説明

鋼プレートを加熱するための炉

【課題】大面積の、即ち数平方メートルの、大きく被覆されたプレートのための大きな装入容積を可能にすると同時に、所要スペースが僅かであるような鋼プレートを加熱するための炉を提供する。
【解決手段】鋼プレートを加熱するための炉であって、水平に互いに上下に配置された複数の炉平面(3)を有しており、各炉平面(3)は、少なくとも1つの鋼プレート(2)を収容するために設けられており、各炉平面(3)には、加熱中に鋼プレート(2)を動かすための手段(4)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼プレートを加熱するための炉に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、鋼プレート、特に、加熱変形のために用いられ被覆されたプレートは、通常はローラ式火炉において加熱される。この場合、複数の鋼プレートは互いに所定の間隔をおいて、炉のローラ経路上に配置される。セラミック材料から成るローラによって、加熱したい鋼プレートが継続的に炉を通して炉出口の方向に搬送される。必要なサイクル時間、変形加工すべき鋼プレートのサイズ、材料特性に応じて、数メータから数百メータ以上に到るまでの計算可能な炉長さが生じる。長い炉長さも原則的に技術的には実現可能であるが、実際には不都合である。何故ならば、極めて大きな所要スペースの他にも、炉の積載ステーションが、この炉に隣接するプレスから遠く離れているので、一人の作業員が同時に積載ステーションとプレスとを管理することができないという問題があるからである。これにより管理の手間が増加するだけでなく、縦長の炉はエネルギ的な理由からも望ましくない。何故ならば、縦長の炉は、小さな内部体積に対して比較的大きな表面積を有しているからである。長い炉により相応に長いローラ経路が必要であり、誤作動のリスクは炉の長さに応じて高まる。炉が故障すると、結果として全ての焼き入れラインを所属のプレスシステムとともに停止させなければならない。
【0003】
被覆された鋼プレートではまさに、加熱中に鋼プレートの継続的な運動を強制的に行う必要がある。何故ならば、さもなければ被覆が局所的にプレートから剥がれてしまう恐れがあるからである。このような損傷は搬送ローラと鋼プレートとの間の熱の伝達に起因する。被覆されていな鋼プレートにおいては熱の伝達はローラによって促進されるという研究がある。従って、鋼プレート全体に均一な加熱を行わせるためには、ローラ上に置かれた被覆されたプレートを運動させ続けるしかない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明の課題は、大面積の、即ち数平方メートルの、大きく被覆されたプレートのための大きな装入容積を可能にすると同時に、所要スペースが僅かであるような鋼プレートを加熱するための炉を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題を解決するために本発明の構成では、水平に互いに上下に配置された複数の炉平面を有しており、各炉平面は、少なくとも1つの鋼プレートを収容するために設けられており、各炉平面には、加熱中に鋼プレートを動かすための手段が設けられているようにした。
【0006】
本発明の有利な構成は、請求項2以下に記載されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明による鋼プレートを加熱するための炉では、複数の水平に互いに上下に配置された炉平面が設けられており、各1つの炉平面が、少なくとも1つの鋼プレートを収容するために設けられており、各炉平面には、加熱中に鋼プレートを動かすための手段が設けられている。このような炉は、階層状炉とも言われ、加熱変形加工におけるプロセス経過の最適化に関して大きな利点を有している。本発明による炉が2つの、有利には4つ以上の、加熱される互いに上下に配置された平面を有していることにより、所要スペースは縦長のローラ式炉よりも極めて小さくなる。同時に、本発明による炉では、被覆された鋼プレートも均一に加熱することができる。何故ならば各炉平面に、加熱中に鋼プレートを動かすための手段が設けられているからである。鋼プレートを動かすための手段は、有利には支持ローラであって、該支持ローラ上に鋼プレートが載置される。これにより、鋼プレートが均一に加熱され、鋼プレートの被覆が不均一な加熱により損傷されることがないことが保証される。
【0008】
有利には、炉平面の領域では鋼プレートは並進的に可逆的に移動される。並進運動の逆転により炉は特にスペース節約的に形成することができ、この場合、従来のローラ式炉のように均一な加熱という利点を失うことはない。
【0009】
鋼プレートを動かすための手段の運動方向が、炉もしくは個々の炉平面の装入方向に相当していると有利である。確かに原則的には、鋼プレートは炉平面の内側で、装入方向に対して横方向に運動されることが可能である。しかしながら炉の内側での運動方向が装入方向に相当するならば、炉平面の内側で支持ローラは同時に装入するために使用することができ、このことは装入装置から炉平面への移行を容易にする。
【0010】
互いに上下に配置された個々の炉平面への装入は有利には、高さ方向で移動可能な装入装置を介して行われるので、任意の数の炉平面のために唯1つの装入装置しか必要ではない。
【0011】
原則的に装入装置が同時に取出装置であっても良い。これにより装入装置および取出装置を含む炉のための所要面積はさらに減じることができる。しかしながら炉はいずれにせよ比較的小さな面積しか必要としないので、勿論、炉の装入装置とは反対側に配置された、装入すべき炉平面の高さに移動可能な取出装置を設けることもできる。装入装置も取出装置も有利には搬送ローラを有していて、これらの搬送ローラの上に鋼プレートを載置することができ、これらの搬送ローラを介して鋼プレートは各炉平面へと搬送可能、もしくは各炉平面から供給可能である。
【0012】
炉から取り出した後の熱損失を回避するために、取出装置に加熱ユニットを設けることができる。加熱ユニットは有利には、取出装置の搬送ローラの上方に配置されている。取出装置が鋼プレートを引き渡す引き渡しステーションにも有利には加熱装置が設けられ、これにより加熱された鋼プレートを、後続の加工ステップへと所望の温度で供給することができる。
【0013】
本発明による炉は有利には、互いに隣接する炉平面の間に、熱的に分離するための手段を有していて、これにより、互いに隣接する炉平面を互いに別個に加熱することができる。このようにして、個々の炉平面では、必要とあらば種々異なる温度レベルにすることができる。さらには、個々の炉平面を、例えば修理が必要な場合等に遮断することができる。さらには、別の炉平面は引き続き運転し、これにより、1つの炉平面が故障した場合でも、後続のプレスステーションを含む炉全体を強制的に停止させる必要はない。むしろ修理は、生産を完全に中断させずに、所定の保守整備間隔へと移行する。
【0014】
しかしながら互いに隣接する炉平面を、炉の1つの共通に加熱可能な高さ領域にまとめても有利である。従ってこれらの炉平面の間では熱的な分離は行われず、むしろ複数の炉平面を、一緒に加熱可能な1つのゾーンにまとめることにより、このゾーンの内側での最適な加熱特性が保証される。
【0015】
本発明による炉により、1つの炉で同時に加熱される鋼プレートと、炉の面積との間の比を著しく上昇させることができ、炉の面積の平方メートルあたりの4つ以上のプレートといった比率が可能である。
【0016】
個々の炉平面に引き出しエレメントを設けることも考えられる。この場合、引き出しエレメントの底面は支持ローラを有しており、該支持ローラの上に鋼プレートが配置される。装入および取り出しのために引き出しエレメントは水平に炉から引き出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に図面につき本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0018】
図1には、鋼プレート2の加熱のための炉1が示されている。この炉1は、互いに上下に配置された、同一に構成された10の炉平面3を有しており、この実施例では各炉平面3が1つの鋼プレート2を収容するために設けられている。符号1で示した下方の炉平面3に収容された鋼プレート2は加熱中は鋼プレート2を動かすための手段4の上に位置している。鋼プレート2を動かすための手段4は支持ローラ5と、支持ローラ5のための駆動手段(図示せず)を有している。矢印Pは、鋼プレート2が加熱中に支持ローラ5を介して並進的に往復運動することを示している。この場合、鋼プレート2は、所望の温度に達し、所望の加熱期間に達するまで炉もしくは各炉平面3を出ない。
【0019】
矢印Pもしくは支持ローラ5の搬送方向は、矢印Bで示した装入方向に相当する。炉1への装入は装入装置6を介して行われる。この装入装置6は同様に、鋼プレート2を動かすための手段4の支持ローラ5と同じ向きの支持ローラ7を有している。装入装置6は、それぞれ装入したい炉平面3の高さに移動可能である。このことは矢印P1およびP2によって示されている。
【0020】
加熱された鋼プレート2の取り出しは、装入装置6とは反対側の炉1の長手方向側にある取出装置8を介して行われる。取出装置8も複数の搬送ローラ9を有していて、これらの搬送ローラ9の向きは、個々の炉平面3の内側の搬送ローラ5に相応している。従って、矢印Eで示した取出方向は装入方向Bにも相当する。取出装置8も同様に、矢印P3及びP4で示したように高さ方向で移動可能である。取出装置8は、搬送ローラ9の上側に加熱ユニット10を有している。この加熱ユニット10を介して、既に加熱された鋼プレート2が付加的に所定の温度で保持される。加熱ユニット10は取出装置8とともにこの高さに移動可能である。図2に示したように、炉1は、加熱すべき鋼プレート2よりも僅かにだけ長い長さを有しているので、同時に加熱すべき鋼プレートと炉の設置面との間の比は、1つだけのローラ軌道を備えた縦長のローラ炉の場合よりも極めて大きい。
【0021】
図2には、それぞれ炉1の角隅領域に配置されているバーナ11が単に概略的に示されている。図2の上方領域には、装入装置6が、下方領域には取出装置8が位置している。
【0022】
図3の構成は、図1及び図2のものとは、個々の炉平面が引き出しエレメント12を有している点で異なっている。引き出しエレメント12の底面は、鋼プレート2を支持する搬送ローラ13によって形成されており、これは鋼プレート2の装入及び取り出しのために水平に走入および走出可能である。装入・取出装置ステーション14はこの実施例では2軸ロボットによって形成されている。これは鋼プレート2を把持アームで保持して、矢印P5の方向で上方及び下方に、若しくは矢印P6の方向で側方に動かし、相応の鋼プレート2を各引き出しエレメント12から、または各引き出しエレメント12へと搬送する。図1及び図2の実施例とのさらなる相違点は、個々の引き出しエレメント12の底面を成している搬送ローラ13が、矢印Bで示した取出装置方向と同じ向きを有していることにある。矢印Bは同時に装入方向を示している。炉15内での鋼プレート2の運動は、装入方向Bに対して直角に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施例の炉を概略的に示した斜視図である。
【図2】図1の炉の炉平面の水平断面図である。
【図3】別の実施例の炉を概略的に示した斜視図である。
【符号の説明】
【0024】
1 炉、 2 鋼プレート、 3 炉平面、 4 鋼プレートを動かすための手段、 5 支持ローラ、 6 装入装置、 7 支持ローラ、 8 取出装置、 9 支持ローラ、 10 加熱装置、 11 バーナ、 12 引き出しエレメント、 13 支持ローラ、 14 装入装置、 15 炉、 E 取出方向、 B 装入方向、 P,P1,P2,P3,P4,P5,P6 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼プレートを加熱するための炉であって、水平に互いに上下に配置された複数の炉平面(3)を有しており、各炉平面(3)は、少なくとも1つの鋼プレート(2)を収容するために設けられており、各炉平面(3)には、加熱中に鋼プレート(2)を動かすための手段(4)が設けられていることを特徴とする、鋼プレートを加熱するための炉。
【請求項2】
鋼プレート(2)を動かすための手段(4)が複数の支持ローラ(5)であって、該支持ローラの上に鋼プレート(2)が載置される、請求項1記載の炉。
【請求項3】
鋼プレート(2)が並進的に可逆的に各炉平面(3)において移動可能である、請求項1又は2記載の炉。
【請求項4】
鋼プレート(2)を動かすための手段(4)の運動方向(P)が装入方向(B)に相当する、請求項1から3までのいずれか1項記載の炉。
【請求項5】
装入したい炉平面(3)の高さに移動可能な装入装置(6)が設けられている、請求項1から4までのいずれか1項記載の炉。
【請求項6】
装入装置(6)が同時に取出装置方向である、請求項5記載の炉。
【請求項7】
炉(1)の装入装置(6)とは反対の側に配置された、装入したい炉平面(3)の高さへと移動可能な取出装置(8)が設けられている、請求項5記載の炉。
【請求項8】
装入装置(6)が複数の搬送ローラ(7)を有しており、該搬送ローラの上に鋼プレート(2)が載置されており、これらの搬送ローラを介して鋼プレート(2)が所定の炉平面(3)へと搬送可能である、請求項5から7までのいずれか1項記載の炉。
【請求項9】
取出装置(8)が搬送ローラ(9)を有しており、該搬送ローラの上に鋼プレート(2)が載置されて、該搬送ローラを介して鋼プレート(2)が所定の炉平面(3)に搬送可能である、請求項5から8までのいずれか1項記載の炉。
【請求項10】
取出装置(8)が加熱ユニット(10)を有している、請求項6から9までのいずれか1項記載の炉。
【請求項11】
取出装置(8)が、加熱された鋼プレート(2)を引き渡すために、引き渡しステーションの所定の高さまで移動可能である、請求項6から10までのいずれか1項記載の炉。
【請求項12】
引き渡しステーションには加熱装置が設けられている、請求項11記載の炉。
【請求項13】
互いに隣接する炉平面(3)の間に、熱的に分離するための手段が配置されており、互いに隣接する炉平面(3)を互いに別個に加熱することができる、請求項1から12までのいずれか1項記載の炉。
【請求項14】
互いに隣接する炉平面(3)が、炉(1,15)の、共通に加熱可能な高さ領域を成している、請求項1から12までのいずれか1項記載の炉。
【請求項15】
炉平面(3)が引き出しエレメント(12)を有しており、該引き出しエレメント(12)の底面が、鋼プレート(2)を支持する搬送ローラ(13)によって形成されていて、前記引き出しエレメント(12)は、鋼プレート(2)の装入・取り出しのために、水平方向に走入・走出可能である、請求項1から14までのいずれか1項記載の炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−298270(P2007−298270A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−121791(P2007−121791)
【出願日】平成19年5月2日(2007.5.2)
【出願人】(504258871)ベンテラー アウトモビールテヒニク ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (60)
【氏名又は名称原語表記】Benteler Automobiltechnik GmbH
【住所又は居所原語表記】Residenzstrasse 1, D−33104 Paderborn, Germany
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】