説明

離型フィルム

【課題】 本発明はクッション性、離型性、耐熱性、耐汚染性に優れ、精密なパターンを有するプリント基板を回路の欠陥やシワ、キズなどの欠点無く製造することが容易であり、且つ、廃棄処理が容易な離型フィルム、該フィルムの製造法、及び、該フィルムを用いたプリント基板の製造法の提供を目的とする。
【解決手段】ポリトリメチレンテレフタレートを30〜100重量%含む樹脂組成物からなる層を1層以上有する離型フィルムとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は離型フィルム、特にプリント基板製造時に使われる離型フィルムならびに該フィルムの製造方法、及び、該フィルムを用いたプリント基板の製造法に関する。更に詳しくは、ポリトリメチレンテレフタレート(以下「PTT」と略す)を30〜100重量%含む樹脂組成物からなる層を有しているためクッション性、離型性、耐熱性、耐汚染性に優れており、精密なパターンを有するプリント基板を回路の欠陥やシワ、キズなどの欠点無く製造することが容易であり、且つ、廃棄処理が容易な離型フィルム、該フィルムの製造法、及び、該フィルムを用いたプリント基板の製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板、特にフレキシブルプリント基板や多層プリント基板を製造する工程において、プリプレグ又は耐熱フィルムを接着剤にて銅箔や銅張積層板と熱プレスして接着する際に、離型フィルムが用いられている。また、電気回路を形成した基板本体に接着剤にてカバーレイフィルムや補強板を熱プレスして接着する際も、熱プレス板と基板やカバーレイフィルム、補強板等とが接着するのを防ぐために離型フィルムが使用されている。
【0003】
従来、離型フィルムとしてはフッ素樹脂フィルムやポリメチルペンテンフィルムなどが用いられてきた。(例えば特許文献1〜3参照)しかしながらフッ素樹脂フィルムは、耐熱性、離型性、非汚染性に優れているが、高価であるうえ、廃棄処理において焼却する際に燃焼しにくく、有毒ガスを発生するという問題がある。また、ポリメチルペンテンフィルムは構成成分中の低分子量体がプリント配線基板、特に銅の部分を汚染して基板の品質を損なう恐れがあるという問題を有する。
【0004】
また、層状珪酸塩とブチレンテレフタレートを含む結晶性芳香族ポリエステル樹脂からなるフィルムを用いる提案もある(例えば特許文献4、5参照)しかしながら、本発明者らの検討によると、該フィルムは接着剤との離型性が十分でなかったり、クッション性が不十分なためにカバーレイフィルムをプレスした際にカバーレイフィルムの孔の空いた部分より接着剤がしみだして回路表面を覆ってしまうという問題を引き起こしたりする。
【0005】
このようにこれまでの技術では、クッション性、離型性、耐熱性、耐汚染性に優れ、精密なパターンを有するプリント基板を回路の欠陥やシワ、キズなどの欠点無く製造することが容易であり、且つ、廃棄処理が容易な離型フィルムを得ることはできない。
【特許文献1】特開平5−283862号公報
【特許文献2】特開平2−175247号公報
【特許文献3】特開2000−263724号公報
【特許文献4】特開2003−313313号公報
【特許文献5】特開2004−2789号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はクッション性、離型性、耐熱性、耐汚染性に優れ、精密なパターンを有するプリント基板を回路の欠陥やシワ、キズなどの欠点無く製造することが容易であり、且つ、廃棄処理が容易な離型フィルム、該フィルムの製造法、及び、該フィルムを用いたプリント基板の製造法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究した結果、PTTを特定割合含む樹脂組成物からなる層を有する離型フィルムとすることで前記課題を達成できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりのものである。
【0009】
(1)PTTを30〜100重量%含む樹脂組成物からなる層を1層以上有する離型フィルム。
【0010】
(2)3層以上で構成される離型フィルムであって、少なくとも1方の最外層がPTTを30〜100重量%含む樹脂組成物からなる(1)の離型フィルム。
【0011】
(3)両最外層がPTTを30〜100重量%含む樹脂組成物からなる(2)の離型フィルム。
【0012】
(4)PTTを含む樹脂組成物にエラストマーが3〜50重量%含まれる(1)〜(3)いずれかの離型フィルム。
【0013】
(5)エラストマーがポリオレフィンエラストマーである(4)の離型フィルム。
【0014】
(6)PTTが結晶化している(1)〜(5)いずれかに記載の離型フィルム。
ここで、結晶化しているとは、入力補償型示差熱量計(以下「DSC」と略す)にて昇温しながら熱分析を行った際に、0〜180℃の間に観察される結晶化由来の発熱ピークの面積が0〜30J/gであることを示す
(7)厚みが5μm〜1000μmである(1)〜(6)いずれかの離型フィルム。
【0015】
(8)PTTを含む樹脂組成物からなるひとつの層の厚みが1〜100μmである(1)〜(7)いずれかの離型フィルム。
【0016】
(9)プリント基板製造用である(1)〜(7)いずれかの離型フィルム。
【0017】
(10)プリント基板がフレキシブルプリント基板である(9)の離型フィルム。
【0018】
(11)インフレーション法により製造する(1)〜(10)いずれかの離型フィルムの製造法。
【0019】
(12)Tダイ法により製造する(1)〜(10)いずれかの離型フィルムの製造法。
【0020】
(13)インフレーション法及び/又はTダイ法にて得られたフィルムを接着剤を介して、及び/又は接着剤を介さずに積層させて製造する(1)〜(10)いずれかの離型フィルムの製造法。
【0021】
(14)(1)〜(10)いずれかの離型フィルムを用いるプリント基板の製造法。
【0022】
(15)(1)〜(10)いずれかの離型フィルムを用いて製造したプリント基板。
【発明の効果】
【0023】
本発明の離型フィルムは、離型性、耐熱性、耐汚染性及びクッション性に優れているため、プリプレグやフィルムを接着剤にて銅箔などに接着する際や、回路形成した銅張積層板にカバーレイフィルムや補強板を接着する際に、基板にシワやキズを付け難く、微細なパターンでも回路の汚染等の欠点を発生し難い。このため、プリント基板、特にフレキシブルプリント基板や多層プリント基板の製造に有用である。また主成分にフッ素や塩素元素を含まない為、容易に焼却等の廃棄処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明について、以下具体的に説明していく。
【0025】
本発明の離型フィルムは、PTTを30〜100重量%含む樹脂組成物からなる層を1層以上有する離型フィルムである。
【0026】
PTTとは、酸成分がテレフタル酸から構成され、グリコール成分がトリメチレングリコール(1,3−プロパンジオールともいう、以下「TMG」と略す)から構成されるポリエステルを示す。PTTの割合は離型性、クッション性の観点より50〜100重量%であることが好ましく、60〜100重量%であることがより好ましく、70〜100重量%であることが特に好ましい。
【0027】
本発明の離型フィルムは、PTTを含むことで離型フィルムに要求される特性を達成することができるようになる。この理由としては、第一にジグザグの分子骨格構造からくるPTT結晶の柔軟性、第二に化学的な反応性の低い飽和ポリエステルの一種であるというPTTの分子構造からくる化学的な安定性、第三にPTT固有の適度な到達結晶化度や結晶化速度に由来すると考えられる。類似のポリエステルであるポリエチレンテレフタレートは柔軟性に乏しいとともに加熱時の寸法安定性の良好な結晶フィルムを得ることが困難である。また、ポリブチレンテレフタレートでも柔軟性が不十分であるとともに、結晶化速度が非常に早いために、均一で平坦性が良好なフィルム、特に厚みの薄いフィルムを得ることが困難であり、十分なクッション性を発揮することが困難である。
【0028】
本発明のフィルムに含まれるPTTには他の共重合成分を含有する場合も含む。共重合成分としては、エチレングリコール、1,1−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、2,2−プロパンジオール1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5−ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ヘプタメチレングリコール、オクタメチレングリコール、デカメチレングリコール、ドデカメチレングリコール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、3,5−ジカルボン酸ベンゼンスルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、イソフタル酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、ドデカン二酸、フマル酸、マレイン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等のエステル形成性モノマーやポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール及びこれらのコポリマーなどが挙げられる。このような共重合成分は、フィルムを製造する際の熱安定性や、フィルムの耐熱性、離型性を高める為には、30モル%以下とすることが好ましく、20モル%以下とすることがより好ましく、10モル%以下とすることが更に好ましく、5モル%以下とすることが特に好ましい。
【0029】
PTTの重合度は固有粘度[η]を指標として0.5〜4dl/gの範囲であることが好ましい。固有粘度を0.5dl/g以上とすることで十分な強度のフィルムとできるとともに、シートを製造することが容易になる。一方、4.0dl/g以下とすることで、フィルムを製造することが容易になる。固有粘度[η]は0.6〜3dl/gの範囲がより好ましく、0.7〜2.5dl/gの範囲が更に好ましく、0.8〜2dl/gの範囲が特に好ましい。
【0030】
また、PTTはカルボキシル末端基濃度が0〜80eq/トンであることが好ましい。この理由はフィルムの離型性、耐熱性を高めることができるためである。カルボキシル末端基濃度は0〜50eq/トン以下がより好ましく、0〜30eq/トン以下が更に好ましく、0〜20eq/トンが特に好ましく、低ければ低いほど良い。
【0031】
また、同様の理由よりPTTにはエーテル結合を介して結合したグリコール二量体成分であるビス(3−ヒドロキシプロピル)エーテル成分(構造式:−OCHCHCHOCHCHCHO−、以下「BPE」と略す)の含有率が0〜2重量%であることが好ましい。エーテル成分は0.1〜1.5重量%であることがより好ましく、0.15〜1.2重量%であることが更に好ましい。
【0032】
本発明のPTTを含む樹脂組成物は、PTT以外に各種の有機物質や無機物質及び各種添加剤を含んでいる場合も含む。このような場合でもPTTの割合は前記した範囲である必要がある。なお、PTTの割合は、溶媒としてHFIP:CDCl=1:1を用いたHの核磁気共鳴スペクトル(以下「NMR」と略す)を用いた分析により求めることができる。この際、環状二量体を始めとした各種のオリゴマーやBPEはPTTの割合の中に含めて計算する。また、NMR測定の溶媒に不溶な成分はPTTではないとして計算する。
【0033】
PTT以外の有機物質としては、環状や線状のPTTオリゴマー、PTTを構成する酸成分やグリコール成分のモノマー及びこれらに由来する低分子量反応物、PTT以外の樹脂、及び、各種添加剤が挙げられる。ただし、前記のように環状二量体を始めとした各種のオリゴマーやBPEはPTTの割合の中に含めて計算する。PTT以外の樹脂としてはポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレートなどの熱可塑性ポリエステル、これらの熱可塑性ポリエステルとポリテトラメチレングリコールやポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールとのコポリマーである熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱硬化性のポリエステル、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12などの熱可塑性ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリカーボネート、ポリウレタン、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリフェニレンサルファイト、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、セルロース、ポリフェニレンエーテル樹脂など、及び、これらの共重合樹脂などが挙げられる。
【0034】
このうち、クッション性を高めるためには熱可塑性ポリエステルエラストマーや熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルアミドエラストマー、ポリオレフィンエラストマー、ポリウレタンエラストマーなどのエラストマーや、少量の柔軟なフッ素樹脂を含んでいることが好ましく、このうち特にポリオレフィンエラストマーを含むことがクッション性と離型性の両方を高めるために好ましい。また、エラストマーとしてはガラス転移温度が20℃以下であることが好ましい。
【0035】
ポリオレフィンエラストマーとしてはエチレンコポリマー(a1)と、反応性官能基を有さないエラストマー(a2)とを配合した樹脂組成物などが挙げられ、これらの配合比率は(a1)/(a2)が1/19〜19/1であることが好ましく、1/9〜9/1であることがより好ましく、1/5〜2/1であることがより好ましい。
【0036】
ここでエチレンコポリマー(a1)の具体例としてはエチレンと不飽和無水カルボン酸とのコポリマー、エチレンと不飽和エポキシドとのコポリマー、および、これらのポリマーアロイなどが挙げられる。一方、反応性官能基を有さないエラストマー(a2)の具体例としては、下記するブロック(b1)とブロック(b2)より構成されるブロックコポリマーなどが挙げられる。ここでブロック(b1)とはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリイソブチレンなどのオレフィン系モノマーの単独重合体や、エチレンプロピレンコポリマー、エチレン1−ブテンコポリマーなどのエチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとのコポリマーや、エチレンアクリル酸アルキルコポリマー、エチレンメタクリル酸アルキルコポリマーなどのエチレンと、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとのコポリマーや、数平均分子量2500以上のビニル芳香族モノマー(例えば、スチレン、α−メチルスチレンなど)などが挙げられ、ブロック(b2)としてはイソプレンもしくはイソプレン−ブタジエンからなり、3,4結合及び1,2結合のビニル結合含有量が20%以上であるものなどが挙げられる。
【0037】
これらのうち、離型性とクッション性、耐汚染性の観点より、(a1)成分としてエチレンアクリル酸不飽和エポキシドコポリマーが、(a2)成分としてエチレンアクリル酸エステルコポリマーとを配合した樹脂組成物をエラストマーとして用いることが特に好ましい。
【0038】
このようなエラストマーの含有量としては3〜50重量%であることが好ましく、5〜40重量%がより好ましく、10〜30重量%が特に好ましい。
【0039】
また、フッ素系樹脂としてはポリテトラフルオロエチレン、エチレン−ポリテトラフルオロエチレンコポリマーなどが挙げられ、含有量としては0.5〜10重量%であることが好ましく、1〜7重量%であることがより好ましく、2〜5重量%であることが特に好ましい。
【0040】
PTTを含む樹脂組成物に含まれる無機物質としては、ガラス繊維、カーボン繊維、タルク、マイカ、ワラストナイト、カオリンクレー、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイト、膨潤性マイカなどの層状珪酸塩、炭酸カルシウム、二酸化チタン、二酸化シリカなどの無機充填剤や無機滑剤、重合触媒残渣などが挙げられる。
【0041】
また、添加剤としては、有機や無機の染料や顔料、艶消し剤、熱安定剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、整色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、結晶造核剤、増白剤、滑剤、不純物の捕捉剤、増粘剤、表面調整材などが挙げられる。このうち、熱安定剤や、低分子量の揮発性不純物の捕捉剤を含むことが好ましい。熱安定剤として5価または/および3価のリン化合物やヒンダードフェノール系化合物などが好ましく、低分子量の揮発性不純物の捕捉剤としては、ポリアミドやポリエステルアミドのポリマーやオリゴマー、アミド基やアミン基を有した低分子量化合物などが好ましい。
【0042】
本発明の離型フィルムは、含まれるPTTが結晶化していることが好ましい。PTTが結晶化していることで耐熱性、離型性が向上するとともに滑り性が向上して取扱いが容易となる。
【0043】
結晶化の程度は入力補償型示差熱量計(以下「DSC」と略す)にて昇温しながら熱分析を行った際に、0〜180℃の間に観察される結晶化由来の発熱ピークの面積を指標とすることができ、該発熱ピークの面積が0〜30J/gであることが好ましく、0〜20J/gであることがより好ましく、0〜10J/gであることが更に好ましく、0〜5J/gであることが特に好ましく、観察されないことが最も好ましい。ここでDSCによる熱分析は、フィルムを0℃で3分間保持した後、10℃/minの設定昇温速度にて0℃から260℃まで昇温して行い、ピーク面積はPTTの重量に対する熱量として計算した。観察される発熱ピークの面積が小さいということは結晶化する余地がないこと、すなわち、結晶化度が高いことを示している。
【0044】
このようなPTTの結晶化は、フィルムを製造する際の条件を適切に調整することで達成できるが、樹脂組成物中に結晶造核剤を含むことで更に容易に達成することができるようになる。
【0045】
結晶造核剤としてはタルクやアルカリ金属無機塩等が挙げられる。金属無機塩の具体的な例としてはモンタン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸1水素2ナトリウム、リン酸3ナトリウム、リン酸2水素ナトリウムが挙げられる。これらの含有量としてはPTTに対して0.001〜1重量%であることが好ましく、0.1〜0.5重量%であることがより好ましい。
【0046】
この他の結晶造核剤としてアイオノマー樹脂も好ましい。アイオノマー樹脂とは、α−オレフィンと、炭素原子数3〜8のα,β−不飽和カルボン酸とを主たる構成成分とするコポリマーを、1〜3価の金属イオンで中和したものである。アイオノマー樹脂の含有量としては、0.1〜15重量部であることが好ましく、0.3〜5重量部であることがより好ましい。
【0047】
また、PTT以外のポリエステル、例えばポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートなども結晶造核剤としての効果を発揮する。これらの含有量としては1〜50重量%であることが好ましく、2〜30重量%であることがより好ましく、5〜20重量%であることが更に好ましい。
【0048】
本発明の離型フィルムの厚みは5μm〜1000μmであることが好ましい。5μm以上とすることでフィルムを製造することが困難でなくなるとともに、強度・剛性が高まって取扱いが容易になる。一方、1000μm以下とすることでクッション性や熱伝導性が増し、微細なパターンを有したプリント基板製造に適したフィルムとなる。厚みは10μm〜500μmであることがより好ましく、20μm〜300μmであることが更に好ましく、30μm〜200μmであることが特に好ましい。
【0049】
また、本発明の離型フィルムは150℃における熱収縮率が−5〜5%であることが好ましく、−2〜2%であることがより好ましく、−1〜1%であることが更に好ましい。このような熱収縮率とすることでプレス時に熱板と接触してもしわになりにくく、プリント基板を製造する際の取扱い性が良好となる。
【0050】
本発明の離型フィルムはPTTを含む樹脂組成物からなる層を1層以上有する必要があるが、具体的な層構成の例としては、PTTを含む樹脂組成物からなる層をA、その他の樹脂組成物からなる層をB、Cとすると、Aのみの1層、ABの2層、ABAやABCの3層、ABCAやABCBの4層、ABCBAの5層などが挙げられる。ここでA、B、Cの各層は同じ樹脂組成物から構成された複数の層が積層された場合も含み、この場合は積層された状態を1層と数える。また、上記以上に積層される場合も含むが、製造の容易さより考えると5層以下であることが好ましい。層構成としては両最外層がPTTを含むA層より構成されたABAの3層やABCBAの5層がより好ましい。また、クッション性をあまり必要としない用途の場合はAのみの1層も好ましい。
【0051】
最外層をA層とする場合の最外層の厚みは、クッション性を良好にする観点からは100μm以下であることが好ましく、最外層の破損を防ぐためには1μm以上であることが好ましい。厚みは3〜50μmがより好ましく、5〜30μmが更に好ましい。
【0052】
上記B層を構成する樹脂組成物としてはA層を構成する樹脂組成物との接着性が良く、且つ、プリント基板製造時の熱プレス温度にて流動状態になる樹脂組成物からなることが好ましい。こうすることにより、クッション性、離型性、耐熱性を良好にすることが容易となる。
【0053】
具体的な例としては、エチレンメチルメタクリレートコポリマー、エチレンエチルアクリレートコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマーや酸変性ポリオレフィン樹脂、グリシジル変性ポリオレフィン樹脂などの変性ポリオレフィン樹脂、及び、これらの樹脂とポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が0〜80重量%ブレンドされたものなどが挙げられる。
【0054】
また、C層を構成する樹脂組成物としてはB層を構成する樹脂組成物と接着性が良く、且つ、プリント基板製造時の熱プレスする温度にて流動状態になる樹脂組成物からなることが好ましい。こうすることにより、クッション性、離型性、耐熱性を良好にすることが容易となる。
【0055】
具体的な例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及び上記B層の具体例に挙げられた樹脂などが挙げられ、A層とC層の間にB層を挟む場合は耐熱性が良く、安価なポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂が好ましく、クッション性の観点からはポリエチレン樹脂がより好ましい。
【0056】
ポリエチレン樹脂はα−オレフィン、不飽和カルボン酸のエステル、飽和カルボン酸ビニルのエステル、ジエンなどのコモノマーの複数を含んでいる場合も含む。また、ポリエチレンとしては複数のポリマーのアロイとした場合も含み、少なくとも50mol%、好ましくは75mol%のエチレンを含み、密度が0.86〜0.98g/cmであることが好ましい。MFI(メルトフローインデックス、190℃/2.16kg)は0.1〜100g/10分であるのが好ましく、0.2〜50g/10分であるのがより好ましく、0.3〜10g/10分であるのが更に好ましく、0.5〜5g/10分であることが特に好ましい。
【0057】
このようなポリエチレンの例としては低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、メタロセン触媒を用いたポリエチレンなどが挙げられる。
【0058】
また、上記B層及びC層に用いる樹脂組成物は、流動開始温度が40〜180℃であることが好ましく、60〜150℃であることがより好ましく、80〜130℃であることが更に好ましく、90〜120℃であることが特に好ましい。このような流動開始温度とすることで、離型フィルムの取扱い性と使用時のクッション性を両立することが容易となる。ここで流動開始とは樹脂組成物の粘度が10000Pa・s以下となることを示す。
【0059】
これらのB層、及び/又はC層の厚みは、A層を含んだ離型フィルム全体の厚みが上記した厚みになるようにする。また、B層を介してC層を積層する場合は、耐熱性、生産性、コストの観点よりB層の厚みを0.1〜100μmとすることが好ましく、0.5〜50μmとすることがより好ましく、1〜20μmとすることが更に好ましく、3〜10μmとすることが特に好ましい。
【0060】
次に本発明の離型フィルムの製造方法について説明する。
【0061】
本発明にて用いる樹脂組成物は、従来公知の方法により得ることができる。例えば、PTTはテレフタル酸ジメチルとトリメチレングリコール、及び必要に応じて他の共重合成分を原料とし、チタンテトラブトキシドを触媒として常法によって、常圧、180〜260℃の温度でエステル交換反応を行った後、減圧下、220〜270℃に重縮合反応を行うことにより得ることができる。
【0062】
離型フィルムを製造する上で必要な各種添加物は、重合時に添加する方法、重合後に溶融混練などをして添加する方法、或いは、これらを組み合わせる方法などによって添加することができ、添加物の種類や量、要求される性能等により適宜選択することができる。溶融混練して各種の添加剤を添加する場合は、重合して得たPTT組成物を冷却固化した後、或いは、溶融状態のまま一軸、あるいは二軸の押出機等に各種添加剤とともに投入して行う。押出機としては、一軸あるいは二軸押出機、及び、これらを2台以上直列につないだタンデム押出機等が挙げられる。押出機のスクリューは、適用するPTT組成物の性質に応じて最適なものを用いることが好ましい。押出機は未溶融物が残らず、且つ、組成物の熱分解が抑制できる温度に設定することが望ましく、おおよそ組成物の融点+0〜30℃とすることが好ましい。
【0063】
本発明の離型フィルムの製造方法としては、PTTを含んだ樹脂組成物を始めとした各種の樹脂組成物を、溶融状態にて口金より押出して成形する溶融成形法、樹脂組成物を溶媒に溶解した状態にて口金より押出して成形する溶液キャスト法、溶融成形法、及び/又は溶液キャスト法にて得た1種類以上の樹脂組成物よりなる固体フィルムに、溶融樹脂を積層する押出ラミネーション法、固体フィルムを積層するドライラミネーション法、溶媒に溶解した樹脂を固体フィルム上にキャストする方法などが挙げられる。これらのうち、生産性、環境適性が優れているドライラミネーション法や溶融成形法が好ましく、このうち一工程で単層や積層フィルムを得ることができる溶融成形法が最も好ましい。
【0064】
溶融成形法としては水冷式及び空冷式のインフレーション法またはTダイ法が好ましく、これらの方法では複数の樹脂を同時に押出すことにより積層フィルムを1段で得ることが可能である。
【0065】
溶融成形法において、樹脂組成物は押出機を用いて供給部に供給され、スクリューの回転により溶融され、押出機から送り出されて加熱された流路を通してスリット等の口金より押出される。
【0066】
PTTを含む樹脂組成物を押出す際の口金温度は、組成物の熱分解を抑制するために、溶融物が固化しない範囲で低く設定することが望ましく、具体的にはPTTを含む樹脂組成物の融点+0〜50℃、好ましくは+0〜30℃の範囲でできるだけ低く設定することが好ましい。
【0067】
本発明では、必要に応じて押出機と口金の間にフィルターを設置して異物等を除去したり、また、定量供給性を上げるためにギアポンプなどを設けたり、注入物質の分散性を向上させるために静止型ミキサーを設置したり、温度を一定にするために熱交換ユニットを設置する場合も含む。これらの機器を設置する場合も樹脂の未溶融物が残らず、且つ、組成物の熱分解が抑制できる温度に設定することが望ましく、おおよそPTTを含む樹脂組成物の場合は、融点+0〜50℃に設定することが好ましい。
【0068】
本発明の離型フィルムは含まれるPTTが結晶化していることが好ましいが、このためには、溶融成形において溶融樹脂を口金より押出して冷却する際に、結晶化が進行するようにゆっくりと冷却固化させるか、あるいは、急冷して非晶状態とした後、PTTが結晶化するように90〜180℃にて加熱処理することが望ましい。
【0069】
一方、ドライラミネーション法では、上記した溶融成形法などによって得た単層のフィルムを加熱したニップロール間を通して熱圧着させたり、単層フィルムに接着剤を塗工した後にニップロール間を通して接着させたりして積層フィルムを得ることができる。これらの方法のうちでは、工程数を少なくして生産性を高めることができる熱圧着させる方法が好ましい。
【0070】
本発明の離型フィルムはプリント基板、特にフレキシブルプリント基板や多層プリント基板の製造において有用である。
【0071】
フレキシブルプリント基板は、回路形成した銅張積層板にカバーレイフィルムや補強板を接着する場合が多い。カバーレイフィルムや補強板は、ポリイミドフィルムなどに接着剤が塗布された物であり、銅張積層板に接着剤層を向けて積層し、上下2枚の離型フィルムに挟んで熱プレス機にて加熱加圧して接着させる。この際、プレス面により基板が汚れるのを防いだり、カバーレイフィルムや補強板の端部やカバーレイにあけられた孔部よりしみだした接着剤とプレス面が接着するのを防いだり、接着剤が基板の回路上にしみだして導通不良を起こしたりするのを防いだりするために離型フィルムを用いる。本発明の離型フィルムは接着剤との離型性が良く、クッション性に富み、接触した回路を汚染することが極めて少ないため、微細はパターンを有したプリント基板の製造に用いた場合、上記したような効果を十分発揮することができる。なお本発明の離型フィルムは基板と接触する面をPTTを含む樹脂組成物からなる層とする必要がある。
【0072】
また、多層プリント基板は、プリプレグを介してプリント基板を所定の順番に積層し、この積層されたプリント基板の上下に離型フィルムを配し、プレス機などで加圧加熱してプリプレグを溶融させた後、熱硬化させて積層一体化して製造する。この際、プリプレグに用いられる樹脂がしみ出すことによって基板がプレス面と接着したり、基板最外層の銅板を接着剤が覆ってしまったり、プレス面によって最外層の銅板が汚れるのを防いだりするために離型フィルムを用いる。本発明の離型フィルムは接着剤との離型性が良く、クッション性に富み、接触した回路を汚染することが極めて少ないため、積層プリント基板を製造する際においても、上記したような効果を十分発揮することができる。この際も、基板と接触する面はPTTを含む樹脂組成物からなる層とする必要がある。
【実施例】
【0073】
本発明を実施例に基づいて説明する。
【0074】
なお、実施例中の主な測定値は以下の方法で測定した
(1)PTT含有率、BPE含有率
PTT含有率(重量%)は、塗料又は塗膜100mgをHFIP:CDCl3=1:1に溶解させ、不溶成分をMEMBRANE FILTER(1μm、PTFE)で濾過した後の溶液を用いて、1H−NMR測定により求めた。測定機はFT−NMR DPX−400(Bruker社製)を用いた。また、濾過して取り除いた不溶成分は乾燥後に重量測定を行い、PTT含有率を求める際に用いた。
(2)固有粘度[η]
固有粘度[η]は、オストワルド粘度計を用い、35℃、o−クロロフェノール中での比粘度ηspと濃度C(g/100ミリリットル)の比ηsp/Cを濃度ゼロに外挿し、以下の式に従って求めた。
【0075】
[η]=lim (ηsp/C)
C→0
なお、積層フィルムや添加剤を含んだ樹脂組成物の場合は、o−クロロフェノールに溶解した成分全てを含んだ溶液の比粘度と、溶解した成分全ての濃度を求めてPTTの固有粘度とした。
(3)カルボキシル末端基濃度
PTT組成物1gをベンジルアルコール25mlに溶解し、その後、クロロホルム25mlを加えた後、1/50Nの水酸化カリウムベンジルアルコール溶液で滴定を行い、滴定値VA(ml)とPTT組成物が無い場合のブランク値V0より、以下の式に従って求めた。
【0076】
カルボキシル末端基濃度(eq/トン)=(VA−V0)×20
なお、積層フィルムや添加剤を含んだ樹脂組成物の場合は、ベンジルアルコールに溶解した成分全てを対象にして上記滴定を行い、溶解分の重量を用いて算出した濃度を用いた。
(4)結晶化由来の発熱ピーク
結晶化由来発熱ピークの有無、及び、発熱ピーク面積は、シート叉は成形体を、DSCにより0℃で3分間保持した後、10℃/minの設定昇温速度にて0℃から260℃まで昇温して熱分析を行って観察した。
(5)熱収縮
JIS K7133に準拠して、フィルムを150℃、30分間、張力をかけずに熱処理した際の寸法変化を測定して熱収縮率を求めた。
(6)離型性、耐熱性、クッション性
25μm厚のポリイミドフィルム(デュポン社製)の両面に厚さ20μmのエポキシ系接着剤を介して18μmの銅箔を積層した3層タイプの銅張積層板の片面に、25μm厚のポリイミドフィルム(デュポン社製)に30μm厚のエポキシ系接着剤を塗布したカバーレイフィルムをのせ、更に両側を本発明の離型フィルムで挟んだ後、面厚20kg/cm2、温度190℃に設定した油圧プレス機を用いて3分間熱プレスして、カバーレイフィルムが接着した銅張積層板を作った。この際、カバーレイフィルムには直径5mmの真円状の孔を開けて接着剤のはみ出しの評価に用いた。
【0077】
離型性としては熱プレスした後に取り出した積層板より離型フィルムを剥がす際の剥がれ易さを、以下の基準にて評価した。この際、剥離フィルム同士の剥がれ易さも評価の対象に入れた。
【0078】
○ : 容易に剥がれる
△ : やや剥がれ難い
× : 剥がれ難い
また、耐熱性は積層時の離型フィルムの状態を目視にて観察し、以下の基準にて評価した。
【0079】
○ : 離型フィルムに破損、シワの発生が見られない
△ : 離型フィルムに多少シワの発生が見られる
× : 離型フィルムが破損したり、激しいシワの発生が見られる
クッション性はカバーレイフィルム孔部の接着剤のはみ出しを顕微鏡にて観察し、以下の基準にて評価した。
【0080】
○ : 接着剤のはみ出しがほとんど認められない
△ : わずかに接着剤のはみ出しが認められる
× : 接着剤がたくさんはみ出している
(7)耐汚染性
(6)にて作った銅張積層板に水性マジックで線を書き、5分放置後、その水性マジックインキのはじき具合を目視にて観察し、以下の基準にて評価した。
【0081】
○ : 問題なくマジックインキがのっている
△ : マジックインキがのらない部分がある
× : マジックインキがほとんどのらない
[実施例1]
2台の50mmφ単軸押出機を用いる上吹きの空冷多層共押出しインフレーション法にて、ABAの3層構成を有する総厚100μmの離型フィルムを製造した。A層としては固有粘度[η]が1.0dl/g、カルボキシル末端基濃度が10eq/トン、BPE含有率が0.5重量%のPTT85重量部に対して、燐酸三ナトリウムを0.1重量部、エラストマー成分としてエチレンアクリル酸グリシジルメタクリレートコポリマー(アルケマ(株)製 LOTADER AX8900)5重量部とエチレンアクリル酸エステルコポリマー(アルケマ(株)製 LOTRYL 35BA40)10重量部の併せて15重量部を含んだ樹脂組成物を用いた。またB層として融点95℃のエチレンエチルアクリレートコポリマー(日本ユニカー(株)製 NUC6225)を用いた。なお、PTTを含む樹脂組成物は二軸押出機を用いて事前にコンパウンドしたものを用いた。
【0082】
製膜ではA、B層の樹脂を、それぞれ240℃、190℃に設定した押出機を用いて溶融した後、240℃に設定した、直径150mm、間隔が0.5mmの上向きの丸ダイよりA/B/Aの3層状に押出し、室温の冷風を当てながら冷却固化してチューブ状に成形した。その後、2枚にスリットして400mm幅の積層フィルムを得た。この際、B層の樹脂の押出量を40kg/hrとし、各層の厚みがA/B/A=10/80/10、総厚が100μmとなるように、A層樹脂の押出量とフィルムの巻き取り速度を調整した。
【0083】
得られたフィルムは厚みムラが±10%以内であり、均一性、平坦性に優れ、フィルムの熱収縮率が引き取り方向(MD)及び引き取り直行方向(TD)ともに0.2%と小さい良好なフィルムであった。得られたフィルムのA層に含まれるPTTは、固有粘度[η]は0.95dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化に由来するピークは認められなかった。(結晶化熱量は0J/g)
得られたフィルムを用いて前記した方法にてカバーレイフィルムを接着した銅張積層板を作ったところ、離型性、クッション性、汚染性いずれも非常に良好であった。
【0084】
また、実際に微細なパターンを有する回路を有したフレキシブルプリント基板を、カバーレイ接着工程にて、該フィルムを用いて製造したところ、回路欠陥が無い、非常に良好な基板を歩留まり良く得ることができた。
[実施例2]
B層樹脂の押出量を20kg/hrとし、これに伴ってA層の押出量と引き取り速度を調整することで表1に示したように総厚み40μm、各層の厚みがA/B/A=5/30/5となるように変えた以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0085】
得られたフィルムは厚みムラが±10%以内であり、均一性、平坦性に優れ、フィルムの熱収縮率が引き取り方向(MD)及び引き取り直行方向(TD)ともに0.5%と小さい良好なフィルムであった。また、フィルムのA層に含まれるPTTは、固有粘度[η]は0.92dl/g、カルボキシル末端基濃度が20eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化に由来するピークは認められなかった。(結晶化熱量は0J/g)
得られたフィルムを用いて前記した方法にてカバーレイフィルムを接着した銅張積層板を作ったところ、離型性、クッション性は実施例1に比べて若干劣るものの実用上は問題無く、汚染性は良好であった。
[実施例3]
3台の50mmφ単軸押出機を用いる上吹きの多層共押出しインフレーション法にて、ABCBAの5層構成を有する総厚150μmの離型フィルムを製造した。A層とB層の樹脂は実施例1と同じ物を用い、C層に融点110℃のLDPE(日本ユニカー製)を用いた。
【0086】
製膜ではA、B、C層の樹脂を、それぞれ240、190、190℃に設定した押出機を用いて溶融した後、240℃に設定した、直径200mm、間隔が1.0mmの上向き丸ダイよりA/B/C/B/Aの5層状に押出し、室温の冷風を当てながら冷却固化してチューブ状に成形した後、2枚にスリットして400mm幅の積層フィルムを得た。この際、C層の樹脂の押出量を40kg/hrとし、各層の厚みがA/B/C/B/A=20/5/100/5/20、総厚が150μmとなるように、A、B層樹脂の押出量とフィルムの巻き取り速度を調整した。
【0087】
得られたフィルムは厚みムラが±10%以内であり、均一性、平坦性に優れ、フィルムの熱収縮率が引き取り方向(MD)及び引き取り直行方向(TD)ともに0.2%と小さい良好なフィルムであった。 また、フィルムのA層に含まれるPTTは、固有粘度[η]は0.95dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化に由来するピークは認められなかった。(結晶化熱量は0J/g)
得られたフィルムを用いて前記した方法にてカバーレイフィルムを接着した銅張積層板を作ったところ、離型性、クッション性、汚染性いずれも非常に良好であった。
【0088】
また、実際に微細なパターンを有する回路を有したフレキシブルプリント基板を、カバーレイ接着工程にて、該フィルムを用いて製造したところ、回路欠陥が無い、非常に良好な基板を得ることができた。
[実施例4、5]
表1に示した様に、A層として燐酸三ナトリウムの替わりに実施例4ではポリブチレンテレフタレート(ウィンテック(株)製 2002)を20重量部、実施例5ではエチレンメタクリル酸アイオノマー 金属イオン成分Na(三井デュポンポリケミカル(株)製 ハイミラン 1707)を1重量部添加し、該添加剤量に応じたPTT割合とした以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0089】
得られたフィルムは、いずれの場合も厚みムラが±10%以内であり、均一性、平坦性に優れたフィルムであった。フィルムの熱収縮率は引き取り方向(MD)及び引き取り直行方向(TD)ともに実施例4では1.0%と多少高めではあるが実用上問題無く、実施例5では0.2%と小さい良好なフィルムであった。
【0090】
得られたフィルムのA層に含まれるPTTは、いずれの場合も固有粘度[η]は0.95dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化に由来するピークは認められなかった。(結晶化熱量は0J/g)
得られたフィルムを用いて前記した方法にてカバーレイフィルムを接着した銅張積層板を作ったところ、いずれの場合も離型性、クッション性、汚染性いずれも非常に良好であった。
[実施例6、7]
表1に示したように、実施例6ではA層に用いる樹脂組成物のエラストマー成分比を増やし、実施例7ではエラストマー成分としてグリシジルメタクリレート変性ポリエチレン(住友化学(株)製 ボンドファーストEPX−6)を5重量部とし、これに応じたPTT割合とした以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0091】
得られたフィルムはいずれの場合も、厚みムラが±10%以内であり、均一性、平坦性に優れたフィルムであった。フィルムの熱収縮率は、いずれの場合も引き取り方向(MD)及び引き取り直行方向(TD)ともに0.2%と小さい良好なフィルムであった。得られたフィルムのA層に含まれるPTTは、いずれの場合も固有粘度[η]は0.95dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化に由来するピークは認められなかった。(結晶化熱量は0J/g)
得られたフィルムを用いて前記した方法にてカバーレイフィルムを接着した銅張積層板を作ったところ、実施例6では離型性が、実施例7ではクッション性が若干実施例1に比べて低下するものの実用上は問題無いレベルであり、他の特性はいずれも非常に良好であった。
[実施例8、9]
B層の樹脂としてマレイン酸変性の接着ポリエチレン(三井化学(株)製 アドマー)使用した以外は、実施例8は実施例1と同様にして、実施例9は実施例3と同様にしてフィルムを得た。
【0092】
得られたフィルムは、いずれの場合も厚みムラが±10%以内であり、均一性、平坦性に優れ、フィルムの熱収縮率が引き取り方向(MD)及び引き取り直行方向(TD)ともに0.2%と小さい良好なフィルムであった。また、フィルムのA層に含まれるPTTは、いずれの場合も固有粘度[η]は0.95dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化に由来するピークは認められなかった。(結晶化熱量は0J/g)
得られたフィルムを用いて前記した方法にてカバーレイフィルムを接着した銅張積層板を作ったところ、いずれの場合もクッション性、離型性、クッション性、汚染性いずれも非常に良好であった。
[実施例10]
3台の50mmφ単軸押出機を用いる多層Tダイ成形法を用いる以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。製膜では両外層であるA層の樹脂組成物を240℃に設定した2台の押出機を用い、内層であるB層の樹脂組成物を190℃に設定した押出機を用いて、それぞれ溶融した後、245℃に設定した、幅700mm、間隔が0.8mmの下向きコートハンガータイプのTダイよりA/B/Aの3層状に押出し、100℃に設定したロールにキャストして冷却固化した後、常法に従って両端のカット、巻き取りを行って500mm幅の積層フィルムを得た。この際、B層の樹脂の押出量を50kg/hrとし、各層の厚みがA/B/A=5/90/5、総厚が100μmとなるように、A層樹脂の押出量とフィルムの巻き取り速度を調整した。
【0093】
得られたフィルムは厚みムラが±10%以内であり、均一性、平坦性に優れ、フィルムの熱収縮率が引き取り方向(MD)及び引き取り直行方向(TD)ともに0.5%と小さい良好なフィルムであった。また、フィルムのA層に含まれるPTTは、固有粘度[η]は0.92dl/g、カルボキシル末端基濃度が20eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化に由来するピークは認められなかった。(結晶化熱量は0J/g)
得られたフィルムを用いて前記した方法にてカバーレイフィルムを接着した銅張積層板を作ったところ、離型性、クッション性は実施例1に比べて若干劣るものの実用上は問題無く、汚染性は良好であった。
【0094】
また、実際に微細なパターンを有する回路を有したフレキシブルプリント基板を、カバーレイ接着工程にて、該フィルムを用いて製造したところ、回路欠陥が無い、非常に良好な基板を歩留まり良く得ることができた。
[実施例11]
2台の50mmφ単軸押出機を用いる下吹きの水冷式多層共押出しインフレーション法を用いた以外は実施例1と同様にしてフィルムを得た。
【0095】
製膜では丸ダイより押出した溶融物は、室温の冷風を当てた後、室温の流水と接触させて冷却固化してチューブ状に成形した後、2枚にスリットして400mm幅の積層フィルムを得た。
得られたフィルムは厚みムラが±10%以内であり、均一性、平坦性に優れ、フィルムの熱収縮率が引き取り方向(MD)及び引き取り直行方向(TD)ともに1%と小さい良好なフィルムであった。
【0096】
得られたフィルムのA層に含まれるPTTは、固有粘度[η]は0.95dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化は進んでいるものの、DSCにて評価すると結晶化に由来するピークが認められ、実施例1に比べて結晶化度は若干低かった。(結晶化熱量は20J/g)
得られたフィルムを用いて前記した方法にてカバーレイフィルムを接着した銅張積層板を作ったところ、離型性は実施例1に比べて劣るものの実用上は使用可能であり、クッション性、汚染性は非常に良好であった。ただし、熱板と接触した際に収縮するためにシワになりやすく、シワが基板上に残らないように慎重に作業をする必要があった。
[実施例12]
実施例1にて用いた組成物を用いて、1台の単軸押出機を用いる単層Tダイ成形法にて、A層とB層のフィルムを別々に得た後、ドライラミネーションにてA/B/Aの3層フィルムを得た。
【0097】
製膜では、まず実施例10と同様にA層用フィルムでは245℃に設定した押出機とTダイ、及び100℃に設定したロールを用い、B層用フィルムでは180℃に設定した押出機とTダイ、及び20℃に設定したロールを用いて、それぞれ25μmと100μmの単層フィルムを得た。次いでこれらのフィルムをA/B/Aの積層フィルムとなるように加熱ロールにて熱圧着して積層フィルムを得た。
【0098】
得られた積層フィルムは厚みムラが±10%以内であり、均一性、平坦性に優れ、フィルムの熱収縮率が引き取り方向(MD)及び引き取り直行方向(TD)ともに0.2%と小さい良好なフィルムであった。また、A層のフィルムに含まれるPTTは、固有粘度[η]は0.95dl/g、カルボキシル末端基濃度が15eq/トン、BPE含有率が0.5重量%であり、結晶化に由来するピークは認められなかった。(結晶化熱量は0J/g)
得られた積層フィルムを用いて前記した方法にてカバーレイフィルムを接着した銅張積層板を作ったところ、クッション性は実施例1に比べて若干劣るものの実用上は問題無く、離型性、汚染性はいずれも非常に良好であった。
[比較例1]
厚さ25μmの二軸延伸PET(東レ(株)製 ルミラーT60)をA層として用いた以外は実施例12と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムを用いて前記した方法にてカバーレイフィルムを接着した銅張積層版を作ったところ、接着剤がたくさんはみ出し、クッション性に劣るものであった。
[比較例2]
A層の樹脂組成物として平均分子量2000のポリテトラメチレングリコールを20重量%共重合したPBTエラストマーを用いた以外は実施例12と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムを用いて前記した方法にてカバーレイフィルムを接着した銅張積層版を作ったところ、離型フィルム同士、及び、PIや銅板と該離型フィルムが密着して剥がれ難かった。
[比較例3]
A層の樹脂として実施例1で用いたのと同じPTTとエラストマーをそれぞれ25重量部と15重量部、燐酸三ナトリウムを0.5重量部、ポリエチレンテレフタレート(ユニチカ(株)製NEH2050)60重量部を含んだ樹脂組成物を用いた以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。得られたフィルムを用いて前記した方法にてカバーレイフィルムを接着した銅張積層版を作ったところ、離型フィルム同士、及び、PIや銅板と該積層フィルムが密着して剥がれ難くなるとともに、接着剤のはみ出しも多く見られた。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明の離型フィルムは、離型性、耐熱性、耐汚染性及びクッション性に優れているため、プリプレグやフィルムを接着剤にて銅箔などに接着する際や、回路形成した銅張積層板にカバーレイフィルムや補強板を接着する際に、基板にシワやキズを付け難く、微細なパターンでも回路の汚染等の欠点を発生し難い。このため歩留まり良くプリント基板を製造することが容易になる。更に燃焼時に有害なガスを発生するフッ素元素や塩素元素を主成分として含まない為、容易に焼却等の廃棄処理を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリトリメチレンテレフタレートを30〜100重量%含む樹脂組成物からなる層を1層以上有する離型フィルム。
【請求項2】
3層以上で構成される離型フィルムであって、少なくとも1方の最外層がポリトリメチレンテレフタレートを30〜100重量%含む樹脂組成物からなる請求項1記載の離型フィルム。
【請求項3】
両最外層がポリトリメチレンテレフタレートを30〜100重量%含む樹脂組成物からなる請求項2記載の離型フィルム。
【請求項4】
ポリトリメチレンテレフタレートを含む樹脂組成物にエラストマーが3〜50重量%含まれる請求項1〜3いずれかに記載の離型フィルム。
【請求項5】
エラストマーがポリオレフィンエラストマーである請求項4記載の離型フィルム。
【請求項6】
ポリトリメチレンテレフタレートが結晶化している請求項1〜5いずれかに記載の離型フィルム。
ここで、結晶化しているとは、入力補償型示差熱量計(以下「DSC」と略す)にて昇温しながら熱分析を行った際に、0〜180℃の間に観察される結晶化由来の発熱ピークの面積が0〜30J/gであることを示す。
【請求項7】
厚みが5μm〜1000μmである請求項1〜6いずれかに記載の離型フィルム。
【請求項8】
ポリトリメチレンテレフタレートを含む樹脂組成物からなるひとつの層の厚みが1〜100μmである請求項1〜7いずれかに記載の離型フィルム。
【請求項9】
プリント基板製造用である請求項1〜8いずれかに記載の離型フィルム。
【請求項10】
プリント基板がフレキシブルプリント基板である請求項9記載の離型フィルム。
【請求項11】
インフレーション法により製造する請求項1〜10いずれかに記載の離型フィルムの製造法。
【請求項12】
Tダイ法により製造する請求項1〜10いずれかに記載の離型フィルムの製造法。
【請求項13】
インフレーション法及び/又はTダイ法にて得られたフィルムを接着剤を介して、及び/又は接着剤を介さずに積層させて製造する請求項1〜10いずれかに記載の離型フィルムの製造法。
【請求項14】
請求項1〜10いずれかの離型フィルムを用いるプリント基板の製造法。
【請求項15】
請求項1〜10いずれかの離型フィルムを用いて製造したプリント基板。

【公開番号】特開2007−175885(P2007−175885A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373721(P2005−373721)
【出願日】平成17年12月27日(2005.12.27)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】