説明

鏡筒アダプタ、レンズ鏡筒およびそれを用いた撮像装置

【課題】近距離において輻輳角を3度以下にして、疲労感を低減し、飛び出し感や奥行き感を楽しめる立体映像を撮像することが可能な鏡筒アダプタ、レンズ鏡筒およびそれを用いた撮像装置を提供することを目的としている。
【解決手段】被写体の光束300は、第1光軸上に配置されたアダプタ用第1レンズ系410と第2光軸上に配置されたアダプタ用第2レンズ系420を介して、ズーム用レンズ系である第2レンズ系120とフォーカス用レンズ系である第4レンズ系140に取り込んでおり、鏡筒アダプタ400が取り付けられる前のレンズ鏡筒100のみによって決定される画角よりも、鏡筒アダプタ400が取り付けられた後のレンズ鏡筒100と鏡筒アダプタ400によって決定される第1光軸における画角および第2光軸における画角を広くした構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体映像として視聴するための映像を撮影する際に用いる鏡筒アダプタ、レンズ鏡筒およびそれを用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal−oxide Semiconductor)センサ等の撮像素子を用いたデジタルスチルカメラやビデオカメラの普及が著しい。一般に、これらのデジタルスチルカメラやビデオカメラには、被写体が発した光束を撮像素子に結像させて、被写体の光学像を撮像するためのレンズ鏡筒が取り付けられている。
【0003】
このようなレンズ鏡筒を用いて光学像を撮像する際、2次元の映像だけでなく、立体映像として視聴するための映像を撮像することも要望されている。立体映像の撮像装置としては、例えば、特許文献1に開示されている。図13に示すように、この撮像装置は、第1光軸上と第2光軸上に配置した2つの左右シャッタ11R、11Lと2つの左右ミラー12R、12Lを有する。第1光軸上にある被写体の光束と第2光軸上にある被写体の光束は、2つの左右ミラー12R、12Lで反射され、プリズム13を介してレンズ14に取り込まれる。このレンズ14に取り込まれた被写体の光束は、CCD15で結像される。左右のシャッタ11R、11Lで、第1光軸上の光束と第2光軸上の光束とを切り替えながら、各々の光束がCCD15で結像されて、第1光軸上の光学像と第2光軸上の光学像が形成される。CCD15で結像された第1光軸上の光学像と第2光軸上の光学像は、各々、立体映像用の右眼用映像と左眼用映像に対応する。この右眼用映像と左眼用映像は、光軸の異なる映像なので、互いに両眼視差を有する。
【0004】
特許文献1の他に、両眼視差を有する右眼用映像と左眼用映像を撮像する撮像装置については、特許文献2や特許文献3に開示されている。
【0005】
これらの撮像装置で撮像した互いに視差を有する右眼用映像と左眼用映像は、例えば、特許文献4に開示された立体映像表示装置を用いることによって、立体映像として見ることができる。立体映像表示装置は、互いに視差を有する右目用映像と左目用映像を交互に表示パネルの画面に表示する。視聴者は、右目用映像が写し出された際は、この映像を右目で見て、左目用映像が写し出された際は、この映像を左目で見ればよい。右目用映像を右目で、左目用映像を左目で見るためには、例えば、シャッタ方式の眼鏡を用いる。このシャッタ方式の眼鏡には、右目用レンズと左目用レンズに、光の通過と遮断を切り替える液晶フィルタを配置している。液晶フィルタのシャッタ開閉によって、光の通過と遮断を切り替えれば、右目用映像を右目で見ることができ、左目用映像を左目で見ることができる。このシャッタ開閉を繰り返し続けることによって、視聴者は視差を有する右目用映像と左目用映像から立体映像を見ることができる。なお、この立体映像は、右目用映像と左目用映像の視差量によって、映像の奥行き感や飛び出し感が変わる。視差量が大きければ、奥行きや飛び出しも大きくなり、視差量が小さければ、奥行きや飛び出しも小さくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−92771号公報
【特許文献2】特開平8−307904号公報
【特許文献3】実開平1−155043号公報
【特許文献4】特開2000−36939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
立体映像用の右眼用映像と左眼用映像は互いに視差を有するが、この視差量が大きいと映像の飛び出し感や奥行き感も大きくなる。この飛び出し感や奥行き感が大きくなり過ぎると、視聴者は疲労感を受けることがある。視差量が大きくなり過ぎないように右眼用映像と左眼用映像を撮像するためには、輻輳角を3度以下にすることが望ましい。この輻輳角とは、被写体から見て右眼と左眼のなす角のことをいう。
【0008】
特許文献1に開示された撮像装置における輻輳角は、被写体から見て左右ミラー12Rと12Lのなす角に相当する。この輻輳角は、被写体と撮像装置との距離が遠くなればなるほど小さくなり、被写体と撮像装置との距離が近くなればなるほど大きくなる。また、この輻輳角は、左右のミラー12R、12Lの距離に影響される。右眼用映像または左眼用映像に対応する第1光軸と第2光軸の間隔が狭ければ被写体から見た輻輳角は小さくなり、第1光軸と第2光軸の間隔が広ければ被写体から見た輻輳角は大きくなる。
【0009】
一般的に、立体映像として望ましい右眼用映像と左眼用映像を撮像する場合、撮像装置に取り込まれる第1光軸と第2光軸の間隔は70mm〜90mmに設定されることが多い。この間隔は、ステレオベースという。
【0010】
このステレオベースを70mm〜90mmに設定した場合、例えば、1m〜5m程度の近距離において立体映像を撮像しようとすると、上記従来の撮像装置では、輻輳角を3度以下にすることが難しい。また、一般的に、立体映像の飛び出し感や奥行き感を楽しむための被写体と撮像装置までの距離は、近距離に限られる。
【0011】
すなわち、近距離において輻輳角を3度以下にすれば、疲労感を受けることがなく、飛び出し感や奥行き感を楽しめる立体映像を撮像できる。
【0012】
しかし、上記従来の撮像装置では、近距離において輻輳角を3度以下にできないので、視聴者は飛び出し感や奥行き感に疲労感を受ける可能性があり、立体映像を十分に楽しめないという問題を有していた。
【0013】
本発明は上記問題を解決するもので、近距離において輻輳角を3度以下にして、疲労感を低減し、飛び出し感や奥行き感を楽しめる立体映像を撮像することが可能な鏡筒アダプタ、レンズ鏡筒およびそれを用いた撮像装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために本発明の鏡筒アダプタは、広角側または望遠側にズーム調整するズーム用レンズ系を備えたレンズ鏡筒または前記レンズ鏡筒を備えた撮像装置に取り付けられる鏡筒アダプタであって、前記鏡筒アダプタは、第1光軸上に配置された第1レンズ系と、第2光軸上に配置された第2レンズ系とを有し、被写体の光束は、前記第1レンズ系または前記第2レンズ系を介して、前記ズーム用レンズ系に取り込んでおり、前記鏡筒アダプタが取り付けられる前の前記レンズ鏡筒のみによって決定される画角よりも、前記鏡筒アダプタが取り付けられた後の前記レンズ鏡筒と前記鏡筒アダプタによって決定される前記第1光軸における画角および前記第2光軸における画角を広くした構成である。
【0015】
また、上記目的を達成するために本発明のレンズ鏡筒は、第1光軸上に配置された第1レンズ系と、第2光軸上に配置された第2レンズ系と、広角側または望遠側にズーム調整するズーム用レンズ系とを配置したレンズ鏡筒であって、被写体の光束は、前記第1レンズ系または前記第2レンズ系を介して、前記ズーム用レンズ系に取り込んでおり、前記第1レンズ系または前記第2レンズ系を介さずして、前記レンズ鏡筒によって決定される画角よりも、前記第1レンズ系または前記第2レンズ系を介して、前記レンズ鏡筒によって決定される前記第1光軸における画角および前記第2光軸における画角を広くした構成である。
【0016】
また、上記目的を達成するために本発明の撮像装置は、広角側または望遠側にズーム調整するズーム用レンズ系を備えたレンズ鏡筒または撮像装置に取り付けられる鏡筒アダプタを有し、前記鏡筒アダプタは、第1光軸上に配置された第1レンズ系と、第2光軸上に配置された第2レンズ系とを有し、被写体の光束は、前記第1レンズ系または前記第2レンズ系を介して、前記ズーム用レンズ系に取り込んでおり、前記鏡筒アダプタが取り付けられる前の前記レンズ鏡筒のみによって決定される画角よりも、前記鏡筒アダプタが取り付けられた後の前記レンズ鏡筒と前記鏡筒アダプタによって決定される前記第1光軸における画角および前記第2光軸における画角を広くした構成である。
【0017】
また、上記目的を達成するために本発明の撮像装置は、レンズ鏡筒を有し、前記レンズ鏡筒は、第1光軸上に配置された第1レンズ系と、第2光軸上に配置された第2レンズ系と、広角側または望遠側にズーム調整するズーム用レンズ系とを配置したレンズ鏡筒であって、被写体の光束は、前記第1レンズ系または前記第2レンズ系を介して、前記ズーム用レンズ系に取り込んでおり、前記第1レンズ系または前記第2レンズ系を介さずして、前記レンズ鏡筒によって決定される画角よりも、前記第1レンズ系または前記第2レンズ系を介して、前記レンズ鏡筒によって決定される前記第1光軸における画角および前記第2光軸における画角を広くした構成である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、被写体の光束は、第1レンズ系または第2レンズ系を介して、ズーム用レンズ系に取り込んでおり、鏡筒アダプタが取り付けられる前のレンズ鏡筒のみによって決定される画角よりも、鏡筒アダプタが取り付けられた後のレンズ鏡筒と鏡筒アダプタによって決定される第1光軸における画角および第2光軸における画角を広くしているので、近距離においても輻輳角を3度以下にすることができる。
【0019】
すなわち、疲労感を低減し、飛び出し感や奥行き感を楽しめる立体映像を撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】一実施の形態における撮像装置のレンズ鏡筒の断面図
【図2】同撮像装置の概略図
【図3】同撮像装置のレンズ鏡筒に配置されたレンズ系の概略図
【図4】鏡筒アダプタを取り付けた同撮像装置の概略図
【図5】同鏡筒アダプタに配置された第1光軸上におけるレンズ系の概略図
【図6】同鏡筒アダプタに配置された第2光軸上におけるレンズ系の概略図
【図7】撮像素子上に形成される有効像円と撮像サイズの関係を示した図
【図8】撮像素子上に形成される有効像円と撮像サイズの関係を示した図
【図9】鏡筒アダプタにレンズ系を配置していない状態におけるステレオベースと焦点距離との関係を示した図
【図10】撮影距離別のステレオベースと輻輳角との関係を示した図
【図11】輻輳角別の撮影距離とステレオベースとの関係を示した図
【図12】他の実施の形態における鏡筒アダプタを取り付けた撮像装置の概略図
【図13】従来の撮像装置のレンズ系の概略図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、一実施の形態における撮像装置について図面を参照しながら説明する。図1は一実施の形態における撮像装置のレンズ鏡筒の断面図、図2は同撮像装置の概略図、図3は同撮像装置のレンズ鏡筒に配置されたレンズ系の概略図である。
【0022】
<レンズ鏡筒100の全体構成について>
レンズ鏡筒100の全体構成について説明する。図1において、レンズ鏡筒100は、鏡筒本体105と、この鏡筒本体105の内側に保持された第1レンズ系110、第2レンズ系120、第3レンズ系130、第4レンズ系140と、絞り150とを備えている。図2に示すように、撮像装置200は、レンズ鏡筒100が撮像装置本体210に取り付けられて構成されている。撮像装置本体210には、プリズム220を介して、被写体の光学像を撮像するための撮像素子230が配置されている。
【0023】
図1〜図3に示すように、レンズ鏡筒100に配置された第1レンズ系110は、鏡筒本体105の先端部に固定配置され、被写体が発した光束300を最初に取り込んでいる。第2レンズ系120は、第1レンズ系110の後方で、光軸上に移動自在なように鏡筒本体105に配置され、第1レンズ系110を介して被写体の光束300を取り込んでいる。第3レンズ系130は、第2レンズ系120の後方で、光軸上に移動しないように鏡筒本体105に固定して配置され、第2レンズ系120を介して被写体の光束300を取り込んでいる。第4レンズ系140は、第3レンズ系130の後方で、光軸方向に移動自在なように鏡筒本体105に配置され、第3レンズ系130を介して被写体の光束300を取り込んでいる。絞り150は、第3レンズ系130の前方に配置されている。
【0024】
第1レンズ系110、第2レンズ系120、第3レンズ系130、第4レンズ系140は、各々、1枚または複数のレンズを組み合わせて構成している。第2レンズ系120は広角側または望遠側にズーム調整するズーム用レンズ系である。第1レンズ系に近くなることで広角側、第3レンズ系に近くなることで望遠側に変化するズーム機能があり、負の焦点距離を有している。
【0025】
第1レンズ系110と第2レンズ系120の合成焦点距離は小さい(強い)負の焦点距離である。さらに第3レンズ系130を合成することにより、正または大きい(弱い)負の焦点距離に変換する。つまり第3レンズ系130は、撮像素子230に像を形成するために、実像へ変換するための補正レンズ系であり、正の焦点距離を有している。
【0026】
第4レンズ系140はフォーカスを調整するためのフォーカス用レンズ系であり、正の焦点距離を有している。第4レンズ系が第3レンズ系に近くなることで正の焦点距離が小さくなり、遠くなることで正の焦点距離が大きくなる。よって、ズームの調整は、主に第2レンズ系120を光軸上に移動させて行う。フォーカスの調整は、主に第4レンズ系140を光軸上に移動させて行う。
【0027】
このように、第1レンズ系110、第2レンズ系120、第3レンズ系130、第4レンズ系140を介して、被写体からの光束300は撮像素子230の素子面で結像されて光学像となる。また、絞り150の径を大きくすることで、明るい像を形成でき、小さくすることで暗い像を形成することができる。
【0028】
<鏡筒アダプタ400を取り付けた撮像装置200の全体構成について>
次に、鏡筒アダプタ400を取り付けた撮像装置200の全体構成について説明する。図4は鏡筒アダプタを取り付けた同撮像装置の概略図、図5は同鏡筒アダプタに配置された第1光軸上におけるレンズ系の概略図、図6は同鏡筒アダプタに配置された第2光軸上におけるレンズ系の概略図である。
【0029】
図4において、鏡筒アダプタ400は、被写体側から第1光軸上に配置されたアダプタ用第1レンズ系410と、アダプタ用第1レンズ系410の後方で第1光軸上に配置された第1レンズ系第1ミラー412と、第1光軸と略垂直方向に配置された第1レンズ系第2ミラー414と、第2光軸上に配置されたアダプタ用第2レンズ系420と、アダプタ用第2レンズ系420の後方で第2光軸上に配置された第2レンズ系第1ミラー422と、第2光軸と略垂直方向に配置された第2レンズ系第2ミラー424とを備えている。
【0030】
アダプタ用第1レンズ系410は光軸方向に移動しない固定構造であり、負の焦点距離を有している。図5に示すように、第1レンズ系第1ミラー412はアダプタ用第1レンズ系410を透過した光束300を約45度方向に変化させる。第1レンズ系第2ミラー414は第1レンズ系第1ミラー412からの光束300を、さらに約45度方向に変化させて、撮像装置200のレンズ鏡筒100に光学像を導く。
【0031】
同様に、アダプタ用第2レンズ系420は光軸方向に移動しない固定構造であり、負の焦点距離を有している。図6に示すように、第2レンズ系第1ミラー422はアダプタ用第2レンズ系420を透過した光束300を約45度方向に変化させる。第2レンズ系第2ミラー424は第2レンズ系第1ミラー422からの光束300を、さらに約45度方向に変化させて、撮像装置200のレンズ鏡筒100に光学像を導く。
【0032】
この鏡筒アダプタ400は、レンズ鏡筒100の光軸に対して対象な構成となっている。第1光軸、第2光軸にて視差のある2次元映像を撮像素子230に生成し、それぞれの映像信号を利用して立体映像として生み出すことができる。
【0033】
<レンズ鏡筒100のレンズ系と鏡筒アダプタ400のレンズ系の関係について>
次に、レンズ鏡筒100のレンズ系と鏡筒アダプタ400のレンズ系の関係について説明する。図4に示すように、レンズ鏡筒100には、固定用の第1レンズ系110と、ズーム用レンズ系である第2レンズ系120と、補正用レンズ系である第3レンズ系130と、フォーカス調整用レンズ系である第4レンズ系140が配置されている。鏡筒アダプタ400には、第1光軸上に配置されたアダプタ用第1レンズ系410、第2光軸上に配置されたアダプタ用第2レンズ系420が配置されている。
【0034】
これらのレンズ系は、鏡筒アダプタ400が取り付けられる前のレンズ鏡筒100のみによって決定される画角よりも、鏡筒アダプタ400が取り付けられた後のレンズ鏡筒100と鏡筒アダプタ400によって決定される第1光軸における画角および第2光軸における画角を広くするように設定されている。
【0035】
また、鏡筒アダプタ400が取り付けられた後のレンズ鏡筒100と鏡筒アダプタ400によって決定される第1光軸における画角および前記第2光軸における画角を等しくするのが望ましい。これは、第1光軸の光束と第2光軸の光束とが対称的になるので立体映像として適切になるからである。但し、立体映像が形成できる範囲においては、互いの画角が異なっていてもよい。
【0036】
また、鏡筒アダプタ400が取り付けられる前のレンズ鏡筒100のみによって決定される画角は0.7度〜24.4度とし、鏡筒アダプタ400が取り付けられた後のレンズ鏡筒100と鏡筒アダプタ400によって決定される第1光軸における画角および第2光軸における画角は27度〜84度としている。
【0037】
また、鏡筒アダプタ400が取り付けられる前のレンズ鏡筒100は、望遠が最大となるようにズーム用レンズ系である第2レンズ系120を光軸上に移動させてセットしている。このとき、第3レンズ系130に最も近接するように光軸上を移動させて第2レンズ系120を配置している。
【0038】
<撮像装置200による撮像について>
撮像装置200の一例として、ビデオカメラを挙げる。このビデオカメラの仕様は、広角側3.06mm(35mmフィルム換算では43.8mm)、望遠側35.97mm(35mmフィルム換算では514.7mm)、ズーム比11.76倍、撮像素子230は1/6インチで有効像円φ3mmだとする。
【0039】
通常撮影(鏡筒アダプタ400を装着しない状態での撮影)では、レンズ鏡筒100に配置された第1レンズ系110、第2レンズ系120、絞り150、第3レンズ系130、第4レンズ系140を介して、撮像素子230の素子面上の有効像円φ3mm内に、被写体の光束300が結像して光学像が形成される。映像信号としては、テレビアスペクト比に応じて切り出される。図7に示すように、HDTVでは、16:9のため、縦1.47mm、横2.61mmとなる領域を撮影することになる。
【0040】
一方、立体映像の撮影時(鏡筒アダプタ400を装着した状態での撮影時)、第1光軸と第2光軸から光束300をそれぞれ導く。第1光軸からの光束300は、アダプタ用第1レンズ系410、第1レンズ系第1ミラー412、第1レンズ系第2ミラー414を介して、レンズ鏡筒100に配置されたレンズ系に取り込まれる。また、第2光軸からの光束300は、アダプタ用第2レンズ系420、第2レンズ系第1ミラー422、第2レンズ系第2ミラー424を介して、レンズ鏡筒100に配置されたレンズ系に取り込まれる。第1光軸からの光束300または第2光軸からの光束300のいずれか一方が右眼用映像の光学像として形成され、他方が左眼用映像の光学像として形成される。
【0041】
この撮影では、第1光軸の光束が結像された光学像と第2光軸の光束が結像された光学像とが、撮像素子230の素子面上において左右に画像分割して露光される。これは、図7に示すように、相似形アスペクト比とした映像を撮影することになる。このとき、有効像円φ1.62mmと小さくなるので画角は狭くなる。アダプタ用第1レンズ系410から第4レンズ系140までの合成焦点距離は2.07mmであり、有効像円が小さくなったため、35mmフィルム換算での焦点距離では55.4mmと長くなる。なお、図8に示すように、アスペクト比を縦と横で同一とはしない比率での映像を撮影することも容易に考えられる。このときの有効像円φ1.97mmの左右にそれぞれ撮像エリアが形成できる。また、裸眼にて得られる立体感については、被写体の距離が遠方にある場合は立体視することはできない。被写体の距離が近い(1〜5m)場合にのみ立体感を得られるものである。そのため、近距離に適合したビデオカメラに求められる焦点距離としては、35mmフィルム換算で広角側(24mm〜90mm)があればよいことになる。
【0042】
そこで、ビデオカメラのズーム設定を35mmフィルム換算で広角側(24mm〜90mm)とし、鏡筒アダプタ400を第1レンズ系第1ミラー412と第2レンズ系第1ミラー422と第1レンズ系第2ミラー414と第2レンズ系第2ミラー424のみで構成した場合、ステレオベースは、図9に示すように、焦点距離が87.5mmの時は86.4mmとなる。すなわち、図10及び図11に示すように、撮影距離を5mとした場合、輻輳角は2度前後となり、撮影距離を1mとした場合、輻輳角は10.3度(図示せず)となる。
【0043】
ここで、ステレオベースをできるだけ小さくなるように、ズーム用レンズ系である第2レンズ系120のズームポジションを望遠側に設定する。また、第1レンズ系第1ミラー412と第1レンズ系第2ミラー414を介して、鏡筒アダプタ400のアダプタ用第1レンズ系410の焦点距離を−12.2mmとすることで、ステレオベースが38.6mm、焦点距離が50mm〜60mm相当(ビデオカメラの光学系全体では35mmフィルム換算の焦点距離)の光学系とすることができる。
【0044】
<一実施の形態のまとめ>
一実施の形態によれば、被写体の光束300は、第1光軸上に配置されたアダプタ用第1レンズ系410と第2光軸上に配置されたアダプタ用第2レンズ系420を介して、ズーム用レンズ系である第2レンズ系120に取り込んでおり、鏡筒アダプタ400が取り付けられる前のレンズ鏡筒100のみによって決定される画角よりも、鏡筒アダプタ400が取り付けられた後のレンズ鏡筒100と鏡筒アダプタ400によって決定される第1光軸における画角および第2光軸における画角を広くしているので、近距離においても輻輳角を3度以下にすることができる。
【0045】
すなわち、疲労感を低減し、飛び出し感や奥行き感を楽しめる立体映像を撮像することができる。
【0046】
また、鏡筒アダプタ400が取り付けられた後のレンズ鏡筒100と鏡筒アダプタ400によって決定される第1光軸における画角および第2光軸における画角を等しくするのが望ましい。これは、第1光軸の光束で結像された光学像と第2光軸の光束で結像された光学像とが対称的になるので、立体映像として適切になるからである。但し、立体映像が形成できる範囲においては、互いの画角が異なっていてもよい。
【0047】
また、鏡筒アダプタ400が取り付けられる前のレンズ鏡筒100のみによって決定される画角は0.7度〜24.4度とし、鏡筒アダプタ400が取り付けられた後のレンズ鏡筒100と鏡筒アダプタ400によって決定される第1光軸における画角および第2光軸における画角は27度〜84度としている。これによって、1m〜10m程度の近距離においても的確に輻輳角を3度以下にすることができる。
【0048】
また、鏡筒アダプタ400が取り付けられる前のレンズ鏡筒100のズームが最大の望遠になるように、ズーム用レンズ系である第2レンズ系を光軸方向に移動させてセットしている。これによって、1m〜10m程度の近距離においても的確に輻輳角を3度以下にすることができる。
【0049】
なお、本実施の形態では、鏡筒アダプタ400とレンズ鏡筒100は、各々、別々の部品であるが、鏡筒アダプタ400のレンズ系をあらかじめ備えたレンズ鏡筒100を用いてもよい。
【0050】
また、図12に示すように、鏡筒アダプタ400の反射ミラーの構成が異なるものを用いてもよい。第1光軸からの光束300が、第1レンズ系第1ミラー412で反射され、第1レンズ系第2ミラー414で反射される点は、本実施の形態と同じである。図12に示す鏡筒アダプタ400では、第2光軸からの光束300が、第2レンズ系第1ミラー422で反射され、第2レンズ系第2ミラー424で反射され、第1レンズ系第2ミラー414を介して、レンズ鏡筒100に取り込まれる。第1レンズ系第2ミラーはハーフミラーとなっている。第1レンズ系第2ミラー414で反射される第1光軸からの光束300と、第1レンズ系第2ミラー414を介して、レンズ鏡筒100に取り込まれる第2光軸からの光束300とは、同一の光軸上に位置するようにしている。
【0051】
この撮影では、第1光軸の光束が結像された光学像と第2光軸の光束が結像された光学像とが、撮像素子230の素子面上において画像分割されずに露光される。これによって、第1光軸の光束が結像された光学像と第2光軸の光束が結像された光学像は、図7に示すように、有効像円φ3.0mmにおいて、対角線が3.0mmとなる撮像エリア(点線の範囲)に形成される。すなわち、16:9の撮像サイズにおいて、最大の撮像エリアとなるので、解像度を向上できる。なお、第1光軸の光束が結像された光学像と第2光軸の光束が結像された光学像は画像分割されずに撮像素子230素子面上に露光されるので、各々の光学像を切り替えながら露光する必要がある。このためには、例えば、第1光軸上および第2光軸上の各々にシャッタを配置して、このシャッタを交互に開閉して、光学像を切り替えながら露光すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、デジタルスチルカメラ、ビデオカメラ等に適用可能である。
【符号の説明】
【0053】
100 レンズ鏡筒
105 鏡筒本体
110 第1レンズ系
120 第2レンズ系
130 第3レンズ系
140 第4レンズ系
150 絞り
200 撮像装置
210 撮像装置本体
220 プリズム
230 撮像素子
300 光束
400 鏡筒アダプタ
410 アダプタ用第1レンズ系
412 第1レンズ系第1ミラー
414 第1レンズ系第2ミラー
420 アダプタ用第2レンズ系
422 第2レンズ系第1ミラー
424 第2レンズ系第2ミラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
広角側または望遠側にズーム調整するズーム用レンズ系を備えたレンズ鏡筒または前記レンズ鏡筒を備えた撮像装置に取り付けられる鏡筒アダプタであって、
前記鏡筒アダプタは、第1光軸上に配置された第1レンズ系と、第2光軸上に配置された第2レンズ系とを有し、
被写体の光束は、前記第1レンズ系または前記第2レンズ系を介して、前記ズーム用レンズ系に取り込んでおり、
前記鏡筒アダプタが取り付けられる前の前記レンズ鏡筒のみによって決定される画角よりも、前記鏡筒アダプタが取り付けられた後の前記レンズ鏡筒と前記鏡筒アダプタによって決定される前記第1光軸における画角および前記第2光軸における画角を広くした
鏡筒アダプタ。
【請求項2】
前記鏡筒アダプタが取り付けられた後の前記レンズ鏡筒と前記鏡筒アダプタによって決定される前記第1光軸における画角および前記第2光軸における画角を等しくした
請求項1に記載の鏡筒アダプタ。
【請求項3】
前記鏡筒アダプタが取り付けられる前の前記レンズ鏡筒のみによって決定される画角は0.7度〜24.4度とし、
前記鏡筒アダプタが取り付けられた後の前記レンズ鏡筒と前記鏡筒アダプタによって決定される前記第1光軸における画角および前記第2光軸における画角は27度〜84度とした
請求項1に記載の鏡筒アダプタ。
【請求項4】
前記鏡筒アダプタが取り付けられる前の前記レンズ鏡筒のズームが最大の望遠になるように、前記ズーム用レンズ系をセットした
請求項1に記載の鏡筒アダプタ。
【請求項5】
第1光軸上に配置された第1レンズ系と、第2光軸上に配置された第2レンズ系と、広角側または望遠側にズーム調整するズーム用レンズ系とを配置したレンズ鏡筒であって、
被写体の光束は、前記第1レンズ系または前記第2レンズ系を介して、前記ズーム用レンズ系に取り込んでおり、
前記第1レンズ系または前記第2レンズ系を介さずして、前記レンズ鏡筒によって決定される画角よりも、前記第1レンズ系または前記第2レンズ系を介して、前記レンズ鏡筒によって決定される前記第1光軸における画角および前記第2光軸における画角を広くした
レンズ鏡筒。
【請求項6】
前記第1レンズ系または前記第2レンズ系を介して、前記レンズ鏡筒によって決定される前記第1光軸における画角および前記第2光軸における画角を等しくした
請求項5に記載のレンズ鏡筒。
【請求項7】
前記鏡筒アダプタが取り付けられる前の前記レンズ鏡筒のみによって決定される画角は0.7度〜24.4度とし、
前記鏡筒アダプタが取り付けられた後の前記レンズ鏡筒と前記鏡筒アダプタによって決定される前記第1光軸における画角および前記第2光軸における画角は27度〜84度とした
請求項5に記載のレンズ鏡筒。
【請求項8】
前記鏡筒アダプタが取り付けられる前の前記レンズ鏡筒のズームが最大の望遠になるように、前記ズーム用レンズ系をセットした
請求項5に記載のレンズ鏡筒。
【請求項9】
請求項5〜請求項8に記載のレンズ鏡筒を用いた撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−57698(P2013−57698A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5471(P2010−5471)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】