説明

金属粉含有プラスチックおよびその製造方法

【課題】表面につやがあって品質に優れ、かつ、刃物研磨かすなどの金属研磨かすや下水処理汚泥の有効利用を図ることができる金属粉含有プラスチックおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】タングステン粉末を含む60〜80質量%の刃物研磨かすまたは金属粉と、珪酸およびアルミナ粉末を含む1〜10質量%の乾燥下水処理汚泥と、10〜30質量%の熱可塑性樹脂とを、熱可塑性樹脂が溶融した状態で混合した成形物から成る。刃物研磨かすはタングステン粉末を20質量%以上含み、熱可塑性樹脂はポリエチレンから成る。金属粉は、酸化鉄、磁鉄鉱などから成る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉含有プラスチックおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水鳥が鉛製の外れ弾を飲み込んで鉛中毒により死んだり、釣りで根掛りした鉛製の錘から鉛が水中に溶け出したりして生態系に影響を及ぼす鉛害が問題となっている。そのような鉛害を解決する技術として、熱可塑性樹脂とタングステン粉末からなる比重9以上の樹脂組成物が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-194096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の従来の樹脂組成物は、熱可塑性樹脂とタングステン粉末とが十分に混じり合わないため、表面につやがなく、所望の品質が得られないという課題があった。
【0005】
ところで、鋼板に孔をあけるタングステン製ドリル等の刃物を砥石で研磨した際に生じる刃物研磨かすや、鋳物製造の際、鋳物をショットブラストで研磨したときに生じる金属研磨かす、下水処理で発生する下水処理汚泥が産業廃棄物として処理されている。しかしながら、刃物研磨かすなどの金属研磨かすや下水処理汚泥は、廃棄せずに有効な資源として再利用されることが望ましい。
【0006】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、表面につやがあって品質に優れ、かつ、刃物研磨かすなどの金属研磨かすや下水処理汚泥の有効利用を図ることができる金属粉含有プラスチックおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の本発明に係る金属粉含有プラスチックは、60〜80質量%の金属粉と、珪酸およびアルミナ粉末を含む1〜10質量%の乾燥下水処理汚泥と、10〜30質量%の熱可塑性樹脂とを、前記熱可塑性樹脂が溶融した状態で混合した成形物から成ることを特徴とする。
第2の本発明に係る金属粉含有プラスチックは、タングステン粉末を含む60〜80質量%の刃物研磨かすと、珪酸およびアルミナ粉末を含む1〜10質量%の乾燥下水処理汚泥と、10〜30質量%の熱可塑性樹脂とを、前記熱可塑性樹脂が溶融した状態で混合した成形物から成ることを特徴とする。
【0008】
第1の本発明に係る金属粉含有プラスチックの製造方法は、ホッパから投入された原料をヒータで加熱されたシリンダの内部で駆動モータにより回転するスクリューによって前記シリンダの出口へと送りながら溶融するプラスチック一軸押出成形機であって、前記スクリューは、軸本体の周囲に原料を前記シリンダのホッパ側から出口側へと送るためのネジ山を有し、前記軸本体の中間部の周囲に前記ネジ山の代わりに歯車状に並列の複数の歯を有し、各歯は軸方向に対しそれぞれ傾斜しており、前記軸本体の先端部の周囲に前記ネジ山の代わりに混練用の凹凸部を有するプラスチック一軸押出成形機の前記ホッパに、前記原料として、60〜80質量%の金属粉と、珪酸およびアルミナ粉末を含む1〜10質量%の乾燥下水処理汚泥と、10〜30質量%の熱可塑性樹脂とを投入し、前記原料を前記ヒータにより加熱して溶融し、前記スクリューにより混合した後、成形することを特徴とする。
第2の本発明に係る金属粉含有プラスチックの製造方法は、ホッパから投入された原料をヒータで加熱されたシリンダの内部で駆動モータにより回転するスクリューによって前記シリンダの出口へと送りながら溶融するプラスチック一軸押出成形機であって、前記スクリューは、軸本体の周囲に原料を前記シリンダのホッパ側から出口側へと送るためのネジ山を有し、前記軸本体の中間部の周囲に前記ネジ山の代わりに歯車状に並列の複数の歯を有し、各歯は軸方向に対しそれぞれ傾斜しており、前記軸本体の先端部の周囲に前記ネジ山の代わりに混練用の凹凸部を有するプラスチック一軸押出成形機の前記ホッパに、前記原料として、タングステン粉末を含む60〜80質量%の刃物研磨かすと、珪酸およびアルミナ粉末を含む1〜10質量%の乾燥下水処理汚泥と、10〜30質量%の熱可塑性樹脂とを投入し、前記原料を前記ヒータにより加熱して溶融し、前記スクリューにより混合した後、成形することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る金属粉含有プラスチックおよび本発明に係る金属粉含有プラスチックの製造方法によれば、熱可塑性樹脂と金属粉またはタングステン粉末とが十分に混じり合い、表面につやがあって、高品質のものを容易に製造することができる。特に、本発明に係る金属粉含有プラスチックの製造方法により、本発明に係る金属粉含有プラスチックを効果的に製造することができる。本発明に係る金属粉含有プラスチックは、比重が大きく、鉛代替品として使用可能であり、特に、タングステン粉末を含む場合、比重が大きいことから、例えば、釣り用の錘やタイヤホイル用のバランスウェイトとして使用可能である。
【0010】
本発明に係る金属粉含有プラスチックまたは金属粉含有プラスチックの製造方法において、金属粉または刃物研磨かすが60質量%未満の場合または80質量%を超える場合、乾燥下水処理汚泥が1質量%未満の場合または10質量%を超える場合、あるいは熱可塑性樹脂が10質量%未満の場合または30質量%を超える場合には、熱可塑性樹脂と金属粉またはタングステン粉末とを十分に混じり合わせることができず、表面につやがなくなり、高品質のものを製造することができなくなる。
【0011】
本発明に係る金属粉含有プラスチックの製造方法では、スクリューが軸本体の中間部の周囲に有する並列の複数の歯が、軸方向に対しそれぞれ傾斜し、軸本体の先端部の周囲に混練用の凹凸部を有するプラスチック一軸押出成形機を用いることにより、刃物研磨かすと乾燥下水処理汚泥と熱可塑性樹脂との混合、溶融が容易となる。
【0012】
ヒーターによる加熱温度は、通常160℃乃至300℃の温度で、特に、200℃乃至240℃の温度が好ましい。前記歯または前記凹凸部は、軸方向に所定の長さを有するものを1単位として複数単位が前記軸本体に対し着脱可能に設けられていてもよい。この場合、スクリューの歯の箇所の軸方向長さまたは凹凸部の箇所の軸方向長さの調節を容易にし、混練の程度を容易に調節することができる。歯または凹凸部は、例えば、軸本体の上に歯または凹凸部を有する筒状の部材を着脱可能に締め付けることにより着脱可能に固定することができる。
【0013】
第1の本発明に係る金属粉含有プラスチックまたは金属粉含有プラスチックの製造方法では、前記熱可塑性樹脂がポリエチレンから成ることが好ましい。第2の本発明に係る金属粉含有プラスチックまたは金属粉含有プラスチックの製造方法では、前記刃物研磨かすが前記タングステン粉末を20質量%以上含み、前記熱可塑性樹脂がポリエチレンから成ることが好ましい。この場合、熱可塑性樹脂とタングステン粉末とが十分に混じり合い、表面につやがあって、高品質のものをさらに容易に製造することができる。乾燥下水処理汚泥は、珪酸を1〜10質量%、好ましくは5質量%前後、アルミナ粉末を1〜10質量%、好ましくは5質量%前後含むことが好ましい。
金属粉としては、酸化鉄、磁鉄鉱などの鉄粉を用いることができ、例えば、鋳物製造の際、鋳物をショットブラストで研磨したときに生じる金属研磨かすを用いることができる。刃物研磨かすとしては、鋼板に孔をあけるタングステン製ドリル等の刃物を砥石で研磨した際に生じる研磨かすから成り、タングステン粉末を20質量%以上含むものが好ましい。乾燥下水処理汚泥は、下水処理で発生する下水処理汚泥を焼いて乾燥させたものから成る。
本発明に係る金属粉含有プラスチックは、金属粉または刃物研磨かすと、乾燥下水処理汚泥と、熱可塑性樹脂とともに食油を混合して成ってもよい。また、本発明に係る金属粉含有プラスチックの製造方法は、ホッパに、原料として、金属粉または刃物研磨かすと、乾燥下水処理汚泥と、熱可塑性樹脂とともに食油を投入してもよい。本発明に係る金属粉含有プラスチックまたは金属粉含有プラスチックの製造方法で、食油を使用する場合、使用する食油は廃食油から成ることが好ましい。また、食油の量は、原料全体に対し5質量%前後が好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表面につやがあって品質に優れ、かつ、刃物研磨かすなどの金属研磨かすや下水処理汚泥の有効利用を図ることができる金属粉含有プラスチックおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態の金属粉含有プラスチックの製造方法で用いられるプラスチック一軸押出成形機の側面図である。
【図2】図1に示すプラスチック一軸押出成形機のスクリューの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1および図2は、本発明の実施の形態を示している。
図1に示すように、プラスチック一軸押出成形機は、ホッパ1とシリンダ2とスクリュー3とを有し、ホッパ1から投入された原料をヒータで加熱されたシリンダ2の内部で駆動モータにより回転するスクリュー3によってシリンダ2の出口へと送りながら溶融するようになっている。
【0017】
図2に示すように、スクリュー3は、軸本体10の周囲に原料をシリンダ2のホッパ1側から出口側へと送るためのネジ山11を有している。スクリュー3は、軸本体10の中間部の周囲にネジ山11の代わりに、歯車状に並列の複数の歯12を複数列有している。歯12の各列は、軸方向で隣り合って配置され、各歯12は軸方向に対しそれぞれ傾斜している。すべての隣合う列の各歯12は、互いに軸方向を中心として同じ側に傾斜しているが、反対側に傾斜していてもよい。なお、軸本体10の表面からの歯12の高さは、ネジ山11の高さとほぼ同じである。軸本体10の先端部の周囲には、ネジ山11の代わりに混練用の凹凸部13を有する。凹部13aの高さは軸本体10の表面の高さとほぼ同じであり、軸本体10の表面からの凸部13bの高さは、ネジ山11の高さとほぼ同じである。
【0018】
このプラスチック一軸押出成形機で金属粉含有プラスチックを製造するため、ホッパ1に原料としてポリエチレンチップ30質量部と刃物研磨かす60質量部と乾燥下水処理汚泥10質量部とを投入した。刃物研磨かすには、タングステン研磨かすと砥石かすと鋼研磨かすとを1:1:1の割合で含むものを用いた。タングステン研磨かすには、鋼板に孔をあけるタングステン製ドリルを砥石で研磨した際に生じる研磨かすであって、タングステンを50質量%含むものを用いた。なお、刃物研磨かすの代わりに、鋳物研磨の際に生じた酸化鉄、磁鉄鉱などの金属粉を用いてもよい。乾燥下水処理汚泥には、下水処理で発生する下水処理汚泥を焼いて乾燥させたものを用いた。乾燥下水処理汚泥は、珪酸を約5質量%、アルミナ粉末を約5質量%含んでいた。ホッパ1に投入後、この原料をヒータにより220℃の温度で溶融し、スクリュー3により混合した。スクリュー3の回転数は400乃至600回転/分であった。
【0019】
これにより、シリンダ2の出口から金属粉含有プラスチック成形品が得られた。このプラスチック成形品は、ポリエチレンとタングステン粉末とが十分に混じり合い、表面につやがあって、高品質のものであった。この金属粉含有プラスチックは、比重が大きく、鉛代替品として使用可能なプラスチックであり、例えば、釣り用の錘に適していた。
【0020】
このように、プラスチック一軸押出成形機は、スクリュー3が軸本体10の中間部の周囲に有する並列の複数の歯12が、軸方向に対しそれぞれ傾斜しており、軸本体10の先端部の周囲に混練用の凹凸部13を有するため、刃物研磨かすと乾燥下水処理汚泥とポリエチレンとの混合、溶融が容易であった。
【符号の説明】
【0021】
1 ホッパ
2 シリンダ
3 スクリュー
10 軸本体
11 ネジ山
12 歯
13 凹凸部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
60〜80質量%の金属粉と、珪酸およびアルミナ粉末を含む1〜10質量%の乾燥下水処理汚泥と、10〜30質量%の熱可塑性樹脂とを、前記熱可塑性樹脂が溶融した状態で混合した成形物から成ることを特徴とする金属粉含有プラスチック。
【請求項2】
タングステン粉末を含む60〜80質量%の刃物研磨かすと、珪酸およびアルミナ粉末を含む1〜10質量%の乾燥下水処理汚泥と、10〜30質量%の熱可塑性樹脂とを、前記熱可塑性樹脂が溶融した状態で混合した成形物から成ることを特徴とする金属粉含有プラスチック。
【請求項3】
ホッパから投入された原料をヒータで加熱されたシリンダの内部で駆動モータにより回転するスクリューによって前記シリンダの出口へと送りながら溶融するプラスチック一軸押出成形機であって、前記スクリューは、軸本体の周囲に原料を前記シリンダのホッパ側から出口側へと送るためのネジ山を有し、前記軸本体の中間部の周囲に前記ネジ山の代わりに歯車状に並列の複数の歯を有し、各歯は軸方向に対しそれぞれ傾斜しており、前記軸本体の先端部の周囲に前記ネジ山の代わりに混練用の凹凸部を有するプラスチック一軸押出成形機の前記ホッパに、前記原料として、60〜80質量%の金属粉と、珪酸およびアルミナ粉末を含む1〜10質量%の乾燥下水処理汚泥と、10〜30質量%の熱可塑性樹脂とを投入し、前記原料を前記ヒータにより加熱して溶融し、前記スクリューにより混合した後、成形することを特徴とする金属粉含有プラスチックの製造方法。
【請求項4】
ホッパから投入された原料をヒータで加熱されたシリンダの内部で駆動モータにより回転するスクリューによって前記シリンダの出口へと送りながら溶融するプラスチック一軸押出成形機であって、前記スクリューは、軸本体の周囲に原料を前記シリンダのホッパ側から出口側へと送るためのネジ山を有し、前記軸本体の中間部の周囲に前記ネジ山の代わりに歯車状に並列の複数の歯を有し、各歯は軸方向に対しそれぞれ傾斜しており、前記軸本体の先端部の周囲に前記ネジ山の代わりに混練用の凹凸部を有するプラスチック一軸押出成形機の前記ホッパに、前記原料として、タングステン粉末を含む60〜80質量%の刃物研磨かすと、珪酸およびアルミナ粉末を含む1〜10質量%の乾燥下水処理汚泥と、10〜30質量%の熱可塑性樹脂とを投入し、前記原料を前記ヒータにより加熱して溶融し、前記スクリューにより混合した後、成形することを特徴とする金属粉含有プラスチックの製造方法。
【請求項5】
前記熱可塑性樹脂がポリエチレンから成ることを特徴とする請求項1記載の金属粉含有プラスチックまたは請求項3記載の金属粉含有プラスチックの製造方法。
【請求項6】
前記刃物研磨かすが前記タングステン粉末を20質量%以上含み、前記熱可塑性樹脂がポリエチレンから成ることを特徴とする請求項2記載の金属粉含有プラスチックまたは請求項4記載の金属粉含有プラスチックの製造方法。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−13637(P2010−13637A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−133592(P2009−133592)
【出願日】平成21年6月3日(2009.6.3)
【出願人】(508168158)
【出願人】(506021880)
【Fターム(参考)】