説明

金属製部材用接合剤、金属製部材接合体の製造方法、金属製部材接合体および電気回路接続用バンプの製造方法

【課題】加熱すると金属粒子が焼結して接触していた金属製部材へ接着する多孔質焼結物となる金属部材用ペースト状接合剤、下地電極への接着性と耐熱処理性と電気伝導性が優れた電気回路接続用バンプの製造方法。
【解決手段】(A)平均粒径(メディアン径D50)0.1μm〜50μmであり融点が400℃より高く加熱焼結性である金属粒子と(B)液状フラックスとからなるペースト状物であり、70〜400℃で加熱すると、金属粒子(A)同士が焼結して接触していた金属製部材へ接着性を有する多孔質焼結物となる、金属製部材用接合剤。金属製部材間に該接合剤を介在させ70〜400℃で加熱する、金属製部材接合体の製造方法。複数の金属製部材が、空隙率5〜50面積%、融点が400℃より高く、体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下である多孔質焼結物により接合されている金属製部材接合体。該接合剤を加熱して電気回路接続用バンプを製造する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱焼結性金属粒子とフラックスとからなるペースト状であり、加熱により焼結して該金属粒子と同等の融点を有する多孔質焼結物となる金属製部材用接合剤、当該接合剤による金属製部材接合体の製造方法、金属製部材が該金属の多孔質焼結物により接合された金属製部材接合体、および、金属製部材用接合剤を用いる電気回路接続用バンプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
銀、銅、ニッケルなどの金属粉末を液状熱硬化性樹脂組成物中に分散させてなる電気伝導性・熱伝導性ペーストは、加熱により硬化して電気伝導性・熱伝導性被膜が形成される。したがって、プリント回路基板上の電気伝導性回路の形成;抵抗器やコンデンサ等の各種電子部品及び各種表示素子の電極の形成;電磁波シールド用電気伝導性被膜の形成;コンデンサ、抵抗、ダイオード、メモリ、演算素子(CPU)等のチップ部品の基板への接着;太陽電池の電極の形成、特に、アモルファスシリコン半導体を用いているために、高温処理のできない太陽電池の電極の形成;積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、積層セラミックアクチュエータ等のチップ型セラミック電子部品の外部電極の形成等に使用されている。
【0003】
近年、チップ部品の高性能化により、チップ部品からの発熱量が増え、電気伝導性はもとより、熱伝導性の向上が要求される。したがって、金属粒子の含有率を可能な限り増加することにより電気伝導性、熱伝導性を向上しようとする。ところが、そうすると、ペーストの粘度が上昇し、作業性が著しく低下するという問題がある。
【0004】
このような問題を解決するため、本発明者らは、銀粉末と揮発性分散媒とからなるペースト状銀組成物は、加熱すると当該揮発性分散媒が揮発し銀粉末が焼結して、極めて高い電気伝導性と熱伝導性を有する固形状銀となること、および、金属製部材の接合や、導電回路の形成に有用なことを見出して国際出願した{特許文献1(WO2006/126614)、特許文献2(WO2007/034833)}。
しかしながら、表面状態が安定である不動態化されたような銀粉末は焼結性が乏しいという問題があることに本発明者らは気がついた。
【0005】
また、本発明者らは、銅粉末と揮発性分散媒とからなるペースト状銅組成物は、還元性ガス雰囲気中で加熱すると当該揮発性分散媒が揮発し銅粉末が焼結して、極めて高い電気伝導性と熱伝導性を有する固形状銅となること、および、金属製部材の接合や、導電回路の形成に有用なことを見出して国際出願した{特許文献3(PCT/JP2008/002045)}が、表面状態が安定である不動態化されたような銀銅末は焼結性が乏しいという問題があることに本発明者らは気がついた。
【0006】
一方、特許文献4(特開2002-224884)には、樹脂(例えば、ロジン系樹脂)からなるフラックス内に、半田よりも融点の高い金属(例えば、銀)からなる金属粒子が添加されてなる半田付け用フラックス、および、基板上に形成された下地電極上に、フラックス(例えば、ロジン系樹脂)及び半田よりも融点の高い金属(例えば、銀)粉末(0.1〜10μm径)からなる半田付け用フラックスを印刷するステップと、前記半田付け用フラックスが印刷された下地電極上に半田(例えば、共晶半田(Sn60%、Pb40%))ボールを搭載するステップと、熱処理によって前記半田ボールを溶融させるステップとを備える半田バンプの形成方法が開示されている。半田ボールを構成する半田の溶融温度(共晶半田においては約180℃)以上の温度での熱処理により、半田付け用フラックスに含まれる銀粒子は溶融した半田中に容易に拡散し半田の融点が若干高くなる旨記載されている。このような半田バンプ上に金属製部材を載置して熱処理すると金属製部材が下地電極上に接合されるが、該半田の融点は高くないので後工程の熱処理温度で溶融し、かつ、強度が低いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2006/126614
【特許文献2】WO2007/034833
【特許文献3】PCT/JP2008/002045
【特許文献4】特開2002−224884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、上記問題点のないペースト状の接合剤を開発すべく鋭意研究した結果、金属粒子の粒径と融点、ペースト化するときの液状分散媒が金属粒子の焼結性および焼結して生成した固形状金属の焼結状態および融点、接合体の接合強度および電気伝導性に影響していることを見出し、本発明を完成するに至った。本発明の目的は、加熱により金属粒子が焼結して金属粒子と同等の融点を有する多孔質の焼結物となり、焼結途上で接触していた金属製部材への接着性、耐熱処理性および電気伝導性が優れた金属製部材用接合剤;金属製部材が電気伝導性よく強固に接合した金属製部材接合体の製造方法;接合強度、耐熱処理性および電気伝導性が優れた金属製部材接合体;および、下地電極との接着性、耐熱処理性および電気伝導性が優れた電気回路接続用バンプの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、「[1] (A)平均粒径(メディアン径D50)が0.1μmより大きく50μm以下であり融点が400℃より高く加熱焼結性である金属粒子と(B)液状フラックスとからなるペースト状物であり、70℃以上400℃以下で加熱することにより、金属粒子(A)同士が焼結して金属粒子(A)と同等の融点を有し、かつ、焼結途上で接触していた金属製部材へ接着性を有する多孔質焼結物となることを特徴とする、金属製部材用接合剤。
[2] 金属粒子(A)がアトマイズ法で製造され表面に酸化金属層を有することを特徴とする、[1]に記載の金属製部材用接合剤。
[3] 金属粒子(A)が銀粒子または銅粒子であり、金属粒子(A)およびその多孔質焼結物の融点が600℃より高く、銀粒子およびその多孔質焼結物の体積抵抗率が1×10-4Ω・cm以下であり、銅粒子およびその多孔質焼結物の体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の金属製部材用接合剤。
[4] 液状フラックス(B)が、(a)ロジンまたはその誘導体と(d)溶剤とからなる液状物、(a)ロジンまたはその誘導体と(b)酸化膜除去活性剤と(d)溶剤とからなる液状物、(a)ロジンまたはその誘導体と(c)チキソトロピック剤と(d)溶剤とからなる液状物、(a)ロジンまたはその誘導体と(b)酸化膜除去活性剤と(c)チキソトロピック剤と(d)溶剤とからなる液状物、(b)酸化膜除去活性剤と(d)溶剤とからなる液状物、または、(b)酸化膜除去活性剤と(c)チキソトロピック剤と(d)溶剤とからなる液状物であることを特徴とする、[1]、[2]または[3]に記載の金属製部材用接合剤。
[5] 多孔質焼結物の断面における空隙率が5〜50面積%であることを特徴とする、[1]、[2]または[3]に記載の金属製部材用接合剤。
[5-1] 多孔質焼結物の断面における空隙率が5〜50面積%であることを特徴とする、[4]に記載の金属製部材用接合剤。」により達成される。
【0010】
この目的は、「[6] (A)平均粒径(メディアン径D50)が0.1μmより大きく50μm以下であり融点が400℃より高く加熱焼結性である金属粒子と(B)液状フラックスとからなるペースト状物を複数の金属製部材間に介在させ、70℃以上400℃以下で加熱することにより、金属粒子(A)同士が焼結して金属粒子(A)と同等の融点を有する多孔質焼結物となり、複数の金属製部材同士を接合することを特徴とする、金属製部材接合体の製造方法。
[7] 金属粒子(A)がアトマイズ法で製造され表面に酸化金属層を有することを特徴とする、[6]に記載の金属製部材接合体の製造方法。
[8] 金属粒子(A)が銀粒子または銅粒子であり、金属粒子(A)およびその融点が600℃より高く、銀粒子およびその多孔質焼結物の体積抵抗率が1×10-4Ω・cm以下であり、銅粒子およびその多孔質焼結物の体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下であることを特徴とする、[6]または[7]に記載の金属製部材接合体の製造方法。
[9] 液状フラックス(B)が、(a)ロジンまたはその誘導体と(d)溶剤とからなる液状物、(a)ロジンまたはその誘導体と(b)酸化膜除去活性剤と(d)溶剤とからなる液状物、(a)ロジンまたはその誘導体と(c)チキソトロピック剤と(d)溶剤とからなる液状物、(a)ロジンまたはその誘導体と(b)酸化膜除去活性剤と(c)チキソトロピック剤と(d)溶剤とからなる液状物、(b)酸化膜除去活性剤と(d)溶剤とからなる液状物、または、(b)酸化膜除去活性剤と(c)チキソトロピック剤と(d)溶剤とからなる液状物であることを特徴とする、[6]、[7]または[8]に記載の金属製部材接合体の製造方法。
[10] 多孔質焼結物の断面における空隙率が5〜50面積%であることを特徴とする、[6]、[7]または[8]に記載の金属製部材接合体の製造方法。
[10-1] 多孔質焼結物の断面における空隙率が5〜50面積%であることを特徴とする、[9]に記載の金属製部材接合体の製造方法。」により達成される。
【0011】
この目的は、「[11] [6]に記載の製造方法によって得られた、複数の金属製部材が、断面における空隙率が5〜50面積%であり、融点が400℃より高く、体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下である、加熱焼結性金属粒子(A)の多孔質焼結物により接合されていることを特徴とする、金属製部材接合体。
[12] 金属粒子(A)が銀粒子または銅粒子であり、金属粒子(A)およびその融点が600℃より高く、銀粒子およびその多孔質焼結物の体積抵抗率が1×10-4Ω・cm以下であり、銅粒子およびその多孔質焼結物の体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下であり、金属製部材接合体の250℃におけるせん断接着強さが5MPa以上であることを特徴とする、[11]に記載の金属製部材接合体。
[13] 金属製部材が金属系基板または金属部分を有する電子部品であることを特徴とする、[11]または[12]に記載の金属製部材接合体。」により達成される。
【0012】
この目的は、「[14] [1]〜[4]のいずれかに記載の金属製部材用接合剤を半導体素子上の電気回路接続用パッド部または基板上の電気回路接続用電極部にドット状に塗布し、70℃以上400℃以下で加熱することにより、該金属粒子同士を焼結して、半導体素子上または基板上に金属製バンプを形成することを特徴とする、電気回路接続用バンプの製造方法。
[14-1] [5]に記載の金属製部材用接合剤を半導体素子上の電気回路接続用パッド部または基板上の電気回路接続用電極部にドット状に塗布し、70℃以上400℃以下で加熱することにより、該金属粒子同士を焼結して、半導体素子上または基板上に金属製バンプを形成することを特徴とする、電気回路接続用バンプの製造方法。」により達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の金属製部材用接合剤は、70℃以上400℃以下での加熱により、金属粒子(A)同士が焼結して金属粒子(A)と同等の融点を有する多孔質の焼結物となり、電気伝導性が優れ、焼結途上で接触していた金属製部材への接着性および耐熱処理性が優れている。
本発明の金属製部材接合体の製造方法によると、複数の金属製部材同士が電気伝導性と耐熱処理性よく強固に接合した接合体を簡易に効率よく製造することができる。
本発明の金属製部材接合体は、接合部分の接合強度と耐熱処理性と電気伝導性が優れているので、金属製部材が金属系基板または金属部分を有する電子部品等として有用である。
本発明の電気回路接続用バンプの製造方法によると、下地電極との接着性と耐熱処理性と電気伝導性が優れた電気回路接続用バンプを簡易に効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】アトマイズ法により製造された銀粒子の多孔質焼結物の断面部分拡大写真である。
【図2】実施例におけるせん断接着強さ測定用試験体Aの平面図である。銀基板1と銀チップ3とが、銀粒子または銅粒子の加熱焼結物である固体状銀または固体状銅2により接合されている。
【図3】図2におけるX-X線方向の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の金属製部材用接合剤は、(A)平均粒径(メディアン径D50)が0.1μmより大きく50μm以下であり融点が400℃より高く加熱焼結性である金属粒子と(B)フラックスとからなるペースト状物であり、70℃以上400℃以下で加熱することにより、金属粒子(A)同士が焼結して金属粒子(A)と同等の融点を有し、かつ、焼結途上で接触していた金属製部材へ接着性を有する多孔質焼結物となることを特徴とする。
【0016】
金属粒子(A)の平均粒径はレーザー回折散乱式粒度分布測定法により得られる一次粒子の平均粒径(メディアン径D50)である。平均粒径(メディアン径D50)が50μmを越えると金属粒子同士の加熱焼結性が小さくなり、優れた接合強度、電気伝導性を得にくい。そのため平均粒子径は小さい方がより好ましく、特には10μm以下であることが好ましい。しかし、いわゆるナノサイズとなる0.1μm以下の場合、表面活性が強すぎてペースト状接合剤の保存安定性が低下する恐れがあるため0.1μmを越えることが必要であり、好ましくは0.2μm以上10μm以下であり、更に好ましくは0.7μm以上5μm以下である。
なお、メディアン径D50は、レーザー回折法50%粒径と称されたり(特開2003−55701参照)、体積累積粒径D50と称されてもいる(特開2007−84860参照)。
【0017】
レーザー回折散乱式粒度分布測定法は、金属粒子にレーザービームを照射し、その金属粒子の大きさに応じて様々な方向へ発せられる回折光や散乱光のレーザー光の強度を測定することにより一次粒子の粒径を求めるという汎用の測定方法である。数多くの測定装置が市販されており(例えば、株式会社島津製作所製レーザ回折式粒度分布測定装置SALD、日機装株式会社製レーザー回折散乱式粒度分布測定装置マイクロトラック)、これらを用いて容易に平均粒径(メディアン径D50)を測定することができる。なお金属粒子の凝集が強い場合には、ホモジナイザーにより一次粒子の状態に分散してから測定することが好ましい。
【0018】
金属粒子(A)の材質は、常温で固体であり、融点が400℃より高く、加熱により焼結しやすければよく、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、スズ、アルミニウム、および、これら各金属の合金が例示され、さらには金属化合物が例示される。
これらの材質のうちでは、融点が600℃以上であり、加熱焼結性、加熱焼結物の導電性の点で、銀、銀合金、銅、銅合金が好ましく、銀および銅が特に好ましい。銀粒子は、表面または内部の一部が酸化銀または過酸化銀であってもよく、表面の全部が酸化銀または過酸化銀であってもよい。銅粒子は、表面または内部の一部が酸化銅であってもよく、表面の全部が酸化銅であってもよい。
【0019】
金属粒子(A)は、通常、単独の材質からなるが、複数の材質の粒子の混合物であってもよい。
金属粒子(A)は、それら金属(例えば銀)により表面がメッキされた金属(例えば、銅、ニッケルまたはアルミニウム)粒子、それら加熱焼結性金属(例えば、銀)により表面がメッキされた樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂)粒子であってもよい。
【0020】
金属粒子(A)の形状は、加熱焼結性があれば特に限定されず、球状,粒状,フレーク状(片状),針状,角状,樹枝状,不規則形状,涙滴状,繊維状が例示される(JIS Z2500:2000参照)。さらには板状,極薄板状,六角板状,柱状,棒状,多孔状,塊状,海綿状,けい角状,丸み状,楕円球状,ぶどう状,紡錘状,略立方体状等が例示される。
その形状は、多孔質焼結物を形成しやすい点で球状、粒状およびフレーク状(片状)が好ましい。
ここで言う球状とは、ほぼ球に近い形状である(JIS Z2500:2000参照)。必ずしも真球状である必要はなく、粒子の長径(DL)と短径(DS)との比(DL)/(DS)(球状係数と言うことがある)が1.0〜1.2の範囲にあるものが好ましい。
粒状とは、不規則形状のものではなくほぼ等しい寸法をもつ形状である(JIS Z2500:2000参照)。
フレーク状(片状)とは、板のような形状であり(JIS Z2500:2000参照)、鱗のように薄い板状であることから鱗片状とも言われるものである。いずれの形状であっても粒度分布は限定されない。
【0021】
金属粒子(A)の製法は限定されるものではなく、還元法・粉砕法・電解法・アトマイズ法・熱処理法・それらの組合せによる方法が例示されるが、粒状または球状の粒子を得やすい還元法またはアトマイズ法であることが好ましい。
還元法による銀粒子の製造方法は多く提案されており、通常、硝酸銀水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を加えて酸化銀を調製し、これにホルマリンのような還元剤の水溶液を加えることにより酸化銀を還元して銀粒子分散液とし、分散液をろ過し、ろ過残渣を水洗し、乾燥をおこなうことにより製造される。
還元法による銅粒子は、特開昭59−116203に記載されているように、通常、硫酸銅水溶液とヒドラジン水溶液を接触反応させて銅粉を還元析出させ、純水で洗浄した後、乾燥して製造している。アトマイズ法による金属粒子は、特開平9−137207に記載されているように、金属溶融槽から流下する溶融金属に高圧の不活性ガスを噴霧し、該溶融金属を急速凝固させて製造している。特開平5−156321では不活性ガスの代わりに水を用いたアトマイズ法で金属粉末を製造している。
【0022】
このように製造された金属粒子(A)は、通常、粒状若しくは球状であるが、凝集防止および/または酸化防止のため有機物で表面を被覆してもよい。このような有機物としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸のような高・中級脂肪酸;高・中脂肪酸金属塩、高・中脂肪酸エステル、高・中脂肪酸アミドのような高・中脂肪酸の誘導体;ドデシルアミンのような高・中級アルキルアミンが例示される。金属粒子(A)の表面は撥水性、親水性のいずれであっても良い。
【0023】
金属粒子(A)表面の有機物量は、金属粒子の焼結性の点で5重量%以下であり、好ましくは2重量%以下である。ここで有機物量は、通常の方法で測定できる。例えば金属粒子(A)を不活性ガス中で500℃に加熱したときの重量減少を測定する方法が例示される。
【0024】
かくして得られた金属粒子(A)は、液状フラックス(B)とともに70℃以上400℃以下の温度で加熱したときの金属粒子(A)同士の焼結性、および、加熱焼結途上で接触していた金属製部材への接着性および焼結してできる固形状金属の電気伝導性が優れている。
【0025】
本発明の金属製部材用接合剤は、金属粒子(A)と液状フラックス(B)との混合物であり、粉末状の金属粒子(A)が液状フラックス(B)の作用によりペースト化している。ペースト化することによりシリンダーやノズルから細い線状に吐出でき、またメタルマスクによる印刷塗布が容易になる。液状フラックス(B)は、粉末状の金属粒子(A)と適度な比率で混合することによりペースト状となる。
【0026】
液状フラックス(B)は、金属粒子(A)および金属製部材の表面から酸化物を溶解除去して、金属粒子(A)同士を加熱焼結容易とし、かつ、金属粒子(A)の加熱焼結物と金属製部材との接着性を向上する。
【0027】
本発明の金属製部材用接合剤においては従来公知の常温で液状のフラックスを使用できる。そのような液状フラックスは、通常、少なくともベース樹脂と溶剤とからなり、必要に応じて酸化膜除去活性剤、チキソトロピック剤等からなる。液状フラックス(B)として、(a)ロジンまたはその誘導体と(d)溶剤とからなる液状物、(a)ロジンまたはその誘導体と(b)酸化膜除去活性剤と(d)溶剤とからなる液状物、(a)ロジンまたはその誘導体と(c)チキソトロピック剤と(d)溶剤とからなる液状物、(a)ロジンまたはその誘導体と(b)酸化膜除去活性剤と(c)チキソトロピック剤と(d)溶剤とからなる液状物、(b)酸化膜除去活性剤と(d)溶剤とからなる液状物、および、(b)酸化膜除去活性剤と(c)チキソトロピック剤と(d)溶剤とからなる液状物が例示される。
【0028】
ベース樹脂として、ロジンまたはロジン誘導体(a)、合成樹脂が例示される。ロジンとして、ガムロジン、トールロジン、ウッドロジンが例示される。ロジン誘導体として、熱処理したロジン、重合ロジン、変性ロジン(例えば、アクリル化ロジン、水素添加ロジン、ホルミル化ロジン、ロジンエステル、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性アルキド樹脂)、低軟化点ロジンが例示される。アクリル化ロジンは、各種ロジンにアクリル酸もしくはそのエステルやメタクリル酸もしくはそのエステルを付加反応させてなるものである。低軟化点ロジンは、各種ロジンを不活性ガス雰囲気中で250〜300℃の温度で数時間加熱する方法で得ることができる。
【0029】
合成樹脂として、脂肪族ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、エチレン−アクリル共重合体、スチレン−マレイン酸樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂が例示される。脂肪族ポリアミド樹脂は、炭素数2〜21の脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって得られる脂肪族ポリアミド樹脂であり、軟化点が80〜150℃のもの、あるいは炭素数2〜21のダイマー酸と脂肪族ジアミンとの重縮合反応によって得られるポリアミド樹脂で、軟化点が80〜150℃のものが好ましい。
ベース樹脂は、異なるロジンまたはその誘導体を併用したもの、あるいはロジンまたはその誘導体と合成樹脂を併用したものであってもよい。
ベース樹脂は、常温で液状であることが好ましいが、35〜150℃位で溶融するか、溶剤に溶解可能であれば固形状でもよい。
【0030】
溶剤(d)は、上記ベース樹脂が常温で固形状である場合および粘稠な液状である場合に必要な成分である。溶剤(d)として、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ、メチルカルビトール)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ、エチルカルビトール)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(プロピルセロソルブ、プロピルカルビトール)、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルメトキシブタノール、α−ターピネオール、β−ターピネオール、へキシレングリコール、ベンジルアルコール、2−フェニルエチルアルコール、イゾパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイゾブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン)、2−オクタノン、イソホロン(3、5、5−トリメチル−2−シクロヘキセン−1−オン)、ジイブチルケトン(2、6−ジメチル−4−ヘプタノン)などのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジシソブリツアジペート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、アセトキシエタン、酪酸メチル、ヘキサン酸メチル、オクタン酸メチル、デカン酸メチル、メチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、1,2−ジアセトキシエタン、リン酸トリブチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリペンチルなどのエステル類;テトラヒドロフラン、ジプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、エトキシエチルエーテル、1,2−ビス(2−ジエトキシ)エタン、1,2−ビス(2−メトキシエトキシ)エタン等のエーテル類;酢酸2−(2ブトキシエトキシ)エタンなどのエステルエーテル類;2−(2−メトキシエトキシ)エタノールなどのエーテルアルコール類;トルエン、キシレン、n−パラフィン、イソパラフィン、ドデシルベンゼン、テレピン油、ケロシン、軽油などの炭化水素類;アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類;アセトアミド、N、N-ジメチルホルムアミドなどのアミド類;低分子量の揮発性シリコンオイルおよび揮発性有機変成シリコンオイルが例示される。溶剤(d)は常圧における沸点が 50〜300℃であることが好ましい。
【0031】
溶剤(d)の含有量は、通常、液状フラックス総量の20〜99.99重量%であり、好ましくは20〜99.9重量%である。溶剤(d)が20重量%未満であると、フラックスの粘性が高くなり、フラックスの塗布性が悪化するおそれがある。一方、溶剤(d)が99.99重量%を超えると、フラックスとしての有効成分(ロジン等)が相対的に少なくなってしまい、接合性が低下するおそれがある。
【0032】
ロジンまたはロジン誘導体(a)は、金属粒子(A)および金属製部材の表面から酸化物を溶解除去して、金属粒子(A)同士を加熱焼結容易とし、かつ、金属粒子(A)の加熱焼結物と金属製部材との接着性を向上する。しかし、合成樹脂は通常そのような作用を有しないので、酸化物除去活性剤を併用する。ロジンやロジン誘導体であっても、そのような作用が不十分な場合は、酸化膜除去活性剤(b)と併用することが好ましい。
【0033】
酸化膜除去活性剤(b)として、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジフェニルグアニジン等のアミン類の塩化水素酸塩もしくは臭素酸塩;コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の多価カルボン酸;カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸等の一価カルボン酸;クエン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸、1,2−ヒドロキシオレイン酸等のヒドロキシ脂肪酸;テトラブロモメタン、1,1,2,2−テトラブロモブタン、1,2−ジブロモ−2−ブテン、2,3−ジボロモ−1−プロパノール、1,2−ジボロモ−2,3−ブタンジオール、トランス−2,3−ジボロモ−2−ブテン−1,4−ジオール、2,2−ビス(ブロモメチル)−1,3−プロパンジオールなどの有機ハロゲン化物が例示される。
【0034】
ここで、アミン類は炭素原子数2〜12の脂肪族アミンが好ましく、一価カルボン酸は炭素原子数6〜18の一価脂肪族カルボン酸が好ましく、多価カルボン酸は炭素原子数2〜12の多価脂肪族カルボン酸が好ましく、ヒドロキシ脂肪酸は炭素原子数6〜18の一価もしくは多価のヒドロキシ脂肪酸が好ましく、有機ハロゲン化物は炭素原子数1〜4のハロゲン化脂肪族炭化水素が好ましい。
【0035】
酸化膜除去活性剤(b)の含有量は、基材の金属酸化物除去能力にもよるが、通常、フラックス総量の0.01〜30重量%であり、好ましくは0.1〜10重量%である。酸化膜除去活性剤(b)が0.01重量%未満であると、活性力が不足し、接合性が低下するおそれがある。一方、酸化膜除去活性剤(b)が30重量%を超えると、フラックスの皮膜性が低下し親水性が高くなるので、腐食性および絶縁性が低下するおそれがある。
【0036】
チキソトロピック剤(c)は、金属粒子(A)と液状ベース樹脂のペースト状混合物、あるいは、金属粒子(A)と固形状ベース樹脂と溶剤のペースト状混合物にチキソトロピック性を付与もしくは向上して、金属製部材用接合剤の塗布作業性や注入作業性を向上する作用がある。
チキソトロピック剤(c)としては、硬化ヒマシ油、脂肪酸アミド、ジベンジリデンソルビトール等が例示される。
【0037】
チキソトロピック剤(c)は、金属粒子(A)と液状基材のペースト状混合物、あるいは、金属粒子(A)と固形状ベース樹脂と溶剤のペースト状混合物がチキソトロピック性を有している場合は、必ずしも必要ではないが、その含有量は、通常、液状フラックス(B)総量の1.0〜25重量%であり、好ましくは3.0〜10重量%である。
【0038】
液状フラックス(B)は、その他に、顔料、酸化防止剤、界面活性剤、アミン類、防黴剤、防錆剤、艶消し剤等を含有してもよい。
液状フラックス(B)は、必要な成分の所要量を汎用のミキサー等で混合して容易に調製することができる。
【0039】
これらの液状フラックス(B)は、金属粒子(A)と混合してペースト状にしたときにメタルマスクでの印刷性やシリンジからの押出性、吐出性に優れ、また適度なチクソトロピック性を有している。
【0040】
液状フラックス(B)の配合量は、金属粒子(A)をペースト状にするのに十分な量でよく、金属粒子(A)の比重、平均粒径(メディアン径D50)、形状などによっても異なるが、目安として金属粒子(A)100重量部あたり、5〜20重量部である。なお、ペースト状は、クリーム状やスラリー状を含むものである。
【0041】
本発明の金属製部材用接合剤は、本発明の目的に反しない限り金、銀、銀、銅、ニッケル、アルミニウム等の平均粒径(メディアン径D50)が0.1μm以下であるナノ粒子や非金属系の粒子、金属化合物や金属錯体、安定剤、着色剤等を含有しても良い。
【0042】
本発明の金属製部材用接合剤は、加熱することにより金属粒子(A)同士が焼結して元の金属粒子(A)と同等の融点を有する多孔質の焼結物となり、かつ、金属製部材用接合剤が接触していた金属製部材へ優れた接着性を有する。
【0043】
加熱するときの雰囲気ガスは、不活性ガス、酸化性ガス、還元性ガスのいずれでも良いが、金属粒子(A)または金属製部材が卑金属系であるときは不活性ガスまたは還元性ガスであることが好ましい。不活性ガスは窒素ガスであることが好ましい。酸化性ガスは酸素ガスと窒素ガスからなることが好ましく、特には酸素ガス濃度が0.1体積%以上40体積%以下と窒素ガス濃度が99.9体積%以下60体積%以上の混合ガスであることが好ましく、空気であっても良い。還元性ガスは水素ガスと窒素ガスからなることが好ましく、特には水素ガス濃度が1体積%以上40体積%以下と窒素ガス濃度が99体積%以下60体積%以上の混合ガスであることが好ましく、更には水素ガス濃度が5体積%以上25体積%以下と窒素ガスが95体積%以下75体積%以上であるフォーミングガスであることが好ましい。
【0044】
加熱温度は、金属粒子(A)が焼結できる温度であればよく、通常70℃以上であり、150℃以上が好ましく、200℃以上であることがより好ましい。しかし、400℃を越えると常温にもどしたときの残留応力が大きくなるので400℃以下であることが必要であり、好ましくは350℃以下、より好ましくは300℃以下である。
【0045】
金属粒子(A)同士の多孔質焼結物は、金属粒子(A)と同等の融点を有し、電気伝導性と耐熱処理性が優れていることを特徴とする。金属粒子(A)が銀であれば多孔質焼結物の融点は銀の融点と略同じである。同様に金属粒子(A)が銅であれば多孔質焼結物の融点は銅の融点と略同じである。金属粒子(A)同士の多孔質焼結物は、金属粒子(A)の全体が溶融して形成されたものではなく、金属粒子(A)同士の接触界面で接合しているため多孔質であることを特徴とする。
【0046】
これに対し、スズを主成分とするハンダ、例えば、Sn60%とPb40%とからなる共晶ハンダ、無鉛ハンダ粒子、例えば、Sn−In系、Sn−Bi系、In−Ag系、In−Bi系、Sn−Zn系、Sn−Ag系、Sn−Cu系、Sn−Sb系、Sn−Au系、Sn−Bi−Ag−Cu系、Sn−Ge系、Sn−Bi−Cu系、Sn−Cu−Sb−Ag系、Sn−Ag−Zn系、Sn−Cu−Ag系、Sn−Bi−Sb系、Sn−Bi−Sb−Zn系、Sn−Bi−Cu−Zn系、Sn−Ag−Sb系、Sn−Ag−Sb−Zn系、Sn−Ag−Cu−Zn系、Sn−Zn−Bi系の無鉛ハンダ粒子、
【0047】
より具体的には、48Sn/52In、43Sn/57Bi、97In/3Ag、58Sn/42In、95In/5Bi、60Sn/40Bi、91Sn/9Zn、96.5Sn/3.5Ag、99.3Sn/0.7Cu、95Sn/5Sb、20Sn/80Au、90Sn/10Ag、Sn90/Bi7.5/Ag2/Cu0.5、97Sn/3Cu、99Sn/1Ge、92Sn/7.5Bi/0.5Cu、97Sn/2Cu/0.8Sb/0.2Ag、95.5Sn/3.5Ag/1Zn、95.5Sn/4Cu/0.5Ag、52Sn/45Bi/3Sb、51Sn/45Bi/3Sb/1Zn、85Sn/10Bi/5Sb、84Sn/10Bi/5Sb/1Zn、88.2Sn/10Bi/0.8Cu/1Zn、89Sn/4Ag/7Sb、88Sn/4Ag/7Sb/1Zn、98Sn/1Ag/1Sb、97Sn/1Ag/1Sb/1Zn、91.2Sn/2Ag/0.8Cu/6Zn、89Sn/8Zn/3Bi、86Sn/8Zn/6Bi、89.1Sn/2Ag/0.9Cu/8Znは、ハンダを構成する金属が溶融して合金化し一体化したものなので、多孔質とはならず均一な固体となる。
【0048】
金属粒子(A)の多孔質焼結物は、図1に示されるように、数多くの微細な空孔や空隙、しかも、連続した空隙すなわち、細孔を有している。細孔の形状や大きさは、種々様々である。焼結前の焼結性金属粒子間の隙間が主に細孔になるので、通常0.1〜50μmであるが、連続的な細孔は50μmよりはるかに長い可能性がある。なお、該細孔にはフラックス残渣が存在する可能性があるが、この場合でも後述する溶剤洗浄により除去可能である。
【0049】
金属粒子(A)の多孔質焼結物は、多孔質焼結物の断面に占める空間の割合(該空間中にはフラックス残渣が存在する場合があるが、この分は空間とする(以下同様)。本発明では、空隙率という)が、5面積%以上50面積%以下であることが好ましく、10面積%以上40面積%以下であることがより好ましい。多孔質焼結物に占める空間の割合(空隙率)の測定方法は、通常の方法が利用できる。例えば、焼結物の断面を電子顕微鏡で写真撮影をし、画像解析ソフトにより写真における金属部分と空間部分の面積比を求める方法、電子顕微鏡により撮影した写真を均質な紙等に印刷し、金属部分と空間部分をはさみ等で切り分けて各々の重量を測定し、その比率で求める方法等が例示される。
【0050】
金属粒子(A)の多孔質焼結物の融点は、加熱焼結温度の上限値である400℃より高く、金属粒子(A)と同等であることが好ましい。融点は金属粒子(A)の材質によって変わるが、600℃以上であることが好ましい。金属粒子(A)が銀であれば900℃以上であることが好ましく、銅であれば1000℃以上であることが好ましい。
【0051】
金属粒子(A)の多孔質焼結物の電気伝導性は、体積抵抗率で1×10-2Ω・cm以下であることが好ましく、1×10-4Ω・cm以下であることがより好ましい。また、金属製部材の該多孔質焼結物による接合体の接合強度は、せん断接着強さが5MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であることがより好ましい。これらの融点、体積抵抗率およびせん断接着強さは、実施例に記載した方法により測定されるものである。
【0052】
本発明の金属製部材用接合剤は、加熱すると金属粒子(A)同士が焼結し、強度および電気伝導性が優れ、接触していた金属製部材、例えば金メッキ基板、金合金基板、銀メッキ金属基板、銀基板、銀合金基板、銅メッキ基板、銅基板、銅合金基板、パラジウムメッキ基板、パラジウム合金基板等の金属系基板、電気絶縁性基板上の電極等金属部分への接着性を有する多孔質焼結物となるので、金属系基板や金属部分を有する電子部品、電子装置、電気部品、電気装置等の接合に有用である。
【0053】
そのような接合として、コンデンサ、抵抗等のチップ部品と回路基板との接合;ダイオード、メモリ、CPU等の半導体チップとリードフレームもしくは回路基板との接合;高発熱のCPUチップと冷却板との接合、半導体または基板上の電極形成材が例示される。
【0054】
本発明の金属製部材用接合剤を加熱して金属粒子(A)を焼結した後の洗浄は不要であるが、ハンダの場合と同様に純水または有機溶媒で洗浄してもよい。有機溶剤としては揮発性のアルコール、ケトン、エーテル、炭化水素が例示される。洗浄方法は限定されず、溶剤をかけ流して洗浄する方法、溶剤に浸漬して洗浄する方法、溶剤を噴霧して洗浄する方法が例示されるが、超音波振動を加えながら洗浄する方法が好ましい。
【0055】
本発明の金属製部材用接合剤は、液状成分を含有するので、密閉容器に保存することが好ましい。長期間保存後に使用するときは、容器を振とうしてから、あるいは容器内を攪拌してから使用することが好ましい。保存安定性を向上する目的で冷蔵保管をしても良く、保管温度として10℃以下が例示されるが、特に密閉容器内では液状フラックス(B)が凝固しない温度であることが好ましい。
密閉容器にシリンジを使用した場合は、ディスペンサーやインクジェットを用いて微少量の吐出ができる。
【0056】
本発明の金属製部材接合体の製造方法は、(A)平均粒径(メディアン径D50)が0.1μmより大きく50μm以下であり融点が400℃より高い加熱焼結性金属粒子と(B)液状フラックスとからなるペースト状物を複数の金属製部材間に介在させ、70℃以上400℃以下で加熱することにより、金属粒子(A)同士が焼結した金属粒子(A)と同等の融点を有する多孔質焼結物により複数の金属製部材同士を接合することを特徴とする。
【0057】
(A)平均粒径(メディアン径D50)が0.1μmより大きく50μm以下であり融点が400℃より高い加熱焼結性金属粒子、(B)液状フラックス、これらからなるペースト状物、金属製部材、加熱するときの雰囲気ガス、70℃以上400℃以下での加熱、金属粒子(A)同士の焼結、および、多孔質焼結物の融点、多孔質焼結物中に占める空間の割合(空隙率)については、既に説明したとおりである。ここで、せん断接着強さと体積抵抗率は、実施例に記載した方法により測定されるものである。
【0058】
本発明の金属製部材接合体は、複数の金属製部材が、空隙率が5〜50面積%であり、融点が400℃より高く、体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下である多孔質焼結物により接合されていることを特徴とする。
金属製部材、多孔質焼結物の融点、空隙率、フラックス、体積抵抗率については、既に説明したとおりである。
この金属製部材接合体は、250℃におけるせん断接着強さが5MPa以上であることが好ましく、10MPa以上であることがより好ましい。ここで、融点とせん断接着強さと体積抵抗率は、実施例に記載した方法により測定されるものである。
【0059】
本発明の金属製部材用接合剤である,(A)平均粒径(メディアン径D50)が0.1μmより大きく50μm以下であり融点が400℃より高い加熱焼結性金属粒子と(B)液状フラックスとからなるペースト状物は、電気回路接続用電極の製造に有用である。
【0060】
本発明の電気回路接続用バンプの製造方法は、(A)平均粒径(メディアン径D50)が0.1μmより大きく50μm以下であり融点が400℃より高い加熱焼結性金属粒子と(B)液状フラックスとからなるペースト状物を、半導体素子上の電気回路接続用パッド部または基板上の電気回路接続用電極部にドット状に塗布し、70℃以上400℃以下で加熱することにより、該金属粒子同士を焼結して、半導体素子上または基板上に金属製バンプを形成することを特徴とする。
【0061】
ペースト状物をドット状に塗布する方法として、滴下、ディスペンシング、印刷(例えばスクリーン印刷)、メタルマスク塗布、インクジェット塗布が例示される。
(A)平均粒径(メディアン径D50)が0.1μmより大きく50μm以下であり融点が400℃より高い加熱焼結性金属粒子と(B)液状フラックスとからなるペースト状物、加熱するときの雰囲気ガス、70℃以上400℃以下での加熱、金属粒子(A)同士の焼結については、既に説明したとおりである。
金属製バンプは、金属粒子(A)同士の多孔質焼結物であり、その融点は400℃より高く、好ましくは600℃以上であり、多孔質焼結物の断面において空間の占める割合(空隙率)は、通常5面積%以上50面積%以下であり、好ましくは10面積%以上40面積%以下である。
【0062】
このようにして形成した半導体素子上および基板上の電気回路接続電極は、金属粒子(A)同士が焼結することにより大きな強度と極めて高い電気伝導性を有るため、半導体素子の電気回路と基板上の電気回路接続用電極の形成に用いることができる。半導体素子としては、ダイオード、トランジスタ、メモリ、CPUが例示される。電気回路と電極は、通常、金、銀、銅、パラジウム、前記各金属の合金、または前記各金属のメッキからなる。
【実施例】
【0063】
本発明の実施例と比較例を掲げる。実施例と比較例中、部とあるのは重量部を意味する。金属粒子(A)の多孔質焼結物中に空間の占める割合(空隙率)、融点、体積抵抗率、および、250℃における接合体のせん断接着強さは下記の方法により測定した。融点および250℃における接合体のせん断接着強さ以外は23℃で測定した。沸点は常圧での値である。
【0064】
[多孔質焼結物の空隙率]
ポリイミド樹脂板上に15mm角の開口部を有する厚さ1mmのステンレス製のマスクを置き、金属製部材用接合剤を印刷塗布した。これを室温のガス流通炉に入れ、雰囲気ガスを実施例に記載の所定のガスに置換後、所定のガスを流量1リットル/分で流しながら室温から昇温速度1℃/秒で280℃まで昇温し、280℃で1時間保持後、室温まで冷却して金属製部材用接合剤中の金属粒子を焼結した。この金属粒子焼結物をポリイミド樹脂板からはずして空隙率測定用試験体とした。
かくして得られた板状の試験体の断面を電子顕微鏡で撮影し、画像解析ソフト(アメリカ合衆国のNational Institute of Health社製のNIH Image)を用いて空隙率を算出し、面積%で示した。
【0065】
[金属粒子(A)または多孔質焼結物の融点]
空隙率測定のために作成した多孔質焼結物をニッパで削り取って融点測定用試験片を調製した。金属粒子(A)または融点測定用試験片を示差熱分析装置(島津製作所株式会社製DTG−60AH)により窒素ガス雰囲気で昇温速度10℃/分で1200℃まで加熱して、吸熱ピークの温度を融点とした。
【0066】
[多孔質焼結物の体積抵抗率]
ポリイミド樹脂板上に15mm角の開口部を有する厚さ1mmのステンレス製のマスクを置き、金属製部材用接合剤を印刷塗布した。これを室温のガス流通炉に入れ、雰囲気ガスを実施例に記載の所定のガスに置換後、所定のガスを流量1リットル/分で流しながら室温から昇温速度1℃/秒で280℃まで昇温し、280℃で1時間保持後、室温まで冷却して金属製部材用接合剤中の金属粒子を焼結した。この多孔質焼結物をポリイミド樹脂板からはずして試験体とした。かくして得られた体積抵抗率測定用試験体について、JIS K 7194に準じた方法により体積抵抗率(単位;Ω・cm)を測定した。
【0067】
[金属製部材接合体の250℃におけるせん断接着強さ]
幅25mm×長さ70mm、厚さ1.0mmの銀基板(純度99%以上)上に、10mmの間隔をおいて4つの開口部(2.5mm×2.5mm)を有する100μm厚のメタルマスクを用いて、金属製部材用接合剤を印刷塗布し、その上にサイズが2.5mm×2.5mm×0.5mmの銀チップ(純度99.9%以上)を搭載した。この銀チップを搭載した銀基板を室温のガス流通炉に入れ、雰囲気ガスを所定のガスに置換後、所定のガスを流量1リットル/分で流しながら室温から昇温速度1℃/秒で280℃まで昇温し、280℃で1時間保持後、室温まで冷却した。以上のようにして金属製部材用接合剤中の金属粒子を焼結することにより銀基板と銀チップを接合した。かくして得られた接合強度測定用試験体(図2、図3参照)を接着強さ試験機の温度が250℃である試験体取付け具にセットし、該銀チップの側面を接着強さ試験機の押圧棒により押厚速度23mm/分で押圧し、接合部がせん断破壊したときの荷重をもって、250℃におけるせん断接着強さ(単位;MPa)とした。
【0068】
[参考例1]
いずれも市販の、(a)重合ロジン(酸価160、軟化点100℃)15部、(a)アクリル酸変性ロジン(酸価240、軟化点120℃)36部、(d)テルピネオール(沸点219℃)5部、(d)ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(沸点259℃)35部、(b)トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール(融点114℃)5部および(c)硬化ヒマシ油4部を攪拌羽根付ミキサーにより均一に混合して液状フラックスを調製した。この液状フラックスの粘度は10Pa・sであった。なお、粘度は回転粘度計(東機産業株式会社製RB80型)によりH2ロータを使用して25℃で測定した(以下、同様である)。
【0069】
[参考例2]
いずれも市販の、(a)重合ロジン(酸価160、軟化点100℃)15部、(b)ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩(融点157℃)30部、(b)1,2−ヒドロキシオレイン酸(融点6℃)5部、(d)テルピネオール(沸点219℃)50部を攪拌羽根付ミキサーにより均一に混合して液状フラックスを調製した。この液状フラックスの粘度は6Pa・sであった。
【0070】
[参考例3]
いずれも市販の、(a)重合ロジン(酸価160、軟化点100℃)55部、(c)硬化ヒマシ油5部、(d)テルピネオール(沸点219℃)40部を攪拌羽根付ミキサーにより均一に混合して液状フラックスを調製した。この液状フラックスの粘度は11Pa・sであった。
【0071】
[参考例4]
いずれも市販の、(a)重合ロジン(酸価160、軟化点100℃)55部、(d)テルピネオール(沸点219℃)45部を攪拌羽根付ミキサーにより均一に混合して液状フラックスを調製した。この液状フラックスの粘度は5Pa・sであった。
【0072】
[参考例5]
いずれも市販の、(b)シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩(融点195℃)15部、(c)硬化ヒマシ油5部、(d)ジプロピレングリコール(沸点232℃)80部を攪拌羽根付ミキサーによりよく混合してスラリー状である液状フラックスを調製した。この液状フラックスの粘度は3Pa・sであった。
【0073】
[参考例6]
いずれも市販の、(b)シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩(融点195℃)20部、(d)ジプロピレングリコール(沸点232℃)80部を攪拌羽根付ミキサーによりよく混合してスラリー状である液状フラックスを調製した。この液状フラックスの粘度は1Pa・sであった。
【0074】
[参考例7]
いずれも市販の、(b)パルミチン酸(融点63℃、一価脂肪族カルボン酸)3部、(d)ジプロピレングリコール97部を攪拌羽根付ミキサーによりよく混合してスラリー状である液状フラックスを調製した。この液状フラックスの粘度は0.2Pa・sであった。
【0075】
[参考例8]
いずれも市販の、(b)グルタル酸(融点97℃、二価脂肪族カルボン酸である)0.5部、(d)ジプロピレングリコール(沸点232℃)99.5部を攪拌羽根付ミキサーによりよく混合してスラリー状である液状フラックスを調製した。この液状フラックスの粘度は0.1Pa・sであった。
【0076】
[実施例1]
市販のアトマイズ法で製造された,レーザー回折法により得られる1次粒子の平均粒径(メディアン径D50)が1.5μmであり、表面無処理の球状の銀粒子(銀純度99重量%以上)100部と、参考例1で調製した液状フラックス10部とを、ヘラを用いて均一に混合してペースト状の金属製部材用接合剤を調製した。この金属製部材用接合剤は、メタルマスクでの塗布においてダレ、流れ等はなく、良好な形状に塗布できた。
【0077】
この金属製部材用接合剤について、酸化性ガスである空気(酸素ガス濃度20.9体積%。以下、同様である)中で、前記各条件で加熱焼結した場合の、多孔質焼結物の空隙率、銀粒子および銀粒子の多孔質焼結物の融点、銀粒子の多孔質焼結物の体積抵抗率および接合体のせん断接着強さを測定した。
【0078】
以上の結果について表1にまとめて示した。以上の結果より、この金属製部材用接合剤は十分に焼結して、通常のリフロー温度でも溶融しない高い融点を有した多孔質焼結物となり、高い電気伝導性を有して金属製部材を強固に接合するのに有用なこと、および、基板への接着性、電気伝導性が優れた電極を形成するのに有用なことがわかる。
【0079】
[実施例2]
実施例1において用いたアトマイズ法で製造された銀粒子の代わりに、特開昭54-121270の実施例に準じて還元法で製造された,レーザー回折法により得られる1次粒子の平均粒径(メディアン径D50)が0.8μmであり、表面がステアリン酸処理された粒状の銀粒子(銀純度99重量%以上、ステアリン酸付着量0.3重量%)を用いたほかは、実施例1と同様にしてペースト状の金属製部材用接合剤を調製した。この金属製部材用接合剤は、メタルマスクでの塗布においてダレ、流れ等はなく、良好な形状に塗布できた。
【0080】
この金属製部材用接合剤について、酸化性ガスである空気(酸素ガス濃度20.9体積%。以下、同様である)中で、前記各条件で加熱焼結した場合の、多孔質焼結物の空隙率、銀粒子および銀粒子の多孔質焼結物の融点、銀粒子の多孔質焼結物の体積抵抗率および接合体のせん断接着強さを測定した。
【0081】
以上の結果について表1にまとめて示した。以上の結果より、この金属製部材用接合剤は十分に焼結して、通常のリフロー温度でも溶融しない高い融点を有した多孔質焼結物となり、高い電気伝導性を有して金属製部材を強固に接合するのに有用なこと、および、基板への接着性、電気伝導性が優れた電極を形成するのに有用なことがわかる。
【0082】
[実施例3]
実施例1において用いた,アトマイズ法で製造された銀粒子の代わりに、市販のアトマイズ法で製造された,レーザー回折法により得られる1次粒子の平均粒径(メディアン径D50)が1.5μmであり、表面無処理の球状の銅粒子(銅純度99%重量以上)を用いたほかは、実施例1と同様にしてペースト状の金属製部材用接合剤を調製した。この金属製部材用接合剤は、メタルマスクでの塗布においてダレ、流れ等はなく、良好な形状に塗布できた。
【0083】
この金属製部材用接合剤について、還元性ガスである水素ガス濃度が20体積と窒素ガス濃度が80体積%の混合ガスである還元性ガス中で、前記各条件で加熱焼結した場合の、多孔質焼結物の空隙率、銅粒子および銅粒子の多孔質焼結物の融点、銅粒子の多孔質焼結物の体積抵抗率および接合体のせん断接着強さを測定した。
【0084】
以上の結果について表1にまとめて示した。以上の結果より、この金属製部材用接合剤は十分に焼結して、通常のリフロー温度でも溶融しない高い融点を有した多孔質焼結物となり、高い電気伝導性を有して金属製部材を強固に接合するのに有用なこと、および、基板への接着性、電気伝導性が優れた電極を形成するのに有用なことがわかる。
【0085】
[実施例4]
実施例3において、還元性ガスを用いる代わりに不活性ガスである窒素ガス(純度99.99体積%)を用いて、前記各条件で加熱焼結した場合の、多孔質焼結物の空隙率、銅粒子および銅粒子の多孔質焼結物の融点、銅粒子の多孔質焼結物の体積抵抗率および接合体のせん断接着強さを測定した。
【0086】
以上の結果について表1にまとめて示した。以上の結果より、この金属製部材用接合剤は十分に焼結して、通常のリフロー温度でも溶融しない高い融点を有した多孔質焼結物となり、高い電気伝導性を有して金属製部材を強固に接合するのに有用なこと、および、基板への接着性、電気伝導性が優れた電極を形成するのに有用なことがわかる。
【0087】
[実施例5]
実施例1において用いた,参考例1で調製した液状フラックスの代わりに、参考例2で調製した液状フラックスを用いたほかは、実施例1と同様にしてペースト状の金属製部材用接合剤を調製した。この金属製部材用接合剤は、メタルマスクでの塗布においてダレ、流れ等はなく、良好な形状に塗布できた。
実施例1と同様にして、前記各条件で加熱焼結した場合の、多孔質焼結物の空隙率、銀粒子および銀粒子の多孔質焼結物の融点、銀粒子の多孔質焼結物の体積抵抗率および接合体のせん断接着強さを測定した。
【0088】
以上の結果について表1にまとめて示した。以上の結果より、この金属製部材用接合剤は十分に焼結して、通常のリフロー温度でも溶融しない高い融点を有した多孔質焼結物となり、高い電気伝導性を有して金属製部材を強固に接合するのに有用なこと、および、基板への接着性、電気伝導性が優れた電極を形成するのに有用なことがわかる。
【0089】
[実施例6]
実施例1において用いた,参考例1で調製した液状フラックスの代わりに、参考例3で調製した液状フラックスを用いたほかは、実施例1と同様にしてペースト状の金属製部材用接合剤を調製した。この金属製部材用接合剤は、メタルマスクでの塗布においてダレ、流れ等はなく、良好な形状に塗布できた。
【0090】
実施例1同様にして、前記各条件で加熱焼結した場合の、多孔質焼結物の空隙率、銀粒子および銀粒子の多孔質焼結物の融点、銀粒子の多孔質焼結物の体積抵抗率および接合体のせん断接着強さを測定した。
【0091】
以上の結果について表2にまとめて示した。以上の結果より、この金属製部材用接合剤は十分に焼結して、通常のリフロー温度でも溶融しない高い融点を有した多孔質焼結物となり、高い電気伝導性を有して金属製部材を強固に接合するのに有用なこと、および、基板への接着性、電気伝導性が優れた電極を形成するのに有用なことがわかる。
【0092】
[実施例7]
実施例1において用いた,参考例1で調製した液状フラックスの代わりに、参考例4で調製した液状フラックスを用いたほかは、実施例1と同様にしてペースト状の金属製部材用接合剤を調製した。この金属製部材用接合剤は、メタルマスクでの塗布においてややダレがあったが塗布できた。
【0093】
実施例1同様にして、前記各条件で加熱焼結した場合の、多孔質焼結物の空隙率、銀粒子および銀粒子の多孔質焼結物の融点、銀粒子の多孔質焼結物の体積抵抗率および接合体のせん断接着強さを測定した。
【0094】
以上の結果について表2にまとめて示した。以上の結果より、この金属製部材用接合剤は十分に焼結して、通常のリフロー温度でも溶融しない高い融点を有した多孔質焼結物となり、高い電気伝導性を有して金属製部材を強固に接合するのに有用なこと、および、基板への接着性、電気伝導性が優れた電極を形成するのに有用なことがわかる。
【0095】
[実施例8]
実施例1において用いた,参考例1で調製した液状フラックスの代わりに、参考例5で調製した液状フラックスを用いたほかは、実施例1と同様にしてペースト状の金属製部材用接合剤を調製した。この金属製部材用接合剤は、メタルマスクでの塗布においてややダレがあったが塗布できた。
【0096】
実施例1と同様にして、前記各条件で加熱焼結した場合の、多孔質焼結物の空隙率、銀粒子および銀粒子の多孔質焼結物の融点、銀粒子の多孔質焼結物の体積抵抗率および接合体のせん断接着強さを測定した。
【0097】
以上の結果について表2にまとめて示した。以上の結果より、この金属製部材用接合剤は十分に焼結して、通常のリフロー温度でも溶融しない高い融点を有した多孔質焼結物となり、高い電気伝導性を有して金属製部材を強固に接合するのに有用なこと、および、基板への接着性、電気伝導性が優れた電極を形成するのに有用なことがわかる。
【0098】
[実施例9]
実施例1において用いた,参考例1で調製した液状フラックスの代わりに、参考例6で調製した液状フラックスを用いたほかは、実施例1と同様にしてペースト状の金属製部材用接合剤を調製した。この金属製部材用接合剤は、メタルマスクでの塗布においてやや流れがあったが塗布できた。
【0099】
実施例1同様にして、前記各条件で加熱焼結した場合の、多孔質焼結物の空隙率、銀粒子および銀粒子の多孔質焼結物の融点、銀粒子の多孔質焼結物の体積抵抗率および接合体のせん断接着強さを測定した。
【0100】
以上の結果について表2にまとめて示した。以上の結果より、この金属製部材用接合剤は十分に焼結して、通常のリフロー温度でも溶融しない高い融点を有した多孔質焼結物となり、高い電気伝導性を有して金属製部材を強固に接合するのに有用なこと、および、基板への接着性、電気伝導性が優れた電極を形成するのに有用なことがわかる。
【0101】
[実施例10]
実施例2で用いた、還元法で製造された,レーザー回折法により得られる1次粒子の平均粒径(メディアン径D50)が0.8μmであり、表面がステアリン酸処理された粒状の銀粒子(銀純度99重量%以上、ステアリン酸付着量0.3重量%)100部と、参考例7で調製した液状フラックス10部とを、ヘラを用いて均一に混合してペースト状の金属製部材用接合剤を調製した。この金属製部材用接合剤は、メタルマスクでの塗布においてダレ、流れ等はなく、良好な形状に塗布できた。
【0102】
この金属製部材用接合剤について、酸化性ガスである空気(酸素ガス濃度20.9体積%。以下、同様である)中で、前記各条件で加熱焼結した場合の、多孔質焼結物の空隙率、銀粒子および銀粒子の多孔質焼結物の融点、銀粒子の多孔質焼結物の体積抵抗率および接合体のせん断接着強さを測定した。
【0103】
以上の結果について表2にまとめて示した。以上の結果より、この金属製部材用接合剤は十分に焼結して、通常のリフロー温度でも溶融しない高い融点を有した多孔質焼結物となり、高い電気伝導性を有して金属製部材を強固に接合するのに有用なこと、および、基板への接着性、電気伝導性が優れた電極を形成するのに有用なことがわかる。
【0104】
[実施例11]
実施例10において用いた、参考例7で調製した液状フラックスの代わりに、参考例8で調製したフラックスを用いたほかは、実施例10と同様にしてペースト状の金属製部材用接合剤を調製した。この金属製部材用接合剤は、メタルマスクでの塗布においてダレ、流れ等はなく、良好な形状に塗布できた。
【0105】
この金属製部材用接合剤について、酸化性ガスである空気(酸素ガス濃度20.9体積%。以下、同様である)中で、前記各条件で加熱焼結した場合の、多孔質焼結物の空隙率、銀粒子および銀粒子の多孔質焼結物の融点、銀粒子の多孔質焼結物の体積抵抗率および接合体のせん断接着強さを測定した。
【0106】
以上の結果について表2にまとめて示した。以上の結果より、この金属製部材用接合剤は十分に焼結して、通常のリフロー温度でも溶融しない高い融点を有した多孔質焼結物となり、高い電気伝導性を有して金属製部材を強固に接合するのに有用なこと、および、基板への接着性、電気伝導性が優れた電極を形成するのに有用なことがわかる。
【0107】
[比較例1]
スズ96重量%、銀3重量%、銅1重量%からなり、レーザー回折法により得られる1次粒子(メディアン径D50)の平均粒径が35μであるハンダ粒子(ニホンハンダ株式会社製)100部と、参考例1で調製した液状フラックス11部とを、ヘラを用いて均一に混合して、ペースト状の金属製部材用接合剤を調製した。この金属製部材用接合剤は、メタルマスクでの塗布においてダレ、流れ等はなく、良好な形状に塗布できた。
【0108】
この金属製部材用接合剤について、不活性ガスである窒素ガス(純度99.99体積%)中で、前記各条件で加熱焼結した場合の、多孔質焼結物の空隙率、ハンダ粒子およびハンダ粒子凝固体の融点、ハンダ粒子凝固体の体積抵抗率および接合体のせん断接着強さを測定した。
【0109】
以上の結果について表3にまとめて示した。以上の結果より、この金属製部材用接合剤は加熱により溶融し、常温に冷却すると多孔質ではない均一なハンダ合金となり、高い電気伝導性を有して金属製部材を接合することができるが、通常のリフロー温度である250℃で加熱すると再溶融するので、高温での使用温度に耐えられないことがわかった。
【0110】
[比較例2]
実施例4において、参考例1で調製した液状フラックスを用いる代わりに、揮発性の有機溶媒であるテルピネオール(和光純薬工業株式会社製、試薬1級、沸点214〜224℃)を用いたほかは、実施例4と同様にしてペースト状の金属製部材用接合剤を調製した。この金属製部材用接合剤は、メタルマスクでの塗布においてややダレ、流れがあったが塗布できた。
【0111】
この金属製部材用接合剤について、不活性ガスである窒素ガス(純度99.99体積%)中で、前記各条件で加熱焼結した場合の、多孔質焼結物の空隙率、銅粒子および銅粒子の多孔質焼結物の融点、銅粒子の多孔質焼結物の体積抵抗率および接合体のせん断接着強さを測定した。
【0112】
以上の結果について表3にまとめて示した。
以上の結果より、この金属製部材用接合剤は見かけ上は焼結したが十分ではなく、また、高い電気伝導性と強固な金属製部材の接合を得ることはできなかった。
【0113】
[比較例3]
実施例1において、参考例1で調製した液状フラックスを用いる代わりに、揮発性の有機溶媒であるテルピネオール(和光純薬工業株式会社製、試薬1級、沸点214〜224℃)を用いたほかは、実施例1と同様にしてペースト状の金属製部材用接合剤を調製した。この金属製部材用接合剤は、メタルマスクでの塗布においてややダレ、流れがあったが塗布できた。
【0114】
この金属製部材用接合剤について、空気中で、前記各条件で加熱焼結した場合の、多孔質焼結物の空隙率、銀粒子および銀粒子の多孔質焼結物の融点、銀粒子の多孔質焼結物の体積抵抗率および接合体のせん断接着強さを測定した。
【0115】
以上の結果について表3にまとめて示した。
以上の結果より、この金属製部材用接合剤は見かけ上は焼結したが十分ではなく、また、高い電気伝導性と強固な金属製部材の接合を得ることはできなかった。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【0118】
【表3】

【0119】
[実施例12]
厚さが1.2mmのセラミック板上に形成された銅製配線回路(幅1mm、長さ50mm、厚さ30μm)の表面を金メッキした電気回路の両端部に、縦1mm、横1mm、厚さ100μmの開口部を有するメタルマスクを用いて、実施例1で使用したペースト状銀粒子組成物をドット状に印刷塗布した。このセラミック板を280℃の強制循環式オーブン内で1時間加熱して銀粒子を焼結することにより、電気回路接続用バンプを製造した。
この電気回路の両端部に形成した電気回路接続用バンプは、銀粒子の多孔質焼結物であり、電気回路表面の金メッキと強固に接合していた。電気回路接続用バンプ間の電気抵抗を測定したところ、0.05Ω未満であり、実用上十分な導電性を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の金属製部材用接合剤は、抵抗器やコンデンサ等の各種電子部品及び各種表示素子の電極の形成;電磁波シールド用電気伝導性被膜の形成;コンデンサ、抵抗、ダイオード、メモリ、演算素子(CPU)等のチップ部品の基板への接合;太陽電池の電極の形成;積層セラミックコンデンサ、積層セラミックインダクタ、積層セラミックアクチュエータ等のチップ型セラミック電子部品の外部電極の形成等に有用である。
【0121】
本発明の金属製部材接合体の製造方法は、接合強度と電気伝導性とが優れた金属製部材接合体を製造するのに有用である。
本発明の金属製部材接合体は、金属製部材が金属系基板または金属部分を有する電子部品に有用である。
【符号の説明】
【0122】
A せん断接合強さ測定用試験体
1 銀基板
2 金属製部材用接合剤の加熱焼結物
3 銀チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)平均粒径(メディアン径D50)が0.1μmより大きく50μm以下であり融点が400℃より高く加熱焼結性である金属粒子と(B)液状フラックスとからなるペースト状物であり、70℃以上400℃以下で加熱することにより、金属粒子(A)同士が焼結して金属粒子(A)と同等の融点を有し、かつ、焼結途上で接触していた金属製部材へ接着性を有する多孔質焼結物となることを特徴とする、金属製部材用接合剤。
【請求項2】
金属粒子(A)がアトマイズ法で製造され表面に酸化金属層を有することを特徴とする、請求項1に記載の金属製部材用接合剤。
【請求項3】
金属粒子(A)が銀粒子または銅粒子であり、金属粒子(A)およびその多孔質焼結物の融点が600℃より高く、銀粒子およびその多孔質焼結物の体積抵抗率が1×10-4Ω・cm以下であり、銅粒子およびその多孔質焼結物の体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の金属製部材用接合剤。
【請求項4】
液状フラックス(B)が、(a)ロジンまたはその誘導体と(d)溶剤とからなる液状物、(a)ロジンまたはその誘導体と(b)酸化膜除去活性剤と(d)溶剤とからなる液状物、(a)ロジンまたはその誘導体と(c)チキソトロピック剤と(d)溶剤とからなる液状物、(a)ロジンまたはその誘導体と(b)酸化膜除去活性剤と(c)チキソトロピック剤と(d)溶剤とからなる液状物、(b)酸化膜除去活性剤と(d)溶剤とからなる液状物、または、(b)酸化膜除去活性剤と(c)チキソトロピック剤と(d)溶剤とからなる液状物であることを特徴とする、請求項1、請求項2または請求項3に記載の金属製部材用接合剤。
【請求項5】
多孔質焼結物の断面における空隙率が5〜50面積%であることを特徴とする、請求項1、請求項2または請求項3に記載の金属製部材用接合剤。
【請求項6】
(A)平均粒径(メディアン径D50)が0.1μmより大きく50μm以下であり融点が400℃より高く加熱焼結性である金属粒子と(B)液状フラックスとからなるペースト状物を複数の金属製部材間に介在させ、70℃以上400℃以下で加熱することにより、金属粒子(A)同士が焼結して金属粒子(A)と同等の融点を有する多孔質焼結物となり、複数の金属製部材同士を接合することを特徴とする、金属製部材接合体の製造方法。
【請求項7】
金属粒子(A)がアトマイズ法で製造され表面に酸化金属層を有することを特徴とする、請求項6に記載の金属製部材接合体の製造方法。
【請求項8】
金属粒子(A)が銀粒子または銅粒子であり、金属粒子(A)およびその融点が600℃より高く、銀粒子およびその多孔質焼結物の体積抵抗率が1×10-4Ω・cm以下であり、銅粒子およびその多孔質焼結物の体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下であることを特徴とする、請求項6または請求項7に記載の金属製部材接合体の製造方法。
【請求項9】
液状フラックス(B)が、(a)ロジンまたはその誘導体と(d)溶剤とからなる液状物、(a)ロジンまたはその誘導体と(b)酸化膜除去活性剤と(d)溶剤とからなる液状物、(a)ロジンまたはその誘導体と(c)チキソトロピック剤と(d)溶剤とからなる液状物、(a)ロジンまたはその誘導体と(b)酸化膜除去活性剤と(c)チキソトロピック剤と(d)溶剤とからなる液状物、(b)酸化膜除去活性剤と(d)溶剤とからなる液状物、または、(b)酸化膜除去活性剤と(c)チキソトロピック剤と(d)溶剤とからなる液状物であることを特徴とする、請求項6、請求項7または請求項8に記載の金属製部材接合体の製造方法。
【請求項10】
多孔質焼結物の断面における空隙率が5〜50面積%であることを特徴とする、請求項6、請求項7または請求項8に記載の金属製部材接合体の製造方法。
【請求項11】
請求項6に記載の製造方法によって得られた、複数の金属製部材が、断面における空隙率が5〜50面積%であり、融点が400℃より高く、体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下である、加熱焼結性金属粒子(A)の多孔質焼結物により接合されていることを特徴とする、金属製部材接合体。
【請求項12】
金属粒子(A)が銀粒子または銅粒子であり、金属粒子(A)およびその融点が600℃より高く、銀粒子およびその多孔質焼結物の体積抵抗率が1×10-4Ω・cm以下であり、銅粒子およびその多孔質焼結物の体積抵抗率が1×10-2Ω・cm以下であり、金属製部材接合体の250℃におけるせん断接着強さが5MPa以上であることを特徴とする、請求項11に記載の金属製部材接合体。
【請求項13】
金属製部材が金属系基板または金属部分を有する電子部品であることを特徴とする、請求項11または請求項12に記載の金属製部材接合体。
【請求項14】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の金属製部材用接合剤を半導体素子上の電気回路接続用パッド部または基板上の電気回路接続用電極部にドット状に塗布し、70℃以上400℃以下で加熱することにより、該金属粒子同士を焼結して、半導体素子上または基板上に金属製バンプを形成することを特徴とする、電気回路接続用バンプの製造方法。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公開番号】特開2010−131669(P2010−131669A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178187(P2009−178187)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000111199)ニホンハンダ株式会社 (23)
【Fターム(参考)】