説明

防火断熱構造体及びその施工方法

【課題】ウレタンフォームに匹敵する断熱性を有するとともに、優れた防火性を有する防火断熱構造体を提供する。
【解決手段】基材に対し、少なくとも断熱材層及び防火断熱材層が順に積層された構造を有する防火断熱構造体であって、(1)前記断熱材層が、セメント、無機質軽量骨材、発泡有機樹脂粉粒体及び有機バインダーを含有し、かつ、前記発泡有機樹脂粉粒体が5重量%以上含まれる断熱材組成物から形成されたものであり、(2)前記防火断熱材層が、セメント、無機質軽量骨材、発泡有機樹脂粉粒体及び有機バインダーを含有し、かつ、前記発泡有機樹脂粉粒体が0重量%以上5重量%未満含まれる防火断熱材組成物から形成されたものである、ことを特徴とする防火断熱構造体に係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の防火断熱構造体及びその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物を構成する外壁、屋根等の部材においては、その断熱性能を高めるため、屋内側に断熱材が施工されている。このような断熱層を形成させるための材料としては、ウレタンフォーム、フェノールフォーム、セルロースファイバー等の有機材料が用いられている。この中でも、ウレタンフォームは、その熱伝導率が約0.02W/(m・K)であり、断熱性に優れていること、比較的低コストで施工することができること等の特徴を有することから頻繁に用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2等)。
【特許文献1】特開平7−25975号公報
【特許文献2】特開2000−53742号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ウレタンフォームのような有機断熱材は火災等によって燃焼し易いという欠点がある。そのため、一旦ウレタンフォームに着火した場合には、瞬時に燃え広がる現象(いわゆる暴燃)が生じるおそれがある。暴燃が発生した場合には、消火が困難な状態となり、深刻な事態を招く。
【0004】
本発明は、このような点に鑑みなされたものであり、ウレタンフォームに匹敵する断熱性を有するとともに、優れた防火性を有する防火断熱構造体を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、かかる従来技術の問題点を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の断熱材層と特定の防火断熱材層とを積層した防火断熱構造体が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の防火断熱構造体及びその施工方法に係る。
【0007】
1. 基材に対し、少なくとも断熱材層及び防火断熱材層が順に積層された構造を有する防火断熱構造体であって、
(1)前記断熱材層が、セメント、無機質軽量骨材、発泡有機樹脂粉粒体及び有機バインダーを含有し、かつ、前記発泡有機樹脂粉粒体が5重量%以上含まれる断熱材組成物から形成されたものであり、
(2)前記防火断熱材層が、セメント、無機質軽量骨材、発泡有機樹脂粉粒体及び有機バインダーを含有し、かつ、前記発泡有機樹脂粉粒体が0重量%以上5重量%未満含まれる防火断熱材組成物から形成されたものである、
ことを特徴とする防火断熱構造体。
【0008】
2. 前記断熱材組成物が、セメント100重量部に対し、無機質軽量骨材5重量部以上300重量部以下、有機バインダー0.5重量部以上50重量部以下、発泡有機樹脂粉粒体5重量部以上を含む前記項1に記載の防火断熱構造体。
【0009】
3. 前記防火断熱材組成物が、セメント100重量部に対し、無機質軽量骨材5重量部以上300重量部以下、有機バインダー0.5重量部以上50重量部以下、発泡有機樹脂粉粒体0重量部以上23重量部未満を含む前記項1又は2に記載の防火断熱構造体。
【0010】
4. 基材に対し、セメント、無機質軽量骨材、発泡有機樹脂粉粒体及び有機バインダーを含有し、かつ、前記発泡有機樹脂粉粒体が5重量%以上含まれる断熱材組成物を用いて断熱材層を形成し、次いでセメント、無機質軽量骨材、発泡有機樹脂粉粒体及び有機バインダーを含有し、かつ、前記発泡有機樹脂粉粒体が0重量%以上5重量%未満含まれる防火断熱材組成物を用いて前記断熱材層の上に防火断熱材層を形成する工程を有することを特徴とする防火断熱構造体の施工方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の防火断熱構造体は、基材に対して断熱材層及び防火断熱材層が順に積層された構造を有することから、ウレタンフォームに匹敵する断熱性を有するとともに、優れた防火性を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
1.防火断熱構造体
本発明の防火断熱構造体は、基材に対し、少なくとも断熱材層及び防火断熱材層が順に積層された構造を有する防火断熱構造体であって、
(1)前記断熱材層が、セメント、無機質軽量骨材、発泡有機樹脂粉粒体及び有機バインダーを含有し、かつ、前記発泡有機樹脂粉粒体が5重量%以上含まれる断熱材組成物から形成されたものであり、
(2)前記防火断熱材層が、セメント、無機質軽量骨材、発泡有機樹脂粉粒体及び有機バインダーを含有し、かつ、前記発泡有機樹脂粉粒体が0重量%以上5重量%未満含まれる防火断熱材組成物から形成されたものである、
ことを特徴とする。
【0013】
本発明の防火断熱構造体は、基材に対し、少なくとも断熱材層及び防火断熱材層が順に積層された構造を有する。すなわち、基材に近い順に断熱材層及び防火断熱材層が順に積層されていれば良い。本発明構造体は、かかる構造を有する限り、3層以上の構成となっても良い。
【0014】
基材
基材としては特に限定されず、建築物(躯体)を構成する基材として公知のものを用いることもできる。例えば、コンクリート、モルタル、軽量モルタル、軽量コンクリート、けい酸カルシウム板、ALC板、石膏ボード、スレート板、押出し成形板、窯業系サイディング材、金属系サイディング材、プラスチック系サイディング材、各種合板等が挙げられる。また、粘土瓦、スレート瓦、プレスセメント瓦、コンクリート瓦、金属系屋根材等も挙げられる。これらの材料を2種以上組み合わせてなる複合型の基材として用いることもできる。
【0015】
基材の熱貫流率は特に限定されないが、通常1W/(m・K)以上、好ましくは3〜8W/(m・K)程度である。本発明の断熱構造は、このような熱貫流率を有する基材に対して好適に適用できるほか、熱貫流率7W/(m・K)以上という高い熱貫流率を有する基材に対しても適用できる。
【0016】
なお、本明細書における熱貫流率は、住宅金融公庫監修「木造住宅工事共通仕様書(解説付)」の付録4「熱貫流率の計算方法」に基づくものである。具体的には、熱貫流率は、以下の手順に従って算出される。
1)式1より、部材の熱伝導率及び厚さから熱低抗を算出する。
2)式2より、部材の熱抵抗及び空気の熱伝達抵抗から熱貫流抵抗を算出する。
3)式3より、熱貫流抵抗から熱貫流率を算出する。
*式1:熱抵抗(m・K/W)=厚さ(m)/熱伝導率(W/(m・K))
*式2:熱貫流抵抗(m・K/W)=屋内側空気の熱伝達抵抗(m・K/W)+部材の熱抵抗(m・K/W)+屋外側空気の熱伝達抵抗(m・K/W)
*式3:熱貫流率(W/(m・K))=1/熱貫流抵抗(m・K/W)
(但し、屋内側空気の熱伝達抵抗を0.09(m・K/W)とし、屋外側空気の熱伝達抵抗を0.04(m・K/W)とする)。
【0017】
断熱材層
断熱材層は、セメント、無機質軽量骨材、発泡有機樹脂粉粒体及び有機バインダーを含有し、かつ、前記発泡有機樹脂粉粒体が5重量%以上含まれる断熱材組成物から形成される。
【0018】
断熱材層の形成は、断熱材組成物を用い、例えばスプレー(吹き付け)、コテ等の公知の方法に従って実施することができる。特に、本発明では、後記の施工方法に従って実施することが望ましい。
【0019】
断熱材層の厚みは、所望の断熱性等に応じて適宜設定することができるが、通常10〜50mm、好ましくは20〜40mmとすれば良い。また、防火断熱材層との厚さの比率は、断熱材層:防火断熱材層=1:0.05〜1程度(好ましくは1:0.1〜0.5程度)とすれば良い。
【0020】
断熱材層の比重は限定的でなく、通常は0.3g/cm以下、好ましくは0.2g/cm以下、より好ましくは0.1g/cm以下とすれば良い。かかる比重は、例えば発泡有機樹脂粉粒体の粒径、含有量等によって制御することができる。
【0021】
断熱材層は、一般的には0.05(W/(m・K))以下、特に0.04(W/(m・K))以下の熱伝導率を有することが好ましい。このような熱伝導率に設定することにより、優れた断熱効果を得ることができる。かかる熱伝導率は、下記の成分を配合することによって達成することができる。
【0022】
また、断熱材層は、ISO5660に規定される発熱性試験において、加熱強度50kW/m、加熱時間5分の条件下における総発熱量が8MJ/m以下であることが望ましい。特に、断熱材層は、ISO5660に規定される発熱性試験において、加熱強度50kW/m、加熱時間10分の条件下における総発熱量が8MJ/m以下であることがより望ましい。即ち、断熱材層は、平成12年建設省告示第1402号の難燃材料としての性能、更には平成12年建設省告示第1401号の準不燃材料としての性能を満足することが望ましい。
【0023】
断熱材組成物は、具体的には下記に示す成分を均一に混合することにより得ることができる。混合は、混合機、ニーダー等の公知の装置を用いて実施することができる。混合に際し、必要に応じて水を配合することもできる。水の配合量は限定的でないが、通常はセメント100重量部に対して100〜1500重量部とすれば良い。
【0024】
(セメント)
セメントは特に限定されず、公知のもの又は市販品を使用できる。例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント等のポルトランドセメントのほか、アルミナセメント、超速硬セメント、膨張セメント、酸性リン酸塩セメント、シリカセメント、高炉セメント、フライアッシュセメント、キーンスセメント、メーソンリーセメント等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。これらの中でも、ポルトランドセメントが好ましい。より具体的には、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメントの少なくとも1種が好ましい。
【0025】
(無機質軽量骨材)
無機質軽量骨材としては特に限定されない。例えば、パーライト、膨張頁岩、膨張バーミキュライト、軽石、シラスバルーン、中空ガラスバルーン、ALC粉砕物、アルミノシリケート発泡体等が挙げられる。
【0026】
無機質軽量骨材は、かさ比重が0.05〜0.15であることが好ましい。このような範囲の無機質軽量骨材を用いることにより、高軽量化、高断熱化をより効果的に達成することができる。
【0027】
無機質軽量骨材の平均粒径は、所望の断熱性、強度等に応じて適宜決定できる。通常は平均粒子径0.05〜5mm、好ましくは0.1〜3mm程度である。かさ比重が小さすぎると吹付けた材料が垂れやすく厚付けが困難である。また、形成された耐熱断熱材層にクラックが生じやすくなる。かさ比重が大きすぎると取り扱い時の潰れに対しては強いが、混練時点で大幅な軽量化を図ることが困難となる。
【0028】
無機質軽量骨材は、セメント100重量部に対して、5〜300重量部とすることが好ましい。かかる範囲内に規定することにより、優れた断熱性、強度等が得られる。さらに軽量化、強度等の目的からセメント100重量部に対して、10〜200重量部、30〜150重量部とすることが好ましい。無機質軽量骨材が少なすぎると断熱効果、軽量効果ともに不十分になるおそれがある。また、無機軽量骨材が多すぎると断熱材の強度が極端に弱いものとなるおそれがある。
【0029】
(有機バインダー)
有機バインダーとしては、公知の樹脂類、ゴム類等を含むものが使用できる。樹脂類としては、例えばアクリル樹脂、ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、プロピオン酸ビニル樹脂、バーサチック酸ビニル樹脂、アクリル酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、バイオガム、ガラクトマンナン誘導体、アルギン酸及びその誘導体、ゼラチン、カゼイン及びアルブミン並びにこれらの誘導体、セルロース及びセルロース誘導体等が挙げられる。ゴム類としては、例えば、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0030】
このような有機バインダーは、いずれの形態でも使用できる。例えば、粉末状は勿論、水溶液、エマルジョン等の状態でも使用できる。いずれの形態でも、公知のもの又は市販品が使用できる。粉末状の有機バインダーでは、現場で水と混合する形態の方が現場での作業効率が良いことから、再乳化型粉末タイプが好ましい。
【0031】
有機バインダーの含有量は、セメント100重量部に対して固形分で0.5〜50重量部とすることが好ましい。この中でも、1〜30重量部がより好ましい。かかる範囲内に規定することにより、より優れた断熱性、強度等が得られる。
【0032】
(発泡有機樹脂粉粒体)
発泡有機樹脂粉粒体は、個々の粉粒体中に気孔を有するものであれば良い。発泡有機樹脂粉粒体のかさ密度としては、通常0.08g/cm以下であり、好ましくは0.03g/cm以下、より好ましくは0.015g/cm以下、最も好ましくは0.009g/cm以下である。
【0033】
発泡有機樹脂粉粒体を構成する発泡有機樹脂は特に限定されない。例えば、発泡スチロール、発泡フェノール、発泡ポリエチレン、発泡ポリプロピレン、発泡ポリ塩化ビニル等の公知の発泡有機樹脂を使用できる。これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。これらの中でも、特に発泡スチロールが好ましい。
【0034】
発泡有機樹脂粉粒体の粒子径は、所望の断熱性、発泡有機樹脂の種類等に応じて適宜設定できる。通常は平均粒径1〜5mm程度である。上記粉粒体としては、発泡有機樹脂を粉砕したものも好適に使用できる。例えば、発泡スチロールを破砕して得られる粉粒体も使用できる。発泡スチロール等の廃棄物の破砕物を使用することもでき、この場合には廃棄物の有効利用にも貢献できる。
【0035】
発泡有機樹脂粉粒体としては、予め難燃処理したものを使用しても良い。難燃処理方法は特に限定されず、例えば、アルコキシシラン化合物、珪酸塩化合物、難燃処理剤等を粉粒体にコーティングする方法、粉粒体に吸着させる方法等が挙げられる。
【0036】
アルコキシシラン化合物としては限定的でなく、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン等が挙げられる。
【0037】
珪酸塩化合物も特に限定されず、例えば珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウム等のほか、市販の水ガラス等も挙げられる。
【0038】
難燃処理剤も特に限定されず、例えばトリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート、ジフェニルオクチルフォスフェート、トリ(β−クロロエチル)フォスフェート、トリブチルフォスフェート、トリ(ジクロロプロピル)フォスフェート、トリフェニルフォスフェート、トリ(ジブロモプロピル)フォスフェート、クロロフォスフォネート、ブロモフォスフォネート、ジエチル−N, N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノメチルフォスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルフォスフォネート等の有機リン系化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;テトラブロモビスフェノールA、デカブロモジフェニルオキサイド、ヘキサブロモシクロドデカン、トリブロモフェノール、エチレンビステトラブロモフタルイミド、エチレンビスペンタブロモジフェニル等の臭素化合物:三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム等のリン化合物;ホウ酸亜鉛、ホウ酸ナトリウム、水酸化アルミニウム等の無機質化合物等が挙げられる。
【0039】
上記アルコキシシラン化合物、珪酸塩化合物、難燃処理剤等は、1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0040】
難燃処理剤は、必要に応じて、水又は他の適当な溶媒に溶解又は分散させ、その溶液又は分散液を粉粒体に付与すれば良い。上記溶液又は分散液にアクリル系樹脂等のバインダーを適宜配合しても良い。上記溶液又は分散液を付与後は、乾燥又は必要により熱処理すれば良い。これにより難燃処理できる。難燃処理剤の付与量は、所望の難燃性、粉粒体の種類等に応じて適宜設定できる。
【0041】
発泡有機樹脂粉粒体の含有量は、組成物中5重量%以上とし、好ましくは6重量%以上とする。発泡有機樹脂粉粒体を上記範囲内に設定することにより、優れた断熱効果を発揮することができる。
【0042】
また、発泡有機樹脂粉粒体のセメントに対する割合は、セメント100重量部に対して5重量部以上、特に5重量部以上150重量部以下、さらには6重量部以上100重量部以下とすることが好ましい。セメントに対する割合を上記範囲内に設定することによって、より優れた断熱性及び強度が発現される。
【0043】
(断熱材組成物に配合できるその他の添加剤)
さらに断熱材組成物には、セメント、無機質軽量骨材、有機バインダー、発泡有機樹脂粉粒体のほかに、必要に応じて繊維、粘性調整剤、硬化促進剤、減水剤、界面活性剤、難燃剤、消泡剤、造膜助剤、針状無機化合物粉末等の添加剤を配合できる。
【0044】
繊 維
繊維としては、例えばアクリル繊維、アセテート繊維、アラミド繊維、銅アンモニア繊維(キュプラ)、ナイロン繊維、ノボロイド繊維、パルプ繊維、ビスコースレーヨン、ビニリデン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリクラール繊維、ボリノジック繊維、ポリプロピレン繊維等の有機繊維、炭素繊維、ロックウール、ガラス繊維、シリカ繊維、シリカ−アルミナ繊維、カーボン繊維、炭化珪素繊維等の無機繊維等が挙げられる。この中でも、パルプ繊維は練りこみ時の粘性改良や吹き付け時のタレ止め効果を高めることができる点で好ましい。
【0045】
繊維の含有量は、セメント100重量部に対して、通常1〜50重量部とすることが望ましい。この中でも、2〜30重量部がより好ましい。かかる範囲内に規定することにより、より確実に所定の強度を得ることができる。
【0046】
粘性調整剤
粘性調整剤としては、例えばアロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、タルク、ウンモ、モンモリロン石、バーミキュル石、リョクデイ石、カオリン、パリゴルスカイト、ベントナイト、セリサイト、超微粉シリカ、表面処理炭酸カルシウム、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス、ベンリジデンソルビトール、金属石鹸、酸化ポリエチレン、硫酸エステル系アニオン活性剤、ポリビニルアルコール、ポリアルキレンオキサイド等が挙げられる。
【0047】
これら粘性調整剤は、セメント100重量部に対して、通常0.5〜7重量部、特に1〜5重量部とすることが望ましい。
【0048】
硬化促進剤
硬化促進剤としては、例えばアルミン酸リチウム、アルミン酸ナトリウム、アルミン酸カリウム等のアルカリ金属アルミン酸塩;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸塩;水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩;その他、消石灰、石膏、カルシウムアルミネート等が挙げられる。硬化促進剤の配合により、耐熱断熱材層の硬化が促進できる。
【0049】
硬化促進剤の配合量は耐熱断熱材層の所望の特性に応じて適宜設定すれば良いが、セメント100重量部に対して、通常1〜30重量部、特に2〜20重量部程度とすることが望ましい。
【0050】
減水剤
減水剤としては特に限定されず、例えば、芳香族スルホン酸系減水剤、ポリカルボン酸系減水剤、リグニンスルホン系減水剤、メラミン系減水剤等が挙げられる。これらは公知のもの又は市販品が使用できる。
【0051】
減水剤の配合量は耐熱断熱材層の所望の特性に応じて適宜設定すれば良いが、セメント100重量部に対して0.05〜5重量部、特に0.1〜4重量部程度とすることが望ましい。
【0052】
界面活性剤
界面活性剤としては特に限定されず、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤の添加により、適度な空気連行性が付与され、吹き付け作業性を改善することができる。
【0053】
界面活性剤の配合量は耐熱断熱材層の所望の特性に応じて適宜設定すれば良いが、セメント100重量部に対して0.01〜5重量部、特に0.02〜2重量部程度とすることが望ましい。
【0054】
難燃剤
難燃剤としては特に限定されない。例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤等が使用できる。ハロゲン難燃剤としては、例えば、テトラブロモビスフェノールA、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルオキサイド等が挙げられる。リン系難燃剤としては、例えば、リン酸アンモニウム、トリクレジルホスフェート、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート等が挙げられる。無機系難燃剤としては、例えば、赤リン、酸化スズ、三酸化アンチモン、水酸化ジルコニウム、メタホウ酸バリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。難燃剤の添加により、耐熱断熱材層の難燃化が促進される。
【0055】
難燃剤の配合量は耐熱断熱材層の所望の特性に応じて適宜設定すれば良いが、セメント100重量部に対して通常0.05〜30重量部、特に0.1〜20重量部程度とすることが望ましい。
【0056】
消泡剤
消泡剤としては特に限定されず、例えば、鉱物油系消泡剤、シリコーン系消泡剤等が挙げられる。消泡剤の添加により、過度の空気連行を抑制し、強度低下等を防止することができる。
【0057】
消泡剤の配合量は耐熱断熱材層の所望の特性に応じて適宜設定すれば良いが、セメント100重量部に対して通常0.01〜5重量部、特に0.02〜2重量部程度とすることが望ましい。
【0058】
造膜助剤
造膜助剤としては特に限定されず、例えばアルコール系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤等が挙げられる。造膜助剤の添加により、有機バインダーの造膜性を高め、強度を高めることができる。
【0059】
造膜助剤の配合量は耐熱断熱材層の所望の特性に応じて適宜設定すれば良いが、セメント100重量部に対して通常0.01〜5重量部、特に0.02〜2重量部程度とすることが望ましい。
【0060】
針状無機化合物粉末
針状無機化合物粉末を配合することにより、より高い強度を付与できる。かかる粉末としては、例えば、針状炭酸カルシウムが好ましい。粉末の添加量は特に限定されないが、セメント100重量部に対して通常1〜20重量部程度とすることが望ましい。
【0061】
防火断熱材層
防火断熱材層は、セメント、無機質軽量骨材、発泡有機樹脂粉粒体及び有機バインダーを含有し、かつ、前記発泡有機樹脂粉粒体が0重量%以上5重量%未満含まれる防火断熱材組成物から形成されたものである。このような組成物によって得られる防火断熱材層は、防火性と断熱性を有する。防火断熱材層を設けることによって、通常時は、優れた断熱性を示すとともに、火災時等には断熱材層の燃焼を抑え、優れた防火性を得ることができる。
【0062】
防火断熱材層の形成は、防火断熱材組成物を用い、例えばスプレー(吹き付け)、コテ等の公知の方法に従って実施することができる。特に、本発明では、後記の施工方法に従って実施することが望ましい。
【0063】
防火断熱材層の厚みは、所望の断熱性等に応じて適宜設定することができるが、通常3〜10mm、好ましくは4〜8mmとすれば良い。
【0064】
防火断熱材層の比重は限定的でなく、通常は0.3g/cm以下、好ましくは0.2g/cm以下、より好ましくは0.1g/cm以下とすれば良い。かかる比重は、例えば発泡有機樹脂粉粒体の粒径、含有量等によって制御することができる。
【0065】
防火断熱材層の熱伝導率は、0.08(W/(m・K))以下、さらには0.07(W/(m・K))以下、さらには0.06(W/(m・K))以下であるものが好ましい。かかる防火断熱材層は、通常時において優れた断熱性を示すことができる。
【0066】
また、防火断熱材層は、ISO5660に規定される発熱性試験において、加熱強度50kW/m、加熱時間10分の条件下における総発熱量が8MJ/m以下であることが望ましい。特に、防火断熱材層は、ISO5660に規定される発熱性試験において、加熱強度50kW/m、加熱時間20分の条件下における総発熱量が8MJ/m以下であることがより望ましい。即ち、断熱材層は、平成12年建設省告示第1401号の準不燃材料としての性能、更には平成12年建設省告示第1400号の不燃材料としての性能を満足することが望ましい。
【0067】
防火断熱材組成物は、具体的には下記に示す成分を均一に混合することにより得ることができる。混合は、混合機、ニーダー等の公知の装置を用いて実施することができる。混合に際し、必要に応じて水を配合することもできる。水の配合量は限定的でないが、通常はセメント100重量部に対して100〜1500重量部とすれば良い。
【0068】
防火断熱材組成物を構成するセメント、無機質軽量骨材、有機バインダー、発泡有機樹脂粉粒体等としては、前記の断熱材組成物で使用されるものと同様の材料を用いることができる。
【0069】
無機質軽量骨材の含有量は、セメント100重量部に対して、無機質軽量骨材5〜300重量部とすることが好ましい。かかる範囲内に規定することにより、優れた断熱性、強度等が得られる。さらに、軽量化、高強度化等の見地より、セメント100重量部に対して、20〜200重量部、特に50〜150重量部とすることが好ましい。5重量部より少ない場合には断熱効果、軽量効果ともに不充分なものになるおそれがある。また、300重量部より多いと形成される防火断熱材層の強度が弱くなるおそれがある。
【0070】
有機バインダーの含有量は、セメント100重量部に対して固形分で0.5〜50重量部とすることが好ましい。この中でも、1〜30重量部とすることがより好ましい。かかる範囲内に規定することにより、より優れた断熱性、強度等が得られる。
【0071】
発泡有機樹脂粉粒体の含有量は、組成物中0重量%以上5重量%未満とし、好ましくは0重量%以上4重量%以下、さらに好ましくは0重量%以上2重量%以下、より好ましくは0重量%とする。発泡有機樹脂粉粒体を上記範囲内に設定することにより、優れた断熱効果を発揮することができる。
【0072】
また、発泡有機樹脂粉粒体のセメントに対する割合は、セメント100重量部に対して0重量部以上23重量部未満、特に0重量部以上18重量部以下、さらに好ましくは0重量部以上9重量部以下、より好ましくは0重量部とすることが好ましい。セメントに対する割合を上記範囲内に設定することによって、断熱性と防火性をより向上させることができる。
【0073】
(防火断熱材組成物に配合できるその他の添加剤)
さらに、防火断熱材組成物には、セメント、無機質軽量骨材、有機バインダー、発泡有機樹脂粉粒体のほかに、必要に応じて、水化度の大きい物質のほか、上述した繊維、粘性調整剤、硬化促進剤、減水剤、界面活性剤、難燃剤、消泡剤、造膜助剤、針状無機化合物粉末等の添加剤を配合できる。
【0074】
水化度の大きい物質
本発明の防火材層には、水化度の大きい物質を含有することが好ましい。水化度とは、100℃で加熱された物体がそれ以上の温度に加熱された場合に、更に多量の水を放出する程度をいう。本発明における水化度の大きい物質とは、100℃の恒温時点を基準とし、600℃加熱により約15重量%以上が脱水し、減量する物質をいう。なお、該物質に含有されている水の形態としては、結晶水の他、吸着水も含み、一般に該物質水和物ともいう。
【0075】
水化度の大きい物質としては、例えば水酸化アルミニウム、ギプサイト鉱物、ベーマイト、ダイアスポア等のアルミニウム酸化物の水和物、水酸化マグネシウム、ブルーサイト、アタパルジャイト等のマグネシウム酸化物の水和物、チャバザイト、ビューランダイト、モルデナイト等の沸石系物質、アロフェン、ハロイサイド、未膨張バーミキュライト等のシリカ−アルミナ系物質、サチンホワイト、エトリンジャイト等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0076】
これらの中で、アルミニウム酸化物の水和物とマグネシウム酸化物の水和物が防火性に優れているので好適に用いられる。これらの物質は、粉状や粒状の他、種々の形態で使用できる。
【0077】
繊維
繊維の含有量は、セメント100重量部に対して、通常1〜50重量部である。この中でも、2〜30重量部が好ましい。かかる範囲内に規定することにより、十分な強度が得られる。
【0078】
粘性調整剤
粘性調整剤の混合量は、セメント100重量部に対して、通常0.5〜7重量部、好ましくは1〜5重量部とすれば良い。
【0079】
硬化促進剤
硬化促進剤の配合量は耐熱断熱材層の所望の特性に応じて適宜設定すれば良いが、セメント100重量部に対して、通常1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部程度である。
【0080】
減水剤
減水剤の配合量は耐熱断熱材層の所望の特性に応じて適宜設定すれば良いが、セメント100重量部に対して、通常0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜4重量部程度である。
【0081】
界面活性剤
界面活性剤の配合量は耐熱断熱材層の所望の特性に応じて適宜設定すれば良いが、セメント100重量部に対して、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.02〜2重量部程度である。
【0082】
難燃剤
難燃剤の配合量は耐熱断熱材層の所望の特性に応じて適宜設定すれば良いが、セメント100重量部に対して、通常0.05〜30重量部、好ましくは0.1〜20重量部程度である。
【0083】
消泡剤
消泡剤の配合量は耐熱断熱材層の所望の特性に応じて適宜設定すれば良いが、セメント100重量部に対して、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.02〜2重量部程度である。
【0084】
造膜助剤
造膜助剤の配合量は耐熱断熱材層の所望の特性に応じて適宜設定すれば良いが、セメント100重量部に対して、通常0.01〜5重量部、好ましくは0.02〜2重量部程度である。
【0085】
針状無機化合物粉末
針状無機化合物粉末の添加量は特に限定されないが、セメント100重量部に対して、通常1〜20重量部程度である。
【0086】
2.防火断熱構造体の施工方法
本発明の施工方法は、基材に対し、セメント、無機質軽量骨材、発泡有機樹脂粉粒体及び有機バインダーを含有し、かつ、前記発泡有機樹脂粉粒体が5重量%以上含まれる断熱材組成物を用いて断熱材層を形成し、次いでセメント、無機質軽量骨材、発泡有機樹脂粉粒体及び有機バインダーを含有し、かつ、前記発泡有機樹脂粉粒体が0重量%以上5重量%未満含まれる防火断熱材組成物を用いて前記断熱材層の上に防火断熱材層を形成することを特徴とする。
【0087】
防火断熱構造体の形成方法は、湿式、乾式等特に限定されないが、本発明では、湿式により簡便に形成できることが、特徴である。
【0088】
調製された断熱材組成物及び防火断熱材組成物を用いて各層を形成する方法としては、公知の方法に従えば良い。例えば、スネーク式圧送ポンプ等でポンプ圧送し、吹き付けガン等を通じて基材に吹き付けて被着させれば良い。また、コテ等を用いて基材に塗り付けて被着させても良い。もちろん、断熱材層、防火断熱材層の形成方法としては、吹き付けやコテ塗り以外の方法も採用できる。
【0089】
本発明では、断熱材層及び防火断熱材層ともに、互いに類似したセメント系組成を採用しているため、断熱材層と防火断熱材層との密着性に特に優れている。
【0090】
本発明の防火断熱構造体は、基材を保護するように積層し、かつ、断熱材層の燃焼を抑えるように防火断熱材層が積層されている構造であれば特に限定されない。
【0091】
また、防火断熱構造体は、ISO5660に規定される発熱性試験において、加熱強度50kW/m、加熱時間10分の条件下における総発熱量が8MJ/m以下であることが望ましい。特に、防火断熱構造体は、ISO5660に規定される発熱性試験において、加熱強度50kW/m、加熱時間20分の条件下における総発熱量が8MJ/m以下であることがより望ましい。すなわち、断熱材層は、更には平成12年建設省告示第1401号の準不燃材料、さらには平成12年建設省告示第1400号の不燃材料としての性能を満足することが望ましい。
【0092】
また、必要に応じて、このように積層された防火断熱構造体の最表面には、本発明の効果を損なわない程度に、耐汚染性、耐久性、意匠性等を付与したコーティング膜を積層しても良い。
【実施例】
【0093】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。但し、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0094】
(断熱材層サンプル、及び防火断熱材層サンプルの作製)
下記表1に示す配合に従って原料を均一に混合し、断熱材組成物(配合例1)、防火断熱材組成物(配合例2、3)を調製した。表1に示す各原料(水を除く)の配合量は、固形分量を示す。
【0095】
【表1】

なお、表1に示す原料としては、次のものを用いた。
・セメント:普通ポルトランドセメント
・無機質軽量骨材1:シラスバルーン(平均粒径200μm、かさ比重0.07)
・無機質軽量骨材2:パーライト(平均粒径0.1mm、かさ比重0.055)
・無機質軽量骨材3:ALC粉砕物(平均粒径0.5mm、かさ比重0.10)
・有機バインダー1:酢酸ビニル・アクリル酸エステル共重合エマルジョン(固形分50重量%)
・有機バインダー2:メチルセルロース(2%溶解粘度15000mPa・s(20℃))
・有機発泡樹脂粉粒体:再生発泡スチロール破砕品(平均粒径約3mm、かさ密度0.011g/cm
・繊維:パルプ繊維(平均繊維長約2mm)
・硬化促進剤:石膏
・水化度の大きい物質:水酸化アルミニウム
配合例1における断熱材組成物、配合例2、3における防火断熱材組成物を、それぞれ石膏ボード(厚さ12.5mm)に吹き付け後、乾燥させて1種類の断熱材層(厚さ30mm)、2種類の防火断熱材層(厚さ30mm)を作製した。各断熱材層を99mm×99mm×42.5mmの大きさに切り出して、断熱材層サンプル、防火断熱材層サンプルとした。また、石膏ボード(厚さ12.5mm)に、ウレタンフォーム(厚さ30mm)又はスチレンフォーム(厚さ30mm)を積層し、99mm×99mm×42.5mmのウレタンフォームサンプル、及び99mm×99mm×42.5mmのスチレンフォームサンプルをそれぞれ作製した。
【0096】
次いで、得られたサンプルを試験体として、熱伝導率計(商標名「KemthrmQTM−D3」京都電子工業製)を用いて、熱伝導率(W/(m・K))を測定した。試験結果を下記表2に示す。
【0097】
【表2】

(実施例1)
配合例1で得た断熱材組成物を金属板(厚さ0.6mm、熱貫流率7.7W/(m・K))の片面に吹き付け、23℃で7日間乾燥することにより断熱材層(厚さ30mm)を形成した。次いで、断熱材層の上に、配合例2で得た防火断熱材組成物を吹き付け、23℃で7日間乾燥することにより防火断熱材層(厚さ5mm)を形成し、試験体を得た。このようにして得られた試験体について、下記の試験を実施した。試験結果は表3に示す。
【0098】
(防火性試験)
(防火性試験1)
発熱性試験ISO 5660に規定されるコーンカロリーメーターを用いて防火性を評価した。コーンカロリーメーターとしては「CONE2A」(アトラス製)を用いた。なお、加熱強度は50kW/mとした。この評価は、以下のとおりである。
【0099】
「◎」:加熱時間20分での最高発熱温度が200kW/mを超えず、総発熱量が8MJ/m以下のもの
「○」:加熱時間10分での最高発熱温度が200kW/mを超えず、総発熱量が8MJ/m以下のもの
「△」:加熱時間10分での最高発熱温度が200kW/mを超えず、総発熱量が8MJ/mを超えるもの
「×」:加熱時間10分での最高発熱温度が200kW/m以上であり、総発熱量が8MJ/mを超えるもの
(防火性試験2)
試験体の防火断熱材層側を表面に向けて水平に置き、試験体表面から高さ250mmの位置で、溶接機(BP交流アーク溶接機)を用いて1分間連続して溶接を行った。この評価は、以下のとおりである。
○:着火せず
△:着火はしたが、試験後燃え止まった
×:着火し、試験後も延燃した
(実施例2)
配合例2で得た防火断熱材組成物の代わりに、配合例3で得た防火断熱材組成物を用いた以外は、実施例1と同様の方法で、試験体を得た。なお防火断熱材層の厚さは30mmであった。得られた試験体について、実施例1と同様の試験を実施した。試験結果は表3に示す。
【0100】
(比較例1)
ウレタンフォーム(厚さ30mm)を金属板(厚さ0.6mm、熱貫流率7.7W/(m・K))の片面に貼着し、試験体を得た。得られた試験体について、実施例1と同様の試験を実施した。試験結果は表3に示す。
【0101】
(比較例2)
スチレンフォーム(厚さ30mm)を金属板(厚さ0.6mm、熱貫流率7.7W/(m・K))の片面に貼着し、次いで、スチレンフォームの上に、配合例2で得た防火断熱材組成物を吹き付け、23℃で7日間乾燥することにより防火断熱材層(厚さ5mm)を形成し、試験体を得た。得られた試験体について、実施例1と同様の試験を実施した。試験結果は表3に示す。
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に対し、少なくとも断熱材層及び防火断熱材層が順に積層された構造を有する防火断熱構造体であって、
(1)前記断熱材層が、セメント、無機質軽量骨材、発泡有機樹脂粉粒体及び有機バインダーを含有し、かつ、前記発泡有機樹脂粉粒体が5重量%以上含まれる断熱材組成物から形成されたものであり、
(2)前記防火断熱材層が、セメント、無機質軽量骨材、発泡有機樹脂粉粒体及び有機バインダーを含有し、かつ、前記発泡有機樹脂粉粒体が0重量%以上5重量%未満含まれる防火断熱材組成物から形成されたものである、
ことを特徴とする防火断熱構造体。
【請求項2】
前記断熱材組成物が、セメント100重量部に対し、無機質軽量骨材5重量部以上300重量部以下、有機バインダー0.5重量部以上50重量部以下、発泡有機樹脂粉粒体5重量部以上を含む請求項1に記載の防火断熱構造体。
【請求項3】
前記防火断熱材組成物が、セメント100重量部に対し、無機質軽量骨材5重量部以上300重量部以下、有機バインダー0.5重量部以上50重量部以下、発泡有機樹脂粉粒体0重量部以上23重量部未満を含む請求項1又は2に記載の防火断熱構造体。
【請求項4】
基材に対し、セメント、無機質軽量骨材、発泡有機樹脂粉粒体及び有機バインダーを含有し、かつ、前記発泡有機樹脂粉粒体が5重量%以上含まれる断熱材組成物を用いて断熱材層を形成し、次いでセメント、無機質軽量骨材、発泡有機樹脂粉粒体及び有機バインダーを含有し、かつ、前記発泡有機樹脂粉粒体が0重量%以上5重量%未満含まれる防火断熱材組成物を用いて前記断熱材層の上に防火断熱材層を形成する工程を有することを特徴とする防火断熱構造体の施工方法。

【公開番号】特開2006−35719(P2006−35719A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−221255(P2004−221255)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【上記1名の代理人】
【識別番号】100065215
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 英二
【Fターム(参考)】