説明

金属酸化物材料とその製造方法及びその利用

【課題】 金属酸化物結晶形成の際の結晶子径制御と焼成時の結晶成長に伴うメソ構造崩壊抑制により、比表面積の大きいメソ多孔質金属酸化物結晶材料を提供し、金属酸化物ガス検出素子、光触媒等の高感度化、高効率化を実現する。
【解決手段】 メソ多孔質テンプレートの空孔に金属酸化物前駆体を充填し、金属酸化物前駆体充填メソ多孔質シリカを加水分解水溶液に添加し、空孔内部において金属酸化物前駆体の加水分解反応を進行させ、細孔内に多数の金属酸化物結晶を生じさせる。次いで、300℃以上で加熱焼成することにより結晶子径を1〜2nmに抑えつつ結晶成長させ、しかる後、テンプレート部分をNaOHまたはHF水溶液により溶出せしめることによりメソ多孔質を有し、結晶子径が1〜2nmの金属酸化物材料を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物粒子又はメソ多孔質金属酸化物粒子と、その製造方法及び金属酸化物粒子の利用に関する。本発明の金属酸化物粒子又はメソ多孔質金属酸化物粒子は、ガスセンサー、光触媒をはじめとする各種触媒等に使用することができる。
【背景技術】
【0002】
金属酸化物結晶は触媒などに利用され、その中でも金属酸化物半導体はガス検出器のガス検知素子や光触媒として利用されている。いずれにおいても結晶表面での反応が重要であり、微粒子化されたものの方が金属酸化物全体に対する表面の占める割合が大きく、ガス検知素子の高感度化、触媒、光触媒の高活性化が期待される。さらに、金属酸化物表面を有効に活用するため、金属酸化物を単なる凝集体ではなく多孔質化し、比表面積を増大させることがガス検知素子の低温動作化、高感度化、触媒、光触媒の高活性化に有効である。
【0003】
金属酸化物の表面積を大きくする方法の一つとして、構成する金属酸化物結晶の粒子径を小さくする方法が考えられる。粒子径を小さくするためには、粒子を構成する結晶の結晶子径を小さくすることが望ましい。金属酸化物粒子は加水分解縮合させる際の前駆体の濃度と反応温度を変えることにより、生成する粒子の結晶子径を制御することが可能である。しかし、焼成時に結晶成長が生じ結晶子径が増大するという問題がある。また、塩基や酸を反応系中に添加して反応時のpHを制御することによっても、生成する結晶の結晶子径を制御することは可能であるが、やはり、後の焼成において結晶子径が増大してしまうという問題がある。焼成による金属酸化物の結晶化の際に金属イオンやホウ酸、リン酸を添加することにより、結晶成長を抑制する方法は知られている。この場合、結晶子径の減少に伴いセンサー感度が増加することが知られている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。しかし、金属や塩を添加する方法では金属や塩が不純物として残存してしまい、高温での焼成後、酸化物結晶の結晶子径を1nm以上、2nm以下に制御することは困難である。そこで、加水分解による金属酸化物形成反応により生じる物質以外の不純物を添加せずに結晶成長を抑制すべく、金属酸化物前駆体に塩化アンモニウムを添加することにより結晶成長を抑制する方法が知られている(特許文献1参照)。しかし、塩化アンモニウムの添加によっても、生成する金属酸化物結晶の結晶子径を1nm以上、2nm以下に制御することは困難である。
【0004】
また、どのように結晶子径を小さくしても、得られる金属酸化物結晶は結晶が多数凝集した粒子であり、得られる粒子の比表面積、結晶子径から期待される比表面積よりも小さい値である。そこで、金属酸化物の表面積を大きくするもう一つの方法として、材料を多孔質化する方法が考えられる。多孔質の細孔を小さく規則的にすれば、より表面積の大きい材料を得ることができる。例えば、規則的なメソ細孔構造を有するメソポーラスシリカは非常に大きい比表面積を有していることが知られている。メソポーラス材料は界面活性剤とシリカ前駆体の静電気的力、水素結合、共有結合及びファンデルワールス相互作用等により、規則的なメソ細孔を形成する性質を利用して作製されている。同様な方法がシリカ以外の結晶構造を有する金属酸化物へ応用されている。しかし、結晶構造を有する金属酸化物は、加熱焼成時の結晶成長により細孔構造が壊れてしまうことにより、形成が困難である(非特許文献3参照)。そこで、メソ細孔内に高温で焼成しても形状の変化しない充填材を充填して、金属酸化物の結晶成長を抑制する方法が知られている(特許文献2参照)。しかし、この場合は金属酸化物結晶を細孔径の大きさ以下に抑制できるが、金属酸化物結晶は細孔径の大きさまで成長し、結晶子径を1〜2nmの範囲に制御することは困難である。また、細孔径が1〜2nmのテンプレートを用いた場合、生成する結晶の結晶子径は1〜2nmに抑えられることも考えられるが、テンプレート除去後、焼成による結晶成長が生じ、結局、金属酸化物の結晶子径を1〜2nmの範囲に制御することは困難である。また、細孔径の大きさまで結晶子径を成長させた金属酸化物結晶は、ナノ細孔構造が充分な物理的強度を有していないため、後の加工、成型過程において細孔構造の崩壊が生じ、比表面積が減少してしまうという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開平8−178882号公報
【特許文献2】特開2003−321211号公報
【非特許文献1】Journal of Material Science Letters,8,1092,(1989)
【非特許文献2】Chemistry Letters,441,(1990)
【非特許文献3】Langmuir,14,2579,(1998)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、金属酸化物結晶形成の際、結晶子径を制御し、焼成時の結晶成長を抑制すること、及び、結晶成長抑制により結晶成長に伴うメソ構造崩壊を防ぎ、比表面積の大きいメソ多孔質金属酸化物結晶材料を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は金属酸化物粒子の形成方法を鋭意検討した結果得られたものである。本発明の特徴は平均結晶子径が1nm以上、2nm以下であり、700℃で3時間加熱後の結晶子径変化率が10%以下である金属酸化物結晶により、メソ多孔質金属酸化物粒子又は金属酸化物粒子を構成することにある。また、前記の金属酸化物結晶から構成されるメソ多孔質金属酸化物粒子によりガス検知素子、光触媒等を構成することにある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属酸化物結晶粒子およびメソ多孔質金属酸化物結晶材料は、従来材に比べて結晶子径が小さく、比表面積が大きい。よって、ガス検知素子として用いた場合には、従来品よりも低温動作化、高感度化し、触媒、光触媒として用いた場合には高活性化することができる。また、本発明の金属酸化物結晶及びメソ多孔質金属酸化物結晶材料は、高温での結晶成長が抑制されているため、ガス検知素子、触媒、光触媒のいずれの場合においても熱安定性が向上する。また、本発明のメソ多孔質金属酸化物粒子は、従来材よりも結晶子径の小さい結晶から構成されるため、結晶子径が2nmを超える金属酸化物結晶から構成されるメソ多孔質材料に比べてメソ細孔の物理的強度が増す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、より具体的には、水を含んだ高濃度の金属酸化物前駆体溶液をメソ多孔質テンプレートの空孔に充填し、ナノ空間内において高濃度の塩基溶液を用いて加水分解縮合させて、細孔内に多数の金属酸化物微結晶を生じさせ、金属酸化物結晶を得ることにある。必要に応じて加熱、焼成し、最終的に結晶子径をナノ空間内において1nm以上、2nm以下に抑える。この後、テンプレート部分をNaOHまたはHF水溶液により溶出せしめることによりメソ多孔質を有し、結晶子径が1nm以上、2nm以下の金属酸化物材料を形成することができる。得られた金属酸化物結晶は平均結晶子径が1nm以上、2nm以下の結晶子径を有し、700℃で3時間加熱後の結晶子径変化率が10%以下である。結晶子径を1nm以上、2nm以下に制御し、700℃で3時間加熱後の結晶子径変化率が10%以下にすることができるのは、高濃度の金属酸化物前駆体溶液をナノ空間内において、高濃度の加水分解溶液により急激に加水分解縮合反応させたことによる。高濃度の金属酸化物前駆体溶液と高濃度の加水分解溶液の急激な反応により1nm以上、2nm以下の結晶子径の金属酸化物結晶が生成すること、及び、反応により形成されるハロゲン化物イオンが結晶化を抑制するために可能になったものと考えられる。このような焼成による結晶子径の増大抑制は、本発明による条件での反応により初めて可能となったものである。焼成による結晶成長が抑制されているため、焼成時におけるメソ構造崩壊を防ぐことが可能となり、より比表面積の大きいメソ多孔質金属酸化物結晶を得ることができる。また、ナノ細孔構造を形成する結晶子径が従来よりも小さく、多数の金属酸化物結晶の集合体によりナノ細孔構造を形成しているため、ナノ細孔構造の物理的強度を高め、加工、成型過程において比表面積の減少を抑えることができる。
【0010】
結晶子径はメソ多孔質テンプレートの細孔径、加水分解水溶液の濃度により制御可能である。しかし、結晶子径が2nmを超えるとガス検知素子、光触媒などの高効率化の効果が十分実現できず、結晶子径が1nm未満であると電気抵抗値が大きすぎ、ガス検出時の抵抗値変化の測定が困難となる。
【0011】
結晶子径とは、金属酸化物メソ細孔材料の粉末X線回折測定より得られた金属酸化物の結晶面に由来するピークの回折角、回折ピークの半価幅よりScherrerの式により算出した値の平均値である。
【0012】
メソ多孔質粒子は、細孔分布曲線のピークが1nm〜50nmの範囲にある平均細孔径を有する多孔質粒子であり、細孔分布曲線は、Dollimore-Heal法、BJH法(Barrett, Joyner and Halenda)等の計算法により求めることができる。
【0013】
ここで、結晶子径の変化は下記の式(1)により求めることができる。
【0014】
((焼成後の結晶子径―焼成前の結晶子径)/焼成前の結晶子径)×100 …(1)
本発明における金属酸化物前駆体溶液は、金属酸化物前駆体と水、金属酸化物前駆体と水を溶解させる溶媒からなる溶液である。
【0015】
金属酸化物前駆体は、金属ハロゲン化物であり、水酸基と反応して金属−酸素結合を生じる物質であれば特に限定されない。ハロゲン化物としてはフッ化物、塩化物、臭化物等を用いることができる。形成する金属酸化物結晶は加水分解縮合により形成する金属酸化物であれば良く、例えば、Ba、Sr、Ca、La、Ti、Ta、Zr、Cu、Fe、W、Co、Mg、Zn、Ni、Nb、Pb、Li、K、Sn,Al,Sm等の金属を1種以上含む酸化物を用いることができる。
【0016】
本発明において、金属酸化物前駆体溶液に用いることのできる溶媒は、金属酸化物前駆体と水を溶解させる溶媒であれば良く、水やメタノール、エタノール等のアルコールを用いることができる。金属酸化物前駆体溶液中の水の濃度は金属酸化物前駆体を加水分解縮合させるのに十分な量以上であれば良いが、より望ましくは金属酸化物前駆体のモル数の5〜20倍モル数が良い。金属酸化物前駆体溶液の濃度はメソ多孔質テンプレートの細孔内部に含侵する程度の粘度を有する濃度で、より高濃度が望ましい。
【0017】
本発明において、加水分解溶液は金属酸化物前駆体の加水分解を促進させる塩基を含む溶液であれば特に限定されず、例えば、テトラヒドロフラン、メタノール、エタノール等に水を溶解した溶液を用いることができる。塩基としては、例えば、アンモニア、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどを用いることができる。また、DBU(ジアザビシクロウンデセン−1)、DBN(ジアザビシクロノネン)などのビシクロ環系アミンを用いることもできる。アンモニア、ホスフィン、アルカリ金属アルコキシド、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、ホスフィン等を用いることもできる。塩基の濃度は塩基の反応性にもよるが、例えば、アンモニアの場合には5重量%以上であることが望ましい。アンモニア濃度が5重量%以下であると、生成する粒子の平均結晶子径が2nmを超えるようになり、ガス検知素子、光触媒等の高感度化、高効率化の効果が充分に実現できない。
【0018】
本発明において、メソ多孔質金属酸化物形成の際に用いることのできるメソ細孔テンプレート材料は、金属酸化物結晶化の際の加熱においても結晶が成長せずアモルファス構造を有し、NaOHまたはHFにより溶解し、BJH法による細孔分布曲線の極大値が1nm〜50nmである細孔を有する材料が良い。好ましくは比表面積が100〜1200m/gのシリカ材料であって、より好ましくはX線回折においてメソ細孔の規則構造が観測可能なシリカ材料が良い。細孔分布曲線の極大値が500nm以上であると、ナノ空間での加水分解縮合の効果が十分に現れず、生成する粒子の平均結晶子径が2nmを超えるようになり、ガス検知素子、光触媒等の高感度化、高効率化の効果が充分に実現できない。加水分解縮合後、焼成により結晶を成長させ、メソ多孔質テンプレートをNaOHまたはHF等を用いて金属酸化物結晶部分は溶解せずに、テンプレート部分だけを溶解することにより、金属酸化物結晶の凝集を抑制し、非常に高い比表面積を有するメソ多孔質金属酸化物材料を得ることがでる。
【0019】
本発明における金属酸化物結晶及びメソ多孔質金属酸化物材料は、半導体ガス検知素子として応用することができる。ここで、ガス検知素子とは、金属酸化物材料膜から構成されるガス検知部を有し、その電気抵抗値が検知ガスの存在や濃度により変化し得るものを言う。例えば、セラミック基板等の絶縁基板の上に本発明のメソ多孔質金属酸化物材料膜を形成し、その膜の中又は下部に対向電極や必要に応じてヒーター等を埋設することによって構成される。または、例えば、セラミック基板等の絶縁基板の上に対向電極を形成し、本発明のメソ多孔質金属酸化物材料膜を形成し、その膜の中又は下部に必要に応じてヒーター等を埋設することによって構成される。
【0020】
本発明における半導体ガス検知素子には、例えば、TiO2、Fe2O3、Cu2O、CuO、Cr2O3、Co2O3、NiO、In2O3、WO3、ZnO、PbO、V2O5、KTaO3、Bi2O3、SnO2、ZrO2、Nb2O3等の金属酸化物を用いることができる。また、SrTiO3、BaTiO3、CaTiO3、Fe2TiO3等の複合金属酸化物を用いることができる。
【0021】
本発明において、金属酸化物材料膜から構成されるガス検知素子のガス検出部は、メソ多孔質金属酸化物粒子を溶剤に分散させた後、塗布法により膜を形成し、乾燥、焼成することにより形成することができる。塗布方法はバーコート、ディップコート、ロールコート、スピンコートなど、ゾルの性質により各種の方法が適用可能であり、基板は特に限定されないが、焼成又はガス検出温度で耐熱性を有する必要がある。ここで、乾燥は50〜200℃で行われ、その後の焼成は300〜500℃で30分〜2時間程度行われることが望ましいが、焼成を行わなくともガス検知素子を得ることは可能である。より高い温度で焼成を行うと、焼成時における結晶子径の成長をより抑制できる。
【0022】
金属酸化物膜の強度を増大させたい場合には、メソ多孔質テンプレートの空孔に金属酸化物前駆体を充填して塗布法により金属酸化物前駆体充填粒子膜を形成した後、この膜を加水分解水溶液に浸し、空孔内部において金属酸化物前駆体の加水分解反応を進行させ、細孔内に多数の金属酸化物結晶を生じさせることが望ましい。この場合においても、塗布方法は前述と同様に各種の方法が適用可能であり、基板は特に限定されない。また、乾燥温度、その後の焼成温度と焼成時間も前述と同様であることが望ましく、焼成を行わなくともガス検知素子を得ることは可能である。より高い温度で焼成を行うと、焼成時における結晶子径の成長をより抑制できる。さらに、当該膜をNaOHまたはHF水溶液により溶出せしめることによりメソ多孔質を有し、結晶子径が2nm以下からなる金属酸化物膜を形成することもできる。
【0023】
本発明において、金属酸化物材料膜から構成されるガス検知素子のガス検知部は、金属酸化物結晶またはメソ多孔質金属酸化物材料を圧粉体にすることによっても得ることができる。ここで、圧粉体とは耐圧容器内に金属酸化物材料を充填し、上下より圧力を加えることにより成型したペレット状のものである。半導体ガス検知素子は、例えば、圧粉体の上部に対向電極を形成し、内部あるいは下部に必要に応じてヒーター等を埋設することによって構成される。
【実施例1】
【0024】
(メソポーラスシリカの形成)
30gの水と120gの塩酸(2M)を入れた反応容器に4.0gのPluronic P123(BASF社製)を溶解し溶液を35℃にした。8.5gのテトラエトキシシランを加え、35℃で20時間撹拌した。ついで、液温80℃で10時間撹拌した。反応溶液を室温に戻し、ろ過により白色粒子を得た。得られた白色粒子を3回水洗した後、100℃において乾燥し、500℃において6時間焼成しメソポーラスシリカを得た。BJH法による細孔分布曲線の極大値は6nm、BET法による比表面積は900m/gであり、X線回折においてメソ細孔の規則構造が観測された。
(酸化スズ充填シリカの形成)
形成したメソポーラスシリカ 500mgに、SnCl4 5.2gに水 3.5gの割合で調整した溶液をメソポーラスシリカ空孔内に完全に浸透するまで滴下し、メソポーラスシリカ細孔内に酸化スズ前駆体を充填した。酸化スズ前駆体充填メソポーラスシリカ粒子を20%アンモニア水10mLに加えた。10分撹拌した後、反応溶液を静置して上澄みをデカンテーションした。水10mLを加え上澄みをデカンテーションする操作を3回行った。100℃にて粒子を乾燥した後、焼成炉において500℃で6時間焼成した。なお、本実施例及び以降の各実施例において、酸化スズにはSnOを用いた。
(メソ多孔質酸化スズの形成)
焼成により得られた酸化スズ充填メソポーラスシリカ粒子にNaOH水溶液(2N)を加え2時間撹拌した後、上澄みをデカンテーションした。水10mLを加え上澄みをデカンテーションする操作を3回行った。100℃にて粒子を乾燥した。得られたメソ多孔質酸化スズの比表面積を測定したところ、Nガスの吸着によりBET法から求めた比表面積は220m/gであった。X線による[110]面及び[101]面の回折ピークよりScherrerの式を用いて算出した結晶子径は1.5nmであった。得られたメソ多孔質酸化スズ粒子を700℃で3時間加熱した後、X線による[110]面及び[101]面の回折ピークよりScherrerの式を用いて算出した結晶子径は1.5nmであった。結晶子径に大きな変化はなかった。
【0025】
得られたメソ多孔質酸化スズ粒子を水に分散し、遠心分離機において20000rpmで1時間回転させ、上澄みをろ過した後、乾燥させ、比表面積を測定したところ218m/gであった。
〔比較例1〕
(メソポーラスシリカの形成)
実施例1と同様にしてメソポーラスシリカを形成した。
(酸化スズ充填シリカの形成)
実施例1と同様の方法により酸化スズ前駆体を充填した。酸化スズ前駆体充填メソポーラスシリカ粒子を室温においてアンモニアガス雰囲気下で24時間放置した後、焼成炉において500℃で6時間焼成した。
(メソ多孔質酸化スズの形成)
実施例1と同様の方法によりシリカ部分を溶出させメソ多孔質酸化スズを得た。得られたメソ多孔質酸化スズの比表面積を測定したところ161m/gであり、X線回折により得られた酸化スズの回折ピークよりScherrerの式を用いて算出した結晶子径は5.2nmであった。実施例1に比べ比表面積は小さく、結晶子径は大きな値であった。
【0026】
得られたメソ多孔質酸化スズ粒子を700℃で3時間加熱した後、X線による[110]面及び[101]面の回折ピークよりScherrerの式を用いて算出した結晶子径は9.2nmであり、結晶子径の変化率は77%であった。
【0027】
得られたメソ多孔質酸化スズ粒子を水に分散し、遠心分離機において20000rpmで1時間回転させ、上澄みをろ過した後、乾燥させ、比表面積を測定したところ110m/gであり、実施例1に比べナノ細孔構造の構造安定性が低かった。
〔比較例2〕
(ポーラスシリカの形成)
Mw=2×10のポリエチレングリコールを溶解したHCl 10mLにテトラエトキシシラン5gを加え撹拌した後、溶液を氷浴で冷却しながら0.1Mのトリスヒドロキシメチルアミン10mLを加えた。この溶液をシャーレに移し、30℃、湿潤雰囲気下で24時間放置した後、室温で乾燥、500℃で5時間焼成してポーラスシリカを得た。得られたポーラスシリカのBJH法による細孔分布曲線の極大値は500nmであった。
(酸化スズ充填シリカの形成)
実施例1と同様の方法によりポーラスシリカ内に酸化スズを充填した。
(多孔質酸化スズの形成)
焼成により得られた酸化スズ充填ポーラスシリカ粒子にNaOH水溶液(2N)を加え2時間撹拌した後、上澄みをデカンテーションした。水10mLを加え上澄みをデカンテーションする操作を3回行った。100℃にて粒子を乾燥した。得られたメソ多孔質酸化スズの比表面積を測定したところ、Nガスの吸着によりBET法から求めた比表面積は65m/gであった。X線による[110]面及び[101]面の回折ピークよりScherrerの式を用いて算出した結晶子径は11nmであった。実施例1に比べて比表面積は小さく、結晶子径は大きな値であった。
【0028】
得られた多孔質酸化スズ粒子を700℃で3時間加熱した後、X線による[110]面及び[101]面の回折ピークよりScherrerの式を用いて算出した結晶子径は11nmであり、結晶子径に変化はなかった。
【0029】
得られた多孔質酸化スズ粒子を水に分散し、遠心分離機において20000rpmで1時間回転させ、上澄みをろ過した後、乾燥させ、比表面積を測定したところ63m/gであり、メソ細孔が形成されていないため比表面積に大きな変化はなかった。
〔比較例3〕
(酸化スズ粒子の形成)
SnCl4 5.2gに水 3.5gの割合で調整した溶液5mLを20%アンモニア水50mLに滴下した。10分撹拌した後、反応溶液を静置して上澄みをデカンテーションした。水50mLを加え上澄みをデカンテーションする操作を3回行った。100℃にて粒子を乾燥した後、焼成炉において500℃で6時間焼成した。得られた酸化スズの比表面積を測定したところ、Nガスの吸着によりBET法から求めた比表面積は25m/gであった。X線による[110]面及び[101]面の回折ピークよりScherrerの式を用いて算出した結晶子径は20nmであった。実施例1に比べ比表面積は小さく、結晶子径は大きな値であった。
【0030】
得られた酸化スズ粒子を700℃で3時間加熱した後、X線による[110]面及び[101]面の回折ピークよりScherrerの式を用いて算出した結晶子径は20nmであり、結晶子径に変化はなかった。
【0031】
得られた酸化スズ粒子を水に分散し、遠心分離機において20000rpmで1時間回転させ、上澄みをろ過した後、乾燥させ、比表面積を測定したところ25m/gであった。メソ細孔が形成されていないため比表面積に大きな変化はなかった。
〔比較例4〕
(酸化スズ粒子の形成)
SnCl4 3gを水 200mLに溶解した溶液に20%アンモニア水10mLを加えた。10分撹拌した後、反応溶液を静置して上澄みをデカンテーションした。水10mLを加え上澄みをデカンテーションする操作を3回行った。100℃にて粒子を乾燥した後、焼成炉において500℃で6時間焼成した。得られた酸化スズの比表面積を測定したところのNガスの吸着によりBET法から求めた比表面積は38m/gであった。X線による[110]面及び[101]面の回折ピークよりScherrerの式を用いて算出した結晶子径は10nmであった。実施例1に比べ比表面積は小さく、結晶子径は大きな値であった。
【0032】
得られたメソ多孔質酸化スズ粒子を500℃で5時間加熱した後、X線による[110]面及び[101]面の回折ピークよりScherrerの式を用いて算出した結晶子径は10nmであり、結晶径に大きな変化はなかった。
【実施例2】
【0033】
(メソポーラスシリカの形成)
実施例1と同様にしてメソポーラスシリカを形成した。
(酸化タングステン充填シリカの形成)
実施例1と同様にして形成したメソポーラスシリカ 500mgに、塩化タングステン 7.2gにエタノール 3.0g、水0.5gの割合で調整した溶液をメソポーラスシリカ空孔内に完全に浸透するまで滴下し、メソポーラスシリカ細孔内に酸化タングステン前駆体を充填した。そして、実施例1と同様の方法によって加水分解、焼成した。
(メソ多孔質酸化タングステンの形成)
実施例1と同様の方法によりシリカ部分を溶出させ、メソ多孔質酸化タングステンを得た。得られたメソ多孔質酸化タングステンの比表面積を測定したところ180m/gであった。X線回折により得られた酸化タングステンの回折ピークよりScherrerの式を用いて算出した結晶子径は1.8nmであった。
【0034】
得られたメソ多孔質酸化タングステン粒子を700℃で3時間加熱した後、X線による回折ピークよりScherrerの式を用いて算出した結晶子径は1.9nmであった。結晶子径に大きな変化はなかった。
【0035】
得られたメソ多孔質酸化タングステン粒子を水に分散し、遠心分離機において20000rpmで1時間回転させ、上澄みをろ過した後、乾燥させ、比表面積を測定したところ175m/gであった。
〔比較例5〕
(酸化タングステン粒子の形成)
塩化タングステン 3gを水 200mLに溶解した溶液に20%アンモニア水10mLを加えた。10分撹拌した後、反応溶液を静置して上澄みをデカンテーションした。水10mLを加え上澄みをデカンテーションする操作を3回行った。100℃にて粒子を乾燥した後、焼成炉において500℃で6時間焼成した。得られたメソ多孔質酸化タングステンの比表面積を測定したところ20m/gであった。X線回折により得られた酸化スズの回折ピークよりScherrerの式を用いて算出した結晶子径は18nmであった。実施例2に比べ比表面積は小さく、結晶子径は大きな値であった。
【0036】
得られたメソ多孔質酸化タングステン粒子を700℃で3時間加熱した後、X線による回折ピークよりScherrerの式を用いて算出した結晶子径は20nmであり、結晶子径の変化率は11%であった。
【0037】
実施例1,2及び比較例1〜5について、比較したものを表1に示す。
【0038】
【表1】

【実施例3】
【0039】
実施例1で形成したメソポーラスシリカ 500mg、SnCl4 5.2gに水 3.5gの割合で調整した溶液をメソポーラスシリカ空孔内に完全に浸透するまで滴下し、メソポーラスシリカ細孔内に酸化スズ前駆体を充填して酸化スズ前駆体充填シリカペーストを作製した。酸化スズ前駆体充填シリカペーストを金電極パターンの形成されたアルミナ基板の上に塗布することにより膜を形成した。基板を20%アンモニア水に30分浸した後、水にて洗浄し、100℃にて粒子を乾燥した後、焼成炉において500℃で6時間焼成した。得られた膜をNaOH水溶液(2N)を加え4時間撹拌した後、上澄みをデカンテーションした。水にて洗浄し100℃にて乾燥し、図1に示す構造のガス検知素子を得た。
〔比較例6〕
実施例1で形成したメソポーラスシリカに実施例1と同様の方法により酸化スズ前駆体を充填して酸化スズ前駆体充填シリカペーストを作製した。酸化スズ前駆体充填シリカペーストを金電極パターンの形成されたアルミナ基板の上に塗布することにより膜を形成した。基板をアンモニアガス雰囲気下において48時間静置した後、水にて洗浄し、100℃にて粒子を乾燥した後、焼成炉において500℃で6時間焼成した。得られた膜をNaOH水溶液(2N)を加え4時間撹拌した後、水にて洗浄し100℃にて乾燥し、図1に示す構造のガス検知素子を得た。
【0040】
図1のガス検知素子はアルミナ基板2の一方の側にメソ多孔質酸化スズ粒子により形成した膜1と金電極4を有し、他方の側にヒーター基板3を有する。ガス検知素子の窒素79%、酸素21%雰囲気下及び窒素79%、酸素21%、水素500ppm雰囲気下での抵抗値を測定した。図2に温度と感度の関係を示す。実施例3で形成したメソ多孔質粒子を用いたガス検知素子の感度は、比較例6で形成したメソ多孔質粒子を用いて形成したガス検知素子の感度に比べ高い。また、比較例6で形成したガス検知素子において抵抗値変化の見られなかった250℃以下の温度においても抵抗値変化を示し、ガス検出感度を示した。なお、ガス感度とは、窒素79%、酸素21%雰囲気下での抵抗値/窒素79%、酸素21%、水素500ppm雰囲気下での抵抗値で求めた感度をいう。
【実施例4】
【0041】
実施例1で形成したメソポーラスシリカ 500mgに、塩化タングステン 7.2gにエタノール 3.2g、水0.5gの割合で調整した溶液を滴下して実施例3と同様の方法によりガス検知素子を得た。
〔比較例7〕
実施例1で形成したメソポーラスシリカ 500mgに、塩化タングステン 7.2gにエタノール 3.2g、水0.5gの割合で調整した溶液を滴下して比較例7と同様の方法によりガス検知素子を得た。
【0042】
実施例4及び比較例7で形成したガス検知素子について、窒素79%、酸素21%雰囲気下及び窒素79%、酸素21%、水素500ppm雰囲気下での抵抗値を測定した。図3に温度と感度の関係を示す。実施例4で形成したガス検知素子の感度は比較例7で形成したガス検知素子の感度に比べ高い値であった。実施例4で形成したガス検知素子は比較例7で形成したガス検知素子が全くガス感度を有しない250℃以下の温度においてもガス感度を有していた。なお、ガス感度とは、窒素79%、酸素21%雰囲気下での抵抗値/窒素79%、酸素21%、硫化水素5ppm雰囲気下での抵抗値で求めた感度である。
【実施例5】
【0043】
実施例1、比較例1で形成した金属酸化物結晶粒子300mgをそれぞれダイス形成器内に充填し、上下より400kgf/cmでの金型による成形を行い、直径15mm、厚さ3mmのペレット状の圧粉体を得た。形成した金属酸化物結晶圧粉体上に金電極を蒸着により形成した。金属酸化物結晶圧粉体下部にアルミナ基板、セラミックスヒーターを取り付け、ガス検出素子をそれぞれ形成した。形成したガス検知素子を図4に示す。図4のガス検知素子は、金属酸化物結晶圧粉体5の上に金電極4を有し、金属酸化物結晶圧粉体5の下部にアルミナ基板2、セラミックスヒーターを内蔵したヒーター基板3を有する。ガス検知素子の窒素79%、酸素21%雰囲気下及び窒素79%、酸素21%、水素0〜1000ppm雰囲気下での抵抗値を測定した。図5に温度と感度の関係を示す。実施例1で形成したメソ多孔質粒子を用いたガス検知素子の感度は、比較例1で形成したメソ多孔質粒子を用いて形成したガス検知素子の感度に比べ高い値であった。実施例1で形成した粒子を用いたガス検知素子は、比較例1で形成した粒子を用いたガス検知素子が全くガス感度を有しない300℃以下の温度においてもガス感度を有していた。なお、ガス感度とは窒素79%、酸素21%雰囲気下での抵抗値/窒素79%、酸素21%、水素500ppm雰囲気下での抵抗値で求めた感度である。
【実施例6】
【0044】
実施例2、比較例5形成した金属酸化物結晶粒子を用いて、実施例5と同様の方法によりガス検知素子をそれぞれ形成した。形成したガス検知素子は図4示す構造である。ガス検知素子の窒素79%、酸素21%雰囲気下及び窒素79%、酸素21%、水素0〜1000ppm雰囲気下での抵抗値を測定した。図6に温度と感度の関係を示す。実施例2で形成したメソ多孔質粒子を用いたガス検知素子の感度は、比較例5で形成したメソ多孔質粒子を用いて形成したガス検知素子の感度に比べ高い値であった。実施例2で形成した粒子を用いたガス検知素子は、比較例5で形成した粒子を用いたガス検知素子が全くガス感度を有しない300℃以下の温度においてもガス感度を有していた。なお、ガス感度とは窒素79%、酸素21%雰囲気下での抵抗値/窒素79%、酸素21%、水素500ppm雰囲気下での抵抗値で求めた感度である。
【実施例7】
【0045】
本実施例は水素供給システムの水素供給装置に、本発明の触媒担体を適用した場合の実施例である。例えばベンゼンとヘキサンは同じ炭素数を有する環状炭化水素であるが、ベンゼンは炭素同士の結合が二重結合である不飽和炭化水素であり、シクロヘキサンは二重結合を持たない飽和炭化水素である。ベンゼンの水素付加反応によりシクロヘキサンが得られ、シクロヘキサンの脱水素反応によりベンゼンが得られる。すなわち、これらの炭化水素の水素付加・脱水素反応を利用することにより、水素の貯蔵および供給が可能となる。
【0046】
このような水素貯蔵・供給を行うには、通常、白金などの貴金属触媒粒子を酸化物からなる触媒担体に担持した触媒を用いる。触媒担体は貴金属触媒を微粒子の状態に保つ必要があり、高表面積であることが好ましい。
【0047】
以下、本発明のメソポーラス酸化物担体を水素供給装置に適用した実施例を説明する。はじめに触媒の調製法について説明する。
(メソポーラスシリカの形成)
30gの水と120gの塩酸(2M)を入れた反応容器に4.0gのPluronic P123(BASF社製)を溶解し溶液を35℃にした。3.5gのテトラエトキシシランを加え、35℃で20時間撹拌した。ついで、液温80℃で10時間撹拌した。反応溶液を室温に戻し、ろ過により白色粒子を得た。得られた白色粒子を3回水洗した後、100℃において乾燥し、500℃において6時間焼成しメソポーラスシリカを得た。BJH法による細孔分布曲線の極大値は6nm、BET法による比表面積は900m/gであり、X線回折においてメソ細孔の規則構造が観測された。
(酸化物充填シリカの形成)
形成したメソポーラスシリカ 500mgにZrOの金属アルコキシド溶液をメソポーラスシリカ空孔内に完全に浸透するまで滴下し、メソポーラスシリカ細孔内にZrO前駆体を充填した。酸化物前駆体充填メソポーラスシリカ粒子を20%アンモニア水10mLに加えた。10分撹拌した後、反応溶液を静置して上澄みをデカンテーションした。水10mLを加え上澄みをデカンテーションする操作を3回行った。100℃にて粒子を乾燥した後、焼成炉において500℃で6時間焼成した。
(メソ多孔質酸化物の形成)
焼成により得られたZrO充填メソポーラスシリカ粒子にNaOH水溶液(2N)を加え2時間撹拌した後、上澄みをデカンテーションした。水10mLを加え上澄みをデカンテーションする操作を3回行った。100℃にて粒子を乾燥し、多孔質ZrOを作製した。
(触媒の調製)
作製した多孔質ZrOに、田中貴金属製5重量%白金コロイドを含浸させたのち、450℃で加熱し10%Pt/多孔質ZrO触媒を調製した。
【0048】
次に水素供給システムについて説明する。水素供給システムに用いる水素供給装置は、水素分離管とマイクロリアクタを用いることができる。図7に水素分離管を用いたシステムの構成図を示し、図8の(a)、(b)に水素分離管を用いた水素供給装置の構成図を示す。図8の水素供給装置は、発生した水素をチューブ型の水素分離管により分離し高純度水素を供給するシステムである。水素分離管を用いた水素供給システムは、水素供給装置41、燃料供給弁42、排気弁43、バルブ制御装置44、燃料供給用の昇圧ポンプ45、排気ポンプ46、燃料タンク47、廃液タンク48、廃液流路49、水素流路50から構成される。なお、排気ポンプは反応ガス排出用と水素分離用の2つを装備しているが、反応ガス排出用は水素供給装置内で内圧が高くなっているので、特別設置しなくても自然排気が可能であるため、無くてもよい。
【0049】
水素分離管を用いた水素供給装置51は、円筒状の反応管52、触媒層56、水素分離管53、断熱材54、燃焼ガス流路55からなる。燃料は燃料流路57より触媒層56に供給される。反応後に発生した水素は排気ポンプ46で吸引し、減圧された水素分離管53内に透過して分離され、水素集合管58から排気ポンプ46に送られる。脱水素化物は廃液流路59から廃液タンク48に貯蔵される。
【0050】
触媒層の加熱は水素供給装置の外周にヒーターを設けて行ってもよいが、通常は図示していないが外部に設けた燃焼器で廃液の一部を空気と混合して燃焼し、得られた高温ガスを反応管52の間隙で形成された燃焼ガス流路55に供給し、反応管52及び触媒層56を加熱する。
【0051】
上記水素供給システムを用いてメチルシクロヘキサンからの水素供給を行った。なお、水素供給システムは図8に示す水素供給装置を20個並列に接続し水素供給装置とした。
【0052】
次に水素供給システムの水素供給装置に水素分離膜を用いたマイクロリアクタを適用した例について説明する。水素供給システムの構成は図7と同様である。
【0053】
マイクロリアクタを用いた水素供給装置60は図9に示すように、触媒プレート61、水素分離膜62を積層し摩擦攪拌接合により接合した。マイクロリアクタ内部はエッチングにより加工したスペースが燃料流路63、水素流路64として機能している。なお、積層する際は水素分離膜62を触媒プレートの触媒層65と金属面66で挟み込むように積層する。燃料は燃料流路63を通り、触媒層65に接触し水素が発生する。発生した水素は水素分離膜62から水素流路64に分離され、外部の排気ポンプや燃料電池または水素エンジンに供給される。
【0054】
触媒層の加熱は水素供給装置の外周にヒーターを設けて行ってもよいが、通常は図示していないが外部に設けた燃焼器で廃液の一部を空気と混合して燃焼し、得られた高温ガスをマイクロリアクタの外表面に供給して行う。通常、図7のマイクロリアクタは4行8列で使用する。各マイクロリアクタ間の間隙に燃焼ガスが供給されるか或いはヒーターが設けられる。4行8列のマイクロリアクタ集合体の外周は断熱材で保護される。
【0055】
次に、マイクロリアクタについて以下説明する。
【0056】
1mm厚の純アルミニウム板(熱伝導率:250W/mK)を高熱伝導基板として用い、フォトリソグラフィーを用いてエッチングにより流路パターンを形成した。一方、触媒として用いる10%Pt/多孔質ZrO触媒に所定量の水を加えスラリーを作製した。このスラリーを流路パターンが形成されたアルミナ基板に塗布、乾燥し触媒プレートを作製した。
【0057】
次いで、作製した触媒プレートとPd−Ag水素分離膜を積層して、摩擦攪拌接合法により接合封止した後、配管を接続して水素供給装置を作製した。上記にて作製した水素分離管、マイクロリアクタを適用した水素供給システムを用いて、メチルシクロヘキサンからの水素供給を行った。結果は水素分離管、マイクロリアクタのいずれの場合も250℃0水素ガス250L/minの流量を得ることができた。触媒担体に多孔質ZrOを用いているので、Ptを微粒子化した状態を維持でき、性能が劣化することなく高速で水素を供給することができる。
【0058】
また、ZrOのほかCeO,WO,NbをZrOと同様に作製成して水素供給装置に適用した場合も同様な結果を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施例によるガス検知素子の断面図である。
【図2】実施例3及び比較例6で形成したガス検知素子の感度を示すグラフである。
【図3】実施例4及び比較例7で形成したガス検知素子の感度を示すグラフである。
【図4】本発明の他の実施例によるガス検知素子の断面図である。
【図5】実施例5で形成したガス検知素子の感度を示すグラフである。
【図6】実施例6で形成したガス検知素子の感度を示すグラフである。
【図7】水素供給装置の外観図である。
【図8】水素供給装置の内部構造模式図である。
【図9】他の実施例による水素供給装置の断面模式図である。
【符号の説明】
【0060】
1…メソ多孔質酸化スズ粒子により形成した膜、2…アルミナ基板、3…ヒーター基板、4…金電極、5…金属酸化物結晶圧粉体、41…水素供給装置、51…水素供給装置、52…反応管、53…水素分離管、56…触媒層、60…水素供給装置、61…触媒プレート、62…水素分離膜、65…触媒層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均結晶子径が1nm以上、2nm以下であり、700℃で3時間加熱後の結晶子径変化率が10%以下である金属酸化物結晶により構成されたことを特徴とするメソ多孔質金属酸化物材料。
【請求項2】
請求項1において、金属酸化物が酸化スズであることを特徴とするメソ多孔質金属酸化物材料。
【請求項3】
請求項1において、金属酸化物が酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化タングステンから選ばれた少なくとも一種からなることを特徴とするメソ多孔質金属酸化物材料。
【請求項4】
平均結晶子径が1nm以上、2nm以下の結晶子径を有し、700℃で3時間加熱後の結晶子径変化率が10%以下である金属酸化物結晶から構成されることを特徴とする金属酸化物材料。
【請求項5】
請求項4において、金属酸化物が酸化スズであることを特徴とする金属酸化物材料。
【請求項6】
請求項4において、金属酸化物が酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化タングステンの少なくとも一種からなることを特徴とする金属酸化物材料。
【請求項7】
メソ多孔質テンプレート粒子の空孔に金属酸化物前駆体溶液を充填して金属酸化物前駆体充填粒子を形成する過程、及び、金属酸化物前駆体充填粒子を加水分解水溶液に添加し、空孔内部の金属酸化物前駆体を加水分解せしめた後、テンプレート部分をNaOHまたはHF水溶液により溶出せしめる過程により、平均結晶子径が1nm以上、2nm以下であり、700℃で3時間加熱後の結晶子径変化率が10%以下である金属酸化物結晶から構成されるメソ多孔質金属酸化物粒子を製造することを特徴とするメソ多孔質金属酸化物材料の製造方法。
【請求項8】
メソ多孔質テンプレート粒子の空孔に金属酸化物前駆体溶液を充填し金属酸化物前駆体充填粒子を形成する過程、及び、金属酸化物前駆体充填粒子を加水分解水溶液に添加し、空孔内部の金属酸化物前駆体を加水分解せしめる過程により、平均結晶子径が1nm以上、2nm以下であり、700℃で3時間加熱後の結晶子径変化率が10%以下である金属酸化物結晶から構成される金属酸化物粒子を製造することを特徴とする金属酸化物材料の製造方法。
【請求項9】
請求項1に記載のメソ多孔質材料により構成されることを特徴とするガス検知素子。
【請求項10】
請求項4に記載の金属酸化物材料から構成されることを特徴とするガス検知素子。
【請求項11】
メソ多孔質テンプレートの空孔に金属酸化物前駆体溶液を充填して金属酸化物前駆体充填粒子を形成し、塗布法により金属酸化物前駆体充填粒子膜を形成した後、金属酸化物前駆体充填粒子膜を加水分解水溶液に浸し、空孔内部において金属酸化物前駆体の加水分解反応を進行させて細孔内に多数の金属酸化物結晶を生じさせ、しかる後、テンプレート部分をNaOHまたはHF水溶液により溶出することにより形成したメソ多孔質金属酸化物粒子或いは金属酸化物粒子の薄膜によりガス検知部を形成することを特徴とするガス検知素子の製造方法。
【請求項12】
メソ多孔質テンプレートの空孔に金属酸化物前駆体溶液を充填して金属酸化物前駆体充填粒子を形成し、塗布法により金属酸化物前駆体充填粒子膜を形成した後、金属酸化物前駆体充填粒子膜を加水分解水溶液に浸し、空孔内部において金属酸化物前駆体の加水分解反応を進行させて細孔内に多数の金属酸化物結晶を生じさせることを特徴とする薄膜の製造方法。
【請求項13】
メソ多孔質テンプレートの空孔に金属酸化物前駆体溶液を充填し、塗布法により金属酸化物前駆体充填粒子膜を形成した後、金属酸化物前駆体充填粒子膜を加水分解水溶液に浸し、空孔内部において金属酸化物前駆体の加水分解反応を進行させて細孔内に多数の金属酸化物結晶を生じさせた薄膜によりガス検知部を形成することを特徴とするガス検知素子の製造方法。
【請求項14】
水素の貯蔵と放出とを化学的に繰り返す有機化合物を媒体として触媒の存在下で水素の生成又は貯蔵を行う水素貯蔵・供給装置において、前記触媒の担体を、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム及び酸化タングステンの少なくとも一種からなり、平均結晶子径が1nm以上、2nm以下であり、700℃で3時間加熱後の結晶子径変化率が10%以下である金属酸化物結晶により構成された粒子により形成することを特徴とする水素貯蔵・供給装置。
【請求項15】
請求項14において、前記水素貯蔵・供給装置は、高熱伝導基板と、該基板の少なくとも一方の面上に形成された前記媒体が流通する複数の流路と、該流路に形成された触媒層と、生成された水素、水素を貯蔵した前記媒体及び水素を放出した前記媒体を各々分離する水素分離手段と、前記水素分離手段により分離された、生成された水素、水素を貯蔵した前記媒体及び水素を放出した前記媒体が各々流通する流通口とを有することを特徴とする水素貯蔵・供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−1826(P2007−1826A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−185386(P2005−185386)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】