説明

電力変換装置の保護装置

【課題】保護回路の信頼性を向上させた電力変換装置の保護装置を提供する。
【解決手段】交流電源を入力とし、第1の短絡故障検出手段を備えた3レベルコンバータ3と、直流コンデンサ4P、4Nと、内部短絡故障を検出する第2の短絡故障検出手段を備えた3レベルインバータ6とを有する電力変換装置の過電圧保護を行う。3レベルコンバータの入力を整流する第1のダイオードブリッジ回路8と、この直流出力に設けられ、第1の短絡故障検出手段が作動したときサイリスタを点弧する第1のサイリスタ回路10と、3レベルインバータ6の出力を整流する第2のダイオードブリッジ回路9と、この直流出力に設けられ、第2の短絡故障検出手段が作動したときサイリスタを点弧する第2のサイリスタ回路11とを具備し、前記第1及び第2のサイリスタ回路は、共に複数個のサイリスタを直列接続して構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換装置の保護装置に係り、特に電力変換装置の故障発生時に直流コンデンサが過電圧になることを抑制する電力変換装置の保護装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電力変換装置では、直流側に直流コンデンサを備えた電力変換装置は広く使用されており、高電圧・大電流化に伴い、直流コンデンサの直列数・並列数が多くなり装置全体として直流コンデンサが占める割合も大きくなっている。このような電力変換装置において、通常に運転している場合は、電源系統側の交流電圧をコンバータによって直流に変換した直流電圧が直流コンデンサへ印加され、過充電されることはない。しかし、コンバータ側のスイッチング素子の破損或いは誤点弧などによる直流短絡故障によって、電源系統側のエネルギーで直流コンデンサが過充電されてしまい、定格電圧を超える恐れがある。インバータ側についても同様であり、インバータ側のスイッチング素子の破損或いは誤点弧などによる直流短絡故障によって、電動機側のエネルギーで直流コンデンサが過充電されてしまう。このとき、故障状態を継続し続けると、直流コンデンサの破裂およびスイッチング素子のアーク噴出などの事故に至る恐れがある。このような被害拡大を防ぐために、電源系統側および電動機側に保護回路を設ける必要があるので、上記短絡故障によるエネルギーを保護回路で消費させ、直流コンデンサの過充電を抑制する提案がなされている(例えば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−11612号公報(第8−9頁、図9、図10)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示されている従来の保護回路は、電源(系統)側から整流回路によって直流コンデンサへ給電する3レベルコンバータの入力側に3相整流ダイオードとサイリスタを設け、コンバータ側の故障時に電力変換装置のすべてのスイッチング素子にゲート消弧信号を与え、サイリスタを点弧することによって、電源(系統)側からのエネルギーを保護装置で消費させる。モータ側についても同様であり、直流電圧を交流電圧に変換して交流電動機を駆動する3レベルインバータによって構成される電力変換装置の出力側に3相整流ダイオードとサイリスタを設け、インバータ側の故障時に電力変換装置のすべてのスイッチング素子にゲート消弧信号を与え、サイリスタを点弧することによって、電動機側からのエネルギーを保護回路で消費させる。
【0005】
しかしながら、従来例の保護回路では保護回路が破損した場合の影響については考慮されていない。このため、保護回路が破損した場合、電源(系統)側からのエネルギーによってコンバータの複数の相の素子を破損させるという問題があった。電動機側についても同様で、電動機側からのエネルギーによってインバータの複数の相の素子を破損させるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためのものであり、保護回路の信頼性を向上させた電力変換装置の保護装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明の電力変換装置の保護装置は、交流電源を入力とし、その内部短絡故障を検出する第1の短絡故障検出手段を備えた3レベルコンバータと、この3レベルコンバータから給電される正側及び負側の直流コンデンサと、前記直流コンデンサに印加される3レベルの直流電圧を交流電圧に変換して交流電動機を駆動する3レベルインバータと、前記3レベルインバータの内部短絡故障を検出する第2の短絡故障検出手段とを有する電力変換装置の過電圧保護を行う保護装置であって、前記3レベルコンバータの入力を整流する第1のダイオードブリッジ回路と、前記第1のダイオードブリッジ回路の直流出力に並列に設けられ、前記第1の短絡故障検出手段が作動したときサイリスタを点弧するようにした第1のサイリスタ回路と、前記交流電動機の入力を整流する第2のダイオードブリッジ回路と、前記第2のダイオードブリッジ回路の直流出力に並列に設けられ、前記第2の短絡故障検出手段が作動したときサイリスタを点弧するようにした第2のサイリスタ回路とを具備し、前記第1及び第2のサイリスタ回路は、共に複数個のサイリスタを直列接続して成ることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、保護回路の信頼性を向上させた電力変換装置の保護装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例1に係る電力変換装置の保護装置の回路構成図。
【図2】実施例1におけるサイリスタのゲート駆動装置の回路構成図。
【図3】実施例1におけるサイリスタゲート制御のタイミングチャート。
【図4】実施例1におけるサイリスタゲート制御のタイミングチャートであり、サイリスタ電流がゼロクロスした場合の動作を示した図。
【図5】実施例1におけるダイオードの故障検出回路の回路構成図。
【図6】本発明の実施例2に係る電力変換装置の保護装置のダイオードの故障検出回路の回路構成図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0011】
以下、本発明の実施例1に係る電力変換装置の保護装置を図1乃至図5を参照して説明する。
【0012】
図1は本発明の実施例1に係る電力変換装置の保護装置の回路構成図である。図1において、交流電源(系統)から与えられる3相交流電圧は、入力変圧器1及び入力開閉器2を介して3レベルコンバータ3に与えられる。
【0013】
3レベルコンバータ3の1相分の回路構成が図1に示されている。すなわち、直流出力の正電位側から負電位側にスイッチング素子Q1、Q2、Q3及びQ4を直列接続する。各々のスイッチング素子Q1、Q2、Q3及びQ4には夫々フリーホイールダイオードD1、D2、D3及びD4が逆並列接続されている。スイッチング素子Q1とQ2の接続点と直流出力の中性点間、スイッチング素子Q3とQ4の接続点と直流出力の中性点間に夫々クランプダイオードDC2、DC3を接続する。これにより上記の接続点の電位を零電位にクランプしている。そして1相分の交流入力をスイッチング素子Q2とQ3接続点に与える。以上と同様の回路をあと2相分設けることによって3レベルの直流出力が得られる構成となっている。
【0014】
3レベルコンバータ3で直流変換された正及び負の直流電圧が夫々直流コンデンサ4P及び4Nに印加される。直流コンデンサ4P及び4Nには保護用のヒューズ5P、5Nが夫々直列に接続されている。
【0015】
直流コンデンサ4P及び4Nによって平滑された3レベルの直流電圧は、3レベルインバータ6に与えられる。図1には3レベルインバータ6の1相分の回路構成が示されているが、この構成は基本的に3レベルコンバータ3と対称的な回路構成となっている。すなわち、内部構成は同一であり、3レベルコンバータ3が交流入力で3レベルの直流を出力しているのに対し、3レベルインバータ6は3レベルの直流を入力として3相交流を出力する。そして3レベルインバータ6の交流出力で交流電動機7を駆動する。
【0016】
3レベルコンバータ3の入力側に3相交流を整流するダイオードブリッジ回路8と、ダイオードブリッジ回路8の出力を短絡することが可能なサイリスタ回路10が接続されている。同様に、3レベルインバータ6の出力側に3相交流を整流するダイオードブリッジ回路9と、ダイオードブリッジ回路8の出力を短絡することが可能なサイリスタ回路11が接続されている。ダイオードブリッジ回路8、9を構成する各々のアームは、1素子が破損した場合であっても整流を継続できるだけの耐圧を確保したダイオードを直列に接続する。サイリスタ回路10、11も同様に1素子が破損した場合であってもオンオフ動作を継続できるだけの耐圧を確保したサイリスタ10a、10b及び11a、11bを夫々直列に接続する。ここで、図2においてはダイオードブリッジ回路8、9のダイオード及びサイリスタ回路10、11のサイリスタは2直列で示してあるが、3直列以上であっても良い。
【0017】
サイリスタ回路10の正電位側は直流回路の正電位側と抵抗11を介して接続され、負電位側は直流回路の負電位側と抵抗13を介して接続されている。同様にサイリスタ回路11の正電位側は直流回路の正電位側と抵抗12を介して接続され、負電位側は直流回路の負電位側と抵抗14を介して接続されている。これらの抵抗は、サイリスタ回路10、11に夫々設けられた図示しない点弧補助用コンデンサを初期充電するために使用される。
【0018】
このような回路構成において、3レベルコンバータ3のスイッチング素子が破損または誤点弧したときに、これを図示しない第1の短絡故障検出手段が検出し、3レベルコンバータ3及び3レベルインバータ6の全てのスイッチング素子にゲート消弧信号を与えると共に、サイリスタ10a、10bを点弧する信号を与える。同様に、3レベルインバータ6のスイッチング素子が破損または誤点弧したときに、これを図示しない第2の短絡故障検出手段が検出し、3レベルコンバータ3及びレベルインバータ6の全てのスイッチング素子にゲート消弧信号を与えると共に、サイリスタ111、112を点弧する信号を与える。
【0019】
図2に、図1のサイリスタ10a、10bを駆動するゲート駆動回路20の回路構成を示す。サイリスタ10aのアノードとカソード間には、抵抗211と、この抵抗211に直列に接続された抵抗212、LED213から成る並列接続体とで構成される電圧検出手段21が設けられている。サイリスタ10b側も同様の回路構成の電圧検出手段21が設けられている。これらの電圧検出手段は、サイリスタ10a、10bの漏れ電流による電圧アンバランスを解消する分圧抵抗を兼ねることが可能である。保護装置が動作しない状態、つまり、電力変換装置の正常運転状態では、サイリスタ10a、10bの両端にはダイオードブリッジ8で整流された直流電圧が印加されている。電圧検出手段21、22は、前述のとおり正常状態では直流電圧を分圧した状態となっている。電圧検出手段21はこの正常状態を、抵抗212と並列に接続したLED213でフィードバックさせる。もし、サイリスタ10aが破損した場合は、LED213が消灯する(信号FBK1)。電圧検出手段22も同一の回路構成であるので、サイリスタ10bが破損した場合は、電圧検出手段22のLEDが消灯する(信号FBK2)。
【0020】
図2におけるコンバータ短絡信号は第1の短絡故障検出手段から与えられる異常信号である。このコンバータ短絡信号と上記LEDの出力信号FBK1、FBK2が再点弧・サイリスタ故障検知論理回路23に与えられる。再点弧・サイリスタ故障検知論理回路23はゲート論理信号とサイリスタ故障検知信号を出力する。ゲート論理信号はドライブ段24で増幅され、絶縁トランス25に与えられる。絶縁トランス25の一方の2次出力は、ダイオード261、抵抗271を介してサイリスタ10aのゲートに与えられる。絶縁トランス25の他方の2次出力は、ダイオード262、抵抗272を介してサイリスタ10bのゲートに与えられる。
【0021】
以下に再点弧・サイリスタ故障検知論理回路23の内部構成とその動作を説明する。
【0022】
まず、保護装置が動作しない状態、つまり、コンバータ3の正常運転状態では、コンバータ短絡信号はLowレベルとする。ワンショット回路231は立ち上がりエッジで動作するワンショット回路であるため、保護装置が動作しない状態ではLowレベルである。ラッチ回路232は入力がHighレベルになれば、Highレベルをラッチする動作を行うが、ラッチ回路232入力がLowレベルであれば、ラッチ回路232の出力はLowレベルのままである。
【0023】
FBK1、FBK2の光信号は夫々受信器233、234に与えられて電気信号に変換される。これらの電気信号が、LED発光ありの場合Highレベルとすると、保護装置が動作しない状態、つまり、3レベルコンバータ3が正常運転状態で、サイリスタ10a及びサイリスタ10bが健全でLED213とLED223が共に発光していれば、受信器233、234は共にHighレベルとなり、これらを入力とするAND回路235の出力はHighレベルとなる。この結果OR回路236の出力はHighレベルとなる。このOR回路236の出力がHighレベルとなった状態を正常状態として図示しない制御回路へ出力することができる。
【0024】
ここでサイリスタ10aまたはサイリスタ10bの何れか、例えばサイリスタ10aが破損し、LED213が消灯し、FBK1が光なしとなると、受信器233の出力はLowレベル、受信器234の出力はHighレベルとなり、AND回路235の出力はLowレベルとなる。この結果、ラッチ回路232の出力がLowレベルの正常運転状態では、OR回路236の出力はLowレベルとなってサイリスタ故障検知信号を出力する。
【0025】
次に、図2のコンバータ短絡信号によって保護装置が動作するときの図2の各部のタイミングチャートを図3に示す。
【0026】
コンバータ短絡信号はHighレベルが入力され、ワンショット回路231はこの立ち上がりエッジでワンショットHighレベル信号を出力する。ラッチ回路232はHighレベルをラッチ出力する。OR回路236の一方の入力は受信器233、234のAND条件である。後述するように、サイリスタ10a、10bがオンとなるため、これらのサイリスタ両端電圧は共にオン電圧レベル(数V)に下がりLED213、223は消灯し、FBK1、FBK2が共にLowレベルとなるため、AND回路235の出力はLowレベルとなるが、上記ラッチ回路232の出力に従い、OR回路236は故障を検出することなく正常状態(=Highレベル)を図示しない制御回路に返信することができる。
【0027】
また、コンバータ短絡信号はOR回路239、ワンショット回路240、ドライブ段24を経由して、絶縁トランス25に与えられ、ダイオード261、抵抗271を介してゲート電流となり、サイリスタ10aをオンさせることができる。またサイリスタ10bも同様に、ダイオード261、抵抗271を介してゲート電流が与えられるのでオンさせることができる。
【0028】
上記説明において、ラッチ回路232はサイリスタ点弧時サイリスタの電圧が下降し、LEDが光らなくなり、故障と判断することをマスクさせる動作を行っている。
【0029】
次に、保護回路動作時にサイリスタ電流がゼロ付近まで下がった場合を想定した再点弧動作について、図4を用いて説明する。時刻t1でコンバータ短絡信号がゲート論理回路23に与えられると前述の通り、サイリスタ10a、10bがオンとなる。そして時刻t2までの動作は前述の説明のとおりである。時刻t2で、サイリスタ電流はゼロとなり、サイリスタ10a、10bがターンオフしてしまうと、電源(系統)側のパワーは保護回路のダイオードブリッジ10を介して、サイリスタ10a、10bの両端電圧を上昇させる。その結果、サイリスタ10a、10bの夫々の電圧検出手段21、22はサイリスタA−K間電圧を検出して、LED213、LED223を夫々点灯させる。この結果受信器233、234は、その入力が共にHighレベルとなるので共にHighレベル信号を出力する。この信号は、OR回路237を介して、AND回路238の一方の入力端に入力され、ワンショット回路231の出力がHighレベルの期間であれば、AND回路238の出力はHighレベルとなり、OR回路239を介してワンショット回路240を動作させる。この結果、サイリスタ10a、10bを再点弧させることができる。
【0030】
ワンショット回路231のワンショット動作は、前述のようにサイリスタ故障をマスクすることに使用されるが、ワンショット期間は再点弧を許可する時間に使用される。ゼロ電流を横切る期間が長い場合には、図3または図4よりはるかに長いワンショット期間としても差し支えない。また、ワンショット回路240はサイリスタ10a、10bのゲート電流を流す時間を決定しており、その期間は、図4に示したようにサイリスタ電流がゼロクロスするよりも短い時間とすることが望ましい。すなわち、電源周波数の半周期より短い時間が好ましい。この理由は、ゼロ電流になる際にサイリスタのA−K間に逆圧が印加された状態でサイリスタにゲート電流を流し続けると、サイリスタのトランジスタ効果により素子発生ロスが急激に上昇することを防止するためである。
【0031】
図5は図1のダイオードブリッジ回路8のダイオード故障検出回路を示す回路構成図である。図5において、抵抗81の一端は2つのダイオード8a、8bの中間接続点に、同様に抵抗82の一端はダイオード8c、8dの中間接続点に、抵抗83の一端はダイオード8e、8fの中間接続点に、抵抗84の一端は2つのダイオード8g、8fの中間接続点に、抵抗85の一端はダイオード8i、8jの中間接続点に、同様に抵抗86の一端はダイオード8k、8lの中間接続点に接続され、これらの抵抗81、82、83、84、85、86の他端は抵抗87の一端に接続され、抵抗87の他端は接地されている。ここで、抵抗81、82、83、84、85及び86の抵抗値は互いに等しい。
【0032】
以上の構成において、電力変換装置が正常動作している場合、つまり保護回路が動作せず待機している場合において、ダイオード整流時の抵抗87の両端の電圧は通常0Vを示す。これは、各々直列接続されたダイオードの中点より抵抗で集約された回路構成となっているためである。
【0033】
ここで何れかのダイオードが破損した場合を考える。この場合の抵抗87の両端の電圧は、中性点が狂うような動作となり、1相分の電圧が現れる。よっての抵抗87の両端の電圧を制御レベルで扱える程度に分圧し(この部分の図示は省略した。)、平均値回路88を通過させた電圧をレベル判定回路89に与える。この電圧が所定のレベルを超えたときダイオードの何れかが故障したと見做すことが可能となる。
【0034】
図5の平均値回路88はレベル判定を容易にすることと、ノイズ誤動作を防止するために設けられている。実使用上はダイオードを直列接続して冗長性が図られているため、平均値回路88は十分に長いフィルタ時間を持つようにしても良い。
【0035】
尚、図2及び図5に対応する電動機側の保護装置は、電源(系統)側の保護装置と同一であるためこれらの説明は省略する。
【実施例2】
【0036】
以下、本発明の実施例2に係る電力変換装置の保護装置を図6を参照して説明する。
【0037】
図6は図5に示した実施例1のダイオードブリッジの故障検出回路を変形させた例である。
【0038】
図6において、個々のダイオードのアノード−カソード間電圧を検出する電圧判定手段801をダイオードの数だけ設ける。電圧判定手段801は、対応するダイオードが正常であれば、電源電圧周期でダイオードの両端に電圧が発生していることを確認する。電圧判定手段801は、例えば図2の電圧検出手段21、22のように抵抗でLEDを駆動する回路とすれば良い。本例では、電圧判定手段801の出力を、ダイオードのアノード−カソード間に所定の電圧があれば、Highレベル(光あり)、電圧がなければLowレベル(光なし)として説明する。電源電圧周期で電圧判定手段はHigh/Lowレベルの出力を繰り返すが、ダイオードが破損してしまい、ダイオードの両端に電圧が発生しなくなると、電圧判定手段はLowレベルを出力し続けることになる。
【0039】
電圧判定手段801の出力はアップカウンタ802に与えられる。アップカウンタ802はLowレベルで自ら所定の周期でカウントを開始し、Highレベルが入力されるとカウント値をリセットする。電圧判定手段801がHigh/Lowレベルを繰り返していれば、設定された上限カウント値以内でのカウントとそのリセットが繰り返される動作となる。ダイオードが破損してしまえば、Low入力しか入力されず、アップカウントのリセットが行われないので、アップカウンタは所定の上限カウント値に達してしまい、このときHighレベルを出力する。
【0040】
個々のアップカウンタ802の出力は、対応して設けられたAND回路803によって判定開始指令の条件との論理積がとられ、OR回路804に与えられる。従って、何れかのアップカウンタ802の出力がHighレベルで且つ判定開始指令がHighレベルであれば、OR回路804はHighレベルを出力する。これがダイオード故障信号となる。
【0041】
ここで判定開始指令の条件を与えるようにしているのは、電動機側の3レベルインバータ6の出力電圧が低い場合(出力周波数が低いなどによる。)、ダイオードに発生する電圧が小さくなり、電圧判定手段801による判定が困難となるので、一定周波数以上に3レベルインバータ6の制御が達したとき、ダイオードの故障判別を開始するようにする為である。尚、3レベルコンバータ3の場合はこの現象は起こらないので、判定開始指令の条件を省略することができる。
【0042】
また、アップカウンタ801のカウント周期は、ダイオードを直列にして冗長を持たせているので、電源周期の10倍以上でも問題はなく、ゆっくりとした周期で故障検出しても良い。
【0043】
図3の実施例1の回路では、2直列の場合は容易なダイオード故障検出が可能であるが、直列数が増加すると、ダイオードの故障を検出することが困難になる。直列数によらず、ダイオードの故障検出を的確に行うためには本実施例の図6の回路が適している。
【0044】
以上本発明のいくつかの実施例を説明したが、これらの実施例は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0045】
例えば、実施例1においてダイオードブリッジ8とダイオードブリッジ9の直流出力同士を接続してサイリスタ回路11を省略するように構成しても良い。
【0046】
また、実施例1において、サイリスタとダイオードの故障確率を考慮し、サイリスタ回路10、11のみサイリスタを直列構成とし、ダイオードブリッジ回路8、9はダイオードを直列構成しない構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0047】
1 入力変圧器
2 入力開閉器
3 コンバータ
4P、4N 直流コンデンサ
5P、5N ヒューズ
6 インバータ
7 交流電動機
8、9 ダイオードブリッジ
8a、8b、8c、8d、8e、8f、8g、8h、8i、8j、8k、8l ダイオード
10,11 サイリスタ回路
10a、10b、11a、11b サイリスタ
12、13、14、15 抵抗器
20 ゲート回路
21、22 電圧検出回路
23 再点弧・サイリスタ故障検知論理回路
24 ドライブ段
25 パルストランス
211、212、221、222、271、272 抵抗
213、223 LED
261、262 ダイオード
231、240 ワンショット回路
232 ラッチ回路
233、234 受信回路
235、238 AND回路
236、237、239 OR回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電源を入力とし、その内部短絡故障を検出する第1の短絡故障検出手段を備えた3レベルコンバータと、
この3レベルコンバータから給電される正側及び負側の直流コンデンサと、
前記直流コンデンサに印加される3レベルの直流電圧を交流電圧に変換して交流電動機を駆動する3レベルインバータと、
前記3レベルインバータの内部短絡故障を検出する第2の短絡故障検出手段と
を有する電力変換装置の過電圧保護を行う保護装置であって、
前記3レベルコンバータの入力を整流する第1のダイオードブリッジ回路と、
前記第1のダイオードブリッジ回路の直流出力に並列に設けられ、前記第1の短絡故障検出手段が作動したときサイリスタを点弧するようにした第1のサイリスタ回路と、
前記交流電動機の入力を整流する第2のダイオードブリッジ回路と、
前記第2のダイオードブリッジ回路の直流出力に並列に設けられ、前記第2の短絡故障検出手段が作動したときサイリスタを点弧するようにした第2のサイリスタ回路と
を具備し、
前記第1及び第2のサイリスタ回路は、共に複数個のサイリスタを直列接続して成ることを特徴とする電力変換装置の保護装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のダイオードブリッジ回路は、共に複数個のダイオードを直列接続したアームから成ることを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置の保護装置。
【請求項3】
前記第1のサイリスタ回路の個々のサイリスタのアノード−カソード間電圧を検出する電圧検出手段を備え、
前記第1の短絡故障検出手段が作動しないとき、前記電圧検出手段の検出電圧が所定値以上であれば前記第1のサイリスタ回路のサイリスタは正常と判断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置の保護装置。
【請求項4】
前記第2のサイリスタ回路の個々のサイリスタのアノード−カソード間電圧を検出する電圧検出手段を備え、
前記第2の短絡故障検出手段が作動しないとき、前記電圧検出手段の検出電圧が所定値以上であれば前記第2のサイリスタ回路のサイリスタは正常と判断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力変換装置の保護装置。
【請求項5】
前記第1のダイオードブリッジ回路は、ダイオードを2直列接続したアームから成り、
各々の前記アームの2直列ダイオードの中点を、夫々第1の抵抗器を介して、共通して設けられ、他の一端が接地された第2の抵抗器の一端に接続し、
前記第2の抵抗器の両端の電圧が所定値以上のとき、前記ダイオードの何れかが故障したと判断することを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置の保護装置。
【請求項6】
前記第2のダイオードブリッジ回路は、ダイオードを2直列接続したアームから成り、
各々の前記アームの2直列ダイオードの中点を、夫々第1の抵抗器を介して、共通して設けられ、他の一端が接地された第2の抵抗器の一端に接続し、
前記第2の抵抗器の両端の電圧が所定値以上のとき、前記ダイオードの何れかが故障したと判断することを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置の保護装置。
【請求項7】
前記第1のサイリスタ回路の直列接続されたサイリスタの各々のアノード・カソード間電圧を監視する電圧検出手段を設け、
前記第1の短絡故障検出手段が作動して前記サイリスタを点弧した後、所定時間以内に前記電圧検出手段の何れかが所定値以上の電圧を検出したとき、再度前記サイリスタをターンオンさせる再点弧手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の電力変換装置の保護装置。
【請求項8】
前記第2のサイリスタ回路の直列接続されたサイリスタの各々のアノード・カソード間電圧を監視する電圧検出手段を設け、
前記第2の短絡故障検出手段が作動して前記サイリスタを点弧した後、所定時間以内に前記電圧検出手段の何れかが所定値以上の電圧を検出したとき、再度前記サイリスタをターンオンさせる再点弧手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の電力変換装置の保護装置。
【請求項9】
前記第1及び第2のサイリスタ回路の各々のサイリスタのゲート信号を電源周波数の半周期より短いワンショットパルスとして出力することを特徴とする請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載の電力変換装置の保護装置。
【請求項10】
前記第1のダイオードブリッジ回路の各々のダイオードのアノード−カソード間電圧を検出してレベル判定する電圧判定手段と、前記電圧判定手段の夫々の出力を受け、Lowレベル入力で所定の周期でカウントを開始しHighレベル入力でカウント値をリセットするカウンタと
を備え、
前記何れかのカウンタのカウント値が所定の上限値に到達したとき、前記ダイオードの何れかが故障したと判断するようにした請求項2に記載の電力変換装置の保護装置。
【請求項11】
前記第2のダイオードブリッジ回路の各々のダイオードのアノード−カソード間電圧を検出してレベル判定する電圧判定手段と、前記電圧判定手段の夫々の出力を受け、Lowレベル入力で所定の周期でカウントを開始しHighレベル入力でカウント値をリセットするカウンタと
を備え、
前記何れかのカウンタのカウント値が所定の上限値に到達したとき、前記ダイオードの何れかが故障したと判断するようにしたことを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置の保護装置。
【請求項12】
前記3レベルインバータの運転周波数が所定値を超えたとき、前記ダイオードの故障判断を開始するようにしたことを特徴とする請求項11に記載の電力変換装置の保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−157156(P2012−157156A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13873(P2011−13873)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】