説明

防食被覆で金属表面を被覆する方法

本発明は、導電性ポリマーを含む防食組成物で金属表面を被覆する方法であって、その組成物が、概ねまたは完全に粒状の少なくとも一つの導電性ポリマーとバインダー系を含む分散体であること、およびその導電性ポリマーが、防食可動性アニオンが荷電した、ポリフェニレン、ポリフラン、ポリイミダゾール、ポリフェナンスレン、ポリピロール、ポリチオフェンおよび/またはポリチオフェニレンに基づく少なくとも一つのポリマーであることを特徴とする方法に関する。選択的に、金属表面を、まず第一に、粒状の導電性ポリマーを基礎とする分散体で被覆し、次に、バインダー系を含む組成物で被覆してよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にそのシェル層に導電性ポリマーを含む粒子で金属表面を被覆する方法、前記被覆のための組成物、導電性被覆で被覆された物質、および、このように被覆された物質の使用に関する。
【0002】
導電性ポリマーの部類の多くの物質、特に、ポリアニリンに基づく物質が、数年来知られている。他の導電性物質を添加することなく使用することができる、導電性ポリマーを用いる多くの化学系が開発されてきた。これに関して、比較的良好な導電性を達成するために、種々の構成成分を添加しなくてはならず、特定のプロセスステップを実施しなくてはならない。多くの用途において、導電性ポリマーからなる中実層または薄い閉鎖層が、例えば金属表面の腐食防止において、効果的であると証明されていなかった。
【0003】
しかしながら、有機マトリクス中への導電性ポリマーの導入は、せん断力による混合または湿潤(所謂摩砕と呼ばれることが多い)中にマトリクス中の導電性ポリマーの混合および分散を増強する粒子を導入することなく達成するのは困難である。実際、コアを用いることなく製造されると共に純導電性ポリマーの被覆と概して同じ特性を示す導電性ポリマーの粉末は、混入するのがより困難であり、有機被覆の組成物の構成成分中での混合度がより劣る。さらに、これらの粉末は、しばしば、繊維状接着性構造体からなるので、容易に合体することができる。
【0004】
多くのタイプの無機および有機粒子、特に顔料が理論的に知られており、それらは、被覆された状態で用いられ、例えば、種々のタイプの顔料のように酸化物カバーリングで被覆されている。
【0005】
反応して導電性ポリマーを形成することができるモノマーおよび/またはオリゴマーを含む混合物の適用は、多くの有機コア材料が溶媒により溶解または分解され得るので、粒子コアの上および/または中において問題を引き起こし得る。これは、無機粒子を、有機粒子と同様に順応性良く被覆の特性、例えばガラス転移温度Tgおよび混合物中での濃度に適合させることができず、また、例えば架橋および/またはグラフトにより表面特性に関して化学的に最適化することができないからである。さらに、無機粒子の場合、粒径分布は、有機粒子におけるように広く変化することはできず、特に分布の幅が狭いが、粒子形状についても広範囲に変化することはできない。さらに、有機粒子は、しばしば化学的に良好に有機バインダーに調和し、これは有機バインダーマトリクスに必要とされることがある。これとは別に、無機粒子は、通常、小板、線形または針状で市販されている。
【0006】
これに関して、選択された溶媒または液体中にできるだけ完全に不溶性であるコア材料を選択しなければならないことが多く、それは、ほとんどの場合、特にポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリイミド、ポリスチレンおよび/またはポリウレタンに基づく材料についてあてはまり、全ての無機粒子についてあてはまる。原理的には、他の有機ポリマー粒子も用いることができる。従って、有機粒子を被覆する際に、一方ではコア材料のおよび他方では使用可能な溶媒の選択が制限される。有機コアとそのシェルの硬度は低いので、被覆された粒子が、かなり激しいせん断力(所謂摩砕)に付されたときに破壊されないことが確保されるべきである。摩砕という用語は、せん断力により成される湿潤のみが含まれるのか、または、実際、粉砕を含む摩砕が含まれるかについて区別することなく、以下において用いることとする。
【0007】
特許出願DE 102004037542、DE 102004037552および、それらから派生する外国出願、並びに「導電性ポリマーで微粒子を被覆する方法(Process for coating fine particles with conductive polymers)」の題名で同じ出願人により同じ特許庁に出願された並行出願、およびそれらの外国出願が、本出願に明確に取り込まれ、特に、デポー物質、アニオン、カチオン、マトリクス物質、出発、中間および最終物質、および添加または形成されるさらなる成分のタイプおよび量に関して、および特に、化学反応、製造プロセスおよび条件、個々のプロセスステップ、物理化学的現象、導電性、電位値、電位差、電位変化および他の特性、鮮明度、請求の範囲の対象、図面、表、並びに、使用、変形、態様、実施例および比較例に関しても、本出願に取り込まれる。
【0008】
出願人は、導電性ポリマーに関して小数のタイプのアニオンしか変化しない出願に気がついていない。導電性ポリマーの製造は、多くの化合物について商業ベースで実施することができず、従って、この場合、ポリマーは最初から注意深く調製しなくてはならず、また製造条件を変化させるのは非常に複雑であるので、導電性ポリマー用の出発材料のおよびアニオンおよび酸化剤の系統的変化は、明らかに成されず、特に、ポリピロールまたはポリチオフェンに基づくポリマーの場合には成されない。
【0009】
従来技術において導電性ポリマーの製造および使用について成された大部分の研究において、アニオンは、概してカウンターアニオンまたはドーピングアニオンと呼ばれるが、製造条件のために混合物中に必然的に含まれて、その形成中に導電性ポリマーの電気的中性を維持する。しかしながら、導電性ポリマーの使用におけるそのようなアニオンの保護的効果についてほとんど知られていない。関連文献が、導電性ポリマー中でのアニオンの防食作用についての何らかの情報を含むことは滅多にない。しかしながら、個々の実験において、あらかじめ金属表面を不動態化し、例えば、単純にシュウ酸塩から貧溶性金属シュウ酸塩不動態化層を形成してから、導電性ポリマーを有する化学系を適用する。例えばポリアニリンを用いる場合、ドーピングされていないポリアニリンが、通常この系を用いて適用され、その後になってからのみ、例えば、リン酸がドーピングされる。しかしながら、導電性ポリマーが電気化学的に適用される場合は、前もっての不動態化が常に必要である。不動態化で用いられる同じアニオンが、そこで必ず存在し、同時に、カウンターイオンとして導電性ポリマーの重合に取り込まれ、それにより電気的中性が確保される。
【0010】
今回、加えられるアニオンが、導電性ポリマーの構造中に混入される場合に必要な電気的中性を確保するのみならず、導電性ポリマーから移動して出てくる場合に金属表面に防食作用を発揮することもできることが発見された。防食作用は、被覆への損傷が少ない場合は早期に生じている。それは、これらの選択されたアニオンが導電性ポリマーから移動して出て、金属表面上の保護層における損傷の部位に移動するからである。欠陥金属表面を、多くの場合、不動態化することができ、特に大き過ぎない場合、不動態化することができる。
【0011】
金属表面への腐食攻撃に続いて、通常、陰極層剥離が生じることも発見された。さらに、これに関して、この陰極層剥離が、多くの場合に、放出信号としての電位の低下の後に起こることが発見された。放出信号は、通常、損傷領域において生じる。何故なら、そこで、一般的産業用金属およびそれらの合金の場合の電位が、ほとんど例外なく、一般的導電性ポリマーの酸化還元電位より陰性が強いからである。後者は、それによって、陰性に分極し、その結果、還元される。
【0012】
陰極層剥離において、実際の界面層剥離は電位低下の後に起こり、界面における電位は、層剥離のこの予備段階において、早期に、普通の導電性ポリマーが酸化状態にある値から、少なくともある程度の還元につながるより陰性の値に低下する。これに関して、この前方向に配された陰極前面において、ポリマー接着はまだ破壊されておらず、酸素還元も界面で起こることが多く、そこで、界面での接着を破壊しそれにより最終的に層剥離を生じさせるラジカルが形成される。また、層剥離部位において、少なくとも一つの泡が形成され得る。
【0013】
今回、これらの効果を利用して、まず、さらなる層剥離を防止する、および/または、第二に、この初期段階において、この反応を阻害するアニオンを放出することにより、層剥離を防止することができると分かった。この初期段階において界面がまだ層剥離していない場合は、依然概して無傷の界面の自由体積が小さいために、そのようなアニオンの少量しか必要でない。
【0014】
この化学系は、欠陥が小さな場合に効果的であるが、大きな欠陥を不動態化することはできず、従って、系全体におけるカチオン輸送速度が速すぎる場合、およびこれにより、例えば導電性ポリマーを含む有機被覆の反応が急速に進む場合、大きな損害さえ起こり得る。この場合、金属表面の腐食防止のためのこの化学系における全ての量および特性を調和させることが重要な点である。しかしながら、クロム酸塩単独では、同様に、大きすぎる欠陥を不動態化することはできない。
【0015】
導電性ポリマーを含む多くの化学系において、アニオンの放出に基づく効果(放出効果)が期待または想定されるが、稀な個々の場合にしか検出されていない。従って、被覆中に導電性ポリマーを含むことは、おそらく、不動態化物質、例えば不動態化アニオン用のデポーとして役立つ。これに関して文献に記載されているアニオンは、通常、腐食阻害性アニオンではない。しかしながら、防食用途のための放出効果の利用は、稀にしか述べられておらず、曖昧に述べられていることが多く、出願人の知る限りでは実際には全く発見されておらず、従って仮説のままである。しかしながら、電位低下による放出効果の誘発は、出願人の知る限り、今までに全く記載されていない。
【0016】
しかしながら、従来技術に防食性アニオンが記載されている場合、防食作用は、概して、局所的欠陥部位への不動態化作用に限定されており、特異的に層剥離する領域は記載されていない。導電性ポリマーを用いる場合、そのポリマーが化学的に重合されるかまたは電気化学的に重合されるかについて区別しなければならない。何故なら、電気化学的重合の場合、比較的反応性の金属表面は、常に、ポリマーの沈着の前に不動態化される:例えば、シュウ酸塩を用いる場合、金属表面は常に予め不動態化されるからである。防食性アニオンを記載している出版物は、出願人が知る限り、電位低下の結果としてこれらのアニオンが放出されることは示していない。
【0017】
自己修復効果は別として、導電性ポリマーを含まないクロムVI含有被覆については以下のものしか知られていない:1.欠陥におけるまたは損傷部位における金属表面の不動態化(陽極部分的反応)。2.特異的に層剥離するおよび/または既に層剥離している領域における陰極部分的反応(酸素還元)の阻害。それにも拘わらず、六価クロム酸塩が損傷するのが知られており、環境的保護の理由から、金属表面を保護するために用いられるクロム酸塩の含量が劇的に低下する。これとは別に、クロム酸塩は、小さな欠陥しか不動態化および修復することができず、大規模な欠陥を不動態化および修復することはできない。現在までに、六価クロム酸塩の不存在下にそのような自己修復効果を超える効果を実際に発揮する化学系は知られていない。
【0018】
従って、本発明の目的は、粒子上および/または粒子中に導電性ポリマーを含むと共に金属表面の腐食の防止において用いるのに原理的に適している組成物で金属表面および粒子を被覆するための方法を提供することであった。この組成物の調製および被覆方法を、できるだけ簡単にかつ特別の設備および装置を用いることなく実施することができれば、有利である。
【0019】
さらに、実際に、金属物質上の被覆中に導電性ポリマーを含む化学系の個々の要素が、電場の勾配を有する電位の変化(アニオンの放出;放出効果)によって被覆の損傷を認識することができるのみならず、修復効果(修理効果)も発揮することができれば、特に有利である。しかしながら、層剥離部位が修理される修復効果は、少数の個々の化学系の場合にしか期待できない。
【0020】
この目的は、導電性ポリマーを含む防食組成物で金属表面を被覆する方法であって、その組成物が、概ねまたは完全に粒状の少なくとも一つの導電性ポリマーとバインダー系を含む分散体であること、およびその導電性ポリマーが、防食可動性アニオンが荷電した、ポリフェニレン、ポリフラン、ポリイミダゾール、ポリフェナンスレン、ポリピロール、ポリチオフェンおよび/またはポリチオフェニレンに基づく少なくとも一つのポリマーであることを特徴とする方法により達成される。
【0021】
この目的は、また、導電性ポリマーを含む防食組成物で金属表面を被覆する方法であって、まず第一に、概ねまたは完全に粒状の少なくとも一つの導電性ポリマーを含む分散体である第一の組成物を金属表面に適用し、さらに乾燥すること、およびバインダー系を含む第二の組成物を、次に、分散体(=溶液、乳濁液および/または懸濁液)として予備被覆金属表面に適用し、乾燥し、さらに任意に重合し、その導電性ポリマーは、防食可動性アニオンが荷電した、ポリフェニレン、ポリフラン、ポリイミダゾール、ポリフェナンスレン、ポリピロール、ポリチオフェンおよび/またはポリチオフェニレンに基づく少なくとも一つのポリマーであることを特徴とする方法により達成される。
【0022】
ここで、「組成物」という用語を以下に用いた場合、これは、請求項1および2に開示の組成物の各々を示す。
【0023】
導電性ポリマーが粒状のみで存在しない場合、例えば、ある程度、溶液、ゾル、ゲルまたは沈降産物としても存在してよく;同時にまたは択一的に、粒状で存在しないポリマーを、まず第一に適用する、あるいは、薄いまたは非常に薄い被覆の状態で先に適用しておいてから本発明による少なくとも一つの組成物を適用してもよい。
【0024】
しかしながら、そのような非常に薄いことが多い被覆は密封する必要がなく;この点に関して、第一のデポーを金属表面に直接または非常に近接して形成してよく、これは、金属表面への経路が短いので、特に迅速かつ効果的に作用し、一方、そこに適用された被覆は、特に腐食を停止するためおよび非常に小さくはない欠陥を修理するための、導電性ポリマーの主要な貯蔵部を形成することができる。そのような導電性ポリマーに基づく薄い被覆は、例えば、バインダー系を含む本発明の以下の組成物から別途適用してよい。そのような被覆を、例えば第一のロールコーターを用いることにより、または多くの場合、好ましくは、ローラー塗布または噴霧し、任意に、続いて圧搾乾燥することにより、迅速に移動しているストリップに適用することができる。
【0025】
理論的に、任意のタイプの乾燥機を用いて第一の組成物を乾燥してよい:得られる被覆のある程度の接着がしばしば達成される部分的乾燥(=初期乾燥)、程度の差はあるが積極的または程度の差はあるが完全な乾燥(=乾燥)、または、特定の表面上、例えば、ストリップ上の被覆の乾燥である原位置乾燥(=所定位置乾燥)である。
【0026】
特に好ましくは、用いられる各タイプの導電性ポリマーには、防食可動性アニオンが荷電する。
【0027】
前記目的は、少なくとも一つの水溶性または水分散性有機ポリマー、少なくとも一つのタイプの導電性ポリマーを含む粒子、水、任意に少なくとも一つの有機溶媒、および任意に少なくとも一つの添加剤を含むことを特徴とする、金属表面被覆用の組成物によっても達成される。
【0028】
この場合、この組成物が、チタンおよび/またはジルコニウムに基づくアニオンが混入されている導電性ポリマーを含むこと、および/または、この組成物がチタンおよび/またはジルコニウムの少なくとも一つの化合物を含むことが特に好ましい。
【0029】
前記目的は、さらに、本発明に従って調製された、バインダー系、粒子および導電性ポリマーに基づく被覆が金属表面上に適用された物品により達成される。
【0030】
この被覆は、特に、チタンおよび/またはジルコニウムを含むアニオンを含む導電性ポリマー、および/または、チタンおよび/またはジルコニウムの少なくとも一つの化合物を含む。
【0031】
今回、分散体、流動性または混練可能な組成物、ゾルおよび/またはゲルである混合物中に存在するおよび/または最初にその中で形成されている無機および/または有機粒子を被覆する方法が、導電性ポリマーを特に無機および/または有機粒子上に製造するのに理想的に適していることが発見され、出発材料(educt)混合物と呼ばれるこの混合物は、
少なくとも一つのモノマーおよび/または少なくとも一つのオリゴマー(以下において、「導電性ポリマーの出発材料」または単に「出発材料」と呼ぶ)を含み、
これらは、例えば、アルキン、ヘテロ環式化合物、炭素環式化合物、それらの誘導体および/またはそれらの組み合わせのような芳香族化合物および/または不飽和炭化水素化合物のモノマーおよび/またはオリゴマーから選択され、特に、そこから導電性のオリゴマー/ポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーを形成するのに適したX=Nおよび/またはSであるヘテロ環式化合物から選択され、特に、イミダゾール、ナフタレン、フェナンスレン、ピロール、チオフェンおよび/またはチオフェノールに基づく非置換および/または置換化合物から選択され、
ここで、少なくとも一つの導電性ポリマーの製造のための少なくとも一つの出発材料は、その酸化電位が、そのための用いられる混合物中の水および/または少なくとも一つの他の極性溶媒の分解電位に等しいかそれ以下であるように選択され、
ここで、得られる導電性アニオン荷電ポリマーからの可動性防食アニオンの放出、また、状況により付着媒介性アニオンの放出は、脱プロトン化反応を介しては起こらないおよび/または限られた程度にしか起こらないが、還元反応を介して主におよび/または完全に起こり、
少なくとも一つのタイプのアニオン(任意に、これらのアニオンのキャリアとしての少なくとも一つの塩、エステルおよび/または少なくとも一つの酸)、
ここで、少なくとも一つのタイプのアニオンは、1.導電性ポリマーの構造中へのドーピングイオンとして導電性ポリマー中に混入することができる、2.導電性ポリマーの電位低下(還元)の場合にはこの構造から再び放出されることもできる、および3.金属表面が存在する場合には腐食防止に作用することができ、以下において、「可動性防食アニオン」と呼ばれ、
ここで、これらは、特に、アルカン酸、アレーン酸、ホウ素含有酸、フッ素含有酸、ヘテロポリ酸、イソポリ酸、ヨウ素含有酸、ケイ酸、ルイス酸、鉱酸、モリブデン含有酸、過酸、リン含有酸、チタン含有酸、バナジウム含有酸、タングステン含有酸、ジルコニウム含有酸、それらの塩、それらのエステルおよびそれらの混合物に基づくものから選ばれるアニオンから選択してよく、
また、任意に、少なくとも一つの酸化剤が挙げられ、この少なくとも一つの酸化剤は、特に、少なくとも一つのアニオンが同時に酸化剤として作用する場合および/または電気化学的および/または光化学的重合が成される場合、完全または部分的に省略してよく、
クラスター、ナノ粒子、ナノチューブ、繊維、コイル状および/または多孔質構造体から選択される平均粒径が10nm〜10mmの範囲にある少なくとも一つのタイプの粒子、および、アグロメレートおよび/またはアグリゲートのようなこれらの粒子の集合が挙げられ、また
水および/または少なくとも一つの他の極性溶媒並びに、任意に、少なくとも一つのさらなる溶媒、特に、極性溶媒、非極性または弱極性溶媒からおよび室温では液体でないがより高温では溶媒として作用し得る溶媒から選択される溶媒が挙げられ、
ここで、粒子の表面の少なくとも一部の上に、少なくとも一つの単層の厚さを有する被覆が出発材料混合物から形成され、この単層は、特に、実質的にモノマーおよび/またはオリゴマーからなるか、出発材料混合物の任意の少なくとも一つのさらなる成分に加えて少なくともかなりの割合のモノマーおよび/またはオリゴマーを含み、
ここで、分散体において、組成物において、ゾルおよび/またはゲルにおいて、または、任意に少なくとも液体の部分的除去後にはエアロゾルにおいて、少なくとも所定割合のモノマーおよび/またはオリゴマーが、各場合に少なくとも可動性防食アニオンの存在下に、少なくとも一つの酸化剤を用いる酸化により化学的に、電界下に電気化学的におよび/または電磁放射の作用下に光化学的に、水および/または少なくとも一つの他の極性溶媒を含む混合物中、少なくとも部分的に少なくとも一つのオリゴマーに、および/または、任意に部分的もしくは完全に、各場合に、少なくとも一つのポリマー、コポリマー、ブロックコポリマーおよび/またはグラフトコポリマーに転化され(「生成物」)、
ここで、それにより形成されたオリゴマー、ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマーおよび/またはグラフトコポリマー(以下において、「導電性ポリマー」と呼ぶ)は、少なくとも部分的に電気的に導電性であるおよび/または電気的により導電性になる。
【0032】
無機および/または有機粒子を被覆するためのそのようなプロセスにおいて、粒子は混合物中に存在するおよび/またはその中に早期に形成されていると共に、その混合物は分散体、流動性または混練可能組成物、ゾルおよび/またはゲルであり、その混合物は生成物混合物であると共に、
オリゴマー/ポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーに基づく少なくとも一つの電気的「導電性ポリマー」を含んでよく、
ここで、次に、少なくとも一つの出発材料が、その出発材料の酸化電位が、この目的のために用いられる混合物中の水のおよび/または少なくとも一つの他の極性溶媒の分解電位に等しいかそれ以下であるように、少なくとも一つの導電性ポリマーの製造のために選択され、
ここで、得られる導電性ポリマーからの可動性防食アニオンの、また任意に付着媒介性アニオンの放出は、脱プロトン化反応を介しては起こらないおよび/または僅かな程度にしか起こらないが、還元反応を介すると概ねおよび/または完全に起こり、
少なくとも一つのタイプのアニオン(任意に、これらのアニオンのキャリアとしての少なくとも塩、エステルおよび/または少なくとも酸)が挙げられ、この少なくとも一つのタイプのアニオンは、1.導電性ポリマーの構造中へのドーピングイオンとして導電性ポリマー中に混入および/または少なくとも部分的に混入することができる、2.導電性ポリマーの電位低下(還元)の場合にはこの構造から再び放出されることもできる、および3.金属表面が存在する場合には腐食防止に作用することができ、以下において、「可動性防食アニオン」と呼ばれ、
クラスター、ナノ粒子、ナノチューブ、繊維、コイル状および/または多孔質構造体から選択される平均粒径が10nm〜10mmの範囲にある少なくとも一つのタイプの粒子、および、アグロメレートおよび/またはアグリゲートのようなこれらの粒子の集合が挙げられ、また
任意に酸化剤、水および/または少なくとも一つの他の溶媒が挙げられ、
ここで、生成物混合物から、少なくとも一つの単層の厚さを有する被覆が、粒子の表面の少なくとも一部の上に形成され、
ここで、形成されたオリゴマー、ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマーおよび/またはグラフトコポリマー(以下、「導電性ポリマー」と呼ぶ)は、少なくとも部分的に電気的に導電性であるおよび/または電気的により導電性になる。
【0033】
現在まで、本発明に従って作用するアニリン、ポリアニリンまたはそれらの誘導体は出願人に知られていない。可動性防食アニオンが、4.少なくとも層剥離前面におけるおよび/または前方を通る前面部における損傷領域での酸素還元を停止させる能力も有する、および/または、5.層剥離を少なくとも部分的に再び密封(修復効果)させるように付着媒介的に作用することもできることが特に好ましい。
【0034】
ポリアニリンの場合、可動性防食アニオンが還元反応を介して導電性ポリマーから放出されることはない。ポリアニリンの還元産物は不安定なので、本発明の要旨において還元反応は選択されない。むしろ、還元反応の代わりに、脱プロトン化反応がアニオンの放出のために選択される。この放出が脱プロトン化反応を介して生じる、ポリアニリンに基づく導電性ポリマーは出願人に知られていない。
【0035】
出発材料の酸化電位が、この目的で用いられる混合物中の水および/または少なくとも一つの他の極性溶媒の分解電位に等しいまたはそれ以下である場合、これは、導電性ポリマーの酸化(=重合)が、例えば水が分解することなく、例えば発生する水素が放出されることなく、またはそのような分解または放出が起こり得る前に、完全である/完全になることを意味している。
【0036】
本発明の要旨における「分散」という用語は、懸濁液のみを含むのではなく、溶液および乳濁液も含む。
【0037】
今回、特に、損傷領域にある導電性ポリマーの電位低下が原因でモリブデンンアニオンが放出され、欠陥部位に直接移動したことを発見した。他の移動経路は、この実験手順において排除することができる。次に、損傷部位における金属表面上にモリブデン含有不動態化層を形成し、X線分光測定により検出した。
【0038】
さらに、スキャンニング・ケルビン・プローブ(SKP)を用いて修理効果を検出した。DE 102004037542の図2と、実施例1に開示の測定結果とが合わさって、損傷領域への強力な不動態化効果を示している。しかしながら、図2において、非常に低い腐食電位での第一の測定間に得た幾つかの測定曲線と、一連の測定の途中からの個々の測定曲線は省略した。これらの曲線間で約0.3Vの非常に鋭い電位上昇が起こり、これは、層剥離している部位における層剥離が、少なくともある程度、停止したことを示している。図1は、比較として、通常起こる効果を示している。
【0039】
今回、腐食プロセスの出発の結果として、金属/被覆界面上の部位において、電場の勾配を伴う電位変化が生じることも発見した。しかしながら、アニオンの放出(放出効果)は、そのような電位変化が起こる場合にしか生じない。被覆への損傷、被覆への他の有害な変化または金属/被覆界面における例えば不純物のような他の欠陥が無ければ、導電性ポリマーに混入されたアニオンが貯蔵され、電位値が一定に維持される。金属表面と被覆の層剥離の前およびその間に、被覆が損傷した場合に生じるように、電極電位が急に低下する。
【0040】
この電位低下により、特に欠陥の周辺において、導電性ポリマーが還元され、それにより、防食、不動態化および/または付着媒介特性を有するアニオンが放出される。
【0041】
これに関して、電位低下は、好ましくは、一方では、非損傷状態での少なくとも一つのデポー物質(導電性ポリマー)の酸化還元電位と欠陥部での金属表面の腐食電位との間の電位差の値を少なくとも示し、それにより、層剥離の発生または進行を初期にまたはちょうどいい時期に少なくともある程度妨げることができ、その後、著しい層剥離が起こることになる。
【0042】
これに関して、電位低下は、好ましくは、他方では、非損傷状態での少なくとも一つのデポー物質の酸化還元電位と、欠陥部での、特に層剥離の前方にある電位差を有する前面での金属表面の腐食電位との間の値より低い値を示し、それにより、層剥離の発生または進行を初期にまたはちょうどいい時期に少なくともある程度妨げることができ、その後、僅かなまたは著しい層剥離が起こることになる。
【0043】
導電性ポリマーの酸化還元電位は、適当な被覆により腐食に対して保護されるそれぞれの金属材料の不動態化電位より高いことが好ましい。酸化還元電位は、同時に存在する異なる程度のドーピングを伴う対応する酸化還元対の存在下で正常条件下に調節される電位である。
【0044】
酸化還元電位は、主に、ドーピングの程度により、すなわち、アニオンの性質および量に依存して、調節することができる。このようにして、本発明による粒子中または被覆中の電位差を、意図的に調節することができる。導電性ポリマーの酸化還元電位は、不動態化された金属表面の電位を超えると共に腐食表面の電位を著しく超えるように調節されることが好ましい。
【0045】
不動態化電位は、金属表面と水との間の界面における電位であり、そこにおいて、その金属表面の上に閉鎖した安定な不動態化カバー層が形成され、それにより、金属のさらなる溶解が抑制される。
【0046】
アニオンの酸化電位が、出発材料の酸化電位より高いと特に有利である。それは、その場合、アニオンが同時に酸化剤として作用し得るからである。
【0047】
さらに、少なくとも一つのデポー物質、換言すると、少なくとも一つの導電性ポリマーが、アニオンの早期放出を可能にする酸化還元電位を有すると共に、少なくとも一つのデポー物質が、電解質からの、特に欠陥部からおよび/または金属表面からのカチオンの比較的低いカチオン輸送速度を呈することが好ましい。
【0048】
電解質からの、特に欠陥部からおよび/または金属表面からのカチオンの少なくとも一つのデポー物質へのカチオン輸送速度は、好ましくは、10-8cm2/秒未満、特に好ましくは、10-10cm2/秒未満、最も特に好ましくは、10-12cm2/秒未満、および特に10-14cm2/秒未満である。
【0049】
「損傷領域」という表現は欠陥の周囲の領域を示し、場合により、その欠陥、損傷部位、およびその前方部の電位変化の前面が含まれる。すなわち、化学系の変化が生じた部分が含まれる。「損傷部位」は、起こる可能性のある任意の層剥離を含む欠陥を意味する。ポリマー接着が未だ破壊されていない前方に配された陰極前面の領域に僅かの層剥離が生じるが、酸素還元もしばしば界面において起きている。さらに、多くのラジカルもそこに形成されて、それらが界面における接着を破壊する、すなわち、実際の層剥離を引き起こす場合、著しい層剥離が生じる。
【0050】
全ての場合、一方では、アニオンが、および他方では、被覆が、特に、少なくともデポー物質および/または少なくともマトリクス物質が、放出される選択されたアニオンが被覆を通過する、すなわち、特にデポー物質を通過する移動、および例えばマトリクスのようなさらなる成分を通過する移動が妨げられないまたは実質的に妨げられないような孔寸法を有すべきである。所謂マトリクス物質は、被覆のマトリクスを少なくとも部分的に形成するまたは原理的に形成することができる例えば有機ポリマー/コポリマーのような物質であり、例えばフィルム形成の後のように、マトリクスとさらなる成分との間で流出転移が起こり得る。
【0051】
可動性防食アニオンおよび/または存在することもある付着媒介性アニオンは、好ましくは、電位低下の場合に、それらを、損傷領域の導電性ポリマーから高い移動度で移動させることができ、特に欠陥の方向に移動させることができる寸法を有する。導電性ポリマーを含む個々の化学系においてアニオンを損傷部位へ意図的に移動させるので、不動態化は、(さらなる)金属の溶解を抑制し、損傷部位の修理を達成することもあり得る(修復効果)。この移動の前提条件は、溶媒和シェルを含むこともある可動性アニオンのための孔チャンネルが充分に大きいことである。損傷部位における化学的反応において、金属の溶解時にカチオンが形成され、それはカチオンと一緒になり、損傷部位の領域に不動態化層を局所的に形成することができる。
【0052】
しかしながら、実際に、導電性ポリマーを含む現実の化学系が、ほとんど例外無く、比較的低い導電性しか示さないこと、および修理効果が今までは検出不可能であったまたは非常に弱いために技術的目的に用いることができなかったことが現在までに分かっている。従って、修理効果も生じるが、明らかに、一部の態様においてかつ特定の条件下においてしか使用することができない化学系を選択することが特に好ましい。従って、技術的に用いることができるように、電位勾配の形成(放出効果の開始)のための条件、また、任意に修復効果(修理効果)のための条件を最適化できることも好ましい。また、層剥離界面を、(進行している)腐食に対して化学系により保護すべきである。
【0053】
所定割合の導電性ポリマーを含む粒子を使用する利点は、所望の金属表面のためにまたは所望のタイプの被覆のために粒子を使用する多様性である。
【0054】
多くの完全にまたは概して系統的に構成される被覆および化学的に異なって構成される被覆は、導電性ポリマーの添加により改良することができ:導電性構成成分の含量が少ないと、改良は、特に、被覆の静電防止挙動に関係し、そのような構成成分の含量が多いと、改良は、特に、調節可能な導電性に関係し、それは、例えば、電場中での塗料成分の析出に重要である、または、そのような層で被覆された金属シートの電気的溶接にも重要であり得る。非常に多い用途において、腐食に対する金属表面の高いまたは改良された保護を達成することができる。
【0055】
本質的に導電性ポリマーからなる粒子、導電性ポリマーの非常に薄い、薄い、厚いまたは非常に厚いシェルを有するコアとして導電性ポリマーおよび/または粒子を含む粒子は、粒状の低粘度または高粘度の状態の組成物、分散体または溶液中への導電性ポリマーの混入において有用となり得ることが多い。
【0056】
金属表面を被覆するための組成物
粒子の上および/または中に導電性ポリマーを含む被覆を形成するための組成物は、a)請求項1に相当する単一組成物中に、導電性ポリマーを含む粒子およびバインダー系を常に同時に含む組成物が含まれるかどうか、b)請求項2に相当する第一の組成物中に、導電性ポリマーを含む粒子を常に含む組成物が含まれるかどうか、またはc)請求項2に相当する第二の組成物中に、バインダー系を常に含む組成物が含まれるかどうかに依存して、金属表面上に種々の方法で形成することができる。それにも拘わらず、b)および/またはc)の場合、b)の場合の組成物の各々が、少なくとも一つの溶媒に加えて、さらに、所定割合のバインダー系および/または添加剤も含む、または、c)の場合、少なくとも一つの溶媒に加えて、導電性ポリマーを含む所定割合の粒子および/または添加剤も含む、ことは排除されない。
【0057】
導電性ポリマーを含む被覆を粒子の上および/または中、金属表面の上に形成するための組成物は、好ましくは以下の成分を含む。
【0058】
a)の場合:
任意に、導電性ポリマーで被覆されおよび/またはその内部に導電性ポリマーを含む少なくとも一つのタイプの無機および/または有機粒子として、導電性ポリマーを含む少なくとも一つのタイプの粒子であって、導電性ポリマーを含む粒子の合計含量が、好ましくは0.5〜90重量%の範囲、特に好ましくは5〜80重量%の範囲であり、少なくとも一つの導電性ポリマーが、オリゴマー、ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマーおよびグラフトコポリマーからなる導電性ポリマーの群から選択され、導電性ポリマーの含量が、好ましくは0.1〜30重量%の範囲、特に好ましくは0.5〜20重量%の範囲であり、少なくとも一つのタイプの可動性防食アニオンが混入されている、
オリゴマー、ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマーおよび/またはグラフトコポリマーからなる有機ポリマーの群から選択される少なくとも一つの有機ポリマーを含むバインダー系であって、含量が、好ましくは5〜99重量%の範囲、特に好ましくは10〜95重量%の範囲である、および
任意に、少なくとも一つの添加剤であって、含量が、好ましくは0.1〜30重量%の範囲、特に好ましくは1〜20重量%の範囲である、
ここで、ここで述べない可能性のあるさらなる添加剤を含むが溶媒は含まない、合計100重量%の全てのこれらの内容物、並びに、
少なくとも一つの溶媒であって、合計量が100重量%を超える。
【0059】
b)の場合:
任意に、導電性ポリマーで被覆されおよび/またはその内部に導電性ポリマーを含む少なくとも一つのタイプの無機および/または有機粒子として、導電性ポリマーを含む少なくとも一つのタイプの粒子であって、導電性ポリマーを含む粒子の合計含量が、好ましくは10〜100重量%の範囲、特に好ましくは20〜99重量%の範囲であり、少なくとも一つの導電性ポリマーが、オリゴマー、ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマーおよび/またはグラフトコポリマーからなる導電性ポリマーの群から選択され、導電性ポリマーの含量が、好ましくは0.1〜100重量%の範囲、特に好ましくは5〜60重量%の範囲であり、少なくとも一つのタイプの可動性防食アニオンが混入されている、
任意に、オリゴマー、ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマーおよびグラフトコポリマーからなる有機ポリマーの群から選択される少なくとも一つの有機ポリマーを含むバインダー系であって、含量が、好ましくは0.1〜90重量%の範囲、特に好ましくは1〜80重量%の範囲である、および、
任意に、オリゴマー、ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマーおよびグラフトコポリマーからなる有機ポリマーの群から選択される少なくとも一つの有機ポリマーを含むバインダー系であって、含量が、好ましくは0.1〜90重量%の範囲、特に好ましくは1〜80重量%の範囲である、および
任意に、少なくとも一つの添加剤であって、含量が、好ましくは0.1〜30重量%の範囲、特に好ましくは1〜20重量%の範囲である、
ここで、ここで述べない可能性のあるさらなる添加剤を含むが溶媒は含まない、合計100重量%の全てのこれらの内容物、並びに、
少なくとも一つの溶媒であって、合計量が100重量%を超える。
【0060】
c)の場合:
オリゴマー、ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマーおよびグラフトコポリマーからなる有機ポリマーの群から選択される少なくとも一つの有機ポリマーを含むバインダー系であって、含量が、好ましくは10〜100重量%の範囲、特に好ましくは40〜95重量%の範囲である、
任意に、導電性ポリマーで被覆されおよび/またはその内部に導電性ポリマーを含む少なくとも一つのタイプの無機および/または有機粒子として、導電性ポリマーを含む少なくとも一つのタイプの粒子であって、導電性ポリマーを含む粒子の合計含量が、好ましくは0.1〜50重量%の範囲、特に好ましくは1〜30重量%の範囲であり、少なくとも一つの導電性ポリマーが、オリゴマー、ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマーおよび/またはグラフトコポリマーからなる導電性ポリマーの群から選択され、導電性ポリマーの含量が、好ましくは0.1〜30重量%の範囲、特に好ましくは0.5〜20重量%の範囲であり、少なくとも一つのタイプの可動性防食アニオンが混入されている、
任意に、オリゴマー、ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマーおよびグラフトコポリマーからなる有機ポリマーの群から選択される少なくとも一つの有機ポリマーを含むバインダー系であって、含量が、好ましくは0.1〜90重量%の範囲、特に好ましくは1〜80重量%の範囲である、および
任意に、少なくとも一つの添加剤であって、含量が、好ましくは0.1〜30重量%の範囲、特に好ましくは1〜20重量%の範囲である、
ここで、ここで述べない可能性のあるさらなる添加剤を含むが溶媒は含まない、合計100重量%の全てのこれらの内容物、並びに、
少なくとも一つの溶媒であって、合計量が100重量%を超える。
【0061】
好ましくは、組成物a)、b)および/またはc)中の、導電性ポリマーを含む少なくとも一つのタイプの粒子の含量は、1〜99重量%の範囲、5〜95重量%の範囲、10〜90重量%の範囲、15〜85重量%の範囲、20〜80重量%の範囲、25〜75重量%の範囲または30〜70重量%の範囲であり、特に好ましくは35〜65重量%の範囲、40〜60重量%の範囲または45〜55重量%の範囲である。これに関して、特に好ましい範囲は、特に、組成物a)、b)および/またはc)が含まれるかどうか、および、導電性ポリマーを含む主にまたは完全に被覆された無機粒子、有機粒子が含まれるかどうか、または、導電性ポリマーを含む主にまたは完全に被覆された粒子が含まれるかどうかに依存して、より小さな値またはより大きな値にすることもできる。
【0062】
好ましくは、組成物a)、b)および/またはc)中の、少なくとも一つの導電性ポリマーの含量は、0.1〜99重量%の範囲、0.5〜95重量%の範囲、1〜90重量%の範囲、1.5〜85重量%の範囲、2〜80重量%の範囲、2.5〜75重量%の範囲または3〜70重量%の範囲であり、特に好ましくは3.5〜65重量%の範囲、4〜60重量%の範囲または4.5〜55重量%の範囲であり、場合により特に好ましくは5〜60重量%の範囲、10〜55重量%の範囲、15〜50重量%の範囲、20〜45重量%の範囲、20〜40重量%の範囲または30〜35重量%の範囲である。これに関して、特に好ましい範囲は、特に、組成物a)、b)および/またはc)が含まれるかどうか、および、導電性ポリマーを含む主にまたは完全に被覆された無機粒子、有機粒子が含まれるかどうか、または、導電性ポリマーを含む主にまたは完全に被覆された粒子が含まれるかどうかに依存して、より小さな値またはより大きな値にすることもできる。
【0063】
好ましくは、組成物a)、b)および/またはc)中のバインダー系の含量は1〜99重量%の範囲、5〜96重量%の範囲、10〜92重量%の範囲、15〜88重量%の範囲、20〜84重量%の範囲、25〜80重量%の範囲または30〜76重量%の範囲であり、特に好ましくは、35〜72重量%の範囲、40〜68重量%の範囲、45〜64重量%の範囲または50〜60重量%の範囲である。これに関して、特に好ましい範囲をより小さいまたはより大きい値に移動することもできるが、特に、組成物a)、b)および/またはc)が含まれるかどうか、および、主にまたは完全に、導電性ポリマーを含む被覆された無機粒子、有機粒子が、または主にまたは完全に、導電性ポリマーを含む粒子が含まれるかどうかに依存する。任意に添加される有機モノマー、熱架橋剤および/または光開始剤が、同様に、バインダー系の成分に含まれる。
【0064】
好ましくは、100重量%の固形物含量を越える、組成物a)、b)および/またはc)中の溶媒の含量は、2〜4000重量%の範囲、1〜2500重量%の範囲、5〜3000重量%の範囲、10〜800重量%の範囲、2〜300重量%の範囲、20〜2500重量%の範囲または30〜600重量%の範囲であり、特に好ましくは、1〜1500重量%の範囲、2〜1200重量%の範囲または50〜600重量%の範囲であり、最も特に好ましくは、30〜400重量%の範囲、5〜160重量%の範囲または5〜80重量%の範囲である。
【0065】
(導電性ポリマーを含む粒子):(バインダー系)の間の組成物a)、b)および/またはc)中の構成成分の重量比は、多くの変形態様において、好ましくは1:(0.05〜30)であり、特に好ましくは1:(0.5〜20)である。この場合においても、特に好ましい範囲をより小さいまたはより大きな値に移動することもできるが、特に、組成物a)、b)および/またはc)が含まれるかどうか、および、主にまたは完全に、導電性ポリマーを含む被覆された無機粒子、有機粒子が含まれるかどうか、または主にまたは完全に、導電性ポリマーを含む粒子が含まれるかどうかに依存する。
【0066】
これらの組成物中におけるこれらの構成成分の含量は、原理的に、広い制限中で変化してよい。変形は、特に、被覆の厚さに依存し:極薄い、薄い、厚いまたは非常に厚い被覆を適用することができ、これは、例えば、0.5〜10nm、1〜100nm、10〜1000nm(1μm)、100nm〜10μm、または0.5μm〜50μmの層厚を有し得る。無機および/または有機粒子を用いる場合、体積比および重量比が、粒子のコアから導電性ポリマーへと著しく低下し得る。低いまたは高い密度を有する構成成分も選択することができる。さらに、例えば火炎加水分解により製造されるSiO2粉末の場合、無機粒子の比表面積もかなり急激に低下し得る。
【0067】
実質的または完全に導電性ポリマーを含むと共にほとんどまたは完全に導電性ポリマーからなる粒子を組成物に添加する場合、これらの粒子の割合は低く維持されることが好ましい。粒子が大きい程および/または粒子コアに対する導電性ポリマーの割合が小さい程、導電性ポリマーを含む粒子の割合は、通常、著しく増加する。
【0068】
予備試験から、本発明の多くの被覆において、特に無機および/または有機粒子の場合、平均粒径が10〜200nmの範囲である導電性ポリマーを含む粒子を用いることが有利であると分かった。この場合、無機および/または有機粒子コアの含量に対する導電性ポリマーの含量の割合も広い制限内で、好ましくは、1:(0.05〜20)、特に好ましくは1:(0.2〜5)の範囲で変化させることができる。
【0069】
さらに、導電性ポリマーおよび導電性ポリマーを含む粒子は、任意に、各場合において、少なくとも一種の界面活性剤、保護コロイド、酸捕捉剤および/または錯体形成剤を少量または微量含んでもよい。要すれば、各場合に、組成物a)、b)および/またはc)に、少なくとも一種の添加剤、任意に少なくとも一種の界面活性剤、例えば、各場合に、少なくとも一種の非イオン性、アニオン性および/または両性界面活性剤;少なくとも一種の保護コロイド、例えば、ポリビニルアルコール;少なくとも一種の酸捕捉剤、例えば、アンモニアまたは、例えば酢酸塩のような弱塩基、および/または少なくとも一種の錯体形成剤、例えば、アンモニア、クエン酸、EDTAまたは乳酸を添加してよい。少なくとも一種の界面活性剤の含量は、好ましくは、0.01〜1.5重量%である。少なくとも一つの保護コロイド、少なくとも一種の酸捕捉剤および/または少なくとも一種の錯体形成剤の含量は、各場合に、好ましくは0.01〜0.8重量%である。
【0070】
組成物および被覆の製造における処理装置の技術の変形
導電性ポリマーを含む粒子を、要すれば、特に乾燥状態で、洗浄、乾燥および/または加熱してから、分散する、または組成物に添加することができる。水含量が比較的高い混合物または水のみが、溶媒として好ましく添加される。しかしながら、多くの変形において、少量の有機溶媒、特に少なくとも一種のアルコール、特に、1〜10重量%の例えばエタノール、プロパノールおよび/またはイソプロパノールのような少なくとも一種のアルコールを添加することが有利または必要である。
【0071】
乾燥状態ではなく分散体として無機および/または有機粒子を、組成物に添加することが特に好ましい。これに関して、乾燥粉末が、溶媒中に分布し分散体の安定化に貢献する電荷を含むことが有利である。これに関して、電荷キャリアを添加してまたは添加せずに、無機および/または有機粒子の安定した分散が生じる。例えば、溶解機、ボールミル、ビードミルおよび/またはウルトラトゥラックスマシーン(ultraturrax machine)を用いて再分散を行うことができる。これに関して、粒子表面を部分的にまたは、できるだけ完全にバインダーで湿潤させることが有利である。この粒子含有分散体を、この段階において部分的または完全に調製された残りの組成物とpH値が類似している分散体に添加することが最も好ましい。例えば水のような溶媒のかなりの部分が放出されるまでは、特に組成物の有機構成成分の化学反応および/または重合が前記組成物中で本質的にまたは実質的に起こらないように、バインダー系のバインダー、および/または、導電性ポリマーを含む粒子、特に有機粒子を添加することも最も好ましい。
【0072】
一部の変形態様において、構成成分を一緒に混合して組成物を形成する場合、少なくとも一種の液体および無機および/または有機粒子をまず添加し、続いてバインダー系を添加する。
【0073】
好ましくは、一緒に混合されて組成物を形成する全ての構成成分を、各場合に、溶液および/または分散体として、組成物に添加する。
【0074】
他の変形態様において、構成成分を一緒に混合して少なくとも一種の溶媒を含む組成物を形成する場合、無機および/または有機粒子を添加する前に、まず、バインダー系の一部および可能性としては添加剤または、全バインダー系を用いる。最初に、バインダー系の固形物含量の3〜25重量%のみを、無機および/または有機粒子を既に含む組成物に添加する、および/または、それらを、この段階において組成物に添加することが特に好ましい。この段階において、必要なら、分散体のレオロジーを適合および/または調節する、および/または、組成物を例えば摩砕によるせん断力に付することができる。
【0075】
まず、全バインダー系を組成物に添加する場合、まず、組成物のレオロジーを適合および/または調節し、次に、無機および/または有機粒子を添加することが有利である。
【0076】
可動性防食アニオン
可動性防食アニオンは、導電性ポリマー中におよび生成物の被覆の組成物中に、酸化中にポリマー鎖上に形成される求電子中心の電荷補償に必要な電荷を提供する機能、および金属表面上に吸着することにより初期防食作用を提供する機能を有する。
【0077】
導電性ポリマーの調製中にアニオンを出発材料混合物に添加しない場合、前記導電性ポリマーは、分散体中に存在するアニオンをその格子中に混入するが、次に、可動性防食アニオンを混入することはできない。多くの場合、次に、あるとしても、より多孔質で、薄く、導電性の低い層が、粒子上に形成される。
【0078】
導電性ポリマーの製造および使用に関する従来技術の大部分の検討においてアニオンを添加している場合、概して、形成中に導電性ポリマーの電気的中性が達成される。さらに、例えば、電気またはイオン伝導性、並びに形状および機能(酸化電位)のような導電性ポリマーの特異的特性は、アニオンにより影響を受ける。今回、防食効果もアニオンにより達成することができることが確認された。
【0079】
少なくとも一種のアニオンは、好ましくは、水溶性または、少なくとも一種の極性溶媒または溶媒混合物中への溶解性が少なくとも1×10-3mol/lである。さもなければ、アニオンを、もはや、導電性ポリマー(=塩)中に混入することもできないからである。
【0080】
しかしながら、モリブデン塩および/またはタングステン塩のような同時に酸化剤として作用する少なくとも一つの可動性防食アニオンも、追加的に、または、酸化効果を呈しない可動性防食アニオンの代わりに、導電性ポリマー中に混入することができる。
【0081】
本発明の方法において、防食可動性アニオンの少なくとも一つのタイプは、好ましくは、安息香酸塩、例えば乳酸塩のようなカルボン酸塩、ジチオール、フマル酸塩、複合フッ化物、ランタネート、メタホウ酸塩、モリブデン酸塩、例えばニトロサリチル酸塩に基づくニトロ化合物、オクタン酸塩、リン含有オキシアニオン、例えば、リン酸塩および/またはホスホン酸塩、フタル酸塩、サリチル酸塩、ケイ酸塩、例えばホルムアルデヒドスルホキシレートのようなスルホキシレート、チオール、チタン酸塩、バナジウム酸塩、タンスグテン酸塩および/またはジルコン酸塩に基づく少なくとも一種のアニオンであり、特に好ましくは、MeF4および/またはMeF6のようなチタン複合体フッ化物および/またはジルコニウム複合体フッ化物(この場合、他の化学量論的比率もあり得る)に基づく少なくとも一種のアニオンである。
【0082】
本発明の方法において、防食性または付着媒介性アニオンの少なくとも一つのタイプとして、アニオンの混合物が好ましく用いられ、特に好ましいのは、少なくとも一種の前記防食可動性アニオンおよびホスホン酸塩、シラン、シロキサン、ポリシロキサンおよび/または界面活性剤に基づく混合物であり、特に、少なくとも一種の複合体フッ化物、チタン酸塩、ジルコン酸塩、モリブデン酸塩および/またはタングステン酸塩との混合物である。
【0083】
酸化的にデポー物質中に混入することができるアニオンは、特に、アルカン酸、アレーン酸、ホウ素含有酸、フッ素含有酸、ヘテロポリ酸、イソポリ酸、ヨウ素含有酸、ケイ酸、ルイス酸、鉱酸、モリブデン含有酸、過酸、リン含有酸、チタン含有酸、バナジウム含有酸、タングステン含有酸、ジルコニウム含有酸、それらの塩、それらのエステルおよびそれらの混合物に基づくアニオンから選択することができる。
【0084】
好ましくは、少なくとも一種の可動性防食アニオンは、ポリマー単位の含量に関して1〜33モル%、好ましくは5〜33モル%の量で添加される。これらの添加量は、導電性ポリマーのドーピングの程度に対応する。他方、これらのアニオンは、導電性ポリマーの調製において過剰に添加してもよい。
【0085】
少なくとも一つのタイプのアニオンは、特に、これらのアニオンが、水中、少なくとも一種の他の極性溶媒中および/または少なくとも一種の非極性塩も含む混合物中で可動性であるように選択することができる。
【0086】
しかしながら、少なくとも一種の可動性防食アニオンに加えて、構造中に混入され得るおよび/または構造から移動して出ることができる性能を有さないおよび/または防食作用を有さない少なくとも一種のアニオンも、導電性ポリマー中におよび/または導電性ポリマーに加えて存在してよい。しかしながら、そのようなアニオンの割合は、所謂可動性防食アニオンと比較して大きすぎないことが好ましいことが多い。ある場合には、出発材料を酸化して導電性ポリマーとするのにしばしば必要とされる例えば酸化剤ペルオキソジスルフェートのような酸化剤と共に、さらなるアニオンも導入される。しかしながら、例えば、酸化剤としてH22およびFe2+/3+塩を用いる場合、Fe2+/3+塩を、多くとも10-4mol/l未満の触媒量で添加するなら、さらなるアニオンは混入されない。可動性防食アニオンに属するアニオンの割合は、多くの変形態様において、優れた防食効果を達成するようにできるだけ高くなるように選択すべきである。
【0087】
導電性ポリマーの調製において、特に、全てのタイプの可動性防食アニオンは、導電性ポリマー中および隣接物質中におけるこれらのアニオンの可動性を妨害しないようにこれらのアニオンが大き過ぎないように選択することが好ましい。好ましくは、特にポリスチレンスルホネートより小さな例えばモリブデン酸塩のようなアニオンが選択される。何故なら、ポリスチレンスルホネートは、概して、可動性のためには大き過ぎ、堅く混入されたアニオンとしてしか用いることができないからである。
【0088】
好ましくは、少なくとも一種の可動性防食アニオンは、導電性ポリマーの孔系の平均孔寸法より大きくない直径を有し、この直径は、孔系の平均孔寸法より少なくとも8%小さい、または少なくとも15%小さいことが好ましい。この点に関して、アニオンは、特に導電性ポリマー中において、孔の、例えば孔チャンネルの割合がかなり大きいために可動性であり、それにより、より迅速に移動し得る可能性があり、また実際に、まず第一に移動することができる。孔系の平均孔寸法よりかなり小さなアニオンは、導電性ポリマーの酸化還元電位と腐食性金属の腐食電位との相違の傾斜により電位差が存在するなら、孔系により妨害されずまたはあまり妨害されずに移動できる可能性が高い。
【0089】
本発明の方法において、バインダーを多く含む被覆が生成されるなら、可動性防食アニオンは、被覆の他の構成成分中においてもその可動性が妨害されないまたは実質的に妨害されないように小さな寸法を有すべきである。これらのアニオンは、腐食性攻撃の場合に、殆ど常に無傷界面より電位が低い損傷領域に移動する。
【0090】
好ましくは、カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、オキシカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、二置換および/または三置換アレーンカルボン酸、メタ、オルトおよび/またはパラ置換アレーンカルボン酸;アミノ、ニトロ、スルホン(SO3H−)および/またはOH基を含むアレーン酸;スルホン酸、鉱オキシ酸、ホウ素含有酸、マンガン含有酸、モリブデン含有酸、リン含有酸、ホスホン酸、フルオロケイ酸、ケイ酸;希土類および/またはイットリウムからの少なくとも一種の元素を含む酸、例えば、セリウム含有酸、イオウ含有酸、チタン含有酸、バナジウム含有酸、タングステン含有酸、錫含有酸、ジルコニウム含有酸、それらの塩、それらのエステルおよびそれらの混合物に基づくアニオンから、少なくとも一種の可動性防食アニオンが選択される。
【0091】
好ましくは、少なくとも一種のアニオンは、アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、安息香酸、コハク酸、テトラフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸、ヘキサフルオロジルコン酸、没食子酸、ヒドロキシ酢酸、ケイ酸、乳酸、モリブデン酸、ニオブ酸、ニトロサリチル酸、シュウ酸、ホスホモリブデン酸、リン酸、ホスホロケイ酸、フタル酸、サリチル酸、タンタル酸、バナジウム酸、酒石酸、タングステン酸、それらの塩、それらのエステルおよびそれらの混合物に基づくアニオンから選択される。
【0092】
多くの場合、粒子上の被覆の導電性、および金属表面上の被覆の導電性も、異なる価数状態をとることができると共に他の価数状態に容易に変化することができる少なくとも一種の可動性防食アニオンを添加することにより増加する。
【0093】
損傷領域において、価数変化および/または配位子変化(配位変化)、例えば、ヘキサフルオロチタン酸塩および/またはヘキサフルオロジルコン酸塩の場合の配位子変化を奏するアニオンも混入することができる。溶解性の変化も、有利にそれに相関している。これは、最初に溶解性のアニオンが、損傷領域において沈殿し、防食層を形成することを意味している。価数変化は、酸化または還元として起こり得る。好ましくは、そのような層は、酸化物の層、および/または、貧溶性塩の層である。ヘキサフルオロチタン酸塩および/またはヘキサフルオロジルコン酸塩を用いる場合、導電性ポリマーの調製のために用いられる混合物にフッ化水素酸を添加することが有利であるとわかった。
【0094】
今回、実験的に、例えば、TiF62-、ZrF62-、CeO44-、MnO4-、MnO42-、MoO42-、MoO44-、VO42-、WO42-、WO44-のような少なくとも一つの可動性防食アニオンが、配位子交換、価数および/または溶解の変化を奏し、損傷の領域におよび/または層剥離前面の領域に酸化防止層が形成されることがわかった。大部分の複合塩のようなそのようなアニオンが、特に有利である。
【0095】
2雰囲気において行なった層剥離実験において、モリブデン酸イオンが、実際、ポリピロールに基づく導電性ポリマーから電位誘導的に放出され、損傷部に移動し、そこで、X線分光によりモリブデン酸塩が検出されることが、今回発見された。
【0096】
導電性ポリマーの調製において、好ましくは、例えばホスホン酸塩、シラン、シロキサン、ポリシロキサンおよび/または界面活性剤のようなリン含有オキシアニオンに基づく少なくとも一種のアニオンも、少なくとも一つのタイプの付着媒介性アニオンとして、混合物に添加することができる。
【0097】
好ましくは、少なくとも二つのタイプのアニオンの混合物も、少なくとも一つのタイプの防食性および/または付着媒介性アニオンとしてデポー物質に混入することができ、特に好ましくは、少なくとも一つのタイプの前記防食可動性アニオンに基づくアニオンと、少なくとも一つのタイプの前記付着媒介性アニオン、特に、カルボン酸塩、複合フッ化物、モリブデン酸塩、ニトロ化合物;例えばホスホン酸塩のようなリン含有オキシアニオン;ポリシロキサン、シラン、シロキサンおよび/または界面活性剤に基づくアニオンから選択されるアニオンとの混合物、最も好ましくは、前記防食可動性アニオンの少なくとも一種に基づくアニオンと、前記付着媒介性アニオンの少なくとも一つのタイプとの混合物である。特に、一方では、カルボン酸塩、複合フッ化物、モリブデン酸塩およびニトロ化合物に基づくアニオン、および他方では、リン含有オキシアニオン、ポリシロキサン、シラン、シロキサンおよび/または界面活性剤に基づくアニオンのタイプから選択される、複数タイプのアニオンの混合物が混入される。
【0098】
損傷領域を少なくとも部分的に陽極的にかつ陰極的に保護する保護物質を、クロム酸塩と同様の方法で形成するアニオンを選択することが特に好ましい。これに関して、価数の変化を呈し得るアニオン、および/または、分解し得る複合アニオンが好ましい。
【0099】
また、例えば4+または6+のような、より高い酸化状態を有するサブグループ元素のアニオンが、特にオキシアニオンが、特に好ましく混入される。これらは、保護すべき金属表面上に、この表面に導電的に被覆された粒子を含む有機被覆が設けられている場合、特に優れた防食効果を提供することができる。
【0100】
防食アニオンを用いる場合、これらが、例えば腐食により金属表面から溶出してくるカチオンのような損傷領域に存在するカチオンと一緒になって、金属表面上に、できるだけ緻密でできるだけ密封されている不動態化層を形成することが有利であり、不動態化層の少なくとも一つの形成された物質は、界面で用いられるpH範囲においてイオン伝導性でなく安定である。これらの物質は、例えば、酸化物、水酸化物およびリン酸塩、またはそれらの混合物であり得る。
【0101】
多くの場合、形成される被覆の導電性は、導電性ポリマー中の少なくとも一つの可動性防食アニオンの濃度を上げることにより増加する。好ましくは、最初に用いた出発材料の含量(=ドーピングの程度)に対する導電性ポリマーに混入された少なくとも一つのアニオンの含量の割合は、少なくとも1モル%、好ましくは少なくとも5モル%、特に好ましくは少なくとも10モル%、最も好ましくは少なくとも15モル%、特に少なくとも20モル%である。理論的には、50モル%を達成することができるが、実際には、これは明らかに達成されない。
【0102】
酸化剤
導電性ポリマーの製造に用いられる出発材料混合物中の酸化剤は、例えば陰極/遊離基機構に従って起こる鎖合成を開始するが、この材料の消費を維持する機能を有する。従って、酸化剤が、概して、好ましくは33モル%を超える量で、出発材料混合物に添加される。少なくとも一つの出発材料(デポー物質、すなわち、アニオンが混入された導電性ポリマーを形成することができるモノマーおよび/またはオリゴマー)を少なくとも一つの生成物(=導電性ポリマー)に転化するためには、導電性ポリマーの電気的中性のためにアニオンが必要であり、場合により酸化剤が重合に必要である。好ましくは、特に少なくとも一つのアニオンが同時に酸化剤として作用しないおよび/または電気化学的および/または光化学的に重合しない場合、少なくとも一つの酸化剤を添加する。
【0103】
化学的転化用の酸化剤は、H22に基づく少なくとも一つの化合物、例えば、過酸化バリウム、過酢酸、過安息香酸、過マンガン酸、ペルオキソモノ硫酸、ペルオキソ二硫酸、ルイス酸、モリブデン酸、ニオブ酸、タンタル酸、チタン酸、タングステン酸、ジルコン酸、イットリウム含有酸、ランタニド含有酸、Fe3+含有酸、Cu2+含有酸、それらの塩、それらのエステルおよび/またはそれらの混合物であり得る。
【0104】
酸化剤として、例えば、酸、多価数状態にあるそれらの塩、例えば、鉄塩、あるいは、過酸化物および/または過酸、例えば、ペルオキソジスルフェートに基づく少なくとも一つの化合物を用いることができる。
【0105】
複数の価数をとることができると共にこれらの価数を多かれ少なかれ容易に変化させることができる酸化剤を用いると、適切な通常はやや低いまたは平均的なpH値を選択する必要があることが多い。pH値は、多くの場合、2〜6の範囲、特に、2〜4、または3〜5である。酸化剤の酸化電位が、酸化すべき出発材料の酸化電位より高いこと、または少なくとも同じ程度であることを確保することも重要である。
【0106】
好ましくは、本発明の組成物に添加される導電性ポリマーを含む粒子は、酸化剤を含まないまたは実質的に含まない。
【0107】
導電性ポリマーを含む粒子
有機および/または無機粒子の組成、含量および構造は、広い範囲で変化し得る。
【0108】
粒子の平均寸法は、走査型電子顕微鏡において0.1μmの平均寸法の範囲で計算すべきであり、適切な調製において、アグロメレートの個々の部分の評価および計算と大きな個々の粒子としてのアグロメレートの評価および計算とは別々に行われ、5nm〜0.1μm未満の粒子寸法範囲における平均寸法はマルベルン・インスツルメンツ(Malvern Instruments)のZeta−Sizer型レーザードップラーアネモメーターで決めるべきであり、より小さな平均粒子寸法では、電子回折がその決定に好ましい。この点において、分離可能な個々の粒子を含む分割性アグロメレートを、各場合に、複数の個々の粒子として評価および計算すると、走査型電子顕微鏡により検出される粒子の近似を得ることができ、これは、ある程度、緩和な摩砕の作用に相当し得る。
【0109】
有機および/または無機粒子の寸法は、概して、粒子の被覆中および、できるだけ、組成物の製造、塗布および乾燥においても、および/または、金属表面上の被覆のその後の処理中に、著しく変化してはならない。
【0110】
粒子は、要すれば、予備被覆、化学的変性および/または物理的変性してよい。すなわち、例えばSiO2粒子の場合、酸性および塩基性、親水性および疎水性粒子の間を区別してよい。
【0111】
これに関して、粒子は:実質的にクラスター、ナノ粒子、ナノチューブの状態で、各場合に、ほぼ、同じ大きさ、繊維状、針状、小板状、ディスク状および/またはコイル状粒子の形状であり、各場合に、ほぼ、繊維状、コイル状および/または多孔質構造、固体粒子、被覆および/または充填粒子、中空粒子および/またはスポンジ状粒子:から選択される少なくとも一つの状態で存在することができる。各場合に、特に好ましいのは、実質的に平面のまたは線状の障壁粒子および/または被覆された粒子、例えば、被覆された葉状ケイ酸塩である。
【0112】
特に、無機クラスター、ナノ粒子または小さな粒子および導電性ポリマーを含む粒子の場合、適当な手段により、例えば、混合物の水性分散体へのピロリン酸塩の添加により凝集の傾向を抑制し、混合物を充分に分散させることが有利である。
【0113】
特に、無機粒子を、要すれば、摩砕、乾燥および/または再分散してから、液体を添加する、または混合物に添加して反応させて導電性ポリマーを形成する、または組成物に添加して金属表面を実質的または完全に乾燥した状態で被覆する、または液状分散体に添加することができる。
【0114】
粒子上の導電性ポリマーの層の厚さは、広い範囲で変化することができる。好ましくは、層厚および/または粒子の内側の部分は1〜200nmの範囲、特に好ましくは、2〜100nmの範囲であるが、特に、1〜40nmまたは3〜80nmの範囲である。これらの層は、要すれば、有機粒子の場合より薄く形成された無機粒子の場合である。より厚い層は、もちろん、原理的に考えられ可能であるが、被覆された粒子をもはや分散できない場合は、制限することができる。これらのシェルの層厚は、特に、反応時間、出発材料の濃度、および出発材料混合物の液体成分と粒子との間に得られる界面に依存する。
【0115】
しかしながら、有利に被覆された無機粒子は、しばしば、異なる方法で、被覆有機粒子に再分散されてから、特にアグロメレートおよび/またはアグリゲートが存在する場合、バインダー含有マトリクスと混合される。しかしながら、無機粒子は、導電性ポリマーで被覆するためのコアとして適している。何故なら、簡単な方法で、例えば、塗料のような有機組成物中に、特に混合および/または穏やかな摩砕により、混入することができるからである。
【0116】
本発明の混合物中、または、金属表面を粒子で被覆するための組成物中、各場合に、少なくとも一つの以下のタイプの導電性ポリマー含有粒子が存在してよい:
1)導電性ポリマーで部分的または完全に被覆された典型的コア・シェル粒子(被覆粒子)、これらの粒子は無機被覆粒子であることが多い、
2)少なくとも部分的に導電性ポリマーをその内部に含む粒子、または、内部において、これらの粒子は、導電性ポリマーと共に生成されることが多い有機粒子である、
3)任意の方法で形成または製造することができる導電性ポリマーであり、粒状で存在し、場合により別途形成され、および/または、必ず粒子コアの周囲には設けられていない、すなわち、粒子上の被覆として形成されておらず;導電性ポリマーは、特に、これらがなお成長している、合体しているおよび/または修復している場合にも、被覆すべき粒子中に存在してもよい、
4)例えばホスホネート基のような少なくとも一つの化学的基を結合を促進している分子上に含む、導電性ポリマーの所謂「付着媒介剤粒子」、
5)a)導電性ポリマーからなる粒状シェルおよび/またはb)導電性ポリマーを含む粒子の破片、および/または
6)粒状コアを含むことなく別途形成されると共に本質的または完全に導電性ポリマーからなる導電性ポリマー含有粒子。
【0117】
導電性ポリマーを含む粒子は、特に、1)導電性ポリマーで部分的または完全に被覆された典型的コア・シェル粒子(被覆粒子)、2)多くの有機粒子のように、少なくとも部分的に導電性ポリマーをその内部に含む粒子、3)任意の方法で形成または製造することができる、本質的または完全に導電性ポリマーからなる粒子、4)例えばホスホネート基のような少なくとも一つの化学的基を結合を促進している分子上に含む、導電性ポリマーの所謂「付着媒介剤粒子」、5)導電性ポリマーからなる粒状シェルおよび/または導電性ポリマーを含む粒子の破片、および6)粒状コアを含むことなく別途形成されると共に本質的または完全に導電性ポリマーからなる導電性ポリマー含有粒子、からなる群より選択される。
【0118】
アグロメレートおよび/またはアグリゲートのようなそれらの集積体を含む導電性ポリマーを含む粒子の平均粒径は、好ましくは10nm〜20μmの範囲にある、および/または、アグロメレートを含まずアグリゲートを含まない導電性ポリマー含有粒子の平均粒径は10nm〜10μmの範囲にある。後者の場合、粒子または粒子を含む組成物を、例えば摩砕により適切に粉砕してよい、および/または、アグロメレートおよびアグリゲートを粒子寸法の決定において計算しなくてよい。
【0119】
全てのそのような粒子は、任意に、本発明の被覆中に混入することができる。これらは、本発明の要旨において、「被覆粒子」または「導電性ポリマーを含む粒子」という用語に包含される。これらの個々のタイプの粒子の含量は比較的少なくても多くてもよい。被覆プロセスに関する詳細は、「被覆粒子」の全てのこれらの他の変形にも適切に適用される。
【0120】
導電性ポリマーを含む有機粒子
有機粒子の材料において、「ポリマー」という用語は、ホモポリマー、コポリマー、ブロックコポリマーおよび/またはグラフトコポリマーから選択される少なくとも一つのポリマーを意味すると解される。これらのポリマーは、分散性および/または非分散性粒子からなり得る。これらの粒子は、コア−シェル粒子用のコアとして用いることができる。特に、有機粒子の調製において、導電性ポリマーが、これらの粒子の内部に部分的、凡そまたは完全に導入されることも起こり得、その場合、そのような粒子は、本発明の意味において「被覆粒子」としておよびコア−シェル粒子としてもみなされる。
【0121】
特に、有機ポリマーは、本質的に以下のポリマーからなる。
【0122】
導電性ポリマーを含む有機粒子は、好ましくは、概してまたは完全に、スチレン、アクリル酸塩、メタクリル酸塩、ポリカーボネート、セルロース、ポリエポキシド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、シロキサン、ポリシロキサン、ポリシランおよびポリシラザンに基づくポリマーからなる群より選択される粒子である。
【0123】
1.スチレン、アクリル酸塩および/またはメタクリル酸塩に基づくポリマーであって、後者の2つは、以下において、(メタ)アクリレートと呼ばれる。これらのポリマーは、特に、(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ(メタ)アルキルアクリレート、グリシジル(メタ)アクリレートおよびエチレングリコール(メタ)アクリレートから選択される(メタ)アクリレート類から本質的になる、および/または、スチレンから本質的になる、および/または、置換スチレンから本質的になり、その各場合に、独立して、例えばヒドロキシド、アルキル、アルコキシおよび/またはスルホネートのような置換基を有する。
【0124】
2.ポリカーボネートに基づくポリマー:これらは、特に、ビスフェノールA、B、C、Fおよび/またはZに基づき、例えばアルキル、アルコキシおよび/またはアリールで任意に置換されている有機カーボネート類から本質的になってよい。
【0125】
3.セルロースに基づくポリマー:これらは、特に、アルキルセルロースおよびヒドロキシアルキルセルロースから選択され、任意に、例えばヒドロキシド、アルキル、アルコキシ、カルボキシレートおよび/またはスルホネートのような置換基で置換されているセルロース類から本質的になってよい。
【0126】
4.ポリエポキシドに基づくポリマー:これらは、特に、非置換エポキシドから、および/または、例えばヒドロキシド、アルキル、アルコキシおよび/またはスルホネートのような置換基で置換されているエポキシドから選択されるエポキシド類から本質的になってよい。
【0127】
5.ポリオレフィンに基づくポリマー:これらは、特に、エチレン、プロピレン、イソブチレン、ブチレンおよび4−メチルペンテンから選択されるポリオレフィンから、および/または、例えばアルキル、アミノおよび/またはヒドロキシのような置換基で置換されている少なくとも一つのポリオレフィンから本質的になってよい。
【0128】
6.ポリイミドに基づくポリマー:これらは、特に、非置換ポリイミドから、および/または、例えばヒドロキシド、アルキル、アルコキシおよび/またはスルホネートのような置換基で置換されているポリイミドから選択されるポリイミド類から本質的になってよい。
【0129】
7.ポリエーテルに基づくポリマー:これらは、特に、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドから選択されるエポキシドから、および/または、例えばアルキル、アリール、アミノおよび/またはクロライドのような置換基で置換されているエポキシドから本質的になってよい。
【0130】
8.ポリウレタンに基づくポリマー:これらは、特に、非置換ポリウレタンから、および/または、例えばヒドロキシド、アルキル、アルコキシおよび/またはスルホネートのような置換基で置換されているポリウレタンから選択されるポリウレタン類から本質的になってよい。これらは、特に、ジイソシアネートおよびジオールを介して、またはジイソシアネートおよび第一/第二ジアミンを介して製造することができ、ここで、ヒドロキシ末端ジオール、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネートおよび/またはオリゴ(メタ)アクリレートをジオールとして用いることができ、n=5〜12であるアルキルジアミンを、特に、ジアミンとして用いることができる。
【0131】
9.シロキサンおよび/またはポリシロキサンに基づく、およびシリコーンにも基づくポリマー:これらは、特に、非置換の、および/または、例えばヒドロキシド、アルキル、アルコキシ、アミノ、メルカプトおよび/またはスルホネートのような置換基で置換されているシロキサンおよび/またはポリシロキサンから本質的になってよい。
【0132】
10.ポリシランおよび/またはポリシラザンに基づくポリマー:これらは、非置換の、および/または、例えばヒドロキシド、アルキル、アルコキシおよび/またはスルホネートのような置換基で置換されているポリシランおよび/またはポリシラザンから本質的になってよい。例えば、これらは、ポリ(シクロヘキシルメチル)シラン、ポリ(ジヘキシル)シランおよび/またはポリ(フェニルメチル)シランから本質的に、および/または、ポリ(1,2−ジメチル)シラザンおよび/またはポリ(1,1−ジメチル)シラザンから本質的になってよい。
【0133】
しかしながら、特に、例えばポリアクリレート、ポリスチレン、ポリウレタンおよび/またはポリシロキサンのような分散性有機ポリマーに基づくコアが、有機粒子の被覆に、または、導電性ポリマーの製造と共に有機粒子の製造に適しており、それによって、それらから製造された有機粒子は、その内部において導電性ポリマーの割合が増加していることが多い。これらのポリマーは、導電性ポリマーで有機ポリマーを被覆するためのプロセスにおいて処理することもでき、有機粒子が、まず、特に同じ溶液または分散体中および/または同じゾルまたはゲル中で製造され、それに続いて、これらの有機粒子が、本発明により被覆される、あるいは、有機粒子および導電性ポリマーが実質的に同時にまたは同時に製造され、それによって、それらから形成された粒子が、その内部に導電性ポリマーを含むことが多く、ある場合には、表面上にも導電性ポリマーを有する。このプロセスは、好ましくは、ワンポットプロセスである、および/または、実質的に連続プロセスである。有機粒子の製造は、この場合、好ましくは、特に界面活性剤を含まないエマルジョン重合に基づく。エマルジョン重合のプロセス、可能性および生成物は、原理的に知られている。これらのエマルジョン重合した有機粒子は、前もって製造しているので、普通は安定分散体の状態で存在する。
【0134】
多くの態様において、導電性ポリマーと一緒に有機粒子を製造することが特に有利である。この場合、限られた狭い粒径分布を有しモノモードまたはバイモードの粒径分布を有する粒子、および/または、有機ポリマーと導電性ポリマーが充分に互いに混合されまたは合体された粒子を製造することが可能である。この場合、例えば、30〜400nmの寸法範囲のモノモードまたはバイモードの分布が形成され得る。しかしながら、有機粒子が最初に製造され、次に、導電性ポリマーで被覆、または晩期のみにおいて被覆される、および/または、表面に近い領域において混合されてもよい。
【0135】
有機粒子の製造において、特に、不安定酸化剤により、高すぎるイオン含量により、および/または、過度の激しい攪拌により起こりえる、ミセル形成への著しい影響が生じないことを確保するように注意しなければならない。実際、これに関して、多くの態様において、ミセルから有機粒子が形成される。ここにおいても、添加すべき成分の化学的相溶性を、注意深く調べるべきである。この場合、化学的、電気化学的および/または光化学的に重合も起こり得る。
【0136】
原理的に、少なくとも一つの被覆プロセスに従って、全てのタイプの有機粒子を、要すれば貧分散性または非分散性粒子のカプセル封入により、導電性ポリマーで被覆することができる。この原稿のこのセクションの要旨における分散性とは、実質的に凝集が生じないように溶液または分散体中および/またはゾルまたはゲル中に有機粒子の安定な分散を提供することが可能であることを意味する。
【0137】
被覆粒子用のコアとしての無機粒子
好ましくは、無機粒子は、少なくとも一つの無機物質から実質的になり、特に、各々の場合、実質的に、少なくとも一つのホウ化物、炭化物、炭酸塩、銅塩、鉄塩、フッ化物、フルオロケイ酸塩、ニオブ酸塩、窒化物、酸化物、リン酸塩、リン化物、ホスホケイ酸塩、セレン化物、ケイ酸塩、アルミニウム含有ケイ酸塩、硫酸塩、硫化物、テルル化物、チタン酸塩、ジルコン酸塩から、少なくとも一つのタイプの炭素、少なくとも一つの粉末状鉱物、少なくとも一つの、ガラス、フリット、アグロメレート、ガラス様材料、アモルファス材料および/または複合材料の粉末、少なくとも一つの合金、および/または、少なくとも一つの金属からなり、また、合金および/または金属が導電性ポリマーの製造において早期に腐食せず局所要素を形成しない限りは、それらの混合結晶、それらの連晶および/またはそれらの混合物からなる。
【0138】
有機粒子は、少なくとも一つの物質から実質的になり、特に、各場合に、実質的に、少なくとも一つのアルカリ土類炭酸塩、アルカリ土類チタン酸塩、アルカリ土類ジルコン酸塩、SiO2、;ケイ酸塩、例えば、アルミニウム含有ケイ酸塩;雲母、クレー鉱物、ゼオライト:貧溶性硫酸塩、例えば、硫酸バリウムまたは水和硫酸カルシウムから、例えばSiO2および/またはケイ酸塩に基づくフレークから、また、アルミニウム、鉄、カルシウム、銅、マグネシウム、チタン、亜鉛、錫および/またはジルコニウムを含む酸化物からなる。
【0139】
特に、例えばシリカゾルのようなゾルおよび/またはゲルを介して、微細粒子を製造することができる。ゾルを被覆する利点は、高濃度にも拘わらず成分の可動性が高いことにある。そのような粒子は、平均粒径が10〜120nmの範囲であることが多い。それにより形成された粒子の細かい粒度故に、特にシェルを有する薄い被覆の場合、導電性ポリマーの特に均一な分散が得られる。
【0140】
そのような無機粒子の調製において、一部の場合に、導電性ポリマーがこれらの粒子の内部に主としてまたは完全に混入されるかも知れず、そのような粒子は、ここで、本出願の意味において、「被覆粒子」として、およびコア−シェル粒子としてもみなされる。
【0141】
一部の態様において、無機粒子においてしばしば生じる粒径分布より狭い粒径分布が特に好ましい。これらは、例えば、異なる分布の混合により、スクリーニングまたは寸法分類により、または摩砕により得ることができる。
【0142】
特に好ましいのは、実質的に小板状、実質的に線形および/または実質的に針状に形成された無機粒子である。このようにして、これらは、障壁粒子として、より強力に作用することもできる。
【0143】
無機粒子は、特に粒径、濃度、密度、電解質含量等に依存して、ある程度、安定分散体中に存在することもできる。
【0144】
導電性ポリマーの製造に用いられるモノマー/オリゴマー:
導電性ポリマーを形成するために、出発材料混合物に、導電性ポリマーに転化することができるモノマーおよび/またはオリゴマーを添加する必要がある。モノマーおよび/またはオリゴマーは、「出発材料」と呼ばれる。モノマーおよび/またはオリゴマーは、好ましくは、芳香族化合物および/または例えばアルキンのような不飽和炭化水素化合物、ヘテロ環式化合物、炭素環式化合物、それらの誘導体および/またはそれらの組み合わせであって、そこから導電性オリゴマー/ポリマー/コポリマー/ブロックコポリマー/グラフトコポリマーを形成することができると共にX=Nおよび/またはSである非置換および/または置換へテロ環式化合物から特に好ましく選択される化合物、から選択される無機および/または有機のモノマーおよび/またはオリゴマーから選択される。
【0145】
イミダゾール、ナフタレン、フェナンスレン、ピロール、チオフェンおよび/またはチオフェノールに基づく非置換および/または置換化合物の添加が特に好ましい。
【0146】
通常、モノマーおよび/またはオリゴマーの置換、および/または、オリゴマー、ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマーおよび/またはそれらから形成されるグラフトコポリマーの置換は、特に、水素(H)、ヒドロキシル(OH)、ハロゲン(Br/Cl/F)、アルコキシ(O−アルキル)、アルキル(CXY)、カルボキシ(COH)、カルボキシレート(COOH)、アミン(NH2)、アミノ(NH3)、アミド(CONH2)、第一アンモニウム(NRH3+)、イミン(NH)、イミド(COHNH)、ホスホネート(PO32)、ジホスホネート、メルカプト(SH)、スルホン(SO2H)、スルホネート(SO3H)、アリール((C65n)および/または非分岐または分岐アルキル鎖であってさらなる置換基を有するものまたは有さないもの、により行うことができ、これらの置換基は大き過ぎないことが好ましい。
【0147】
導電性ポリマーの製造において、好ましくは出発材料を混合物に添加し、ここで、少なくとも一つの出発材料が比較的緩い分子構造を有する、および/または、少なくとも一つの形成された導電性ポリマーが比較的緩い分子構造を有し、特に、これにより、導電性ポリマーの孔系の平均孔寸法(多くの場合、分子チャンネル寸法)が大きくなる。
【0148】
好ましくは、これは、例えばCH3基の混入におけるような少なくとも一つのC原子のアルキル鎖、または、特に少なくとも2個または少なくとも4個のC原子および/または、例えば環系を形成するエーテルの橋の縮合により特に有機基を用いて形成される少なくとも一つの環系のような少なくとも一つの混入された側鎖を有する少なくとも一つの出発材料を用いることにより達成される。
【0149】
少なくとも一つの出発材料系は、特に、イミダゾール、ナフタレン、フェナンスレン、ピロール、チオフェンおよび/またはチオフェノールに基づく非置換および/または置換化合物から選択することができ、非置換出発材料のうち、ピロールが特に好ましい。最も特に好ましいのは、ビチオフェン、ターチオフェン;例えばメチルチオフェンおよび/またはエチルチオフェンのようなアルキルチオフェン;エチレンジオキシチオフェン;例えばメチルピロールおよび/またはエチルピロールのようなアルキルピロール;および/またはポリパラフェニレンに基づくモノマーおよび/またはオリゴマーから選択される非置換または置換化合物である。特に好ましいのは、置換された樹状および/または導電性のポリマーをそこから製造することができる出発材料である。要すれば、少なくとも一つの出発材料が、別途、予め製造される、および/または、稀な場合には、金属表面の被覆のための組成物中に添加される。しかしながら、少なくとも一つのデポー物質であるが、出発材料を通常含まないまたは実質的に含まないデポー物質が、通常、この組成物に添加される。
【0150】
置換出発材料において、特に好ましくは、ベンズイミダゾール、2−アルキルチオフェノール、2−アルコキシチオフェノール、2,5−ジアルキルチオフェノール、2,5−ジアルコキシチオフェノール、特にC原子数が1〜16である1−アルコキシピロール、特にC原子数が1〜16である1−アルコキシピロール、特にC原子数が1〜16である3−アルキルピロール、特にC原子数が1〜16である3−アルコキシピロール、特にC原子数が1〜16である3,4−ジアルキルピロール、特にC原子数が1〜16である3,4−ジアルコキシピロール、特にC原子数が1〜16である1,3,4−トリアルキルピロール、特にC原子数が1〜16である1,3,4−トリアルコキシピロール、1−アリールピロール、3−アリールピロール、特にC原子数が1〜16である1−アリール−3−アルキルピロール、特にC原子数が1〜16である1−アリール−3−アルコキシピロール、特にC原子数が1〜16である1−アリール−3,4−ジアルキルピロール、特にC原子数が1〜16である1−アリール−3,4−ジアルコキシピロール、特にC原子数が1〜16である3−アルキルチオフェン、特にC原子数が1〜16である3−アルコキチオフェン、特にC原子数が1〜16である3,4−ジアルキルチオフェン、特にC原子数が1〜16である3,4−ジアルコキシチオフェン、3,4−エチレンジオキシチオフェンおよびそれらの誘導体から、少なくとも一つの化合物が選択される。これに関して、特にC原子数が1〜16であるピロール−1−イルアルキルホスホン酸、特にC原子数が1〜16であるピロール−1−イルアルキルホスホン酸、特にC原子数が1〜16であるピロール−3−イルアルキルホスホン酸、特にC原子数が1〜16であるピロール−3−イルアルキルホスホン酸、特にC原子数が1〜12である5−アルキル−3,4−エチレンジオキシチオフェン、特にC原子数が1〜12である5−((−ホスホノ)アルキル−3,4−エチレンジオキシチオフェンおよびそれらの誘導体に基づいて少なくとも一つの化合物を選択することができ、これらは、デポー物質の製造のための基礎物質として製造され使用される、または組成物に添加される。C原子の数は、各場合において、互いに独立して、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および/または16であり得る。
【0151】
置換出発材料において、最も特に好ましくは、2−メチルチオフェノール、2−メトキシチオフェノール、2,5−ジメチリチオフェノール、2,5−ジメトキシチオフェノール、1−メチルピロール、1−エチルピロール、特に炭素原子数が10および/または12であるピロール−1−イルアルキルホスホン酸、特に炭素原子数が12であるピロール−1−イルアルキルホスフェート、1−メトキシピロール、1−エトキシピロール、特に炭素原子数が6、8および/または11であるピロール−3−イルアルキルホスホン酸、3−メトキシピロール、3−エトキシピロール、3,4−ジメチルピロール、3,4−ジメトキシピロール、1,3,4−トリメチルピロール、1,3,4−トリメトキシピロール、1−フェニルピロール、3−フェニルピロール、1−フェニル−3−メチルピロール、1−フェニル−3−メトキシピロール、1−フェニル−3,4−ジメチルピロール、1−フェニル−3,4−ジメトキシピロール、3−メチルチオフェン、3−エチルチオフェン、3−ヘキシルチオフェン、3−オクチルチオフェン、3−メトキシチオフェン、3−エトキシチオフェン、3−ヘキソキシチオフェン、3−オクトキシチオフェン、3,4−ジメチルチオフェン、3,4−ジメトキシチオフェン、5−((−ホスホノ)メチル−3,4−ジオキシチオフェンおよびそれらの誘導体から、少なくとも一つの化合物が選択され、これらは、デポー物質の製造のための基礎物質として製造され使用される、または組成物に添加される。
【0152】
これらは、分子内に少なくとも一つの付着媒介性基を含み、従って、「付着媒介剤」または「付着媒介剤粒子」と呼ばれる導電性ポリマーの製造のために使用することができる出発材料も含む。
【0153】
特に、エチルチオフェン、エチレンジオキシチオフェン、メチルチオフェン、3−エチルピロール、3−メチルピロール、N−エチルピロール、N−メチルピロール、3−フェニルピロールおよびそれらの誘導体から選択される少なくとも一つの化合物が製造され、デポー物質の製造のための基礎物質として用いられ、または、組成物に添加される。ヘテロシクロペンタジエン(HCP)、ジオキシ−3,4−ヘテロシクロペンタジエン(ADO−HCP)、ジ〜オクトヘテロシクロペンタジエン(OHCP)およびベンゾヘテロシクロペンタジエン(BHCP)も特に好ましい。
【0154】
求核攻撃により、本発明の被覆粒子からなる導電性ポリマー、または所定割合の導電性ポリマーを含む粒子を、pH値がそれらに適していない場合、化学的に攻撃することができる。従って、特に3−および/または4−位に例えばアルコキシおよび/またはアルキルのような少なくとも一つの置換基を有する出発材料であって、導電性の劣化につながり得る求核攻撃または不活性化により悪影響を受けない導電性ポリマーを形成する出発材料を用いることが有利である。これらは、特に、少なくとも一つのアルキル鎖を有するおよび/または少なくとも一つの環系を有するヘテロ環式化合物に基づく出発材料であり得る。さらに、そのような出発材料は、架橋性がそれにより有利に制限されること、およびそこから形成される導電性ポリマーが、通常、特に大きな孔チャンネルを有する孔系を有することでも有利である。最も特に好ましくは、そのモノマーおよび/またはオリゴマーが、少なくともある程度、水中に溶解および/または重合することができる化合物である。水中または水を含む溶媒混合物中で少なくとも部分的または一時的に重合することができる化合物が、特に有利である。
【0155】
同様に、導電性ポリマーの製造用の混合物に、水溶性であると共に、好ましくは、その酸化(=重合)後に、もはや水溶性でないまたはなお僅かにのみ水溶性である少なくとも一つの出発材料を添加することが好ましい。
【0156】
特に、より経済的である、および/または、より高い溶解性およびより高い拡散係数を有することができるので、モノマーが使用される。対応するモノマーを重合することができない場合、および、オリゴマーしか重合することができない場合、特に、オリゴマーが用いられる。オリゴマーは、多くの場合、モノマーより反応性であり得る。
【0157】
コポリマーおよび/またはブロックコポリマーの状態の出発材料が、同様に、モノマーおよび/またはオリゴマーに加えて、出発材料混合物中に早期に存在してよいが、特に被覆のポリマー骨格上に、例えばカルボキシおよび/またはエステル基のような少なくとも一つのさらなる有機構成成分とのさらなる化学的反応により、グラフトコポリマーが、通常、最初に形成される。
【0158】
好ましくは、重合して導電性ポリマーを形成した後に広いpH範囲において化学的に安定である少なくとも一つの出発材料を添加する。好ましくは、用いられる酸化剤は、選択されたpH範囲においても安定である。このpH範囲が、少なくとも1または2単位を含む、すなわち、例えば、3〜4.5の範囲のpH値を含むことが好ましい。
【0159】
これに関して、以下の物質を含むことのある出発材料混合物中で、導電性ポリマーおよび、場合により粒子も製造することができる。
【0160】
任意に、出発材料の含量が0.001〜25重量%または20重量%までである少なくとも一つのモノマーおよび/または少なくとも一つのオリゴマー、
少なくとも一つの可動性防食アニオン、および/または、このアニオンのキャリアとしての少なくとも一つの塩、エステルおよび/または少なくとも一つの酸であって、可動性防食アニオンの含量がアニオンとして計算して0.05〜50重量%であるもの、
任意に、酸化剤の含量が0.05〜50重量%の範囲である少なくとも一つの酸化剤、
少なくとも一つのタイプの無機および/または有機粒子であって、粒子の含量が1〜95重量%または96重量%までであるもの、
これらの全てと、溶媒を除くここに記載しないさらなる可能性のある添加剤は、合計で100重量%である:とともに
出発材料用、アニオン用および/または酸化剤用の少なくとも一つの溶媒が含まれ、溶媒の含量は1〜5000重量%、特に100重量%である。
【0161】
ここで、固形物の合計は、場合により後になってモノマー/オリゴマーまたは酸化剤を添加する場合、100重量%である。
導電性ポリマー
導電性のポリマーの形成に適切であるモノマーおよび/またはオリゴマー(出発材料)の量の添加により、少なくとも部分的に導電性のポリマー(=生成物、デポー物質)が酸化により形成される。酸化剤を加えると、酸化出発材料が出発材料から形成され得、次に重合し、それにさらなる基が結合し得る。比較的小数のオリゴマー(例えば、n=8であるもの)は、導電性ポリマーの特性をほとんどか、または全く示さない。導電性ポリマーは、還元された状態では電気的に中性である。導電性ポリマーの酸化(=重合)において、カチオンが形成され、従ってアニオンを引きつけることができる。酸化状態は、少なくとも1つの酸化剤により化学的に、電気化学的に、および/または光化学的に調整され得る。好ましくは、電気重合は実施されないが、代わりに、概ね化学および/または光化学重合のみが行われ、特に化学および/または光化学光化学重合のみが行われる。特に好ましくは、化学重合のみ、または主に化学重合のみが行われる。
【0162】
デポー物質は、原理的に、化学的、電気化学的、および/または光化学的に重合され得る。好ましくは、少なくとも1つのデポー物質またはそれを含有する組成物が、特に粒子または金属表面に、化学的および/または機械的に適用される。電気化学的な適用の場合、比較的に反応性のある金属表面は、金属物質の激しい溶解を抑制するために、前もって不動態化しなければならない。電気化学的な適用の場合では、従って、腐食抑制アニオンを、まず最初に不動態化層を常に形成するために、少なくとも一つの出発材料が重合される溶液に常に添加しなければならない。このようにして形成された導電性ポリマーは、自動的に腐食抑制アニオンを含有するが、腐食抑制アニオンを記載している出版物は、電位の低下の理由によるこれらのアニオンの放出を明確に記述していない。
【0163】
電気化学的な重合では、粒子は、多くの場合、陰ゼータ電位を有する必要がある。電気化学重合により粒子上に製造された被覆は、比較的に品質が悪いことが証明されている。光化学重合の場合、半導電性粒子が、多くの場合、必要であり、これは例えばUV照射下で欠陥電子を放出する。ここでも、電気化学重合により粒子上に製造された被覆は、比較的に品質の悪いことが見出されている。加えて、ポリマーシェルはUV照射下で損傷を受ける可能性がある。比較してみると、最適であることが証明されている被覆は、現在化学重合により製造されている。
【0164】
導電性ポリマーは、塩様構造を有し、このことは、アニオン電荷導電性ポリマーの場合、塩として記載することができる。
【0165】
少なくとも一つのポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、および/またはグラフトコポリマーは、以下において単に「ポリマー」、または「導電性ポリマー」と呼ぶ。本発明の方法では、少なくとも一つのデポー物質は、好ましくは少なくとも一つの導電性ポリマー、特にイミダゾール、ナフタレン、フェナントレン、ピロール、チオフェン、および/またはチオフェノールに基づく、特にピロールおよび/またはチオフェンに基づく少なくとも一つの導電性ポリマーである。好ましくは、導電性ポリマーは、ポロフェニレン、ポリフラン、ポリイミダゾール、ポリフェナントレン、ポリピロール、ポリチオフェン、および/またはポリチオフェニレンに基づいて形成されるか、または水中で少なくとも部分的に、または一時的に重合されているものである。特に好ましい導電性ポリマーには、例えばポリピロール(PPy)、ポリチオフェン(PTH)、ポリ(パラ−フェニレン)(PPP)、および/またはポリ(パラ−フェニレンビニレン)(PPV)に基づくものが挙げられる。デポー物質は、別々に、もしくは前もって混合物として製造され、次に組成物に添加される、および/または、希な場合、出発材料として組成物に添加される、および/またはデポー物質を形成するために組成物、および/または被覆中で反応させる。
【0166】
本発明の方法において、デポー物質からのアニオンの実質的または完全な放出を許す、好ましくは少なくとも一つのデポー物質および少なくとも一つのアニオンが選択され、それによって、特に電解質および/または欠陥からのカチオンのカチオン輸送率を著しく低下することができ、次にそれによって、金属/被覆界面の領域で有害なラジカルの形成を低減することができる。
【0167】
好ましくは、本発明により使用または製造される導電性ポリマーは、比較的長時間にわたってもそれ自体が放電することがないほど、またそれらのアニオンが還元されずに放出されることがないほど、酸化された(=ドープされた)状態で熱力学的に安定している。従ってこれらの化学系は、アニオンがデポー物質から早期に遊離する、導電性ポリマーではない他の多くのデポー系と区別される。
【0168】
特にC原子数が1〜16であるポリ(1−アルキルピロール)(PlAPy)、特にC原子数が1〜16であるポリ(1−アルコキシピロール)(PlAOPy)、特にC原子数が1〜16であるポリ(3−アルキルピロール)(P3APy)、特にC原子数が1〜16であるポリ(3−アルコキシピロール)(P3AOPy)、ポリ(1−アリールピロール)(PlArPy)、ポリ(3−アリールピロール)(P3ArPy)、特にC原子数が1〜16であるポリ(3−アルキルチオフェン)(P3ATH)、特にC原子数が1〜16であるポリ(3−アルコキシチオフェン)(P3ATH)、ポリ(3−アリールチオフェン)(P3ArTH)、特にC原子数が1〜16であるポリ(3−アルキルビチオフェン)、ポリ(3,3′−ジアルキリビチオフェン)、ポリ(3,3′−ジアルコキシビチオフェン)、ポリ(アルキルテルチオフェン)、ポリ(アルコキシテルチオフェン)、ポリ(3,4−エチルエンジオキシチオフェン)(PEDOT)およびポリ(ベンゾ〔b〕チオフェン)(PBTH)に基づく化合物から選択される少なくとも一つのポリマーを、製造すること、および/または混合物に添加することが特に好ましい。
【0169】
ポリ(1−メチルピロール)(PlMPy)、ポリ(1−メトキシピロール)(PlMOPy)、ポリ(3−メチルピロール)(P3Mpy)、ポリ(3−メトキシピロール)(P3MOPy)、ポリ(1−フェニルピロール)(PlPhPy)、ポリ(3−フェニルピロール)(P3PhPy)、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)、ポリ(3−メトキシチオフェン)、ポリ(3−ヘキソキシチオフェン)、ポリ(3−フェニルチオフェン)、ポリ(3−メチルビチオフェン)、ポリ(3−ヘキシルビチオフェン)、ポリ(3,3′−ジメチルビチオフェン)、ポリ(3,3′−ジヘキシルビチオフェン)、ポリ(3,3′−ジメトキシビチオフェン)、ポリ(3,3′−ジヘキソキシビチオフェン)、ポリ(3−メチルテルチオフェン)、ポリ(3−メトキシテルチオフェン)、特にC原子数1〜12のポリ(5−アルキル−3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(イソチアナフテン)(PITN)、ポリヘテロシクロペンタジエン(PHCP)、ジオキシ−3,4−ヘテロシクロペンタジエン(ADO−HCP)、ジ−〜オクトヘテロシクロペンタジエン(OCHP)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、置換および/または導電性ポリ(パラ−フェニレン)(PPPおよびLPPP)、ならびに置換および/または導電性ポリ(パラ−フェニレンビニレン)(PPVおよびLPPV)から選択される少なくとも一つのポリマーを、製造すること、および/または混合物に添加することが特に好ましい。
【0170】
特に好ましい導電性ポリマーには、とりわけ、ポリピロール(PPy)、ポリ(N−メチルピロール)(PMPy)、ポリ(3−アルキルピロール)(P3AlPy)、ポリ(3−アリールピロール)(P3ArPy)、ポリ(イソチアナフテン)(PITN)、ポリ(3−アルキルチオフェン)(P3AlT)、ポリ(アルキルビチオフェン)、ポリ(アルキルテルチオフェン)、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(3−アリールチオフェン)(P3ArT)、置換および/または導電性ポリ(パラ−フェニレンビニレン)(PPV)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)、ポリフェニレン(PP)、ポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリヘテロシクロペンタジエン(PHCP)、ポリジオキシ−3,4−ヘテロシクロペンタジエン(PADO)、ポリベンゾヘテロシクロペンタジエン(PBHCP)、ポリチオフェン(PT)、ポリ(3−アルキルチオフェン)(ここで、Rは、例えばメチル、ブチルなどのようなアルキルである)(P3AT)、ポリピロール(PPy)、ポリ(イソチアナフテン)(PITN)、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、アルコキシ−置換ポリ(パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)、ポリ(2,5−ジアルコキシ−パラ−フェニレンビニレン)(MEH−PPV)、導電性ポリ(パラ−フェニレン)(LPPP)、ポリ(パラ−フェニレンスルフィド)(PPS)、ならびにポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)が挙げられる。
【0171】
ポリマーのうち、ポリ(1,3−ジアルキルピロール)、ポリ(3,4−ジアルキルピロール)、ポリ(3,4−ジアルキルチオフェン)、ポリ(1,3,4−トリアルキルピロール)、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)、ポリ(1,3,4−トリアルコキシピロール)、ポリ(2−アリールチオフェン)(各場合において互いに独立して、特にC原子数が1〜16である)、または対応する出発材料からも選択されてもよい。アリール化合物のうち、特に1−フェニル、3−フェニル、1−ビフェニル、3−ビフェニル、1−(4−アゾベンゼン)および/または3−(4−アゾベンゼン)化合物が選択されてもよい。
【0172】
この場合において、好ましくは化合物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15および/または16のC原子数を含むアルキル鎖により、互いに独立して、製造および/または使用される。
【0173】
出発材料および/またはポリマーにおいて、好ましくは、各場合において互いに独立して、H、OH、COOH、CH2OH、OHC3、Cn2n-1(ここで、特にn=2〜12である)、OCn2n-1(ここで、特にn=2〜12である)、アルキル、アルコキシ、アリール、アミン、アミノ、アミド、第一級アンモニウム、イミノ、イミド、ハロゲン、カルボキシ、カルボキシレート、メルカプト、ホスホネート、S、スルホン、および/またはスルホネートが置換基として選択されてもよい。
【0174】
また含まれるものは、分子に少なくとも一つの付着媒介性基を含む導電性ポリマーであり、従って、「付着媒介剤」または「付着媒介剤粒子」と呼ばれる。
【0175】
この目的に適切な導電性ポリマーは、原理的に、多くの場合に既知であるが、ほとんどの場合、腐食防止の少なくとも一つの変形のためにそのようなものとして未だに記載されてなく、腐食防止がこのポリマーのために記載されている場合においても、腐食防止は、既に存在している不動態化層のないより反応性のある金属表面の場合では機能しない。個別の実施態様においても、少なくとも一つのデポー物質は、特に金属/被覆界面に近接して、組成物中にマトリクスを少なくとも部分的に形成することができる。導電性の最も低いポリマーは、市販されている。
【0176】
化合物毎にデポー物質のレドックス特性を著しく変えるため、置換基により、および/または別の基本分子(モノマー/オリゴマー)により変性されている導電性ポリマー、および/またはいくらか異なるレドックス特性を有する少なくとも二つの異なる基本分子(モノマー/オリゴマー)を含有する導電性ポリマーのいずれかを使用することが有利である。あるいは、または加えて、適切に異なるデポー物質を互いに混合してもよい。この目的のため、金属表面を含む化学系のためにレドックス電位の正確な値を示す、少なくとも一つの化合物を選択することができる、および/または異なるレドックス電位を有する異なる導電性ポリマーを含有する混合物を調製することができる。デポー物質のレドックス電位は、金属表面の腐食電位を、少なくとも75mV、少なくとも100mV、または少なくとも150mV、好ましくは少なくとも200mV、または少なくとも250mV、最も特に好ましくは少なくとも300m、または少なくとも350mV超える場合、特に適している。
【0177】
好ましくは形成される導電性オリゴマー、ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、および/またはグラフトコポリマーの平均孔径は、被覆の形成において、および/または混合物を乾燥するとき、不活性雰囲気中では特に60℃〜200℃の範囲、および空気中では、特に30℃〜80℃の範囲の温度の、より高い温度に調整することによって増大する。
出発材料および/または生成物混合物の溶媒
水が、多くの実施態様において、導電性ポリマーの製造のための混合物における唯一の溶媒として使用され得る。水を溶媒混合物における溶媒のうちの一つのとして使用することが有利であり、溶媒混合物の含水量は、従って、少なくとも5重量%を占める。このような方法は、より簡素であり、かつ環境に優しい方法で実施することができ、大部分のアニオンを溶液にもたらすことができる。特に多くのアニオンは水のみに可溶性であり、多くの場合、有機溶媒または多くの有機溶媒に可溶性ではないので、好ましくはより大きな割合の水が溶媒混合物に使用されるか、または実際に水のみが溶媒として使用される。
【0178】
水のみ、もしくは本質的に水のみが溶媒として添加されるか、または溶媒混合物の場合では、少なくとも一つのさらなる溶媒として、−30℃〜200℃の範囲、特に好ましくは−10℃〜160℃の範囲、または最も特に好ましくは1℃〜95℃の範囲の温度で液体である少なくとも一つの溶媒が添加される。これに関して、溶媒は、任意に、本質的に選択的に作用し、出発材料のみ、もしくは主に出発材料を、またはアニオンおよび酸化剤のみ、もしくは主にアニオンおよび酸化剤を溶解し得る。また、溶媒が、高温であっても酸化剤と僅かしか化学的に反応しないか、または全く反応しない場合、特に有利である。溶媒は、通常、導電性ポリマーの形成されたオリゴマー、ポリマー、コポリマー、および/またはグラフトコポリマーに溶解しないか、または僅かしか溶解しない。
【0179】
好ましくは、溶媒混合物中に、特に水とは別に、ほぼ極性のある、二極性で非プロトン性の、および二極性でプロトン性の液体から選択される少なくとも一つ溶媒が、少なくとも一つのさらなる溶媒として添加される。極性、従って誘電率は、これに関して、広範囲で変わり得る。クロロホルムおよび/またはジクロロメタンのような弱い極性の液体、またはアセトニトリルおよび/または炭酸プロピレンのような二極性で非プロトン性の液体が、特に水で本方法を実行することができない出発材料、特に例えばチオフェンに基づく化合物で使用される。水および/またはアルコールのような極性がありプロトン性の液体は、一般に酸化剤およびアニオンのために使用される。例えばアルコールのような極性のより低い溶媒は、好ましくは出発材料を溶解するために使用され、一方、例えば水のような高い極性の溶媒は、好ましくは、酸化剤および塩を溶解するために、ならびに酸を希釈するために使用される。
【0180】
好ましくは、溶媒混合物中に、アセトニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、エタノール、イソプロパノール、メタノール、プロパノール、炭酸プロピレン、および水から選択される少なくとも一つの溶媒が、少なくとも一つのさらなる溶媒として添加される。多くの場合、水と少なくとも一つのアルコールとの溶媒混合物が使用され、これは、少なくとも一つのさらなる溶媒も、および/または例えば油のような、溶媒ではない少なくとも一つのさらなる液体も、含有し得る。
【0181】
例えばモリブデン酸塩が、実質的に水のみに必要な濃度で十分に可溶性であり、かつ幾つかのピロール誘導体が、少なくとも一つの水混和性有機溶媒の少なくとも微量の添加のみにより、必要な濃度で十分に可溶性であるので、水および少なくとも一つの有機溶媒からなる溶媒混合物を使用することも特に有利であり、溶媒混合物中の少なくとも一つの有機溶媒の含有量は、特に少なくとも2重量%、好ましくは少なくとも6重量%、特に好ましくは少なくとも12重量%、最も特に好ましくは少なくとも18重量%、さらにとりわけ少なくとも24重量%である。
【0182】
出発材料の導電性ポリマーへの転化率は、多くの場合、大きさの程度が85〜99%、一般に88〜96%の範囲である。
生成物混合物
導電性ポリマーが形成されるおよび/または導電性ポリマーを形成する生成物物混合物は、化学反応を無視すると、出発材料混合物として、同一または本質的に同一の量の構成成分を含有する。従って同一の定量的な量/細目が適宜に適用される。
【0183】
以前に用いられた乳化重合において任意に使用された少なくとも一つの安定剤も、生成物混合物に添加されてもよいか、または既に添加されていてもよい。好ましくは、少なくとも一つの安定剤は、少なくとも一つのイオン性または非イオン性の安定剤でもあり、特に、任意に乳化剤の特性を示す少なくとも一つの重合しうる、および/または重合された界面活性剤でもある。特に好ましくは、安定剤は、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリスチレンスルホネート、ポリエチレンオキシド、ポリアルキルスルホネート、ポリアリールスルホネート、アニオン性および/またはカチオン性界面活性剤、第四級アンモニウム塩、および第三級アミンに基づく水溶性ポリマーから選択される。最も特に好ましくは、これらは、好ましくはナトリウムの、特にC原子数が10〜18の範囲のアルキル鎖長を有するナトリウムの、アルキルスルフェートおよびアルキルスルホネートのアニオン性および/またはカチオン性界面活性剤からなる群より選択される。これらの水溶性ポリマーおよび界面活性剤は、粒子をより効果的に分散するために有利である。
【0184】
生成物混合物は、任意に、実質的に安定剤を含まないか、または好ましくは、出発材料混合物、およびそれから形成される生成物混合物中の粒子のアニオン性、カチオン性、立体的、および/または中性安定化のため、0.01〜5重量%の少なくとも一つの安定剤を含有し、特に好ましくは、0.5〜4重量%、または0.05〜3重量%、最も特に好ましくは0.1〜2重量%である。
導電性ポリマーを含有する粒子の処理
好ましくは、被覆粒子を有する生成物混合物は、デカント、濾過および/または凍結乾燥により、特に遠心脱水または濾過を用いる遠心分離により、および/またはガス循環および/または加熱により、特に、不活性雰囲気中では200℃までの温度、または好ましくは150℃まで、もしくは120℃までの温度で乾燥される。このことは、被覆無機粒子には通常必要である。このようにして、液体含有混合物は、概ねまたは完全に乾燥される。被覆無機粒子が、例えばデカント、濾過および/または乾燥により液体から概ね分離されると、溶媒含有量は、多くの場合、約1、2、3、4、5重量%の範囲であるか、多くの場合、10重量%までの含有量のみである。乾燥された「混合物」は、以下において、「導電性粉末」と呼ぶ。この形態において、粒子上の被覆は安定し、永久的に電気的に伝導性となり、例えば300℃を超えるような過剰な熱ストレス下で例えば不適切な塗料系で使用される場合、または例えばTiO2(アナターゼ)のような光活性粒子の存在下での光化学分解のため、および/または厳しい風化条件に付されるとき、求核攻撃が起きない限り、永久的に化学的にも、および物理的にも耐性がある。この場合で形成される被覆は、多くの場合、特に付着性がある、および/または概ねもしくは完全に密封されている。
【0185】
好ましくは、液体の全ての量は乾燥により除去されず、代わりに、粉末床の無機未被覆粒子の含有量を参照すると、例えば液体含有量は、0.1〜12重量%の範囲で残る。これは、孔が、導電性ポリマーの逆膨張の結果、その時(依然として)、小さくなることができないので、有利である。
【0186】
要すれば、被覆無機粒子は、崩壊するために、および/または流動性のある、所謂ケーキ、アグロメレートおよび/または可能であればアグリゲートともなるために、短時間摩砕されてもよい、および/または僅かに摩砕されてもよい。導電性粉末は、また任意に、大きさにより等級付けされる。
【0187】
好ましくは被覆無機粒子は、まず最初にデカントされ、濾過され、および/または乾燥される。これに続いて、安定化の目的で導電性ポリマーに必要とされる組み込まれたアニオンおよび酸化剤が本質的に抽出されない方法で、導電性被覆から抽出可能な構成成分の抽出を実施することができる。この方法において、導電性ポリマーの導電的に安定な構造およびこれらの導電状態は、本質的に不変のままである。例えば塗料、組み込まれていないアニオン、未反応モノマーおよびオリゴマー、ならびに他の不純物、と同時に他の非必須構成成分と反応する可能性のある過剰量の酸化剤を、抽出によって除去することができる。抽出は、特に、例えば硫酸、塩酸のような酸性水溶液により、および/または例えばアセトニトリル、クロロホルム、および/またはメタノールのような少なくとも一つの有機溶媒により、実施してもよい。このステップは、被覆の品質を著しく改善することができる。
【0188】
コア・シェル粒子の製造の後、時々、安定剤を加えることが有利であるが、多くの場合、これは必要がないことが、見出されている。既に安定している生成物混合物に安定剤を加えることは、一部の態様においては、不都合でさえある。一方、例えば特に導電性ポリマーの濃度が高すぎるように選択された場合の不安定な生成物混合物は、安定剤の添加により安定することができる。
導電性ポリマー含有粒子
原理的に、無機および/または有機粒子を有する導電性ポリマーを含有する粒子を特に参照する多くの細目は、多くの場合において、他の6つのタイプの導電性ポリマー含有粒子に当てはめて推定することができる。
【0189】
導電性ポリマーで被覆されている無機および/または有機粒子の場合では、導電性ポリマーは、好ましくは、本質的に酸化された、電気的に伝導状態で存在し、これに関して、少なくとも可動性防食アニオンの増加した含有量、および、また可能であれば付着媒介性アニオンの含有量が導電性ポリマーに組み込まれる。
【0190】
粒子の導電性被覆における構成成分の含有量は、広い制限内で変わり得る。変形は、特に被覆の厚さに依存し:超薄い、薄い、厚い、または非常に厚い被覆を適用してもよく、0.1〜10nm、>10〜100nm、>100nm〜1μm、または>1μm〜20μmの範囲の層厚を有する。低または高密度の構成成分を選択してもよい。加えて、無機粒子の特定の表面も、例えば火炎加水分解により製造されるSiO2粉末の場合のように、激しく収縮し得る。
【0191】
好ましくは、粒子の導電性被覆中の導電性ポリマーの含有量は、被覆を参照すると、例えば、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96、98又は100重量%である。特に、粒子の導電性被覆中の導電性ポリマーの含有量は、48〜100重量%の範囲、特に好ましくは61〜97重量%の範囲、最も特に好ましくは69〜95重量%の範囲である。
【0192】
好ましくは、アニオンの含有量は、被覆の導電性ポリマーを参照すると、例えば、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30または32モル%である。好ましくは、被覆を参照する酸化剤の含有量は、0%であり、できる限り0%を超えない。特に、導電性被覆中のアニオンの含有量は、8〜35モル%の範囲、特に好ましくは15〜33モル%の範囲、しばしば、19〜32モル%の範囲である。
【0193】
好ましくは、被覆と、導電性ポリマーに基づく包含物とを含む粒子の含有物中の粒子の含有量は、例えば、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48、50、52、54、56、58、60、62、64、66、68、70、72、74、76、78、80、82、84、86、88、90、92、94、96および98重量%である。特に、バインダーが豊富な導電性被覆中の、被覆と導電性ポリマーに基づく包含物とを含む粒子の含有量は、5〜100重量%の範囲、特に好ましくは55〜99重量%の範囲、最も特に好ましくは75〜98重量%の範囲、とりわけ、85〜97重量%の範囲である。
【0194】
好ましくは形成される導電性ポリマーの平均孔径は、ポリチオフェンの場合には例えばクロロホルムのような、またはポリピロールおよび多くのポリピロール誘導体の場合には例えばアルコールのような容易に気化する有機液体を加えることによって、形成される電気的に伝導性のポリマーの膨張を増大することによって大きくする。
【0195】
厚さが小さいにもかかわらず、粒子上の被覆は、多くの場合、高度に着色されている。多くの場合、被覆は、淡い緑色から暗い緑色、淡い青色から暗い青色、淡い灰色から暗い灰色、淡い赤色から暗い赤色、紫色、褐色または黒色である。導電性被覆は、多くの場合、疎水性であるが、アニオン含有量、酸化状態、pH値、および側鎖の置換に依存してより親水性に、または疎水性にしてもよい。
【0196】
導電性ポリマーを含有する被覆で被覆されている粒子上の被覆の電気伝導性は、酸化度、電荷キャリアの性質、および/または電荷キャリアの可動性に依存して、10-8〜100 S/cmの範囲、好ましくは10-6〜10-1 S/cmの範囲、特に好ましくは10-5〜10-2 S/cmの範囲であってもよい。
【0197】
ドーピングの程度は、元素分析によるか、またはX線分光法によって決定してもよい。通常5〜33%の範囲であり、28%を超えるドーピングの程度は、実際には一部の場合でしか達成されない。20%〜33%の範囲のドーピングの程度が多くの場合に達成される。
【0198】
導電性被覆の品質は、原理的に、導電性ポリマーのドーピングの程度を可動性防食アニオンにより最大限度で調整することにより増やしてもよく、それによって、高い貯蔵効果と、また多くの場合、形成される被覆の十分な電気伝導性とをもたらす。十分な電気伝導性は、多くの用途で満足できるものであり、それは、高すぎる電気伝導性は電位勾配を急激に崩壊させ得る可能性があるからであり、特定の状況において、アニオンが防食作用を発揮できる前に、アニオンの移動の駆動力を急激に低下させるか、または停止させ得る(短絡効果)からである。
【0199】
粒子上の導電性ポリマー含有被覆は、好ましくは酸化剤を含有するべきではないか、または酸化剤を実質的に含有するべきではなく、それは、これが被覆粒子を含有する有機被覆の防食作用に損傷を与え得るからである。従って、乾燥もしくは湿った状態で、または分散体として保管されている導電性ポリマーを含有する生成物混合物または粒子から、例えば透析、抽出、および/または濾過によって過剰量の酸化剤および/または他の可能な干渉物質を除去することが推奨される。
【0200】
粒子上の導電性ポリマー層の層厚は、広い範囲内で変わり得る。好ましくは層厚は、1〜200nmの範囲、特に好ましくは2〜100nmの範囲、特に3〜80nmの範囲である。これらの層は、状況に依存して、有機粒子においてよりも有機粒子においてより薄い。より厚い層が、原理的に考慮され可能であるが、被覆粒子がもはや分散できない場合には、制限の対象となる可能性がある。
導電性ポリマーの所謂「付着媒介剤粒子」の製造および添加
また、導電性ポリマーに基づき、かつ特に乳化重合により製造することができる少なくとも一つの所謂「付着媒介剤」を、バインダーが豊富な混合部に添加してもよい。これは、各場合に分子一つあたり少なくとも一つの置換基を有する少なくとも一つのデポー物質であり、これは、金属表面への付着を改善する。特に、この方法により、金属/バインダーマトリクス界面での付着性および防食効果を、両方とも改善することができる。「結合剤」もに少なくとも一つの可動性防食アニオンを常に含有しているので、電位勾配の場合、被覆に対する損傷の結果として、そのようなアニオンの損傷領域への迅速な短い移動が可能であり、それは、金属表面へのバインダーが豊富であり、かつ依然として水を含有している被覆の適用の後、「付着媒介剤」が、金属と、バインダーマトリクスの間の界面に優先的に拡散し、従って、特に界面の近くに吸着する(近界面貯蔵)からである。従って「付着媒介剤」は、ほとんどの部分が界面の近くに集積することができ、一方、導電的に被覆された粒子は、大部分が被覆の層厚にわたってほぼ均一に分布される。
【0201】
少なくとも一つの「付着媒介剤」は、同じモノマー/オリゴマーから合成される付着媒介性基置換モノマー/オリゴマー構成単位により、モノマー/オリゴマーの標的共重合において製造され得る。モノマー/オリゴマーは、ベンゼン、フラン、イミダゾール、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、ピロール、チオフェン、および/またはチオフェノールに基づくものから選択されてもよい。置換基は、互いに独立して各場合に少なくともC炭素数6〜20を含む少なくとも一つの非分岐鎖アルキル鎖を有する、例えばカルボン酸のようなアルカン酸、ホスホン酸、リン酸、スルホン酸、およびこれらの塩から選択されてもよく、これに関してまた可能であれば少なくとも一つの二重鎖が形成されてもよい。特に好ましくは、少なくとも一つのホスホン酸による互いに独立した少なくとも一つの置換を有する、ベンゼン、ビピロール、フラン、イミダゾール、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、ピロール、チオフェン、および/またはチオフェノールに基づく、置換モノマーおよび/または置換オリゴマーである。
【0202】
「付着媒介剤」は、一般に、水−アルコール混合物、少なくとも一つの酸化剤、好ましくは酸化剤として作用する少なくとも一つの可動性防食アニオンを有する酸化剤、別個の酸化剤の代わりに少なくとも部分的な酸化剤、少なくとも一つの可動性防食アニオン、少なくとも一つのモノマー/オリゴマー、および付着媒介剤で置換され、かつ同じモノマー/オリゴマーから合成される少なくとも一つのモノマー/オリゴマーを含有する、任意の粒子を含まない混合物における乳化重合により、粒子の調製および被覆方法で別途に製造され得る。乳化重合は、好ましくは、室温で、または僅かにより高い温度で、好ましくは2〜4の範囲のpHで実施される。その大きさが一般に調整され、概ねまたは完全にドープされた導電性ポリマーからなることができる本質的に球状の粒子は、このようにして形成される。これらの粒子は、通常容易に分散可能である。これらの粒子により製造される分散体は、原則として安定しており、そのため、これらを撹拌/振とうする必要がなく、粒子を再分散する必要もない。
【0203】
これらの「付着媒介剤」粒子を、被覆無機および/または有機粒子に加えてまたは代えて、バインダー含有マトリクスに組み込んでもよい。「付着媒介剤」粒子の添加量は、広い制限内で変化してよく、例えば、これらを、固形分を参照すると、バインダーが豊富な組成物の好ましくは0.01〜20重量%の量、特に好ましくは0.1〜10重量%の量、最も好ましくは1〜5重量%の量で添加してもよい。
導電的に被覆された粒子を有するバインダーが豊富な被覆の製造およびこの被覆の特性
好ましくは、バインダー系を含有する本発明の組成物は、基本的に、任意に、導電性ポリマーを含有する粒子に加えて、かつ水および/または少なくとも一つの他の溶媒に加えて、有機ポリマーに基づくバインダーが豊富な系(=バインダー系)を含む。
【0204】
バインダーが豊富な組成物の調整に使用されるバインダー系の化学組成は、広い制限内で変わり得る。使用可能なバインダーは、原理的に、幅広く変わる組成物を有してもよい。加えて、本発明の被覆の特殊な使用のためのバインダー系の特徴付けも、幅広く変わり、それによって、特定の下塗り、塗料、塗料様有機組成物、および接着剤混合物が可能である。バインダー系は、原理的に、架橋系または非架橋系であり得る。これに関して幅広く異なるタイプの架橋を、個別に、もしくは組み合わせて、および/または繰り返して利用してもよいが、架橋を伴わない手順も使用してもよい。
【0205】
それによって得られた被覆は、また、出発組成物のバインダー系と対応して同様のバインダー系を含むが、多くの場合、出発組成物と比較してより強力に架橋された組成物を有する。有機被覆は、金属表面への適用の後、フィルム形成により均質に製造される、および/または化学硬化、化学および/または化学熱硬化により、および/またはフリーラジカル架橋により重合されてもよい。
【0206】
多くの態様変形において、アニオン的に、もしくはカチオン的に安定化している、またはされている、または各場合に少なくとも一つの乳化剤、および/または保護コロイドにより安定化している、またはするバインダー系が選択され、これは、任意にフィルムを形成することもできる。組成物が乾燥するとき、組成物に含有されている少なくとも一つの有機ポリマーがフィルムを形成するものを、バインダー系として選択することが特に好ましい。一部の態様変形において、少なくとも一つの熱架橋剤を介して、および/または少なくとも一つの光開始剤を介して、化学的に、化学熱的に、および/またはフリーラジカル的に架橋できる、またはされる、バインダー系が選択される。
【0207】
一部の用途において、形成される導電性ポリマーは、例えば塗料系のような例えばバインダーが豊富な系(=バインダー系)の構成成分と適合性があり、粒子がバインダー系に組み込まれる場合、例えばバインダー系のpHにより悪影響を受けない。一部の態様において、導電性ポリマーの過剰酸化を防止することを助けることができる緩衝剤系の化学条件を選択することが、有利であり得る。
【0208】
カチオン的に安定化したバインダー系は、頻繁に、1〜7の範囲、しばしば2〜6の範囲、多くの場合3.5〜4.5の範囲のpH値を有する。アニオン的に安定化されたバインダー系は、頻繁に、6〜11範囲、しばしば7〜11の範囲、多くの場合7.5〜8.5の範囲のpH値を有する。加えて、立体的(非イオン的)に安定化された多数のバインダー系があり、従って、しばしば酸性と同時にアルカリ性の範囲で、多くの場合1〜11のpH値の範囲で使用することができるが、しばしば少なくとも一つの乳化剤および/または少なくとも一つの保護コロイドも含有する。
【0209】
一部の態様変形において、例えば中和剤の不十分な添加により完全に中和されていない、アニオン的に安定化したバインダー系を用いることが、有利であると思われる。このような方法において、有機ポリマーの顕著な膨張および組成物の粘度の急激な上昇を、多くの場合で低減または回避することができる。得られる被覆中での組成物のより良好かつ微細の分布も、この方法によりしばしば達成することができる。加えて、一部の場合において、他のタイプのフィルム形成よりも高い濃度の本発明の組成物を使用することも、可能である。
【0210】
好ましくは、バインダー系は、主に本質的にまたは完全に合成樹脂のバインダーからなる。合成樹脂以外に、バインダー系は、また、任意に微量のモノマー、例えばアジピン、シトレート、またはフタレートに基づく可塑剤、化学および/または化学熱硬化剤、および/または光開始剤を含有してもよい。任意に添加されたモノマーも含む合成樹脂、化学および/または化学熱硬化剤、光開始剤、および/または可塑剤から特に概ねまたは完全になる、被覆有機粒子から誘導されないか、またはそれに属さないバインダー(=バインダー系)の、バインダーが豊富な被覆中の含有量は、好ましくは40〜99重量%または50〜98重量%の範囲、特に好ましくは55〜92重量%の範囲、最も特に好ましくは60〜90重量%の範囲である。用語「合成樹脂」は、これに関して、モノマー、オリゴマー、ポリマー、コポリマー、ブロックコポリマー、グラフトコポリマー、およびこれらの混合物を含み、ここでモノマーは、原則的に、化学的もしくは化学熱的および/またはフリーラジカル的に架橋するバインダー系にのみ添加される。多くの場合、本質的に有機オリゴマー、有機ポリマーおよび/または有機コポリマーのみが、バインダー系を含有する組成物にバインダーとして添加される。
【0211】
バインダー系は、好ましくは、少なくとも一つの有機オリゴマー、少なくとも一つの有機ポリマー、少なくとも一つの有機コポリマーおよび/またはこれらの混合物のような少なくとも一つの合成樹脂、特に、アクリレート、エチレン、イオノマー、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーンポリエステル、エポキシド、フェノール、スチレン、メラミン−ホルムアルデヒド、尿素−ホルムアルデヒドおよび/またはビニルに基づく少なくとも一つの合成樹脂を含有する。バインダー系は、好ましくは、少なくとも一つのポリマーおよび/または少なくとも一つのコポリマーを含む本質的に合成樹脂混合物であってもよく、ここで、各場合に互いに独立して、アクリレート、エポキシド、エチレン、尿素−ホルムアルデヒド、イオノマー、フェノール、ポリエステル、ポリウレタン、スチレン、スチレン/ブタジエンおよび/またはビニルに基づく合成樹脂の含有量を含有する。これに関して、とりわけ、各場合に少なくとも一つのカチオン的、アニオン的および/または立体的に安定化した合成樹脂、および/またはその分散体、および/またはさらにその溶液もしくはエマルションを含んでもよい。本出願の文脈におけるアクリレートという用語は、アクリル酸エステル、ポリアクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、メタクリレート、およびこれらのさらなる誘導体を含む。いくつかの、または全てのバインダーは、また、任意に少なくとも一つのシリル基を含有してもよく、および/または、また、シラン/シロキサン/ポリシロキサンを組成物に添加することによってシリル化してもよい。
【0212】
バインダー系は、好ましくは、各場合に、
アクリレート−ポリエステル−ポリウレタンコポリマー、
アクリレート−ポリエステル−ポリウレタン−スチレンコポリマー、
アクリル酸エステル、
遊離酸および/またはアクリロニトリルを任意に有するアクリル酸エステル−メタクリル酸エステル、
エチレン−アクリレート混合物、
エチレン−アクリレートコポリマー、
エチレン−アクリレート−ポリエステルコポリマー、
エチレン−アクリレート−ポリウレタンコポリマー、
エチレン−アクリレート−ポリエステル−ポリウレタンコポリマー、
エチレン−アクリレート−ポリエステル−ポリウレタン−スチレンコポリマー、
エチレン−アクリレート−スチレンコポリマー、
メラミン−ホルムアルデヒド樹脂と組み合わされた遊離カルボキシル基を有するポリエステル樹脂、
アクリレートおよびスチレンに基づく合成樹脂混合物および/またはコポリマー、
スチレン−ブタジエンに基づく合成樹脂混合物および/またはコポリマー
メラミン−ホルムアルデヒドおよびエチレン−アクリレートコポリマーと一緒になったアクリレート変性カルボキシル基含有ポリエステルに基づく、アクリレートおよびエポキシドの合成樹脂混合物および/またはコポリマー、
ポリカーボネート−ポリウレタン、
ポリエステル−ポリウレタン、
スチレン、
スチレン−酢酸ビニル、
酢酸ビニル、
ビニルエステル、および/または
ビニルエーテル
に基づく、少なくとも一つの成分を含有してもよい。
【0213】
しかしバインダー系は、好ましくは、また、カルボジイミン、ポリエチレンイミン、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリビニルピロリドン、および/またはポリアスパラギン酸、また特にリン含有ビニル化合物とのこれらのコポリマーに基づく、有機ポリマー、有機コポリマーおよび/またはそれらの混合物の含有量を、合成樹脂として含有してもよい。
【0214】
また、アクリレート、メタクリレート、イオノマーおよび/またはエチレン−アクリル酸に基づき、特に60℃〜95℃の範囲の融点、または20℃〜160℃のの範囲の融点、とりわけ60〜120℃の範囲を有する合成樹脂の含有量を含むことが、最も特に好ましい。
【0215】
好ましくは、少なくとも30重量%の添加されたバインダー系が、フィルムを形成しうる熱可塑性の合成樹脂からなり、特に好ましくは少なくとも50重量%、最も特に好ましくは少なくとも70重量%、特に少なくとも90重量%または少なくとも95重量%である。加えて組成物は、また、各場合に少なくとも一つのモノマー、オリゴマー、乳化剤、特にバインダー系および/または導電性ポリマー含有粒子の分散体を安定化するためのさらなるタイプの添加剤、硬化剤、光開始剤、および/またはカチオン的に重合しうる物質の残留量を、状況に依存した量で含有してもよい。モノマー、オリゴマー、乳化剤、および分散体のためのさらなる添加剤の含有量は、フィルム形成補助剤を含まずに、ほとんどの場合に8重量%未満、または5重量%未満、多くの場合には2重量%未満、可能であれば1重量%未満である。硬化剤の組成、およびこの場合に対応する任意に添加された架橋物質、およびこれの対応する測度は、原理的に既知である。
【0216】
好ましくは、添加された樹脂の分子量は、少なくとも1000の領域、特に好ましくは少なくとも5000の領域、最も特に好ましくは20,000〜200,000の領域である。好ましくは、組成物に添加された、または含有されているバインダー系の個別の熱可塑性成分は、20,000〜200,000の範囲、特に50,000〜150,000の範囲の分子量を有する。
【0217】
好ましくはバインダー系は、固形分を参照すると、少なくとも40重量%の高分子量ポリマーからなってもよく、より好ましくは少なくとも55重量%、最も特に好ましくは少なくとも70重量%、特に少なくとも85重量%、特に少なくとも95重量%である。特に、少なくとも85重量%のバインダー系が高分子量のポリマーからなると、本発明の被覆が良好な特性を有するように、化学、化学熱またはフリーラジカル架橋のために、および対応する架橋しうる合成樹脂のために、多くの場合でイソシアネートのような硬化剤、またはベンゾフェノンのような光開始剤を加える必要がない。この場合、密封された強力な高い等級フィルムを、しばしば、架橋を実施することなくフィルム形成によって成功裏に得ることができる。
【0218】
バインダー系は、好ましくは、2〜200の範囲、多くの場合は3〜120の範囲、一部の場合は4〜60の範囲の酸価を有する、少なくとも一つのポリマーおよび/または少なくとも一つのコポリマーを少なくともある割合で含有する。
【0219】
バインダー系は、好ましくは、−10℃〜+99℃の範囲、特に好ましくは0℃〜90℃の範囲、特に5℃を超える最低フィルム形成温度(MFT)を有する、少なくとも一つのポリマーおよび/または少なくとも一つのコポリマーを少なくともある割合で含有し、有機フィルム形成剤は、少なくとも最初の段階で少なくとも二つの特に熱可塑性のポリマーおよび/またはコポリマーを含有すると、最も特に有利であり、それは、熱可塑性構成成分が、さらなる処理および反応においてその熱可塑特性を少なくとも一部失うか、またはその劣化を被る可能性があるからであり、最低フィルム形成温度が特定できる条件で、5℃〜95℃の範囲、特に少なくとも10℃の最低フィルム形成温度を有し、ここで、ポリマーおよび/またはコポリマーのうちの少なくとも一つがこれらのポリマーおよび/またはコポリマーのうちの少なくとも二番目と比較され、A)他の成分と少なくとも20℃異なる最低フィルム形成温度であり、B)他の成分と少なくとも20℃異なるガラス移転温度を有し、および/またはC)他の成分と少なくとも20℃異なる融点を有する。これらの少なくとも二つの成分のうちの一方は、10℃〜40℃の範囲のフィルム形成温度を有し、他方は、45℃〜85℃のの範囲のフィルム形成温度を有する。これに関してフィルム形成剤として長鎖アルコールおよびそれらの誘導体を添加することは、最低フィルム形成温度を一時的に下げることを助け、また、恐らく温度をある程度平衡化する。金属表面への組成物の適用の後、フィルム形成補助剤が、特に乾燥の間に漏れ出して、乾燥の間に、最初よりも高いフィルム形成温度を持つ被覆を残し得る。好ましくは、フィルム形成補助物質の添加から始まって乾燥までの有機フィルム形成剤のフィルム形成温度は、0℃〜40℃の範囲、多くの場合5℃〜25℃の範囲である。均質のフィルムは、フィルム形成温度が乾燥およびフィルム形成の間で超える場合にのみ製造される。その時の乾燥被覆は、軟質すぎず、かつ粘着性がありすぎず、それは、続いて現われる合成樹脂のフィルム形成温度が、フィルム形成補助物質を添加することなく、この場合もやはり元のものとほぼ同じ高さであるからである。多くの場合、これらのバインダーのガラス移転温度および融点は、ほぼ、フィルム形成温度の範囲、すなわち、ほとんど0℃〜110℃の範囲にある。
【0220】
別の好ましい態様において、有機バインダーの混合物を使用してもよく、ここで、少なくともある割合のバインダーは、Tgに本質的に等しいか、および/または同様であるガラス移転温度Tgを有する。これに関して、少なくともある割合のバインダーが、10℃〜70℃、最も好ましくは15℃〜65℃の範囲、特に20℃〜60℃の範囲のガラス移転温度Tgを有すると、特に好ましい。この時のバインダーは、好ましくは−10℃〜+99℃の範囲、特に好ましくは0℃〜90℃の範囲、特に5℃〜10℃の最低フィルム形成温度MFTを持つ、少なくとも一つのポリマーおよび/または少なくとも一つのコポリマーの少なくともある割合を含有する。これに関して、バインダー系の、全部とは言わないまでも少なくとも二つの構成成分が、最低フィルム形成温度が特定できる限り、これらの温度範囲のうちの一つの最低フィルム形成温度を有すると、特に好ましい。
【0221】
バインダー系が乾燥の間にフィルムを形成すると、特に有利である。少なくとも80重量%、特に90重量%の熱可塑性を示すバインダーが組成物に添加されると、特に好ましい。
【0222】
バインダー系および/または合成樹脂の含有量は、バインダー系を含有する組成物の固形分を参照すると、頻繁に、10〜95重量%または20〜92重量%の範囲、特に好ましくは30〜90重量%の範囲、特に例えば35、40、45、50、55、60、63、66、69、72、75、78、81、84または87重量%にある。
【0223】
加えて、組成物は、特に、例えば殺生物剤、キレート、消泡剤のような添加剤、例えば長鎖アルコール、乳化剤、潤滑剤のようなフィルム形成補助物質、例えばシラン又はポリシロキサンに基づく付着媒介剤、錯体形成剤、無機および/または有機腐食抑制剤、例えば界面活性剤のような湿潤剤、例えば防食顔料のような顔料、酸捕捉剤、保護コロイド、塩基性架橋剤としての重金属化合物、例えば有機化合物のシリル化のためのシラン/シロキサン/ポリシロキサン、例えば合成樹脂のための、バインダー系の成分のための、および/または導電性ポリマーを含有する粒子のための安定剤、および/または例えばポリエチレンワックスのようなワックス、Al、Ce、La、Mn、Se、Mo、Ti、W、Y、ZnおよびZrに基づき、好ましくは防食特性を有するものに基づく化合物、可塑剤、ならびに溶媒および対応する反応生成物の含有量を含有してもよい。特に、殺生物剤、キレート、乳化剤、消泡剤、フィルム形成補助物質、潤滑剤、付着媒介剤、錯体形成剤、無機および/または有機腐食抑制剤、湿潤剤、顔料、酸捕捉剤、保護コロイド、シラン/シロキサン/ポリシロキサン、安定剤、界面活性剤、架橋剤、可塑剤、アルミニウム化合物、セリウム化合物、ランタン化合物、マンガン化合物、希土類化合物、モリブデン化合物、チタン化合物、タングステン化合物、イットリウム化合物、亜鉛化合物、およびジルコニウム化合物からなる群より選択される、少なくとも一つの添加剤が本発明の組成物に添加される。フィルム形成補助物質を除く組成物中の全ての添加剤の合計は、多くの場合、本質的に0重量%、または0.05〜10重量%、頻繁には0.1〜6重量%、時々0.15〜4重量%、一部の場合では0.2〜2重量%である。
【0224】
これに関して、保護コロイドは、要すれば、ポリビニルアルコールであってもよく、酸捕捉剤は、アンモニアまたはアセテートであってもよく、錯体形成剤は、アンモニア、クエン酸、EDTAまたは乳酸であってもよく、安定剤は、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルキルエーテル、ポリスチレンスルホネート、ポリエチレンオキシド、ポリアルキルスルホネート、ポリアリールスルホネート、アニオン性および/またはカチオン性界面活性剤、第四級アンモニウム、ならびに第三級アミンに基づく水溶性ポリマーから選択されてもよい。
【0225】
好ましくは導電性ポリマー含有粒子は、組成物に、特に粒子混合物で添加されるか、または別途で添加され、ここで、著しく異なる粒子径分布を有する少なくとも二つのタイプの粒子が使用される、および/または少なくとも二つの別々に製造されたタイプの粒子が用いられる。粒子のタイプは、六つのタイプのそのような粒子のうちの一つのみの著しく異なる粒子であってもよいか、または少なくともタイプ1)〜6)のうちの少なくとも二つから選択されてもよい。
【0226】
導電性ポリマー含有粒子を添加する前に、特に被覆無機粒子を添加する前に、一部の態様において、これらは、これらを均質に分散するか、また均質に分散された状態を維持するために、液体又は組成物に適用する前に、例えば長時間の撹拌のような移動により、および/または例えば摩砕のようなせん断力の適用により再分散されなければならない。これに関して、これら、および可能であればさらなる粒子も液体により十分に湿潤されるべきであり、要すれば、またこれらの個別の粒子(一次粒子)に本質的に変換され、均質に分散されるべきである。
導電性ポリマー:本発明のバインダーが豊富な組成物において、導電性ポリマー含有粒子の濃度は、広い範囲内で変わってもよく、好ましくは0.1〜40重量%の範囲、特に好ましくは0.5〜30重量%の範囲、特に1〜20、2〜15、または3〜10重量%の範囲である。
【0227】
しかし、一部の態様変形において、金属表面を保護する被覆における導電性ポリマーの含有量は、例えば、0.5、1、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、7、または8重量%の値である。特に、この導電性被膜における導電性ポリマーの含有量は、頻繁に、0.3〜10重量%の範囲、特に好ましくは0.6〜8重量%の範囲、最も特に好ましくは0.9〜6重量%の範囲、特に1.2〜4重量%の範囲である。
【0228】
好ましくは、導電性ポリマーの含有量を除く、および/またはバインダーが豊富な被覆における導電性ポリマーの含有量を含む、導電性ポリマー含有粒子の含有量は、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、30、32、34、36および38重量%の値である。特に、金属表面の被覆における、導電性ポリマーの含有量を含む粒子の含有量、または粒子コアのみの含有量は、0.8〜40重量%の範囲、特に好ましくは1.4〜33重量%の範囲、最も特に好ましくは2〜25重量%の範囲、特に2.5〜18重量%の範囲である。
【0229】
多くの態様変形において、導電性ポリマー含有粒子は、組成物に簡単な方法によって組み込むことができる。好ましくは、形成された分散体に凝集および凝固が起こらないか、または実質的に起こらないことを確実にするように注意する。これは、特に高濃度の、比較的に強いイオン性の化合物で起こり得る。
【0230】
化学系は、多くの場合、pH値に対応して適合させなければならない。酸性バインダー系の場合、一部の場合において、ポリピロールに基づく導電性ポリマーを使用することが好ましく、一方、アルカリ系の場合、一部の場合において、ポリチオフェンに基づくものを使用することが好ましい。
【0231】
デポー物質がバインダーと適合性がない場合、特に、デポー物質にとって高すぎるpH値では、デポー物質の非活性化(「過剰酸化」)をもたらし得る。非活性化において、導電性ポリマーは、例えば、電気的な伝導性を失い、その結果、組み込まれたアニオンは、もはや放出されることがない。従って、被覆の全ての成分に適合性があるようにpH値を調整するために、および組成物の成分をそのように選択するために、注意を払うべきである。
【0232】
浸透限界は、電気的に伝導性の経路が確立される限界値である。導電経路の確立は、複数の導電性および/または導電的に被覆された粒子の連続接触をもたらし得る。特に粒子上の導電性ポリマーの比較的に薄いシェルの場合ではあるが、より一般的な場合でも、各場合において、好ましくは10〜90%、または15〜85%の範囲の、得られる被覆の容量の割合、または組成物もしくは被覆の固形重量の割合は、十分な数の導電性経路を確立または配置するために、必要または有益であり得る。20〜78%または25〜70%の範囲の百分率の数字が特に好ましく、30〜60%の範囲の百分率の数字が最も好ましい。しかし、これらの特に好ましい範囲は、また、本質的により小さいまたはより大きい粒子が使用される場合には、著しく変わってもよい。
【0233】
50〜1500nmの範囲、最も好ましくは100〜1000nmの範囲の平均粒径を有する、導電性ポリマー含有粒子を使用することが、特に好ましい。組成物中および被覆中の導電性ポリマーのより良好でより均一な分布は、導電性ポリマーを粒子上のシェル物質として使用することにより達成できる。分布の性質は、特に粒径分布およびシェルの厚さ分布により制御できる。例えばオキシレートによる予備不動態化のような、電気化学的処理は、原則的に使用されない。好ましくは、金属表面の予備処置および不動態化が意図されるまたはその役割を果たすことができる、少なくとも一つの層は、導電性ポリマーに組み込まれてもいる同じアニオンにより不動態化されない。
【0234】
特に好ましくは、導電性ポリマーは、可動性防食アニオンを含有し、これは保護される金属表面ためであり、導電性ポリマー含有粒子が例えば粉末の形態で分布している有機被覆により被覆され、前記金属表面に対する層剥離抑制および/または付着媒介作用を追加的に許容する。
【0235】
導電性ポリマー含有粒子の混入において、有機粒子のフィルム形成の利点を利用することが特に有用であると思われ、それは、この方法により、多くの場合、より均質で実質的にまたは完全に緊密なフィルムを乾燥の間に製造することができるからであり、従って、多くの場合、フィルム形成なしのものよりもより効果的に密封されたフィルムが得られるからである。導電的に被覆された有機粒子がこのバインダーが豊富な被覆に使用され、それによって、有機被覆粒子のコアの少なくとも一部がフィルム形成を受けることが、特に好ましい。フィルム形成を最適化するために、バインダーが豊富な被覆の、有機コアを含むできる限り多くのまたは全ての有機ポリマー構成成分は、可能な限り完全で均質なフィルム形成を許容するために、同様な、または相互に適応性のある、または意図的に等級付けされたガラス移転温度Tgおよび/または最低フィルム形成温度MFTを有する。これに関して、フィルム形成しうる多様な有機成分のガラス移転温度Tgおよび/または最低フィルム形成温度MFTが、互いに十分に近づいていない、および/または更に低下するべきである場合、好ましくは、例えば長鎖アルコールおよび/またはそれらの誘導体のような少なくとも一つのフィルム形成補助物質が添加され、特に、ブタンジオールのようなC炭素数4〜20のアルコールおよび/またはそれらの誘導体、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールプロピルエーテル、エチレングリコールヘキシルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテルのようなエチレングリコールエーテル、またはポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、トリメチルペンタンジオールジイソブチレートのようなポリプロピレングリコールエーテル、および/またはポリテトラヒドロフランである。
【0236】
最低フィルム形成温度MFTは、少なくとも一つのフィルム形成補助物質の添加により低下することができる。このような方法で、これらの特性の一時的な低減が、特に乾燥の間に短時間で可能である。これは、フィルム形成によるフィルムの最適な形成のために必要である。最後に、フィルム形成補助物質は、湿潤フィルムおよびそれから形成される乾燥フィルムを乾燥するときに蒸発することができる。この時点で被覆の表面はもはや粘着性がなく、そうでなければ、フィルム形成補助物質を使用しない低いガラス移転温度Tgおよび最低フィルム形成温度MFTの被覆の場合では永久的に粘着性があり、それは、最低フィルム形成温度MFTが、フィルム形成補助物質の蒸発のために、フィルム形成の間および/または後で再び上昇するからであり、合成樹脂で前から見られるものと同様の硬度および可撓性が、乾燥の後、およびフィルム形成の後で再確立されるからである。
【0237】
フィルム形成において、有機コア(粒子)も、それらのガラス移転温度Tgおよび最低フィルム形成温度MFTが十分に互いに近い場合、および対応する温度が達成されるおよび/または超える場合、その粒子構造を失う。これに関して、形成された有機フィルムが特に均質的に緊密になり、導電性ポリマーの構成成分が、微小分布で特に微細かつ均質の方法によって分布できることが、現在見出されている。多様なタイプの導電性ポリマー含有粒子、特に典型的なコア・シェル粒子、本質的に導電性ポリマーからなる微細粒子、および/または可能であれば粒子混合物で見出され得る所謂「付着媒介剤粒子」は、例えばミセルの形態で存在するか、または後者に変換できる適切な条件下でのフィルムの形成において、裂けることができるか、または、特にこれらのミセルが、フィルム形成を受けるか、もしくは受けた被覆に溶解する場合、微小分布で、多くの場合に均質の方法で分布されてもよい。例えばフィルム形成時に粒子シェルから形成される、導電性ポリマーの微小分布粒子は、多くの場合、5〜100nmの範囲の大きさを有する。しかし、有機粒子のガラス移転温度Tgおよび最低フィルム形成温度MFTが、有機粒子が分布している有機バインダーのガラス移転温度Tgおよび最低フィルム形成温度MFTよりも著しく高い場合、有機粒子は、実質的に不変のままであってもよく、導電性ポリマーのそれらのシェルも同様に実質的に不変のままであってもよい。
【0238】
導電性ポリマーを含有するバインダーが豊富な被覆を製造する本発明の方法では、乾燥の間に概ねまたは完全にフィルム形成する/フィルム形成を受ける、および/または(可能であれば続いて)化学的におよび/または化学熱的に硬化される、および/またはフリーラジカル架橋される被覆が特に好ましい。本出願の文脈内のフィルム形成とは、熱エネルギーの影響下での、バインダーが豊富な組成物およびその中に含有される被覆有機粒子の均質フィルムの、特に金属表面上での形成を意味する。この場合において、凝集性で均質のフィルムが、好ましくは弾性で軟質のバインダー粒子から形成される。フィルム形成プロセスの出発は、有機ポリマー粒子のおよび/または使用されるバインダーのガラス移転温度に依存する。好ましくは有機ポリマー粒子のおよび/またはバインダーのガラス移転温度は、互いに近く、それによって両方とも同じ温度で均質のフィルム形成を受けることができる。これに関して、フィルム形成しうる組成物のフィルム形成性が、組み込まれた粒子により影響を受けないことを確実にするべきである。
【0239】
バインダー系を含有する組成物の固形分を参照すると、フィルム形成補助物質の含有量は、多くの場合、0.01〜50重量%の範囲、特に好ましくは0.1〜30重量%の範囲、多くの場合、0.1〜10重量%、0.1〜5重量%、または0.1〜2重量%の範囲、特に例えば、0.15、0.21、0.27、0.33、0.39、0.45、0.51、0.57、0.63、0.70、0.76、0.82、0.88、0.94、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.2、2.4、または2.7重量%である。使用される合成樹脂がより軟質かつより弾性であるほど、保持され得るフィルム形成補助物質の含有量が下がり、反対に、使用される合成樹脂がより硬質(より剛性)かつより強固であるほど、多くの場合、選択されるフィルム形成補助物質の含有量が高くなる。
【0240】
水性の有機ポリマー含有組成物は、特に、0.5〜12の範囲のpH値で使用され得る。特に好ましくは、カチオン的に安定化したポリマーのバインダー系を使用するとき、1〜7の範囲、特に2〜6または3.5〜4.5の範囲のpHであり、アニオン的に安定化されたポリマーのバインダー系を使用するとき、6〜11の範囲、特に、7〜10または7.5〜8.5の範囲のpH値であり、イオン的に安定化されていないバインダー系を使用するとき、1〜11の範囲のpH値である。
【0241】
好ましくは、本発明の組成物は、ローラー塗布、フローコーティング、ナイフコーティング、吹き付け塗布、スプレーコーティング、ブラッシング、および/またはディッピングにより適用し、要すれば、ローラーを用いて搾り取る。
【0242】
好ましくは、水性組成物は、5℃〜50℃の範囲の温度で金属表面に、前記金属表面が、被覆の適用の間に5℃〜120℃の温度に維持される場合、および/または被覆金属表面が、20℃〜400℃PMT(メタルピーク温度)の範囲の温度で乾燥される場合、適用される。
【0243】
一部の態様変形において、ストリップが本発明の組成物で被覆され、要すれば、特に20℃〜70℃の範囲の温度に冷却した後で、コイルに巻かれる。
【0244】
好ましくは、被覆される金属表面は、請求項1または2に記載の少なくとも一つの組成物で被覆する前に、清浄化され、ピクリングされ、濯がれ、不動態化層、処理層、予備処理層、油層、および/または導電性ポリマーを概ね含有する薄いまたは非常に薄い被覆が設けられ、限定的にのみまたは完全に密封され、要すれば、続いて少なくとも部分的にこの層が取り外される。
【0245】
請求項1または2に記載の組成物で被覆した後、好ましくは被覆金属表面には、濯ぎ後溶液、有機ポリマー、塗料、色彩付与塗料、接着剤、接着剤キャリア、および/または油に基づく少なくとも一つのさらなる被覆を設ける。後濯ぎ溶液は、多くの場合、既に適用した被覆を密封、不動態化、および/または変性する目的を持つ。
【0246】
好ましくは、被覆された金属パーツ、ストリップ、ストリップセクション、ワイヤーまたは異形材が形成され、塗装され、例えばPVCのようなポリマーで被覆され、印刷され、結合され、熱はんだされ、溶接され、および/またはクリンチまたは他の接合技術により互いにもしくは他の要素に接合される。
【0247】
金属表面を保護するために乾燥され、また任意に硬化された被覆は、多くの場合、DIN53157に従ってKoenig振り子硬度試験器により測定した、30〜190秒の振り子硬度を有する。多くの場合、この被覆は、3.2mm〜38mmの直径のマンドレルにより、極めて概ねにDIN ISO 6860に従って実施したマンドレル曲げ試験で円錐形のマンドレルの沿って曲げたとき、そのような可撓性を有するが、表面を裂くことはなく、2mmより長い裂け目は形成されず、これは、続く硫酸銅を用いる湿潤において、裂けた金属表面に銅が付着した結果、色が変わることによって検出できる。
【0248】
本発明の、バインダーが豊富な組成物により製造される、バインダーが豊富な、フィルム形成された、および/または硬化もされた被覆の層厚は、原理的に、0.2〜120μmの範囲に調整され得る。しかし、用途に依存して、この被覆の層厚の「ピーク」は、例えば、0.1〜3μm、0.3〜5μm、0.5〜10μm、2〜20μm、および5〜50μmの範囲と思われる。この被覆は、任意に、また、幾つかの連続的な個別の層からなってもよい。例えば、2、3、4または5層の層系は、しばしば、10〜200μmの範囲、多くの場合、20〜150μm範囲の全体厚を有してもよい。
【0249】
金属表面上の本発明の導電性ポリマー含有被覆の電気伝導性は、特に、10-8〜0.1 Siemens/cmの範囲、特に10-6〜10-1 Siemens/cmの範囲、多くの場合10-5〜10-1 Siemens/cmの範囲、可能であれば10-4〜10-2 Siemens/cmの範囲であってもよい。
【0250】
導電性ポリマーの粉末が、大部分または完全に有機被覆の、例えば塗料または塗料様のような有機組成物に組み込まれる場合、鮮やかなコアのない粉末粒子の色は、本質的により強くなり、有機被覆組成物に添加されるとき、形成される被覆に、望ましくない色の印象、および/または斑紋外観、または色変化を与える可能性がある。このようにして製造された被覆の電気伝導性は、均一ではないことがあり得、従って、状況に依存して不完全さをもたらし得、すなわち、局所的にばらつきのある良好または不良の腐食防止をもたらし得、導電性経路が存在する上記の浸透限界は、この場合はより高くなる。
【0251】
予備実験において、酸化剤としてFe3+、H22、モリブデン酸塩、および/またはホスホモリブデン酸塩を有する、サリチル酸塩、チタンおよび/またはジルコニウム錯体フッ化物に基づく組成物により、ならびにポリピロールに基づく導電性ポリマーにより被覆され、かつこれらの粒子と一緒に、スチレンアクリレートを含有する酸性ポリマーに基づくマトリクス中に組み込まれる場合、二酸化ケイ素ナノ粒子に基づく粒子は金属表面の被覆において特に防食性があると証明された。この場合、市販のクロム酸塩被覆により提供される腐食保護とほぼ同じレベルが、溶融亜鉛めっきスチールシートで達成された。
【0252】
導電性ポリマーを有するそのような化学系は、例えば、特に不動態化の役割を果たし得る組成物の構成成分として、予備処理として、予備処理下塗り(=あらゆる予備処理層のない事実上の日常的な従来の方法と異なる方法で金属表面に適用される下塗り)として、または少なくとも一つの予備処理層の下塗りとして、金属表面の二次元被覆で特に興味深い。
【0253】
本出願の文脈における不動態化は、一方では、金属表面に適用するまたは適用され、かつ少なくとも一つの続く、例えば有機の、例えば下塗り、塗料、もしくは塗料系のような被覆が比較的長時間被覆されていないか、または全く被覆されてなく、従って、多くの場合、増大した腐食耐性を有する被覆を意味し、他方では、腐食保護作用を不動態化として示す化学効果の記載の文脈内であることを意味することが理解される。本出願の文脈内の予備処理は、金属表面に適用するまたは適用される被覆であり、その上に次に例えば塗料系のような少なくとも一つの有機被覆を適用することを意味することが理解される。本出願の文脈内の予備処理下塗りは、金属表面に適用するまたは適用される被覆であり、同時に、予備処理と下塗りの機能を単一の被覆に組み合わせた被覆を示すことが理解される。これに関して、下塗りは、例えば最初の塗料被覆のような最初の有機被覆を意味することが理解される。
導電的に被覆された粒子および有機被覆の使用
導電性ポリマー含有粒子は、腐食防止の目的のために金属ストリップ、ワイヤー、異形材、およびパーツの表面を被覆すること、センサー、電池における電極物質として、触媒特性を有する電極物質として、導電性被覆および組成物ための誘電性添加剤として、電気絶縁技術における充填剤物質として、着色剤として、または導体平滑化層のため、静電荷防止および/またはごみの吸収を回避するために表面を被覆することに使用してもよい。
【0254】
ストリップ、ワイヤー、異形材、またはパーツのような、本発明の方法により被覆される物品は、ワイヤーコイル、ワイヤーメッシュ、スチールストリップ、金属シート、ライニング、クラッディング、スクリーニング、自動車ボディーまたは自動車ボディーパーツ、航空機、トレイラー、モバイルハウスまたは飛翔体のパーツ、カバーリングとして、ハウジング、ランプ、ライト、信号機要素、家具または家具要素の一片、家庭用道具の要素、骨組、異形材、成形されたパーツ、複雑な形状の成形されたパーツ、ガードレール、加熱体またはフェンス要素、車両バンパー、少なくとも一つのチューブおよび/または異形材のパーツまたはそれらを有するパーツ、窓、ドアまたは自転車骨組、あるいは例えばスクリュー、ナット、フランジ、バネもしくはメガネフレームのような小さなパーツとして使用されてもよい。
粒子および系の利点および驚くべき効果
導電性被覆の製造のための本発明の方法は、技術的な使用のために特に適切であり、それは、非常に少ない量の比較的高価な出発材料を用いても、大量の粒子を、他の被覆方法と比較して非常に簡素であり、装置および器具の費用の安い方法のステップで被覆できるからである。同様の被覆をもたらす従来技術の方法によると、例えばシランのような付着媒介剤の添加、例えばアルキル鎖のような所謂スペーサー(間隔維持剤)の出発材料への組み込み、例えばヒドロキシメチルセルロースのような水溶性ポリマーに基づく安定剤の添加、および/または酸化の前の、界面活性剤の組成物への添加が、しかし、本発明の方法に反して、金属表面へのより良い被覆を実施するために有利である。混合物への付着媒介剤の添加は、従来技術によると時々問題があることが証明されおり、それは、特殊な付着媒介剤を各タイプの粒子のために開発しなければならないからであるが、酸化の前に例えば界面活性剤を組成物に添加することは、本発明の方法では通常必要がない。
【0255】
驚くべきことに、導電性ポリマーから、腐食を受ける領域、および本発明の期待される被覆の防食作用を受ける領域からのアニオンの放出および移動が、例えばスキャンニング・ケルビン・プローブ(SKP)のような非常に特殊な試験のみならず、腐食を受ける領域での放出された防食アニオンの集積によって、成功裏に検出され、同時に、導電性ポリマーにを含有する有機被覆よる金属基材の腐食保護の著しい増大も、例えば塩水噴霧試験のような習得順応試料および試験により、微視範囲で検出することができた。
【0256】
驚くべきことに、導電性ポリマー含有粒子およびバインダー系を含む被覆による、金属表面を被覆する方法は、簡素かつ効果的に設計および適用することができた。これに関して、金属基材の比較的大きい表面を比較的少量の導電性ポリマーで被覆することができた。
【0257】
驚くべきことに、導電性ポリマーは、特にフィルム形成において、導電性ポリマー含有粒子の助けを借りて、バインダーが豊富な組成物中に、簡素に、安定して、均一に分布することができた。
【0258】
驚くべきことに、導電性ポリマーの化学重合に組み込むことができるアニオンの選択は、実質的に制限されなかった。
【0259】
驚くべきことに、導電性ポリマーにより被覆された粒子は、液体媒体中での保管において広いpH範囲で安定しており、また、これらの範囲において予測よりも安定しており、その結果、導電性ポリマーの非活性化が観察されなかった。
【0260】
驚くべきことに、導電性ポリマー含有粒子は、機械的に極めて安定しており、これらのシェルは粒子に非常に良好に付着しており、それによって、超音波処理でも損傷が検出されず、超音波の作用下での混合物中の粒子上の導電性ポリマーの長期間の付着に対しても損傷が観察されなかった、または本質的に観察されなかった。
【0261】
最初の安定した分散体から容器の底へ沈殿またはゲル化した被覆粒子を再び再分散することができ、次に、塗料様組成物の本質的に有機の分散体になにも不都合なことなく組み込むことができ、続いて、本質的に有機の被覆に組み込むことができたことも、驚くべきことであった。
実施例および比較例
以下において記載される実施例は、本発明の主題を実施例によって説明することを意図する。
1.混合物の組成の異なる導電性ポリマーおよび無機粒子の被覆の調製
導電性ポリマーと、同時に無機粒子の被覆の調製を、反応の間にわたって、各場合に50℃〜60℃の一定に維持した温度で、一ポットプロセスにより実施した。
【0262】
出発材料混合物は、蒸留水100mlに、撹拌しながら、まず最初にイソプロパノールと、各場合に10〜15gの、Al23、BaSo4、CaCO3、CuO、SiO2、SnO2、TiO2(アナターゼまたはルチルとして)、ZnO、粗結晶性黒雲母、調製されたモンモリロナイト、石英が豊富な海砂、陶土、加えてまた予備調製されたカラムクロマトグラフィーに適切なセルロース粉末から選択される粉末を添加することによって、調製した。次にpHを4〜6の範囲の値に調整するために、濃硫酸0.1〜0.5mlを加え、この酸は、同時にモリブデン酸およびモノマー/オリゴマーの溶液助剤としての役割も果たす。これに、続いてイソプロパノール20〜50mlに溶解したモノマー/オリゴマー0.3mlを室温で加えた。出発材料として、各場合に、ピロール、N−メチルピロールおよびエチレンジオキシチオフェンから選択される出発材料を使用した。15〜20分間撹拌した後、混合物温度に予備加熱され、かつ約20%のイソプロパノールを含有する、モリブデン酸水溶液(H2MoO4)1.5〜3g/lを加えた。更に30〜150分間撹拌した後、分散体に形成された被覆無機粒子および導電性ポリマーの粒子を、過剰溶媒混合物および酸化剤を濾取することにより分離した。次に粒子を乾燥キャビネットにより60〜80℃で20〜30分間乾燥して、乾燥フィルターケーキを形成した。フィルターケーキをモルタル中で圧縮して、10〜15分間かけて概ね均質に摩砕した。あるいは、一部の場合でボールミルを使用した。摩砕生成物は、完全にまたは部分的に被覆された無機粒子、単離された被覆シェル残留物、導電性ポリマーの粒子、および未被覆無機粒子の(粒子混合物)を含有した。光学顕微鏡を使用して、各場合で、約85〜95%の可視粒子が導電的に被覆された粒子であると予測した。これに関して、原理的に、5nm〜5mmの範囲の平均粒径を有する無機粒子を使用することができた。摩砕の間、無機粒子を、その状態に依存して、摩砕しないか、または小さい範囲でしか摩砕しなかった。約100〜200nmよりも大きい粒子では、無機粒子の粒子分布は広い範囲の粒子分布であり、これらの値よりも低いとほとんど単分散した。約100nmよりも小さい粒子のみが本質的に球形であった。粒子の被覆は、透過電子顕微鏡で見ると、2〜10nmの範囲の層厚を有した。導電性ポリマーの含有量は、熱重量測定により決定し、乾燥粒子混合物で3〜10重量%の範囲であった。電気伝導性、従って増加したレベルのドーピングが、各試験において達成された。粒子上の導電性ポリマーの被覆(コア・シェル)は、良好に付着しており、そのため、被覆は、超音波浴の中でさえも容易に摩耗または摩砕することもなかった。多数の試験を実施し、小数の試験を、関連するデータと共に第1表に示す。
【0263】
加えて、補足試験において、粒子混合物を、完全に水を含まないエタノール性の溶液に、または酢酸エチル溶液に加え、超音波浴で分散し、続いて二枚の金属シートをこの分散体の中に吊し、被覆導電性粒子を、電気浸漬被覆の場合では、10〜100Vの範囲の電圧、2〜20mAの範囲の電流で1〜5分間かけて、電気泳動により陰極金属シートに付着させた。電気泳動は、被覆される金属体を腐食させる危険性とはならず、これは、陽極泳動または電気分極の場合には当てはまらない。これによって、金属シートの両面に、非常に均一で、薄く、強力に付着している、一部の場合では完全な被覆を、粒子混合物によって得た。次に被覆金属シートを乾燥した。層厚は、2〜15μmの範囲であると推定された。金属シート上のこの被覆は、粒子混合物が例えば分散体として適用された場合よりも、著しく良好であった。金属シート上の被覆の微細構造は、基本的に、混入された被覆粒子の形態学により決定された。これに関して、その時点ではいくらか厳しい処置の全ての段階において、導電性ポリマーは、その特性、特にその電気伝導性、その化学および熱安定性、ならびにその防食特性にどのような劣化も被らなかった。
【0264】
【表1】

2.混合物の組成の異なる有機粒子の調製手順および被覆
有機粒子および可能であればあらゆる酸化特性を示さないが、そのアニオンが防食性を有する塩、また任意に1〜10重量%のエタノールの添加を含む、全ての構成成分を含有する水性出発材料混合物を、酸化剤を除く導電性ポリマーの製造のために調製した。それぞれの組成物を第2表に示す。塩が酸化特性を示し、かつ塩のアニオンが防食性を示した場合は、塩を、かわりに、均質化の後でのみ加えた。モリブデン酸塩またはタングステン酸塩を酸化剤として使用するとき、pH値が3を超える場合、モリブデン酸塩またはタングステン酸塩の添加の前に、出発材料混合物を50℃の温度に加熱した。pH値は、リン酸により調整した。出発材料混合物を、構成成分が十分に混合するために、この温度で約20分間撹拌し、それは、そうでなければ相分離が起こるからである。溶液(出発材料混合物)の良好な均質性は、酸化剤を添加するときには、既に存在している必要があった。
【0265】
定義された組成およびガラス移転温度Tgを有する、有機粒子、ポリスチレン、ポリスチレン−ブチルアクリレート、またはポリブチルアクリレートを使用し、これらを水性分散体として添加した。有機粒子は、ほぼ単分散粒径分布を有し、概ね球形であった。平均粒径分布は、150〜500nmで選択することができ、これらの各分布において、ガラス移転温度Tg、ならびに化学組成は異なっていた。
【0266】
選択された温度でのさらなる撹拌の間に、酸化剤を著しく過剰に加え、それによって、例えば、ピロールに基づく出発材料の重合が起こった。元は白色の分散体は、短時間の後、灰色に変わり、その後、黒色に変わった。濃度を適切に選択した場合、凝集は起こらず、アグロメレートは、形成されなかった。反応混合物を、完全な反応を可能にするために、少なくとも4時間撹拌した。これに関して、酸化剤の、または塩の可動性防食アニオンを、ドーピングイオンとして、モノマー/オリゴマーから形成された導電性ポリマーに混入した。次に、被覆粒子を、例えば遠心分離により、残りの溶液または分散体から容易に分離することができた。同時に、過剰量の酸化剤および/または未反応ピロール分子も分離し、それは、そうでなければこれら物質が、例えば、乾燥の間に塩析沈殿により妨害する可能性があるからである。あるいは、超遠心分離(透析)を選択し、この方法は、蒸留水に対して行った。超遠心分離は、遠心分離よりも効果的である。透析は、セルロース膜(10,000MWCO)により48時間実施した。次に被覆粒子を、要すれば、分析調査のための粉末を得るために、またはアルコールのような有機溶媒を除去するために、乾燥した。水中での再分散は、被覆無機粒子の場合を除いて、必要ではなかった。続いて塩基ポリマーによる混合が予想されるので、乾燥操作は必要ではなかった。すぐに使用できる製造された分散体(生成物混合物)は、一年後でさえも安定していることが判った。
【0267】
塩基ポリマーを富化被覆有機粒子に加えた。次にこの組成物を、十分な混合が達成されるまで、10分間撹拌した。この組成物は、有機被覆混合物として、特にクロムを含有しない下塗りとして直ちに使用することができ、塩基ポリマーの適用条件に応じて、金属表面に適用することができ、次にフィルム形成を受けることができた。
【0268】
【表2】

【0269】
【表3】

【0270】
【表4】

【0271】
未被覆および被覆有機粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡で決定した。電気伝導性を、ドープした導電性ポリマーの圧縮物品における二点法によって、インターデジタル構造(櫛様電極)で測定した。導電的に被覆した有機粒子は、全て黒色であった。
【0272】
出発材料溶液のうち、ピロールおよびN−メチルピロールを含有するものは特に安定していることが証明され、特に好ましくは、スチレンフラクションが50〜90重量%の割合のポリスチレン/ブチレンアクリレートに基づく有機粒子に添加されたものであった。特に、モリブデン酸塩またはタングステン酸塩は、酸化剤として、同時にアニオンとして有利であることが証明された。モリブデン酸塩およびタングステン酸塩により、ポリマー単位を参照すると、約28%までのほぼ最大限度の導電性ポリマーのドーピングが可能であり、また有利であることが重要であると判明した。。
【0273】
実施例B21〜B28において、導電性ポリマーの被覆の層厚も、ピロールの含有量の増加に伴って、例えば、5nm〜10nmに増大した。実施例B34では、ピロールの代わりにチオフェンを使用した。、B23と対照的に、実施例B35ではタングステン酸塩を加えた。B23及びB35と対照的に、実施例B36〜B40ではモリブデン酸塩を加えた。この場合では、可動性防食アニオンの濃度は、より高く、従って貯蔵効果はより良好である。実施例B41〜B48において、粒子のフィルム形成性は、有機粒子の組成の変化によって変わり、フィルム形成性は、B43およびB44で最良であったが、20℃未満のガラス移転温度Tgを有するフィルム形成性は、方法が室温よりも低い温度で実施されなければ、もはやあまり良好に制御することができなかった。実施例B50〜B57では、pHおよび酸化剤が異なり、モリブデン酸塩ではpH値が4および5、タングステン酸塩ではpH値が5で、より良好な結果が達成された。可動性防食アニオンの可動性に関して、実施例B52、B53およびB57は、これらのアニオンが特に小さく、かつより高いpH値で大きいポリアニオンを形成する傾向が少ないので、アニオンの最良の可動性を示すはずである。
3.酸化剤が異なる有機粒子の調製手順および被覆
これらの実施例において、基本的に第二の調製手順を用いる。
【0274】
出発材料溶液は、最初の作業段階で、蒸留水50mlに、まず最初に、平均サイズ約350nmの有機粒子の20重量%の容量を有する、ポリスチレンおよび/またはポリブチルアクリレートの水性分散体の合計50gを加え、続いて新たに蒸留したピロール1.4gを加えることにより、調製した。さらなる試験において、ピロールをN−メチルピロールに代えた。混合物を均質化するために、溶液を室温で20分間撹拌した。
【0275】
次に酸化剤は、水50mlに、a)ホスホモリブデン酸塩、またはb)H22を過剰に有するFe3+塩化物≦10-4モルのH22のような、酸化剤0.1〜1モルを溶解することによって、調製した。次にこの溶液を、均質化の後、出発材料溶液に滴加した。次に得られた混合物を、室温で4〜6時間撹拌した。このようにして、分散体中で、有機粒子上にポリピロールの約10nm厚の被覆を形成した。また、酸化剤の添加の前に、a)酸化剤のアニオンをドーピングイオンとして、ポリピロールまたは対応する誘導体に混入したか、b)酸化剤の添加の前に、各場合において、任意の防食可動性アニオン(モリブデン酸塩、ヘキサフルオロチタン酸塩、ヘキサフルオロジルコン酸塩、タングステン酸塩)を、追加として、出発材料混合物に加えた。
【0276】
次に完全に反応していない出発材料、酸化剤およびアニオンを分離するために、反応混合物を、二重に蒸留した水に対して、10,000MWCOのセルロース膜を通して48時間透析した。粒子には、5〜20nm厚の範囲の被覆が提供された。これにより得られた分散体は、6か月を過ぎた後でも安定しており、使用可能であった。
4.導電性ポリマーに基づく「付着媒介剤粒子」を製造する調製手順
同じモノマー/オリゴマー、すなわちピロールから合成されたモノマー/オリゴマーを有する付着媒介性基置換モノマー/オリゴマーに基づく、水性の、5%エタノール含有出発材料混合物を、室温で水溶液中で調製した。C原子数10〜12の非分岐鎖状アルキルホスホン酸を付着媒介剤として使用した。可動性防食アニオンの塩に加えて、モリブデン酸アンモニウムを溶液に加えた。モリブデン酸塩は、同時に酸化剤としての役割を果たした。混合物を、全ての時間、撹拌した。この方法を2.5〜4の範囲のpH値で実施し、pH値は、アルキルホスホン酸の含有物を介して調整した。付着媒介性基のpKs値は、出発材料混合物のpH値を決定し、混合物中に付着媒介性基置換モノマー/オリゴマーのミセル形成を許容する。乳化重合を、撹拌しながら、10〜24時間かけて実施した。過剰アニオンを概ね含まず、酸化剤および完全反応していないモノマー/オリゴマーを完全に含まない、「付着媒介剤粒子」のアルコール含有水性分散体を得るために、分散体を透析により精製した。分散体は、本質的に球形の「付着媒介剤粒子」を含有し、その粒径分布はほぼ単分散であり、その平均粒径は、50〜400nmの範囲に任意に調整することができた。
5.導電性ポリマーを含有する粒子を使用する有機被覆の製造
特定の濃度および組成は、処理溶液それ自体を参照し、場合により使用されるより高い濃度のバッチ溶液を参照しない。全ての濃度の数字は、固形分フラクションとして理解されるべきであり、すなわち、濃度は、使用される原材料が希釈または濃縮形態で、例えば水溶液として存在しているかに関わらず、活性成分の重量の割合を参照する。以下において提示されている組成に加えて、商業的な実践において、さらなる添加剤を加えること、あるいは例えば添加剤の総量を増やすため、または例えば消泡剤および/または例えばポリシロキサンのような流れ調整剤の量を増やすためのいずれかで、対応して量を適合させることが、必要であるか、または望ましいことがある。
【0277】
合成樹脂として、15℃〜25℃の範囲のガラス移転温度および120〜180nmの範囲の平均粒径を有するスチレンアクリレート、140℃〜180℃の範囲のブロッキング温度および20℃〜60℃の範囲のガラス移転温度を有するアクリレート−ポリエステル−ポリウレタンコポリマー、70℃〜90℃の範囲の融点を有するエチレン−アクリレートコポリマー、ならびに、特に、固体樹脂で計算された、80〜120の範囲のOH基の数および50〜90の範囲の酸価を有し、例えば5未満の酸価を有するヘキサメトキシメチルメラミンの添加により硬化も受けている、アクリレート変性カルボキシル基含有ポリエステルを使用した。スチレン−ブタジエンコポリマーは、−20℃〜+20℃の範囲のガラス移転温度および5〜30の範囲の酸価を有し、カルボキシル基の含有量のために、このポリマーは、例えばメラミン樹脂またはイソシアネート含有ポリマーにより、追加的に架橋されることができる。エポキシド−アクリレートに基づくコポリマーは、10〜18の範囲の酸価および25℃〜40℃のガラス移転温度を有する。特にスチールの被覆のためのこの組成物は、本発明の被覆に、より良好な耐薬品性を、特にアルカリ性の範囲で付与し、金属表面への付着性を改善する。
【0278】
熱分解ケイ酸は、90〜130m2/gのBET値を有し、コロイド二酸化ケイ素は、10〜20nmの平均粒径を有する。メラミン−ホルムアルデヒドは、カルボキシル基含有ポリエステル樹脂にとって、架橋パートナーとしての役割を果たした。酸化ポリエチレンは、潤滑剤および離型剤(ワックス)としての役割を果たし、125℃〜165℃の範囲の融点を有した。使用されたポリシロキサンは、ポリエーテル−変性ジメチルポリシロキサンであり、湿潤フィルムの適用の間の湿潤剤および流れ調整剤としての役割を果たした。脱泡剤は、炭化水素、疎水性ケイ酸、シュウ酸塩化合物、および非イオノゲン乳化剤の混合物であった。トリプロピレングリコール−モノN−ブチルエーテルは、フィルム形成のために、長鎖アルコールとして使用した。
本発明による実施例61〜71:
市販の冷延スチールストリップから得て、続いて例えば55%AlZn(Galvalume(登録商標))で合金亜鉛メッキし、それを保管の間に保護するために油に浸けたスチールシートを、まず最初に、アルカリスプレークリーナーで全て脱脂し、水で濯ぎ、高温で乾燥し、次に本発明の水性組成物で処理した。これに関して、水性組成物の特定の量(浴溶液)をロールコーターにより適用し、それによって、約10ml/m2の湿潤フィルム厚を得た。次に湿潤フィルムを、80℃〜100℃PMTの範囲の温度で乾燥し、フィルム形成し、硬化した。浴溶液は、第3表の成分から構成されたが、第3表で特定された組成のみを有する、所謂ゼロ試料を除いて、追加的に、各場合において、先行する実施例で提示されている、一つのタイプの被覆無機粒子、被覆有機粒子、または付着媒介剤粒子も、0.05、0.3および1.5重量部の量で添加した(これらも100重量部を超えて計算される)。
【0279】
構成成分を特定の順番で混合し、追加の粒子は、最後から二番目か、または最後の成分として添加した。次に溶液のpHをアンモニア溶液で8.2に調整した。溶液を、約90℃PMT(メタルピーク温度)での空気循環炉の適用後に乾燥した。次にこのように処理したスチールシートを、腐食抵抗および機械的特性のために試験した。
【0280】
【表5】

6.ポリアクリレートに基づく導電性ポリマー含有粒子を使用する有機被覆の製造
市販の溶融亜鉛メッキしたスチールストリップから得て、保管の間に保護するために油に浸けたスチールシートを、まず最初に、アルカリスプレークリーナーで全て脱脂し、水で濯ぎ、高温で乾燥し、次に本発明の水性組成物で処理した。これに関して、特定の量の水性組成物(浴溶液)をローラーコーターにより適用し、それにより、約10ml/m2の湿潤フィルム厚を得た。次に湿潤フィルムを、約70℃〜90℃PMTの範囲の温度で乾燥し、フィルム形成し、硬化した。浴溶液は、第4表の成分から構成された。
【0281】
酸性バインダー系の試験では(比較例VB81〜B91)、水および少量のアルコールを含有する、pH4.2のスチレン−アクリレートに基づく分散体を、水および少量のイソプロパノールを含有し、ポリピロールならびに添加剤により被覆されているシリカゾルのナノ粒子二酸化ケイ素に基づく分散体と、激しく撹拌しながら混合した。ポリピロールによる被覆の前に、ナノ粒子は、主に10〜30nmの範囲の粒径を有し、被覆は、例えば2〜6nmの範囲の層厚を有した。溶液を、約70℃〜90℃PMT(メタルピーク温度)での空気循環炉の適用後に乾燥した。次にこのように処理したスチールシートを、腐食抵抗および機械的特性のために試験した。比較例VB181において、金属シートをSiO2粒子なし、および導線性ポリマーなしで被覆した。全ての被覆は、金属表面への非常に良好な付着を示した。本発明の実施例B82〜B91は、高い腐食保護を示し、それは、概ね防食可動性アニオンの放出効果、および、恐らくはまた、腐食を受ける領域の層剥離の停止に起因することができる。
【0282】
これに平行して、試験(VB92、B93、B94、VB95)を、塩基性の合成樹脂系において対応する方法で実施し、ここで、バインダー系もクロム酸塩の添加により試験した。
【0283】
これらの予備的および比較的な幾つかの試験において、クロム酸塩の代わりに導電性ポリマー含有粒子を含む本発明の被覆の腐食抵抗は、従来技術の典型的なクロム酸塩含有被覆の腐食抵抗と極めて近い。
【0284】
【表6】

【0285】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ポリマーを含む防食組成物で金属表面を被覆する方法であって、その組成物が、概ねまたは完全に粒状の少なくとも一つの導電性ポリマーとバインダー系を含む分散体であること、およびその導電性ポリマーが、防食可動性アニオンが荷電した、ポリフェニレン、ポリフラン、ポリイミダゾール、ポリフェナンスレン、ポリピロール、ポリチオフェンおよび/またはポリチオフェニレンに基づく少なくとも一つのポリマーであることを特徴とする方法。
【請求項2】
導電性ポリマーを含む防食組成物で金属表面を被覆する方法であって、まず第一に、概ねまたは完全に粒状の少なくとも一つの導電性ポリマーを含む分散体である第一の組成物を金属表面に適用し、さらに乾燥すること、およびバインダー系を含む第二の組成物を、次に、分散体として予備被覆金属表面に適用し、乾燥し、さらに任意に重合し、その導電性ポリマーは、防食可動性アニオンが荷電した、ポリフェニレン、ポリフラン、ポリイミダゾール、ポリフェナンスレン、ポリピロール、ポリチオフェンおよび/またはポリチオフェニレンに基づく少なくとも一つのポリマーであることを特徴とする方法。
【請求項3】
導電性ポリマー含有粒子が、1)導電性ポリマーで部分的または完全に被覆された典型的コア・シェル粒子(被覆粒子)、2)多くの有機粒子のような、少なくとも部分的に導電性ポリマーをその内部に含む粒子、3)任意に形成または製造し得る、導電性ポリマーから本質的または完全になる粒子、4)例えばホスホネート基のような少なくとも一つの付着媒介性化学的基を分子上に含む導電性ポリマーからなる所謂「付着媒介剤粒子」、5)導電性ポリマーからなる粒状シェルおよび/または導電性ポリマー含有粒子の破片、および6)粒状コアを含むことなく別途形成されると共に本質的または完全に導電性ポリマーからなる導電性ポリマー含有粒子、からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
アグロメレートおよび/またはアグリゲートのようなそれらの集積体を含む導電性ポリマー含有粒子の平均粒径が10nm〜20μmの範囲にあること、および/または、アグロメレートを含まずアグリゲートを含まない導電性ポリマー含有粒子の平均粒径が10nm〜10μmの範囲にあることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
導電性ポリマー含有粒子が、クラスター、ナノ粒子、ナノチューブ;繊維状、コイル状および/または多孔質構造体;および中実粒子からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
導電性ポリマー含有無機粒子が、それぞれ、少なくとも一つのホウ化物、炭化物、炭酸塩、銅酸塩、鉄酸塩、フッ化物、フルオロケイ酸塩、ニオブ酸塩、窒化物、酸化物、リン酸塩、リン化物、ホスホケイ酸塩、セレン化物、ケイ酸塩、硫酸塩、硫化物、テルル化物、チタン酸塩、ジルコン酸塩から、少なくとも一つのタイプの炭素から、少なくとも一つの合金から、少なくとも一つの金属および/またはその混合結晶から、混合物および/または連晶から、本質的になる少なくとも一つの物質からなる粒子からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
導電性ポリマー含有有機粒子が、主にまたは完全に、スチレン、アクリレート、メタクリレート、ポリカーボネート、セルロース、ポリエポキシド、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、シロキサン、ポリシロキサン、ポリシランおよびポリシラザンに基づくポリマーからなる群より選択される粒子であることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
少なくとも一つのアニオンが、カルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、オキシカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、二置換および/または三置換アレーンカルボン酸;メタ、オルトおよび/またはパラ置換アレーンカルボン酸;アミノ、ニトロ、スルホンおよび/またはOH基を含むアレーン酸;スルホン酸、ミネラルオキシ酸、ホウ素含有酸、マンガン含有酸、モリブデン含有酸、リン含有酸、ホスホン酸、フルオロケイ酸、ケイ酸;希土類元素および/またはイットリウムから選ばれる少なくとも一つの元素を含む酸;イオウ含有酸、チタン含有酸、バナジウム含有酸、タングステン含有酸、錫含有酸、ジルコニウム含有酸、それらの塩、それらのエステルおよびそれらの混合物に基づくアニオンから選択されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも一つのアニオンが、アルキルホスホン酸、アリールホスホン酸、安息香酸、コハク酸、テトラフルオロケイ酸、ヘキサフルオロチタン酸、ヘキサフルオロジルコン酸、没食子酸、ヒドロキシ酢酸、ケイ酸、乳酸、モリブデン酸、ニオブ酸、ニトロサリチル酸、シュウ酸、ホスホモリブデン酸、リン酸、ホスホロケイ酸、フタル酸、サリチル酸、タンタル酸、バナジウム酸、酒石酸、タングステン酸、それらの塩、それらのエステルおよびそれらの混合物に基づくアニオンから選択される先の請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
例えばTiF62-、ZrF62-、CeO44-、MnO4-、MnO42-、MoO42-、MoO44-、VO42-、WO42-、WO44-のような少なくとも一つの可動性防食アニオンが、配位子交換、価数および/または溶解度変化を奏し、欠損の領域および/または層剥離前部の領域に酸化物保護層を形成することを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも一つのアニオンが、カルボン酸、複合フッ化物、モリブデン酸、ニトロ化合物、リン含有オキシアニオン、ポリシロキサン、シラン、シロキサンおよび/または界面活性剤に基づくアニオンからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
アニオンを導電性ポリマーに加えるおよび/または導電性ポリマーに混入し、それが、さらに、金属表面に対する層剥離防止効果および/または付着媒介効果を有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
導電性ポリマー含有粒子を摩砕し、乾燥し、アニーリングしおよび/または再分散してから、液体を加える、またはそれらを組成物に加えることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
組成物が、本質的に任意に、導電性ポリマー含有粒子以外におよび水および/または少なくとも一つの他の溶媒以外に、有機ポリマーに基づくバインダー系および/または二酸化ケイ素/ケイ酸塩も含むことを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
導電性ポリマー含有粒子を使用し、粒径分布が著しく異なる少なくとも二つのタイプの粒子を用いること、および/または、少なくとも2つの異なって製造されたタイプの粒子を用いることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
バインダー系として、アニオン的またはカチオン的に安定しているまたは安定化すると共に任意にフィルム形成することもできる少なくとも一つの有機ポリマーを選択することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
バインダー系として、組成物に含まれている少なくとも一つの有機ポリマーが、組成物を乾燥したときにフィルム形成する系を選択することを特徴とする、請求項1から16までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
バインダー系として、少なくとも一つの熱架橋剤を介しておよび/または少なくとも一つの光開始剤を介して化学的および/または遊離基的に架橋する系を選択することを特徴とする、請求項1から17までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
バインダー系を含む組成物に、殺生物剤、キレート、乳化剤、消泡剤、フィルム形成補助物質、潤滑剤、付着媒介剤、錯体形成剤、無機および/または有機防食剤、湿潤剤、顔料、酸捕捉剤、保護コロイド、シラン/シロキサン/ポリシロキサン、安定化剤、界面活性剤、架橋剤、可塑剤、アルミニウム化合物、セリウム化合物、ランタン化合物、マンガン化合物、希土類化合物、モリブデン化合物、チタン化合物、タングステン化合物、イットリウム化合物、亜鉛化合物およびジルコニウム化合物からなる群より選択される少なくとも一つの添加剤を添加することを特徴とする、請求項1から18までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
組成物を、ローラー塗布、フローコーティング、ナイフコーティング、吹き付け塗布、スプレーコーティング、ブラッシングおよび/またはディッピングにより適用し、要すれば、続いてローラーを用いて絞り取ることを特徴とする、請求項1から19までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
水性組成物を5℃〜50℃の範囲の温度で金属表面に適用すること、被覆適用中に5℃〜120℃の範囲の温度に金属表面を維持すること、および/または、被覆金属表面を20℃〜400℃PMT(メタルピーク温度)の範囲の温度で乾燥することを特徴とする、請求項1から20までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
被覆すべき金属表面を清浄化し、ピクリングし、濯いでから請求項1または2に記載の少なくとも一つの組成物で被覆し、不動態化層、処理層、予備処理層、油層および/または概ね導電性ポリマーを含む薄いまたは非常に薄い被覆を設け、限定的にのみまたは完全に密封し、要すれば、続いて、少なくとも部分的にこの層を取り外すことを特徴とする、請求項1から21までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
ストリップを、請求項1〜22のいずれか1項に記載の組成物で被覆し、任意に20℃〜70℃の範囲の温度に冷却後、コイル状に巻くことを特徴とする、請求項1から22までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
請求項1または2に記載の組成物で被覆した後の被覆金属表面に、濯ぎ後溶液、有機ポリマー、塗料、接着剤、接着剤キャリアおよび/または油に基づく少なくとも一つのさらなる被覆を設けることを特徴とする、請求項1から23までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
被覆された金属パーツ、ストリップ、ストリップセクション、ワイヤーまたは異形材を形成し、塗装し、例えばPVCのようなポリマーで被覆し、印刷し、結合し、熱はんだし、溶接し、および/または、クリンチまたは他の接合技術により互いにまたは他の要素に接合することを特徴とする、請求項1から24までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
少なくとも一つの水溶性または水分散性有機ポリマー、少なくとも一つのタイプの導電性ポリマーを含む粒子、水、任意に少なくとも一つの有機溶媒、および任意に少なくとも一つの添加剤を含むことを特徴とする、金属表面被覆用の組成物。
【請求項27】
チタンおよび/またはジルコニウムに基づくアニオンが混入された導電性ポリマーを含むこと、および/または、チタンおよび/またはジルコニウムの少なくとも一つの化合物を含むことを特徴とする、請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
請求項1〜25のいずれかに従って製造された、バインダー系、粒子および導電性ポリマーに基づく被覆が金属表面上に設けられた物品。
【請求項29】
請求項28に記載の被覆を有する被覆物品であって、被覆が、チタンおよび/またはジルコニウムを含むアニオンからなる導電性ポリマーを含むこと、および/または、被覆が、チタンおよび/またはジルコニウムの少なくとも一つの化合物を含むことを特徴とする被覆物品。
【請求項30】
例えば、ストリップ、ワイヤー、異形材またはパーツ、例えばワイヤーコイル、ワイヤーメッシュ、スチールストリップ、金属シート、ライニング、シールド、自動車ボディーまたは自動車ボディーパーツ;航空機、トレイラー、モバイルハウスまたは飛翔体のパーツ;例えばカバーリング、ハウジング、ランプ、ライト、信号機要素、家具または家具要素の一片、家庭用道具の要素、骨組、異形材、複雑な形状の成形されたパーツ、ガードレール、加熱体またはフェンス要素、車両バンパー、少なくとも一つのチューブおよび/または異形材からなるパーツまたはそれらを有するパーツ、窓、ドアまたは自転車骨組、または小さなパーツ、例えば、スクリュー、ナット、フランジ、バネまたはメガネフレームのような、請求項1〜25の少なくともいずれか1項に記載の方法により被覆された物品の使用。

【公表番号】特表2008−508097(P2008−508097A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−524255(P2007−524255)
【出願日】平成17年8月1日(2005.8.1)
【国際出願番号】PCT/EP2005/008309
【国際公開番号】WO2006/015756
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(500399116)ヒェメタル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (32)
【氏名又は名称原語表記】Chemetall GmbH
【住所又は居所原語表記】Trakehner Str. 3, D−60487 Frankfurt am Main,Germany
【Fターム(参考)】