説明

難燃化プリプレグ、及び積層体

【課題】難燃性と機械強度に優れた積層体と、これを容易に製造可能なプリプレグの提供。
【解決手段】シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、ハロゲン系難燃剤、及び層状複水酸化物を含む重合性組成物を、好ましくはさらに架橋助剤を含む、またさらに連鎖移動剤を含む、重合性組成物を、炭素繊維に含浸したのち、重合することによりプリプレグを得ることができ、これを該プリプレグ同士、または他材料と積層した後に、硬化して積層体を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリプレグ、及び積層体に関する。さらに詳しくは、難燃性、及び機械強度に優れた積層体の製造に有用な、プリプレグ、及び該積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
炭素繊維を樹脂に含浸させたのち、硬化してなる繊維強化樹脂は、その力学的特性が優れていることから、ゴルフクラブ、テニスラケット、釣竿などのスポーツ用途から自動車や航空機などの乗物用構造体用途、一般産業用途までの幅広い用途で用いられている。ところが、一般に樹脂は金属等と比べて燃えやすい性質を有し、特に自動車や航空機などの構造材料、建築材料などにおいては、安全の面から樹脂に難燃性を付与することが強く求められていた。
【0003】
たとえば、特許文献1には、エポキシ樹脂、硬化剤、臭素含有率が60%以上の有機ハロゲン化物、難燃性熱可塑性樹脂を含むエポキシ樹脂組成物をアクリル系炭素繊維に含浸した後、重合してなるプリプレグが開示されている。
また、特許文献2では、ノルボルネン系モノマー、重合触媒を含んでなる樹脂組成物をアクリル系炭素繊維に含浸した後、重合してなるプリプレグが開示され、充填材として水酸化アルミニウムを用いた場合に難燃性を付与できることが記載されている。
【0004】
特許文献3には、シクロオレフィンモノマーとして芳香環含有シクロオレフィンモノマー、テトラシクロドデセン、及び2−ノルボルネン、メタセシス重合触媒、連鎖移動剤としてメタクリル酸アリル、架橋剤としてジ−t−ブチルペルオキシド、及び難燃剤として水酸化マグネシウム、ポリリン酸メラミン、及び赤リンを含んでなる重合性組成物を繊維強化材に含浸した後、重合してなるプリプレグが開示されている。本報には、難燃剤としてハロゲン系難燃剤、アンチモン系難燃剤、金属水酸化物系難燃剤、リン系難燃剤、窒素系難燃剤などが使用できること、及び繊維強化材として炭素繊維を用いてもよいことが記載されている。
【特許文献1】特開平06−206980号公報
【特許文献2】特開2003−171479号公報
【特許文献3】WO2005/014690号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら本発明者らは、特許文献1の樹脂組成物は粘度が高いため、炭素繊維への含浸性が悪く、得られる積層体の機械強度が不十分という問題を発見した。
また本発明者らは、特許文献2で得られるプリプレグは、多量な未反応モノマーが存在するためべた付きの多い状態で取り扱わなければならず、また時間とともに物性が変化するという問題を発見した。またプリプレグ中の未反応のモノマーは、加熱後の積層体にもボイドとして残存するため、得られる積層体の機械強度が低下する問題を発見した。
更に本発明者らは、特許文献3で得られる樹脂成形体を、繊維強化材に炭素繊維を用いて製造した場合に、得られる積層板への難燃性の付与が難しく、十分な難燃性が得られないという問題を発見した。
【0006】
本発明は、難燃性、及び機械強度に優れた積層体の製造に有用な、プリプレグ、及び該積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討の結果、ハロゲン系難燃剤を含む重合性組成物にハイドロタルサイトなどの結晶層構造の層状複水酸化物を配合することにより優れた難燃性を維持したまま機械強度の熱的低下を大幅に抑制できること、特定の炭素繊維を用いることにより難燃性と機械強度が高度にバランスされること、及び重合性組成物に架橋助剤や架橋性の炭素−炭素二重結合を有する連鎖移動剤等を配合することにより難燃性と機械強度の特性をさらに高度にバランスさせることができることを見出した。本発明者らは、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至ったものである。
【0008】
かくして本発明によれば、
(1)シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、ハロゲン系難燃剤、及び層状複水酸化物を含む重合性組成物を炭素繊維に含浸したのち、重合してなるプリプレグ。
(2)層状複水酸化物が、複合金属炭酸塩である(1)記載のプリプレグ。
(3)複合金属炭酸塩が、ハイドロタルサイトである(2)記載のプリプレグ。
(4)層状複水酸化物とハロゲン系難燃剤との割合が、層状複水酸化物/ハロゲン系難燃剤の重量比で1/99〜70/30の範囲である(1)乃至(3)のいずれかに記載のプリプレグ。
(5)炭素繊維が、アクリル系炭素繊維である(1)乃至(4)のいずれかに記載のプリプレグ。
(6)重合性組成物が、さらに架橋助剤を含むものである(1)乃至(5)のいずれかに記載のプリプレグ。
(7)重合性組成物が、さらに連鎖移動剤を含むものである(1)乃至(6)のいずれかに記載のプリプレグ。
(8)連鎖移動剤が、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1つ以上有するものである(7)記載のプリプレグ。
(9)(1)乃至(8)のいずれかに記載のプリプレグを、該プリプレグ同士、または他材料と積層した後に、硬化してなる積層体。
が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、難燃性、及び機械強度に優れた積層体の製造に有用な、プリプレグ、及び該積層体が提供される。また、本発明の積層体は、難燃性と機械強度に優れるため、自動車や航空機などの乗物用部材、及びスポーツ、土木、建築などの分野において好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
(シクロオレフィンモノマー)
本発明に使用されるシクロオレフィンモノマーは、炭素原子で形成される環構造を有し、かつ該環構造中に重合性の炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物である。本明細書において「重合性の炭素−炭素二重結合」とは、連鎖重合(開環重合)可能な炭素−炭素二重結合をいう。開環重合には、イオン重合、ラジカル重合、メタセシス重合など種々の形態のものが存在するが、本発明においては、通常、メタセシス開環重合をいう。
【0011】
シクロオレフィンモノマーの環構造としては、単環、多環、縮合多環、橋かけ環及びこれらの組み合わせた環などが挙げられる。各環構造を構成する炭素数に特に限定はないが、通常、4〜30個、好ましくは5〜20個、より好ましくは5〜15個である。
シクロオレフィンモノマーは、アルキル基、アルケニル基、アルキリデン基、アリール基などの炭素数1〜30の炭化水素基や、カルボキシル基、又は酸無水物基などの極性基を置換基として有していてもよい。
【0012】
シクロオレフィンモノマーとしては、単環のシクロオレフィンモノマーと多環のシクロオレフィンモノマーのいずれをも用いることができる。得られる積層体の機械強度を向上できる観点から、多環のシクロオレフィンモノマーが好ましい。多環のシクロオレフィンモノマーとしては、特にノルボルネン系モノマーが好ましい。「ノルボルネン系モノマー」とは、ノルボルネン環構造を分子内に有するシクロオレフィンモノマーをいう。例えば、ノルボルネン類、ジシクロペンタジエン類、テトラシクロドデセン類などが挙げられる。
【0013】
シクロオレフィンモノマーは、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないものと、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するものとに分けられる。本明細書において「架橋性の炭素−炭素不飽和結合」とは、開環重合には関与せず、架橋反応に関与可能な炭素−炭素不飽和結合をいう。架橋反応とは橋架け構造を形成する反応であり、縮合反応、付加反応、ラジカル反応、メタセシス反応など種々の形態のものが存在するが、本発明においては、通常、ラジカル架橋反応又はメタセシス架橋反応、特にラジカル架橋反応をいう。架橋性の炭素−炭素不飽和結合としては、芳香族炭素−炭素不飽和結合を除く炭素−炭素不飽和結合、すなわち、脂肪族炭素−炭素二重結合又は三重結合が挙げられ、本発明においては、通常、脂肪族炭素−炭素二重結合をいう。架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマー中、不飽和結合の位置は特に限定されるものではなく、炭素原子で形成される環構造内の他、該環構造以外の任意の位置、例えば、側鎖の末端や内部に存在していてもよい。
【0014】
架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーとしては、例えば、シクロペンテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3,5−ジメチルシクロペンテン、3−クロロシクロペンテン、シクロへキセン、3−メチルシクロへキセン、4−メチルシクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロヘキセン、3−クロロシクロヘキセン、シクロへプテンなどの単環シクロオレフィンモノマー;ノルボルネン、5−メチルノルボルネン、5−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,5,6−トリメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−メチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−ヘキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−エチリデン−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−フルオロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,5−ジメチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−シクロへキシル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2,3−ジクロロ−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、2−イソブチル−1,4,5,8−ジメタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,2−ジヒドロジシクロペンタジエン、5−クロロノルボルネン、5,5−ジクロロノルボルネン、5−フルオロノルボルネン、5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメチルノルボルネン、5−クロロメチルノルボルネン、5−メトキシノルボルネン、5,6−ジカルボキシルノルボルネンアンハイドレート、5−ジメチルアミノノルボルネン、5−シアノノルボルネンなどのノルボルネン系モノマー;を挙げることができ、好ましくは架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないノルボルネン系モノマーである。
【0015】
架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマーとしては、例えば、3−ビニルシクロヘキセン、4−ビニルシクロヘキセン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロへキサジエン、1,4−シクロへキサジエン、5−エチル−1,3−シクロへキサジエン、1,3−シクロへプタジエン、1,3−シクロオクタジエンなどの単環シクロオレフィンモノマー;5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−メチリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−ビニルノルボルネン、5−アリルノルボルネン、5,6−ジエチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、2,5−ノルボルナジエンなどのノルボルネン系モノマー;を挙げることができ、好ましくは架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するノルボルネン系モノマーである。
これらのシクロオレフィンモノマーは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0016】
本発明に使用されるシクロオレフィンモノマーとしては、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマーを含むものが、得られる積層体において機械強度が向上し、好適である。
本発明の重合性組成物に配合するシクロオレフィンモノマー中、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマーと架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマーとの配合割合は所望により適宜選択されるが、重量比(架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1以上有するシクロオレフィンモノマー/架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たないシクロオレフィンモノマー)で、通常、5/95〜100/0、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは15/85〜70/30の範囲である。当該配合割合がかかる範囲にあれば、得られる積層体において機械強度、耐熱性、層間密着性、及び耐水性等の特性が高度にバランスされ、好適である。
【0017】
(重合触媒)
本発明に使用される重合触媒としては、シクロオレフィンモノマーを重合できるものであれば格別な限定はないが、本発明の重合性組成物は、後述のプリプレグの製造において、直接塊状重合に供して用いるのが好適であり、通常、メタセシス重合触媒を用いるのが好ましい。
【0018】
メタセシス重合触媒は、シクロオレフィンモノマーをメタセシス開環重合できるものであり、通常遷移金属原子を中心原子として、複数のイオン、原子、多原子イオン、及び/又は化合物が結合してなる錯体である。遷移金属原子としては、5族、6族、及び8族(長周期型周期表、以下同じ)の原子が使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、5族の原子としては例えばタンタルが挙げられ、6族の原子としては、例えばモリブデンやタングステンが挙げられ、8族の原子としては、例えばルテニウムやオスミウムが挙げられる。これらの中でも、8族のルテニウムやオスミウムの錯体をメタセシス重合触媒として用いることが好ましく、ルテニウム錯体がより好ましく、ルテニウムカルベン錯体が特に好ましい。ここで、「カルベン化合物」とは、メチレン遊離基を有する化合物の総称であり、(>C:)で表されるような電荷のない2価の炭素原子(カルベン炭素)を持つ化合物をいう。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性が優れるため、本発明の重合性組成物を塊状重合に供してプリプレグを得る場合、得られるプリプレグの未反応のモノマーに由来する臭気が少なく生産性に優れる。また、酸素や空気中の水分に対して比較的安定であって、失活しにくいので、大気下でも使用が可能である。
【0019】
本発明においては、重合触媒としてヘテロ環構造を有する化合物を配位子として有するルテニウム触媒を用いることが、得られるプリプレグ、及び積層体の耐熱性、機械強度と耐衝撃性が高度にバランスされ好適である。ヘテロ環構造を構成するヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子等が挙げられ、好ましくは窒素原子である。また、ヘテロ環構造としては、イミダゾリン環、またはイミダゾリジン環構造が好ましく、かかるヘテロ環構造を有する化合物の具体例としては、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメシチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン、N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジニリデン、1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジシクロヘキシルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデンなどが挙げられる。
【0020】
本発明においてメタセシス重合触媒として使用される、好適なルテニウムカルベン錯体の具体例としては、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリデン)ピリジンルテニウムジクロリドなどの、配位子として、ヘテロ環構造を有するカルベン化合物と、その他の中性電子供与体とを有するルテニウムカルベン錯体が挙げられる。ここで「中性電子供与体」とは、中心金属原子から引き離されたときに中性の電荷を持つ配位子をいう。なお、ヘテロ環構造を有するカルベン化合物も中性電子供与体の一種である。
【0021】
これらのメタセシス重合触媒は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。メタセシス重合触媒の使用量は、(メタセシス重合触媒中の金属原子:シクロオレフィンモノマー)のモル比で、通常1:2,000〜1:2,000,000、好ましくは1:5,000〜1:1,000,000、より好ましくは1:10,000〜1:500,000の範囲である。
【0022】
メタセシス重合触媒は所望により、少量の不活性溶剤に溶解、または懸濁して使用することができる。かかる溶媒としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、流動パラフィン、ミネラルスピリットなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ジシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;インデン、テトラヒドロナフタレンなどの脂環と芳香環とを有する炭化水素;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどの含酸素炭化水素;などが挙げられる。これらの中では芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、および脂環と芳香環とを有する炭化水素の使用が好ましい。
【0023】
(架橋剤)
本発明で使用される架橋剤は、本発明の重合性組成物を重合反応に供して得られるポリマーにおいて架橋反応を誘起する目的で使用される。従って、該ポリマーは、後架橋可能な熱可塑性樹脂となる。本発明において架橋剤としては、通常、ラジカル発生剤が好適に用いられる。ラジカル発生剤としては、有機過酸化物、ジアゾ化合物、及び非極性ラジカル発生剤などが挙げられ、好ましくは有機過酸化物、及び非極性ラジカル発生剤である。
【0024】
有機過酸化物としては、例えば、t−ブチルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド類;ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサンなどのジアルキルペルオキシド類;ジプロピオニルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシドなどのジアシルペルオキシド類;2,2−ジ(t−ブチルペルオキシ)ブタン、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)−2−メチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサンなどのペルオキシケタール類;t−ブチルペルオキシアセテート、t−ブチルペルオキシベンゾエートなどのペルオキシエステル類;t−ブチルペルオキシイソプロピルカルボナート、ジ(イソプロピルペルオキシ)ジカルボナートなどのペルオキシカルボナート類;t−ブチルトリメチルシリルペルオキシドなどのアルキルシリルペルオキシド類;3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパン、3,6,9−トリエチル−3,6,9−トリメチル−1,4,7−トリパーオキソナン、3,6−ジエチル−3,6−ジメチル−1,2,4,5−テトロキサンなどの環状ペルオキシド類;が挙げられる。特に、メタセシス重合によりシクロオレフィンポリマーを製造する場合には、メタセシス重合反応に対する障害が少ない点で、環状ペルオキシド類、ジアルキルペルオキシド類、及びペルオキシケタール類が好ましい。
【0025】
ジアゾ化合物としては、例えば、4,4’−ビスアジドベンザル(4−メチル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)シクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0026】
非極性ラジカル発生剤としては、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2−トリフェニルエタン、1,1,1−トリフェニル−2−フェニルエタンなどが挙げられる。
【0027】
本発明に使用される架橋剤がラジカル発生剤の場合の1分間半減期温度は、硬化(本発明の重合性組成物を重合反応に供して得られるポリマーの架橋)の条件により適宜選択されるが、通常、100〜300℃、好ましくは150〜250℃、より好ましくは160〜230℃の範囲である。ここで1分間半減期温度は、ラジカル発生剤の半量が1分間で分解する温度である。ラジカル発生剤の1分間半減期温度は、例えば日本油脂株式会社のホームページにて紹介される製品カタログ(http://www.nof.co.jp/upload_public/sogo/B0100.pdf)を参照すればよい。
【0028】
前記ラジカル発生剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の重合性組成物へのラジカル発生剤の使用量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部の範囲である。
【0029】
(ハロゲン系難燃剤)
本発明に使用されるハロゲン系難燃剤は、ハロゲン原子を含む難燃剤である。ハロゲン系難燃剤の具体例としては、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(クロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、塩素化ポリスチレン、塩素化ポリエチレン、高塩素化ポリプロピレン、クロロスルホン化ポリエチレンなどの塩素含有難燃剤;ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルオキシド、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、1,2−ビス(ペンタブロモフェニル)エタン、テトラブロモビスフェノールS、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニルプロパン)、ペンタブロモトルエンなどの臭素含有難燃剤;などが挙げられ、高い難燃性を得られる点で臭素含有難燃剤が好適である。
【0030】
本発明に使用されるハロゲン系難燃剤のハロゲン含有量は、所望により適宜選択されるが、通常30重量%以上、好ましくは30〜90重量%、より好ましくは40〜80重量%の範囲である。ハロゲン系難燃剤の融点、軟化点、分解温度、ガラス転移温度等は、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常200℃以上、好ましくは250℃、より好ましくは300℃以上である。
【0031】
これらのハロゲン系難燃剤は、それぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。ハロゲン系難燃剤の使用量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常10〜300重量部、好ましくは20〜200重量部、より好ましくは30〜150重量部の範囲である。
【0032】
(層状複水酸化物)
本発明に使用される層状複水酸化物は、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、ビスマス、鉄などの元素の水酸化物が結晶化した鉱物であり、一般式[M2+1−x3+(OH)][An−x/n・yHO]で表される化合物である(式中、M2+はMg、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ca、Li、またはZnなどの二価金属イオン,M3+はAl、Cr、Fe、Co、またはInなどの三価金属イオンである。An−はCl、NO、CO2−、カルボン酸などのn価の陰イオンである。)。これらの中でも、得られる積層体の耐水性の観点から、An−にCO2−を含む炭酸型層状複水酸化物が好適である。炭酸型層状複水酸化物としては、例えば、ハイドロタルサイト、パイロオーライト,スチヒタイト,マナセアイト,バーバートナイト,ジョグレナイト、クロルマグアルミナイト,メイクスネライト,デラウテルサイト,リーベサイト,タコバイト,炭酸型ハイドロカルマイトなどが挙げられ、ハイドロタルサイトが好適である。
【0033】
ハイドロタルサイトは、前記層状複水酸化物の式中のAn−がCO2−の陰イオン、M2+がMgの二価金属イオン、M3+がAlの三価金属イオンである化合物で、天然物、及び合成品が含まれる。天然物は、MgAl(OH)16CO・4HOの構造で存在する。また、合成品としては、Mg0.7Al0.3(OH)(CO0.15・0.54HO、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.2Al(OH)12.4COの構造を有するもの、または当該構造中、CO2−の一部を他のAn−に置換した構造を有するものが挙げられる。
【0034】
本発明に使用される層状複水酸化物の粒子径(平均粒子径)は、粒子を三次元的にみたときの長手方向と短手方向の長さの平均値で、通常0.001〜50μm、好ましくは0.01〜10μm、より好ましくは0.1〜5μmの範囲である。層状複水酸化物の粒子径がこの範囲にあるときに難燃性と機械強度が高度にバランスされ好適である。層状複水酸化物の粒子径は、揃えて使用してもよいし、大きな粒子径と小さな粒子径を混合した状態のものを用いても良い。
【0035】
これらの層状複水酸化物は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、層状複水酸化物の重合性組成物への分散性、及び機械強度という観点から、これらの層状複水酸化物は、Si、Ti、Al、Zrなどを含むカップリング剤などで表面処理されているものが好適である。かかる表面処理された層状複水酸化物は市販品として入手可能である。
【0036】
層状複水酸化物の使用量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常1〜50重量部、好ましくは2〜30重量部、より好ましくは3〜15重量部の範囲である。層状複水酸化物がこの範囲にあれば、得られる積層体において、難燃性と層間密着性とが高度にバランスされ好適である。
【0037】
層状複水酸化物の配合量は、(層状複水酸化物/ハロゲン系難燃剤)の重量比で、通常1/99〜70/30、好ましくは5/95〜60/40、より好ましくは10/90〜50/50の範囲である。本発明では、後述する重合性組成物が層状複水酸化物を、ハロゲン系難燃剤に対して上記割合で含有することにより、得られる積層体の難燃性と機械強度が高度にバランスされ好適である。
【0038】
(重合性組成物)
本発明に使用される重合性組成物には、上記するシクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、ハロゲン系難燃剤、及び層状複水酸化物を必須成分として、所望により重合調整剤、重合反応遅延剤、連鎖移動剤、架橋助剤、充填剤、老化防止剤、エラストマー材料、及びその他の配合剤を添加することができる。
【0039】
重合調整剤は、メタセシス重合活性を制御したり、メタセシス重合反応率を向上させたりする目的で配合されるものであり、例えば、トリアルコキシアルミニウム、トリフェノキシアルミニウム、ジアルコキシアルキルアルミニウム、アルコキシジアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウム、ジアルコキシアルミニウムクロリド、アルコキシアルキルアルミニウムクロリド、ジアルキルアルミニウムクロリド、トリアルコキシスカンジウム、テトラアルコキシチタン、テトラアルコキシスズ、テトラアルコキシジルコニウムなどが挙げられる。これらの重合調整剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。重合調整剤の使用量は、例えば(メタセシス重合触媒中の金属原子:重合調整剤)のモル比で、通常、1:0.05〜1:100、好ましくは1:0.2〜1:20、より好ましくは1:0.5〜1:10の範囲である。
【0040】
本発明に使用される重合性組成物は、重合反応遅延剤を含有していると、その粘度増加を抑制でき、強化繊維に均一に重合性組成物を含浸できるので、好ましい。重合反応遅延剤としては、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ビニルジフェニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリアリルホスフィン、スチリルジフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物;アニリン、ピリジンなどのルイス塩基;等を用いることができる。
【0041】
これら重合反応遅延剤の中でも、室温以下での重合反応の進行を抑制する効果が大きいので、ホスフィン化合物が好ましく、トリフェニルホスフィン、トリエチルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィンおよびビニルジフェニルホスフィンがより好ましい。これらの重合反応遅延剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、(メタセシス重合触媒中の金属原子:重合反応遅延剤)のモル比で、通常、1:0.01〜1:100、好ましくは1:0.1〜1:10、より好ましくは1:0.1〜1:5の範囲である。
【0042】
本発明においては、連鎖移動剤を配合することにより熱可塑性のプリプレグを得ることが可能となり、また分子内にの炭素−炭素不飽和結合を2つ以上有するものを用いることにより積層体の難燃性、機械強度、及び耐熱性を一層向上させることができ好適である。
【0043】
連鎖移動剤は、開環重合に関与でき、本発明の重合性組成物を重合反応に供して得られるポリマーの末端に結合可能な脂肪族炭素−炭素二重結合を1つ有する化合物である。当該二重結合の例としては、末端ビニル基が挙げられる。また連鎖移動剤は、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1つ以上有していてもよい。
【0044】
連鎖移動剤の具体例としては、1−ヘキセン、2−ヘキセン、スチレン、ビニルシクロヘキサン、アリルアミン、アクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、2−(ジエチルアミノ)エチルアクリレート、4−ビニルアニリンなどの架橋性の炭素−炭素不飽和結合を持たない連鎖移動剤;ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸スチリル、アクリル酸アリル、メタクリル酸ウンデセニル、アクリル酸スチリル、エチレングリコールジアクリレートなどの架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1つ有する連鎖移動剤;アリルトリビニルシラン、アリルメチルジビニルシランどの架橋性の炭素−炭素不飽和結合を2つ以上有する連鎖移動剤;などが挙げられる。これらの中でも、機械強度と難燃性を高度にバランスさせる上で、分子内に架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1つ以上有する連鎖移動剤が好ましく、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1つ有する連鎖移動剤がより好ましい。かかる連鎖移動剤の中でも、ビニル基とメタクリル基とを1つずつ有する連鎖移動剤が好ましく、メタクリル酸ビニル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸スチリル、アクリル酸アリル、メタクリル酸ウンデセニルなどが特に好ましい。
【0045】
これらの連鎖移動剤は、それぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。その使用量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.1〜5重量部である。
【0046】
本発明においては、重合性組成物に架橋助剤を加えることにより、重合性組成物の炭素繊維への含浸性を高度に向上でき、また架橋して得られる積層体の賦形性や機械強度を高度にバランスすることができ好適である。架橋助剤としては、開環重合に関与せず、架橋剤により誘起される架橋反応に関与可能な架橋性の炭素−炭素不飽和結合を2以上有する多官能性架橋助剤が好適に用いられる。かかる架橋性の炭素−炭素不飽和結合は、架橋助剤を構成する化合物中、例えば末端ビニリデン基として、中でも、イソプロペニル基やメタクリル基として、特にメタクリル基として存在するのが好ましい。
【0047】
架橋助剤の具体例としては、p−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、o−ジイソプロペニルベンゼンなどの、イソプロペニル基を2以上有する多官能性架橋助剤;エチレンジメタクリレート、1,3−ブチレンジメタクリレート、1,4−ブチレンジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレートなどの、メタクリル基を2以上有する多官能性架橋助剤;などを挙げることができる。中でも、架橋助剤としては、メタクリル基を2以上有する多官能性架橋助剤が好ましい。メタクリル基を2以上有する多官能性架橋助剤の中では、特に、トリメチロ−ルプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレートなどの、メタクリル基を3つ有する多官能性架橋助剤がより好適である。
【0048】
これらの架橋助剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。架橋助剤の使用量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対し、通常0.1〜100重量部、好ましくは0.5〜50重量部、より好ましくは1〜30重量部である。
【0049】
本発明においては、重合性組成物に充填剤を含有することで、積層体の機械強度、耐熱性、耐薬品性等を向上でき好適である。充填剤としては、工業的に一般に使用されるものであれば格別な限定はなく、無機充填剤や有機充填剤のいずれも用いることができるが、好適には無機充填剤である。
【0050】
無機充填剤としては、例えば、鉄、銅、ニッケル、金、銀、アルミニウム、鉛、タングステン等の金属粒子;カーボンブラック、グラファイト、活性炭、炭素バルーン等の炭素粒子;シリカ、シリカバルーン、アルミナ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化すず、酸化ベリリウム、バリウムフェライト、ストロンチウムフェライト等の無機酸化物粒子;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸水素ナトリウム等の無機炭酸塩粒子;硫酸カルシウム等の無機硫酸塩粒子;タルク、クレー、マイカ、カオリン、フライアッシュ、モンモリロナイト、ケイ酸カルシウム、ガラス、ガラスバルーン等の無機ケイ酸塩粒子;チタン酸カルシウム、チタン酸ジルコン酸鉛等のチタン酸塩粒子、窒化アルミニウムやウィスカー等が挙げられる。
【0051】
有機充填剤としては、例えば、木粉、デンプン、有機顔料、ポリスチレン、ナイロン、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン、塩化ビニル、各種エラストマー、廃プラスチック等の粒子化合物が挙げられる。
【0052】
これらの充填剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常50重量部以上、好ましくは50〜1,000重量部、より好ましくは50〜750重量部、さらに好ましくは50〜500重量部の範囲である。充填剤の使用量がこの範囲にあるときに積層体の機械強度、耐熱性、耐薬品性等の特性を向上させることができ好適である。
【0053】
老化防止剤としては、通常格別な限定なく使うことができるが、フェノール系老化防止剤、アミン系老化防止剤、リン系老化防止剤、及びイオウ系老化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の老化防止剤を加えることにより、架橋反応を阻害しないで、得られる積層体の耐熱性を高度に向上させることができ好適である。これらの中でも、フェノール系老化防止剤とアミン系老化防止剤が好ましく、フェノール系老化防止剤が特に好ましい。これらの老化防止剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。老化防止剤の使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常0.0001〜10重量部、好ましくは0.001〜5重量部、より好ましくは0.01〜2重量部の範囲である。
【0054】
本発明に使用される重合性組成物に、エラストマー材料を加えることにより、得られるハニカムコアの靭性を向上させることができ好適である。エラストマー材料としては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレン、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、クロロプレン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体及びこれらの水素添加物が挙げられる。これらのエラストマー材料は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。その配合量は、シクロオレフィンモノマー100重量部に対して、通常0.1〜100重量部、好ましくは1〜50重量部、より好ましくは3〜30重量部の範囲である。
【0055】
本発明に用いられる重合性組成物は、その他の配合剤を配合することができる。その他の配合剤としては、その他の難燃剤、着色剤、光安定剤、顔料、発泡剤などを用いることができる。その他の難燃剤としては、ハロゲン系難燃剤以外のリン系難燃剤、窒素系難燃剤、三酸化アンチモンなどのアンチモン化合物などが挙げられる。着色剤としては、染料、顔料などが用いられる。染料の種類は多様であり、公知のものを適宜選択して使用すればよい。これらのその他の配合剤は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、本発明の効果を損ねない範囲で適宜選択される。
【0056】
本発明の重合性組成物は、上記成分を混合して得ることができる。混合方法としては、常法に従えばよく、例えば、重合触媒を適当な溶媒に溶解、または分散させた液(触媒液)をシクロオレフィンモノマーと架橋剤に必要に応じてその他の添加剤を配合した液(モノマー液)に添加し、攪拌することによって調製することができる。
【0057】
(炭素繊維)
本発明に使用される炭素繊維は、従来公知の材料を格別な限定なく用いることができる。炭素繊維の種類としては、例えば、アクリル系、ピッチ系、レーヨン系等の各種の炭素繊維が使用できる。特に、メタセシス重合によりシクロオレフィンポリマーを製造する場合には、アクリル繊維(ポリアクリロニトリル繊維)を原料として製造される炭素繊維であるアクリル系炭素繊維がメタセシス重合を阻害をせず、得られる積層体の機械強度、靭性、耐熱性等の特性を高度に改善でき好適である。また、アクリル系炭素繊維は、シクロオレフィンモノマー、及びシクロオレフィンポリマーとの親和性が良いため、それぞれの炭素繊維への含浸性に優れ、ボイドが少ないプリプレグが得られ、好適である。更に、硬化して得られる積層体の難燃性と機械強度が高度にバランスされ好適である。
【0058】
本発明に使用される炭素繊維の強度特性は、格別な限定はなく使用目的に応じて適宜選択される。引張強度としては、JIS R7601に従って測定されるストランド引張強度で、通常0.5〜50GPa、好ましくは1〜10GPa、より好ましくは2〜8GPaの範囲である。引張弾性率としては、JIS R7601に従って測定されるストランド引張弾性率で、通常100〜1,000GPa、好ましくは200〜800GPa、より好ましくは300〜700GPaの範囲である。伸びとしては、JIS R7601に従って測定されるストランド引張伸びで、通常0.1〜10%、好ましくは0.5〜5%、より好ましくは1〜3%の範囲である。炭素繊維の強度特性がこれらの範囲にあるときに、得られる積層体の機械強度と靭性が高度にバランスされ好適である。
【0059】
本発明に使用される炭素繊維の断面形状は、格別な限定はないが、実質的に円形であるものが好ましい。断面形状が円形であると、重合性組成物を含浸させる際、フィラメントの再配列が起こりやすくなり、繊維間への重合性組成物の浸み込みが容易になるからである。さらに、繊維束の厚みを薄くすることが可能となるため、ドレープ性に優れたプリプレグを得やすい利点がある。なお、断面形状が実質的に円形であるとは、その断面の外接円半径Rと内接円半径rとの比(R/r)を変形度として定義した場合に、この変形度が1.1以下であるものを意味する。
【0060】
本発明に使用される炭素繊維の長さは、格別な限定無く使用目的に応じて適宜選択され、短繊維、長繊維のいずれをも用いることができるが、より高い機械強度と靭性を有する積層体を得たい場合は、繊維の長さが1cm以上、好ましくは2cm以上、より好ましくは3cm以上、もっとも好ましくは連続繊維とするのがよい。
【0061】
本発明に使用される炭素繊維の形態は、特に限定されず、織物、不織布、マット、ニット、組み紐、一方向ストランド、ロービング、チョップド等から適宜選択できる。これらの中でも、靭性と耐衝撃性がより高い水準にある積層体を得るためには、繊維が織物、一方向ストランド、ロービング等連続繊維の形態であるのが好ましく、一方向材がさらに好ましい。一方向材は、重合性組成物の含浸性を高度に向上でき、また、繊維の割合が高いため得られる積層体の機械強度を高度に向上させることができ好適である。
【0062】
織物形態としては、従来公知のものが利用でき、例えば、平織、繻子織、綾織、3軸織物などの繊維が交錯する織り構造の全てが利用できる。また、織物形態としては、2次元だけでなく、織物の厚み方向に繊維が補強されているステッチ織物、3次元織物等も利用できる。
本発明に使用される炭素繊維を、織物等で使用する場合は繊維束糸条として利用する。その場合の繊維束糸条1本中のフィラメント数は、格別な限定はないが、好ましくは1,000〜100,000本、より好ましくは5,000〜50,000本、さらに好ましく波10,000〜30,000本の範囲である。
【0063】
これらの炭素繊維は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は、使用目的に応じて適宜選択されるが、得られるプリプレグ中の炭素繊維含有量が、通常10〜90重量%、好ましくは20〜85重量%、より好ましくは30〜80重量%の範囲になるように選択される。強化繊維含有量がこの範囲にあるときに得られる積層体の機械強度、靭性の特性が高度にバランスされ好適である。
【0064】
(プリプレグ)
本発明のプリプレグは、前記重合性組成物を上記炭素繊維に含浸させた後に重合してなるものである。重合性組成物の炭素繊維への含浸は、例えば、重合性組成物の所定量を、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、カーテンコート法、ダイコート法、スリットコート法等の公知の方法により炭素繊維に塗布し、所望によりその上に保護フィルムを重ね、上側からローラーなどで押圧することにより行うことができる。重合性組成物を炭素繊維に含浸させた後、含浸物を所定温度に加熱することにより、重合性組成物を重合させることができ、それによってシート状、またはフィルム状のプリプレグが得られる。重合方法は特に限定されないが、塊状重合が好ましい。ここで用いる保護フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート、ナイロンなどの樹脂;鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、ニッケル、クロム、金、銀などの金属材料;などからなるものが挙げられる。
【0065】
含浸を型内で行う場合は、型内に炭素繊維に設置し、該型内に重合性組成物を注ぎ込んで行う。この方法によれば、任意の形状のプリプレグを得ることができる。その形状としては、シート状、フィルム状、柱状、円柱状、多角柱状等が挙げられる。ここで用いる型としては、従来公知の成形型、例えば、割型構造すなわちコア型とキャビティー型を有する成形型を用いることができ、それらの空隙部(キャビティー)に重合性組成物を注入して塊状重合させる。コア型とキャビティー型は、目的とするプリプレグの形状にあった空隙部を形成するように作製される。また、成形型の形状、材質、大きさなどは特に制限されない。また、ガラス板や金属板などの板状成形型と所定の厚さのスペーサーとを用意し、スペーサーを2枚の板状成形型で挟んで形成される空間内に重合性組成物を注入し、該型内で硬化を行うことにより、シート状、またはフィルム状のプリプレグを得ることができる。
【0066】
重合して得られるプリプレグ中のシクロオレフィンポリマーは、架橋構造を有さず、溶媒に溶解するものである。かかる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素のなどの溶媒から適宜選択される。
シクロオレフィンポリマーの分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーで測定されるテトラヒドロフラン溶液のポリスチレン換算の重量平均分子量で、通常1,000〜1,000,000、好ましくは5,000〜500,000、より好ましくは10,000〜100,000の範囲である。
【0067】
重合性組成物は従来のエポキシ樹脂の溶液等と比較して低粘度であり、炭素繊維に対する含浸性に優れるので、得られるプリプレグ、及び積層体はボイドが少なく、機械強度に優れる。
【0068】
強化繊維がチョップなどの短繊維である場合には、強化繊維を重合性組成物に混合し、次いで塊状重合を行うことができる。強化繊維は、モノマー液と触媒液とを混合する前にモノマー液及び/又は触媒液に添加してもよいし、モノマー液と触媒液とを混合した後に添加してもよい。塊状重合の方法としては、上記と同様に型内で塊状重合を行う方法が挙げられる。また、短繊維と長繊維からなる織物とを併用し、強化繊維の短繊維を含む重合性組成物を、上記と同様に長繊維からなる織物に含浸させてから重合してもよい。
【0069】
本発明の重合性組成物は、通常メタセシス重合触媒を含んでなる。重合性組成物を重合させるための加熱温度は、架橋剤により架橋反応が誘起される温度以上であり、上記いずれの方法においても、通常50〜250℃、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜170℃の範囲である。また、例えば架橋剤としてラジカル発生剤を使用する場合、通常1分間半減期温度以下、好ましくは10℃以下、より好ましくは20℃以下である。重合時間は適宜選択すればよいが、通常10秒間から60分間、好ましくは20分間以内である。重合性組成物をこの範囲温度に加熱することにより未反応モノマーの少ないプリプレグが得られるので好適である。
【0070】
本発明のプリプレグの厚さは、使用目的の応じて適宜選択されるが、通常0.001〜10mm、好ましくは0.01〜1mm、より好ましくは0.05〜0.5mmの範囲である。プリプレグの厚さがこの範囲であるときに、積層時の賦形性、また硬化して得られる積層体の機械強度や靭性が充分に発揮され好適である。
本発明のプリプレグ中の揮発成分量は、200℃で1時間加熱したときに揮発する量で、通常30重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、もっとも好ましくは1重量%以下である。未反応モノマーなど、プリプレグ中の揮発成分量が過度に多いと、プリプレグのベタ付きが発生し操作性、及び保存安定性が悪くなる。
【0071】
(積層体)
本発明の積層体は、本発明のプリプレグを、当該プリプレグ同士で、または他材料と積層し、所望によりさらに賦形した後に、硬化することで製造することができる。
積層してもよい他材料としては、使用目的に応じて適宜選択されるが、例えば、熱可塑性樹脂材料、金属材料などが挙げられ、特に金属材料が好適に用いられる。金属材料としては、回路基板で一般に用いられるものを格別な制限なく用いることができ、通常金属箔、好ましくは銅箔が用いられる。金属材料の厚みは、使用目的に応じて適宜選択されるが、通常1〜50μm、好ましくは3〜30μm、より好ましくは5〜20μm、最も好ましくは5〜15μmの範囲である。
【0072】
本発明においては、炭素繊維が一方向材である時、積層体は4層または8層であることが好ましい。各層を構成するプリプレグは、それぞれの炭素繊維の向きを、積層体の他の層を構成するプリプレグに対し、角度をずらして積層される。プリプレグの積層体が4層である場合には、基準となる線を一つ採り、基準線と各層の炭素繊維の向く方向とのなす角度(絶対値が小さい方)をθとして、順にθ=−45°、45°、45°、−45°と積層することが好ましい。また、積層体が8層である場合には、順にθ=0°、90°、−45°、45°、45°、−45°、90°、0°と積層することが好ましい。積層体の各層が、上記のように構成される時、得られる積層体に反りがなく、機械強度の異方性がなくなる。
【0073】
積層、及び硬化させる方法は、常法に従えばよく、例えば、平板成形用のプレス枠型を有する公知のプレス機、シートモールドコンパウンド(SMC)やバルクモールドコンパウンド(BMC)などのプレス成形機を用いて熱プレスを行なうことができる。加熱温度は、通常架橋剤により架橋反応が誘起される温度以上であり、典型的には、100〜300℃、好ましくは150〜250℃の範囲である。例えば、架橋剤としてラジカル発生剤を使用する場合、通常1分間半減期温度以上、好ましくは1分間半減期温度より5℃以上高い温度、より好ましくは1分間半減期温度より10℃以上高い温度である。加熱時間は、0.1〜180分、好ましくは1〜120分、より好ましくは2〜60分の範囲である。プレス圧力としては、通常0.1〜20MPa、好ましくは0.1〜10MPa、より好ましくは1〜5MPaである。また、熱プレスは、真空、または減圧雰囲気下で行ってもよい。
【0074】
かくして得られる本発明の積層体は、難燃性と機械強度に優れるため、スポーツ用途、自動車や航空機などの乗用車構造体用途、一般産業用途に好適に用いられる。
【実施例】
【0075】
以下、実施例、及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、及び比較例における部、及び%は、特に断りのない限り重量基準である。
【0076】
実施例、及び比較例における各特性は、下記の方法に従い測定、評価した。
(1) 難燃性:125mm×15mm×0.5mmの積層体に10秒間接炎したのちの総発熱量を測定し、下記基準で評価する。
○:3KJ/g未満
△:3KJ以上、6KJ/g未満
×:6KJ/g以上
(2) 機械強度:220℃で2時間の耐熱試験前後の積層体の引張強度をJIS K−7073に規定する試験方法に従い、標点間距離を150mmとし、クロスヘッド速度2.0mm/分で測定し、試験前後の引張強度の変化率を算出し、以下の基準で判断した。、以下の基準で評価する。
○:20%未満
×:20%以上
(3) 重合体の含浸性:積層体のX線解析をX線非破壊解析装置(松定プシジョン社製)を用いて行い。下記基準で判断する。
○:空洞部が殆ど見られない。
△:空洞が僅かに見られる。
×:中程度に空洞が見られる。
【0077】
(実施例1)
ベンジリデン(1,3−ジメチル−4−イミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド51部と、トリフェニルホスフィン79部とを、トルエン952部に溶解させて触媒液を調製する。これとは別に、テトラシクロドデセン(TCD)70部と1,4−メタノ−1.4.4a.9aテトラヒドロフルオレン(MTF)30部入れ、ここに連鎖移動剤としてジビニルベンゼンを1.2部、架橋剤として2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを5部、フェノール系老化防止剤として3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシアニソール1.0部、ハロゲン系難燃剤としてビス(ペンタブロモフェニル)エタン(アルベマール社製;SAYTEX8010)を50部、難燃助剤として三酸化アンチモン(日本精鉱社製;PATOX−M)を20部、ハイドロタルサイト(協和化学工業社製;アルカマイザーDHT−4A、平均粒子径2μm)を25部加える。その後、上記触媒液をシクロオレフィンモノマー100gあたり0.12mlの割合で加えて撹拌し、重合性組成物を調製する。
【0078】
ついで、この重合性組成物100部をポリエチレンナフタレートフィルム(帝人デュポンフィルム社製;タイプQ51、厚さ75μm)の上に流延し、その上に一方向に配列させたアクリル系炭素繊維(三菱レイヨン社製;パイロフィルTR 30S 3L)を敷いて、さらにその上に上記重合性組成物80部を流延する。その上からさらにポリエチレンナフタレートフィルムを被せ、ローラーを用いて重合性組成物を炭素繊維に含浸させる。ついで、これを150℃に熱した加熱炉中で1分間加熱し、重合性組成物を塊状重合させて厚さ125μmのプリプレグを得る。
【0079】
得られるプリプレグ4枚を、各層の炭素繊維が、下から順にθ=−45°/45°/45°/−45°となるように重ね、さらにその両端側に12μmF2銅箔(古河サーキットホイル社製;電解銅箔、粗度Rz=700nm)を重ね、220℃で2時間、3MPaにて加熱プレスを行い積層体を得る。得られる積層体上の銅箔をエッチングにより除去し、難燃性、機械強度を評価する。評価結果を表1に示す。
【0080】
(実施例2)
連鎖移動剤をアリルメタクリレートに代える以外は実施例1と同様に積層体を得、評価を行う。評価結果を表1に示す。
【0081】
(実施例3)
ハイドロタルサイトの配合量を35部とする以外は実施例2と同様に積層体を得、評価を行う。評価結果を表1に示す。
【0082】
(比較例1)
ビスフェノールAジグリシジル型エポキシ樹脂エピコート828(ジャパンエポキシレジン社製)10部、ビスフェノールAジグリシジル型エポキシ樹脂エピコート1002(ジャパンエポキシレジン社製)40部、N,N,N’,N’−テトラグリシジルアミノジフェニルエタンエピコート604(ジャパンエポキシレジン社製)20部、ウレタン変性エポキシ樹脂アデカレジンEPU−6(ADEKA社製)30部、熱可塑性樹脂としてポリエーテルイミドPEI Ultem1000(日本ジーイープラスチック社製)5部、硬化剤としてジシアンジアミド2部、およびDDS(4,4’−ジアミノジフェニルスルホン)10部、硬化促進剤として3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア3部、およびハロゲン系難燃剤としてヘキサブロムベンゼン10部からなるエポキシ樹脂組成物を調整する。
重合性組成物を上記エポキシ樹脂組成物に変える以外は実施例1と同様に積層体を得、評価を行う。評価結果を表1に示す。
【0083】
(比較例2)
ハイドロタルサイトを用いない以外は実施例1と同様に積層体を得、評価を行う。評価結果を表1に示す。
【0084】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
シクロオレフィンモノマー、重合触媒、架橋剤、ハロゲン系難燃剤、及び層状複水酸化物を含む重合性組成物を炭素繊維に含浸したのち、重合してなるプリプレグ。
【請求項2】
層状複水酸化物が、炭酸型層状複水酸化物である請求項1記載のプリプレグ。
【請求項3】
炭酸型層状複水酸化物が、ハイドロタルサイトである請求項2記載のプリプレグ。
【請求項4】
層状複水酸化物とハロゲン系難燃剤との割合が、層状複水酸化物/ハロゲン系難燃剤の重量比で1/99〜70/30の範囲である請求項1乃至3のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項5】
炭素繊維が、アクリル系炭素繊維である請求項1乃至4のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項6】
重合性組成物が、さらに架橋助剤を含むものである請求項1乃至5のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項7】
重合性組成物が、さらに連鎖移動剤を含むものである請求項1乃至6のいずれかに記載のプリプレグ。
【請求項8】
連鎖移動剤が、架橋性の炭素−炭素不飽和結合を1つ以上有するものである請求項7記載のプリプレグ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載のプリプレグを、該プリプレグ同士、または他材料と積層した後に、硬化してなる積層体。

【公開番号】特開2010−84041(P2010−84041A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−255684(P2008−255684)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】