説明

長い貯蔵寿命を有する過カルボン酸ベース多価電解質カプセル系

有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸(例えば、6-フタルイミド過カプロン酸)を封入した多層カプセル系の製造方法、及び前記方法によって製造されたカプセル系の、工業的利用における、洗剤及びクリーナー、特に液体の洗剤及びクリーナー、歯の手入れ用製品、ヘアカラー及び脱色剤又は漂白剤での使用を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも 1 種の有機過カルボン酸を封入した多層カプセル系の製造方法及びそれにより製造したカプセル系に関する。本発明は更に、このカプセル系の、工業的利用における、漂白剤又は漂白剤配合物としての使用、特に洗剤及び洗浄剤配合物、とりわけ液体の洗剤及び洗浄剤配合物、歯の手入れ用製品、ヘアカラー、脱色配合物及び漂白配合物での使用、並びにこのカプセル系を含む製品、即ち、工業的利用における、本発明のカプセル系を含む、洗剤及び洗浄剤配合物、とりわけ液体の洗剤及び洗浄剤配合物、歯の手入れ用製品、ヘアカラー、脱色配合物及び漂白配合物に関する。
【背景技術】
【0002】
より優れより速い溶解性及び有用性といったプラスの製品特性のため流行しつつある液体、特に水性の洗剤及び洗浄剤配合物において、漂白成分の配合又は混合は、多くの理由から問題がある。例えば、分解反応又は加水分解反応及び洗剤配合物の他成分(例えば酵素又は界面活性剤)に対する不適合性のため、使用された漂白剤は、しばしば、貯蔵中にその活性を失う。これにより生じる不利な結果は、洗剤配合物の洗浄能力、特に漂白能力が著しく失われ、特に、漂白可能な汚れを満足に除去できないことである。
【0003】
固体洗剤配合物に通常使用される漂白成分、例えば過ホウ酸塩又は過炭酸塩は、湿度に極めて敏感であり、液体、特に水性の洗剤及び洗浄剤配合物中では、活性酸素を失うので、数日以内に漂白能力の明瞭な低下がよく見られる。故に、このような活性成分は、しばしば、その漂白活性を、使用時、特に洗濯液中での使用時には既に失っており、従って無能である。
【0004】
これに対して、過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸(最も重要な代表例はフタルイミド過カプロン酸(PAP)である)は、より有効で加水分解に対して敏感ではなく、洗剤及び洗浄剤配合物用の漂白剤として従来技術で既知である。しかしながら、その貯蔵安定性は、活性を失うことなく対応する洗剤及び洗浄剤配合物の長期使用を保証するには、明らかに不十分である。故に、過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸の、液体の洗剤及び洗浄剤配合物への使用は、特に問題がある。
【0005】
イミド過カルボン酸、特に PAP の分解により、洗剤配合物又は洗浄剤配合物の変化に関して生じる欠点のため、イミド過カルボン酸が周囲、特に洗剤配合物又は洗浄剤配合物の残りの成分と直接接触しないように、或いはイミド過カルボン酸と周囲との接触を減少するように、イミド過カルボン酸(例えば PAP)を効果的にカプセル化する試みが従来技術において行われてきた。
【0006】
例えば、従来技術において、ワックスは、繊細な洗剤用添加剤、例えば過カルボン酸の保護膜としてしばしば利用されている。これに関して、同じパテントファミリーに属する EP 0 510 761 B1 又は US-A-5 230 822 は、洗剤用添加剤の全てのタイプ、例えば、酵素、PAP を含む漂白剤、漂白前駆体及び漂白触媒をカプセル化するための一般法を記載している。同明細書に記載されている、融点が 40〜50 ℃であるワックスの使用によって、活性物質が洗濯液中で、使用したワックスの融点より高い温度でのみ放出される。これは、約 30 ℃での洗濯も可能であるべきなので、高性能の洗剤配合物及び洗浄剤配合物の開発及びエネルギーコストの節約という背景に逆らっており、不利である。更に、高融点を有するワックスの使用は、特に低温では、十分に乳化されないので、洗濯物に残渣を生じるという欠点がある。
【0007】
従来技術において、過カルボン酸を安定させる他の方法を開発する試みも行われてきた:US-A-6 080 715 は、フタルイミド過カプロン酸ベースの顆粒配合物を記載している。同明細書に記載されている顆粒は、フタルイミド過カプロン酸(PAP)、第三級アミンの N-オキシド化合物及び pKa 値が 3.5 未満のカルボン酸を含む。同明細書に記載されている顆粒は、コアと塗膜からなるカプセル形状ではなく、各成分の混合物状態であるに過ぎない。これによって、過カルボン酸は、周囲と、特に顆粒の表面付近で直接接触し、これは過カルボン酸の安定性にとって不利である。更に、これらの顆粒は、水性分散体、特に液体の洗剤及び洗浄剤配合物での使用が意図されていない。その代わり、同明細書は、微粉洗剤及び洗浄剤配合物での、該顆粒の使用を記載しているに過ぎない。
【0008】
WO 97/39097 A1 は、過カルボン酸、例えば PAP と界面活性剤、例えばアミンオキシドとの完全混合物状態で存在する顆粒漂白剤を記載している。同明細書に記載されている顆粒も同様に、コア及びカプセル膜からなるカプセル構造を有さない。顆粒は、漂白により生じる布地染料への損傷の減少に関して主に最適化される。
【0009】
US-A-4 126 573 は、コアが過カルボン酸からなり、一層だけの塗膜が水溶性界面活性剤、例えば有機アニオン性硫酸塩又はアミンオキシド化合物からなる、漂白剤粒子を記載している。
【0010】
更に、WO 94/15010 A1 は、活性物質の、水溶性酸ポリマー、例えばポリアクリル酸による被覆又はカプセル化を記載している。このカプセル系は、一層だけの塗膜層からなり、記載された活性物質は漂白活性剤である。
【0011】
WO 01/51196 A1 は、少なくとも 1 種の多価電解質層による、荷電されていないか又は疎水性である物質のカプセル化を記載している。同明細書に記載されている物質又は活性成分は、例えば、ビタミン、ホルモン、発育因子、農薬及び抗生物質である。荷電されていないか又は疎水性である活性物質は、まず、両親媒性物質で被覆されなければならず、各多価電解質カプセル塗膜は、溶液からの吸着によって塗布される。この場合、各層間の相互作用が、実質上、複合物の形成を招くイオン間相互作用によって、厚さ全体にわたって生じるので、得られる層の厚さは、僅かに分子範囲に過ぎない。各層の塗布と塗布との間で、未吸着物資を、まず除去しなければならない。この工程は、工業規模では複雑であり、相対的に実行不可能である。塗膜層厚さが僅かなので、同発明の系は、洗濯液への制御された放出を伴う、過カルボン酸の水性配合物中での有効な安定化には不適当である。
【0012】
更に、WO 02/17888 A2 は、逆帯電された多価電解質からなる塗膜層を有するカプセルの製造方法に関する一般的教示を記載しており、カプセルは、多層法(LBL 法)によって製造される。カプセル化するための物質は、例えばフルオレセインである。また、同明細書に記載されているカプセルの透水性を、特に pH の変化又は光の影響によって変化させる一般法を記載している。上記した従来技術での場合のように、ここでの塗膜も、僅かに分子範囲の厚さに過ぎず、技術的に不利な方法である溶液からの吸着によって塗布される。塗膜層厚さが僅かなので、同発明の系も同様に、洗濯液への制御された放出を伴う、過カルボン酸の水性配合物中での有効な安定化には不適当である。
【0013】
WO 02/31092 A2 もまた、多層技術に基づいた被覆法又はカプセル化法を記載しているが、同明細書では、液体物質、例えば香油のみがカプセル化される。
【0014】
最後に、WO 99/47252 A2 は、一般論として、多層多価電解質自己集合によるナノ-及びミクロカプセルの製造を記載している。同明細書でもまた、カプセルは僅かな層厚さしか有さず、塗膜は、適切な多価電解質分子を、カプセル化されるテンプレート粒子の分散体に添加する様な方法で製造される。ここでもまた、各層の塗布と塗布との間で、過剰多価電解質分子の複雑な除去が必要とされる。この目的のために本質的に必要である方法を含む、過カルボン酸のカプセル化は、同明細書で開示されていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、この背景に対して、本発明の目的は、従来技術と比較して向上した特性を有する、過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、例えばフタルイミド過カプロン酸(PAP)の組込み又はカプセル化又は被覆、及び対応する製造方法を提供することである。
【0016】
更に本発明の目的は、貯蔵安定状態の過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、例えばフタルイミド過カプロン酸(PAP)を提供することである。過カルボン酸の完全な又は部分的な溶解を少なくとも実質上防ぐか又は減少し、好ましくはその固体又は結晶状態を、界面活性剤存在下又は過カルボン酸に対する溶解能を有する環境下、特に洗剤配合物又は洗浄剤配合物中でも保持し、とりわけ周囲との過カルボン酸の接触を少なくとも実質上防ぐか又は少なくとも減少する過カルボン酸の配合状態を開発することである。
【0017】
また、本発明の別の目的は、過カルボン酸が固形状で封入され、過カルボン酸の良好な安定性、従って向上した貯蔵安定性を有するカプセル系の提供である。特に、本発明において、とりわけ洗浄操作中、過カルボン酸の放出が妨げられず、同時に洗濯物に残渣が付着しないように、実質上残渣が生じることなく溶解及び/又は可溶化又は分散されるカプセル系を提供する。特に、本発明の方法は、少なくとも 1 種の過カルボン酸を活性物質として封入したカプセル系の製造を可能にし、上述した従来技術の欠点を少なくとも実質上回避する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
イミド過カルボン酸のような有機過カルボン酸(例えば PAP)は、層又は塗膜層が多価電解質又はイオン性界面活性剤を含むか或いはそれらからなる、多層カプセル系によって高度に安定化され得ることが、意外にも見出された。
【0019】
従って第一の要旨として、本発明は、少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸を封入した多層カプセル系の製造方法を提供する。本発明の方法では、少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸を、少なくとも 2 つの塗膜層からなる多層カプセル塗膜内に含むカプセル系が得られるように、各々が多価電解質及び/又はイオン性界面活性剤ベースである少なくとも 2 つの異なった塗膜層を、固体粒子状で存在する有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸に順次塗布する。
【0020】
本発明において、カプセル化される過カルボン酸は、少なくとも 2 つの塗膜層からなるカプセル塗膜に組み込まれるか、又はそれによって封入されるので、過カルボン酸は、本発明のカプセル系のコアを形成する。従って、本発明では、コア/殻構造のカプセル系が存在する。本発明のカプセル系は、特に製造において、例えば流動層装置で、過カルボン酸粒子の凝集が生じる場合、複数のカプセルコアを含み得る。特に、各塗膜層又はカプセル塗膜の塗布後、凝集を形成することも可能である。このように、いわばマトリックスが生じ得、その中に複数のカプセルコアが埋め込まれるか又は組み込まれる。
【0021】
カプセル塗膜の塗膜層又は層は、異なる性質を有し、特に、第一層(塗膜層)は少なくとも実質上完全に、過カルボン酸を封入するか又は被覆し、第二層、そして存在する場合には第三、第四などの塗膜層又は塗膜は、隣接した塗膜又は塗膜層と各々直接接触するように形成される。本発明では、少なくとも第一の又は最も内側の塗膜層(塗膜)が、少なくとも実質上、過カルボン酸に対して不活性であり、即ち、本質的に望ましくない過カルボン酸との化学反応、特に分解、酸化又は還元反応及び/又は加水分解反応を生じないことが特に好ましい。
【0022】
本発明のカプセル系を製造する本発明の方法で使用される更なる成分又は塗膜層は、好ましくは、カプセル化される過カルボン酸と少なくとも十分適合性であるように、即ちこれらの成分と過カルボン酸との望ましくない化学反応、特に、分解、酸化又は還元反応及び/又は加水分解反応が生じないように、或いは分解、特に活性の損失を招き得る、更なる成分による過カルボン酸の反応を誘発しないように選択される。
【0023】
各塗膜層は、多価電解質及び/又はイオン性界面活性剤に基づいて形成される。本発明において、用語「多価電解質又はイオン性界面活性剤に基づいて」は、多価電解質又はイオン性界面活性剤に加えて、特に以下に記載したような、更なる材料も、本発明の塗膜層を形成するために使用できることを意味する。
【0024】
本発明において、互いに直接隣接する塗膜層の多価電解質及び/又はイオン性界面活性剤は、好ましくは逆帯電している。二層を超える、例えば第三、第四、第五などの層の場合、第一、第三、第五などの各層は、同じ荷電を有するか又は同じイオン特性、即ちアニオン性又はカチオン性を有し、第二、第四、第六などの各層は、第一、第三、第五などの荷電とは逆である同じ荷電を有する。このように、本発明における多層カプセル殻が得られ、各々が直接隣接する又は直接連続する或いは直接近接する層(塗膜又は塗膜層)は逆帯電している、即ち、いわば対イオン的に形成されている。
【0025】
本発明の明細書において、用語「多価電解質」及び「ポリイオン」は、基本的に同義である。特に、例えば、ポリマー主鎖の骨格部分に存在し得るか又は側鎖に結合し得る、多数のイオン的に解離できる又は解離した基を有するポリマーを意味すると理解され得る。本発明において、好ましく使用される多価電解質又はポリイオンは、ある派生電気的正味荷電を有するため、特にポリアニオンとして存在する、即ち、負の正味荷電を供給するか、又はポリカチオンとして存在する、即ち、正の正味荷電を供給する。本発明において、用語「正味荷電」は、多価電解質又はポリイオンが、主に正に荷電される又は主に負に荷電される解離基を有することを意味していると理解される。従って、用語「正味荷電」は、多価電解質又はポリイオンの派生荷電(即ち対イオンなしで)を示す。これに対し、多価電解質、対イオン及び溶媒又は分散媒を含む溶液又は分散体の派生総荷電は、ゼロである。
【0026】
少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸(例えば PAP )を封入した多層カプセル系を製造するための本発明の製造方法は、特に下記のように行う:
(a)過カルボン酸を、少なくとも実質上完全に、第一多価電解質及び/又は第一イオン性界面活性剤(I)ベースの第一塗膜層によって封入するか又は被覆するための、固体粒子状で存在する少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸への、少なくとも 1 種の第一多価電解質及び/又は少なくとも 1 種の第一イオン性界面活性剤(I)を含む溶液及び/又は分散体の塗布、
(b)第二多価電解質及び/又は第二イオン性界面活性剤(II)ベースの第二塗膜層を、工程(a)で得られた第一塗膜層に塗布するための(第二塗膜層は、少なくとも実質上完全に、第一塗膜層を封入するか又は被覆し、この 2 つの塗膜層は互いに直接接触する。)、工程(a)で得られた第一塗膜層への、第二多価電解質及び/又は少なくとも 1 種の第二イオン性界面活性剤(II)を含む少なくとも 1 種の溶液及び/又は分散体の塗布(第二多価電解質及び/又は第二イオン性界面活性剤(II)は、第一多価電解質及び/又は第一イオン性界面活性剤(I)とは異なり、特に逆帯電している。)、
(c)少なくとも 1 種の更なる塗膜層、特に第三、第四などの塗膜層の任意塗布(塗膜層を形成する多価電解質及び/又はイオン性界面活性剤は、互いに直接隣接する塗膜層が、各々の場合に、異なった、特に逆帯電した多価電解質及び/又は逆帯電したイオン性界面活性剤を含むか又はそれらからなるように選択される。)、
(d)得られたカプセル系の任意加工、特に乾燥及び/又は精製及び/又は分類、特に篩い分け。
【0027】
本発明の方法において、複数の塗膜層からなる本発明のカプセル系に組み込むのに使用される物質は有機過カルボン酸である。有機過カルボン酸は、有機モノ-及びジ過カルボン酸から選ばれ得る。これらの例は、特に、ドデカンジペルオキシ酸又は好ましくはイミド過カルボン酸、より好ましくは 6-フタルイミド過カプロン酸(6-フタルイミド過ヘキサン酸、PAP)である。有利には、過カルボン酸は、大気圧下で 25 ℃超、特に 35 ℃超、好ましくは 45 ℃超、より好ましくは 50 ℃超、特に好ましくは 100 ℃超の融点を有する。これにより、使用される過カルボン酸が固体粒状で存在することが確実になるので、本発明の方法によるカプセル系の製造中、過カルボン酸の分解が、少なくとも実質上妨げられるか又は減少され、本発明のカプセル系を使用した際に制御された放出が達成される。
【0028】
本発明において、過カルボン酸の粒度を、例えば第一塗膜層の塗布前に、当業者に既知の方法(例えば、剪断、振動及び/又は超音波投入、微粉砕、細砕など)によって調整することができるので、特定の後の使用に対応する粒度の制御された調整が、本発明では可能である。
【0029】
好ましくは、本発明では、一溶液の 1 種以上の多価電解質及び/又は 1 種以上のイオン性界面活性剤は、同じ電気的正味荷電を有する。少なくとも 1 種の多価電解質及び/又は少なくとも 1 種のイオン性界面活性剤の溶液は、各々、工程(a)、(b)及び/又は(c)で、例えば噴霧塗布によって塗布される。第一層には噴霧乾燥が、更なる層には例えばウルスター(Wurster)コーターが使用され得る。しかしながら、全ての層を流動層装置で塗布することもできる。用語「同じ電気的正味荷電」とは、上記した溶液成分が同じ荷電符号(正又は負)を有するが、化学量論からの一定のずれが、可能であるか又は例えばある成分の溶解性を得るために望まれることさえある性質状態として理解され得る。
【0030】
本発明の塗膜層は、以下に詳述するように、隣接した塗膜層によって、特にイオン/イオン又はイオン/双極子相互作用のような静電気的相互作用によって形成された界面層部分で、互いに接触及び付着される。特に、複合物(即ち、塗膜層の各配合に依存する、ポリカチオン/ポリアニオン複合物、カチオン性界面活性剤/ポリアニオン複合物、ポリカチオン/アニオン性界面活性剤複合物、アニオン性界面活性剤/カチオン性界面活性剤複合物)は、各塗膜層材料の逆の正味荷電によって、2 つの塗膜層間の境界又は界面に形成され得、各塗膜層間の良好な接触又は良好な付着を確実にする。また、他方では、各塗膜層の比較的大きい厚さによって、各塗膜層に、隣接塗膜との相互作用がない一定の小領域が存在する。
【0031】
本発明の方法において、工程(a)で得られた第一塗膜層の多価電解質又はイオン性界面活性剤、及び工程(c)で得られる第三、第五などの塗膜層は、好ましくは、正の正味荷電を有する。この場合、第一塗膜層は、カチオン性界面活性剤又はカチオン性多価電解質(ポリカチオン)によって、好ましくはカチオン性界面活性剤によって形成され、存在する場合は、第三、第五などの塗膜層の多価電解質は、カチオン性多価電解質(ポリカチオン)である。これに対して、工程(b)で得られた第二塗膜層の多価電解質又はイオン性界面活性剤、及び工程(c)で得られる第四、第六などの塗膜層は、好ましくは、負の正味荷電を有し、特にアニオン性多価電解質(ポリアニオン)である。カプセル系が存在する媒体、即ち外部環境との境界を形成する最外部の塗膜層は、好ましくは、少なくとも 1 種のアニオン性多価電解質を含むか又はそれからなる。
【0032】
好ましくは本発明において、第一塗膜層は正の正味荷電を有するので、特に電気的相互作用によって、とりわけ、イオン/イオン又はイオン/双極子相互作用によって、過カルボン酸と第一塗膜層との良好な接触又は良好な付着が確実になる。この処置は、過カルボン酸が、本発明の好ましい pH 値の範囲で、表面において、主に過カルボキシル基の酸素原子に帰因する、負の(部分)表面荷電、特に負の部分荷電を有するという背景に対して行われる。
【0033】
応用のための必要に応じて又は所望の場合は、第一塗膜層は、負の正味荷電、即ちアニオン性多価電解質又はアニオン性界面活性剤を有し得る。この場合、第二塗膜層は、好ましくは正の正味荷電を有し、続く塗膜層は各々、直接隣接する塗膜層と逆帯電を有する。
【0034】
本発明の方法によって製造されたカプセル系において、特に好ましい態様では、第一塗膜層は、少なくとも 1 種のイオン性界面活性剤、より好ましくは少なくとも 1 種のカチオン性界面活性剤を含む。第二塗膜層及び第三、第四などの塗膜層は、少なくとも 1 種の多価電解質、又は少なくとも 1 種の多価電解質と少なくとも 1 種のイオン性界面活性剤との混合物を好ましくは含むか、又はそれらから好ましくはなり、混合物中の少なくとも 1 種の多価電解質及び少なくとも 1 種の界面活性剤は、同種の正味荷電を有する。本発明において、第二塗膜層及び第三、第四などの塗膜層は、より好ましくは少なくとも 1 種の多価電解質を含む。
【0035】
本発明において、第一塗膜層に特に使用されるカチオン性界面活性剤は、アンモニウム基が一般式 R1R2R3N+[式中、R1、R2 及び R3 基は、同じ又は異なって、水素原子、或いは 1〜40 個、特に 1〜25 個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキル、アルキレン又はアルキニル基である。]に相当する第四級アンモニウム塩から選ばれ、対イオンは好ましくはハロゲンフリー(例えば、(ホスフェート、スルフェート、メチルスルフェート、トシレート又はクメンスルホネート)アニオンなど)である。カチオン性界面活性剤は、アルキルジメチルアンモニウム界面活性剤、N-アルキルピリジニウム塩及びエステルクォートの群から選ばれ得る。本発明において、カチオン性界面活性剤は、ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンを含まないか、又は少なくとも実質的にハロゲンフリー、特に塩化物フリーである。カチオン性界面活性剤は、(硫酸メチル、硫酸塩、リン酸塩、トシル酸塩又はクメンスルホン酸塩)化合物から選ばれ得る。
【0036】
本発明において、第一塗膜層に特に使用されるカチオン性多価電解質は、第四級アミン、イミン及びイミダゾール基から選ばれた少なくとも 1 個の官能基を含む。更に、第一塗膜層に特に使用されるカチオン性多価電解質は、アミンオキシド、ピリジン N-オキシド、好ましくはポリビニルピリジン N-オキシドから選ばれ、酸性 pH 値ではプロトン化状態で存在し、従ってカチオン性である。カチオン性多価電解質は、好ましくは、ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンを含まないか、又は少なくとも実質的にハロゲンフリー、とりわけ塩化物フリーである。
【0037】
本発明において、例えば、カチオン性界面活性剤又はカチオン性多価電解質は、第一塗膜層に使用され得、その例は、例えば化粧品用途において既知であるように、例えば一般名「ポリクオタニウム(登録商標)」、例えば、商品名 Luviquat(登録商標)PQ 11(四級化ビニルピロリドン/ジメチルアミノメチルメタクリレートコポリマー)で得られるポリクオタニウム-11(登録商標)、及び商品名 Luviquat(登録商標)FC 370(ビニルピロリドン/四級化ビニルイミダゾールコポリマー)で得られるポリクオタニウム-16(登録商標)である。
【0038】
本発明の方法において、アニオン性多価電解質、特に第二、第四などの塗膜層のアニオン性多価電解質は、重合体スルホン酸、特にポリスチレンスルホン酸及びその(部分)塩、好ましくはポリカルボン酸及びその(部分)塩、特にポリアクリル酸、ポリマレイン酸及びそれらのコポリマーの群から選ばれた合成アニオン性多価電解質である。アニオン性多価電解質は、例えば、ポリマー様方法でスルホン化されたポリマーであり、及び/又はアルギン酸、キサンタン、又はカルボキシメチルセルロースのような誘導化天然ポリマーの群から選ばれた天然アニオン性ポリマーである。
【0039】
本発明で使用されるアニオン性多価電解質、特に第二、第四などの塗膜層のアニオン性多価電解質は、例に過ぎないが、例えば、アルギネート、カルボキシメチルアミロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、カラギーナン、セルローススルフェート、コンドロイチンスルフェート、キトサンスルフェート、デキストランスルフェート、アラビアゴム、グアーガム、ジェランガム、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン、キサンタン及びアニオン性タンパク質の群から選ばれ得る天然アニオン性ポリマーである。本発明において、アニオン性多価電解質は、合成アニオン性多価電解質でもあり得、特に、ポリアクリレート、アニオン性ポリアミノ酸及びそのコポリマー、ポリマレエート、ポリメタクリレート、ポリスチレンスルフェート、ポリスチレンスルホネート、ポリビニルホスフェート、ポリビニルホスホネート、ポリビニルスルフェート、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホネート、ポリラクテート、ポリ(ブタジエン/マレエート)、ポリ(エチレン/マレエート)、ポリ(エタクリレート/アクリレート)及びポリ(グリセロール/メタクリレート)の群から選ばれる。
【0040】
本発明の方法において使用されるカチオン性多価電解質、特に第三、第五などの塗膜層のカチオン性多価電解質は、例えば、キトサン、変性デキストラン、例えばジエチルアミノエチル-変性デキストラン、ヒドロキシメチルセルローストリメチルアミン、リゾチーム、ポリリジン、プロタミンスルフェート、ヒドロキシエチルセルローストリメチルアミン及びカチオン性タンパク質の群から選ばれ得る天然カチオン性多価電解質又は変性天然カチオン性多価電解質である。カチオン性多価電解質は、合成カチオン性多価電解質であり得、特に、ポリアリルアミン、ポリアリルアミン水和塩、ポリアミン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、ポリブレン、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリエチレンイミン、ポリイミダゾリン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリ(アクリルアミド/メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩/N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ジメチルアミノエチルアクリレート/アクリルアミド)、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリジメチルアミノエピクロロヒドリン、ポリエチレンイミノエピクロロヒドリン、ポリメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩、ヒドロキシプロピルメタクリロイルオキシエチルジメチルアンモニウム塩、ポリ(メチルジエチルアミノエチルメタクリレート/アクリルアミド)、ポリ(メチル/グアニジン)、ポリメチルビニルピリジニウム塩、ポリ(ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート)及びポリビニルメチルピリジニウム塩の群から選ばれ得る。カチオン性多価電解質は、実質的にハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンを含まないか、又は少なくとも実質的にハロゲンフリー、とりわけ塩化物フリーである。
【0041】
本発明の方法において使用される多価電解質は、部分的に多価電解質特性を有する、両親媒性ブロック及びランダムコポリマーの群から選ばれ得る両親媒性多価電解質でもあり得る。一般に、直鎖及び/又は分枝多価電解質が使用でき、本発明では、直鎖多価電解質が好ましい。直鎖多価電解質の使用は、比較的緻密でない多価電解質層又は比較的高い層有孔性の塗膜を導く。カプセルの安定性増加のため、多価電解質分子内部又は各層間を、例えばアミノ基のアルデヒドによる架橋によって架橋することもできる。
【0042】
本発明の好ましい態様では、本発明の方法において、カチオン性界面活性剤又はカチオン性多価電解質、特に第一、第三、第五などの塗膜層のカチオン性界面活性剤又はカチオン性多価電解質が、pH、とりわけ分散媒の pH に依存したカチオン性界面活性剤又はカチオン性多価電解質であることが可能である。pH に依存したカチオン性界面活性剤又はカチオン性多価電解質は、少なくとも実質的に、酸性 pH、好ましくは 7 未満の pH、特に 6.5 未満の pH、好ましくは 6 未満の pHで、プロトン化状態又はカチオン化状態である。pH に依存したカチオン性界面活性剤又は多価電解質は、少なくとも実質的に、中性又はアルカリ性 pH で、脱プロトン化状態又は電気的中性状態である。本発明において、pH に依存したカチオン性界面活性剤又はカチオン性多価電解質は、アミノ、イミノ、アミンオキシド、ホスフィンオキシド及びピリジン N-オキシド基、好ましくはアミンオキシド、ホスフィンオキシド、ピリジン N-オキシド及びピリジニウム基から選ばれる、少なくとも 1 個の官能基を有し得る。
【0043】
上述したように、本発明の方法において、ポリカチオン/ポリアニオン複合物、カチオン性界面活性剤/ポリアニオン複合物、ポリカチオン/アニオン性界面活性剤複合物、又はアニオン性界面活性剤/カチオン性界面活性剤複合物が、各塗膜層間に形成される境界層として形成され得る(塗膜層の各成分に依存)。これらの境界層複合物は、水溶性、やや水溶性又は好ましくは不水溶性状態であり得、溶解性は特に化学量論に依存する。これに関連して、用語「化学量論」は、カチオン性多価電解質又はカチオン性界面活性剤の、解離可能な又は解離される、任意に電気的に荷電された基又は官能基の、使用されるアニオン性多価電解質又はアニオン性界面活性剤の対応する基又は官能基に対する比を意味すると理解される。境界層の不水溶性状態は、特に荷電中和の場合に実現され得る。本発明の好ましい態様では、境界層複合物の水溶性は、上述したように、pH、とりわけ分散媒の pH によって調整され得る。本発明において、分散媒は、濃縮洗剤配合物又は洗浄剤配合物、或いは洗濯又は洗浄操作において存在する希釈洗濯液、即ち希釈された洗剤配合物又は洗浄剤配合物のいずれかであり得る。
【0044】
特定の理論に委ねたくはないが、上述のように、塗膜層間の界面層の形成は、例えば、化学的及び/又は物理的、特に物理的相互作用、とりわけ電気的相互作用、例えばイオン/イオン相互作用又はイオン/双極子相互作用のようなイオン間相互作用に基づいて生じる。これにより、特に濃縮洗剤配合物中での、カプセル化された過カルボン酸の安定性を増す、好ましい不水溶性複合物を形成できる。特に、塗膜層の厚さの結果として、カプセル塗膜は、同時に、イオン性多価電解質又はイオン性界面活性剤が好ましくは非複合状態で存在する、即ち、特に隣接した塗膜層の、逆帯電した基と相互に作用しない領域を有する。一方、本発明において使用される、多価電解質又はポリアニオン及び/又はポリカチオンはそれ自体水溶性であるので、本発明では、前記複合物によって形成される、不水溶性層又はその水溶性が例えば pH に依存する層を交互に好ましくは含むカプセル塗膜が存在できる。
【0045】
本発明において好ましい、荷電が pH に依存する、カチオン性界面活性剤又はカチオン性多価電解質の使用は、水溶性、特に境界層の水溶性に効果的に影響する。例えば、酸性 pH、例えば約 3.5〜約 5 の pH(本発明の洗剤又は洗浄剤配合物での場合にあり得る)では、pH に依存するカチオン性界面活性剤又は pH に依存する多価電解質が、プロトン化又は正に荷電された、即ちカチオン性状態で、好ましくは存在するので、複合化された界面層の水溶性は、酸性条件下では低い。pH が上昇した場合、例えば、本発明のカプセル系を含む本発明の洗剤又は洗浄剤配合物を洗濯液中で使用した場合(例えば 7 以上の pH に上昇)、使用する pH に依存するカチオン性界面活性剤又は pH に依存する多価電解質は、好ましくは、中性又は脱プロトン化状態で存在し、特に境界層の水溶性を増加させるので、カプセル化された過カルボン酸の洗濯液への放出は、結果的に促進され、残渣の形成は防がれる。
【0046】
従って、本発明において、pH に依存するカチオン性界面活性剤又は pH に依存する多価電解質は、このような多価電解質及び/又はこのような界面活性剤を含む塗膜層の部分溶解、完全溶解、可溶化又は放出に関して、いわば、pH スイッチ(即ち pH 依存)の機能を有する。例えば、弱酸性の液体洗剤配合物では、このような物質は、過カルボン酸に対する良好な保護作用を有する安定なカプセル塗膜を生じさせる。pH が洗濯液中で上昇する場合、このような物質はより良好に溶解する。
【0047】
本発明では、複数の塗膜層を、少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸に塗布し得る。塗膜層の数は、特に、少なくとも 2 層及び 10 層まで、又はそれ以上の塗膜層であり得る。これに関連して、一方では、過カルボン酸の有効なカプセル化又は保護作用を、そして他方では、カプセル化された過カルボン酸の洗濯液中での良好な放出を実現するために、特に少なくとも 2 層、好ましくは 10 層まで、又はそれを超える塗膜層が最適な結果を導くことが見出された。特に 8 層又はそれを超える塗膜層を有するカプセル系の場合、有効なカプセル化及びカプセル化された過カルボン酸の良好な放出に関して優れた結果が得られることが見出された。
【0048】
本発明の方法において、少なくとも 1 種の多価電解質及び/又は少なくとも 1 種のイオン性界面活性剤を含み、工程(a)、(b)及び/又は存在する場合は(c)で供給される溶液又は分散体は、過カルボン酸の分解を少なくとも実質上防ぐか又は減少するために、最大 6、特に 1〜6、好ましくは 2〜5、より好ましくは 3〜4、特に好ましくは 3.5 の pH を有する。過カルボン酸は、本発明のカプセル系の製造において、3.5 以下の pH では比較的有効に安定化され得るが、中性又はアルカリ性 pH では比較的迅速に分解され得る。
【0049】
本発明の方法において、工程(a)、(b)及び存在する場合は(c)で、溶液及び/又は分散体を、安定させるために過カルボン酸に及び/又は先の塗膜層に、流動層装置で、及び/又は塗料槽、ドラムコーター、ミキサー、特に、噴霧乾燥機、ウルスターコーターによって、好ましくは流動層装置で溶液及び/又は分散体を噴霧することによって塗布する。
【0050】
工業生産では、好ましい方法として、流動層装置で交互に 2 つの噴霧ノズルを用いて作業でき、各塗膜層材料の溶液及び/又は分散体各々を、安定させるために過カルボン酸に又は先の塗膜層に塗布できるので、原則として、所望の数の塗膜層が塗布され得る。必要な操作時間は、蒸発すべき水の量によって決定される。
【0051】
好ましい態様として、例えば、第一層は噴霧乾燥によって、第二、第三、第四などの層は、例えば、ウルスターコーター、塗料槽、ドラムコーター、ミキサーなどによって、好ましくはウルスターコーターによって塗布される。
【0052】
従って、本発明の方法では、各層を簡単な方法で塗布することができ、塗膜層の塗布と塗布との間の未吸着物質の複雑な除去が不要である。
【0053】
塗布過程、特に第一塗膜層の塗布過程では、固体過カルボン酸粒子の凝集が形成され得るので、このような方法で所望の粒度が確立できる。従って、これに関連して、複数のカプセルコアを含むカプセル系を製造できる。
【0054】
本発明の製造方法を用いて、分子層よりかなり厚い広範な層厚さを形成できるので、上述の複合物及び非複合の多価電解質又はイオン性界面活性剤の層を含む、連続した又は交互の順序の境界層が形成され得る。これにより、過カルボン酸の貯蔵及び放出に関して、本発明のカプセル系のプラスの特性が特に得られる。
【0055】
応用のための必要に応じて又は所望の場合は、更なる添加剤又は助剤(例えば、ホウ酸、安定剤、変性剤、無機塩、染料などのような取扱安全性の増加に役立つ物質)を、コア材料(過カルボン酸)及び/又はカプセル塗膜に添加し得る。
【0056】
本発明に関連して、とりわけ重金属イオンを錯化するために、少なくとも 1 種の錯化剤を少なくとも 1 つの塗膜層に添加でき、錯化剤は、特に、キノリン及び/又はその塩、リン酸塩、アルカリ金属ポリホスホネート、ピコリン酸及びジピコリン酸、モノ-又はポリホスホン酸、とりわけ 1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、アザシクロヘプタンジホスホネート(AHP)及び/又はニトリロ三酢酸(NTA)の群から選ばれる。その結果、特に、過カルボン酸、例えば PAP の分解、酸化又は還元反応及び/又は加水分解反応の触媒となる重金属イオンは、有効に捕捉され得る。
【0057】
加えて、少なくとも 1 種の可塑剤、特に、水溶性ポリマー、好ましくはポリエチレングリコール(PEG)、グリセロール、グリコール又はトリアセチンのための少なくとも 1 種の可塑剤を、少なくとも 1 つの塗膜層に添加し得る。その結果、カプセル塗膜又は塗膜層の力学的性質、即ちカプセル系の力学的性質が影響され得る。
【0058】
更に、少なくとも 1 種の微粉剤を少なくとも 1 つの塗膜層に添加し得、その結果、材料の粘着性が減少され、従って加工し易さが向上し得る。微粉剤は好ましくはアルカリ反応すべきではない。本発明において好ましい微粉剤は、例えば硫酸塩及びシリカ、例えば Degussa 社製 Sipemat(登録商標)である。
【0059】
一般に、本発明の方法において、工程(a)、(b)及び/又は存在する場合は(c)で、カプセル系の加工作業、特に乾燥作業及び/又は精製作業及び/又は分類作業を、例えば各塗膜層の塗布後、通常法によって、特に、フリーズドライ(凍結乾燥)、分散媒の蒸発、好ましくは流動層装置での 40〜60 ℃の温度での分散媒の蒸発、限外濾過、透析又は穏やかな条件下での噴霧乾燥、或いは篩い分けによって行う。
【0060】
工程(d)において行われ得る加工作業、例えば乾燥作業及び/又は精製作業及び/又は分類作業も同様に、上記のような通常法によって行い得る。これに関連して、カプセル系の成形も、例えば球状化などによって行い得る。
【0061】
本発明の方法において、少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸を封入したカプセル系は、20〜4000 μm、好ましくは 50〜3000 μm、特に 100〜2000 μm の平均サイズ(球体直径)で得られるので、特定の後の使用に対応するカプセル系のサイズを制御調整することが可能である。
【0062】
適切な場合、応用のための必要に応じて又は所望の場合は、本発明のカプセル系を、そのサイズ又は粒度分布に従って、例えば篩い分けによって分類することができる。
【0063】
本発明の方法において、カプセル塗膜における各塗膜層の割合は、カプセル系に基づいて、1〜15 重量%、好ましくは 1.5〜10 重量%、特に 2〜10 重量%であり得る。各塗膜層からなるカプセル塗膜全体の割合は、カプセル系に基づいて 70 重量%までであり得る。各塗膜層における多価電解質の分子量は、1000 以上、好ましくは 10000 以上、特に 15000 以上であり得る。有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、好ましくは PAP の含有量は、カプセル系に基づいて、30 重量%以上、好ましくは 40 重量%以上、特に 50 重量%以上であり得る。用途に応じて、例えば、本発明のカプセル系の取扱安全性を増すために、過カルボン酸の含有量の調整を行い得る。例えば、過カルボン酸の過度に高い含有量は、製品安全性の理由から望ましくなく、又は実用的でもない。このため、過カルボン酸の含有量は、例えば、カプセル系に基づいて 50 重量%を超えるべきではない。
【0064】
本発明において特に好ましい態様では、カプセル系のカプセル塗膜が 4 つの塗膜層を含み、少なくとも 1 種のカチオン性界面活性剤又はポリマーを好ましくは含む第一塗膜層と、少なくとも 1 種のカチオン性ポリマー又はカチオン性界面活性剤を好ましくは含む第三塗膜層の割合が、カプセル系に基づいて各々 2〜5 重量%であり、少なくとも 1 種のアニオン性多価電解質又は少なくとも 1 種のアニオン性界面活性剤を各々含む第二及び第四塗膜層の割合が、カプセル系に基づいて各々 5〜10 重量%である。
【0065】
本発明において好ましい各塗膜層の割合は、洗濯液中での、カプセル化された過カルボン酸の効果的な保護作用及び良好な放出を可能にする背景に対して選択される。前述のように本発明では、塗膜層厚さが分子厚さを有する層よりかなり大きい塗膜系を塗布することが特に好ましいため、複合された境界層が、各塗膜層の間、そして特に洗濯液及び洗浄液内で水溶性である非複合多価電解質及び/又はイオン性界面活性剤を含む層の間にも形成される。
【0066】
本発明の方法によって製造されたカプセル系は、制御された放出効果を有する。制御された放出効果は、カプセル系を例えば洗濯液中で使用する際のカプセル系の溶解を僅かに、好ましくは 1〜15 分間遅らせる、即ち本発明のカプセル系からの過カルボン酸の放出を遅らせる。
【0067】
最後に、本発明の方法において、追加の塗膜又は塗膜層を本発明のカプセル系に更に塗布でき、その結果、安定化又はカプセル化された有機過カルボン酸の更なる安定化効果がもたらされる。例えば、重金属イオンを錯化し得る錯化剤をこの追加の塗膜に配合できるため、過カルボン酸の重金属を触媒とする分解を、少なくとも実質上防ぐことができる。追加塗膜の塗布により、更に溶解速度は緩和され、所望の程度に調整される。これによって、本発明のカプセル系内に存在する過カルボン酸の放出効果を、更に制御することができる。追加塗膜の塗布は、当業者に既知の方法、例えば、流動層法、又は溶液からのカプセル系への追加塗膜材料の吸着、カプセル系への塗膜材料の溶液又は溶融体の噴霧及び続く溶媒(好ましくは水)の蒸発、ミキサー、槽などでの被覆などによって行い得る。本発明において、追加塗膜物質として、当業者にそれ自体既知の材料、例えば、塩及び無機酸化物のような無機化合物、特に硫酸塩又はリン酸塩、又は有機ポリマーのような高分子量化合物、例えば、セルロースエーテル、ポリビニルアルコール(PVAl)、ポリビニルピロリドン(PVP)などを使用できる。
【0068】
本発明の方法において、例えば、特にそれ自身での吸熱反応、例えば、80 ℃未満、特に 70 ℃未満の温度での結晶水放出反応又は分解反応を生じ得る物質を、好ましくは塗膜層又はカプセル塗膜の塗布前に、有機過カルボン酸に塗布することも可能である。本発明において、このような物質は、過カルボン酸とブレンドでき、特に混合できる。このような物質は、例えばホウ酸である。本発明において、このような物質は、好ましくは塗膜層又はカプセル塗膜の塗布前に、過カルボン酸に直接塗布し得、例えば更なる塗膜の形成と同じ工程段階を用いることができる。添加した物質が、生じた発熱を奪うか又は補うので、本発明のカプセル系の取扱安全性は増加する。発熱は、局部的に起こるか又は始まる過カルボン酸の発熱分解によって生じ得る、カプセル系において局部的に生じる温度上昇、或いは例えば貯蔵中に容器内又は分散体自体内で生じる温度上昇を意味すると理解される。添加物質、例えばホウ酸は、塗膜層又はカプセル塗膜に導入し得る。しかしながら、取扱安全性に関してより高い有効性が得られるので、本発明では、過カルボン酸への塗布、又は過カルボン酸とのブレンド又は混合が好ましい。
【0069】
本発明の方法において、工程(b)、(c)及び/又は存在する場合は(d)で得られたカプセル系は、例えば、洗剤又は洗浄剤配合物、特に液体の洗剤又は洗浄剤配合物のための更なる成分と共に配合し得る。洗剤又は洗浄剤配合物は、少なくとも実質上ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンを含まないか、又はハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンの量が、最大 500 ppm、好ましくは最大 100 ppm、より好ましくは最大 30 ppm である。pH は、最大 7、特に 3.5〜7、好ましくは 4.0〜6.5、より好ましくは 4.5〜6 である。更に、洗剤又は洗浄剤配合物は、少なくとも 1 種の錯化剤を含み得る。錯化剤は例えば、キノリン及び/又はその塩、アルカリ金属ポリホスホネート、ピコリン酸及びジピコリン酸、モノ-又はポリホスホン酸、とりわけ 1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、アザシクロヘプタンジホスホネート(AHP)、ニトリロ三酢酸(NTA)、クエン酸及び/又は短鎖ジカルボン酸の群から選ばれ得る。本発明の方法において、これらの錯化剤は、特に重金属イオンを錯化するために含む。更に、洗剤又は洗浄剤配合物は、有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸に対する溶解性が低い、少なくとも 1 種の水混和性溶媒を(例えば、洗剤又は洗浄剤配合物に基づいて、好ましくは 20 重量%超、より好ましくは 30 重量%超の量で)任意に含むか、又は水混和性溶媒が分散体の分散媒である。例えば、この溶媒はグリセロールである。しかしながら、本発明において好ましい溶媒は水である。加えて、任意に、少なくとも 1 種のカタラーゼを洗剤又は洗浄剤配合物に添加し得る。洗剤又は洗浄剤配合物に関する更なる詳細については、後記説明を参照できる。
【0070】
本発明の方法はまた、過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、好ましくは PAP を安定させる方法、又は過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、好ましくは PAP の安定性を増加する方法である。
【0071】
典型的な態様として、本発明の方法は、以下のように行い得る:固体粒状、特に結晶状の過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸(例えば PAP)をカプセル化又は保護するために、カプセル塗膜を、過カルボン酸に多層方法によって塗布する。このために、PAP に塗布する第一塗膜層は、正又は負の正味荷電を有する多価電解質又は界面活性剤である。PAP 結晶は、弱酸性 pH 下でさえ、小さい負の表面荷電を有するので、第一塗膜層にはカチオン性物質を使用することが有利である。使用するカチオン性界面活性剤は、一般的なカチオン性界面活性剤、例えば、アンモニウム基が一般式 R1R2R3N+[式中、R1、R2 及び R3 基は、同じ又は異なって、水素原子、或いは 1〜40 個、特に 1〜25 個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキル、アルキレン又はアルキニル基である。]に相当する第四級アンモニウム塩、例えば、アルキルジメチルアンモニウム界面活性剤、エステルクォート及び N-アルキルピリジニウム塩であり得る。界面活性剤の対イオンがハロゲン化物イオンではない場合が有利であることが見出された。適当な対イオンは、例えば、(メチルスルフェート、スルフェート、ホスフェート、トシレート又はクメンスルホネート)アニオンである。
【0072】
或いは、第一塗膜層に使用される材料はカチオン性ポリマーでもあり得る。適当なカチオン性ポリマーは、アミン、イミン又はイミダゾール基を有する四級化ポリマーであり、例えばポリジアリルジメチルアンモニウムポリマーである。例えば化粧品用途において知られる、一般名「ポリクオタニウム(登録商標)」のポリマー全てが適当であり、対イオンがハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンではないものが特に適当なポリマーである。
【0073】
第二層として、逆帯電のポリマーが塗布される。第一層にカチオン性物質を使用する場合、アニオン性物質が続く。ポリカルボン酸及びその部分塩のような合成ポリマーが特に好ましい。適当なポリマーは、例えば、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸及びこれらのコポリマーである。また、重合体スルホン酸、例えばポリスチレンスルホン酸及びその部分塩も適している。ポリマー様方法によってスルホン化されたポリマーもまた可能である。更に、天然アニオン性ポリマー、例えば、アルギン酸、キサンタンなども使用できる。また、カルボキシメチルセルロースのような誘導化天然ポリマーも可能である。任意に、第三、第四などの層が塗布され得、各々は、内側の層と逆帯電の材料からなる。第二、第三、第四などの層では、界面活性剤と比較してポリマーが好ましいが、界面活性剤、及び同種の荷電を有するポリマーと界面活性剤との混合物も問題なく使用できる。
【0074】
本発明において、塗膜層の材料は、例えば、交互に流動層装置で、好ましくは約 3.5 の pH を有する酸性水溶液として噴霧される。異なる貯蔵槽から供給される被覆材料を少なくとも 2 つのノズルによって噴霧できる、流動層装置での加工が適当である。従って、2 つのノズルからの交互噴霧、又は 1 つの溶液又は分散体を噴霧するある場所から、別の溶液又は分散体を噴霧する別の場所への、被覆される材料(過カルボン酸粒子、未完成のカプセル系)の空間的移動により、塗膜層又は多層カプセル塗膜の塗布が、洗浄又は装置交換に関して極めて複雑になることなく実現できる。また、特に第一層の塗布には、噴霧乾燥が適しており、更なる層の塗布には、ウルスターコーターが適しているが、他のマクロ粒子被覆用装置、例えば、塗料槽、ドラムコーター、ミキサーなども適している。
【0075】
第一層の噴霧塗布において、任意に、所望の粒度の凝集物を形成することもできる。粒度は、50〜3000 μm、好ましくは 100〜200 μm の範囲である。更なる各層の噴霧塗布において、界面層複合物(例えば、ポリアニオン/ポリカリオン複合物など)が、内側の層との境界層上に形成される。化学量論に依存して、界面層複合物は、水溶性、やや水溶性、又は特に中性の場合は不水溶性であり、これに関しては、上記記載を参照することができる。
【0076】
本発明の方法において、多段階法で製造された層が、水ベースの液体の洗剤配合物又は洗浄剤配合物中で、PAP に対して特に良好な保護を与えることが、意外にも見出された。本発明の特に有利なカプセル系は、ある種の塗膜層、好ましくは、恒久的にカチオン性の物質ではなく、pH に依存してカチオン性になる物質を含むか、又はそれからなるカチオン性塗膜層によって得られる。酸性 pH ではプロトン化状態で存在するが、中性 pH では中性状態で存在する、適当な pH 依存性カチオン性界面活性剤は、アミンオキシド-、又はホスフィンオキシドベースの界面活性剤、或いはピリジニウムベースの界面活性剤である。適当な pH 依存性カチオン性ポリマーは、アミノ基、イミノ基、アミンオキシド基、ホスフィンオキシド基又はピリジン N-オキシド基を有するポリマーである。一例として、ポリビニルピリジン N-オキシドがある。弱酸性の液体洗剤配合物において、このような物質は、漂白剤(例えば PAP)に対する良好な保護作用を有する安定なカプセル塗膜を生じさせる。洗濯液の pH が中性の場合、これらは良好に溶解する。
【0077】
本発明の塗膜は、更なる物質を含み得る。これらは、漂白剤の分解を促進する重金属イオンを無害にし得る。錯化剤の特に適当な例は、硝酸塩、EDTA、リン酸塩、より好ましくは、HDEP のようなホスホン酸塩である。更なる添加剤は、例えば、層の力学的性質にプラスに作用する。例えば、可塑剤は、この目的のために使用され得る。適当な可塑剤は、水溶性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、グリセロール、グリコール又はトリアセチンなどのための一般的な可塑剤である。従って、本発明の典型的な態様では、各層が逆帯電したイオン性界面活性剤及び/又はイオン性ポリマーからなる、多層、少なくとも 2 層のカプセル塗膜と共に、コア材料として漂白剤、好ましくは PAP を含んでなる、多層カプセル系が存在する。
【0078】
第二の要旨として、本発明は更に、少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸(例えば PAP)を封入し、本発明の方法によって製造され得る多層カプセル系を提供する。このように、カプセル系は、少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、好ましくは PAP を含み、多層カプセル塗膜によって少なくとも実質上、封入又は被覆される。カプセル塗膜は、少なくとも 2 つの異なった塗膜層、特に、少なくとも実質上完全に過カルボン酸を封入するか又は被覆する少なくとも 1 つの第一塗膜層、及び少なくとも実質上完全に第一塗膜層を封入するか又は被覆する第二塗膜層からなる。塗膜層は各々、少なくとも 1 種の多価電解質及び/又はイオン性界面活性剤に基づく。
【0079】
本発明において、本発明のカプセル系は、例えば、第三、第四、第五などの塗膜層を有する多層カプセル塗膜を含む。
【0080】
本発明において、本発明のカプセル系の第一及び第二塗膜層は、異なった、特に逆の正味荷電を有する。本発明において、互いに直接隣接する更なる塗膜層もまた、異なった、特に逆の正味荷電を有する。
【0081】
カプセル化される有機過カルボン酸は、特に、モノ及びジ過カルボン酸、とりわけドデカンジペルオキシ酸及び好ましくはイミド過カルボン酸、より好ましくは 6-フタルイミド過カプロン酸(6-フタルイミド過ヘキサン酸、PAP)から選ばれる。過カルボン酸は、大気圧下で 25 ℃超、特に 35 ℃超、好ましくは 45 ℃超、より好ましくは 50 ℃超、特に好ましくは 100 ℃超の融点を有する。
【0082】
本発明において、少なくとも 2 つの塗膜層からなり、カプセル化される過カルボン酸を包囲する多層カプセル塗膜は、カプセル化される過カルボン酸が、少なくとも実質上完全にカプセル塗膜によって包囲されるように存在するので、過カルボン酸は、少なくとも実質上、周囲媒体、特に分散媒と直接接触せず、即ち、カプセル化される過カルボン酸は、少なくとも 2 つの塗膜層からなる多層カプセル塗膜によって包囲されている、本発明のカプセル系内に、好ましくはコア材料として存在する。
【0083】
本発明のカプセル系に関する更なる詳細については、本発明のカプセル系に対応して適用される本発明の製造方法に関する上記記載を参照することができる。
【0084】
本発明のカプセル系において、カプセル塗膜内の各塗膜層の割合は、カプセル系に基づいて、1〜15 重量%、好ましくは 1.5〜10 重量%、特に 2〜10 重量%である。各塗膜層からなるカプセル塗膜全体の割合は、カプセル系に基づいて 70 重量%までである。各カプセル塗膜層中の多価電解質の分子量は、1000 以上、好ましくは 10000 以上、特に 15000 以上である。有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、好ましくは PAP の含有量は、カプセル系に基づいて、30 重量%以上、好ましくは 40 重量%以上、特に 50 重量%以上である。
【0085】
本発明において、カプセル化される過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、好ましくは PAP は、使用時、特に洗濯液中に、カプセル系から放出され得る。放出は、塗膜層を部分的又は完全に溶解、分散又は可溶化することによって、例えば、洗濯液中の pH 上昇又は界面活性剤再活性化、特に界面活性剤作用、及び洗濯職人の行為によって、特に達成され得る。例えば、洗剤又は洗浄剤配合物濃縮物が、本発明のカプセル系及び不活性状態の界面活性剤(例えば、例として硫酸ナトリウムによる塩析によって、又は液晶状態で)を含む場合、洗濯液中での使用によるこの濃縮物の希釈により、不活性体又は塩析状から活性体へ界面活性剤が転化するので、このように活性化された界面活性剤は、塗膜層又はカプセル塗膜を、部分的又は完全に溶解、分散又は可溶化する。洗濯液中での希釈の場合、同時に pH が急上昇するので、過カルボン酸の溶解性は著しく増加する。過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸(PAP)は、カプセル系から洗濯液中に、浸透作用及び/又は拡散作用によって放出され得る。例えば、水分子は、濃度勾配に従って、半透性カプセル塗膜、即ち、水には透過性で過カルボン酸には不透過性であるカプセル塗膜を通って、カプセル系のコア部分まで拡散し得、過カルボン酸の部分的又は完全な溶解を、洗濯液の適当な pH、特に 7 以上の pH で導き得る。
【0086】
特定の理論に委ねたくはないが、これによって、カプセル内に高い浸透圧が生じ、いわば、過カルボン酸の洗濯液への放出に繋がるカプセル塗膜の破裂を起こし得る。特定の理論に委ねたくはないが、カプセル塗膜又は塗膜層は、洗濯液中の pH 上昇によって、前述のとおり、荷電が pH に依存するカチオン性多価電解質又はカチオン性界面活性剤が中和され、従ってカプセル塗膜がより容易に部分的又は完全に溶解されることによって、部分的又は完全に溶解され得る。最後に、物理的作用、例えば、洗濯液中に存在する洗濯物による、又は洗濯ドラムとの接触によるカプセル系の物理的破壊も有効である。特に、本発明のカプセル系からの過カルボン酸の放出に関する上記方法各々の組み合わせも、可能である。
【0087】
本発明のカプセル系は、多くの可能な用途を有する。従って、本発明の更なる要旨として、本発明のカプセル系は、工業的利用において、洗剤及び洗浄剤配合物、特に液体の洗剤及び洗浄剤配合物、歯の手入れ用製品、ヘアカラー、或いは脱色配合物又は漂白配合物で使用できる。
【0088】
これに関連して、本発明のカプセル系は、過カルボン酸の制御された放出のための運搬システムとして使用され得、この場合、過カルボン酸の放出は、特に、少なくとも実質上過カルボン酸を包囲する塗膜層の組成又は数によって調整され得る。本発明において、「組成」は、各塗膜層中の適当な多価電解質又は適当なイオン性界面活性剤の種類及び/又は量を特に意味すると理解される。過カルボン酸の放出は、各塗膜層に関して、水溶性自体、又は分散媒の pH に応じた水溶性によって特に制御され得る。改良の更なる方法は、本発明のカプセル系への追加塗膜の塗布である。
【0089】
本発明のカプセル系は、特に、過カルボン酸が、長時間にわたって持続する又は遅延される放出(持続性放出効果)によって分配される、運搬システムとして使用され得る。
【0090】
本発明の別の要旨として、本発明は更に、少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸を封入した本発明の多層カプセル系を含む、工業的利用のための、洗剤及び洗浄剤配合物、特に液体の洗剤及び洗浄剤配合物、歯の手入れ用製品、ヘアカラー、或いは脱色配合物及び漂白配合物を提供する。
【0091】
本発明のカプセル系を含む本発明の洗剤及び洗浄剤配合物は、家庭及び工業分野の両方で使用できる。特に、本発明の洗剤及び洗浄剤配合物は、本発明のカプセル系を含む液体の洗剤及び洗浄剤配合物である。
【0092】
本発明の洗剤及び洗浄剤配合物は、硬い表面及び/又は柔らかい、特に布地表面を洗浄するために使用できる。本発明の洗剤及び洗浄剤配合物は、特に、食器用洗剤、汎用クリーナー、風呂用クリーナー、床用クリーナー、自動車用クリーナー、ガラスクリーナー、家具手入れ剤又はクリーナー、表面クリーナー、洗濯洗剤などとして、より好ましくは洗濯洗剤として使用できる。本発明の洗剤及び洗浄剤配合物は、好ましくは、繊維、布地、カーペットなどを洗浄するのに適している。
【0093】
本発明のカプセル系に加えて、本発明の洗剤及び洗浄剤配合物は、それ自体一般的な成分又は要素(例えば、界面活性剤、香料、染料、酵素、酵素安定剤、臭気物質又は臭気ビルダー、pH 調整剤、他の漂白剤、漂白活性剤、銀保護剤、防汚剤、蛍光増白剤、グレーイング阻害剤、分解助剤、増粘剤、消泡剤又は発泡防止剤、重金属錯化剤、色移り阻害剤、溶媒及び/又は任意に更なる一般的な成分)を含む。本発明において、これらの各成分又は要素が、互いに、そして本発明のカプセル系又はそれにカプセル化された過カルボン酸と適合であることが配慮されるべきであり、これは、成分又は要素及び/又はそれらの量的割合の特有の選択によって実現できる。このようにして、成分又は要素と本発明のカプセル系又はその中に組み込まれた過カルボン酸との望ましくない相互作用を防ぐことができる。以下に詳細を記したように、ある種の成分又は要素及び/又はその量的割合の特有の選択により、本発明のカプセル系又はそれにカプセル化された過カルボン酸に関する安定化効果が起こり得る。
【0094】
本発明の洗剤又は洗浄剤配合物、特に液体の洗剤又は洗浄剤配合物は、例えば、下記の成分:
(i)好ましくは 0.1〜20 重量%の、本発明に従った、少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸を封入したカプセル系;及び/又は
(ii)界面活性剤、特に、好ましくは 5〜30 重量%の、カチオン性及び/又はアニオン性界面活性剤、及び/又は好ましくは 0〜30 重量%の、非イオン性界面活性剤;及び/又は
(iii)任意に、好ましくは 0〜30 重量%の、電解質、特に無機及び/又は有機塩、好ましくは硫酸ナトリウム;及び/又は
(iv)任意に、好ましくは 0〜5 重量%の、錯化剤、特に、キノリン及び/又はその塩、アルカリ金属ポリホスホネート、ピコリン酸及びジピコリン酸、モノ-又はポリホスホン酸、とりわけ 1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、アザシクロヘプタンジホスホネート(AHP)、ニトリロ三酢酸(NTA)、クエン酸及び/又は短鎖ジカルボン酸の群から選ばれる錯化剤;及び/又は
(v)任意に、好ましくは 0〜10 重量%の、酵素、例えばプロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ及び/又はリパーゼ、任意に酵素安定剤と共に;及び/又は
(vi)任意に、好ましくは 0〜15 重量%の、ビルダー、特に脂肪酸、好ましくは飽和及び/又は分枝脂肪酸、特に 30 ℃未満の融点を有するもの、及び/又はクエン酸及び/又はクエン酸塩;及び/又は
(vii)任意に、好ましくは 0〜5 重量%の、香料;及び/又は
(viii)任意に、助剤、例えば消泡剤、pH 調整剤、流動調整剤(増粘剤)、溶媒、染料;及び/又は
(ix)任意に、更なる一般的な添加剤、例えば蛍光増白剤など;及び/又は
(x)水;
を含み、重量の全ては洗剤又は洗浄剤配合物に基づく。
【0095】
本発明の洗剤又は洗浄剤配合物、特に液体の洗剤又は洗浄剤配合物において、洗剤配合物又は洗浄剤配合物中の界面活性剤は、特に塩析、即ち界面活性剤欠乏連続相及び好ましくは薄層状の通常高粘度の結晶性又は液晶性界面活性剤リッチ相への相分離誘発によって、好ましくは洗剤配合物又は洗浄剤配合物への硫酸塩化合物、より好ましくは硫酸ナトリウムの添加によって不活性化される。洗剤配合物又は洗浄剤配合物において、この不活性化が特に、有機過カルボン酸、とりわけイミド過カルボン酸のカプセル系の、完全及び/又は部分的な溶解を、少なくとも実質上防ぐか又はなくす。本発明において、用語「連続相」は、溶解した成分又は物質(例えば、塩、界面活性剤など)を伴う分散媒を意味すると理解される。好ましくは本発明において、分散媒は水である。
【0096】
これに関連して、過カルボン酸は、活性界面活性剤によってより一層の程度まで溶解され、この溶解状態では極めて不安定なので、有機過カルボン酸、特に PAP は、活性界面活性剤(即ち、洗剤配合物又は洗浄剤配合物中に、フリー及び/又はミセル状で存在する界面活性剤)の存在下で直ちに分解されることが示された。特に、非イオン性界面活性剤、例えばアルキルポリグリコールエーテルベース界面活性剤は、過カルボン酸の分解を促進する。硫酸塩の添加によって、少なくとも部分的に界面活性剤を不活性化する。これは特に塩析によって行われ、界面活性剤は、特にミセル活性体から、好ましくは薄層状の結晶体又は液晶体に転化される(結晶形成又は液晶形成)。このような液晶体自体は、例えば遠心分離によって、除去可能であり、高粘度である。更に、本発明の洗剤配合物及び洗浄剤配合物中の、又は本発明の洗剤配合物及び洗浄剤配合物の連続相中のフリー界面活性剤含有量は、最大 1 %である。
【0097】
本発明の洗剤又は洗浄剤配合物中の硫酸塩濃度は、洗剤又は洗浄剤配合物を洗濯液中で使用する場合は、界面活性剤が活性体として再び存在する(例えば、これは、洗剤又は洗浄剤配合物が洗濯液に添加された時の希釈効果によって達成され得る)ように選択される。特に、硫酸塩濃度は、上述のように、1 %未満の溶存界面活性剤が未希釈洗剤又は洗浄剤配合物の連続相中に存在し、温度を下げた場合、特に 0 ℃まで下げた場合に、硫酸塩の結晶化が起こらないように選択される。
【0098】
特に、非イオン性界面活性剤が過カルボン酸の安定性に関して問題であるので、本発明の洗剤及び洗浄剤配合物は、適当に調整又は最適化された非イオン性界面活性剤/荷電界面活性剤比を有する。アルキルポリグリコールエーテルの含有量は、最小にすべきである。
【0099】
本発明において、本発明の洗剤及び洗浄剤配合物、特に液体の洗剤及び洗浄剤配合物は、少なくとも実質上、ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンを含まない。ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンの量は、最大 500 ppm、好ましくは最大 100 ppm、より好ましくは最大 30 ppm である。これは、通例のように、例えば、いくつかの原料又は成分の汚染による、従来の洗剤及び洗浄剤配合物中の、高いハロゲン化物イオン濃度、特に高い塩化物イオン濃度が、過カルボン酸の分解を増加させることが意外にも見出されたからである。従って、ハロゲン化物イオン濃度、特に塩化物イオン濃度の低下は、過カルボン酸の分解を減少させる。低い塩化物イオン濃度は、本発明において、特に、洗剤配合物又は洗浄剤配合物の界面活性剤に関して、とりわけ、(硫酸塩、硫酸メチル、リン酸塩、トシル酸塩又はクメンスルホン酸塩)化合物を使用することによって達成され得る。更に、原料又は成分は、特に低い塩化物イオン濃度を有するものを選択すべきである(例えば、実質上ハロゲンフリーの成分、例えばハロゲンフリー界面活性剤、ハロゲンフリーホスホン酸塩などの使用)。
【0100】
更に、本発明の洗剤及び洗浄剤配合物は、最大 7、特に 3.5〜7、好ましくは 4.0〜6.5、より好ましくは 4.5〜6、最も好ましくは 約 5 の pH を有する。これは、PAP のような過カルボン酸ベースの漂白剤が、酸性環境、特に 3.5 以下の pH で、意外にも比較的有効に安定化され得る一方で、中性又はアルカリ性 pH では、PAP のような過カルボン酸の比較的迅速な分解が生じるためである。本発明の洗剤及び洗浄剤配合物の pH は、例えば酸性塩の添加によって低下できる。例えば、ビルダー物質としても同時に使用され得る、重硫酸塩及び/又は重炭酸塩又は有機ポリカルボン酸が好ましい。更に、錯化剤として使用されるホスホン酸塩をホスホン酸として添加でき、アルカリの添加によって後に所望の pH にできる。
【0101】
本発明の洗剤又は洗浄剤配合物は、少なくとも 1 種の脂肪酸を含み得る。本発明では、特に 30 ℃未満の融点を有する、飽和及び/又は分枝脂肪酸が好ましい。本発明において、本発明の洗剤又は洗浄剤配合物に、例えば Sasol 社製 Isocarb-16(登録商標)を使用できる。
【0102】
本発明の洗剤又は洗浄剤配合物は、最適化されたクエン酸又はクエン酸塩含有量を有する。見出されたように、クエン酸又はクエン酸塩は、過カルボン酸、特に PAP を分解し得る。それにも拘わらず、場合によっては、クエン酸又はクエン酸塩を、洗剤又は洗浄剤配合物、或いは本発明のカプセル用の分散媒に(例えばビルダーとして、及び/又は錯化剤として)使用する必要があり得る。しかしながら、使用量は、多すぎるべきではなく、過カルボン酸、特に PAP に対して調整されるべきである。
【0103】
更に、本発明の洗剤又は洗浄剤配合物は、少なくとも 1 種の錯化剤、特に、キノリン及び/又はその塩、モノ-又はポリホスホン酸、とりわけ 1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、アザシクロヘプタンジホスホネート(AHP)、ニトリロ三酢酸(NTA)、クエン酸及び/又は短鎖ジカルボン酸の群から選ばれ得る、少なくとも 1 種の錯化剤を含み得る。本発明において、重金属のために使用できる錯化剤の更なる例は、例えば、アミノポリカルボン酸、アミノヒドロキシポリカルボン酸、ポリホスホン酸及びアミノポリホスホン酸である。これらの錯化剤は、本発明において、酸化作用の触媒として特に機能し、従って PAP のような過カルボン酸の分解を導き得、本発明の洗剤又は洗浄剤配合物に、例えば送水管又は製造装置の金属成分から、或いは原料又は成分から、極微量導入され得る重金属イオンを、効果的に不活性化するか又は結合するために使用される。
【0104】
更に、本発明の洗剤及び洗浄剤配合物は、任意に、有機過カルボン酸に対する溶解性が低い少なくとも 1 種の水混和性溶媒、好ましくはグリセロールを含み得る。
【0105】
また、本発明の洗剤及び洗浄剤配合物は、過カルボン酸と水との反応によって形成された過酸化水素を、製品、特に洗剤配合物及び洗浄剤配合物の連続相から効果的に除去するために、任意に、少なくとも 1 種のカタラーゼを含み得るので、特に、場合により酵素の活性損失を招き得る酸化作用から、存在する酵素を効果的に保護する。この目的のため、任意の少なくとも 1 種のカタラーゼに加えて、少なくとも 1 種のペルオキシダーゼ及び/又は少なくとも 1 種の酸化防止剤を、本発明の洗剤又は洗浄剤配合物に添加することが、同様に可能である。本発明に好ましい酸化防止剤は、例えば、アスコルビン酸、トコフェロール、没食子酸又はこれらの誘導体である。
【0106】
更に、本発明の洗剤配合物又は洗浄剤配合物は、特に実質上、部分的又は完全に本発明のカプセル系を溶解しないように構成される。一般に、本発明の洗剤又は洗浄剤配合物に使用される成分は、本発明のカプセル系に少なくとも十分適合性であるように、即ち、特に洗剤又は洗浄剤配合物自体内で、とりわけ使用前の期間(貯蔵期間)中、過カルボン酸の早すぎる分解及び活性損失を導くであろう、望ましくない化学反応、特に、分解、酸化又は還元反応及び/又は加水分解反応が、これらの成分とカプセル系との間で生じないように選択される。
【0107】
同時に、洗剤又は洗浄剤配合物自体内で、過カルボン酸の放出がなく、特に、カプセル塗膜又は塗膜層の剥離及び部分的又は完全な溶解が生じることなく、浸透条件によって過カルボン酸が溶解したり又はカプセル系外に拡散したりしないことを確実にすべきである。これは、本発明では、洗剤配合物又は洗浄剤配合物において、例えば、溶媒としての水と組み合わせて硫酸塩を添加することによって達成でき、その結果、洗剤又は洗浄剤配合物内の浸透圧の上昇が達成される。更に、洗剤又は洗浄剤配合物の pH は、酸性範囲内、特に上述したような範囲内であるので、過カルボン酸、特に PAP が低溶解性を有する一方、特に上述したように、pH に依存するカチオン性界面活性剤又はカチオン性多価電解質を含むカプセル系の塗膜層は、プロトン化状態で存在し、従って、低い水溶性しか有さない。
【0108】
従来技術と比較して、本発明は、下記の利点を示す。
本発明の方法において、カプセル塗膜及び塗膜層は、物理化学的又は物理的相互作用に基づいて形成されるので、幾つかの従来技術法で存在するような、重合工程、特にラジカル重合工程は、カプセル構造を形成するために不要である。このような重合は、しばしば、活性物質、特に繊細な過カルボン酸の分解を招く。従って、本発明は、化学的に繊細な過カルボン酸を対象にしたカプセル化方法を提供する。
【0109】
更に、本発明の方法は、そのサイズ及び活性物質含有量に関して広範に変更又は調整できる、過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸を封入した多層カプセル系を提供するので、特に洗剤及び洗浄剤配合物に関して、各要求に対する個々の調整が可能であるという利点を有する。
【0110】
これに関連して、カプセル塗膜の数及び対応する塗膜の組成の両方を広範に変化させ得るため、本発明において、第一に、特に洗濯液における使用前の期間に、高い貯蔵安定性を有するカプセル化された過カルボン酸を提供し、第二に、洗濯液での洗浄操作中の過カルボン酸の良好な放出を達成でき、これは特に有利である。活性物質/塗膜比の調整により、適当な使用において、活性物質、即ち過カルボン酸の実際の調節が可能になり、これに関連して、本発明のカプセル系の著しく高い過カルボン酸含有量は注目に値する。
【0111】
本発明の製造方法及びそれにより得られたカプセル系は、第一に、本発明のカプセル系が水溶液又は水性分散体から塗布され、第二に、カプセル系が、水性液体配合物中、例えば液体の洗剤又は洗浄剤配合物中で部分的又は完全に溶解されないことを確実にする。このようなカプセル系を製造するための本発明の製造方法は、工業規模に有用であり、実現可能である。
【0112】
更に、カプセル塗膜の制御された改良、特に重金属イオンのための錯化剤の添加により、過カルボン酸の保護に対する更なる向上、そしてそれに関連して、貯蔵安定性の更なる増加が達成できる。カプセル塗膜の更なる改良、例えば軟化剤の添加は、特定の使用に関して、本発明のカプセル系の著しい適合性を導く。
【0113】
例えばワックスベースのカプセル化系とは対照的に、本発明のカプセル系は、洗濯工程で望ましくない残渣を洗濯物上に残す厄介なカプセル塗膜を含まない。これは、各塗膜層間の境界層が実質上不水溶性であるが、洗濯条件下では、有意な残渣は洗濯物上に形成されないことが見出されたためである。
【0114】
本発明のカプセル系は、従来技術の系と比較して、貯蔵安定性の著しい増加、従って、長時間後でさえ高い漂白活性を有するという決定的な利点を有する。
【0115】
特に、本発明のカプセル系は、界面活性剤を含む系、例えば、液体の洗剤及び洗浄剤配合物のための界面活性分散体(界面活性剤含有分散体)での配合及び使用に適している。カプセル化されていないか又は保護されていない過カルボン酸、特に PAP は、界面活性剤の存在下、不安定で直ちに分解されるため、界面活性剤含有液体、特に水性媒体中での、それらの使用は、これまで不可能であるか又はせいぜい非常に限られた程度でしか可能ではなかったので、本発明のカプセル系は特に有利である。カプセル化過カルボン酸の望ましい制御された放出に更に関連するカプセル系の安定化効果は、本発明のゲルカプセルが配合される媒体が、過カルボン酸の更なる安定性を与えるよう調整されることにより、特に、界面活性剤の不活性化、pH の最適化又は低下、ハロゲン化物イオン含有量の減少、過カルボン酸に対して低い溶解性を有する溶媒の使用などにより、相乗的に増強され得る。
【0116】
本発明のカプセル系は、安定して、特に液体の洗剤及び洗浄剤配合物中に配合され得る。沈澱の更なる防止又は減少は、例えば、当業者に既知の適当な増粘剤系によって達成できる。これにより、高い貯蔵安定性を有し、長期間後でさえ、過カルボン酸を効果的に放出できる。
【0117】
本発明のカプセル系は、通常の処理技術によって、工業的規模で、本発明の処方により製造できる。特に、本発明の塗膜層は、複雑な操作によって予め除去しなければならない未吸着物質がなく、互いに直接塗布され得る。
【0118】
本発明の製造方法を用いることによって、分子層よりかなり厚い広範な層厚さを形成でき、その結果、連続した又は交互の順序の複合及び非複合の境界層が得られる。これにより、過カルボン酸の貯蔵及び放出に関して、本発明のカプセル系の特にプラスの特性が得られる。
【0119】
上述の互いに調整された相乗的積極的改良、即ち、配合の適合性、特にハロゲン化物イオン含有量の低下、pH の最適化、錯化剤、特定溶媒(例えばグリセロール)及び/又は酵素(例えばカタラーゼ)の添加、界面活性剤の不活性化によって、過カルボン酸ベースである繊細な漂白剤の分解が、本発明のカプセル系に関連して著しく減少されるので、本発明のカプセル系を含む本発明の洗剤配合物及び洗浄剤配合物は、従来技術より相当な利点を有する。
【0120】
本発明の更なる態様、修正及び変更、並びに利点は、本明細書を読んだ際、直ちに、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって認識され理解される。
本発明を下記の実施例によって説明するが、これらは本発明を決して限定するものではない。
【実施例1】
【0121】
実験用流動層装置(Aeromatic(登録商標))に、まず、300 g の Eureco(登録商標)W(72 % PAP 含有量)を導入した。50 ℃の空気供給温度で、1 % Sequion(登録商標)10H60 を混合した 150 ml の Luviquat Care(登録商標)(ポリカチオン)を噴霧した。乾燥後、再び 1 % Sequion(登録商標)10H60 を混合した 100 ml の Sokalan(登録商標)CP 45(ポリアニオン)を噴霧した。第三及び第四層も同じ方法で噴霧した。得られたカプセル系(配合物)を取り出し、200〜2000 μm の粒度に篩い分けた。これは、61 %の活性物質含有量(PAP)を有した。
【実施例2】
【0122】
実施例 2 において、本発明の配合物が、界面活性剤含有液体配合物中での PAP 安定性をどれほど増加させるかを示す。
実施例 1 のカプセル系を、下記配合の液体配合物中に添加した(パーセントは活性物質データである)。
【表1】

ホスホン酸塩(Sequion(登録商標)10H60)によって、この配合物の pH は強酸性である。水酸化ナトリウム溶液で pH を 5.0 に調整した。生成物を 40 ℃の温度で配合した。比較例では、同じ液体配合物を用い、未処理の Eureco(登録商標)W を配合した。1 週間後、本発明の配合物の活性酸素損失は、わずか 1 %であった。比較例では、PAP の 15 %が分解された。2 週間後、本発明の配合物は、わずか 5 %の損失を示した。比較例では、含有量が 25 %まで低下した。
【実施例3】
【0123】
【表2】

【実施例4】
【0124】
塗膜層製造のため用いる各溶液又は分散体の組成を変化させた以外は、実施例 1 に従ってカプセル系を製造した。以下の実施例 4a〜4d において、塗膜層材料の各溶液又は分散体に用いた材料及びその濃度は、溶液又は分散体に基づいて(別の記載がある場合を除き)規定する。交互の塗膜層を有するカプセル系を形成するために、各溶液又は分散体を、カプセル化するための Eureco(登録商標)W 上に交互に噴霧した。
カプセル系を、実施例 3 の液体配合物中に添加し、40 ℃の貯蔵温度で混合した。種々の混合時間に対する活性酸素維持力を、混合前の活性酸素維持力に基づいて表示する。実施例 2 と比較して、活性酸素維持力は幾分低いが、用いた配合物は、極めて良好な洗浄性能を有する。
【0125】
【表3】

【0126】
【表4】

【0127】
【表5】

【0128】
【表6】

【0129】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸を、少なくとも 2 つの塗膜層からなる多層カプセル塗膜内に含むカプセル系が得られるように、各々が少なくとも 1 種の多価電解質及び/又はイオン性界面活性剤ベースである少なくとも 2 つの異なった塗膜層を、固体粒子状で存在する有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸に順次塗布することを特徴とする、少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸を封入した多層カプセル系の製造方法。
【請求項2】
(a)過カルボン酸を、少なくとも実質上完全に、第一多価電解質及び/又は第一イオン性界面活性剤(I)ベースの第一塗膜層によって封入するか又は被覆するための、固体粒子状で存在する少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸への、少なくとも 1 種の第一多価電解質及び/又は少なくとも 1 種の第一イオン性界面活性剤(I)を含む溶液及び/又は分散体の塗布、
(b)第二多価電解質及び/又は第二イオン性界面活性剤(II)ベースの第二塗膜層を、工程(a)で得られた第一塗膜層に塗布するための(第二塗膜層は、少なくとも実質上完全に、第一塗膜層を封入するか又は被覆し、この 2 つの塗膜層は互いに直接接触する。)、工程(a)で得られた第一塗膜層への、第二多価電解質及び/又は少なくとも 1 種の第二イオン性界面活性剤(II)を含む少なくとも 1 種の溶液及び/又は分散体の塗布(第二多価電解質及び/又は第二イオン性界面活性剤(II)は、第一多価電解質及び/又は第一イオン性界面活性剤(I)とは異なり、特に逆帯電している。)、
(c)少なくとも 1 種の更なる塗膜層、特に第三、第四などの塗膜層の任意塗布(塗膜層を形成する多価電解質及び/又はイオン性界面活性剤は、互いに直接隣接する塗膜層が、各々の場合に、異なった、特に逆帯電した多価電解質及び/又は逆帯電したイオン性界面活性剤を含むか又はそれらからなるように選択される。)、
(d)得られたカプセル系の任意加工、特に乾燥及び/又は精製及び/又は分類、特に篩い分け
の工程からなる、少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸を封入した、とりわけ請求項1に記載の、多層カプセル系の製造方法。
【請求項3】
有機過カルボン酸が、有機モノ及びジ過カルボン酸、特にドデカンジペルオキシ酸又は好ましくはイミド過カルボン酸、より好ましくは 6-フタルイミド過カプロン酸(6-フタルイミド過ヘキサン酸、PAP)から選ばれ、及び/又は過カルボン酸が、大気圧下で 25 ℃超、特に 35 ℃超、好ましくは 45 ℃超、より好ましくは 50 ℃超、特に好ましくは 100 ℃超の融点を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(a)で得られた第一塗膜層の多価電解質及び/又はイオン性界面活性剤、並びに工程(c)で得られた第三、第五などの塗膜層が好ましくは正の正味荷電を有し、特に、第一塗膜層がカチオン性界面活性剤又はカチオン性多価電解質、好ましくはカチオン性界面活性剤によって形成され、存在する場合は第三、第五などの塗膜層がカチオン性多価電解質(ポリカチオン)によって形成され、及び/又は工程(b)で得られた第二塗膜層の多価電解質及び/又はイオン性界面活性剤、並びに工程(c)で得られた第四、第六などの塗膜層が負の正味荷電を有し、特に、第二及び第四、第六などの塗膜層の多価電解質が、アニオン性多価電解質(ポリアニオン)であり、及び/又は最外部の塗膜層が、好ましくは、少なくとも 1 種のアニオン性多価電解質を含むか又はそれからなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
第一塗膜層が、好ましくは、少なくとも 1 種のイオン性界面活性剤、より好ましくは少なくとも 1 種のカチオン性界面活性剤を含み、及び/又は第二塗膜層及び第三、第四などの塗膜層が、少なくとも 1 種のイオン性界面活性剤、又は少なくとも 1 種の多価電解質と少なくとも 1 種のイオン性界面活性剤との混合物(少なくとも 1 種の多価電解質及び少なくとも 1 種の界面活性剤は、同種の正味荷電を有する。)を含み、より好ましくは少なくとも 1 種の多価電解質を含むことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
カチオン性界面活性剤、特に第一塗膜層のカチオン性界面活性剤が、アンモニウム基が一般式 R1R2R3N+[式中、R1、R2 及び R3 基は、同じ又は異なって、水素原子、或いは 1〜40 個、特に 1〜25 個の炭素原子を有する直鎖又は分枝のアルキル、アルキレン又はアルキニル基である。]に相当する第四級アンモニウム塩から選ばれ、及び/又はカチオン性界面活性剤が、特に、アルキルジメチルアンモニウム界面活性剤、N-アルキルピリジニウム塩及びエステルクォートの群から選ばれ、特にカチオン性界面活性剤がハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンを含まないか、又は少なくとも実質的にハロゲンフリー、特に塩化物フリーであり、好ましくは、(硫酸メチル、硫酸塩、リン酸塩、トシル酸塩又はクメンスルホン酸塩)化合物から選ばれることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
カチオン性多価電解質、特に第一塗膜層のカチオン性多価電解質が、第四級アミン、イミン及びイミダゾール基から選ばれた少なくとも 1 個の官能基を含み、及び/又はカチオン性多価電解質、特に第一塗膜層のカチオン性多価電解質が、アミンオキシド、ピリジン N-オキシド、好ましくはポリビニルピリジン N-オキシドから選ばれ、特に、カチオン性多価電解質が、ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンを含まないか、又は少なくとも実質的にハロゲンフリー、とりわけ塩化物フリーであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
アニオン性多価電解質、特に第二、第四などの塗膜層のアニオン性多価電解質が、重合体スルホン酸、特にポリスチレンスルホン酸及びその(部分)塩、好ましくはポリカルボン酸及びその(部分)塩、特にポリアクリル酸、ポリマレイン酸及びそれらのコポリマーの群から選ばれた合成アニオン性多価電解質であり、及び/又はアニオン性多価電解質がポリマー様方法でスルホン化されたポリマーであり、及び/又はアニオン性多価電解質が、アルギン酸、キサンタン、及び/又はカルボキシメチルセルロースのような誘導化天然ポリマーの群から選ばれた天然アニオン性ポリマーであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
アニオン性多価電解質、特に第二、第四などの塗膜層のアニオン性多価電解質が、天然アニオン性ポリマー、特に、アルギネート、カルボキシメチルアミロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルデキストラン、カラギーナン、セルローススルフェート、コンドロイチンスルフェート、キトサンスルフェート、デキストランスルフェート、アラビアゴム、グアーガム、ジェランガム、ヘパリン、ヒアルロン酸、ペクチン、キサンタン及びアニオン性タンパク質の群から選ばれた天然アニオン性ポリマーであり、及び/又は多価電解質が、合成アニオン性多価電解質、特にポリアクリレート、アニオン性ポリアミノ酸及びそのコポリマー、ポリマレエート、ポリメタクリレート、ポリスチレンスルフェート、ポリスチレンスルホネート、ポリビニルホスフェート、ポリビニルホスホネート、ポリビニルスルフェート、ポリアクリルアミドメチルプロパンスルホネート、ポリラクテート、ポリ(ブタジエン/マレエート)、ポリ(エチレン/マレエート)、ポリ(エタクリレート/アクリレート)及びポリ(グリセロール/メタクリレート)の群から選ばれた合成アニオン性多価電解質であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
カチオン性多価電解質、特に第三、第五などの塗膜層のカチオン性多価電解質が、天然カチオン性多価電解質又は変性天然カチオン性多価電解質、特に、キトサン、変性デキストラン、例えばジエチルアミノエチル-変性デキストラン、ヒドロキシメチルセルローストリメチルアミン、リゾチーム、ポリリジン、プロタミンスルフェート、ヒドロキシエチルセルローストリメチルアミン及びカチオン性タンパク質の群から選ばれた天然カチオン性多価電解質又は変性天然カチオン性多価電解質であり、及び/又はカチオン性多価電解質が、合成カチオン性多価電解質、特にポリアリルアミン、ポリアリルアミン水和塩、ポリアミン、ポリビニルベンジルトリメチルアンモニウム塩、ポリブレン、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ポリエチレンイミン、ポリイミダゾリン、ポリビニルアミン、ポリビニルピリジン、ポリ(アクリルアミド/メタクリロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウム塩)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム塩/N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(ジメチルアミノエチルアクリレート/アクリルアミド)、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート、ポリジメチルアミノエピクロロヒドリン、ポリエチレンイミノエピクロロヒドリン、ポリメタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム塩、ヒドロキシプロピルメタクリロイルオキシエチルジメチルアンモニウム塩、ポリ(メチルジエチルアミノエチルメタクリレート/アクリルアミド)、ポリ(メチル/グアニジン)、ポリメチルビニルピリジニウム塩、ポリ(ビニルピロリドン/ジメチルアミノエチルメタクリレート)及びポリビニルメチルピリジニウム塩の群から選ばれた合成カチオン性多価電解質であり、特に、カチオン性多価電解質が、実質的にハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンを含まないか、又は少なくとも実質的にハロゲンフリー、とりわけ塩化物フリーであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
多価電解質が、部分的に多価電解質特性を有する、両親媒性ブロック及びランダムコポリマーの群から選ばれた両親媒性多価電解質であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
カチオン性界面活性剤、特に第一、第三、第五などの塗膜層のカチオン性界面活性剤が、pH、とりわけ分散媒の pH に依存したカチオン性界面活性剤であり、特に、pH に依存したカチオン性界面活性剤が、少なくとも実質的に、酸性 pH、好ましくは 7 未満の pH、特に 6.5 未満の pH、好ましくは 6 未満の pHで、プロトン化状態及び/又はカチオン化状態であり、及び/又は pH に依存したカチオン性界面活性剤が、少なくとも実質的に、中性又はアルカリ性 pH で、脱プロトン化状態及び/又は電気的中性状態であり、及び/又はカチオン性多価電解質が、pH、とりわけ分散媒の pH に依存したカチオン性多価電解質であり、特に、pH に依存したカチオン性多価電解質が、少なくとも実質的に、酸性 pH、好ましくは 7 未満の pH、特に 6.5 未満の pH、好ましくは 6 未満の pHで、プロトン化状態及び/又はカチオン化状態であり、及び/又は、特に、pH に依存したカチオン性多価電解質が、アミノ、イミノ、アミンオキシド、ホスフィンオキシド及びピリジン N-オキシド基、好ましくはアミンオキシド、ホスフィンオキシド、ピリジン N-オキシド及びピリジニウム基から選ばれる、少なくとも 1 個の官能基を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
境界層複合物、特にポリカチオン/ポリアニオン、カチオン性界面活性剤/ポリアニオン、ポリカチオン/アニオン性界面活性剤、及び/又はアニオン性界面活性剤/カチオン性界面活性剤複合物状態の境界層複合物が、各塗膜層間に形成される境界層として形成され、特に、化学量論に依存した境界層複合物は、水溶性、やや水溶性又は不水溶性状態であり、及び/又は、特に、境界層複合物の水溶性は、pH、とりわけ分散媒の pH に依存することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
多層塗膜層、特に少なくとも 2 層及び 10 層まで、又はそれを超える塗膜層を、少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸に塗布することを特徴とする、請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
少なくとも 1 種の多価電解質及び/又は少なくとも 1 種のイオン性界面活性剤を含み、工程(a)、(b)及び/又は存在する場合には工程(c)において供給される、溶液及び/又は分散体が、最大 6、特に 1〜6、好ましくは 2〜5、より好ましくは 3〜4、特に好ましくは約 3.5 の pH を有することを特徴とする、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
工程(a)、(b)及び/又は存在する場合には工程(c)において、溶液及び/又は分散体を、塗料槽、ドラムコーター、ミキサー、特に、噴霧乾燥機、ウルスター(Wurster)コーターによって、好ましくは流動層装置で溶液及び/又は分散体を噴霧することによって、安定させるために過カルボン酸に塗布するか、及び/又は先の塗膜層に塗布することを特徴とする、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
とりわけ重金属イオンを錯化するために、少なくとも 1 種の錯化剤を少なくとも 1 つの塗膜層に添加し、錯化剤は、特に、キノリン及び/又はその塩、リン酸塩、アルカリ金属ポリホスホネート、ピコリン酸及びジピコリン酸、モノ-又はポリホスホン酸、とりわけ 1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、アザシクロヘプタンジホスホネート(AHP)及び/又はニトリロ三酢酸(NTA)の群から選ばれ、及び/又は少なくとも 1 種の可塑剤、特に、水溶性ポリマー、好ましくはポリエチレングリコール、グリセロール、グリコール又はトリアセチンのための少なくとも 1 種の可塑剤を、少なくとも 1 つの塗膜層に添加することを特徴とする、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
工程(a)、(b)及び/又は存在する場合には工程(c)において、カプセル系の加工作業、特に乾燥作業及び/又は精製作業及び/又は分類作業を、特に各塗膜層の塗布後、通常法によって、特に、フリーズドライ(凍結乾燥)、分散媒の蒸発、好ましくは流動層装置での 40〜60 ℃の温度での分散媒の蒸発、限外濾過、透析又は穏やかな条件下での噴霧乾燥、篩い分けによって行うことを特徴とする、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
工程(d)において行われ得る加工作業、特に乾燥作業及び/又は精製作業及び/又は分類作業を、通常法、特に請求項18に記載の方法によって行うことを特徴とする、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸を封入したカプセル系が、20〜4000 μm、好ましくは 50〜3000 μm、特に 100〜2000 μm の平均サイズ(球体直径)で得られることを特徴とする、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
カプセル塗膜における各塗膜層の割合が、カプセル系に基づいて、1〜15 重量%、好ましくは 1.5〜10 重量%、特に 2〜10 重量%であり、及び/又は各塗膜層における多価電解質の分子量が、1000 以上、好ましくは 10000 以上、特に 15000 以上であり、及び/又は有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、好ましくは PAP の含有量が、カプセル系に基づいて、30 重量%以上、好ましくは 40 重量%以上、特に 50 重量%以上であることを特徴とする、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
工程(b)、(c)及び/又は存在する場合には工程(d)において得られるカプセル系を更なる成分と共に配合し、洗剤又は洗浄剤配合物、特に液体の洗剤又は洗浄剤配合物を与えることを特徴とする、請求項1〜21のいずれかに記載の方法であって、特に、洗剤又は洗浄剤配合物が:
・少なくとも実質的にハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンを含まず、ハロゲン化物イオン、特に塩化物イオンの量が、最大 500 ppm、好ましくは最大 100 ppm、より好ましくは最大 30 ppm である;及び/又は
・最大 7、特に 3.5〜7、好ましくは 4.0〜6.5、より好ましくは 4.5〜6、特に好ましくは 約 5 の pH を有する;及び/又は
・少なくとも 1 種の錯化剤、特に、キノリン及び/又はその塩、アルカリ金属ポリホスホネート、ピコリン酸及びジピコリン酸、モノ-又はポリホスホン酸、とりわけ 1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)(DTPMP)、アザシクロヘプタンジホスホネート(AHP)、ニトリロ三酢酸(NTA)、クエン酸及び/又は短鎖ジカルボン酸の群から選ばれる少なくとも 1 種の錯化剤を、とりわけ重金属イオンを錯化するために含む;及び/又は
・任意に、有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸に対する溶解性が低い、少なくとも 1 種の水混和性溶媒、好ましくはグリセロールを含む;及び/又は
・任意に、少なくとも 1 種の酵素、特に少なくとも 1 種のカタラーゼ及び/又は少なくとも 1 種のペルオキシダーゼ、好ましくは少なくとも 1 種のカタラーゼ及び/又は少なくとも 1 種の酸化防止剤を含む方法。
【請求項23】
少なくとも 1 種のイミド過カルボン酸、好ましくは PAP を封入した多層カプセル系を製造するための、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、好ましくは PAP を安定化するための、及び/又は過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、好ましくは PAP の安定性を増加するための、請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
請求項1〜24のいずれかに記載の方法によって得られたカプセル系。
【請求項26】
少なくとも実質的に多層カプセル塗膜で封入されている及び/又は被覆されている、少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、好ましくは PAP を含んでなる、少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、好ましくは PAP を封入した多層カプセル系であって、カプセル塗膜が、各々少なくとも 1 種の多価電解質及びイオン性界面活性剤ベースである、少なくとも 2 つの異なった塗膜層、特に、少なくとも実質上完全に過カルボン酸を封入するか及び/又は被覆する少なくとも 1 種の第一塗膜層、及び少なくとも実質上完全に第一塗膜層を封入するか及び/又は被覆する第二塗膜層を有する多層カプセル系。
【請求項27】
多層カプセル塗膜が、更なる塗膜層、特に、第三、第四、第五などの塗膜層を含んでなることを特徴とする、請求項26に記載のカプセル系。
【請求項28】
第一及び第二塗膜層が、異なった、特に逆の、正味荷電を有し、及び/又は互いに直接隣接する更なる塗膜層が、各々の場合に、異なった、特に逆の、正味荷電を有することを特徴とする、請求項26又は27に記載のカプセル系。
【請求項29】
有機過カルボン酸が、有機モノ及びジ過カルボン酸、特にドデカンジペルオキシ酸又は好ましくはイミド過カルボン酸、より好ましくは 6-フタルイミド過カプロン酸(6-フタルイミド過ヘキサン酸、PAP)から選ばれ、及び/又は過カルボン酸が、大気圧下で 25 ℃超、特に 35 ℃超、好ましくは 45 ℃超、より好ましくは 50 ℃超、特に好ましくは 100 ℃超の融点を有することを特徴とする、請求項26〜28のいずれかに記載のカプセル系。
【請求項30】
請求項4〜17の特徴部分の少なくとも 1 つによって特徴付けられた、請求項26〜29のいずれかに記載のカプセル系。
【請求項31】
少なくとも 1 種の有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸を封入したカプセル系が、20〜4000 μm、好ましくは 50〜3000 μm、特に 100〜2000 μm の平均サイズ(球体直径)を有することを特徴とする、請求項26〜30のいずれかに記載のカプセル系。
【請求項32】
カプセル塗膜における各塗膜層の割合が、カプセル系に基づいて、1〜15 重量%、好ましくは 1.5〜10 重量%、特に 2〜10 重量%であり、及び/又は各塗膜層における多価電解質の分子量が、1000 以上、好ましくは 10000 以上、特に 15000 以上であり、及び/又は有機過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、好ましくは PAP の含有量が、カプセル系に基づいて、30 重量%以上、好ましくは 40 重量%以上、特に 50 重量%以上であることを特徴とする、請求項26〜31のいずれかに記載のカプセル系。
【請求項33】
カプセル化された過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、好ましくは PAP が、カプセル系から洗濯液に、特に、塗膜層の部分溶解及び/又は完全溶解及び/又は可溶化及び/又は分散によって、とりわけ、洗濯液中の pH 上昇及び/又は界面活性剤再活性化によって放出され、及び/又は過カルボン酸、特にイミド過カルボン酸、好ましくは PAP が、洗濯液中のカプセル系から、浸透作用及び/又は拡散作用によって放出され、及び/又は各塗膜層が、半透性、特に水に対して透過性であることを特徴とする、請求項26〜32のいずれかに記載のカプセル系。
【請求項34】
請求項26〜33のいずれかに記載のカプセル系を含む分散体、特に水性分散体。
【請求項35】
請求項26〜33のいずれかに記載のカプセル系及び/又は請求項34に記載の分散体の、工業的利用における、洗剤及び洗浄剤配合物、特に液体の洗剤及び洗浄剤配合物、歯の手入れ用製品、ヘアカラー、或いは脱色配合物又は漂白配合物での使用。
【請求項36】
請求項26〜33のいずれかに記載のカプセル系及び/又は請求項34に記載の分散体を含む、工業的利用における、洗剤及び洗浄剤配合物、特に液体の洗剤及び洗浄剤配合物、歯の手入れ用製品、ヘアカラー、或いは脱色配合物又は漂白配合物。

【公表番号】特表2007−527930(P2007−527930A)
【公表日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515854(P2006−515854)
【出願日】平成16年6月8日(2004.6.8)
【国際出願番号】PCT/EP2004/006169
【国際公開番号】WO2004/110613
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(391008825)ヘンケル・コマンディットゲゼルシャフト・アウフ・アクチエン (309)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL KOMMANDITGESELLSCHAFT AUF AKTIEN
【住所又は居所原語表記】40191 Dusseldorf,Henkelstrasse 67,Germany
【Fターム(参考)】