説明

電光表示装置

【課題】故障が発生するおそれが低く、しかも優れた注意喚起効果を備える電光表示装置を提供する。
【解決手段】複数の発光素子をドットマトリクス配列して構成した表示画面を少なくとも3つの発光ブロックに分割し、一端の発光ブロック及び中央の発光ブロックを点灯、全発光ブロックを消灯、全発光ブロックを点灯、全発光ブロックを消灯、中央の発光ブロック及び前記一端とは別の一端の発光ブロックを点灯、全発光ブロックを消灯、の順で発光駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオード(以降LEDと表記する)等の発光素子をプリント基板上に複数個配列し、各発光素子を選択的に発光させることで文字、図形、記号、模様等を表示する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、LEDをプリント基板上に配置し、選択的に点滅駆動することで文字・画像等を発光表示する電光表示装置が知られている。当該装置の中にあって、近年その数を増やしつつあるのが道路工事箇所等で注意喚起を促す目的で設置される電光表示装置である。道路工事箇所の多くでは、片側交互通行等の通行規制を行いながら通行と工事作業とを並行して進めるため、車両のドライバーに向けて工事が行われていることを現場で知らせる必要がある。中でも高速道路のように通行車両の速度が高い場所では、ドライバーに対して確実に注意を伝えなければならず、「工事中」「片側通行」といった発光文字を表示しながら黄色回転灯を併設するなどして更に注意を与えている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に示すように従来の電光表示装置では、構造上機械的な可動部をもたないLED方式を採用しながら、その一方で回転灯という発光原理から発光制御方式さらには構造面まで全く異なるもの同士を組み合わせていた。一般に回転灯は光源に白熱球を使用し、反射鏡が白熱球の周囲を回転する構造となっていることから、そもそも根本的に可動機構部分に故障発生の要因を抱えているという問題がある。また、LED表示装置の部分と回転灯の部分とが独立した個別の筐体で構成されているため、コストの上昇をもたらしていた。
【特許文献1】特開2002−99229号
【0004】
本発明は上記のような問題点を解決することを課題としており、故障発生のリスクが低く、しかも優れた注意喚起効果を備える電光表示装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために、複数の発光素子を点滅駆動することで所定の表示パターンを発光表示する電光表示装置において、複数の発光素子をドットマトリクス状に配列して構成する表示画面と、表示画面にドットマトリクス配列した発光素子を点滅駆動する表示駆動部と、表示画面上に発光表示する表示パターンに対応して、前記表示駆動部を介して発光素子を点滅駆動するためのデータを記憶する表示データ記憶部と、を備え、表示画面のドットマトリクス配列面の全領域あるいは一部の領域を縦方向または横方向に区切って少なくとも3つの発光ブロックに分割し、第1から第3の各発光ブロックに属する発光素子を以下の順番で繰り返しブロック毎に一斉に点灯あるいは消灯することにより注意喚起を促すことを特徴とする電光表示装置を提案する。
(1)左端あるいは上段に位置する第1の発光ブロックを点灯すると共に、中央に位置する第2の発光ブロックを点灯し、右端あるいは下段に位置する第3の発光ブロックを消灯する。
(2)第1から第3の各発光ブロックを全て消灯する。
(3)第1から第3の各発光ブロックを全て点灯する。
(4)第1から第3の各発光ブロックを全て消灯する。
(5)第1の発光ブロックを消灯し、第2の発光ブロック及び第3の発光ブロックを点灯する。
(6)第1から第3の各発光ブロックを全て消灯する。
【0006】
そして、上記提案の電光表示装置は、次の点灯/消灯時間とすることが望ましい。
(1)左端あるいは上段に位置する第1の発光ブロックを点灯すると共に、中央に位置する第2の発光ブロックを所定時間t秒間点灯し、右端あるいは下段に位置する第3の発光ブロックを所定時間t秒間消灯する。
(2)第1から第3の各発光ブロックを全て所定時間8t秒間消灯する。
(3)第1から第3の各発光ブロックを全て所定時間t秒間点灯する。
(4)第1から第3の各発光ブロックを全て所定時間8t秒間消灯する。
(5)第1の発光ブロックを所定時間t秒間消灯し、第2の発光ブロック及び第3の発光ブロックを所定時間t秒間点灯する。
(6)第1から第3の各発光ブロックを全て所定時間8t秒間消灯する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電光表示装置によれば、表示装置がもともと備えているドットマトリクス表示面の全面または一部の領域を利用して、光源の周りを反射鏡が回転して光を放射する回転灯と同等の注意喚起表示を行うことができる。したがって反射鏡が不要となり、機械的な可動部分をなくすことができるため、故障が発生する確率を大幅に低減させることができる。同時に、これまで別々の筐体で構成していたLED表示部と回転灯表示部とを1つにまとめることができ、装置の低価格化を図ることができる。
【0008】
また、注意喚起表示を行う際のLEDの点灯時間を、消灯時間に比べて短時間にしていることにより、LED点灯時に鮮やかな光が瞬間的に発光するように視認させることができ、回転灯が放つ光に近い印象の発光効果を与えることができる。
【実施例1】
【0009】
以下、図面を基に本発明の第1実施例について説明する。図1は本発明実施例に関わる電光表示装置を組み込んだ工事用表示装置7の外観を示す説明図である。1は本実施例の電光表示装置であり、発光素子たるLED2をドットマトリクス状に配列して文字、図形等の表示パターンを表示する表示画面3を構成している。4は内照表示部であり、道路標識を印刷した透光性表示板5の内側に蛍光灯等の光源を具備し、道路標識を内側から照らして表示するようにしている。電光表示装置1と内照表示部4とは図に現れない背面側でフレームで一体化しており、周知の昇降装置を取り付けたスタンド6により適宜高さでの支持を可能にしている。
【0010】
次に、図2を基にして電光表示装置1の内部構成について説明する。3は表示画面であり、既に説明した通りLEDをドットマトリクス状に配列している。配列するLEDの数は特に限定されるものではなく、文字の表示を優先する場合には一文字あたり縦横16個ずつ配列すれば都合が良く、矢印等の記号表示を優先する場合にはそれよりも少ないドットでマトリクス配列すれば十分であり、要は主に表示する内容に応じて適宜マトリックスを構成することができる。本実施例では全画面に対して橙色発光LEDを横方向に12ドット縦方向に5ドット配列してマトリクスを構成している。そして表示画面3は3つの発光ブロック3−a、3−b、3−cに分割されており、それぞれの発光ブロック(横4ドット×縦5ドット)ごとに一斉にLEDを発光/消灯できるようにしている。10は表示駆動部で、スイッチング用トランジスタアレイ回路等からなり、後述する制御部より表示制御データを受けて表示画面3に配列したLEDを点滅駆動し、マトリクス上に矢印記号を発光表示したり、発光ブロック3−a、3−b、3−cを所定の順番で発光/消灯する。
【0011】
11はCPUで、記憶部12で記憶するプログラムやデータに従い表示処理手順をこなす。記憶部12は、装置全体の動きに関する動作プログラムが記憶されたROM12aと、ドット情報の集まりで表現される各種矢印記号のパターンやその表示動作及び発光ブロック3−a、3−b、3−cに関する発光順序の組み合わせ等を複数記憶する表示データ記憶部12cと、この表示データ記憶部12cに記憶している個々の記憶内容の表示タイミングを規定するスケジュールデータや電光表示装置に関する各種データを記憶するデータ記憶部12cとからなっている。13はVRAMで、記憶部12から読み出した各種データのうちの表示データを記憶領域にビット情報として展開する。このVRAM13は、表示画面3のドットマトリクス構成である横12ドット×縦5ドットに対応した記憶領域を備えている。表示データ記憶部12cから読み出した矢印記号を表すドットパターンや、発光ブロック3−a、3−b、3−cの各ブロックに対応する横4ドット×縦5ドットで塗りつぶされるドットパターンをVRAM13の記憶領域に展開するのである。このとき、表示画面3の1ドットに対してVRAM13の記憶領域は1ビットが割り当てられ、LED点滅に関する1ビットの点滅データが格納された後、単階調の表示制御データとして出力される。14はプログラマブルロジックデバイス(PLD)で、VRAM13から出力される表示制御データを受け、表示駆動部10に駆動信号を出力する。
【0012】
次に図3のタイミングチャートを基にして発光ブロック3−a、3−b、3−cの発光表示動作について説明する。図示のパルスは各発光ブロックに含まれるLED(横4ドット×縦5ドット)への通電を表しており、タイミング(ア)において第1の発光ブロック3−a及び3−bに所定時間t通電し発光させる。次にタイミング(イ)において発光ブロック3−a、3−b、3−cを共に所定時間8tの間消灯させる。このとき所定時間8tは所定時間tに対して十分長い時間を確保しており、具体的には8t=8×t(sec)の関係にある。次にタイミング(ウ)において、発光ブロック3−a、3−b、3−cに所定時間t通電し発光させる。次にタイミング(エ)において発光ブロック3−a、3−b、3−cを共に所定時間8tの間消灯させる。次にタイミング(オ)において第2の発光ブロック3−b及び3−cに所定時間t通電し発光させる。次にタイミング(カ)において発光ブロック3−a、3−b、3−cを共に所定時間8tの間消灯させる。以上タイミング(ア)〜タイミング(カ)が一連の発光表示動作となり、これら一連の動作を連続して繰り返し実行する。それにより、表示画面3は図4に示す発光表示イメージで、発光群が画面の左側から右側へ移動して発光する。そして、発光時間tは消灯時間8tに対して十分短い時間であることから、見る者には橙色の鮮やかな光が「左端」「正面」「右端」の順で瞬間的に瞬きながら認識され、光源の周りを反射鏡が回転して光を放射する回転灯と同等の発光表示を行う。
【実施例2】
【0013】
次に本発明の第2実施例について図5の全体ブロック図を基に説明する。第2実施例では、第1実施例に対して表示画面3を横方向48ドット×縦方向16ドットのマトリクス構成としており、また記憶部12にフォントROM12dを備えている。このフォントROM12dには標準コードに置きかえられた文字・記号等のキャラクタがドットパターンで記憶されており、また、表示データ記憶部12bには第1実施例の各種記号パターンや発光ブロックの発光順序などの他に、キャラクタデータからなる文字・単語・文章のコンテンツやドット情報の集まりで表現されるビットマップ形式のイメージデータからなる画像のコンテンツなどを複数記憶している。表示画面3は第1実施例と同様に3つの発光ブロック3−a、3−b、3−cで分割されているが、1つのブロックあたり横16ドット×縦16ドットの橙色LEDが含まれている点が異なっている。このような構成とすることにより、第1の発光ブロック3−a、第2の発光ブロック3−b、第3の発光ブロック3−cの点滅を組み合わせて行う注意喚起表示に加えて、表示画面3に「工事中」を静止表示したり、「片側通行規制中」等の文章をスクロール表示することが可能になる。
【実施例3】
【0014】
図示しないが、第3実施例として、表示画面3を横48ドット×縦32ドットのマトリクスで構成し、上側の1段(横48ドット×縦16ドット)を3つの発光ブロックに分割して注意喚起表示を行うようにしても良い。その場合、下側の一段(横48ドット×縦16ドット)に文字や文章を並行して同時表示すればより確かな注意喚起を行うことができる。
【0015】
本発明は以上のように構成されるが、上記実施例の内容に限定されることなく他の実施が可能である。例えば、表示画面を分割して構成する発光ブロックの数は3つに限定されるものではない。少なくとも3種類の発光群に分割して本実施例の発光タイミングで発光駆動可能であればよい。また、本実施例では表示画面の縦横比を横長に設置した例について説明したが、縦長に設置しても実施可能であり、その場合は表示画面を縦方向に3分割し、上段3分の1領域を第1の発光ブロック、中段3分の1領域を第2の発光ブロック、下段3分の1領域を第3の発光ブロックとして発光駆動すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の外観を示す説明図である。
【図2】本発明第1実施例の全体構成を示す説明図である。
【図3】第1から第3の発光ブロックの点滅タイミングを示すタイミングチャートである。
【図4】注意喚起表示のイメージを示す説明図である。
【図5】本発明の他の実施例の全体構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 電光表示装置本体
2 発光素子たるLED
3 表示画面
3−a 第1の発光ブロック
3−b 第2の発光ブロック
3−c 第3の発光ブロック
10 表示駆動部
11 CPU
12 記憶部
12b 表示データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の発光素子を点滅駆動することで所定の表示パターンを発光表示する電光表示装置において、
複数の発光素子をドットマトリクス状に配列して構成する表示画面と、
表示画面にドットマトリクス配列した発光素子を点滅駆動する表示駆動部と、
表示画面上に発光表示する表示パターンに対応して、前記表示駆動部を介して発光素子を点滅駆動するためのデータを記憶する表示データ記憶部と、を備え、
表示画面のドットマトリクス配列面の全領域あるいは一部の領域を縦方向または横方向に区切って少なくとも3つの発光ブロックに分割し、第1から第3の各発光ブロックに属する発光素子を以下の順番で繰り返しブロック毎に一斉に点灯あるいは消灯することにより注意喚起を促すことを特徴とする電光表示装置。
(1)左端あるいは上段に位置する第1の発光ブロックを点灯すると共に、中央に位置する第2の発光ブロックを点灯し、右端あるいは下段に位置する第3の発光ブロックを消灯する。
(2)第1から第3の各発光ブロックを全て消灯する。
(3)第1から第3の各発光ブロックを全て点灯する。
(4)第1から第3の各発光ブロックを全て消灯する。
(5)第1の発光ブロックを消灯し、第2の発光ブロック及び第3の発光ブロックを点灯する。
(6)第1から第3の各発光ブロックを全て消灯する。
【請求項2】
請求項1記載の電光表示装置において、前記第1から第3の各発光ブロックに属する発光素子を以下の順番で繰り返しブロック毎に一斉に点灯あるいは消灯することを特徴とする電光表示装置。
(1)左端あるいは上段に位置する第1の発光ブロックを点灯すると共に、中央に位置する第2の発光ブロックを所定時間t秒間点灯し、右端あるいは下段に位置する第3の発光ブロックを所定時間t秒間消灯する。
(2)第1から第3の各発光ブロックを全て所定時間8t秒間消灯する。
(3)第1から第3の各発光ブロックを全て所定時間t秒間点灯する。
(4)第1から第3の各発光ブロックを全て所定時間8t秒間消灯する。
(5)第1の発光ブロックを所定時間t秒間消灯し、第2の発光ブロック及び第3の発光ブロックを所定時間t秒間点灯する。
(6)第1から第3の各発光ブロックを全て所定時間8t秒間消灯する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−17468(P2007−17468A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−195750(P2005−195750)
【出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(000103138)エムケー精工株式会社 (174)
【Fターム(参考)】