開閉扉用クッション
【課題】衝突エネルギの吸収性能を向上すると共に生産性も向上する。
【解決手段】フードクッション22の螺子山42の根元部42Aに、螺子山42の全周に渡って略均等の間隔で形成されており、フードクッション22の軸線方向の少なくとも一方の端部側が開口され、他方の端部側に向かう同一直線上に形成された複数の軸方向孔50を形成した。このため、螺子山42が根元部42Aを起点にして容易に変形することで衝突エネルギの吸収性を向上できる。また、フードクッション22を成形する場合には、フードクッション22の軸方向(上下方向)へ型抜きする中子を使用することで複数の軸方向孔50を形成できるので、アンダーカットにならず生産性を向上できる。
【解決手段】フードクッション22の螺子山42の根元部42Aに、螺子山42の全周に渡って略均等の間隔で形成されており、フードクッション22の軸線方向の少なくとも一方の端部側が開口され、他方の端部側に向かう同一直線上に形成された複数の軸方向孔50を形成した。このため、螺子山42が根元部42Aを起点にして容易に変形することで衝突エネルギの吸収性を向上できる。また、フードクッション22を成形する場合には、フードクッション22の軸方向(上下方向)へ型抜きする中子を使用することで複数の軸方向孔50を形成できるので、アンダーカットにならず生産性を向上できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば自動車のエンジンフード等の開閉扉に適用される開閉扉用クッションに関し、特に、開閉蓋の閉塞位置を決めると共に閉める際の衝撃音や振動を低減するための開閉扉用クッションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、開閉蓋と取付部材との間の隙間を有効に利用して、衝突エネルギの吸収性能を向上するための開閉扉用緩衝装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、フードクッションに、所定値以上のフードの閉止方向力が車体上方から車体下方へ向かって作用すると、エプロンアッパメンバの螺子孔の周縁部に当接するフードクッションの車体上方側の螺子山が、下方側から上方側に向かって順番に、螺子山の根元部に形成した薄肉部を起点に上方へ塑性変形する。この塑性変形により、エプロンアッパメンバの取付部に対して、フードクッションが下方へ移動し、突出部の突出高さが変化する。また、螺子山が塑性変形することで、フードに衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収する。
【特許文献1】特開2006−159987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この開閉扉用クッションでは、螺子山の根元部を薄肉化しているため、成形工程で螺子山の根元部がアンダーカットとなる。このため、成形工程が複雑となり、生産性がよくない。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、衝突エネルギの吸収性能を向上できると共に生産性も向上できる開閉扉用クッションを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明は、開閉扉及び前記開閉扉で閉塞される部位の何れか一方に設けられた有孔の取付部に螺合され、この螺合量を変えることで前記取付部からの突出部の突出高さを調整できると共に、前記突出部で前記開閉扉及び前記開閉扉で閉塞される部位の何れか他方を弾性的に支持する開閉扉用クッションにおいて、前記突出部の外周面に形成された螺子山の根元部に、前記螺子山の全周に渡って略均等の間隔で形成されており、少なくとも軸線方向の一方の端部側が開口されて他方の端部側に向かい、且つ同一直線上に形成された複数の軸方向孔を有する。
【0006】
取付部に取付けられた開閉扉用クッションに開閉扉の所定値以上の閉止方向力が作用した場合には、開閉扉用クッションの螺子山が、螺子山の根元部に形成された複数の軸方向孔を起点にして容易に変形する。このため、開閉扉用クッションの螺子山と、取付部との螺合位置が変わり突出部の突出高さが低くなると共に、この螺子山の変形で衝突エネルギを吸収できる。また、螺子山の根元部に形成された軸方向孔は、開閉扉用クッションの螺子山の全周に渡って略均等の間隔で形成されており、少なくとも軸線方向の一方の端部側が開口されて他方の端部側に向かい、且つ同一直線上に形成されている。このため、従来技術のように、螺子山の根元部をアンダーカットとする必要がない。この結果、開閉扉用クッションを成形する場合には、開閉扉用クッションの軸方向へ型抜きする中子を使用することで容易に成形でき、生産性が向上する。
【0007】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の開閉扉用クッションにおいて、前記軸方向孔は、前記螺子山の根元部に形成されると共に、前記突出部を軸線方向に見た場合に、前記突出部の周方向に沿った長孔であることを特徴とする。
【0008】
開閉扉用クッションの軸方向孔の形状を、突出部を軸線方向に見た場合に、突出部の周方向に沿った長孔とすることで、軸方向孔の数を少なくすることが可能となる。このため、中子の数が少なくなると共に中子の強度が増すので、中子のメンテナンス性や耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の本発明の開閉扉用クッションは、衝突エネルギの吸収性能を向上できると共に生産性も向上できる。
【0010】
請求項2記載の本発明の開閉扉用クッションは、中子のメンテナンス性や耐久性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における開閉扉用クッションの第1実施形態を図1〜図5に従って説明する。
【0012】
なお、図中矢印UPは車体上方方向を示し、図中矢印FRは車体前方方向を示し、図中矢印INは車幅内側方向を示している。
【0013】
図4には本実施形態に係る開閉扉用クッションが適用された車体前部が車体斜め前方から見た斜視図で示されており、図1には図4の1−1線に沿った拡大断面図が示されている。
【0014】
図4に示されるように、本実施形態の自動車のボデー10においては、前部12の車幅方向両外側上部に左右一対のエプロンアッパメンバ14が設けられている。また、これらの左右一対のエプロンアッパメンバ14は車体前後方向に沿って設けられており、左右一対のエプロンアッパメンバ14の各前端部には、ラジエータサポートアッパ20が車幅方向に沿って架設されている。
【0015】
左右一対のエプロンアッパメンバ14の前方上部には、それぞれ開閉扉用クッションとしての閉止位置決め用のフードクッション22が取付けられており、左右一対のエプロンアッパメンバ14は、フードクッション22で閉塞される部位となっている。なお、エプロンアッパメンバ14の後方上部には、図示を省略したヒンジを介して開閉蓋としてのエンジンフード24が開閉可能に取付けられており、エンジンフード24によって、エンジンルーム26が開閉可能となっている。
【0016】
図1に示されるように、エンジンフード24は、エンジンフード24の車体外側部を構成するフードアウタパネル30を備えており、フードアウタパネル30の車体内側部には、フードインナパネル32がフードアウタパネル30に沿って配置されている。また、フードアウタパネル30とフードインナパネル32との間には空間34が形成されており、フードアウタパネル30の外周縁部30Aとフードインナパネル32の外周縁部32Aとはヘミング加工によって互いに結合されている。
【0017】
図3に示されるように、左右一対のエプロンアッパメンバ14の上壁部14Aの前部14Bは、フードクッション22の取付部となっており、それぞれ貫通孔36が形成されている。また、貫通孔36の周縁部には、切欠38が貫通孔36の径方向に沿って一箇所形成されている。さらに、貫通孔36の周縁部は、切欠38を挟んで対向する一方の周縁部38Aから、他方の周縁部38Bにかけて次第に低くなるように傾斜しており、貫通孔36の周縁部には雌螺子の一周が形成されている。このため、フードクッション22は貫通孔36に切欠38を通して螺合可能となっている。
【0018】
フードクッション22の形状は円柱状となっており、フードクッション22の材質はゴム、樹脂等の弾性部材となっている。また、フードクッション22の外周部には、フードクッション22の軸線方向である長手方向に所定のピッチで螺子溝40が形成されている。即ち、フードクッション22の外周部には、螺子溝40がフードクッション22の軸線回りにフードクッション22の全長に亘って刻まれている。なお、フードクッション22の外周部における螺子溝40の間が螺子山42となっている。
【0019】
図1に示されるように、フードクッション22の螺子山42は方形断面の角螺子となっており、フードクッション22の螺子溝42はエプロンアッパメンバ14の貫通孔36の周縁部に螺合している。即ち、フードクッション22は、螺子溝40と螺子山42とがエプロンアッパメンバ14の貫通孔36の周縁部に螺合することで、エプロンアッパメンバ14に取付可能となっている。
【0020】
また、エンジンフード24を閉止状態にした場合に、フードクッション22の上端部22Bにフードインナパネル32の下面32Bが当接するようになっており、この際、フードクッション22は軸方向へ弾性圧縮変形するようになっている。
【0021】
なお、フードクッション22の下部22Cのエプロンアッパメンバ14への捩じ込み量によって、フードクッション22のエプロンアッパメンバ14から車体上方側への通常状態での突出量(突出部22Aの高さ)H1が調整できるようになっている。
【0022】
図3に示されるように、フードクッション22の螺子山42の根元部42Aには、長方形断面の軸方向孔50が形成されている。また、軸方向孔50は、フードクッション22の軸線方向となる車体上下方向(長手方向)に沿って形成されていると共に、フードクッション22の周方向の全周に渡って略均等の間隔で複数個形成されている。さらに、これらの軸方向孔50はフードクッション22の上端面側または下端面側の一方から他方に向かって連続して形成されており、本実施形態では、上端面側から下端面側へ貫通している。このため、フードクッション22を成形する場合には、フードクッション22の軸方向(上下方向)へ型抜きする中子を使用することで容易に成形できるようになっている。
【0023】
なお、軸方向孔50の数や形断面の大きさ(断面積)は、フードクッション22の目標特性に合わせて設定されている。
【0024】
従って、螺子山42の根元部36Aに、複数の軸方向孔50を形成することで、螺子山42の根元部36Aが螺子山42の他の部位に比べて、フードクッション22の軸方向(螺子山42の厚さ方向)へ容易に折れ易くなっており、破断等の塑性変形を起こし易くなっている。このため、螺子山42は、フードクッション22に車体上方から下方へ向かって作用するエンジンフード24の閉止方向力が所定値までは塑性変形しないが、エンジンフード24の閉止方向力が所定値以上になると根元部36Aを起点に塑性変形するようになっている。
【0025】
図1に示されるように、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36の内周部36Aと、フードクッション22の螺子溝40の底部40Aとの間には、隙間54が形成されており、この隙間54内を塑性変形した螺子山42が通過可能となっている。
【0026】
従って、図2に示されるように、衝突体Kが車体上方から車体下方へ向かってエンジンフード24に衝突して、エンジンフード24を下方側から支持しているフードクッション22に所定値以上の閉止方向力が車体上方から車体下方へ向かって作用した場合には、エンジンフード24が潰れることである程度のエネルギーを吸収するようになっている。また、エンジンフード24のフードアウタパネル30がフードインナパネル32に当たると、2枚のパネルを介して、衝突体Kがフードクッション22を下方へ押圧するようになっている。この結果、エプロンアッパメンバ14の上壁部14Aの前部14Bに形成した貫通孔36の周縁部に当接する車体上方側の螺子山42が根元部42Aを起点に上方へ塑性変形し、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36に対して、フードクッション22が下方(図2の矢印A)へ移動するようになっている。
【0027】
より具体的に説明すると、衝突体Kの押圧力Mによって、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36の周縁部に支持されているフードクッション22の螺子山42が下方へ移動することで、エプロンアッパメンバ14の上壁部14Aの前部14Bへのフードクッション22の支持位置が変わり、フードクッション22のエプロンアッパメンバ14から車体上方側への突出量H2が、移動前の突出部22Aの高さH1に比べて短くなるようになっている。この際、エンジンフード24に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを、螺子山42が根元部42Aを起点に塑性変形することで吸収できるようになっている。
【0028】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0029】
本実施形態では、開放状態にあるエンジンフード24を閉めた際に、エンジンフード24の閉止方向力によって、フードクッション22におけるエプロンアッパメンバ14から突出した突出部22A(高さH1の部位)が弾性変形する。
【0030】
この際、図5の(0〜S1、0〜F1)に示されるように、エンジンフード24の車体下方へのストロークSと、フードクッション22からエンジンフード24が受ける力Fとの関係は、ストロークSの増加に対して力Fは緩やかに上昇する。即ち、通常エンジンフード24を閉める際のストロークSに対しては、力Fが小さいので、エンジンフード24を容易に閉止状態へ移動することができる。
【0031】
一方、図5の(0〜S2、0〜F2)に示されるように、エンジンフード24が強閉された場合には、フードクッション22の突出部22Aが大きく弾性変形する。この結果、ストロークSの増加に対して力Fは緩やかに上昇した後、急激に上昇する。このため、エンジンフード24を強閉した際の力Fに対してストロークSが小さくなるので、エンジンフード24がエンジンフード24の下方に取付けられた他部品に干渉するのを防止できる。
【0032】
また、図5の(0〜S3、0〜F3)に示されるように、衝突体Kがエンジンフード24に車体上方から車体下方へ向かって衝突した場合には、衝突体Kの押圧力Mによって、フードクッション22の突出部22Aが更に大きく弾性変形する。この結果、ストロークSの増加に対して力Fは緩やかに上昇した後、急激に上昇するので、エンジンフード24に歩行者等の衝突体が当接した際のフードクッション22のエネルギ吸収量を増加できる。
【0033】
また、螺子山42の根元部42Aに、複数の軸方向孔50を形成することで、衝突体Kの押圧力Mが作用した場合に、根元部42Aが螺子山42の他の部位に比べてフードクッション22の軸方向(螺子山42の厚さ方向)へ容易に折れ易くなっている。このため、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36の周縁部に当接するフードクッション22の車体上方側の螺子山42が根元部42Aを起点に、下方側から上方側に向かって順番に上方へ塑性変形し、貫通孔36内を通過する。この結果、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36に対して、フードクッション22が下方(図2の矢印A)へ次々に移動する。
【0034】
この結果、図5の(S3〜S4)に示されるように、ストロークSの増加に対して力Fが僅かな上下動を繰り返すが大きく上昇しない。このため、エンジンフード24に衝突体が当接した際の力Fが略一定でストロークSが大きくなるので、衝突体が衝突した際のエネルギ吸収量を増加することができる。
【0035】
即ち、図5に二点鎖線で示すように、フードクッション22の底付き(弾性変形の限界)によって、ストロークS5が短くなり、衝突体が受ける力F5が大きくなるのを防止できる。このため、エンジンフード24とエプロンアッパメンバ14との間の通常状態での隙間H1を有効に利用して、衝突エネルギの吸収性能を向上できる。
【0036】
また、本実施形態では、フードクッション22の螺子溝40と螺子山42とをエプロンアッパメンバ14の貫通孔36に螺合することで、フードクッション22をエプロンアッパメンバ14に容易に取付けることができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、螺子山42の根元部42Aに、複数の軸方向孔50を形成することで脆弱部とした。このため、フードクッション22を成形する場合には、フードクッション22の軸方向(上下方向)へ型抜きする中子を使用することで容易に成形できる。この結果、螺子山の根元部を薄肉化するために成形工程で螺子山の根元部がアンダーカットとなる従来技術に比べて、成形工程が簡単になりフードクッション22の生産性を向上できる。
【0038】
なお、フードクッション22が硬質樹脂等で成形されている場合には、従来のフードクッション22に後加工で軸方向孔50を切削加工することもできる。
【0039】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第2実施形態を図6に従って説明する。
【0040】
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図6に示されるように、本実施形態では、螺子山42の根元部42Aに形成された複数の軸方向孔50が、フードクッション22(の突出部22A)を軸線方向(上下方向)に見た場合に、フードクッション22(の突出部22A)の周方向に沿った長孔となっている。即ち、軸方向孔50の断面形状が螺子山42の根元部42Aに沿った長孔となっている。
【0042】
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、軸方向孔50の断面形状を、螺子山42の根元部42Aに沿った長孔としたことで、第1実施形態に比べて、同一特性を得るための軸方向孔50の数を少なくし形状を大きくすることが可能となる。この結果、中子の数が少なくなると共に中子の強度が増すので、中子のメンテナンス性や耐久性が向上する。
【0043】
なお、フードクッション22の軸方向孔50の断面形状は他の形状としてもよい。例えば、図7(第3実施形態)に示されるように、フードクッション22の軸方向孔50の断面形状を方形にしてもよい、また、図8(第4実施形態)に示されるように、フードクッション22の軸方向孔50の断面形状を三角形にしてもよい。なお、フードクッション22の軸方向孔50の断面形状を方形や三角形とする場合には、角部を円弧状にすることで中子のメンテナンス性や耐久性が向上する。
【0044】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第5実施形態を図9及び図10に従って説明する。
【0045】
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
図9及び図10に示されるように、本実施形態では、フードクッション22の目標特性に合わせて、フードクッション22の軸心上に断面円形の孔60が形成されている。
【0047】
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、本実施形態では、フードクッション22は軸心上に断面円形の孔60を形成したことによって、フードクッション22を目標特性に合わせることが容易になる。なお、フードクッション22の最下端の螺子山42においては、軸方向孔50を塞ぎ、組付け時にフードクッション22の上下を間違えることを防止する構成としてもよい。
【0048】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第6実施形態を図11に従って説明する。
【0049】
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図11に示されるように、本実施形態では、フードクッション22の螺子山42の先端部(外周部)42Bの上部42Cが、傾斜形状となっており、螺子山42の先端部(外周部)42Bの板厚S1が先端方向に向かって徐々に薄くなっている。
【0051】
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、本実施形態では、フードクッション22の螺子山42の先端部(外周部)42Bの板厚S1を先端方向に向かって徐々に薄くした。このため、衝突体Kの押圧力Mが作用した場合に、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36の周縁部に当接するフードクッション22の車体上方側の螺子山42が、その上方にある螺子山42と干渉し難くなり、上方へ更に容易に塑性変形させることができる。
【0052】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第7実施形態を図12及び図13に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0053】
図12に示されるように、本実施形態では、開閉扉用クッションとしてのフードクッション22が、開閉扉側となるエンジンフード24側に取付けられている。
【0054】
より具体的に説明すると、フードクッション22はフードインナパネル32に形成された貫通孔70の周縁部に取付けられている。
【0055】
図13に示されるように、本実施形態では、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36は、フードクッション22が上方から押圧された場合に、フードクッション22が脱落するための逃げ場として作用する。
【0056】
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0057】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、軸方向孔50はフードクッション22を軸方向(上下方向)に貫通する必要はなく、予め、フードクッション22の突出部22Aが決まっている場合等には、突出部22Aのみに形成してもよい。
【0058】
また、螺子山42の根元部42Aの塑性変形強度を、軸方向孔50の数を変える(長さの異なる中子を使用して成形する)ことにより、フードクッション22の軸方向に沿って変えることで、フードクッション22が軸方向へ移動するのに応じて、衝突体Kがエンジンフード24から受ける力を調整できる構成としてもよい。
【0059】
また、本発明の開閉扉用クッションは、図4に示されるように、ラジエータサポートアッパ20の車幅方向両端上部に取付けられた強閉対策用のフードクッション62にも適用可能である。
【0060】
また、本発明の開閉扉用クッションは、エンジンフード24に限定されず、ラゲージドア、バックドア、スライドドア等の他の開閉蓋に適用可能であり、自動車以外の車体の開閉扉や車体以外の開閉蓋にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図4の1−1断面線に沿った拡大断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションの変形状態を示す図1に対応する断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションを示す車体前方斜め上方から見た分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションが適用された車体前部を示す車体斜め前方から見た斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションにおけるフードのストロークSと、フードクッションからフードが受ける力Fとの関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図3に対応する分解斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図3に対応する分解斜視図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図3に対応する分解斜視図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図3に対応する分解斜視図である。
【図11】本発明の第6実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図12】本発明の第7実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図13】本発明の第7実施形態に係る開閉扉用クッションの変形状態を示す図12に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0062】
14 エプロンアッパメンバ
14A エプロンアッパメンバの上壁部
14B エプロンアッパメンバの上壁部の前部(取付部)
22 フードクッション(開閉扉用クッション)
22A フードクッションの突出部
24 エンジンフード(開閉扉)
36 孔
40 螺子溝
42 螺子山
42A 螺子山の根元部
50 軸方向孔
【技術分野】
【0001】
本発明は例えば自動車のエンジンフード等の開閉扉に適用される開閉扉用クッションに関し、特に、開閉蓋の閉塞位置を決めると共に閉める際の衝撃音や振動を低減するための開閉扉用クッションに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、開閉蓋と取付部材との間の隙間を有効に利用して、衝突エネルギの吸収性能を向上するための開閉扉用緩衝装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、フードクッションに、所定値以上のフードの閉止方向力が車体上方から車体下方へ向かって作用すると、エプロンアッパメンバの螺子孔の周縁部に当接するフードクッションの車体上方側の螺子山が、下方側から上方側に向かって順番に、螺子山の根元部に形成した薄肉部を起点に上方へ塑性変形する。この塑性変形により、エプロンアッパメンバの取付部に対して、フードクッションが下方へ移動し、突出部の突出高さが変化する。また、螺子山が塑性変形することで、フードに衝突体が衝突した際の衝突エネルギを吸収する。
【特許文献1】特開2006−159987号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この開閉扉用クッションでは、螺子山の根元部を薄肉化しているため、成形工程で螺子山の根元部がアンダーカットとなる。このため、成形工程が複雑となり、生産性がよくない。
【0004】
本発明は上記事実を考慮し、衝突エネルギの吸収性能を向上できると共に生産性も向上できる開閉扉用クッションを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の本発明は、開閉扉及び前記開閉扉で閉塞される部位の何れか一方に設けられた有孔の取付部に螺合され、この螺合量を変えることで前記取付部からの突出部の突出高さを調整できると共に、前記突出部で前記開閉扉及び前記開閉扉で閉塞される部位の何れか他方を弾性的に支持する開閉扉用クッションにおいて、前記突出部の外周面に形成された螺子山の根元部に、前記螺子山の全周に渡って略均等の間隔で形成されており、少なくとも軸線方向の一方の端部側が開口されて他方の端部側に向かい、且つ同一直線上に形成された複数の軸方向孔を有する。
【0006】
取付部に取付けられた開閉扉用クッションに開閉扉の所定値以上の閉止方向力が作用した場合には、開閉扉用クッションの螺子山が、螺子山の根元部に形成された複数の軸方向孔を起点にして容易に変形する。このため、開閉扉用クッションの螺子山と、取付部との螺合位置が変わり突出部の突出高さが低くなると共に、この螺子山の変形で衝突エネルギを吸収できる。また、螺子山の根元部に形成された軸方向孔は、開閉扉用クッションの螺子山の全周に渡って略均等の間隔で形成されており、少なくとも軸線方向の一方の端部側が開口されて他方の端部側に向かい、且つ同一直線上に形成されている。このため、従来技術のように、螺子山の根元部をアンダーカットとする必要がない。この結果、開閉扉用クッションを成形する場合には、開閉扉用クッションの軸方向へ型抜きする中子を使用することで容易に成形でき、生産性が向上する。
【0007】
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の開閉扉用クッションにおいて、前記軸方向孔は、前記螺子山の根元部に形成されると共に、前記突出部を軸線方向に見た場合に、前記突出部の周方向に沿った長孔であることを特徴とする。
【0008】
開閉扉用クッションの軸方向孔の形状を、突出部を軸線方向に見た場合に、突出部の周方向に沿った長孔とすることで、軸方向孔の数を少なくすることが可能となる。このため、中子の数が少なくなると共に中子の強度が増すので、中子のメンテナンス性や耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の本発明の開閉扉用クッションは、衝突エネルギの吸収性能を向上できると共に生産性も向上できる。
【0010】
請求項2記載の本発明の開閉扉用クッションは、中子のメンテナンス性や耐久性が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明における開閉扉用クッションの第1実施形態を図1〜図5に従って説明する。
【0012】
なお、図中矢印UPは車体上方方向を示し、図中矢印FRは車体前方方向を示し、図中矢印INは車幅内側方向を示している。
【0013】
図4には本実施形態に係る開閉扉用クッションが適用された車体前部が車体斜め前方から見た斜視図で示されており、図1には図4の1−1線に沿った拡大断面図が示されている。
【0014】
図4に示されるように、本実施形態の自動車のボデー10においては、前部12の車幅方向両外側上部に左右一対のエプロンアッパメンバ14が設けられている。また、これらの左右一対のエプロンアッパメンバ14は車体前後方向に沿って設けられており、左右一対のエプロンアッパメンバ14の各前端部には、ラジエータサポートアッパ20が車幅方向に沿って架設されている。
【0015】
左右一対のエプロンアッパメンバ14の前方上部には、それぞれ開閉扉用クッションとしての閉止位置決め用のフードクッション22が取付けられており、左右一対のエプロンアッパメンバ14は、フードクッション22で閉塞される部位となっている。なお、エプロンアッパメンバ14の後方上部には、図示を省略したヒンジを介して開閉蓋としてのエンジンフード24が開閉可能に取付けられており、エンジンフード24によって、エンジンルーム26が開閉可能となっている。
【0016】
図1に示されるように、エンジンフード24は、エンジンフード24の車体外側部を構成するフードアウタパネル30を備えており、フードアウタパネル30の車体内側部には、フードインナパネル32がフードアウタパネル30に沿って配置されている。また、フードアウタパネル30とフードインナパネル32との間には空間34が形成されており、フードアウタパネル30の外周縁部30Aとフードインナパネル32の外周縁部32Aとはヘミング加工によって互いに結合されている。
【0017】
図3に示されるように、左右一対のエプロンアッパメンバ14の上壁部14Aの前部14Bは、フードクッション22の取付部となっており、それぞれ貫通孔36が形成されている。また、貫通孔36の周縁部には、切欠38が貫通孔36の径方向に沿って一箇所形成されている。さらに、貫通孔36の周縁部は、切欠38を挟んで対向する一方の周縁部38Aから、他方の周縁部38Bにかけて次第に低くなるように傾斜しており、貫通孔36の周縁部には雌螺子の一周が形成されている。このため、フードクッション22は貫通孔36に切欠38を通して螺合可能となっている。
【0018】
フードクッション22の形状は円柱状となっており、フードクッション22の材質はゴム、樹脂等の弾性部材となっている。また、フードクッション22の外周部には、フードクッション22の軸線方向である長手方向に所定のピッチで螺子溝40が形成されている。即ち、フードクッション22の外周部には、螺子溝40がフードクッション22の軸線回りにフードクッション22の全長に亘って刻まれている。なお、フードクッション22の外周部における螺子溝40の間が螺子山42となっている。
【0019】
図1に示されるように、フードクッション22の螺子山42は方形断面の角螺子となっており、フードクッション22の螺子溝42はエプロンアッパメンバ14の貫通孔36の周縁部に螺合している。即ち、フードクッション22は、螺子溝40と螺子山42とがエプロンアッパメンバ14の貫通孔36の周縁部に螺合することで、エプロンアッパメンバ14に取付可能となっている。
【0020】
また、エンジンフード24を閉止状態にした場合に、フードクッション22の上端部22Bにフードインナパネル32の下面32Bが当接するようになっており、この際、フードクッション22は軸方向へ弾性圧縮変形するようになっている。
【0021】
なお、フードクッション22の下部22Cのエプロンアッパメンバ14への捩じ込み量によって、フードクッション22のエプロンアッパメンバ14から車体上方側への通常状態での突出量(突出部22Aの高さ)H1が調整できるようになっている。
【0022】
図3に示されるように、フードクッション22の螺子山42の根元部42Aには、長方形断面の軸方向孔50が形成されている。また、軸方向孔50は、フードクッション22の軸線方向となる車体上下方向(長手方向)に沿って形成されていると共に、フードクッション22の周方向の全周に渡って略均等の間隔で複数個形成されている。さらに、これらの軸方向孔50はフードクッション22の上端面側または下端面側の一方から他方に向かって連続して形成されており、本実施形態では、上端面側から下端面側へ貫通している。このため、フードクッション22を成形する場合には、フードクッション22の軸方向(上下方向)へ型抜きする中子を使用することで容易に成形できるようになっている。
【0023】
なお、軸方向孔50の数や形断面の大きさ(断面積)は、フードクッション22の目標特性に合わせて設定されている。
【0024】
従って、螺子山42の根元部36Aに、複数の軸方向孔50を形成することで、螺子山42の根元部36Aが螺子山42の他の部位に比べて、フードクッション22の軸方向(螺子山42の厚さ方向)へ容易に折れ易くなっており、破断等の塑性変形を起こし易くなっている。このため、螺子山42は、フードクッション22に車体上方から下方へ向かって作用するエンジンフード24の閉止方向力が所定値までは塑性変形しないが、エンジンフード24の閉止方向力が所定値以上になると根元部36Aを起点に塑性変形するようになっている。
【0025】
図1に示されるように、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36の内周部36Aと、フードクッション22の螺子溝40の底部40Aとの間には、隙間54が形成されており、この隙間54内を塑性変形した螺子山42が通過可能となっている。
【0026】
従って、図2に示されるように、衝突体Kが車体上方から車体下方へ向かってエンジンフード24に衝突して、エンジンフード24を下方側から支持しているフードクッション22に所定値以上の閉止方向力が車体上方から車体下方へ向かって作用した場合には、エンジンフード24が潰れることである程度のエネルギーを吸収するようになっている。また、エンジンフード24のフードアウタパネル30がフードインナパネル32に当たると、2枚のパネルを介して、衝突体Kがフードクッション22を下方へ押圧するようになっている。この結果、エプロンアッパメンバ14の上壁部14Aの前部14Bに形成した貫通孔36の周縁部に当接する車体上方側の螺子山42が根元部42Aを起点に上方へ塑性変形し、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36に対して、フードクッション22が下方(図2の矢印A)へ移動するようになっている。
【0027】
より具体的に説明すると、衝突体Kの押圧力Mによって、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36の周縁部に支持されているフードクッション22の螺子山42が下方へ移動することで、エプロンアッパメンバ14の上壁部14Aの前部14Bへのフードクッション22の支持位置が変わり、フードクッション22のエプロンアッパメンバ14から車体上方側への突出量H2が、移動前の突出部22Aの高さH1に比べて短くなるようになっている。この際、エンジンフード24に衝突体が衝突した際の衝突エネルギを、螺子山42が根元部42Aを起点に塑性変形することで吸収できるようになっている。
【0028】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0029】
本実施形態では、開放状態にあるエンジンフード24を閉めた際に、エンジンフード24の閉止方向力によって、フードクッション22におけるエプロンアッパメンバ14から突出した突出部22A(高さH1の部位)が弾性変形する。
【0030】
この際、図5の(0〜S1、0〜F1)に示されるように、エンジンフード24の車体下方へのストロークSと、フードクッション22からエンジンフード24が受ける力Fとの関係は、ストロークSの増加に対して力Fは緩やかに上昇する。即ち、通常エンジンフード24を閉める際のストロークSに対しては、力Fが小さいので、エンジンフード24を容易に閉止状態へ移動することができる。
【0031】
一方、図5の(0〜S2、0〜F2)に示されるように、エンジンフード24が強閉された場合には、フードクッション22の突出部22Aが大きく弾性変形する。この結果、ストロークSの増加に対して力Fは緩やかに上昇した後、急激に上昇する。このため、エンジンフード24を強閉した際の力Fに対してストロークSが小さくなるので、エンジンフード24がエンジンフード24の下方に取付けられた他部品に干渉するのを防止できる。
【0032】
また、図5の(0〜S3、0〜F3)に示されるように、衝突体Kがエンジンフード24に車体上方から車体下方へ向かって衝突した場合には、衝突体Kの押圧力Mによって、フードクッション22の突出部22Aが更に大きく弾性変形する。この結果、ストロークSの増加に対して力Fは緩やかに上昇した後、急激に上昇するので、エンジンフード24に歩行者等の衝突体が当接した際のフードクッション22のエネルギ吸収量を増加できる。
【0033】
また、螺子山42の根元部42Aに、複数の軸方向孔50を形成することで、衝突体Kの押圧力Mが作用した場合に、根元部42Aが螺子山42の他の部位に比べてフードクッション22の軸方向(螺子山42の厚さ方向)へ容易に折れ易くなっている。このため、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36の周縁部に当接するフードクッション22の車体上方側の螺子山42が根元部42Aを起点に、下方側から上方側に向かって順番に上方へ塑性変形し、貫通孔36内を通過する。この結果、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36に対して、フードクッション22が下方(図2の矢印A)へ次々に移動する。
【0034】
この結果、図5の(S3〜S4)に示されるように、ストロークSの増加に対して力Fが僅かな上下動を繰り返すが大きく上昇しない。このため、エンジンフード24に衝突体が当接した際の力Fが略一定でストロークSが大きくなるので、衝突体が衝突した際のエネルギ吸収量を増加することができる。
【0035】
即ち、図5に二点鎖線で示すように、フードクッション22の底付き(弾性変形の限界)によって、ストロークS5が短くなり、衝突体が受ける力F5が大きくなるのを防止できる。このため、エンジンフード24とエプロンアッパメンバ14との間の通常状態での隙間H1を有効に利用して、衝突エネルギの吸収性能を向上できる。
【0036】
また、本実施形態では、フードクッション22の螺子溝40と螺子山42とをエプロンアッパメンバ14の貫通孔36に螺合することで、フードクッション22をエプロンアッパメンバ14に容易に取付けることができる。
【0037】
さらに、本実施形態では、螺子山42の根元部42Aに、複数の軸方向孔50を形成することで脆弱部とした。このため、フードクッション22を成形する場合には、フードクッション22の軸方向(上下方向)へ型抜きする中子を使用することで容易に成形できる。この結果、螺子山の根元部を薄肉化するために成形工程で螺子山の根元部がアンダーカットとなる従来技術に比べて、成形工程が簡単になりフードクッション22の生産性を向上できる。
【0038】
なお、フードクッション22が硬質樹脂等で成形されている場合には、従来のフードクッション22に後加工で軸方向孔50を切削加工することもできる。
【0039】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第2実施形態を図6に従って説明する。
【0040】
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図6に示されるように、本実施形態では、螺子山42の根元部42Aに形成された複数の軸方向孔50が、フードクッション22(の突出部22A)を軸線方向(上下方向)に見た場合に、フードクッション22(の突出部22A)の周方向に沿った長孔となっている。即ち、軸方向孔50の断面形状が螺子山42の根元部42Aに沿った長孔となっている。
【0042】
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、軸方向孔50の断面形状を、螺子山42の根元部42Aに沿った長孔としたことで、第1実施形態に比べて、同一特性を得るための軸方向孔50の数を少なくし形状を大きくすることが可能となる。この結果、中子の数が少なくなると共に中子の強度が増すので、中子のメンテナンス性や耐久性が向上する。
【0043】
なお、フードクッション22の軸方向孔50の断面形状は他の形状としてもよい。例えば、図7(第3実施形態)に示されるように、フードクッション22の軸方向孔50の断面形状を方形にしてもよい、また、図8(第4実施形態)に示されるように、フードクッション22の軸方向孔50の断面形状を三角形にしてもよい。なお、フードクッション22の軸方向孔50の断面形状を方形や三角形とする場合には、角部を円弧状にすることで中子のメンテナンス性や耐久性が向上する。
【0044】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第5実施形態を図9及び図10に従って説明する。
【0045】
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0046】
図9及び図10に示されるように、本実施形態では、フードクッション22の目標特性に合わせて、フードクッション22の軸心上に断面円形の孔60が形成されている。
【0047】
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、本実施形態では、フードクッション22は軸心上に断面円形の孔60を形成したことによって、フードクッション22を目標特性に合わせることが容易になる。なお、フードクッション22の最下端の螺子山42においては、軸方向孔50を塞ぎ、組付け時にフードクッション22の上下を間違えることを防止する構成としてもよい。
【0048】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第6実施形態を図11に従って説明する。
【0049】
なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0050】
図11に示されるように、本実施形態では、フードクッション22の螺子山42の先端部(外周部)42Bの上部42Cが、傾斜形状となっており、螺子山42の先端部(外周部)42Bの板厚S1が先端方向に向かって徐々に薄くなっている。
【0051】
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られる。また、本実施形態では、フードクッション22の螺子山42の先端部(外周部)42Bの板厚S1を先端方向に向かって徐々に薄くした。このため、衝突体Kの押圧力Mが作用した場合に、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36の周縁部に当接するフードクッション22の車体上方側の螺子山42が、その上方にある螺子山42と干渉し難くなり、上方へ更に容易に塑性変形させることができる。
【0052】
次に、本発明における開閉扉用クッションの第7実施形態を図12及び図13に従って説明する。なお、第1実施形態と同一部材は、同一符号を付してその説明を省略する。
【0053】
図12に示されるように、本実施形態では、開閉扉用クッションとしてのフードクッション22が、開閉扉側となるエンジンフード24側に取付けられている。
【0054】
より具体的に説明すると、フードクッション22はフードインナパネル32に形成された貫通孔70の周縁部に取付けられている。
【0055】
図13に示されるように、本実施形態では、エプロンアッパメンバ14の貫通孔36は、フードクッション22が上方から押圧された場合に、フードクッション22が脱落するための逃げ場として作用する。
【0056】
従って、本実施形態においても第1実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0057】
以上に於いては、本発明を特定の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能であることは当業者にとって明らかである。例えば、軸方向孔50はフードクッション22を軸方向(上下方向)に貫通する必要はなく、予め、フードクッション22の突出部22Aが決まっている場合等には、突出部22Aのみに形成してもよい。
【0058】
また、螺子山42の根元部42Aの塑性変形強度を、軸方向孔50の数を変える(長さの異なる中子を使用して成形する)ことにより、フードクッション22の軸方向に沿って変えることで、フードクッション22が軸方向へ移動するのに応じて、衝突体Kがエンジンフード24から受ける力を調整できる構成としてもよい。
【0059】
また、本発明の開閉扉用クッションは、図4に示されるように、ラジエータサポートアッパ20の車幅方向両端上部に取付けられた強閉対策用のフードクッション62にも適用可能である。
【0060】
また、本発明の開閉扉用クッションは、エンジンフード24に限定されず、ラゲージドア、バックドア、スライドドア等の他の開閉蓋に適用可能であり、自動車以外の車体の開閉扉や車体以外の開閉蓋にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】図4の1−1断面線に沿った拡大断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションの変形状態を示す図1に対応する断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションを示す車体前方斜め上方から見た分解斜視図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションが適用された車体前部を示す車体斜め前方から見た斜視図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る開閉扉用クッションにおけるフードのストロークSと、フードクッションからフードが受ける力Fとの関係を示すグラフである。
【図6】本発明の第2実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図3に対応する分解斜視図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図3に対応する分解斜視図である。
【図8】本発明の第4実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図3に対応する分解斜視図である。
【図9】本発明の第5実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図10】本発明の第5実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図3に対応する分解斜視図である。
【図11】本発明の第6実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図12】本発明の第7実施形態に係る開閉扉用クッションを示す図1に対応する断面図である。
【図13】本発明の第7実施形態に係る開閉扉用クッションの変形状態を示す図12に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0062】
14 エプロンアッパメンバ
14A エプロンアッパメンバの上壁部
14B エプロンアッパメンバの上壁部の前部(取付部)
22 フードクッション(開閉扉用クッション)
22A フードクッションの突出部
24 エンジンフード(開閉扉)
36 孔
40 螺子溝
42 螺子山
42A 螺子山の根元部
50 軸方向孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉扉及び前記開閉扉で閉塞される部位の何れか一方に設けられた有孔の取付部に螺合され、この螺合量を変えることで前記取付部からの突出部の突出高さを調整できると共に、前記突出部で前記開閉扉及び前記開閉扉で閉塞される部位の何れか他方を弾性的に支持する開閉扉用クッションにおいて、
前記突出部の外周面に形成された螺子山の根元部に、前記螺子山の全周に渡って略均等の間隔で形成されており、少なくとも軸線方向の一方の端部側が開口されて他方の端部側に向かい、且つ同一直線上に形成された複数の軸方向孔を有する開閉扉用クッション。
【請求項2】
前記軸方向孔は、前記螺子山の根元部に形成されると共に、前記突出部を軸線方向に見た場合に、前記突出部の周方向に沿った長孔であることを特徴とする請求項1に記載の開閉扉用クッション。
【請求項1】
開閉扉及び前記開閉扉で閉塞される部位の何れか一方に設けられた有孔の取付部に螺合され、この螺合量を変えることで前記取付部からの突出部の突出高さを調整できると共に、前記突出部で前記開閉扉及び前記開閉扉で閉塞される部位の何れか他方を弾性的に支持する開閉扉用クッションにおいて、
前記突出部の外周面に形成された螺子山の根元部に、前記螺子山の全周に渡って略均等の間隔で形成されており、少なくとも軸線方向の一方の端部側が開口されて他方の端部側に向かい、且つ同一直線上に形成された複数の軸方向孔を有する開閉扉用クッション。
【請求項2】
前記軸方向孔は、前記螺子山の根元部に形成されると共に、前記突出部を軸線方向に見た場合に、前記突出部の周方向に沿った長孔であることを特徴とする請求項1に記載の開閉扉用クッション。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−155490(P2010−155490A)
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−333770(P2008−333770)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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