説明

集合住宅の警備システム

【課題】居住者が玄関から各住戸へ入る前に共用部の状況を十分に把握できるようにすることで、住戸へ入る際の防犯性を高めることができる集合住宅の警備システムを提供する。
【解決手段】複数の住戸11A,11Bとこれら各住戸の玄関に至る廊下14(共用通路)を含む共用部14,15,16,17とを備える集合住宅10に適用される警備システムであって、各住戸11A,11Bの玄関に設けられ警戒情報が表示される室外用表示パネル22(表示手段)と、共用部14〜17にいる人を検知する人感センサ31(人検知手段)と、共用部14〜17にいる人が予め許可されている人であることを認証する管理サーバ(認証手段)と、を備える。そして、人感センサ31による検知結果及び管理サーバによる認証結果に応じ、室外用表示パネル22を表示制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集合住宅の警備システムに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の住戸と、これら各住戸の玄関に至る共用通路を含む共用部とを備えるマンション等の集合住宅において、帰宅してきた居住者は、集合住宅の住人以外の人が共用部にいるか否か等、共用部の状況を把握しづらい。そのため、居住者が玄関から住戸内に入った後、玄関ドアを施錠する前に、不審者が居住者に追従して住戸内に侵入する事態が生じうる。
【0003】
このような事態に対する防犯性を高めるべく、共用部にいる人を防犯カメラで撮像し、その映像を共用玄関ホールに設置されたモニタに表示させることが特許文献1等にて提案されている。
【特許文献1】特開2008−72258号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、共用部にいる人の映像を単にモニタに表示させるだけの上記従来技術では、玄関から住戸内に入ろうとする居住者が共用部の状況を十分に把握できるとは言えず、不審者が住戸内に侵入する事態に対する防犯性を十分に高めるには至らない。
【0005】
本発明は、居住者が玄関から各住戸へ入る前に共用部の状況を十分に把握できるようにすることで、住戸へ入る際の防犯性を高めることができる集合住宅の警備システムを提供することを主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決すべく、第1の発明では、複数の住戸とこれら各住戸の玄関に至る共用通路を含む共用部とを備える集合住宅に適用される警備システムであって、前記各住戸の玄関に設けられ、警戒情報が表示される表示手段と、前記共用部にいる人を検知する人検知手段と、前記共用部にいる人が予め許可されている人であることを認証する認証手段と、前記人検知手段による検知結果及び前記認証手段による認証結果に応じ、前記表示手段を表示制御する制御手段とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、共用部の人検知結果や認証結果に応じ、共用部にいる人についての警戒情報を各住戸の玄関から入る前に表示させることができる。これにより、各居住者は、玄関に設置されている表示手段の表示内容を確認することにより、例えば認証のない人が近くにいるとか、認証のない人は共用部に存在しない等、防犯性に関する情報を得ることができる。したがって、居住者が玄関から各住戸へ入る前に共用部の状況を十分に把握できるようになり、居住者が玄関から各住戸へ入る際の防犯性を高めることができる。
【0008】
第2の発明では、第1の発明において、前記制御手段は、前記人検知手段により検知されている人が前記認証手段により認証されるか否かを判定し、その判定結果に応じて前記表示手段を表示制御することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、各居住者は、表示手段を確認することにより、共用部にいる非認証者の存在を知ることができる。例えば、「人検知手段により検知されている人が非認証者であるか否か」について表示させれば、居住者は共用部の状況を把握しやすくなるので、防犯性を向上できる。
【0010】
第3の発明では、前記制御手段は、前記人検知手段により継続して検知されている時間、又は前記人検知手段により検知されている人の移動速度の少なくとも一方を判定し、その判定結果に応じて前記表示手段を表示制御することを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、各居住者は、表示手段を確認することにより、不審な行動をとる者の存在を知ることができる。例えば、人検知手段により検知されている人が、所定時間以上継続して検知されていると判定した場合や、所定速度以上の速さで移動していると判定した場合に、その検知されている人が不審者である旨を表示させることが望ましい。なお、このような行動をとる者の場合には認証手段による認証の有無にかかわらず不審者と取り扱うことが好ましい。
【0012】
第4の発明では、前記人検知手段及び認証手段は、前記共用部の複数箇所に設置されるものであり、前記制御手段は、前記共用部の位置を特定した警備情報が前記表示手段に表示されるように表示制御することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、各居住者は、表示手段を確認することにより、共用部のどの位置に不審者がいるのかを知ることができ、不審者の滞在位置に応じ適切な行動を居住者等がとることができる。例えば、複数階の集合住宅であれば、居住者の住戸と同一階の共用通路、他階の共用通路、エレベータ、共用階段のいずれに不審者がいるかを表示させれば、居住者は共用部にいる不審者の状況を詳細に把握できるので、防犯性を向上できる。
【0014】
第5の発明では、前記認証手段は、前記各住戸の居住者が携帯する認証装置から発信される識別認証情報に基づいて認証するものであり、前記制御手段は、前記人検知手段による検知結果及び前記認証手段による認証結果に応じ、前記認証装置に警戒信号を発信することを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、認証装置は、認証機能と警戒受信機能とを持つこととなり、警戒情報を認証装置によって知ることができる。例えば、上記第2の発明により非認証者がいることを警戒情報とした場合において、そのような警戒情報が含まれた警戒信号を認証装置が受信した時に、警戒を促す音を認証装置に発生させたり認証装置を振動させたりする警戒信号を発信すれば、居住者の警戒心を高めさせることができるので、防犯性を向上できる。
【0016】
なお、認証装置を振動させる例によれば、居住者は共用部に不審者がいる旨を不審者に極力気づかれずに把握することができ、その後の対応をより適切にとることができる。なお、認証装置が携帯電話によって具現化される場合には、通話等の通常の着信時とは異なるパターンで振動させるのが望ましい。これにより、居住者は不審者が潜んでいる旨を的確に把握することができる。
【0017】
第6の発明では、前記玄関の施錠装置を、玄関前の所定範囲内に認証装置があることに基づいて解錠させる施解錠制御手段を備え、前記制御手段は、前記人検知手段による検知結果及び前記認証手段による認証結果に応じ、前記施解錠制御手段による前記施錠装置の解錠処理を禁止させることを特徴とする。
【0018】
本発明によれば、居住者が玄関の施錠装置を解錠して住戸内に入ろうとする際に、不審者が居住者と共に玄関から住戸内に侵入する、といった共連れによる不具合を回避し得る。特に、玄関の近くに不審者がいる場合に解錠できないことにより、住戸内に押し入られることを回避できる。これは、居住者が不審者とともにいる場合には住戸内よりも共用部にいる方が安全との知見に基づく。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、図1は本実施形態における集合住宅の1階部分の概略を示す平面図、図2は集合住宅の1階部分及び2階部分を示す図1のII−II断面図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態の建物は複数階を有するアパート等の集合住宅10として具体化されている。本実施形態にかかる集合住宅10は、各階に複数の住戸11A,11B,11Cを有するとともに、1階に管理室12を有している。
【0021】
集合住宅10の各住戸11A,11B,11Cには、玄関口の扉体を構成する玄関ドア13がそれぞれ設けられている。集合住宅10の各階には、同じ階の各玄関ドア13に面するように共用の廊下14が設けられている。各階の廊下14は階段15及びエレベータ16で連絡されている。また、各住戸11A,11B,11Cの居住者が共用するエントランスホール17と1階の廊下14とは自動ドア18を介して通じており、エントランスホール17と屋外とは手動ドア19を介して通じている。これら廊下14(共用通路)、階段15、エレベータ16及びエントランスホール17により共用部が構成されている。
【0022】
廊下14に面した外壁面のうち各玄関ドア13の近傍位置には、玄関ドア付近を照らす照明装置20(図2参照)と、送受信機21と、室外用表示パネル22(表示手段)とがそれぞれ設けられている。これらの送受信機21は無線通信部を備えており、所定の領域を通信範囲として、居住者に携帯される認証装置としての携帯電話Kとの間で無線通信が可能となっている。室外用表示パネル22は、居住者へ共用部の状況を報知するための表示手段であり、その表示内容については後に詳述する。
【0023】
また、各住戸11A,11B,11Cの室内には、室外用表示パネル22と同じ内容を表示する室内用表示パネル220と、後述する監視カメラ33により撮像された共用部の様子を表示する画像モニタ221とがそれぞれ設けられている。
【0024】
先述した共用部14〜17の複数箇所には、人感センサ31(人検知手段)、送受信機32及び監視カメラ33から構成された監視ユニット30A〜30Mが設置されている。なお、これら人感センサ31、送受信機32及び監視カメラ33をユニット化することなく、別々に設置するようにしてもよい。
【0025】
監視ユニット30A〜30Hは廊下14に設置され、そのうち監視ユニット30A,30B,30Cは、廊下14の天井14aのうち各住戸11A,11B,11C及び管理室12の玄関ドア13の正面位置に設置され、監視ユニット30E〜30Hは廊下14の側壁14bに設置されている。また、監視ユニット30Iはエレベータ16内の天井に、監視ユニット30Jはエントランスホール17の天井に、監視ユニット30K,30Lは階段15に、監視ユニット30Mは階段踊場に、各々設置されている。
【0026】
人感センサ31は、共用部14〜17の所定領域(図1中の一点鎖線RA〜RD,RI〜RM参照)にいる人を検知するセンサであり、赤外線式や超音波式、熱線式のものを採用することができる。人感センサ31による検知信号は、管理室12に設けられる管理サーバ40(図3参照)へ送信される。なお、廊下14の側壁14bに設置された監視ユニット30E〜30Hの人感センサ31の検知範囲と、廊下14の天井14aに設置された監視ユニット30A〜30Dの人感センサ31の検知範囲とは大部分が重複するため、側壁14bに設置された監視ユニット30E〜30Hについては人感センサ31を廃止するようにしてもよい。
【0027】
送受信機32は、無線通信部を備えており、上記所定領域RA〜RD,RI〜RMと略同一の範囲を通信範囲として、居住者に携帯される認証装置としての携帯電話Kとの間で無線通信が可能となっている。また、送受信機32は、携帯電話Kとの送受信により取得した識別認証情報(ID情報)を管理サーバ40へ送信する。なお、玄関ドア13の近傍に設けられた送受信機21により取得したID情報は、各住戸11A,11B,11Cに設けられるコントローラ41へ送信される。
【0028】
監視カメラ33は共用部14〜17の撮像を行うものである。天井14aに設置された監視カメラ33は上記所定領域RA〜RD,RI〜RMと略同一の範囲について撮像するのに対し、側壁14bに設置された監視カメラ33は、廊下14の長手方向全体に亘って撮像することができる。監視カメラ33により撮像された映像データは管理サーバ40へ送信される。
【0029】
次に、上記警備システムの電気的構成について図3に基づいて説明する。なお、玄関ドア13の室外側付近にそれぞれ設けられる送受信機21及び室外用表示パネル22や、各住戸11A,11B,11Cの室内にそれぞれ設けられた室内用表示パネル220、画像モニタ221及びコントローラ41については、いずれも共通している。したがって、以下においては、一の住戸11A及びその住戸11Aの玄関ドア13付近に設けられるもののみ説明する。
【0030】
住戸11Aの室内に設けられるコントローラ41は、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータを備えて構成されている。コントローラ41は、居住者を特定するID情報等を記憶するRAMからなる記憶装置41aを有している。
【0031】
コントローラ41には、受信回路21aと送信回路21bとを備えて構成される送受信機21が接続されている。コントローラ41は、居住者に携帯される携帯電話Kとの間で送受信機21を介して通信可能となっている。具体的には、居住者に携帯される携帯電話Kが送受信機21の送受信範囲に進入すると、携帯電話Kは、あらかじめ携帯電話K内の図示しない記憶装置に記憶された居住者のID情報を含む識別信号を送信する。なお、この送受信範囲は、玄関ドア13近傍の所定範囲に設定されているため、玄関ドア13近傍に人が進入してくると、その人の携帯電話Kと送受信機21との間で送受信がなされることとなる。この識別信号は、受信回路21aを介してコントローラ41に入力される。また、コントローラ41からの出力信号は送信回路21bによって送信され、この出力信号は携帯電話Kによって受信される。
【0032】
記憶装置41aに記憶されているID情報は、携帯電話Kに記憶されているID情報に対応したものである。コントローラ41に携帯電話KからのID情報を含む識別信号が入力されると、コントローラ41はID情報の認証を行う。具体的には、入力された識別信号に含まれるID情報が記憶装置41aに記憶されているID情報と一致するか否かを判定し、一致した場合には、玄関ドア13近傍の所定範囲にいる人が予め許可されている人であることを認証する。
【0033】
玄関ドア13は、施錠装置42により自動で施錠と解錠がなされる。コントローラ41は、施錠装置42の解錠及び施錠の作動を制御するが、上記ID情報による認証が為されたことを条件として解錠作動を許可している。さらにコントローラ41は、照明装置20の作動をも制御する。
【0034】
管理室12の室内に設けられる管理サーバ40は、CPU等を有する周知のマイクロコンピュータを備えて構成されており、各住戸11A,11B,11Cのコントローラ41と相互通信可能に構成されている。管理サーバ40は、住戸11A,11B,11C毎に設定されたID情報を各コントローラ41から取得する。取得したID情報は、管理サーバ40が有するRAM等の記憶装置40aに記憶される。
【0035】
コントローラ41による上記認証と同様にして、管理サーバ40(認証手段)も、送受信機32から入力された識別信号に含まれるID情報が記憶装置40aに記憶されているID情報と一致するか否かを判定し、一致した場合には、該当する送受信機32の通信領域RA〜RD,RI〜RMにいる人が予め許可されている人であることを認証する。具体的には、携帯電話Kが送受信機32の送受信範囲に進入すると、携帯電話Kは、あらかじめ携帯電話K内の図示しない記憶装置に記憶された居住者のID情報を含む識別信号を送信する。この識別信号は、受信回路32aを介して管理サーバ40に入力される。また、管理サーバ40からの出力信号は、送信回路32bによって送信される。この出力信号は、携帯電話Kによって受信される。
【0036】
なお、コントローラ41は、該当する住戸の住人が自宅のコントローラ41に登録したID情報に基づき認証を実施するのに対し、管理サーバ40は、全ての住戸のコントローラ41に登録されたID情報に基づき認証を実施する。例えば、コントローラ41は自宅の住人であることを認証し、管理サーバ40は集合住宅の住人であることを認証する。
【0037】
さらに管理サーバ40(人検知手段)は、人感センサ31から入力される検知信号に基づき、該当する人感センサ31の検知領域RA〜RD,RI〜RMに人がいるか否かを判定する。なお、送受信機32の送受信範囲は、人感センサ31の検知領域RA〜RD,RI〜RMの占める範囲とほぼ同一となるように設定されている。よって、検知領域RA〜RD,RI〜RMに人が進入すると、人感センサ31により検知されるとともに、その検知された人が所持する携帯電話KのID情報に対して認証判定を実行することができる。
【0038】
また、エントランスホール17に位置する自動ドア18の作動は管理サーバ40により制御されており、管理サーバ40は、監視ユニット30Jの送受信機32から取得したID情報が認証されたことを条件として、或いは各住戸11A〜11Cに設置された開作動スイッチ(図示せず)を住人が操作したことを条件として、自動ドア18の開作動を許可する。なお、廊下14側からエントランスホール17へ進入する場合には、認証の有無に拘わらず自動ドア18の開作動を許可している。
【0039】
また、管理サーバ40には、インターネット50を介して集合住宅10を管理する管理会社の管理コンピュータ51が接続されている。これにより、管理会社は、管理サーバ40を介して集合住宅10の防犯状況を把握することができる。
【0040】
次に、管理サーバ40によって実行される制御処理について図4に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、本制御処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
【0041】
まずステップS10において、全ての領域RA〜RMについて、人感センサ31からの検知信号を取得する。そして、取得した複数の検知信号に基づき、各々の領域RA〜RMについて人がいるか否かを判定する人検知処理を実行する。この人検知処理により、「どの領域に人がいるか」との検知結果が得られることとなる。
【0042】
続くステップS20では、ステップS10で取得した検知結果に基づき、複数の領域RA〜RMのうち少なくとも1つの領域に対して人感センサ31による人検知が有るか否かを判定する。複数の領域RA〜RMのうちいずれの領域に対しても人検知が無いと判定されれば(S20:NO)、本制御処理を終了する。
【0043】
人検知が有ると判定されれば(S20:YES)、続くステップS30において、複数の監視ユニット30A〜30Hのうち、ステップS10で検知有りと判定した人感センサ31に該当する監視ユニットの送受信機32によりID情報を取得し、取得したID情報が記憶装置40aに記憶されているID情報と一致して認証されるか否かを判定する。要するに、人感センサ31で検知された人に対して認証判定処理を実施する。
【0044】
続くステップS40では、各々の領域RA〜RMについてステップS10で取得した検知信号に基づき、検知した人が不審な行動をとっているか否かを判定する。例えば、1つの領域にて人感センサ31が所定時間(例えば5分)以上継続して人を検知している場合に、その人が不審者であると判定する。或いは、複数の人感センサ31の検知信号に基づき検知されている人の移動速度が所定速度以上である場合に、その人が不審者であると判定する。
【0045】
例えば、不審者が領域RA内からエントランスホール17へ向けて廊下14を走っている場合において、その移動速度の算出処理について図5のタイムチャートを用いて説明する。
【0046】
図5(a)に示すように領域RAの人感センサ31の検知信号は、不審者Uが領域RA内にいる期間中は人を検知している検知状態となり、領域RAの外に出た時点で人を検知していない非検知状態となる。同様にして、領域RB,RCの人感センサ31の検知信号も、非検知状態から検知状態に切り替わった後、非検知状態に切り替わる(図5(b)(c)参照)。
【0047】
つまり、所定時間(図5の例では符号t2,t4に示す時間)だけ検知状態に切り替わるといった検知信号の変化が、隣接する領域RA,RB,RCにおいて順次現れた場合に、人が移動していると判定できる。そして、前記検知信号の変化が所定時間よりも短い周期で現れる場合に、その移動している人が走っていると判定して不審者であると判定できる。具体的には、領域RAの人感センサ31が非検知状態に切り替わってから領域RBの人感センサ31が検知状態に切り替わるまでの時間t1、領域RBにて検知状態が継続されている時間t2、領域RBにて非検知状態に切り替わってから領域RCにて検知状態に切り替わるまでの時間t3、領域RCにて検知状態が継続されている時間t4が所定時間以内である場合に、不審者であると判定できる。
【0048】
なお、本実施形態では、検知された人がステップS30にて認証されたか否かに拘わらず、上述の如く検知信号に基づき不審者行動を判定しているが、例えば認証された人に対してはステップS40による不審者行動の判定を行わず、認証されなかった人を不審者行動判定の対象とするようにしてもよい。
【0049】
図4の説明に戻り、上述の如くステップS40で不審行動判定が為された後、続くステップS50では、ステップS10で検知有りと判定した人感センサ31に該当する監視ユニットの監視カメラ33から映像データを取得する。なお、人が検知された領域の映像データを取得することに加え、検知された領域と関連付けられた領域の映像データについても取得することが望ましい。例えば、領域RAに人が検知されている場合に、検知されている領域RAと隣接する領域RBを関連付けさせておき、領域RBの監視カメラ33からも映像データを取得することが望ましい。
【0050】
また、撮像の向きが異なる監視カメラ33を関連付けさせておくことが望ましい。例えば、天井14aに設置された監視カメラ33に比べて廊下14等の側壁14bに設置された監視カメラ33の方が、検知された人の顔を撮像しやすいので、共用の廊下14に設定された領域RA〜RDにて人が検知された場合に、廊下14の側壁14bに設置された監視ユニット30E〜30Hの監視カメラ33からも映像データを取得することが望ましい。
【0051】
続くステップS60では、ステップS10で取得した検知結果、ステップS30での認証判定の結果(認証結果)、ステップS40での不審行動判定の結果(不審判定結果)、及びステップS50で取得した映像データを含む警戒情報を、各住戸11A〜11Cのコントローラ41へ送信する。
【0052】
次に、各住戸11A〜11Cのコントローラ41によって実行される制御処理について、図6に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、本制御処理は、所定の周期で繰り返し実行される。
【0053】
先ず、ステップS100において、図4のステップS60において管理サーバ40から送信された警戒情報を取得する。続くステップS110では、ステップS100で取得した警戒情報に含まれる検知結果、認証結果及び不審判定結果に基づき、室外用表示パネル22及び室内用表示パネル220を表示制御する。
【0054】
ここで、この表示制御による表示態様の一例について図7を用いて説明する。なお、図7の例では、室外用及び室内用表示パネル22,220の構造及び表示内容を同一にしている。これらの表示パネル22,220は、検知結果に基づき「共用部のうちどの領域に人がいるか」を表示する。そして、認証結果に基づき「検知された人が認証者であるか非認証者であるか」を表示するとともに、不審判定結果に基づき「検知された人が不審な行動をとっているか」を表示する。
【0055】
より詳細に説明すると、表示パネル22,220には、同階の廊下、エレベータ、外階段、上階の廊下、下階の廊下、エントランスホールといった共用部の各領域RA〜RMに対応する名称が表示されている。そして、これらの名称と対応する箇所に、ランプL1〜L6,L11〜L16が配置されており、共用部に人が検知されると、その検知場所に対応する名称のランプを点灯させる。例えば、領域RIに人がいると検知された場合には、「エレベータ」との名称に対応するランプL2又はランプL12を点灯させる。これにより、共用部のうちどの領域に人がいるかが表示される。
【0056】
そして、上記例において、エレベータ16にて検知された人が認証されているとの認証結果を取得した場合にはランプL12を点灯させ、認証されていないとの認証結果を取得した場合にはランプL2を点灯させる。つまり、ランプL1〜L6は非認証者がいることを示すランプであり、L11〜L16は認証者がいることを示すランプである。これにより、検知された人が認証者であるか非認証者であるかが表示される。
【0057】
また、人が検知されている旨をランプL1〜L6,L11〜L16で表示させるにあたり、検知された人が不審者であると判定されている場合には、不審者判定されていない場合とは異なる態様でランプL1〜L6,L11〜L16を表示作動させる。例えば、検知した人が不審な行動をとっているとの不審判定結果を取得した場合には、該当するランプL1〜L6,L11〜L16を点滅させ、不審者でない場合には該当するランプL1〜L6,L11〜L16を点灯させる。或いは、不審者であるか否かに応じてランプL1〜L6,L11〜L16を異なる色で点灯又は点滅させるようにしてもよい。これにより、検知された人が不審な行動をとっているかが表示される。
【0058】
また、ランプL1〜L6,L11〜L16の表示態様に関し、人がいる場合にランプL1〜L6,L11〜L16を点灯させ、いない場合には消灯させるよう作動させてもよいし、人検知の有無に応じて異なる色で点灯させるようにしてもよい。図7の例では、人検知がない場合にはランプL1〜L6,L11〜L16を緑色で点灯させ、人検知が有る場合には黄色又は赤色で点灯、又は緑色で点滅させる。
【0059】
特に、同階廊下の名称に対応するランプL1,L11については、その表示パネル22,220の住戸の玄関ドアから人検知された場所までの距離に応じて異なる色で点灯させる。例えば、住戸11Aの表示パネル22,220については、領域RBで人検知されている場合には周囲3m以内に人がいる旨を表示すべくランプL1,L11を赤色で点灯させ、領域RCで人検知されている場合には周囲5m以内に人がいる旨を表示すべくランプL1,L11を黄色で点灯させ、領域RDで人検知されている場合には周囲5mより外に人がいる旨を表示すべくランプL1,L11を緑色で点滅させる。
【0060】
図6の説明に戻り、上述の如くステップS110で表示パネル22,220の表示制御が為された後、続くステップS120では、ステップS100で取得した警戒情報に含まれる映像データを画像モニタ221に表示させる。そして、映像表示されている人が認証されている人か否かが分かる態様で画像モニタ221を表示制御する。図8は、画像モニタ221に映像データが表示されている状態を示す図であり、例えば、非認証者Uに対しては符号221aに示す赤枠で囲むよう表示させ、認証者Tに対しては、前記赤枠221aで囲うことなく表示させる。
【0061】
続くステップS130では、ステップS100で取得した検知結果及び認証結果に基づき、自宅玄関前で非認証者が検知されているか否かを判定する。そして、自宅玄関前で非認証者が検知されていると判定した場合には(S130:YES)、以下に説明する警戒信号発信(S140)、解錠禁止(S150)、威嚇処理(S160)を実施する。なお、このように自宅玄関前での認証結果に基づきこれらの処理S140,S150,S160を実行することに替え、不審判定結果に基づきこれらの処理S140,S150,S160を実行するようにしてもよい。
【0062】
警戒信号発信に係るステップS140では、自宅玄関前に非認証者がいる旨を居住者に報知する。具体的には、送受信機21から携帯電話Kへ警戒信号を送信し、居住者に携帯される携帯電話Kを振動させる(携帯電話Kのバイブレータ機能を作動させる)ことで居住者に報知する。これにより、居住者が非認証者(不審者)に気づかずに玄関ドア13を解錠することを、未然に回避できる。さらに、居住者は、不審者がいる旨を振り返らずに把握することができるため、不審者がいる旨を不審者に極力気づかれずに把握することができる。これにより、居住者は、その場から一時的に退避したり知人に連絡したりする等の適切な対応をとることができる。ここで、携帯電話Kのバイブレータ機能による振動パターンは、通常の着信時とは異なるものとしている。これにより、居住者は、不審者が近くにいる旨を的確に把握することができる。
【0063】
なお、居住者を対象とした報知のみならず、不審者がいる旨を管理会社に連絡したり、警備機関等へ通報したりする構成としてもよい。不審者がいるような状況下においては、居住者が適切な対応をとる時間がなかったり、混乱状態になったりする事態が想定される。したがって、上記構成とすることで、居住者が適切な対応をとることができない場合であっても警備機関の警備員等が来てくれるため、居住者の安全を確保することができる。
【0064】
解錠禁止に係るステップS150では、玄関ドア13の施錠装置42を自動で解錠作動させることを禁止する。これにより、居住者が住戸内に入ろうとする際に、不審者が居住者と共に玄関から住戸内に侵入するといった共連れや、不審者が住戸内に押し入ってくることを回避できる。これは、居住者が不審者とともにいる場合には住戸内よりも共用部にいる方が安全との知見に基づく。
【0065】
威嚇処理に係るステップS160では、非認証者(不審者)に対して威嚇する処理を実行する。具体的には、照明装置20を点滅させることで不審者を威嚇した後、図6に示す一連の処理を終了する。
【0066】
また、来客情報(例えば、来訪者の来訪時刻)を予めコントローラ41に登録する手段を備える構成としてもよい。これにより、来訪者に対して威嚇することを回避できるため、来訪者が不快な思いをするのを回避することができる。また、威嚇処理を行うか否かを居住者が任意に選択してコントローラ41に設定することができる手段をさらに備える構成としてもよい。
【0067】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0068】
共用部14〜17に設置された人感センサ31及び送受信機32により、「共用部のうちどの領域に人がいるか」との検知結果、「検知された人が認証者であるか非認証者であるか」との認証結果、及び「検知された人が不審な行動をしているか」との不審判定結果を取得し、玄関ドア13の屋外側近傍に設置された室外用表示パネル22にこれらの検知結果、認証結果及び不審判定結果を表示させる。これにより、各居住者は、玄関に設置されている表示パネル22の表示内容を確認することで、共用部14〜17の防犯性に関する状況を各住戸11A〜11Cへ入る前に詳細に把握できるようになるので、居住者が玄関から各住戸11A〜11Cへ入る際の防犯性を高めることができる。
【0069】
さらに、検知された人を画像モニタ221に表示させるので、室内にいる居住者は共用部14〜17の状況をより一層詳細に把握できる。しかも、映像表示されている人が認証者か否かを分かる態様で画像モニタ221を表示させるので(図8参照)、居住者による共用部14〜17の状況把握を促進できる。
【0070】
また、自宅玄関前で非認証者が検知されている場合には、居住者に携帯される携帯電話Kを振動させる等により居住者に報知する(S140)ので、居住者は、非認証者(不審者)に気づかずに玄関ドア13を解錠するのを未然に回避できる。また、自宅玄関前で非認証者が検知されている場合には、施錠装置42を自動で解錠作動させることを禁止する(S150)ので、不審者が住戸内に押し入ってくることを回避できる。また、自宅玄関前で非認証者が検知されている場合には、非認証者(不審者)に対して照明装置20を点滅させる等の威嚇を実行する(S160)ので、居住者が各住戸11A〜11Cへ入る際の防犯性を向上できる。
【0071】
なお、本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施してもよい。
【0072】
(1)上記実施形態では画像モニタ221を室内にのみ設置しているが、同様の画像モニタを室外の共用部14〜17に設置してもよい。特に、各住戸11A〜11Cの玄関付近に画像モニタを設置すれば、各居住者は、表示パネル22に加えて画像モニタの表示内容をも確認することができ、共用部14〜17の状況を各住戸11A〜11Cへ入る前により詳細に把握できるようになるので、居住者が玄関から各住戸11A〜11Cへ入る際の防犯性を向上できる。
【0073】
(2)室外用表示パネル22及び画像モニタ221の少なくとも一方を、エントランスホール17に設置してもよい。
【0074】
(3)室外用表示パネル22の表示態様に関し、認証者を表示するためのランプL11〜L16を廃止してもよい。この場合、残りのランプL1〜L6は、非認証者と認証者との区別が付くよう共用部14〜17に人がいることを表示することが望ましい。例えば、認証者がエレベータ16にいる場合にはランプL2を緑色で点灯させ、非認証者がエレベータ16にいる場合にはランプL2を緑色で点滅させればよい。
【0075】
(4)上記実施形態では、各住戸11A〜11Cに設置されたコントローラ41が、管理サーバ40から取得した警戒情報に基づき室外用表示パネル22を表示制御しているが、管理サーバ40が警戒情報に基づき室外用表示パネル22を表示制御してもよい。
【0076】
(5)上記実施形態では、画像モニタ221の表示内容(例えば赤枠221aの有無)を認証結果に応じて変更するよう表示制御しているが、警戒情報に含まれる検知結果及び不審判定結果に応じて表示制御するようにしてもよい。例えば、共用部14〜17のうち同階廊下に人がいることが検知結果により把握されている場合に、その人に赤枠221aを付して表示し、同階廊下以外の場所にいる人に対しては赤枠221aを付さずに表示する。また、不審行動判定されている人に対して赤枠221aを点滅表示することや、不審行動判定されている場合に画像モニタ221に映像表示すること等が具体例として挙げられる。
【0077】
(6)上記実施形態では、威嚇処理として照明装置20を点滅させることで不審者を威嚇するようにしたが、これを変更してもよい。例えば、警報装置が設けられる場合には警報装置の鳴動によって不審者を威嚇してもよいし、照明装置20と警報装置とを組み合わせて威嚇するようにしてもよい。
【0078】
(7)上記実施形態では、人検知手段としての人感センサ31によって人を検知する構成としたが、これを変更してもよい。例えば、撮像装置(監視カメラ33)の撮像結果に基づいて人を検知したり、人感センサと撮像装置との双方を利用して人を検知したりする構成としてもよい。但し、居住者のプライバシーを侵害するおそれがあることを考慮すると、人感センサによって人を検知する構成とするのが望ましい。
【0079】
(8)上記実施形態では、携帯電話Kを振動させることで居住者に対して不審者がいる旨を報知するようにしたが、これを変更してもよい。例えば、居住者に対して携帯電話Kからの音(例えば、着信音)や光(表示画面の点滅等)によって報知してもよい。但し、不審者がいることを居住者が把握する際に、このことを不審者に気づかれるおそれがあることを考慮すると、携帯電話Kを振動させることで居住者に対して報知するのが望ましい。携帯電話Kに限らず、照明装置20や警報装置により居住者に報知するものであってもよい。
【0080】
(9)上記実施形態では、携帯電話Kに記憶されたID情報に基づいて居住者が認証される構成としたが、これを変更してもよい。例えば、車両の電子キーや通信機能を有するICカードに記憶されたID情報に基づいて居住者が認証される構成であってもよい。この場合、不審者がいる旨を居住者に報知する際に、照明装置20の光度を変更して点灯させる等、居住者の所持品以外の報知手段により居住者に報知するとよい。これにより、不審者に極力気づかれることなく居住者に報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本実施形態の集合住宅を示す平面図。
【図2】図1のII−II断面図。
【図3】警備システムの電気的構成を示すブロック図。
【図4】管理サーバの制御処理を示すフローチャート。
【図5】不審者判定に用いる移動速度算出処理の概要を示すタイムチャート。
【図6】各住戸のコントローラの制御処理を示すフローチャート。
【図7】室外用表示パネル及び室内用表示パネルの表示態様を示す図。
【図8】画像モニタの表示態様を示す図。
【符号の説明】
【0082】
10…集合住宅、11A〜11C…住戸、14…廊下(共用通路(共用部))、15…階段(共用部)、16…エレベータ(共用部)、17…エントランスホール(共用部)、22…室外用表示パネル(表示手段)、31…人感センサ(人検知手段)、40…管理サーバ(人検知手段、認証手段)、41…コントローラ(制御手段、施解錠制御手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の住戸とこれら各住戸の玄関に至る共用通路を含む共用部とを備える集合住宅に適用される警備システムであって、
前記各住戸の玄関に設けられ、警戒情報が表示される表示手段と、
前記共用部にいる人を検知する人検知手段と、
前記共用部にいる人が予め許可されている人であることを認証する認証手段と、
前記人検知手段による検知結果及び前記認証手段による認証結果に応じ、前記表示手段を表示制御する制御手段と
を備えることを特徴とする集合住宅の警備システム。
【請求項2】
前記制御手段は、前記人検知手段により検知されている人が前記認証手段により認証されるか否かを判定し、その判定結果に応じて前記表示手段を表示制御することを特徴とする請求項1に記載の集合住宅の警備システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記人検知手段により継続して検知されている時間、又は前記人検知手段により検知されている人の移動速度の少なくとも一方を判定し、その判定結果に応じて前記表示手段を表示制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の集合住宅の警備システム。
【請求項4】
前記人検知手段及び認証手段は、前記共用部の複数箇所に設置されるものであり、
前記制御手段は、前記共用部の位置を特定した警備情報が前記表示手段に表示されるように表示制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の集合住宅の警備システム。
【請求項5】
前記認証手段は、前記各住戸の居住者が携帯する認証装置から発信される識別認証情報に基づいて認証するものであり、
前記制御手段は、前記人検知手段による検知結果及び前記認証手段による認証結果に応じ、前記認証装置に警戒信号を発信することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の集合住宅の警備システム。
【請求項6】
前記玄関の施錠装置を、玄関前の所定範囲内に認証装置があることに基づいて解錠させる施解錠制御手段を備え、
前記制御手段は、前記人検知手段による検知結果及び前記認証手段による認証結果に応じ、前記施解錠制御手段による前記施錠装置の解錠処理を禁止させることを特徴とする請求項5に記載の集合住宅の警備システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−146189(P2010−146189A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321243(P2008−321243)
【出願日】平成20年12月17日(2008.12.17)
【出願人】(504093467)トヨタホーム株式会社 (391)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】