説明

鉄筋コンクリート造壁柱

【課題】高品質かつ優れた構造性能を有した鉄筋コンクリート造壁柱を提案する。
【解決手段】長辺方向に沿って二列に配筋された複数の細径柱主筋11,11,…と、長辺方向端部に配筋された太径柱主筋12とを備える鉄筋コンクリート造壁柱1であって、太径柱主筋12が短辺方向で隣り合う細径柱主筋11,11同士の間、かつ、長辺方向で隣り合う細径柱主筋11,11同士の間に配筋されていて、太径柱主筋12同士の鉄筋継手が機械式継手または圧接継手により接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造壁柱に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造により建物を構築する場合において、室内の有効面積を広く確保することを目的として、柱の断面を扁平にした壁柱を採用する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
壁柱100の配筋は、図4に示すように、強軸方向の地震荷重に対して抵抗する主筋101が、柱断面の長辺方向両端部において、多段配筋されることが多い(図面では2段配筋)。
【0004】
このような壁柱100に対して、比較的スパンの長い梁が面外方向に取り付く場合には、壁柱100の面外方向(弱軸方向)の曲げ応力が大きくなるため、主筋101の鉄筋量を増加させることで対応する必要がある。
【0005】
断面扁平の壁柱100は短辺方向に対して配筋可能な主筋101の本数(列数)は限られているため、主筋101の鉄筋量を増加させるためには主筋101の鉄筋径を大きくする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−260565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
断面扁平の壁柱100において、主筋101に太径の鉄筋を採用すると、十分なコンクリート被り厚さや主筋101同士のあき寸法が確保できなくなるおそれがある。特に主筋101の継手部では、機械式継手や重ね継手により、十分なコンクリート被り厚さやあき寸法が確保できなくなる。
【0008】
コンクリート被り厚さや主筋同士のあき寸法が不十分だと、コンクリートの収縮ひずみに対して主筋101の拘束力が大きくなり、部材製作時にひび割れが生じるおそれがある。
また、コンクリート被り厚さが不十分だと、主筋101に沿った割裂ひび割れが部材の表面に生じるおそれがある。
【0009】
本発明は、前記の問題点を解決するものであり、高品質かつ優れた構造性能を有した鉄筋コンクリート造壁柱を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本発明は、長辺方向に沿って二列に配筋された複数の細径柱主筋と、長辺方向端部に配筋された太径柱主筋と、を備える鉄筋コンクリート造壁柱であって、前記太径柱主筋が、短辺方向で隣り合う細径柱主筋同士の間、かつ、長辺方向で隣り合う細径柱主筋同士の間に配筋されていることを特徴としている。
【0011】
かかる鉄筋コンクリート造壁柱によれば、想定される応力に対して十分な鉄筋量を確保するとともに、十分な被り厚さおよび主筋同士のあき寸法を確保することが可能となる。
そのため、高品質かつ優れた構造性を有した鉄筋コンクリート造壁柱を提供することが可能となる。
【0012】
なお、想定される地震時等の面内方向の応力が大きい場合には、前記太径柱主筋を長辺方向に間隔をあけて複数配筋してもよい。
【0013】
前記太径柱主筋同士の鉄筋継手を機械式継手または圧接継手により接合し、前記細径柱主筋同士の鉄筋継手を重ね継手により接合すれば、部材厚を増加させることなく、経済的な鉄筋コンクリート造壁柱を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の鉄筋コンクリート造壁柱は、高品質でかつ優れた構造性能を有している。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る鉄筋コンクリート造壁柱の概要を示す斜視図である。
【図2】図1の鉄筋コンクリート造壁柱の断面図である。
【図3】(a)および(b)は、鉄筋コンクリート造壁柱の他の形態を示す断面図である。
【図4】従来の鉄筋コンクリート造壁柱を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態に係る鉄筋コンクリート造壁柱1(以下、単に「壁柱1」という)について説明する。
壁柱1は、RC構造であって、図1に示すように、面外方向Xに延在する梁2が長辺側の面に接続しているとともに、面内方向Yに延在する梁3,3が短辺側の面に接続している。
【0017】
壁柱1は、図2に示すように、断面長方形状のコンクリート部10と、壁柱1の水平断面の長辺方向(壁幅方向)である面内方向Yに沿って二列に配筋された複数の細径柱主筋11,11,…と、長辺方向の両端部にそれぞれ配筋された太径柱主筋12,12と、複数の細径柱主筋11,11,…の外周囲を覆うように配筋された横補強筋13とを備えている。
【0018】
細径柱主筋11は、壁柱1の面外方向(弱軸方向)Xに取り付く梁2等による常時荷重を負担する。
弱軸方向Xの地震荷重に対しては、他の耐震要素(例えば、連層耐震壁等)に負担させるものとし、細径柱主筋11の鉄筋量は、許容応力度設計により決定する。
【0019】
細径柱主筋11,11,…は、二列配筋(ダブル配筋)されており、壁柱1の表面から所定のコンクリート被り厚さを確保した位置に配筋されている。
柱軸方向Z(壁高さ方向)で連続する細径柱主筋11同士の鉄筋継手は、重ね継手により接合されている。なお、細径柱主筋11の継手方式は重ね継手に限定されるものではない。
【0020】
太径柱主筋12は、強軸方向(面内方向Y)の外力(地震荷重等)を負担する曲げ補強筋である。
太径柱主筋12は、細径柱主筋11よりも太い径の鉄筋により構成されている。
【0021】
太径柱主筋12は、壁柱1の水平断面の短辺方向(壁厚方向)である面外方向Xに隣り合う細径柱主筋11,11同士の間、かつ、壁柱断面長辺方向(面内方向Y)で隣り合う細径柱主筋11,11同士の間に配筋されている。つまり、太径柱主筋12は、4本の細径柱主筋11の間のコアコンクリート部分に配筋されていて、コンクリート部10の短辺方向の中央部に配筋されているとともに、太径柱主筋12の被り厚さ方向(壁柱1の表面と直交する線と太径柱主筋12の軸心との間)に細径柱主筋11が配置されることがないように配筋されている。
【0022】
柱軸方向Zに隣り合う太径柱主筋12同士は、図示は省略するが機械式継手または圧接継手により接合されている。なお、太径柱主筋12の継手方式は限定されるものではない。
【0023】
本実施形態では、壁柱1の両端部のそれぞれに、太径柱主筋12を1本ずつ配筋しているが、想定される地震力の大きさ、壁柱1の断面形状、太径柱主筋12の鉄筋径などの設計条件に応じて、図3の(a)に示すように、太径柱主筋12を長辺方向に間隔をあけて複数本ずつ配筋(多段配筋)してもよい。
【0024】
横補強筋13は、図2に示すように、壁柱1の断面形状に応じて、矩形状に形成された、いわゆるフープ筋であって、主にせん断力を負担する。
横補強筋13は、壁柱1の柱軸方向で、所定の間隔をあけて複数配筋されている。横補強筋13の鉄筋径等は、適宜設定する。
【0025】
なお、壁柱1が高い応力を受ける場合には、図3の(b)に示すように、壁柱1の両端部に、曲げ補強部用横補強筋14を配筋してもよい。
壁柱1には、図2に示すように、必要に応じてせん断補強筋15を配筋してもよい。
【0026】
以上、本実施形態の壁柱1によれば、細径柱主筋11と太径柱主筋12とで、曲げ補強の効果を発揮する方向を分離することで、壁柱1をより薄い扁平断面にすることが可能となり、また、鉄筋量の削減も可能となった。
【0027】
つまり、弱軸方向の応力を負担する主筋として、細径の鉄筋(細径柱主筋11)を使用しているため、主筋量を最小限に抑えることができ、コンクリートの収縮によるひびわれの発生を防止または緩和することができる。
【0028】
太径柱主筋12は、細径柱主筋11と横補強筋13で囲まれたコンクリート部分に配置されているため、十分な被り厚さを確保している。
また、他の鉄筋(細径柱主筋11)との間に十分な隙間を確保しているため、配筋が容易であるとともに、鉄筋継手を設けるのも容易である。
【0029】
また、細径柱主筋11と太径柱主筋12とが列状に並ぶことがないように配筋することで、主筋が十分なコンクリート被り厚さを確保した状態で、壁柱1の面外方向の厚さを小さくすることが可能となる。
【0030】
太径柱主筋12に、太径の鉄筋を利用することで、継手の数を減らすことが可能となり、経済的である。
また、太径柱主筋12に対するコンクリート被り厚さが大きいため、主筋付着条件が向上し、壁柱1に地震荷重が作用した場合であっても、主筋に沿った付着割裂ひびわれの発生の緩和や、コンクリート圧壊および被りコンクリートの剥落を抑制し、高い構造性能を確保することができる。
【0031】
細径柱主筋11の継手を重ね継手、太径柱主筋12の継手を機械式継手または圧接継手としているため、壁柱1の部材厚を大きくする必要がなく、経済的な壁柱1を構築することができる。
【0032】
以上、本発明について、好適な実施形態について説明した。しかし、本発明は、前述の実施形態に限られず、前記の各構成要素については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変更が可能である。
例えば、壁柱の断面寸法や、細径柱主筋および太径柱主筋の鉄筋径は適宜設定すればよい。
【0033】
また、コンクリートとしては、普通コンクリートの他、高強度コンクリートや繊維補強コンクリートを使用することで、壁柱のさらなる小断面化を図ってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 壁柱(鉄筋コンクリート造壁柱)
10 コンクリート
11 細径柱主筋
12 太径柱主筋
X 面外方向(短辺方向)
Y 面内方向(長辺方向)
Z 柱軸方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
長辺方向に沿って二列に配筋された複数の細径柱主筋と、
長辺方向端部に配筋された太径柱主筋と、を備える鉄筋コンクリート造壁柱であって、
前記太径柱主筋が、短辺方向で隣り合う細径柱主筋同士の間、かつ、長辺方向で隣り合う細径柱主筋同士の間に配筋されていることを特徴とする、鉄筋コンクリート造壁柱。
【請求項2】
前記太径柱主筋が、長辺方向に間隔をあけて複数配筋されていることを特徴とする、請求項1に記載の鉄筋コンクリート造壁柱。
【請求項3】
前記太径柱主筋同士の鉄筋継手が、機械式継手または圧接継手により接合されていることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の鉄筋コンクリート造壁柱。
【請求項4】
前記細径柱主筋同士の鉄筋継手が、重ね継手により接合されていることを特徴とする、請求項3に記載の鉄筋コンクリート造壁柱。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−57174(P2013−57174A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194685(P2011−194685)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000206211)大成建設株式会社 (1,602)
【Fターム(参考)】