説明

金属箔積層ポリイミド樹脂基板

【課題】 本発明は、金属箔積層ポリイミド樹脂基板を構成する金属箔やポリイミド樹脂基板など、特に金属箔表面を検討して、ファインピッチ配線が形成可能で、銅箔などの金属箔をエッチングなどにより除去したポリイミド樹脂基板の表面が異方性導電フィルムなどの接着性の有機材料との密着性が向上した金属箔積層ポリイミド樹脂基板の提供を目的とする。
【解決手段】 ポリイミド樹脂基板の片面又は両面に金属箔を直接積層した金属箔積層ポリイミド樹脂基板であり、
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、
表面粗さ(Rzjis)が3.0μm以下、
表面積が6550μmの二次元領域をレーザー法で測定したときの表面積(三次元面積:Aμm)と二次元領域面積との比[A/6550]で算出される表面積比(B)の値が1.25〜2.50の範囲、及び
二次元領域の単位面積あたりのクロムの量が2.0mg/m以上
であることを特徴とする金属箔積層ポリイミド樹脂基板に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異方導電性フィルム(以下ACF)やICチップをフィルムにはり合わせるエポキシ樹脂などの接着剤との接着性に優れる金属配線ポリイミド樹脂基板を製造できる表面処理した金属箔などを用いた金属箔積層ポリイミド樹脂基板、及びこれらの製造方法に関する。特に、高性能の電子機器、とりわけ小型軽量化に好適な、高密度に配線されたフレキシブル配線基板、ビルトアップ回路基板、ICキャリアテープなどに用いることができる金属配線ポリイミド樹脂基板を製造できる金属箔積層ポリイミド樹脂基板に関する。
【背景技術】
【0002】
表面処理銅箔は、銅箔の表面に、銅張積層板を構成するポリイミド樹脂基板との接着強度等の向上を目的とした粗化処理や防錆処理等の表面処理を施したものである。表面処理銅箔は、その粗化処理面側をポリイミド樹脂基板と張り合わせ、銅張積層板に加工される。そして、この銅張積層板の表面処理銅箔をエッチングして配線バターンを形成し、プリント配線板とする。このプリント配線板には電子部品を実装し、回路基板とする。このとき、電子部品と配線とを接続する手法として、ハンダ付けやワイヤボンディングを用いることが多いが、これらに代わるものとして「異方性導電膜」(Anisotropic Conductive film:以下、「ACF」と称する。)を用いる場合もある。
【0003】
そして、上記回路基板に実装する電子部品は、その使用中にプリント配線板から脱落しない程度の実装強度を備えるように、配線と接続されなければならない。この実装強度は、ハンダ付けの場合にはハンダ付け面積で、フイヤボンディング方式では最終的に施す樹脂封止で担保している。ところが、ACFを用いた実装方式では、樹脂成分と導電性粒子とで構成されるACFを用いて、電子部品と配線とを電気的に接続する。しかし、ACFが含む導電性粒子には密着力がない。そのため、導電性粒子の存在に起因して、ACFと電子部品及び配線との接触部においては、密着力が得られていない部分が存在することになる。従って、ACFを用いて電子部品を実装した回路基板では、電子部品の実装強度は、「表面処理銅箔がエッチングで除去されたポリイミド樹脂基板の表面」(以下、「樹脂基材表面」と称する。)とACFとの密着力による影響を受ける。
【0004】
そこで、特許文献1には、ACFなどにより電気的接続を行なった場合においても、ACFとの密着性、更に電気的、物理的な接続性にも優れた銅張積層板及びフレキシブルプリント配線板の提供を目的として、可とう性を有する絶縁層に接合された銅箔よりなる導電層を備え、銅箔の前記絶縁層と接谷される面には、0.1〜10原子%のニッケルを有するものを用いることが開示されている。そして、このフレキンブル配線板は、絶縁層が露出している部分に、ニッケルが残るように銅箔を選択エッチングしている。具体的に言えば、この特許文献1の実施例には、接着面の表面粗さRaが1.0μmの12μm厚さの表面処理銅箔を用いた2層フレキンブルプリント配線板において、当該銅箔の接着面に、XPSで分析したときのニッケル量が0.1〜10原子%存在すれば、防錆性、エッチング性、レーザービアホールの接続性とACF密着強度とを満たすことが出来る旨が開示されている。
【0005】
特許文献2には、ポリイミド樹脂基板と、この基板に積層され、且つこの基板との積層面が、Ni、Cr、Co、Zn、SnおよびMoから選ばれる少なくとも1種の金属またはこれらの金属を少なくとも1種含む合金で表面処理(以下、表面処理に使用された金属を、表面処理金属という。)されている金属配線とを有する金属配線基板の製造方法において、
前記樹脂基板上に前記金属配線を形成する工程と、
前記表面処理金属の除去が可能なエッチング液により、少なくとも前記樹脂基板表面を洗浄して樹脂基板表面の接着性を向上させる洗浄工程と
を有することを特徴とする金属配線基板の製造方法が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−147662号公報
【特許文献2】特開2007−134695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、金属箔積層ポリイミド樹脂基板を構成する金属箔やポリイミド樹脂基板など、特に金属箔表面を検討して、ファインピッチ配線が形成可能で、銅箔などの金属箔をエッチングなどにより除去したポリイミド樹脂基板の表面が異方性導電フィルムなどの接着性の有機材料との密着性が向上した金属箔積層ポリイミド樹脂基板の提供を目的とする。
さらに本発明は、ファインピッチ配線が形成可能で、銅箔などの金属箔をエッチングなどにより除去した後のポリイミド基板の表面が異方性導電膜などの接着性の有機材料との密着性に優れ、ポリイミド樹脂基板と金属箔との充填性に優れる金属箔積層ポリイミド樹脂基板の提供を目的とする。
特に本発明は、金属箔と熱圧着性を有するポリイミド樹脂基板とを加熱加圧装置を用いて積層された、金属箔をエッチングなどにより除去したポリイミド樹脂基板の表面が異方性導電フィルムなどの接着性の有機材料との密着性が向上し、ポリイミド樹脂基板と金属箔との充填性の向上した金属箔積層ポリイミド樹脂基板及びその製法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一は、ポリイミド樹脂基板の片面又は両面に金属箔を直接積層した金属箔積層ポリイミド樹脂基板であり、
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、
表面粗さ(Rzjis)が3.0μm以下、
表面積が6550μmの二次元領域をレーザー法で測定したときの表面積(三次元面積:Aμm)と二次元領域面積との比[A/6550]で算出される表面積比(B)の値が1.25〜2.50の範囲、及び
二次元領域の単位面積あたりのクロムの量が2.0mg/m以上
であることを特徴とする金属箔積層ポリイミド樹脂基板に関する。
本発明の第二は、本発明の第一の金属箔積層ポリイミド樹脂基板の片面又は両面の金属箔をエッチングすることにより金属配線を形成した配線基板に関する。
本発明の第三は、ポリイミド樹脂基板の片面又は両面に金属箔を積層した金属箔積層ポリイミド樹脂基板の製造方法であり、
ポリイミド樹脂基板は金属箔と接する側の面が熱圧着性を有するポリイミド樹脂基板を用い、
金属箔は下記特性を有する金属箔を用い、
加圧加熱成形装置を用いてポリイミド樹脂基板の熱圧着性を有する面と、金属箔の下記特性を有する接着面とをはり合わせたことを特徴とする金属箔積層ポリイミド樹脂基板の製造方法。
(金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の特性)
・表面粗さ(Rzjis)が3.0μm以下、
・表面積が6550μmの二次元領域をレーザー法で測定したときの表面積(三次元面積:Aμm)と二次元領域面積との比[A/6550]で算出される表面積比(B)の値が1.25〜2.50の範囲、
・二次元領域の単位面積あたりのクロムの量が2.0mg/m以上。
【0009】
本発明の第一において、
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の表面積が6550μmの二次元領域をレーザー法で測定したときの表面積(三次元面積:Aμm)と二次元領域面積との比[A/6550]で算出される表面積比(B)の値が1.60〜2.50の範囲とすることにより、
金属箔積層ポリイミド樹脂基板の金属箔の除去したポリイミド樹脂基板の表面と接着性の有機材料層との密着性や接着性に優れる。
本発明の第一において、
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の表面粗さ(Rzjis)が2.5μm以下とすることにより、金属箔とポリイミド樹脂基板との充填性に優れ、さらに微細配線を形成しても不良率が軽減され配線基板材料として優れている。特に金属箔とポリイミド樹脂基板とを熱圧着により直接はりあわせた金属箔積層ポリイミド樹脂基板では金属箔とポリイミド樹脂基板との充填性に優れる。
本発明の第一において、
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、
表面粗さ(Rzjis)が2.5μm以下、かつ
表面積が6550μmの二次元領域をレーザー法で測定したときの表面積(三次元面積:Aμm)と二次元領域面積との比[A/6550]で算出される表面積比(B)の値が1.60〜2.50の範囲とすることにより、
金属箔とポリイミド樹脂基板との充填性に優れ、金属箔積層ポリイミド樹脂基板の金属箔の除去したポリイミド樹脂基板の表面と接着剤との密着性に優れる。
【0010】
本発明の第一及び本発明の第三の好ましい態様を以下に示し、これら態様は任意に複数組み合わせることが出来る。
1)金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、粗化処理されており、
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の粗化処理前の表面粗さ(Rzjis)が1.0μm未満の未処理金属箔を用い、
未処理金属箔のポリイミド樹脂基板と接着させる側の表面を粗化処理して、
表面積が6550μmの二次元領域をレーザー法で測定したときの粗化処理前の表面積(三次元面積:aμm)と、粗化処理後の表面積(三次元面積:bμm)との比[b/a]の値が1.20〜2.50の範囲であること。
2)金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、二次元領域の単位面積あたり40mg/m以上のニッケル−亜鉛合金層を有すること。
3)金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、Lab表色系におけるL値が47〜63の範囲であること。
4)金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、カップリング剤層を有すること。
5)金属箔は、電解銅箔であること。
6)ポリイミド樹脂基板は、ポリイミドであること、好ましくはポリイミド樹脂基板は、耐熱性のポリイミド層の少なくとも片面に熱圧着性のポリイミド層を積層したものであり、この熱圧着性のポリイミド層が金属箔との積層面となっていること。
7)ポリイミド樹脂基板は、金属箔と接する側の面が熱圧着性を有するポリイミド樹脂基板であり、
ポリイミド樹脂基板の熱圧着性を有する面と金属箔とが加圧加熱成形装置によりはり合わされていること。
8)ポリイミド樹脂基板の金属箔と接する側の熱圧着性の厚みが、金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の表面粗さ(Rzjis)以上であること、好ましくはポリイミド樹脂基板の金属箔と接する側の熱圧着性の厚みが、金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の表面粗さ(Rzjis)以上、かつ3μm以下であること。
9)金属箔積層ポリイミド樹脂基板の金属箔をエッチングすることにより金属配線を形成した配線基板の製造用であること。
10)金属箔の一部を除去して形成した樹脂基板露出面の少なくとも一部に、接着性の有機材料層が設けられる用途に使用されること。
【0011】
本発明の第ニの好ましい態様を以下に示し、これら態様は任意に複数組み合わせることが出来る。
1)配線基板の金属配線を形成した側に、さらに接着剤層を積層したこと。
2)接着性の有機材料層は、導電層、絶縁層、保護層、接着層、封止層およびシール層のうちの少なくとも1つの機能を有する層であること、好ましくは接着性の有機材料層がエポキシ樹脂を含むこと。
3)配線基板は、金属配線を形成した樹脂基板露出面の少なくとも一部に、接着性の有機材料層が設けられる用途に使用されること。
【発明の効果】
【0012】
本発明の金属箔積層ポリイミド樹脂基板は、金属配線間などの金属が除去され露出している樹脂基板表面の密着性や接着性が向上しており、金属が除去され露出している樹脂基板表面に接着性の有機材料層を直接積層したときに、その有機材料層と基板表面との密着性や接着性に優れる。従って、接着性の有機材料層が、例えば導電層(例えば、異方性導電層を含む)、絶縁層、保護層(例えば、ソルダーレジスト層を含む)、接着層、封止層およびシール層のうちの少なくとも1つの機能を有するときに、その信頼性を高めることができる。例えば、ポリイミドフィルム面とエポキシ樹脂、異方性導電フィルム等の接着物との密着性や接着性に優れるため、ACFやICチップを、金属配線ポリイミド樹脂基板に貼り合わせたときに、信頼性が向上する。
さらに本発明の金属箔積層ポリイミド樹脂基板は、金属箔とポリイミド樹脂基板との引き剥がし強さが安定しており、微細配線の形成性にも優れている。
本発明の金属箔積層ポリイミド樹脂基板は、金属箔をエッチングして微細配線を形成することができ、高密度なフレキシブル配線基板、ビルトアップ回路基板、ICキャリアテープなどを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、表面粗さ(Rzjis)が3.0μm以下、表面積が6550μmの二次元領域をレーザー法で測定したときの表面積(三次元面積:Aμm)と二次元領域面積との比[A/6550]で算出される表面積比(B)の値が1.25〜2.50、二次元領域の単位面積あたりのクロムの量が2.0mg/m以上である。
【0014】
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の表面組さ(Rzjis)は、接着面の表面粗さをJIS規格に定める10点平均粗さで測定し、測定20カ所の平均値である。金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の表面粗さ(Rzjis)の上限を3.0μmとしている。この表面粗さ(Rzjis)の値が3.0μm以下であれば、金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、粗化粒子として微細な金属粒子を電解法で付着形成していても、電流の極端な集中箇所がなく、析出する金属粒子同士が重なり合う部位も少なくなるため、異常に突出した電析状態の粗化粒子がなくなる。従って、当該表面処理銅箔は、ファインピッチプリント配線板の製造用途に適している。さらに金属箔積層ポリイミド樹脂基板の金属箔をエッチング等で除去したポリイミド樹脂基板表面が接着性の有機材料層との密着性に優れる。
また、この表面粗さ(Rzjis)の値が2.5μm以下であれば、ポリイミド樹脂基板と金属箔との充填性に優れるため、配線基板の信頼性が向上し、さらに微細配線用のプリント配線板の製造用途に適している。
ポリイミド樹脂基板と金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面との安定した引き剥がし強さを示すためには、金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の表面粗さ(Rzjis)を、1.3μm〜3.0μm、さらに1.4μm〜2.5μm、特に1.6μm〜2.4μmとすることがより好ましい。
【0015】
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、「6550μmの二次元領域をレーザー法で測定したときの表面積(三次元面積:Aμm)」と「二次元領域面積」との比[A/6550]で算出される表面積比(B)の値が1.25〜2.50、好ましくは1.40〜2.30、より好ましくは1.60〜2.20、さらに好ましくは1.70〜2.10である。この、表面積比(B)の値は、表面処理銅箔とポリイミド樹脂基板との接触面積の代替指標である。
【0016】
金属箔積層ポリイミド樹脂基板を用いてエッチング法で微細配線を形成するためには、金属箔積層ポリイミド樹脂基板が備える金属箔は、少ない粗化粒子量でポリイミド樹脂基板と最大の接触面積を得ていることが好ましい。そして、粗化粒子がアンカー効果を発揮して密着強度を安定させるためには、その形状は略球状であることが好ましい。これにより、金属箔を用いた金属箔積層ポリイミド樹脂基板の樹脂基材表面に形成される「粗化粒子の形状を備えるレプリカ」(以下、単に「レプリカ」と称する。)も、略球状となる。
【0017】
そして、上記金属箔積層ポリイミド樹脂基板に接着性の有機材料層を用いて電子部品を実装すると、接着性の有機材料層の樹脂成分は、このレプリカ内に埋め込まれ、金属箔の接着面に形成された粗化粒子の形状となる。従って、金属箔積層ポリイミド樹脂基板の樹脂基材表面と接着性の有機材料層との密着力は、樹脂基材表面と接着性の有機材料層との接触部において、化学的な接着力を活用しない場合、化学的な接着力をあまり活用しない場合又は化学的な接着力を活用する場合のいずれの場合においても、金属箔の接着面に形成された粗化粒子の形状の影響を受けることになる。そして、樹脂基材表面と接着性の有機材料層との安定した密着力又は接着力を得るには、前記レプリカの形状は、微細で緻密なものであることが好ましい。即ち、前記金属箔の接着面が備える、粗化処理で形成された粗化粒子は、微細で、均一に付着した状態が理想的なものと言える。従って、前記指標である表面積比(B)の値が重要となる。
【0018】
しかし、粗化処理で形成される粗化粒子の形状や表面状態は、粗化処理の条件によって大きく変動する。粗化処理の結果得られる金属箔接着面の、上記Bの値が1.25を下回ると、粗化処理で形成された粗化粒子の分布が不均一であったり、アンカー効果が得られにくい形状(例えば、円錐や半球など)である傾向が大きくなる。すると、金属箔積層ポリイミド樹脂基板の樹脂基材表面と接着性の有機材料層との良好な密着力を得ることが出来ないため好ましくない。さらに密着強度等にバラツキが生じやすいものとなる。
また上記Bの値が1.60以上では、金属箔積層ポリイミド樹脂基板の樹脂基材表面と接着性の有機材料層との密着力が向上するために好ましい。
【0019】
―方、Bの値が2.5を超えると、形成された粗化粒子の粒径バラツキが大きくなり、大きな粒子の間に小さな粒子が隠れてしまう状態が見られるようになる。そして、粗化粒子の粒径バラツキが大きいと、エッチングにより配線を形成する際の、オーバーエッチング時間の短縮が困難になる。また、金属箔積層ポリイミド樹脂基板の樹脂基材表面が備えるレプリカヘの、接着性の有機材料層の樹脂成分の埋め込み性も悪化するため好ましくない。従って、金属箔積層ポリイミド樹脂基板の樹脂基材表面と接着性の有機材料層との密着力が良好であり、金属箔の接着面とポリイミド樹脂基板とがより良好な密着性と、錫メッキなどの金属メッキなどの基板洗浄や基板処理などの薬液などの耐薬品性とを発揮する形状であると言うためには、当該Bの値が1.25〜2.50、好ましくは1.40〜2.30、より好ましくは1.60〜2.20、さらに好ましくは1.70〜2.10であることがより好ましい。
【0020】
ここで、粗化処理における粗化粒子の形成に関して、未処理金属箔(未粗化金属箔)の表面に金属の微細な粒子を付着形成する場合の方法を簡単に述べておく。略球状の粗化粒子を金属で形成するには、電気めっき法や無電解めっき法を用いることが出来る。電気めっき法を用いて形成する場合には、未処理金属箔(未粗化金属箔)の表面に粒子の核を形成する第1段処理と、当該核の付着を強団にする第2段処理とからなる2段階の金属めっきにより粒子形状を形成する。
【0021】
金属めっきの一例として、銅箔に銅メッキする方法の一例を示す。
まず、第1段処理では、硫酸系銅電解液として銅濃度を10g/L〜25g/L、フリー硫酸濃度を50g/L〜150g/Lとし、必要に応じ、添加剤としてゼラチンなどを添加し、液温15℃〜30℃、未処理銅箔を陰極として陰極電流密度20A/dm〜50A/dmとしたやけめっき条件で電解して銅粒子の核を形成する。
そして、第2段処理では、硫酸系銅電解液として銅濃度を45g/L〜100g/L、フリー硫酸濃度を50g/L〜150g/Lとした溶液を用い、液温30℃〜50℃、陰極電流密度30A/dm〜60A/dmで、前記銅粒子の核を覆うように平滑めっきして形状を整え、狙いとする形状の粗化粒子を得る。
【0022】
また、金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、二次元領域の単位面積あたりのクロムの量が2.0mg/m以上である。金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、1mの二次元領域に存在するクロムの量が2.0mg以上であることが好ましい。クロムは、プリント配線板用表面処理銅箔の防錆処理として、広く用いられる防錆成分である。クロムは、その表面に酸素を含有する不働態膜を形成し、耐食性が良好な金属であるため、該クロム成分を接着面に備える表面処理銅箔を用いて得られる、プリント配線板の耐薬品性も良好である。
【0023】
しかし、前記クロムの量が2.0mg未満の場合には、金属箔積層ポリイミド樹脂基板を構成するポリイミド樹脂基板と表面処理金属箔との密着強度等を改善することも、エッチング後の樹脂基材表面と接着性の有機材料層との密着性の改善も出来ない。ここで言うクロムの量は、クロムが単独で存在する場合のみならず、他の防錆成分との組み合わせとして存在しているクロム成分をも含む概念として記載している。例えば、亜鉛防錆、真鍮防錆、亜鉛−ニッケル合金防錆、亜鉛−コバルト合金防錆等と、クロメート又はクロムとの組み合わせ等である。
【0024】
そして、二次元領域の単位面積あたりのクロムの量が2.0mg/m以上存在すれば、銅箔などの金属箔の接着面の二次元表面も十分にクロムの不働態膜で被覆され、金属箔積層ポリイミド樹脂基板のポリイミド樹脂基板との安定した接着強度、金属箔積層ポリイミド樹脂基板の樹脂基材表面と接着性の有機材料層との密着性の改善が出来る。そして、クロム量の上限であるが、一般的な表面処理銅箔の製造方法で用いられるクロメート処理法であれば、クロメート処理溶液の浴組成などから、7.0mg/m程度になる。しかし、銅箔などの金属箔の接着面に存在するクロムの量が多すぎると、配線を形成する際のエッチング条件によっては、樹脂基材表面に残留してしまうことがある。従って、耐マイグレーション性の観点を併せ、前記クロム量のより好ましい範囲は、2.2mg/m〜6.0mg/m、さらに2.5mg/m〜5.0mg/mである。
【0025】
前記クロメート処理法を用い、クロム成分を銅箔などの金属箔の接着面に付着させるには、クロメート処理浴としてCrO濃度を0.5g/L〜2g/Lに調整した浴を用い、液温15℃〜35℃、陰極電流密度0.2A/dm〜4A/dmとした電解法を用いることが出来る。
【0026】
そして、本件発明に係る金属箔積層ポリイミド樹脂基板用の銅箔などの金属箔においては、その銅箔などの金属箔の接着面は、粗化処理前の未処理金属箔の表面粗さ(Rzjis)が1.0μm未満、及び、その表面積が6550μmの二次元領域をレーザー法で測定したときの、粗化処理前の表面積(三次元面積:aμm)と、粗化処理後の表面積(三次元面積:bμm)との比[b/a]の値が1.20〜2.50、より好ましくは1.40〜2.40、さらに好ましくは1.65〜2.30、特に好ましくは1.70〜2.20であることが好ましい。
【0027】
まず、粗化処理を行なう前の未処理金属箔(未粗化金属箔)は、表面粗さ(Rzjis)が1.0μm未満、好ましくは0.9μm以下、さらに好ましくは0.8μm以下であることが好ましい。表面粗さ(Rzjis)を1.0μm未満としたのは、粗化処理における粗化粒子の形成が異常突起、凹凸部等へ集中して、粗化粒子が局部的に形成されることを防止するためである。即ち、粗化処理を施す未処理金属箔(未粗化金属箔)の表面は、滑らかで平坦であることが好ましい。
【0028】
ところで、一般的なプリント配線板用途で用いられている本発明以外の銅箔では、電解銅箔の析出面に粗化処理が施されている。この析出面は、山形の円錐形状に析出した表面形状を備え、粗化処理前でもその表面粗さ(Rzjis)は2μm以上である。このような銅箔表面に粗化処理を施すと、肥大化した粗化粒子が円錐形状の頂点に形成され、円錐形状の底辺部分や稜線部分には、粗化粒子が形成され難い。従って、前記表面粗さ(Rzjis)が1.0μm以上であると、粗化処理で形成される粗化粒子が凸部等へ集中して形成され、異常突起となる傾向が顕者に高くなる。表面粗さ(Rzjis)がこの上限を超えると、走査型電子顕微鏡で観察した前記析出面の表面状態として、うねりや凹凸形状が観察されやすくなる。
【0029】
比[b/a]の値が1.20を下回ると、粗化粒子の形状が略球状である良好な粗化処理が均―に行なわれていないことになり、粗化処理によるアンカー効果が得られない。すると、このような金属箔を用いて得られた金属箔積層ポリイミド樹脂基板の樹脂基材表面は、接着性の有機材料層の樹脂成分に対して十分な密着力を発揮し得ない。一方、比[b/a]の値が2.50を超えると、粗化処理が過剰になり、付着形成した粗化粒子の粒径にバラツキが大きいか、又は、析出した粗化粒子の析出状態が粗くなったり、粗化粒子の形状が略球状から塊状に変化していることになる。このような金属箔を用いて得られた金属箔積層ポリイミド樹脂基板の樹脂基材表面ではアンカー効果のバラツキが大きく、接着性の有機材料層の樹脂成分に対して安定した密着力を発揮し得ない。
【0030】
本発明の金属箔積層ポリイミド樹脂基板の金属箔において、その金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、1mの二次元領域に存在するニッケルと亜鉛との合計量が40mg以上、好ましくは40〜100mg、より好ましくは42〜90mg、さらに好ましくは45〜80mg、特に好ましくは48〜70mgであることが好ましい。防錯成分としての当該ニッケルと亜鉛との合計量が40mg未満の場合には、ニッケル−亜鉛合金による被覆が不十分となる部分が発生し、金属箔積層ポリイミド樹脂基板のポリイミド樹脂基板と金属箔との接着強度又は密着強度等を改善することが出来ない。この40mg/mとは、完全にフラットな理想平面を、厚さ約40Åのニッケル−亜鉛合金で被覆できる量である。40Åの厚さで理想平面を覆うニッケル−亜鉛合金量があれば、平滑な表面に粗化粒子を形成していても、粗化粒子が微細であって形状のバラツキが小さい場合には、粗化粒子の表面を含む粗化処理面のほぼ全面を二次元的に覆うことが出来る。しかし、ニッケル−亜鉛合金量が100mg/mを超えると、銅エッチング液によるニッケル−亜鉛合金層の除去が困難になる傾向が見られるようになり、エッチング残が発生するため好ましくない。また、ここで言うニッケルと亜鉛とは、ニッケル−亜鉛合金層として形成したものとし、以下の組成で形成することが好ましい。
【0031】
ニッケル−亜鉛合金層には、不可避不純物を除きニッケルを65wt%〜90wt%、亜鉛を10wt%〜35wt%含有する組成を採用することが好ましい。ここでのwt%表示には不可避不純物を含めず、ニッケルと亜鉛とで100wt%となる表示を採用した。このニッケル−亜鉛合金層は、金属箔積層ポリイミド樹脂基板のポリイミド樹脂基板と金属箔との張り合わせ加工時に、ポリイミド樹脂基板と金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面との濡れ性をニッケルの存在により改善し、接着強度等を向上させる。また、ニッケル−亜鉛合金層は、金属箔積層ポリイミド樹脂基板を用いたフレキンブルプリント配線板が加熱を受けたとき、金属箔とポリイミド樹脂基板との直接接触を防止するバリアとして機能する。その結果、金属箔の金属成分による触媒的作用による樹脂の劣化が防止され、加熱後の配線の引き剥がし強さの低下が抑制される。
【0032】
しかしながら、ニッケル含有量が90wt%を超えると、銅エッチング液などの金属エッチング液によるニッケル−亜鉛合金層の除去が困難になり、エッチング残が発生するため好ましくない。一方、亜鉛の含有割合が35wt%を超えると、金属箔積層ポリイミド樹脂基板のポリイミド樹脂基板と金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の接着強度が低下する。また、ポリイミド樹脂基板と金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の金属メッキ液などへの耐薬品性が低下して、例えば、錫めっきを行った場合等には、析出錫の潜り込み現象が発生しやすくなる。上記から、ニッケル−亜鉛合金組成を用いる場合であって、ポリイミド樹脂基板と金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面との密着強度等を向上させ、より確実にエッチング残の発生を防止しようとする場合には、ニッケルを70wt%〜85wt%、亜鉛を30wt%〜15wt%含有する組成とすることが、より好ましい。
【0033】
以上に述べたニッケル−亜鉛合金層を形成する場合は、例えば、硫酸ニッケルを用いてニッケル濃度が1g/L〜35g/L、ピロリン酸亜鉛を用いて亜鉛濃度が0.1g/L〜1g/L、そしてピロリン酸カリウムが50g/L〜250g/Lの溶液を調製し、液温20〜50℃、pH8〜11、電流密度0.3〜10A/dmで電気めっきする等の条件を採用することが好ましい。上記条件で電気めっきすることで、膜厚均一性に優れたニッケル−亜鉛合金層が得られる。
【0034】
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、最終的表面処理としてシランカップリング剤による表面処理を行うことが好ましい。シランカップリング剤は、金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面とポリイミド樹脂基板との濡れ性を改善し、ポリイミド樹脂基板と金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の引き剥がし強度等を向上させるための助剤としての役割を果たす。
このシランカップリング剤には、最も一般的なエポキシ官能性シランカップリング剤を始めオレフィン官能性シランカップリング剤、アクリル官能性シランカップリング剤等種々のものを用いることが出来る。中でも、アミノ官能性シランカップリング剤又はメルカプト官能性シランカンプリング剤を用いることが、接着強度等が向上するため好ましい。
【0035】
シランカップリング剤としては、具体的には、プリント配線板用にプリプレグのガラスクロスに用いられるのと同様のカップリング剤を中心にビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルフェニルトリメトキシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、4−グリシジルブチルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−3−(4−(3−アミノプロポキシ)プトキシ)プロピル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールシラン、トリアジンシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。また、シランカップリング剤に代えてチタネート系、ジルコネート系カップリング剤によって処理されているものについても、効果的であると考える。
【0036】
金属箔においては、金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、Lab表色系におけるL値が47〜63であることが好ましい。ここで言う、Lab表色系におけるL値とは、明度のことであり、値が大きくなるほど色調が明るいことを意味する。そして、金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面にL値の概念を適用すると、明るい側は、析出した粗化粒子がまばらに付着していたり、粒子径のバラツキが大きい等、粗化処理のレベルが不十分であることの指標と出来る。従って、L値が63を超えると、粗化処理レベルが不足して、金属箔積層ポリイミド樹脂基板の金属箔を除去して得られる樹脂基材表面は、接着性の有機材料層に対して十分な密着力を発揮し得ない。同時に、金属箔積層ポリイミド樹脂基板のポリイミド樹脂基板と金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面との接着力が顕者に低下するため好ましくない。
【0037】
―方、L値が47未満の場合には、小さな粒子のレプリカ部のアンカー効果は有効であり、金属箔積層ポリイミド樹脂基板の金属箔を除去して得られる樹脂基材表面と接着性の有機材料層との密着性は良好である。しかし、粗化処理レベルは過剰であり、部分的に粗大粒子が存在する場合がある。そして、金属箔積層ポリイミド樹脂基板においては、金属箔積層ポリイミド樹脂基板の軽量化や、耐屈曲性や耐熱性の向上を目的としてポリイミド樹脂基板の厚みを薄くすることがある。このとき、L値が47未満の金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面に組大粒子が存在する場合、ポリイミド樹脂基板として金属箔との接合面が熱圧着性層を有する場合には、ポリイミド樹脂基板の金属箔と接する側の熱圧着性の厚みが、金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の表面粗さ(Rzjis)未満では、ポリイミド樹脂基板の熱圧着性層に粗化粒子の全体を埋め込むことが出来なくなる場合がある。すると、粗化粒子の一部が熱圧着性を有しない基材と直接接触することになり、この部分ではほとんど密着力を発揮しない。その結果、得られる金属箔積層ポリイミド樹脂基板のポリイミド樹脂基板と金属箔とのピール強度は、場所によるバラツキが大きいものとなるため好ましくない。金属箔積層ポリイミド樹脂基板の樹脂基材表面が接着性の有機材料層に対して十分な密着力を発揮し、ポリイミド樹脂基板と金属箔との密着強度も良好であるためには、L値が好ましくは47〜63、より好ましくは48〜60、さらに好ましくは48〜58、特に好ましくは49〜57であることが好ましい。
【0038】
金属箔としては、特に限定されないが、電解銅箔や圧延銅箔などの銅および銅合金、アルミニウムおよびアルミニウム合金、ステンレス、ニッケルおよびニッケル合金(42合金も含む)、などの1〜100μm、好ましくは2〜50μm、より好ましくは3〜35μm、さらに好ましくは6〜25μm、特に好ましくは8〜20μm厚みの金属を用いることができる。特に金属箔は、電解銅箔や圧延銅箔などの銅および銅合金が好ましい。
【0039】
厚みの薄い金属箔を用いる場合(例えば1〜8μm、好ましくは2〜8μm厚みのもの)には、金属箔を補強し保護する役割を有する保護箔(例えばキャリア箔など)を積層したものを用いることができる。保護箔(キャリア箔)は、特に材質は限定していないが、極薄銅箔などの金属箔とはり合わすことができ、極薄銅箔などの金属箔を補強し、保護する役割を有するものであればよく、例えばアルミニウム箔、銅箔、表面をメタルコーティングした樹脂箔などを用いることができる。保護箔(キャリア箔)の厚さは、特に限定していないが、厚みの薄い金属箔を補強できるものであればよく、一般に10〜200μm厚、さらに12〜100μm厚、特に15〜75μm厚のものを用いることが好ましい。保護箔(キャリア箔)は、極薄銅箔などの極薄金属箔と平面的に貼り合わされたような形態で用いられるものであればよい。
【0040】
保護箔(キャリア箔)は、連続した製造工程を流れ、少なくとも金属箔積層ポリイミド樹脂基板の製造終了時までは、金属箔層と接合した状態を維持し、ハンドリングを容易にしているものを用いることができる。保護箔(キャリア箔)を、銅箔などの金属箔より除去する方法としては、ポリイミド樹脂基板に保護箔(キャリア箔)付金属箔を積層後に、保護箔(キャリア箔)を引き剥がして除去するもの、ポリイミド樹脂基板に保護箔(キャリア箔)付金属箔を積層前または後に保護箔(キャリア箔)をエッチング法にて除去するものなどを用いることができる。キャリア箔付電解銅箔では、キャリア箔の表面上に電解銅箔となる銅成分を電析させるので、キャリア箔には少なくとも導電性を有することが必要となる。
【0041】
ポリイミド樹脂基板の物性としては、特に限定されないが、金属箔との加熱や加圧によるはりあわせなど積層が問題なく行え、製造や取扱が行いやすく、銅箔などの金属箔のエッチングを行うことができて、耐熱性や電気絶縁性に優れるものであればよく、必要に応じて金属箔を充分に支持でき、必要に応じて金属配線を形成させる時に使用するフォトレジスト層を除去させる現像液や剥離液に大きな影響を受けないものであれば良い。
【0042】
ポリイミド樹脂基板の物性としては、熱収縮率が0.05%以下、線膨張係数(50〜200℃)がポリイミド樹脂基板に積層する銅箔などの金属箔の線膨張係数に近いことが好ましく、金属箔として銅箔を用いる場合ポリイミド樹脂基板の線膨張係数(50〜200℃)は0.5×10−5〜2.8×10−5cm/cm/℃であることが好ましい。
【0043】
ポリイミド樹脂基板は、耐熱性および難燃性に優れ、剛性が高く、電気絶縁性に優れることから用いることができる。
ポリイミド樹脂基板は、ビフェニルテトラカルボン酸骨格およびピロメリット酸骨格から選ばれる酸成分と、フェニレンジアミン骨格、ジアミノジフェニルエーテル骨格およびビフェニル骨格から選ばれるジアミン成分とを主成分とする芳香族ポリイミドなどのポリイミドを用いることができる。
ポリイミド樹脂基板としては、単層、2層以上を積層した複層のフィルム、シート、板の形状で用いることができる。
ポリイミド樹脂基板としては、宇部興産社製「ユーピレックス(S、R、VT)」(商品名)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
ポリイミド樹脂基板としては、無機充填剤、有機充填剤などの充填剤などを含むことが出来る。
【0045】
ポリイミド樹脂基板の厚みは、特に限定されないが、金属箔との積層が問題なく行え、製造や取扱が行なえ、金属箔を充分に支持できる厚みであれば良く、好ましくは1〜500μm、より好ましくは2〜300μm、さらに好ましくは5〜200μm、より好ましくは7〜175μm、特に好ましくは8〜100μmのものを用いることが好ましい。
【0046】
ポリイミド樹脂基板としては、基板の少なくとも片面がコロナ放電処理、プラズマ処理、化学的粗面化処理、物理的粗面化処理などの表面処理された基板を用いることができる。特に、表面がシランカップリング剤で処理されたものも好ましい。特に、金属箔の表面がシランカップリング剤で処理されていないときは、ポリイミド樹脂基板の表面が表面処理されていること、特にシランカップリング剤で処理されていることが好ましい。
シランカップリング剤は、上記の金属箔の表面処理の段落に記載のものを用いることができる。表面処理剤としては、アミノシラン系、エポキシシラン系などのシランカップリング剤が好ましい。
【0047】
表面処理されているとは、表面処理剤がそのままの状態で含まれる場合でもよく、あるいはポリイミド樹脂基板の表面が、例えばポリイミドフィルムであれば、ポリイミドまたはポリイミド前駆体、さらにはこれらの有機溶液中で320〜550℃の加熱により化学変化などを起こした状態である場合でもよい。
【0048】
ポリイミド樹脂基板は、基板の剛性が小さいなど取扱い性が困難な場合には、基板の裏面に後工程で剥離可能な剛性のあるフィルムや基板をはり付けて用いることができる。
【0049】
ポリイミド樹脂基板として、耐熱性を有する層(Sa1)と、耐熱性を有する層の少なくとも片面に熱圧着性及び/又は接着性を有する層(Sa2)の2層以上の熱圧着性及び/又は接着性を有する多層の樹脂基板を用いることができる。多層の層構成の一例としては、Sa2/Sa1、Sa2/Sa1/Sa2、Sa2/Sa1/Sa2/Sa1、Sa2/Sa1/Sa2/Sa1/Sa2等を挙げることができる。
ポリイミド樹脂基板の熱圧着性及び/又は接着性を有する層(Sa2)は、金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面とのはり合わせに使用する。
Sa2層は、熱圧着性をする層及び接着性を有する層から選ばれる層である。
【0050】
2層以上の熱圧着性及び/又は接着性を有する多層の樹脂基板において、耐熱性を有する層(Sa1)と熱圧着性及び/又は接着剤層(Sa2)の厚みは適宜選択して用いることができ、熱圧着性及び/又は接着剤層(Sa2)の厚みは厚みは、金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の表面粗さ(Rzjis)以上であることが好ましく、0.5μm以上、好ましくは1μm以上、さらに好ましくは2μm以上の範囲で設けることができる。
【0051】
金属積層ポリイミド樹脂基板において、ポリイミド系接着剤を介してポリイミド樹脂基板と金属箔とを積層する場合の接着剤(接着性を有する層)は、熱硬化性でも熱可塑性でもよく、例えば、ポリイミド系樹脂、ポリイミドシロキサン−エポキシ樹脂、ポリウレタンイミド系接着剤および公知の変性イミド系接着剤、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエステルイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリイミド系接着剤、イミドオリゴマー系接着剤、ポリイミドシロキサン系接着剤などの接着剤が挙げられる。特に、ポリイミド接着剤、イミドオリゴマー系接着剤、ポリイミドシロキサン−エポキシ接着剤、ポリウレタンイミド系接着剤および公知の変性イミド系接着剤を好適に用いることができる。
【0052】
ポリイミド樹脂基板としては、熱収縮率が0.05%以下、線膨張係数(50〜100℃)がポリイミド樹脂基板に積層する銅箔などの金属箔の線膨張係数に近いことが好ましく、金属箔として銅箔を用いる場合ポリイミド樹脂基板の線膨張係数(50〜100℃)は0.5×10−5〜2.8×10−5cm/cm/℃のものを用いることが好ましい。
ポリイミド樹脂基板として耐熱性の樹脂を用いる場合は、熱収縮率が0.05%以下、線膨張係数(50〜200℃)がポリイミド樹脂基板に積層する銅箔などの金属箔の線膨張係数に近いことが好ましく、金属箔として銅箔を用いる場合ポリイミド樹脂基板の線膨張係数(50〜200℃)は0.5×10−5〜2.8×10−5cm/cm/℃のものを用いることが好ましい。
【0053】
金属積層ポリイミド樹脂基板は、ポリイミド樹脂基板の片面または両面に、金属箔の表面処理された面を積層したものであり、製造方法により限定されるものではない。
【0054】
金属積層ポリイミド樹脂基板は、
1)ポリイミド樹脂基板の片面または両面に、金属箔の表面処理された面を直接、または接着剤を介して積層したもの、
2)ポリイミド樹脂基板の片面または両面に、金属箔の表面処理された面を直接、または接着剤を介して加熱して積層したもの、
3)ポリイミド樹脂基板の片面または両面に、金属箔の表面処理された面を直接、または接着剤を介して加圧して積層したもの、
4)ポリイミド樹脂基板の片面または両面に、金属箔の表面処理された面を直接、または接着剤を介して加熱加圧により積層したもの、
5)金属箔の表面処理された面に接着剤、熱圧着性材料、又はポリイミド樹脂基板のポリイミド溶液或いはポリアミック酸溶液、ポリイミド前駆体溶液などを塗布したもの、さらにポリイミド樹脂基板と加熱や加圧などの方法で積層したもの、
などを用いることができる。
【0055】
特にポリイミド樹脂基板は、基板の表面と金属箔とが、加圧、加熱または加圧加熱を行っても、圧着性が低い場合には、接着剤を介して積層させることが好ましい。
【0056】
ポリイミド樹脂基板や金属箔の表面処理された面への接着性の有機材料層、熱圧着性の樹脂又はポリイミド樹脂基板用の樹脂の塗布は、ロールコーター、スリットコーター、コンマコーターなど、一般的に用いられる方法で行うことができる。
【0057】
接着剤層又は熱圧着性樹脂層付き金属箔とポリイミド樹脂基板とを、または金属箔と接着剤層又は熱圧着性樹脂層付きポリイミド樹脂基板とを積層する場合、加熱装置、加圧装置または加圧加熱装置を用いることができ、加熱条件、加圧条件は用いる材料により適宜選択して行うことが好ましく、連続またはバッチでラミネートできれば特に限定されないが、ロールラミネート或いはダブルベルトプレス等を用いて連続して行うことが好ましい。
【0058】
ポリイミド樹脂基板としては、耐熱性、電気絶縁性などに優れるポリイミドフィルムを好適に用いることができる。
ポリイミドフィルムとしては、熱収縮率が0.05%以下、線膨張係数(50〜200℃)が耐熱性樹脂基板に積層する銅箔などの金属箔の線膨張係数に近いことが好ましく、金属箔として銅箔を用いる場合耐熱性樹脂基板の線膨張係数(50〜200℃)は0.5×10−5〜2.8×10−5cm/cm/℃のものを用いることができる。
【0059】
ポリイミドフィルムとしては、単独のポリイミドフィルム、2層以上のポリイミドが積層された2層以上の積層ポリイミドフィルムを用いることができ、ポリイミドの種類も特に限定されるものではない。
【0060】
ポリイミドフィルムは、公知の方法で製造することができ、例えば単層のポリイミドフィルムでは、
(1)ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液を支持体に流延または塗布し、イミド化する方法、
(2)ポリイミド溶液を支持体に流延、塗布し、必要に応じて加熱する方法、などを用いることが出来る。
【0061】
2層以上のポリイミドフィルムでは、
(3)ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液を支持体に流延または塗布し、さらに2層目以上のポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液を逐次前に支持体に流延または塗布したポリアミック酸層の上面に流延または塗布し、イミド化する方法、
(4)2層以上のポリイミドの前駆体であるポリアミック酸溶液を同時に支持体に流延または塗布し、イミド化する方法、
(5)ポリイミド溶液を支持体に流延または塗布し、さらに2層目以上のポリイミド溶液を逐次前に支持体に流延または塗布したポリイミド層の上面に流延または塗布し、必要に応じて加熱する方法、
(6)2層以上のポリイミド溶液を同時に支持体に流延または塗布し、必要に応じて加熱する方法、
(7)上記(1)から(6)で得られた2枚以上のポリイミドフィルムを直接、または接着剤を介して積層する方法、などにより得ることができる。
【0062】
ポリイミド樹脂基板として、耐熱性ポリイミド層(S1)の少なくとも片面に熱圧着性ポリイミド層(S2)を有する2層以上の熱圧着性を有するポリイミドフィルムを用いることができる。多層ポリイミドフィルムの層構成の一例としては、S2/S1、S2/S1/S2、S2/S1/S2/S1、S2/S1/S2/S1/S2等を挙げることができる。
【0063】
熱圧着性を有するポリイミドフィルムにおいて、耐熱性ポリイミド層(S1)と熱圧着性ポリイミド層(S2)の厚みは適宜選択して用いることができ、熱圧着性を有するポリイミドフィルムの最外層の熱圧着性ポリイミド層(S2)の厚みは、金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の表面粗さ(Rzjis)以上であることが好ましく、0.5〜10μm、好ましくは1〜7μm、さらに好ましくは2〜5μmの範囲であり、耐熱性ポリイミド層(S1)の両面に厚みの略等しい熱圧着性ポリイミド層(S2)を設けることにより、カールを抑制することができる。
【0064】
熱圧着性を有するポリイミドフィルムにおいて、耐熱性ポリイミド層(S1層)の耐熱性ポリイミドとしては、下記の特徴を少なくとも1つ有するもの、下記の特徴を少なくとも2つ有するもの[1)と2)、1)と3)、2)と3)の組合せ等]、特に下記の特徴を全て有するものを用いることができる。
1)単独のポリイミドフィルムの場合に、ガラス転移温度が300℃以上、好ましくはガラス転移温度が330℃以上、さらに好ましくは確認不可能であるもの。
2)単独のポリイミドフィルムの場合に、線膨張係数(50〜200℃)(MD)が、ポリイミド樹脂基板に積層する銅箔などの金属箔の熱膨張係数に近いことが好ましく、金属箔として銅箔を用いる場合ポリイミド樹脂基板の熱膨張係数は5×10−6〜28×10−6cm/cm/℃であることが好ましく、9×10−6〜20×10−6cm/cm/℃であることが好ましく、さらに12×10−6〜18×10−6cm/cm/℃であることが好ましい。
3)単独のポリイミドフィルムの場合に、引張弾性率(MD、ASTM−D882)は300kg/mm以上、好ましくは500kg/mm以上、さらに700kg/mm以上であるもの。
4)好ましくは熱収縮率が0.05%以下のもの。
【0065】
耐熱性ポリイミド層(S1)としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)および3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)から選ばれる成分を主とする酸成分と、パラフェニレンジアミン(PPD)および4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)から選ばれる成分を主とするジアミン成分とから合成されるポリイミドを用いることが出来る。例えば次のものが好ましい。
【0066】
(1)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)とパラフェニレンジアミン(PPD)と場合によりさらに4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(DADE)とから製造されるポリイミド。この場合PPD/DADE(モル比)は100/0〜85/15が好ましい。
【0067】
(2)3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物とピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンと4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとから製造されるポリイミド。この場合BPDA/PMDAは15/85〜85/15で、PPD/DADEは90/10〜10/90であることが好ましい。
【0068】
(3)ピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとから製造されるポリイミド。この場合DADE/PPDは90/10〜10/90であることが好ましい。
【0069】
(4)3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)およびピロメリット酸二無水物とパラフェニレンジアミンおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルとから製造されるポリイミド。この場合、酸二無水物中BTDA/PMDAが20/80〜90/10、ジアミン中PPD/DADEが30/70〜90/10であることが好ましい。
【0070】
耐熱性ポリイミド層(S1層)の耐熱性ポリイミドの合成は、最終的に各成分の割合が前記範囲内であればランダム重合、ブロック重合、あるいはあらかじめ2種類のポリアミック酸を合成しておき両ポリアミック酸溶液を混合後反応条件下で混合して均一溶液とする、いずれの方法によっても達成される。
【0071】
耐熱性ポリイミドの合成において、前記の各成分を使用し、ジアミン成分とテトラカルボン酸二無水物の略等モル量を、有機溶媒中で反応させてポリアミック酸の溶液(均一な溶液状態が保たれていれば一部がイミド化されていてもよい)とする。
【0072】
また、耐熱性ポリイミドの物性を損なわない種類と量の他のテトラカルボン酸二無水物やジアミンを使用してもよい。
【0073】
一方、熱圧着性ポリイミド層(S2)の熱圧着性ポリイミドは、1)金属箔と熱圧着性を有するポリイミドであり、好ましくは熱圧着性ポリイミド(S2)のガラス転移温度以上から400℃以下の温度で金属箔と積層して熱圧着性を有するポリイミドである。
【0074】
熱圧着性ポリイミド層(S2)の熱圧着性ポリイミドは、さらに、以下の特徴を少なくとも1つ有することが好ましい。
2)熱圧着性ポリイミド(S2)は、金属箔とポリイミド(S2)とのピール強度が0.7N/mm以上で、150℃で168時間加熱処理後でもピール強度の保持率が90%以上、さらに95%以上、特に100%以上であるポリイミドであること。
3)ガラス転移温度が130〜330℃であること。
4)引張弾性率が100〜700Kg/mmであること。
5)線膨張係数(50〜200℃)(MD)が13〜30×10−6cm/cm/℃であること。
【0075】
熱圧着性ポリイミド層(S2)の熱圧着性ポリイミドとしては、種々の公知の熱可塑性ポリイミドから選択することができる。例えば、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(ODPA)、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル無水物)、3,3’,4,4’−エチレングリコールジベンゾエートテトラカルボン酸二無水物などから選ばれる成分を含む酸成分、好ましくはそれらを主成分として含む酸成分と、
1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォンなどから選ばれる少なくとも主鎖にベンゼン環を3個有するジアミン成分を含み、好ましくは主成分として含み、必要に応じて主鎖にベンゼン環を1個または2個有するジアミン成分をさらに含む、ジアミン成分とから合成されるポリイミドを用いることができる。
【0076】
熱圧着性ポリイミドは、好適には、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)、ピロメリット酸二無水物(PMDA)および3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)から選ばれる酸成分と、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼンおよび2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパンから選ばれるジアミン成分とから合成されるポリイミドを用いることができる。この際、必要に応じて主鎖にベンゼン環を1個または2個有するジアミン成分や上記以外のジアミン、酸成分を含むことができる。
【0077】
特に1,3−ビス(4−アミノフェノキシベンゼン)(以下、TPERと略記することもある)を80モル%以上含むジアミン成分と、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、a−BPDAと略記することもある。)とから製造されるものが好ましい。この場合s−BPDA/a−BPDAは100/0〜5/95であることが好ましく、熱圧着性ポリイミドの物性を損なわない範囲で他のテトラカルボン酸二無水物、例えば2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物あるいは2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などで置き換えられてもよい。
【0078】
熱圧着性ポリイミドは、前記各成分と、さらに場合により他のテトラカルボン酸二無水物および他のジアミンとを、有機溶媒中、約100℃以下、特に20〜60℃の温度で反応させてポリアミック酸の溶液とし、このポリアミック酸の溶液をドープ液として使用し、そのドープ液の薄膜を形成し、その薄膜から溶媒を蒸発させ除去すると共にポリアミック酸をイミド環化することにより製造することができる。
【0079】
また、前述のようにして製造したポリアミック酸の溶液を150〜250℃に加熱するか、またはイミド化剤を添加して150℃以下、特に15〜50℃の温度で反応させて、イミド環化した後溶媒を蒸発させる、もしくは貧溶媒中に析出させて粉末とした後、該粉末を有機溶液に溶解して熱圧着性ポリイミドの有機溶媒溶液を得ることができる。
【0080】
熱圧着性ポリイミドを得るためには、前記の有機溶媒中、ジアミン(アミノ基のモル数として)の使用量が酸無水物の全モル数(テトラ酸二無水物とジカルボン酸無水物の酸無水物基としての総モルとして)に対する比として、0.95〜1.0、特に0.98〜1.0、そのなかでも特に0.99〜1.0であることが好ましい。ジカルボン酸無水物を使用する場合の使用量は、テトラカルボン酸二無水物の酸無水物基モル量に対する比として、0.05以下であるような割合の各成分を反応させることができる。
【0081】
熱圧着性ポリイミドの製造において、得られるポリアミック酸の分子量が小さい場合、金属箔との積層体の接着強度の低下をもたらす場合がある。
【0082】
また、ポリアミック酸のゲル化を制限する目的でリン系安定剤、例えば亜リン酸トリフェニル、リン酸トリフェニル等をポリアミック酸重合時に固形分(ポリマー)濃度に対して0.01〜1%の範囲で添加することができる。
【0083】
また、イミド化促進の目的で、ドープ液中に塩基性有機化合物を添加することができる。例えば、イミダゾール、2−イミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、イソキノリン、置換ピリジンなどをポリアミック酸に対して0.05〜10重量%、特に0.1〜2重量%の割合で使用することができる。これらは比較的低温でポリイミドフィルムを形成するため、イミド化が不十分となることを避けるために使用することができる。
【0084】
また、接着強度の安定化の目的で、熱圧着性ポリイミド用ポリアミック酸溶液に有機アルミニウム化合物、無機アルミニウム化合物または有機錫化合物を添加してもよい。例えば水酸化アルミニウム、アルミニウムトリアセチルアセトナートなどをポリアミック酸に対してアルミニウム金属として1ppm以上、特に1〜1000ppmの割合で添加することができる。
【0085】
酸成分およびジアミン成分よりポリアミック酸製造に使用する有機溶媒は、耐熱性ポリイミドおよび熱圧着性ポリイミドのいずれに対しても、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホルアミド、N−メチルカプロラクタム、クレゾール類などが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0086】
耐熱性ポリイミドおよび熱圧着性ポリイミドは、アミン末端を封止するためにジカルボン酸無水物、例えば、無水フタル酸およびその置換体、ヘキサヒドロ無水フタル酸およびその置換体、無水コハク酸およびその置換体など、特に、無水フタル酸を使用することができる。
【0087】
熱圧着性を有するポリイミドフィルムは、好適には、(i)共押出し−流延製膜法(単に、多層押出法ともいう。)によって、耐熱性ポリイミド(S1)のドープ液と熱圧着性ポリイミド(S2)のドープ液とを積層、乾燥、イミド化して多層ポリイミドフィルムを得る方法、或いは(ii)耐熱性ポリイミド(S1)のドープ液を支持体上に流延塗布し、乾燥した自己支持性フィルム(ゲルフィルム)の片面或いは両面に熱圧着性ポリイミド(S2)のドープ液を塗布し、乾燥、イミド化して多層ポリイミドフィルムを得る方法によって得ることができる。
【0088】
共押出法は、特開平3−180343号公報(特公平7−102661号公報)に記載されている方法を用いることができる。
【0089】
熱圧着性を両面に有する3層のポリイミドフィルムの製造の一例を示す。ポリイミド(S1)のポリアミック酸溶液とポリイミド(S2)のポリアミック酸溶液とを三層共押出法によって、耐熱性ポリイミド層(S1層)の厚みが4〜45μmで両側の熱圧着性ポリイミド層(S2層)の厚みの合計が3〜10μmとなるように三層押出し成形用ダイスに供給し、支持体上にキャストしてこれをステンレス鏡面、ベルト面等の支持体面上に流延塗布し、100〜200℃で半硬化状態またはそれ以前の乾燥状態とする自己支持性フィルムのポリイミドフィルムAを得る。
【0090】
自己支持性フィルムのポリイミドフィルムAは、200℃を越えた高い温度で流延フィルムを処理すると、熱圧着性を有するポリイミドフィルムの製造において、接着性の低下などの欠陥を来す傾向にある。この半硬化状態またはそれ以前の状態とは、加熱および/または化学イミド化によって自己支持性の状態にあることを意味する。
【0091】
得られた自己支持性フィルムのポリイミドフィルムAは、ポリイミド(S2)のガラス転移温度(Tg)以上で劣化が生じる温度以下の温度、好適には250〜420℃の温度(表面温度計で測定した表面温度)まで加熱して(好適にはこの温度で0.1〜60分間加熱して)、乾燥およびイミド化して、耐熱性ポリイミド層(S1層)の両面に熱圧着性ポリイミド層(S2層)を有するポリイミドフィルムを製造することができる。
【0092】
得られた自己支持性フィルムのポリイミドフィルムAは、溶媒および生成水分が好ましくは約25〜60質量%、特に好ましくは30〜50質量%残存しており、この自己支持性フィルムを乾燥温度に昇温する際には、比較的短時間内に昇温することが好ましく、例えば、10℃/分以上の昇温速度であることが好適である。乾燥する際に自己支持性フィルムに対して加えられる張力を増大することによって、最終的に得られるポリイミドフィルムAの線膨張係数を小さくすることができる。
【0093】
そして、前述の乾燥工程に続いて、連続的または断続的に前記自己支持性フィルムの少なくとも一対の両端縁を連続的または断続的に前記自己支持性フィルムと共に移動可能な固定装置などで固定した状態で、前記の乾燥温度より高く、しかも好ましくは200〜550℃の範囲内、特に好ましくは300〜500℃の範囲内の高温度で、好ましくは1〜100分間、特に1〜10分間、前記自己支持性フィルムを乾燥および熱処理する。好ましくは最終的に得られるポリイミドフィルム中の有機溶媒および生成水等からなる揮発物の含有量が1重量%以下になるように、自己支持性フィルムから溶媒などを充分に除去するとともに前記フィルムを構成しているポリマーのイミド化を充分に行って、両面に熱圧着性を有するポリイミドフィルムを形成することができる。
【0094】
前記の自己支持性フィルムの固定装置としては、例えば、多数のピンまたは把持具などを等間隔で備えたベルト状またはチェーン状のものを、連続的または断続的に供給される前記固化フィルムの長手方向の両側縁に沿って一対設置し、そのフィルムの移動と共に連続的または断続的に移動させながら前記フィルムを固定できる装置が好適である。また、前記の固化フィルムの固定装置は、熱処理中のフィルムを幅方向または長手方向に適当な伸び率または収縮率(特に好ましくは0.5〜5%程度の伸縮倍率)で伸縮することができる装置であってもよい。
【0095】
なお、前記の工程において製造された両面に熱圧着性を有するポリイミドフィルムを、再び好ましくは4N以下、特に好ましくは3N以下の低張力下あるいは無張力下に、100〜400℃の温度で、好ましくは0.1〜30分間熱処理すると、特に寸法安定性が優れた両面に熱圧着性を有するポリイミドフィルムとすることができる。また、製造された長尺の両面に熱圧着性を有するポリイミドフィルムは、適当な公知の方法でロール状に巻き取ることができる。
【0096】
また、ポリイミドフィルム表面をシランカップリング剤で処理する場合には、ポリイミドフィルムの製造工程中に、処理することが好ましい。例えば、前述のポリイミドフィルムAの状態で、シランカップリング剤を含有する溶媒を塗布することが好ましい。
【0097】
金属積層ポリイミド樹脂基板は、また上記の耐熱性ポリイミド(S1)の少なくとも片面に、接着剤を介して金属箔の表面処理された面を積層したものを用いることができる。
【0098】
金属積層ポリイミド樹脂基板は、好ましくは、上記の両面または片面に熱圧着性ポリイミド層(S2)が設けられたポリイミドフィルムを用いて、熱圧着性ポリイミド層(S2)と金属箔の表面処理された面を積層して製造することができる。
【0099】
熱圧着性を有するポリイミドフィルムの両面に金属箔を積層した金属積層ポリイミド樹脂基板の製造方法の一例として、次の方法を挙げることができる。即ち、
1)長尺状の金属箔と、長尺状の熱圧着性を有するポリイミドフィルムと、長尺状の金属箔とをこの順に3枚重ねて、加熱圧着装置に送る。このとき、好ましくは導入する直前のインラインで150〜250℃程度、特に150℃より高く250℃以下の温度で2〜120秒間程度予熱できるように熱風供給装置や赤外線加熱機などの予熱器を用いて予熱する。
【0100】
2)一対の圧着ロールまたはダブルベルトプレスを用いて、一対の圧着ロールまたはダブルベルトプレスの加熱圧着ゾーンの温度がポリイミド(S2)のガラス転移温度より20℃以上高い温度から400℃の温度範囲で、特にガラス転移温度より30℃以上高い温度から400℃の温度範囲で、金属箔/ポリイミド/金属箔の3枚重ねを、加圧下に熱圧着する。
【0101】
3)特にダブルベルトプレスの場合には引き続いて冷却ゾーンで加圧下に冷却して、好適にはポリイミド(S2)のガラス転移温度より20℃以上低い温度、特に30℃以上低い温度まで冷却して、積層させ、ロール状に巻き取ることにより、ロール状の両面金属箔積層ポリイミドフィルムを製造することができる。
【0102】
金属積層ポリイミド樹脂基板は、上記の両面に熱圧着性を有するポリイミドフィルムを用いて、熱圧着性を有するポリイミドフィルムの片面に金属箔の表面処理された面を積層して製造することができる。
【0103】
片面金属箔積層ポリイミド基板の製造方法の一例として、次の方法を挙げることができる。即ち、
1)長尺状の金属箔と、長尺状の熱圧着性を有するポリイミドフィルムと、熱圧着性を有しない長尺状のフィルム(宇部興産社製、ユーピレックスS、ユーピレックスRNなど)をこの順に3枚重ねて、加熱圧着装置に送る。このとき、好ましくは導入する直前のインラインで150〜250℃程度、特に150℃より高く250℃以下の温度で2〜120秒間程度予熱できるように熱風供給装置や赤外線加熱機などの予熱器を用いて予熱しておく。
【0104】
2)一対の圧着ロールまたはダブルベルトプレスを用いて、一対の圧着ロールまたはダブルベルトプレスの加熱圧着ゾーンの温度がポリイミド(S2)のガラス転移温度より20℃以上高い温度から400℃の温度範囲で、特にガラス転移温度より30℃以上高い温度から400℃の温度範囲で、金属箔/ポリイミド/ポリイミドの3枚重ねを、加圧下に熱圧着する。
【0105】
3)特にダブルベルトプレスの場合には引き続いて冷却ゾーンで加圧下に冷却して、好適にはポリイミド(S2)のガラス転移温度より20℃以上低い温度、特に30℃以上低い温度まで冷却して、積層させ、ロール状に巻き取ることにより、ロール状の片面金属箔積層ポリイミドフィルムを製造することができる。
【0106】
この製造方法では、熱圧着前に予熱することにより、ポリイミドに含有されている水分等による、熱圧着後の積層体の発泡による外観不良の発生を防止したり、電子回路形成時の半田浴浸漬時の発泡を防止したりすることにより、製品収率の悪化を防ぐことができる。また、熱圧着装置全体を炉の中に設置する方法も考えられるが、熱圧着装置がコンパクトなものに実質限定され、両面金属箔積層ポリイミドフィルムの形状に制限を受け実用的ではなく、或いは、アウトラインで予熱処理しても、積層するまでに再度吸湿してしまい前記の発泡による外観不良や半田耐熱性の低下は避けることが困難となる。
【0107】
ダブルベルトプレスは、加圧下に高温加熱−冷却を行うことができるものであって、熱媒を用いた液圧式のものが好ましい。
【0108】
両面金属箔積層ポリイミドフィルムは、両面に熱圧着性を有するポリイミドフィルムと金属箔とを、ダブルベルトプレスを用いて加圧下に熱圧着−冷却して積層することによって、好適には引き取り速度1m/分以上とすることができ、得られる両面金属箔積層ポリイミドフィルムは、長尺で幅が約400mm以上、特に約500mm以上の幅広の、接着強度が大きく(金属箔とポリイミド層とのピール強度に優れる、金属箔表面に皺が実質的に認められないほど外観が良好な両面金属箔積層ポリイミドフィルムを得ることができる。
【0109】
製品外観の良好な両面金属箔積層ポリイミドフィルムを量産するために、熱圧着性ポリイミドフィルムと金属箔との組合せを1組以上供給するとともに、最外層の両側とベルトとの間に保護材(つまり保護材2枚)を介在させ、加圧下に熱圧着−冷却して張り合わせて積層されることが好ましい。保護材としては、非熱圧着性で表面平滑性が良いものであれば、特に材質を問わず使用でき、例えば金属箔、特に銅箔、ステンレス箔、アルミニウム箔や、高耐熱性ポリイミドフィルム(宇部興産社製、ユーピレックスS)などの厚み5〜125μm程度のものが好適に挙げられる。
【0110】
ポリイミド樹脂基板の少なくとも片面に金属箔が積層された金属積層ポリイミド樹脂基板を用いて、ポリイミド樹脂基板上に金属配線を形成することができる。金属配線の形成は、ポリイミド樹脂基板と積層された金属箔を、エッチングにより部分的に除去し、配線パターンを形成することで金属配線とする。エッチング方法は公知の方法を用いることができるが、例えばエッチング液を用いる方法、レーザーなどを用いる方法が挙げられる。本発明では、特にエッチング液を用いるウェットエッチングが好ましい。
【0111】
金属箔のエッチング液としては、公知のエッチング液を用いることができるが、例えば、フェリシアン化カリウム水溶液、塩化鉄水溶液、塩化銅水溶液、過硫酸アンモニウム水溶液、過硫酸ナトリウム水溶液、過酸化水素水、フッ酸水溶液、およびこれらの組み合わせなどを用いることができる。
【0112】
配線基板は、好ましくは80μmピッチ以下、50μmピッチ以下、40μmピッチ以下、30μmピッチ以下、20μmピッチ以下の金属配線を有する。
【0113】
配線基板はさらに金属箔の除去により表面に露出したポリイミド樹脂基板の表面を、防錆金属成分を除去が可能なエッチング液(A)で洗浄することができる。
エッチング液(A)としては、防錆成分を、金属箔(即ち、金属配線)の主たる金属成分よりも早い速度で除去することができるエッチング液であれば特に限定されない。金属箔が銅であれば、エッチング液(A)としては、例えば、塩酸を含む酸性エッチング液、フェリシアン化カリウムまたは過マンガン酸を含むアルカリ性エッチング液などを用いることができる。
具体的なエッチング液(A)としては、例えば表面処理金属が、Ni、CrまたはNi−Cr合金等であるときは、公知のNi−Cr合金用エッチング剤(Ni−Crシード層除去剤)を用いることができ、例えば、Meltex社のメルストリップNC−3901など、ADEKA社のアデカリムーバーNR−135など、日本化学産業社のFLICKER−MHなどの公知のエッチング液を用いることができる。
エッチング液(A)による洗浄条件としては、用いるエッチング液により適宜選択することができるが、好ましくは30〜60℃、さらに40〜60℃の温度で、好ましくは0.3〜20分、さらに好ましくは0.5〜10分、特に好ましくは1〜7分の時間で浸漬(ディップ)、またはスプレー処理することである。
【0114】
本発明の金属箔積層ポリイミド樹脂基板の片面又は両面の金属箔をエッチングすることにより金属配線を形成した配線基板に対して、金属配線の少なくとも一部にさらに金属メッキを施してもよい。エッチング液による洗浄後の金属配線基板の金属メッキの一例として、銅配線の場合、銅配線に錫メッキ、金メッキ、銀メッキなどを行い、メッキされた金属配線基板を製造することができる。
【0115】
配線基板の金属配線を形成した側に、直接ICチップや他の金属配線などを設けることができる。
また配線基板の金属配線を形成した側に、ICチップ、他の金属配線、他のポリイミド樹脂基板などを異方導電性フィルム(以下ACF)などの接着性の有機材料層を介して設けることができる。
接着性の有機材料層は、導電層、絶縁層、保護層、接着層、封止層およびシール層のうちの少なくとも1つの機能を有する層であり、液体でも固体でも用いることができ、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系、シロキサン系、イミド系などがあり、熱可塑性により充填するもの、熱可塑性と熱硬化性を併用するものなど、公知の物を用いることができる。。
接着性の有機材料層は、例えば、異方導電性フィルム(以下ACF)、ボンディングシート、レジスト材料、封止剤などをあげることができる。
配線基板の金属配線を形成した側に、接着性の有機材料層を設ける方法としては公知の方法で行うことができ、例えば、
配線基板の金属配線を形成した側に、液体を塗付して加熱する方法、
配線基板の金属配線を形成した側に、シートを貼り加熱プレス、又は真空中で加熱プレスする方法、
配線基板の金属配線を形成した側に、シートを貼りプレス、又は真空プレスし、その後加熱する方法、などを挙げることができる。
【0116】
本発明の金属箔積層ポリイミド樹脂基板において、銅箔とポリイミドとの接着強度は使用目的に適用する強度があればよく、銅箔とポリイミドとの接着強度が好ましくは0.90N/mm以上、より好ましくは1.00N/mm以上、さらに好ましくは1.10N/mm以上、特に好ましくは1.20N/mm以上であることが好ましく、前記銅箔とポリイミドとの接着強度となるように、金属箔、又は金属箔とポリイミド樹脂とを適宜選択することが好ましい。
【0117】
金属箔積層ポリイミド樹脂基板及びこれらから製造される配線基板は、フレキシブル配線回路用基板、ビルトアップ回路用基板、またはICキャリアテープ用基板として、電子計算機、端末機器、電話機、通信機器、計測制御機器、カメラ、時計、自動車、事務機器、家電製品、航空機計器、医療機器などのあらゆるエレクトロニクスの分野に活用することができる。
【実施例】
【0118】
以下、本発明を実施例に基づき、さらに詳細に説明する。但し、本発明は下記実施例により制限されるものでない。
【0119】
(銅箔の表面評価方法)
1)表面粗さ(Rzjis)の評価:先端のrが2μmのダイヤモンドスタイラスを備える、触針式の表面粗さ計((株)小坂研究所製、商品名:SEF−30D)を用い、JIS・B0601に準拠して測定した。測定は20ヶ所行い、その平均値を表面粗さ(Rzjis)とした。
2)三次元表面積の評価:株式会社キーエンス製超深度カラー3D形状測定顕微鏡VK−9500(使用レーザー:可視光限界波長408nmのバイオレットレーザー)を用いて、電解銅箔の析出面のうち、表面積が6550μmの二次元領域について、表面積を測定した。その結果、析出面の三次元表面積は6588μmであった。評価結果を、実施例及び比較例の評価結果と併せて、後の表2に示す。
3)L値の測定:日本電色工業(株)製分光式色差計SE2000を用いて、銅箔のポリイミドフィルムとの接着面のL値を測定した。
4)防錆成分量の分析:銅箔を定寸に切断後、酸化性の酸溶液で銅箔のポリイミドフィルムとの接着面のみを溶解して防錆成分を溶出させ、溶解液を得た。その後、当該溶解液中の防錆成分濃度をICP発光分光分析装置を用いて分析し、換算により、1mを単位面積としたときの防錆成分量を得た。
【0120】
(実験例1〜8)
熱圧着性ポリイミドとのはりあわせに用いる銅箔は、下記に示す未粗化の電解銅箔(厚さ:9μm、析出面の表面粗さ(Rzjis):0.7μm)を用いて、析出面に粗化処理と防錆処理とを施して、8種類の表面処理した銅箔(A〜H)(粗化処理銅箔)を作成した。粗化処理及び防錆処理の条件は、表1に示し、表面処理した銅箔(粗化処理銅箔)の防錆成分量の分析結果を表2に示す。
(未粗化の電解銅箔の特性)
・厚み:9μm。
・析出面の表面粗さ(Rzjis):0.7μm。
・表面積が6550μmの二次元領域をレーザー法で測定したときの粗化処理前の析出面の三次元表面積:6588μm
【0121】
(粗化処理)
粗化処理は2段階で実施する銅めっき条件を用いて、電解銅箔の析出面側に微細銅粒子を粗化粒子として付着形成する方法を採用した。1段処理では、銅濃度を10g/L、フリー硫酸濃度を100g/Lに調整の第1銅電解液を用い、電解銅箔を陰極とし、液温30℃、表1に示す電流条件で電解して銅粒子の核を形成した。そして2段処理では、銅濃度を70g/L、フリー硫酸濃度を150g/Lに調製の第2銅電解液を用い、1段処理が終了後電解銅箔を陰極とし、液温を45℃、表1に示す電流条件で電解して平滑めっきを行い、微細銅粒子の形状を整え、粗化粒子を形成した。
【0122】
(防錆処理)
防錆処理は、電解銅箔の両面に無機防錆処理を施した。防錆処理は、ピロリン酸カリウム濃度80g/L、亜鉛濃度0.2g/L、ニッケル濃度2g/Lとしたピロリン酸浴を液温40℃で用い、表1に示す防錆処理電流条件で、析出面側に亜鉛−ニッケル合金防錆処理を施した。
【0123】
更に、クロメート層の形成は電解法で実施した。このときのクロメート処理条件は、クロム酸濃度が1g/LでpH12とした溶液を用い、液温を25℃とした。
【0124】
以上の防錆処理が完了すると水洗後、直ちにシランカップリング剤処理槽で、析出面側の防錆処理層の上にシランカップリング剤の吸着を行った。このとき用いた溶液は、純水を溶媒として、アミノプロピルトリメトキシンラン濃度を3g/Lとした。そして、この溶液をシャワーリングにて吹き付けることにより吸着処理した。
【0125】
上記にてシランカップリング剤処理が終了した電解銅箔は、最終的に電熱器により水分を気散させ、9μm厚さの7種類の表面処理銅箔を得た。この7種類の表面処理銅箔を、試料1〜試料7として表示する。以下、得られた表面処理銅箔の評価結果に関して述べる。
【0126】
(実験例9)
熱圧着性ポリイミドとのはりあわせに用いる銅箔は、三井金属(株)製9μm厚さのVLP銅箔(析出面の表面粗さ(Rzjis):2.0μm、三次元表面積:8512μm)を用いて、析出面に粗化処理と防錆処理とを施して、表面処理銅箔(I)(粗化処理銅箔)を作成した。粗化処理及び防錆処理の条件は、表1に示し、表面処理銅箔(粗化処理銅箔)防錆成分量の分析結果を表2に示し、表面処理銅箔(I)のポリイミドとの接着面の評価結果を表3に示す。
【0127】
(実験例10:ポリイミドS1の製造)
N−メチル−2−ピロリドン中でパラフェニレンジアミン(PPD)と3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)とを1000:998のモル比でモノマ−濃度が18%(重量%、以下同じ)になるように加え、50℃で3時間反応させた。得られたポリアミック酸溶液の25℃における溶液粘度は、約1680ポイズであった。
【0128】
(実験例11:ポリイミドS2の製造)
N−メチル−2−ピロリドン中で1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン(TPE−R)と2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(a−BPDA)および3,3’,44’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s−BPDA)とを1000:200:800のモル比で加え、モノマ−濃度が18%になるように、またトリフェニルホスフェ−トをモノマ−重量に対して0.5重量%加え、40℃で3時間反応させた。得られたポリアミック酸溶液の25℃における溶液粘度は、約1680ポイズであった。
【0129】
(実験例12:熱圧着性多層ポリイミドフィルムA1及び熱圧着性多層ポリイミドフィルムA2の製造)
三層押出し成形用ダイス(マルチマニホ−ルド型ダイス)を設けた製膜装置を使用し、実験例10及び実験例11で得たポリアミック酸溶液を三層押出ダイスの厚みを変えて金属製支持体上に流延し、140℃の熱風で連続的に乾燥した後、剥離して自己支持性フィルムを形成した。この自己支持性フィルムを支持体から剥離した後加熱炉で150℃から450℃まで徐々に昇温して溶媒の除去、イミド化を行って、2種類の厚みの異なる長尺状の三層ポリイミドフィルムをロ−ルに巻き取った。得られた三層ポリイミドフィルム(層構成:S2/S1/S2)の特性を評価した。
(熱圧着性多層ポリイミドフィルムA1の特性)
・厚み構成:3μm/9μm/3μm(合計15μm)
・S2層のガラス転移温度:240℃。
・S1層のガラス転移温度:300℃以上で明確な温度は確認できなかった。
・線膨張係数(50〜200℃):MD19ppm/℃,TD18ppm/℃
・機械的特性(試験方法:ASTM・D882)
1)引張強度:MD,TD 520MPa
2)伸び率:MD,TD 90%
3)引張弾性率:MD,TD 7200MPa
・電気的特性(試験方法:ASTM・D149)
1)絶縁破壊電圧:4.9kV
(熱圧着性多層ポリイミドフィルムA2の特性)
・厚み構成:4μm/17μm/4μm(合計25μm)
・S2層のガラス転移温度:240℃
・S1層のガラス転移温度:300℃以上で明確な温度は確認できなかった。
・線膨張係数(50〜200℃):MD19ppm/℃,TD17ppm/℃
・機械的特性(試験方法:ASTM・D882)
1)引張強度:MD,TD 520MPa
2)伸び率:MD,TD 100%
3)引張弾性率:MD,TD 7100MPa
・電気的特性(試験方法:ASTM・D149)
1)絶縁破壊電圧:7.2kV
【0130】
(銅箔積層ポリイミドフィルムの接着強度の評価方法)
両面銅箔積層ポリイミドフィルムの銅箔とポリイミドフィルムとの接着強度の評価は、JIS・C6471 方法Aに準拠して、常態で90°引き剥がし強さを測定した。
測定は4試料測定し、測定開始時のオーバーシュートなどを除いた安定領域において、その平均値を接着強度とした。引張り試験機は、T・S Engineering社製(型式:AC−20C−SL)を用いた。
【0131】
(銅箔積層ポリイミドフィルムの充填性の評価方法)
両面銅箔積層ポリイミドフィルムから、540(全巾)×100mmの大きさの試料を切り出し、切り出した試料を銅のエッチング液である塩化第二鉄溶液中に浸漬させ、銅箔を完全にエッチング除去した後に、水洗し、自然乾燥させ、銅エッチング除去したポリイミドフィルムを得た。その後、実体顕微鏡を用いてポリイミドフィルム表面のレプリカ形状を目視で観察し、目視観察により色調差で異常と判断した箇所をマーキングした。そのマーキング箇所を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて100倍に撮影し、そのSEM画像を用いて目視観察により充填性を判定し、結果を表3に示す。
判定の基準は、目視でSEM写真を観察した。
○:レプリカ形状の無い未充填箇所が明確に確認できない、
×:レプリカ形状の無い未充填箇所が1ヶ所以上明確に確認できる。
【0132】
(実施例1〜7、比較例1)
ダブルベルトプレス直前のインラインで200℃の熱風で30秒間加熱して予熱した3層のポリイミドフィルム(A1)と、このポリイミドフィルムA1の両面に表3に示すロール巻きの表面処理した電解銅箔(厚み9μm)とを積層し、加熱ゾーン(最高加熱温度:330℃)に送り、次に冷却ゾーン(最低冷却温度:180℃)に送り、圧着圧力:3.9MPa、圧着時間2分で、連続的に熱圧着−冷却して積層して、8種類の両面銅箔積層ポリイミドフィルム(幅:540mm、長さ:30m)をロール状に巻き取った。
得られた全ての両面銅箔積層ポリイミドフィルムは、銅箔A/ポリイミドA1/銅箔Aの両面銅箔積層体であり、ポリイミドの両面には同じ種類の銅箔を積層した。
両面銅箔積層ポリイミドフィルムは、銅箔とポリイミド間の接着強度、及び銅箔とポリイミドの充填性を評価し、結果を表3に示す。
【0133】
(Ni−Crシード層除去剤による洗浄)
ロ−ル巻状両面銅箔積層ポリイミドフィルムから、10×10cmの大きさの試料を切り出し、切り出した試料を銅のエッチング液である塩化第二鉄溶液(30℃)中に30分間浸漬させ、銅箔を完全にエッチングにより除去した後に水洗し、その後Ni−Crシード層除去剤であるFLICKER−MH(日本化学産業社製)(温度30℃)溶液中に、20分間浸漬して、水洗を行い、3容量%塩酸水溶液(室温:約20℃)で30秒浸漬し、Ni−Crシード層除去剤により洗浄した銅エッチング除去したポリイミドフィルムを得た。
【0134】
(接着シートの作製)
エピコート1009(ジャパンエポキシレジン社製)25gを、トルエン/メチルエチルケトンの混合溶媒(1容量部/1容量部)25gに溶解させ、潜在硬化剤HX3941HP(旭化成社製)25g及びシランカップリング剤KBM−403(信越化学社製)0.5gを加えて原料ドープを作製した。作製したドープを離型フィルムへ塗布し、80℃で5分乾燥させて、エポキシ系のボンディングシート(厚み:約30μm)を作製した。
【0135】
Ni−Crシード層除去剤により洗浄した銅エッチング除去したポリイミドフィルムとエポキシ系のボンディングシートとを直接重ね合わせ、温度170℃、圧力30kgf/cmの条件で熱プレス機(TOYO SEIKI社製、MP−WNH)を用いて、5分間圧着し、積層シートを作製した。得られた積層シートを湿熱処理(条件、温度:105℃、湿度:100%RH、処理時間:12時間)し、90°ピールによる強度を測定した。結果を表3に示す。
(積層シートの90°ピールの測定法)
90°ピール用支持金具に、ポリイミドフィルムとエポキシ系のボンディングシートとを積層した積層シートのボンディングシート面を両面テープにて固定する。積層シートのポリイミドフィルムの一片をつかみしろにして引張り試験機(T・S Engineering社製 型式:AC−20C−SL)にて測定した。測定は4試料測定し、測定開始時のオーバーシュートなどを除いた安定領域において、その平均値を90°ピール強度とした。測定条件は、温度:23℃、湿度:65%、試料の大きさ:約50(引張り方向)×2(幅)mm、引張り速度:50mm/min、引き剥がし長:20mm以上。
【0136】
(比較例2)
表面処理した電解銅箔(厚み9μm)として表3に示す銅箔(I)を用い、3層のポリイミドフィルムとして3層のポリイミドフィルム(A2)を用いたほかは、実施例1と同様にして、ロール巻状の両面銅箔積層ポリイミドフィルム(幅:540mm、長さ:30m)を製造し、さらに実施例1と同様の方法で評価し、結果を表3に示す。
【0137】
【表1】

【0138】
【表2】

【0139】
【表3】

【0140】
比較例1では、銅箔積層ポリイミドフィルムの接着強度が1N/mm以上であり、充填性も問題ないが、積層シートのピール強度が0.16N/mmと小さい。
ポリイミドフィルムとエポキシ系のボンディングシートとの積層シートのピール強度の評価結果より、実施例2〜7の銅箔積層ポリイミドフィルムは、実施例1の銅箔積層ポリイミドフィルムより優れている、この結果は銅箔の表面積比(B)の要件によると推察される。
銅箔積層ポリイミドフィルムの評価結果より、
1)銅箔とポリイミドフィルムとの接着強度は、実施例1〜7、比較例1及び比較例2のすべてが1.1N/mm以上である、
2)特に実施例1〜4及び実施例6〜7の接着強度は1.2N/mm以上であり、実施例5の接着強度は実施例1〜4及び実施例6〜7の接着強度よりも小さい、この結果は銅箔の明度の要件によると推察される。
3)充填性において、実施例1〜5及び実施例7の銅積層ポリイミドフィルムは、実施例6の銅積層ポリイミドフィルムより優れている、この結果は銅箔の表面粗さ(Rzjis)の要件によると推察される。。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明のポリイミド樹脂基板基材との積層に用いる電解銅箔は粗化粒子が微細で、且つ、均一であるため、この電解銅箔から得られる金属箔積層ポリイミド樹脂基板は、銅箔を除去して形成される樹脂表面とACFなどの接着性基材との密着力が良好であり、電子部品の脱落などが発生しにくい。
さらに本発明の金属箔積層ポリイミド樹脂基板は、微細配線の形成性に優れ、形成された配線は、耐薬品性、耐吸湿性に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミド樹脂基板の片面又は両面に金属箔を直接積層した金属箔積層ポリイミド樹脂基板であり、
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、
表面粗さ(Rzjis)が3.0μm以下、
表面積が6550μmの二次元領域をレーザー法で測定したときの表面積(三次元面積:Aμm)と二次元領域面積との比[A/6550]で算出される表面積比(B)の値が1.25〜2.50の範囲、及び
二次元領域の単位面積あたりのクロムの量が2.0mg/m以上
であることを特徴とする金属箔積層ポリイミド樹脂基板。
【請求項2】
金属箔は、金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面が粗化処理されており、
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の粗化処理前の表面粗さ(Rzjis)が1.0μm未満の未処理金属箔を用い、
未処理金属箔のポリイミド樹脂基板と接着させる側の表面を粗化処理して、
表面積が6550μmの二次元領域をレーザー法で測定したときの粗化処理前の表面積(三次元面積:aμm)と、粗化処理後の表面積(三次元面積:bμm)との比[b/a]の値が1.20〜2.50の範囲
である請求項1に記載の金属箔積層ポリイミド樹脂基板。
【請求項3】
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、
二次元領域の単位面積あたり40mg/m以上のニッケル−亜鉛合金層を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属箔積層ポリイミド樹脂基板。
【請求項4】
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、
Lab表色系におけるL値が47〜63の範囲であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の金属箔積層ポリイミド樹脂基板。
【請求項5】
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の表面積が6550μmの二次元領域をレーザー法で測定したときの表面積(三次元面積:Aμm)と二次元領域面積との比[A/6550]で算出される表面積比(B)の値が1.60〜2.50の範囲
であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属箔積層ポリイミド樹脂基板。
【請求項6】
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の表面粗さ(Rzjis)が2.5μm以下
であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属箔積層ポリイミド樹脂基板。
【請求項7】
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、
表面粗さ(Rzjis)が2.5μm以下、及び
表面積が6550μmの二次元領域をレーザー法で測定したときの表面積(三次元面積:Aμm)と二次元領域面積との比[A/6550]で算出される表面積比(B)の値が1.60〜2.50の範囲
であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属箔積層ポリイミド樹脂基板。
【請求項8】
金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面は、カップリング剤層を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の金属箔積層ポリイミド樹脂基板。
【請求項9】
金属箔は、電解銅箔であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の金属箔積層ポリイミド樹脂基板。
【請求項10】
ポリイミド樹脂基板は、耐熱性のポリイミド層の少なくとも片面に熱圧着性のポリイミド層を積層したものであり、この熱圧着性のポリイミド層が金属箔との積層面となっていることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の金属箔積層ポリイミド樹脂基板。
【請求項11】
ポリイミド樹脂基板は、金属箔と接する側の面が熱圧着性を有するポリイミド樹脂基板であり、
ポリイミド樹脂基板の熱圧着性を有する面と金属箔とが加圧加熱成形装置によりはり合わされていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の金属箔積層ポリイミド樹脂基板。
【請求項12】
ポリイミド樹脂基板の金属箔と接する側の熱圧着性の厚みが、金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の表面粗さ(Rzjis)以上であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の金属箔積層ポリイミド樹脂基板。
【請求項13】
ポリイミド樹脂基板の金属箔と接する側の熱圧着性の厚みが、金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の表面粗さ(Rzjis)以上、かつ3μm以下であることを特徴とする請求項11〜12のいずれかに記載の金属箔積層ポリイミド樹脂基板。
【請求項14】
金属箔積層ポリイミド樹脂基板は、金属箔の一部を除去して形成した樹脂基板露出面の少なくとも一部に、接着性の有機材料層が設けられる用途に使用されることを特徴とする特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の金属箔積層ポリイミド樹脂基板。
【請求項15】
請求項1〜14に記載の金属箔積層ポリイミド樹脂基板の片面又は両面の金属箔をエッチングすることにより金属配線を形成した配線基板。
【請求項16】
請求項15に記載の配線基板の金属配線を形成した側に、さらに接着性の有機材料層を積層したことを特徴とする配線基板。
【請求項17】
接着剤層がエポキシを含むことを特徴とする請求項16に記載の配線基板。
【請求項18】
ポリイミド樹脂基板の片面又は両面に金属箔を積層した金属箔積層ポリイミド樹脂基板の製造方法であり、
ポリイミド樹脂基板は金属箔と接する側の面が熱圧着性を有するポリイミド樹脂基板を用い、
金属箔は下記特性を有する金属箔を用い、
加圧加熱成形装置を用いてポリイミド樹脂基板の熱圧着性を有する面と、金属箔の下記特性を有する接着面とをはり合わせたことを特徴とする金属箔積層ポリイミド樹脂基板の製造方法。
(金属箔のポリイミド樹脂基板との接着面の特性)
・表面粗さ(Rzjis)が3.0μm以下、
・表面積が6550μmの二次元領域をレーザー法で測定したときの表面積(三次元面積:Aμm)と二次元領域面積との比[A/6550]で算出される表面積比(B)の値が1.25〜2.50の範囲、
・二次元領域の単位面積あたりのクロムの量が2.0mg/m以上。

【公開番号】特開2009−101639(P2009−101639A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276715(P2007−276715)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】