポリアニリン;ポリピロール;ポリブチレンテレフタレート(PBT);ポリカルボネート(例えば、Bayer AGからのMakrolon(登録商標);ポリエステルアクリレート;ポリエーテルアクリレート;ポリエチレン;ポリエチレン−チオフェン;ポリエチレンナフタレート;ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリエチレンテレフタレートグリコール(PETG);ポリプロピレン;ポリメチルメトアクリレート(PMMA);ポリフェニレンオキシド(PPO);ポリテトラフルオロエチレン(PTFE);ポリテトラヒドロフラン;ポリビニル化合物、特にポリビニルクロリド(PVC)、PVCコポリマー,PVdC、ポリビニルアセテート、及びこれらのコポリマー、所望により部分的に加水分解された状態のポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアクリレート、及びポリビニルメトアクリレート(溶液中又は分散物状態のもの)、及びこれらのコポリマー、ポリアクリルエステル、及びポリスチレンコポリマー;ポリスチレン(耐衝撃性のもの又は衝撃改質されていないもの);ポリウレタン、架橋していないもの又はイソシアネートで処理されたもの;ポリウレタンアクリレート;スチレン−アクリル性コポリマー;スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(例えば、BASF AGからのStyroflex(登録商標)又はStyolux(登録商標)、CPCからのK−ResinTM);プロテイン例えばカゼイン;SIS;SISブロックコポリマーである。2種以上のポリマーの混合物が、更に、有機バインダー成分Aを形成可能である。
【0019】
成分Aとして好ましいポリマーは、ポリアルキレン、ポリイミド、エポキシ樹脂、及びフェノール性樹脂、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー、アルキレン−ビニルアセテート及びアルキレン−ビニルクロリドコポリマー、ポリアミド及びそのコポリマーである。
【0020】
有機バインダー成分A)の含有量は、分散物の合計質量に対して0.01〜30質量%である。この含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%がより好ましい。
【0021】
成分B
金属成分Bは、少なくとも1種の第1の金属(第1の金属は、第1の金属粒子形状を有する)及び第2の金属(第2の金属は、第2の金属粒子形状を有する)を含む。
【0022】
第1の金属は、第2の金属と同一であって良く又は異なることができる。
【0023】
第1の金属粒子形状は、同様に、第2の金属粒子形状と同一又はであって良く又は異なることができる。しかしながら、少なくとも1種の金属又は粒子形状が異なることが重要である。しかしながら、第1と第2の金属だけでなく、しかし第1と第2の粒子形状が互いに異なることも可能である。
【0024】
分散物は、金属成分B1及びB2に加えて、更なる金属を含むことができ、この更なる金属は、第1と第2の金属とは異なる、又は第1又は第2の金属とは異なる、又は第1及び第2の金属と同一のものである。同様の考察(consideration)が、更なる金属の金属粒子形状に適用される。本発明の目的のための必要事項は、第1及び第2の金属が異なり及び/又は第1と第2の粒子形状が互いに異なるという条件で、少なくとも1種の第1及び第2の金属が存在し、そして少なくとも1種の金属粒子形状及び少なくとも1種の第2の金属粒子形状が存在するということである。
【0025】
本発明の目的のために、金属の酸化状態は0であり、そしてこれらは金属粉の状態で分散物に加えることができる。
【0026】
金属の平均粒径(粒子の直径)は、0.01〜100μmが好ましく、0.05〜50μmがより好ましく、そして0.1〜10μmが特に好ましい。平均粒径は、レーザー分散測定装置、例えば、Microtrac X100装置で測定可能である。粒径分布は、粒子の製造方法に依存する。この直径分布は、最高点を一箇所のみに有して良く、又、2箇所以上に有していても良い。
【0027】
適切な金属の例は、亜鉛、ニッケル、銅、錫、コバルト、マンガン、鉄、マグネシウム、鉛、クロム、ビスマス、銀、金、アルミニウム、チタン、パラジウム、白金、タンタル、及びこれらの合金である。適切な合金の例は、CuZn、CuSn、CuNi、SnPb、SnBi、SnCo、NiPb、ZnFe、ZnNi、ZnCo、及びZnMnである。鉄、亜鉛、アルミニウム及び銅が特に好ましい。
【0028】
金属は、金属性成分(部分)と共に非金属成分をも含んで良い。例えば、金属表面は、少なくとも一部に被膜が設けられていても良い。適切な被膜は、無機(例えば、SiO2、ホスフェート)が可能であり、又は有機タイプが可能である。当然、金属は、別の金属又は金属酸化物(酸化金属)で被覆されていても良い。同様に、金属は、部分的に酸化された状態で存在することが可能である。
【0029】
2種類の異なる金属が金属成分Bを形成することが意図される場合、このことは、2種類の金属を混合することによって達成される。この2種類の金属は、鉄、亜鉛、アルミニウム、及び銅から成る群から選ばれることが特に好ましい。しかしながら、金属成分Bは、第1の金属と、第2の金属(この場合では、第2の金属は、第1の金属又は1種以上の他の金属と共に合金の状態で存在する)を含むこともでき、又、金属成分Bは、2種類の異なる合金を含むこともできる。また、これら2例においては、金属成分B1とB2は互いに異なるもので、従って、その金属粒子形状を互いに独立して、同一又は異なるように選択することができる。
【0030】
金属の選択と共に、金属の金属粒子形状は、被覆工程の後、本発明の分散物の特性に影響を及ぼす。形状に関し、この技術分野の当業者にとって公知の種々の可能なバリエーションが存在する。例えば、金属粒子の形状は、針状、シリンダー状、薄層、又は球状が可能である。粒子形状は、理想化(概略化)された形状を表し、そして、実際の形状は、例えば、製造工程の影響を受けて、理想化された形状から多少なりとも変化可能なものである。従って、例えば、本発明の目的のために、滴状粒子は、球状という理想化された形状の実際的な変化である。
【0031】
種々の粒子形状を有する金属が市販されている。
【0032】
金属成分B1及び金属成分B2が、その金属粒子形状について異なっている場合、第1のものは球状であり、そして第2のものは薄層状又は針状であることが好ましい。
【0033】
粒子形状が異なる場合、好ましい金属は、同様に、鉄、銅、亜鉛、及びアルミニウムである。
【0034】
上述のように、分散物中に加えられる場合、金属は、その粉の状態であることが可能である。これら金属粉は、市販されているか、又は公知の方法で容易に製造可能である。この公知の方法は、例えば、金属塩の溶液からの電気的沈殿又は化学的還元、又は例えば、水素を使用しての酸化粉の還元により、溶融金属の特に、ガス又は水等の冷却液へのスプレーによるものである。ガススプレー又は水スプレーが好ましい。
【0035】
鉄の場合、カルボニル鉄粉法(CIP)が、ガススプレー及び水スプレー法と並んで、カルボニル鉄粉の製造に好ましい。CIP法は、ペンタカルボニル鉄の熱分解を使用する。この方法は、例えば、Ullman‘s Encyclopedia of Industrial Chemiistry, 5th Edition, Vol.A14 599頁に記載されている。ペンタカルボニル鉄の分解は、例えば、加熱可能な分解容器内で、昇温して及び昇圧して行うことができる。ここで、この分解容器は、石英ガラス又はV2Aスチール等の耐熱材料からなるパイプを、好ましくは垂直位置に含み、パイプは、加熱器、例えば、加熱バスの、加熱ワイヤーの、又は加熱液体が流通する加熱ジャケットの加熱器によって囲まれている。
【0036】
薄層の金属は、製造工程における条件の最適化によって制御可能であり、又、機械的処理、例えば、攪拌器付のボールミル内での処理により、後に得ることができる。
【0037】
金属成分Bの含有量は、分散物の合計質量に対して、30〜89.99質量%である。金属副成分B1の含有量は、成分Bの合計質量に対して、99.99〜0.01質量%である。金属副成分B2の含有量は、0.01〜99.99質量%である。更なる金属が存在しない場合、B1とB2で、金属成分Bが100%になる。
【0038】
Bのための好ましい範囲は、分散物の合計質量に対して50〜85質量%である。
【0039】
成分B1とB2の質量割合は、1000:1〜1:1の範囲が好ましく、100:1〜1:1がより好ましく、20:1〜1:1が最も好ましい。
【0040】
成分C
本発明の分散物は、更に、溶媒成分Cを含む。これは、溶媒又は溶媒混合物から成る。
【0041】
適切な溶媒は、アセトン、アルキルアセテート、アルコキシプロパノール(例えば、メトキシプロパノール)、アミルアルコール、ブタノール、ブチルアセテート、ブチルジグリコール、ブチルグリコールアセテート等のアルキルグリコールアセテート、ブチルグリコール、クロロホルム、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、ジエチルエーテル、ジグリコールジメチルエーテル、ジオキサン、エタノール、エチルアセテート、エチルベンゼン、エチレンクロリド、エチレングリコール、エチレングリコールアセテート、エチレングリコールジメチルエーテル、イソブタノール、イソブチルアセテート、イソプロピルアセテート、クレゾール、メタノール、メトキシブタノール、メチルアセテート、3−メチルブタノール、メチルジグリコール、メチレンクロリド、メチレングリコール、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、メチルグリコールアセテート、メチルフェノール(オルト−、メタ−、パラ−クレゾール)、1−プロパノール、2−プロパノール、プロピルアセテート、プロピレングリコール、カルボンテトラクロリド、テトラヒドロフラン、トルエン、トリメチロールプロパン(TMP)、アルコール性モノテルピン(例えば、テルピンオール)、水、及びこれら溶媒の2種以上の混合物である。
【0042】
好ましい溶媒は、アルコキシプロパノール、シクロヘキサン、エタノール、エチルアセテート、ブチルアセテート、1−プロパノール、2−プロパノール、テトラヒドロフラン、エチルベンゼン、ブチルグリコールアセテート、水、及びこれらの混合物である。
【0043】
溶媒成分Cの含有量は、分散物(dispersion)の合計量に対して、10〜69.99質量%である。この含有量は、15〜50質量%が好ましい。
【0044】
成分D
本発明の分散物は、更に、分散助剤成分Dを含むことができる。分散助剤成分Dは、1種以上の分散剤から成る。
【0045】
原則として、従来技術文献に記載されている分散剤及びこの技術分野の当業者にとって公知の何れの分散剤も、分散物への使用に適切である。好ましい分散剤は、界面活性剤又は界面活性剤混合物、例えば、アニオン性、カチオン性、両性(amphoteric)、又は非イオン性界面活性剤である。
【0046】
イオン性及びアニオン性界面活性剤は、例えば“Encyclopedia of Polymer Science and Technology”, J.Wily&Sons(1966),Volume 5,pp.816〜818及び“Emulsion Polymerisation and Emulsion Polumers”,編集者P.Lovell及びM.El−Asser,Verlag Wiley&Sons(1997),pp.224−226に記載されている。
【0047】
アニオン性界面活性剤の例は、鎖長さが8〜30個の炭素原子、好ましくは12〜18個の炭素原子の、有機カルボン酸のアルカリ金属塩である。これらは通常、石鹸(soap)と称されている。通常使用される塩は、ナトリウ、カリウム、又はアンモニウム塩である。使用して良い他のアニオン性界面活性剤は、8〜30個、好ましくは12〜18個の炭素原子を有するアルキルサフフェート、及びアルキル−又はアルキルアリールスルホネートである。特に適切な化合物は、アルカリ金属ドデシルサルフェート、例えば、ナトリウムドデシルサルフェート、又はカリウムドデシルサルフェート、及びC12−C16パラフィンスルホン酸のアルカリ金属塩である。他の適切な化合物は、ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート及びナトリウムジオクチルスルホスシネートである。
【0048】
適切なカチオン性界面活性剤の例は、アミン又はジアミンの塩、四級アンモニウム塩、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、及びまた、ピリジン、モルホリン、ピペリジン等の長鎖置換環式アミンである。トリアルキルアミンの四級アンモニウム塩、例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミドが特に使用される。ここで、アルキル基は、1〜20個の炭素原子を有している。
【0049】
本発明に従えば、非イオン性界面活性剤は、成分Dに特に使用されて良い。非イオン性界面活性剤は、例えば、CD Rompp Chemie Lexikon−Version 1.0, Stuttgart/New York:Georg Thieme Verlag 1995, keyward “Nichtonische Tenside”[Nonionic surfactants]に記載されている。
【0050】
適切な非イオン性界面活性剤の例は、BASF AktiengesellschaftからのPluronic(登録商標)又はTetronic(登録商標)等の物質に基づく、ポリエチレン−オキシド−又はポリプロピレン−オキシド−である。
【0051】
非イオン性界面活性剤として適切なポリアルキレングリコールは、通常、モル量(モラーマス:molar mass)が、1000〜15000g/mol、好ましくは2000〜13000g/mol、特に好ましくは4000〜11000g/molである。好ましい非イオン性界面活性剤は、ポリエチレングリコールである。
【0052】
ポリエチレングリコールは、それ自身公知のものであるか、又はそれ自身公知の方法で製造して良いものである。この公知の方法は、例えば、水酸化ナトリウム又は水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物触媒を使用した又はナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、又はカリウムイソプロポキシド等のアルカリ金属アルコキシド触媒を使用した、及び、2〜8個の反応性水素原子、好ましくは2〜6個の反応性水素原子を含む少なくとも1種の出発分子を付加したアニオン性重合であるか、又はアンチモニペンタクロリド、ボロンフルオリドエテレート又は漂白土等のルイス酸を触媒として使用し、そして、出発材料は、アルキレン基に2〜4個の炭素原子を有する1種以上のアルキレンオキシドを使用したカチオン性重合である。
【0053】
適切なアルキレンオキシドの例は、テトラヒドロフラン、ブチレン1,2−又は2,3−オキシド、スチレンオキシドであり、そして、エチレンオキシド及び/又はプロピレン1,2−オキシドが好ましい。アルキレンオキシドは、個々に、前後して交互に、又は混合物として使用して良い。使用して良い出発分子(starter molecule)は、水、琥珀酸、アジピン酸、フタル酸、又はテレフタル酸等の有機ジカルボン酸、脂肪族又は芳香族の、所望により、N−モノ−、又はN,N−又はN,N’−ジアルキル−置換された、1〜4個の炭素原子をアルキル基内に有するジアミン、例えば、所望により、モノ−、又はジアルキル−置換された、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,3−又は1,4−ブチレンジアミン又は1,2−、1,3−、1,4−、1,5−又は1,6−ヘキサメチレンジアミンである。
【0054】
使用して良い他の出発分子は、アルカノールアミン、例えば、エタノールアミン、N−メチル−又はN−エチルエタノールアミン、ジアルカノールアミン、例えば、ジエタノールアミン、及びN−メチル−及びN−エチルジエタノールアミン、及びトリアルカノールアミン、例えば、トリアルカノールアミン及びアンモニアである。多価(polyhydric)アルコール、特に2価又は3価のアルコール又は3価を超える官能価を有するアルコール、例えば、エタンジオール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリチリトール、サッカロース及びソルビトールを使用することが好ましい。
【0055】
他の適切な成分Dは、上述したポリアルキレングリコールのモノ−、ジ−、トリ−又はポリエステル等のエステル化ポリアルキレングリコールで、上述したポリアルキレングリコールの末端OH基を、有機酸、好ましくはアジピン酸又はテレフタル酸とそれ自身公知の方法で反応させることによって製造可能なものである。
【0056】
非イオン性界面活性剤は、活性水素を有する化合物をアルコキシル化することによって製造される物質、例えば、脂肪アルコール、オキソアルコール、又はアルキルフェノールにアルキレンオキシドが付加した生成物である。アルコキシル化反応のために、エチレンオキシド、又は1,2−プロピレンオキシドを使用することが好ましい。
【0057】
他の可能な非イオン性界面活性剤は、アルコキシル化された、又はアルコキシル化されていないシュガーエステル又はシュガーエーテルである。
【0058】
シュガーエーテルは、脂肪アルコールをシュガーと反応させることによって得られるアルキルグリコシドであり、そして、シュガーエステルは、シュガーを脂肪酸と反応させることによって得られる。上述した物質を製造するのに必要とされる、シュガー、脂肪アルコール、及び脂肪酸は、この技術分野の当業者にとって公知である。
【0059】
適切なシュガーは、例えば、Beyer/Walter,Lehrbuch der organischen Chemie,S.Hirzel Verlag Stuttgart,19th edition,1981,pp392〜425に記載されている。可能なシュガーは、D−ソルビトール及びD−ソルビトールを脱水素化することによって得られるソルビトールである。
【0060】
適切な脂肪酸は、飽和、又は単一又は複数不飽和の、非分岐又は分岐した、6〜26個の炭素原子、好ましくは8〜22個の炭素原子、特に好ましくは10〜20個の炭素原子を有するカルボン酸、例えば、CD Rompp Chemie Lexikon−Version 1.0, Stuttgart/New York;Georg Verlag 1995, キーワード“Fettauren”[Fatty acids]に記載されているものである。好ましい脂肪酸は、ルイス酸、パルミチン酸、ステアリン酸、及びオレイン酸である。
【0061】
適切な脂肪アルコールの炭素骨格は、適切な脂肪酸として記載されている化合物のものである。
【0062】
シュガーエーテル、シュガーエステル及びこれらを製造する方法は、この技術分野の当業者にとって公知である。好ましいシュガーエーテルは、上述したシュガーを上述した脂肪アルコールと反応させることにより、公知の方法によって製造される。好ましいシュガーエステルは、上述したシュガーを上述した脂肪酸と反応させることにより、公知の方法で製造される。好ましいシュガーエステルは、ソルビタンの脂肪酸との、モノ−、ジ−、及びトリエステルで、特に、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンジラウレート、ソルビタントリラウレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンジオレート、ソルビタントリオレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンジパルミテート、ソルビタントリパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタントリステアレート、及びソルビタンセスキオレート、ソルビタンモノ−及びジオレートの混合物である。
【0063】
従って、可能な成分Dは、上述したシュガーエーテルとシュガーエステルをアルコキシル化することによって得られる、アルコキシル化されたシュガーエーテル及びシュガーエステルである。好ましいアルコキシル化剤は、エチレンオキシド及びプロピレン1,2−オキシドである。アルコキシル化の程度は、通常、1〜20、好ましくは2〜10、特に好ましくは2〜6である。これらの例は、上述したソルビタンエステルをエトキシル化することによって得られるポリソルベート、例えば、CD Rompp Chemie Lexikon−Version 1.0, Stuttgart/New York;Georg Verlag 1995, キーワード“Polysorbate”[Polysorbates]に記載されているものである。適切なポリソルベートは、ポリエトキシソルビタンラウレート、ステアレート、パルミテート、トリステアレート、オレート、トリオレート、特に、ポリエトキシソルビタンステアレートで、例えば、ICI America Inc.からのTween(登録商標)60(例えば、CD Rompp Chemie Lexikon−Version 1.0, Stuttgart/New York;Georg Verlag 1995, キーワード“Tween(登録商標)”に記載されている。)として得られるものである。
【0064】
ポリマーを分散剤として使用することも可能である。
【0065】
分散剤成分Dの使用量は、分散物(dispersion)の合計量に対して、0.01〜50質量%である。この含有量は、0.1〜10質量%が好ましく、0.3〜5質量%が特に好ましい。
【0066】
成分E
本発明の分散物は、更に、充填剤成分Eを含むことができる。これは、1種類の充填剤又は2種以上の充填剤からなることが可能である。例えば、金属化可能な組成物の成分Eは、ファイバー状、又は粒子状充填剤、又はこれらの混合物を含むことができる。これらは、カーボンファイバー又はガラスファイバー等、市販されている製品であることが好ましい。
【0067】
使用可能なガラスファイバーは、E、A又はCガラスからなることができ、そして糊と接着剤を有していることが好ましい。これらの直径は、通常、1〜20μmである。連続的なフィラメントファイバー(ロービング)又は他に、その長さが1〜10mm、好ましくは3〜6mmの切断(chopped)ガラスファイバー(ステープル)を使用することも可能である。
【0068】
ガラス粉、ガラステキスタイル、ガラス腐織布、無機ファイバー、ウィスカー、アルミニウムオキシドファイバー、マイカ、粉状石英又は珪石灰等の充填剤又は補強剤を使用することも可能である。カーボン、シリカ、シリケート、例えば、エアゾール(Aerosils)、又はフィロシリケート、染料、脂肪酸、脂肪アミド、可塑剤、湿潤剤、乾燥剤、錯体化剤、カルシウムカルボネート、バリウムサルフェート、ワックス、顔料、伝導性ポリマー粒子、又はアラミドファイバーを使用することも可能である。
【0069】
成分Eの含有量は、分散物の合計量に対して、0.01〜50質量%であることが好ましい。0.1〜10質量%が更に好ましく、そして、0.3〜5質量%が特に好ましい。
【0070】
更に、加工助剤及び安定化剤が本発明の分散物中に存在して良く、例は、UV安定剤、潤滑剤、腐食防止剤、及び難燃剤である。これらの含有量は、分散物の合計量に対して、通常、0.01〜5質量%である。この含有量は、0.05〜3質量%が好ましい。
【0071】
本発明は、更に、
A 成分A〜C及び所望によりD及びE及び更なる成分を混合する工程、及び
B 混合物を分散させる工程、
を含む本発明の分散物を製造するための方法を提供する。
【0072】
分散物は、この技術分野の当業者にとって公知であるアセンブリを使用して、強く攪拌及び分散させることによって製造することができる。このことは、溶解器(dissolver)又は比較的強く分散させるアセンブリ内での成分の攪拌、攪拌器付のボールミル内での分散、又は大量処理用の粉流動装置内での分散を含む。
【0073】
更に、本発明は、非導電性の基体の少なくとも一部の表面に、金属層を製造する方法であって、
a) 本発明の分散物を基体上に施す工程;
b) 基体上に施した層を乾燥及び/又は硬化させる工程;及び
c) 所望により、無電流法及び/又は電気メッキ法を使用し、乾燥及び/又は硬化した分散物層上に金属を沈殿(析出)させる工程、
を含む方法を提供する。
【0074】
適切な基体は、非導電性の材料、例えば、ポリマーによって提供される。適切なポリマーは、エポキシ樹脂、例えば、2官能性又は多官能性アラミド補強又はガラスファイバー補強、又はペーパー補強のエポキシ樹脂(例えば、FR4)、ガラスファイバー補強のプラスチック、液晶ポリマー(LCPs)、ポリフェニレンサルファイド(PPSs)、ポリオキシメチレン(POMs)、ポリアリールエーテルケトン(PAEKs)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEKs)、ポリアミド(PAs)、ポリカルボネート(PCs)、ポリブチレンテレフタレート(PBTs)、ポリエチレンテレフタレート(PETs)、ポリイミド(PIs)、ポリイミド樹脂、シアネートエステル、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ナイロン、ビニルエステル樹脂、ポリエステル、ポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリアニリン、フェノール樹脂、ポリピロール、ポリナフタレンテレフタレート、ポリメチルメタクリレート、燐−変性エポキシ樹脂、ポリエチレンジオキシチオフェン、フェノール樹脂被覆アラミドペーパー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、メラミン樹脂、シリコン樹脂、フルオロ樹脂、誘電体材料、APPE、ポリエーテルイミド(PEIs)、ポリフェニレンオキシド(PPOs)、ポリプロピレン(PPs)、ポリエチレン(PEs)、ポリスルホン(PSUs)、ポリエーテルスルホン(PESs)、ポリアリールアミド(PAAs)、ポリビニルクロリド(PVCs)、ポリスチレン(PSs)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABSs)、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート(ASAs)、スチレン−アクリロニトリル(SANs)、及び上述したポリマーの2種以上の混合物(ブレンド)であり、ポリマーの2種以上の混合物(ブレンド)は、広く種々の状態で存在して良い。基体は、この技術分野の当業者に公知の添加剤(additive)を含んで良く、例は、難燃剤である。
【0075】
原則として、成分Aの下に列挙されたポリマーの何れもが使用可能である。印刷回路ボード(printed-circuit-board)産業では通常の他の基体も適切である。
【0076】
他の適切な基体は、複合体、フォーム状ポリマー、Styopor(登録商標)、Styrodur(登録商標)、セラミック表面、テキスタイル、カードボード、ペーパーボード、ペーパー、ポリマー被覆ペーパー、ウッド、無機材料、ガラス、植物ティッシュ、及び動物ティッシュである。
【0077】
本発明の目的のために、「非導電性」は、109ohm×cmを超える特定の抵抗を意味することが好ましい。
【0078】
分散物は、この技術分野の当業者にとって公知の方法で施されることが可能である。基体表面への施しは、1面以上に行うことができ、そして、1、2又は3次元に渡って広げることができる。通常、基体は、意図される使用に適切な、所望の如何なるジオメトリー(幾何学的形状)をも有することができる。
【0079】
施された層は、通常の方法によって乾燥することもできる。この代わりに、バインダーは、化学的又は物理的方法、例えば、UV照射又は加熱によって硬化させることができる。
【0080】
乾燥及び/又は硬化は、完全に又は部分的に行うことができる。
【0081】
分散物の施しと、乾燥及び/又は硬化の後に得られた層については、次に、乾燥した分散層上に無電流法及び/又は電気メッキ法によって金属を沈殿させることができる。
【0082】
本発明の分散物は、工程a)で、構造状又は平面状に施すことができる。施しを行う工程(工程a)、乾燥及び/又は硬化工程(工程b)、及び所望により、更なる金属の沈殿工程(工程c)が、連続的手順で行われることが好ましい。工程a)、b)及び所望によりc)を一通りに行うことが可能である。しかし、過程を、非連続法(バッチ式)又は準連続方式で行うことも可能である。
【0083】
被覆工程は、キャスティング、スプレッディング、ドクトリング、ブラッシング、印刷(版印刷、スクリーン印刷、フォトグラフ印刷、タンポン印刷、インクジェット、オフセット、等)、スプレイング、浸漬、パウダリング、流動床、等、通常の、及び公知の被覆法を使用することができる。層厚さは、0.01〜100μmの範囲で変化することが好ましく、0.1〜50μmの範囲での変化が更に好ましく、1〜25μmの範囲の変化が特に好ましい。層は、平面状又は構造状の何れの状態でも施すことができる。
【0084】
工程c)で行われる、無電流法及び/又は電気メッキ法による金属沈殿は、この技術分野の当業者にとって公知の、そして文献に記載されている方法で行うことができる。無電流法及び/又は電気メッキ法によって、すなわち、外部電圧及び電流の供給下に、1層以上の金属層が施されて良い。原則として、無電流法及び/又は電気メッキ法による沈殿のために使用可能な金属は、分散物の最も貴でない金属よりも、貴(noble)であるか又は同程度の貴であるものである。電気メッキ法による、銅層、クロム層、銀層、金層、及び/又はニッケル層の沈殿が好ましい。電気メッキ法による、アルミニウムからなる層の沈殿が好ましい。工程c)で沈殿される1種以上の層の厚さは、この技術分野の当業者にとって公知の範囲であり、そして、本発明では重要ではない。
【0085】
更に、本発明は、上述した、金属層を製造するための本発明の方法により得ることができる、導電性の金属層が少なくとも部分的に存在する基体表面を提供する。
【0086】
この種の基体表面は、伝導電流又は伝熱用に、電磁放射をスクリーニングするために使用可能であり、また他に、磁化のために使用可能である。
【0087】
更に、本発明は、金属層を施すために、本発明の分散物を使用する方法を提供する。
【0088】
本発明の基体表面は、特に、以下に列挙した種々の使用のために使用することができる。
【0089】
可能な例は、コンダクター−トラック構造の製造、例えば、RFIDアンテナ、トランスポーターアンテナ等のアンテナの製造、印刷回路ボード(多層内及び外層、ミクロビア(microvia)、チップ−オン−ボード、可撓性及び硬質印刷回路ボード、ペーパー、及び複合体等)、リボンケーブル、シートヒーティングシステム、非接触式チップカード、キャパシター、レジスタンス、コネクター、ホイルコンダクター、又は電気フューズの製造である。
【0090】
更に可能な例は、有機電子成分(organic electronic component)のための接触を有するアンテナの製造、又は他に電磁スクリーニング(シールディング)の目的のための、非導電性の材料からなる表面への被膜の製造である。
【0091】
他の可能な例は、非導電性の材料からなる機械的負荷に耐性を有する構造である、高周波信号用の中空コンダクターを製造するための金属性内部被膜の製造である。基体表面は、フィルムキャパシターの一部であっても良い。
【0092】
他の可能な例は、燃料電池に使用するための、2極性プレートのフローフィールドのセクターへの使用である。
【0093】
他の可能な例は、上述した非導電性の基体からなる成形物の、後の装飾的金属化のための、平面状又は構造化された導電性の層の製造である。金属フォーム(例えば、衝撃吸収用)の製造も考えられる。
【0094】
本発明の分散物及び本発明の基体表面の補助下での、金属層を製造するための本発明の方法の使用の範囲は、金属化された基体(基体そのものは伝導性ではない。)の安価な製造を可能にし、特に、スイッチ、センサー、及びMIDs(molded interconnect devices)、電磁放射の吸収材、又はガスバリヤ、又は装飾部分として使用するための、特に、自動車、衛生物、おもちゃ、ハウスホールド、又はオフィス部門、及び包装及びホイルのための装飾部分として使用するための安価な製造を可能にする。本発明は、銀行券、クレジットカード、身分証明書等のセキュリティ印刷の部門に使用可能である。本発明の方法の補助下に、テキスタイルを磁気的に又は電気的に機能化することができる(トランスミッタ、RFIDアンテナ、トランスポーターアンテナ、及び他のアンテナ、センサー、加熱エレメント、帯電防止材料(特にプラスチック用)、スクリーニング材料、等)。
【0095】
これら適用の例は、コンピューターハウジング等のハウジング、ディスプレースクリーン、移動式電話、音響装置、ビデオ装置、DVDs、カメラ用のハウジング、電子部品用ハウジング、軍用又は非軍用スクリーニング装置、シャワーフィッティング、ワッシュスタンドフィッティング、シャワーヘッド、シャワーレイル、及びシャワーホルダー金属化ドアハンドル、及びドアノブ、トイレットペーパーロールホルダー、バスタブグリップ、家具と鏡のための金属化装飾ストリップ、シャワー区分のフレーム、包装材料のフレームである。
【0096】
記載して良い他の製造物は、自動車分野の金属化プラスチック表面、例えば、装飾ストリップ、外部ミラー、ラジエーターグリル、フロントエンドメタリゼーション、翼表面、外部ボディワーク表面、内部ボディワーク、ドア敷居、トレッドプレート(踏板)の代用、装飾ホイールカバーである。
【0097】
更に、従来、部分的又は全面的に金属から製造されていた部分を非伝導性材料で製造することが可能である。例えば、ここで、ダウンパイプ、水路、ドア、及び窓枠を記載して良い。
【0098】
ここで、他の可能な例は、接触サイト、又は接触パッドの製造、又は統合電気モジュールの電気配線である。
【0099】
本発明の分散物は、同様に、印刷回路ボードにおいて、印刷回路ボードの上部と下部を通しての接触を設定することを目的として、ホール、ビアホール(vias)、ブラインドホール等を金属化するために使用可能である。このことは、他の基体が使用された場合にも適用可能である。
【0100】
本発明に従い製造された金属化物品は、(これらが磁化可能な金属を含む範囲で)更に、磁化可能な機能的部分、例えば、磁気パネル(マグネティックパネル)、磁気ゲーム、及び磁気表面、例えば冷蔵庫のドアの分野に使用される。これらは、良好な熱伝導性が有利になる分野、例えば、シート加熱システム、床加熱システム中のホイル及び絶縁材料にも使用される。
【0101】
本発明に従い金属化された表面は、結果として得られた基体が、印刷回路ボード、RFIDアンテナ、トランスポーダーアンテナ、シート加熱システム、リボンケーブル、非接触式チップカードとして作用するように使用することが好ましい。
【0102】
実施例
実施例1
8.4gのエチレン−ビニルアセテートコポリマーを126gのn−ブチルアセテート中に溶解した。378gの球状鉄粉及び42.0gの薄層状銅粉を、溶解攪拌器の補助下に、この溶液中に分散させた。結果として得られた分散物を、用意したPETホイルに4μmの厚さで施した。乾燥工程の後、酸性硫化銅槽中で、9μmの厚さの銅層を施した。
【0103】
実施例2
8.4gのエチレン−ビニルアセテートコポリマーを、96.6gのn−ブチルアセテートに溶解させた。378gの球状鉄粉及び42.0gの薄層状銅粉を、溶解攪拌器の補助下に、この溶液中に分散させた。結果として得られた分散物を、用意したPETホイルに4μmの厚さで施した。乾燥工程の後、酸性硫化銅槽中で、9μmの厚さの銅層を施した。
【0104】
実施例3
薄層状銅粉の代わりに、薄層状鉄粉を使用して、実施例1を繰り返した。
【0105】
実施例4
通常の鉄粉の代わりに、カルボニル鉄粉を使用して、実施例1を繰り返した。
【0106】
各場合において、1金属成分を省略すると、銅層の均一性が劣化し、そして粘着性(付着性)も劣化することが見出された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非導電性である基体上に金属層を施すための分散物であって、
A 分散物の合計質量に対して0.01〜30質量%の有機バインダー成分、
B 分散物の合計質量に対して30〜89.99質量%であり、そして、少なくとも以下のB1、B2、
B1 金属成分Bの合計質量に対して、0.01〜99.99質量%の、第1の金属粒子形状を有する第1の金属、
B2 金属成分Bの合計質量に対して、99.99〜0.01質量%の、第2の金属粒子形状を有する第2の金属、
を含む金属成分、
C 分散物の合計質量に対して10〜69.99質量%の溶媒成分、
を含み、以下の条件、
(1) 第1と第2の金属は異なること、
(2) 第1と第2の粒子形状は異なること、
の内、少なくとも1つを満たすことを特徴とする分散物。
【請求項2】
更に、以下の成分、
D 分散物の合計質量に対して0.01〜50質量%の分散剤成分;及び
E 分散物の合計質量に対して0.01〜50質量%の充填剤成分、
の内少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1に記載の分散物。
【請求項3】
バインダ成分Aが、ポリマー又はポリマー混合物からなることを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の分散物。
【請求項4】
前記第1及び第2の金属は、所望により被覆され、そして、亜鉛、ニッケル、銅、錫、コバルト、マンガン、鉄、マグネシウム、鉛、クロム、ビスマス、銀、金、アルミニウム、チタン、パラジウム、白金、タンタル、及びこれらの合金から成る群から、互いに独立して選ばれたことを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の分散物。
【請求項5】
前記第1及び第2の粒子形状は、針状、シリンダー状、薄層状、及び球状から成る群から、互いに独立して選ばれたことを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の分散物。
【請求項6】
第1と第2の金属が異なることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の分散物。
【請求項7】
第1と第2の金属が、鉄、銅、亜鉛及びアルミニウムから成る群から選ばれたことを特徴とする請求項6に記載の分散物。
【請求項8】
第1と第2の粒子形状は異なることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の分散物。
【請求項9】
第1の粒子形状は球状であり、そして、第2の粒子形状は薄層又は針状であることを特徴とする請求項8に記載の分散物。
【請求項10】
第1と第2の金属の平均粒子径が、0.01〜100μmであることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の分散物。
【請求項11】
A 成分A〜C及び所望によりD及びE及び更なる成分を混合する工程、
B 混合物を分散させる工程、
を含むことを特徴とする請求項1〜10の何れか1項に記載の分散物を製造する方法。
【請求項12】
非導電性の基体の表面の少なくとも一部に、金属層を製造する方法であって、
a) 請求項1〜10の何れか1項に記載の分散物を基体上に施す工程;
b) 基体上に施した層を乾燥及び/又は硬化させる工程;及び
c) 所望により、無電流法及び/又は電気メッキ法を使用し、乾燥及び/又は硬化した分散物層上に金属を沈殿させる工程、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
工程a)で、分散物を、構造状又は平面状に施すことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
工程a)、b)及び所望によりc)の少なくとも1工程が、少なくともある範囲では連続的操作により行われることを特徴とする請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
請求項12〜14の何れか1項に記載の方法から得ることができる、導電性の金属層を少なくとも部分的に有する基体表面。
【請求項16】
請求項15に記載の基体表面を、電流又は熱の伝導のために、又は装飾金属表面として、又は電磁放射のスクリーニングのために、又は磁化のために使用する方法。
【請求項17】
サーキットボード、RFIDアンテナ、トランスポンダーアンテナ、シート加熱システム、リボンケーブル、又は非接触式チップカードとして使用することを特徴とする請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1〜10の何れか1項に従う金属層の施しのために、懸濁物を使用する方法。

【公表番号】特表2009−507952(P2009−507952A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−529610(P2008−529610)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/EP2006/065875
【国際公開番号】WO2007/028762
【国際公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】