説明

銀色の干渉色および狭いサイズ分布を有する高光沢多層効果顔料、およびそれを製造するための方法

本発明は、光学活性なコーティングを有する微小板形状の透明な基材をベースとする、銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料に関し、その光学活性なコーティングは、少なくとも、
a)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率層A
b)n<1.8の屈折率を有する低屈折率層B
c)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率層C
ならびにさらに
d)任意の外側保護層D
を含み、そしてその多層真珠光沢顔料が、スパンΔDを0.7〜1.4とする、体積平均サイズ分布関数の累積度数分布からの指数D10、D50、D90を有しており、そのスパンΔDは、式ΔD=(D90−D10)/D50に従って計算される。本発明はさらに、この多層真珠光沢顔料を製造するための方法、さらにはその使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀色の干渉色を有する高光輝多層真珠光沢顔料、それを製造するための方法、ならびに化粧料配合物、プラスチック、フィルム、織物、セラミック材料、ガラス、およびコーティング組成物、たとえば、塗料、印刷インキ、液状インキ、ワニスまたは粉体コーティングにおけるその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
銀色の干渉色を有する真珠光沢顔料は、通常、低屈折率の透明な基材を、薄いTiO層を用いてコーティングすることによって製造される。
【0003】
多層コーティングした微小板形状の基材をベースとする銀色の光輝な顔料は、EP 1 213 330 A1から公知である。この場合、コーティングされる基材に対して、50〜200nmの層の厚みを有する2層の高屈折率のTiO層の間に、10〜300nmの層の厚みを有する低屈折率層が適用されている。その外側の高屈折率層には、場合によっては、保護層を設けて、光、温度、および天候についての安定性を向上させてもよい。その実施例からは、その発明の実施例の光沢が、市販されている真珠光沢顔料の場合に比較して、1.3〜2.9グロスユニット向上することが明らかである。
【0004】
ゴニオクロマチック光輝顔料が、EP 0 753 545 B2に記載されている。ここでは、無色の低屈折率コーティング、および反射性で選択的もしくは非選択的吸収性コーティング、さらには場合によっては外側保護層を含む、少なくとも1層のスタックが、多層コーティングした高屈折率で非金属製の微小板形状の基材に対して適用されている。基材に適用される層スタックの数が多くなる程、低屈折率の無色のコーティングの層の厚みが薄くなっている。そのゴニオクロマチック光輝顔料は、2種以上の強い干渉色の間で、角度依存的な変色を示す。
【0005】
WO 2004/067645 A2においては、高屈折率と低屈折率が交互になっている奇数の、すなわち少なくとも3層を用いて、透明な基材をコーティングしている。その隣接層の間の屈折率の差は、少なくとも0.2である。それらの層の内の少なくとも1層は、他の層とはその光学的厚さが異なっている。したがって、そのようにして得られる多層効果顔料は、その中で、それぞれの層の光学的厚さが干渉のための光の波長の四分の一の奇数倍である層構成を有していない(非「四分の一波長スタック」構成)。
【0006】
WO 2006/088759 A1においては、二酸化チタンを用い、少なくとも150nmの光学層厚みを有する低屈折率層を用い、次いで、ほぼ45〜240nmの光学層厚みを有する二酸化チタンを含む高屈折率層を再び用いて、多層効果顔料がコーティングされている。第一の二酸化チタン層が、基材に銀色の光輝を与えるのに対して、得られた多層効果顔料は銀色の光輝を有していない。低屈折率層の光学層厚みのために、その多層効果顔料は、カラーフロップ性を有している。この場合もまた、WO 2004/067645 A2の場合と同様に、隣接層が少なくとも0.2の屈折率差を有している。この場合も、その意図するところは、その中で、それぞれの層の光学的厚さが干渉のための光の波長の四分の一の奇数倍である層構成を有することではない(非「四分の一波長スタック」構成)。
【0007】
交互に低屈折率と高屈折率の金属酸化物の層を用いてコーティングした透明な支持材料からなる、強い干渉色を有するか、および/または干渉色の強い角度依存性を有する多層干渉顔料が、EP 0 948 572 B1に記載されている。その屈折率の差は、少なくとも0.1である。層の数と厚みは、期待される効果および使用される基材に依存する。たとえば、マイカ基材の上のTiO−SiO−TiO構成を考えると、層の厚みが<100nmの光学的に薄いTiO層およびSiO層を使用した場合には、青色の干渉色を有する顔料が得られるが、その顔料は、純粋なTiO−マイカ顔料よりも強く着色される。層の厚みが>100nmの厚いSiO層を介入させると、干渉色の角度依存性が顕著に強い顔料が得られる。
【0008】
JP 07246366には、高屈折率と低屈折率の交互の層から構成されている光学的干渉性材料が記載されているが、そのそれぞれの層の光学的厚さは、干渉のための光の波長の四分の一の奇数倍である(「四分の一波長スタック」構成)。
【0009】
高屈折率層、低屈折率無色層、非吸収性高屈折率層、および場合によっては外側保護層を含む少なくとも一つの層配列を有する、多層コーティングした、微小板形状の基材をベースとする干渉顔料は、EP 1 025 168に従って製造することができる。基材と第一の層の間、および/または個々の層の間に、さらなる着色または無色の金属酸化物層が存在していてもよい。その干渉顔料には、2層以上の同一または異なった層スタックの組合せが含まれていてもよいが、ただの1層のスタックで基材をコーティングするのが好ましい。カラーフロップ性を向上させる目的で、干渉顔料に4層のスタックまでは含めてもよいが、基材の上のすべての層の厚みが、3μmを超えないようにするべきである。
【0010】
少なくとも3層の、高屈折率と低屈折率の交互の層を用いてコーティングした、ガラスフレークをベースとする多層顔料が、WO 2003/006558 A2に記載されている。この場合のガラスフレークは、<1μmの厚みを有している。強い着色に加えて、その多層顔料は強いカラーフロップ性も示す。
【0011】
WO 2004/055119 A1には、コーティングした微小板形状の基材をベースとする干渉顔料の記載がある。この場合、その基材は、SiOの第一の層で被覆され、次いでそれに対してたとえばTiO、ZrO、SnO、Cr、FeまたはFeからなる高屈折率層が適用されるか、または高屈折率層と低屈折率層が交互に存在する干渉システムが適用される。場合によっては、その顔料が外側保護層をさらに有していてもよい。この方法では、銀白色の干渉顔料または鮮やかな干渉色を有する干渉顔料が得られるが、それらは、たとえば機械的安定性および光安定性のような特性性能を特色としているが、高い光沢は有していない。その干渉顔料の色は、角度依存性を、まったく、または最小限にしか有していない。
【0012】
熱的および機械的に安定な、厚み≦1.0μmの薄いガラス微小板をベースとする効果顔料が、WO 2002/090448 A2から公知である。その効果顔料は、1層または複数の高屈折率層および/または低屈折率層で被覆されていてもよい。そのガラスフレークは、≧800℃の軟化温度を有している。
【0013】
WO 2006/110359 A2によれば、効果顔料の光学的性質は、適切な粒子サイズ分布によって影響を受けることができる。ここに記載されている、分級され、単一の金属酸化物層を用いてコーティングしたガラス微小板は、少なくとも9.5μm、好ましくは9.5μmのD10を有している。その顔料は85μm以下、好ましくは約45μmのD90のサイズ範囲を有していなければならないというのが欠点である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、真珠光沢顔料に典型的な深みのある光輝と透明性を組み合わせて示し、そして従来技術から公知の多層真珠光沢顔料に比較して高い光沢を有する、銀色の干渉色を有する高光輝多層真珠光沢顔料を提供することである。本発明のさらなる目的は、この多層真珠光沢顔料を製造するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明がその上に基礎をおく目的は、光学活性なコーティングを有する、微小板形状の透明な基材をベースとする、銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料を提供することにより達成されたが、その光学活性なコーティングは、少なくとも、
a)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率層A
b)n<1.8の屈折率を有する低屈折率層B
c)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率層C
ならびにさらに
d)任意の外側保護層D
を含み、
その多層真珠光沢顔料は、スパンΔDを0.7〜1.4とする、体積平均サイズ分布関数の累積度数分布からの指数D10、D50、D90を有している。スパンΔDは、式ΔD=(D90−D10)/D50に従って計算される。
【0016】
好適な展開法は、従属請求項2〜10において明示されている。
【0017】
本発明がその上に基礎をおく目的は、さらに、本発明の多層真珠光沢顔料を製造するための方法を提供することによっても達成されたが、それには以下の工程が含まれる:
i)コーティングされる微小板形状の透明な基材をサイズ分級する工程
ii)少なくとも上述の層A〜Cおよびさらには任意の層Dを用いてその微小板形状の透明な基材をコーティングする工程。
【0018】
別な方法として、微小板形状の透明な基材を、少なくとも上述の層A〜Cおよびさらには任意の層Dを用いてまずコーティングし、そのようにして得られた銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料を、次いで、サイズに従って分級してもよい。
【0019】
微小板形状の透明な基材のコーティングは、工程i)においてサイズ分級した後に、工程ii)において実施するのが好ましい。
【0020】
本発明によってさらに提供されるのは、化粧料配合物、プラスチック、フィルム、織物、セラミック材料、ガラス、ならびにコーティング組成物、たとえば、塗料、印刷インキ、液状インキ、ワニス、および粉体コーティングにおける、本発明の多層真珠光沢顔料の使用である。したがって、本発明は、本発明の多層真珠光沢顔料を含む調製物を提供する。本発明はさらに、本発明の多層真珠光沢顔料を用いて、たとえばコーティングまたは印刷により提供される物品も目的としている。したがって、コーティングした物品、たとえば、車体構造物、表面仕上げ要素など、または印刷された物品、たとえば、紙、カード、フィルム、織物などは同様に、本発明の一部である。
【0021】
艶消、淡色または強色のような色の知覚作用は、その色の飽和度(彩度とも呼ばれる)に決定的に依存する。彩度は存在しているグレーの量によって決まる。グレーの程度が高いほど、色の飽和度が低くなる。
【0022】
CIELabカラーシステムのポイントFを考えると、それは、L(明度)、a(赤−緑軸)、およびb(黄−青軸)の3座標によって決められる。色座標のaおよびbは、極座標C(彩度)およびh(色角度、色軌跡)によって表してもよいが、その定義は次式で与えられる。
【数1】

【0023】
したがって、彩度は、座標システムの原点から定義すべきポイントFを指しているベクトルの長さに相当する。Cの値が小さい程、ポイントFがその色座標システムの無彩色なグレー領域に近い。したがって、彩度は、面a,bに垂直なL軸またはグレー軸からの距離である(図1)。
【0024】
銀色の干渉色を有する効果顔料は、彩度値が低いことを特徴としており、別の言い方をすれば、その干渉色が無彩色である。このことは、測色データを使用して示すこともできる。1層(数:1)のTiO層を用いて被覆されたガラスフレークのナイフドローダウンを、Byk−Gardnerブラック/ホワイトチャート(Byko−Chart2853)上に、湿膜厚み76μmで、6重量%の顔料を含むニトロセルロースワニス中(ここで重量%の数字はワニスの全重量を基準にしたものである)で、銀色の干渉色(MIRAGE Glamour Silver、Eckart)、青色の干渉色(MIRAGE Glamour Blue、Eckart)、および赤色の干渉色(MIRAGE Glamour Red、Eckart)を用いてそれぞれの場合において製造してから、室温で乾燥させた。次いでこれらのチャートについて、BYK−MAC(BYK Gardner製)を使用して測色評価を実施した。
【0025】
これら3種の選択された顔料についての測色データを検討すると、銀色の干渉顔料が、反射角から15度外れたところで、C15が6.0という、最も低い彩度値を有していることがわかる。
【0026】
【表1】

【0027】
銀色の干渉は、規約反射率プロットの手段によっても、確かめることができる(図2)。この場合、銀色の干渉色を有する効果顔料は、全可視波長領域にわたって、ほとんど一様に高い反射率を示す。それとは対照的に、着色した干渉顔料は、可視波長領域において極小または極大を示す。たとえばMIRAGE Glamour Redの場合には、顕著な極大値が約430nmおよび630nmに見られるのに対して、顕著な極小値が約510nmに検出される。この規約反射率挙動が、高彩度な、青みがかった赤色の干渉色をもたらしている。それとは対照的に、MIRAGE Glamour Blueは、約430nmに極大値、約600nmに極小値を示していて、青色の干渉色をもたらしている。真珠光沢顔料MIRAGE Glamour Silverは、それらとは対照的に、約400nm〜700nmの間で一様に高い反射率を示し、そのためこの場合には、色彩的印象が生じることなく、代わりに、銀色の干渉色が知覚される。
【0028】
EP 1 213 330 A1には、銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料が開示されている。単層の真珠光沢顔料に比較して、わずかに改良された光沢が得られた。
【0029】
驚くべきことには、0.7〜1.4の範囲のスパンΔDを有する本発明の多層真珠光沢顔料が、極端に強い光沢を示すということを、本発明者らは観察した。
【0030】
多層真珠光沢顔料のサイズ分布は、本発明においては、ΔD=(D90−D10)/D50として定義されるスパンΔDを使用して特性表記される。そのスパンが小さい程、サイズ分布が狭い。
【0031】
レーザー回折法によって得られた、体積平均サイズ分布関数の累積度数分布におけるD10、D50、またはD90値は、多層真珠光沢顔料のそれぞれ10%、50%、および90%が、それぞれで表示される数値と同じかまたはそれより小さい直径を有していることを示している。この場合においては、そのサイズ分布曲線は、Malvern製の機器(機器名:Malvern Mastersizer 2000)を使用し、メーカーの取扱説明書に従って求める。この機器においては、Mieの理論に従って散乱光の信号を評価したが、それには、粒子の部分における屈折および吸収の挙動も含まれている(図3)。
【0032】
本発明の多層真珠光沢顔料は、0.7〜1.4の範囲、好ましくは0.7〜1.3の範囲、より好ましくは0.8〜1.2の範囲、極めて好ましくは0.8〜1.1の範囲のスパンΔDを有している。さらに好ましい実施態様においては、そのスパンΔDは0.85〜1.05の範囲である。
【0033】
多層真珠光沢顔料が、1.4を超えるスパンΔDを有していると、得られた多層真珠光沢顔料は高光輝ではない。0.7未満のスパンΔDの多層真珠光沢顔料は、通常の方法で調製するには極めて手間がかかり、そのためにもはや経済的に製造することができない。
【0034】
コーティングされる微小板形状の透明な基材のスパンΔDは、実質的には、本発明の多層真珠光沢顔料のそれに相当していて、≦1.4、好ましくは≦1.3、より好ましくは≦1.2、極めて好ましくは≦1.1、特に好ましくは≦1.05である。
【0035】
本発明の多層真珠光沢顔料は、あらゆる所望の平均粒子サイズ(D50)を持たせることができる。本発明の多層真珠光沢顔料のD50値は、3〜350μmの範囲に設定するのが好ましい。本発明の多層真珠光沢顔料は、3〜15μmの範囲、または10〜35μmの範囲、または25〜45μmの範囲、または30〜65μmの範囲、または40〜140μmの範囲、または135〜250μmの範囲のD50値を有するのが好ましい。
【0036】
本発明の多層真珠光沢顔料のD10値は、1〜120μmの範囲に入るのが好ましい。本発明の多層真珠光沢顔料は、表2に示したD10、D50、およびD90値の組合せを有しているのが好ましい。この文脈においては、表2のD10、D50、およびD90値は、スパンΔDが0.7〜1.4の範囲、好ましくは0.7〜1.3の範囲、より好ましくは0.8〜1.2の範囲、極めて好ましくは0.8〜1.1の範囲、特に好ましくは0.85〜1.05の範囲となるようにのみ、組み合わされる。スパンΔDが0.7〜1.4の範囲とならないようなD10、D50、およびD90値の組合せは、本発明の実施態様ではない。
【0037】
【表2】

【0038】
この文脈においては、驚くべきことには、D50値を用いて特性表記される多層真珠光沢顔料のサイズはさほど重要ではなく、その代わりに、スパンΔD=(D90−D10)/D50が0.7〜1.4の狭い範囲にあるのが重要であるということが見出された。多層真珠光沢顔料のD50値は、たとえば、15、20、25または30μm、さらには50、80、100、150、200、250、300または350μmであってよい。
【0039】
コーティングされる適切な微小板形状の透明な基材は、非金属の、天然または合成の微小板形状の基材である。基材は、実質的に透明であるのが好ましく、透明であるのがより好ましいが、これは、それらが可視光線に対して少なくとも部分的に透過性であるということを意味している。
【0040】
本発明の一つの好ましい実施態様においては、その微小板形状の透明な基材を、天然マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、SiO微小板、Al微小板、ポリマー微小板、微小板形状のオキシ塩化ビスマス、有機−無機層ハイブリッドを含む微小板形状の基材、およびそれらの混合物からなる群より選択してよい。微小板形状の透明な基材は、天然マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、SiO微小板、Al微小板、およびそれらの混合物からなる群より選択されるのが好ましい。微小板形状の透明な基材は、天然マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、およびそれらの混合物からなる群より選択されるのが特に好ましい。特に好ましいのは、ガラスフレークおよび合成マイカ、ならびにそれらの混合物である。
【0041】
合成の微小板形状の透明な基材とは対照的に、天然マイカは、外来のイオンが組み込まれていることの結果としての汚染が色相を変化させる可能性があり、また、その表面が理想的な平滑ではなく、たとえば段差のような不規則性を有している可能性があるという欠点を有している。しかしながら、驚くべきことには、たとえ天然基材を使用した場合であっても、スパンΔDが0.7〜1.4の範囲にあると、多くの通常のスパンの広い多層真珠光沢顔料に比較して、多くの多層真珠光沢顔料は光輝が増大するということが見出された。
【0042】
合成の基材、たとえば、ガラスフレークまたは合成マイカは、それとは対照的に、滑らかな表面、個々の基材粒子の中での一様な厚み、およびシャープなエッジを有している。その結果として、その表面には入射光および反射光のための散乱中心がほんのわずかしかなく、したがって、コーティングの後では、基材として天然マイカを用いた場合よりも、より高光輝の多層真珠光沢顔料が得られる。使用するガラスフレークは、好ましくは、EP 0 289 240 A1、WO 2004/056716 A1、およびWO 2005/063637 A1に記載された方法によって製造されたものである。使用可能なガラスフレーク基材は、たとえば、EP 1 980 594 B1の教示に従った組成を有していてもよい。
【0043】
コーティングされる微小板形状の透明な基材の平均幾何学的厚みは、50nm〜5000nmの範囲、好ましくは60nm〜3000nmの範囲、より好ましくは70nm〜2000nmの範囲である。一つの実施態様においては、コーティングされる基材としてのガラスフレークにおける平均幾何学的厚みが、750nm〜1500nmの範囲である。このタイプのガラスフレークは、広いレベルで商品として入手可能である。より薄いガラスフレークでは、さらなる利点が得られる。基材が薄い程、本発明の多層真珠光沢顔料の層全体の厚みが薄くなる。したがって、この場合も同様に、その平均幾何学的厚みが100nm〜700nmの範囲であるガラスフレークが好ましく、平均幾何学的厚みは、より好ましくは150nm〜600nmの範囲、極めて好ましくは170nm〜500nmの範囲、特に好ましくは200nm〜400nmの範囲である。また別な実施態様においては、コーティングされる基材としての天然または合成のマイカにおける平均幾何学的厚みは、好ましくは100nm〜700nmの範囲、より好ましくは150nm〜600nmの範囲、極めて好ましくは170nm〜500nmの範囲、特に好ましくは200nm〜400nmの範囲である。
【0044】
高屈折率の金属酸化物を用いて、平均幾何学的厚みが50nm未満の微小板形状の透明な基材をコーティングしたとすると、得られる多層真珠光沢顔料は、極端に破損しやすく、適用媒体の中に組み入れている間にも完全に破損される可能性があり、その結果、光輝が顕著に低下する。
【0045】
幾何学的な基材の厚みの平均が5000nmを超えると、その多層真珠光沢顔料は全体として厚くなりすぎる可能性がある。これに伴って、比不透明性、すなわち、本発明の多層真珠光沢顔料の単位重量あたりで隠される表面積が小さくなり、さらには、適用媒体中における面に平行な配向が低下する。配向性が低下する結果として、今度は光輝が低下する。
【0046】
微小板形状の透明な基材の平均幾何学的厚みは、硬化させたワニス膜に基づいて求めるが、その膜の中では、多層真珠光沢顔料が、基材に対して実質的に面に平行に配列している。この目的のためには、硬化させたワニス膜の研磨断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、100個の多層真珠光沢顔料の微小板形状の透明な基材の幾何学的厚みを求めて、統計的に平均する。
【0047】
本発明の多層真珠光沢顔料は、少なくとも1種の光学活性なコーティングを有する微小板形状の基材を提供することによって調製されるが、それに含まれるのは、
a)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率層A
b)n<1.8の屈折率を有する低屈折率層B
c)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率層C
ならびにさらに
d)任意の外側保護層D
である。層AおよびB、ならびにBおよびCは、外側保護層Dの下に多重的に適用されてもよい。基材に対して高屈折率層と低屈折率層を、常に交互に適用するのが好ましい。微小板形状の透明な基材が、層A〜C、場合によってはDを用いて、一度だけコーティングされているのが特に好ましい。
【0048】
本発明においては、層Aは、層の配列においては内側層であり、すなわち微小板形状の透明な基材に面しており、層Bは、層Aと層Cの間に位置しており、そして層Cは、微小板形状の透明な基材を基準にした層の配列において、外側層である。
【0049】
微小板形状の透明な基材と層Aの間には、1層または複数の、さらなる、好ましくは実質的に透明な層が配列されていてもよい。一つの好ましい展開においては、層Aが、微小板形状の透明な基材に直接適用される。
【0050】
層Aと層Bの間、さらには層Bと層Cの間には、相互に独立して、1層または複数の、さらなる、好ましくは実質的に透明な層が配列されていてもよい。一つの好ましい展開においては、層Bが層Aに直接適用される。また別な好ましい展開においては、層Cが層Bに直接適用される。
【0051】
層Aを微小板形状の透明な基材に直接適用し、層Bを層Aに直接適用し、層Cを層Bに直接適用し、そしてさらには任意の層Dを層Cに直接適用するのが特に好ましい。
【0052】
光学活性な層またはコーティングとしては、金属酸化物、金属酸化物水和物、金属水酸化物、金属亜酸化物、金属、金属フッ化物、金属オキシハライド、金属カルコゲニド、金属窒化物、金属酸窒化物、金属硫化物、金属炭化物、またはそれらの混合物を含む層を適用するのが好ましい。一つの好ましい変法においては、光学活性な層またはコーティングが、上述の物質からなっている。
【0053】
特に断らない限り、本発明の目的においては、層またはコーティングという用語は、相互に置き換え可能に使用される。
【0054】
高屈折率層AおよびCの屈折率は、それぞれの場合において、n≧1.8、好ましくはn≧1.9、より好ましくはn≧2.0である。低屈折率層Bの屈折率は、n<1.8、好ましくはn<1.7、より好ましくはn<1.6である。
【0055】
高屈折率層AまたはCにとっての適性は、選択的および/または非選択的に、吸収性および/または非吸収性の物質によって与えられる。
【0056】
適切な高屈折率で、選択的吸収性の物質の例としては、以下のものが挙げられる:
・着色金属酸化物または金属酸化物水和物、たとえば、酸化鉄(III)(α−および/またはγ−Fe、赤色)、FeO(OH)(黄色)、酸化クロム(III)(緑色)、酸化チタン(III)(Ti、青色)、五酸化バナジウム(橙色)、
・着色窒化物、たとえば、チタンオキシナイトライドおよび窒化チタン(TiO、TiN、青色)、通常、二酸化チタンとの混合物の形で存在している低級なチタンの酸化物および窒化物、
・金属硫化物、たとえば、硫化セリウム(赤色)、
・チタン酸鉄、たとえば、擬板チタン石(褐赤色)および/または擬ルチル(褐赤色)、
・スズ−アンチモン酸化物、Sn(Sb)O
・選択的吸収性着色料を用いて着色した、非吸収性で無色の高屈折率物質、たとえば、金属酸化物、たとえば、二酸化チタンおよび二酸化ジルコニウム。この着色は、選択的吸収性金属カチオンもしくは着色金属酸化物たとえば酸化鉄(III)を用いて金属酸化物層をドーピングするか、または着色料を含む膜を用いて金属酸化物層をコーティングすることによって、金属酸化物層の中に着色料を組み入れることにより達成してもよい。
【0057】
高屈折率で、非選択的吸収性の物質の例としては、以下のものが挙げられる:
・金属、たとえば、モリブデン、鉄、タングステン、クロム、コバルト、ニッケル、銀、パラジウム、白金、それらの混合物またはそれらの合金、
・金属酸化物、たとえば、マグネタイトFe、酸化コバルト(CoOおよび/またはCo)、酸化バナジウム(VOおよび/またはV)、およびこれらの酸化物と金属の混合物、より詳しくは、マグネタイトと(金属)鉄、
・チタン酸鉄、たとえばイルメナイト、
・金属硫化物、たとえば、硫化モリブデン、硫化鉄、硫化タングステン、硫化クロム、硫化コバルト、硫化ニッケル、硫化銀、硫化スズ、これらの硫化物の混合物、これらの硫化物とそれぞれの金属の混合物、たとえばMoSとMo,ならびに、それぞれの金属の酸化物との混合物、たとえばMoSと酸化モリブデン、
・その中に非選択的吸収性の物質(たとえば炭素)を組み込むか、またはそれを用いてコーティングした、非吸収性で無色の高屈折率層、たとえば、二酸化チタンまたは二酸化ジルコニウム。
【0058】
高屈折率で非吸収性の物質としては、たとえば以下のものが挙げられる:
・金属酸化物、たとえば、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、二酸化スズ、酸化アンチモン、およびそれらの混合物、
・金属水酸化物、
・金属酸化物水和物、
・金属硫化物、たとえば硫化亜鉛、
・金属オキシハライド、たとえばオキシ塩化ビスマス。
【0059】
層Aおよび/またはCは、それぞれの場合において、各種の選択的および/または非選択的吸収性の成分、好ましくは金属酸化物の混合物であってよい。たとえば、各種の成分、好ましくは金属酸化物が、均質な混合物の形態で存在していてもよい。しかしながら、ドープの形態で、一つの成分を他の成分の中に存在させることもまた可能である。
【0060】
たとえば、層Aおよび/またはCの中で、非吸収性の成分、たとえば酸化チタン、好ましくはTiOを、選択的吸収性の成分、好ましくはFeの中に、および/または非選択的吸収性の成分、たとえばFeの中にドープとして存在させてもよい。別な方法として、選択的吸収性の成分、たとえばFe、および/または非選択的吸収性の成分、たとえばFeを、非吸収性の成分、たとえば酸化チタン、好ましくはTiOの中にドープとして存在させてもよい。
【0061】
一つの好ましい実施態様においては、金属酸化物、金属水酸化物および/または金属酸化物水和物を、高屈折率層Aおよび/またはCとして使用する。金属酸化物を使用するのが特に好ましい。層Aおよび/またはCに二酸化チタンおよび/または酸化鉄、さらにはそれらの混合物が含まれていれば、極めて特に好ましい。一つの実施態様においては、層Aおよび/またはCが、二酸化チタンおよび/または酸化鉄、さらにはそれらの混合物から構成されている。
【0062】
本発明の多層真珠光沢顔料が二酸化チタンを用いたコーティングを有する場合には、その二酸化チタンは、ルチル形またはアナターゼ形の結晶変態で存在していてよい。二酸化チタン層はルチル形であるのが好ましい。ルチル形は、たとえばコーティングされる微小板形状の透明な基材に対して二酸化スズの層を適用し、その後で二酸化チタン層を適用することによって得ることができる。この二酸化スズの層の上で、二酸化チタンがルチル変態の形で結晶化する。この二酸化スズは、別な層の形をとっていてもよく、その場合には、その層の厚みは、数ナノメートル、たとえば10nm未満、より好ましくは5nm未満、さらにより好ましくは3nm未満であってよい。
【0063】
低屈折率層Bとしては、非吸収性の物質が適切である。これらの物質としては、たとえば以下のものが挙げられる:
・金属酸化物、たとえば、二酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ホウ素、
・金属酸化物水和物、たとえば、酸化ケイ素水和物、酸化アルミニウム水和物、
・金属フッ化物、たとえば、フッ化マグネシウム、
・MgSiO
【0064】
低屈折率の金属酸化物層には、場合によっては、構成成分として、アルカリ金属酸化物および/またはアルカリ土類金属酸化物が含まれていてもよい。
【0065】
低屈折率層Bは、二酸化ケイ素を含んでいるのが好ましい。一つの実施態様においては、その低屈折率層Bが二酸化ケイ素からなっている。
【0066】
干渉可能なコーティングは、基材を完全に包み込んでいてもよいし、あるいは基材の上に部分的にだけ存在していてもよい。本発明の多層真珠光沢顔料は、微小板形状の基材を完全に包み込み、その上側と下側の面だけでなく被覆している、一様で均質な構成のコーティングを特徴としている。
【0067】
高屈折率および低屈折率を有する非金属層の光学的厚さが、その多層真珠光沢顔料の光学的性質を決定する。銀色の干渉色を有する本発明の多層真珠光沢顔料の場合、個々の層の厚みは相互に調和がとれているのが好ましい。
【0068】
nが層の屈折率、dがその厚みとすると、薄い層が示す干渉色は、nとdの積、すなわち光学的厚さによって与えられる。普通の入射光のもとでの反射光に現れる膜の色は、次式の波長の光が強化されるか、
【数2】

そして次式の波長の光が減衰されるかの結果である。
【数3】

式中、Nは正の整数である。膜の厚みの増加と共に起きる色の変化は、干渉を介して、特定の波長の光が強化されるか、あるいは減衰されるかの結果である。
【0069】
多層顔料の場合においては、その干渉色は、特定の波長が強化されることによって決まり、多層顔料の中の2層以上が同一の光学的厚さを有しているのなら、層の数が多くなる程、その反射光の色が強くなる。
【0070】
銀色の干渉色を有する本発明の多層顔料は、高屈折率層AおよびCが、それぞれの場合において、50nm〜200nmの範囲、好ましくは95nm〜180nmの範囲、より好ましくは110nm〜165nmの範囲の光学層厚みを有していてよい。低屈折率層Bの光学層厚みは、30nm〜150nmの範囲、好ましくは70nm〜150nmの範囲、より好ましくは100nm〜150nmの範囲であってよい。
【0071】
金属の場合においては、層Aおよび/またはCの幾何学的層厚みは、10nm〜50nm、好ましくは15nm〜30nmである。その層厚みは、層が半透明な性質を有するように設定しなければならない。これにより、使用する金属に応じて、各種の層厚みとなる。
【0072】
そのコーティングは、可視光線に対して少なくとも部分的に透過性(半透明)であるべきであり、したがって、選択した層物質の光学的性質の関数として、各種の厚みをとる。本明細書において示す層厚みは、特に断らない限り、光学層厚みである。光学層厚みは、本発明においては、層を構成している物質の、幾何学的層厚みと屈折率の積を意味している。対象としている物質の屈折率についての値としては、それぞれの場合において、文献から公知の値を使用している。本発明においては、幾何学的層厚みは、基材に対して面に平行に配向した多層真珠光沢顔料を含むワニスの研磨断面のSEMの顕微鏡写真をベースに求めている。
【0073】
本発明の多層真珠光沢顔料の光学層厚みは、層Aと層Cの両方が、それ自体で、すでに銀色の外観を誘導するように設定されていてよい。別な方法として、これらの2層は、それぞれ独立して見ると、銀色ではない外観を有していてもよい。本発明の完全にコーティングした多層真珠光沢顔料の干渉色が銀色であるということが重要である。
【0074】
銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料は、本発明の目的上、彩度値C15が、≦20、好ましくは≦19、より好ましくは≦18、極めて好ましくは≦17である多層真珠光沢顔料であると理解されたい。本発明の多層真珠光沢顔料の彩度値C15は、好ましくは1から≦20の範囲、より好ましくは2から≦19の範囲、より好ましくは3から≦18の範囲、特に好ましくは4から≦17の範囲である。この場合、その多層真珠光沢顔料は、銀色の干渉色に加えて、反射角から外れたところから見たときに、着色した外観を有していてもよい。この着色した外観は、微小板形状の透明な基材のコーティングの性質に依存して、コーティング物質に固有の色によるか、その層厚みによって誘導されていてもよい。光輝が高いために、存在しうるすべての吸収色が、反射角でより強く光るようになり、本発明の多層真珠光沢顔料の外観全体が、観察者にとっては、銀色に見えるのであろう。他の実施態様においては、その銀色の干渉色が、反射角のところでわずかにパステル調の色相を有するかもしれないが、この場合でも観察者は、主として銀色の外観と受け取る。
【0075】
この場合における彩度値は、以下の適用から求める:6重量%の多層真珠光沢顔料を含むニトロセルロースワニス(Dr.Renger Erco Bronzemischlack 2615e;Morton)(重量%の数字はワニスの全重量を基準にしたものである)を、D50値に応じて、表3に従った湿膜厚みで、Byk−Gardnerブラック/ホワイトドローダウンチャート(Byko−Chart2853)に適用し、次いで、室温で乾燥させる。次いで、BYK−MAC(BYK Gardner)を使用し、ドローダウンチャートの黒色バックグランド上で測定して、これらのドローダウンチャートについての測色評価を実施する。入射角は45度であり、採用した彩度値は、15度の観察角におけるものである。
【0076】
【表3】

【0077】
本発明の多層真珠光沢顔料は、ゴニオクロマチックではない、すなわち、それは、干渉色における角度依存性の変化を一切示さない。
【0078】
多層真珠光沢顔料は、さらに、少なくとも1層の、光、天候、および/または薬品に対する多層真珠光沢顔料の安定性を向上させる外側保護層Dを備えていてもよい。外側保護層Dは、アフターコートであってもよく、そのことによって、各種の媒体の中への組入れにおける顔料の取扱いが容易になる。
【0079】
本発明の多層真珠光沢顔料の外側保護層Dは、元素Si、AlまたはCeの1種または2種の金属酸化物層を含むか、または好ましくはそれらからなっていてもよい。一つの変法においては、酸化ケイ素層、好ましくはSiO層を、最外金属酸化物層として適用する。この場合においては、WO 2006/021386 A1に記載されているように、最初にまず酸化セリウム層を適用し、次いでSiO層を適用するという順序が特に好ましい(その特許の内容を参照としてここに引用することにより、本明細書に取り入れたものとする)。
【0080】
外側保護層Dは、さらに、表面を有機化学的に修飾したものであってもよい。たとえば、1種または複数のシランをこの外側保護層に適用してもよい。そのシランは、1〜24個のC原子、好ましくは6〜18個のC原子の分岐状または非分岐状のアルキル基を有するアルキルシランであってよい。
【0081】
別な方法として、そのシランが、プラスチック、塗料またはインキのバインダーなどに対して化学的に結合することが可能な有機官能性シランであってもよい。
【0082】
表面修飾剤として好適に使用され、適切な官能基を有する有機官能性シランは、市場で入手可能であり、たとえば、Evonikにより製造され、“Dynasylan”の商品名で販売されている。さらなる製品は、Momentiveから(Silquestシラン)、またはWackerから、例として、GENIOSIL製品群からの標準的なシランおよびα−シランを購入することが可能である。
【0083】
これらの製品の例を以下に挙げる:3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MEMO、Silquest A−174NT)、ビニルトリメトキシ[またはエトキシ]シラン(Dynasylan VTMOもしくはVTEO、Silquest A−151もしくはA−171)、メチルトリメトキシ[またはエトキシ]シラン(Dynasylan MTMSもしくはMTES)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MTMO;Silquest A−189)、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan GLYMO、Silquest A−187)、トリス[3−(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート(Silquest Y−11597)、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピル)]テトラスルフィド(Silquest A−1289)、ビス[3−(トリエトキシシリル)プロピルジスルフィド(Silquest A−1589)、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(Silquest A−186)、ビス(トリエトキシシリル)エタン(Silquest Y−9805)、ガンマ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Silquest A−Link35、GENIOSIL GF40)、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシ[またはエトキシ]シラン(GENIOSIL XL33、XL36)、(メタクリロイルオキシメチル)メチル[またはエチル]ジメトキシシラン(GENIOSIL XL32、XL34)、(イソシアナトメチル)メチルジメトキシシラン、(イソシアナトメチル)トリメトキシシラン、3−(トリエトキシシリル)プロピル無水コハク酸(GENIOSIL GF20)、(メタクリロイルオキシメチル)メチルジエトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルメチルジメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、2−メタクリロイルオキシエチルトリエトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリプロポキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルトリアセトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン(GENIOSIL XL10)、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン(GENIOSIL GF58)、およびビニルトリアセトキシシラン。
【0084】
有機官能性シランとしては、以下のものを使用するのが好ましい:3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan MEMO、Silquest A−174NT)、ビニルトリメトキシ[またはエトキシ]シラン(Dynasylan VTMOもしくはVTEO、Silquest A−151もしくはA−171)、メチルトリメトキシ[またはエトキシ]シラン(Dynasylan MTMSもしくはMTES)、ベータ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(Silquest A−186)、ビス(トリエトキシシリル)エタン(Silquest Y−9805)、ガンマ−イソシアナトプロピルトリメトキシシラン(Silquest A−Link35、GENIOSIL GF40)、メタクリロイルオキシメチルトリメトキシ[またはエトキシ]シラン(GENIOSIL XL33、XL36)、(メタクリロイルオキシメチル)メチル[またはエチル]ジメトキシシラン(GENIOSIL XL32、XL34)、3−(トリエトキシシリル)プロピル無水コハク酸(GENIOSIL GF20)、ビニルトリメトキシシラン(GENIOSIL XL10)および/またはビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン(GENIOSIL GF58)。
【0085】
しかしながら、本発明の多層真珠光沢顔料に他の有機官能性シランを適用することもまた可能である。
【0086】
さらに、水性予加水分解物を使用することも可能であるが、それは、たとえばDegussaから商品として入手可能である。このようなものとしては、特に以下のものが挙げられる:水性アミノシロキサン(Dynasylan Hydrosil 1151)、水性アミノ−/アルキル官能性シロキサン(Dynasylan Hydrosil 2627または2909)、水性ジアミノ官能性シロキサン(Dynasylan Hydrosil 2776)、水性エポキシ官能性シロキサン(Dynasylan Hydrosil 2926)、アミノ−/アルキル官能性オリゴシロキサン(Dynasylan 1146)、ビニル−/アルキル官能性オリゴシロキサン(Dynasylan 6598)、オリゴマー性ビニルシラン(Dynasylan 6490)またはオリゴマー性短鎖アルキル官能性シラン(Dynasylan 9896)。
【0087】
一つの好ましい実施態様においては、有機官能性シラン混合物に、少なくとも1種のアミノ官能性シランと、さらに少なくとも1種の官能性結合基を含まないシランが含まれている。アミノ官能基は、バインダーの中に存在している大部分の基と、1種または複数の化学的相互作用を持つことが可能な官能基である。これには、たとえば、バインダーのイソシアネート官能基もしくはカルボキシレート官能基などとの共有結合、またはOH官能基もしくはCOOR官能基などとの水素結合、またはその他のイオン性相互作用が含まれていてよい。したがって、アミノ官能基は、多層真珠光沢顔料を各種のバインダーに化学的に結合させる目的には、特に極めて好適である。
【0088】
この目的のためには、以下の化合物を使用するのが好ましい:3−アミノプロピルトリメトキシシラン(Dynasylan AMMO;Silquest A−1110)、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(Dynasylan AMEO)、[3−(2−アミノエチル)アミノプロピル]トリメトキシシラン(Dynasylan DAMO、Silquest A−1120)、[3−(2−アミノエチル)アミノプロピル]トリエトキシシラン、トリアミノ官能性トリメトキシシラン(Silquest A−1130)、ビス(ガンマ−トリメトキシシリルプロピル)アミン(Silquest A−1170)、N−エチル−ガンマ−アミノイソブチルトリメトキシシラン(Silquest A−Link15)、N−フェニル−ガンマ−アミノプロピルトリメトキシシラン(Silquest Y−9669)、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン(Silquest A−1637)、N−シクロヘキシルアミノメチルメチルジエトキシシラン(GENIOSIL XL924)、N−シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン(GENIOSIL XL926)、N−フェニルアミノメチルトリメトキシシラン(GENIOSIL XL973)、およびそれらの混合物。
【0089】
さらに好ましい実施態様においては、その官能性結合基を含まないシランがアルキルシランである。そのアルキルシランは式(A)を有しているのが好ましい。
(4−z)Si(X) (A)
【0090】
この式においては、zは1〜3の整数であり、Rは、10〜22個のC原子を有する、置換または非置換、非分岐状または分岐状のアルキル鎖であり、Xはハロゲン基および/またはアルコキシ基である。少なくとも12個のC原子のアルキル鎖を有するアルキルシランが好ましい。Rは、Siに対して環状に結合されていてもよく、その場合、zは典型的には2である。
【0091】
本発明の多層真珠光沢顔料の表面またはその上に、上述のシランおよびシラン混合物に加えて、さらなる有機化学的修飾剤、たとえば、置換もしくは非置換のアルキル基、ポリエーテル、チオエーテル、シロキサンなど、およびそれらの混合物が配置されていてもよい。しかしながら、無機化学的修飾剤(たとえば、AlまたはZrOまたはそれらの混合物)を顔料表面に適用することもまた可能であるが、これらの修飾剤は、たとえば、それぞれの適用媒体の中における分散性および/または相溶性を向上させることができる。
【0092】
表面修飾によって、たとえば、顔料表面の親水性または疎水性を改変したりおよび/または設定したりすることができる。たとえば、表面修飾によって、本発明の多層真珠光沢顔料のリーフィング性または非リーフィング性を改変したりおよび/または設定したりすることができる。リーフィングは、適用媒体、たとえば塗料または印刷インキの中で、本発明の多層真珠光沢顔料が、適用媒体の界面または表面、またはそれに近いところに配置されるということを意味している。
【0093】
表面修飾剤には、さらに反応性の化学基、たとえば、アクリレート、メタクリレート、ビニル、イソシアネート、シアノ、エポキシ、ヒドロキシルもしくはアミノ基、またはそれらが混在して含まれていてもよい。これらの化学的反応性基によって、適用媒体または適用媒体の成分、たとえばバインダーに対する化学的な結合、特に共有結合の形成が可能となる。この手段によって、たとえば、硬化させたワニス、塗料または印刷インキの化学的および/または物理的性質、たとえば湿度、日射、UV抵抗性などの環境的な影響、あるいは引掻き性などの機械的な影響に対する抵抗性などを改良することが可能となる。
【0094】
化学的反応性基と適用媒体もしくは適用媒体の成分の間の化学反応は、たとえばUV光および/または熱の形態のエネルギーを照射することによって誘起してもよい。
【0095】
シランを用いてアフターコーティングされるか、および/または外側保護層Dを備えた多層真珠光沢顔料を化粧料配合物の中に組み入れるためには、それに対応するシランおよび/または外側保護層Dの物質が、化粧料に関する法律で許可されているかどうかを確認しておく必要がある。
【0096】
さらなる実施態様においては、本発明には、光学活性なコーティングを有する微小板形状の透明な基材をベースとする銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料が含まれるが、その光学活性なコーティングは、少なくとも、
a)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率非吸収性層A
b)n<1.8の屈折率を有する低屈折率非吸収性層B
c)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率非吸収性層C
ならびにさらに
d)任意の外側保護層D
を含み、
そしてその多層真珠光沢顔料は、スパンΔDを0.8〜1.2とする、体積平均サイズ分布関数の累積度数分布からの指数D10、D50、D90を有しているが、そのスパンΔDは、式ΔD=(D90−D10)/D50に従って計算される。
【0097】
さらなる実施態様においては、本発明には、光学活性なコーティングを有する微小板形状の透明な基材をベースとする銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料が含まれるが、その光学活性なコーティングは、少なくとも、
e)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率非吸収性層A
f)n<1.8の屈折率を有する低屈折率非吸収性層B
g)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率選択的吸収性層C
ならびにさらに
h)任意の外側保護層D
を含み、
そしてその多層真珠光沢顔料は、スパンΔDを0.8〜1.2とする、体積平均サイズ分布関数の累積度数分布からの指数D10、D50、D90を有しているが、そのスパンΔDは、式ΔD=(D90−D10)/D50に従って計算される。
【0098】
さらなる実施態様においては、本発明には、光学活性なコーティングを有する微小板形状の透明な基材をベースとする銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料が含まれるが、その光学活性なコーティングは、少なくとも、
i)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率選択的吸収性層A
j)n<1.8の屈折率を有する低屈折率非吸収性層B
k)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率非吸収性層C
ならびにさらに
l)任意の外側保護層D
を含み、
そしてその多層真珠光沢顔料は、スパンΔDを0.8〜1.2とする、体積平均サイズ分布関数の累積度数分布からの指数D10、D50、D90を有しているが、そのスパンΔDは、式ΔD=(D90−D10)/D50に従って計算される。
【0099】
さらなる実施態様においては、本発明には、光学活性なコーティングを有する微小板形状の透明な基材をベースとする銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料が含まれるが、その光学活性なコーティングは、少なくとも、
m)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率選択的吸収性層A
n)n<1.8の屈折率を有する低屈折率非吸収性層B
o)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率選択的吸収性層C
ならびにさらに
p)任意の外側保護層D
を含み、
そしてその多層真珠光沢顔料は、スパンΔDを0.8〜1.2とする、体積平均サイズ分布関数の累積度数分布からの指数D10、D50、D90を有しているが、そのスパンΔDは、式ΔD=(D90−D10)/D50に従って計算される。
【0100】
さらなる実施態様においては、本発明には、光学活性なコーティングを有する微小板形状の透明な基材をベースとする銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料が含まれるが、その光学活性なコーティングは、少なくとも、
q)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率非吸収性層A
r)n<1.8の屈折率を有する低屈折率非吸収性層B
s)たとえば、マグネタイトまたはイルメナイトを含むかまたはそれらからなる、n≧1.8の屈折率を有する高屈折率非選択的吸収性層C
ならびにさらに
t)任意の外側保護層D
を含み、
そしてその多層真珠光沢顔料は、スパンΔDを0.8〜1.2とする、体積平均サイズ分布関数の累積度数分布からの指数D10、D50、D90を有しているが、そのスパンΔDは、式ΔD=(D90−D10)/D50に従って計算される。
【0101】
さらなる実施態様においては、本発明の多層真珠光沢顔料の光学活性なコーティングA〜Cには、以下の組合せが含まれる。
【0102】
【表4】

【0103】
さらなる実施態様においては、本発明の多層真珠光沢顔料の光学活性なコーティングは、表4に記載の組合せからなる。
【0104】
さらなる実施態様においては、本発明には、光学活性なコーティングを有する微小板形状の透明な基材をベースとする銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料が含まれるが、その光学活性なコーティングは、少なくとも、
u)n≧1.8の屈折率と50〜200nmの光学層厚みを有する高屈折率層A
v)n<1.8の屈折率と30〜150nmの光学層厚みを有する低屈折率層B
w)n≧1.8の屈折率と50〜200nmの光学層厚みを有する高屈折率層C
ならびにさらに
x)任意の外側保護層D
を含み、
そしてその多層真珠光沢顔料は、スパンΔDを0.8〜1.2とする、体積平均サイズ分布関数の累積度数分布からの指数D10、D50、D90を有しているが、そのスパンΔDは、式ΔD=(D90−D10)/D50に従って計算される。
【0105】
さらなる実施態様においては、本発明には、光学活性なコーティングを有する微小板形状の透明な基材をベースとする銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料が含まれるが、その光学活性なコーティングは、少なくとも、
y)n≧1.8の屈折率と50〜200nmの光学層厚みを有する高屈折率層A
z)n<1.8の屈折率と30〜150nmの光学層厚みを有する低屈折率層B
aa)n≧1.8の屈折率と50〜200nmの光学層厚みを有する高屈折率層C
ならびにさらに
bb)任意の外側保護層D
を含み、
そしてその多層真珠光沢顔料は、スパンΔDを0.8〜1.2とする、体積平均サイズ分布関数の累積度数分布からの指数D10、D50、D90を有しており(そのスパンΔDは、式ΔD=(D90−D10)/D50に従って計算される)、そしてその多層真珠光沢顔料の彩度C15が、≦20、好ましくは≦17である。
【0106】
銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料を製造するための方法には以下の工程が含まれる:
i)コーティングされる微小板形状の透明な基材をサイズ分級する工程
ii)上述の層A〜Cおよびさらには任意の層Dを用いてその微小板形状の透明な基材をコーティングする工程。
【0107】
最初の基材が大きすぎるような場合には、場合によっては、サイズ分級より前に微粉砕工程を実施することも可能である。
【0108】
サイズ分級は、基材をコーティングする前または後に実施してよい。しかしながら、基材を最初に分級し、次いでコーティングするのが有利である。多層真珠光沢顔料が本発明に従ったサイズ分布になるまで、サイズ分級を実施し、場合によっては繰り返す。
【0109】
コーティングされる微小板形状の透明な基材に対して、適切な微粉砕および/または分級操作を施すことによって、基材におけるスパンΔDを狭くすることができる。コーティングされる微小板形状の透明な基材は、たとえばボールミル、ジェットもしくは撹拌ボールミル、エッジランナーミル、またはディソルバーを使用して微粉砕してよい。たとえば多重湿式篩別のような適切な分級操作によって、最終的な画分のスパンΔDを調節することができる。他の分級方法としては、サイクロンにおける遠心分離法や、分散体からの沈降法などが挙げられる。
【0110】
微粉砕および分級操作は、連続で実施してもよいし、場合によっては、相互に組み合わせてもよい。従って、微粉砕操作の後に分級操作をしてもよく、それに続けて、微細な画分に対してさらに微粉砕操作を行い、これを繰り返してもよい。
【0111】
金属酸化物層は、湿式化学的に適用するのが好ましいが、その場合には、真珠光沢顔料を製造するために開発された湿式化学的コーティング方法を採用すればよい。湿式コーティングの場合においては、基材粒子を水中に懸濁させ、加水分解に適し、かつその金属酸化物および/または金属酸化物水和物をコーティングされる基材の上に直接沈殿させて、いかなる場合であっても二次沈殿がないように選択したpHで、1種または複数の加水分解性金属塩または水ガラス溶液と混合する。そのpHは典型的には、塩基および/または酸を同時に計量添加することによって、一定に維持する。次いで顔料を分離し、洗浄し、50〜150℃で6〜18時間かけて乾燥させ、場合によっては0.5〜3時間かけて焼成するが、存在している特定のコーティングに合わせて、焼成温度を最適化することが可能である。一般的に言えば、焼成温度は500〜1000℃の間、好ましくは600〜900℃の間である。所望により、顔料は、個々のコーティングを適用した後に、分離し、乾燥させ、そして場合によっては焼成し、その後で、再懸濁させて、さらなる層を沈殿させてもよい。
【0112】
コーティングされる微小板形状の透明な基材の上にSiO層を沈殿させることは、適切なpHで、カリウムもしくはナトリウム水ガラス溶液を添加することによって実施してもよい。別な方法として、アルコキシシラン、たとえばテトラエトキシシランから出発して、ゾル−ゲル法によってSiO層を適用してもよい。
【0113】
本発明の多層真珠光沢顔料は、さらに、透明で隠蔽力のある白色顔料、着色顔料、および黒色顔料、さらには他の効果顔料とのブレンド物の形でも、有利に使用することができる。
【0114】
本発明の多層真珠光沢顔料は、顔料調製物および乾式製品を製造するために使用することができる。
【0115】
さらに、本発明の多層真珠光沢顔料は、たとえば、以下の用途に使用することができる:化粧料配合物、プラスチック、セラミック材料、ガラス、およびコーティング組成物、たとえば、塗料、たとえばオフセット印刷、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷もしくは証券印刷、またはブロンズ印刷のための印刷インキ、液状インキ、トナー中、コーティング材料、たとえば自動車仕上げ材料もしくは粉体コーティング材料、紙およびプラスチックのレーザーマーキングのため、種子着色のため、食品または医薬品の着色のため、または、(農業用)フィルム、ターポリンもしくは織物の着色のため。
【0116】
化粧料配合物においては、銀色の干渉色を有する本発明の多層真珠光沢顔料は、特定の用途に適した原料物質、助剤、および有効成分と組み合わせることができる。配合物中の多層真珠光沢顔料の濃度は、リンスオフ製品の場合の0.001重量%からリーブオン製品の場合の40.0重量%までの間としてよい。
【0117】
より詳しくは、本発明の多層真珠光沢顔料はたとえば以下のような化粧料において使用するのに適している:ボディパウダー、フェースパウダー、プレスドパウダーおよびルースパウダー、フェースメイクアップ、パウダークリーム、クリームメイクアップ、エマルションメイクアップ、ワックスメイクアップ、ファウンデーション、ムースメイクアップ、紅、アイメイクアップたとえばアイシャドー、マスカラ、アイライナー、リキッドタイプアイライナー、アイブローペンシル、リップケアスティック、リップスティック、リップグロス、リップライナー、ヘアスタイリング組成物たとえばヘアスプレー、ヘアムース、ヘアジェル、ヘアワックス、ヘアマスカラ、恒久的もしくは半恒久的ヘアカラー、一時的ヘアカラー、スキンケア組成物たとえばローション、ジェル、およびエマルション、ならびにさらにはネイルワニス組成物。
【0118】
化粧料用途においては、特定の色彩効果を得るため、本発明の多層真珠光沢顔料だけではなく、さらなる着色料および/または慣用される効果顔料またはそれらの混合物を各種の割合で使用することも可能である。使用される慣用の効果顔料は、たとえば以下のようなものであってよい:高屈折率の金属酸化物でコーティングした天然マイカをベースとする市販の真珠光沢顔料(たとえば、Eckart製のPrestige製品群)、BiOCl微小板、TiO微小板、高屈折率の金属酸化物を用いてコーティングした合成マイカをベースとするか、または高屈折率の金属酸化物を用いてコーティングしたガラス微小板をベースとする真珠光沢顔料(たとえば、Eckart製のMIRAGE製品群)、Al、SiOもしくはTiOの微小板。さらに、メタリック効果顔料、たとえばEckart製のVisionaire製品群を添加することもまた可能である。着色料は、無機または有機の顔料から選択すればよい。
【0119】
以下において、いくつもの実施例を用いて、本発明をより詳しく説明するが、本発明がこれらの実施例に限定される訳ではない。
【0120】
I.顔料の調製
A.基材の分級
本発明実施例1:狭いスパンΔD=1.0を有するガラスフレークの分級
FD水中の200gのガラスフレーク(GF100M、Glassflake Ltd製)の懸濁液(FD=完全脱イオン化、ほぼ3重量%含量)を、100μmの篩で分級し、その篩下を、63μmの篩でもう一度篩別した。63μmの篩で得られた篩上について、この篩別プロセスを2回繰り返した。これによって、次の粒子サイズ分布(Malvern Mastersizer 2000)を有するガラスフレーク画分が得られた:D10=50μm、D50=82μm、D90=132μm、スパンΔD=1.0。
【0121】
本発明実施例2:狭いスパンΔD=1.1を有するガラスフレークの分級
FD水中の200gのガラスフレーク(GF100M、Glassflake Ltd製)の懸濁液(ほぼ3重量%含量)を、63μmの篩で分級し、その篩下を、34μmの篩でもう一度篩別した。34μmの篩で得られた篩上について、この篩別プロセスを2回繰り返した。これによって、次の粒子サイズ分布(Malvern Mastersizer 2000)を有するガラスフレーク画分が得られた:D10=32μm、D50=60μm、D90=100μm、スパンΔD=1.1。
【0122】
比較例1:広いスパンΔD=2.0を有するガラスフレークの分級
FD水中の200gのガラスフレーク(GF100M、Glassflake Ltd製)の懸濁液(ほぼ3重量%含量)を、150μmの篩で分級し、その篩下を、34μmの篩でもう一度篩別した。34μmの篩で得られた篩上について、この篩別プロセスを2回繰り返した。これによって、次の粒子サイズ分布(Malvern Mastersizer 2000)を有するガラスフレーク画分が得られた:D10=25μm、D50=88μm、D90=200μm、スパンΔD=2.0。
【0123】
本発明実施例3:狭いスパンΔD=1.2を有する天然マイカの分級
1kgの白雲母マイカMD2800(Minelco Specialities Ltd.England製)を、700℃で1時間かけて焼成し、次いで1000mLのFD水と混合し、次いでAmerican Cyanamid Company製の実験室用エッジランナーミル中で、ほぼ1.5時間かけて層剥離させた。次いでそのケーキにFD水を加えて35重量%の固形分含量とし、Sweco Separator実験室用篩で篩別して<250μmとした。
【0124】
次いで、そのようにして得られた微細なマイカ画分を、Pendraulik TD200実験室用ディソルバーの中で5時間かけて処理した。この処理の際には、冷却することによって、懸濁液の温度が80℃を超えないように注意した。
【0125】
次いでFD水を用いてそのマイカ懸濁液を希釈して3重量%の固形分含量とし、Sweco Separator実験室用篩で篩別して<34μmとした。次いで沈降容器を使用し5時間かけて、その篩下を沈降分離させた。吸引により上澄みを抜き出し、沈殿物に水をふたたび加え、激しく撹拌してから、5時間かけて再度沈降分離させた。目に見える上澄み液が実質的にもはやなくなるまで、この操作を全部で4回繰り返した。
【0126】
その沈降容器は、d=50cm、h=50cmの寸法を有する円筒形状を有していた。
【0127】
ブフナーロート上で吸引によりその沈殿物を濾過し、得られたフィルターケーキを、さらなるコーティングのための出発材料として使用した。
【0128】
これによって、次の粒子サイズ分布(Malvern Mastersizer 2000)を有するマイカ画分が得られた:D10=12.4μm、D50=25.6μm、D90=43.2μm、スパンΔD=1.2。
【0129】
本発明実施例4:狭いスパンΔD=1.2を有する合成マイカの分級
FD水中の200gの人工マイカSanbao10−40(Shantou F.T.Z.Sanbao Pearl Luster Mica Tech Co.,Ltd.China)の懸濁液(約3重量%含量)を、34μmの篩で分級し、その篩下を、20μmの篩でもう一度篩別した。20μmの篩で得られた篩上について、この篩別プロセスを2回繰り返した。これによって、次の粒子サイズ分布(Malvern Mastersizer 2000)を有するマイカ画分が得られた:D10=14μm、D50=26μm、D90=45μm、スパンΔD=1.2。
【0130】
比較例2:広いスパンΔD=3.7を有する天然マイカの分級
1kgの白雲母マイカMD2800(Minelco Specialities Ltd.England製)を、700℃で1時間かけて焼成し、次いで1000mLのFD水と混合し、次いでAmerican Cyanamid Company製の実験室用エッジランナーミル中で、ほぼ1時間かけて層剥離させた。
【0131】
次いでそのケーキを、FD水で希釈して30重量%の固形分含量とし、Pendraulik TD200実験室用ディソルバーの中で1時間かけて処理した。この処理の過程では、冷却することによって、懸濁液の温度が80℃を超えないように注意した。
【0132】
次いでその懸濁液にFD水を加えて2重量%の固形分含量とし、Sweco Separator実験室用篩で篩別して<250μmとした。
【0133】
そうして得られたマイカ画分を、次いで、ブフナーロート上で吸引により濾過分離し、得られたフィルターケーキを、さらなるコーティングのための出発材料として使用した。
【0134】
これによって、次の粒子サイズ分布(Malvern Mastersizer 2000)を有するマイカ画分が得られた:D10=19.2μm、D50=81.7μm、D90=280.9μm、スパンΔD=3.2。
【0135】
比較例3:広いスパンΔD=3.7を有する合成マイカの分級
1kgの市販の分級されていない合成/人工マイカSanbao(Shantou F.T.Z.Sanbao Pearl Luster Mica Tech Co.,Ltd.China製)を、1000mLのFD水と混合し、次いでAmerican Cyanamid Company製の実験室用エッジランナーミル中で、ほぼ1時間かけて層剥離させた。
【0136】
次いでそのケーキを、FD水で希釈して25重量%の固形分含量とし、Pendraulik TD200実験室用ディソルバーの中で1時間かけて処理した。この処理の過程では、冷却することによって、懸濁液の温度が80℃を超えないように注意した。
【0137】
次いでその懸濁液にFD水を加えて3重量%の固形分含量とし、Sweco Separator実験室用篩で篩別して<250μmとした。
【0138】
そうして得られたマイカ画分を、次いで、ブフナーロート上で吸引により濾過分離し、得られたフィルターケーキを、さらなるコーティングのための出発材料として使用した。
【0139】
これによって、次の粒子サイズ分布(Malvern Mastersizer 2000)を有するマイカ画分が得られた:D10=17.7μm、D50=74.6μm、D90=292.3μm、スパンΔD=3.7。
【0140】
B.単層顔料の調製(多層真珠光沢顔料のための出発材料)
比較例4:本発明実施例5のための出発材料の調製
200gの本発明実施例1からのガラスフレークを、乱流撹拌しながら、2000mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを1.9に調節し、次いで「SnO」の第一の層をそのガラスフレークの上に沈殿させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、3gのSnCl・5HO(10mLの濃HCl+50mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを1.6にまで下げ、次いで、75mLのTiCl溶液(200gTiO/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。その添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを1.6の一定に保った。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで650℃で30分間かけて焼成した。これによって、銀色の干渉色を有する光輝効果顔料が得られた。
【0141】
比較例5:本発明実施例6のための出発材料の調製
200gの本発明実施例2からのガラスフレークを、乱流撹拌しながら、2000mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを1.9に調節し、次いで「SnO」の第一の層をそのガラスフレークの上に沈殿させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、3gのSnCl・5HO(10mLの濃HCl+50mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを1.6にまで下げ、次いで、77mLのTiCl溶液(200gTiO/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。その添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを1.6の一定に保った。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで650℃で30分間かけて焼成した。これによって、銀色の干渉色を有する光輝効果顔料が得られた。
【0142】
比較例6:本発明実施例7および8のための出発材料の調製
200gの本発明実施例1からのガラスフレークを、乱流撹拌しながら、2000mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを1.9に調節し、次いで「SnO」の第一の層をそのガラス微小板の上に沈殿させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、3gのSnCl・5HO(10mLの濃HCl+50mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを3.0にまで上げ、次いで42mLのFeCl溶液(280gFe/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。その添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを3.0の一定に保った。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで650℃で30分間かけて焼成した。これによって、銀色の干渉色とわずかに橙赤色の吸収色を有する光輝効果顔料が得られた。
【0143】
比較例7:比較例9のための出発材料の調製
200gの比較例1からのガラスフレークを、乱流撹拌しながら、2000mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを1.9に調節し、次いで「SnO」の第一の層をそのガラスフレークの上に沈殿させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、3gのSnCl・5HO(10mLの濃HCl+50mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを1.6にまで下げ、次いで、75mLのTiCl溶液(200gTiO/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。その添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを1.6の一定に保った。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで650℃で30分間かけて焼成した。これによって、銀色の干渉色を有する光輝効果顔料が得られた。
【0144】
比較例8:天然マイカ/TiO(ルチル)
200gの本発明実施例3からの天然マイカを、乱流撹拌しながら、2000mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを1.9に調節し、次いで「SnO」の第一の層をそのマイカの上に沈殿させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、5gのSnCl・5HO(10mLの濃HCl+50mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを1.6にまで下げ、次いで、250mLのTiCl溶液(200gTiO/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。その添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを1.6の一定に保った。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで750℃で30分間かけて焼成した。これによって、銀色の干渉色を有する光輝効果顔料が得られた。
【0145】
C.多層真珠光沢顔料の調製
本発明実施例5:ガラスフレーク/TiO(ルチル)/SiO/TiO(ルチル)
200gの比較例4からのガラスフレークを、乱流撹拌しながら、1300mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。5%重量強度のNaOH溶液を使用してpHを7.5にまで上げ、次いで15分間撹拌した。次いで、その懸濁液の中に水ガラス溶液(52gの水ガラス溶液、27重量%SiO、52gのFD水と混合)を徐々に導入し、pHは7.5の一定に保った。この後、さらに20分間撹拌し、pHを1.9にまで下げた。次いで、SiOの表面の上に「SnO」の層を堆積させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、3gのSnCl・5HO(10mLの濃HCl+50mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを1.6にまで下げ、次いで、60mLのTiCl溶液(200gTiO/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。その添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを1.6の一定に保った。計量添加の途中、15mLのTiCl溶液添加後(サンプル1)、30mLのTiCl溶液添加後(サンプル2)、および45mLのTiCl溶液添加後(サンプル3)に、それぞれのサンプルを採取した。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキとサンプルを、まず100℃で乾燥させ、次いで650℃で30分間かけて焼成した。これによって、銀色の干渉色を有する極めて高光輝な多層真珠光沢含量が得られた。
【0146】
比較例9:ガラスフレーク/TiO(ルチル)/SiO/TiO(ルチル)
200gの比較例7からのTiOコーティングしたガラスフレークを、乱流撹拌しながら、1300mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。5%重量強度のNaOH溶液を使用してpHを7.5にまで上げ、次いで15分間撹拌した。次いで、その懸濁液の中に水ガラス溶液(52gの水ガラス溶液、27重量%SiO、52gのFD水と混合)を徐々に導入し、pHは7.5の一定に保った。この後、さらに20分間撹拌し、pHを1.9にまで下げた。次いで、SiOの表面の上に「SnO」の層を堆積させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、3gのSnCl・5HO(10mLの濃HCl+50mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを1.6にまで下げ、次いで、60mLのTiCl溶液(200gTiO/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。その添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを1.6の一定に保った。計量添加の途中、15mLのTiCl溶液添加後(サンプル1)、30mLのTiCl溶液添加後(サンプル2)、および45mLのTiCl溶液添加後(サンプル3)に、それぞれのサンプルを採取した。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキとサンプルを、まず100℃で乾燥させ、次いで650℃で30分間かけて焼成した。これによって、銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料が得られた。
【0147】
本発明実施例6:ガラスフレーク/TiO(ルチル)/SiO/Fe
200gの比較例5からのTiOコーティングしたガラスフレークを、乱流撹拌しながら、1300mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。5%重量強度のNaOH溶液を使用してpHを7.5にまで上げ、次いで15分間撹拌した。次いで、その懸濁液の中に水ガラス溶液(52gの水ガラス溶液、27重量%SiO、52gのFD水と混合)を徐々に導入し、pHは7.5の一定に保った。この後、さらに20分間撹拌し、pHを3.0にまで下げ、次いで、40mLのFeCl溶液(280gFe/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。その添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを3.0の一定に保った。計量添加の途中、20mLのFeCl溶液添加後(サンプル1)および30mLのFeCl溶液添加後(サンプル2)に、それぞれのサンプルを採取した。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキとサンプルを、まず100℃で乾燥させ、次いで650℃で30分間かけて焼成した。これによって、銀色の干渉色とわずかに橙赤色の吸収色を有する極めて高光輝な多層真珠光沢顔料が得られた。
【0148】
本発明実施例7:ガラスフレーク/Fe/SiO/Fe
200gの比較例6からのガラスフレークを、乱流撹拌しながら、1400mLのイソプロパノールの中に懸濁させ、加熱して70℃とした。この懸濁液に、55gのテトラエトキシシラン、55gのFD水、および5mLの10%重量強度のNH溶液を混合した。その反応混合物をほぼ12時間撹拌し、その後に濾過し、イソプロパノールを用いてフィルターケーキを洗浄し、真空乾燥キャビネットの中で100℃で乾燥させた。
【0149】
100gのそうして得られたSiOコーティングしたガラスフレークを、乱流撹拌しながら、700mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを1.9に調節し、次いで「SnO」の第一の層をそのコーティングしたガラスフレークの上に沈殿させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、1.5gのSnCl・5HO(5mLの濃HCl+25mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを3.0にまで上げ、次いで17.5mLのFeCl溶液(280gFe/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。この添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを3.0の一定に保った。計量添加の途中、3.75mLのFeCl溶液添加後(サンプル1)、7.5mLのFeCl溶液添加後(サンプル2)、10mLのFeCl溶液添加後(サンプル3)、12.5mLのFeCl溶液添加後(サンプル4)、そして15.5mLのFeCl溶液添加後(サンプル5)に、それぞれのサンプルを採取した。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキとサンプルを、まず100℃で乾燥させ、次いで650℃で30分間かけて焼成した。これによって、銀色の干渉色とわずかに橙赤色の吸収色を有する極めて高光輝な多層真珠光沢顔料が得られた。
【0150】
本発明実施例8:ガラスフレーク/Fe/SiO/TiO(ルチル)
200gの比較例6からのガラスフレークを、乱流撹拌しながら、1400mLのイソプロパノールの中に懸濁させ、加熱して70℃とした。この懸濁液に、55gのテトラエトキシシラン、55gのFD水、および5mLの10%重量強度のNH溶液を混合した。その反応混合物をほぼ12時間撹拌し、その後に濾過し、イソプロパノールを用いてフィルターケーキを洗浄し、真空乾燥キャビネットの中で100℃で乾燥させた。
【0151】
100gのそうして得られたSiOコーティングしたガラスフレークを、乱流撹拌しながら、700mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを1.9に調節し、次いで「SnO」の第一の層をそのコーティングしたガラスフレークの上に沈殿させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、1.5gのSnCl・5HO(5mLの濃HCl+25mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを1.6にまで下げ、次いで、35mLのTiCl溶液(200gTiO/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。この添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを1.6の一定に保った。計量添加の途中、7.5mLのTiCl溶液添加後(サンプル1)、10mLのTiCl溶液添加後(サンプル2)、12.5mLのTiCl溶液添加後(サンプル3)、15mLのTiCl溶液添加後(サンプル4)、そして25mLのTiCl溶液添加後(サンプル5)に、それぞれのサンプルを採取した。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキとサンプルを、まず100℃で乾燥させ、次いで650℃で30分間かけて焼成した。これによって、わずかに橙赤色のマストーンを有する極めて高光輝な銀色の多層真珠光沢顔料が得られた。
【0152】
比較例10:天然マイカ/TiO(ルチル)/SiO/TiO(ルチル)
200gの比較例2からの天然マイカを、乱流撹拌しながら、2000mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを1.9に調節し、次いで「SnO」の第一の層をそのマイカの上に沈殿させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、5gのSnCl・5HO(10mLの濃HCl+50mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを1.6にまで下げ、次いで、320mLのTiCl溶液(200gTiO/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。その添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを1.6の一定に保った。その後、5%重量強度のNaOH溶液を使用してpHを7.5にまで上げ、15分間撹拌を実施した。次いで、その懸濁液の中に水ガラス溶液(200gの水ガラス溶液、24重量%SiO、207gのFD水と混合)を徐々に導入し、pHは7.5の一定に保った。この後、さらに20分間撹拌し、pHをふたたび1.9にまで下げた。次いで、SiOの表面の上に「SnO」の第二の層を堆積させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、5gのSnCl・5HO(10mLの濃HCl+50mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを1.6にまで下げ、次いで、60mLのTiCl溶液(200gTiO/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。この添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを1.6の一定に保った。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで750℃で30分間かけて焼成した。これによって、銀色の干渉色を有する弱光輝な多層真珠光沢顔料が得られた。
【0153】
比較例11:合成マイカ/Fe/SiO/TiO(ルチル)
200gの比較例3からの合成マイカを、乱流撹拌しながら、2000mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを3.0に調節し、次いで37.5mLのFeCl溶液(280gFe/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。この添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを3.0の一定に保った。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、5%重量強度のNaOH溶液を使用してpHを7.5にまで上げ、次いで15分間撹拌した。次いで、その懸濁液の中に水ガラス溶液(153gの水ガラス溶液、20重量%SiO、207gのFD水と混合)を徐々に導入し、pHは7.5の一定に保った。この後、さらに20分間撹拌し、pHを1.9にまでふたたび下げた。次いで、SiOの表面の上に「SnO」の層を堆積させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、5gのSnCl・5HO(10mLの濃HCl+50mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを1.6にまで下げ、次いで、150mLのTiCl溶液(200gTiO/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。この添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを1.6の一定に保った。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで750℃で30分間かけて焼成した。これによって、銀色の干渉色と赤褐色の吸収色を有する弱光輝な多層真珠光沢顔料が得られた。
【0154】
本発明実施例9:天然マイカ/TiO(ルチル)/SiO/TiO(ルチル)
200gの本発明実施例3からの天然マイカを、乱流撹拌しながら、2000mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを1.9に調節し、次いで「SnO」の第一の層をそのマイカの上に沈殿させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、6gのSnCl・5HO(10mLの濃HCl+50mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを1.6にまで下げ、次いで、320mLのTiCl溶液(200gTiO/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。その添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを1.6の一定に保った。その後、5%重量強度のNaOH溶液を使用してpHを7.5にまで上げ、15分間撹拌を実施した。次いで、その懸濁液の中に水ガラス溶液(200gの水ガラス溶液、24重量%SiO、207gのFD水と混合)を徐々に導入し、pHは7.5の一定に保った。この後、さらに20分間撹拌し、pHをふたたび1.9にまで下げた。次いで、SiOの表面の上に「SnO」の第二の層を堆積させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、6gのSnCl・5HO(10mLの濃HCl+50mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを1.6にまで下げ、次いで、320mLのTiCl溶液(200gTiO/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。この添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを1.6の一定に保った。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで750℃で30分間かけて焼成した。これによって、銀色の干渉色を有する極めて高光輝な多層真珠光沢顔料が得られた。
【0155】
本発明実施例10:合成マイカ/Fe/SiO/TiO(ルチル)
200gの本発明実施例4からの合成マイカを、乱流撹拌しながら、2000mLのFD水の中に懸濁させ、加熱して80℃とした。希HClを使用してその懸濁液のpHを3.0に調節し、次いで60mLのFeCl溶液(280gFe/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。この添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを3.0の一定に保った。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、5%重量強度のNaOH溶液を使用してpHを7.5にまで上げ、次いで15分間撹拌した。次いで、その懸濁液の中に水ガラス溶液(185gの水ガラス溶液、24重量%SiO、207gのFD水と混合)を徐々に導入し、pHは7.5の一定に保った。この後、さらに20分間撹拌し、pHを1.9にまでふたたび下げた。次いで、SiOの表面の上に「SnO」の層を堆積させた。この層は、pHを一定に保つために10%重量強度のNaOH溶液を同時に計量添加しながら、5gのSnCl・5HO(10mLの濃HCl+50mLのFD水の中)からなる溶液を1時間以上かけて添加することによって形成した。完全に沈殿させるために、その懸濁液をさらに15分間撹拌した。その後、希HClを使用してpHを1.6にまで下げ、次いで、200mLのTiCl溶液(200gTiO/L−FD水)をその懸濁液の中に計量添加した。この添加に際しては、10%重量強度のNaOH溶液を用いたカウンター調節によって、pHを1.6の一定に保った。これに続けて、さらに15分間撹拌し、濾過し、FD水を用いてフィルターケーキを洗浄した。そのフィルターケーキを、まず100℃で乾燥させ、次いで750℃で30分間かけて焼成した。これによって、銀色の干渉色と赤褐色の吸収色を有する極めて高光輝な多層真珠光沢顔料が得られた。
【0156】
II.物性解析
IIa.角度依存性の色彩の測定
彩度値を測定するために、慣用されるニトロセルロースワニス(Dr.Renger Erco Bronzemischlack 2615e;Morton製)の中に、顔料添加量が(湿ワニスの全重量を基準にして)6重量%のレベルとなるように、多層真珠光沢顔料を撹拌しながら組み入れた。多層真珠光沢顔料をまず導入し、次いでブラシを用いてワニスの中に分散させた。
【0157】
できあがったワニスを、ドローダウン装置(RK Print Coat Instr.Ltd.Citenco K101)を用い、多層真珠光沢顔料のD50値に応じて、表3に従った湿膜厚みで、Byk−Gardnerブラック/ホワイトドローダウンチャート(Byko−Chart2853)の上に適用し、次いで、室温で乾燥させた。
【0158】
メーカーの取扱説明書に従って、多角度測色計BYK−MAC(BYK Gardner製)を、入射角を45度の一定で使用し、LおよびCの値を、反射角に対する各種の観察角で求めた。反射角に比較的近い、15度および−15度の観察角が特に適切であった。本発明の多層真珠光沢顔料の適切な彩度値は、C15値としたが、これは、反射角から15度ずらした角度で測定したものであった。
【0159】
反射性の強いサンプル(理想的な鏡面の場合)は、実質的に全ての入射光をいわゆる反射角で反射した。この場合、干渉色の色が最も強く表れた。測定の過程で反射角から離れるほど、測定可能な光量、したがって干渉効果が低下した。
【0160】
IIb.光沢の測定
光沢は指向性反射の尺度であり、Micro−Tri−Gloss機器を使用して特性解析することができる。したがって、散乱性の強いサンプルほど、低い光沢を示す。
【0161】
IIaからのニトロワニス適用物を、Byk Gardner製のMicro−Tri−Gloss光沢メーターを使用し、黒色のバックグランドの上で、高い光沢のサンプルでは20度、中程度の光沢のサンプルでは60度の測定角で測定にかけた。60度における光沢値が70グロスユニットを超えた場合には、そのサンプルは20度で測定する(Byk−Gardnerカタログ2007/2008、p.14)。
【0162】
IIc.粒子サイズの測定:
サイズ分布曲線は、Malvern製の機器(機器名:Malvern Mastersizer 2000)を使用し、メーカーの取扱説明書に従って求めた。この目的のために、約0.1gの対象としている顔料を、分散助剤を添加せず連続的に撹拌して水性懸濁液の形態とし、パスツールピペットを用いて測定機器のサンプル調製セルの中に入れ、繰り返し測定した。個々の測定結果から、平均値を求めた。この場合、散乱光信号は、Mieの理論に従って評価したが、それには、粒子の屈折および吸収の挙動も含まれている(図3)。
【0163】
本発明の文脈においては、平均サイズD50は、レーザー回折法によって得られた体積平均サイズ分布関数の累積篩下曲線のD50値を指している。D50値は、その顔料の50%が、表記された値、たとえば20μmと同じかまたはそれより小さい直径を有しているということを示している。
【0164】
したがって、D90値は、その顔料の90%が、当該の数値と同じかまたはそれより小さい直径を有しているということを示している。
【0165】
さらに、D10値は、その顔料の10%が、当該の数値と同じかまたはそれより小さい直径を有しているということを示している。
【0166】
ΔD=(D90−D10)/D50で定義されるスパンΔDは、分布の幅を与えている。
【0167】
III.結果
【0168】
【表5】

【0169】
表5におけるデータから、ガラスフレーク/TiO/SiO/Feの層構成と低いスパンΔD=1.1を有する本発明実施例5が、二酸化チタン層の厚みが増すことによって、強い光沢上昇を示したということが明らかに見て取れる。この場合、出発材料の比較例4と比べた光沢上昇は、31.6ユニットであった。同様にして、大きいスパンΔD=2.0を有する比較例9の場合にも光沢値が高くはなったが、その増加はわずかに10グロスユニットであった(図4)。比較例4および7におけるTiO層の厚みの増加は、着色した、非銀色の干渉効果となったであろう。
【0170】
ガラスフレーク/TiO/SiO/Feの層構成を有する本発明実施例6についても、同様の効果が見出されたが(表6)、この場合は17.4ユニットの光沢値の増加である(図5)。
【0171】
比較例5におけるTiO層の厚みの増加は、着色した、非銀色の干渉効果となったであろう。
【0172】
【表6】

【0173】
本発明実施例7および8(表7)では顕著な光沢上昇が見られたが、ここでは、狭いスパンを有するガラスフレークを、まず吸収性の酸化鉄を用いてコーティングし(本発明実施例7)、次いでSiOおよびFeを用いてコーティングするか(本発明実施例6)、またはSiOおよびTiOを用いてコーティングした(本発明実施例8)。たとえば、本発明実施例7の最終生成物では14.9ユニットの光沢上昇、そして本発明実施例8の最終生成物では17.1ユニットの光沢上昇が見られた(図6)。
【0174】
比較例6におけるFe層の厚みの増加は、着色した、非銀色の干渉効果となったであろう。
【0175】
【表7】

【0176】
マイカベースの本発明実施例9および10の場合も同様に、特に同じ層構成を有する比較例10および11と比べて、狭いスパンが理由の極度の光沢増加効果が観察される(表8)。さらに、ここでも明らかになるのは、多層化法によって光沢がさらに増加するということである[本発明実施例9(構成:マイカ/TiO/SiO/TiO)と比較例8(構成:マイカ/TiO)の比較]。
【0177】
【表8】

【0178】
IV.実用例
以下の化粧料用途の実施例では、上述の実施例の一つによって製造した本発明の多層真珠光沢顔料を使用した。
【0179】
実施例11:ボディローション(シリコーン中水)
【0180】
【表9】

【0181】
多層真珠光沢顔料は、0.5%〜2.5重量%の範囲で使用することができる。バランスをとるために水を使用することができる。
【0182】
相Aを混合し、加熱して75℃とし、相Bを混合してから加熱して70℃とし、次いで相Aに相Bを均質化させながら徐々に添加した。撹拌しながら、そのエマルションを冷却し、適切な容器に小分けした。
【0183】
実施例12:ボディパウダー
【0184】
【表10】

【0185】
多層真珠光沢顔料は、0.2%〜5.0重量%の範囲で使用することができる。バランスをとるためにマイカを使用することができる。
【0186】
相Aの構成成分を互いに混合し、次いで相Bを相Aに添加した。混合後に、容器に小分けする。
【0187】
実施例13:クリームアイシャドー
【0188】
【表11】

【0189】
多層真珠光沢顔料は、0.1%〜5.0重量%の範囲で使用することができる。バランスをとるためにひまし油を使用することができる。
【0190】
相Aを混合し、加熱して85℃とし、相Bの構成成分も同様にして互いに混合し、次いで撹拌しながら相Aに添加した。適切な容器に小分けしてから、その混合物を室温にまで冷却した。
【0191】
実施例14:ファウンデーション
【0192】
【表12】

【0193】
多層真珠光沢顔料は、0.1%〜1.0重量%の範囲で使用することができる。バランスをとるために水を使用することができる。
【0194】
相Aおよび相Bを個別に秤量した。相Aを撹拌しながら加熱して70℃とし、撹拌しながら相Bを添加した。相Cを完全に混合してAristoflexを溶解させ、次いで同様にして加熱して70℃とした。相Cを相ABに添加し、冷却して40℃としてから、相Dを添加した。
【0195】
実施例15:ヘアジェル
【0196】
【表13】

【0197】
多層真珠光沢顔料は、0.01%〜0.5重量%の範囲で使用することができる。バランスをとるために水を使用することができる。
【0198】
多層真珠光沢顔料を相Aの水と共に撹拌し、Aristoflex AVPおよびクエン酸を撹拌しながら添加し、その組成物を800rpmの速度で15分間混合した。相Bの構成成分を溶解させて均質な溶液とし、次いで相Bを相Aに添加し、その組成物を混合した。
【0199】
実施例16:ヘアマスカラ
【0200】
【表14】

【0201】
多層真珠光沢顔料は、0.5%〜5.0重量%の範囲で使用することができる。バランスをとるために相Aの水を使用することができる。
【0202】
相Aおよび相Bを個別に加熱して80℃とし、次いで相Bを相Aに徐々に添加した。別の容器の中で、相Cの水にKlucelおよびVeegumを添加した。次いで相ABを冷却して40℃としたが、冷却の過程で、撹拌しながら相CおよびDを混合した。
【0203】
実施例17:リップグロス
【0204】
【表15】

【0205】
多層真珠光沢顔料は、0.01%〜0.50重量%の範囲で使用することができる。バランスをとるためにVersagel ME750を使用することができる。
【0206】
相Aを加熱して85℃とし、次いで相Bの構成成分を別個に相Aに添加し、その混合物を撹拌してその粘稠度を均一にしたら、その時点でそれをリップグロス容器に小分けした。
【0207】
実施例18:リップライナー
【0208】
【表16】

【0209】
多層真珠光沢顔料は、0.5%〜10重量%の範囲で使用することができる。バランスをとるために他の顔料を使用することができるが、顔料添加量は25重量%に維持しなければならない。
【0210】
相Aを加熱して85℃とし、次いで相Bを撹拌しながら相Aに添加し、その組成物を均一にした。その後、その混合物を熱いままで、スティックの型に導入した。
【0211】
実施例19:リップスティック
【0212】
【表17】

【0213】
多層真珠光沢顔料は、0.5%〜10.0重量%の範囲で使用することができる。バランスをとるために他の顔料を使用することができるが、顔料添加量は21重量%に維持しなければならない。
【0214】
相Aを加熱して85℃とし、その後で、相Bを相Aに添加し、その組成物を混合した。次いで、その混合物を、75℃の温度で、リップスティックの型に小分けした。
【0215】
実施例20:リキッドタイプアイライナー
【0216】
【表18】

【0217】
多層真珠光沢顔料は、0.5%〜8.0重量%の範囲で使用することができる。バランスをとるために水を使用することができる。
【0218】
Veegumを相Aの中に分散させ、15分間撹拌し、その後で、相Bを相Aに添加し、次いで相Cを相ABに添加し、さらに10分間撹拌した。次いで、相Dを相ABCに添加し、その混合物を加熱して75℃とした。相Eも同様にして加熱して75℃とし、次いで相ABCDに添加した。冷却して60℃としてから、相Fを添加し、その組成物を適切な容器に小分けした。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】CIELabカラーシステム
【図2】3種類の顔料の規約反射率プロット
【図3】レーザー回折における粒子の性質の影響
【図4】本発明実施例5、比較例4、比較例7、比較例9の光沢値
【図5】本発明実施例6、比較例5の光沢値
【図6】本発明実施例7、本発明実施例8、比較例6の光沢値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学活性なコーティングを有する微小板形状の透明な基材をベースとする、銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料であって、
光学活性なコーティングが、少なくとも、
a)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率層A
b)n<1.8の屈折率を有する低屈折率層B
c)n≧1.8の屈折率を有する高屈折率層C
ならびにさらに
d)任意の外側保護層D
を含み、
そして多層真珠光沢顔料が、スパンΔDを0.7〜1.4とする、体積平均サイズ分布関数の累積度数分布からの指数D10、D50、D90を有しており、スパンΔDが、式ΔD=(D90−D10)/D50に従って計算されることを特徴とする、銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料。
【請求項2】
層Aおよび/または層Cが、相互に独立して、選択的および/または非選択的吸収性または非吸収性であることを特徴とする、請求項1の銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料。
【請求項3】
層Bが、非吸収性であることを特徴とする、先行する請求項のいずれかの銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料。
【請求項4】
多層真珠光沢顔料が、0.7〜1.3のスパンΔDを有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかの銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料。
【請求項5】
層Aおよび層Cの光学層厚みが、それぞれの場合において50〜200nmの範囲にあることを特徴とする、先行する請求項のいずれかの銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料。
【請求項6】
層Bの光学層厚みが、30〜150nmの範囲にあることを特徴とする、先行する請求項のいずれかの銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料。
【請求項7】
層Aおよび/またはCが、二酸化チタンおよび/または酸化鉄を含むことを特徴とする、先行する請求項のいずれかの銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料。
【請求項8】
層Bが、二酸化ケイ素を含むことを特徴とする、先行する請求項のいずれかの銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料。
【請求項9】
銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料の微小板形状の透明な基材が、天然マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、SiO微小板、Al微小板、およびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、先行する請求項のいずれかの銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料。
【請求項10】
多層真珠光沢顔料が、≦20の彩度C15を有することを特徴とする、先行する請求項のいずれかの銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料。
【請求項11】
先行する請求項のいずれかの銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料を製造するための方法であって、方法が、以下の
i)コーティングされる微小板形状の透明な基材をサイズ分級する工程
ii)少なくとも、請求項1に記載の層A〜Cおよびさらには任意の層Dを用いて微小板形状の透明な基材をコーティングする工程
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項12】
化粧料配合物、プラスチック、フィルム、織物、セラミック材料、ガラス、およびコーティング組成物、たとえば、塗料、印刷インキ、液状インキ、ワニスもしくは粉体コーティングにおける、請求項1〜10のいずれかの銀色の干渉色を有する多層真珠光沢顔料の使用。
【請求項13】
請求項1〜10のいずれかの多層真珠光沢顔料を含む調製物。
【請求項14】
請求項1〜10のいずれかの多層真珠光沢顔料を用いてコーティングされた物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−502468(P2013−502468A)
【公表日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−525074(P2012−525074)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/004867
【国際公開番号】WO2011/020572
【国際公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(502099902)エッカルト ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (48)
【氏名又は名称原語表記】Eckart GmbH
【Fターム(参考)】