説明

電力変換装置の冷却システム

【課題】閉鎖型電力変換ユニットの内部の空気温度が所定値を超えることがないようにする。
【解決手段】電力半導体11の熱を、冷却体20、電動機付きポンプ25によって循環される冷媒に移し、且つ、閉鎖型電力変換ユニット10内の空気に放熱された電力変換器制御回路12等の熱を、冷却体20に熱的に接続された吸熱フィン21で集熱して冷媒に移し、外部の放熱器23で放熱する冷却システムにおいて、循環冷媒の温度Twに基づいて、閉鎖型電力変換ユニット10内の空気温度を算出し、算出した空気温度と設定温度とから角度指令値を演算し、三方弁制御回路30がその演算結果を指令値として、循環冷媒を放熱器23およびバイパス配管26に分配する三方弁27の角度を駆動制御することで、閉鎖型電力変換ユニット10内の空気温度を所定値に保つようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力変換装置の冷却システムに関し、特に電力変換装置を構成する閉鎖型電力変換ユニット内の電力半導体を液冷するとともに閉鎖型電力変換ユニット内の空気を冷却するようにした電力変換装置の冷却システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換装置は、その電力変換ユニットにて電力半導体を備え、この電力半導体をスイッチング動作させることにより、交流を直流若しくは交流に、または直流を直流若しくは交流に変換している。電力半導体は、そのスイッチング動作の際に大量の発熱をするので、そのような熱を放熱して電力半導体を冷却する必要がある。
【0003】
特に密閉された筐体構造を有する閉鎖型電力変換ユニットでは、電力半導体が発熱した熱を装置外部に導いて放散させることにより電力半導体を冷却し、電力変換ユニット内の空気に放熱された熱については、これを吸熱フィンで吸熱することにより電力変換ユニット内の空気を冷却するものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
このような閉鎖型電力変換ユニットでは、装置外部に設置された放熱器との間で液体の冷媒を通流させるようにした冷却体を備え、その冷却体に電力半導体を搭載している。電力半導体が発熱した熱は、冷却体を通流する冷媒によって装置外部へ導出され、外部に設置された放熱器により放散され、これによって、電力半導体が冷却されている。
【0005】
また、電力半導体の発熱量は、電力変換装置の出力に応じて変化するので、電力変換装置の出力電力が低いときには、電力半導体が過剰に冷却されることになる。これに対し、電力半導体を過剰に冷却することのない冷却システムが知られている(たとえば、特許文献2参照)。この冷却システムによれば、電力半導体の発熱量に応じ、冷媒を循環させているポンプの回転数を制御するようにして、電力半導体の冷却を適正に行うようにしている。
【0006】
一方、閉鎖型電力変換ユニットの内部の空気は、その温度が電力半導体を駆動および制御する電子部品の発熱によって昇温される。電子部品およびこれを組み込んだ電子回路は、その周囲温度がメーカ推奨温度以上になると、電気的に誤動作する場合がある。また、プリント配線板と電子部品を接合するはんだは、プリント配線板と電子部品との熱膨張率の違いにより、周囲温度の変化によるストレスを受け、はんだクラックに至ることが知られている(たとえば、特許文献3参照)。はんだ部に掛かるストレスは、温度変化の大きさ、温度変化の繰り返し数の多さが影響する。
【0007】
閉鎖型電力変換ユニットにおいては、その内部の空気の温度が外部の空気温度より高くなると、内部の熱が筐体を貫通して外部へ伝わる熱通過現象によって自然に放熱され、冷却される。しかし、その熱通過による放熱量は、一般に少なく、また、ファンにより内部の空気を強制対流させても筐体への熱伝達率を大幅に向上させることも困難である。これに対し、特許文献1の関連技術では、電力変換装置の内部にて空気を強制対流させているファンは、強制対流の空気を、冷却体に熱的に接続した冷却フィンに当てる構成にしている。これにより、発熱電子部品が空気中に放熱した熱は、一度、冷却フィンによってより効率よく集熱され、その熱は、電力半導体の冷却体に移動され、さらにその冷却体から電力変換装置の外部に移送されて放熱されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008−60515号公報
【特許文献2】特開2008−130791号公報
【特許文献3】特開2007−73991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、電力変換装置の冷却システムは、閉鎖型電力変換ユニットにおける電力半導体の発熱量に比べて他の電子部品の発熱量が非常に少ないために、実質的に電力半導体の発熱量に対応した放熱を行うようにしていることから、電力変換装置がその最大出力での運転を長時間継続すると、閉鎖型電力変換ユニットの内部の空気温度の十分な放熱が行われなくなり、内部の空気温度が電子部品の推奨周囲温度以上になる場合があるという問題点があった。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、閉鎖型電力変換ユニットの内部の空気温度が所定値を超えることがないようにした電力変換装置の冷却システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では上記の課題を解決するために、電力半導体を有する電力変換器と、前記電力変換器の出力を所望の値に制御する電力変換器制御回路とを含む閉鎖型電力変換ユニットを備えた電力変換装置の冷却システムにおいて、前記電力半導体が搭載される冷却体と、外部に設置された放熱器と、前記冷却体と前記放熱器との間で冷媒を循環させる電動機付きポンプと、弁の角度により循環する冷媒を前記放熱器に並設されたバイパス配管と前記放熱器とに分配する三方弁と、前記冷却体に熱的に接続されて前記閉鎖型電力変換ユニット内の空気の熱を吸熱する吸熱器と、前記閉鎖型電力変換ユニット内で空気を循環させるファンと、前記閉鎖型電力変換ユニット内の空気温度と設定温度とから前記三方弁の角度指令値を演算する角度指令回路と、前記角度指令回路の出力を指令値として前記三方弁の角度を制御する三方弁制御回路と、を備え、前記三方弁の角度が前記閉鎖型電力変換ユニット内の空気温度を所定値に保つように制御されることを特徴とする電力変換装置の冷却システムが提供される。
【0012】
このような電力変換装置の冷却システムによれば、閉鎖型電力変換ユニット内の空気中に放熱される熱量が熱通過により筐体から外部に自然放熱する熱量を超えて内部空気の温度が高くなると、三方弁の角度を制御することにより放熱器を通過する冷媒の量を増やして冷媒の温度を低下させるように制御する。これにより、冷却体の温度を低下させ、これに熱的に接続された吸熱器の吸熱量を増やすことで閉鎖型電力変換ユニット内の空気の温度を低下させ、空気の温度が所定値を超えることがないようにしている。
【発明の効果】
【0013】
上記構成の電力変換装置の冷却システムは、閉鎖型電力変換ユニット内の空気温度に応じて三方弁の角度を制御し、放熱器を流れる冷媒の流量を増やして、冷却体の温度を低下させ、吸熱器の吸熱量を増やすようにしたので、閉鎖型電力変換ユニット内の空気温度を電子回路の許容温度以下であって、ほぼ一定に保つことができ、電子回路の誤動作を防止するとともに、プリント配線板および電子部品の実装に使用するはんだの劣化を防止し、信頼性の向上と長寿命化を図ることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態に係る電力変換装置の冷却システムを示すブロック図である。
【図2】角度指令回路の構成例を示す図である。
【図3】閉鎖型電力変換ユニット内の伝熱回路を示す図である。
【図4】第2の実施の形態に係る電力変換装置の冷却システムを示すブロック図である。
【図5】角度指令回路の構成例を示す図である。
【図6】第3の実施の形態に係る電力変換装置の冷却システムを示すブロック図である。
【図7】三方弁制御回路の第1の構成例を示す図である。
【図8】三方弁制御回路の第2の構成例を示す図である。
【図9】第4の実施の形態に係る電力変換装置の冷却システムを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は第1の実施の形態に係る電力変換装置の冷却システムを示すブロック図、図2は角度指令回路の構成例を示す図、図3は閉鎖型電力変換ユニット内の伝熱回路を示す図である。
【0016】
電力変換装置は、閉鎖型電力変換ユニット10によって構成され、その閉鎖型電力変換ユニット10は、電力半導体11および電力変換器制御回路12を備えている。電力半導体11は、これをスイッチング動作させることにより電力の変換が行われる電力変換器を構成するもので、電流を通電したときの電力損失により大量の熱を発生する。電力変換器制御回路12は、マイクロコンピュータを有し、そのような電力半導体11を含む電力変換器の出力を所望の値に制御する電子部品によって構成されている。
【0017】
冷却システムは、閉鎖型電力変換ユニット10の中に、電力半導体11を搭載する冷却体20と、この冷却体20にたとえばヒートパイプによって熱的に接続された吸熱フィン(吸熱器)21と、この吸熱フィン21に対して閉鎖型電力変換ユニット10の内部の循環空気を送風するファン22とを備えている。閉鎖型電力変換ユニット10の外部には、放熱器23が備えられ、冷却体20との間で冷媒が循環するように配管24および電動機付きポンプ25が設けられている。この冷媒の循環回路には、放熱器23をバイパスするようバイパス配管26が並設され、放熱器23の上流側の分岐部には、三方弁27が配置されている。三方弁27は、弁の角度により放熱器23およびバイパス配管26を流れる冷媒の分流比を制御して放熱器23に流す冷媒の流量を制御するものである。また、冷却システムは、閉鎖型電力変換ユニット10の内部における空気温度を検出する温度センサ28を備え、この温度センサ28の出力は、角度指令回路29の入力に接続されている。その角度指令回路29の出力は、三方弁制御回路30の入力に接続され、その出力は、三方弁27に接続されている。
【0018】
角度指令回路29は、図2に示したように、角度調節回路31と温度設定部32とを有し、角度調節回路31は、温度センサ28の出力と温度設定部32の温度設定値とを入力し、温度センサ28による検出温度が温度設定部32によって設定された空気温度になるような角度指令を三方弁制御回路30に出力する。三方弁制御回路30は、たとえば比例積分調節器を有し、角度調節回路31より与えられた角度指令値と実際の角度検出値との偏差をゼロにするような比例積分動作の信号を発生し、三方弁27を駆動制御する。
【0019】
つまり、電力変換装置の冷却システムは、閉鎖型電力変換ユニット10の内部における空気温度を検出して、検出した空気温度が所定値に保つように三方弁27の角度を制御している。
【0020】
次に、閉鎖型電力変換ユニット10の内部における伝熱回路について説明する。ここでは、電力半導体11の例として、たとえばインバータ回路のパワースイッチング素子であるIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)およびそのスイッチング時に発生す
る逆起電力を消費させるフリーホイーリングダイオード(FWD)を収容したパワーモジュールの場合について説明する。
【0021】
パワーモジュール11aでは、図3に示したように、IGBTの接合部が発熱源であり、その温度は、Tj(IGBT)で、発熱量は、PIGBTである。フリーホイーリングダイオードの温度は、Tj(FWD)で、発熱量は、PFWDである。IGBTおよびフリーホ
イーリングダイオードの接合部とケースとの間の熱抵抗は、Rth(j−c)で、ケース温度は、Tcで示している。このパワーモジュール11aで発生した熱量P(=PIGBT+PFWD)は、パワーモジュール11aのケースから冷却体20へ移動し、そのときの熱抵
抗は、Rth(c−f)である。
【0022】
冷却体20に熱的に接続された吸熱フィン21は、空気温度Taの空気から熱量Qを吸熱し、そのときの熱抵抗は、Rth(a−fa)で、温度は、Tfaである。また、吸熱フィン21と冷却体20との間の熱抵抗は、Rth(fa−f)である。
【0023】
冷却体20は、パワーモジュール11aで発生した熱量Pおよび吸熱フィン21が吸熱した熱量Qの移動により、温度がTfとなる。その熱量(P+Q)は、冷却体20と冷媒との間の熱抵抗であるRth(f−w)を介して循環する冷媒に移動され、そのときの冷媒の温度は、Twである。
【0024】
以上のように、パワーモジュール11aの冷却は、パワーモジュール11aが発生した熱を冷却体20に移動させ、その冷却体20から循環する冷媒に移動させることで行う。冷媒に移動された熱は、冷却体20から電動機付きポンプ25によって循環され、外部に設置された放熱器23まで移送されてそこから外部に放散される。
【0025】
冷却体20の温度Tfは、冷媒温度Twに、パワーモジュール11aの発生熱量Pに冷却体20と冷媒との間の熱抵抗Rth(f−w)を乗じて得た温度を加えた温度で表される。
【0026】
閉鎖型電力変換ユニット10の内部における空気の冷却は、閉鎖型電力変換ユニット10内の空気をファン22で循環させ、この空気が循環する経路に吸熱フィン21を設置し、この吸熱フィン21で空気の熱量を吸熱することで行われる。吸熱フィン21で吸熱した熱量Qは、熱的に接続した冷却体20に移動し、さらに冷媒に移動して外部の放熱器23で放熱される。
【0027】
閉鎖型電力変換ユニット10の内部における空気温度Taは、回路部品・回路導体から内部に放熱された熱量が、吸熱フィン21により吸熱される熱量Qと閉鎖型電力変換ユニット10の筐体の表面から外部に自然放熱される熱量の合計と一致したときに熱的に飽和する。
【0028】
閉鎖型電力変換ユニット10の内部に放熱される熱としては、電子部品で構成した電力変換器制御回路12の動作により消費した電力により発生する熱、電力変換器の電流通電により発生するパワーモジュール11aの周辺部品(たとえばスナバ回路等)や導体での損失により発生する熱、およびパワーモジュール11a自身の温度上昇により表面から放熱される熱等がある。
【0029】
パワーモジュール11aの内部で発生する損失による熱の大部分は、パワーモジュール11aを取り付けた冷却体20により閉鎖型電力変換ユニット10の外部に熱移送されて放熱されるが、そのような場合、パワーモジュール11aによる閉鎖型電力変換ユニット10の内部空気の温度上昇に対する影響は小さい。
【0030】
閉鎖型電力変換ユニット10の表面から外部への放熱量が小さい場合、閉鎖型電力変換ユニット10の内部における空気温度Taが飽和したとき、内部に放熱された熱はすべて吸熱フィン21により吸熱され、冷却体20に移送されたことになる。よって、内部放熱量Qに空気と冷却体20との間の熱抵抗Rthを掛けて算出した温度が、内部空気と冷却体20との間の温度差となり、冷却体20の温度Tfに、この吸熱フィン21を含む空気と冷却体20との間の温度差を加えた温度が、ほぼ空気温度Taである。すなわち、閉鎖型電力変換ユニット10の内部空気温度Taは、冷却体20の温度をTf、空気と冷却体20との間の熱抵抗をRth=Rth(a−fa)+Rth(fa−f)、発熱部品の放熱量をQとすると、
Ta=Tf+Rth×Q・・・(1)
で表すことができる。この内部空気温度Taの算出において、空気と冷却体20との間の熱抵抗Rthおよび発熱部品の放熱量Qは、装置の運転状態によって定まり、一定である。したがって、内部空気温度Taを調節するためには、冷却体20の温度Tfを調節すればよいことになる。
【0031】
冷却体20の温度Tfは、冷媒温度Twに冷媒と冷却体20との間の温度差△Tを加えたもので、
Tf=Tw+△T・・・(2)
で表され、冷媒と冷却体20との間の温度差△Tは、冷却体20から冷媒に伝熱される熱量(P+Q)に冷却体20と冷媒との間の熱抵抗Rth(f−w)を掛けて得られる温度である。この熱抵抗Rth(f−w)は、単位時間に冷却体20に流れる冷媒量と伝熱面積Sとで定まる。冷媒と冷却体20との間の熱伝達率をhとすると、温度差△Tは、
△T=(P+Q)/(h・S)・・・(3)
で表される。閉鎖型電力変換ユニット10の出力が一定であれば、冷却体20から冷媒に伝熱される熱量(P+Q)は一定である。したがって、電動機付きポンプ25によって循環させる冷媒量が一定であれば、冷媒の伝熱面積Sは、装置によって定まり、一定であるため、閉鎖型電力変換ユニット10の内部空気温度Ta、すなわち冷却体20の温度Tfを調節するためには、冷却体20に流す冷媒の温度Twを調節すればよい。
【0032】
ここで、循環する冷媒の温度Twを調節する具体例として、三方弁制御回路30は、その比例積分調節器によって、閉鎖型電力変換ユニット10の内部空気温度Taが所定値となるように、三方弁27の角度を制御する。その結果、電動機付きポンプ25によって一定の冷媒量で循環されている冷媒は、放熱器23とバイパス配管26とに分流される冷媒量の割合が変えられ、放熱器23の下流で冷却された冷媒とバイパス配管26を通過した冷却されていない冷媒とが混合され、冷却体20に流れる冷媒の温度が調節されることになる。
【0033】
すなわち、三方弁制御回路30は、空気温度が設定温度よりも高くなったときは、三方弁27の角度をバイパス配管26の側に閉じる方向に制御して、放熱器23の側に流れる冷媒の流量を増やし、冷却体20に流れる冷媒温度を低下させる。空気温度が設定温度よりも低くなったとき、三方弁制御回路30は、三方弁27の角度を放熱器23の側に閉じる方向に制御して、放熱器23の側に流れる冷媒の流量を減らし、冷却体20に流れる冷媒温度を高くする。
【0034】
なお、図1の実施の形態では、角度指令回路29は、閉鎖型電力変換ユニット10に内蔵されているが、その外部に設置してもよい。また、三方弁制御回路30は、閉鎖型電力変換ユニット10の外部ではなく、内部に設置してもよい。
【0035】
閉鎖型電力変換ユニット10の内部における空気温度は、ファン22による空気の循環により、ほぼ均一となる。その空気温度を検出する温度センサ28は、電子部品を搭載しているプリント回路板の周囲温度または上部温度が測定できるように設置される。
【0036】
閉鎖型電力変換ユニット10の内部における空気温度の設定値としては、たとえば、制御回路に搭載されている電子部品等に許容されている周囲温度に余裕を持たせた温度を設定する。具体的には、電子回路の動作保証周囲温度は、40℃〜60℃程度が一般的であるので、それ以下の温度に設定するのがよい。これにより、閉鎖型電力変換ユニット10の内部の空気温度は、所定の設定値を超えることがないように制御することができる。
【0037】
図4は第2の実施の形態に係る電力変換装置の冷却システムを示すブロック図、図5は角度指令回路の構成例を示す図である。なお、この図4および図5において、図1および図2に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0038】
この実施の形態に係る電力変換装置の冷却システムでは、温度センサ28は、閉鎖型電力変換ユニット10の内部の空気温度を直接検出しているのではなく、空気温度を間接的に検出し、その空気温度が設定された所定値に保たれるように三方弁27の角度を制御している。このため、温度センサ28は、電力半導体11を搭載する冷却体20の温度を検出し、その冷却体20の温度と閉鎖型電力変換ユニット10の空気温度との温度差を電力変換器制御回路12が演算し、冷却体20の温度に演算した温度差を加算して、閉鎖型電力変換ユニット10の内部の空気温度を推定するようにしている。
【0039】
角度指令回路29は、図5に示したように、角度調節回路31と、温度設定部32と、空気温度推定回路33とを有し、空気温度推定回路33は、温度センサ28の出力および電力変換器制御回路12が有する温度差演算回路12aの出力を受けて、空気温度を推定している。角度調節回路31は、空気温度推定回路33が推定した空気温度と温度設定部32の温度設定値とを入力し、推定された空気温度が温度設定部32によって設定された空気温度になるような角度指令を三方弁制御回路30に出力する。三方弁制御回路30は、角度調節回路31より与えられた角度指令値と実際の角度検出値との偏差をゼロにするような比例積分動作の信号を発生し、三方弁27を駆動制御する。
【0040】
空気温度推定回路33が冷却体20の温度と温度差とから空気温度を推定できることは、図3に示した伝熱回路によって説明できる。すなわち、上記の式(1)に示したように、閉鎖型電力変換ユニット10の内部空気温度Taは、冷却体20の温度Tfに、発熱部品の放熱量Qと空気から吸熱フィン21を通して冷却体20に伝熱する経路の熱抵抗Rthとを掛けて得た温度差を加えた温度で表される。冷却体20の温度Tfは温度センサ28によって検出され、熱抵抗Rthは定数であり、発熱部品の放熱量Qは電力変換器制御回路12の温度差演算回路12aによる演算によって求められる。
【0041】
発熱部品の放熱量Qは、電力変換器制御回路12の温度差演算回路12aにおいて、以下のようにして算出することができる。電力変換器の入力部で発生する損失は、入力電圧および入力電流に基づいて算出される。また、電力変換器の出力部で発生する損失は、出力電圧および出力電流に基づいて計算により算出される。電力半導体11の表面から放熱される熱量は、電力半導体11の接合温度を表面温度と仮定すれば、電力半導体11の表面積と推定空気温度との関係で算出される。電力変換器制御回路12で発生する熱量は、その回路で消費する電力を計算または計測することに基づいて得られる。したがって、温度差演算回路12aは、閉鎖型電力変換ユニット10内に放熱される熱量の合計値を、出力の関数とするテーブルまたは関数式として持つことにより、閉鎖型電力変換ユニット10の運転状態に応じた任意の出力に対して閉鎖型電力変換ユニット10内に放熱される熱量を知ることができる。その熱量は、空気から吸熱フィン21を通して冷却体20に伝熱する経路の熱抵抗Rthが乗じられ、空気と冷却体20との間の温度差として、角度指令回路29の空気温度推定回路33に与えられる。空気温度推定回路33は、温度センサ28による検出温度と温度差演算回路12aによる温度差とを加算し、推定空気温度として角度調節回路31に出力する。
【0042】
次に、電力変換装置の冷却システムを多相電動機用の電力変換装置に適用した実施の形態について説明する。
図6は第3の実施の形態に係る電力変換装置の冷却システムを示すブロック図、図7は三方弁制御回路の第1の構成例を示す図、図8は三方弁制御回路の第2の構成例を示す図である。なお、この図6ないし図8において、図1に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0043】
この電力変換装置1は、互いの独立した複数の単相巻線を有する多相電動機40を駆動するためのもので、各相を個別に制御するために、複数の閉鎖型電力変換ユニット10a,10b,・・・,10nを備えている。それぞれの閉鎖型電力変換ユニット10a,10b,・・・,10nは、図1に示した閉鎖型電力変換ユニット10と同じ構成を有している。
【0044】
この電力変換装置1の冷却システムは、すべての閉鎖型電力変換ユニット10a,10b,・・・,10nの冷却体20から出ている冷媒導出側の配管および冷媒導入側の配管がそれぞれ纏められて三方弁27の冷媒入口および電動機付きポンプ25の冷媒出口に接続されている。これにより、電動機付きポンプ25によって圧送された冷媒は、分岐されてそれぞれの閉鎖型電力変換ユニット10a,10b,・・・,10nの冷却体20に送られ、それぞれの閉鎖型電力変換ユニット10a,10b,・・・,10nの冷却体20を出た冷媒は、合流して三方弁27に送られる。
【0045】
三方弁27を制御する三方弁制御回路30は、図7に示したように、平均角度指令演算回路34と、三方弁駆動回路35とを有している。平均角度指令演算回路34は、それぞれの閉鎖型電力変換ユニット10a,10b,・・・,10nの角度指令回路29から出力された角度指令a,b,・・・,nを入力し、これら角度指令a,b,・・・,nの平均値を演算し、指令値として出力する。三方弁駆動回路35は、平均角度指令演算回路34から出力された指令値に基づいて、三方弁27を駆動制御することになる。これにより、この電力変換装置1の冷却システムは、それぞれの閉鎖型電力変換ユニット10a,10b,・・・,10nの内部の空気温度が所定値に保つように三方弁27の角度を制御することになる。
【0046】
また、図8に示す三方弁制御回路30は、最小角度指令選択回路36と、三方弁駆動回路35とを有している。最小角度指令選択回路36は、それぞれの閉鎖型電力変換ユニット10a,10b,・・・,10nの角度指令回路29から出力された角度指令a,b,・・・,nを入力し、これら角度指令a,b,・・・,nの最小値を指令値として選択する。三方弁駆動回路35は、最小角度指令選択回路36から出力された指令値に基づいて、三方弁27を駆動制御することになる。これにより、この電力変換装置1の冷却システムは、それぞれの閉鎖型電力変換ユニット10a,10b,・・・,10nの内部の空気温度が所定値を保つように三方弁27の角度を制御することになる。
【0047】
図9は第4の実施の形態に係る電力変換装置の冷却システムを示すブロック図である。なお、この図9において、図6に示した構成要素と同じまたは均等の構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0048】
この電力変換装置1の冷却システムでは、閉鎖型電力変換ユニット10の内部の空気温度を推定し、その推定空気温度が設定された所定値に保たれるように三方弁27の角度を制御している。このため、この冷却システムの角度指令回路29では、その空気温度推定回路33が温度センサ28で検出した冷却体20の温度と、電力変換器制御回路12の温度差演算回路12aで演算した空気と冷却体20との間の温度差とから、閉鎖型電力変換ユニット10の内部の空気温度を推定し、角度調節回路31がその推定空気温度を設定された所定値に保つような三方弁27の角度指令を出力している。
【0049】
閉鎖型電力変換ユニット10a,10b,・・・,10nのそれぞれから出力された角度指令は、三方弁制御回路30に入力され、ここで角度指令の平均角度または最小角度を算出して、三方弁27の角度を制御する。
【符号の説明】
【0050】
1 電力変換装置
10,10a,10b,・・・,10n 閉鎖型電力変換ユニット
11 電力半導体
11a パワーモジュール
12 電力変換器制御回路
12a 温度差演算回路
20 冷却体
21 吸熱フィン
22 ファン
23 放熱器
24 配管
25 電動機付きポンプ
26 バイパス配管
27 三方弁
28 温度センサ
29 角度指令回路
30 三方弁制御回路
31 角度調節回路
32 温度設定部
33 空気温度推定回路
34 平均角度指令演算回路
35 三方弁駆動回路
36 最小角度指令選択回路
40 多相電動機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力半導体を有する電力変換器と、前記電力変換器の出力を所望の値に制御する電力変換器制御回路とを含む閉鎖型電力変換ユニットを備えた電力変換装置の冷却システムにおいて、
前記電力半導体が搭載される冷却体と、
外部に設置された放熱器と、
前記冷却体と前記放熱器との間で冷媒を循環させる電動機付きポンプと、
弁の角度により循環する冷媒を前記放熱器に並設されたバイパス配管と前記放熱器とに分配する三方弁と、
前記冷却体に熱的に接続されて前記閉鎖型電力変換ユニット内の空気の熱を吸熱する吸熱器と、
前記閉鎖型電力変換ユニット内で空気を循環させるファンと、
前記閉鎖型電力変換ユニット内の空気温度と設定温度とから前記三方弁の角度指令値を演算する角度指令回路と、
前記角度指令回路の出力を指令値として前記三方弁の角度を制御する三方弁制御回路と、
を備え、前記三方弁の角度が前記閉鎖型電力変換ユニット内の空気温度を所定値に保つように制御されることを特徴とする電力変換装置の冷却システム。
【請求項2】
前記閉鎖型電力変換ユニット内の空気温度は、
前記閉鎖型電力変換ユニットの内部に放熱される熱量と内部の空気から前記吸熱器を通して前記冷却体に伝熱される経路の熱抵抗とから前記冷却体と空気との間の温度差を演算し、
前記冷却体の温度に、前記演算した前記冷却体と空気との間の温度差を加算して得られる温度である、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力変換装置の冷却システム。
【請求項3】
前記冷却体の温度は、
前記冷却体の内部に設けられた流路を流れる冷媒の温度に、前記冷却体から前記冷媒に伝熱される熱量とこの熱量が前記冷媒に伝熱される経路の熱抵抗とから算出して得られる前記冷却体内の温度差を加算して得られる温度である、
ことを特徴とする請求項2に記載の電力変換装置の冷却システム。
【請求項4】
前記吸熱器は、前記閉鎖型電力変換ユニット内の空気の循環経路に設置されている請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電力変換装置の冷却システム。
【請求項5】
前記電力変換装置は、複数の前記閉鎖型電力変換ユニットを備え、
すべての前記閉鎖型電力変換ユニット内の前記冷却体は、冷媒が循環するように前記放熱器に接続され、
前記三方弁制御回路は、すべての前記閉鎖型電力変換ユニットに対応する前記角度指令回路が出力した角度指令値の平均値を指令値として前記三方弁の角度を駆動制御するようにした請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置の冷却システム。
【請求項6】
前記電力変換装置は、複数の前記閉鎖型電力変換ユニットを備え、
すべての前記閉鎖型電力変換ユニット内の前記冷却体は、冷媒が循環するように前記放熱器に接続され、
前記三方弁制御回路は、すべての前記閉鎖型電力変換ユニットに対応する前記角度指令回路が出力した角度指令値のうちの最小値を指令値として前記三方弁の角度を駆動制御するようにした請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の電力変換装置の冷却システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−80981(P2013−80981A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−21128(P2013−21128)
【出願日】平成25年2月6日(2013.2.6)
【分割の表示】特願2009−40473(P2009−40473)の分割
【原出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】