説明

長尺材の測長方法及び装置

【課題】エンコーダの機械的不具合による測長異常をその場で検出し、大量の長さ不適合の発生を防止する。
【解決手段】透光する目盛2を付した定規1をラックレール12沿いに架設し、且つ定規1の目盛位置を測定する目盛位置測定器3を鋼管20長さ方向の一端側と他端側の各台車22に搭載しておき、一端側と他端側とでそれぞれ、台車22の移動の間、目盛位置測定器3による測定値とエンコーダによる測定値とを逐次比較し、両者の差が閾値超となったことを測長異常と同定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺材の測長方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
長尺材、例えば鋼管、形鋼等、の長さを測定するために、以下の従来技術を用いていた。
(従来技術)
従来技術は、ラックピニオン式で移動し該移動経路上の位置をエンコーダで測定する構成とされた台車に端部検出器を搭載してなる端部位置測定器を、長尺材の長さ方向の一端側と他端側に1つずつ配置して前記長さ方向に移動させ、一端側と他端側とでそれぞれ、端部検出時点の端部検出器位置を前記エンコーダによる測定値から読取り、該読取った一端側と他端側の計2つの端部検出器位置の差を前記長尺材の長さ測定値とする測長技術である。
【0003】
前記ラックピニオン式とは、歯軌条であるラックレールと、該歯軌条の歯と噛み合う歯車であるピニオンとを用い、固定したラックレールにピニオンを噛み合わせて回転移動させる移動方式を意味する。前記ピニオンが前記台車の車輪とされる。
前記エンコーダとは、移動体の移動に追従して回転する回転板の回転速度に比例したパルス生成速度でパルス信号を生成し、該生成したパルス信号の累積個数を計数し、該計数値に、前記回転速度に対する前記パルス生成速度の比例係数を掛けて、前記移動体の移動距離を算出し、該算出値を移動経路上の位置座標に変換して位置測定値とする位置測定器を意味する。
【0004】
前記端部検出器とは、投光部からの光を受光部で受けつつ、該受けた光の強さの時間微分或いはその絶対値を逐次計算し、該計算値が所定値を超えた時にのみ、この時を被検出端部の検出時点と同定し、端部検出信号を生成する構成とされた光学センサを意味する。
尚、特許文献1には、端部検出器を搭載したメジャー台車の位置の測定手段として、リニアウェイに平行に敷設されたマグネスケールをメジャー台車に搭載されたマグネスケール読取りヘッドで読取る構成としたものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−055620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来技術では、エンコーダの分解能や台車の機構との関係で、通常、ピニオンからエンコーダまでの間に減速機を複数段設けてある。その複数段の何れかの段の減速機において軸のスリップや歯の摩耗による歯飛び等による機械的不具合が発生すると、測長結果に公差(例えば±2mm)を超える誤差が生じる事態を招く場合がある。しかし、かかる異常な事態(測長異常という)が起きてもそれをその場で認識することができずに看過されてしまう結果、大量の長さ不適合を発生させるリスクを抱えているという課題があった。尚、この課題は、エンコーダのない特許文献1から示唆されるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討し、その結果、前記従来技術に加え、透光する目盛を付した定規を前記ラックレール沿いに架設し、且つ該定規の目盛位置を測定する目盛位置測定器を前記一端側と他端側の各台車に搭載しておき、一端側と他端側とでそれぞれ、台車の移動の間、前記目盛位置測定器による測定値と前記エンコーダによる測定値とを逐次比較し、両者の差が閾値超となったことを測長異常と同定するという手法に想到し、本発明をなした。
【0008】
即ち本発明は、以下の通りである。
(1)
ラックレールにピニオンを噛合回転させて移動し該移動経路上の位置をエンコーダで測定する構成とされた台車に端部検出器を搭載してなる端部位置測定器を、静止させた長尺材の長さ方向に移動させ、前記長尺材の一端側と他端側とでそれぞれ、端部検出時点の端部検出器位置を前記エンコーダによる測定値から読取り、該読取った一端側と他端側の計2つの端部検出器位置を両端部位置としてその差を前記長尺材の長さ測定値とする長尺材の測長方法において、
透光する目盛を付した定規を前記ラックレール沿いに架設し、且つ該定規の目盛位置を測定する目盛位置測定器を前記台車に搭載しておき、一端側と他端側とでそれぞれ、台車の移動の間、前記目盛位置測定器による測定値と前記エンコーダによる測定値とを逐次比較し、両者の差が閾値超となったことを測長異常と同定することを特徴とする長尺材の測長方法。
(2)
上記(1)において、前記端部位置測定器を、前記長尺材の長さ方向の一端側と他端側に1つずつ配置して、一端側に配置した端部位置測定器により一端側の端部検出位置を、他端側に配置した端部位置測定器により他端側の端部検出位置を測定することを特徴とする長尺材の測長方法。
(3)
静止させた長尺材の長さ方向に沿って敷設されたラックレールにピニオンを噛合回転させて移動し該移動経路上の位置をエンコーダで測定する構成とされた台車に端部検出器を搭載してなる端部位置測定器を有し、前記長尺材の一端側と他端側とでそれぞれ、台車の移動の間、端部検出時点の端部検出器位置を前記エンコーダによる測定値から読取り、該読取った一端側と他端側の計2つの端部検出器位置を両端部位置としてその差を前記長尺材の長さ測定値とする長尺材の測長装置において、
前記ラックレール沿いに架設された、透光する目盛を付した定規と、前記台車に搭載された、前記定規の目盛位置を測定する目盛位置測定器とを具備し、台車の移動の間、前記目盛位置測定器による測定値と前記エンコーダによる測定値とを逐次比較し、両者の差が閾値超となったことを測長異常と同定する異常検出器を設けたことを特徴とする長尺材の測長装置。
(4)
上記(3)において、前記端部位置測定器を、前記長尺材の長さ方向の一端側と他端側に1つずつ配置してなることを特徴とする長尺材の測長装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、台車の有する減速機との接続関係を有していて該減速機の軸スリップや歯飛び等に影響されて異常値を示すことが不可避であるエンコーダによる測定値の合理性(或いは妥当性)を、前記減速機との接続関係のない目盛位置測定器による測定値により検証していることになるので、測長異常をその場で検出できて、その異常データを排除できるようになり、長尺材の長さ測定精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態の1例を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態の1例を示す平面図である。
【図3】図1のA-A断面図である。
【図4】図1の要部斜視図である。
【図5】図1の例における測長異常の同定要領を示すフロー図である。
【図6】端部検出器による鋼管端部位置の測定概要を示す平面図である。
【図7】目盛位置測定器による位置測定結果とエンコーダによる位置測定結果のずれを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図1〜5を参照して詳しく説明する。図1は本発明の実施形態の1例を示す側面図、図2は同平面図、図3は図1のA-A断面図、図4は図1の要部斜視図、図5は図1の例における測長異常の同定要領を示すフロー図である。長さ測定対象である長尺材20は、本例では鋼管20である。鋼管20は管支持ローラ21で支持されて静止している。端部位置測定器10は、ラックレール12にピニオン13を噛合回転させて移動し該移動経路上の位置をエンコーダ14で測定する構成とされた台車22に端部検出器11を搭載してなるものである。
【0012】
端部位置測定器10は、鋼管20の長さ方向の一端側と他端側とに1つずつ配置されている。
端部検出器11は、上述の通り、投光部からの光を受光部で受けつつ、該受けた光の強さの時間微分或いはその絶対値を逐次計算し、該計算値が所定値を超えた時にのみ、この時を被検出端部の検出時点と同定し、端部検出信号を生成する構成とされた光学センサであり、本例では、この光学センサは、鋼管20の外周面乃至該外周面の鋼管長さ方向外側への延長面を挟む両側のうちの何れか一側に投光部、他側に受光部が位置し、投光部と受光部との間に鋼管20の介在が無いとき、投光部から射出した光が直進して受光部に入射するように配置され、投光部から受光部へ向かう光が鋼管20で遮蔽された瞬間(或いは逆に遮蔽されなくなった瞬間)を、前記所定値超の瞬間として検知するよう調整されている。
【0013】
ラックレール12は、鋼管20上方且つ鋼管20長さ方向に延設したH形梁30の下フランジ底部に固設され、台車22は、H形梁30の下フランジ両端部に設けた支持レール31上を転がるコロ32を有し、該コロ32を介して支持レール31で支持され、ラックレール12にピニオン13を噛合回転させるに伴い、コロ32が支持レール31上を転がって台車22が移動する構成とされている。この移動の向きは、一端側、他端側とも、鋼管20長さ範囲の外側から中央側への向きとした。また、台車22は支持レール31の側面と接触する外輪35により、支持レール31の延在方向以外の方向へ台車が移動したり、台車22が水平面内で傾くことを防止するローラフォロア34を有している。尚、台車22を移動させる手段として、本例では、エンコーダ14と一体化したサーボモータにて移動させる方式を用いたが、これに限らず、例えば台車22を線条等で牽引して移動させる方式としてもよい。
【0014】
エンコーダ14は、中間ギヤ15,16を介してピニオン13の回転軸と連結され、上述の通り、移動体(本例では台車22が移動体に相当する)の移動に追従して回転する回転板(図示省略)の回転速度に比例したパルス生成速度でパルス信号を生成し、該生成したパルス信号の累積個数を計数し、該計数値に、前記回転速度に対する前記パルス生成速度の比例係数を掛けて、前記移動体の移動距離を算出し、該算出した値を移動経路(本例ではラックレール12が移動経路を形成する)上の位置座標に変換して位置測定値とする。
【0015】
かかる構成により、端部位置測定器10を鋼管20長さ範囲の外側から中央に向かって移動させ、該移動の間に鋼管20(の端部)を検知した時の端部検出器10位置をエンコーダ14による測定値から読取ってこれを端部位置とする。この測定値は、一端側と他端側とで共通にとった原点に対する鋼管20長さ方向位置と対応させてある。よって、一端側と他端側のエンコーダ14による測定値から読取った計2つの端部位置の差が鋼管10の長さになるから、当該差を計算し、その計算値を鋼管20の長さ測定値とする。
【0016】
ここまでの実施形態の説明部分は、従来技術と重なるところであり、これのみでは、前記課題は解決されない。そこで、前記課題を解決するために、本発明では、例えば図1〜図4に示すように、透光する目盛2を付した定規1をラックレール12沿いに架設し、且つ定規1の目盛位置を測定する目盛位置測定器3を一端側と他端側の各台車22に搭載しておき、一端側と他端側とでそれぞれ、台車22の移動の間、目盛位置測定器3による測定値とエンコーダ14による測定値とを逐次比較し、両者の差が閾値超となったことを測長異常と同定するようにした。
【0017】
ここで、透光する目盛2は、本例では一端開放長孔形状のスリットで形成したが、これに限らず、これ以外の例えば円孔等で形成してもよい。尚、定規1は、H形梁30の上フランジ片側に固設したL形部材33で懸垂支持する形態で架設した。
目盛位置測定器3としては、本例では、端部検出器11と同様の光学センサをスリット検出用に適応させたもの(即ち、投光部からの光を受光部で受けつつ、該受けた光の強さの時間微分を逐次計算し、該計算値の正の値、即ち暗から明への光強度変分、が所定値を超えた時にのみ、この時をスリット検出時点と同定し、目盛検出信号を生成する構成とされた光学センサであり、これを以下、スリット検出器ともいう)に加え、台車22の移動の間の目盛検出信号の生成回数(即ちスリット検出器によるスリット検出回数)n、目盛2の目盛間隔P(Pについては図1参照)から、n回目のスリット検出時の端部検出器位置(=P・n)を算出してこれをスリット検出器の測定値とする演算部(図示省略)を具備して構成した。
【0018】
そして、台車22の移動の間、目盛位置測定器3による測定値(記号x’nで表す。x’n=P・nである)とエンコーダ14による測定値とを逐次(即ち、スリット検出器がスリットを検出する度毎に)比較し、両者の差が閾値超となったことを測長異常と同定する異常検知器を設けた。ここで、閾値としては、測長の公差(例えば±2mm)を採用するのが好適である。
【0019】
上記測長異常の同定要領のフロー図を図5に示す。尚、このフロー図は一端側と他端側の何れか一方に関するものであるが、他方に関してもほぼ同様である。
図4のフローについて説明すると、スタート直後、端部位置測定器10を鋼管20長さ範囲の外側から中央側へ移動開始させる(ステップ100)と同時に、スリット検出回数nを0にリセットする(ステップ110)。ここでは、スタート前に目盛位置測定器3による測定値x’nとエンコーダ13による端部検出器位置xは初期値0としておき、また、目盛位置測定器3がスリットを検出している状態となる位置がスタート位置となるように設定している。
【0020】
次いで、端部検出器11が鋼管20を検知した(Yes)か否(No)かの判定をし(ステップ120)、Yesならエンコーダ13による端部検出器位置の測定値(記号x)を読取りこれを端部位置とし(ステップ190)、フロー終了とする。一方、Noならスリット検出器がスリット検出した(Yes)か否(No)かの判定をし(ステップ130)、Noならこの判定実行を繰り返し、Yesならnを1だけ増して(ステップ140)、端部検出器位置(目盛位置測定器3による測定値x’n=P・n)を算出する(ステップ150)と共にエンコーダ14による端部検出器位置の測定値を読取りxnとする(ステップ160)。
【0021】
そして、x’nとxnの差が閾値(±aの範囲)以内である(Yes)か否(No)かの判定をし(ステップ170)、Yesならステップ120以降を再度実行し、Noならエラー信号を発信する(ステップ180)。この発信を受けたら直ちに測長装置の稼働を停止して、端部位置測定器10をスタート位置まで戻し、x’nとxnとを初期値にリセットしてから、再度測定装置の稼働を行う。これをエラー信号が発信されずにステップ190が行われる、すなわち、端部検出位置の測定が行われるまで繰り返す。したがって、異常な測定値にもとづいて求められた不正確な長尺材の長さ寸法を、そのまま長さ寸法として採用することがなくなり、大量の不適合発生を未然に防止できる。なお、エラー信号の発信が頻発する場合には、異常原因の究明乃至排除にあたるようにする。
【0022】
なお、一端側と他端側の何れか他方に関するものについての測長異常の同定要領のフローにおいては、端部位置測定器のスタート位置におけるx’nとxnの初期値をL=(一方のスタート位置と他方のスタート位置との距離:図1参照)としておき、図5に示したフロー図のステップ150におけるx’nの算出をx’n=L−P・nとしておく。このようにすれば、一端側の端部位置の測定値xの値と、他端側の端部位置の測定値xの値との差を求めることで、鋼管20の長さを算出することができる。
【0023】
また、本実施形想では、端部位置測定器10を、鋼管(長尺材)20の長さ方向の一端側と他端側に1つずつ配置し、一端側に配置した端部位置測定器により一端側の端部検出位置を、他端側に配置した端部位置測定器により他端側の端部検出位置を測定するようにしているが、端部位置測定器10を1つだけ設けるようにして、この1つの端部位置測定器10により一端側と他端側との両方の端部の位置測定を行うようにしてもよい。但し、この場合には、端部検出器を搭載した台車の走行距離は鋼管20の長さより長い範囲としなくてはならないので、走行中の減速機における軸のスリップや歯飛び等の発生の可能性は高くなり、その結果、測定異常が生じる回数も増えることとなる。よって、本実施形態のように、端部位置測定器10を、鋼管(長尺材)20の長さ方向の一端側と他端側に1つずつ配置し、一端側に配置した端部位置測定器により一端側の端部検出位置を、他端側に配置した端部位置測定器により他端側の端部検出位置を測定することが好ましい。
【0024】
さらに、上記実施形態においては、図2に示すように、定規1をラックレール12から水平方向にずらして、すなわち定規1とラックレール12とに間隔sを設けて配置している。このように構成することで、ローラフォロア34の軸受の破損等により台車22が水平面内で傾いて長尺材20の端部位置測定を正硫に行えなくなったことをも検知できる。
図6および図7を用いて、この理由を説明する。図6は端部検出器11による鋼管20の端部位置を測定する概要を模式的に示す平面図である。端部検出器11は、上述の通り、投光部からの光50を受光部で受けつつ、受けた光の強さの時間微分或いはその絶対値を逐次計算し、該計算値が所定値を超えた時のみ、この時を被検出端部の検出時点と同定する。つまり、簡単に言えば、受光部で光を受けなくなった時点を検出時点とする。ここで、端部検出器11の投光部から発する光50の光軸と、図中矢印Aで示す端部検出器11の走行方向(台車22の走行方向と同じ)とには予め定めた角度αを設定してある(図6の例ではα=90°)。そして、この角度αを維持しつつ端部検出器11が走行することで、移動距離xをエンコーダによる測定値から読み取ることで端部位置を同定できる。しかしながら、台車22が走行中に水平面内で傾くと、図6(b)に示すよう端部検出器11も水平面内で傾き、光50の光軸も水平面内で傾く。図6(b)では、角度θだけ傾いた場合を示している。そして、端部検出器11が水平面内で傾いた状態で鋼管20の端部に到達すると、本来移動距離xで端部の検出をすべきところを、△xだけ短い距離、すなわちx−△xだけ移動したときに端部を検出してしまう。台車22が水平面内で傾くことを防止するために、ローラフォロア34が設けられているが、ローラフォロア34の軸受の破損が生じると、台車22の水平面内での傾きが生じ、正確な端部検出ができなくなる。
【0025】
本実施形態のように、定規1をラックレール12から水平方向に間隔sを設けて配置すると、端部検出器11が水平面内で傾いたときには、ピニオン13の回転にもとづいて測定されるエンコーダによる位置の測定値と、定規1の目盛2の検出結果にもとづく目盛位置測定器3による位置の測定値とに差が生じるようになる。このため、この差を検出することで、端部検出器11が水平面内で傾いていることも検知できる。
【0026】
図7は、目盛位置測定器3による位置測定結果とエンコーダによる位置測定結果にずれが生じることを模式的に示す平面図である。まず、上述したとおり、本実施形態ではスタート位置においては、目盛位置測定器3がスリットを検出している状態となる位置となるようにしている。ところが、スタート時点において台車22が水平面内で傾く場合には、図7(a)に示すように、ピニオン13がラックレール12と噛み合っているため、およそラックレール13が延在する線C上の点を中心として傾く。したがって、目盛位置測定器3についても、およそ上記線C上の点を中心として傾く。目盛位置測定器3はラックレール13が延在する線Cから水平方向に間隔sを設けて設置しているので、台車22の水平面内の傾きがわずかである場合であっても、目盛位置測定器3の走行方向へのずれ量は大きくなり、目盛位置測定器3の投光部が発する光51は目盛(スリット)2から外れる。
【0027】
よって、スタート時点において、目盛位置測定器3がスリット2を検出しているか否かを確認するステップを設け、このステップにおいてスリット2を検出していない場合には、エラー信号を発信するステップ(図5におけるステップ180)に進むようにすることで、台車22に傾きがあることを検出できる。
また、走行中に台車22が水平面内で傾く場合にも、およそラックレール13が延在する線C上の点を中心として傾くから、例えば、図7(b)に示すように、目盛位置測定器3がスリット2を検出した時点での目盛位置測定器3に基づく位置算出結果x’nとエンコーダによる位置算出結果xとがずれることになる。したがって、図5で説明したフローのステップ170での結果がNoとなり、ステップ180でエラー信号を発することとなる。
【実施例】
【0028】
鋼管生産工場の鋼管測長工程に本発明を適用した。適用した実施形態は図1〜図5に示したのと同じである。なお、本例では、定規1の目盛間隔P=100mm、閾値(±a)の絶対値a=2mmとした。本発明適用前は、前記従来技術により測長を行っており、測長データの実績ばらつき範囲=平均値−4mm〜平均値+5mm、測長異常によるトラブル発生頻度=8件/年であった。これに対し、本発明適用後は、測長データの実績ばらつき範囲=平均値±2mm、測長異常によるトラブル発生頻度=0件/年となり、長さ測定の精度及び信頼性が大幅に向上した。
【符号の説明】
【0029】
1 定規(詳しくは、透光する目盛を付した定規)
2 目盛(詳しくは、透光する目盛)
3 目盛位置測定器
10 端部位置測定器
11 端部検出器
12 ラックレール
13 ピニオン
14 エンコーダ
15,16 中間ギヤ
20 鋼管(長尺材)
21 管支持ローラ
22 台車
30 H形梁
31 支持レール
32 コロ
33 L形部材
34 ローラフォロア
35 外輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラックレールにピニオンを噛合回転させて移動し該移動経路上の位置をエンコーダで測定する構成とされた台車に端部検出器を搭載してなる端部位置測定器を、静止させた長尺材の長さ方向に移動させ、前記長尺材の一端側と他端側とでそれぞれ、端部検出時点の端部検出器位置を前記エンコーダによる測定値から読取り、該読取った一端側と他端側の計2つの端部検出器位置を両端部位置としてその差を前記長尺材の長さ測定値とする長尺材の測長方法において、
透光する目盛を付した定規を前記ラックレール沿いに架設し、且つ該定規の目盛位置を測定する目盛位置測定器を前記台車に搭載しておき、一端側と他端側とでそれぞれ、台車の移動の間、前記目盛位置測定器による測定値と前記エンコーダによる測定値とを逐次比較し、両者の差が閾値超となったことを測長異常と同定することを特徴とする長尺材の測長方法。
【請求項2】
請求項1において、前記端部位置測定器を、前記長尺材の長さ方向の一端側と他端側に1つずつ配置して、一端側に配置した端部位置測定器により一端側の端部検出位置を、他端側に配置した端部位置測定器により他端側の端部検出位置を測定することを特徴とする長尺材の測長方法。
【請求項3】
静止させた長尺材の長さ方向に沿って敷設されたラックレールにピニオンを噛合回転させて移動し該移動経路上の位置をエンコーダで測定する構成とされた台車に端部検出器を搭載してなる端部位置測定器を有し、前記長尺材の一端側と他端側とでそれぞれ、台車の移動の間、端部検出時点の端部検出器位置を前記エンコーダによる測定値から読取り、該読取った一端側と他端側の計2つの端部検出器位置を両端部位置としてその差を前記長尺材の長さ測定値とする長尺材の測長装置において、
前記ラックレール沿いに架設された、透光する目盛を付した定規と、前記台車に搭載された、前記定規の目盛位置を測定する目盛位置測定器とを具備し、台車の移動の間、前記目盛位置測定器による測定値と前記エンコーダによる測定値とを逐次比較し、両者の差が閾値超となったことを測長異常と同定する異常検知器を設けたことを特徴とする長尺材の測長装置。
【請求項4】
請求項3において、前記端部位置測定器を、前記長尺材の長さ方向の一端側と他端側に1つずつ配置してなることを特徴とする長尺材の測長装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−247346(P2012−247346A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120305(P2011−120305)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【出願人】(511130922)マルオカ産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】