説明

防爆形液晶表示装置

【課題】液晶ディスプレイに情報を表示するための回路構成を工夫することで、液晶ディスプレイを収納する容器を本質安全防爆構造とすることができ、比較的大型の液晶ディスプレイを収納する容器の小型化、軽量化及び低コスト化を実現する。
【解決手段】液晶モジュール1は、液晶パネル41と、駆動基板12に実装されて液晶パネル41を駆動データに基づいて駆動するドライバ回路42と、を一体に備えている。液晶制御回路2は、制御基板11に搭載され、画像データ及び電源の入力を受け、信号処理回路51や液晶駆動回路52を含む複数の回路、並びに、電源、複数の回路及びドライバ回路42を接続する複数の接続線を備えている。液晶制御回路2内の複数の接続線のそれぞれに電流・電圧制限回路53〜59を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、危険区域内の電気機器の制御に使用され、電気機器の状態等の情報を表示するディスプレイを備えた防爆形液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
引火性ガス雰囲気等の危険区域内で、電気機器に対して動作条件等を設定入力する際には、電気機器の状態等の情報を参照する必要がある。また、電気機器の現在の設定内容等の情報を確認する必要もある。このような情報を作業者に認識させるために、表示装置が用いられる。表示装置の表示器には、消費電流の小さい液晶ディスプレイが用いられる。
【0003】
ところが、防爆性能を確保するために消費電流を十分に低減するためには、液晶ディスプレイを小型にする必要がある。小型の液晶ディスプレイでは、1度に表示できる情報量が限られ、表示すべき情報量の多いアプリケーションに対応することができない。
【0004】
そこで、比較的大型の液晶パネルを耐圧防爆構造の容器に収納することで、危険区域内でも多量の情報を表示できるようにしたものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−276045号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、比較的大型の液晶ディスプレイを耐圧防爆構造の容器に収納することで、危険区域内でも多量の情報を安全に表示することができるが、容器は大型の液晶ディスプレイを収納した上で堅牢な構造とする必要があり、大型化して重く高価になる問題がある。
【0006】
この発明の目的は、液晶ディスプレイに情報を表示するための回路構成を工夫することで、液晶ディスプレイを収納する容器を耐圧防爆構造よりも簡易な本質安全防爆構造とすることができ、比較的大型の液晶ディスプレイを収納する容器の小型化、軽量化及び低コスト化を実現できる防爆形液晶表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するための手段として、この発明の防爆形液晶表示装置は、液晶モジュール、液晶制御部、容器からなる。液晶モジュールは、液晶パネルと、第1の基板に実装されて液晶パネルを駆動データに基づいて駆動するドライバ回路と、を一体に備えている。液晶制御部は、第2の基板に搭載され、画像データ及び電源の入力を受け、画像データに基づいて駆動データを作成する複数の処理回路、並びに、電源、複数の処理回路及びドライバ回路を接続する複数の接続線を備え、複数の接続線のそれぞれに電流・電圧制限回路を備えている。容器は、液晶モジュール及び液晶制御部を収納し、液晶パネルが内面に対向する窓部を有する。
【0008】
この構成では、ドライバ回路を備えた第1の基板とは別の第2の基板に構成された液晶制御部内で、電源、複数の処理回路及びドライバ回路が電流・電圧制限回路を介して接続される。液晶制御部内の回路に発生する電圧値や接続線を流れる電流値が過大になることがなく、液晶制御部が点火源となることがない。液晶モジュールを構成する基板上の電流・電圧制限回路が削減され、液晶モジュールが大型化することがない。
【0009】
この構成において、第2の基板内で、複数の処理回路のうちで規定電流値又は規定電圧値を越える処理回路を含む範囲に樹脂を充填してもよい。昇圧回路等のように規定電圧値を越える処理回路を含む範囲が樹脂で被覆され、点火源となることが防止されるため、防爆形液晶表示装置を収納する容器を、耐圧防爆構造よりも簡易な本質安全防爆構造とすることができ、容器を小型化、軽量化及び低コスト化することができる。
【0010】
また、第1の基板及び第2の基板を保持する保持部材をさらに備えてもよい。保持部材が第2の基板を第1の基板の背面側に保持することで、液晶表示装置の収納スペースを小さくすることができる。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、液晶制御部内の回路に発生する電圧値や接続線を流れる電流値が過大になることを防止でき、液晶制御部が点火源となることを防止できる。また、液晶モジュールを構成する基板上の電流・電圧制限回路を少なくすることができ、液晶モジュールの大型化を防止できる。これらによって、防爆形液晶表示装置を収納する容器を、耐圧防爆構造よりも簡易な本質安全防爆構造とすることができ、容器の小型化、軽量化及び低コスト化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、この発明の実施形態に係る防爆形液晶表示装置の外観図である。一例として、防爆形液晶表示装置10は、危険区域内に設置されている機器に制御データを設定する際に使用される教示用ペンダントである。
【0013】
防爆形液晶表示装置10は、本質安全防爆構造の容器4内に液晶ディスプレイを収納して構成されている。なお、液晶ディスプレイは、液晶パネル、駆動回路、制御回路及びケースを含むものである。容器4は、本体4Aと裏蓋4Bとからなる。本体4は、前面に窓部4C及びキースイッチ4Dを備えている。窓部4Cは、全面が一例として硬質ガラス板で覆われており、硬質ガラス板の内側面には内部に収納した液晶パネル41が対向する。窓部4Cを覆う部材は、硬質ガラス板に限らず、透明であって液晶パネル41を保護できるものであれば樹脂等の種々の材料を用いることができる。
【0014】
液晶パネル41は、画像データに基づいて機器の動作状態や制御内容等の情報を表示する。窓部4Cには、硬質ガラスに代えて透明タッチパネルを備えることもできる。この場合に、液晶パネル41は、キースイッチの画像を表示する。
【0015】
図2(A)〜(C)は、上記防爆形液晶表示装置における液晶モジュール及び液晶制御部を保持した保持部材の正面図、右側面図及び背面図である。防爆形液晶表示装置10は、容器4内に液晶モジュール1、制御基板11、保持部材3を収納している。
【0016】
液晶モジュール1は、液晶パネル41の背面側に図示しない拡散板を備え、液晶パネル41の側方に図示しない駆動基板(第1の基板)を一体的に備えている。駆動基板には、液晶パネル41を駆動するドライバ回路が実装されている。
【0017】
制御基板11は、この発明の第2の基板であり、プリント基板上にこの発明の液晶制御部(液晶制御回路)を構成する信号処理回路等を実装している。
【0018】
保持部材3は、一例として樹脂製の略薄型矩形を呈する筐体であり、内部に液晶モジュール収納部31を備え、背面に制御基板保持部32が構成されている。液晶モジュール収納部31は、保持部材3の前面に開放した凹部である。制御基板保持部32には、2個の案内片33、及び2個のネジ孔34が形成されている。保持部材3の背面には、案内片33及びネジ孔34の外に、2個のネジ孔35及び4個の連通孔36が形成されている。ネジ孔34,35及び連通孔36は、液晶モジュール収納部31に連通している。
【0019】
液晶モジュール収納部31には、保持部材3の前面側から液晶モジュール1が挿入される。液晶モジュール1は、液晶モジュール収納部31内に挿入された後、保持部材3の前面側から合計4個のネジ39で液晶モジュール収納部31内に固定される。
【0020】
連通孔36には、保持部材3に収納される図示しないバックライト用の配線38が貫通する。配線38は、ネジ37で固定される。
【0021】
制御基板保持部32には、制御基板11が装着される。制御基板11は、上端を案内片33に係止させて位置決めされた後、ネジ孔34に螺合したネジ37によって制御基板保持部32に固定される。
【0022】
保持部材3は、液晶モジュール1及び制御基板11を、互いに平行な状態で制御基板11を液晶モジュール1の背面側に配置して保持する。容器4に収納される部品を薄型に構成することができ、防爆形液晶表示装置10を小型化できる。
【0023】
保持部材3は、必ずしも液晶モジュール1及び制御基板11を互いに平行な状態で保持する必要はない。制御基板11のサイズや形状と容器4内のスペースとに応じて、制御基板11を液晶モジュール1に対して任意の位置及び角度で保持することができる。
【0024】
また、保持部材3の前面側に、制御基板11及び液晶モジュール1をこの順に挿入するようにしてもよい。
【0025】
図3は、上記防爆形液晶表示装置のブロック図である。防爆形液晶表示装置10は、液晶パネル41及びドライバ回路42からなる液晶モジュール1と、液晶制御回路2と、を備えている。
【0026】
液晶モジュール1のドライバ回路42には、液晶制御回路2から駆動データが入力される。ドライバ回路42は、駆動データに基づいて液晶パネル41を駆動する。
【0027】
液晶制御回路2には、信号処理回路51、液晶駆動回路52、電流・電圧制限回路53〜59が含まれる。信号処理回路51には、外部の制御回路で作成された画像信号が入力される。また、外部の電源回路から電源が供給される。信号処理回路51は、入力された画像信号に対してノイズ除去等の所定の処理を施し、駆動データとして液晶モジュール1に供給する。
【0028】
液晶駆動回路52は、図示しないコントラスト調整回路、昇圧回路及びバイアス回路を含む。コントラスト調整回路は、画像信号のコントラストを調整し、調整用データを昇圧回路に供給する。昇圧回路は、入力された電源の電圧値をコントラスト調整回路から入力された調整用データに基づいて必要な電圧に昇圧し、液晶モジュール1及びバイアス回路に供給する。バイアス回路は、液晶パネル41のバイアス電圧を作成し、液晶モジュール1に供給する。
【0029】
ドライバ回路42は、液晶パネル41の駆動データによって特定された画素に昇圧回路から供給された電源を供給する。
【0030】
電流・電圧制限回路53〜59は、信号処理回路51、並びに液晶駆動回路52内のコントラスト調整回路、昇圧回路及びバイアス回路に入出力される信号や電源の電流値及び電圧値を所定以下に制限する。この所定値は、防爆構造の規格上、本質安全防爆構造として認められる電流及び電圧の上限値である。信号や電源の電流値及び電圧値をこの所定値以下に制限することで、危険区域の引火性ガス雰囲気に対する点火源となることがない。
【0031】
図4は、上記防爆形液晶表示装置の電流・電圧制限を表す等価回路図である。液晶モジュール1は、駆動基板12にドライバ回路42を構成する電子部品を実装し、制御基板11に信号処理回路51内のコントラスト制御回路(図示せず。)、バッファ回路(図示せず。)及び画像制御信号処理回路(図示せず。)、並びに液晶駆動回路52内のコントラスト調整回路(図示せず。)、昇圧回路(図示せず。)、バイアス回路(図示せず。)及び電圧調整回路(図示せず。)を構成する電子部品を実装している。制御基板11と駆動基板12とは、例えばフレキシブルケーブル13で接続されている。
【0032】
信号処理回路51は、画像信号用インタフェース(図示せず。)、電源用インタフェース(図示せず。)、コントラスト調整回路及びドライバ回路42に接続されている。昇圧回路は、電源用インタフェース(図示せず。)、コントラスト調整回路、バイアス回路及びドライバ回路42に接続されている。バイアス回路は、電源用インタフェース、昇圧回路及びドライバ回路42に接続されている。制御基板11上には、各回路及びインタフェースを接続する配線パターン(この発明の接続線である。)が形成されている。
【0033】
制御基板11上の配線パターンには、ツェナダイオードと抵抗とからなる電流・電圧制限回路53〜57等が形成されており、各回路及びインタフェース間の配線パターンを経由する信号及び電源の電流値及び電圧値が所定値を越えることのないようにしている。したがって、各回路及びインタフェースに所定値を越える電流や電圧が流入することがなく、各回路及びインタフェースの何れかが点火源となることがない。
【0034】
液晶駆動回路52内の昇圧回路では、設定されたコントラストや画像信号の内容に応じて出力する電源の電流値又は電圧値が所定値を越える可能性があり、昇圧回路に接続されているコントラスト調整回路及びバイアス回路とともに、爆発性ガスに接触しないようにする必要がある。そこで、制御基板11上で液晶駆動回路52を含む範囲71に樹脂を充填する。これによって、昇圧回路から所定値を越える電流等又は電圧値の電源が出力された場合にも、液晶駆動回路52が爆発性ガスに接触しないようにして、点火源となることを確実に防止できる。また、樹脂充填により、電気部品間の距離を空気中の絶縁距離の1/3とすることができ、回路構成を小型化できる。なお、図4に示した範囲71は、樹脂充填作業の容易性をも考慮して、爆発性ガスとの接触を防ぐべき電気部品、及び距離を短縮すべき電気部品を含む範囲よりも大きい範囲に設定されている。
【0035】
この構成では、各回路の入力側及び出力側に電流・電圧制限回路が配置されているため、所定値を越える電流値又は電圧値の電源や信号が回り込みを生じた場合にも、各回路に過大な電流や電圧が入力されることを防止できる。
【0036】
上記の実施形態はいずれも一例であり、この発明はこれらに限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】この発明の実施形態に係る防爆形液晶表示装置の外観図である。
【図2】上記防爆形液晶表示装置における液晶モジュール及び液晶制御部を保持した保持部材の正面図、右側面図及び背面図である。
【図3】上記防爆形液晶表示装置のブロック図である。
【図4】上記防爆形液晶表示装置の回路図である。
【符号の説明】
【0038】
1 液晶モジュール
2 液晶制御回路(液晶制御部)
3 支持部材
4 容器
11 制御基板(第2の基板)
12 駆動基板(第1の基板)
41 液晶パネル
42 ドライバ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶パネルと、第1の基板に実装されて前記液晶パネルを駆動データに基づいて駆動するドライバ回路と、を一体にした液晶モジュールと、
第2の基板に実装され、画像データ及び電源の入力を受け、画像データに基づいて駆動データを作成する複数の処理回路、並びに、前記電源、前記複数の処理回路及び前記ドライバ回路を接続する複数の接続線を備えた液晶制御部と、
前記液晶モジュール及び前記液晶制御部を収納する本質安全防爆構造の容器であって、前記液晶パネルが内面に対向する窓部を有する容器と、を備え、
前記液晶制御部は、前記複数の接続線のそれぞれに電流・電圧制限回路を備えた防爆形液晶表示装置。
【請求項2】
前記第2の基板は、複数の処理回路のうちで規定電流値又は規定電圧値を越える処理回路を含む範囲を樹脂充填した請求項1に記載の防爆形液晶表示装置。
【請求項3】
前記第1の基板及び前記第2の基板を保持する保持部材であって前記第2の基板を前記第1の基板の背面側で保持する保持部材をさらに備えた請求項1又は2に記載の防爆形液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−8857(P2009−8857A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169515(P2007−169515)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000000309)IDEC株式会社 (188)
【Fターム(参考)】