長方形金属平板の角管補強構造
【課題】面内せん断を受け且つ必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板について、降伏せん断荷重の確保と降伏後のせん断変形の進行にも降伏せん断耐力の維持を図る。
【解決手段】長方形金属平板に対する本発明の代表的補強構造の斜視図を示したが、面内せん断を受ける長方形金属平板1の片側面乃至両側面に略一定間隔毎に長手方向側辺と平行に角形管状部材2,3を添接して構成するもので、閉鎖型断面である角形管状部材により長方形金属平板全体の捩り剛性即ちせん断剛性を上げて平板の降伏せん断荷重を確保し、降伏時点で並列する補強部材で挟まれた短冊状領域にせん断降伏領域を限定して弾性・塑性に跨る激しい剛性変化にも安定した力学性状とし、降伏以降せん断大変形領域に至るまでせん断耐力の維持を図り且つ必要に応じ長辺方向に並列に配置される角形管状部材により長方形金属平板の面内に加わる軸圧縮力を支える。
【解決手段】長方形金属平板に対する本発明の代表的補強構造の斜視図を示したが、面内せん断を受ける長方形金属平板1の片側面乃至両側面に略一定間隔毎に長手方向側辺と平行に角形管状部材2,3を添接して構成するもので、閉鎖型断面である角形管状部材により長方形金属平板全体の捩り剛性即ちせん断剛性を上げて平板の降伏せん断荷重を確保し、降伏時点で並列する補強部材で挟まれた短冊状領域にせん断降伏領域を限定して弾性・塑性に跨る激しい剛性変化にも安定した力学性状とし、降伏以降せん断大変形領域に至るまでせん断耐力の維持を図り且つ必要に応じ長辺方向に並列に配置される角形管状部材により長方形金属平板の面内に加わる軸圧縮力を支える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面内せん断を受け必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板の補強構造で、金属系建物の壁面構成パネル,制振ないし耐震を目的とする間柱型パネルや構造壁の全て乃至一部を構成するものである。平板のせん断力とせん断変形角は平板の捩り剛性が直接関係するため、捩り剛性,即ちせん断剛性を付加することを補強の重点として面内せん断を受ける長方形金属平板の力学的性能を大幅に上げることを意図している。
【背景技術】
【0002】
せん断力を受ける金属平板は、せん断座屈荷重がせん断降伏荷重を上回るようにしてもせん断降伏後のせん断変形が進行する過程でせん断耐力を維持し且つ正負交番に繰り返されるせん断荷重に対し安定した履歴性状とすることは難しく、このためせん断力を受ける平板の幅厚比を小さくすることが必要となり、結果的には多くのスティフナ−を格子状に配して平板全域を細分化し補強することがこれまでの代表的な方法であった。
【0003】
金属平板の降伏せん断荷重を確保し且つ降伏後のせん断耐力の維持を図るために、設計で要求されるせん断強度に対し降伏点応力度の低い材料を使うことで金属平板の板厚を上げて早期のせん断座屈を回避し降伏後の塑性変形能力を高める方法がある。この他、制振ないし耐震を目的としてせん断パネルを波板・折板とするもの,粘弾性材料を組み込んだ壁板,壁板と建物部位との接合方法を工夫したもの等様々な提案がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−270208 公開特許公報
【特許文献2】特開2005−042423 公開特許公報
【特許文献3】特開2008−008364 公開特許公報
【特許文献4】特開2009−161984 公開特許公報
【特許文献5】特開2009−293254 公開特許公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】木原碩美/鳥井信吾著 「極低降伏点鋼板壁を用いた制震構造の設計」建築技術 1998年11月
【非特許文献2】鈴木敏郎著 「捩り剛性を主体とするせん断剛性と平板のせん断座屈」日本建築学会 2008年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、面内せん断を受け且つ必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板について、平板のせん断剛性を大幅に上げて長方形金属平板の降伏せん断荷重を確保し、更に平板の塑性せん断荷重を上げることで降伏後のせん断大変形領域に於いてもせん断耐力が低下することなく安定して維持されるようし、長方形金属平板の塑性変形能力の大幅な向上を図る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
面内せん断を受け且つ必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板について、せん断力とせん断変形角とがサンブナン捩り剛性に関係することから閉鎖型断面である角形管状部材を前記平板に添接することにより捩り剛性,即ちせん断剛性を上げ、長方形金属平板のせん断降伏荷重を確保することと降伏後のせん断耐力を安定的に維持し得るようにすることを意図している。
【発明の効果】
【0008】
図2(a)は角形管状部材を捩った場合の斜視図で、(b)図には捩り力と角管断面内のせん断応力流れ及び比較として捩り力と矩形断面内のせん断応力流れを示している。閉鎖型断面に於いてはその構成板要素が薄くても平板内を流れるせん断応力と捩り中心との距離との積が捩り力に対応するため角管の捩り強さは断面の外郭寸法により決まり、板厚の中央線が捩り中心である平板の捩り強さとは異なり極めて大きな値となる。
【0009】
数式(1)は正方形角形管状部材の塑性捩り荷重であり、比較のための数式(2)は前記断面を構成する板要素1枚の塑性捩り荷重である。構成板要素4枚に対する角形管状部材の塑性捩り荷重比は数式(3)となり、正方形角管断面の塑性捩り荷重は板要素幅厚比の数値から見て略2倍になる。数式(4)は、前掲図2(a)と(b)との対比から誘導される角形管状部材の断面を矩形断面に換算したときの板厚である。
【0010】
【数1】
【0011】
図3は建設用鋼材リストから外形寸法150mm以下の角管を選び断面板要素の幅厚比B/tを横軸に角管と板要素の塑性捩り荷重の比QY/qyを縦軸に示したものである。斜め直線状に分布する●印は正方形断面の場合で、板要素幅厚比の略2.0倍の数値が塑性捩り荷重に対応する。○印は任意矩形断面の長い辺の幅厚比と塑性捩り荷重との関係で略1.5倍の数値に対応し且つ分散している。角形管状部材の塑性捩り荷重から矩形断面板厚に換算すると図の縦軸に沿い←で示すように角管板厚の10倍〜20倍に相当する。
【0012】
本発明が意図する金属平板の補強構造はせん断降伏後の安定したせん断耐力の維持を主な目的としており、従って金属平板の塑性捩り荷重を大幅に増やすことが必要であるため補強部材として角形管状部材を選択したもので、金属平板内に閉鎖型断面となる部位を設けることで薄い平板であっても捩り剛性,捩り強さを極めて大きくでき、これにより面内せん断を受ける長方形金属平板の力学的性能を大幅に上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】長方形金属平板への角形管状部材による補強構造を示す斜視図である。
【図2】角形管状部材の捩りと閉鎖型断面内のせん断応力流れを示す図である。
【図3】構造用角形管状部材の断面構成板要素と塑性捩り荷重の関係図である。
【図4】角形管状部材で補強された長方形金属平板の構造図である。(実施例1)
【図5】前記平板の表裏面へ添接された角形管状部材の構成を示す断面図である。
【図6】角形管状部材の配置形態と補強効果に関する解析結果の説明図である。
【図7】C形断面部材による補強とその効果に関する解析結果の説明図である。
【図8】長柱型金属平板に添接される角形管状部材の構造図である。(実施例2)
【図9】前記平板表裏面へ添接された角形管状部材の構成を示す断面図である。
【図10】長柱型金属平板の塑性変形能力に関する解析結果の説明図である。
【図11】圧縮軸力を受ける長柱型金属平板に関する解析結果の説明図である。
【図12】開口部の有る壁面に組込まれた金属平板の配置図である。(実施例3)
【図13】薄い金属平板ユニットに対する帯板と角管の配置を示す構成図である。
【図14】金属平板ユニットの塑性変形能力に関する解析結果の説明図である。
【図15】本発明の補強長方形金属平板の捩りを伴う変形を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の代表的構造を示す斜視図である。主に面内せん断を受ける長方形金属平板1を前記平板の片側面乃至両側面に角形管状部材2,3を略均等間隔に添接補強するもので、必要に応じ両側辺に沿う部材3を内側配置の部材2より大きくし捩り剛性,捩り強さを上げて前記長方形平板の力学的安定を図る。長方形金属平板の上下両側端部近傍で水平にせん断荷重を付加するが、この部位の加力冶具6とは平板に添接される角形管状部材とは構造的に一体化はしない。
【0015】
主に面内せん断を受け必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板として、前記平板の長手方向の側辺に平行してその短手方向に複数のC形断面部材等任意断面部材を並列配置して前記平板の片側面から添接し乃至表裏面から前記部材が板を挟み重なるように添接して前記平板と部材とで囲まれた空洞部を設け、前記長方形金属平板の捩り剛性,捩り強さを大幅に上げて平板の降伏せん断荷重の確保と降伏後のせん断耐力の維持とを意図した長方形金属平板の補強構造である。
【実施例1】
【0016】
図4(a)は 2,250mmx900mm の長方形金属平板1の長辺方向の両側辺に沿い表裏両面に角形管状部材3を添接し且つ並列する前記部材と平行して角形管状部材2を前記平板の片側面乃至両側面から添接し、前記平板の上下端部に加力の為の金具6を前記角形管状部材とは一体化せずに設置してせん断変形の進行に伴う前記部材への拘束を回避している。又、(b)図は前記平板面内のせん断応力の推移を示したもので、角形管状部材で挟まれた点線で示す平板の短冊状領域でまずせん断降伏し、徐々に実線で示す斜張力が支配し+印で示すように張力場へと移行する。
【0017】
図5は前記長方形金属平板に対して、角形管状部材の補強効果を調べるために解析対象とした部材配置を示す断面図で、(a)図の上から下へ平板両面に重なるように補強した場合,平板片側面に均等に配し且つ両側辺部だけ逆側面からも補強した場合,平板片面にのみ均等に配し補強した場合である。解析では各ケースの補強効果を比較するため補強材断面積総和を略同じとするように板厚を変えている。(b)図の上段は補強を角形管状部材とする場合,下段はC形断面部材を平板に被せるように取付ける場合を例示した。
【0018】
図6は平板板厚t=3.2mmとする前記長方形平板の数値解析結果で、3種類の補強材構成について角形管状部材の断面板厚をt'=1.6mm, 2.3mm, 3.2mmとして全断面積量を略同じとしてその効果を検証している。図の縦軸はせん断荷重Qを降伏せん断荷重Qyで無次元化し,横軸のδ/H は層間変形角で壁板上部の水平変位δを壁板のせいHの比で示した図である。全体的に見て何れの構成に対しても塑性変形能力は高く、強いて比較すれば平板両面から補強されたものが若干他を上回る。
【0019】
図7は 補強部材を図5(b)のC形断面部材とした長方形平板に対する数値解析結果であるが、角形管状部材との違いはC形断面部材が平板に接する部位での断面が欠落した場合に相当する。塑性変形能力で比較すれば略2/3となり、平板に付加される捩り剛性,捩り強さが略同じであることから、この差は平板の補強部位の板厚差によるものと考えられる。以上の数値解析では、材料は降伏点応力度σy=30kN/cm2,SS400相当の軟鋼とし、以下の解析もこれに準じて行っている。
【実施例2】
【0020】
図8は辺長比1:4の長柱型せん断パネルで、(a)図に示す長方形金属平板1の片側面に幅100mmの角形管状部材2を100mm毎に離して添接し、(b)図に示す逆側の面には両側辺に沿い角形管状部材3を添接する場合と100mm幅の帯状矩形断面部材4を添接する場合を考え且つ前記何れに対しても平板中間部位に矩形断面部材5を配して構成している。前記平板の上下端部に矩形断面部材6の加力用金具は長辺方向の補強部材とは僅かに離してせん断変形の進行を妨げないよう配慮している。
【0021】
図9は解析例題として長方形金属平板の板厚t= 3.2mm, 6.0mm, 9.0mmを選択し、角形管状部材として □-100x50xt'と □-100x75xt'を、前記3ケースに対し角管の板厚をt'=3.2mm, 4.5mm, 6.0mmとしている。長方形金属平板の板厚tに応じて角管板厚t'を変え異なるせん断降伏荷重となる平板であっても略同じ塑性変形能力となることを目論み、更に全体的な力学性能は角管の外形寸法を上げることで調整して大きく塑性変形能力を上げる工夫をしている。
【0022】
図10は長方形金属平板に対し角形管状部材を片側面にのみ添接し且つ逆側面の両側辺に沿う部位には100mm幅の帯状矩形断面部材を添接し、実線は角管断面 □-100x50xt'の場合,点線は□-100x75xt'の場合である。長方形金属平板の板厚tに応じて角管板厚t'を変えるものの外形寸法を変えることなく異なるせん断降伏耐力に対しても略同じ力学的性能が確保でき、更に角管断面の外形寸法により塑性変形能力を調整できるためこれに伴う補強材重量も殆ど同じとなる。
【0023】
図11は、角形管状部材 □-100x75xt'について一定圧縮軸力Pが長方形平板の面内に加わる状態でのせん断荷重比Q/Qyとせん断変形角δ/Hとの関係を表したものである。軸圧縮力は添接される角管全断面積で換算し降伏軸力の略20%を設定し解析した結果が実線であるが、図中下部に点線で示した長方形金属平板の中間位置の捩り変形角φが平板のせん断変形が進行しても低く抑えられており、本設定条件では長手方向両側辺に沿い平板の表裏両面に角形管状部材を重ねて構成することが有効であると考えられる。
【実施例3】
【0024】
図12は実施設計例をモデルとした開口部のある壁面の耐震補強について本発明の長方形金属平板の使用を前提として検討するもので、角管補強による単位長方形金属平板複数枚による壁面への配置を示したものである。壁面 7,200mmx3,600mm に対し 2,400mmx1,200mm の補強壁板7枚を開口部を取囲んで配置しているが、補強壁板の取付けは4本の縦方向部材に前記壁面の短辺方向側辺で行い、長辺方向の側辺に沿っては面外への変形を拘束しないことを設計条件としている。
【0025】
図13は金属平板 2,400mmx1,200mm の補強構造を示したもので、(a)図の片側面には長手方向の側辺に沿い矩形断面 150mmx12mm の帯板4を添接し且つ短辺方向の側辺に沿い加力用補強金具6を前記帯板とは分離し取付けている。(b)図は平板逆側面であり長手方向の側辺から若干離し角形管状部材2を均等に並列配置して添接し且つ加力部は建物側の縦方向部材に直接止め付ける。(c) 図は壁板の断面図で、角形管状部材を □-100x50xt'とする場合と両側辺に沿う角形管状部材だけを □-100x100xt'とする例である。
【0026】
図14は平板の板厚t= 3.2mm,2.3mm,1.6mmに対しての数値解析結果で、実線は6本の角管部材 □-100x50xt'で板厚t'を平板板厚tと互いに同じとし、点線は側辺に沿う2本の角管部材を □-100x100xt'に取替えた場合である。並列配置された角形管状部材の間の短冊状領域の短辺方向幅は80mmであり、各平板板厚の幅厚比は 25,35,50 となっているにも拘わらず降伏後のせん断耐力の限界も略同じ値となっている。
【0027】
半無限縁平板のせん断座屈について弾性せん断座屈荷重を数式(1)に,座屈係数を数式(2)に,短辺方向の平板幅厚比を数式(3)に示している。長方形金属平板が面内せん断を受ける場合にせん断降伏荷重を確保することが必要であり、角形管状部材等で挟まれた細長い短冊状領域でせん断降伏開始時点で塑性化が進むことを考え、その部位の弾性せん断座屈荷重がせん断降伏荷重を上回ることが必須条件となる。
【0028】
【数2】
【0029】
本発明の対象とする長方形金属平板は鋼材及び軽金属材を含み且つ金属材料の降伏点応力度にも数値幅があり、鋼材として降伏点応力度σy=30kN/cm2,ヤング係数はE=20,500kN/cm2,軽金属材として降伏点応力度σy=20kN/cm2,ヤング係数はE=7,200kN/cm2を標準として考えれば弾性せん断座屈荷重がせん断降伏荷重を上回る幅厚比は鋼材でb/t=98,軽金属材料でb/t=69 となるため、平板の元撓み等の不整を考え前記数値の略2/3乃至それ以下とし鋼材でb/t=60,軽金属材料でb/t=40 を制限値とした。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の代表的構造は図1の斜視図に示しているが、主に面内せん断を受ける長方形金属平板を前記平板の片側面乃至両側面に角形管状部材を略均等間隔に添接し構成するもので、平板には隅肉溶接乃至金属接着剤により取付けることを標準とするが平板片側面の角形管状部材が他側面の角形管状部材乃至帯状矩形断面部材と重なる場合には平板を挟んでのボルト接合もある。長方形金属平板への角形管状部材による補強構造は組立て方法が比較的簡単で且つ軽量であり、設計の容易さと製作の簡便さは特記すべき長所である。
【0031】
本発明は面内せん断を受け必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板に対する補強構造を提案したもので、捩りを主体とする力学的性能確保には閉鎖型断面である角形管状部材が有効に寄与し、金属系建物の壁面構成パネル,制振ないし耐震を目的とするせん断パネルとして最適である。明細書中の実施例では金属平板として降伏点応力度σy=30kN/cm2,ヤング係数E=20,500kN/cm2としているが、高降伏点鋼,低降伏点鋼でも対応でき更に軽金属材料であってもヤング率の違いに配慮すれば同様の扱いが可能である。
【0032】
図15は本発明の長方形金属壁板の代表的構成を示す実施例1の解析シミュレーションで、せん断降伏以降のせん断変形の進行に伴う壁板全体の推移を示すもので、壁板上下の側辺に沿い水平方向にせん断力が作用することと平板を捩ることとは同一の力学体系にあり、これは平板全体が捩れ変形していることからも判る。従って、本発明の補強構造では平板に対し捩り剛性,捩り強さを上げることは容易で、必ずしも長辺方向側辺を拘束する必要はなく、建物構成上簡便であり建築施工上の観点からも有利なものと考えられる。
【符号の説明】
【0033】
1 面内せん断を受ける金属平板
2 平板面に添接される角形管状部材
3 長辺方向側辺に沿う角形管状部材
4 平板両側辺に沿う矩形断面部材
5 長手方向中間部の横方向補強材
6 平板両端部の加力用補強金具
【技術分野】
【0001】
本発明は、面内せん断を受け必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板の補強構造で、金属系建物の壁面構成パネル,制振ないし耐震を目的とする間柱型パネルや構造壁の全て乃至一部を構成するものである。平板のせん断力とせん断変形角は平板の捩り剛性が直接関係するため、捩り剛性,即ちせん断剛性を付加することを補強の重点として面内せん断を受ける長方形金属平板の力学的性能を大幅に上げることを意図している。
【背景技術】
【0002】
せん断力を受ける金属平板は、せん断座屈荷重がせん断降伏荷重を上回るようにしてもせん断降伏後のせん断変形が進行する過程でせん断耐力を維持し且つ正負交番に繰り返されるせん断荷重に対し安定した履歴性状とすることは難しく、このためせん断力を受ける平板の幅厚比を小さくすることが必要となり、結果的には多くのスティフナ−を格子状に配して平板全域を細分化し補強することがこれまでの代表的な方法であった。
【0003】
金属平板の降伏せん断荷重を確保し且つ降伏後のせん断耐力の維持を図るために、設計で要求されるせん断強度に対し降伏点応力度の低い材料を使うことで金属平板の板厚を上げて早期のせん断座屈を回避し降伏後の塑性変形能力を高める方法がある。この他、制振ないし耐震を目的としてせん断パネルを波板・折板とするもの,粘弾性材料を組み込んだ壁板,壁板と建物部位との接合方法を工夫したもの等様々な提案がされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−270208 公開特許公報
【特許文献2】特開2005−042423 公開特許公報
【特許文献3】特開2008−008364 公開特許公報
【特許文献4】特開2009−161984 公開特許公報
【特許文献5】特開2009−293254 公開特許公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】木原碩美/鳥井信吾著 「極低降伏点鋼板壁を用いた制震構造の設計」建築技術 1998年11月
【非特許文献2】鈴木敏郎著 「捩り剛性を主体とするせん断剛性と平板のせん断座屈」日本建築学会 2008年9月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、面内せん断を受け且つ必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板について、平板のせん断剛性を大幅に上げて長方形金属平板の降伏せん断荷重を確保し、更に平板の塑性せん断荷重を上げることで降伏後のせん断大変形領域に於いてもせん断耐力が低下することなく安定して維持されるようし、長方形金属平板の塑性変形能力の大幅な向上を図る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
面内せん断を受け且つ必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板について、せん断力とせん断変形角とがサンブナン捩り剛性に関係することから閉鎖型断面である角形管状部材を前記平板に添接することにより捩り剛性,即ちせん断剛性を上げ、長方形金属平板のせん断降伏荷重を確保することと降伏後のせん断耐力を安定的に維持し得るようにすることを意図している。
【発明の効果】
【0008】
図2(a)は角形管状部材を捩った場合の斜視図で、(b)図には捩り力と角管断面内のせん断応力流れ及び比較として捩り力と矩形断面内のせん断応力流れを示している。閉鎖型断面に於いてはその構成板要素が薄くても平板内を流れるせん断応力と捩り中心との距離との積が捩り力に対応するため角管の捩り強さは断面の外郭寸法により決まり、板厚の中央線が捩り中心である平板の捩り強さとは異なり極めて大きな値となる。
【0009】
数式(1)は正方形角形管状部材の塑性捩り荷重であり、比較のための数式(2)は前記断面を構成する板要素1枚の塑性捩り荷重である。構成板要素4枚に対する角形管状部材の塑性捩り荷重比は数式(3)となり、正方形角管断面の塑性捩り荷重は板要素幅厚比の数値から見て略2倍になる。数式(4)は、前掲図2(a)と(b)との対比から誘導される角形管状部材の断面を矩形断面に換算したときの板厚である。
【0010】
【数1】
【0011】
図3は建設用鋼材リストから外形寸法150mm以下の角管を選び断面板要素の幅厚比B/tを横軸に角管と板要素の塑性捩り荷重の比QY/qyを縦軸に示したものである。斜め直線状に分布する●印は正方形断面の場合で、板要素幅厚比の略2.0倍の数値が塑性捩り荷重に対応する。○印は任意矩形断面の長い辺の幅厚比と塑性捩り荷重との関係で略1.5倍の数値に対応し且つ分散している。角形管状部材の塑性捩り荷重から矩形断面板厚に換算すると図の縦軸に沿い←で示すように角管板厚の10倍〜20倍に相当する。
【0012】
本発明が意図する金属平板の補強構造はせん断降伏後の安定したせん断耐力の維持を主な目的としており、従って金属平板の塑性捩り荷重を大幅に増やすことが必要であるため補強部材として角形管状部材を選択したもので、金属平板内に閉鎖型断面となる部位を設けることで薄い平板であっても捩り剛性,捩り強さを極めて大きくでき、これにより面内せん断を受ける長方形金属平板の力学的性能を大幅に上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】長方形金属平板への角形管状部材による補強構造を示す斜視図である。
【図2】角形管状部材の捩りと閉鎖型断面内のせん断応力流れを示す図である。
【図3】構造用角形管状部材の断面構成板要素と塑性捩り荷重の関係図である。
【図4】角形管状部材で補強された長方形金属平板の構造図である。(実施例1)
【図5】前記平板の表裏面へ添接された角形管状部材の構成を示す断面図である。
【図6】角形管状部材の配置形態と補強効果に関する解析結果の説明図である。
【図7】C形断面部材による補強とその効果に関する解析結果の説明図である。
【図8】長柱型金属平板に添接される角形管状部材の構造図である。(実施例2)
【図9】前記平板表裏面へ添接された角形管状部材の構成を示す断面図である。
【図10】長柱型金属平板の塑性変形能力に関する解析結果の説明図である。
【図11】圧縮軸力を受ける長柱型金属平板に関する解析結果の説明図である。
【図12】開口部の有る壁面に組込まれた金属平板の配置図である。(実施例3)
【図13】薄い金属平板ユニットに対する帯板と角管の配置を示す構成図である。
【図14】金属平板ユニットの塑性変形能力に関する解析結果の説明図である。
【図15】本発明の補強長方形金属平板の捩りを伴う変形を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の代表的構造を示す斜視図である。主に面内せん断を受ける長方形金属平板1を前記平板の片側面乃至両側面に角形管状部材2,3を略均等間隔に添接補強するもので、必要に応じ両側辺に沿う部材3を内側配置の部材2より大きくし捩り剛性,捩り強さを上げて前記長方形平板の力学的安定を図る。長方形金属平板の上下両側端部近傍で水平にせん断荷重を付加するが、この部位の加力冶具6とは平板に添接される角形管状部材とは構造的に一体化はしない。
【0015】
主に面内せん断を受け必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板として、前記平板の長手方向の側辺に平行してその短手方向に複数のC形断面部材等任意断面部材を並列配置して前記平板の片側面から添接し乃至表裏面から前記部材が板を挟み重なるように添接して前記平板と部材とで囲まれた空洞部を設け、前記長方形金属平板の捩り剛性,捩り強さを大幅に上げて平板の降伏せん断荷重の確保と降伏後のせん断耐力の維持とを意図した長方形金属平板の補強構造である。
【実施例1】
【0016】
図4(a)は 2,250mmx900mm の長方形金属平板1の長辺方向の両側辺に沿い表裏両面に角形管状部材3を添接し且つ並列する前記部材と平行して角形管状部材2を前記平板の片側面乃至両側面から添接し、前記平板の上下端部に加力の為の金具6を前記角形管状部材とは一体化せずに設置してせん断変形の進行に伴う前記部材への拘束を回避している。又、(b)図は前記平板面内のせん断応力の推移を示したもので、角形管状部材で挟まれた点線で示す平板の短冊状領域でまずせん断降伏し、徐々に実線で示す斜張力が支配し+印で示すように張力場へと移行する。
【0017】
図5は前記長方形金属平板に対して、角形管状部材の補強効果を調べるために解析対象とした部材配置を示す断面図で、(a)図の上から下へ平板両面に重なるように補強した場合,平板片側面に均等に配し且つ両側辺部だけ逆側面からも補強した場合,平板片面にのみ均等に配し補強した場合である。解析では各ケースの補強効果を比較するため補強材断面積総和を略同じとするように板厚を変えている。(b)図の上段は補強を角形管状部材とする場合,下段はC形断面部材を平板に被せるように取付ける場合を例示した。
【0018】
図6は平板板厚t=3.2mmとする前記長方形平板の数値解析結果で、3種類の補強材構成について角形管状部材の断面板厚をt'=1.6mm, 2.3mm, 3.2mmとして全断面積量を略同じとしてその効果を検証している。図の縦軸はせん断荷重Qを降伏せん断荷重Qyで無次元化し,横軸のδ/H は層間変形角で壁板上部の水平変位δを壁板のせいHの比で示した図である。全体的に見て何れの構成に対しても塑性変形能力は高く、強いて比較すれば平板両面から補強されたものが若干他を上回る。
【0019】
図7は 補強部材を図5(b)のC形断面部材とした長方形平板に対する数値解析結果であるが、角形管状部材との違いはC形断面部材が平板に接する部位での断面が欠落した場合に相当する。塑性変形能力で比較すれば略2/3となり、平板に付加される捩り剛性,捩り強さが略同じであることから、この差は平板の補強部位の板厚差によるものと考えられる。以上の数値解析では、材料は降伏点応力度σy=30kN/cm2,SS400相当の軟鋼とし、以下の解析もこれに準じて行っている。
【実施例2】
【0020】
図8は辺長比1:4の長柱型せん断パネルで、(a)図に示す長方形金属平板1の片側面に幅100mmの角形管状部材2を100mm毎に離して添接し、(b)図に示す逆側の面には両側辺に沿い角形管状部材3を添接する場合と100mm幅の帯状矩形断面部材4を添接する場合を考え且つ前記何れに対しても平板中間部位に矩形断面部材5を配して構成している。前記平板の上下端部に矩形断面部材6の加力用金具は長辺方向の補強部材とは僅かに離してせん断変形の進行を妨げないよう配慮している。
【0021】
図9は解析例題として長方形金属平板の板厚t= 3.2mm, 6.0mm, 9.0mmを選択し、角形管状部材として □-100x50xt'と □-100x75xt'を、前記3ケースに対し角管の板厚をt'=3.2mm, 4.5mm, 6.0mmとしている。長方形金属平板の板厚tに応じて角管板厚t'を変え異なるせん断降伏荷重となる平板であっても略同じ塑性変形能力となることを目論み、更に全体的な力学性能は角管の外形寸法を上げることで調整して大きく塑性変形能力を上げる工夫をしている。
【0022】
図10は長方形金属平板に対し角形管状部材を片側面にのみ添接し且つ逆側面の両側辺に沿う部位には100mm幅の帯状矩形断面部材を添接し、実線は角管断面 □-100x50xt'の場合,点線は□-100x75xt'の場合である。長方形金属平板の板厚tに応じて角管板厚t'を変えるものの外形寸法を変えることなく異なるせん断降伏耐力に対しても略同じ力学的性能が確保でき、更に角管断面の外形寸法により塑性変形能力を調整できるためこれに伴う補強材重量も殆ど同じとなる。
【0023】
図11は、角形管状部材 □-100x75xt'について一定圧縮軸力Pが長方形平板の面内に加わる状態でのせん断荷重比Q/Qyとせん断変形角δ/Hとの関係を表したものである。軸圧縮力は添接される角管全断面積で換算し降伏軸力の略20%を設定し解析した結果が実線であるが、図中下部に点線で示した長方形金属平板の中間位置の捩り変形角φが平板のせん断変形が進行しても低く抑えられており、本設定条件では長手方向両側辺に沿い平板の表裏両面に角形管状部材を重ねて構成することが有効であると考えられる。
【実施例3】
【0024】
図12は実施設計例をモデルとした開口部のある壁面の耐震補強について本発明の長方形金属平板の使用を前提として検討するもので、角管補強による単位長方形金属平板複数枚による壁面への配置を示したものである。壁面 7,200mmx3,600mm に対し 2,400mmx1,200mm の補強壁板7枚を開口部を取囲んで配置しているが、補強壁板の取付けは4本の縦方向部材に前記壁面の短辺方向側辺で行い、長辺方向の側辺に沿っては面外への変形を拘束しないことを設計条件としている。
【0025】
図13は金属平板 2,400mmx1,200mm の補強構造を示したもので、(a)図の片側面には長手方向の側辺に沿い矩形断面 150mmx12mm の帯板4を添接し且つ短辺方向の側辺に沿い加力用補強金具6を前記帯板とは分離し取付けている。(b)図は平板逆側面であり長手方向の側辺から若干離し角形管状部材2を均等に並列配置して添接し且つ加力部は建物側の縦方向部材に直接止め付ける。(c) 図は壁板の断面図で、角形管状部材を □-100x50xt'とする場合と両側辺に沿う角形管状部材だけを □-100x100xt'とする例である。
【0026】
図14は平板の板厚t= 3.2mm,2.3mm,1.6mmに対しての数値解析結果で、実線は6本の角管部材 □-100x50xt'で板厚t'を平板板厚tと互いに同じとし、点線は側辺に沿う2本の角管部材を □-100x100xt'に取替えた場合である。並列配置された角形管状部材の間の短冊状領域の短辺方向幅は80mmであり、各平板板厚の幅厚比は 25,35,50 となっているにも拘わらず降伏後のせん断耐力の限界も略同じ値となっている。
【0027】
半無限縁平板のせん断座屈について弾性せん断座屈荷重を数式(1)に,座屈係数を数式(2)に,短辺方向の平板幅厚比を数式(3)に示している。長方形金属平板が面内せん断を受ける場合にせん断降伏荷重を確保することが必要であり、角形管状部材等で挟まれた細長い短冊状領域でせん断降伏開始時点で塑性化が進むことを考え、その部位の弾性せん断座屈荷重がせん断降伏荷重を上回ることが必須条件となる。
【0028】
【数2】
【0029】
本発明の対象とする長方形金属平板は鋼材及び軽金属材を含み且つ金属材料の降伏点応力度にも数値幅があり、鋼材として降伏点応力度σy=30kN/cm2,ヤング係数はE=20,500kN/cm2,軽金属材として降伏点応力度σy=20kN/cm2,ヤング係数はE=7,200kN/cm2を標準として考えれば弾性せん断座屈荷重がせん断降伏荷重を上回る幅厚比は鋼材でb/t=98,軽金属材料でb/t=69 となるため、平板の元撓み等の不整を考え前記数値の略2/3乃至それ以下とし鋼材でb/t=60,軽金属材料でb/t=40 を制限値とした。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明の代表的構造は図1の斜視図に示しているが、主に面内せん断を受ける長方形金属平板を前記平板の片側面乃至両側面に角形管状部材を略均等間隔に添接し構成するもので、平板には隅肉溶接乃至金属接着剤により取付けることを標準とするが平板片側面の角形管状部材が他側面の角形管状部材乃至帯状矩形断面部材と重なる場合には平板を挟んでのボルト接合もある。長方形金属平板への角形管状部材による補強構造は組立て方法が比較的簡単で且つ軽量であり、設計の容易さと製作の簡便さは特記すべき長所である。
【0031】
本発明は面内せん断を受け必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板に対する補強構造を提案したもので、捩りを主体とする力学的性能確保には閉鎖型断面である角形管状部材が有効に寄与し、金属系建物の壁面構成パネル,制振ないし耐震を目的とするせん断パネルとして最適である。明細書中の実施例では金属平板として降伏点応力度σy=30kN/cm2,ヤング係数E=20,500kN/cm2としているが、高降伏点鋼,低降伏点鋼でも対応でき更に軽金属材料であってもヤング率の違いに配慮すれば同様の扱いが可能である。
【0032】
図15は本発明の長方形金属壁板の代表的構成を示す実施例1の解析シミュレーションで、せん断降伏以降のせん断変形の進行に伴う壁板全体の推移を示すもので、壁板上下の側辺に沿い水平方向にせん断力が作用することと平板を捩ることとは同一の力学体系にあり、これは平板全体が捩れ変形していることからも判る。従って、本発明の補強構造では平板に対し捩り剛性,捩り強さを上げることは容易で、必ずしも長辺方向側辺を拘束する必要はなく、建物構成上簡便であり建築施工上の観点からも有利なものと考えられる。
【符号の説明】
【0033】
1 面内せん断を受ける金属平板
2 平板面に添接される角形管状部材
3 長辺方向側辺に沿う角形管状部材
4 平板両側辺に沿う矩形断面部材
5 長手方向中間部の横方向補強材
6 平板両端部の加力用補強金具
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主に面内せん断を受け必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板として、前記平板の長手方向の両側辺に平行してその短手方向の幅全域に亘り複数の角形管状部材を一定間隔毎に並列配置して前記平板の片側面から添接し乃至表裏両面から前記部材が板を挟み重なるように添接し、前記長方形金属平板の捩り剛性と捩り強さを大幅に上げて平板の降伏せん断荷重を確保すると伴に降伏後のせん断大変形領域に於いてもせん断耐力が低下することなく維持されるようした長方形金属平板の補強構造。
【請求項2】
主に面内せん断を受け必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板として、前記平板の長手方向の両側辺に沿い平板の片側面から帯状矩形断面部材を添接し且つ前記平板の両側辺部の逆側面には平板側辺に沿い乃至前記帯板幅の範囲内で若干離れる部位に角形管状部材を添接し、更に平板両側辺の前記部材の間に複数の角形管状部材を略均等区間毎に並列に添接して構成し、前記平板の面内せん断力を両側辺部で受けて降伏後のせん断大変形領域に於いてせん断耐力を維持し得るようにした長方形金属平板の補強構造。
【請求項3】
主に面内せん断を受け必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板として、前記平板の長手方向の側辺に平行してその短手方向の幅全域に亘り複数のC形断面部材,半円形管部材等を並列配置して前記平板に添接し平板と部材に囲まれる空洞を設けることで閉鎖型断面を組入れ、前記長方形金属平板の捩り剛性と捩り強さを大幅に上げて平板の降伏せん断荷重を確保すると伴に降伏後のせん断大変形領域に於いてもせん断耐力が低下することなく維持されるようした長方形金属平板の補強構造。
【請求項4】
面内せん断を受け且つ必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板として、前記平板の長手方向に角形管状部材,C形断面部材等を並列配置することで部材が添接される部位とそうではない部位とで実質的な板厚差が生じてせん断降伏領域は降伏初期時点で板厚の薄い短冊状領域に限定されるため、前記短冊状領域の短手方向の幅厚比を鋼材で60以下,軽金属材で40以下として平板面内に層状に未だ弾性となる領域を残し弾性・塑性に跨る激しい剛性変化にも安定した力学性状とする長方形金属平板の補強構造。
【請求項5】
主に面内せん断を受け必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板として、前記平板の長手方向両材端部のせん断力を付加するための補強金具と平板に添接された角形管状部材とは僅かな隙間を設けて一体化せずに前記平板のせん断変形の進行を阻害することなく推移せしめ、前記長方形金属平板のせん断降伏後のせん断変形の成長にも降伏せん断耐力を超えての極端な上昇を防ぎ降伏後のせん断耐力を安定的に維持し得るようにした長方形金属平板の補強構造。
【請求項6】
主に面内せん断を受け必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板として、前記平板の上下両端部近傍の荷重付加部位に於いて平板面外への回転変形を抑えるようにし、面内せん断を受けて長方形金属平板に生じる基本的な力学的釣合いである捩り変形を拘束することなく前記平板の長辺方向両側辺部は平板面外への変形を自由とし、平板全域に添接される角形管状部材により必要に応じ両側辺の部材断面を大きくし前記長方形金属平板の捩り変形を低く抑えて力学的安定を図る長方形金属平板の補強構造。
【請求項1】
主に面内せん断を受け必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板として、前記平板の長手方向の両側辺に平行してその短手方向の幅全域に亘り複数の角形管状部材を一定間隔毎に並列配置して前記平板の片側面から添接し乃至表裏両面から前記部材が板を挟み重なるように添接し、前記長方形金属平板の捩り剛性と捩り強さを大幅に上げて平板の降伏せん断荷重を確保すると伴に降伏後のせん断大変形領域に於いてもせん断耐力が低下することなく維持されるようした長方形金属平板の補強構造。
【請求項2】
主に面内せん断を受け必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板として、前記平板の長手方向の両側辺に沿い平板の片側面から帯状矩形断面部材を添接し且つ前記平板の両側辺部の逆側面には平板側辺に沿い乃至前記帯板幅の範囲内で若干離れる部位に角形管状部材を添接し、更に平板両側辺の前記部材の間に複数の角形管状部材を略均等区間毎に並列に添接して構成し、前記平板の面内せん断力を両側辺部で受けて降伏後のせん断大変形領域に於いてせん断耐力を維持し得るようにした長方形金属平板の補強構造。
【請求項3】
主に面内せん断を受け必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板として、前記平板の長手方向の側辺に平行してその短手方向の幅全域に亘り複数のC形断面部材,半円形管部材等を並列配置して前記平板に添接し平板と部材に囲まれる空洞を設けることで閉鎖型断面を組入れ、前記長方形金属平板の捩り剛性と捩り強さを大幅に上げて平板の降伏せん断荷重を確保すると伴に降伏後のせん断大変形領域に於いてもせん断耐力が低下することなく維持されるようした長方形金属平板の補強構造。
【請求項4】
面内せん断を受け且つ必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板として、前記平板の長手方向に角形管状部材,C形断面部材等を並列配置することで部材が添接される部位とそうではない部位とで実質的な板厚差が生じてせん断降伏領域は降伏初期時点で板厚の薄い短冊状領域に限定されるため、前記短冊状領域の短手方向の幅厚比を鋼材で60以下,軽金属材で40以下として平板面内に層状に未だ弾性となる領域を残し弾性・塑性に跨る激しい剛性変化にも安定した力学性状とする長方形金属平板の補強構造。
【請求項5】
主に面内せん断を受け必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板として、前記平板の長手方向両材端部のせん断力を付加するための補強金具と平板に添接された角形管状部材とは僅かな隙間を設けて一体化せずに前記平板のせん断変形の進行を阻害することなく推移せしめ、前記長方形金属平板のせん断降伏後のせん断変形の成長にも降伏せん断耐力を超えての極端な上昇を防ぎ降伏後のせん断耐力を安定的に維持し得るようにした長方形金属平板の補強構造。
【請求項6】
主に面内せん断を受け必要に応じ圧縮荷重を支える長方形金属平板として、前記平板の上下両端部近傍の荷重付加部位に於いて平板面外への回転変形を抑えるようにし、面内せん断を受けて長方形金属平板に生じる基本的な力学的釣合いである捩り変形を拘束することなく前記平板の長辺方向両側辺部は平板面外への変形を自由とし、平板全域に添接される角形管状部材により必要に応じ両側辺の部材断面を大きくし前記長方形金属平板の捩り変形を低く抑えて力学的安定を図る長方形金属平板の補強構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−190635(P2011−190635A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58838(P2010−58838)
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【特許番号】特許第4688234号(P4688234)
【特許公報発行日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(305025669)株式会社 構造材料研究会 (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月16日(2010.3.16)
【特許番号】特許第4688234号(P4688234)
【特許公報発行日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(305025669)株式会社 構造材料研究会 (12)
【Fターム(参考)】
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