説明

集積回路装置、電子機器及び調整電圧の制御方法

【課題】 温度条件が変化しても停止電圧との適切な電位差を保ち低消費電力を実現する集積回路装置等を提供する。
【解決手段】 集積回路装置1であって、第1の振幅と比べて、入力された発振信号400の振幅の方が大きい場合に、第1の矩形波信号408を出力する第1の矩形波信号生成部11と、前記第1の振幅よりも大きな第2の振幅と比べて、前記発振信号400の振幅の方が大きい場合に、第2の矩形波信号402を出力する第2の矩形波信号生成部12を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路装置、電子機器及び調整電圧の制御方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
時計やリアルタイムクロック等に用いられる集積回路装置において、その発振回路やロジック回路は、消費電力を抑制するために、集積回路装置の外部から供給される外部電源をレギュレーターによって降圧した調整電圧を用いる場合がある。できるだけ消費電力を抑制するためには、レギュレーターから供給される調整電圧をその集積回路装置の停止電圧に近づけるほどよい。ここで、停止電圧とは調整電圧を低下させていったときに集積回路装置が動作しなくなる電圧をいう。調整電圧が停止電圧に至った場合、発振回路からのシステムクロックが、後段のロジック回路を動作させるのに十分な矩形波として出力されず集積回路装置の機能が停止する。
【0003】
例えばリアルタイムクロック用の集積回路装置では、10mVの低電圧化は1nW程度の消費電力を抑制する効果がある。このような集積回路装置の消費電力は全体でも30nW程度であるから、1nWの削減は大きな意味がある。そこで、従来から調整電圧を安定して低電圧に保つ方法が提案されている。
【0004】
例えば、レギュレーターに用いる定電圧回路としては、特許文献1に記載の回路がある。特許文献1の発明に係る低電圧回路は、抵抗R1と抵抗R2の比を適宜選択することにより適した調整電圧を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−44449号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、停止電圧には温度依存があり、CMOS回路設計では一般に高温であるほど停止電圧は低くなる。これは、温度が高くなればCMOSトランジスタのしきい値電圧Vが低くなることによる。低消費電力化の観点からは、レギュレーターから出力される調整電圧がこの停止電圧と同じ温度勾配を有し、どの温度であっても停止電圧と一定の電位差を保つことが好ましい。したがって、低消費電力が要求される集積回路装置の中には、定電圧回路の出力段等において、調整電圧を停止電圧の動作温度に合わせて調整できるようにしているものがある。
【0007】
図18に記載の回路は、温度変化に応じた調整を行うためのレギュレーター内部回路の一例である。ダイオード接続のトランジスタ900によってP型トランジスタのしきい値電圧VTP相当の電位差を得て、トランジスタ901によってN型トランジスタのしきい値電圧VTN相当の電位差を得るため、VTP+VTNと相関を持つVOUTを出力する。この出力VOUTに基づいて調整電圧を変化させることにより、温度が上昇すると調整電圧が低下するようにできる。
【0008】
しかし、図18の回路は、発振回路から出力される矩形波の状態とは無関係にレギュレーターの出力段で調整を行う。すなわち、実際の発振回路から出力される矩形波の状態を判定することなく、その矩形波を生成する回路とは別の構造を有する図18の回路によって調整電圧を変化させる。そのため、現実には停止電圧とは温度勾配にずれが生じる。
【0009】
この場合、図19のように、停止電圧の温度勾配1020とレギュレーター回路からの調整電圧の温度勾配1010とは傾きが異なる。よって、定格動作温度の全範囲において調整電圧が停止電圧に至ることがないように、停止電圧から十分なマージンをもった調整電圧しか設定できない。図19の例では、通常40℃程度の環境で動作するとしても、高温(例えば、70℃)時に停止電圧に近接することを考慮してマージン1040を大きくとる必要がある。
【0010】
更に、実線で示す停止電圧の温度勾配1020と調整電圧の温度勾配1010は、プロセスとしては一つの条件(例えばTYP条件)での特性を示す。これに製造時のプロセスのばらつきを考慮すると、例えば図19において、停止電圧の温度勾配1020は上限1020Aと下限1020Bで挟まれた範囲で変動する。同様に、調整電圧の温度勾配1010は上限1010Aと下限1010Bで挟まれた範囲をとり得る。よって、量産された製品が定格動作温度において動作し続けるためには、調整電圧の下限と停止電圧の上限との電位差(例えば、電位差1030)を考慮して調整電圧を調整しなければならない。
【0011】
すなわち、停止電圧の温度勾配1020と調整電圧の温度勾配1010との傾きが異なると、停止電圧の温度勾配1020と調整電圧の温度勾配1010の電位差が最も狭い温度条件を想定した上で、さらにプロセスのばらつきを考慮してマージンを決める必要がある。そのため、停止電圧からの電位差が大きくなり、低消費電力化が困難となる。
【0012】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、調整電圧の温度勾配を停止電圧の温度勾配に近づけ、温度条件が変化しても停止電圧との適切な電位差を保ち低消費電力を実現する集積回路装置等を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1)本発明は、集積回路装置であって、第1の振幅と比べて、入力された発振信号の振幅の方が大きい場合に、第1の矩形波信号を出力する第1の矩形波信号生成部と、前記第1の振幅よりも大きな第2の振幅と比べて、前記発振信号の振幅の方が大きい場合に、第2の矩形波信号を出力する第2の矩形波信号生成部と、を含む。
【0014】
本発明によれば、第2の矩形波信号生成部の回路構造等を第1の矩形波信号生成部と同じにすれば、入力された発振信号が共通であるため、第2の矩形波信号は第1の矩形波信号と同様の性質(例えば、周期)を有する。よって、第2の矩形波信号から間接的に第1の矩形波信号の性質や状態を把握することが可能である。
【0015】
例えば、第1の矩形波信号が集積回路装置を含むシステムのクロック信号である場合、第1の矩形波信号をテスト回路等に取り込み、振幅等の状態を把握しようとすると、その波形に悪影響を与える恐れが生じる。波形に悪影響を与えることが無い場合でも、前記テスト回路ではクロック信号をデータとして扱う必要があるため回路設計が複雑化する恐れがある。このような場合、第2の矩形波信号を観察することで間接的に第1の矩形波信号の状態を把握できれば、クロック信号の劣化や設計の複雑化を生じることはない。
【0016】
ここで、本発明では第2の矩形波信号生成部は、第1の振幅よりも大きな第2の振幅と比較して、発振信号の振幅の方が大きい場合に、第2の矩形波信号を出力する。よって、第2の矩形波信号が発生している場合には、第1の矩形波信号が調整電圧を低下させる余地を残して動作していると判断することができる。
【0017】
(2)この集積回路装置において、前記発振信号を出力する反転増幅器と、制御信号を出力する制御部と、少なくとも前記反転増幅器に調整電圧を供給する電源供給部と、を含み、前記制御部は、前記第2の矩形波信号が出力されている場合に、前記調整電圧の低下を指示する前記制御信号を出力し、前記電源供給部は、前記調整電圧の低下を指示する前記制御信号を受け取った場合に、前記調整電圧を低下させてもよい。
【0018】
本発明によれば、発振信号は発振回路部の一部である反転増幅器から出力される。そして、その反転増幅器に供給されている調整電圧は電源供給部が供給する。制御部は、第2の矩形波信号が出力されている場合に、調整電圧に低下を指示する制御信号を電源供給部に対して出力する。そして、調整電圧が低下すれば発振信号の振幅は小さくなり、調整電圧が適切な電圧範囲に含まれるまで低下すると第2の矩形波信号が出力されないようになる。この一連の動作により、反転増幅器に供給されている調整電圧を適切な電圧まで低下させることができるので、集積回路装置の消費電力を小さくすることができる。
【0019】
(3)この集積回路装置において、前記制御部は、所与のタイミングで前記調整電圧の上昇を指示する前記制御信号を出力し、前記電源供給部は、前記調整電圧の上昇を指示する前記制御信号を受け取った場合に、前記調整電圧を上昇させてもよい。
【0020】
本発明によれば、例えば定期的なタイミング、特定のイベント発生のタイミング、温度センサーが感知した気温変化に基づくタイミング等で、制御部は、調整電圧の上昇を指示する制御信号を出力する。そのため、環境の変化によって調整電圧が停止電圧まで低下して集積回路装置の機能が停止してしまうことを防ぐことができる。
【0021】
(4)この集積回路装置において、前記第1の振幅よりも大きく前記第2の振幅よりは小さい第3の振幅と比べて、前記発振信号の振幅の方が大きい場合に、前記発振信号に基づいて第3の矩形波信号を出力する第3の矩形波信号生成部を含み、前記制御部は、前記第2の矩形波信号も前記第3の矩形波信号も出力されていない場合に、前記調整電圧の上昇を指示する前記制御信号を出力し、前記電源供給部は、前記調整電圧の上昇を指示する前記制御信号を受け取った場合に、前記調整電圧を上昇させてもよい。
【0022】
本発明によれば、第2の矩形波信号及び第3の矩形波信号が出力されていないことにより、反転増幅器に供給されている調整電圧が停止電圧に近づいているとの判断が可能になる。このとき、制御部が調整電圧の上昇を指示する制御信号を出力するので、前記調整電圧を適切な電圧値に保つことができる。
【0023】
(5)この集積回路装置において、前記制御部は、所与のタイミングで前記調整電圧の低下又は上昇を指示する前記制御信号を出力してもよい。
【0024】
本発明によれば、例えば定期的なタイミング、特定のイベント発生のタイミング、温度センサーが感知した気温変化に基づくタイミング等で、制御部は判定を行い、前記制御信号を出力することができる。温度変化が十分に緩やかな場合などに、適当な間隔をおいて判定を行うことで、制御部が消費する電力を抑えることができる。なお、調整電圧の変化を指示する必要が無いと判定した場合には、制御信号の状態を維持してもよい。
【0025】
(6)この集積回路装置において、前記第2の矩形波信号生成部又は第3の矩形波信号生成部は、所与のタイミングで、前記第2の矩形波信号と前記第3の矩形波信号の少なくとも一つの出力を停止させてもよい。
【0026】
本発明によれば、制御部は、例えば判定を行わない時に第2の矩形波信号と第3の矩形波信号の少なくとも一つの出力を停止させることができる。このことにより、さらに消費電力を抑えることができる。
【0027】
(7)この集積回路装置において、前記第2の矩形波信号生成部と前記第3の矩形波信号生成部の少なくとも一つは、その矩形波信号生成部を構成するトランジスタのゲート幅およびゲート長の少なくとも一つが前記第1の矩形波信号生成部のトランジスタとは異なってもよい。
【0028】
本発明によれば、第2の矩形波信号生成部又は第3の矩形波信号生成部におけるトランジスタのしきい値電圧を第1の矩形波信号生成部のトランジスタとは異なる値にするため、トランジスタのゲート幅およびゲート長の少なくとも一方を調整する。設計時において容易に調整を行うことが可能である。
【0029】
(8)この集積回路装置において、前記第2の矩形波信号生成部と前記第3の矩形波信号生成部の少なくとも一つは、その矩形波信号生成部を構成するトランジスタのしきい値電圧が前記第1の矩形波信号生成部のトランジスタとは異なってもよい。
【0030】
本発明によれば、第2の矩形波信号生成部又は第3の矩形波信号生成部におけるトランジスタのしきい値電圧を、例えば製造時のイオン注入等により、第1の矩形波信号生成部のトランジスタとは異なる値にする。設計時には同じゲート幅およびゲート長をもつトランジスタの一部についても、製造時にしきい値電圧を調整することができる。製造プロセスの変化に対応し易く、設計後の調整が可能である。
【0031】
(9)この集積回路装置において、前記第2の矩形波信号生成部は、その矩形波信号生成部を構成するトランジスタのしきい値電圧が前記第1の矩形波信号生成部のトランジスタとは異なり、前記第3の矩形波信号生成部は、その矩形波信号生成部を構成するトランジスタのゲート幅およびゲート長の少なくとも一つが前記第1の矩形波信号生成部のトランジスタとは異なってもよい。
【0032】
本発明によれば、停止電圧までのマージンを示す第3の矩形波信号について、試作設計後に変化する可能性が低い場合、設計時にゲート幅およびゲート長の少なくとも一つを第1の矩形波信号生成部のトランジスタとは異なるものにする。一方、低消費電力化のために調整電圧の上限を示す第2の矩形波信号について、試作設計後に調整する可能性が高い場合、製造時等にトランジスタのしきい値電圧を調整できるようにする。これにより、設計後も更に消費電力を低下させる余地のある集積回路装置を提供できる。
【0033】
(10)本発明は、この集積回路装置を含む電子機器である。
【0034】
本発明によれば、消費電力の少ない電子機器を提供することができる。
【0035】
(11)本発明は、集積回路装置の制御方法であって、制御信号を出力する制御信号出力ステップと、調整電圧を供給する調整電圧供給ステップと、発振信号を出力するステップと、第1の振幅と比べて、入力された前記発振信号の振幅の方が大きい場合に、第1の矩形波信号を出力するステップと、前記第1の振幅よりも大きな第2の振幅と比べて、前記発振信号の振幅の方が大きい場合に、第2の矩形波信号を出力するステップと、を含み、前記制御信号出力ステップにおいて、前記第2の矩形波信号が出力されている場合に、前記調整電圧の低下を指示する前記制御信号を出力し、前記調整電圧供給ステップにおいて、前記調整電圧の低下を指示する前記制御信号を受け取った場合に、前記調整電圧を低下させる。
【0036】
本発明によれば、この集積回路装置の制御方法は、第2の矩形波信号が出力されている場合に調整電圧の低下を指示するために制御信号を出力し、前記制御信号に基づいて少なくとも調整電圧を制御する。よって、調整電圧を適切な電圧まで低下させることができるので、集積回路装置の消費電力を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】第1実施形態における集積回路装置のブロック図。
【図2】第2実施形態における集積回路装置のブロック図。
【図3】第2実施形態における第1の矩形波信号生成部と第2の矩形波信号生成部の構成例を示す図。
【図4】図4(A)は第1の矩形波信号等の波形図。図4(B)は第2の矩形波信号等の波形図。
【図5】第2実施形態における制御部のブロック図。
【図6】第2実施形態における電源供給部の構成例を示す図。
【図7】第2実施形態における調整電圧の変動の例を示す波形図。
【図8】第3実施形態における集積回路装置のブロック図。
【図9】第3実施形態における第3の矩形波信号生成部の構成例を示す図。
【図10】第3の矩形波信号等の波形図。
【図11】第3実施形態における制御部のブロック図。
【図12】第3実施形態における停止電圧の温度変化等を示す図。
【図13】第3実施形態における制御部の判断を示すテーブル。
【図14】第3実施形態における調整電圧の変動の例を示す波形図。
【図15】第4実施形態における電子機器のブロック図。
【図16】図16(A)は電子機器の例である携帯電話の図。図16(B)は電子機器の例である腕時計の図。図16(C)は電子機器の例であるパーソナルコンピューターの図。
【図17】第5実施形態における集積回路装置の調整電圧の制御方法を示すフローチャート。
【図18】電源供給部において調整電圧を生成する従来の回路構成例を示す図。
【図19】従来の回路構成における調整電圧や停止電圧の温度変化の概要を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、第2実施形態以降の説明において、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付し、説明を省略する。
【0039】
1.第1実施形態
本発明の第1実施形態について図1を参照して説明する。
【0040】
図1は、本実施形態の集積回路装置1のブロック図である。集積回路装置1は、第1の矩形波信号生成部11と第2の矩形波信号生成部12を含む。第1の矩形波信号生成部11は発振信号400を受け取り、発振信号400の振幅が予め定められた第1の振幅よりも大きい場合に第1の矩形波信号408を出力する。第2の矩形波信号生成部12は発振信号400を受け取り、発振信号400の振幅が予め定められた第2の振幅よりも大きい場合に第2の矩形波信号402を出力する。
【0041】
第1の矩形波信号生成部11は、例えば集積回路装置1が用いるシステムクロックとして第1の矩形波信号408を出力する。第2の矩形波信号生成部12は、システムクロックの状態を監視するための監視用信号として第2の矩形波信号402を出力する。つまり、第2の矩形波信号生成部12は、図18に記載のレギュレーターの内部回路のような役割を担う。そして、温度変化にかかわらず、第2の矩形波信号402の出力を停止させる電位が、第1の矩形波信号408を停止させる停止電位と一定の電位差を持つことが要求される。よって、温度勾配が同じになるように、第2の矩形波信号生成部12の回路構成は、第1の矩形波信号生成部11と同一であることが好ましい。
【0042】
ここで、第2の振幅は第1の振幅よりも大きい。よって、発振信号400の振幅が、第1の振幅よりは大きく第2の振幅よりは小さい場合には、第1の矩形波信号408は出力されるが、第2の矩形波信号402は出力されない。しかし、発振信号400の振幅が、第2の振幅よりも大きい場合には、第1の矩形波信号408も第2の矩形波信号402も出力される。
【0043】
そこで、第2の振幅を適当に設定することにより、第2の矩形波信号402が出力される場合には、調整電圧を低下させる余地があると判定することが可能になる。逆に、第1の矩形波信号408は出力されるが第2の矩形波信号402は出力されていないならば、集積回路装置1が低消費電力動作を行うのに適切な調整電圧を供給していると判定することができる。
【0044】
なお、集積回路装置1が正常動作するように、調整電圧は停止電圧より高い電位である必要がある。集積回路装置1は急激な温度変化等により調整電圧が停止電圧に近づくことを防止するために、例えば一定時間毎に調整電圧を上昇させる機能を備えていてもよい。このとき、調整電圧の定期的な上昇によって第2の矩形波信号402が出力されるようになった場合には、前記と同様に調整電圧を低下させる余地があると判定される。
【0045】
ここで、第2の矩形波信号生成部12の回路構成が第1の矩形波信号生成部11と同一である場合を想定する。このとき、第2の矩形波信号生成部12は、第1の振幅よりも大きい第2の振幅を、トランジスタのしきい値電圧を調整することで実現できる。すなわち、通常のトランジスタのしきい値電圧を第1の振幅に対応させると、通常よりも高いしきい値電圧は第2の振幅に対応させることができる。トランジスタのしきい値電圧は、設計段階においてそのゲート幅Wとゲート長Lにより調整可能である。具体的には、ゲート幅とゲート長の比であるW/Lが大きい場合にはしきい値電圧は低くなり、W/Lが小さい場合にはしきい値電圧は高くなる。よって、第2の矩形波信号生成部12は、第1の矩形波信号生成部11のトランジスタよりもW/Lが小さいトランジスタを用いて構成されることにより、第1の振幅よりも大きい第2の振幅を実現できる。
【0046】
また、設計段階よりも後の製造段階において、イオン注入の濃度を変更することによってもトランジスタのしきい値電圧を変更することが可能である。この方法は、製造工程の変化に対応させることが容易になる。また、設計が完了した後にプロトタイプ等の評価から得られたデータ等に基づいて適切な調整を行うことも可能になる。
【0047】
本実施形態において、第2の矩形波信号生成部12の回路構成を第1の矩形波信号生成部11と同一にすることにより、第1の矩形波信号408と性質が類似する第2の矩形波信号402を得ることができる。そして、第2の矩形波信号402を観察することで間接的に第1の矩形波信号408の状態を把握することができる。このとき、第2の矩形波信号402が出力される場合には、調整電圧を低下させる余地があると判定することが可能であり、その判定に基づき調整電圧を低下させることにより集積回路装置1の低消費電力化を実現できる。
【0048】
2.第2実施形態
本発明の第2実施形態について図2〜図7を参照して説明する。なお、第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略し、主として相違点について説明する。
【0049】
図2は、本実施形態の集積回路装置1Aのブロック図である。集積回路装置1Aは、第1実施形態と同様に、第1の矩形波信号生成部11と第2の矩形波信号生成部12を含む。そして、集積回路装置1Aは、発振信号400を出力する反転増幅器100と、制御信号420を出力する制御部201と、制御信号420に基づいて少なくとも反転増幅器100に供給される調整電圧404を生成する電源供給部202を含む。
【0050】
反転増幅器100は、発振回路部10の一部である。発振回路部10は他に帰還抵抗101を含んでもよい。本実施形態では、発振回路部10は集積回路装置1Aの水晶振動子接続端子105、106経由で水晶振動子102、発振容量103、104に接続されている。反転増幅器100からは、集積回路装置1Aのシステムクロックの原クロックとなる発振信号400が出力される。発振信号400は、第1実施形態と同様に第1の矩形波信号生成部11と第2の矩形波信号生成部12に入力される。本実施形態でも、第1の矩形波信号生成部11から出力される第1の矩形波信号408(図1)がシステムクロックとなる。
【0051】
なお、発振回路部10は、水晶振動子102、発振容量103、104の全て又は一部を含んでいてもよい。
【0052】
制御部201は、第2の矩形波信号402が出力されているか否かに基づいて、制御信号420を出力する。制御信号420は、調整電圧の電圧レベルを指定する信号であってもよいし、調整電圧の低下又は上昇を指示する信号であってもよい。
【0053】
電源供給部202は、制御信号420に基づいて調整電圧(VREG)404を供給する。VREG404は、少なくとも反転増幅器100を含む発振回路部10に供給される。ここで、VREG404は、発振回路部10だけでなくロジック回路に供給されてもよい。つまり、VREG404は、第1の矩形波信号生成部11、第2の矩形波信号生成部12および制御部201の全て、または一部に供給されてもよい。外部電源を降圧したVREG404がロジック回路にも供給されることにより、集積回路装置1Aの消費電力が低下する。
【0054】
第1実施形態と同様に、第2の矩形波信号402が出力されている場合、制御部201はVREG404の低下を指示する制御信号420を出力する。電源供給部202がVREG404の電圧を下げると、反転増幅器100から出力される発振信号400の振幅は小さくなる。それでも、第2の矩形波信号402が出力されている場合には、制御部201はVREG404の更なる低下を指示する制御信号420を出力する。そして、第2の矩形波信号402が出力されなくなれば、集積回路装置1Aを低消費電力で動作させるのに適切なVREG404が供給されていると制御部201は判定し、VREG404を維持するように制御信号420を制御する。
【0055】
図3は、本実施形態における第1の矩形波信号生成部11と第2の矩形波信号生成部12の回路構成例を示す図である。第1の矩形波信号生成部11と第2の矩形波信号生成部12は、発振信号400を矩形波にして出力する。そのため、最も簡単な構成として、第1の矩形波信号生成部11と第2の矩形波信号生成部12は発振信号400を入力するインバーターであってもよい。しかし、本実施形態では、テストモード時や更なる低消費電力のためにテスト信号406によって矩形波を停止する機能も追加している。第1の矩形波信号生成部11はトランジスタ110A〜110DからなるNAND回路であり、第2の矩形波信号生成部12はトランジスタ120A〜120Dからなる同じ構成のNAND回路である。第1実施形態と同様に、トランジスタ110A〜110Dとトランジスタ120A〜120Dとの間でしきい値電圧に差を設けることによって、第1の振幅と、第1の振幅よりも大きな第2の振幅を実現することが可能である。
【0056】
第1の矩形波信号408はシステムクロックとして用いられ、第2の矩形波信号402は後段の制御部201でVREG404の電圧制御のための判断に用いられる。
【0057】
なお、図3では、VREGと接地電位を用いてNANDを構成しているが、電位のとり方はシステムに応じて適宜変更可能である。例えば、第1の矩形波信号生成部11と第2の矩形波信号生成部12は、外部電源電位VDDと接地電位を用いてもよいし、VDDをとVREGを用いてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、第1の矩形波信号生成部11と第2の矩形波信号生成部12に入力されるテスト信号406は共通であるが、2つのテスト信号がそれぞれに入力されていてもよい。この場合、第1の矩形波信号408と第2の矩形波信号402を個別に停止させることができる。テスト信号406は制御部201によって制御されてもよい。
【0059】
図4(A)は、図3の第1の矩形波信号生成部11の入力信号、出力信号を示す波形図である。第1の矩形波信号(CLKSYS)408は、テスト信号(TEST_)406の論理レベルと、発振信号(CLKIN)400の振幅が第1の振幅1001よりも大きいか否かにより出力が決定される。
【0060】
区間t〜tではTEST_は論理レベルが1であり、CLKSYS408を強制的に停止させることはない。よって区間t〜tでは、CLKIN400の振幅が第1の振幅1001よりも大きいため、CLKSYS408が矩形波として出力される。ただし、区間t〜tでは、VREG404の低下によりCLKSYS408の振幅に変化が生じる。
【0061】
区間t〜tではTEST_は論理レベルが0であり、CLKSYS408を強制的に停止させる。よって区間t〜tでは、CLKIN400が第1の振幅1001よりも大きいにもかかわらず、CLKSYS408は矩形波を出力していない。
【0062】
図4(B)は、図3の第2の矩形波信号生成部12の入力信号、出力信号を示す波形図である。第2の矩形波信号(CLKOUTA)402は、テスト信号(TEST_)406の論理レベルと、発振信号(CLKIN)400の振幅が第2の振幅1002と比較して大きいか否かにより出力が決定される。ここで、第2の振幅1002は第1の振幅1001より大きい。
【0063】
区間t〜tではTEST_は論理レベルが1であり、CLKOUTA402を強制的に停止させることはない。よって区間t〜tでは、CLKIN400の振幅が第2の振幅1002よりも大きいため、CLKOUTA402が矩形波として出力される。しかし、区間t〜tでは、CLKIN400の振幅が第2の振幅1002よりも小さいため、CLKOUTA402は矩形波を出力していない。
【0064】
また、区間t〜tではTEST_は論理レベルが0であり、CLKOUTA402を強制的に停止させる。よって区間t〜tでは、CLKIN400が第2の振幅1002よりも大きいにもかかわらず、CLKOUTA402は矩形波を出力していない。
【0065】
図5は、本実施形態における制御部201のブロック図である。制御部201は、入力された第2の矩形波信号402を分周する分周器203と、アップダウンカウンター204を含む。制御部201は、更に、タイマー205を含んでいてもよい。本実施形態における制御部201は、制御信号420としてアップダウンカウンター204のカウント値を出力し、電源供給部202はそのカウント値に応じてVREG404を変化させる。
【0066】
分周器203からの第2の矩形波信号の分周信号430は、アップダウンカウンター204がカウント値をダウンカウントするタイミングを与える。一般に集積回路装置1Aが使用される環境の温度は第2の矩形波信号402の周期に比べて緩やかに変動する。したがって、分周器203によって、第2の矩形波信号402が出力されているか否かを判定する間隔を大きくする。例えば、分周器203は第2の矩形波信号402を8分周した信号をアップダウンカウンター204に与えてもよい。
【0067】
アップダウンカウンター204は、第2の矩形波信号の分周信号430が出力されていると判定した場合、VREG404の電圧を低下させるためにカウント値をデクリメントし、制御信号420として出力する。
【0068】
タイマー205は、一定周期でタイマー出力信号432をアップダウンカウンター204に与えてもよい。アップダウンカウンター204は、タイマー出力信号432が入力されるとVREG404の電圧を上昇させるためにカウント値をインクリメントしてもよい。このタイマーからの周期的なアップカウント要求は、VREG404が停止電圧に至るのを防止する効果がある。
【0069】
なお、制御部201は図外の温度センサーからの入力によって、アップダウンカウンターのカウント値をインクリメント又はデクリメントする機能を有していてもよい。
【0070】
図6は、本実施形態における電源供給部202の構成例を示す図である。電源供給部202は制御部201からアップダウンカウンター204のカウント値を制御信号420として受け取る。本実施形態では、制御信号420が5ビットであり、電源供給部202の入力信号420A〜420Eは各ビット信号であるとする。なお、5ビットは一例であり制御信号420は何ビットであってもかまわない。また、VREG_orgは制御信号420による調整が行われる前のVREG404の電位である。
【0071】
電源供給部202の回路は、ビットに応じて重み付けられた抵抗値を、VREG_orgがゲートに接続されたNMOSスイッチの形で有している。そして、論理レベルが0の場合、そのビットについては前記の抵抗値による電圧降下が生じる。例えば、制御信号420が0x1F(オール1)の場合には、VREG404の電位はVREG_orgとなる。しかし、それ以外の場合、VREG404の電位は制御信号420の値に応じてVREG_orgを降圧した値となる。
【0072】
図7は、本実施形態における調整電圧(VREG)404の変動の例を示す波形図である。CLKSYS408は、第1の矩形波信号生成部11の出力である第1の矩形波信号である。ここで、第2の矩形波信号生成部12は第1の矩形波信号生成部11と同様の回路構成をとり、第2の矩形波信号402とCLKSYS408は周期が同じである。
【0073】
CLKDIV430は、分周器203によって第2の矩形波信号402を分周した信号である。CLKDIV430の周期に同期して、アップダウンカウンター204のカウント値CNT420と、タイマー205のタイマー値432は変化する。
【0074】
区間t〜tでは、第2の矩形波信号402が第2の矩形波信号生成部12から出力されているため、CLKDIV430も矩形波となっている。第2の矩形波信号402が出力されている場合にはVREG404を低下させる余地があるため、制御部201はCLKDIV430の立ち上がりエッジに同期して(t、t、t、t)アップダウンカウンター204の値である制御信号(CNT)420をデクリメントする。そして、CNT420にしたがって、調整電圧(VREG)404の電圧値も低下する。また、制御部201には、VREG404が停止電圧とならないためにCNT420を定期的にインクリメントする機能を有する。このときのタイミングを決定するのは、タイマー205からのタイマー値(TIMER)432である。本実施例ではTIMER432が0になったときに、CNT420がインクリメントされるとする。区間t〜tでもTIMER432はCLKDIV430の周期毎にデクリメントされていく。
【0075】
区間t〜tでは、CLKDIV430は矩形波ではなく、CNT420の値は12のままである。しかし、TIMER432の値はこの間もCLKDIV430の周期毎にデクリメントされていく。そして、tにおいて、TIMER432が0になったのでCNT420がインクリメントされる。時刻tにおいても、同様にCNT420がインクリメントされる。そして、CNT420の値に応じてVREG404の電圧も変化する。
【0076】
本実施形態では、第2の矩形波信号の分周信号(CLKDIV)430やタイマー205を用いてVREG404を適切な電圧に調整することができるので、集積回路装置の消費電力を小さくすることができる。
【0077】
なお、本実施形態では、制御部201での判定はCLKDIV430の周期毎に行われるため、それ以外の時間においては第2の矩形波信号生成部12からの第2の矩形波信号(CLKOUTA)402を停止させてもよい。具体的には、制御部201は第1の矩形波信号(CLKSYS)408によって判定を行うタイミングを計測し、判定を行う以外の時間においては図3のテスト信号(TEST_)406であって第2の矩形波信号生成部12に入力される信号が論理レベル0となるように制御する。これにより、更に集積回路装置1Aの消費電力を抑えることができる。
【0078】
3.第3実施形態
本発明の第3実施形態について図8〜図14を参照して説明する。なお、第1実施形態又は第2実施形態と同様の構成については、同一符号を付して説明を省略し、主として相違点について説明する。
【0079】
図8は、本実施形態の集積回路装置1Bのブロック図である。集積回路装置1Bは、第2実施形態における集積回路装置1Aの構成要素に加えて、第3の矩形波信号生成部13を含む。そして、制御部201Aは第2の矩形波信号402だけでなく、第3の矩形波信号403を受け取る。
【0080】
第3の矩形波信号生成部13は、第1の振幅よりも大きく前記第2の振幅よりは小さい第3の振幅と比べて、発振信号400の振幅の方が大きい場合に、発振信号400に基づいて第3の矩形波信号403を出力する。本実施形態では、第2実施形態で用いたタイマーによる定期的なVREG404の電圧上昇に代えて、第2の矩形波信号402及び第3の矩形波信号403が出力されていないことによりVREG404が停止電圧に近づいていると判断してVREG404の電圧を上昇させる。
【0081】
図9は、本実施形態における第3の矩形波信号生成部13の構成例を示す図である。図3の第1の矩形波信号生成部11、第2の矩形波信号生成部12と同様に、第3の矩形波信号生成部13はトランジスタ130A〜130DからなるNAND回路である。図9では、第1の矩形波信号生成部11、第2の矩形波信号生成部12および第3の矩形波信号生成部13に入力されるテスト信号406は共通であるが、3つのテスト信号がそれぞれに入力されていてもよい。この場合、第1の矩形波信号408、第2の矩形波信号402、第3の矩形波信号403を個別に停止させることができる。このとき、第2実施形態と同様に、後段の制御部201Aが判定を行う以外の時間において、例えば第2、第3の矩形波信号生成部又は制御部が、第2の矩形波信号生成部12および第3の矩形波信号生成部13の一方又は両方の出力を停止させてもよい。これにより、更に集積回路装置1Aの消費電力を抑えることができる。
【0082】
また、第2の矩形波信号生成部12を構成するトランジスタと、第3の矩形波信号生成部13を構成するトランジスタとは異なる手法により、しきい値電圧を調整してもよい。例えば、設計後にプロトタイプ等で実測値を測定してフィードバックを行う可能性の高い方の矩形波信号生成部のトランジスタは、製造時にイオン注入時の濃度調整等の手法を用いて、しきい値電圧を調整してもよい。そして、他方の矩形波信号生成部のトランジスタは、設計時にゲート幅、ゲート長の変更によりしきい値電圧を調整してもよい。具体的には、第2の矩形波信号生成部12はイオン注入時の濃度調整等の手法でトランジスタのしきい値電圧を調整し、第3の矩形波信号生成部13はトランジスタのゲート幅、ゲート長の変更によりしきい値電圧を調整してもよい。又は、その反対に、第2の矩形波信号生成部12の方をトランジスタのゲート幅、ゲート長の変更によりしきい値電圧を調整してもよい。
【0083】
図10は、図9の第3の矩形波信号生成部13の入力信号、出力信号を示す波形図である。第3の矩形波信号(CLKOUTB)403は、テスト信号(TEST_)406の論理レベルと、発振信号(CLKIN)400の振幅が第3の振幅1003と比較して大きいか否かにより出力が決定される。ここで、図10のように、第3の振幅1003は第1の振幅1001より大きく、第2の振幅1002よりも小さい。
【0084】
区間t〜tではTEST_は論理レベルが1であり、CLKOUTB403を強制的に停止させることはない。よって区間t〜tおよび区間t〜tでは、CLKIN400の振幅が第3の振幅1003よりも大きいため、CLKOUTB403が矩形波として出力される。しかし、区間t〜tでは、CLKIN400の振幅が第3の振幅1003よりも小さいため、CLKOUTB403は矩形波を出力していない。なお、区間t〜tでは、CLKOUTB403の矩形波はVREG404の電圧の低下によって区間t〜tよりも振幅が小さくなっている。
【0085】
また、区間t〜tではTEST_は論理レベルが0であり、CLKOUTB403を強制的に停止させる。よって区間t〜tでは、CLKIN400が第3の振幅1003よりも大きいにもかかわらず、CLKOUTB403は矩形波を出力していない。
【0086】
図11は本実施形態における制御部201Aのブロック図である。第2実施形態と異なり、制御部201Aは、入力された第2の矩形波信号402を分周する分周器203Aだけでなく、入力された第3の矩形波信号403を分周する分周器203Bを含む。また、制御部201Aは、第2実施形態と同様にアップダウンカウンター204Aを含む。アップダウンカウンター204Aには、分周器203Aと分周器203Bからそれぞれ第2の矩形波信号の分周信号430A、第3の矩形波信号の分周信号430Bを受け取る。
【0087】
第2の矩形波信号の分周信号430Aは、第2実施形態と同様にアップダウンカウンター204Aがカウント値をダウンカウントするタイミングを与える。しかし、第3の矩形波信号の分周信号430Bは、分周信号430Bが出力されない場合にアップダウンカウンター204Aのカウント値をインクリメントする必要がある。そこで、アップダウンカウンター204Aは、例えば第3の矩形波信号の分周信号430Bの周期毎にカウント値を自動的にインクリメントする。そして、第3の矩形波信号の分周信号430Bが出力されていると判定した場合には、自動的にインクリメントされた値を相殺するためにカウント値をデクリメントする。
【0088】
このような操作により、制御部201Aのアップダウンカウンター204Aは、第2の矩形波信号402と第3の矩形波信号403が矩形波であるか否かによって、一定の間隔(具体例として、分周信号430A、430Bの周期)でカウント値をインクリメント、又はデクリメントする。
【0089】
図12は、本実施形態における停止電圧の温度変化等を示す図である。VREG404の電圧が停止電圧1020まで低下すると、第1の矩形波信号生成部11から第1の矩形波信号(CLKSYS)408が出力されなくなり、集積回路装置1Bの機能が停止する。
【0090】
ここで、停止電圧1020に停止電圧マージン1080をもたせた電圧値が調整電圧下限値1050となる。調整電圧は、調整電圧下限値1050と調整電圧上限値1060の間(調整電圧設定範囲1070)に含まれていればよい。本実施形態では、調整電圧下限値1050は、第3の矩形波信号生成部13から第3の矩形波信号(CLKOUTB)403が出力されなくなる調整電圧(VREG)404の電圧値である。また、調整電圧上限値1060は、第2の矩形波信号生成部12から第2の矩形波信号(CLKOUTA)402が出力されるようになる調整電圧(VREG)404の電圧値である。よって、CLKOUTB403が矩形波として出力されているが、CLKOUTA402は矩形波として出力されていない状態であれば、VREG404は適切な電圧範囲1070に設定されていることになる。このとき、VREG404の電圧は調整電圧上限値1060より低いため集積回路装置1Bは低消費電力で動作している。また、VREG404の電圧は調整電圧下限値1050より高いため、集積回路装置1Bの動作が停止するおそれもない。
【0091】
図13は、制御部201の判断を示すテーブルである。第1の矩形波信号生成部11および第2の矩形波信号生成部12から矩形波が出力されていない状態は、図13では固定値と表現されている。
【0092】
第3の矩形波信号403が固定値の場合、第2の振幅は第3の振幅よりも大きいため、第2の矩形波信号402も固定値となる。このとき、VREG404の電圧が調整電圧下限値1050よりも低いため、制御部201はVREG404の上昇を指示する。本実施形態では、アップダウンカウンター204Aのカウント値をインクリメントして大きくする。
【0093】
第2の矩形波信号402と第3の矩形波信号403が矩形波の場合、VREG404の電圧が調整電圧上限値1060よりも高いため、低消費電力で動作のために制御部201はVREG404の低下を指示する。本実施形態では、アップダウンカウンター204Aのカウント値をデクリメントして小さくする。
【0094】
そして、第2の矩形波信号402が固定値であり、かつ第3の矩形波信号403が矩形波の場合には、VREG404の電圧値は適切である。
【0095】
図14は、本実施形態における調整電圧(VREG)404の変動の例を示す波形図である。
【0096】
区間t〜tでは、第2の矩形波信号の分周信号(CLKDIVA)430Aと第3の矩形波信号の分周信号(CLKDIVB)430Bが矩形波、すなわち第2の矩形波信号402と第3の矩形波信号403が矩形波であるため、制御部201はアップダウンカウンター204Aのカウント値をデクリメントして小さくする。図14では、制御部201は時刻t、t、t、tにおいてアップダウンカウンター204Aの値である制御信号(CNT)420をデクリメントしている。そして、それに伴い、VREG404の電圧も低下している。
【0097】
区間t〜tでは、CLKDIVA430Aが固定値であり、CLKDIVB430Bが矩形波である。VREG404の電圧値は適切であるため、制御部201AはCNT420を維持する。
【0098】
区間t〜tでは、CLKDIVA430AとCLKDIVB430Bが固定値であるため、制御部201Aはアップダウンカウンター204Aのカウント値をインクリメントして大きくする。図14では、制御部201Aは時刻t、t、t、tにおいてアップダウンカウンター204Aの値であるCNT420をインクリメントしている。そして、それに伴い、VREG404の電圧も上昇している。
【0099】
4.第4実施形態
本発明の第4実施形態について図15〜図16を参照にして説明する。
【0100】
図15は本実施形態に係る電子機器800のブロック図である。電子機器800は、集積回路装置810、入力部820、メモリー830、電源生成部840、LCD850、音出力部860を含む。集積回路装置810は、第1〜3実施形態の集積回路装置1、1A、1Bのいずれかに対応する。
【0101】
ここで、入力部820は、種々のデータを入力するためのものである。集積回路装置810は、この入力部820により入力されたデータに基づいて種々の処理を行うことになる。メモリー830は、集積回路装置810などの作業領域となるものである。電源生成部840は、電子機器800で使用される各種電源を生成するためのものである。集積回路装置810は電源生成部840から供給された電源(外部電源)を降圧して調整電圧を生成する。
【0102】
LCD850は、電子機器800が表示する各種の画像(文字、アイコン、グラフィック等)を出力するためのものである。音出力部860は、電子機器800が出力する各種の音(音声、ゲーム音等)を出力するためのものであり、その機能は、スピーカーなどのハードウェアにより実現できる。
【0103】
図16(A)に、電子機器の一つである携帯電話3000の外観図の例を示す。この携帯電話3000は、低消費電力を目的として集積回路装置810を用いてもよい。
【0104】
図16(B)に、電子機器の一つである腕時計4000の外観図の例を示す。腕時計4000は、使用環境が様々に変化しそれに伴い停止電圧も変化する。低消費電力であることが求められるため、状況に応じて調整電圧を適切な電圧に調節できる集積回路装置810を用いてもよい。
【0105】
図16(C)に、電子機器の一つであるパーソナルコンピューター5000の外観図の例を示す。このパーソナルコンピューター5000は、正確な時刻情報のためRTC(リアルタイムクロック)を必要とする。電池駆動であることから低消費電力が求められるRTCの機能を集積回路装置810に求めてもよい。
【0106】
本実施形態の集積回路装置を図16(A)〜図16(C)、図16の電子機器に組み込むことにより、消費電力の少ない電子機器800を提供することができる。
【0107】
5.第5実施形態
本発明の第5実施形態について図17を参照にして説明する。第2実施形態における集積回路装置の制御方法は図17のフローチャートで示すことができる。
【0108】
集積回路装置において、まず第2の矩形波信号が出力されているか否かが判断される(S10)。第2の矩形波信号が出力されている場合(S10のY)には調整電圧404を低下させる余地がある。そこで、調整電圧の低下を指示する制御信号を出力する(S20)。その後、制御信号に基づいて調整電圧が低下する(S30)。第2の矩形波信号が出力されないならば(S10のN)、調整電圧は維持される。
【0109】
そして、発振信号が出力される(S40)。調整電圧が低下した場合には発振信号の振幅は小さくなっている。
【0110】
第1の振幅と比べて、発振信号の振幅が大きいかを判断し(S50)、大きい場合には第1の矩形波信号を出力する(S60)。第1の矩形波信号は例えばシステムクロックとして使用される。
【0111】
そして、第2の振幅と比べて、発振信号の振幅が大きいかを判断し(S70)、大きい場合には第2の矩形波信号を出力する(S80)。第2の振幅は、第1の振幅よりも大きい。よって、第2の矩形波信号を出力されていれば(S10のY)、調整電圧を低下する余地があると判断される。第2の矩形波信号が出力されなくなれば(S10のN)、調整電圧が適切な範囲にあると判断される。
【0112】
この制御(S10〜S80)に従うことにより、調整電圧を適切な電圧まで低下させることができるので、集積回路装置の消費電力を小さくすることができる。
【0113】
これらの例示に限らず、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法および結果が同一の構成、あるいは目的および効果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0114】
1…集積回路装置、1A…集積回路装置、1B…集積回路装置、10…発振回路部、11…第1の矩形波信号生成部、12…第2の矩形波信号生成部、13…第3の矩形波信号生成部、100…反転増幅器(インバーター)、101…帰還抵抗、102…水晶振動子、103…発振容量、104…発振容量、105…水晶振動子接続端子、106…水晶振動子接続端子、110A〜110D…トランジスタ、120A〜120D…トランジスタ、130A〜130D…トランジスタ、201…制御部、201A…制御部、202…電源供給部、203…分周器、203A…分周器、203B…分周器、204…アップダウンカウンター、204A…アップダウンカウンター、205…タイマー、400…発振信号(CLKIN)、402…第2の矩形波信号(CLKOUTA)、403…第3の矩形波信号(CLKOUTB)、404…調整電圧(VREG)、406…テスト信号(TEST_)、408…第1の矩形波信号(CLKSYS)、420…制御信号(CNT)、420A〜420E…制御ビット信号、430…第2の矩形波信号の分周信号(CLKDIV)、430A…第2の矩形波信号の分周信号(CLKDIVA)、430B…第3の矩形波信号の分周信号(CLKDIVB)、432…タイマー出力信号(TIMER)、800…電子機器、810…集積回路装置(IC)、820…入力部、830…メモリー、840…電源生成部、850…LCD、860…音出力部、900…トランジスタ、901…トランジスタ、1001…第1の振幅、1002…第2の振幅、1003…第3の振幅、1010…従来手法の調整電圧、1010A…従来手法の調整電圧の上限値、1010B…従来手法の調整電圧の下限値、1020…停止電圧、1020A…停止電圧の上限値、1020B…停止電圧の下限値、1030…実質停止マージン、1040…特定条件停止マージン、1050…調整電圧下限値、1060…調整電圧上限値、1070…調整電圧設定範囲、1080…停止電圧マージン、3000…携帯電話、4000…腕時計、5000…ノートPC

【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路装置であって、
第1の振幅と比べて、入力された発振信号の振幅の方が大きい場合に、第1の矩形波信号を出力する第1の矩形波信号生成部と、
前記第1の振幅よりも大きな第2の振幅と比べて、前記発振信号の振幅の方が大きい場合に、第2の矩形波信号を出力する第2の矩形波信号生成部と、
を含む集積回路装置。
【請求項2】
請求項1に記載の集積回路装置において、
前記発振信号を出力する反転増幅器と、
制御信号を出力する制御部と、
少なくとも前記反転増幅器に調整電圧を供給する電源供給部と、
を含み、
前記制御部は、
前記第2の矩形波信号が出力されている場合に、前記調整電圧の低下を指示する前記制御信号を出力し、
前記電源供給部は、
前記調整電圧の低下を指示する前記制御信号を受け取った場合に、前記調整電圧を低下させる集積回路装置。
【請求項3】
請求項2に記載の集積回路装置において、
前記制御部は、
所与のタイミングで前記調整電圧の上昇を指示する前記制御信号を出力し、
前記電源供給部は、
前記調整電圧の上昇を指示する前記制御信号を受け取った場合に、前記調整電圧を上昇させる集積回路装置。
【請求項4】
請求項2に記載の集積回路装置において、
前記第1の振幅よりも大きく前記第2の振幅よりは小さい第3の振幅と比べて、前記発振信号の振幅の方が大きい場合に、前記発振信号に基づいて第3の矩形波信号を出力する第3の矩形波信号生成部を含み、
前記制御部は、
前記第2の矩形波信号も前記第3の矩形波信号も出力されていない場合に、前記調整電圧の上昇を指示する前記制御信号を出力し、
前記電源供給部は、
前記調整電圧の上昇を指示する前記制御信号を受け取った場合に、前記調整電圧を上昇させる集積回路装置。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれかに記載の集積回路装置において、
前記制御部は、
所与のタイミングで前記調整電圧の低下又は上昇を指示する前記制御信号を出力する集積回路装置。
【請求項6】
請求項5に記載の集積回路装置において、
前記第2の矩形波信号生成部又は第3の矩形波信号生成部は、
所与のタイミングで、前記第2の矩形波信号と前記第3の矩形波信号の少なくとも一つの出力を停止させる集積回路装置。
【請求項7】
請求項2乃至6のいずれかに記載の集積回路装置において、
前記第2の矩形波信号生成部と前記第3の矩形波信号生成部の少なくとも一つは、
その矩形波信号生成部を構成するトランジスタのゲート幅およびゲート長の少なくとも一つが前記第1の矩形波信号生成部のトランジスタとは異なる集積回路装置。
【請求項8】
請求項2乃至7のいずれかに記載の集積回路装置において、
前記第2の矩形波信号生成部と前記第3の矩形波信号生成部の少なくとも一つは、
その矩形波信号生成部を構成するトランジスタのしきい値電圧が前記第1の矩形波信号生成部のトランジスタとは異なる集積回路装置。
【請求項9】
請求項2乃至8のいずれかに記載の集積回路装置において、
前記第2の矩形波信号生成部は、
その矩形波信号生成部を構成するトランジスタのしきい値電圧が前記第1の矩形波信号生成部のトランジスタとは異なり、
前記第3の矩形波信号生成部は、
その矩形波信号生成部を構成するトランジスタのゲート幅およびゲート長の少なくとも一つが前記第1の矩形波信号生成部のトランジスタとは異なる集積回路装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の集積回路装置を含む電子機器。
【請求項11】
集積回路装置の制御方法であって、
制御信号を出力する制御信号出力ステップと、
調整電圧を供給する調整電圧供給ステップと、
発振信号を出力するステップと、
第1の振幅と比べて、入力された前記発振信号の振幅の方が大きい場合に、第1の矩形波信号を出力するステップと、
前記第1の振幅よりも大きな第2の振幅と比べて、前記発振信号の振幅の方が大きい場合に、第2の矩形波信号を出力するステップと、
を含み、
前記制御信号出力ステップにおいて、
前記第2の矩形波信号が出力されている場合に、前記調整電圧の低下を指示する前記制御信号を出力し、
前記調整電圧供給ステップにおいて、
前記調整電圧の低下を指示する前記制御信号を受け取った場合に、前記調整電圧を低下させる集積回路装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−123546(P2011−123546A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−278552(P2009−278552)
【出願日】平成21年12月8日(2009.12.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】